インターロイキン13受容体α1(IL−13Rα1)に対するモノクローナル抗体
【課題】インターロイキン13受容体α1鎖(IL-13Rα1)に結合し、そしてIL-13および/またはIL-4によるIL-13受容体を介したシグナル伝達に拮抗する抗体を提供する。
【解決手段】IL-13Rα1に対するヒト化またはヒト抗体を提供する。これらの抗体を用い、IL-13および/またはIL-4介在性の疾患または症状の治療または予防する方法。さらに対象抗体の投与によりIL-13および/またはIL-4介在性疾患または症状を調節する方法。さらにIL-13受容体複合体を介したIL-13および/またはIL-4シグナル伝達を調節する抗体またはその他の作用物質を同定するのに有用なアッセイ系。従って、IL-13Rα1/リガンド相互作用のモジュレーターをスクリーニングする方法。
【解決手段】IL-13Rα1に対するヒト化またはヒト抗体を提供する。これらの抗体を用い、IL-13および/またはIL-4介在性の疾患または症状の治療または予防する方法。さらに対象抗体の投与によりIL-13および/またはIL-4介在性疾患または症状を調節する方法。さらにIL-13受容体複合体を介したIL-13および/またはIL-4シグナル伝達を調節する抗体またはその他の作用物質を同定するのに有用なアッセイ系。従って、IL-13Rα1/リガンド相互作用のモジュレーターをスクリーニングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概してインターロイキン13受容体α1鎖(IL-13Rα1)に結合し、そしてIL-13および/またはIL-4によるIL-13受容体を介したシグナル伝達に拮抗する抗体に関する。さらに特に、本発明は哺乳動物、特にIL-13Rα1に対するヒト化またはヒト抗体を提供する。これらの抗体はIL-13および/またはIL-4介在性の疾患または症状の治療または予防における用途を有する。本発明はさらに対象抗体の投与によりIL-13および/またはIL-4介在性の疾患または症状を調節する方法を企図する。本発明はさらにIL-13受容体複合体を介したIL-13および/またはIL-4シグナル伝達を調節する抗体またはその他の作用物質を同定するのに有用なアッセイ系を提供する。従って、IL-13Rα1/リガンド相互作用のモジュレーターをスクリーニングする方法もまた提供される。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
本明細書にて言及した出版物の書誌の詳細は明細書の最後にもまとめている。
【0003】
本明細書におけるいずれかの先行技術に対する参照は、この先行技術がいずれかの国の通例的な一般知識の一部を成すということの承認またはいずれかの形態の示唆ではなく、そしてそのように考えるべきではない。
【0004】
インターロイキン-13(IL-13)はインターロイキン(IL)ファミリーのメンバーであり、このサイトカインのインビボでの活性を上方および下方の双方に制御することによって広範な共通する病理の薬理学的治療が提供される可能性があるため、その生物学的効果は有意な生理学的意味を有している。この理由で、特にIL-13およびその他のIL分子の研究は医学的に非常に重要である。例えば、IL-13はIgEおよびIgG4産生の誘導並びにヘルパーT(Th)細胞の分泌(Th2)表現型への分化に大いに関与している。これらの免疫刺激工程はヒトの健康の重大な脅威であるアトピー性疾患、例えばアナフィラキシー(Howardら、Am.J.Hum.Genet.70(1):230-236(2002)(非特許文献1);Noguchiら、Hum.Immunol.62(11):1251-1257(2001)(非特許文献2))および、生命を脅かすものではないが、全世界的にかなりの罹患率になる、より穏やかな症状、例えば花粉症、アレルギー性鼻炎および慢性副鼻腔炎の進行に重要である。
【0005】
IL-13は喘息の急性および慢性段階の病理におけるメディエーターである。喘息発作の間にその活性は上昇し、そしてその効果には吸入された粒子および病源体に対する厳重なバリヤを維持する肺上皮細胞の能力の低下(Ahdiehら、Am.J.Physiol.Cell Physiol.281(6):C2029-2038(2000)(非特許文献3))およびアレルゲン誘起の気道過敏症の促進(Morseら、Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.282(1):L44-49(2002)(非特許文献4))が含まれる。長期間でIL-13は喘息性気道に非炎症性構造変化、例えばムチン遺伝子の発現の増強、気道損傷および末梢気道の閉塞を促す(Howardら、Am.J.Hum.Genet.70(1):230-236(2002)(非特許文献1);Danahayら、Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.282(2):L226-236(2002)(非特許文献5))。
【0006】
IL-13活性の上方制御は特定の免疫不全状態において疾患の進行を低下させるのに有益である可能性がある。HIV感染では、例えばTh2細胞による分泌の低下は抗原特異的免疫応答を低下させる(Bailerら、J.Immunol.162(12):7534-7542(1999)(非特許文献6))。HIVでは疾患の進行に従ってIL-13のレベルは徐々に低下し、免疫不全状態ではIL-13が抗原提示を増強させ、そしてマクロファージのデノボ(de novo)HIV感染を低減させることが解っている(Bailerら、Eur.J.Immunol.30(5):1340-1349(2000)(非特許文献7))。
【0007】
IL-13の生物学的効果ではサブユニットIL-13Rα1(またはNR4サブユニット)およびIL-4Rαを含む二量体受容体複合体が介在する。IL-13Rα1へのIL-13結合がIL-4Rαとの二量体形成および、ヤヌスキナーゼJAK1およびJAK2、並びにSTAT6、ERKおよびp38などの細胞内メディエーターの活性化を始動させる(Davidら、Oncogene 20(46):6660-6668(2001)(非特許文献8);Perezら、J.Immunol.168(3):1428-1434(2002)(非特許文献9))。
【0008】
IL-13はIL-4の効果と重複する多くの生物学的効果を示す。IL-13およびIL-4は配列により関連しており、そして多くの関連する過程、例えば骨髄造血および単球/マクロファージ炎症誘発性機能の制御に関与している。例えば、IL-13およびIL-4の双方は類似の様式でB細胞に表面分子、例えばMHCクラスIIおよびCD23分子を上方制御させ、そしてIgG4およびIgEの分泌を促進させることが示されている。
【0009】
IL-13およびIL-4の重複する活性は一部、それが共有する二量体受容体複合体により説明することができる。I型IL-13受容体複合体はIL-13Rα1およびIL-4Rαからなり;この同一の受容体複合体はまたII型IL-4受容体複合体でもある(Callardら、Immunology Today 17(3):108(1996)(非特許文献10))。このように、サイトカインを介したシグナル伝達を遮断することによりIL-13受容体複合体の治療的調節を達成することを目指す場合に、IL-13を介したシグナル伝達に拮抗する分子のみならず、IL-13およびIL-4の双方を介したシグナル伝達に拮抗する分子をも有しているのが有用であろう。
【0010】
IL-13Rα1に対する抗体はIL-13受容体複合体を介するIL-13シグナル伝達のアンタゴニストとして作用する可能性がある。国際公開公報第97/15663号(特許文献1)は可能性のある治療薬としてヒトIL-13Rα1に対する抗体を提言している。Gauchatら(Eur.J.Immunol.28:4286-4298(1998)(非特許文献11))は、標識したIL-13と、標識し、固定化した可溶性IL-13Rα1との相互作用を遮断するヒトIL-13Rα1に対するマウス抗体を報告した。抗体はまたトランスフェクトされたHEK-293細胞においてIL-13Rα1へのIL-13の結合をも阻害した。しかしながら、これらの抗体の全てがIL-13誘起の生物学的活性を中和できず、これは完全なIL-13Rα1/IL-4Rα受容体複合体のアンタゴニストではなかったことを示唆している。最近の文献では、Gauchatら(Eur.J.Immunol.30:3157-3164(2000)(非特許文献12))はC41と称する、マウスIL-13Rα1をトランスフェクトしたHEK-293細胞に結合するマウスIL-13Rα1に対するラット抗体を報告した。しかしながら、C41はIL-13誘起の生物学的活性を中和しなかった。さらに、C41はヒトIL-13Rα1の可溶型と反応しなかった。Akaiwaら(Cytokine 13:75-84(2001)(非特許文献13))は酵素イムノアッセイ法により可溶性IL-13Rα1を認識する抗体およびCOS7細胞にトランスフェクトされた、標識した全長IL-13Rα1を報告した。抗体は免疫組織化学で用いられたが、それが中和抗体であったかどうかに関する指摘はない。
【0011】
本発明に従って、IL-13Rα1鎖に結合し、IL-13Rα1鎖へのIL-13結合を遮断し、そしてIL-13Rα1/IL-4Rα複合体を介するIL-13シグナル伝達に拮抗する抗体を作製する。このような抗体はIL-13介在性の生物学的活性を阻害することが提示されている。好ましい態様では、本発明のいくつかの抗体は、驚くべきことにIL-13Rα1/IL-4Rα複合体を介するIL-13およびIL-4の双方によるシグナル伝達に拮抗する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開公報第97/15663号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Howardら、Am.J.Hum.Genet.70(1):230-236(2002)
【非特許文献2】Noguchiら、Hum.Immunol.62(11):1251-1257(2001)
【非特許文献3】Ahdiehら、Am.J.Physiol.Cell Physiol.281(6):C2029-2038(2000)
【非特許文献4】Morseら、Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.282(1):L44-49(2002)
【非特許文献5】Danahayら、Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.282(2):L226-236(2002)
【非特許文献6】Bailerら、J.Immunol.162(12):7534-7542(1999)
【非特許文献7】Bailerら、Eur.J.Immunol.30(5):1340-1349(2000)
【非特許文献8】Davidら、Oncogene 20(46):6660-6668(2001)
【非特許文献9】Perezら、J.Immunol.168(3):1428-1434(2002)
【非特許文献10】Callardら、Immunology Today 17(3):108(1996)
【非特許文献11】Gauchatら(Eur.J.Immunol.28:4286-4298(1998)
【非特許文献12】Gauchatら(Eur.J.Immunol.30:3157-3164(2000)
【非特許文献13】Akaiwaら(Cytokine 13:75-84(2001)
【発明の概要】
【0014】
本明細書の全体にわたって、特に文脈で必要とされない場合は、「含む(comprise)」、または変形である例えば「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」なる語は、記載した要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を含めることを意味するが、いずれかその他の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を排除しないことを意味すると理解される。
【0015】
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は配列識別子番号(配列番号:)により参照される。配列番号:は数字的に配列識別子〈400〉1(配列番号:1)、〈400〉2(配列番号:2)等に相当する。配列識別子の要旨を表1で提供する。配列表は特許請求の範囲の後に提供する。
【0016】
本発明はIL-13Rα1アンタゴニストとして機能する抗体を提供し、そしてIL-13により誘起される特定の症状を治療するために使用することができる。本発明はまた、IL-13Rα1アンタゴニストをこのような症状を患う患者に投与することを含むこれらの症状を治療するための方法をも提供する。また、このような方法で使用するための1つまたは複数のIL-13Rα1アンタゴニストを含む組成物も提供する。
【0017】
IL-13Rα1鎖は哺乳動物、例えばヒトなどのいずれの動物に由来してもよい。好ましいIL-13Rα1鎖はヒトIL-13Rα1鎖、マウスIL-13Rα1鎖、ラットIL-13Rα1鎖、イヌIL-13Rα1鎖、ヒツジIL-13Rα1鎖またはカニクイザルIL-13Rα1鎖である。好ましくは、IL-13Rα1鎖はヒトIL-13Rα1鎖である。異なる種に由来するIL-13Rα1鎖間で高レベルの配列相同性がある。例えば、ヒツジIL-13Rα1はヒトIL-13Rα1に対してアミノ酸レベルで87%の相同性、およびDNAレベルで88.7%の相同性を有している。ヒツジIL-13Rα1はマウスIL-13Rα1に対してアミノ酸レベルで75%の相同性、およびDNAレベルで82.2%の相同性を有している。ヒトIL-13Rα1はマウスIL-13Rα1に対してアミノ酸レベルで75%の相同性、およびDNAレベルで81.3%の相同性を有している。結果的に、本発明はIL-13Rα1鎖またはいずれかの起源に由来するその等価物、例えば最適なアラインメントの後にヒトIL-13Rα1に対して少なくとも約65%の同一性を有するIL-13Rα1を企図する。
【0018】
本発明の抗体はIL-13Rα1またはその一部と結合、相互作用、またはそうでなければ会合する。抗体は特定の種に由来するIL-13Rα1、例えばヒトIL-13Rα1に特異的であってもよく、または異なる種に由来するIL-13Rα1間の配列類似性のレベルを鑑みて、抗体は2つまたはそれ以上の種に由来するIL-13Rα1といくらかの交差反応性を示してもよい。ヒトIL-13Rα1を指向する抗体の場合、特定の環境では、例えば特定の疾患の動物モデルにおける抗体を試験する目的のため、並びに被験動物におけるIL-13および/またはIL-4シグナル伝達が被験抗体により影響を受ける様式で毒性学的研究を行うためには、IL-13Rα1のその他の哺乳動物での型とのいくらかのレベルで交差反応性であることが望ましい。ヒトIL-13Rα1に対する抗体の交差反応性が望ましい種には、サル、ヒツジ、イヌおよびラットなどがある。従って、抗体の1つの好ましい群はいくらかのレベルの種交差反応性を呈する抗体である。特に好ましいこのような抗体の群はいくらかのレベルの種交差反応性を呈するヒトIL-13Rα1に対する抗体である。
【0019】
本発明の抗体には、非限定例としてはIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介するIL-13誘起のシグナル伝達を阻害する抗体、およびIL-13の細胞表面IL-13受容体への結合の結果生じる生物学的効果を阻害するその他の化合物などがある。抗体の好ましい群はIL-13受容体複合体を介するIL-13およびIL-4の双方によるシグナル伝達を阻害する抗体である。
【0020】
好ましくは、抗体はモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。最も好ましくは、抗体はヒトに投与するのに適したヒト化またはヒト抗体である。これには例えばマウスモノクローナル抗体から調製されたヒト化抗体、および例えばトランスジェニックマウスを用いて、またはファージディスプレイにより調製することができるヒトモノクローナル抗体などがある。
【0021】
本発明による抗体には、マウスモノクローナル抗体1D9、およびモノクローナル抗体1D9のヒト化型などがある。
【0022】
本発明は本発明の抗体を投与することによりIL-13および/またはIL-4介在性疾患または症状を調節する方法を企図する。本発明に従って治療される症状には、線維症、ホジキン病、潰瘍性大腸炎、強皮症、肺障害、例えば喘息および慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、腫瘍学的症状、炎症性腸疾患および消化管のその他の炎症性症状、薬剤に対するアレルギー反応、並びにいずれかその他のIL-13介在性疾患または症状などがある。
【0023】
本発明はまたIL-13受容体複合体を介するIL-13および/またはIL-4シグナル伝達を調節する抗体またはその他の作用物質を同定するのに有用なアッセイ系をも提供する。従って、前記アッセイ系に関与する、IL-13Rα1/リガンド相互作用のモジュレーターをスクリーニングする方法が提供される。
【0024】
1D9に対するマウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが2003年3月21日にアクセッション番号第 号で欧州細胞カルチャーコレクション(European Collection of Cell Cultures)(ECACC)、応用微生物学および研究センター、ポートンダウン、ソールズベリー、英国に寄託された。
【0025】
本明細書の全体にわたって用いられる配列識別子の要旨を表1に提供する。
【0026】
(表1)配列識別子の要旨
【0027】
発明の詳細な説明
本発明は概してIL-13Rα1鎖またはそのフラグメント、部分または一部と結合、相互作用またはそうでなければ会合し、そしてIL-13および/またはIL-4によるIL-13受容体介在性シグナル伝達に拮抗する抗体であって、本発明の方法において用いることができる抗体に関する。抗体は好ましくはモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。好ましくは、抗体は単離された、同種のまたは完全にもしくは部分的に精製された形態である。
【0028】
最も好ましくは、抗体はヒトに投与するのに適したヒト化またはヒト抗体である。これには例えばマウスモノクローナル抗体から調製されたヒト化抗体、および例えば以下に記載するようにトランスジェニックマウスを用いて、またはファージディスプレイにより調製することができるヒトモノクローナル抗体などがある。
【0029】
抗体の「結合」という言及は、標的抗原、例えばIL-13Rα1との結合、相互作用または会合を意味する。「IL-13Rα1」という言及は、抗体が結合するエピトープを含むそのフラグメントまたは部分を含む。結果的に、IL-13Rα1への抗体結合という言及は、抗体もしくはその抗原結合部分、一部、フラグメントまたはそのエピトープ含有領域の結合、相互作用または会合を含む。
【0030】
概して、「結合」、「相互作用」または「会合」は抗体のIL-13Rα1またはその部分への特異的結合、相互作用または会合を意味するかまたは含む。
【0031】
IL-13の生物学的効果は、サブユニットIL-13Rα1(またはNR4サブユニット)およびIL-4Rα(以後IL-13受容体と称する)を含む二量体受容体複合体を介する。従って、IL-13受容体複合体を介したIL-13結合および/またはシグナル伝達を遮断するIL-13Rα1に対してもたらされるいくつかの抗体は、IL-13受容体複合体を介したIL-4のシグナル伝達をも遮断することができる。
【0032】
本発明により企図される抗体の実例には、IL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介するIL-13のシグナル伝達を遮断する抗体、および好ましくはIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介するIL-13および/またはIL-4のシグナル伝達を遮断する抗体であって、それによりIL-13誘起の、および/またはIL-4誘起の生物学的活性を阻害する抗体などがある。本明細書にて遮断抗体と称するこのような抗体をIL-13Rα1ポリペプチドまたはその免疫原性部分、例えばIL-13Rα1の細胞外ドメインでもたらすことができ、IL-13受容体複合体を介したIL-13および/またはIL-4のシグナル伝達を遮断する能力に関してアッセイし、スクリーニングすることができる。適当なアッセイ法は、IL-13受容体複合体を発現する細胞へのIL-13の結合を阻害する能力に関して抗体を試験するアッセイ法、またはIL-13受容体複合体を介するIL-13およびIL-4のシグナル伝達の結果生じる生物学的もしくは細胞性応答を低減させる能力に関して抗体を試験するアッセイ法である。
【0033】
1つの態様では、本発明はIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明はIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13およびIL-4のシグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0035】
好ましくは、抗体はモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0036】
最も好ましくは、抗体はヒトの治療に用いるのに適したヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である。
【0037】
このように、好ましい態様では、本発明はIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害するヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である抗体を提供する。
【0038】
特に好ましい態様では、本発明はIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13およびIL-4のシグナル伝達を阻害するヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である抗体を提供する。
【0039】
「抗体」または「複数の抗体」という言及は、非限定例としては完全抗体、抗体フラグメント、例えばFv、Fab、Fab'およびF(ab')2フラグメントなど、ヒト化抗体、ヒト抗体(例えば、トランスジェニック動物で、またはファージディスプレイにより産生される)および遺伝子操作技術により産生されるポリペプチド由来の免疫グロブリンなど、全ての種々の形態の抗体への言及を含む。
