説明

インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィ用バンド

本発明は、インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィのための改良された装置と方法に関する。本発明は、検査対象物の周囲の変化を測定する装置を含み、この装置は、2つの端を有する通電可能な導電性ワイヤと、前記端を締結してギャップのない導電ループを形成する締結手段を備え、締結手段は、導電性ワイヤと電気的に連通する。周囲の変化に起因する測定可能な信号に伴って、装置の要素間の関係によりノイズのレベルが低下する。装置内で発生する信号は、呼吸努力の分析のための各種の手段を通じて処理され、通信されてもよい。電流により通電したギャップのない導電性ワイヤを用いて呼吸努力を測定する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2009年9月11日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2009904393号の優先権と利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、呼吸モニタの分野に関する。特に、本発明は、動物の肺気量と呼吸数を測定するためのインダクタンス式呼吸プレチスモグラフィに関する。
【背景技術】
【0003】
動物の呼吸サイクルと呼吸量に関する情報には数多くの用途がある。呼吸サイクルと呼吸量の測定は、さまざまな方法で行うことができる。プレチスモグラフィの分野では、胸部および/または腹部の体積の変化を利用して、息を吸ったり吐いたりすること、すなわち呼吸のパラメータを推定する。呼吸プレチスモグラフィ(RP)の分野は、エラストマプレチスモグラフイ、インピーダンスプレチスモグラフィおよびインダクタンス式プレチスモグラフィの方法を中心に開発されてきた。インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィ(RIP)は、胸部または腹部体積の変化を測定する手段として、胸部また腹部の周囲に巻き付けた誘導性バンドを使用する。インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィは、ワイヤのループを通じて印加される電流がループの向きに垂直な磁界を発生させ、ループにより囲まれた面積の変化によって、その面積の変化に直接対応する反対の電流がループ内に発生するという原理を利用している。呼吸中の運動は、RIPバンドが巻き付けられた体の部分の断面積を変化させ、それゆえ、バンドにより生成される磁界の形状を変化させて、反対の電流信号を誘起し、これを関連する信号処理ユニットで処理および測定することができる。
【0004】
当業界で知られているRIPバンドの種類によっては、信号処理ユニットとRIPバンドの間のインタフェースは、信号周波数が、呼吸努力により発生する断面積の変化によるバンドのインダクタンスの変化によって変調されるLC発振器の一部であってもよい。発振信号をFM復調することによって、呼吸努力に対応する信号を得ることが可能である。呼吸パターンと呼吸量を表す信号を取得して、信号を定量化可能な形に変換するための誘導性ベストおよびその他のトランスデューサもまた知られている。バンドの中には、検査対象物の胸部および/または腹部の周囲全体を取り囲むように設計されたものと、検査対象物を部分的に取り囲むものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在のバンドより感度が高く、容易に調節可能で、快適に使用でき、使いやすい小型のRIPバンドが必要とされている。このようなRIPバンドによって、特に小児科向けとして、検査対象物の大きさに関係なく、より正確な読み取りが可能となるであろう。本明細書において、「バンド」とは、インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィバンドを指す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、検査対象物の伸張と収縮を間接的に測定するための、改良された装置と方法を提供することである。本発明の他の目的は、検査対象物の呼吸量と呼吸数を測定するための方法と装置を提供することである。
【0007】
本発明は、バンドの周囲全体に対応する能動的測定機能を取り入れることによって、検査対象物の呼吸運動モニタの感度を改善する役割を果たす。本発明では、先行技術のバンドの、能動的なインダクタンスの変化を発生させない延長部分を使用しないものであり、それは、バンドのこの部分によって、バンドの検査対象物の全体的呼吸検出能力が低下させられる傾向があるからである。
【0008】
