説明

インダクタ

【課題】インダクタを3層で構成することができなかった。
【解決手段】(1)第1の巻線本体と、第2の巻線本体と、第3の巻線本体と、第1の入出力配線と、一対の第1の接続配線と、一対の第2の接続配線と、を有する第1の巻線と、(2)第4の巻線本体と、前記第1の巻線本体及び前記第3の巻線本体間に設けられた第5の巻線本体と、第6の巻線本体と、第2の入出力配線と、一対の第3の接続配線と、一対の第4の接続配線とを有する第2の巻線と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一の平衡型の回路系と他の平衡型の回路系との間で、又は、平衡型の回路系と不平衡型の回路系との間で信号を変換する整合回路等に用いられるインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来のインダクタの構造を示す。従来のインダクタD10は、不平衡型の回路系と不平衡型の回路系との間で、下記の特許文献1〜特許文献3に記載されたトランスの機能を果たすべく、図10(B)に示されるように、基板SB上にパシベーション層PVを隔てて、2つの渦巻状の巻線である第1の巻線W10及び第2の巻線W20から構成されている。
【0003】
より詳しくは、第1の巻線W10は、渦巻状の巻線本体WD10と、当該巻線本体WD10の中心側の端部ED10aを、一の外部端子又は一の外部回路(図示せず。)に接続すべく、当該端部ED10aを起点として外側の端部ED10bに向けて延在する配線LN10とを有する。
【0004】
同様に、第2の巻線W20は、渦巻状の巻線本体WD20と、当該巻線本体WD20の中心側の端部ED20aを、他の外部端子又は他の外部回路に接続すべく、当該端部ED20aを起点として外側の端部ED20bに向けて延在する配線LN20とを有する。
【0005】
【特許文献1】特開2002−231817号公報
【特許文献2】特開2005−340658号公報
【特許文献3】特開平6−347142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のインダクタD10では、第1の巻線W10については、前記配線LN10が、上記したパシベーション層PV上の第1の層L10に形成されており、前記巻線本体WD10が、前記第1の層L10上の第2の層L20に形成されており、さらに、第2の巻線W20については、前記巻線本体WD20が、前記第2の層L20上の第3の層L30に形成されており、前記配線LN20が、前記第3の層L30上の第4の層L40に形成されている。この結果、当該インダクタD10を形成するためには、4つの層、即ち、第1の層L10〜第4の層L40が必要であり、インダクタD10を4層より少ない層で構成するという「薄化」ができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決すべく、以下の適用例により実現される。
【0008】
[適用例1]
適用例1のインダクタは、
(1)(1a)第1の層、当該第1の層上に形成されている第2の層、及び、当該第2の層上に形成されている第3の層のうち、前記第2の層中に設けられている第1の巻線本体と、
(1b)前記第1の層中に設けられている、前記第1の巻線本体より小さい第2の巻線本体と、
(1c)前記第2の層中に設けられている、前記第2の巻線本体より小さい第3の巻線本体と、
(1d)前記第2の層中で、前記第1の巻線本体から延在する、平衡型の第1の信号の入力及び出力の一方を行うため一対の第1の入出力配線と、
(1e)前記第1の巻線本体と前記第2の巻線本体とを接続するための一対の第1の接続配線と、
(1f)前記第2の巻線本体と前記第3の巻線本体とを接続するための一対の第2の接続配線と、を有する第1の巻線と、
(2)(2a)前記第3の層中に設けられている第4の巻線本体と、