【0040】
特記しない場合、本発明の抗体に関して特異性とは、抗体が非IL-13Rα1タンパク質となんら有意な交差反応性を呈さないことを意味すると意図するものである。しかしながら、存在し得るIL-13Rα1のその他の形態(例えば可溶型、スプライシング変種または受容体のフラグメント)との交差反応性がないことを示すと意図するものではなく、またその他の種に由来するIL-13Rα1との交差反応性が存在し得ないことを示すと意図するものでもない。IL-13Rα1のアミノ酸配列は種間でよく保存されており、その他の哺乳動物の受容体型はヒトIL-13Rα1鎖と実質的なアミノ酸相同性を示している。
【0041】
抗体は特定の種に由来するIL-13Rα1鎖、例えばヒトIL-13Rα1に特異的であってもよく、または特定の哺乳動物種に由来するIL-13Rα1鎖間の配列類似性のレベルのために、その他の哺乳動物種に由来するIL-13Rα1鎖といくらかの交差反応性を示し得る。ヒトIL-13Rα1を指向する抗体の場合、特定の環境下でIL-13Rα1のその他の哺乳動物の型といくらかのレベルの交差反応性があるのが望ましい。例えばこのような抗体は、特定の疾患の動物モデルにおいて抗体を試験する目的で、および被験動物におけるIL-13および/またはIL-4シグナル伝達が被験抗体により影響を受ける様式で毒性試験を行うために有用である。ヒトIL-13Rα1に対する抗体の交差反応性が望ましい種には、サル、ヒツジ、イヌおよびラットなどがある。従って、抗体の1つの好ましい群はいくらかのレベルの種交差反応性を呈するものである。特に好ましい抗体の群はいくらかのレベルの種交差反応性を呈するヒトIL-13Rα1に対するこれらの抗体である。
【0042】
本発明の抗体はIL-13Rα1鎖に結合する。IL-13Rα1鎖はヒトIL-13Rα1鎖またはその他の動物に由来する鎖、例えばマウスIL-13Rα1鎖、ラットIL-13Rα1鎖、イヌIL-13Rα1鎖、ヒツジIL-13Rα1鎖、およびカニクイザルIL-13Rα1鎖でよい。好ましくは、IL-13Rα1鎖はヒトIL-13Rα1鎖である。異なる種に由来するIL-13Rα1鎖間で高レベルの配列相同性がある。例えば、ヒツジIL-13Rα1はヒトIL-13Rα1に対してアミノ酸レベルで87%の相同性、およびDNAレベルで88.7%の相同性を有している。ヒツジIL-13Rα1はマウスIL-13Rα1に対してアミノ酸レベルで75%の相同性、およびDNAレベルで82.2%の相同性を有している。ヒトIL-13Rα1はマウスIL-13Rα1に対してアミノ酸レベルで75%の相同性、およびDNAレベルで81.3%の相同性を有している。
【0043】
好ましい態様では、本発明はヒトIL-13Rα1およびカニクイザルIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0044】
別の好ましい態様では、本発明はヒトIL-13Rα1およびヒツジIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0045】
さらに別の好ましい態様では、本発明はヒトIL-13Rα1およびイヌIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0046】
なおさらに別の好ましい態様では、本発明はヒトIL-13Rα1およびラットIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0047】
なおさらに別の好ましい態様では、本発明はヒトIL-13Rα1およびマウスIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0048】
本発明の抗体を周知の手順により調製することができる。例えば「Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses」、Kennetら(編)、Plenum Press、New York(1980);並びに「Antibodies:A Laboratory Manual」、HarlowおよびLand(編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク州(1988)参照。
【0049】
本発明の抗体を産生するための1つの方法は非ヒト動物、例えばマウスまたはトランスジェニックマウスをIL-13Rα1ポリペプチド、またはその免疫原性部分、例えばIL-13Rα1の細胞外ドメインで免疫することを含み、それによりIL-13Rα1ポリペプチドを指向する抗体が前記動物において作製される。
【0050】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の双方をこの方法で産生することができる。双方の型の血清を得るための方法は当技術分野において周知である。ポリクローナル血清はあまり好ましくないが、適当な実験用動物に有効量のIL-13Rα1ポリペプチドまたはその免疫原性部分、例えばIL-13Rα1の細胞外ドメインを注射し、動物から血清を収集し、そしていずれかの公知の免疫吸着技術によりIL-13Rα1特異的血清を単離することにより比較的容易に調製される。この技術により産生された抗体は、産生物が不均一性であるという可能性のために、概してあまり好ましくない。
【0051】
モノクローナル抗体の使用は、それを大量に産生する能力および産生物の均一性のために特に好ましい。従来の手順によりモノクローナル抗体を産生することができる。
【0052】
本発明は、ハイブリドーマ細胞系を産生するための方法が、非ヒト動物、例えばマウスまたはトランスジェニックマウスをIL-13Rα1ポリペプチド、またはその免疫原性部分、例えばIL-13Rα1の細胞外ドメインで免疫し;免疫した動物から脾臓細胞を収集し;収集した脾臓細胞を骨髄腫細胞系に融合させてハイブリドーマ細胞を作製し;そしてIL-13Rα1ポリペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を同定することを含むことを企図する。
【0053】
このようなハイブリドーマ細胞系およびそれにより産生される抗IL-13Rα1モノクローナル抗体は本発明に包含される。ハイブリドーマ細胞系により分泌されるモノクローナル抗体を従来の技術により精製する。ハイブリドーマまたはそれにより産生されるモノクローナル抗体をさらにスクリーニングして特定の望ましい特性、例えばIL-13受容体複合体を介したIL-13およびIL-4シグナル伝達を阻害する能力を有するモノクローナル抗体を同定することができる。
【0054】
本発明の抗体の産生の最初の段階で動物を免疫するのに用いることができるIL-13Rα1ポリペプチドまたはその免疫原性部分はいずれかの哺乳動物起源に由来してよい。好ましくは、IL-13Rα1ポリペプチドまたはその免疫原性部分はヒトIL-13Rα1である。
【0055】
本発明の抗体の抗原結合フラグメントを従来の技術により産生することができる。このようなフラグメントの実例には、非限定例としてはFab、Fab'、F(ab')2および1本鎖Fvフラグメント(sFvまたはscFvと称する)などのFvフラグメントなどがある。抗体フラグメントおよび遺伝子操作技術により産生されたその誘導体、例えばジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)、1本鎖可変領域ドメイン(Ab)分子およびミニ抗体の使用もまた企図される。特記しない場合、本明細書で用いる「抗体」および「モノクローナル抗体」なる用語は完全抗体およびその抗原結合フラグメントの双方を包含する。
【0056】
IL-13Rα1を指向するモノクローナル抗体のこのような誘導体を調製し、そして本明細書に記載するアッセイ法などの公知の技術により、望ましい特性に関してスクリーニングすることができる。本明細書に記載するアッセイ法はIL-13Rα1に結合する本発明の抗体の誘導体を同定し、並びにIL-13受容体複合体を介するIL-13によるシグナル伝達を阻害し、そして好ましくはIL-13受容体複合体を介するIL-13およびIL-4によるシグナル伝達を阻害する活性をも保持するこれらの誘導体を同定するための手段を提供する。特定の技術は、目的のモノクローナル抗体のポリペプチド鎖(またはその部分)をコードするDNAを単離し、そして組換えDNA技術によりDNAを操作することを含む。DNAを目的の別のDNAに融合させるか、または変化させて(例えば変異誘発またはその他の従来の技術による)、例えば1つまたは複数のアミノ酸残基を付加、欠失または置換することができる。
【0057】
抗体ポリペプチドをコードするDNA(例えば重鎖または軽鎖、可変領域のみまたは全長)を、IL-13Rα1で免疫したマウスのB細胞から単離することができる。従来の手順、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりDNAを単離することができる。ファージディスプレイは、それにより抗体の誘導体を調製することができる公知の技術の別の実例である。1つの研究法では、目的の抗体の成分であるポリペプチドをいずれかの適当な組換え発現系で発現させ、そして発現されたポリペプチドを、抗体分子を形成するように組み立てることができる。
【0058】
アミノ酸架橋(短いペプチドリンカー)により重鎖および軽鎖可変領域(Fv領域)フラグメントを連結させて1本鎖ポリペプチドにすることにより1本鎖抗体を形成することができる。2つの可変領域ポリペプチド(VLおよびVH)をコードするDNAの間にペプチドリンカーをコードするDNAを融合することにより、このような1本鎖Fv(scFv)を調製した。得られた抗体フラグメントは2つの可変領域の間の可動性リンカーの長さに依存して二量体または三量体を形成することができる(Korttら、Protein Engineering 10:423(1997))。1本鎖抗体の産生のために開発された技術には、米国特許第4,946,778号;Bird(Science 242:423(1988))、Hustonら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879(1988))およびWardら(Nature 334:544(1989))に記載される技術などがある。本明細書で提供される抗体から誘導される1本鎖抗体は本発明により包含される。
【0059】
1つの態様では、本発明は、IL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介するIL-13によるシグナル伝達を阻害する本発明の抗体の誘導体を提供する。好ましくは、誘導体は、IL-13受容体複合体を介するIL-13およびIL-4によるシグナル伝達を遮断する。
【0060】
目的の抗体とは異なるサブクラスまたはアイソタイプの抗体を誘導する、すなわちサブクラス・スイッチのための技術は公知である。従って、例えばIgG1またはIgG4モノクローナル抗体をIgMモノクローナル抗体から誘導することができ、逆も同様である。このような技術により、規定の抗体(親抗体)の抗原結合特性を有するが、親抗体とは異なる抗体アイソタイプまたはサブクラスに随伴される生物学的特性をも呈する新しい抗体の調製が可能になる。組換えDNA技術を用いてもよい。特定の抗体ポリペプチドをコードするクローン化されたDNA、例えば望ましいアイソタイプの抗体の定常領域をコードするDNAをこのような手順において用いることができる。
【0061】
前記したモノクローナル産生方法を動物、例えばマウスで使用してモノクローナル抗体を産生することができる。このような動物から誘導される従来の抗体、例えばマウス抗体は免疫応答を引き起こし得るので、一般にヒトに投与するのに不適であることが解っている。従って、ヒトへの投与に適した抗体を提供するためには、このような抗体をヒト化する方法に供する必要があろう。このようなヒト化方法は当技術分野において周知であり、そして以下にさらに詳細に記載する。
【0062】
さらなる態様には、キメラ抗体およびヒト化したマウスモノクローナル抗体などがある。このようなキメラまたはヒト化抗体を公知の技術、例えばCDRグラフト化により調製することができ、そして抗体をヒトに投与する場合、免疫原性を低下させる利点を提供する。1つの態様では、キメラモノクローナル抗体はマウス抗体の可変領域(またはその抗原結合部位だけ)およびヒト抗体から誘導された定常領域を含む。また別に、ヒト化抗体フラグメントはマウスモノクローナル抗体の抗原結合部位(相補性決定領域:CDR)およびヒト抗体から誘導された定常領域フラグメント(抗原結合部位を欠く)を含むことができる。キメラおよびヒト化モノクローナル抗体の産生手順にはRiechmannら(Nature 332:323(1988))、Liuら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439(1987))、Larrickら(Bio/Technology 7:934(1989))並びにWinterおよびHarris(TIPS 14:139(1993))に記載されるものなどがある。
【0063】
Kabatら、「Sequences of Proteins Immunological Interest」、第5版、米国保健・福祉省、公衆衛生局(PHS)、米国国立衛生研究所(NIH)、NIH出版物番号91-3242(1991)に記載される系を用いて規定の抗体の相補性決定領域(CDR)を同定することができる。
【0064】
例えば、以下の実施例に記載するように、標的宿主における抗体の免疫原性を低減させるためにマウスモノクローナル抗体1D9をヒト化に供した。マウスモノクローナル抗体1D9はIL-13Rα1に対して特異的および強力な拮抗効果を有し、そしてIL-13受容体を介するシグナル伝達およびL-13受容体を介するIL-4シグナル伝達を阻害する。しかしながら、その他の宿主、特にヒトにおけるモノクローナル抗体1D9の強力な免疫原性により、これらの宿主において治療薬としてモノクローナル抗体1D9を使用するのは不適である。
【0065】
特定の態様では、本発明の抗体はその軽鎖の可変領域内にモノクローナル抗体1D9の軽鎖に見出される少なくとも1つのCDRを含む。モノクローナル抗体1D9のCDRを図10および配列番号:9〜24に記載する。このように、中でも本発明により企図される抗体はモノクローナル抗体1D9の軽鎖可変領域に由来するCDR配列を1から3個全部含む抗体である。さらに、中でも本発明により企図される抗体はモノクローナル抗体1D9の重鎖可変領域に由来するCDR配列を1から3個全部含む抗体である。好ましい態様では、本発明の抗体はモノクローナル抗体1D9の重鎖および軽鎖可変領域に由来するCDR配列を1から6個全部を含む。
【0066】
非ヒト動物においてヒト抗体を作製するための手順もまた開発されており、そして当業者に周知である。抗体は部分的にヒトのものであってもよく、または好ましくは完全にヒトのものであってもよい。例えば、1つまたは複数のヒト免疫グロブリン鎖をコードする遺伝物質が導入されているトランスジェニックマウスを用いて本発明の抗体を産生することができる。このようなマウスを種々の方法で遺伝的に変化させることができる。遺伝子操作により、免疫時に動物により産生される少なくともいくつかの(好ましくは事実上全ての)抗体の内因性免疫グロブリン鎖が置換されたヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖を得ることができる。
【0067】
種々の手段により1つまたは複数の内因性免疫グロブリン遺伝子が不活性化されているマウスが調製されている。ヒト免疫グロブリン遺伝子がマウスに導入され、不活性化されたマウス遺伝子を置換する。動物で産生される抗体は、動物に導入されたヒト遺伝物質によりコードされる22個のヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖を組み込む。このようなトランスジェニック動物を産生し、そして使用するための技術の実例は米国特許第5,814,318号、第5,569,825号および第5,545,806号に記載されており、これらは参照として本明細書に組み入れられる。
【0068】
このように、本発明の抗体は、非限定例としては、IL-13によるシグナル伝達を阻害し、そして好ましくはIL-13受容体複合体を介したIL-13およびIL-4によるシグナル伝達を阻害する部分的ヒト(好ましくは完全ヒト)モノクローナル抗体を含むことができる。
【0069】
ヒト抗体を作製するための別の方法はファージディスプレイである。ヒト抗体を作製するためのファージディスプレイ技術は当業者に周知であり、そして例えばケンブリッジアンチボディテクノロジーアンドモルフォシス社(Cambridge Antibody Technology and MorphoSys)に用いられる方法などがあり、これは国際公開公報第92/01047号、国際公開公報第92/20791号、国際公開公報第93/06213号および国際公開公報第93/11236号に記載されている。
【0070】
本発明の抗体をインビトロまたはインビボで用いることができる。中でも本発明の抗体の用途はIL-13Rα1ポリペプチドの存在を検出するためのアッセイ法(インビトロまたはインビボのいずれか)およびIL-13Rα1ポリペプチドを精製するための免疫親和性クロマトグラフィーである。さらにIL-13受容体を介したIL-13によるシグナル伝達を阻害できる本発明のこれらの抗体、およびIL-13受容体を介したIL-13およびIL-4によるシグナル伝達を阻害できるこれらの抗体を用いてこのようなシグナル伝達の結果である生物学的活性を阻害することができる。
【0071】
従って、1つの態様では、IL-13受容体複合体を介するIL-13またはIL-4のシグナル伝達により(直接的または間接的に)引き起こされるかまたは悪化する障害を治療するための療法への適用にこのような抗体を用いることができる。療法への適用はIL-13受容体を介するIL-13および/またはIL-4によるシグナル伝達を阻害するのに有効な量で哺乳動物に遮断抗体をインビボで投与することを含む。好ましくは、抗体は本発明のヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である。
【0072】
抗体を用いてIL-13およびIL-4のいずれかまたは双方により誘起される疾患または症状、非限定例としては線維症、ホジキン病、潰瘍性大腸炎、強皮症、肺障害、例えば喘息および慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、腫瘍学的症状、炎症性腸疾患および消化管のその他の炎症性症状、並びに薬剤に対するアレルギー反応などを治療することができる。
【0073】
本発明による抗体はマウスモノクローナル抗体1D9、およびヒト化型モノクローナル抗体1D9である。
【0074】
モノクローナル抗体1D9の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を配列番号:27に提示する。モノクローナル抗体1D9の重鎖の可変領域のアミノ酸配列を配列番号:28に提示する。ヒトコンセンサスフレームワークにグラフト化されたVLドメインに由来するマウス1D9 CDR領域のアミノ酸配列を配列番号:25に提示する。ヒトコンセンサスフレームワークにグラフト化されたVHドメインに由来するマウス1D9 CDR領域のアミノ酸配列を配列番号:26に提示する。
【0075】
本発明の抗体には、非限定例としては、その軽鎖に配列番号:25の1から112残基を含むモノクローナル抗体;その重鎖に配列番号:26の1から121残基をさらに、または別に含む抗体、またはその軽鎖に配列番号:27の1から112残基を含むモノクローナル抗体;およびその重鎖に配列番号:28の1から121残基をさらに、または別に含む抗体などがある。
【0076】
本発明の特定のモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体1D9;モノクローナル抗体1D9と交差反応するモノクローナル抗体;モノクローナル抗体1D9と同一のエピトープに結合するモノクローナル抗体;ヒトIL-13Rα1を発現する細胞に対する結合に関してモノクローナル抗体1D9と競合するモノクローナル抗体;モノクローナル抗体1D9の生物学的活性を保持するモノクローナル抗体;およびいずれかの前記の抗体の抗原結合フラグメント、からなる群より選択される。この態様による抗体には実施例で論じる6A9および3F10などが挙げられる。
【0077】
1つの態様では、抗体は、モノクローナル抗体1D9のヒトIL-13Rα1に対する結合親和性と実質的に等価である、ヒトIL-13Rα1に対する結合親和性を有する。モノクローナル抗体1D9はIgG1抗体である。モノクローナル抗体1D9から誘導されるその他のアイソタイプのモノクローナル抗体(非限定例としてはIgG4など)もまた本発明により包含される。いずれかのこのようなモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系もまた本発明により提供される。
【0078】
抗体のサブクラスまたはアイソタイプをスイッチする(変更する)ための手順もまた当業者に周知である。このような手順には、例えばそれにより望ましいサブクラスを付与する抗体ポリペプチド鎖をコードするDNAが親抗体の対応するポリペプチド鎖をコードするDNAに代わって置換される組換えDNA技術が含まれる。この手順は、例えば特定の抗体アイソタイプであることが好ましい特定の抗体療法への適用において、例えばIgG4が好ましい抗体アイソタイプでありうる喘息の治療において有用である。
【0079】
モノクローナル抗体1D9の生物学的活性の1つの実例はIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13およびIL-4によるシグナル伝達を阻害する能力である。1つの態様では、本発明のモノクローナル抗体はモノクローナル抗体1D9の活性に実質的に等価な活性を遮断するIL-13生物学的活性を保持し;そしてモノクローナル抗体1D9の活性に実質的に等価な活性を遮断するIL-4生物学的活性を保持している。このような活性をいずれかの適当な従来のアッセイ法において測定することができる(例えば以下に記載するCD23発現アッセイ法で測定される)。
【0080】
本発明の特定の態様は新規ポリペプチドに向けられる。以下の実施例7、8および9で論じるように、DNAおよびアミノ酸配列情報は本発明の特定の抗体の成分であるポリペプチドに関して決定されている。中でも本発明のポリペプチドは配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27および配列番号:28で提示するアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む精製されたポリペプチドである。インビボで使用するために、ポリペプチドは精製されているのが有利である。ポリペプチドは個々に精製されているか、またはポリペプチドを成分とする抗体が精製されている形態であってもよい。
