インターロイキン−2の中和能を有する免疫治療用製剤
本発明は癌に関係して用いることができ、インターロイキン−2(IL−2)のインターロイキン−2レセプターへの結合を遮断する医薬製剤に関する。より詳細には、本発明はアジュバントであるモンタニドISA 51中でIL−2を髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)の輸送タンパク質P64kに結合させることにより、IL−2のIL−2レセプターへの結合を遮断する自己抗体の誘導のための、IL−2の免疫原性を増強することができる治療用製剤に関する。発明はまた、乳癌を含む腫瘍の治療に有効な方法に関する。本発明はさらに、IL−2に基づくワクチンと、腫瘍の特異性抗原又は腫瘍成長因子に基づく他の癌ワクチン、並びに伝統的に腫瘍学の診療で用いられる放射線療法又は化学療法剤との治療的な組合せに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン−2(IL−2)に対する免疫応答を増強でき、且つレセプターとの結合を阻害し、腫瘍治療に有用な自己抗体を上昇させる医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍抗原を認識する免疫系及び特にT細胞の能力の発見は、癌患者治療を目的とする免疫系操作に関する戦略の開発のための主要な柱の1つである。
【0003】
したがって、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)として知られている腫瘍間質へ浸潤している特異的なT細胞、又は無処置の個体の末梢血液に由来するか、又は治療用癌ワクチン使用後の末梢血液に由来する特異的なT細胞を回収する方法を開発するために、in vivoで特異的なT細胞を刺激してその抗腫瘍性エフェクター能を増強することに対して、主な努力が向けられてきた。
【0004】
したがって、主な戦略は、様々な腫瘍関連抗原(TAA)に対するT細胞の特異的な細胞毒性活性を増強することに向けられてきた。次いで、主な治療的アプローチは、腫瘍を有する個体由来のTILを活性化し、増加させるためにインターロイキン−2(IL−2)をin vitroで使用し、これらの個体にこれらの細胞を再注入することに焦点が当てられている(Rosenberg、S.A.ら、(1986)Science 233,1318〜1321;Kawakami、Y.ら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,6458〜6462;Kawakami、Y.ら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,3515〜3519)。しかしながら、in vitroで細胞性免疫応答の刺激が証明されたにもかかわらず、そのような介入は限られた治療成績しか有していない。その結果、in vivoで有効な細胞性免疫応答の誘発を促進させるために、IL−2に関連する腫瘍抗原を含むワクチンベクターを設計して、治療用癌ワクチンを用いる活性のある特異的免疫プロトコールの使用に基づく治療様式の評価することになったが、これらの方法は不十分な結果を与えた(Rosenberg,S.A.,ら、(1998)Nat.Med.4,321〜327)。
【0005】
現在では、主要な臨床的な戦略は、患者由来の患者自身の腫瘍抗原に反応性のT細胞の養子移入に基づく様式の開発に移行している。これらの細胞を、抗CD3モノクローナル抗体(mAb)及びIL−2を用いてin vitroで刺激して増加させ、血流へ再注入した後に、IL−2を非経口投与する。この方法は、癌患者治療に関して考えられる主要な治療的介入の1つを構成するが、治療結果は控えめにとどまる(Dudley,M.E.,ら、(2002)Science 298,850〜854;Rosenberg,S.A.ら、(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101 Suppl.2,14639〜45)。
【0006】
全てのこの治療戦略の合理的な設計は、抗腫瘍性免疫応答の細胞活性化における必須な分子としてのインターロイキン−2の使用に基づいている(U.S.6,060,068及びU.S.5,830,452)。
【0007】
免疫におけるIL−2の機能に関する背景は、in vitroで実施される実験に基づいている。その発見からIL−2はT細胞増殖を促進する能力によって認識された(したがって、IL−2アクロニムは、T Cells Growth Factor(T細胞成長因子)である)。in vitroでのT細胞の増殖と機能の更なる証明は、この概念を確認した抗IL−2又は抗IL−2レセプターを用いて抑制できることである(Smith,KA.Immunol.Rev.51:337〜357,1980)。
【0008】
最近、抗腫瘍免疫のサプレッサー能力を有するT細胞の生成を介して、ヒト腫瘍が免疫系の応答を減少させうることが実験的に証明された。分化マーカーの関連性は実験モデルとは異なるが、これらの細胞は異なる分化マーカーを提示する動物モデル及び患者で特徴づけられた(Bach,J.F.(2003)Nat.Rev.Immunol.3,189〜198;Chakraborty,N.G.,ら、(2004)Hum.Immunol.65,794〜802;Markus,Y.M.y.Sykes,M.(2004)J.Clin.Oncol.22,1136〜1151)。
【0009】
分化抗原群25(CD25)は、IL−2レセプターのα鎖を構成する。また、このサイトカインに対するレセプターの構造は、ベータ(CD122)及びガンマ(CD132)鎖を含んでいる。それらは静止期にあるTリンパ球で構成的に発現し、これらの細胞が活性化されると、アルファ鎖の合成、高親和性ヘテロ3量体レセプターの形成及びIL−2分泌が誘導される。CD25は、CD4+ Tリンパ球の5〜10%及び末梢のCD8+Tリンパ球の1%未満で構成的に発現している。これらの細胞はアネルギー性であり、in vitroでサプレッサー活性を示す(Shevach,E.M.(2002)Nat.Rev.Immunol.2,389〜400)。
【0010】
他の実験腫瘍はこの治療に難治性であるが、一部の実験腫瘍で抗CD25 mAbの受動的投与により、抗腫瘍性応答が誘導されることが最近実証された(Onizuka,S.ら、(1999)Cancer Res.59,3128〜3133)。
【0011】
自己分子、特に成長因子などの可溶性分子に対しする応答を誘導する免疫系の能力は限定される。それにもかかわらず、担体タンパク質に結合させアジュバントで乳化したこれらの因子を用いた能動免疫により、これらの分子に対する免疫応答の誘導が促進される(U.S.5,984,018)。自己由来又は異種の分子に対して産生された特異的自己抗体は、それらの因子のレセプターへの結合を阻害し、この結合により誘発される増殖機構を遮断する。
【0012】
それらの結果から、抗腫瘍性応答はIL−2の存在に依存することは最高水準の技術として認められる。したがって、我々は、アジュバント中の担体分子に結合したIL−2を用いる能動免疫により誘導される抗IL−2自己抗体の、in vivoでの腫瘍発展に及ぼす影響を特徴づけることに決定した。
【0013】
意外にも、抗CD25 mAbの受動的投与により誘導される抗腫瘍効果に耐性の腫瘍でさえも、IL−2のIL−2レセプターへの結合を遮断する自己抗体の誘導は、腫瘍増殖の減少を促進する。さらに、そのような自己抗体の存在は、治療を受ける対象で癌ワクチンに対する免疫応答に影響を及ぼさない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、対象の免疫系の役割が重要である腫瘍治療で効果を有する治療用製剤に関する。特に、本発明は、インターロイキン−2のインターロイキン−2レセプターへの結合を遮断し、腫瘍増殖を阻害する自己抗体を産生できる免疫治療用製剤の生成を含む。
【0015】
本発明の目的は、癌患者治療で有用な、IL−2のIL−2レセプターへの結合を阻害する治療用製剤であって、この製剤は担体タンパク質に結合されたIL−2又はそのペプチドを含み、さらに適切なアジュバントを含む。特に、本発明の治療用製剤は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の担体タンパク質P64kを含み、アジュバントは水酸化アルミニウム及びモンタニドISA 51からなる群から選択される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施態様では、治療用製剤は化学的結合によりP64kに結合したIL−2を含む。本発明の他の実施態様において、製剤は融合タンパク質中のIL−2又はそのペプチド及びP64kを含む。
【0017】
また、インターロイキン−2のインターロイキン−2レセプターへの結合を阻害する、癌を有する個体の治療に有効な、ヒトIL−2(hIL−2)に対し特異的モノクローナル抗体を含む治療用製剤は、本発明を構成する。
【0018】
また、腫瘍に対して適切な免疫応答の誘発するためにIL−2のそのレセプターへの結合を遮断することを必要とする、IL−2又はIL−2に対する抗体を含むワクチンの組成物の投与を含む癌患者の治療法が、本発明の目的である。
【0019】
他の態様において、本発明は特異的腫瘍抗原又は腫瘍増殖因子に基づく癌の他のワクチン及び現在通常に使用する化学療法剤若しくは放射線療法とIL−2に基づくワクチンとの治療的組合せについて説明する。
【0020】
用語「治療的組合せ」とは、別々の及び分離した組成(試薬の計画形式の例(example in form of games of reagents))としての2つの構成成分の組合せに関し、これらの成分が患者の治療に組み合わせて用いられる場合の物理的な組合せ(すなわち混合物の形態)を意味する。したがって、薬剤の組合せとは、治療のコースの間、同じ患者への2つの化合物の投与、又は独立した用量投与によるのと同程度の物理的な組合せによる用量投与を含む治療スケジュールにおける薬剤の有用な組合せである。
【0021】
用語「癌ワクチン」とは、そのワクチンが対象の服従治療においてワクチンに用いられた抗原を認識し、測定可能な免疫応答を生じるような能動的免疫療法における有用な薬剤を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
1.− 免疫原性組成物の入手
本発明のワクチン組成物は、担体タンパク質、好ましくは髄膜炎菌P64kの外膜複合体由来のタンパク質に結合させた、ヒト組換え型インターロイキン−2(hIL−2r)を有効成分として含む(0474313 EP A2及びU.S.5,286,484)。さらに、このワクチン組成物は、適切なアジュバントを含む。本発明のワクチン組成物は、アジュバントとしてモンタニドISA 51を用いるのが好ましい。