(2b)前記第2の層中における、前記第1の巻線本体と前記第3の巻線本体との間に設けられている、前記第4の巻線本体より小さい第5の巻線本体と、
(2c)前記第3の層中に設けられている、前記第5の巻線本体より小さい第6の巻線本体と、
(2d)前記第3の層中で、前記第4の巻線本体から延在する、平衡型の第2の信号の入力及び出力の他方を行うための一対の第2の入出力配線と
(2e)前記第4の巻線本体と前記第5の巻線本体とを接続するための一対の第3の接続配線と、
(2f)前記第5の巻線本体と前記第6の巻線本体とを接続するための一対の第4の接続配線とを有する第2の巻線であって、前記第1の巻線に重畳している前記第2の巻線と、を含む。
【0009】
適用例1のインダクタによれば、前記第1の巻線については、前記第1の巻線本体及び第3の巻線本体が前記第2の層に設けられており、かつ、前記第2の巻線本体が前記第1の層に設けられており、また、前記第1の巻線については、前記第4の巻線本体及び第6の巻線本体が前記第3の層に設けられており、かつ、前記第5の巻線本体が前記第2の層に設けられ、しかも、当該第5の巻線本体が、前記第1の巻線本体と前記第3の巻線本体との間に位置する。これにより、従来のインダクタと異なり、当該適用例1のインダクタを第1の層〜第3の層という3つの層のみで構成することができ、従来に比して「薄化」することが可能となる。
【0010】
[適用例2]
適用例2のインダクタは、
(1)(1a)第1の層、当該第1の層上に形成されている第2の層、及び、当該第2の層上に形成されている第3の層のうち、前記第2の層中に設けられている第1の巻線本体と、
(1b)前記第1の層中に設けられている、前記第1の巻線本体より小さい第2の巻線本体と、
(1c)前記第2の層中に設けられている、前記第2の巻線本体より小さい第3の巻線本体と、
(1d)前記第2の層中で、前記第1の巻線本体から延在する、平衡型の信号について入力及び出力の一方を行うための一対の第1の入出力配線と、
(1e)前記第1の巻線本体と前記第2の巻線本体とを接続するための一対の第1の接続配線と、
(1f)前記第2の巻線本体と前記第3の巻線本体とを接続するための一対の第2の接続配線と、を有する第1の巻線と、
(2)(2a)前記第3の層中に設けられている、渦巻状の第4の巻線本体と、
(2b)前記第4の巻線本体の中心側の端部を起点として、前記第3の層及び前記第2の層に亘って設けられた第3の接続配線と、
(2c)前記第2の層中で、前記第3の接続配線の前記第2の層中の端部を起点として前記第4の巻線本体の外側に向けて、前記一対の第1の入出力配線により規定される空間を経て延在する第2の入出力配線であって、不平衡型の信号について前記第4の巻線本体の外側の端部と協働して前記入力及び前記出力の他方を行うための前記第2の入出力配線と、を有する第2の巻線であって、前記第1の巻線に重畳している前記第2の巻線と、を含む。
【0011】
適用例2のインダクタによれば、前記第2の巻線の前記入出力配線を、前記第2の層において、前記第1の巻線の前記一対の第1の接続配線のねじれ関係により規定される領域を経て前記第2の巻線の外側に向けて延在させることにより、当該入出力配線を、前記第1の層〜前記第3の層以外の層に設ける必要が無いことから、従来と異なり、当該適用例2のインダクタを前記第1の層〜前記第3の層という3つの層のみで構成することができ、従来に比して「薄化」することが可能となる。
【0012】
[適用例3]
適用例3のインダクタは、適用例1のインダクタであって、
前記一対の第1の接続配線、前記一対の第2の接続配線、前記一対の第3の接続配線、及び、前記一対の第4の接続配線は、相互にねじれの関係にあり、鈍角である頂角を有する凸状の部分を備える。
【0013】
[適用例4]
適用例4のインダクタは、適用例2のインダクタであって、
前記一対の第1の接続配線、及び、前記一対の第2の接続配線は、相互にねじれの関係にあり、鈍角である頂角を有する凸状の部分を備える。
