インターベンショナルシミュレータシステム
本発明は、制御ユニットと、インターフェースユニットとを備え、前記制御ユニットと前記インターフェースユニットとが通信し、前記インターフェースユニットがインターフェースする少なくとも1つの器具の取り扱いをシミュレートする、インターベンショナル治療シミュレーションシステムに関する。前記器具は、シミュレートされたベッセル(血管)内に挿入され、前記ベッセルの剛性、前記自己拡張ツールの静止直径、ベッセルの初期内径および前記ツールに対するスプリング定数を示す設定値に関してシミュレートされる自己拡張ツールとなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインターベンショナル手術をシミュレートするための、特に特殊な器具の使用をシミュレートするためのコンピュータ化された装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成人教育の原則、実験学習が必要であるとの見解および専門技術の発展に関する理論は、いずれも学習プロセスにおいて経験が重要な役割を演じることを強調している。これら教育の基礎に基づき、訓練生および実務に従事している医者に必要な学習経験を提供するために、現在の外科および内科医療教育において最先端技術を用いたシミュレーションを上手く取り込んでいる。こうして標準化された学習経験に基づき、不可欠な技能を取得し、かつ特定の能力レベルを得る機会をすべての学習者に提供できる。シミュレーションを使用すると、性能の評価および迅速な個々の詳細なフィードバックを行うことによって学習を促進することができる。シミュレーションは所定の技術水準に達するまで繰り返し学習を可能にする管理された環境を提供し、学習者のストレスレベルを下げ、学習者の信頼レベルを高め、患者に治療を施す前に技術的な能力の達成を保証することにより、実際の環境における安全性を高める。実務に従事している医者は自らの技能を改善し、シミュレーションの使用を伴った教育的な医療行為を通して科学技術の進歩の結果得られた新しい手法を取得できる。更にシミュレーションを使用することを通し、別々に学習し、実務をする機会を訓練生に提供することにより、実際の問題、例えば学部時間に対する要求の問題の解決を助けることができる。アカウンタビリティおよび医療の質の保証に対する現在の要求も、かかるシミュレーションを使用することによって解決でき、結果に関するデータを使って公衆に医者の能力を保証できる。
【0003】
シミュレーションは、技能開発の問題を解決する現在の教育プログラムの重要な部分であると見なさなければならない。シミュレーションは効果的な教育および学習を保証し、学習者の技能の評価の有効かつ信頼できる手段を提供し、改善を必要とする特定の弱点に関する情報を与え、学習者の技能能力の個々のプロ指導セットを形成できる。所望する結果を得るには、成人教育の原則、実験学習および有効なフィードバックに基づき、特定のカリキュラムを開発しなければならない。継続的なプロフェッショナルな教育および認定のプログラムにおいても、かかるシミュレーションを使用することができる。シミュレーションの開発および取得、並びに教育モデルへこれらシミュレーションを有効に組み込んだ訓練プログラムの形成に必要なリソースへの初期投資は、手術室において手術を迅速に実行できるようになること、患者の安全性が高まること、および学習者に種々の技術的技能を教えるのに必要な学部時間を短縮できることから得られる種々の利点によって容易に相殺できる。かかるシミュレーションは、教育努力の有効性を評価すること、訓練のための個人の選抜をすることにも使用でき、従って、シミュレーションは、将来の外科および内科医療教育のプログラムに大きな影響をあたえる潜在力となる。
【0004】
コンピュータ技術の急速な開発の結果、シミュレーション、特に外科および内科医療教育の目的のためのシミュレーションは、相当改善されている。しかしながら、現時点で公知の装置および方法は、使用される異なる器具の全てのシミュレーションを可能にするものではない。
【0005】
先行技術のいずれも本発明に係わる異なる器具をシミュレートするためのヒントを与えたり示唆したりはしていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の好ましい実施例の主な目的は、好ましくは特に心臓血管または血管内診断、またはインターベンショナル治療における自己拡張器具のリアルタイムのシミュレーションをするための、新規で、かつ有効な方法およびシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