hIL−2r及び担体タンパク質間の結合は、化学的結合又は遺伝子工学の技術により得られる融合タンパク質の作製により可能である。
【0023】
− 化学的結合によりP64kタンパク質に結合したhIL−2rを含むワクチン組成物の入手
hIL−2r及びP64kタンパク質間にタンパク質結合を達成するために、両成分を様々な割合、20:1から5:1(P64kタンパク質のモルに対するhIL−2rのモル)まで、好ましくは10:1(P64kタンパク質のモルに対するhIL−2rのモル)で混合する。グルタルアルデヒドを、0.02%及び0.1%間にある、好ましくは0.5%の最終濃度でこの混合物に添加し、室温(RT)で1〜5時間インキュベートする。最後に、これをリン酸塩緩衝食塩水(PBS)溶液中で充分に透析した。
結合反応は、10%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により確認した(Laemmli UK (1970)Nature 277,680〜685)。
【0024】
− hIL−2r及びP64kタンパク質間の融合タンパク質を含むワクチン組成物の入手
ヒトIL−2(447pb)をコードする遺伝子を、特異的プライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により増幅する。得られたDNAフラグメントを消化し、生じたタンパク質が両分子の1コピー又はそれ以上を含むように、担体タンパク質をコードする遺伝子をクローニングする発現ベクターの特異的結合部位に結合させる。哺乳動物細胞及び細菌又は酵母菌の任意の発現ベクターを用いることができる。またベクターは、担体タンパク質のN末端に、6つのヒスチジンを含むことができる。得られたプラスミドは、アガロースゲル電気泳動での制限酵素分析、酵素シークエンス2,0(the enzyme Sequenace 2,0)(Amersham−USB)を用いるDNA塩基配列分析、及び最後に特異的抗hIL−2モノクローナル抗体を用いる「ウエスタンブロット」法で、大腸菌の任意の発現株で融合タンパク質産物の分析により確認する。タンパク質を得るために、細菌壁を強い破断方法を用いて破壊後、タンパク質を硫酸アンモニウムによる差次的な沈殿法とクロマトグラフィー法の組合せにより精製する。最後に、タンパク質を無菌条件下で濾過し、後に使用するまで−20℃で保存するか又は凍結乾燥して4℃で保存する。
【0025】
− P64kタンパク質に化学的に結合したか又は融合タンパク質として結合したhIL−2r由来ペプチドを含むワクチン組成物の入手
IL−2のアミノ酸配列由来の化学合成により得たペプチドを、P64kタンパク質に、U.S.5,984,018で記載されているように化学的結合により結合できる。或いは、hIL−2r及びP64kタンパク質由来のペプチドの融合タンパク質は、前節に記載のものと同じ方法により本質的に得られる。実施例は下記の領域からのペプチドを含むことができる。すなわち、
1)ペプチド N33−A50
アミノ酸番号:18
配列: NPKLTRMLTFKFYMPKKA
2)ペプチド T113−T133
アミノ酸番号:21
配列: TIVEFLNRWITFCQSIISTLT
【0026】
− hIL−2r−P64k化学的結合体の電気泳動
この電気泳動は、10%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により実施できる(Laemmli U.K.(1970)Nature 277,680〜685)。電気泳動では、1ウェル当たり15μgの試料を適用し、クーマシーで染色する。
【0027】
2.− hIL−2r及びタンパク質P64kを含むワクチン組成物のもたらす効果の特徴づけ。前臨床試験
− ワクチン組成物の免疫原性
動物で本発明のワクチン製剤の免疫原性を試験するために、生後8〜12週目の体重18〜20gの雌BALB/cマウスを使用した。実験の間、マウスを実験動物優良飼育及び使用基準に従い標準作業手順書(SOP)により定められた給餌及び処置の標準条件で飼育した。
【0028】
これは次の種々の免疫化のスケジュールに従うことができる。
− スケジュールA、hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチン、0.1mL中に結合したhIL−2rの4μg当量の4用量を、肢の免疫部位を交互に換えて、2週間ごとに筋肉内投与する。
− スケジュールB、hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチン、0.1mL中に結合したhIL−2rの10μg当量の4用量を、筋肉内投与する。最初の2用量は、2つの肢の独立した免疫部位に同時に投与し、2週間後に2用量を別の2つの肢に投与する。
【0029】
− hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンにより誘導されたhIL−2rに対する抗体応答の評価
特異的抗体又はB細胞を測定することにより、遮断抗体を測定するか又は末梢血液で特異的免疫応答を評価する最高水準の技術で利用可能な方法の1つにより、自己抗体力価を血清で検出できる。
hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンにより誘導される抗hIL−2r抗体は、免疫した動物の血清を用いる、以下に記載の間接ELISA(酵素結合抗体免疫吸着アッセイ)により評価できる。
96穴平底マイクロタイタープレート(Costar,High Binding,USA)は、0.1M炭酸塩−重炭酸塩pH9.6溶液中で10μg/mLの濃度に調製したhIL−2r(50μL/ウェル)を含む。プレートを4℃で終夜インキュベートし、0.05%のTween 20を含むPBS(PBS−Tween 20)を用いて200μL/ウェルで2回洗浄した。100μL(1%ウシ血清アルブミン(PBS−BSA 1%)を含む)/ウェルで37℃で1時間インキュベート後、プレートをPBS−Tween 20(200μL/ウェル)で洗浄し、PBS−BSA1%中、異なる希釈の血清試料50μL/ウェルを添加する。37℃で1時間インキュベート後、プレートをPBS−Tween 20で洗浄し、PBS−BSAで1/5000に希釈したアルカリホスファターゼ結合ヒツジ抗マウス血清(Jackson Immunoresearch Laboratories)を50μL/ウェルで添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、pH9.8、ジエタノールアミン緩衝液中にp−ニトロフェニルリン酸(Sigma)1ng/mLを含む基質溶液を50μL/ウェルで添加する。室温(RT)で30分プレートをインキュベートした後に、反応産物の吸光度を405nmで、ELISAリーダー(Organon Teknika,Austria)で測定する。
【0030】
− EGFに基づくワクチンにより誘導された抗hEGF抗体応答の評価
B細胞又は特異的抗体を測定することにより、遮断抗体を測定するか又は末梢血液で特異的免疫応答を評価する最高水準の技術で利用可能な方法の1つにより、自己抗体力価は血清で検出できる。
Gonzalez、G.、ら、(2002)Vaccine Research 5,233〜244で記載されているように、EGFに基づくワクチンにより誘導される抗hEGF抗体を、免疫した動物の血清を用いる間接ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)により評価できる。
【0031】
− hIL−2−P64k/モンタニドISA 51をワクチン接種した動物からの血清又はhIL−2rに対する特異的モノクローナル抗体(mAb)と共にインキュベーションした後のCTLL−2細胞系の増殖に及ぼす効果
IL−2依存性T細胞系CTLL−2を、連続的増殖下で、hIL−2hの1U/mLを含むRPMI−1640培地に保持する。CTLL−2の培養を、細胞懸濁液中0.5×105〜106細胞/mLと共に8〜20%のウシ胎児血清(FCS)を含むRPMI−1640が25mL入っている75cm2細胞培養フラスコで実施する。細胞はin vitroでの増殖の2日後に使用する。
アッセイを実施するため、細胞をin vitro培養から採取し、RPMI−1640又はPBSで少なくとも4回洗浄する。96穴平底培養プレート(Costar,High Binding,USA)へ、5×103細胞を播種する。これらの細胞を、hIL−2−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫した動物からのIL−2に対するELISA力価が1:10000の希釈血清又は抗IL−2特異的mAbで処理し、hIL−2r(1U/mL)を添加する。培養を5%CO2インキュベーターで、37℃の湿潤な空気中で24時間実施する。培養の最後の18〜24時間に[3H]チミジン(1μCi/ウェル)をパルスすることにより増殖を測定した。チミジン取り込みは、液体シンチレーションカウンターで測定する。全ての操作は、無菌状態で実施する。
【0032】
3− hIL−2−P64k/モンタニドISA 51ワクチンの抗腫瘍効果。前臨床試験
本発明のワクチンの製剤の抗腫瘍効果を動物で試験するために、生後8〜12週間目の体重18〜20gの雌BALB/cマウスを使用した。動物はすでに詳述したスケジュールA及びBに従って、hIL−2−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫可能であり、1週後に乳癌F3IIのような腫瘍細胞系を、5×104細胞/動物で、同所性に皮下投与経路で接種する。触知可能な腫瘍を有するマウスを陽性と記録し、腫瘍増殖はカリパーを用いて測定し、最長の表面距離(a)及びこれに対して垂直な幅(b)を規定し、腫瘍サイズはa×bとして記録した。腫瘍は定期的に調べる。
驚くべきことに、予想外にも、本発明の著者らは、悪性腫瘍を有する対象で、IL−2のIL−2レセプターへの結合中和、この腫瘍に対する免疫応答が増強され、腫瘍サイズの減少を誘導することを見出した。以前の技術の状態は、そのような処置は腫瘍に対する個体の免疫系の応答の抑制を生じるであろうことを示していた。
減少が抗IL−2モノクローナル抗体で受動的治療を受けて得られる場合と同様に、対象が本発明のワクチンの組成物による能動的治療を受けている場合、循環血中のIL−2濃度が実質的に低下する場合、本著者らは腫瘍増殖に及ぼすこの効果が得られることを見出した。
その理由のために、本発明は悪性腫瘍患者の治療のために結果として否定できない利益になり、且つ、これらの場合用いられる通常の治療よりも患者にとってはるかに不快でなく積極的で有効で簡単なIL−2によるワクチン投与法を提供する。
