説明

インチミンを単独で、または1以上の他の抗原との融合タンパク質として発現する宿主生物の投与による、免疫応答を刺激する方法

【課題】 トランスジェニック植物により発現される腸管出血性大腸菌(EHEC)の接着性タンパク質であるインチミン(intimin)を単独でまたは1以上の他の抗原との融合タンパク質として提供すること、また、EHECおよび1以上の他の抗原に対する防御免疫応答を刺激するためのビヒクルとして前記植物を使用することを目的とする。
【解決手段】 植物におけるインチミン、インチミン様タンパク質又はその一部の発現をコードする異種DNA構築物であって、前記インチミン、インチミン様タンパク質又はその一部は上皮細胞への結合能を保持し、且つインチミン又はインチミン様タンパク質を発現する細菌の上皮細胞への結合を遮断する抗体を誘導する、前記異種DNA構築物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の利権
本明細書に記載される発明は、政府が使用する上では、それに対するいかなる使用料をも本発明者らに支払うことなく、製造し、認可を与え、かつ用いることができる。
関連出願に対する相互参照
本願は、1996年4月19日および1996年4月22日に出願された、発明者Marian McKee、Alison O'Brien、およびMarian Wachtelの、ヒスチジンタグ付きインチミン(intimin)およびインチミンを免疫応答の刺激に用い、かつ標的化能力を有する抗原担体として用いる方法(HISTIDINE-TAGGED INTIMINAND METHODS OF USING INTIMINTO STIMULATE AN IMMUNE RESPONSEAND AS AN ANTIGEN CARRIERWITH TARGETING CAPABILITY)と題する仮出願に関連し、この出願は引用により本明細書中に組み込まれる。
発明の分野
本発明は、インチミンを単独で、または1以上の他の抗原との融合タンパク質として発現するように植物を遺伝子工学的に作出するためのプラスミド、およびそのプラスミドで形質転換した宿主生物を投与することによって防御免疫応答を促進する方法に関する。この防御免疫応答は、インチミン、またはその一部および/または1以上の抗原に対するものである。前記宿主生物には、細菌、酵母、真菌、および植物が含まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
病原性形態(virulent form)の出血性下痢は腸管出血性大腸菌(EHEC)によって引き起こされる。この病原体は、合衆国における出血性下痢(出血性大腸炎[HC]とも呼ばれる)の最も一般的な感染性要因である(疾患管理および予防センター(Centers for Disease Controland Prevention)(運営概要). MMWR 43 (No. RR-5):1-18 (1994);Griffin, P.M.ら Annals of Internal Med. 109:705(1988))。血清型の1つ、とりわけO157:H7、は合衆国において最も一般的に単離されているEHECの血清型であり、1982年に始まるHCの多数の突発に関連付けられている(Riley, L.W.らN. Eng. J. Med. 308:681(1983))。
【0003】
主な様式のEHECの伝播は、汚染された食物、とりわけ加熱が十分でないハンバーガーの摂取を介して生じる(Doyle, M. P.およびSchoeni, J. L. Appl.Environ. Microbiol. 53:2394(1987);Samadpour, M.ら Appl.Environ. Microbiol. 60:1038(1994))。EHECに感染した人々のうち、5%もが溶血性尿毒症症候群(HUS)と呼ばれる重篤な合併症に罹患し、HUSとは腎臓糸球体に存在するような血管の内層をなす細胞(内皮細胞)を標的として破壊する志賀毒素様毒素の作用によって引き起こされる症状である(Johnson, W.M.らLancet. i:76 (1983);O'Brien, A. D.ら Lancet.i:702 (1983))。HUSは恒久的な腎臓の損傷、あるいは完全な腎不全さえ生じることがある。
【0004】
EHECは健常な成人においてさえ非常に重篤な疾患を引き起こすことがあるが、とりわけ幼い子供はその感染によって死亡したり、恒久的な損傷を受けたりする、より大きな危険にさらされている。この感染が特に危険なものであり得るその他の者には、高齢者および免疫無防備状態の者が含まれる。ウシにおけるEHECの罹患率および十分に加熱されたハンバーガーと加熱不十分なハンバーガーとを区別する上での主観的な特質によっては、ファーストフードレストランでの、もしくは家庭でのバーベキューの時ですら、そのご都合主義の加熱終了で、家庭の悲劇が生じ得る。
【0005】
このEHECの致命的な性質についての鍵の1つは、ノトバイオート・ブタにおいて示されるような、結腸に接着性/消滅性(attaching/effacing)(A/E)腸管病変を生成するその細菌の能力である(Tzipori, S.ら Infect. Immun.57:1142 (1989))。ブタにおいて示されるこのA/E病変は、腸管内層の粘膜細胞への細菌の密接な付着および微絨毛の溶解を特徴とする(McKee, M. L.ら Infect.Immun. 63:3739 (1995);Tzipori, S.ら Infect. Immun.57:1142 (1989))。同様の病変は組織培養物中のヒト喉頭上皮(HEp−2)(ATCC#CCL23)細胞において見られる(McKee, M. L.ら Infect.Immun. 63:3739 (1995);Tzipori, S.ら Infect. Immun.57:1142 (1989))。
【0006】
1990年に、Jerseらは関連する下痢性大腸菌株、腸内病原性大腸菌(EPEC)において染色体遺伝子を同定した。eaeと命名されたこの遺伝子は、組織培養においてA/E病変を生成する上でこの細菌に必須であることが見出された(Jerse, A. E.ら Proc.Natl. Acad. Sci. USA. 87:7839(1990))。このeae遺伝子は、Eaeと呼ばれるEPECのインチミンである94kDa外膜タンパク質をコードしていた。類似のタンパク質がEHEC O157:H7株中に存在することが示された(Jerse, A. E.およびKaper, J. B. Infect.Immun. 59:4302 (1991))。
【0007】
近年、研究者達は、ヒト上皮喉頭(HEp−2)細胞およびヒト回腸上皮(HCT−8)細胞(ATCC#CCL244)へのEHECの付着(McKee, M. L.ら Infect.Immun. 63:3739 (1995))ならびに子ブタ腸管におけるA/E病変の形成(Donnenberg, M. S.ら J. Clin. Invest.92:1418 (1993);McKee, M. L.ら Infect.Immun. 63:3739 (1995))にはインチミンが必要であることを示した。EHECを用いたヒトの研究は行われてはいないが、EPECにおいて見出されるインチミンタンパク質はヒトボランティアにおける下痢および熱の生成に強く関連する(Donnenberg, M. S.ら J. Clin. Invest.92:1412(1993);Levine, M. M.ら J. Infect.Dis. 152:550 (1985))。
【0008】
EPEC E2348/69株を抗原投与したヒトボランティア(10人中10人)では、28日後にこの94kDaタンパク質に対する注目に値する免疫応答が高まった(Levineら J Infect. Dis. 152:550, 1985)。これらのヒトでの治験において、E2348/69の摂取の後に下痢を発症しなかった唯1人のボランティア(10人のうちの1人)は、抗原投与前に94kDaタンパク質に対する検出可能な抗体を有していたグループの1人であった。
【0009】
A/E病変を誘発することが可能な他の2種類の細菌種がeae遺伝子座を有することが示されている:ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)(Albert, M. J.ら J.Med.Microbiol. 37:310 (1992))およびシトロバクター・フロインディイ(Citrobacter freundii)バイオタイプ4280(Schauer, D. B.およびFalkow, S. Infect. Immun.61:2486 (1993))。これらの細菌は一般にはヒトの病理に関係しないが、それらが通常関連する動物種においては重要な疾患を引き起こすことがある。例えば、シトロバクター・フロインディイ・バイオタイプ4280はマウスにおける胃腸管疾患に関連する。マウスは、しばしば、実験おける対照および被験対象としての役目を果たす。動物飼育施設におけるこの疾患の突発により、経済的で注意深く制御された実験が危険にさらされる可能性がある。加えて、このような細菌種は免疫無防備状態の患者、若年者および高齢者、に対して病原性となる可能性がある。
【0010】
インチミンを発現する細菌株に感染したウシのような動物は、他者へのその感染の源としての役目を果たすことに加えて、それら自身が罹患する可能性がある。抗生物質での治療を用いて動物におけるこれらのインチミン発現細菌の動物蓄積を根絶すること、またはそれを制限することさえも、非常に高価である。加えて、ヒトまたは動物におけるこの感染の抗生物質治療が高価であるだけでなく、これらの抗生物質自体が副作用に関連し、その副作用が危険なものである可能性がある。EHECと同様に、これらの副作用は幼い子供および高齢者にとって特に危険なものである可能性がある。したがって、インチミンを発現する細菌に対する防御免疫応答の促進により、この感染の重篤性を減少させ、またはそれらを完全に予防する別の手段が必要とされる。
【0011】
さらに、抗原注射による免疫感作よりも時間を消費せず、高価ではなく、かつ痛みが少ない免疫感作形態が必要とされる。さらにまた、感染箇所、最も頻繁には胃腸管粘膜、に含まれる特定の組織において防御免疫応答を産生させることが必要とされる。
【0012】
胃腸管組織に感染する他の生物(これらにはサルモネラ種および赤痢菌種が含まれるがそれらに限定されるものではない)が免疫応答を生じることが可能である抗原を有する。しかしながら、粘膜の免疫応答を刺激するために胃腸管粘膜をこれらの抗原の標的とする手段ならびに循環抗体を刺激する手段が必要とされる。
【0013】
最後に、防御免疫応答を促進する作用因子(agents)を送達する代替手段が必要とされる。
【発明の開示】
【0014】
発明の要約
本発明は、免疫応答を刺激する方法であって、インチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部をコードするベクターで植物を形質転換して、該植物がインチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部を発現するようになし、および該植物またはその一部を患者に投与することを含んでなる方法に関する。また、本発明は、免疫応答を刺激する方法であって、インチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部をコードするベクターで植物を形質転換して、該植物はインチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部を発現するようになし、該植物またはその一部からインチミン、インチミンの一部、またはインチミン様タンパク質を抽出し、抽出したインチミン、インチミンの一部、またはインチミン様タンパク質を患者に投与することを含んでなる方法に関する。
【0015】
加えて、本発明は、植物における異種DNAの発現をコードするDNA構築物であって、該異種DNAがインチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部をコードするDNA構築物に関する。さらに、本発明は、異種DNAをコードし、かつ発現する異種DNA構築物を含有する植物細胞であって、該異種DNAがインチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部をコードする植物細胞に関する。
【0016】
さらにまた、本発明は、再生能のある植物細胞を用意し、かつ該植物細胞を上述のDNA構築物で形質転換することを含んでなるトランスジェニック植物細胞の作出方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、免疫応答を刺激する方法であって、インチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部をコードするベクターで植物を形質転換して、該植物がインチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部を発現するようになし、および該植物またはその一部を患者に投与することを含んでなる方法に関する。さらに、本発明は、インチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部が、該インチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部に組換え的に融合された少なくとも1つの抗原、少なくとも1つの薬物またはそれらの組合せ物をさらに含む上記方法に関する。
