説明

インダクタ及びその製造方法

【課題】 磁芯を構成する複数の磁性体コアの接合が、接着剤の経年劣化にて接着力が低下しても安定に接合が保持されるインダクタ及びその製造方法を得る。
【解決手段】 プレート状の磁性体コア1と、ポット状の磁性体コア2とでなる磁芯と、巻線3と、インダクタ用端子11a、11bとで構成されるインダクタにおいて、インダクタ用端子11a、11bは、固定部9と、固定部9から引き出された、ワイヤー保持部10とで構成され、磁芯における接合されたプレート状の磁性体コア1とポット状の磁性体コア2を、固定部9により挟み込んでかしめ、固定されており、ワイヤー保持部10に接する背面に、ポット状の磁性体コア2の切り欠きからなる空隙部100を有し、巻線のワイヤー端部12aの一部が、空隙部100に配置され、またワイヤー保持部10のかしめにより、ワイヤー端部12aが、空隙部100より外れないように仮固定された後、はんだが施されたインダクタとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として携帯端末、電源機器などへの使用に好適なインダクタ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコイル、トランス等のインダクタは、磁性体材料と巻線と、コイルボビンとで構成されており、コイルボビンには端子が配置され、巻線の引き出し線が、端子に巻かれて、はんだ処理される構成が一般的である。
【0003】
図3は、従来のインダクタの説明図である。図3(a)は、平面図、図3(b)は、正面図、図3(c)は、底面図、図3(d)は、左側面図、図3(e)は、右側面図、図3(f)は、背面図である。プレート状の磁性体コア1とポット状の磁性体コア2と巻線3とインダクタ用端子6a、6bとで構成されるインダクタである。インダクタ用端子6a、6bは、磁性体コアの内、プレート状の磁性体コア1に配置され、このインダクタ用端子6aは、固定部4と、この固定部4から略直角に折り曲げられた、ワイヤー保持部5とで構成され、ワイヤー保持部5は、巻線3のワイヤー端部7bが、プレート状の磁性体コア1に押し付けられるように、ワイヤー保持部5にかしめられ、はんだにてはんだ処理されている。
【0004】
図4は、従来のインダクタの製造方法を示す説明図である。図4(a)は、組み立て完成図、図4(b)は、組み立て手順を説明する図である。従来のインダクタの製造方法は、プレート状の磁性体コア1に、巻線3と、インダクタ用端子6a、6bが配置されており、これらを組み立てた物に、ポット状の磁性体コア2が、かぶさるように組み立てられて製造される。
【0005】
特許文献1には、分割された磁性体コアの剥がれを防止するため、接合面に接合剤を介して、一体化接合したインダクタの提供が可能になった例が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、分割された磁性体コアの接合界面に、切り欠け段差を設けることにより、接合固着強度の向上させたインダクタの提供が可能になった例が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−324562号公報
【特許文献2】特開2007−095914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、磁性体コアの分割部に接合剤を介して固定させ、剥がれを防止することができ、粘着テープ等の固定物を使用しないため、小型化に適したインダクタの提供が可能になったが、接着剤の経年変化によって、磁性体コアの分割部の接着強度が低下する問題点があった。
【0009】
特許文献2は、分割された磁性体コアの接合界面に切り欠け段差を設けることにより、接着剤での固着の他、引張りせん断接着強さも併せ持つようにすることができ、小型化に適したインダクタの提供が可能になったが、段差部に塗布した接着剤の経年変化によって、磁性体コアの分割部の接着強度が低下する問題点があった。
【0010】