下記の実施例は、本発明の対象のワクチン組成物の免疫学的有効性を例証する実験の詳しい説明を含む。
【実施例】
【0033】
本発明のワクチン組成物で用いられるヒト組換え型IL−2(hIL−2r)は市販のものであった:(U.S.5,614,185)。
ワクチンで用いた髄膜炎菌由来のタンパク質P64kは、EP 0474313A2及びU.S.5,286,484で記載される組換えDNA技術により得た。
【0034】
(実施例1)
hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンにより誘導された抗体応答
ヒトインターロイキン−2に対する免疫原性を増進するために、ヒトインターロイキン−2を、髄膜炎菌由来の担体タンパク質P64kタンパク質に化学的に結合した。化学的結合は、グルタルアルデヒド法により行うことができる(U.S.5,984,018)。10%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、各成分の試料(hIL−2r、P64k)を別々に添加し、化学的結合体hIL−2r−P64kと分子量の標準パターンを比較して結合効率が確認される。hIL−2r−P64kを添加したレーンで連続的に存在するため、得られた結合型を確認することは可能である(図1)。
hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンにより誘導されたhIL−2rに対する抗体応答を評価するために、BALB/cマウスを、スケジュールA及びBで免疫した。hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンに応答した動物からの高度免疫血清を陽性対照として用い、免疫前血清を陰性対照として用いた。血清の吸光度が、免疫前血清の吸光度の平均値プラス5倍の標準偏差より大きい最大希釈を、免疫した動物の抗体力価と定義した。対照動物で力価を定義するため、陰性対照として免疫前血清の代わりにPBS−BSA1%を用いた場合を除き、同じ先の判定基準を用いた。
1:100から1:50000まで力価が達する抗体応答が誘導された。この免疫プロトコールは約52日間続く、その理由は短期間に同程度であるか又はより高い抗体力価を得るためにプロトコールを改変する必要があり、したがって我々はスケジュールBを用いて図2に示すように同程度の結果を得た。
【0035】
(実施例2)
hIL−2−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫した動物由来血清で処理したCTLL−2細胞系の増殖試験
hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫した動物で産生される血清抗体のin vitroでのIL−2結合能は、血清抗体と共にIL−2依存性T細胞系CTLL−2を培養することにより評価した。CTLL−2細胞をIL−2の存在下で培養プレートに播種して増殖させ、約1:10000抗体力価を有する動物からの種々の希釈血清を添加した。血清濃度とCTLL−2細胞系増殖の阻害の間に、直接的相関が認められた(図3)。この血清は、ワクチン接種した動物由来の血清のin vitroでのIL−2中和能力を実証する。
【0036】
(実施例3)
hIL−2−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで処置した動物における抗腫瘍性の実験
スケジュールBに従い、動物をhIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫した。1週間後に、動物を5×104 F3II腫瘍細胞に曝露した。腫瘍増殖カイネティクスは、PBS−P64k/モンタニドISA 51で免疫した対照群と比較して、hIL−2r−P64k/モンタニドISA51で免疫した動物でより緩慢であった(図4a)。これら2群間の腫瘍サイズに統計有意差が認められた。
【0037】
(実施例4)
抗IL−2特異的mAbで処理したCTLL−2細胞系の増殖試験
S4B6(ATCC # HB−8794)ハイブリドーマにより産生されたhIL−2rに対する特異的抗体のin vitroでのIL−2結合能を、IL−2依存性T細胞系CTLL−2と共にそれらを培養することにより評価した。CTLL−2細胞を、IL−2存在下で培養プレートに播種して増殖させ、種々の希釈抗体を添加した。抗体濃度とCTLL−2細胞系増殖の阻害の間に、直接的な相関が認められた(図5)。モノクローナル抗体のin vitroでのIL−2中和能力を実証する、1:100希釈抗体によりCTLL−2細胞系増殖を80%以上阻害できることが見出された。
【0038】
(実施例5)
抗IL−2 mAb及び抗CD25 mAb(ATCC−PC61)の抗腫瘍効果、F3II実験モデル(乳癌)
マウスを、日用量1mgの特異的モノクローナル抗体(抗CD25 mAb又は抗IL−2 mAb)を、連続して5日間投与した。2日後に皮下同所性注射により、マウスを実験的乳癌F3IIに5×104細胞/マウスで曝露した。最長の表面距離(a)及びこれに対して垂直な幅(b)を定期的に測定した。対照群の腫瘍サイズ(PBSを投与した)は、抗IL−2 mAbを投与した群よりも大きかった(図6)。2つの実験群間の腫瘍サイズは統計的に相異した。しかしながら抗CD25 mAb(ATCC―PC61)を投与した動物の腫瘍サイズは、対照群と同程度であった。この結果はCD25制御細胞の除去が影響を与えない腫瘍においてさえも、IL−2中和抗体は強い抗腫瘍効果を有することを示す。
【0039】
(実施例6)
抗IL−2 mAb及び抗CD25 mAb(ATCC−PC61)の抗腫瘍効果。EL4実験モデル(リンパ腫)
C57BL/6動物を、EL4リンパ腫(5×104細胞/マウス)に皮下で曝露した。動物に抗CD25 mAb(PC61)の1mgの1用量を、腫瘍への曝露の2日前に静脈内投与するか、又は抗IL−2 mAb(S4B6)の1mgの日用量を、腫瘍接種の6日前に開始して連続5日間静脈内投与した。別の群は、以前に記載した同様のスケジュールに基づき抗CD25及び抗IL−2 mAbsを同時投与した。
マウスの各群の腫瘍増殖を記録した。腫瘍へ曝露後毎週2回、各マウスにおける腫瘍サイズを、2つの垂直な大きさで測定した。EL4腫瘍に関する統計的差異は、*p=0.0232(**p=0.0039)、***p<0.0001である。
図7は、2つのモノクローナル抗体の組合せが、腫瘍増殖に及ぼす最も強い効果を有することを示す。
【0040】
(実施例7)
自己抗体抗IL−2の誘導は、EGF癌ワクチンに対する応答に影響を及ぼさない
hEGF−P64k/モンタニドISA 51ワクチンにより誘導されるhEGFに対する抗体応答が、自己抗体の誘導を伴うhIL−2rによるその前のワクチン投与により影響を受けるかどうかを評価するために、BALB/c動物をスケジュールAに従いhIL−2r−P64k/モンタニドISA 51で調製したワクチンで免疫し、19日後にhEGF−P64k/モンタニドISA 51又はhEGF/モンタニドISA 51で調製したワクチンで免疫した。hEGFのワクチンで免疫した全ての実験で、0.1mLの量で調製したワクチンに結合したhEGFの4μg当量を筋肉内経路で投与した。hEGF−P64k/モンタニドISA 51ワクチンに応答した動物の高度免疫血清を、陽性対照として用い、陰性対照には免疫前血清を用いた。血清の吸光度が、免疫前血清の吸光度の平均値よりさらに5倍標準偏差より大きい最大希釈を、免疫した動物の抗体力価と定義した。対照動物で力価を定義するため、陰性対照として免疫前血清の代わりにPBS−BSA1%を用いた場合を除き、同じ先の判定基準を用いた。EGF/モンタニドISA 51又はhEGF−P64k/モンタニドISA 51によるワクチン接種により誘導されるEGFに対する抗体の力価は、図8で示すように、hIL−2rに対する自己抗体の誘導によっては影響を受けないことが得られた。
【0041】
(実施例8)
in vivoでインターロイキン−2の中和により、腫瘍保持宿主のリンパ節細胞で評価した細胞溶解活性を回復する
腫瘍保持宿主で、名目抗原に対する免疫応答に及ぼすIL−2の中和効果を評価した。雌C57BL/6Jマウス(H−2b)は、標準飼育条件下で維持した。全ての実験で、6及び12週齢の間のマウスを用いた。卵白アルブミン(OVA)及びペプチド:OVAグレードVII(Sigma,St.Louis,MO)は、これらの実験の全体を通じて用いたモデルタンパク質Agであった。優占するペプチドOVA275−264(SIINFEKL)は、>90%の純度で用いた。増殖反応測定法:C57BL/6マウスを、左側腹の皮下経路でMB16F10腫瘍の104細胞又はPBSに曝露した。腫瘍直径は定期的に測定する。3週間後にこれらのマウスを、試験開始時に100μg/マウスのポリイノシン酸ポリシチジル酸[poly I:C](PIC)(Sigma,St.Louis,MO)と共に1mgのOVAで皮下に免疫し、その後の2日はPICのみを投与した。同時に動物に、hIL−2r(αlL−2)対する特異的モノクローナル抗体又はPBSを5日連続して投与した。差次的に蛍光色素CFSE(Molecular Probes,Paisley,UK)で標識した未処置のマウスからの脾臓細胞を用いて、in vivoでの細胞溶解活性を測定した。CFSEhighで標識した細胞を標的として用い、SIINFEKL(1μM;37℃で90分、5%CO2)でパルスしたが、CFSElowで標識した細胞は内部対照としてパルスしなかった。ペプチドでパルスした標的細胞を、遊離のペプチドを除去するために充分に洗浄後、前もって免疫したマウスに1:1の比率で同時に静注した。16時間後リンパ節及び脾臓を摘出し、両方の蛍光強度(CFSElow及びCFSEhigh)に対応する全事象を、フローサイトメトリーにより測定した。非コーティング対SIINFEKLコーティング(CFSEint/CFSEhigh)のパーセンテージ間の比率を算出して、細胞毒性の数値を得る。OVAペプチドに対するリンパ節細胞の細胞溶解活性を、最大の応答を与えたOVAプラスPICで免疫したC57BL/6マウスでin vivoで評価した。日用量1mgの抗IL−2モノクローナル抗体の連続5日間の静脈内注射は、これらの動物で細胞溶解性応答に影響を及ぼさない。MB16F10腫瘍に曝露されたC57BL/6マウスは、OVAに対する細胞溶解活性低下を伴う免疫抑制になる。しかしIL−2中和能を有するモノクローナル抗体をin vivoで投与すると、リンパ節細胞の免疫応答が回復する(図9)。
【0042】
(実施例9)
in vivoでのインターロイキン−2の中和により、腫瘍保持宿主の脾臓細胞で評価した細胞溶解活性が回復する