【0014】
[適用例5]
適用例5のインダクタは、適用例1のインダクタであって、
前記一対の第1の接続配線、前記一対の第2の接続配線、前記一対の第3の接続配線、及び、前記一対の第4の接続配線は、相互にねじれの関係にある湾曲の部分を備える。
【0015】
[適用例6]
適用例6のインダクタは、適用例2のインダクタであって、
前記一対の第1の接続配線、及び、前記一対の第2の接続配線は、相互にねじれの関係にある湾曲の部分を備える。
【0016】
[適用例7]
適用例7のインダクタは、適用例1のインダクタであって、
前記一対の第1の接続配線、前記一対の第2の接続配線、前記一対の第3の接続配線、及び、前記一対の第4の接続配線は、切り欠きの部分を備える。
【0017】
[適用例8]
適用例8のインダクタは、適用例2のインダクタであって、
前記一対の第1の接続配線、及び、前記一対の第2の接続配線は、切り欠きの部分を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
実施例のインダクタについて図面を参照して説明する。
【0019】
《実施例1》
〈第1の巻線と第2の巻線〉
図1は、実施例1のインダクタの構成を示す斜視図であり、図2は、実施例1のインダクタの構成を示す平面図及び断面図である。実施例1のインダクタD1は、一の平衡型の回路系と他の平衡型の回路系との間でのトランスとして機能すべく(例えば、高インピーダンスの回路系から入力される平衡型の信号を、低インピーダンスの回路系に整合する他の平衡型の信号に変換して出力し、又は、反対に、低インピーダンスの回路系から入力される平衡型の信号を、高インピーダンスの回路系に整合する他の平衡型の信号に変換して出力すべく)、図1及び2(A)に示されるように、第1の巻線W1及び第2の巻線W2を含む。
【0020】
図4(B)に明示される、第1の巻線W1の接続配線W1(L1−L2)em1、W1(L1−L2)em2のような、層L1〜L3(図2(B)に図示。)間に亘る接続配線についての詳細な構成については、図9を用いて後述する。
【0021】
第1の巻線W1及び第2の巻線W2は、図2(B)に示されるように、基板SB上にパシベーション層PVを隔てて形成されている第1の層L1、第2の層L2、及び第3の層L3に亘って設けられている。即ち、第1の巻線W1及び第2の巻線W2は、図2(A)、(B)に示されるように重畳しており、詳細には、図2(B)に示されるように、第2の巻線W2の第4の巻線本体WD4が、第1の巻線W1の第1の巻線本体WD1の上方に位置しており、第2の巻線W2の第5の巻線本体WD5が、第1の巻線W1の第2の巻線本体WD2の上方に、かつ、第1の巻線W1の第1の巻線本体WD1と第1の巻線W1の第3の巻線本体WD3との間に位置し、第2の巻線W2の第6の巻線本体WD6が、第1の巻線W1の第3の巻線本体WD3の上方に位置している。
【0022】
図3(A)は、実施例1の第2の巻線の構成を示す平面図であり、図3(B)は、実施例1の第1の巻線の構成を示す平面図であり、図4(A)は、実施例1の第2の巻線の構成を構成を示す斜視図であり、図4(B)は、実施例1の第1の巻線の構成を示す斜視図である。
【0023】
〈第1の巻線〉
第1の巻線W1は、図3(B)及び図4(B)に示されるように、第1の巻線本体WD1と、第2の巻線本体WD2と、第3の巻線本体WD3と、一対の入出力配線W1(L2)eA、W1(L2)eBと、一対の接続配線W1(L1−L2)em1、W1(L1−L2)em2と、一対の接続配線W1(L1−L2)mi1、W1(L1−L2)mi2と、を有する。
【0024】