1つの態様において、本発明は検査対象物の周囲の変化を測定する装置を提供し、この装置は、2つの端を有する通電可能な導電性ワイヤと、前記端を締結してギャップのない導電ループを形成する締結手段とを備え、締結手段は導電性ワイヤと電気的に連通している。好ましくは、締結手段は、雄雌の部材を備える。より好ましくは、締結手段はバックルである。しかしながら、締結手段は、固定するために使用される、他のどのような好適な構造であってもよい。好ましくは、締結手段は金属材料からなる。好ましくは、締結手段は弾性のコネクタを含む。好ましくは、本発明のある実施形態は、信号生成、増幅、デジタル化、処理、送信または無線送信のための手段のうちのいずれかまたは組み合わせをさらに備え、これらは好ましくは、締結手段の中に組み込まれる。本発明は、信号送信のための無線インタフェースをさらに備えていてもよい実施形態を含む。
【0009】
他の態様において、本発明は動物の呼吸動作を測定する方法を提供し、この方法は、動物の胸郭および/または腹部にギャップのない導電性ワイヤを巻き付けるステップと、ワイヤを電流で通電させるステップと、巻き付けられたワイヤの運動に応じた信号を取得するステップと、信号を呼吸努力の測定値に変換するステップとを含む。動物は、好ましくはヒトである。ヒトは成人でも子供でもよい。あるいは、この方法は、馬や犬等、その他の種について利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】呼吸量と呼吸数の推定に使用される、先行技術のRIPバンドの一般的な用法を示す。
【図2】RIPバンドにより画定される平面領域を説明する図である。
【図3】先行技術のRIPバンドのある実施形態を示す。
【図4】縫い付けるように取り付けられた導電性ワイヤを組み込んだ伸縮可能なRIPバンドのある実施形態を示す。
【図5】締結された状態のRIPバンドとバックルのアセンブリのある実施形態を示す。
【図6】RIPバンド用のバックルの雄側コネクタのある実施形態を示す。
【図7】RIPバンド用のバックルの雌側のある実施形態を示す。
【図8】外れた状態の図5のRIPバックルアセンブリの実施形態を示す。
【図9】RIPバンドおよび外れた状態のフックと穴のアセンブリのある実施形態を示す。
【図10】RIPバンドおよび外れた状態のスナップアセンブリのある実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面は、本発明の実施形態を示している。当然のことながら、本発明には他の多くの実施形態が可能であり、本発明は付属の特許請求の範囲の請求項の範囲によってのみ限定される。
【0012】
図1は、呼吸量と呼吸数の測定に使用されている周知のRIPバンドの一般的用例を示す。通常、2つのバンドが使用され、検査対象物の腹部(17)および胸郭部(16)に装着される。バンドはフロントエンドユニット(15)に接続され、このフロントエンドユニットは、インピーダンス整合回路を有していてもよく、かつ交換可能または充電可能なバッテリ式無線または有線手段を介して処理ユニットと通信していてもよく、処理ユニットは信号を分析/処理し、呼吸努力に対応する信号を生成する。
【0013】
図2は、RIPバンド(9)によって画定される概して丸い可変平坦領域(11)、(12)を示す概略図であり、バンドは、電流で通電されると、磁気ループの主要部分となる。磁気ループにより画定される、本願における有効領域全体には次の区分が含まれる。すなわち、検査対象物を取り囲む主要ループ(11)と、バンドに接続されたワイヤ(32と33)とワイヤがまとめてモールドされる地点(13)との間の可変平坦領域(12)と、ケーブルの中の、ワイヤがまとめてモールドされる部分(13)からコネクタ(14)までのワイヤの間の細い不変領域が含まれ、コネクタ(14)はまた、フロントエンドの一部であってもよい。さらに、可変平坦領域(12)は、概して丸い可変平坦領域(11)と同一平面内に配置しても、異なる平面内に配置してもよい。本明細書において、検査対象物はヒトであっても、他のどの動物であってもよい。当然のことながら、本発明は、馬、その他の獣医分野における呼吸モニタに有利である。
【0014】
呼吸中の運動は、RIPバンドにより画定される平坦領域を変化させ、それゆえ、通電したバンドによって生成される磁界の特性を変化させ、それが通電したバンド内の電流とは反対の電流を誘起し、この反対の電流は測定可能である。運動はまた、可変平坦領域の方位と2つの平坦領域(11と12)の間の関係にも影響を与える可能性がある。測定された可変電流は処理されて、電流の変化の原因となる呼吸努力に対応する信号が発生される。検査対象物の呼吸運動によって生じる平坦領域の何らかの変化およびその結果である磁気ループの特性の変化は、関心対象の信号のうちの、本願における有効部分に関係し、これに対して、呼吸以外の運動に起因する平坦領域の何らかの変化およびその結果である磁気特性の変化は、関心対象の信号の不正確部分とノイズに関係する。本発明は、最も有利な点として、検査対象物を完全に取り囲むことによって、可変平坦領域のうち、呼吸努力に対応する信号に関係しない部分を、その信号に関係する可変平坦領域に関してなるべく小さくし、それによって、可変領域(12)からのノイズを低減させ、その結果、関心対象の信号の信号対ノイズ比を改善させようとするものである。
【0015】