腫瘍保持宿主での名目抗原に対する免疫応答に及ぼすIL−2中和効果を評価した。C57BL/6マウスを、OVAプラスPICで免疫してOVAペプチドに対する脾臓細胞の細胞溶解活性をin vivo評価し、最大の応答を得た。日用量1mgの抗IL−2モノクローナル抗体の連続5日間の静注投与は、これらの動物で細胞溶解性応答に影響を及ぼさない。
MB16F10腫瘍に曝露されたC57BL/6マウスは、OVAに対する細胞溶解活性低下を伴う免疫抑制になる。しかし、IL−2中和能を有するモノクローナル抗体をin vivoで投与すると、脾臓細胞の免疫応答が回復する(図10)。
【0043】
(実施例10)
調製したワクチンhIL−2r−P64k/モンタニドISA 51で免疫した動物での血液細胞の計数
調製したhIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンでの免疫が、最初の免疫後の100日まで、(スケジュールAに従い)調製したワクチンで免疫した動物又はワクチン接種していない動物と同程度に、赤血球、白血球及び血小板を計数した血液細胞数の変化を引き起こすどうかを評価する目的。図11の1つのように、1つは分析した群間に細胞数値に差異を得なかった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】化学的結合したhIL−2r−P64kの電気泳動。左から右に向かいバンドは、それぞれP64k、hIL−2r、hIL−2r−P64k及び分子量の標準パターンに対応する。
【図2】両方とも以前に説明した免疫スケジュールを用いる、hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51のワクチン接種により誘導されたhIL−2rに対する抗体の力価。y軸は、IL−2に対する抗体の力価の幾何平均値を示す。x軸は、以下で免疫された動物に対応する群である。 対照:P64k/モンタニドISA 51。 スケジュールAに従い、 Sch A IL−2:hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51 スケジュールBに従い、 Sch B IL−2:hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51。
【図3】hIL−2r及びhIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫し、1:1000から1:50000のオーダーまでの力価を有する動物の血清からの種々の希釈の存在下でCTLL−2系の増殖。
【図4】hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51のワクチン又はP64k/モンタニドISA 51(対照群)でワクチン接種し、その後F3II腫瘍に曝露した動物での腫瘍増殖。y軸は、垂直に選択した最大×最小直径として定義した腫瘍領域を示す。
【図5】hIL−2rの及びIL−2に対する抗体の種々の希釈の存在下でのCTLL−2系の増殖。
【図6】抗IL−2 mAb、抗CD25 mAb又はPBS(対照群)で処置し、F3II腫瘍細胞系に曝露した動物の腫瘍増殖。y軸は、垂直に選択した最大直径×最小直径として定義した腫瘍の面積を示す。
【図7】αCD25 mAb、抗CD25 mAb又はPBS(対照群)で処置し、その後リンパ腫EL4に曝露した動物の腫瘍増殖。y軸は、垂直に選択した最大直径×最小直径として定義した腫瘍の面積を示す。
【図8】hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51及びhEGF−P64k/モンタニドISA 51のワクチン接種により誘導されたEGFに対する抗体力価。y軸は、EGFに対する抗体の力価の幾何平均を示す。x軸は以下で免疫された群を示す。hIL−2r:hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51。hEGF:hEGF/モンタニドISA 51hIL−2r+hEGF:hIL−2r−P64k/モンタニド + hEGF/モンタニド。hEGF/P64k:hIL−2r−P64k/モンタニド + hEGF/モンタニド。hIL−2r+hEGF/P64k:hIL−2r−P64k/モンタニド + hEGF/P64k/モンタニド。
【図9】インターロイキン−2に対して誘導された抗体は、腫瘍保持宿主のリンパ節細胞で評価した細胞溶解活性を回復する。 全てのマウスは試験開始時に、1mgのOVAに加えてPICの100μg/マウスで皮下に免疫し、その後2日はPICのみを投与した。in vivoでの細胞溶解活性を、蛍光色素CFSEで差次的に標識した未処置のマウス由来の脾臓細胞を用いて測定した。CFSEhighで標識した細胞を標的として用い、SIINFEKLでパルスしたが、CFSElowで標識した細胞は内部対照としてパルスしないでおき、次いで、あらかじめ免疫したマウスに1:1の比率で同時に静脈内に注射した。細胞溶解活性は、リンパ節細胞で評価した。 対照 − PBSで処置した動物、αlL−2 − IL−2中和モノクローナル抗体で処置した動物、MB16F10 − 対照と同様であるがMB16F10に曝露した動物、αlL−2+MB16F10 − IL−2中和モノクローナル抗体で処置したMB16F10腫瘍保持マウス。
【図10】インターロイキン−2に対して誘導された抗体は、腫瘍保持宿主の脾臓細胞で評価した細胞溶解活性を回復する。 全てのマウスは試験開始時に、1mgのOVAに加えてPICの100μg/マウスで皮下に免疫し、その後2日はPICのみを投与した。in vivoでの細胞溶解活性を、蛍光色素CFSEで差次的に標識した未処置のマウス由来の脾臓細胞を用いて測定した。CFSEhighで標識した細胞を標的として用い、SIINFEKLでパルスしたが、CFSElowで標識した細胞は内部対照としてパルスしないでおき、次いで、あらかじめ免疫したマウスに1:1の比率で同時に静脈内に注射した。細胞溶解活性は、脾臓細胞で評価した。 対照 − PBSで処置した動物、αlL−2 − IL−2中和モノクローナル抗体で処置した動物、MB16F10 − 対照と同様であるがMB16F10に曝露した動物、αlL−2+MB16F10 − IL−2中和モノクローナル抗体で処置したMB16F10腫瘍保持マウス。
【図11】対照(P64k/モンタニドISA 51)と比較した、hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫した動物の血球(ロイコサイト(白血球)、エリスロサイト(赤血球)及び血小板)算定。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン−2(IL−2)に対する免疫応答を増強でき、且つレセプターとの結合を阻害し、腫瘍治療に有用な自己抗体を上昇させる医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍抗原を認識する免疫系及び特にT細胞の能力の発見は、癌患者治療を目的とする免疫系操作に関する戦略の開発のための主要な柱の1つである。
【0003】
したがって、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)として知られている腫瘍間質へ浸潤している特異的なT細胞、又は無処置の個体の末梢血液に由来するか、又は治療用癌ワクチン使用後の末梢血液に由来する特異的なT細胞を回収する方法を開発するために、in vivoで特異的なT細胞を刺激してその抗腫瘍性エフェクター能を増強することに対して、主な努力が向けられてきた。
【0004】
したがって、主な戦略は、様々な腫瘍関連抗原(TAA)に対するT細胞の特異的な細胞毒性活性を増強することに向けられてきた。次いで、主な治療的アプローチは、腫瘍を有する個体由来のTILを活性化し、増加させるためにインターロイキン−2(IL−2)をin vitroで使用し、これらの個体にこれらの細胞を再注入することに焦点が当てられている(Rosenberg、S.A.ら、(1986)Science 233,1318〜1321;Kawakami、Y.ら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,6458〜6462;Kawakami、Y.ら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,3515〜3519)。しかしながら、in vitroで細胞性免疫応答の刺激が証明されたにもかかわらず、そのような介入は限られた治療成績しか有していない。その結果、in vivoで有効な細胞性免疫応答の誘発を促進させるために、IL−2に関連する腫瘍抗原を含むワクチンベクターを設計して、治療用癌ワクチンを用いる活性のある特異的免疫プロトコールの使用に基づく治療様式の評価することになったが、これらの方法は不十分な結果を与えた(Rosenberg,S.A.,ら、(1998)Nat.Med.4,321〜327)。
【0005】
現在では、主要な臨床的な戦略は、患者由来の患者自身の腫瘍抗原に反応性のT細胞の養子移入に基づく様式の開発に移行している。これらの細胞を、抗CD3モノクローナル抗体(mAb)及びIL−2を用いてin vitroで刺激して増加させ、血流へ再注入した後に、IL−2を非経口投与する。この方法は、癌患者治療に関して考えられる主要な治療的介入の1つを構成するが、治療結果は控えめにとどまる(Dudley,M.E.,ら、(2002)Science 298,850〜854;Rosenberg,S.A.ら、(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101 Suppl.2,14639〜45)。
【0006】
全てのこの治療戦略の合理的な設計は、抗腫瘍性免疫応答の細胞活性化における必須な分子としてのインターロイキン−2の使用に基づいている(U.S.6,060,068及びU.S.5,830,452)。
【0007】
免疫におけるIL−2の機能に関する背景は、in vitroで実施される実験に基づいている。その発見からIL−2はT細胞増殖を促進する能力によって認識された(したがって、IL−2アクロニムは、T Cells Growth Factor(T細胞成長因子)である)。in vitroでのT細胞の増殖と機能の更なる証明は、この概念を確認した抗IL−2又は抗IL−2レセプターを用いて抑制できることである(Smith,KA.Immunol.Rev.51:337〜357,1980)。
【0008】