制御ユニットと、インターフェースユニットとを備え、前記制御ユニットと前記インターフェースユニットとが通信し、前記インターフェースユニットがインターフェースする少なくとも1つの器具の取り扱いをシミュレートする、インターベンショナル治療シミュレーションシステムにおいて、前記器具は、シミュレートされたベッセル(管)内に挿入される自己拡張ツールであり、前記ベッセルの剛性、前記自己拡張ツールの静止直径、前記ベッセルの初期内径および前記ツールに対するスプリング定数を示す設定値に関してシミュレートされる。1つの好ましい実施例では、前記器具は、ステントである。別の好ましい実施例では、前記器具は、遠方(ディスタル)保護装置である。好ましくは、前記遠方保護装置は、実質的にダブルコーンであり、これらコーンの2つの端部は、ワイヤに取り付けられ、シースによってカバーされている。一方のコーンの遠方部分は、インターベンションシミュレーション中に自由になり得る粒子をキャッチすることをシミュレートするためのネットである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、添付図面を参照し、本発明について更に非限定的に説明する。
【0009】
図1には、本発明に係わるシミュレーション装置の一実施例が略図で示されている。この装置100はコンピュータユニット110と、インターフェースデバイス120とを備える。コンピュータユニット110は従来のPCまたは同様なものでもよいし、またはインターフェースデバイス120が一体化されたユニットでもよい。本実施例に係わるコンピュータユニットは、ディスプレイユニット111と、入力デバイス112、例えばキーボードおよびマウスと、通信インターフェース(図示せず)と通信するようになっている。
【0010】
本出願人による「インターベンショナルシミュレーション装置」を発明の名称とするスウェーデン特許出願第0203568−1号(本願ではこの出願の内容を参考例として援用する)に記載されているインターフェースデバイス120は、多数の器具121〜123を受けるようになっている。本出願人による「インターベンショナルシミュレーション制御システム」を発明の名称とし、スウェーデン特許出願第0203567−3号(本願ではこの出願の内容を参考例として援用する)に記載されている制御システムは、インターベンショナル治療をシミュレートするようになっている。
【0011】
しかしながら、本発明は上記制御システムおよびインターフェースデバイスを含むシステムだけに限定されるものではなく、本発明の教示は自己拡張器具のシミュレーションを行える任意のシステムで使用できる。
【0012】
三次元幾何学形状を次のように異なる方法で構成できる。
− 三次元モデル化ソフトウェア、すなわち解剖学書、ビデオクリップなどを参考としてのみ使用するスクラッチ図から三次元幾何学的形状をモデル化できる。
− 実際の患者のデータ、例えばCT、MRI、超音波、蛍光スコープなどを用いたスキャン130によって得られたデータから、これら三次元幾何学形状を再構成できる。
【0013】
好ましい実施例として、図2に略図で示されたインターフェースデバイス200は多数の器具、ダミーの器具または実際の器具、好ましくは少なくとも2つの器具を受けるようになっている。このデバイスは器具の数に対応した数の可動キャリッジ216A〜216Cと、共通トラック220と、入れ子式チューブとして設けられた相互接続部材226とを含む。相互接続部材226は、キャリッジ216A〜216Cを直列に相互接続している。各キャリッジには器具を受けることができるようにするための開口部が設けられており、各キャリッジ216A〜216Cは更に、器具のうちの少なくとも1つを受け、かつロックするための部材と、器具からの運動を受け、力を発生するための部材とを備え、力はシミュレーション特性に関して器具にフィードバックされるようになっている。各キャリッジは相互接続部材に挿入される器具のタイプを検出するための検出機構を含むことが好ましい。インターフェースデバイスは、制御ユニット(PC)に接続されており、各キャリッジの運動を測定すると共に速度レギュレータおよび距離レギュレータによって運動を調節するようになっている。各キャリッジはトラック220に沿って駆動するためのギアベルト変速機に接続されており、各キャリッジにはトルクホイールに配置されたクランクブロックが設けられている。このクランクブロックには嵌合表面が設けられており、この嵌合表面は器具のワイヤをグリップするコレットに向かって押圧されている。更に各キャリッジには出口が配置されており、この出口にはキャリッジ内に器具が存在することを検出する検出部材が設けられている。この検出部材は各器具の厚みを検出するようになっている。光センサはキャリッジ内に器具が存在することを検出し、制御ユニットは器具の長手方向の運動および回転運動を測定し、受けた力およびトルクに従って器具の長手方向および回転方向の力のフィードバックを行う。ロッキング部材は、器具をクランプするようになっており、この器具は中心壁に取り付けられている。ロッキング部材は、中心壁に配置されたトルクホイールを備える。トルクホイールの内部にはクランクブロックが取り付けられており、このクランクブロックは長手方向に移動する。このクランクブロックは回転方向に固定されている。
【0014】
このシステムは異なるタイプの自己拡張ツールが作動する態様をシミュレートするようになっている。この自己拡張ツールはツール自身とカバーシース(チューブ)とから成る。シースが引っ込められるにつれ、ツール自身は“自然な”形状に拡張する。一部のケースでは、シースを元通りに押戻し、ツールを再びカバーするようにもできる。
【0015】
実施例1: 自己拡張可能なステント