本発明の課題は、磁芯を構成する複数の磁性体コアの接合が、接着剤の経年劣化にて接着力が低下しても、構造上の改善により、安定に磁性体コアの接合が保持されることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、従来の課題を解決すべくなされたもので、本発明のインダクタは、磁芯を構成する第1の磁性体コアと、第2の磁性体コアの接合を、補強するような構造となるように、インダクタ用端子の構造を工夫したインダクタ及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明は、前記課題の解決のため、第1の磁性体コアと、第2の磁性体コアを組み合わせた磁芯と、巻線と、インダクタ用端子とで構成されるインダクタにおいて、インダクタ用端子は、固定部と、固定部から引き出された、ワイヤー保持部とで構成され、第1の磁性体コアと第2の磁性体コアを、固定部により挟み込んでかしめ、固定し、またワイヤー保持部に接する前記第1の磁性体コアと前記第2の磁性体コアの少なくとも一方によって形成された空隙部に、巻線のワイヤー端部の一部が配置され、ワイヤー保持部のかしめにより、ワイヤー端部が、空隙部より外れないように仮固定された後、電気的接合処理が施されたことを特徴とするインダクタである。
【0013】
さらに、第1の磁性体コアをプレート状の磁性体コアとし、第2の磁性体コアをポット状の磁性体コアとすることを特徴とするインダクタである。
【0014】
また、第1の磁性体コアと、第2の磁性体コアとを組み合わせて磁芯を構成し、巻線とインダクタ用端子と配置するインダクタの製造方法において、インダクタ用端子は、固定部と、固定部から引き出された、ワイヤー保持部とで構成し、第1の磁性体コアと、巻線を施した第2の磁性体コアを合体後、固定部により挟み込んでかしめることにより、固定し、またワイヤー保持部に接する前記第1の磁性体コアと前記第2の磁性体コアの少なくとも一方によって形成された空隙部に、ワイヤー端部の一部を配置し、ワイヤー保持部をかしめりことにより、ワイヤー端部が、空隙部より外れないように仮固定して電気的接合処理を施すことを特徴とするインダクタの製造方法である。
【0015】
第1の磁性体コアをプレート状の磁性体コアとし、第2の磁性体コアをポット状の磁性体コアとすることを特徴とするインダクタの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
従って、本発明によれば、インダクタ用端子は、固定部と、固定部から引き出された、ワイヤー保持部とで構成され、磁芯における接合された第1の磁性体コアと第2の磁性体コアを、固定部によりかしめ、外れないように固定されており、ワイヤー保持部に接する背面に空隙部を有し、巻線のワイヤー端部の一部が、空隙部に配置され、またワイヤー保持部のかしめにより、ワイヤー端部が、空隙部より外れないように仮固定された後、電気的接合処理を施すことにより、磁芯を構成する複数の磁性体コアの接合が、接着剤の経年劣化にて接着力が低下しても、磁芯の接合を、補強するような構造となるように工夫したインダクタ、およびその製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係わるのインダクタの説明図である。図1(a)は、平面図、図1(b)は、正面図、図1(c)は、底面図、図1(d)は、左側面図、図1(e)は、右側面図、図1(f)は、背面図である。
【0018】
図1のインダクタは、プレート状の磁性体コア1と、ポット状の磁性体コア2とでなる磁芯と、巻線3とインダクタ用端子11a、11bとで構成されるインダクタである。インダクタ用端子11a、11bは、プレート状の磁性体コア1と前記ポット状の磁性体コア2をかしめるように配置される。
【0019】
インダクタ用端子11a、11bは、固定部9と、固定部9から引き出されたワイヤー保持部10とで構成される。固定部9により、接合されたプレート状の磁性体コア1とポット状の磁性体コア2がかしめによって外れないように固定されており、ワイヤー保持部10に接する背面にポット状の磁性体コア2の切り欠きからなる空隙部100を有し、巻線3のワイヤー端部12aが、空隙部100に配置され、ワイヤー端部12aが、ワイヤー保持部10のかしめによって、空隙部100より外れないように仮固定されて、はんだにて電気的接合を行う。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態に係わるのインダクタの製造方法を示す説明図である。図2(a)は、組み立て完成図、図2(b)は、組み立て手順を説明図である。本発明のインダクタの製造方法は、プレート状の磁性体コア1と、ポット状の磁性体コア2と、巻線3と、インダクタ用端子11a、11bとが配置されており、プレート状の磁性体コア1にポット状の磁性体コア2と、巻線3とを組み合わせた後に、インダクタ用端子11a、11bとをはめ込み、組み立てられ製造される。
【実施例】
【0021】
次に、実施例に基づき、本発明のインダクタについて、さらに詳しく説明する。
【0022】