【0018】
さらに、本発明は、免疫応答を刺激する方法であって、インチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部をコードするベクターで植物を形質転換して、該植物がインチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部を発現するようになし、該植物またはその一部からインチミン、インチミンの一部、またはインチミン様タンパク質を抽出し、抽出したインチミン、インチミンの一部、またはインチミン様タンパク質を患者に投与することを含んでなる方法に関する。また、本発明は、インチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部が、該インチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部に組換え的に融合された少なくとも1つの抗原、少なくとも1つの薬物またはそれらの組合せ物をさらに含むこの方法にも関する。
【0019】
上述の方法は、投与に先立ってインチミン、インチミンの一部、またはインチミン様タンパク質を富化する工程、または投与に先立ってインチミン、インチミンの一部、もしくはインチミン様タンパク質を精製する工程を含んでいてもよい。好ましくは、上記方法において、インチミンはEHECのインチミンである。また、インチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部がヒスチジンタグをさらに含むことも好ましい。
【0020】
上記方法において、植物は単子葉植物または双子葉植物であり得る。このような植物の例は以下に詳細に記載されるが、より好ましくは、アルファルファ、ニンジン、カノーラ、タバコ、バナナ、およびジャガイモ植物を含む。
【0021】
また、本発明は、植物における異種DNAの発現をコードするDNA構築物であって、該異種DNAがインチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部をコードするDNA構築物に関する。この異種DNAは、インチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部に組換え的に融合された少なくとも1つの抗原、少なくとも1つの薬物、またはそれらの組合せ物をさらにコードしていてもよい。
【0022】
好ましくは、このDNA構築物は植物形質転換ベクターである。この植物形質転換ベクターは、好ましくは、アグロバクテリウム(Agrobacterium)ベクターである。また、この植物の形質転換が微粒子によって行われることも好ましい。さらに、この植物形質転換ベクターがウイルスベクターであることも好ましい。
【0023】
上述の本発明によるDNA構築物において、好ましくは、このDNAによってコードされるインチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部がヒスチジンタグをさらに含む。また、異種DNAのコドンが植物細胞内での発現にとって有利なコドンと置き換えられていることも好ましい。
【0024】
さらにまた、本発明は、異種DNAをコードし、かつ発現する異種DNA構築物を含有する植物細胞であって、該異種DNAがインチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部をコードする植物細胞にも向けられている。このような植物細胞において、異種DNAは、インチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部に組換え的に融合された少なくとも1つの抗原、少なくとも1つの薬物、またはそれらの組合せ物をさらにコードしていてもよい。好ましくは、これらの植物細胞において、このDNAによってコードされるインチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部がヒスチジンタグをさらに含む。
【0025】
さらにまた、本発明は、再生能のある植物細胞を用意し、該植物細胞を上述のDNA構築物で形質転換することを含んでなるトランスジェニック植物細胞の作出方法に関する。好ましくは、この方法の形質転換工程は、植物細胞を、DNA構築物を移入するアグロバクテリウムベクターをこの植物細胞に感染させることにより行う。また、この形質転換工程を、DNA構築物を担持する微粒子を植物細胞に射入することにより行うことも好ましい。さらに、この形質転換工程をウイルスベクターを用いる形質転換により行うことも好ましい。
【0026】
上記方法にとって好ましくは、植物細胞は再生可能な植物組織中にある。また、上記方法は、形質転換した植物細胞からシュート、根、または植物体を再生させる工程を含んでいてもよい。この方法において、植物は好ましくは単子葉植物または双子葉植物である。また、この方法にとっては、DNAによってコードされるインチミン、インチミン様タンパク質、またはその一部がヒスチジンタグをさらに含むことも好ましい。
【0027】
本発明の目的は宿主生物においてインチミンを発現させることであり、この宿主は、インチミンに対する免疫応答を刺激するため、直接もしくは加工した後、動物またはヒトに投与または給餌される。このような免疫応答は、EHECおよびEHECによって発現される特定のインチミンとある程度の相同性を有するタンパク質を介して上皮細胞を結合する能力を有する他の病原体によって引き起こされる病気、疾患および関連後遺症から動物またはヒトを防御する。
【0028】
この目的は、インチミンに対する免疫応答を刺激し、それにより上皮細胞に付着するEHECの能力を遮断することにより達成される。したがって、免疫感作という用語が本明細書において用いられる。防御の程度は、インチミンとの相同性の程度および患者固有の特質に応じて、特に異なる種を治療する場合に変化する。防御の正確な程度は、あらゆる特定の病原体に対して本発明を実施する上で、定量化に重要なものではない。加えて、本発明は、宿主生物における1以上の抗原との融合タンパク質としてのインチミンの発現並びにインチミンおよび1以上の抗原に対する防御免疫応答を促進するための宿主生物の投与を記載する。
【0029】
患者が感染を完全に回避することを可能にする免疫応答を刺激することに加えて、本明細書中で用いられる免疫感作とは、以下の指標:死亡率、HUS、または恒久的な腎臓の損傷の減少;毒素レベルの低下;流体喪失(fluid loss)の減少;または当業者が正規に用いる病気の他の指標のいずれかによる測定で、胃腸管でコロニーを形成する病原体の能力を低下させ、かつ感染の重篤性を減少させることも意味する。したがって、免疫防御量は、上記指標による測定で、胃腸管でコロニーを形成する病原体の能力を低下させ、感染の重篤性を減少させるのに十分な量である。
【0030】
本発明の好ましい宿主は植物細胞である。
【0031】
植物細胞は、細菌起源のもののような異種遺伝子を発現するようにうまく遺伝子工学的に作出されている。全てのタイプの作物が細菌起源の遺伝子で遺伝子工学的に作出されている。これらの例の幾つかは、通常用いられる抗生物質耐性遺伝子、例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPTII)およびハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPII)の評点可能なマーカー遺伝子である。これらの遺伝子は細菌である大腸菌から単離された(Fraley, R. T.ら, Proc.Natl. Acad. Sci. USA 80:4803(1983);Vandenbergheら, Plant Mol. Biol. 5:299(1985))。植物の形質転換研究において定型的に用いられる別の一般的な評点可能なマーカー遺伝子も大腸菌から得られる:ベータグルクロニダーゼ(GUS)(Jefferson PlantMol. Biol. Rep. 5:387-405 (1988))。これらの遺伝子は全て有用であり、トランスジェニック植物、すなわち、異種DNAを含む植物によりそれら本来の形態で高度に発現されている。したがって、これらはそれらのコーディング領域における修飾を必要としない。
【0032】
しかしながら、細菌からの他の遺伝子は、遺伝子工学的な作出により植物に組み込まれた場合、不十分にしか発現していない。その一例は大腸菌からの水銀イオンレダクターゼ遺伝子である(Wildeら, 修飾された細菌の merA遺伝子を発現するトランスジェニック・アラビドプシス・タリアナ植物における水銀イオンの還元および耐性(Mercuric ion reduction and resistance in transgenic Arabidopsis thaliana plants expressing a modified bacterial merA gene) Proc.Natl. Acad. Sci. USA 印刷中)。これは、そのコーディング配列を修飾しなければ発現することができない。おそらく、最も公知の例は、バチルス・ツリンギエシス(Bacilus thuringiesis)からの殺虫性cry遺伝子である。これらは全て、植物における発現ために“再構築”、すなわちコドン最適化されるまでは、発現が少ないか、全く発現しない(Perlakら, Proc.Natl. Acad. Sci. USA 88:3324-3328 (1991);Adangら, Plant Mol. Biol. 21:1131-1145 (1993))。これらの研究において、研究者らは、アミノ酸配列を変化させることなく、それらの植物種にとって優先的なコドンをコードするオリゴヌクレオチドを合成して連結することにより遺伝子を再構築した。新しい遺伝子のコドンの用法を植物に好ましいコドンと整合させることにより、導入された遺伝子が高度に発現することが可能となる(例えば、Stewartら, Insectcontrol and dosageeffects in transgenic canola, Brassica napusL. (Brassicaceae), containing a synthetic Bacilusthuringiensis Cryla(c) gene.Plant Physiology, 112:115-120 (1996))。したがって、植物細胞による細菌遺伝子の発現は達成されている。
【0033】
外来遺伝子を用いて遺伝子工学的に作出された植物は、経口ワクチン用の成功した送達剤である。最近の総説(MasonおよびArntzen, Tibtech 13:388-392 (1995))において説明されるように、当該技術分野ではこのような遺伝子工学的に作出された植物の使用が認められている。多数の研究には、ウイルス性および細菌性病原体の抗原をコードする遺伝子が植物において発現する場合、該抗原がそれらの免疫原性を保持するという最近の実証が含まれている(MasonおよびArntzen, Tibtech13:388-392 (1995))。Masonら(Masonら, Proc.Natl. Acad. Sci. USA 89:11745-11749 (1992))はワクチン用のビヒクル送達系として植物を遺伝子工学的に作出するという概念を導入し、それ以来、これらの系がB型肝炎(Thanavalaら, Proc.Natl. Acad. Sci. 92:3358-3361 (1995))、大腸菌エンテロトキシンBサブユニット、およびコレラ毒素Bサブユニット(Haqら, Science268:714-716 (1995))に有効であることが示されている。この方策の有効性の基礎の1つは、それらの抗原が粘膜の免疫を刺激するという事実にある。
【0034】
本発明の実施においては、インチミン遺伝子の断片、eae(これは、例えば、pEB313のXhoI−HindIII断片のようなhisタグを有していてもよい)を適切なベクターにおいて植物プロモーターに連結する。このベクターを適切な方法で、例えば、タバコ植物に導入することにより、該タバコ植物によるhis−インチミンのようなインチミンの発現が生じる。一旦タバコ植物が増殖したら、それらをホモジナイズして“タバコスープ”(タンパク質抽出物)を作製する。次に、標準的な方法論を用いて、このスープをELISAの吸着剤として用いてインチミンの存在を検出する。あるいは、この抽出物をウェスタンブロット分析のためにSDS−PAGEゲルにかける。このようなアッセイのために、インチミンに対するポリクローナル抗血清、または、ヒスチジンタグの存在を検出するため、hisタグに対する抗体(QIAGENから入手可能)を用いることができる。植物が発現するインチミンの量は、ELISAまたはウェスタンブロットを用いて定量することができる。
【0035】
同様のアプローチを用いて、熟練技術者はインチミン、または、例えば、1以上の他の抗原との融合タンパク質としてのインチミンを、他の植物も本発明の範囲内にあるものの、タバコ植物または他の植物、例えば、ニンジン、バナナ、カノーラ、およびアルファルファにおいて発現させることができる。このような形質転換植物をウシのような動物に給餌すると、この形質転換植物がインチミンタンパク質または融合タンパク質を発現し、それにより免疫応答を刺激するためにこれらの抗原を該動物に送達する。このような方法は、動物を防御し、さらにはEHECのようなヒト病原体によるこれらの動物の将来的なコロニー化を防御してヒトへの感染の危険性を低減するための安価かつ効率的な方法であって、望ましいものである。
【0036】