最近、抗腫瘍免疫のサプレッサー能力を有するT細胞の生成を介して、ヒト腫瘍が免疫系の応答を減少させうることが実験的に証明された。分化マーカーの関連性は実験モデルとは異なるが、これらの細胞は異なる分化マーカーを提示する動物モデル及び患者で特徴づけられた(Bach,J.F.(2003)Nat.Rev.Immunol.3,189〜198;Chakraborty,N.G.,ら、(2004)Hum.Immunol.65,794〜802;Markus,Y.M.y.Sykes,M.(2004)J.Clin.Oncol.22,1136〜1151)。
【0009】
分化抗原群25(CD25)は、IL−2レセプターのα鎖を構成する。また、このサイトカインに対するレセプターの構造は、ベータ(CD122)及びガンマ(CD132)鎖を含んでいる。それらは静止期にあるTリンパ球で構成的に発現し、これらの細胞が活性化されると、アルファ鎖の合成、高親和性ヘテロ3量体レセプターの形成及びIL−2分泌が誘導される。CD25は、CD4+ Tリンパ球の5〜10%及び末梢のCD8+Tリンパ球の1%未満で構成的に発現している。これらの細胞はアネルギー性であり、in vitroでサプレッサー活性を示す(Shevach,E.M.(2002)Nat.Rev.Immunol.2,389〜400)。
【0010】
他の実験腫瘍はこの治療に難治性であるが、一部の実験腫瘍で抗CD25 mAbの受動的投与により、抗腫瘍性応答が誘導されることが最近実証された(Onizuka,S.ら、(1999)Cancer Res.59,3128〜3133)。
【0011】
自己分子、特に成長因子などの可溶性分子に対しする応答を誘導する免疫系の能力は限定される。それにもかかわらず、担体タンパク質に結合させアジュバントで乳化したこれらの因子を用いた能動免疫により、これらの分子に対する免疫応答の誘導が促進される(U.S.5,984,018)。自己由来又は異種の分子に対して産生された特異的自己抗体は、それらの因子のレセプターへの結合を阻害し、この結合により誘発される増殖機構を遮断する。
【0012】
それらの結果から、抗腫瘍性応答はIL−2の存在に依存することは最高水準の技術として認められる。したがって、我々は、アジュバント中の担体分子に結合したIL−2を用いる能動免疫により誘導される抗IL−2自己抗体の、in vivoでの腫瘍発展に及ぼす影響を特徴づけることに決定した。
【0013】
意外にも、抗CD25 mAbの受動的投与により誘導される抗腫瘍効果に耐性の腫瘍でさえも、IL−2のIL−2レセプターへの結合を遮断する自己抗体の誘導は、腫瘍増殖の減少を促進する。さらに、そのような自己抗体の存在は、治療を受ける対象で癌ワクチンに対する免疫応答に影響を及ぼさない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、対象の免疫系の役割が重要である腫瘍治療で効果を有する治療用製剤に関する。特に、本発明は、インターロイキン−2のインターロイキン−2レセプターへの結合を遮断し、腫瘍増殖を阻害する自己抗体を産生できる免疫治療用製剤の生成を含む。
【0015】
本発明の目的は、癌患者治療で有用な、IL−2のIL−2レセプターへの結合を阻害する治療用製剤であって、この製剤は担体タンパク質に結合されたIL−2又はそのペプチドを含み、さらに適切なアジュバントを含む。特に、本発明の治療用製剤は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来の担体タンパク質P64kを含み、アジュバントは水酸化アルミニウム及びモンタニドISA 51からなる群から選択される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施態様では、治療用製剤は化学的結合によりP64kに結合したIL−2を含む。本発明の他の実施態様において、製剤は融合タンパク質中のIL−2又はそのペプチド及びP64kを含む。
【0017】
また、インターロイキン−2のインターロイキン−2レセプターへの結合を阻害する、癌を有する個体の治療に有効な、ヒトIL−2(hIL−2)に対し特異的モノクローナル抗体を含む治療用製剤は、本発明を構成する。
【0018】
また、腫瘍に対して適切な免疫応答の誘発するためにIL−2のそのレセプターへの結合を遮断することを必要とする、IL−2又はIL−2に対する抗体を含むワクチンの組成物の投与を含む癌患者の治療法が、本発明の目的である。
【0019】
他の態様において、本発明は特異的腫瘍抗原又は腫瘍増殖因子に基づく癌の他のワクチン及び現在通常に使用する化学療法剤若しくは放射線療法とIL−2に基づくワクチンとの治療的組合せについて説明する。
【0020】
用語「治療的組合せ」とは、別々の及び分離した組成(試薬の計画形式の例(example in form of games of reagents))としての2つの構成成分の組合せに関し、これらの成分が患者の治療に組み合わせて用いられる場合の物理的な組合せ(すなわち混合物の形態)を意味する。したがって、薬剤の組合せとは、治療のコースの間、同じ患者への2つの化合物の投与、又は独立した用量投与によるのと同程度の物理的な組合せによる用量投与を含む治療スケジュールにおける薬剤の有用な組合せである。
【0021】
用語「癌ワクチン」とは、そのワクチンが対象の服従治療においてワクチンに用いられた抗原を認識し、測定可能な免疫応答を生じるような能動的免疫療法における有用な薬剤を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
1.− 免疫原性組成物の入手
本発明のワクチン組成物は、担体タンパク質、好ましくは髄膜炎菌P64kの外膜複合体由来のタンパク質に結合させた、ヒト組換え型インターロイキン−2(hIL−2r)を有効成分として含む(0474313 EP A2及びU.S.5,286,484)。さらに、このワクチン組成物は、適切なアジュバントを含む。本発明のワクチン組成物は、アジュバントとしてモンタニドISA 51を用いるのが好ましい。
hIL−2r及び担体タンパク質間の結合は、化学的結合又は遺伝子工学の技術により得られる融合タンパク質の作製により可能である。
【0023】
− 化学的結合によりP64kタンパク質に結合したhIL−2rを含むワクチン組成物の入手
hIL−2r及びP64kタンパク質間にタンパク質結合を達成するために、両成分を様々な割合、20:1から5:1(P64kタンパク質のモルに対するhIL−2rのモル)まで、好ましくは10:1(P64kタンパク質のモルに対するhIL−2rのモル)で混合する。グルタルアルデヒドを、0.02%及び0.1%間にある、好ましくは0.5%の最終濃度でこの混合物に添加し、室温(RT)で1〜5時間インキュベートする。最後に、これをリン酸塩緩衝食塩水(PBS)溶液中で充分に透析した。
結合反応は、10%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により確認した(Laemmli UK (1970)Nature 277,680〜685)。
【0024】
− hIL−2r及びP64kタンパク質間の融合タンパク質を含むワクチン組成物の入手
ヒトIL−2(447pb)をコードする遺伝子を、特異的プライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により増幅する。得られたDNAフラグメントを消化し、生じたタンパク質が両分子の1コピー又はそれ以上を含むように、担体タンパク質をコードする遺伝子をクローニングする発現ベクターの特異的結合部位に結合させる。哺乳動物細胞及び細菌又は酵母菌の任意の発現ベクターを用いることができる。またベクターは、担体タンパク質のN末端に、6つのヒスチジンを含むことができる。得られたプラスミドは、アガロースゲル電気泳動での制限酵素分析、酵素シークエンス2,0(the enzyme Sequenace 2,0)(Amersham−USB)を用いるDNA塩基配列分析、及び最後に特異的抗hIL−2モノクローナル抗体を用いる「ウエスタンブロット」法で、大腸菌の任意の発現株で融合タンパク質産物の分析により確認する。タンパク質を得るために、細菌壁を強い破断方法を用いて破壊後、タンパク質を硫酸アンモニウムによる差次的な沈殿法とクロマトグラフィー法の組合せにより精製する。最後に、タンパク質を無菌条件下で濾過し、後に使用するまで−20℃で保存するか又は凍結乾燥して4℃で保存する。
【0025】
− P64kタンパク質に化学的に結合したか又は融合タンパク質として結合したhIL−2r由来ペプチドを含むワクチン組成物の入手
IL−2のアミノ酸配列由来の化学合成により得たペプチドを、P64kタンパク質に、U.S.5,984,018で記載されているように化学的結合により結合できる。或いは、hIL−2r及びP64kタンパク質由来のペプチドの融合タンパク質は、前節に記載のものと同じ方法により本質的に得られる。実施例は下記の領域からのペプチドを含むことができる。すなわち、
1)ペプチド N33−A50
アミノ酸番号:18
配列: NPKLTRMLTFKFYMPKKA
2)ペプチド T113−T133
アミノ酸番号:21
配列: TIVEFLNRWITFCQSIISTLT
【0026】
− hIL−2r−P64k化学的結合体の電気泳動
この電気泳動は、10%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により実施できる(Laemmli U.K.(1970)Nature 277,680〜685)。電気泳動では、1ウェル当たり15μgの試料を適用し、クーマシーで染色する。
【0027】
2.− hIL−2r及びタンパク質P64kを含むワクチン組成物のもたらす効果の特徴づけ。前臨床試験
− ワクチン組成物の免疫原性
動物で本発明のワクチン製剤の免疫原性を試験するために、生後8〜12週目の体重18〜20gの雌BALB/cマウスを使用した。実験の間、マウスを実験動物優良飼育及び使用基準に従い標準作業手順書(SOP)により定められた給餌及び処置の標準条件で飼育した。
【0028】
これは次の種々の免疫化のスケジュールに従うことができる。
− スケジュールA、hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチン、0.1mL中に結合したhIL−2rの4μg当量の4用量を、肢の免疫部位を交互に換えて、2週間ごとに筋肉内投与する。
− スケジュールB、hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチン、0.1mL中に結合したhIL−2rの10μg当量の4用量を、筋肉内投与する。最初の2用量は、2つの肢の独立した免疫部位に同時に投与し、2週間後に2用量を別の2つの肢に投与する。
【0029】
− hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンにより誘導されたhIL−2rに対する抗体応答の評価