【0081】
本発明の抗体の、IL-13受容体複合体を介したIL-13および/またはIL-4によるシグナル伝達と干渉する能力を多くのアッセイ法により確認することができる。
【0082】
用いることができるアッセイ法の1つは国際公開公報第01/92340号に記載されており、これは参照として本明細書に組み入れられる。このアッセイ法は、ヒトB細胞における活性化随伴表面抗原CD23の発現を増強する、IL-13およびIL-4双方の能力に基づいている。本発明の抗体を、IL-13およびIL-4により誘起されるCD23発現を阻害する能力に関して試験する。
【0083】
簡単には、ヒトIL-13Rα1に対して生じた抗体をハイブリドーマ上澄または精製されたタンパク質のいずれかの形態で試験することができる。培養物に添加する前に、カットオフ値10kDaのCenticonフィルター装置(Amicon)を用いて遠心により抗体を培養培地(RPMI1640に10v/v%熱不活性化ウシ胎児血清を添加)に対してバッファー交換する。
【0084】
ヒト抹消血B細胞を記載されるように精製する(Morrisら、J.Biol.Chem.274:418-423(1999))。培養培地中のB細胞(3×105/ウェル)を96ウェル丸底マイクロタイタープレートに置き、そして被験抗体と共に室温で30分間予備インキュベートする。次いで組換えヒトIL-13またはIL-4を培養物に加え、そして加湿した5%CO2雰囲気下37℃で20から24時間細胞を培養する。培養期間の最後に細胞を96ウェル培養プレート中、PBS+0.02%NaN3で1回洗浄し、ブロッキングバッファー(PBS+NaN3中、2%正常ウサギ血清+1%正常ヤギ血清)に再懸濁する。
【0085】
フィコエリスリン(PE)抱合CD23モノクローナル抗体(mAb)またはPE抱合アイソタイプ対照モノクローナル抗体(双方ともPharmingen)を最終希釈1:10で細胞に加える。細胞を4℃で30分間インキュベートし、PBS+NaN3で3回洗浄し、そしてFacScan(Becton Dickinson)でCD23発現に関して分析する。
【0086】
陰性対照、例えば、ハイブリドーマ成長培地と共に培養した細胞またはアイソタイプ対合非遮断ヒト抗hIL-13受容体抗体が含まれる。予めhIL-4およびhIL-13の双方の結合および機能を遮断することが示されている抗huIL-4Rマウスモノクローナル抗体(R&D Systems)を、IL-4およびIL-13によるCD23誘導の中和に関する陽性対照として用いることができる。
【0087】
IL-13Rα1アンタゴニストとして機能し、そしてIL-13および/またはIL-4のいずれかによるシグナル伝達を遮断する抗体を同定するための別のアッセイ法を以下および実施例に記載する。
【0088】
このアッセイ法では、293A12細胞を操作して、タンパク質gp130の膜貫通および原形質ドメインに操作可能なように連結されたIL-13Rα1またはIL-4Rαのいずれかの細胞外ドメインを含むキメラポリペプチドを発現させる。操作された293A12細胞がIL-13またはIL-4の存在下にある場合、キメラポリペプチドは、シグナル伝達をもたらすヘテロ二量体受容体複合体を形成する。IL-13またはIL-4を介するシグナル伝達は、同定可能なシグナル、例えばレポーター分子をコードする遺伝子の活性化を介して観察される(実施例5)。
【0089】
IL-13受容体を介したIL-13またはIL-4シグナル伝達に拮抗する抗IL-13Rα1抗体はレポーター分子のIL-13およびIL-4を介した活性化を阻害する。
【0090】
シグナル伝達が、同定可能なシグナルを提供するレポーター分子をコードする遺伝子の発現を制御する経路を活性化する細胞を選択することにより、シグナル伝達のレベルが都合よく決定される。好ましいレポーター分子は酵素、例えばルシフェラーゼである。
【0091】
293A12細胞はルシフェラーゼレポーター分子をコードする遺伝物質を安定的に発現する293T細胞であるため、特にこのアッセイに好ましい(実施例3)。ルシフェラーゼレポーター分子の発現はgp130シグナル伝達により活性化されるSTAT-3シグナル伝達経路により制御される。
【0092】
gp130に由来するシグナル伝達部分は、STAT-3活性化ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を導くSTAT-3リン酸化を誘起するため特に好ましい。しかしながら、その他の分子に由来するシグナル伝達部分を用いることもできる。ポリペプチドのシグナル伝達部分の選択はレポーター分子をコードする遺伝子の活性化またはプロモーター部分に対合しなければならない。
【0093】
例えば前記および実施例4の本発明の細胞ベースのアッセイ法をIL-13Rα1/リガンド相互作用のモジュレーターをスクリーニングするための基礎として利用することができることは当業者に理解される。このような方法は当業者に周知であるが、方法の簡単な説明を本明細書で提供する。方法は、リガンド受容体結合のいかなる拮抗も不在であり、シグナル、例えばルシフェラーゼ発現を検出することができる条件下で、適当に操作された細胞をシグナル産生量のIL-13またはIL-4に供することを含む。次いで被験化合物の存在下で暴露を行い、そして検出されたシグナルのレベルを被験化合物の不在下で検出されたレベルと比較する。被験化合物は、化合物ライブラリー、例えば天然産生物の抽出物のライブラリーまたは合成化合物のライブラリーを含むことができる。または、抗体可変ドメイン等のファージディスプレイライブラリーまたはIL-13Rα1に対するモノクローナル抗体のパネルをアッセイにわたってスクリーニングしてもよい。
【0094】
本発明のアッセイ法において用いることができるキメラポリペプチドは実施例1および2に記載され、そして配列番号:8および配列番号:10に示すアミノ酸配列を含む。
【0095】
このアッセイ法での使用が企図されるキメラポリペプチドをコードするcDNAは配列番号:7および配列番号:9から選択されるヌクレオチド配列を含む。配列番号:7により定義される配列はgp130の膜貫通および原形質ドメインに融合されたIL-4Rα細胞外ドメインをコードする配列を含む。配列番号:9はgp130の膜貫通および原形質ドメインに融合されたIL-13Rα1細胞外ドメインをコードする配列を含む。
【0096】
293A12細胞が本発明のアッセイ法において記載されるが、その他の細胞を使用してもよい。概して、真核細胞および、さらに特に哺乳動物細胞を用いる。哺乳動物細胞をヒト、家畜動物、研究室実験用動物およびコンパニオン動物から誘導することができる。本明細書で企図される哺乳動物以外の動物の細胞には、鳥類の種、爬虫類の種、両生類の種および昆虫の種に由来する細胞などがある。好ましくは、細胞は内因性のγcを欠く。
【0097】
「操作可能なように連結された」なる用語は、互いに機能的な相互作用になるように一緒に会合している分子を含むその最も広義な文脈で使用される。概して、その会合は化学的連結または結合によるものである。好ましくは、化学的連結または結合はペプチド結合である。従って、用語はペプチド結合を介して互いに連結された近隣の一連のアミノ酸を含むポリペプチドを含み、ここで一方の近隣の一連のアミノ酸はリガンド結合特性を有し、そして他方の近隣の一連のアミノ酸はシグナル伝達特性を有している。
【0098】
薬学的に許容される担体および/または希釈剤にはいずれかおよび全ての溶媒、分散培地、コーティング、抗細菌および抗真菌薬、張力を調整するために用いられる作用物質、緩衝液、キレート剤、並びに吸収遅延剤等などがある。薬学的活性な物質のためのこのような培地および作用物質の使用は当技術分野において周知である。いずれかの従来の培地または作用物質が活性成分と適合しない場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が企図される。補足の活性成分を組成物に組み込むこともできる。
【0099】
注射用の使用に適した薬学的形態には、滅菌水性溶液(可溶性である場合)および滅菌注射用溶液の即時調製のための滅菌粉末などがある。これは製造および保存の条件下で安定でなければならず、そして微生物、例えば細菌および真菌の夾雑作用に対して保存されなければならない。担体は例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、その適当な混合物、および植物油を含む溶媒または希釈剤培地でよい。例えば界面活性剤の使用により適切な流動性を維持することができる。微生物の作用は、種々の抗細菌および抗真菌薬、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、サーメロサール等により防御されうる。多くの場合、張力を調整するための作用物質、例えば糖または塩化ナトリウムを含むのが好ましい。吸収遅延化剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物において使用することにより、注射用組成物の吸収を遅延できる。組成物は緩衝液およびキレート剤を含んでいてもよい。
【0100】
必要な量の活性化合物を適当な溶媒中活性成分および選択的に必要とされるその他の活性成分と共に組み込み、続いて滅菌濾過またはその他の適当な滅菌手段を行うことにより滅菌注射用溶液を調製する。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、適当な調製方法には真空乾燥および凍結乾燥技術などがあり、これにより活性成分に任意のさらに望ましい成分を加えた粉末を得ることができる。
【0101】
このような治療上有用な組成物における活性化合物の量は、適当な用量が得られるような量である。
【0102】
本発明の組成物はIL-13またはIL-4が介在する症状、非限定例としては線維症、ホジキン病、潰瘍性大腸炎、強皮症、肺障害、例えば喘息および慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、腫瘍学的症状、炎症性腸疾患および消化管のその他の炎症性症状、薬剤に対するアレルギー反応、並びにいずれかその他のIL-13介在性疾患または症状を調節するのに有用である。
【0103】
本発明のヒトおよびヒト化抗体並びに特にヒト化1D9はこのような症状の治療に有用である。IL-13および/またはIL-4のIL-13Rα1との相互作用の結果生じるいずれかの有害な症状を本発明の抗体、例えばヒト化1D9の投与により治療または予防することができる。
【0104】
従って、本発明の別の態様は、IL-13および/またはIL-4が介在する症状、非限定例としては炎症性症状を治療または予防するための方法を企図し、前記方法は対象に有効量の抗体、例えばヒト化1D9を、IL-13受容体複合体を介したIL-13および/またはIL-4シグナル伝達を阻害するのに十分な時間および条件下で投与することを含む。
【0105】
この文脈で「有効量」とは、IL-13受容体複合体を介するIL-13および/またはIL-4シグナル伝達を少なくとも40%まで、好ましくは少なくとも50%まで、さらに好ましくは少なくとも60%まで、さらになお好ましくは少なくとも70から80%まで、または90%以上低減させるのに十分な抗体の量である。
【0106】
徴候の改善レベルで前記方法を測定することもできる。従って、有効量は少なくとも部分的に、例えば炎症の徴候を改善するのに必要な量である。
【0107】
好ましくは、対象はヒトである。しかしながら家畜用およびコンパニオン動物のための獣医学への適用もまた企図される。このような場合は、哺乳動物による抗体に対する免疫原性応答を避けるように設計された適当な抗体を調製することが必要であろう。
【0108】
従って、特定の態様では本発明はヒト対象においてIL-13またはIL-4介在性症状の影響を改善する方法が提供され、前記方法は前記対象に有効量のヒト化1D9モノクローナル抗体またはその等価物を炎症の影響を改善するのに十分な時間および条件下で投与することを含む。
【0109】
本発明はさらに、対象の炎症性症状の治療または予防における薬剤の製造におけるヒト化1D9またはその等価物の使用を企図する。
【0110】
ヒト化1D9を用いてそこに抱合された特定の薬剤を特定の部位、例えばIL-13Rα1受容体を担持する細胞に分配することもできる。ヒト化1D9抗体を用いて活性なIL-13Rα1受容体をスクリーニングするための画像分析を行うこともできる。
【0111】
以下の非限定的な実施例により本発明をさらに説明する。
【0112】
実施例1
IL-13Rα1/gp130キメラの構築
キメラIL-13Rα1/gp130 cDNA分子を作製するために、pEFBOSベクタークローニング用のAsc1制限酵素部位を含有する5'オリゴマーとgp130 cDNAに相同な重複領域を含有する3'オリゴマーと共にIL-13Rを増幅した。gp130 cDNAを増幅するために用いたオリゴマーはMlu1制限酵素部位を含有する3'オリゴマーを含んだ。
IL-13R1オリゴマー
gp130オリゴマー
【0113】
キメラcDNAの構築に必要なIL-13Rα1およびgp130領域を増幅するためのPCR条件は双方の分子に関し同一であった。94℃で2分間を1サイクル、94℃で10秒間、50℃で10秒間、68℃で1分間を35サイクル、そして68℃で5分間を1サイクル。PLATINUM Pfx DNAポリメラーゼキット(Invitrogen)を用いて分子を増幅した。
【0114】
前に記載した反応から作製されたPCR産物を用いて、伸長時間を60秒から90秒に延長した以外は用いたのと同一の条件でキメラcDNA分子を増幅した。キメラcDNA分子を作製するために用いたオリゴマーは、
であった。
【0115】
N末端にマウスIL-3シグナル配列およびFLAGペプチドを含有するpEFBOS哺乳動物発現ベクターのMlu1制限酵素部位にキメラcDNAをクローン化した。アマシャム(Amersham)ライゲーションキットを用いてクローニングを実施した。
【0116】
実施例2
IL-4Rα/gp130キメラの構築
チタンRT-PCRキット(Roche)を用いてジャーカット細胞から単離したmRNAからIL-4RαをRT-PCRにより増幅した。IL-4Rαを増幅するために用いたオリゴマーは、
であった。
【0117】
PCR条件は以下のとおりであった。50℃で30分間、94℃で2分間を1サイクル、94℃で30秒間、50℃で30秒間、68℃で1分間を35サイクル、そして68℃で7分間を1サイクル。
【0118】
キメラIL-4Rα/gp130 cDNA分子を作製するために、pEFBOSベクタークローニング用のAsc1制限酵素部位を含有する5'オリゴマーとgp130 cDNAに相同な重複領域を含有する3'オリゴマーからなるオリゴマーと共にIL-4Rαを増幅した。gp130 cDNAを増幅するために用いたオリゴマーはMlu1制限酵素部位を含有する3'オリゴマーを含んだ。
IL-4Rオリゴマー
gp130オリゴマー
【0119】
キメラcDNAの構築に必要なIL-4α受容体およびgp130領域を増幅するためのPCR条件は双方の分子に関し同一であった。94℃で2分間を1サイクル、94℃で10秒間、50℃で10秒間、68℃で1分間を35サイクル、そして68℃で5分間を1サイクル。PLATINUM Pfx DNAポリメラーゼキット(Invitrogen)を用いて分子を増幅した。
【0120】
前に記載した反応から作製されたPCR産物を用いて、伸長時間を60秒から90秒に延長した以外は用いたのと同一の条件でキメラcDNA分子を増幅した。キメラcDNA分子を作製するために用いたオリゴマーは、
であった。
【0121】
N末端にマウスIL-3シグナル配列およびFLAGペプチドを含有するpEFBOS哺乳動物発現ベクターのMlu1制限酵素部位にキメラcDNAをクローン化した。アマシャムライゲーションキットを用いてクローニングを実施した。
【0122】
実施例3
A12細胞の作製
リポフェクタミン(Life Technologies、ロット番号KE4Y01)を用いて293T細胞(Amrad Biotechから入手)をAPRE-luc(Nakajimaら、EMBO J.15:3651-3658(1996))10μgおよびpGK-puro 1μgと同時トランスフェクトした。
【0123】
25μg/ml プロマイシン中で細胞を選択し、そして陽性クローンをルシフェラーゼ応答に関して試験した。
【0124】
続いて細胞系A25-20をさらに限界希釈によりクローン化し、クローン293T-A12を得た。
【0125】
実施例4
IL-13Rα1相互作用の分析のためのアッセイ法の開発
ヒト因子依存性(GM-CSF、IL-6、IL-4、またはIL-13等)TF-1細胞は以前、マウスおよびヒトモノクローナル抗体の中和/阻害活性の評価に基づく、IL-13活性に関する標準バイオアッセイ法として使用された。しかしながらアッセイ法はIL-13に対する応答性が相対的に乏しく、そしてバックグラウンド比率に対してシグナルが低く、非常に信頼性を欠いていることが判明した。
【0126】
細胞ベースアッセイ法の開発
本発明者らはキメラ受容体戦略に基づくアッセイ法を開発した。戦略にはIL-13Rα1およびIL-4Rαの双方の細胞外ドメインをgp130の膜貫通および原形質ドメインに融合させることを含む。293A12細胞系(STAT-3応答性プロモーターの調節下でルシフェラーゼレポーターの安定的発現を伴う293T誘導体)におけるこれらの2つのキメラ受容体の産生に続いて、IL-13を介した二量体形成により、STAT-3、そして続いてルシフェラーゼレポーター遺伝子発現が活性化される(図1)。
【0127】
この戦略の重要な局面は、それによりIL-13Rα1アンタゴニスト、例えばIL-4 II型受容体複合体を介したIL-4シグナル伝達を阻害するモノクローナル抗体の同定が可能になることである。IL-4Rαおよびγcを組み込むI型受容体複合体、並びにIL-4RαおよびIL-13Rα1を組み込むII型受容体複合体を介してIL-4はシグナルを伝達する。細胞系、例えばTF-1はγcおよびIL-13Rα1を同時発現し、IL-4は2つの受容体複合体のいずれかを介してシグナルを伝達できるため、TF-1はこの目的に適さない。対照的に、本発明の操作された細胞系では、293T細胞γc発現に関わらず、II型複合体を介するIL-4シグナル伝達のみがルシフェラーゼ発現を導くはずである。
【0128】
IL-13Rα1およびgp130 cDNAを鋳型として用いて、スプライス・重複・伸長PCRによりヒトIL-13Rα1-gp130キメラ受容体cDNAを作製し、そしてN末端FLAG標識タンパク質として発現させるためにpEFBOSにクローン化する。IL-4Rα-gp130キメラ受容体を作製するために、IL-4Rα cDNA(細胞外ドメインのみ)をTF-1細胞から抽出したmRNAを用いてRT-PCRによりクローン化する。スプライス・重複・伸長PCRによりキメラIL-4Rα-gp130受容体cDNAを作製し、そしてN末端FLAG標識タンパク質として発現させるためにこれもまたpEFBOSにクローン化する。
【0129】
双方のキメラ受容体の詳細を図2に略図形式で提供する。COS細胞における一過性の発現、続いて抗FLAGまたは抗IL-13Rα1抗体を用いるウェスタンブロット分析により、双方の構築物が予測される分子量のタンパク質をコードすることを確認した(図3)。
【0130】
安定した系を単離するために、293A12細胞をキメラ受容体構築物およびハイグロマイシン抵抗性遺伝子をコードするベクターで同時トランスフェクトする。ハイグロマイシン選択に続いて、100個の単離された抵抗性コロニーを採取し、そして48および24ウェルプレートに広げる。続いて56個の採取したコロニーをLIF(+ve対照)、IL-13およびIL-4の存在下、ルシフェラーゼに関してアッセイする。アッセイした56個のコロニーのうち13個はLIFに加えてIL-13およびIL-4の双方に応答してルシフェラーゼを発現するようであり(表2)、そしてこれらのうち11個を凍結およびさらなる分析のために展開した。
【0131】
ノイズ比率に対して最高のシグナルを伴う2つの細胞系(3.1.2および3.2.4)を続いて限界希釈によりクローン化し、そして双方で、IL-4、IL-13、およびLIFに関する総量応答分析を行った(図4)。双方の細胞系に関して、IL-13に対する応答はLIFに関して観察されたものに類似するようであり、100から200pg/mlで観察された最大活性の50%であった。IL-4に関しては、双方の系において2から4ng/mlで観察された最大活性の50%であった。先のデータと一致して、双方の系でノイズ比率に対するシグナルは10を超える。データはこれらの細胞系がIL-13またはIL-4のいずれかに関し、最良の細胞ベースアッセイ法に相当することを示している。
【0132】
分子アッセイ法
IL-13Rα1のIL-13との相互作用に基づく分子アッセイ法は双方のモノクローナル抗体、および可能性としては、小型の分子アンタゴニストに関する最良の1次スクリーニングに相当する。しかしながら前記したように、IL-13とIL-13Rα1との相互作用は弱く(>200nM)、そして単純なELISAベースの研究法に反応しない。FRETおよび蛍光偏光ベースアッセイ法が企図されているが、このようなアッセイ法の開発は労働および物質集約的である。
【0133】
IL-13Rα1(ヒトまたはマウス)の細胞外ドメインおよびヒトIgGのFc部分を組み込むキメラ受容体タンパク質が開発されている(R&D Systems)。これらのキメラタンパク質はFc領域間ジスルフィド結合に基づく、前もって形成された二量体として発現し、そして受容体の単量体形態よりもより堅固にIL-13と会合すると予測される。
【0134】
最初のバイオセンサー研究に関しては、ヒトIL-13をバイオセンサーチップに固定し、そしてヒトおよびマウスIL-13Rα1-Fc結合の用量反応分析を完了した。双方のキメラ受容体はヒトIL-13と会合し、ヒト受容体で得られたものよりも実質的に高い、マウス受容体に関して得られたシグナルを伴った。類似の結果が固定されたマウスIL-13で得られる。これらの知見によりIL-13の種交差活性が確認される。この相互作用の特異性を確認するために、競合結合ベースの研究法を行う。一定の濃度のキメラマウス受容体タンパク質を力価測定した可溶性マウスIL-13と共にインキュベートし、そして受容体の、固定されたマウスIL-13に対する結合を評価した。可溶性IL-13はチップに対する結合に関して用量依存的な様式で競合することができた。キメラヒト受容体を用いて類似のデータが得られた。
【0135】