形質転換手順の1つにおいては、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)バイナリーベクターにおいてeae遺伝子を構成植物プロモーターの制御下に配置し、該植物をアグロバクテリウム介在形質転換によって遺伝子工学的に作出する。
【0037】
宿主生物において発現するインチミンは結合機能を保持するサイズのものであり、ヒスチジンタグが付与されているインチミンを含んでいてもよい。加えて、インチミンは、宿主において1以上の他の抗原との融合タンパク質として発現してもよい。この宿主を動物を含む患者に投与することにより、前記インチミンおよび1以上の前記抗原に対する免疫応答が刺激される。
【0038】
当業者は、用いられるhis−タグ付きインチミンのサイズがそのインチミンを投与する特定の目的に従って変化し得ることも理解するであろう。例えば、his−タグ付きインチミンを1以上の抗原と結合させようとする場合、決して大きい断片の使用を除外するものではないが、結合した融合産物の安定性を高めるためにより小さい断片を選択することができる。他の抗原のサイズまたは立体配座(conformation)およびその重要なエピトープの位置は、his−タグ付きインチミンの特定の長さがそのエピトープを粘膜に近づけることを示すことがある。望ましいサイズも、当業者に公知の材料および方法に照らして、利用可能な制限部位の至便性に応じて変化する。したがって、本明細書中で用いられるhis−インチミンおよびhis−タグ付きインチミンという用語は、ヒスチジンタグを有するインチミン(完全長インチミン)の935個の推定C末端アミノ酸のうちの少なくとも900個を含むポリペプチドおよび結合機能を保持するこのhis−タグ付きタンパク質のより小さな部分を意味する。
【0039】
インチミンの一部および少なくとも1つの追加タンパク質抗原または薬物を含む融合タンパク質を生成するため、組換え技術によって結合体(conjugate)を生成させることができる。加えて、当業者に公知の方法により、インチミンを薬物、タンパク質、ペプチド、炭水化物および他の抗原に化学的または物理的に結合させることができる。化学的結合方法は当業者に公知であり、これには、部分的に、利用可能な官能基(例えば、アミノ、カルボキシル、チオおよびアルデヒド基)によるカップリングが含まれる。S. S. Wong, Chemistry of Protein Conjugate and Crosslinking CRC Press (1991);およびBrenkeleyら Brief Surveyof Methods for Preparing ProteinConjugates With Dyes,Haptens and Cross-linking Agents, Bioconjugate Chemistry 3#1 (1992年1月号)を参照。
【0040】
結合機能の保持は、インチミン、インチミン様タンパク質、および/またはその一部が上皮細胞もしくはHEp−2およびHCT−8のような細胞株に結合する能力を保持することを意味する。このような結合は、微小コロニーアッセイ(Frankelら, Infect.Immun. 62(5):1835-1842 (1994))、FAS(蛍光アクチン染色)、またはその両者(McKeeおよびO'Brien, Infect.Immun. 63(5):2070-2074 (1995)、その開示は引用により本明細書中に組み込まれる)により細菌性微小コロニーとして可視化することができる。加えて、結合は、細菌の毒性または病原性の機能としてのin vivo測定を含む当該技術分野において標準的なあらゆる方法、または死後の組織学的検査により測定することができる。結合機能を決定するための上記方法の各々の例は、実施例IVに説明される接着アッセイを含めて下記実施例において詳述される。
【0041】
他に指定されていない限り、本明細書中に示される使用および方法はヒトおよび動物に一般的に適用することができる。患者という用語は、本明細書中では、ヒトおよび動物の両者を意味するものとして用いられ、動物は家畜に限定されるものではなく野生動物および実験動物をも含み得る。
His−タグ付きインチミンの単離および精製
分子のN末端側1/3が欠失しているHis−インチミン融合体(RVHindHis)が非接着性EHEC eae変異体の接着性を補完することが可能であったこと、すなわち、インチミンの発現を妨げる遺伝的変更の後にその結合能力を喪失したEHECの株に結合能力を回復させたことが示されている。この回復した結合において示される接着のパターンは野生型86−24株において観察されるものと区別することができなかった(McKee, M. L.およびO'Brien, A. D. Infect.Immun. 印刷中(1996))。上述の微小コロニーアッセイで測定した場合、野生型の活性は強く染色された局在化領域を有する点状パターンとして同定された。
【0042】
しかしながら、部分的にはインチミンが常にEHECの外膜と会合しているため、インチミンタンパク質の精製は困難であった。過剰発現した組換えインチミンの大部分は、宿主細菌の超音波破壊および抽出バッファーへの穏やかな界面活性剤の添加の後であっても細菌の膜画分と会合したままであった。97kDa範囲の他の多くの未変性大腸菌タンパク質と結合したインチミンタンパク質の不溶性が未変性タンパク質の精製を困難なものとした。
【0043】
インチミン−マルトース結合タンパク質融合体(MBP)を作製しようとする試みもまた、推定されるタンパク質産物が欠失および再構成を有していたため、不成功であった。他の研究者による試みはインチミンC末端の280個のアミノ酸へのMBP融合体の構築を示していたが、この融合体はEHEC様の結合機能をもたらさなかった。このMBP−インチミン融合タンパク質によって付与される接着性の拡散パターンはHEp−2細胞へのEHECの結合のパターンとは明らかに異なるものであった(Frankel, G.ら Infect. Immun.62:1835 (1994))。
【0044】
280個のアミノ酸よりも大きい機能的MBP−インチミン融合体を得ることができないことについての可能性のある説明の1つは、最後の280個のアミノ酸よりも大きいEaeの断片の過剰発現が不安定であり、したがって再構成する傾向がある、すなわち、そのクローンを単離することは、それが発現した際に細胞にとって致命的であるかまたは有害であるために、不可能である可能性がある。あるいは、280個のアミノ酸より大きいMBP−インチミン融合体の断片の過剰発現が細菌の膜を塞ぎ(plug up)、それがその細胞にとって致命的である可能性がある。
【0045】
MBPを用いてインチミンを精製しようとする試みが失敗した後、そのタンパク質にヒスチジンタグを結合することを包含するQIAGEN社の QIA expressionist Kitを用いて融合体を作製した。このヒスチジンタグはニッケルアフィニティーマトリックスにしっかりと結合し、これがさらなる研究のために多量の物質を精製することを容易にした。加えて、この発現系により、His融合タンパク質の発現の厳重な制御を維持して、このタンパク質の過剰発現の結果としての大腸菌宿主株に対するこの組換えタンパク質の可能性のあるあらゆる致命的効果を防止することを可能となる。実施例Iではこのような融合タンパク質の作製について説明する。
【実施例】
【0046】
実施例I
A.935個の推定アミノ酸(図2)のうちの900個を含むHis−タグ付きインチミンをコードするプラスミド、pEB313(図1)の構築
eae遺伝子を、Griffin, P. M.ら, Ann. Intern.Med.109:705-712 (1988)またはPhil Tarr(小児科病院および医療センター(Children's Hospitaland Medical Center)、4800サンド・ポイント・ウェイNE、シアトル、WA 98105、206−526−2521)から容易に入手可能なEHEC 86−24株(血清型O157:H7)からクローン化する。そのDNAを標準染色体プレップ技術 (Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel, F. M.ら(編)第1:2.4.1巻におけるWilson, K. “ Preparation of Genomic DNA from Bacteria”)に従って抽出する。
【0047】
この遺伝子を、2つの既知のEHEC eae配列の複合体から設計されたプライマーを用いる、当該技術分野における標準技術であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてクローン化する。2種類のプライマーを構築する:Beebakhee, G.ら FEMS Microbiology. 91:63 (1992)によって配列決定されたCL8株に由来する配列の塩基20−41にわたる、Sn20−CGTTGTTAAGTCAATGGAAAC(配列番号1)、5’プライマー(図3);およびYu, J.およびKaper, J. B. Mol. Microbiol. 6:411(1992)によって配列決定された933株に由来する配列の塩基3061−3082にわたる、MM2−TCTAGAGAGAAAACGTGAATGTTGTCTCT(配列番号2)、3’プライマー(図4)。MM2は、さらに、3’末端にXbaI部位を含むように設計した。
【0048】
PCR反応を、AmpliTaq Kitを用いて、製造者であるパーキン・エルマー(Perkin Elmer)の指示に従って行う。このPCR増幅はeaeのオープンリーディングフレーム(ORF)全体をコードする3144bp断片(図5、eaeと示された領域)を生成し、かつ186bp上流を含む。このPCR産物を平滑末端が生じるように処理し、ベクターpBRKS(Schmittら, J. Bacteriol. 176:368-377 (1994))のEcoRV部位に連結する。
【0049】
この遺伝子を、適切な条件下において、Plac pEB311(図6)およびPT7 pEB310(図7)のいずれかからの転写が可能になるように両方向にクローン化する。このプラスミドで宿主株XL1BlueF'Tn5lacIQ(QIAGEN社、9600 デソト・アベニュー(DeSoto Ave.)、チャッツワース、CA. 91311、1−800−362−7737から入手可能)を形質転換する。この組換え体をlacリプレッサーの構造的制御の下に維持する。これは、従来のeaeをクローン化しようとする試みの失敗がeaeの過剰発現が宿主大腸菌株にとって致命的であり得ることを示唆していたためである。lacリプレッサーによってもたらされる制御と共に、低コピー数のpBRKSベクターによりこれらの問題が排除される。
【0050】
pEB310をEcoRIで消化し、クレノウ断片で充填(fill in)し、HindIIIで消化し、かつ生じる2895bpの断片を単離することによりhis−タグ付きインチミンプラスミドを構築する。このDNA断片はジーンクリーン・キット(Geneclean kit)Bio101(1070ジョシュア・ウェイ(Joshua Way)、ビスタ、CA. 92083、1−800−424−61010)を用いて単離する。his−タグ発現プラスミドpQE32(図8)(QIAGEN社から入手可能)をSmaIおよびHindIIIで消化する。その後、2895bp断片をpQE32に連結してpEB313(図1)を作製する。
【0051】
このプラスミドpEB313はRIHisEaeと呼ばれる101kDaのhis−タグ付きEae断片をコードし、これは935個の推定アミノ酸のうちの900個をコードする。このhis−インチミン融合体は、潜在的なシグナル配列を除去するために、N末端の35個のアミノ酸が欠失するように構築される。シグナル配列は膜を標的としてこの融合タンパク質を移動させ、またはコードされたインチミンからのHisタグの開裂を導く可能性がある。
【0052】
pEB313を構築した後、これを用いて、lacリプレッサー(lacIQ)、例えばM15 pREP4(QIAGEN社によって供給される、多コピープラスミドpREP4に含まれるリプレッサー)(図9)またはXL1BlueF'Tn5lacIQ(同様にQIAGEN社から入手可能な、単一コピーF’プラスミドに含まれるリプレッサー)を含む大腸菌のlab株を形質転換する。形質転換された大腸菌は、pEB313によってコードされるhis−インチミン融合タンパク質を発現する。このタンパク質の精製は実施例IIIに説明される通りに行う。
B.His−タグ付き偽結核菌インベイシン(invasin)をコードするプラスミド、pHis−Inv1の構築、およびN末端の40個のアミノ酸が欠失しているHis−タグ付き偽結核菌インベイシンをコードするプラスミド、pHis−Inv2の構築
プラスミドpRI203は、inv遺伝子およびそれを取り巻くヌクレオチド配列を含む、偽結核菌染色体DNAの4.6kb断片を含み、Ralph Isberg博士(分子生物学および微生物学部(Dept. Of Molecular Biologyand Microbiology)、タフツ大学医学校(Tufts University School of Medicine)、ボストン、マース. 02111;参考文献 R. R. Isberg, D. L. Voorhis,およびS. Falkow. Cell.50:769 (1987))から容易に入手することができる。pRI203 DNAを、供給された細菌株からQIAGENDNA抽出キット(QIAGEN、チャッツワース、CA)を用いて製造者に指示に従って抽出する。