図1に示すインダクタについて、各部につき、以下の寸法および材質にてインダクタを形成した。プレート上の磁性体コアの寸法を10mm角で、1対の対向する角を3mmカットした形状で、厚み1mmとし、ポット状の磁性体コアの寸法を10mm角で、1対の対向する角を3mmカットした形状で、厚み3mmとした。従って、接着剤にて組み合わせた磁芯の寸法は、10mm角で、高さ4mmで、対向する角を3mmカットした形状とした。なお、プレート状の磁性体コアの材質を、絶縁特性の優れたNiZn系フェライトとし、またポット状の磁性体コアの材質を同じく、NiZn系フェライトとした。
【0023】
インダクタ用端子は、厚み0.5mmのリン青銅板を加工して形成した。ここで、固定部9の幅は、4mmとして、リン青銅板のばね性を利用して、50g重の強さのかしめ強度を得た。また、先のポット状の磁性体コアの内部に、0.1mm径の絶縁銅線を100ターン巻回した。
【0024】
巻線の取り出し部分を、インダクタ用端子のワイヤー保持部に仮固定し、ついで、はんだを用いて、電気的接合を行った。本実施例のインダクタは、磁芯を構成するプレート状の磁性体コアと、ポット状の磁性体コアの接合において、経年劣化にて接着剤の接着強度が低下しても、安定に接合状態を保持することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係わるインダクタの説明図。図1(a)は、平面図、図1(b)は、正面図、図1(c)は、底面図、図1(d)は、左側面図、図1(e)は、右側面図、図1(f)は、背面図。
【図2】本発明の実施の形態に係わるインダクタの製造方法を示す説明図。図2(a)は、組み立て完成図、図2(b)は、組み立て手順を説明図。
【図3】従来のインダクタの説明図。図3(a)は、平面図、図3(b)は、正面図、図3(c)は、底面図、図3(d)は、左側面図、図3(e)は、右側面図、図3(f)は、背面図。
【図4】従来のインダクタの製造方法を示す説明図。図4(a)は、組み立て完成図、図4(b)は、組み立て手順を説明図。
【符号の説明】
【0026】
1 プレート状の磁性体コア
2 ポット状の磁性体コア
3 巻線
4 固定部
5 ワイヤー保持部
6a、6b インダクタ用端子
7a、7b ワイヤー端部
8 はんだ
9 固定部
10 ワイヤー保持部
11a、11b インダクタ用端子
12a、12b ワイヤー端部
100 空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の磁性体コアと、第2の磁性体コアを組み合わせた磁芯と、巻線と、インダクタ用端子とで構成されるインダクタにおいて、前記インダクタ用端子は、固定部と、前記固定部から引き出された、ワイヤー保持部とで構成され、前記第1の磁性体コアと前記第2の磁性体コアを、前記固定部により挟み込んでかしめ、固定し、また前記ワイヤー保持部に接する前記第1の磁性体コアと、前記第2の磁性体コアの少なくとも一方によって形成された空隙部に、前記巻線のワイヤー端部の一部が配置され、前記ワイヤー保持部のかしめにより、前記ワイヤー端部が、前記空隙部より外れないように仮固定された後、電気的接合処理が施されたことを特徴とするインダクタ。
【請求項2】
前記第1の磁性体コアをプレート状の磁性体コアとし、前記第2の磁性体コアをポット状の磁性体コアとすることを特徴とする請求項1に記載のインダクタ。
【請求項3】
第1の磁性体コアと、第2の磁性体コアとを組み合わせて磁芯を構成し、巻線とインダクタ用端子と配置するインダクタの製造方法において、前記インダクタ用端子は、固定部と、前記固定部から引き出された、ワイヤー保持部とで構成し、前記第1の磁性体コアと、前記巻線を施した前記第2の磁性体コアを合体後、前記固定部により挟み込んでかしめることにより固定し、また前記ワイヤー保持部に接する前記第1の磁性体コアと、前記第2の磁性体コアの少なくとも一方によって形成された空隙部に、前記ワイヤー端部の一部を配置し、前記ワイヤー保持部をかしめることにより、前記ワイヤー端部が、前記空隙部より外れないように仮固定して電気的接合処理を施すことを特徴とするインダクタの製造方法。
【請求項4】
前記第1の磁性体コアをプレート状の磁性体コアとし、前記第2の磁性体コアをポット状の磁性体コアとすることを特徴とする請求項3に記載のインダクタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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