ステントはワイヤの先端で延びる中空チューブの頂部に押圧されており、シースによってカバーされている。このステントは下方のチューブには取り付けられていない。カバーシースが引っ込められると、ステントは次第に開口し、所定の直径(ベッセル内ではこの直径は最大となり、ベッセルの壁がステントを押圧する場合にはより小さくなる)となる。シースが完全に引っ込められると、ステントはシースおよび下方のチューブから完全に外れ、ベッセルの壁に押圧される。現在、ステント自身を回収する方法はない。
【0016】
実施例2: 遠方保護装置(DPD)
図3に示されたDPD30はシース(図示せず)にカバーされた“ダブルコーン”31および32からなり、2つの端部にワイヤが取り付けられている。この“コーン”の遠方部分は微細ネット31であり、このネットはインターベンション中に自由になり得る粒子をキャッチするように取り付けられている。この“コーン”の近接部分は完全に開口している。シースが引っ込められると、コーンはその“自然な”形状−すなわち中間部が最も広い形状となる。“コーン”は下方のワイヤに取り付けられているので、シースを押し戻し、再び“コーン”をカバーできる。
【0017】
次に、発明を限定しない多数の例により、本発明について説明する。
【0018】
図4乃至図6は自己拡張器具、本例では自己拡張ステントのシーケンスを示す。自己拡張可能なステントの場合、これらステントはシースによってカバーされており、シースが引っ込められると、ステントは所定のサイズまで拡張する(しかしながら、ステントがベッセルの壁に衝突すると、ステントの最終的なサイズはベッセルの“剛性”およびステント自身の性質に応じて決まる)。ステントの性質、ステントが拡張する態様およびステントがベッセルに与える影響の双方が、視覚的にシミュレートされる。後で“通常の”バルーンによってベッセルを後膨張させることもできる。図4では自己拡張可能なステントはベッセル内の所定位置にあるが、設置されているわけではない。図5ではステントをカバーするシースが部分的に引っ込められており、図6ではシースは完全に引っ込められ、ステントは設置状態にある(器具には接続されていない)。シミュレータプログラムは多数の初期値、すなわち自己拡張器具の拡張直径のうちの静止拡張直径、(シミュレートされた部分における)ベッセルの初期内径、自己拡張器具に対するスプリング定数およびベッセルの剛性を有する。これらパラメータはシミュレータが器具およびベッセルの(シミュレートされた部分の)膨張に対する境界をどのように設定するかを定める。シースが使用されている場合も、その直径を初期化しなければならない。
【0019】
バルーンとステントを同じように使用することもできる。バルーン(ステントも同様)は拡張するベッセルと相互作用する。造影剤を注入すると、血流が変化する。ステントを見ることができるように、ステントをシミュレートし、バルーンが収縮する際に、ステントは所定場所に留まる。より大きなバルーンと共にステントを進入させ、再びバルーンを膨張させることもできる。このことはステントとベッセルの双方に影響を与える。いわゆる後膨張である。最初にステントを使用する前に、まずバルーンを膨張させることもできる。いわゆる前膨張である。よって“大きな”バルーンと共に進行する際に固定された病巣が感じられるように、力のフィードバックを使用することによりシミュレーションを行う。
【0020】
右または左の冠状ベッセルツリーにアクセスするために、まずガイドカテーテルおよびガイドワイヤを前進させるように、図7乃至図10に示された手順を実行する。次に病巣/狭窄部を発見するためにカテーテルを通して造影剤を注入する。病巣を完全に可視化するために、像を変えることができる。長さおよび幅を測定するために、別個のQCA(定性的Cアセスメント)プログラムが使用するよう、画像を送ることもできる。次にユーザは、自分がどのサイズのバルーン/ステントを使用したいかを決定できる。(一般にバルーンの膨張/ステント使用の前後で、いくつかのシネループを記録する。)最初にカテーテルに細いガイドワイヤ(冠状ワイヤ)を挿入し、次にベッセルツリー内に挿入する。ワイヤの先端は(ユーザが選択できる)所定の角度の形状とすることができ、ワイヤを回転したり、引っ張ったり、押したりして、病巣を通過する正しい場所を探すようにベッセルツリーを通過するようにワイヤを操縦する。次に、ワイヤの頂部へバルーン/ステントを前進させ、放射線不透性マーカーを使って正しい位置に位置決めする。バルーン/ステントが正しい場所にあることを確認するために造影剤を注入できる。最後に、バルーン/ステントを膨張させ、所定の時間の間、この状態を保持し、次に収縮させる。すべてのステップはシミュレートされ、実際に行っているように実行することが出来る。
【0021】
遠方保護装置は栓子が移動し(脳内で破裂し得る)毛細血管を閉塞するのを防止する。ワイヤに取り付けられ、最初にシースによってカバーされたフィルタ“バスケット”を使用することが出来る。病巣を通過したところにワイヤおよびシースを位置決めし、次にシースを引っ込め、病巣が膨張したときのための保護としてバスケットを残す。その後、回収シースを前進させ、バスケットを閉じ、両者を共に後退させる。遠方保護装置をどのように扱うか、および視覚的な特徴を含む遠方保護装置のふるまいがシミュレートされる。他のタイプの保護装置をシミュレートすることもできる。例えば、膨張時に血流をブロックするバルーンをシミュレートすることもできる。図11乃至図13にはこれらのシーケンスが示されている。