本発明の利点は、図3を参照するとよりわかりやすく、図3は、先行技術のRIPバンドの別の特徴的な例を示している。この特徴的な例において、バンドの断面領域は検査対象物を完全に包囲していないが、これは、バックルによって完全なループにギャップ(19)ができるからである。この例において、可変平坦領域は、バンドへのケーブル連結地点(20と21)と2本のワイヤがまとめてモールドされる地点(31)によって画定される断面領域からなる。磁気ループの残りの部分は、モールドケーブル内にあり、コネクタ(18)に至る。この例の可変平坦領域では、図2に示される本発明の可変平坦領域(12)と比較して、比較的大きな無関係の信号が呼吸信号に導入され、その結果、好ましくないことに、信号対ノイズ比が小さくなる。
【0016】
図4は、縫い付けるように取り付けられた導電性ワイヤ(10)を備えるRIPバンド(1)としての本発明のある実施形態を示す。バンドの材料は、適当であればどのような伸縮可能材料であってもよく、たとえば、弾性糸を織り込んだ布でよい。このバンドは、締結手段とともに使用され、動作的に締結されるとRIPバンドとなる。バンドは、使用のために調整されたときに、検査対象物の周囲にぴったりと巻き付けられなければならない。好ましくは、締結手段は図5から図8に示されるようなバックルである。しかしながら、当業界で周知のその他の締結手段も使用できる。導電性ワイヤは、バンドに縫い付けるように取り付けられていても、そうでなくてもよい。導電性ワイヤの他の実施形態では、当業界で周知の適当な取り付け手段、たとえば、メッシュのループ、ピンまたはその他でバンドに取り付けることによって、ワイヤを組み込んでもよい。また、図は、導電性ワイヤが「ジグザグ」パターンで示されているが、その他のパターンを利用してもよい。本発明は、あらゆる種類のバンドと、これに関連する伸縮可能な導電性ワイヤを含む。導電性ワイヤ(10)の配置のパターンは、選択されたパターンによって生成される信号対ノイズ比に依存して選択される。そのパターンは、バンドが伸縮可能で、伸びることができ、またそれとともにワイヤも伸びることができるものであるべきである。締結手段は、他の形態、たとえば、フックまたはスナップでもよく、これらは図9と図10に示されている。
【0017】
図5は、RIPバンド(1)とバックルの好ましい実施形態を示し、バンド(1)は、図のようにバックルが締結されると、完全な円周を有する回路を形成する。縫い付けるように取り付けられたワイヤ(図4の10で示される)の端部は、締結手段の雄側部分(4)と締結手段の雌側部分(2)の両方の内部で電気的に連通しており、これについては後述する。好ましくは、締結手段(4)は、図5と図6に示されるように、雄側部分(4)の中に組み込まれた係合解除機構(3)を有する。
【0018】
図6は、締結手段の雄側部分(4)のある実施形態を示す。バンド(1)に縫い付けるように取り付けられたワイヤ(図4の10参照)は、電気コネクタ(5)の第一のピンと電気的に連通しており、回路に信号を送ることができ、この回路は信号をデジタル化して、分析処理ユニットに送り、呼吸量と呼吸数が計算される。好ましくは、コネクタは金属材料からなる。しかしながら、適当であればどのような導電性材料でも使用でき、たとえば導電性ポリマであってもよい。バックルの雌側部分(2)は、バックルの雄側部分(4)と締結されると、電気コネクタ(5)の第二のピンを介して、また導電性コネクタ(7)を介して、フロントエンドと電気的に連通する。好ましくは、コネクタは金属材料からなる。係合解除機構(3)の実施形態は好ましくは、雄側締結手段(4)の一部であるが、他の構成も可能である。
【0019】
図7は、締結手段の雌側部分(2)のある実施形態を示す。バンド(1)に縫い付けるように取り付けられたワイヤ(図4の10参照)は、締結状態では、電気的接続部(6)を介して締結手段の雄側部分(4)と電気的に連通する。好ましくは、電気接続部は、ばね等の弾性材料からなる。
【0020】
図8は、締結手段の雄側部分と雌側部分の両方を含む、最も好ましい実施形態を示す。バックル(2)の受容部側のばね式接続部(6)は、締結手段の雄側端(4)の金属接続面(7)と接触して、バンドを装着した検査対象物の周囲の回路を完全に閉じた周とする。この実施形態においては、両方の接続部は次にコネクタ(5)に接続され、信号が回路に送られ、回路は信号をデジタル化して、分析処理ユニットに送り、呼吸量と呼吸数が計算される。これほど好ましくはないが、他の実施形態では、雄側および雌側部分を持たず、コネクタと締結される締結手段を有していてもよい。しかしながら、このような締結手段は、回路の接続を保持することにおいて、効果が低い。
【0021】