この研究で得られたセンサーグラムを、以前に単量体受容体タンパク質で得られたデータに質的に比較し、結合動態における実質的な改善を提示した。これは、受容体の単量体形態と比較して、二量体形態のためにより遅くなったオフ率に起因する改善である。この相互作用をさらに定量化するために、ヒトおよびマウスのキメラ受容体タンパク質並びに固定されたヒトおよびマウスIL-13の双方を用いて完全な用量反応分析を行った。マウスIL-13に対するキメラヒト受容体およびキメラマウス受容体の結合に関して得られた1次データを表3に提示する。キメラマウス受容体はキメラヒト受容体と比較して、ヒトおよびマウス双方のIL-13に関しておよそ10倍大きい親和性を有しているようである。それにも関わらず、キメラヒト受容体は受容体の単量体形態と比較してIL-13に関する親和性を100倍上昇させることを実証している。
【0136】
バイオセンサーデータにより、単量体形態と比較して受容体の二量体形態に関する結合親和性の実施的な上昇が示され、そしてこれは分子アッセイ法に対するELISAベースの研究法が実行可能であり得ることを示唆している。予備実験により、抗huIg-HRPO抱合体を用いて可溶性キメラ受容体のプレート結合マウスIL-13との相互作用を容易に検出できることが示された。予測されたように、マウス受容体で得られるシグナルと等価のシグナルを得るためにはより高濃度のヒト受容体が必要である。続いて、双方のキメラマウス受容体およびキメラヒト受容体を種々濃度のプレート結合IL-13にわたって力価測定して最適なアッセイ条件を確立した。結果により、キメラヒト受容体は2.5μg/ml以上の濃度のプレート結合IL-13を用いて0.312〜10μg/mlの用量範囲にわたって力価測定されることが示された。相対して、キメラマウス受容体は1.25μg/ml以上の濃度のプレート結合IL-13を用いて0.02〜0.625μg/mlの用量範囲にわたって力価測定される。予測されたように、対照キメラ受容体、Flt-Fcはこのアッセイ法における結合がなかった。
【0137】
実施例5
IL-13Rα1特異的マウスモノクローナル抗体の分析
生化学的アッセイ法-バイオセンサーおよびELISAを用いる分析
最初に、ELISAおよびバイオセンサーの双方に基づく研究法を用いてマウスモノクローナル抗体1D9を、IL-13とキメラヒトIL-13Rα1-FcおよびキメラマウスIL-13Rα1-Fcの相互作用を阻害するその能力に関して試験する。バイオセンサー研究では、1D9は明らかにキメラヒト受容体のヒトおよびマウス双方のIL-13との相互作用を阻害するが、キメラマウス受容体の結合には影響を及ぼさない(図5)。ELISAベースのアッセイ法でも同一の結果が得られる。1D9は対照モノクローナル抗体と比較してキメラヒト受容体の強力なインヒビターであるが、キメラマウス受容体のマウスIL-13への結合には影響を及ぼさない(図6)。1D9用量反応分析および別の用量反応分析を組み込んだバイオセンサー研究を、ELISAを用いて行った。これらの結果により、1D9は強力なアンタゴニストであり、IC50はアッセイ法で用いた標的受容体の濃度(ELISAで〜20nM)に類似することが実証された。マウスではなくヒトIL-13Rα1に関する1D9の選択性もまたウェスタンブロット分析を用いて実証される。
【0138】
さらなる研究では、別のマウスモノクローナル抗体を、IL-13とキメラヒト受容体の相互作用を阻害するその能力に関してELSIAにより試験する。1D9と同一のエピトープと相互作用するモノクローナル抗体6A9は強力なアンタゴニスト活性を示す(図7)。モノクローナル抗体3F10は異なるエピトープと結合し、そして部分的な阻害活性を有するようであった。対照的に、他の関連性のないエピトープと結合し、そしてウェスタンブロット分析において最も有用であるモノクローナル抗体2A2はキメラ受容体リガンド相互作用を阻害できない。予測されたように、関連性のない対照モノクローナル抗体2H10および6C12は結合に影響を及ぼさなかった。
【0139】
細胞ベースアッセイ法を用いる分析
クローン化されていないIL-13/IL-4応答性のトランスフェクトされた293A12誘導体である3.2.4を展開させ、そしてIL-13Rα1特異的マウスモノクローナル抗体1D9、6A9および2A2のアンタゴニスト活性を評価するのに用いる。3.2.4細胞を力価測定したモノクローナル抗体中45分間予備インキュベートした後、IL-13またはIL-4のいずれかを最終濃度10または1ng/mlで添加する。ルシフェラーゼ産生を24時間で評価する。
【0140】
図8に提示する結果により、生化学的アッセイデータと合致して、モノクローナル抗体1D9および6A9(モノクローナル抗体2A2ではない)はIL-13を介したルシフェラーゼ発現を阻害することができることが実証される。6A9および1D9の双方に関して、阻害活性は1ng/mlのIL-13で最も顕著であった。1D9は試験したモノクローナル抗体の用量範囲にわたって1ng/ml IL-13に対する応答をほぼ完全に阻害し、6A9よりもさらに強力なようであった。陰性対照の関連性のないモノクローナル抗体2H10は予測されたようにIL-13誘起のルシフェラーゼ発現に影響を及ぼさなかった。
【0141】
生化学ベースのアッセイ法および既存の細胞ベースのアッセイ法とは異なって、3.2.4系によりII型IL-4受容体複合体を介するIL-4シグナル伝達に及ぼすIL-13Rα1特異的モノクローナル抗体の影響を評価することが可能になる。図9に提示する結果により、IL-13を介した活性を阻害することができる双方のモノクローナル抗体はまたIL-4を介したルシフェラーゼ発現を阻害することもできることが実証される。また、影響は10ng/mlと比較して1ng/mlのサイトカインで実質的により顕著であり、そしてまた2つの抗体のうち1D9が最も強力なようであった。IL-13と同様に、モノクローナル抗体2A2も、陰性対照モノクローナル抗体2H10もIL-4誘起のルシフェラーゼ発現に影響を及ぼさなかった。
【0142】
実施例6
マウス抗体可変領域のクローニングおよびシークエンシング
1D9モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞からメッセンジャーRNAを調製し、そしてオリゴdTプライマーを用いて逆転写してcDNAを産生した。アミノ末端アミノ酸配列および抗体アイソタイプに基づく部分的縮重PCRプライマーを用いて成熟マウス重鎖および軽鎖可変ドメインを増幅し、そしてクローニングのために制限酵素部位を組み込んだ。続くクローンおよびPCR産物をシークエンシングして1D9の各可変領域のアミノ酸配列を表した(図1)。
【0143】
実施例7
ヒトFab鋳型の構築
合成ヒトフラグメント抗体結合(Fab)を、1D9マウス抗体の中間およびヒト化変種の鋳型として合成オリゴヌクレオチドから作製した。合成ヒトFabは最も豊富なヒトサブクラス(VLκサブグループIおよびVHサブグループIII)およびヒト定常領域(REIヒトκ1軽鎖CLおよびIgG1 CH1)のコンセンサス配列から誘導された可変ドメイン配列からなった。続いて合成ヒトFab配列を単一の大腸菌発現ベクターに挿入して可溶性か、またはファージディスプレイされているかのいずれかの機能的Fabの発現のためのジシストロン性構築物を作製した。
【0144】
実施例8
CDRグラフト化Fabおよびマウス-ヒトキメラFabの作製
ヒト化のための出発点として、親1D9抗体の6個の相補性決定領域(CDR)を合成ヒトFab上にグラフト化することによりCDRグラフト化Fabを作製した。ヒトフレームワークによるマウスCDRの正確な提示、そして従って、タンパク質結合親和性の保持のために、CDRグラフトFab内の重要なフレームワーク残基の最適化がしばしば必要である。キメラFabフラグメントはその抗原結合特性において完全マウスFabフラグメントと等価であり、そのためにCDRグラフト化Fabがフレームワーク最適化を必要とするかどうかを決定するために用いることができる。従って対応する合成ヒト定常ドメインに融合されたマウス1D9重鎖および軽鎖可変領域からなるマウス-ヒトキメラFabフラグメントを抗原結合親和性に関する参照として作製した。
【0145】
実施例9
キメラおよびCDRグラフト化Fabの結合親和性の比較
競合に基づくアッセイ法においてCDRグラフト化およびキメラFabのIL-13Rα1に関する結合親和性を、ELSIA様式でファージディスプレイされたFabとして(図11A)、およびBiacoreにより精製された可溶性タンパク質として(図11B)の双方で比較した。CDRグラフト化Fabは参照マウス-ヒトキメラFabとしてIL-13Rα1に関して類似の親和性を有している。これは、CDRグラフトFabがフレームワーク残基の最適化を必要とせず、そしてヒト化されていると考えることができることを示している。
【0146】
当業者には本明細書に記載の本発明を特記したもの以外に変更および修飾が可能であることが理解されよう。本発明は全てのこのような変更および修飾を含むと理解されるべきである。本発明はまた本明細書において言及したかまたは示した全ての工程、特徴、組成物および化合物を、個々にまたは一括して、そしていずれかおよび全ての、いずれか2つまたはそれ以上の前記工程または特徴の組み合わせで含む。
【0147】
(表2)トランスフェクトされたFLAG標的化IL-13Rα1-gp130およびIL-4Rα-gp130並びに採取した293A12コロニーのLIF、IL-13およびIL-4に対する応答
*LIF、IL-13およびIL-4は全て最終濃度100ng/mlで24時間アッセイ法に用いた。
*代表的なデータ、56個のコロニーのうちの12個を評価した。
【0148】
(表3)キメラマウスおよびヒトIL-13Rα1-Fcタンパク質の固定されたマウスおよびヒトIL-13に関する親和性(KD)
【0149】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】IL-13またはIL-4を介するキメラ受容体の二量体形成が、gp130細胞内ドメインを介するSTAT-3リン酸化、そして続いてSTAT-3活性化ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を誘起することを示す図である。
【図2】IL-13Rα1またはIL-4Rα細胞外ドメイン並びにgp130の膜貫通および細胞内ドメインを組み込むキメラ受容体の構築を示す図である;N末端FLAG標識タンパク質として発現させるためにpEFBOSベクターにクローン化する。
【図3】COS細胞におけるキメラ受容体構築物の一過性発現を示す写真である。COS細胞をFLAG標識IL-13Rα1-gp130、FLAG標識IL-4Rα-gp130(2個の別個のクローン)または対照β-galをコードするpEFBOSでトランスフェクトした。細胞ライゼートを72時間に収集し、そしてSDS-PAGEおよびウェスタントランスファーの後、抗FLAG抗体またはIL-13Rα1特異的モノクローナル抗体1D9のいずれかでプローブした。
【図4】キメラ受容体トランスフェクトされた293A12系3.1.2および3.2.4のLIF、IL-13およびIL-4に対する用量応答分析を示すグラフである。293A12細胞はSTAT-3ルシフェラーゼレポーター構築物を安定的にトランスフェクトした293T細胞の誘導体である。最初の分析の後、系3.1.2(A)および3.2.4(B)を展開させて、そして力価測定したLIF、IL-13およびIL-4に対して検定した。双方の系および別の系3.2.5を限界希釈によりクローン化した。アッセイ条件は5×104セル/ウェル、24時間インキュベーションであった。
【図5】キメラヒトIL-13Rα1-FcのヒトおよびマウスIL-13への結合のモノクローナル抗体1D9阻害のバイオセンサー分析を示すグラフである。分析の前にモノクローナル抗体1D9およびキメラ受容体を、指示した濃度で1時間予備インキュベートした。
【図6】マウスモノクローナル抗体1D9はプレート結合マウスIL-13へのキメラヒト(A)の結合を阻害するが、キメラマウス(B)IL-13Rα1-Fcの結合を阻害しないことを示すグラフである。力価測定したキメラ受容体タンパク質をモノクローナル抗体(最終濃度50μg/ml)と共に予備インキュベートした後、マウスIL-13でコートしたアッセイプレートに移した。抗VEGF-B特異的モノクローナル抗体6C12を陰性対照として用いた。
【図7】キメラヒトIL-13Rα1のプレート結合マウスIL-13への結合を阻害する能力に関してさらなるIL-13Rα1特異的マウスモノクローナル抗体の分析を示すグラフである。力価測定したキメラヒト受容体をIL-13Rα1特異的モノクローナル抗体(1D9、6A9、3F10、2A2)または陰性対照抗体(2H10、6C12)と共に最終濃度50μg/mlで45分間予備インキュベートした後、アッセイプレートに移した。
【図8】ヒトIL-13Rα1に対するマウスモノクローナル抗体がIL-13に対する3.2.4応答を阻害することを示すグラフである。3.2.4細胞を10または1ng/ml IL-13の存在下24時間培養し、そして指示した濃度のモノクローナル抗体、モノクローナル抗体1D9、6A9および2A2はIL-13Rα1特異的モノクローナル抗体であり、そして2H10は陰性対照抗体に対合するアイソタイプであった。阻害パーセンテージを(サイトカイン+モノクローナル抗体に対する応答/サイトカインのみに対する応答)×100から計算する。
【図9】ヒトIL-13Rα1に対するマウスモノクローナル抗体がIL-4に対する3.2.4応答を阻害することを示すグラフである。3.2.4細胞を10または1ng/ml IL-4の存在下24時間培養し、そして指示した濃度のモノクローナル抗体、モノクローナル抗体1D9、6A9および2A2はIL-13Rα1特異的モノクローナル抗体であり、そして2H10は陰性対照抗体に対合するアイソタイプであった。阻害パーセンテージを(サイトカイン+モノクローナル抗体に対する応答/サイトカインのみに対する応答)×100から計算する。
【図10】マウスモノクローナル抗体1D9可変ドメインおよびヒトコンセンサスフレームワークのアミノ酸配列の表示である。配列の番号付けはKabatら(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版、1991年、編、Bethesda:Public Health Services、National Institutes of Health)に準じ、そして重要なフレームワーク残基を黒丸で示す(Bacaら、J.BIol.Chem.272(16):10678-10684(1997))。CDR配列には下線を付し、そしてKabatら(1991、前記)の配列定義に従って定義するが、CDR-H1は組み合わせ配列および構造定義(Chothiaら、Nature 342(6252):877-883(1989))であり、例外である。フレームワークはヒト軽鎖ΚサブグループI-重鎖サブグループIIIのコンセンサス配列である(Chuntharapaiら、Cytokine 15(5):250-260(2001))。
【図11】キメラおよびCDRグラフト化Fabフラグメントの結合親和性のグラフである。(A)プレート結合hIL-13Rα1-Fc(ECD)(2.5μg/ml)に結合するキメラまたはCDRグラフト化1D9ファージディスプレイFabの競合ELISAは可溶性hIL-13Rα1(ECD)により競合された。(B)固定されたhIL-13Rα1(ECD)に結合する可溶性1D9キメラまたはCDRグラフト化Fabのバイオセンサー競合アッセイ法は可溶性hIL-13Rα1(ECD)により競合された。親和性の倍差を(IC50/IC50)から計算する。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概してインターロイキン13受容体α1鎖(IL-13Rα1)に結合し、そしてIL-13および/またはIL-4によるIL-13受容体を介したシグナル伝達に拮抗する抗体に関する。さらに特に、本発明は哺乳動物、特にIL-13Rα1に対するヒト化またはヒト抗体を提供する。これらの抗体はIL-13および/またはIL-4介在性の疾患または症状の治療または予防における用途を有する。本発明はさらに対象抗体の投与によりIL-13および/またはIL-4介在性の疾患または症状を調節する方法を企図する。本発明はさらにIL-13受容体複合体を介したIL-13および/またはIL-4シグナル伝達を調節する抗体またはその他の作用物質を同定するのに有用なアッセイ系を提供する。従って、IL-13Rα1/リガンド相互作用のモジュレーターをスクリーニングする方法もまた提供される。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
本明細書にて言及した出版物の書誌の詳細は明細書の最後にもまとめている。
【0003】
本明細書におけるいずれかの先行技術に対する参照は、この先行技術がいずれかの国の通例的な一般知識の一部を成すということの承認またはいずれかの形態の示唆ではなく、そしてそのように考えるべきではない。
【0004】
インターロイキン-13(IL-13)はインターロイキン(IL)ファミリーのメンバーであり、このサイトカインのインビボでの活性を上方および下方の双方に制御することによって広範な共通する病理の薬理学的治療が提供される可能性があるため、その生物学的効果は有意な生理学的意味を有している。この理由で、特にIL-13およびその他のIL分子の研究は医学的に非常に重要である。例えば、IL-13はIgEおよびIgG4産生の誘導並びにヘルパーT(Th)細胞の分泌(Th2)表現型への分化に大いに関与している。これらの免疫刺激工程はヒトの健康の重大な脅威であるアトピー性疾患、例えばアナフィラキシー(Howardら、Am.J.Hum.Genet.70(1):230-236(2002)(非特許文献1);Noguchiら、Hum.Immunol.62(11):1251-1257(2001)(非特許文献2))および、生命を脅かすものではないが、全世界的にかなりの罹患率になる、より穏やかな症状、例えば花粉症、アレルギー性鼻炎および慢性副鼻腔炎の進行に重要である。
【0005】
IL-13は喘息の急性および慢性段階の病理におけるメディエーターである。喘息発作の間にその活性は上昇し、そしてその効果には吸入された粒子および病源体に対する厳重なバリヤを維持する肺上皮細胞の能力の低下(Ahdiehら、Am.J.Physiol.Cell Physiol.281(6):C2029-2038(2000)(非特許文献3))およびアレルゲン誘起の気道過敏症の促進(Morseら、Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.282(1):L44-49(2002)(非特許文献4))が含まれる。長期間でIL-13は喘息性気道に非炎症性構造変化、例えばムチン遺伝子の発現の増強、気道損傷および末梢気道の閉塞を促す(Howardら、Am.J.Hum.Genet.70(1):230-236(2002)(非特許文献1);Danahayら、Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.282(2):L226-236(2002)(非特許文献5))。
【0006】
IL-13活性の上方制御は特定の免疫不全状態において疾患の進行を低下させるのに有益である可能性がある。HIV感染では、例えばTh2細胞による分泌の低下は抗原特異的免疫応答を低下させる(Bailerら、J.Immunol.162(12):7534-7542(1999)(非特許文献6))。HIVでは疾患の進行に従ってIL-13のレベルは徐々に低下し、免疫不全状態ではIL-13が抗原提示を増強させ、そしてマクロファージのデノボ(de novo)HIV感染を低減させることが解っている(Bailerら、Eur.J.Immunol.30(5):1340-1349(2000)(非特許文献7))。
【0007】
IL-13の生物学的効果ではサブユニットIL-13Rα1(またはNR4サブユニット)およびIL-4Rαを含む二量体受容体複合体が介在する。IL-13Rα1へのIL-13結合がIL-4Rαとの二量体形成および、ヤヌスキナーゼJAK1およびJAK2、並びにSTAT6、ERKおよびp38などの細胞内メディエーターの活性化を始動させる(Davidら、Oncogene 20(46):6660-6668(2001)(非特許文献8);Perezら、J.Immunol.168(3):1428-1434(2002)(非特許文献9))。
【0008】
IL-13はIL-4の効果と重複する多くの生物学的効果を示す。IL-13およびIL-4は配列により関連しており、そして多くの関連する過程、例えば骨髄造血および単球/マクロファージ炎症誘発性機能の制御に関与している。例えば、IL-13およびIL-4の双方は類似の様式でB細胞に表面分子、例えばMHCクラスIIおよびCD23分子を上方制御させ、そしてIgG4およびIgEの分泌を促進させることが示されている。
【0009】
IL-13およびIL-4の重複する活性は一部、それが共有する二量体受容体複合体により説明することができる。I型IL-13受容体複合体はIL-13Rα1およびIL-4Rαからなり;この同一の受容体複合体はまたII型IL-4受容体複合体でもある(Callardら、Immunology Today 17(3):108(1996)(非特許文献10))。このように、サイトカインを介したシグナル伝達を遮断することによりIL-13受容体複合体の治療的調節を達成することを目指す場合に、IL-13を介したシグナル伝達に拮抗する分子のみならず、IL-13およびIL-4の双方を介したシグナル伝達に拮抗する分子をも有しているのが有用であろう。
【0010】
IL-13Rα1に対する抗体はIL-13受容体複合体を介するIL-13シグナル伝達のアンタゴニストとして作用する可能性がある。国際公開公報第97/15663号(特許文献1)は可能性のある治療薬としてヒトIL-13Rα1に対する抗体を提言している。Gauchatら(Eur.J.Immunol.28:4286-4298(1998)(非特許文献11))は、標識したIL-13と、標識し、固定化した可溶性IL-13Rα1との相互作用を遮断するヒトIL-13Rα1に対するマウス抗体を報告した。抗体はまたトランスフェクトされたHEK-293細胞においてIL-13Rα1へのIL-13の結合をも阻害した。しかしながら、これらの抗体の全てがIL-13誘起の生物学的活性を中和できず、これは完全なIL-13Rα1/IL-4Rα受容体複合体のアンタゴニストではなかったことを示唆している。最近の文献では、Gauchatら(Eur.J.Immunol.30:3157-3164(2000)(非特許文献12))はC41と称する、マウスIL-13Rα1をトランスフェクトしたHEK-293細胞に結合するマウスIL-13Rα1に対するラット抗体を報告した。しかしながら、C41はIL-13誘起の生物学的活性を中和しなかった。さらに、C41はヒトIL-13Rα1の可溶型と反応しなかった。Akaiwaら(Cytokine 13:75-84(2001)(非特許文献13))は酵素イムノアッセイ法により可溶性IL-13Rα1を認識する抗体およびCOS7細胞にトランスフェクトされた、標識した全長IL-13Rα1を報告した。抗体は免疫組織化学で用いられたが、それが中和抗体であったかどうかに関する指摘はない。