【0022】
図11は遠方保護装置がベッセル内の所定位置にあり、シースカバーフィルタが部分的に後退している状態を示す。
図12はシースが引っ込められ、“拡張し”始めたフィルタの“ベース”にあるマーカーを示している。
図13は更に引っ込められたシースを示している。
【0023】
このケースにおけるフィルタ自身は蛍光スコープ画像では見ることができないことに留意されたい。マーカーポイントしか見ることができない。フィルタはワイヤに接続された状態のままであるので、上記シーケンスを反転させることもできる。
【0024】
本発明は示された実施例だけに限定されるものでなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、多数の態様をとることができる。本発明の装置および方法は用途、機能ユニット、ニーズおよび要件などに応じて種々の態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例に係わるブロック図を示す略図である。
【図2】インターフェースデバイスの略図である。
【図3】シミュレートされる器具の略図である。
【図4】バルーンとステントとを使用したシーケンスのうちの1つを示す、蛍光スコープ画像である。
【図5】バルーンとステントとを使用したシーケンスのうちの1つを示す、蛍光スコープ画像である。
【図6】バルーンとステントとを使用したシーケンスのうちの1つを示す、蛍光スコープ画像である。
【図7】ガイドカテーテルを使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【図8】ガイドカテーテルを使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【図9】ガイドカテーテルを使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【図10】ガイドカテーテルを使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【図11】遠方保護を使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【図12】遠方保護を使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【図13】遠方保護を使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【技術分野】
【0001】
本発明はインターベンショナル手術をシミュレートするための、特に特殊な器具の使用をシミュレートするためのコンピュータ化された装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成人教育の原則、実験学習が必要であるとの見解および専門技術の発展に関する理論は、いずれも学習プロセスにおいて経験が重要な役割を演じることを強調している。これら教育の基礎に基づき、訓練生および実務に従事している医者に必要な学習経験を提供するために、現在の外科および内科医療教育において最先端技術を用いたシミュレーションを上手く取り込んでいる。こうして標準化された学習経験に基づき、不可欠な技能を取得し、かつ特定の能力レベルを得る機会をすべての学習者に提供できる。シミュレーションを使用すると、性能の評価および迅速な個々の詳細なフィードバックを行うことによって学習を促進することができる。シミュレーションは所定の技術水準に達するまで繰り返し学習を可能にする管理された環境を提供し、学習者のストレスレベルを下げ、学習者の信頼レベルを高め、患者に治療を施す前に技術的な能力の達成を保証することにより、実際の環境における安全性を高める。実務に従事している医者は自らの技能を改善し、シミュレーションの使用を伴った教育的な医療行為を通して科学技術の進歩の結果得られた新しい手法を取得できる。更にシミュレーションを使用することを通し、別々に学習し、実務をする機会を訓練生に提供することにより、実際の問題、例えば学部時間に対する要求の問題の解決を助けることができる。アカウンタビリティおよび医療の質の保証に対する現在の要求も、かかるシミュレーションを使用することによって解決でき、結果に関するデータを使って公衆に医者の能力を保証できる。
【0003】
シミュレーションは、技能開発の問題を解決する現在の教育プログラムの重要な部分であると見なさなければならない。シミュレーションは効果的な教育および学習を保証し、学習者の技能の評価の有効かつ信頼できる手段を提供し、改善を必要とする特定の弱点に関する情報を与え、学習者の技能能力の個々のプロ指導セットを形成できる。所望する結果を得るには、成人教育の原則、実験学習および有効なフィードバックに基づき、特定のカリキュラムを開発しなければならない。継続的なプロフェッショナルな教育および認定のプログラムにおいても、かかるシミュレーションを使用することができる。シミュレーションの開発および取得、並びに教育モデルへこれらシミュレーションを有効に組み込んだ訓練プログラムの形成に必要なリソースへの初期投資は、手術室において手術を迅速に実行できるようになること、患者の安全性が高まること、および学習者に種々の技術的技能を教えるのに必要な学部時間を短縮できることから得られる種々の利点によって容易に相殺できる。かかるシミュレーションは、教育努力の有効性を評価すること、訓練のための個人の選抜をすることにも使用でき、従って、シミュレーションは、将来の外科および内科医療教育のプログラムに大きな影響をあたえる潜在力となる。