本発明は、図1に示されるものと同様の複数のバンドを含む。実施形態では、インピーダンス整合回路、バンド相互接続手段を組み込んでもよく、これらは交換可能または充電可能なバッテリ式無線または有線手段を介して処理ユニットと連通してもよく、処理ユニットは信号を分析/処理して、呼吸努力に対応する信号を生成する。複数のバンドを有する実施形態は、バンド間、およびバンドとフロントエンドユニットとの間の通信のための相互通信手段を備える。フロントエンドユニットは、コネクタ手段、信号取得手段または信号分析手段、あるいはこれらの組み合わせを備えていてもよい。相互通信手段は、複数のワイヤを組み込んだケーブルを備えていてもよい。このような実施形態において、図7に示されるような単独の電気コネクタ(5)があってもよい。他の実施形態では、バックル内の分析ユニットと、交換可能または充電可能なバッテリ式無線インタフェースを備えていてもよい。他の実施形態では、信号を改善するために、バンドバックル内にインピーダンス整合コイルを組み込んでもよい。
【0022】
図9は、RIPバンドおよび、外れた状態のフックと穴のアセンブリの実施形態を示す。バンド(22)は、検査対象物を最適に取り囲む役割を果たす。縫い付けるように取り付けられたワイヤ(23)は、磁気ループ領域を励起する役割を果たす。フックと穴(25)には2つの役割があり、第一は、バンド(22)を検査対象物の周囲に固定する役割、第二は、バンドの両側を電気的に接続する役割であり、それゆえ、好ましくない可変断面積がなるべく小さくなる。信号は、コネクタ(24)を通じてフロントエンドユニットに通信される。
【0023】
図10は、RIPバンドと、外れた状態のスナップアセンブリの実施形態を示す。図9と同様に、バンド(26)は検査対象物を最適に取り囲む。縫い付けるように取り付けられたワイヤ(27)は、磁気ループを励起する。スナップ式プラグ(29)と受容部(30)によって、バンドの両端が電気的に締結され、信号がコネクタ(28)を介して通信される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の円周の変化を測定するための装置であって、
2つの端を有する通電可能な導電性ワイヤと、
前記端を締結して、ギャップのない導電ループを形成する締結手段と、
を備え、
前記締結手段は前記導電性ワイヤと電気的に連通する、装置。
【請求項2】
前記締結手段が雌雄の部材を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記締結手段がバックルである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ワイヤが金属材料からなる、請求項1または請求項2のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記締結手段が弾性コネクタを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
信号デジタル化手段をさらに備える、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記信号デジタル化手段が前記締結手段に組み込まれている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
信号送信のための無線インタフェースをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
電流を供給するバッテリをさらに備える、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記バッテリは充電可能である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
動物の呼吸努力を測定する方法であって、
前記動物の胸郭および/または腹部に、ギャップのない導電性ワイヤを巻き付けるステップと、
前記ワイヤを電流で通電させるステップと、
前記巻き付けられたワイヤの運動に応じた信号を取得するステップと、
前記信号を呼吸努力の測定値に変換するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記動物が人間である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記信号を無線で送信するステップをさらに含む、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記送信するステップは、バッテリにより電源供給を受ける、請求項13に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2013−504340(P2013−504340A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528193(P2012−528193)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001149
【国際公開番号】WO2011/029136
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(507227821)コンピュメディクス メディカル イノベーション ピーティーワイ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】