【0053】
pHis−Inv1を構築するため、2種類のプライマー、Inv1(=5’GTACGGATCCATGATGGTTTTCCAGCCAATCAGTGAG3’(配列番号3))およびInv3(=5’ GTACGGTACCTTATATTGACAGCGCACAGAGCGGG 3’(配列番号4))を(上記パートAに説明される)PCR反応において用いて所望のinv配列をpRI203から増幅する。生じた2960bpのinv断片をBamHIおよびKpnIで消化し、アガロースゲルに流し、カミソリで切り出し、かつジーンクリーン(バイオ101、LaJolla、CA)を用いて精製する。精製したinv断片を、BamHIおよびKpnlで消化した、増幅したinv配列に対応する適切なリーディングフレームを含むHis−タグ付きQIAGENベクター(pQE30、31または32、QIAGEN、チャッツワース、CA)に連結する。その後、連結したプラスミドでDH5αF'Tn5lacIQを形質転換し、形質転換体を適切なサイズの挿入物の存在についてチェックする。
【0054】
pHis−Inv1より発現したタンパク質からシグナル配列(したがって、それに隣接するHisタグ)を開裂させる場合には、プラスミドpHis−Inv2を構築する。pHis−Inv2を構築するため、2種類のプライマー、Inv2(=5’ GTACGGATCCATATGTGGAATGTTCATGGCTGGGG 3’(配列番号5))およびInv3(=5’ GTACGGTACCTTATATTGACAGCGCACAGAGCGGG 3’(配列番号4))を(上記パートAに説明される)PCR反応において用いてpRI203から所望のinv配列を増幅させる。生じた2840bpのinv断片を上述の通りに精製し、His−タグQIAGENベクターに上述の通りに連結して、同様の細菌宿主株を形質転換する。
【0055】
あるいは、pRI203を制限酵素消化し、次いでインベイシン断片の5’末端に対する適切なリーディングフレームを含むQIAGENHis−タグベクター(pQE30、31または32)に連結することにより同様のプラスミドを構築する。前述の例は、偽結核菌からのヒスチジン−タグ付きインベイシンをコードするプラスミドの構築を説明しようとするものである。当業者は、代替ベクターおよび/または他のインチミン様タンパク質を用いて設計された類似構築体を当該技術分野における標準法に従って構築することができることを理解する。また、当業者は、上記his−タグ付きインベイシンおよび他のhis−タグ付きインチミン様タンパク質が本明細書の他の箇所に開示される方法に適用可能であることも理解する。
C.935個の推定アミノ酸のうちの604個を含むHis−タグ付きインチミンをコードするプラスミド(pEB312)(図10)の構築
(パートAに説明される通りにして得た)プラスミドpEB310をEcoRVおよびHindIIIで消化し、1971bp断片を単離して、その断片をSmaIおよびHindIIIで消化したpQE32に連結する。プロトコルで用いられる制限酵素、リガーゼ、クレノウ断片は、New EnglandBioLabs(32 トザー・ロード(Tozer Rd.)、ベヴァリー、MA. 01915−55991、1−800−NEB−LABS)または Gibco BRL(P. O. Box 681 グランド・アイランド、N. Y. 14072−0068、1−800−828−8686)からのものである。得られるプラスミドをpEB312と呼ぶ。
【0056】
このプラスミドpEB312はRVHindHisと呼ばれるhis−タグ付きEae断片をコードし、これは約65kDaであって935個の推定アミノ酸のうちの604個をコードする。この構築体は野生型インチミンタンパク質のC末端の2/3を含む。
【0057】
pEB310が発現するインチミンと同様に、この融合タンパク質は、宿主大腸菌の超音波破壊の後に主として不溶性ペレット中に留まる。したがって、このタンパク質の不溶性ペレットからの抽出を可能にする尿素およびグアニジンHClを精製プロトコルに含める。
D.eaeの異なる断片を発現する追加プラスミドの構築
これらのプラスミドの各々を接着アッセイを用いて試験し、タンパク質断片が完全な結合機能を有することを確実なものとする。(下記実施例IVを参照)。加えて、インチミンのサイズの選択は、そのタンパク質が単独で発現するのかどうか、および既知のアミノ酸配列を有するインチミン様タンパク質との交差免疫性を所望するかどうかに応じて変化する。EHECおよびEPECから発現するインチミンに加えて、インチミン様タンパク質の例にはシトロバクター・ロデンチウム(Citrobacter rodentium)、ハフィナ・アルベイイ(Hafina alveii)のインチミン様タンパク質並びにエンテロコリチカ菌および偽結核菌のインベイシンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
例えば、偽結核菌との交差免疫性に対する要望が高まった場合には、EHECインチミンがインベイシンとして知られる偽結核菌タンパク質と31%の同一アミノ酸および51%の類似アミノ酸を共有する(Yu, J.およびKaper, J. B. Mol. Microbiol. 6:411(1992))ため、900aaを上回るインチミンが選択される。より大きな程度の相同性がそれぞれのタンパク質のアミノ末端の2/3に存在する。
【0059】
インベイシンは、培養上皮細胞への細菌の侵入(Isberg, R. R.ら Cell. 60:769(1987))およびin vivoでの腸管上皮への効率的な侵入(Pepe. J. C.およびV. L. Miller. Proc.Natl Acad. Sci. USA. 90:6473(1993))を可能にする、103kDaの外膜タンパク質である。インテグリンとして同定されている腸管上皮上の細胞接着受容体は、細菌の内部移行に先立ってインベイシンを結合する(Isberg, R. R.およびJ. M. Leong. Cell.50:861 (1990))。インベイシンの中心部分は外膜へのタンパク質の局在化に寄与し、これに対してC末端は受容体結合に必要である(Isberg, R. R. Mol. Microbiol. 3:1449(1989))。
【0060】
同様に、腸管病原性大腸菌(EPEC)、シトロバクター・ロデンチウム、またはハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)との交差免疫性に対する要望が高まった場合にはより大きな900aaインチミンが選択される。EPECインチミンはタンパク質の全長にわたって83%の同一性をEHECと共有する;これらのタンパク質のN末端側の75%が94%の同一性を共有し、これに対してタンパク質のC末端側の25%が49%の同一性を共有する(Yu, J.およびKaper, J. B. Mol. Microbiol. 6:411(1992))。シトロバクター・フロインディ(Citrobacter freundi)のインチミンは、EHEC eaeに対して、最初の2106bpに関しては84%のヌクレオチド同一性を、3’の702bpに対しては57%の同一性を共有する(Schauer, D. B.およびFalkow, S. Infect. Immun.61:2486 (1993))。
【0061】
eaeの異なる断片を発現するプラスミドは、以下の技術のうちの1つを用いて構築することができる:(1)eae内の都合のよい制限部位、例えば、SalIおよびHindIIIで消化したpEB313の使用、1298bp断片の単離、およびSmaIおよびHindIIIで消化したpQE30(QIAGEN社)への連結。得られるプラスミドはEaeのC末端の最後の432アミノ酸を発現する;(2)ヌクレアーゼBAL−31、エクソヌクレアーゼIII、またはリョクトウ(Mung bean)ヌクレアーゼ(全て、ニュー・イングランド・バイオラブス、32 トザー・ロード、ベヴァリー、MA 01915から入手可能)を用いる所望の断片の5’または3’領域の欠失;(3)同様に上記技術を用いた、非隣接eae断片を用いたプラスミドの構築;および(4)以下により詳細に説明されるような、所望の特定の配列をコードするプラスミドの、それらの配列の5’および3’末端に特異的なPCRプライマーを用いた構築。
【0062】
第3の技術に関しては、His−タグ付き中間部1/3インチミン欠失変異体プラスミドを構築する(pMW114)。プラスミドpMW106(以下に説明される)でdam DM1F'Tn5lacIQ株を形質転換する。QIAGENキット(QIAGEN社)を用いてDNAを作製し、BclIで消化する。このDNAをアガロースゲルに流す。5178bpのバンドを切り出し、ジーンクリーン(バイオ101)を用いて精製し、連結した後、それでDH5αF'Tn5lacIQ(または、XL1BlueもしくはM15pREP4のような他の適切な株)を形質転換する。形質転換体を、DNAの制限消化によりチェックする。この説明は、非隣接eae配列をコードする他のプラスミドの構築を排除するものではない。
【0063】
第4の技術に関しては、eaeの特定の断片の増幅にPCRを用いることができる;これらの断片を制限酵素消化により単離し、アガロースゲル電気泳動を行い、適切なHis−タグ発現ベクター(すなわち、pQE30、31または32;QIAGEN社)に連結する。
【0064】
例えば、eaeの様々な領域をコードするクローンを構築する(図11および12を参照)。これらのクローンの接着機能を保持する能力を、(1)eae変異体を形質転換、次いでHEp−2細胞を用いて接着アッセイ(実施例III、第C節を参照)するか、または(2)細菌への外来性タンパク質の添加(実施例III、第D節を参照)のいずれかによりアッセイを行なう。選択された断片が完全な、または完全に近い野生型の結合活性を保持することが重要である。
【0065】
最も高い結合活性を有するクローンはこのタンパク質のC末端側1/3(第3の1/3)、おそらくは多くとも150個のC末端アミノ酸を含むという仮説を立てる。この仮説は、例えば、Frankelら, Infection & Immunity, 62:1835(1994)、Frankelら, Infection &Immunity, 63:4323 (1995)、およびFrankelら, J. Biol. Chem.,271:20359 (1996)によって支持される。タンパク質はアミノ酸の直線的な整列と考えることはできず、これらは、むしろ、三次元構造で存在する。タンパク質の1個のアミノ酸の変化またはその一部の欠失がこの構造を混乱させる可能性があることを心に留めることが重要である。したがって、十分な細胞の結合活性は、追加の非隣接配列の存在を、この第3の1/3推定結合ドメインと共に必要とする可能性がある。
【0066】
さらに、高い結合活性を有するクローンは、仮定のジスルフィド結合の形成およびその結果生じるループの形成のための2つのC末端Cys(bp2780およびbp3002でコードされるもの、Beebakhee G., J. DeAzavedo, およびJ. Brunton, FEMS Microbiology Letters91:63 (1992)を参照した番号付け)を含むという仮説を立てる。加えて、高い結合活性を有するクローンは1つまたは両者のアスパラギン酸(bp2819および2828でコードされるもの、Beebakheeを参照した番号付け)を必要とする可能性があるという仮説を立てる。この仮説は、例えば、Leong, J. M., Embo.J. 14:422 (1995)に記述されるようなインベイシンに対する類似性によって支持される。
【0067】
全てのクローンは同様の方法で構築する。所望のeae断片の5’および3’領域を特定するPCRプライマーを設計する。pQE31へのクローン化を容易にするため、5’プライマー(MW1、MW3、MW5、MW7、MW8、MW9、MW10)の各々は5’BamHI部位を含み、3’プライマー(MW2、MW4、MW6、MW11、MW12)の各々は5’KpnI部位を含む。各々のPCRプライマーは、指定されたeae配列のリーディングフレームがpQE31への挿入に適するように設計する。以下のHis−タグ付き構築物を示されるPCRプライマーを用いてクローン化する。
【0068】
(1)pMW101 − EaeのN末端側1/3をコードする;27kDaタンパク質(PCRプライマー:MW1(5’PCRプライマー)=5’ GTACGGATCCGAATTCATTTGCAAATGGTG 3’(配列番号6);MW2(3’PCRプライマー)=5’ GTACGGTACCTGATCAATGAAGACGTTATAG 3’(配列番号7));
(2)pMW102 − Eaeの中間部1/3をコードする;42kDaタンパク質(PCRプライマーMW3(5’PCRプライマー)=5’ GTACGGATCCTGATCAGGATTTTTCTGGTG3’(配列番号8);MW4(3’PCRプライマー)=5’ GTACGGTACCTGATCAAAAAATATAACCGC3’(配列番号9));
(3)pMW103 − EaeのC末端側1/3(282個のアミノ酸)をコードする;32kDaタンパク質(PCRプライマー:MW5(5’PCRプライマー)=5’ GTACGGATCCTGATCAAACCAAGGCCAGCATTAC 3’(配列番号10);MW6(3’PCRプライマー)=5’ GTACGGTACCTTATTCTACACAAACCGCATAG 3’(配列番号11));