特異的抗体又はB細胞を測定することにより、遮断抗体を測定するか又は末梢血液で特異的免疫応答を評価する最高水準の技術で利用可能な方法の1つにより、自己抗体力価を血清で検出できる。
hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンにより誘導される抗hIL−2r抗体は、免疫した動物の血清を用いる、以下に記載の間接ELISA(酵素結合抗体免疫吸着アッセイ)により評価できる。
96穴平底マイクロタイタープレート(Costar,High Binding,USA)は、0.1M炭酸塩−重炭酸塩pH9.6溶液中で10μg/mLの濃度に調製したhIL−2r(50μL/ウェル)を含む。プレートを4℃で終夜インキュベートし、0.05%のTween 20を含むPBS(PBS−Tween 20)を用いて200μL/ウェルで2回洗浄した。100μL(1%ウシ血清アルブミン(PBS−BSA 1%)を含む)/ウェルで37℃で1時間インキュベート後、プレートをPBS−Tween 20(200μL/ウェル)で洗浄し、PBS−BSA1%中、異なる希釈の血清試料50μL/ウェルを添加する。37℃で1時間インキュベート後、プレートをPBS−Tween 20で洗浄し、PBS−BSAで1/5000に希釈したアルカリホスファターゼ結合ヒツジ抗マウス血清(Jackson Immunoresearch Laboratories)を50μL/ウェルで添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、pH9.8、ジエタノールアミン緩衝液中にp−ニトロフェニルリン酸(Sigma)1ng/mLを含む基質溶液を50μL/ウェルで添加する。室温(RT)で30分プレートをインキュベートした後に、反応産物の吸光度を405nmで、ELISAリーダー(Organon Teknika,Austria)で測定する。
【0030】
− EGFに基づくワクチンにより誘導された抗hEGF抗体応答の評価
B細胞又は特異的抗体を測定することにより、遮断抗体を測定するか又は末梢血液で特異的免疫応答を評価する最高水準の技術で利用可能な方法の1つにより、自己抗体力価は血清で検出できる。
Gonzalez、G.、ら、(2002)Vaccine Research 5,233〜244で記載されているように、EGFに基づくワクチンにより誘導される抗hEGF抗体を、免疫した動物の血清を用いる間接ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)により評価できる。
【0031】
− hIL−2−P64k/モンタニドISA 51をワクチン接種した動物からの血清又はhIL−2rに対する特異的モノクローナル抗体(mAb)と共にインキュベーションした後のCTLL−2細胞系の増殖に及ぼす効果
IL−2依存性T細胞系CTLL−2を、連続的増殖下で、hIL−2hの1U/mLを含むRPMI−1640培地に保持する。CTLL−2の培養を、細胞懸濁液中0.5×105〜106細胞/mLと共に8〜20%のウシ胎児血清(FCS)を含むRPMI−1640が25mL入っている75cm2細胞培養フラスコで実施する。細胞はin vitroでの増殖の2日後に使用する。
アッセイを実施するため、細胞をin vitro培養から採取し、RPMI−1640又はPBSで少なくとも4回洗浄する。96穴平底培養プレート(Costar,High Binding,USA)へ、5×103細胞を播種する。これらの細胞を、hIL−2−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫した動物からのIL−2に対するELISA力価が1:10000の希釈血清又は抗IL−2特異的mAbで処理し、hIL−2r(1U/mL)を添加する。培養を5%CO2インキュベーターで、37℃の湿潤な空気中で24時間実施する。培養の最後の18〜24時間に[3H]チミジン(1μCi/ウェル)をパルスすることにより増殖を測定した。チミジン取り込みは、液体シンチレーションカウンターで測定する。全ての操作は、無菌状態で実施する。
【0032】
3− hIL−2−P64k/モンタニドISA 51ワクチンの抗腫瘍効果。前臨床試験
本発明のワクチンの製剤の抗腫瘍効果を動物で試験するために、生後8〜12週間目の体重18〜20gの雌BALB/cマウスを使用した。動物はすでに詳述したスケジュールA及びBに従って、hIL−2−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫可能であり、1週後に乳癌F3IIのような腫瘍細胞系を、5×104細胞/動物で、同所性に皮下投与経路で接種する。触知可能な腫瘍を有するマウスを陽性と記録し、腫瘍増殖はカリパーを用いて測定し、最長の表面距離(a)及びこれに対して垂直な幅(b)を規定し、腫瘍サイズはa×bとして記録した。腫瘍は定期的に調べる。
驚くべきことに、予想外にも、本発明の著者らは、悪性腫瘍を有する対象で、IL−2のIL−2レセプターへの結合中和、この腫瘍に対する免疫応答が増強され、腫瘍サイズの減少を誘導することを見出した。以前の技術の状態は、そのような処置は腫瘍に対する個体の免疫系の応答の抑制を生じるであろうことを示していた。
減少が抗IL−2モノクローナル抗体で受動的治療を受けて得られる場合と同様に、対象が本発明のワクチンの組成物による能動的治療を受けている場合、循環血中のIL−2濃度が実質的に低下する場合、本著者らは腫瘍増殖に及ぼすこの効果が得られることを見出した。
その理由のために、本発明は悪性腫瘍患者の治療のために結果として否定できない利益になり、且つ、これらの場合用いられる通常の治療よりも患者にとってはるかに不快でなく積極的で有効で簡単なIL−2によるワクチン投与法を提供する。
下記の実施例は、本発明の対象のワクチン組成物の免疫学的有効性を例証する実験の詳しい説明を含む。
【実施例】
【0033】
本発明のワクチン組成物で用いられるヒト組換え型IL−2(hIL−2r)は市販のものであった:(U.S.5,614,185)。
ワクチンで用いた髄膜炎菌由来のタンパク質P64kは、EP 0474313A2及びU.S.5,286,484で記載される組換えDNA技術により得た。
【0034】
(実施例1)
hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンにより誘導された抗体応答
ヒトインターロイキン−2に対する免疫原性を増進するために、ヒトインターロイキン−2を、髄膜炎菌由来の担体タンパク質P64kタンパク質に化学的に結合した。化学的結合は、グルタルアルデヒド法により行うことができる(U.S.5,984,018)。10%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、各成分の試料(hIL−2r、P64k)を別々に添加し、化学的結合体hIL−2r−P64kと分子量の標準パターンを比較して結合効率が確認される。hIL−2r−P64kを添加したレーンで連続的に存在するため、得られた結合型を確認することは可能である(図1)。
hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンにより誘導されたhIL−2rに対する抗体応答を評価するために、BALB/cマウスを、スケジュールA及びBで免疫した。hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンに応答した動物からの高度免疫血清を陽性対照として用い、免疫前血清を陰性対照として用いた。血清の吸光度が、免疫前血清の吸光度の平均値プラス5倍の標準偏差より大きい最大希釈を、免疫した動物の抗体力価と定義した。対照動物で力価を定義するため、陰性対照として免疫前血清の代わりにPBS−BSA1%を用いた場合を除き、同じ先の判定基準を用いた。
1:100から1:50000まで力価が達する抗体応答が誘導された。この免疫プロトコールは約52日間続く、その理由は短期間に同程度であるか又はより高い抗体力価を得るためにプロトコールを改変する必要があり、したがって我々はスケジュールBを用いて図2に示すように同程度の結果を得た。
【0035】
(実施例2)
hIL−2−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫した動物由来血清で処理したCTLL−2細胞系の増殖試験
hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫した動物で産生される血清抗体のin vitroでのIL−2結合能は、血清抗体と共にIL−2依存性T細胞系CTLL−2を培養することにより評価した。CTLL−2細胞をIL−2の存在下で培養プレートに播種して増殖させ、約1:10000抗体力価を有する動物からの種々の希釈血清を添加した。血清濃度とCTLL−2細胞系増殖の阻害の間に、直接的相関が認められた(図3)。この血清は、ワクチン接種した動物由来の血清のin vitroでのIL−2中和能力を実証する。
【0036】
(実施例3)
hIL−2−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで処置した動物における抗腫瘍性の実験
スケジュールBに従い、動物をhIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫した。1週間後に、動物を5×104 F3II腫瘍細胞に曝露した。腫瘍増殖カイネティクスは、PBS−P64k/モンタニドISA 51で免疫した対照群と比較して、hIL−2r−P64k/モンタニドISA51で免疫した動物でより緩慢であった(図4a)。これら2群間の腫瘍サイズに統計有意差が認められた。
【0037】
(実施例4)
抗IL−2特異的mAbで処理したCTLL−2細胞系の増殖試験
S4B6(ATCC # HB−8794)ハイブリドーマにより産生されたhIL−2rに対する特異的抗体のin vitroでのIL−2結合能を、IL−2依存性T細胞系CTLL−2と共にそれらを培養することにより評価した。CTLL−2細胞を、IL−2存在下で培養プレートに播種して増殖させ、種々の希釈抗体を添加した。抗体濃度とCTLL−2細胞系増殖の阻害の間に、直接的な相関が認められた(図5)。モノクローナル抗体のin vitroでのIL−2中和能力を実証する、1:100希釈抗体によりCTLL−2細胞系増殖を80%以上阻害できることが見出された。
【0038】
(実施例5)
抗IL−2 mAb及び抗CD25 mAb(ATCC−PC61)の抗腫瘍効果、F3II実験モデル(乳癌)