【0004】
コンピュータ技術の急速な開発の結果、シミュレーション、特に外科および内科医療教育の目的のためのシミュレーションは、相当改善されている。しかしながら、現時点で公知の装置および方法は、使用される異なる器具の全てのシミュレーションを可能にするものではない。
【0005】
先行技術のいずれも本発明に係わる異なる器具をシミュレートするためのヒントを与えたり示唆したりはしていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の好ましい実施例の主な目的は、好ましくは特に心臓血管または血管内診断、またはインターベンショナル治療における自己拡張器具のリアルタイムのシミュレーションをするための、新規で、かつ有効な方法およびシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
制御ユニットと、インターフェースユニットとを備え、前記制御ユニットと前記インターフェースユニットとが通信し、前記インターフェースユニットがインターフェースする少なくとも1つの器具の取り扱いをシミュレートする、インターベンショナル治療シミュレーションシステムにおいて、前記器具は、シミュレートされたベッセル(管)内に挿入される自己拡張ツールであり、前記ベッセルの剛性、前記自己拡張ツールの静止直径、前記ベッセルの初期内径および前記ツールに対するスプリング定数を示す設定値に関してシミュレートされる。1つの好ましい実施例では、前記器具は、ステントである。別の好ましい実施例では、前記器具は、遠方(ディスタル)保護装置である。好ましくは、前記遠方保護装置は、実質的にダブルコーンであり、これらコーンの2つの端部は、ワイヤに取り付けられ、シースによってカバーされている。一方のコーンの遠方部分は、インターベンションシミュレーション中に自由になり得る粒子をキャッチすることをシミュレートするためのネットである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、添付図面を参照し、本発明について更に非限定的に説明する。
【0009】
図1には、本発明に係わるシミュレーション装置の一実施例が略図で示されている。この装置100はコンピュータユニット110と、インターフェースデバイス120とを備える。コンピュータユニット110は従来のPCまたは同様なものでもよいし、またはインターフェースデバイス120が一体化されたユニットでもよい。本実施例に係わるコンピュータユニットは、ディスプレイユニット111と、入力デバイス112、例えばキーボードおよびマウスと、通信インターフェース(図示せず)と通信するようになっている。
【0010】
本出願人による「インターベンショナルシミュレーション装置」を発明の名称とするスウェーデン特許出願第0203568−1号(本願ではこの出願の内容を参考例として援用する)に記載されているインターフェースデバイス120は、多数の器具121〜123を受けるようになっている。本出願人による「インターベンショナルシミュレーション制御システム」を発明の名称とし、スウェーデン特許出願第0203567−3号(本願ではこの出願の内容を参考例として援用する)に記載されている制御システムは、インターベンショナル治療をシミュレートするようになっている。
【0011】
しかしながら、本発明は上記制御システムおよびインターフェースデバイスを含むシステムだけに限定されるものではなく、本発明の教示は自己拡張器具のシミュレーションを行える任意のシステムで使用できる。
【0012】
三次元幾何学形状を次のように異なる方法で構成できる。
− 三次元モデル化ソフトウェア、すなわち解剖学書、ビデオクリップなどを参考としてのみ使用するスクラッチ図から三次元幾何学的形状をモデル化できる。
− 実際の患者のデータ、例えばCT、MRI、超音波、蛍光スコープなどを用いたスキャン130によって得られたデータから、これら三次元幾何学形状を再構成できる。
【0013】