(4)pMW104 − EaeのN末端側の2/3をコードする;69kDaタンパク質(PCRプライマー:MW1およびMW4);
(5)pMW105 − EaeのC末端側の2/3をコードする;73kDaタンパク質(PCRプライマー:MW3およびMW6);
(6)pMW106 − N末端側に35個のアミノ酸の小さな欠失を有するEaeをコードする;100kDaタンパク質(PCRプライマー;MW1およびMW6);
(7)pMW108 − EaeのC末端側の150個のアミノ酸をコードする(PCRプライマー:MW7(5’PCRプライマー)=5’ GTACGGATCCACTGAAAGCAAGCGGTGGTGATg 3’(配列番号12);MW6);
(8)pMW109 − EaeのC末端側の140個のアミノ酸をコードする(PCRプライマー:MW8(5’PCRプライマー)=5’ GTACGGATCCTTCATGGTATTCAGAAAATAC 3’(配列番号13);MW6);
(9)pMW110 − EaeのC末端側の130個のアミノ酸をコードする(PCRプライマー:MW9(5’PCRプライマー)=5’ GTACGGATCCGACTGTCGATGCATCAGGGAAAG 3’(配列番号14);MW6);
(10)pMW111 − EaeのC末端側の120個のアミノ酸をコードする(PCRプライマー:MW10(5’PCRプライマー)=5’ GTACGGATCCGAATGGTAAAGGCAGTGTCG 3’(配列番号15);MW6);
(11)pMW112 − bp#2560−2923(番号付けはCL8株のeae配列を参照する、参考文献Beebakhee G., J. DeAzavedo, およびJ. Brunton, FEMS Microbiology Letters91:63)にわたるC末端を有する、Eaeの120個のアミノ酸をコードする。(PCRプライマー:MW7;MW11(3’PCRプライマー)=5’ GTACGGTACCTCCAGAACGCTGCTCACTAG 3’(配列番号16));
(12)pMW113 − PCRプライマーMW12を用いてbp3002のCysがSerに変更されている、EaeのC末端側の282個のアミノ酸をコードする(番号付けはCL8株のeae配列を参照する、参考文献Beebakhee G., J. DeAzavedo, およびJ. Brunton,FEMS Microbiology Letters 91:63 (1992))(PCRプライマー:MW5;MW12(3’PCRプライマー)=5’ GTACGGTACCTTATTCTACAGAAACCGCATAG 3’(配列番号17))。
【0069】
全てのクローンは、まず凍結乾燥したプライマーをdH2Oで10μMに希釈することにより構築する。(全eae遺伝子をコードする)XL1blue pEB310株からQIAGEN prep(QIAGEN社)を用いて鋳型DNAを作製し、これをコーディング領域内またはその近傍を切断しない制限酵素、例えばHindIII、で消化することにより直線化し、分光光度計を用いて定量する。10μlの10×Taqバッファー(パーキン・エルマー/ロッシュ(Perkin Elmer/Roche)、ブランチブルク、N. J.)、10μlの2mM dNTPミックス(ベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim)、インディアナポリス、IN)、10μlの10μM 5’PCRプライマー、10μlの10μM 3’PCRプライマー、6μlの25mM MgCl2(パーキン・エルマー/ロッシュ)、52μlのdH2O、および1μl(1−10ng)の直線状鋳型DNAを合わせることによりPCR反応を行う。この混合物に鉱物油2滴を適用し、100℃で5分間加熱して鋳型を変性させる。1μl(5U)のAmpliTaqポリメラーゼ(パーキン・エルマー/ロッシュ)を添加し、PCR反応を開始させる:95℃/1分、50℃/1分、72℃/3分を30サイクル、次いで72℃/10分、および4℃で保持。PCR反応が完了した後、DNAをウィザードPCRクリーンアップ・キット(Wizard PCR clean-up kit)(プロメガ(Promega)、マジソン、Wis)に適用し、50μlのTEバッファーに再懸濁する。PCR増幅したDNAをBamHIおよびKpnIで消化し、アガロースゲルで電気泳動して適切なサイズのバンドを切り出し、ジーンクリーン(バイオ101、LaJolla、CA)で精製する。次に、消化したPCR断片をBamHIおよびKpnIで消化したpQE31に連結し、それでDH5αF'Tn5lacIQ(または他の適切な株、例えば、M15pREP4もしくはXL1Blue)を形質転換し、形質転換体を適切なサイズの挿入物の存在についてチェックする。
【0070】
上に挙げられる技術のいずれに関しても、精製したタンパク質から後でヒスチジンタグを除去する必要がある場合には、6XHis配列とそのタンパク質のN末端(N末端タグ)またはC末端(C末端タグ)との間にプロテアーゼ開裂部位を挿入することができる。例えば、エンテロキナーゼは配列“DDDK”(Asp4−Lys)(配列番号26)を認識し、リジンの後ろで開裂する。この配列をコードするPCRプライマーを設計し、これを用いて所望の遺伝子断片の部位特異的突然変異誘発を行う。あるいは、カルボキシペプチダーゼAをC末端Hisタグの除去に用いることができる。この酵素は塩基性残基に出会うまで効率的に芳香族C末端残基を除去し(Hoculi, E. Chemische Industrie. 12:69 (1989))、その位置で除去が停止する。加えて、PCRを用いて、コードされるタンパク質のN−もしくはC末端にプロテアーゼ部位がコードされるようにプライマーを設計することが可能であり;またはPCRを用いてこれらの部位を含むベクターを設計することができ、かつ上述の技術を用いて前述のベクターにクローン化することができる。
【0071】
インチミンの大規模な精製のため、pEB312または他の構築物から発現されるインチミンの全ての断片を実施例IIに詳述されるプロトコルに類似するプロトコルを用いて精製する。当業者が、本発明の範囲および精神に留まりながら、さらなる制限部位を選択し、またはプロトコルを変更することができることは明らかである。
実施例II
ヒスチジンタグ付きインチミンの大規模な富化
大規模な発現培養物の増殖
100μg/mlのアンピシリンおよび40μg/mlのカナマイシンを含むLB(ルリア−バータイニ(Luria-Bertaini))ブロス20 mlに白金耳一杯の(上記実施例Iに説明されるように調製した)M15 pREP4 pEB313を接種する。激しく振盪しながら、37℃で一晩(15−18時間)増殖させる。この一晩培養物20mlを、100μg/mlのアンピシリンおよび40μg/mlのカナマイシンを含むLBブロス11に接種する。激しく振盪しながら、OD600=0.7−0.9になるまで(約3時間)37℃で増殖させる。IPTG(イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド、シグマ・ケミカル社(Sigma ChemicalCo.)、P. O. Box 14508、セントルイス、MO. 63178、1−800−325−3010)を最終濃度1mM(.476g)まで添加し、さらに3時間培養物の増殖を継続する。上清を500ml瓶(予め秤量)に分け、4000×gで10分間遠心分離にかける。上清を廃棄して細胞ペレットを秤量し、−70℃で保存するか、または直ちに処理する。
【0072】
細胞を15分間解凍し、渦撹拌(vortex)して5ml/湿重量gでバッファーA[6M GuHCl、0.1M NaH2PO4、0.01Mトリス−HCl、pH8.0]に再懸濁する。細胞を室温で1時間撹拌する。溶解物を10,000×gで15分間遠心分離し、上清を集める。予めバッファーAで平衡化したNi−NTA樹脂(QIAGEN社からのNi−NTAスラリー)の50%スラリー5mlを添加する。室温で45分間撹拌し、スラリーを沈殿させ、上清を除去し、5mlのバッファーAを添加し、スラリーを沈殿させ、上清を除去し、5mlのバッファーAを添加し、この樹脂をカラムに充填する。このカラムを10カラム容量のバッファーA、次いでOD280≦0.01(少なくとも5カラム容量)までバッファーB[8M尿素、0.1M NaH2PO4、0.01Mトリス−HCl、PH8.0]で洗浄する。カラムを、OD280≦0.01まで、バッファーC[8M尿素、0.1M NaH2PO4、0.01Mトリス−HCl、PH6.3]で洗浄する。バッファーCに加えて0.25mMのイミダゾールでタンパク質を溶離し、30の1ml画分を集める。
【0073】
各々の画分のOD280を記録する。精製したタンパク質のアリコートを透析管(スペクトラ/ポール・セルロース・エステル・メンブラン(Spectra/Por Cellulose Ester Membrane)MWカットオフ=8000;スペクトラム・メディカル・インダストリーズ(Spectrum MedicalIndustries)、1100ランキン・ロード、ヒューストン、TX. 77073−4716)にプールし、冷(4℃)バッファーCで平衡化する。これらのアリコートの濃度を、標準市販タンパク質定量キット(バイオ−ラッド・マイクロアッセイ(Bio-Rad Microassay)、バイオ−ラッド・ラブス(Bio-Rad Labs)、2000アルフレッド・ノーベル・ドライブ、ハーキュルス、CA. 94547、1−800−4BIORAD)を用い、バッファーCで希釈したBSAを標準として用いて≦1mg/mlに調整する。冷却下(4℃)において、バッファーCで開始して尿素のモル濃度の減少が整数値で増加するタンパク質の段階透析を行う。各溶液中で1時間透析し、1×PBSで終了させる。ウェル当たり約2μlのタンパク質を流す(10%)SDS−PAGEによりタンパク質を分析してタンパク質のサイズおよび品質を確認する。RIHisEaeの分子量は101kDaである。
【0074】
あるいは、タンパク質を透析管に添加し、直に1×PBSで透析する。タンパク質を標準市販タンパク質定量キット(ピアスBCAプロテイン・アッセイ・キット(Pierce BCA Protein AssayKit)、ピアス(Pierce)、P. O. Box 117、ロックフォード、III. 61105)を用いて定量し、等分して−20℃で保存する。第1の代替法と同様に、ウェル当たり約2μlのタンパク質を流す(10%)SDS−PAGEによりタンパク質を分析してタンパク質のサイズおよび品質を確認する。
【0075】
his−タグ付きインチミンの富化に際して、誘導された物質を純度の水準についてSDS−PAGEにより分析する。10%SDS−PAGEゲルに富化したhis−タグ付きインチミンのサンプル2μlを流し、200Vで1時間電気泳動する。サイズの比較のため、分子量マーカーをゲル上に含める。このゲルをコロイド状クーマシー染色(シグマ、セントルイス、MO)で染色すると、最も目立つものが約101kDa位に現れる。幾つかの他の顕著性に劣る高分子量バンドも現れる。このゲルを銀染色(バイオラッド、リッチモンド、CA)で製造者の指示に従って染色すると、非常にかすかな高分子量バンドが幾つかのより目立つ低分子量バンドに加えて出現し、最も目立つバンドは29kDa周辺に現れる。この富化生成物は、好ましくは、約70−80%の完全長(すなわち、935個の推定アミノ酸のうちの900個)のインチミンを含む。好ましくは、この富化生成物は25%を超える汚染物質(すなわち、非インチミン関連分子)を含まず、より好ましくは20%を超える汚染物質を含まず、さらにより好ましくは10%を超える汚染物質を含まない。
実施例III
富化したヒスチジン−タグ付きインチミンの精製
上記実施例IIにおいて説明される通りに作製したhis−タグ付きインチミンの富化調製品を当業者に公知の技術により精製する。これらの技術には高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲルカラムクロマトグラフィー、およびSDS−PAGEが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
SDS−PAGE法を用いて、his−タグ付きインチミンの富化調製品を10%ポリアクリルアミドゲルで分離し、例えば分析レーンをコロイド状クーマシー染色(シグマ、セントルイス、MO)で染色することにより、可視化する。高分子量完全長インチミンバンドをこの分離用ゲルからカミソリで切り出し、免疫感作に先立って4℃で保存することができる。インチミンの完全長より短い断片、すなわちインチミンの一部、および/または1以上の抗原に結合するインチミンを同様にゲルから切り出すことができる。
【0077】
インチミンまたはその一部の精製に用いられる方法に関わりなく、本明細書中で用いられる精製タンパク質は、任意にヒスチジンがタグ付けされている、インチミンまたはその一部だけからなるポリペプチドの集団を指す。インチミン(およびインチミン様タンパク質)をコードする1つのオープンリーディングフレームのみを含むDNAの断片から発現されたポリペプチドの集団が、SDS−PAGEゲル上で複数のバンドに分離し得ることは当該技術分野において認識されている。McKeeら, Infection & Immunity, 64(6):2225-2233 (1996)、Jerseら, Proc. Natl.Acad. Sci. USA 87:7839-7843 (1990)およびIsberg, Cell 50:769-778 (1987)。したがって、精製インチミンは、インチミンの一部および1以上の抗原と結合したインチミンと同様に、SDS−PAGEゲル上で複数のバンドとして可視化することができる。