マウスを、日用量1mgの特異的モノクローナル抗体(抗CD25 mAb又は抗IL−2 mAb)を、連続して5日間投与した。2日後に皮下同所性注射により、マウスを実験的乳癌F3IIに5×104細胞/マウスで曝露した。最長の表面距離(a)及びこれに対して垂直な幅(b)を定期的に測定した。対照群の腫瘍サイズ(PBSを投与した)は、抗IL−2 mAbを投与した群よりも大きかった(図6)。2つの実験群間の腫瘍サイズは統計的に相異した。しかしながら抗CD25 mAb(ATCC―PC61)を投与した動物の腫瘍サイズは、対照群と同程度であった。この結果はCD25制御細胞の除去が影響を与えない腫瘍においてさえも、IL−2中和抗体は強い抗腫瘍効果を有することを示す。
【0039】
(実施例6)
抗IL−2 mAb及び抗CD25 mAb(ATCC−PC61)の抗腫瘍効果。EL4実験モデル(リンパ腫)
C57BL/6動物を、EL4リンパ腫(5×104細胞/マウス)に皮下で曝露した。動物に抗CD25 mAb(PC61)の1mgの1用量を、腫瘍への曝露の2日前に静脈内投与するか、又は抗IL−2 mAb(S4B6)の1mgの日用量を、腫瘍接種の6日前に開始して連続5日間静脈内投与した。別の群は、以前に記載した同様のスケジュールに基づき抗CD25及び抗IL−2 mAbsを同時投与した。
マウスの各群の腫瘍増殖を記録した。腫瘍へ曝露後毎週2回、各マウスにおける腫瘍サイズを、2つの垂直な大きさで測定した。EL4腫瘍に関する統計的差異は、*p=0.0232(**p=0.0039)、***p<0.0001である。
図7は、2つのモノクローナル抗体の組合せが、腫瘍増殖に及ぼす最も強い効果を有することを示す。
【0040】
(実施例7)
自己抗体抗IL−2の誘導は、EGF癌ワクチンに対する応答に影響を及ぼさない
hEGF−P64k/モンタニドISA 51ワクチンにより誘導されるhEGFに対する抗体応答が、自己抗体の誘導を伴うhIL−2rによるその前のワクチン投与により影響を受けるかどうかを評価するために、BALB/c動物をスケジュールAに従いhIL−2r−P64k/モンタニドISA 51で調製したワクチンで免疫し、19日後にhEGF−P64k/モンタニドISA 51又はhEGF/モンタニドISA 51で調製したワクチンで免疫した。hEGFのワクチンで免疫した全ての実験で、0.1mLの量で調製したワクチンに結合したhEGFの4μg当量を筋肉内経路で投与した。hEGF−P64k/モンタニドISA 51ワクチンに応答した動物の高度免疫血清を、陽性対照として用い、陰性対照には免疫前血清を用いた。血清の吸光度が、免疫前血清の吸光度の平均値よりさらに5倍標準偏差より大きい最大希釈を、免疫した動物の抗体力価と定義した。対照動物で力価を定義するため、陰性対照として免疫前血清の代わりにPBS−BSA1%を用いた場合を除き、同じ先の判定基準を用いた。EGF/モンタニドISA 51又はhEGF−P64k/モンタニドISA 51によるワクチン接種により誘導されるEGFに対する抗体の力価は、図8で示すように、hIL−2rに対する自己抗体の誘導によっては影響を受けないことが得られた。
【0041】
(実施例8)
in vivoでインターロイキン−2の中和により、腫瘍保持宿主のリンパ節細胞で評価した細胞溶解活性を回復する
腫瘍保持宿主で、名目抗原に対する免疫応答に及ぼすIL−2の中和効果を評価した。雌C57BL/6Jマウス(H−2b)は、標準飼育条件下で維持した。全ての実験で、6及び12週齢の間のマウスを用いた。卵白アルブミン(OVA)及びペプチド:OVAグレードVII(Sigma,St.Louis,MO)は、これらの実験の全体を通じて用いたモデルタンパク質Agであった。優占するペプチドOVA275−264(SIINFEKL)は、>90%の純度で用いた。増殖反応測定法:C57BL/6マウスを、左側腹の皮下経路でMB16F10腫瘍の104細胞又はPBSに曝露した。腫瘍直径は定期的に測定する。3週間後にこれらのマウスを、試験開始時に100μg/マウスのポリイノシン酸ポリシチジル酸[poly I:C](PIC)(Sigma,St.Louis,MO)と共に1mgのOVAで皮下に免疫し、その後の2日はPICのみを投与した。同時に動物に、hIL−2r(αlL−2)対する特異的モノクローナル抗体又はPBSを5日連続して投与した。差次的に蛍光色素CFSE(Molecular Probes,Paisley,UK)で標識した未処置のマウスからの脾臓細胞を用いて、in vivoでの細胞溶解活性を測定した。CFSEhighで標識した細胞を標的として用い、SIINFEKL(1μM;37℃で90分、5%CO2)でパルスしたが、CFSElowで標識した細胞は内部対照としてパルスしなかった。ペプチドでパルスした標的細胞を、遊離のペプチドを除去するために充分に洗浄後、前もって免疫したマウスに1:1の比率で同時に静注した。16時間後リンパ節及び脾臓を摘出し、両方の蛍光強度(CFSElow及びCFSEhigh)に対応する全事象を、フローサイトメトリーにより測定した。非コーティング対SIINFEKLコーティング(CFSEint/CFSEhigh)のパーセンテージ間の比率を算出して、細胞毒性の数値を得る。OVAペプチドに対するリンパ節細胞の細胞溶解活性を、最大の応答を与えたOVAプラスPICで免疫したC57BL/6マウスでin vivoで評価した。日用量1mgの抗IL−2モノクローナル抗体の連続5日間の静脈内注射は、これらの動物で細胞溶解性応答に影響を及ぼさない。MB16F10腫瘍に曝露されたC57BL/6マウスは、OVAに対する細胞溶解活性低下を伴う免疫抑制になる。しかしIL−2中和能を有するモノクローナル抗体をin vivoで投与すると、リンパ節細胞の免疫応答が回復する(図9)。
【0042】
(実施例9)
in vivoでのインターロイキン−2の中和により、腫瘍保持宿主の脾臓細胞で評価した細胞溶解活性が回復する
腫瘍保持宿主での名目抗原に対する免疫応答に及ぼすIL−2中和効果を評価した。C57BL/6マウスを、OVAプラスPICで免疫してOVAペプチドに対する脾臓細胞の細胞溶解活性をin vivo評価し、最大の応答を得た。日用量1mgの抗IL−2モノクローナル抗体の連続5日間の静注投与は、これらの動物で細胞溶解性応答に影響を及ぼさない。
MB16F10腫瘍に曝露されたC57BL/6マウスは、OVAに対する細胞溶解活性低下を伴う免疫抑制になる。しかし、IL−2中和能を有するモノクローナル抗体をin vivoで投与すると、脾臓細胞の免疫応答が回復する(図10)。
【0043】
(実施例10)
調製したワクチンhIL−2r−P64k/モンタニドISA 51で免疫した動物での血液細胞の計数
調製したhIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンでの免疫が、最初の免疫後の100日まで、(スケジュールAに従い)調製したワクチンで免疫した動物又はワクチン接種していない動物と同程度に、赤血球、白血球及び血小板を計数した血液細胞数の変化を引き起こすどうかを評価する目的。図11の1つのように、1つは分析した群間に細胞数値に差異を得なかった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】化学的結合したhIL−2r−P64kの電気泳動。左から右に向かいバンドは、それぞれP64k、hIL−2r、hIL−2r−P64k及び分子量の標準パターンに対応する。
【図2】両方とも以前に説明した免疫スケジュールを用いる、hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51のワクチン接種により誘導されたhIL−2rに対する抗体の力価。y軸は、IL−2に対する抗体の力価の幾何平均値を示す。x軸は、以下で免疫された動物に対応する群である。 対照:P64k/モンタニドISA 51。 スケジュールAに従い、 Sch A IL−2:hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51 スケジュールBに従い、 Sch B IL−2:hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51。
【図3】hIL−2r及びhIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫し、1:1000から1:50000のオーダーまでの力価を有する動物の血清からの種々の希釈の存在下でCTLL−2系の増殖。
【図4】hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51のワクチン又はP64k/モンタニドISA 51(対照群)でワクチン接種し、その後F3II腫瘍に曝露した動物での腫瘍増殖。y軸は、垂直に選択した最大×最小直径として定義した腫瘍領域を示す。
【図5】hIL−2rの及びIL−2に対する抗体の種々の希釈の存在下でのCTLL−2系の増殖。
【図6】抗IL−2 mAb、抗CD25 mAb又はPBS(対照群)で処置し、F3II腫瘍細胞系に曝露した動物の腫瘍増殖。y軸は、垂直に選択した最大直径×最小直径として定義した腫瘍の面積を示す。
【図7】αCD25 mAb、抗CD25 mAb又はPBS(対照群)で処置し、その後リンパ腫EL4に曝露した動物の腫瘍増殖。y軸は、垂直に選択した最大直径×最小直径として定義した腫瘍の面積を示す。
【図8】hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51及びhEGF−P64k/モンタニドISA 51のワクチン接種により誘導されたEGFに対する抗体力価。y軸は、EGFに対する抗体の力価の幾何平均を示す。x軸は以下で免疫された群を示す。hIL−2r:hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51。hEGF:hEGF/モンタニドISA 51hIL−2r+hEGF:hIL−2r−P64k/モンタニド + hEGF/モンタニド。hEGF/P64k:hIL−2r−P64k/モンタニド + hEGF/モンタニド。hIL−2r+hEGF/P64k:hIL−2r−P64k/モンタニド + hEGF/P64k/モンタニド。
【図9】インターロイキン−2に対して誘導された抗体は、腫瘍保持宿主のリンパ節細胞で評価した細胞溶解活性を回復する。 全てのマウスは試験開始時に、1mgのOVAに加えてPICの100μg/マウスで皮下に免疫し、その後2日はPICのみを投与した。in vivoでの細胞溶解活性を、蛍光色素CFSEで差次的に標識した未処置のマウス由来の脾臓細胞を用いて測定した。CFSEhighで標識した細胞を標的として用い、SIINFEKLでパルスしたが、CFSElowで標識した細胞は内部対照としてパルスしないでおき、次いで、あらかじめ免疫したマウスに1:1の比率で同時に静脈内に注射した。細胞溶解活性は、リンパ節細胞で評価した。 対照 − PBSで処置した動物、αlL−2 − IL−2中和モノクローナル抗体で処置した動物、MB16F10 − 対照と同様であるがMB16F10に曝露した動物、αlL−2+MB16F10 − IL−2中和モノクローナル抗体で処置したMB16F10腫瘍保持マウス。