好ましい実施例として、図2に略図で示されたインターフェースデバイス200は多数の器具、ダミーの器具または実際の器具、好ましくは少なくとも2つの器具を受けるようになっている。このデバイスは器具の数に対応した数の可動キャリッジ216A〜216Cと、共通トラック220と、入れ子式チューブとして設けられた相互接続部材226とを含む。相互接続部材226は、キャリッジ216A〜216Cを直列に相互接続している。各キャリッジには器具を受けることができるようにするための開口部が設けられており、各キャリッジ216A〜216Cは更に、器具のうちの少なくとも1つを受け、かつロックするための部材と、器具からの運動を受け、力を発生するための部材とを備え、力はシミュレーション特性に関して器具にフィードバックされるようになっている。各キャリッジは相互接続部材に挿入される器具のタイプを検出するための検出機構を含むことが好ましい。インターフェースデバイスは、制御ユニット(PC)に接続されており、各キャリッジの運動を測定すると共に速度レギュレータおよび距離レギュレータによって運動を調節するようになっている。各キャリッジはトラック220に沿って駆動するためのギアベルト変速機に接続されており、各キャリッジにはトルクホイールに配置されたクランクブロックが設けられている。このクランクブロックには嵌合表面が設けられており、この嵌合表面は器具のワイヤをグリップするコレットに向かって押圧されている。更に各キャリッジには出口が配置されており、この出口にはキャリッジ内に器具が存在することを検出する検出部材が設けられている。この検出部材は各器具の厚みを検出するようになっている。光センサはキャリッジ内に器具が存在することを検出し、制御ユニットは器具の長手方向の運動および回転運動を測定し、受けた力およびトルクに従って器具の長手方向および回転方向の力のフィードバックを行う。ロッキング部材は、器具をクランプするようになっており、この器具は中心壁に取り付けられている。ロッキング部材は、中心壁に配置されたトルクホイールを備える。トルクホイールの内部にはクランクブロックが取り付けられており、このクランクブロックは長手方向に移動する。このクランクブロックは回転方向に固定されている。
【0014】
このシステムは異なるタイプの自己拡張ツールが作動する態様をシミュレートするようになっている。この自己拡張ツールはツール自身とカバーシース(チューブ)とから成る。シースが引っ込められるにつれ、ツール自身は“自然な”形状に拡張する。一部のケースでは、シースを元通りに押戻し、ツールを再びカバーするようにもできる。
【0015】
実施例1: 自己拡張可能なステント
ステントはワイヤの先端で延びる中空チューブの頂部に押圧されており、シースによってカバーされている。このステントは下方のチューブには取り付けられていない。カバーシースが引っ込められると、ステントは次第に開口し、所定の直径(ベッセル内ではこの直径は最大となり、ベッセルの壁がステントを押圧する場合にはより小さくなる)となる。シースが完全に引っ込められると、ステントはシースおよび下方のチューブから完全に外れ、ベッセルの壁に押圧される。現在、ステント自身を回収する方法はない。
【0016】
実施例2: 遠方保護装置(DPD)
図3に示されたDPD30はシース(図示せず)にカバーされた“ダブルコーン”31および32からなり、2つの端部にワイヤが取り付けられている。この“コーン”の遠方部分は微細ネット31であり、このネットはインターベンション中に自由になり得る粒子をキャッチするように取り付けられている。この“コーン”の近接部分は完全に開口している。シースが引っ込められると、コーンはその“自然な”形状−すなわち中間部が最も広い形状となる。“コーン”は下方のワイヤに取り付けられているので、シースを押し戻し、再び“コーン”をカバーできる。
【0017】
次に、発明を限定しない多数の例により、本発明について説明する。
【0018】
図4乃至図6は自己拡張器具、本例では自己拡張ステントのシーケンスを示す。自己拡張可能なステントの場合、これらステントはシースによってカバーされており、シースが引っ込められると、ステントは所定のサイズまで拡張する(しかしながら、ステントがベッセルの壁に衝突すると、ステントの最終的なサイズはベッセルの“剛性”およびステント自身の性質に応じて決まる)。ステントの性質、ステントが拡張する態様およびステントがベッセルに与える影響の双方が、視覚的にシミュレートされる。後で“通常の”バルーンによってベッセルを後膨張させることもできる。図4では自己拡張可能なステントはベッセル内の所定位置にあるが、設置されているわけではない。図5ではステントをカバーするシースが部分的に引っ込められており、図6ではシースは完全に引っ込められ、ステントは設置状態にある(器具には接続されていない)。シミュレータプログラムは多数の初期値、すなわち自己拡張器具の拡張直径のうちの静止拡張直径、(シミュレートされた部分における)ベッセルの初期内径、自己拡張器具に対するスプリング定数およびベッセルの剛性を有する。これらパラメータはシミュレータが器具およびベッセルの(シミュレートされた部分の)膨張に対する境界をどのように設定するかを定める。シースが使用されている場合も、その直径を初期化しなければならない。
【0019】
バルーンとステントを同じように使用することもできる。バルーン(ステントも同様)は拡張するベッセルと相互作用する。造影剤を注入すると、血流が変化する。ステントを見ることができるように、ステントをシミュレートし、バルーンが収縮する際に、ステントは所定場所に留まる。より大きなバルーンと共にステントを進入させ、再びバルーンを膨張させることもできる。このことはステントとベッセルの双方に影響を与える。いわゆる後膨張である。最初にステントを使用する前に、まずバルーンを膨張させることもできる。いわゆる前膨張である。よって“大きな”バルーンと共に進行する際に固定された病巣が感じられるように、力のフィードバックを使用することによりシミュレーションを行う。
【0020】