第1の巻線本体WD1は、図2(B)に示されるように、第2の層L2に設けられており、また、図3(B)及び図4(B)に示されるように、6本の線部、即ち、線部W1(L2)e1〜W1(L2)e6から構成されている。また、当該第1の巻線本体WD1の線部W1(L2)e3、W1(L2)e4から、当該第1の巻線本体WD1から一の平衡型の信号を入力し又は出力するための入出力配線W1(L2)eA、W1(L2)eBがY方向に沿って延在し又は突出している。
【0025】
第2の巻線本体WD2は、図2(B)に示されるように、前記第2の層L2の下である第1の層L1に設けられており、また、図3(B)及び図4(B)に示されるように、前記第1の巻線本体WD1より一回り小さく形成されている。当該第2の巻線本体WD2は、6本の線部、即ち、線部W1(L1)m1〜W1(L1)m6から構成されている。
【0026】
第3の巻線本体WD3は、図2(B)に示されるように、第1の巻線本体WD1と同様に、第2の層L2に設けられており、また、図3(B)及び図4(B)に示されるように、第2の巻線本体WD2より一回り小さく形成されている。当該第3の巻線本体WD3は、5本の線部、即ち、線部W1(L2)i1〜W1(L2)i5から構成されている。
【0027】
第1の巻線本体WD1と第2の巻線本体WD2とは、図3(B)及び図4(B)に示されるように、ねじれの関係にある一対の接続配線W1(L1−L2)em1、W1(L1−L2)em2により接続されており、詳しくは、第1の巻線本体WD1の線部W1(L2)e1と第2の巻線本体WD2の線部W1(L1)m6とが、接続配線W1(L1−L2)em1により接続され、また、第1の巻線本体WD1の線部W1(L2)e6と第2の巻線本体WD2の線部W1(L1)m1とが、接続配線W1(L1−L2)em2により接続されている。
【0028】
第2の巻線本体WD2と第3の巻線本体WD3とは、図3(B)及び図4(B)に示されるように、ねじれの関係にある一対の接続配線W1(L1−L2)mi1、W1(L1−L2)mi2により接続されており、詳しくは、第2の巻線本体WD2の線部W1(L1)m4と第3の巻線本体WD3の線部W1(L2)i5とが、接続配線W1(L1−L2)mi1により接続され、また、第2の巻線本体WD2の線部W1(L1)m3と第3の巻線本体WD3の線部W1(L2)i1とが、接続配線W1(L1−L2)mi2により接続されている。
【0029】
〈第2の巻線〉
第2の巻線W2は、図3(A)及び図4(A)に示されるように、第4の巻線本体WD4と、第5の巻線本体WD5と、第6の巻線本体WD6と、一対の接続配線W2(L2−L3)em1、W2(L2−L3)em2と、一対の接続配線W2(L2−L3)mi1、W2(L2−L3)mi2と、一対の入出力配線W2(L3)eA、W2(L3)eBとを有する。
【0030】
第4の巻線本体WD4は、図2(B)に示されるように、前記第2の層L2の上である第3の層L3に設けられており、また、図3(A)及び図4(A)に示されるように、6本の線部、即ち、線部W2(L3)e1〜W2(L3)e6から構成されている。また、当該第4の巻線本体WD4の線部W2(L3)e1、W2(L3)e6から、当該第4の巻線本体WD4から、前記一の平衡型とは異なる他の平衡型の信号を出力し又は入力するための入出力配線W2(L3)eA、W2(L3)eBがY方向に延在し又は突出している。
【0031】
第5の巻線本体WD5は、図2(B)に示されるように、第2の層L2に設けられており、また、図3(A)及び図4(A)に示されるように、第4の巻線本体WD4より一回り小さく形成されている。加えて、第5の巻線本体WD5は、第1の巻線W1の第1の巻線本体WD1及び第3の巻線本体WD3との関係については、第1の巻線本体WD1と第3の巻線本体WD3との間に位置している。当該第5の巻線本体WD5は、6本の線部、即ち、線部W2(L2)m1〜W2(L2)m6から構成されている。
【0032】