実施例IV
A.接着アッセイ
HEp−2またはHCT−8細胞のいずれかに対する大腸菌の接着を、Carviotoら, Curr. Microbiol. 3:95-99(1979)の方法の改変法により評価した。具体的には、LBブロス中の試験しようとする細菌の一晩培養物20μl/ml(v/v)を含む接着アッセイ培地(0.4%重炭酸ナトリウムおよび1%マンノースを補足したEMEM、すなわちイーグル最少必須培地)と共に、HEp−2細胞の半集密(semiconfluent)単層を24ウェル組織培養皿または8ウェルのパーマノックス・チャンバー・スライド(Permanox ChamberSlides)(ヌンク(Nunc)、ネイパービル、III)内のカバーガラス上にのせる。
【0078】
接種物の各々は≧107個の(以下に説明される)細菌を含み、これはおおよそ100:1の感染多重度を生じる。感染した単層を5%CO2雰囲気内において37℃でインキュベートする。3時間後、非接着細胞を含む培地を吸引し、単層を無菌の10mMリン酸緩衝生理食塩水、pH7.4(PBS:塩化ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、および一塩基性リン酸カリウム)で1回洗浄する。
【0079】
これらの細菌が接着した細胞に新鮮な接着アッセイ培地を添加した後、感染細胞をさらに3時間インキュベートする。次いで、単層をPBSで6回洗浄して非接着細菌を除去する。各々の洗浄液は単層の攪乱の回避を試みながら吸引により穏やかに除去する。各々のアッセイを2回以上行い、結合および関連後遺症(associated sequelae)を可視化するためのギムザおよびFITC−ファロイジン(FAS)染色が可能となるように2つのスライドを調製する。
【0080】
ギムザ染色については、HEp−2細胞および接着細菌を70%(v/v)メタノール(カバーガラス)または段階的なアセトン洗浄(チャンバースライド)で固定し、1:10ギムザ(シグマ)で20分間染色する。FAS表現型を評価するには、Knuttonら, Infect.Immun. 57:1290-1298 (1989)のFITC−ファロイジン(シグマ)染色法を用いる。ファロイジンは、球状ではなく繊維状のアクチンに特異的に結合するキノコ・ファロトキシンである。FITC−ファロイジン染色標品を、位相差顕微鏡検査およびモデルBH2−RFL反射型蛍光アタッチメント(オリンパス光学株式会社(Olympus OpticalCo., Ltd.)、東京、日本)を備えたオリンパス・モデルGHS顕微鏡を用いる蛍光顕微鏡検査により検査する。
【0081】
HCT−8細胞を用いる接着アッセイをHEp−2細胞について上述される手順により行うが、最初の洗浄の前に2.5時間、アッセイを終了する前にさらに2.5時間細菌をHCT−8細胞と相互作用させる。HCT−8細胞を用いるアッセイは、全て、8ウェル・パーマノックス・チャンバー・スライドにおいて行う。
B.アッセイで用いる細菌の構築:EHEC eae変異体
EHECの特定の株、86−24株においてeae遺伝子の染色体コピーにインフレーム(in-frame)欠失を作製するため、この遺伝子の野生型コピーをeaeの内部欠失コピーを用いる二重相同的組換えにより置換する(図13)。プラスミドpEB290(図14)はeae構造遺伝子の大部分を封入するもので、86−24染色体からプライマーMM1(MM1=ATAACATGAGTACTCATGGTTG(配列番号18);eae構造遺伝子の第2コドンから出発し、ScaI制限部位を含む)をプライマーMM2(MM2=TCTAGAGAGAAAACGTGAATGTTGTCTCT)(配列番号2)との組み合わせで用いて増幅されたPCR産物から構築される。PCRによって誘導される生じた2,953塩基対の断片をScaIおよびXbaIで消化し、SmaIおよびXbaIで制限消化したpBluescript SK(ストラタジーン(Stratagene))に連結する。このpEB290挿入物の末端のDNA配列決定により、3’の250塩基対が失われていることが明らかになる。
【0082】
プラスミドpEB290で大腸菌GM119株[dam−6、dcm−3、[Arraj, J. A.およびMarinus, M. G. J. Bacteriol. 153:562-565 (1983)]を形質転換し、制限エンドヌクレアーゼBclIに感受性である非メチル化DNAを得る。プラスミドDNAを単離し(Maniatisら, 分子クローニング:実験マニュアル(Molecular cloning:a laboratory manual)Cold Spring Harbor(1982))、BclIで制限消化して内部1125bp断片をこの遺伝子から除去する。生じた粘着末端を互いに連結してpEB300を作製する(図15)。
【0083】
pEB300をXbaIおよびHindIIIで消化することにより欠失eae遺伝子を切り出し、eae配列を含む断片を自殺ベクターpAM450(図16)のBamHI部位に連結してpEB305を形成する。プラスミドpAM450はpMAK705(Hamiltonら, J. Bacteriol., 171:4617-4622 (1989))の3つの特徴を有する誘導体である。第1に、これは温度感受性(ts)複製起点を有する。第2に、このプラスミドは枯草菌に由来するsacB/R遺伝子座を担持し、これは宿主株をショ糖に対して感受性にする(Gayら, J. Bacterioil 164:918-921 (1985);Lepesantら, Marburg. Mol. Gen. Genet.118:135-160 (1972))。第3に、このプラスミドはアンピシリン耐性をコードする。これらの特徴は相同的組換え、およびベクター配列の回復および喪失を生じる第2の組換えに対する陽性選択を可能にする。(pEB300からの)欠失eae遺伝子を自殺ベクター(pAM450)に挿入することにより、pEB305と呼ばれるプラスミドが生じる(図17)。
【0084】
この自殺eae構築物、pEB305を用いて、電気穿孔法(Sizemoreら,Microb. Pathog. 10:493-499 (1991))により野生型EHEC 86−24株を形質転換する。ベクター配列が矯正されている二重組換え体をショ糖を含む培地での増殖により選択した後、アンピシリン感受性についてスクリーニングする(Blomfieldら, Mol. Microbiol., 5:1447-1457 (1991))。自殺ベクター配列が矯正されている形質転換体はショ糖に耐性であり、アンピシリンに感受性であり、かつ30℃および42℃で等しく増殖可能である。染色体eae配列の欠失を、(i)プライマーMM1およびMM2を用いるPCR増幅の後のeae断片のサイズの減少;(ii)変異染色体DNAのサザンブロット分析;(iii)eae遺伝子の欠失領域内の制限部位の喪失;および(iv)内部プローブの変異染色体の認識不能により確認する。
【0085】
得られたEHEC 86−24株のインフレーム欠失変異体を86−24eaeΔ10と命名する。86−24eaeΔ10からのPCR誘導産物のin vitro転写および翻訳分析により、変異がフレーム内にあることを確認する。予想されたサイズ、約68,000Daの末端切断された(truncated)タンパク質産物を、翻訳産物の[35S]メチオニン標識により同定する。eae変異株は全ての特徴において野生型86−24と同一であり、これらの特徴にはLBブロスにおける増殖、O157およびH7抗血清との凝集、ソルビトールを発酵させることが不可能であること、および37℃でのマッコンキー(MacConkey)寒天上での増殖が含まれる。
【0086】
当業者は、eaeにおいて突然変異により生じ、かつ結合活性を保持しないEHECの株を作製する他の方法が可能であり、代替可能であることを認めるであろう。
C.in vitroでのEHECの接着におけるeaeの役割
同質遺伝子型(isogenic)の株、86−24、86−24eaeΔ10およびpEB310を担持する86−24eaeΔ10をHEp−2およびHCT−8細胞への接着性について試験する。野生型86−24は、それらの細菌がHEp−2またはHCT−8細胞と相互作用すると微小コロニーを形成する。M. L. McKee &A. D. O'Brien, Infection &immunity 63:2070 (1995)。この局在化した接着はFAS(蛍光アクチン染色)陽性であり、これは細菌接着部位でのF−アクチンの重合(すなわち、期待される結果)を示す。変異体86−24eaeΔ10はHEp−2細胞に接着することができない。pEB310またはpEB311のいずれかでeaeを86−24eaeΔ10に導入した場合、LA/FAS(LA=局在化接着、すなわち微小コロニー形成)表現型は完全に回復し、その観察はインチミンが単独でeaeの突然変異を補完することを示す。これらのクローンの両者がeae変異体を補完することから、eaeの本来のプロモーターはPCR増幅配列中に存在する。
D.外来性His−インチミン融合タンパク質の添加の効果
接着アッセイは、86−24eaeΔ10の結合能および野生型86−24株の結合能に対する外部から添加されたHis−インチミン融合タンパク質の効果の評価にも用いることができる。この場合、各実験において示されるように、細菌を添加する前に精製His−インチミン融合タンパク質を上皮細胞単層に添加する。
【0087】
86−24を単層に添加する前に、HEp−2細胞を20ng−20μgのRIHisEaeと共に30分間インキュベートする。その後、感染した単層を丁寧に洗浄し、FITC−ファロイジンで染色して顕微鏡で観察する。これらの融合体は86−24の野生株のHEp−2細胞への結合を強化する。86−24の微小コロニーの大きさは、微小コロニーが接着したHEp−2細胞の総数と同様に、RIHisEaeの濃度の増加に伴って増加する。高用量(20μg)では、この融合タンパク質により、HEp−2細胞は異常な付加物および処理を示すようになる。このため、1−2μgがさらなる研究に最も好ましい用量である。
【0088】
HEp−2細胞に外部から添加した場合、RIHisEaeは86−24eaeΔ10のHEp−2細胞結合欠陥を補完する(すなわち、結合能を回復させる)。より短い融合タンパク質、RVHdHisEaeも接着性を補完する。マウス・ジヒドロ葉酸レダクターゼへのヒスチジン残基のアミノ末端融合(His−DHFR)は86−24の接着性を増強することはない。さらに、インチミン融合タンパク質をコードするプラスミド、pEB312およびpEB313は、in vitroでの接着について86−24eaeΔ10を補完することが可能である。したがって、このような研究は、pEB312およびpEB313によってコードされるタンパク質が接着性を付与するのに十分であることを示す。
【0089】
上記実施例Iにおいて述べられるように、これらの融合タンパク質は宿主株の超音波破壊の後の不溶性ペレット画分に局在し、これは、これらのタンパク質が膜に局在することを示す。His−DHFR融合体をコードするプラスミドpQE16は86−24eaeΔ10を補完することはない(データは示さない)。この不適切なヒスチジン残基との融合タンパク質がeae変異体にHEp−2細胞への接着性を付与しないことは、インチミンに付加されたヒスチジン残基が外部から添加されたHis−インチミン融合体で観察される活性の原因ではないことを示す。外来性RIHisEaeおよびRVHdHisEaeで観察されるHEp−2細胞へのEHECの結合の強化または補完は、インチミンが細菌および上皮細胞の両者と相互作用することを示す。
実施例V
in vivoでのeaeの役割−ノトバイオート・子ブタ感染モデル
ノトバイオート・子ブタの腸管コロニー形成、A/E病変形成、ならびにEHEC介在大腸炎および下痢におけるインチミンの役割を、Francisらの方法(Francisら, Infect.Immun. 51:953-956 (1986))により評価する。野生型親株、86−24を接種した子ブタの対の両者は下痢を発症し、剖検時にらせん状結腸の腸間膜に浮腫を有している。
【0090】
組織学的には、86−24株は主として盲腸およびらせん状結腸にコロニーを形成する。組織学的に、および培養によっては、肝臓、腎臓、肺または脳への細菌の蔓延の証拠は検出されない。EPECについてStaley(Staleyら, Vet. Pathol. 56:371-392 (1969))およびMoon(Moonら, Infect. Immun.41:1340-1351 (1983))によって記述されるような密接な細菌の接着およびA/E病変が、86−24に感染した子ブタの盲腸および結腸の光およびEM検査の両者によって立証される。A/E病変は接着部位での高電子密度の物質の集積を含む。幾つかの領域では、腸管内腔内では脱落した腸細胞断片および細菌が接着した微絨毛が認められた。86−24に感染した子ブタの盲腸およびらせん状結腸の組織切片においては、炎症性の浸潤が見られる。炎症は、固有層内に散乱した好中球、ならびに粘膜下組織における漿液および血管周囲リンパ球およびマクロファージの中程度の拡散集積を特徴とする。
【0091】
変異体株、86−24eaeΔ10を接種した子ブタの両者が、剖検時に形作られた糞便を有する。組織学的に、およびEM検査では、86−24eaeΔ10株が子ブタの腸管にコロニーを形成し、A/E病変を引き起こすことが可能である証拠はない。光およびEM検査によって盲腸およびらせん状結腸の粘膜上皮を覆う粘膜中に観察される細菌はほとんどない。86−24eaeΔ10を接種した2匹の子ブタのうちの1匹には僅かな結腸間膜の浮腫があるが、他の著しい病変または顕微鏡的な病変はいずれの子ブタにも見られない。