右または左の冠状ベッセルツリーにアクセスするために、まずガイドカテーテルおよびガイドワイヤを前進させるように、図7乃至図10に示された手順を実行する。次に病巣/狭窄部を発見するためにカテーテルを通して造影剤を注入する。病巣を完全に可視化するために、像を変えることができる。長さおよび幅を測定するために、別個のQCA(定性的Cアセスメント)プログラムが使用するよう、画像を送ることもできる。次にユーザは、自分がどのサイズのバルーン/ステントを使用したいかを決定できる。(一般にバルーンの膨張/ステント使用の前後で、いくつかのシネループを記録する。)最初にカテーテルに細いガイドワイヤ(冠状ワイヤ)を挿入し、次にベッセルツリー内に挿入する。ワイヤの先端は(ユーザが選択できる)所定の角度の形状とすることができ、ワイヤを回転したり、引っ張ったり、押したりして、病巣を通過する正しい場所を探すようにベッセルツリーを通過するようにワイヤを操縦する。次に、ワイヤの頂部へバルーン/ステントを前進させ、放射線不透性マーカーを使って正しい位置に位置決めする。バルーン/ステントが正しい場所にあることを確認するために造影剤を注入できる。最後に、バルーン/ステントを膨張させ、所定の時間の間、この状態を保持し、次に収縮させる。すべてのステップはシミュレートされ、実際に行っているように実行することが出来る。
【0021】
遠方保護装置は栓子が移動し(脳内で破裂し得る)毛細血管を閉塞するのを防止する。ワイヤに取り付けられ、最初にシースによってカバーされたフィルタ“バスケット”を使用することが出来る。病巣を通過したところにワイヤおよびシースを位置決めし、次にシースを引っ込め、病巣が膨張したときのための保護としてバスケットを残す。その後、回収シースを前進させ、バスケットを閉じ、両者を共に後退させる。遠方保護装置をどのように扱うか、および視覚的な特徴を含む遠方保護装置のふるまいがシミュレートされる。他のタイプの保護装置をシミュレートすることもできる。例えば、膨張時に血流をブロックするバルーンをシミュレートすることもできる。図11乃至図13にはこれらのシーケンスが示されている。
【0022】
図11は遠方保護装置がベッセル内の所定位置にあり、シースカバーフィルタが部分的に後退している状態を示す。
図12はシースが引っ込められ、“拡張し”始めたフィルタの“ベース”にあるマーカーを示している。
図13は更に引っ込められたシースを示している。
【0023】
このケースにおけるフィルタ自身は蛍光スコープ画像では見ることができないことに留意されたい。マーカーポイントしか見ることができない。フィルタはワイヤに接続された状態のままであるので、上記シーケンスを反転させることもできる。
【0024】
本発明は示された実施例だけに限定されるものでなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、多数の態様をとることができる。本発明の装置および方法は用途、機能ユニット、ニーズおよび要件などに応じて種々の態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例に係わるブロック図を示す略図である。
【図2】インターフェースデバイスの略図である。
【図3】シミュレートされる器具の略図である。
【図4】バルーンとステントとを使用したシーケンスのうちの1つを示す、蛍光スコープ画像である。
【図5】バルーンとステントとを使用したシーケンスのうちの1つを示す、蛍光スコープ画像である。
【図6】バルーンとステントとを使用したシーケンスのうちの1つを示す、蛍光スコープ画像である。
【図7】ガイドカテーテルを使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【図8】ガイドカテーテルを使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【図9】ガイドカテーテルを使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【図10】ガイドカテーテルを使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【図11】遠方保護を使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【図12】遠方保護を使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【図13】遠方保護を使用したシーケンスの1つを示す蛍光スコープ画像である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御ユニットと、インターフェースユニットとを備え、前記制御ユニットと前記インターフェースユニットとが通信し、前記インターフェースユニットがインターフェースする少なくとも1つの器具の取り扱いをシミュレートする、インターベンショナル治療シミュレーションシステムにおいて、