第6の巻線本体WD6は、図2(B)に示されるように、第4の巻線本体WD4と同様に、第3の層L3に設けられており、また、図3(A)及び図4(A)に示されるように、第5の巻線本体WD5より一回り小さく形成されている。当該第6の巻線本体WD6は、5本の線部、即ち、線部W2(L3)i1〜W2(L3)i5から構成されている。
【0033】
第4の巻線本体WD4と第5の巻線本体WD5とは、図3(A)及び図4(A)に示されるように、ねじれの関係にある一対の接続配線W2(L2−L3)em1、W2(L2−L3)em2により接続されており、詳しくは、第4の巻線本体WD4の線部W2(L3)e3と第5の巻線本体WD5の線部W2(L2)m4とが、接続配線W2(L2−L3)em1により接続され、また、第4の巻線本体WD4の線部W2(L3)e4と第5の巻線本体WD5の線部W2(L2)m3とが、接続配線W2(L2−L3)em2により接続されている。
【0034】
第5の巻線本体WD5と第6の巻線本体WD6とは、図3(A)及び図4(A)に示されるように、ねじれの関係にある一対の接続配線W2(L2−L3)mi1、W2(L2−L3)mi2により接続されており、詳しくは、第5の巻線本体WD5の線部W2(L2)m6と、第6の巻線本体WD6の線部W2(L3)i1とが、接続配線W2(L2−L3)mi1により接続されており、また、第5の巻線本体WD5の線部W2(L2)m1と第6の巻線本体WD6の線部W2(L3)i5とが、接続配線W2(L2−L3)mi2により接続されている。
【0035】
〈効果〉
上述したように、実施例1のインダクタD1では、前記第1の巻線W1と前記第2の巻線W2と重畳して構成されており、しかも、前記第2の層L2に設けられている、前記第1の巻線W1の前記第1の巻線本体WD1と前記第3の巻線本体WD3との間に、前記第2の巻線W2の前記第5の巻線本体WD5が位置していることから、インダクタD1を、従来と異なり、3つの層、即ち、第1の層L1〜第3の層L3だけで構成することが可能となり、これにより、インダクタD1を「薄化」することが可能となる。
【0036】
《実施例2》
〈第1の巻線と第2の巻線〉
図5は、実施例2のインダクタの構成を示す斜視図であり、図6は、実施例2のインダクタの構成を示す平面図及び断面図である。実施例2のインダクタD2は、平衡型の回路系と不平衡型の回路系との間でのトランスとして機能すべく、図5及び6(A)に示されるように、第1の巻線W1及び第2の巻線W2を含む。
【0037】
図7(B)に明示される、第1の巻線W1の接続配線W1(L1−L2)mi1、W1(L1−L2)mi2のような、層L1〜L3(図6(B)に図示。)間に亘る接続配線についての詳細な構成については、図9を用いて後述する。
【0038】
第1の巻線W1及び第2の巻線W2は、図6(B)に示されるように、基板SB上にパシベーション層PVを隔てて形成されている第1の層L1、第2の層L2、及び第3の層L3に亘って設けられており、詳しくは、第1の巻線W1と第2の巻線W2とは、重畳している。
【0039】
図7(A)は、実施例2の第2の巻線の構成を示す平面図であり、図7(B)は、実施例2の第1の巻線の構成を示す平面図であり、図8は、実施例2の第2の巻線の構成を構成を示す斜視図であり、図8(B)は、実施例2の第1の巻線の構成を示す斜視図である。
【0040】
〈第1の巻線〉
第1の巻線W1は、図7(B)及び図8(B)に示されるように、第1の巻線本体WD1と、第2の巻線本体WD2と、第3の巻線本体WD3と、一対の入出力配線W1(L2)eA、W1(L2)eBと、一対の接続配線W1(L1−L2)em1、W1(L1−L2)em2と、一対の接続配線W1(L1−L2)mi1、W1(L1−L2)mi2と、を含む。
【0041】
第1の巻線本体WD1は、図6(B)に示されるように、第2の層L2に設けられており、また、図7(B)及び図8(B)に示されるように、6本の線部、即ち、線部W1(L2)e1〜W1(L2)e6から構成されている。当該第1の巻線本体WD1の線部W1(L2)e1、W1(L2)e6から、当該第1の巻線本体WD1から平行型の信号を入力し又は出力するための入出力配線W1(L2)eA、W1(L2)eBがY方向にそれぞれ延在し又は突出している。