【0092】
86−24eaeΔ10(pEB310)を接種した子ブタは、剖検時にペースト状の糞便および結腸間膜浮腫を有する。86−24eaeΔ10(pEB310)株は粘膜腸細胞に密接に接着し、盲腸およびらせん状結腸にA/E病変を引き起こす。組織学的には、野生型86−24によって引き起こされるものに類似する血管周囲リンパ組織球増多性盲腸大腸炎(typhlocolitis)も見られる。
【0093】
同様の実験が初乳欠乏新生仔ウシモデルにおいて行われ、これは、インチミンが大腸菌O157:H7 86−24株介在性の下痢の他に腸内のA/E病変の誘発に必要であることを示す(A. D. O'Brien、M. R. Wachtel、M. L. McKee、H. W. Moon、B. T. Bosworth、C. Neal Stewart, Jr.、およびE. A. Dean-Nystrom. 「インチミン:大腸菌O157:H7抗伝播ワクチンの候補(Intimin: Candidate for an Escherichia coli O157:H7 Anti-Transmission Vaccine)」 第32回コレラおよび関連下痢疾患に関する共同会議(the 32nd Joint Conference on Cholera and Related Diarrheal Diseases)の抄録、長崎、日本、1996年11月14−16日、この開示は本明細書に参考として援用する)。また、これらの実験は、感染後2日で、下部腸における感染性生物の数が、野生型または補完クローンを有するeae変異体を給餌された仔ウシよりもeae変異体または非病原性大腸菌株を給餌された動物において大きく低下することも示す。
実施例VI
HC患者血清によるEHECタンパク質の認識
出血性大腸炎患者からの試験済みの回復期免疫血清(疾患管理および予防センター、アトランタ、GAのT. Barrettから快く提供されたもの)をウェスタン免疫ブロットにおいてPT7−発現インチミン標品(すなわち、pEB310およびpEB311によって発現されるhis−インチミン)と反応させる。出血性大腸炎患者血清と発現系における大腸菌タンパク質との反応性を低下させるため、血清サンプルをpGP1−2およびpBRKS(発現ベクター)で形質転換したDH5αの全細胞抽出物に吸着させる。吸着後、正常な血清対照はインチミン標品の硫酸アンモニウム濃縮画分中のタンパク質のみを認識するが、pEB310、すなわちベクター対照から発現されるタンパク質とはそれ以上反応しない。吸着後、HC患者の血清は依然として多くの大腸菌タンパク質を認識するが、インチミンとの反応は強いままである。
実施例VII
患者へのHis−インチミンの投与
以下の例は、防御免疫応答を刺激するための患者へのhis−インチミンの投与を提供する。防御免疫応答は、患者が感染を回避するのを可能とするに十分な抗体を誘発し、感染の重大性もしくは重篤性を減少させ、または胃腸管にコロニーを形成する細菌の能力を低下させるものである。
【0094】
his−インチミンの投与方法には、his−インチミンを患者に直接注射(腹腔内、静脈内、皮下、および筋肉内を含むが、これらに限定されるものではない)して免疫応答を誘発すること、his−インチミンの単独もしくは食物との摂取または強制給餌、および上咽頭における上皮細胞の受容体へのインチミンの結合を促進する、his−インチミンを用いる鼻腔内接種が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
his−インチミンを接種する場合、このタンパク質をゲルカプセルもしくはリポソーム内に納めるか、または不活性物質に結合させて接種物が胃を通過するのを助ける。この融合タンパク質は酸安定性であるため、それ自体でも摂取され、または食物製品に混合してもよい。好ましい投与方法は、his−インチミンおよびSLT(志賀毒素様毒素)の融合タンパク質でのものである。his−インチミン−SLT融合タンパク質は、SLTの受容体を有するSYNSORB(シンソーブ・バイオテック社(SynSorb Biotech,Inc.)、1204ケンジントン・ロード、N. W.、カルガリー、アルバータ、カナダ、T2N3P5)にSLT−受容体相互作用により結合する。このSYNSORB構築物をチョコレートプディングと混合し、子供に与える。
【0096】
精製RiHisEae(His−タグ付きEae、900/935アミノ酸)は、(pMW103によってコードされる)インチミンの第3の1/3部分と同様に、pH2.0、37℃で24時間のインキュベーションの後でも安定である。これは、His−Eae融合体が無傷で、または分解されることなく胃を通過することが可能であることを示す。さらに、自然状態においては、Eaeは細菌の外膜上に発現し、かつ胃を通過した後であっても依然としてインチミンの接着を促進するが、これは酸性環境に対するその耐性を示す。
【0097】
摂取または鼻腔内接種は局部的な免疫を刺激し、これはEHECおよびEPECによる将来的なコロニー形成を妨げる。相同性による交差免疫は、ハフィナ・アルベイ(Hafnia alvei)およびシトロバクター・ロデンチウム(Citrobacter rodentium)、エルシニア種(Yersinia sp.)およびインチミン様タンパク質を有する他の細菌種に対して刺激される。インチミン関連タンパク質を発現するEHEC以外の細菌による感染に対する防御免疫応答から利益を得るためにインチミンの投与によってもたらされる交差免疫の程度を定量する必要はないが、そのような防御のアッセイは実施例IXに説明している。このアッセイは、インチミン様の結合タンパク質を有することが知られる病原体による上皮細胞との相互作用の遮断に対するインチミン抗体の効力の評価を可能にする。
【0098】
別の態様においては、雌ウシの乳房へhis−インチミンを注射することにより雌ウシの免疫応答が生じる。このタンパク質に対する抗体はその雌ウシの乳中に存在する。この乳を飲む仔ウシは、それらを選り抜きの方法で能動的に免疫感作できるようになるまで受動的に免疫感作される。あるいは、his−インチミンを雌ウシに給餌、または雌ウシの餌に導入することができる。このように導入されるhis−インチミンの存在により雌ウシにおける抗体応答が刺激され、それにより抗体が産生されてその雌ウシの乳中に現れる。
【0099】
別の態様は核酸ワクチンの投与を包含する。His−インチミンを裸のeae DNAとして患者に注射し、またはそのDNAをレトロウイルス、アデノウイルス、もしくは当該技術分野において公知の他の担体等の担体系により身体に送達する。投与の後、患者は一時的に発現する外来抗原に対する免疫応答を高める。
【0100】
現在、一般に、核酸ワクチンは臨床試験に近づいている。このワクチンへのアプローチは、所望の抗原をコードするDNAを、この遺伝子を非複製プラスミドベクターに挿入することによって宿主に送達することを包含する(Marwick, C. JAMA 273:1403 (1995);Vogel, F. R.およびN. Sarver.Clin. Microbiol. Rev. 8:406 (1995)に略述されている)。
【0101】
このようなワクチンの防御効力の最初に公開された例証は、インフルエンザAウイルス(A/PR/8/34)核タンパク質(NP)をコードするプラスミドDNAの筋肉内注射がBALB/cマウスにおいてインフルエンザウイルスの異種株(A/HK/68)に対する防御免疫応答を誘発することを示している(Ulmer, J. B.ら, Science259:1745 (1993))。免疫感作された動物は、抗原投与された対照マウスと比較して、それらの肺におけるウイルス力価が減少し、体重の喪失が低下し、かつ生存率が増加していた。NP−特異的細胞毒性Tリンパ球(CTL)およびNP抗体の両者が生成した。NP抗体は防御の付与では無効であったが、CTLはウイルス感染細胞および割り当てられた主要組織適合複合体クラスI制限ペプチドエピトープでパルス処理された細胞を殺した。
【0102】
別の研究は、インフルエンザウイルスA/PR/8/34血球凝集素をコードするプラスミドDNAの筋肉内注射が、異種致死的インフルエンザウイルスの抗原投与に対してマウスを防御する中和抗体の産生を生じることを示している(Montgomery, D. L.ら DNA Cell Biol.12:777 (1993))。
【0103】
この方法による本発明の実施は、本明細書に参考として援用する前述の文献、特にMontgomery, D. L.ら DNA Cell Biol. 12:777(1993)を参照することにより達成することができる。eae遺伝子座は、制限部位に基づいて、およびCL8株については図3におけるその配列に基づき、かつ図4に示される933株におけるその配列に基づいて、図5に示される。
実施例VIII
A.Eaeおよび結合した抗原の両者に対する免疫応答を誘発するための、His−インチミンへの様々な病原体に由来する抗原の結合
様々な病原体に由来する抗原(Ag)およびハプテンを、ヒスチジン−タグ付きインチミン分子に結合する。この融合タンパク質を、インチミンが腸上皮細胞への結合を標的とする担体として機能する接種物として用いる。この結合体タンパク質は以下の配置のいずれかで設計することができる:N−His−インチミン−Ag−C、N−Ag−インチミン−His−C、N−His−Ag−インチミン−C、N−インチミン−Ag−His−C、N−インチミン−His−Ag−C、またはN−Ag−His−インチミン−C。
【0104】
当業者によって認識されるように、インチミンのサイズは融合させようとする抗原のサイズおよびインチミンが融合する抗原の数に応じて変化する。このような融合タンパク質の設計において考慮される可変要素は:(1)外来抗原;(2)用いられるインチミンのサイズ、これは、上述のように、結合機能を保持するいかなるサイズであってもよい;(3)融合順序N→C;および(4)結合方法、例えば、さらなる方法が当業者に容易に明らかではあるが、融合タンパク質のクローン化および発現におけるもののような遺伝的方法、および化学的方法である。(D. V. Goeddel,「異種遺伝子発現のための系(Systems for Heterologous Gene Expression)」, Meth.Enzymol., 第185巻, AcademicPress, New York,1990;K. Itakura, 「大腸菌におけるホルモン・ソマトスタチンの化学的に合成された遺伝子の発現(Expression in E. coli of a chemically synthesized gene for the hormone somatostatin)」, Science, 198:1056-1063 (1977);およびD. V. Goeddelら, 「ヒトインシュリンの化学的に合成された遺伝子の発現(Expression of chemically synthesized genes for humaninsulin)」, Proc. Natl.Acad. Sci. USA, 281:544-548 (1979))。
【0105】
この結合抗原の送達は、上記実施例VIIで説明するヒスチジン−タグ付きインチミン単独でのものと同じ機構を用いてなされる。
【0106】
ハプテンおよび抗原は、細菌、リケッチア、真菌、ウイルス、寄生虫、薬物、または化学物質から誘導することができるが、これらに限定されるものではない。これらには、例えば、ペプチド、オリゴ糖、および毒素のような小分子が含まれる。粘膜表面に吸収される能力を有する特定の抗菌剤、化学療法剤もインチミンに結合させることができる。インチミンに結合し、防御免疫応答を刺激するために投与することができる抗原および多糖には、下記表1に示されるものが含まれ得る。
【0107】
【表1】

【0108】
表1に見られる抗原に結合させることができるhis−インチミンのサイズには、上記実施例Iに示されるように、RIHisEae(900/935aa、pEB313のEcoRI−HindIII断片)およびRVHindHis(604/935aa、pEB313のEcoRV−HindIII断片)が含まれる。当業者は、本発明の思想および範囲内で接着活性を有する様々な長さの断片をさらに選択することができることを認めるであろう。選択対象となる断片の効力は実施例IVに説明する手順に従って評価することができる。
B.N−His−IcsA−インチミン−Cを発現するプラスミドの構築
フレクスナー赤痢(Shigella flexneri)は、ヒトの結腸粘膜の上皮細胞に侵入することにより桿菌性赤痢を引き起こす(Labrecら J. Becteriol. 88:1503-1518, (1964))。IcsAと呼ばれる120kDa外膜タンパク質がこの微生物の細胞内および細胞間伝播に必要である(Bernardiniら Proc.Natl. Acad. Sci. USA. 86:3867-3871 (1989);Lettら J. Bacteriol. 171:353-359, (1989))。経口感染したマカクザルはiscA変異体(SC560)に適度に十分寛容であり、この変異体は相同抗原投与に対する防御を誘発した(Sansonettiら Vaccine9:416-422, 1991)。
【0109】
以下のプロトコルを用いることができる(図18):