【図10】インターロイキン−2に対して誘導された抗体は、腫瘍保持宿主の脾臓細胞で評価した細胞溶解活性を回復する。 全てのマウスは試験開始時に、1mgのOVAに加えてPICの100μg/マウスで皮下に免疫し、その後2日はPICのみを投与した。in vivoでの細胞溶解活性を、蛍光色素CFSEで差次的に標識した未処置のマウス由来の脾臓細胞を用いて測定した。CFSEhighで標識した細胞を標的として用い、SIINFEKLでパルスしたが、CFSElowで標識した細胞は内部対照としてパルスしないでおき、次いで、あらかじめ免疫したマウスに1:1の比率で同時に静脈内に注射した。細胞溶解活性は、脾臓細胞で評価した。 対照 − PBSで処置した動物、αlL−2 − IL−2中和モノクローナル抗体で処置した動物、MB16F10 − 対照と同様であるがMB16F10に曝露した動物、αlL−2+MB16F10 − IL−2中和モノクローナル抗体で処置したMB16F10腫瘍保持マウス。
【図11】対照(P64k/モンタニドISA 51)と比較した、hIL−2r−P64k/モンタニドISA 51ワクチンで免疫した動物の血球(ロイコサイト(白血球)、エリスロサイト(赤血球)及び血小板)算定。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌患者の治療のために有用な、IL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤であって、
A.適切なアジュバントを含む、遺伝的又は化学的結合により任意の担体タンパク質に結合したIL−2又はIL−2の任意の誘導体、
B.抗IL−2モノクローナル抗体、
C.特異的腫瘍抗原又は成長因子に基づく癌ワクチン、
D.抗CD25モノクローナル抗体
の少なくとも1つを含む治療用製剤。
【請求項2】
同時に又は連続した方法でのA+C又はA+D又はB+C又はB+Dの投与を含む、請求項1に記載のIL−2に対する免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項3】
担体タンパク質に結合したIL−2又はIL−2の任意の誘導体及び適切なアジュバントを含む、請求項1に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項4】
担体タンパク質に結合したIL−2及び適切なアジュバントを含む、請求項3に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項5】
使用する担体タンパク質が、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来のP64kである、請求項4に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項6】
アジュバントが、水酸化アルミニウム及びモンタニドISA 51を含む群から選択される、請求項5に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項7】
アジュバントがモンタニドISA 51である、請求項6に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項8】
IL−2及びP64kの間を結合する化学物質を含む、請求項1に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項9】
IL−2及びP64kの間の融合タンパク質を含む、請求項1に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項10】
IL−2及びP64kから由来するペプチド間の融合タンパク質を含む、請求項1に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項11】
ヒトIL−2に対する特異的モノクローナル抗体を含む、請求項1に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項12】
特異的腫瘍抗原又は成長因子に基づく癌ワクチンと組み合わせて、担体タンパク質に結合したIL−2又はIL−2の任意の誘導体及びアジュバントを、対象に投与することを含む請求項2に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項13】
癌ワクチンがEGFを含む、請求項12に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項14】
特異的モノクローナル抗体CD25と組み合わせて、担体タンパク質に結合したIL−2又はIL−2の任意の誘導体及びアジュバントを対象に投与することを含む、請求項2に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項15】
抗CD25特異的モノクローナル抗体を含む、請求項13に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項16】
癌患者で腫瘍の増殖を抑制することが可能な、IL−2に対する免疫応答を引き起こす薬剤を製造するのための請求項1から15までに記載の治療用製剤。
【請求項17】
腫瘍の増殖を抑制することが可能な請求項1から15までに記載の治療用製剤の使用。
【請求項1】
癌患者の治療のために有用な、IL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤であって、
A.適切なアジュバントを含む、遺伝的又は化学的結合により任意の担体タンパク質に結合したIL−2又はIL−2の任意の誘導体、
B.抗IL−2モノクローナル抗体、
C.特異的腫瘍抗原又は成長因子に基づく癌ワクチン、
D.抗CD25モノクローナル抗体
の少なくとも1つを含む治療用製剤。
【請求項2】
同時に又は連続した方法でのA+C又はA+D又はB+C又はB+Dの投与を含む、請求項1に記載のIL−2に対する免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項3】
担体タンパク質に結合したIL−2又はIL−2の任意の誘導体及び適切なアジュバントを含む、請求項1に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項4】
担体タンパク質に結合したIL−2及び適切なアジュバントを含む、請求項3に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項5】
使用する担体タンパク質が、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)由来のP64kである、請求項4に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項6】
アジュバントが、水酸化アルミニウム及びモンタニドISA 51を含む群から選択される、請求項5に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項7】
アジュバントがモンタニドISA 51である、請求項6に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項8】
IL−2及びP64kの間を結合する化学物質を含む、請求項1に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項9】
IL−2及びP64kの間の融合タンパク質を含む、請求項1に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項10】
IL−2及びP64kから由来するペプチド間の融合タンパク質を含む、請求項1に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項11】
ヒトIL−2に対する特異的モノクローナル抗体を含む、請求項1に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項12】
特異的腫瘍抗原又は成長因子に基づく癌ワクチンと組み合わせて、担体タンパク質に結合したIL−2又はIL−2の任意の誘導体及びアジュバントを、対象に投与することを含む請求項2に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項13】
癌ワクチンがEGFを含む、請求項12に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項14】
特異的モノクローナル抗体CD25と組み合わせて、担体タンパク質に結合したIL−2又はIL−2の任意の誘導体及びアジュバントを対象に投与することを含む、請求項2に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項15】
抗CD25特異的モノクローナル抗体を含む、請求項13に記載のIL−2に対して免疫応答を引き起こす治療用製剤。
【請求項16】
癌患者で腫瘍の増殖を抑制することが可能な、IL−2に対する免疫応答を引き起こす薬剤を製造するのための請求項1から15までに記載の治療用製剤。
【請求項17】
腫瘍の増殖を抑制することが可能な請求項1から15までに記載の治療用製剤の使用。
【図1】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【公表番号】特表2008−526686(P2008−526686A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541654(P2007−541654)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【国際出願番号】PCT/CU2005/000009
【国際公開番号】WO2006/053508
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(500185689)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【国際出願番号】PCT/CU2005/000009
【国際公開番号】WO2006/053508
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(500185689)
【Fターム(参考)】
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