【0042】
第2の巻線本体WD2は、図6(B)に示されるように、前記第2の層L2の下である第1の層L1に設けられており、また、図7(B)及び図8(B)に示されるように、第1の巻線本体WD1より一回り小さく形成されている。当該第2の巻線本体WD2は、6本の線部、即ち、線部W1(L1)m1〜W1(L1)m6から構成されている。
【0043】
第3の巻線本体WD3は、図6(B)に示されるように、第1の巻線本体WD1と同様に、第2の層L2に設けられており、また、図7(B)及び図8(B)に示されるように、第2の巻線本体WD2より一回り小さく形成されている。当該第3の巻線本体WD3は、5本の線部、即ち、線部W1(L2)i1〜W1(L2)i5から構成されている。
【0044】
第1の巻線本体WD1と第2の巻線本体WD2とは、図7(B)及び図8(B)に示されるように、ねじれの関係にある一対の接続配線W1(L1−L2)em1、W1(L1−L2)em2により接続されており、詳しくは、第1の巻線本体WD1の線部W1(L2)e3と第2の巻線本体WD2の線部W1(L1)m4とが、接続配線W1(L1−L2)em1により接続され、また、第1の巻線本体WD1の線部W1(L2)e4と第2の巻線本体WD2の線部W1(L1)m3とが、接続配線W1(L1−L2)em2により接続されている。
【0045】
第2の巻線本体WD2と第3の巻線本体WD3とは、図7(B)及び図8(B)に示されるように、ねじれの関係にある一対の接続配線W1(L1−L2)mi1、W1(L1−L2)mi2により接続されており、詳しくは、第2の巻線本体WD2の線部W1(L1)m6と、第3の巻線本体WD3の線部W1(L2)i1とが、接続配線W1(L1−L2)mi1により接続されており、また、第2の巻線本体WD2の線部W1(L1)m1と第3の巻線本体WD3の線部W1(L2)i5とが、接続配線W1(L1−L2)mi2により接続されている。
【0046】
〈第2の巻線〉
第2の巻線W2は、図7(A)及び図8(A)に示されるように、第4の巻線本体WD4と、接続配線W2(L2−L3)と、入出力配線W2(L2)と、を含む。
【0047】
第4の巻線本体WD4は、図6(B)に示されるように、前記第2の層L2の上である第3の層L3に設けられており、また、図7(A)及び図8(A)に示されるように、12本の線部、線部W2(L3)1〜W2(L3)12から構成されている。
【0048】
線部W2(L3)1〜W2(L3)12は、協働して渦巻形状を形成している。
【0049】
接続配線W2(L2−L3)は、図7(A)、図8(B)に示されるように、前記第4の巻線本体WD4の中心側の端部ED4を起点として、前記第3の層L3及び前記第2の層L2に亘ってZ方向に延在している。
【0050】
入出力配線W2(L2)は、図6(B)に示されるように、第2の層L2に設けられており、さらに、図8(A)に示されるように、接続配線W2(L2−L3)の端部ED5を起点として前記第4の巻線本体WD4の外側に向けて、図7(B)、図8(B)に示されるように、層L2に位置する、前記一対の入出力配線W1(L2)eA、W1(L2)eBにより規定される領域AR1を経て延在している。当該入出力配線W2(L2)は、不平衡型の信号について前記第4の巻線本体WD4の外側の端部ED6と協働して前記入力及び前記出力の他方を行うために用いられる。
【0051】