【0011】
本発明に従って、IL-13Rα1鎖に結合し、IL-13Rα1鎖へのIL-13結合を遮断し、そしてIL-13Rα1/IL-4Rα複合体を介するIL-13シグナル伝達に拮抗する抗体を作製する。このような抗体はIL-13介在性の生物学的活性を阻害することが提示されている。好ましい態様では、本発明のいくつかの抗体は、驚くべきことにIL-13Rα1/IL-4Rα複合体を介するIL-13およびIL-4の双方によるシグナル伝達に拮抗する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開公報第97/15663号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Howardら、Am.J.Hum.Genet.70(1):230-236(2002)
【非特許文献2】Noguchiら、Hum.Immunol.62(11):1251-1257(2001)
【非特許文献3】Ahdiehら、Am.J.Physiol.Cell Physiol.281(6):C2029-2038(2000)
【非特許文献4】Morseら、Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.282(1):L44-49(2002)
【非特許文献5】Danahayら、Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.282(2):L226-236(2002)
【非特許文献6】Bailerら、J.Immunol.162(12):7534-7542(1999)
【非特許文献7】Bailerら、Eur.J.Immunol.30(5):1340-1349(2000)
【非特許文献8】Davidら、Oncogene 20(46):6660-6668(2001)
【非特許文献9】Perezら、J.Immunol.168(3):1428-1434(2002)
【非特許文献10】Callardら、Immunology Today 17(3):108(1996)
【非特許文献11】Gauchatら(Eur.J.Immunol.28:4286-4298(1998)
【非特許文献12】Gauchatら(Eur.J.Immunol.30:3157-3164(2000)
【非特許文献13】Akaiwaら(Cytokine 13:75-84(2001)
【発明の概要】
【0014】
本明細書の全体にわたって、特に文脈で必要とされない場合は、「含む(comprise)」、または変形である例えば「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」なる語は、記載した要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を含めることを意味するが、いずれかその他の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を排除しないことを意味すると理解される。
【0015】
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は配列識別子番号(配列番号:)により参照される。配列番号:は数字的に配列識別子〈400〉1(配列番号:1)、〈400〉2(配列番号:2)等に相当する。配列識別子の要旨を表1で提供する。配列表は特許請求の範囲の後に提供する。
【0016】
本発明はIL-13Rα1アンタゴニストとして機能する抗体を提供し、そしてIL-13により誘起される特定の症状を治療するために使用することができる。本発明はまた、IL-13Rα1アンタゴニストをこのような症状を患う患者に投与することを含むこれらの症状を治療するための方法をも提供する。また、このような方法で使用するための1つまたは複数のIL-13Rα1アンタゴニストを含む組成物も提供する。
【0017】
IL-13Rα1鎖は哺乳動物、例えばヒトなどのいずれの動物に由来してもよい。好ましいIL-13Rα1鎖はヒトIL-13Rα1鎖、マウスIL-13Rα1鎖、ラットIL-13Rα1鎖、イヌIL-13Rα1鎖、ヒツジIL-13Rα1鎖またはカニクイザルIL-13Rα1鎖である。好ましくは、IL-13Rα1鎖はヒトIL-13Rα1鎖である。異なる種に由来するIL-13Rα1鎖間で高レベルの配列相同性がある。例えば、ヒツジIL-13Rα1はヒトIL-13Rα1に対してアミノ酸レベルで87%の相同性、およびDNAレベルで88.7%の相同性を有している。ヒツジIL-13Rα1はマウスIL-13Rα1に対してアミノ酸レベルで75%の相同性、およびDNAレベルで82.2%の相同性を有している。ヒトIL-13Rα1はマウスIL-13Rα1に対してアミノ酸レベルで75%の相同性、およびDNAレベルで81.3%の相同性を有している。結果的に、本発明はIL-13Rα1鎖またはいずれかの起源に由来するその等価物、例えば最適なアラインメントの後にヒトIL-13Rα1に対して少なくとも約65%の同一性を有するIL-13Rα1を企図する。
【0018】
本発明の抗体はIL-13Rα1またはその一部と結合、相互作用、またはそうでなければ会合する。抗体は特定の種に由来するIL-13Rα1、例えばヒトIL-13Rα1に特異的であってもよく、または異なる種に由来するIL-13Rα1間の配列類似性のレベルを鑑みて、抗体は2つまたはそれ以上の種に由来するIL-13Rα1といくらかの交差反応性を示してもよい。ヒトIL-13Rα1を指向する抗体の場合、特定の環境では、例えば特定の疾患の動物モデルにおける抗体を試験する目的のため、並びに被験動物におけるIL-13および/またはIL-4シグナル伝達が被験抗体により影響を受ける様式で毒性学的研究を行うためには、IL-13Rα1のその他の哺乳動物での型とのいくらかのレベルで交差反応性であることが望ましい。ヒトIL-13Rα1に対する抗体の交差反応性が望ましい種には、サル、ヒツジ、イヌおよびラットなどがある。従って、抗体の1つの好ましい群はいくらかのレベルの種交差反応性を呈する抗体である。特に好ましいこのような抗体の群はいくらかのレベルの種交差反応性を呈するヒトIL-13Rα1に対する抗体である。
【0019】
本発明の抗体には、非限定例としてはIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介するIL-13誘起のシグナル伝達を阻害する抗体、およびIL-13の細胞表面IL-13受容体への結合の結果生じる生物学的効果を阻害するその他の化合物などがある。抗体の好ましい群はIL-13受容体複合体を介するIL-13およびIL-4の双方によるシグナル伝達を阻害する抗体である。
【0020】
好ましくは、抗体はモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。最も好ましくは、抗体はヒトに投与するのに適したヒト化またはヒト抗体である。これには例えばマウスモノクローナル抗体から調製されたヒト化抗体、および例えばトランスジェニックマウスを用いて、またはファージディスプレイにより調製することができるヒトモノクローナル抗体などがある。
【0021】
本発明による抗体には、マウスモノクローナル抗体1D9、およびモノクローナル抗体1D9のヒト化型などがある。
【0022】
本発明は本発明の抗体を投与することによりIL-13および/またはIL-4介在性疾患または症状を調節する方法を企図する。本発明に従って治療される症状には、線維症、ホジキン病、潰瘍性大腸炎、強皮症、肺障害、例えば喘息および慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、腫瘍学的症状、炎症性腸疾患および消化管のその他の炎症性症状、薬剤に対するアレルギー反応、並びにいずれかその他のIL-13介在性疾患または症状などがある。
【0023】
本発明はまたIL-13受容体複合体を介するIL-13および/またはIL-4シグナル伝達を調節する抗体またはその他の作用物質を同定するのに有用なアッセイ系をも提供する。従って、前記アッセイ系に関与する、IL-13Rα1/リガンド相互作用のモジュレーターをスクリーニングする方法が提供される。
【0024】
1D9に対するマウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが2003年3月21日にアクセッション番号第 号で欧州細胞カルチャーコレクション(European Collection of Cell Cultures)(ECACC)、応用微生物学および研究センター、ポートンダウン、ソールズベリー、英国に寄託された。
【0025】
本明細書の全体にわたって用いられる配列識別子の要旨を表1に提供する。
【0026】
(表1)配列識別子の要旨
【0027】
発明の詳細な説明
本発明は概してIL-13Rα1鎖またはそのフラグメント、部分または一部と結合、相互作用またはそうでなければ会合し、そしてIL-13および/またはIL-4によるIL-13受容体介在性シグナル伝達に拮抗する抗体であって、本発明の方法において用いることができる抗体に関する。抗体は好ましくはモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。好ましくは、抗体は単離された、同種のまたは完全にもしくは部分的に精製された形態である。
【0028】
最も好ましくは、抗体はヒトに投与するのに適したヒト化またはヒト抗体である。これには例えばマウスモノクローナル抗体から調製されたヒト化抗体、および例えば以下に記載するようにトランスジェニックマウスを用いて、またはファージディスプレイにより調製することができるヒトモノクローナル抗体などがある。
【0029】
抗体の「結合」という言及は、標的抗原、例えばIL-13Rα1との結合、相互作用または会合を意味する。「IL-13Rα1」という言及は、抗体が結合するエピトープを含むそのフラグメントまたは部分を含む。結果的に、IL-13Rα1への抗体結合という言及は、抗体もしくはその抗原結合部分、一部、フラグメントまたはそのエピトープ含有領域の結合、相互作用または会合を含む。
【0030】
概して、「結合」、「相互作用」または「会合」は抗体のIL-13Rα1またはその部分への特異的結合、相互作用または会合を意味するかまたは含む。
【0031】
IL-13の生物学的効果は、サブユニットIL-13Rα1(またはNR4サブユニット)およびIL-4Rα(以後IL-13受容体と称する)を含む二量体受容体複合体を介する。従って、IL-13受容体複合体を介したIL-13結合および/またはシグナル伝達を遮断するIL-13Rα1に対してもたらされるいくつかの抗体は、IL-13受容体複合体を介したIL-4のシグナル伝達をも遮断することができる。
【0032】
本発明により企図される抗体の実例には、IL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介するIL-13のシグナル伝達を遮断する抗体、および好ましくはIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介するIL-13および/またはIL-4のシグナル伝達を遮断する抗体であって、それによりIL-13誘起の、および/またはIL-4誘起の生物学的活性を阻害する抗体などがある。本明細書にて遮断抗体と称するこのような抗体をIL-13Rα1ポリペプチドまたはその免疫原性部分、例えばIL-13Rα1の細胞外ドメインでもたらすことができ、IL-13受容体複合体を介したIL-13および/またはIL-4のシグナル伝達を遮断する能力に関してアッセイし、スクリーニングすることができる。適当なアッセイ法は、IL-13受容体複合体を発現する細胞へのIL-13の結合を阻害する能力に関して抗体を試験するアッセイ法、またはIL-13受容体複合体を介するIL-13およびIL-4のシグナル伝達の結果生じる生物学的もしくは細胞性応答を低減させる能力に関して抗体を試験するアッセイ法である。
【0033】
1つの態様では、本発明はIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明はIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13およびIL-4のシグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0035】
好ましくは、抗体はモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0036】
最も好ましくは、抗体はヒトの治療に用いるのに適したヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である。
【0037】
このように、好ましい態様では、本発明はIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害するヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である抗体を提供する。
【0038】
特に好ましい態様では、本発明はIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13およびIL-4のシグナル伝達を阻害するヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である抗体を提供する。
【0039】
「抗体」または「複数の抗体」という言及は、非限定例としては完全抗体、抗体フラグメント、例えばFv、Fab、Fab'およびF(ab')2フラグメントなど、ヒト化抗体、ヒト抗体(例えば、トランスジェニック動物で、またはファージディスプレイにより産生される)および遺伝子操作技術により産生されるポリペプチド由来の免疫グロブリンなど、全ての種々の形態の抗体への言及を含む。
【0040】
特記しない場合、本発明の抗体に関して特異性とは、抗体が非IL-13Rα1タンパク質となんら有意な交差反応性を呈さないことを意味すると意図するものである。しかしながら、存在し得るIL-13Rα1のその他の形態(例えば可溶型、スプライシング変種または受容体のフラグメント)との交差反応性がないことを示すと意図するものではなく、またその他の種に由来するIL-13Rα1との交差反応性が存在し得ないことを示すと意図するものでもない。IL-13Rα1のアミノ酸配列は種間でよく保存されており、その他の哺乳動物の受容体型はヒトIL-13Rα1鎖と実質的なアミノ酸相同性を示している。
【0041】
抗体は特定の種に由来するIL-13Rα1鎖、例えばヒトIL-13Rα1に特異的であってもよく、または特定の哺乳動物種に由来するIL-13Rα1鎖間の配列類似性のレベルのために、その他の哺乳動物種に由来するIL-13Rα1鎖といくらかの交差反応性を示し得る。ヒトIL-13Rα1を指向する抗体の場合、特定の環境下でIL-13Rα1のその他の哺乳動物の型といくらかのレベルの交差反応性があるのが望ましい。例えばこのような抗体は、特定の疾患の動物モデルにおいて抗体を試験する目的で、および被験動物におけるIL-13および/またはIL-4シグナル伝達が被験抗体により影響を受ける様式で毒性試験を行うために有用である。ヒトIL-13Rα1に対する抗体の交差反応性が望ましい種には、サル、ヒツジ、イヌおよびラットなどがある。従って、抗体の1つの好ましい群はいくらかのレベルの種交差反応性を呈するものである。特に好ましい抗体の群はいくらかのレベルの種交差反応性を呈するヒトIL-13Rα1に対するこれらの抗体である。
【0042】
本発明の抗体はIL-13Rα1鎖に結合する。IL-13Rα1鎖はヒトIL-13Rα1鎖またはその他の動物に由来する鎖、例えばマウスIL-13Rα1鎖、ラットIL-13Rα1鎖、イヌIL-13Rα1鎖、ヒツジIL-13Rα1鎖、およびカニクイザルIL-13Rα1鎖でよい。好ましくは、IL-13Rα1鎖はヒトIL-13Rα1鎖である。異なる種に由来するIL-13Rα1鎖間で高レベルの配列相同性がある。例えば、ヒツジIL-13Rα1はヒトIL-13Rα1に対してアミノ酸レベルで87%の相同性、およびDNAレベルで88.7%の相同性を有している。ヒツジIL-13Rα1はマウスIL-13Rα1に対してアミノ酸レベルで75%の相同性、およびDNAレベルで82.2%の相同性を有している。ヒトIL-13Rα1はマウスIL-13Rα1に対してアミノ酸レベルで75%の相同性、およびDNAレベルで81.3%の相同性を有している。
【0043】
好ましい態様では、本発明はヒトIL-13Rα1およびカニクイザルIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0044】
別の好ましい態様では、本発明はヒトIL-13Rα1およびヒツジIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0045】
さらに別の好ましい態様では、本発明はヒトIL-13Rα1およびイヌIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0046】
なおさらに別の好ましい態様では、本発明はヒトIL-13Rα1およびラットIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0047】
なおさらに別の好ましい態様では、本発明はヒトIL-13Rα1およびマウスIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する抗体を提供する。
【0048】
本発明の抗体を周知の手順により調製することができる。例えば「Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses」、Kennetら(編)、Plenum Press、New York(1980);並びに「Antibodies:A Laboratory Manual」、HarlowおよびLand(編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク州(1988)参照。
【0049】
本発明の抗体を産生するための1つの方法は非ヒト動物、例えばマウスまたはトランスジェニックマウスをIL-13Rα1ポリペプチド、またはその免疫原性部分、例えばIL-13Rα1の細胞外ドメインで免疫することを含み、それによりIL-13Rα1ポリペプチドを指向する抗体が前記動物において作製される。
【0050】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の双方をこの方法で産生することができる。双方の型の血清を得るための方法は当技術分野において周知である。ポリクローナル血清はあまり好ましくないが、適当な実験用動物に有効量のIL-13Rα1ポリペプチドまたはその免疫原性部分、例えばIL-13Rα1の細胞外ドメインを注射し、動物から血清を収集し、そしていずれかの公知の免疫吸着技術によりIL-13Rα1特異的血清を単離することにより比較的容易に調製される。この技術により産生された抗体は、産生物が不均一性であるという可能性のために、概してあまり好ましくない。
【0051】
モノクローナル抗体の使用は、それを大量に産生する能力および産生物の均一性のために特に好ましい。従来の手順によりモノクローナル抗体を産生することができる。
【0052】
本発明は、ハイブリドーマ細胞系を産生するための方法が、非ヒト動物、例えばマウスまたはトランスジェニックマウスをIL-13Rα1ポリペプチド、またはその免疫原性部分、例えばIL-13Rα1の細胞外ドメインで免疫し;免疫した動物から脾臓細胞を収集し;収集した脾臓細胞を骨髄腫細胞系に融合させてハイブリドーマ細胞を作製し;そしてIL-13Rα1ポリペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を同定することを含むことを企図する。
【0053】
このようなハイブリドーマ細胞系およびそれにより産生される抗IL-13Rα1モノクローナル抗体は本発明に包含される。ハイブリドーマ細胞系により分泌されるモノクローナル抗体を従来の技術により精製する。ハイブリドーマまたはそれにより産生されるモノクローナル抗体をさらにスクリーニングして特定の望ましい特性、例えばIL-13受容体複合体を介したIL-13およびIL-4シグナル伝達を阻害する能力を有するモノクローナル抗体を同定することができる。
【0054】
本発明の抗体の産生の最初の段階で動物を免疫するのに用いることができるIL-13Rα1ポリペプチドまたはその免疫原性部分はいずれかの哺乳動物起源に由来してよい。好ましくは、IL-13Rα1ポリペプチドまたはその免疫原性部分はヒトIL-13Rα1である。
【0055】
本発明の抗体の抗原結合フラグメントを従来の技術により産生することができる。このようなフラグメントの実例には、非限定例としてはFab、Fab'、F(ab')2および1本鎖Fvフラグメント(sFvまたはscFvと称する)などのFvフラグメントなどがある。抗体フラグメントおよび遺伝子操作技術により産生されたその誘導体、例えばジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)、1本鎖可変領域ドメイン(Ab)分子およびミニ抗体の使用もまた企図される。特記しない場合、本明細書で用いる「抗体」および「モノクローナル抗体」なる用語は完全抗体およびその抗原結合フラグメントの双方を包含する。
【0056】
IL-13Rα1を指向するモノクローナル抗体のこのような誘導体を調製し、そして本明細書に記載するアッセイ法などの公知の技術により、望ましい特性に関してスクリーニングすることができる。本明細書に記載するアッセイ法はIL-13Rα1に結合する本発明の抗体の誘導体を同定し、並びにIL-13受容体複合体を介するIL-13によるシグナル伝達を阻害し、そして好ましくはIL-13受容体複合体を介するIL-13およびIL-4によるシグナル伝達を阻害する活性をも保持するこれらの誘導体を同定するための手段を提供する。特定の技術は、目的のモノクローナル抗体のポリペプチド鎖(またはその部分)をコードするDNAを単離し、そして組換えDNA技術によりDNAを操作することを含む。DNAを目的の別のDNAに融合させるか、または変化させて(例えば変異誘発またはその他の従来の技術による)、例えば1つまたは複数のアミノ酸残基を付加、欠失または置換することができる。
【0057】
抗体ポリペプチドをコードするDNA(例えば重鎖または軽鎖、可変領域のみまたは全長)を、IL-13Rα1で免疫したマウスのB細胞から単離することができる。従来の手順、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりDNAを単離することができる。ファージディスプレイは、それにより抗体の誘導体を調製することができる公知の技術の別の実例である。1つの研究法では、目的の抗体の成分であるポリペプチドをいずれかの適当な組換え発現系で発現させ、そして発現されたポリペプチドを、抗体分子を形成するように組み立てることができる。