前記器具は、シミュレートされたベッセル(管)内に挿入される自己拡張ツールであり、前記ベッセルの剛性、前記自己拡張ツールの静止直径、前記ベッセルの初期内径および前記ツールに対するスプリング定数を示す設定値に関してシミュレートされることを特徴とする、インターベンショナル治療シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記器具がステントであることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記器具が遠方保護装置であることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記遠方保護装置(30)が、実質的にダブルコーン(31、32)からなり、これらコーンの2つの端部がワイヤ(33)に取り付けられ、シースによってカバーされていることを特徴とする、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
一方のコーンの遠方部分が、インターベンションシミュレーション中に自由になり得る粒子をキャッチすることをシミュレートするためのネット(31)であることを特徴とする、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
制御ユニットと、インターフェースユニットとを備え、前記制御ユニットと前記インターフェースユニットとが通信し、前記インターフェースユニットがインターフェースする少なくとも1つの器具の取り扱いをシミュレートする、インターベンショナル治療シミュレーションシステムにおけるシミュレート方法において、
シミュレートされたベッセル内に挿入される自己拡張ツールとして前記器具を提供するステップと、
前記ベッセルの剛性、前記自己拡張ツールの静止直径、前記ベッセルの初期内径および前記ツールに対するスプリング定数を示す設定値に関して、前記器具をシミュレートするステップとを備えたことを特徴とする方法。
【請求項1】
制御ユニットと、インターフェースユニットとを備え、前記制御ユニットと前記インターフェースユニットとが通信し、前記インターフェースユニットがインターフェースする少なくとも1つの器具の取り扱いをシミュレートする、インターベンショナル治療シミュレーションシステムにおいて、
前記器具は、シミュレートされたベッセル(管)内に挿入される自己拡張ツールであり、前記ベッセルの剛性、前記自己拡張ツールの静止直径、前記ベッセルの初期内径および前記ツールに対するスプリング定数を示す設定値に関してシミュレートされることを特徴とする、インターベンショナル治療シミュレーションシステム。
【請求項2】
前記器具がステントであることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記器具が遠方保護装置であることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記遠方保護装置(30)が、実質的にダブルコーン(31、32)からなり、これらコーンの2つの端部がワイヤ(33)に取り付けられ、シースによってカバーされていることを特徴とする、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
一方のコーンの遠方部分が、インターベンションシミュレーション中に自由になり得る粒子をキャッチすることをシミュレートするためのネット(31)であることを特徴とする、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
制御ユニットと、インターフェースユニットとを備え、前記制御ユニットと前記インターフェースユニットとが通信し、前記インターフェースユニットがインターフェースする少なくとも1つの器具の取り扱いをシミュレートする、インターベンショナル治療シミュレーションシステムにおけるシミュレート方法において、
シミュレートされたベッセル内に挿入される自己拡張ツールとして前記器具を提供するステップと、
前記ベッセルの剛性、前記自己拡張ツールの静止直径、前記ベッセルの初期内径および前記ツールに対するスプリング定数を示す設定値に関して、前記器具をシミュレートするステップとを備えたことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−509238(P2006−509238A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557050(P2004−557050)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001892
【国際公開番号】WO2004/051603
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505205775)メンティセ アクチボラゲット (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001892
【国際公開番号】WO2004/051603
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505205775)メンティセ アクチボラゲット (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]