上述したように、実施例2のインダクタD2では、平衡型の信号の入出力のための第1の巻線W1と、不平衡型の信号の入出力のための第2の巻線W2とを、重畳させている。しかも、第2の巻線W2の第4の巻線本体WD4の端部ED4に接続配線W2(L2−L3)を介して繋がる入出力配線W2(L2)を、第1の巻線W1における、一対の入出力配線W1(L2)eA、W1(L2)eBにより規定される領域AR1を経て延在させることにより、前記入出力配線W2(L2)を、第1の層L1〜第3の層L3以外の他の層に設ける必要が無いことから、当該実施例2のインダクタD2を第1の層L1〜第3の層L3のみだけで構成することが可能となり、即ち、従来に比して「薄化」することが可能となる。
【0052】
《実施例1及び実施例2の層間の接続配線》
図9は、実施例1及び実施例2の層間の接続配線の構成を示す斜視図である。図4(A)、(B)に明示される、実施例1の第1の巻線W1における層L1及び層L2間の配線である、接続配線W1(L1−L2)em1、W1(L1−L2)em2、W1(L1−L2)mi1、W1(L1−L2)mi2、及び、第2の巻線W2における層L2、L3間の配線である、接続配線W2(L2−L3)mi1、W2(L2−L3)mi2、W2(L2−L3)em1、W2(L2−L3)em2、並びに、図8(B)に明示される、実施例2の第1の巻線W1における層L1、L2間の配線である、接続配線W1(L1−L2)mi1、W1(L1−L2)mi2、W1(L1−L2)em1、W1(L1−L2)em2の詳細な構造については、以下の通りである。
【0053】
即ち、例えば、実施例1の接続配線W1(L1−L2)em1、W1(L1−L2)em2は、図9(A)に示されるように、鈍角である頂角を有する凸状の部分を有し、かつ、相互にねじれの関係にあり、図9(B)に示されるように、湾曲の部分を有し、かつ、相互にねじれの関係にあり、又は、図9(C)に示されるように、切り欠きの部分を有する。このような構造を有することにより、接続配線W1(L1−L2)em1及び接続配線W1(L1−L2)em2の一方が、他方にとって邪魔な存在になることを回避することができる。
【0054】
他の接続配線W1(L1−L2)mi1、W1(L1−L2)mi2、W2(L2−L3)mi1、W2(L2−L3)mi2、W2(L2−L3)em1、W2(L2−L3)em2、W1(L1−L2)mi1、W1(L1−L2)mi2も同様な構造を有し、これにより、上記したと同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1のインダクタの構成を示す斜視図。
【図2】実施例1のインダクタの構成を示す平面図及び断面図。
【図3】実施例1の第1の巻線及び第2の巻線の構成を示す平面図。
【図4】実施例1の第1の巻線及び第2の巻線の構成を示す斜視図。
【図5】実施例2のインダクタの構成を示す斜視図。
【図6】実施例2のインダクタの構成を示す平面図及び断面図。
【図7】実施例2の第1の巻線及び第2の巻線の構成を示す平面図。
【図8】実施例2の第1の巻線及び第2の巻線の構成を示す斜視図。
【図9】実施例1、実施例2の層間の接続配線の詳細な構成を示す斜視図。
【図10】従来のインダクタの構成を示す平面図及び断面図。
【符号の説明】
【0056】
D1…インダクタ、W1…第1の巻線、W2…第2の巻線、WD1〜WD6…第1の巻線本体〜第6の巻線本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(1a)第1の層、当該第1の層上に形成されている第2の層、及び、当該第2の層上に形成されている第3の層のうち、前記第2の層中に設けられている第1の巻線本体と、
(1b)前記第1の層中に設けられている、前記第1の巻線本体より小さい第2の巻線本体と、
(1c)前記第2の層中に設けられている、前記第2の巻線本体より小さい第3の巻線本体と、
(1d)前記第2の層中で、前記第1の巻線本体から延在する、平衡型の第1の信号の入力及び出力の一方を行うため一対の第1の入出力配線と、
(1e)前記第1の巻線本体と前記第2の巻線本体とを接続するための一対の第1の接続配線と、