【0058】
アミノ酸架橋(短いペプチドリンカー)により重鎖および軽鎖可変領域(Fv領域)フラグメントを連結させて1本鎖ポリペプチドにすることにより1本鎖抗体を形成することができる。2つの可変領域ポリペプチド(VLおよびVH)をコードするDNAの間にペプチドリンカーをコードするDNAを融合することにより、このような1本鎖Fv(scFv)を調製した。得られた抗体フラグメントは2つの可変領域の間の可動性リンカーの長さに依存して二量体または三量体を形成することができる(Korttら、Protein Engineering 10:423(1997))。1本鎖抗体の産生のために開発された技術には、米国特許第4,946,778号;Bird(Science 242:423(1988))、Hustonら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879(1988))およびWardら(Nature 334:544(1989))に記載される技術などがある。本明細書で提供される抗体から誘導される1本鎖抗体は本発明により包含される。
【0059】
1つの態様では、本発明は、IL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介するIL-13によるシグナル伝達を阻害する本発明の抗体の誘導体を提供する。好ましくは、誘導体は、IL-13受容体複合体を介するIL-13およびIL-4によるシグナル伝達を遮断する。
【0060】
目的の抗体とは異なるサブクラスまたはアイソタイプの抗体を誘導する、すなわちサブクラス・スイッチのための技術は公知である。従って、例えばIgG1またはIgG4モノクローナル抗体をIgMモノクローナル抗体から誘導することができ、逆も同様である。このような技術により、規定の抗体(親抗体)の抗原結合特性を有するが、親抗体とは異なる抗体アイソタイプまたはサブクラスに随伴される生物学的特性をも呈する新しい抗体の調製が可能になる。組換えDNA技術を用いてもよい。特定の抗体ポリペプチドをコードするクローン化されたDNA、例えば望ましいアイソタイプの抗体の定常領域をコードするDNAをこのような手順において用いることができる。
【0061】
前記したモノクローナル産生方法を動物、例えばマウスで使用してモノクローナル抗体を産生することができる。このような動物から誘導される従来の抗体、例えばマウス抗体は免疫応答を引き起こし得るので、一般にヒトに投与するのに不適であることが解っている。従って、ヒトへの投与に適した抗体を提供するためには、このような抗体をヒト化する方法に供する必要があろう。このようなヒト化方法は当技術分野において周知であり、そして以下にさらに詳細に記載する。
【0062】
さらなる態様には、キメラ抗体およびヒト化したマウスモノクローナル抗体などがある。このようなキメラまたはヒト化抗体を公知の技術、例えばCDRグラフト化により調製することができ、そして抗体をヒトに投与する場合、免疫原性を低下させる利点を提供する。1つの態様では、キメラモノクローナル抗体はマウス抗体の可変領域(またはその抗原結合部位だけ)およびヒト抗体から誘導された定常領域を含む。また別に、ヒト化抗体フラグメントはマウスモノクローナル抗体の抗原結合部位(相補性決定領域:CDR)およびヒト抗体から誘導された定常領域フラグメント(抗原結合部位を欠く)を含むことができる。キメラおよびヒト化モノクローナル抗体の産生手順にはRiechmannら(Nature 332:323(1988))、Liuら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439(1987))、Larrickら(Bio/Technology 7:934(1989))並びにWinterおよびHarris(TIPS 14:139(1993))に記載されるものなどがある。
【0063】
Kabatら、「Sequences of Proteins Immunological Interest」、第5版、米国保健・福祉省、公衆衛生局(PHS)、米国国立衛生研究所(NIH)、NIH出版物番号91-3242(1991)に記載される系を用いて規定の抗体の相補性決定領域(CDR)を同定することができる。
【0064】
例えば、以下の実施例に記載するように、標的宿主における抗体の免疫原性を低減させるためにマウスモノクローナル抗体1D9をヒト化に供した。マウスモノクローナル抗体1D9はIL-13Rα1に対して特異的および強力な拮抗効果を有し、そしてIL-13受容体を介するシグナル伝達およびL-13受容体を介するIL-4シグナル伝達を阻害する。しかしながら、その他の宿主、特にヒトにおけるモノクローナル抗体1D9の強力な免疫原性により、これらの宿主において治療薬としてモノクローナル抗体1D9を使用するのは不適である。
【0065】
特定の態様では、本発明の抗体はその軽鎖の可変領域内にモノクローナル抗体1D9の軽鎖に見出される少なくとも1つのCDRを含む。モノクローナル抗体1D9のCDRを図10および配列番号:9〜24に記載する。このように、中でも本発明により企図される抗体はモノクローナル抗体1D9の軽鎖可変領域に由来するCDR配列を1から3個全部含む抗体である。さらに、中でも本発明により企図される抗体はモノクローナル抗体1D9の重鎖可変領域に由来するCDR配列を1から3個全部含む抗体である。好ましい態様では、本発明の抗体はモノクローナル抗体1D9の重鎖および軽鎖可変領域に由来するCDR配列を1から6個全部を含む。
【0066】
非ヒト動物においてヒト抗体を作製するための手順もまた開発されており、そして当業者に周知である。抗体は部分的にヒトのものであってもよく、または好ましくは完全にヒトのものであってもよい。例えば、1つまたは複数のヒト免疫グロブリン鎖をコードする遺伝物質が導入されているトランスジェニックマウスを用いて本発明の抗体を産生することができる。このようなマウスを種々の方法で遺伝的に変化させることができる。遺伝子操作により、免疫時に動物により産生される少なくともいくつかの(好ましくは事実上全ての)抗体の内因性免疫グロブリン鎖が置換されたヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖を得ることができる。
【0067】
種々の手段により1つまたは複数の内因性免疫グロブリン遺伝子が不活性化されているマウスが調製されている。ヒト免疫グロブリン遺伝子がマウスに導入され、不活性化されたマウス遺伝子を置換する。動物で産生される抗体は、動物に導入されたヒト遺伝物質によりコードされる22個のヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖を組み込む。このようなトランスジェニック動物を産生し、そして使用するための技術の実例は米国特許第5,814,318号、第5,569,825号および第5,545,806号に記載されており、これらは参照として本明細書に組み入れられる。
【0068】
このように、本発明の抗体は、非限定例としては、IL-13によるシグナル伝達を阻害し、そして好ましくはIL-13受容体複合体を介したIL-13およびIL-4によるシグナル伝達を阻害する部分的ヒト(好ましくは完全ヒト)モノクローナル抗体を含むことができる。
【0069】
ヒト抗体を作製するための別の方法はファージディスプレイである。ヒト抗体を作製するためのファージディスプレイ技術は当業者に周知であり、そして例えばケンブリッジアンチボディテクノロジーアンドモルフォシス社(Cambridge Antibody Technology and MorphoSys)に用いられる方法などがあり、これは国際公開公報第92/01047号、国際公開公報第92/20791号、国際公開公報第93/06213号および国際公開公報第93/11236号に記載されている。
【0070】
本発明の抗体をインビトロまたはインビボで用いることができる。中でも本発明の抗体の用途はIL-13Rα1ポリペプチドの存在を検出するためのアッセイ法(インビトロまたはインビボのいずれか)およびIL-13Rα1ポリペプチドを精製するための免疫親和性クロマトグラフィーである。さらにIL-13受容体を介したIL-13によるシグナル伝達を阻害できる本発明のこれらの抗体、およびIL-13受容体を介したIL-13およびIL-4によるシグナル伝達を阻害できるこれらの抗体を用いてこのようなシグナル伝達の結果である生物学的活性を阻害することができる。
【0071】
従って、1つの態様では、IL-13受容体複合体を介するIL-13またはIL-4のシグナル伝達により(直接的または間接的に)引き起こされるかまたは悪化する障害を治療するための療法への適用にこのような抗体を用いることができる。療法への適用はIL-13受容体を介するIL-13および/またはIL-4によるシグナル伝達を阻害するのに有効な量で哺乳動物に遮断抗体をインビボで投与することを含む。好ましくは、抗体は本発明のヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である。
【0072】
抗体を用いてIL-13およびIL-4のいずれかまたは双方により誘起される疾患または症状、非限定例としては線維症、ホジキン病、潰瘍性大腸炎、強皮症、肺障害、例えば喘息および慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、腫瘍学的症状、炎症性腸疾患および消化管のその他の炎症性症状、並びに薬剤に対するアレルギー反応などを治療することができる。
【0073】
本発明による抗体はマウスモノクローナル抗体1D9、およびヒト化型モノクローナル抗体1D9である。
【0074】
モノクローナル抗体1D9の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を配列番号:27に提示する。モノクローナル抗体1D9の重鎖の可変領域のアミノ酸配列を配列番号:28に提示する。ヒトコンセンサスフレームワークにグラフト化されたVLドメインに由来するマウス1D9 CDR領域のアミノ酸配列を配列番号:25に提示する。ヒトコンセンサスフレームワークにグラフト化されたVHドメインに由来するマウス1D9 CDR領域のアミノ酸配列を配列番号:26に提示する。
【0075】
本発明の抗体には、非限定例としては、その軽鎖に配列番号:25の1から112残基を含むモノクローナル抗体;その重鎖に配列番号:26の1から121残基をさらに、または別に含む抗体、またはその軽鎖に配列番号:27の1から112残基を含むモノクローナル抗体;およびその重鎖に配列番号:28の1から121残基をさらに、または別に含む抗体などがある。
【0076】
本発明の特定のモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体1D9;モノクローナル抗体1D9と交差反応するモノクローナル抗体;モノクローナル抗体1D9と同一のエピトープに結合するモノクローナル抗体;ヒトIL-13Rα1を発現する細胞に対する結合に関してモノクローナル抗体1D9と競合するモノクローナル抗体;モノクローナル抗体1D9の生物学的活性を保持するモノクローナル抗体;およびいずれかの前記の抗体の抗原結合フラグメント、からなる群より選択される。この態様による抗体には実施例で論じる6A9および3F10などが挙げられる。
【0077】
1つの態様では、抗体は、モノクローナル抗体1D9のヒトIL-13Rα1に対する結合親和性と実質的に等価である、ヒトIL-13Rα1に対する結合親和性を有する。モノクローナル抗体1D9はIgG1抗体である。モノクローナル抗体1D9から誘導されるその他のアイソタイプのモノクローナル抗体(非限定例としてはIgG4など)もまた本発明により包含される。いずれかのこのようなモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系もまた本発明により提供される。
【0078】
抗体のサブクラスまたはアイソタイプをスイッチする(変更する)ための手順もまた当業者に周知である。このような手順には、例えばそれにより望ましいサブクラスを付与する抗体ポリペプチド鎖をコードするDNAが親抗体の対応するポリペプチド鎖をコードするDNAに代わって置換される組換えDNA技術が含まれる。この手順は、例えば特定の抗体アイソタイプであることが好ましい特定の抗体療法への適用において、例えばIgG4が好ましい抗体アイソタイプでありうる喘息の治療において有用である。
【0079】
モノクローナル抗体1D9の生物学的活性の1つの実例はIL-13Rα1に結合し、そしてIL-13受容体複合体を介したIL-13およびIL-4によるシグナル伝達を阻害する能力である。1つの態様では、本発明のモノクローナル抗体はモノクローナル抗体1D9の活性に実質的に等価な活性を遮断するIL-13生物学的活性を保持し;そしてモノクローナル抗体1D9の活性に実質的に等価な活性を遮断するIL-4生物学的活性を保持している。このような活性をいずれかの適当な従来のアッセイ法において測定することができる(例えば以下に記載するCD23発現アッセイ法で測定される)。
【0080】
本発明の特定の態様は新規ポリペプチドに向けられる。以下の実施例7、8および9で論じるように、DNAおよびアミノ酸配列情報は本発明の特定の抗体の成分であるポリペプチドに関して決定されている。中でも本発明のポリペプチドは配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27および配列番号:28で提示するアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む精製されたポリペプチドである。インビボで使用するために、ポリペプチドは精製されているのが有利である。ポリペプチドは個々に精製されているか、またはポリペプチドを成分とする抗体が精製されている形態であってもよい。
【0081】
本発明の抗体の、IL-13受容体複合体を介したIL-13および/またはIL-4によるシグナル伝達と干渉する能力を多くのアッセイ法により確認することができる。
【0082】
用いることができるアッセイ法の1つは国際公開公報第01/92340号に記載されており、これは参照として本明細書に組み入れられる。このアッセイ法は、ヒトB細胞における活性化随伴表面抗原CD23の発現を増強する、IL-13およびIL-4双方の能力に基づいている。本発明の抗体を、IL-13およびIL-4により誘起されるCD23発現を阻害する能力に関して試験する。
【0083】
簡単には、ヒトIL-13Rα1に対して生じた抗体をハイブリドーマ上澄または精製されたタンパク質のいずれかの形態で試験することができる。培養物に添加する前に、カットオフ値10kDaのCenticonフィルター装置(Amicon)を用いて遠心により抗体を培養培地(RPMI1640に10v/v%熱不活性化ウシ胎児血清を添加)に対してバッファー交換する。
【0084】
ヒト抹消血B細胞を記載されるように精製する(Morrisら、J.Biol.Chem.274:418-423(1999))。培養培地中のB細胞(3×105/ウェル)を96ウェル丸底マイクロタイタープレートに置き、そして被験抗体と共に室温で30分間予備インキュベートする。次いで組換えヒトIL-13またはIL-4を培養物に加え、そして加湿した5%CO2雰囲気下37℃で20から24時間細胞を培養する。培養期間の最後に細胞を96ウェル培養プレート中、PBS+0.02%NaN3で1回洗浄し、ブロッキングバッファー(PBS+NaN3中、2%正常ウサギ血清+1%正常ヤギ血清)に再懸濁する。
【0085】
フィコエリスリン(PE)抱合CD23モノクローナル抗体(mAb)またはPE抱合アイソタイプ対照モノクローナル抗体(双方ともPharmingen)を最終希釈1:10で細胞に加える。細胞を4℃で30分間インキュベートし、PBS+NaN3で3回洗浄し、そしてFacScan(Becton Dickinson)でCD23発現に関して分析する。
【0086】
陰性対照、例えば、ハイブリドーマ成長培地と共に培養した細胞またはアイソタイプ対合非遮断ヒト抗hIL-13受容体抗体が含まれる。予めhIL-4およびhIL-13の双方の結合および機能を遮断することが示されている抗huIL-4Rマウスモノクローナル抗体(R&D Systems)を、IL-4およびIL-13によるCD23誘導の中和に関する陽性対照として用いることができる。
【0087】
IL-13Rα1アンタゴニストとして機能し、そしてIL-13および/またはIL-4のいずれかによるシグナル伝達を遮断する抗体を同定するための別のアッセイ法を以下および実施例に記載する。
【0088】
このアッセイ法では、293A12細胞を操作して、タンパク質gp130の膜貫通および原形質ドメインに操作可能なように連結されたIL-13Rα1またはIL-4Rαのいずれかの細胞外ドメインを含むキメラポリペプチドを発現させる。操作された293A12細胞がIL-13またはIL-4の存在下にある場合、キメラポリペプチドは、シグナル伝達をもたらすヘテロ二量体受容体複合体を形成する。IL-13またはIL-4を介するシグナル伝達は、同定可能なシグナル、例えばレポーター分子をコードする遺伝子の活性化を介して観察される(実施例5)。
【0089】
IL-13受容体を介したIL-13またはIL-4シグナル伝達に拮抗する抗IL-13Rα1抗体はレポーター分子のIL-13およびIL-4を介した活性化を阻害する。
【0090】
シグナル伝達が、同定可能なシグナルを提供するレポーター分子をコードする遺伝子の発現を制御する経路を活性化する細胞を選択することにより、シグナル伝達のレベルが都合よく決定される。好ましいレポーター分子は酵素、例えばルシフェラーゼである。
【0091】
293A12細胞はルシフェラーゼレポーター分子をコードする遺伝物質を安定的に発現する293T細胞であるため、特にこのアッセイに好ましい(実施例3)。ルシフェラーゼレポーター分子の発現はgp130シグナル伝達により活性化されるSTAT-3シグナル伝達経路により制御される。
【0092】
gp130に由来するシグナル伝達部分は、STAT-3活性化ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を導くSTAT-3リン酸化を誘起するため特に好ましい。しかしながら、その他の分子に由来するシグナル伝達部分を用いることもできる。ポリペプチドのシグナル伝達部分の選択はレポーター分子をコードする遺伝子の活性化またはプロモーター部分に対合しなければならない。
【0093】
例えば前記および実施例4の本発明の細胞ベースのアッセイ法をIL-13Rα1/リガンド相互作用のモジュレーターをスクリーニングするための基礎として利用することができることは当業者に理解される。このような方法は当業者に周知であるが、方法の簡単な説明を本明細書で提供する。方法は、リガンド受容体結合のいかなる拮抗も不在であり、シグナル、例えばルシフェラーゼ発現を検出することができる条件下で、適当に操作された細胞をシグナル産生量のIL-13またはIL-4に供することを含む。次いで被験化合物の存在下で暴露を行い、そして検出されたシグナルのレベルを被験化合物の不在下で検出されたレベルと比較する。被験化合物は、化合物ライブラリー、例えば天然産生物の抽出物のライブラリーまたは合成化合物のライブラリーを含むことができる。または、抗体可変ドメイン等のファージディスプレイライブラリーまたはIL-13Rα1に対するモノクローナル抗体のパネルをアッセイにわたってスクリーニングしてもよい。
【0094】
本発明のアッセイ法において用いることができるキメラポリペプチドは実施例1および2に記載され、そして配列番号:8および配列番号:10に示すアミノ酸配列を含む。
【0095】
このアッセイ法での使用が企図されるキメラポリペプチドをコードするcDNAは配列番号:7および配列番号:9から選択されるヌクレオチド配列を含む。配列番号:7により定義される配列はgp130の膜貫通および原形質ドメインに融合されたIL-4Rα細胞外ドメインをコードする配列を含む。配列番号:9はgp130の膜貫通および原形質ドメインに融合されたIL-13Rα1細胞外ドメインをコードする配列を含む。
【0096】
293A12細胞が本発明のアッセイ法において記載されるが、その他の細胞を使用してもよい。概して、真核細胞および、さらに特に哺乳動物細胞を用いる。哺乳動物細胞をヒト、家畜動物、研究室実験用動物およびコンパニオン動物から誘導することができる。本明細書で企図される哺乳動物以外の動物の細胞には、鳥類の種、爬虫類の種、両生類の種および昆虫の種に由来する細胞などがある。好ましくは、細胞は内因性のγcを欠く。
【0097】
「操作可能なように連結された」なる用語は、互いに機能的な相互作用になるように一緒に会合している分子を含むその最も広義な文脈で使用される。概して、その会合は化学的連結または結合によるものである。好ましくは、化学的連結または結合はペプチド結合である。従って、用語はペプチド結合を介して互いに連結された近隣の一連のアミノ酸を含むポリペプチドを含み、ここで一方の近隣の一連のアミノ酸はリガンド結合特性を有し、そして他方の近隣の一連のアミノ酸はシグナル伝達特性を有している。
【0098】
薬学的に許容される担体および/または希釈剤にはいずれかおよび全ての溶媒、分散培地、コーティング、抗細菌および抗真菌薬、張力を調整するために用いられる作用物質、緩衝液、キレート剤、並びに吸収遅延剤等などがある。薬学的活性な物質のためのこのような培地および作用物質の使用は当技術分野において周知である。いずれかの従来の培地または作用物質が活性成分と適合しない場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が企図される。補足の活性成分を組成物に組み込むこともできる。
【0099】
注射用の使用に適した薬学的形態には、滅菌水性溶液(可溶性である場合)および滅菌注射用溶液の即時調製のための滅菌粉末などがある。これは製造および保存の条件下で安定でなければならず、そして微生物、例えば細菌および真菌の夾雑作用に対して保存されなければならない。担体は例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、その適当な混合物、および植物油を含む溶媒または希釈剤培地でよい。例えば界面活性剤の使用により適切な流動性を維持することができる。微生物の作用は、種々の抗細菌および抗真菌薬、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、サーメロサール等により防御されうる。多くの場合、張力を調整するための作用物質、例えば糖または塩化ナトリウムを含むのが好ましい。吸収遅延化剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物において使用することにより、注射用組成物の吸収を遅延できる。組成物は緩衝液およびキレート剤を含んでいてもよい。
【0100】
必要な量の活性化合物を適当な溶媒中活性成分および選択的に必要とされるその他の活性成分と共に組み込み、続いて滅菌濾過またはその他の適当な滅菌手段を行うことにより滅菌注射用溶液を調製する。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、適当な調製方法には真空乾燥および凍結乾燥技術などがあり、これにより活性成分に任意のさらに望ましい成分を加えた粉末を得ることができる。
【0101】
このような治療上有用な組成物における活性化合物の量は、適当な用量が得られるような量である。
【0102】
本発明の組成物はIL-13またはIL-4が介在する症状、非限定例としては線維症、ホジキン病、潰瘍性大腸炎、強皮症、肺障害、例えば喘息および慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、腫瘍学的症状、炎症性腸疾患および消化管のその他の炎症性症状、薬剤に対するアレルギー反応、並びにいずれかその他のIL-13介在性疾患または症状を調節するのに有用である。
【0103】
本発明のヒトおよびヒト化抗体並びに特にヒト化1D9はこのような症状の治療に有用である。IL-13および/またはIL-4のIL-13Rα1との相互作用の結果生じるいずれかの有害な症状を本発明の抗体、例えばヒト化1D9の投与により治療または予防することができる。
【0104】
従って、本発明の別の態様は、IL-13および/またはIL-4が介在する症状、非限定例としては炎症性症状を治療または予防するための方法を企図し、前記方法は対象に有効量の抗体、例えばヒト化1D9を、IL-13受容体複合体を介したIL-13および/またはIL-4シグナル伝達を阻害するのに十分な時間および条件下で投与することを含む。
【0105】
この文脈で「有効量」とは、IL-13受容体複合体を介するIL-13および/またはIL-4シグナル伝達を少なくとも40%まで、好ましくは少なくとも50%まで、さらに好ましくは少なくとも60%まで、さらになお好ましくは少なくとも70から80%まで、または90%以上低減させるのに十分な抗体の量である。
【0106】
徴候の改善レベルで前記方法を測定することもできる。従って、有効量は少なくとも部分的に、例えば炎症の徴候を改善するのに必要な量である。
【0107】
好ましくは、対象はヒトである。しかしながら家畜用およびコンパニオン動物のための獣医学への適用もまた企図される。このような場合は、哺乳動物による抗体に対する免疫原性応答を避けるように設計された適当な抗体を調製することが必要であろう。
【0108】
従って、特定の態様では本発明はヒト対象においてIL-13またはIL-4介在性症状の影響を改善する方法が提供され、前記方法は前記対象に有効量のヒト化1D9モノクローナル抗体またはその等価物を炎症の影響を改善するのに十分な時間および条件下で投与することを含む。
【0109】
本発明はさらに、対象の炎症性症状の治療または予防における薬剤の製造におけるヒト化1D9またはその等価物の使用を企図する。
【0110】
ヒト化1D9を用いてそこに抱合された特定の薬剤を特定の部位、例えばIL-13Rα1受容体を担持する細胞に分配することもできる。ヒト化1D9抗体を用いて活性なIL-13Rα1受容体をスクリーニングするための画像分析を行うこともできる。
【0111】
以下の非限定的な実施例により本発明をさらに説明する。
【0112】
実施例1
IL-13Rα1/gp130キメラの構築
キメラIL-13Rα1/gp130 cDNA分子を作製するために、pEFBOSベクタークローニング用のAsc1制限酵素部位を含有する5'オリゴマーとgp130 cDNAに相同な重複領域を含有する3'オリゴマーと共にIL-13Rを増幅した。gp130 cDNAを増幅するために用いたオリゴマーはMlu1制限酵素部位を含有する3'オリゴマーを含んだ。
IL-13R1オリゴマー
gp130オリゴマー
【0113】
キメラcDNAの構築に必要なIL-13Rα1およびgp130領域を増幅するためのPCR条件は双方の分子に関し同一であった。94℃で2分間を1サイクル、94℃で10秒間、50℃で10秒間、68℃で1分間を35サイクル、そして68℃で5分間を1サイクル。PLATINUM Pfx DNAポリメラーゼキット(Invitrogen)を用いて分子を増幅した。
【0114】
前に記載した反応から作製されたPCR産物を用いて、伸長時間を60秒から90秒に延長した以外は用いたのと同一の条件でキメラcDNA分子を増幅した。キメラcDNA分子を作製するために用いたオリゴマーは、
であった。
【0115】
N末端にマウスIL-3シグナル配列およびFLAGペプチドを含有するpEFBOS哺乳動物発現ベクターのMlu1制限酵素部位にキメラcDNAをクローン化した。アマシャム(Amersham)ライゲーションキットを用いてクローニングを実施した。
【0116】
実施例2
IL-4Rα/gp130キメラの構築
チタンRT-PCRキット(Roche)を用いてジャーカット細胞から単離したmRNAからIL-4RαをRT-PCRにより増幅した。IL-4Rαを増幅するために用いたオリゴマーは、
であった。
【0117】
PCR条件は以下のとおりであった。50℃で30分間、94℃で2分間を1サイクル、94℃で30秒間、50℃で30秒間、68℃で1分間を35サイクル、そして68℃で7分間を1サイクル。
【0118】
キメラIL-4Rα/gp130 cDNA分子を作製するために、pEFBOSベクタークローニング用のAsc1制限酵素部位を含有する5'オリゴマーとgp130 cDNAに相同な重複領域を含有する3'オリゴマーからなるオリゴマーと共にIL-4Rαを増幅した。gp130 cDNAを増幅するために用いたオリゴマーはMlu1制限酵素部位を含有する3'オリゴマーを含んだ。
IL-4Rオリゴマー
gp130オリゴマー
【0119】
キメラcDNAの構築に必要なIL-4α受容体およびgp130領域を増幅するためのPCR条件は双方の分子に関し同一であった。94℃で2分間を1サイクル、94℃で10秒間、50℃で10秒間、68℃で1分間を35サイクル、そして68℃で5分間を1サイクル。PLATINUM Pfx DNAポリメラーゼキット(Invitrogen)を用いて分子を増幅した。
【0120】
前に記載した反応から作製されたPCR産物を用いて、伸長時間を60秒から90秒に延長した以外は用いたのと同一の条件でキメラcDNA分子を増幅した。キメラcDNA分子を作製するために用いたオリゴマーは、
であった。
【0121】
N末端にマウスIL-3シグナル配列およびFLAGペプチドを含有するpEFBOS哺乳動物発現ベクターのMlu1制限酵素部位にキメラcDNAをクローン化した。アマシャムライゲーションキットを用いてクローニングを実施した。
【0122】
実施例3
A12細胞の作製
リポフェクタミン(Life Technologies、ロット番号KE4Y01)を用いて293T細胞(Amrad Biotechから入手)をAPRE-luc(Nakajimaら、EMBO J.15:3651-3658(1996))10μgおよびpGK-puro 1μgと同時トランスフェクトした。
【0123】
25μg/ml プロマイシン中で細胞を選択し、そして陽性クローンをルシフェラーゼ応答に関して試験した。
【0124】
続いて細胞系A25-20をさらに限界希釈によりクローン化し、クローン293T-A12を得た。
【0125】
実施例4
IL-13Rα1相互作用の分析のためのアッセイ法の開発
ヒト因子依存性(GM-CSF、IL-6、IL-4、またはIL-13等)TF-1細胞は以前、マウスおよびヒトモノクローナル抗体の中和/阻害活性の評価に基づく、IL-13活性に関する標準バイオアッセイ法として使用された。しかしながらアッセイ法はIL-13に対する応答性が相対的に乏しく、そしてバックグラウンド比率に対してシグナルが低く、非常に信頼性を欠いていることが判明した。
【0126】
細胞ベースアッセイ法の開発
本発明者らはキメラ受容体戦略に基づくアッセイ法を開発した。戦略にはIL-13Rα1およびIL-4Rαの双方の細胞外ドメインをgp130の膜貫通および原形質ドメインに融合させることを含む。293A12細胞系(STAT-3応答性プロモーターの調節下でルシフェラーゼレポーターの安定的発現を伴う293T誘導体)におけるこれらの2つのキメラ受容体の産生に続いて、IL-13を介した二量体形成により、STAT-3、そして続いてルシフェラーゼレポーター遺伝子発現が活性化される(図1)。
【0127】
この戦略の重要な局面は、それによりIL-13Rα1アンタゴニスト、例えばIL-4 II型受容体複合体を介したIL-4シグナル伝達を阻害するモノクローナル抗体の同定が可能になることである。IL-4Rαおよびγcを組み込むI型受容体複合体、並びにIL-4RαおよびIL-13Rα1を組み込むII型受容体複合体を介してIL-4はシグナルを伝達する。細胞系、例えばTF-1はγcおよびIL-13Rα1を同時発現し、IL-4は2つの受容体複合体のいずれかを介してシグナルを伝達できるため、TF-1はこの目的に適さない。対照的に、本発明の操作された細胞系では、293T細胞γc発現に関わらず、II型複合体を介するIL-4シグナル伝達のみがルシフェラーゼ発現を導くはずである。
【0128】
IL-13Rα1およびgp130 cDNAを鋳型として用いて、スプライス・重複・伸長PCRによりヒトIL-13Rα1-gp130キメラ受容体cDNAを作製し、そしてN末端FLAG標識タンパク質として発現させるためにpEFBOSにクローン化する。IL-4Rα-gp130キメラ受容体を作製するために、IL-4Rα cDNA(細胞外ドメインのみ)をTF-1細胞から抽出したmRNAを用いてRT-PCRによりクローン化する。スプライス・重複・伸長PCRによりキメラIL-4Rα-gp130受容体cDNAを作製し、そしてN末端FLAG標識タンパク質として発現させるためにこれもまたpEFBOSにクローン化する。
【0129】
双方のキメラ受容体の詳細を図2に略図形式で提供する。COS細胞における一過性の発現、続いて抗FLAGまたは抗IL-13Rα1抗体を用いるウェスタンブロット分析により、双方の構築物が予測される分子量のタンパク質をコードすることを確認した(図3)。
【0130】
安定した系を単離するために、293A12細胞をキメラ受容体構築物およびハイグロマイシン抵抗性遺伝子をコードするベクターで同時トランスフェクトする。ハイグロマイシン選択に続いて、100個の単離された抵抗性コロニーを採取し、そして48および24ウェルプレートに広げる。続いて56個の採取したコロニーをLIF(+ve対照)、IL-13およびIL-4の存在下、ルシフェラーゼに関してアッセイする。アッセイした56個のコロニーのうち13個はLIFに加えてIL-13およびIL-4の双方に応答してルシフェラーゼを発現するようであり(表2)、そしてこれらのうち11個を凍結およびさらなる分析のために展開した。
【0131】
ノイズ比率に対して最高のシグナルを伴う2つの細胞系(3.1.2および3.2.4)を続いて限界希釈によりクローン化し、そして双方で、IL-4、IL-13、およびLIFに関する総量応答分析を行った(図4)。双方の細胞系に関して、IL-13に対する応答はLIFに関して観察されたものに類似するようであり、100から200pg/mlで観察された最大活性の50%であった。IL-4に関しては、双方の系において2から4ng/mlで観察された最大活性の50%であった。先のデータと一致して、双方の系でノイズ比率に対するシグナルは10を超える。データはこれらの細胞系がIL-13またはIL-4のいずれかに関し、最良の細胞ベースアッセイ法に相当することを示している。
【0132】
分子アッセイ法
IL-13Rα1のIL-13との相互作用に基づく分子アッセイ法は双方のモノクローナル抗体、および可能性としては、小型の分子アンタゴニストに関する最良の1次スクリーニングに相当する。しかしながら前記したように、IL-13とIL-13Rα1との相互作用は弱く(>200nM)、そして単純なELISAベースの研究法に反応しない。FRETおよび蛍光偏光ベースアッセイ法が企図されているが、このようなアッセイ法の開発は労働および物質集約的である。
【0133】
IL-13Rα1(ヒトまたはマウス)の細胞外ドメインおよびヒトIgGのFc部分を組み込むキメラ受容体タンパク質が開発されている(R&D Systems)。これらのキメラタンパク質はFc領域間ジスルフィド結合に基づく、前もって形成された二量体として発現し、そして受容体の単量体形態よりもより堅固にIL-13と会合すると予測される。
【0134】
最初のバイオセンサー研究に関しては、ヒトIL-13をバイオセンサーチップに固定し、そしてヒトおよびマウスIL-13Rα1-Fc結合の用量反応分析を完了した。双方のキメラ受容体はヒトIL-13と会合し、ヒト受容体で得られたものよりも実質的に高い、マウス受容体に関して得られたシグナルを伴った。類似の結果が固定されたマウスIL-13で得られる。これらの知見によりIL-13の種交差活性が確認される。この相互作用の特異性を確認するために、競合結合ベースの研究法を行う。一定の濃度のキメラマウス受容体タンパク質を力価測定した可溶性マウスIL-13と共にインキュベートし、そして受容体の、固定されたマウスIL-13に対する結合を評価した。可溶性IL-13はチップに対する結合に関して用量依存的な様式で競合することができた。キメラヒト受容体を用いて類似のデータが得られた。
【0135】
この研究で得られたセンサーグラムを、以前に単量体受容体タンパク質で得られたデータに質的に比較し、結合動態における実質的な改善を提示した。これは、受容体の単量体形態と比較して、二量体形態のためにより遅くなったオフ率に起因する改善である。この相互作用をさらに定量化するために、ヒトおよびマウスのキメラ受容体タンパク質並びに固定されたヒトおよびマウスIL-13の双方を用いて完全な用量反応分析を行った。マウスIL-13に対するキメラヒト受容体およびキメラマウス受容体の結合に関して得られた1次データを表3に提示する。キメラマウス受容体はキメラヒト受容体と比較して、ヒトおよびマウス双方のIL-13に関しておよそ10倍大きい親和性を有しているようである。それにも関わらず、キメラヒト受容体は受容体の単量体形態と比較してIL-13に関する親和性を100倍上昇させることを実証している。
【0136】
バイオセンサーデータにより、単量体形態と比較して受容体の二量体形態に関する結合親和性の実施的な上昇が示され、そしてこれは分子アッセイ法に対するELISAベースの研究法が実行可能であり得ることを示唆している。予備実験により、抗huIg-HRPO抱合体を用いて可溶性キメラ受容体のプレート結合マウスIL-13との相互作用を容易に検出できることが示された。予測されたように、マウス受容体で得られるシグナルと等価のシグナルを得るためにはより高濃度のヒト受容体が必要である。続いて、双方のキメラマウス受容体およびキメラヒト受容体を種々濃度のプレート結合IL-13にわたって力価測定して最適なアッセイ条件を確立した。結果により、キメラヒト受容体は2.5μg/ml以上の濃度のプレート結合IL-13を用いて0.312〜10μg/mlの用量範囲にわたって力価測定されることが示された。相対して、キメラマウス受容体は1.25μg/ml以上の濃度のプレート結合IL-13を用いて0.02〜0.625μg/mlの用量範囲にわたって力価測定される。予測されたように、対照キメラ受容体、Flt-Fcはこのアッセイ法における結合がなかった。
【0137】
実施例5
IL-13Rα1特異的マウスモノクローナル抗体の分析
生化学的アッセイ法-バイオセンサーおよびELISAを用いる分析
最初に、ELISAおよびバイオセンサーの双方に基づく研究法を用いてマウスモノクローナル抗体1D9を、IL-13とキメラヒトIL-13Rα1-FcおよびキメラマウスIL-13Rα1-Fcの相互作用を阻害するその能力に関して試験する。バイオセンサー研究では、1D9は明らかにキメラヒト受容体のヒトおよびマウス双方のIL-13との相互作用を阻害するが、キメラマウス受容体の結合には影響を及ぼさない(図5)。ELISAベースのアッセイ法でも同一の結果が得られる。1D9は対照モノクローナル抗体と比較してキメラヒト受容体の強力なインヒビターであるが、キメラマウス受容体のマウスIL-13への結合には影響を及ぼさない(図6)。1D9用量反応分析および別の用量反応分析を組み込んだバイオセンサー研究を、ELISAを用いて行った。これらの結果により、1D9は強力なアンタゴニストであり、IC50はアッセイ法で用いた標的受容体の濃度(ELISAで〜20nM)に類似することが実証された。マウスではなくヒトIL-13Rα1に関する1D9の選択性もまたウェスタンブロット分析を用いて実証される。
【0138】
さらなる研究では、別のマウスモノクローナル抗体を、IL-13とキメラヒト受容体の相互作用を阻害するその能力に関してELSIAにより試験する。1D9と同一のエピトープと相互作用するモノクローナル抗体6A9は強力なアンタゴニスト活性を示す(図7)。モノクローナル抗体3F10は異なるエピトープと結合し、そして部分的な阻害活性を有するようであった。対照的に、他の関連性のないエピトープと結合し、そしてウェスタンブロット分析において最も有用であるモノクローナル抗体2A2はキメラ受容体リガンド相互作用を阻害できない。予測されたように、関連性のない対照モノクローナル抗体2H10および6C12は結合に影響を及ぼさなかった。
【0139】
細胞ベースアッセイ法を用いる分析
クローン化されていないIL-13/IL-4応答性のトランスフェクトされた293A12誘導体である3.2.4を展開させ、そしてIL-13Rα1特異的マウスモノクローナル抗体1D9、6A9および2A2のアンタゴニスト活性を評価するのに用いる。3.2.4細胞を力価測定したモノクローナル抗体中45分間予備インキュベートした後、IL-13またはIL-4のいずれかを最終濃度10または1ng/mlで添加する。ルシフェラーゼ産生を24時間で評価する。
【0140】
図8に提示する結果により、生化学的アッセイデータと合致して、モノクローナル抗体1D9および6A9(モノクローナル抗体2A2ではない)はIL-13を介したルシフェラーゼ発現を阻害することができることが実証される。6A9および1D9の双方に関して、阻害活性は1ng/mlのIL-13で最も顕著であった。1D9は試験したモノクローナル抗体の用量範囲にわたって1ng/ml IL-13に対する応答をほぼ完全に阻害し、6A9よりもさらに強力なようであった。陰性対照の関連性のないモノクローナル抗体2H10は予測されたようにIL-13誘起のルシフェラーゼ発現に影響を及ぼさなかった。
【0141】
生化学ベースのアッセイ法および既存の細胞ベースのアッセイ法とは異なって、3.2.4系によりII型IL-4受容体複合体を介するIL-4シグナル伝達に及ぼすIL-13Rα1特異的モノクローナル抗体の影響を評価することが可能になる。図9に提示する結果により、IL-13を介した活性を阻害することができる双方のモノクローナル抗体はまたIL-4を介したルシフェラーゼ発現を阻害することもできることが実証される。また、影響は10ng/mlと比較して1ng/mlのサイトカインで実質的により顕著であり、そしてまた2つの抗体のうち1D9が最も強力なようであった。IL-13と同様に、モノクローナル抗体2A2も、陰性対照モノクローナル抗体2H10もIL-4誘起のルシフェラーゼ発現に影響を及ぼさなかった。
【0142】
実施例6
マウス抗体可変領域のクローニングおよびシークエンシング
1D9モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞からメッセンジャーRNAを調製し、そしてオリゴdTプライマーを用いて逆転写してcDNAを産生した。アミノ末端アミノ酸配列および抗体アイソタイプに基づく部分的縮重PCRプライマーを用いて成熟マウス重鎖および軽鎖可変ドメインを増幅し、そしてクローニングのために制限酵素部位を組み込んだ。続くクローンおよびPCR産物をシークエンシングして1D9の各可変領域のアミノ酸配列を表した(図1)。
【0143】
実施例7
ヒトFab鋳型の構築
合成ヒトフラグメント抗体結合(Fab)を、1D9マウス抗体の中間およびヒト化変種の鋳型として合成オリゴヌクレオチドから作製した。合成ヒトFabは最も豊富なヒトサブクラス(VLκサブグループIおよびVHサブグループIII)およびヒト定常領域(REIヒトκ1軽鎖CLおよびIgG1 CH1)のコンセンサス配列から誘導された可変ドメイン配列からなった。続いて合成ヒトFab配列を単一の大腸菌発現ベクターに挿入して可溶性か、またはファージディスプレイされているかのいずれかの機能的Fabの発現のためのジシストロン性構築物を作製した。
【0144】
実施例8
CDRグラフト化Fabおよびマウス-ヒトキメラFabの作製
ヒト化のための出発点として、親1D9抗体の6個の相補性決定領域(CDR)を合成ヒトFab上にグラフト化することによりCDRグラフト化Fabを作製した。ヒトフレームワークによるマウスCDRの正確な提示、そして従って、タンパク質結合親和性の保持のために、CDRグラフトFab内の重要なフレームワーク残基の最適化がしばしば必要である。キメラFabフラグメントはその抗原結合特性において完全マウスFabフラグメントと等価であり、そのためにCDRグラフト化Fabがフレームワーク最適化を必要とするかどうかを決定するために用いることができる。従って対応する合成ヒト定常ドメインに融合されたマウス1D9重鎖および軽鎖可変領域からなるマウス-ヒトキメラFabフラグメントを抗原結合親和性に関する参照として作製した。
【0145】
実施例9
キメラおよびCDRグラフト化Fabの結合親和性の比較
競合に基づくアッセイ法においてCDRグラフト化およびキメラFabのIL-13Rα1に関する結合親和性を、ELSIA様式でファージディスプレイされたFabとして(図11A)、およびBiacoreにより精製された可溶性タンパク質として(図11B)の双方で比較した。CDRグラフト化Fabは参照マウス-ヒトキメラFabとしてIL-13Rα1に関して類似の親和性を有している。これは、CDRグラフトFabがフレームワーク残基の最適化を必要とせず、そしてヒト化されていると考えることができることを示している。
【0146】
当業者には本明細書に記載の本発明を特記したもの以外に変更および修飾が可能であることが理解されよう。本発明は全てのこのような変更および修飾を含むと理解されるべきである。本発明はまた本明細書において言及したかまたは示した全ての工程、特徴、組成物および化合物を、個々にまたは一括して、そしていずれかおよび全ての、いずれか2つまたはそれ以上の前記工程または特徴の組み合わせで含む。
【0147】