(1f)前記第2の巻線本体と前記第3の巻線本体とを接続するための一対の第2の接続配線と、を有する第1の巻線と、
(2)(2a)前記第3の層中に設けられている第4の巻線本体と、
(2b)前記第2の層中における、前記第1の巻線本体と前記第3の巻線本体との間に設けられている、前記第4の巻線本体より小さい第5の巻線本体と、
(2c)前記第3の層中に設けられている、前記第5の巻線本体より小さい第6の巻線本体と、
(2d)前記第3の層中で、前記第4の巻線本体から延在する、平衡型の第2の信号の入力及び出力の他方を行うための一対の第2の入出力配線と、
(2e)前記第4の巻線本体と前記第5の巻線本体とを接続するための一対の第3の接続配線と、
(2f)前記第5の巻線本体と前記第6の巻線本体とを接続するための一対の第4の接続配線とを有する第2の巻線であって、前記第1の巻線に重畳している前記第2の巻線と、を含むことを特徴とするインダクタ。
【請求項2】
(1)(1a)第1の層、当該第1の層上に形成されている第2の層、及び、当該第2の層上に形成されている第3の層のうち、前記第2の層中に設けられている第1の巻線本体と、
(1b)前記第1の層中に設けられている、前記第1の巻線本体より小さい第2の巻線本体と、
(1c)前記第2の層中に設けられている、前記第2の巻線本体より小さい第3の巻線本体と、
(1d)前記第2の層中で、前記第1の巻線本体から延在する、平衡型の信号について入力及び出力の一方を行うための一対の第1の入出力配線と
(1e)前記第1の巻線本体と前記第2の巻線本体とを接続するための一対の第1の接続配線と、
(1f)前記第2の巻線本体と前記第3の巻線本体とを接続するための一対の第2の接続配線と、を有する第1の巻線と、
(2)(2a)前記第3の層中に設けられている、渦巻状の第4の巻線本体と、
(2b)前記第4の巻線本体の中心側の端部を起点として、前記第3の層及び前記第2の層に亘って設けられた第3の接続配線と、
(2c)前記第2の層中で、前記第3の接続配線の前記第2の層中の端部を起点として前記第4の巻線本体の外側に向けて、前記一対の第1の入出力配線により規定される空間を経て延在する第2の入出力配線であって、不平衡型の信号について前記第4の巻線本体の外側の端部と協働して前記入力及び前記出力の他方を行うための前記第2の入出力配線と、を有する第2の巻線であって、前記第1の巻線に重畳している前記第2の巻線と、を含むことを特徴とするインダクタ。
【請求項3】
前記一対の第1の接続配線、前記一対の第2の接続配線、前記一対の第3の接続配線、及び、前記一対の第4の接続配線は、相互にねじれの関係にあり、鈍角である頂角を有する凸状の部分を備えることを特徴とする請求項1記載のインダクタ。
【請求項4】
前記一対の第1の接続配線、及び、前記一対の第2の接続配線は、相互にねじれの関係にあり、鈍角である頂角を有する凸状の部分を備えることを特徴とする請求項2記載のインダクタ。
【請求項5】
前記一対の第1の接続配線、前記一対の第2の接続配線、前記一対の第3の接続配線、及び、前記一対の第4の接続配線は、相互にねじれの関係にある湾曲の部分を備えることを特徴とする請求項1記載のインダクタ。
【請求項6】
前記一対の第1の接続配線、及び、前記一対の第2の接続配線は、相互にねじれの関係にある湾曲の部分を備えることを特徴とする請求項2記載のインダクタ。
【請求項7】
前記一対の第1の接続配線、前記一対の第2の接続配線、前記一対の第3の接続配線、及び、前記一対の第4の接続配線は、切り欠きの部分を備えることを特徴とする請求項1記載のインダクタ。
【請求項8】
前記一対の第1の接続配線、及び、前記一対の第2の接続配線は、切り欠きの部分を備えることを特徴とする請求項2記載のインダクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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