(表2)トランスフェクトされたFLAG標的化IL-13Rα1-gp130およびIL-4Rα-gp130並びに採取した293A12コロニーのLIF、IL-13およびIL-4に対する応答
*LIF、IL-13およびIL-4は全て最終濃度100ng/mlで24時間アッセイ法に用いた。
*代表的なデータ、56個のコロニーのうちの12個を評価した。
【0148】
(表3)キメラマウスおよびヒトIL-13Rα1-Fcタンパク質の固定されたマウスおよびヒトIL-13に関する親和性(KD)
【0149】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】IL-13またはIL-4を介するキメラ受容体の二量体形成が、gp130細胞内ドメインを介するSTAT-3リン酸化、そして続いてSTAT-3活性化ルシフェラーゼレポーター遺伝子の発現を誘起することを示す図である。
【図2】IL-13Rα1またはIL-4Rα細胞外ドメイン並びにgp130の膜貫通および細胞内ドメインを組み込むキメラ受容体の構築を示す図である;N末端FLAG標識タンパク質として発現させるためにpEFBOSベクターにクローン化する。
【図3】COS細胞におけるキメラ受容体構築物の一過性発現を示す写真である。COS細胞をFLAG標識IL-13Rα1-gp130、FLAG標識IL-4Rα-gp130(2個の別個のクローン)または対照β-galをコードするpEFBOSでトランスフェクトした。細胞ライゼートを72時間に収集し、そしてSDS-PAGEおよびウェスタントランスファーの後、抗FLAG抗体またはIL-13Rα1特異的モノクローナル抗体1D9のいずれかでプローブした。
【図4】キメラ受容体トランスフェクトされた293A12系3.1.2および3.2.4のLIF、IL-13およびIL-4に対する用量応答分析を示すグラフである。293A12細胞はSTAT-3ルシフェラーゼレポーター構築物を安定的にトランスフェクトした293T細胞の誘導体である。最初の分析の後、系3.1.2(A)および3.2.4(B)を展開させて、そして力価測定したLIF、IL-13およびIL-4に対して検定した。双方の系および別の系3.2.5を限界希釈によりクローン化した。アッセイ条件は5×104セル/ウェル、24時間インキュベーションであった。
【図5】キメラヒトIL-13Rα1-FcのヒトおよびマウスIL-13への結合のモノクローナル抗体1D9阻害のバイオセンサー分析を示すグラフである。分析の前にモノクローナル抗体1D9およびキメラ受容体を、指示した濃度で1時間予備インキュベートした。
【図6】マウスモノクローナル抗体1D9はプレート結合マウスIL-13へのキメラヒト(A)の結合を阻害するが、キメラマウス(B)IL-13Rα1-Fcの結合を阻害しないことを示すグラフである。力価測定したキメラ受容体タンパク質をモノクローナル抗体(最終濃度50μg/ml)と共に予備インキュベートした後、マウスIL-13でコートしたアッセイプレートに移した。抗VEGF-B特異的モノクローナル抗体6C12を陰性対照として用いた。
【図7】キメラヒトIL-13Rα1のプレート結合マウスIL-13への結合を阻害する能力に関してさらなるIL-13Rα1特異的マウスモノクローナル抗体の分析を示すグラフである。力価測定したキメラヒト受容体をIL-13Rα1特異的モノクローナル抗体(1D9、6A9、3F10、2A2)または陰性対照抗体(2H10、6C12)と共に最終濃度50μg/mlで45分間予備インキュベートした後、アッセイプレートに移した。
【図8】ヒトIL-13Rα1に対するマウスモノクローナル抗体がIL-13に対する3.2.4応答を阻害することを示すグラフである。3.2.4細胞を10または1ng/ml IL-13の存在下24時間培養し、そして指示した濃度のモノクローナル抗体、モノクローナル抗体1D9、6A9および2A2はIL-13Rα1特異的モノクローナル抗体であり、そして2H10は陰性対照抗体に対合するアイソタイプであった。阻害パーセンテージを(サイトカイン+モノクローナル抗体に対する応答/サイトカインのみに対する応答)×100から計算する。
【図9】ヒトIL-13Rα1に対するマウスモノクローナル抗体がIL-4に対する3.2.4応答を阻害することを示すグラフである。3.2.4細胞を10または1ng/ml IL-4の存在下24時間培養し、そして指示した濃度のモノクローナル抗体、モノクローナル抗体1D9、6A9および2A2はIL-13Rα1特異的モノクローナル抗体であり、そして2H10は陰性対照抗体に対合するアイソタイプであった。阻害パーセンテージを(サイトカイン+モノクローナル抗体に対する応答/サイトカインのみに対する応答)×100から計算する。
【図10】マウスモノクローナル抗体1D9可変ドメインおよびヒトコンセンサスフレームワークのアミノ酸配列の表示である。配列の番号付けはKabatら(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版、1991年、編、Bethesda:Public Health Services、National Institutes of Health)に準じ、そして重要なフレームワーク残基を黒丸で示す(Bacaら、J.BIol.Chem.272(16):10678-10684(1997))。CDR配列には下線を付し、そしてKabatら(1991、前記)の配列定義に従って定義するが、CDR-H1は組み合わせ配列および構造定義(Chothiaら、Nature 342(6252):877-883(1989))であり、例外である。フレームワークはヒト軽鎖ΚサブグループI-重鎖サブグループIIIのコンセンサス配列である(Chuntharapaiら、Cytokine 15(5):250-260(2001))。
【図11】キメラおよびCDRグラフト化Fabフラグメントの結合親和性のグラフである。(A)プレート結合hIL-13Rα1-Fc(ECD)(2.5μg/ml)に結合するキメラまたはCDRグラフト化1D9ファージディスプレイFabの競合ELISAは可溶性hIL-13Rα1(ECD)により競合された。(B)固定されたhIL-13Rα1(ECD)に結合する可溶性1D9キメラまたはCDRグラフト化Fabのバイオセンサー競合アッセイ法は可溶性hIL-13Rα1(ECD)により競合された。親和性の倍差を(IC50/IC50)から計算する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-13Rα1に対する抗体の結合により、IL-13受容体を介したシグナル伝達が拮抗される、哺乳動物IL-13Rα1鎖またはその抗体結合部分に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
IL-13受容体を介したシグナル伝達がIL-13によるものである、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
IL-13受容体を介したシグナル伝達がIL-13およびIL-4によるものである、請求項1記載の抗体。
【請求項4】
モノクローナル抗体である、請求項1または2または3記載の抗体。
【請求項5】
IL-13Rα1がヒト起源である、請求項4記載の抗体。
【請求項6】
IL-13Rα1がラット、イヌ、ヒツジ、またはカニクイザル起源である、請求項4記載の抗体。
【請求項7】
ヒト抗体である、請求項5または6記載の抗体。
【請求項8】
脱免疫した抗体である、請求項5または6記載の抗体。
【請求項9】
ヒト化抗体である、請求項8記載の抗体。
【請求項10】
アクセッション番号第 号で欧州細胞カルチャーコレクション(ECACC)、応用微生物学および研究センター、ポートンダウン、ソールズベリー、英国に寄託されたヒト化型マウスモノクローナル抗体1D9である、請求項9記載の抗体。
【請求項11】
完全抗体のフラグメントである、請求項1から10のいずれか一項記載の抗体。
【請求項12】
抗体フラグメントがFv、Fab、Fab'またはF(ab')2フラグメントである、請求項11記載の抗体。
【請求項13】
IL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する、ヒトIL-13Rα1およびヒツジIL-13Rα1またはその抗体結合部分に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
IL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する、ヒトIL-13Rα1およびカニクイザルIL-13Rα1またはその抗体結合部分に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
IL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する、ヒトIL-13Rα1およびイヌIL-13Rα1またはその抗体結合部分に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
IL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する、ヒトIL-13Rα1およびラットIL-13Rα1またはその抗体結合部分に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
IL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する、ヒトIL-13Rα1およびマウスIL-13Rα1またはその抗体結合部分に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項18】
IL-13受容体複合体を介したIL-4シグナル伝達を阻害する、請求項13または14または15または16または17記載の抗体。
【請求項19】
IL-13Rα1ポリペプチドを指向する抗体を非ヒト動物において作製するのに十分な時間および条件下で、該動物をIL-13Rα1ポリペプチドまたはその免疫原性部分で免疫する段階を含む、本発明の抗体を産生するための方法。
【請求項20】
非ヒト動物をIL-13Rα1ポリペプチドまたはその免疫原性部分で免疫し、免疫した動物から脾臓細胞を収集し、収集した脾臓細胞を骨髄腫細胞系に融合させてハイブリドーマ細胞系を作製し、そしてIL-13Rα1ポリペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を同定する段階を含む、ハイブリドーマ細胞系を産生するための方法。
【請求項21】
非ヒト動物がマウスである、請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
マウスがヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
IL-13Rα1ポリペプチドの免疫原性部分が細胞外ドメインである、請求項19または20記載の方法。
【請求項24】
アクセッション番号第 号で欧州細胞カルチャーコレクション(ECACC)、応用微生物学および研究センター、ポートンダウン、ソールズベリー、英国に寄託されたヒト化型マウスモノクローナル抗体1D9。
【請求項25】
請求項1から18のいずれか一項記載の抗体の軽鎖に由来する少なくとも1つのCDRの軽鎖の可変領域を含む抗体。
【請求項26】
可変領域が、アクセッション番号第 号で欧州細胞カルチャーコレクション(ECACC)、応用微生物学および研究センター、ポートンダウン、ソールズベリー、英国に寄託されたマウスモノクローナル抗体1D9に由来する、請求項25記載の抗体。
【請求項27】
配列番号:19から21のいずれか1つまたは複数で定義されるCDRを含む、請求項25または26記載の抗体。
【請求項28】
可変領域が配列番号:27で定義される、請求項27記載の抗体。
【請求項29】
請求項1から18のいずれか一項記載の抗体の軽鎖に由来する少なくとも1つのCDRの重鎖の可変領域を含む抗体。
【請求項30】
可変領域が、アクセッション番号第 号で欧州細胞カルチャーコレクション(ECACC)、応用微生物学および研究センター、ポートンダウン、ソールズベリー、英国に寄託されたマウスモノクローナル抗体1D9に由来する、請求項29記載の抗体。
【請求項31】
配列番号:22から24のいずれか1つまたは複数で定義されるCDRを含む、請求項29または30記載の抗体。
【請求項32】
可変領域が配列番号:28で定義される、請求項29記載の抗体。
【請求項33】
請求項1から18または25から32のいずれか一項記載の抗体を含む組成物。
【請求項34】
有効量の請求項1から18もしくは25から32のいずれか一項記載の抗体または請求項33記載の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物における疾患症状の治療方法。
【請求項35】
哺乳動物がヒトである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
疾患症状が線維症、ホジキン病、潰瘍性大腸炎、強皮症、アレルギー性鼻炎、腫瘍学的症状、肺障害、または炎症性障害である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
肺障害が喘息または慢性閉塞性肺疾患である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
炎症性症状が消化管の症状である、請求項36記載の方法。
【請求項39】
IL-13受容体複合体を介したIL-13のシグナル伝達またはIL-13およびIL-4のシグナル伝達を阻害するのに十分な時間および条件下で、有効量の抗体、例えばヒト化1D9を対象に投与する段階を含む、IL-13および/またはIL-4が介在する症状、例えば非限定例としては炎症性症状を治療または予防するための方法。
【請求項40】
哺乳動物がヒトである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
対象の炎症性症状の治療または予防における薬剤の製造におけるヒト化1D9またはその等価物。
【請求項1】
IL-13Rα1に対する抗体の結合により、IL-13受容体を介したシグナル伝達が拮抗される、哺乳動物IL-13Rα1鎖またはその抗体結合部分に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
IL-13受容体を介したシグナル伝達がIL-13によるものである、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
IL-13受容体を介したシグナル伝達がIL-13およびIL-4によるものである、請求項1記載の抗体。
【請求項4】
モノクローナル抗体である、請求項1または2または3記載の抗体。
【請求項5】
IL-13Rα1がヒト起源である、請求項4記載の抗体。
【請求項6】
IL-13Rα1がラット、イヌ、ヒツジ、またはカニクイザル起源である、請求項4記載の抗体。
【請求項7】
ヒト抗体である、請求項5または6記載の抗体。
【請求項8】
脱免疫した抗体である、請求項5または6記載の抗体。
【請求項9】
ヒト化抗体である、請求項8記載の抗体。
【請求項10】
アクセッション番号第 号で欧州細胞カルチャーコレクション(ECACC)、応用微生物学および研究センター、ポートンダウン、ソールズベリー、英国に寄託されたヒト化型マウスモノクローナル抗体1D9である、請求項9記載の抗体。
【請求項11】
完全抗体のフラグメントである、請求項1から10のいずれか一項記載の抗体。
【請求項12】
抗体フラグメントがFv、Fab、Fab'またはF(ab')2フラグメントである、請求項11記載の抗体。
【請求項13】
IL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する、ヒトIL-13Rα1およびヒツジIL-13Rα1またはその抗体結合部分に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
IL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する、ヒトIL-13Rα1およびカニクイザルIL-13Rα1またはその抗体結合部分に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
IL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する、ヒトIL-13Rα1およびイヌIL-13Rα1またはその抗体結合部分に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
IL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する、ヒトIL-13Rα1およびラットIL-13Rα1またはその抗体結合部分に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
IL-13受容体複合体を介したIL-13シグナル伝達を阻害する、ヒトIL-13Rα1およびマウスIL-13Rα1またはその抗体結合部分に結合する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項18】
IL-13受容体複合体を介したIL-4シグナル伝達を阻害する、請求項13または14または15または16または17記載の抗体。
【請求項19】
IL-13Rα1ポリペプチドを指向する抗体を非ヒト動物において作製するのに十分な時間および条件下で、該動物をIL-13Rα1ポリペプチドまたはその免疫原性部分で免疫する段階を含む、本発明の抗体を産生するための方法。
【請求項20】
非ヒト動物をIL-13Rα1ポリペプチドまたはその免疫原性部分で免疫し、免疫した動物から脾臓細胞を収集し、収集した脾臓細胞を骨髄腫細胞系に融合させてハイブリドーマ細胞系を作製し、そしてIL-13Rα1ポリペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を同定する段階を含む、ハイブリドーマ細胞系を産生するための方法。
【請求項21】
非ヒト動物がマウスである、請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
マウスがヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
IL-13Rα1ポリペプチドの免疫原性部分が細胞外ドメインである、請求項19または20記載の方法。
【請求項24】
アクセッション番号第 号で欧州細胞カルチャーコレクション(ECACC)、応用微生物学および研究センター、ポートンダウン、ソールズベリー、英国に寄託されたヒト化型マウスモノクローナル抗体1D9。
【請求項25】
請求項1から18のいずれか一項記載の抗体の軽鎖に由来する少なくとも1つのCDRの軽鎖の可変領域を含む抗体。
【請求項26】
可変領域が、アクセッション番号第 号で欧州細胞カルチャーコレクション(ECACC)、応用微生物学および研究センター、ポートンダウン、ソールズベリー、英国に寄託されたマウスモノクローナル抗体1D9に由来する、請求項25記載の抗体。
【請求項27】
配列番号:19から21のいずれか1つまたは複数で定義されるCDRを含む、請求項25または26記載の抗体。
【請求項28】
可変領域が配列番号:27で定義される、請求項27記載の抗体。
【請求項29】
請求項1から18のいずれか一項記載の抗体の軽鎖に由来する少なくとも1つのCDRの重鎖の可変領域を含む抗体。
【請求項30】
可変領域が、アクセッション番号第 号で欧州細胞カルチャーコレクション(ECACC)、応用微生物学および研究センター、ポートンダウン、ソールズベリー、英国に寄託されたマウスモノクローナル抗体1D9に由来する、請求項29記載の抗体。
【請求項31】
配列番号:22から24のいずれか1つまたは複数で定義されるCDRを含む、請求項29または30記載の抗体。
【請求項32】
可変領域が配列番号:28で定義される、請求項29記載の抗体。
【請求項33】
請求項1から18または25から32のいずれか一項記載の抗体を含む組成物。
【請求項34】
有効量の請求項1から18もしくは25から32のいずれか一項記載の抗体または請求項33記載の組成物を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物における疾患症状の治療方法。
【請求項35】
哺乳動物がヒトである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
疾患症状が線維症、ホジキン病、潰瘍性大腸炎、強皮症、アレルギー性鼻炎、腫瘍学的症状、肺障害、または炎症性障害である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
肺障害が喘息または慢性閉塞性肺疾患である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
炎症性症状が消化管の症状である、請求項36記載の方法。
【請求項39】
IL-13受容体複合体を介したIL-13のシグナル伝達またはIL-13およびIL-4のシグナル伝達を阻害するのに十分な時間および条件下で、有効量の抗体、例えばヒト化1D9を対象に投与する段階を含む、IL-13および/またはIL-4が介在する症状、例えば非限定例としては炎症性症状を治療または予防するための方法。
【請求項40】
哺乳動物がヒトである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
対象の炎症性症状の治療または予防における薬剤の製造におけるヒト化1D9またはその等価物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−31015(P2010−31015A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196207(P2009−196207)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【分割の表示】特願2003−578428(P2003−578428)の分割
【原出願日】平成15年3月21日(2003.3.21)
【出願人】(507231747)ズィナイス オペレーションズ ピーティーワイ.エルティーディー. (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【分割の表示】特願2003−578428(P2003−578428)の分割
【原出願日】平成15年3月21日(2003.3.21)
【出願人】(507231747)ズィナイス オペレーションズ ピーティーワイ.エルティーディー. (3)
【Fターム(参考)】
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