pEB313でdam宿主、例えばDM1(Gibco BRL、P.O. Box 68、グランドアイランド、N. Y. 14072、1−800−828−6686)を形質転換する。pEB313/ClaI/HindIIIを消化し、1796bpの断片を単離する(この断片はインチミンの最後の547個のアミノ酸をコードする)。pBluescriptSK+/ClaI/HindIII(pBluescriptSK+はストラタジーン、11011N トレイ・パインス・ロード、ラヨラ、CA. 92037、1−800−424−5444)に連結する。これをプラスミドpEae1と呼ぶ。pHS3192をAvaIで消化し、その末端をクレノウ断片で充填し、ClaIで消化し、2490bpの断片を単離する[この断片は塩基対#706−3629の2923bp、すなわち974aaをコードする;icsAのORFはbp#574−3880にわたり、これは3306bpで1102aaをコードする;icsAの配列についての参考文献はLettら, J. Bacteriol. 171:353(1989)である](pHS3192はP.Sansonetti(参考文献Bernardini, M. L.ら Proc.Natl. Acad. Sci. USA. 86:3876(1989))から入手可能である)。2490bp断片をClaIおよびHincIIで消化したpEae1に連結して、pEae2と呼ばれるプラスミドを生成する。これらの制限酵素を用いると、icsAのリーディングフレームおよびeaeがフレーム内に残る。pEae2をXhoIおよびHindIIIで消化し、4286bpの断片を単離する;SmaIおよびHindIIIで消化したpQE32(QIAGEN)に連結する。この連結は両遺伝子の適切なリーディングフレームをプロモーターと共に維持する。生じるプラスミドをpIcsA−Eaeと呼ぶ。
【0110】
あるいは、PCRを用いるクローン化により2つの遺伝子をフレーム内で融合した後、適切なpQEベクターに連結することができる。この技術は当業者に公知である。
C.His−インチミンをタンパク質担体として用いる結合ワクチンの調製
いかなる多糖をも用いることができるが、このワクチンにおいてはチフス菌のカプセル状Vi多糖を用いる。His−インチミンを実施例IIと同様に精製する;これをVi(確立された手順(Szuら J. Exp. Med. 166:1510 (1987))に従ってチフス菌から精製したもの)に結合させる。この結合は、当業者に公知の標準タンパク質−多糖結合技術を用いて処理する。結合方法は当業者に公知であり、Brunswick, M.ら, J. Immunol.140:3364, 1988のヘテロ連結(heteroligation)技術が含まれる。タンパク質結合体の化学および架橋 CRC Press, ボストン(1991)も参照のこと。
【0111】
分子の一部を一次もしくは二次坦体に結合する技術は当業者に公知であり、部分的には、利用可能な官能基(例えば、アミノ、カルボキシル、チオおよびアルデヒド基)を介したカップリングが含まれる。S. S. Wong,タンパク質結合体の化学および架橋 CRC Press,ボストン (1991);およびBrenkeleyら, 染料とのタンパク質結合体を調製する方法の概略的な調査、ハプテンおよび架橋剤, Bioconjugate Chemistry 3#1 (1992年1月号)を参照。
【0112】
本実施例に説明するもののようなワクチンは、インチミン(またはインチミン様タンパク質)を発現する生物、およびViを発現する下痢病原体の両者を含む下痢病原体の予防をもたらす。
【0113】
インチミンと、他の下痢病原体からの他の抗原とのいかなる組み合わせも合わせることができる。加えて、他の疾患を生じる生物に由来する多糖、例えば肺炎球菌多糖、が用いられた場合、そのインチミン−多糖ワクチンは複数の疾患の予防に有用である。呼吸器病原体に対するワクチンは、好ましくは、気道に直接送達される;摂取された病原体は摂取による。
実施例IX
接着遮断抗−インチミン抗体の産生および試験:ポリクローナルおよびモノクローナル
RIHisEaeを、マウス、ウサギ、およびヤギに腹腔内注射することで高力価ポリクローナル抗−インチミン抗血清が誘発される。抗体力価の試験および抗体の有効性のアッセイを示す。また、モノクローナル抗体の産生も説明する。
A.ポリクローナル抗体の産生
様々な動物における全長インチミンまたはそれらの様々な部分に対する抗体の調製に様々な技術を用いることができる。これらの技術のうちの幾つかを以下に説明する。当業者によって認識されるように、ポリクローナル抗体は、インチミンおよびhis−タグ付けされていないインチミンの一部から、ならびにインチミン様タンパク質およびそれらの一部から産生することができる。
1.マウス抗−RIHisEaeポリクローナル抗体の産生
Harlow, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル(Antibodies - a Laboratory Manual) Cold SpringHarbor, New York (1988)の技術に従うことができる。一般的な手順は本明細書に略述されている。免疫感作するマウスの各々から予備採血する:尾の静脈からエッペンドルフ管に出血させる。37℃で30分間インキュベートし、(血塊をほぐすために)無菌の爪楊枝で穏やかに撹拌し、4℃で一晩保存する。その朝、微量遠心管中で10分/10,000rpm回転させ、血清(すなわち、上清;赤血球はペレットである)を集める。この血清を−20℃で保存する。得られた血清は、マウスを免疫感作した後の陰性対照として用いる。
【0114】
BALB/cマウスに、25μgのRIHisEaeを腹腔内注射する(タイタマックス(Titremax)アジュバントを、製造元(シトリックス社(CytRyx Corp.)、154 テクノロジー・パークウェイ、ノークロス、GA. 30092、800−345−2987)の指示に従って用いる)。2週間待って同一の注射で追加免疫感作し、7日待って尾の静脈からエッペンドルフ管に出血させる。37℃で30分間インキュベートし、(血塊をほぐすため)無菌の爪楊枝で穏やかに撹拌して4℃で一晩保存する。その朝、微量遠心管中で10分/10,000rpm回転させ、血清を回収する。この血清を−20℃で保存する。
2.マウス抗−インチミンポリクローナル血清第3の1/3部分の産生:
上述の実施例IX、パートAに説明するように、マウスを尾の静脈から予備採血する。上記実施例IIに説明するように、インチミンの第3の1/3部分を富化して透析する。実施例IX、パートAに説明するように、タイタマックスアジュバントと混合したインチミンの第3の1/3部分をマウスに注射する。3回の追加免疫感作の後、後眼窩洞(retro-orbital sinus)を介してマウスから採血し、実施例IX、パートAに説明する通りに血清を調製する。血清を、下記第4節においてヤギポリクローナル血清について説明する通りに、ウェスタンブロット分析により試験する。上記実施例IX、パートCに説明するように、HEp−2細胞へのEHECの接着を遮断する能力について血清をアッセイする。
3.ウサギポリクローナル抗−インチミン抗体の産生
ウサギポリクローナル血清を、インチミンの(1)第1の1/3、(2)第2の1/3、および(3)第3の1/3部分に対して産生させる。各々の特異的血清を、HEp−2接着性アッセイにおいて、HEp−2細胞へのEHECの接着を遮断する能力について別々にアッセイする。
ウサギの免疫感作のための、インチミンの第1の1/3部分の調製
クローンpMW101でDH5αF'lacIQ株を形質転換する。タンパク質の発現の誘発、およびNi−NTAアフィニティー樹脂でのHis−タグ付きインチミン断片の精製を、QIAエクスプレッショニストNi−NTA樹脂精製キット(QIAGEN社、チャッツワース、CA)に付属するQIAGENマニュアルに記述される通りに行う。溶出した画分を、A280、およびバイオ−ラッド(エルキュール(Hercules)、CA)からの染料試薬を用いるブラッドフォード分析により、タンパク質含量についてモニターする。Ni−NTAカラム(250mMイミダゾールを含む)から溶出したピーク画分を、分析および精製のため、SDSを含む15%ポリアクリルアミドゲルで電気泳動する。分析のためにゲル上のタンパク質を可視化するのに、銀(バイオ−ラッド)およびクーマシーブルーG−250(シグマ)染色の両者を用いる。
【0115】
動物の免疫感作用のタンパク質を精製して抗血清を得るため、ピークカラム画分を分離用SDSポリアクリルアミドゲルに流し、タンパク質を銅染色(バイオ−ラッド)で可視化する。インチミン断片に相当するタンパク質のバンドを清浄なカミソリの刃でゲルから切り出し、そのゲル薄片を銅染色試薬と共に提供される指示に従って脱染する。その後、エレクトロ−エリューター(Electro-Eluter)モデル422(バイオ−ラッド)を製造元の指示に従って用いてタンパク質をゲル薄片から溶出する。次いで、このタンパク質を、アミコン(Amicon)(ベヴァリー、MA)からのセントリコン−10(Centricon-10)濃縮器を用いて濃縮する。溶出したタンパク質サンプル中のSDSの大部分を2つの方法のうちの一方で除去する。第1の方法はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)をタンパク質サンプルに添加することを包含し、これはSDSの沈殿を引き起こす。タンパク質の大部分は沈殿せず、どのイオンが同様に沈殿し得たのかを決定するためにこの沈殿を分析することはない。SDSを遠心によりペレット化し;大部分のタンパク質および、おそらくは、幾らかの残留SDSを含む上清を除去し、アミコン(ベヴァリー、MA)からのセントリコン−10濃縮器を用いて濃縮する。
【0116】
SDSを除去するための第2の方法は、ピアス(ロックフォード、IL)から購入したエクストラクティ−ゲルRDデタージェント・リムービング・ゲル(Extracti-GelRDDetergent Removing Gel)のカラムを調製することを包含する。このエクストラクティ−ゲルRDデタージェント・リムービング・ゲルは製造元の指示に従って用いる。精製したタンパク質を上述の通りに濃縮する。タンパク質の濃度を、バイオ−ラッドから購入した染料試薬を用いるブラッドフォード分析により、および様々な量の元のカラム画分のアリコートに隣接したゲル上で異なる容量の精製タンパク質を流し、タンパク質の量を視覚的に比較することによっても決定する。この精製タンパク質の画分を、SDS−PAGEにより、銀およびクーマシー染色の両者を用いて分析する。
ウサギの免疫感作のための、インチミンの第2の1/3部分の調製
クローンpMW102から発現されたインチミンタンパク質のHis−タグ付き中間部1/3断片の精製を、N末端1/3に用いられるものと同じ方法を用いて、以下の指示に従って行う。SDS−PAGE分析を、12.5%アクリルアミドゲルを用いて行う。タンパク質のゲル精製および電気溶出(electrolution)のため、この分離用ゲルの大部分を上述のように銅染色で染色し;ゲルの1つは、Harlow, E.およびD.Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold SpringHarbor, New York (1988)に記述されるように水に溶解したクーマシーブリリアントブルーで染色した。PBSバッファを添加することにより、電気溶出タンパク質画分中の多量のSDSを沈殿させる。タンパク質を濃縮するには、アミコン・セントリコン−30濃縮器を用いる(アミコン)。
ウサギの免疫感作のための、インチミンの第3の1/3部分の調製
上記実施例IIに説明するように、第3の1/3インチミンタンパク質を富化して透析する。1mgのタンパク質を、SDS−PAGEにおいて、4つのバイオラッド・ミニプロテアンII(BioRad MiniProtean II)ゲル上に流す。タンパク質を、銅染色(バイオラッド、カタログ番号161−0470、リッチモンド、CA)を用いて、製造元の指示に従って以下のように負に染色する:ゲルをdH2Oで45秒間すすぎ、1×銅染色で5分間染色してdH2Oで3分間すすぐ。このゲルを黒色背景で可視化し、約37kDaのタンパク質バンドをゲルからカミソリで切断する。その後、精製したゲル薄片をバッファ(25mMトリス塩基、192mMグリシン、3×/10分)で脱染し、プラスチックラップに包み、免疫感作に先立って−20℃で保存する。
ウサギの免疫感作
ニュージーランド白色雌ウサギ(5ないし6ポンド)を、上述の通りに調製した抗原を用いて、当業者が容易に決定することができるスケジュールに従って別々に免疫感作する。このようなスケジュールの例は以下のようなものである:
日 手順
0 予備採血/初回接種、完全フロイントアジュバントと混合した100μgAg
14 追加免疫感作、50μg、不完全フロイントアジュバントと混合
21 追加免疫感作、50μg、不完全フロイントアジュバントと混合
35 試験採血
45 追加免疫感作、50μg、不完全フロイントアジュバントと混合
56 試験採血


注射経路は、複数の部位の皮下および/または筋内であり得る。試験採血から誘導される血清を、下記第4節においてヤギポリクローナル血清について説明するように、ウェスタンブロット分析により抗原の特異的認識について試験する。抗原の高力価認識が達成された場合、当業者によって認められるように、ウサギから全血を採取して抗体を回収する。多量の血液サンプルをウェスタンブロット分析により抗原の特異的認識について実証する。
ウェスタンブロットによるウサギ抗−インチミンポリクローナル血清のアフィニティ精製
ウサギ抗−インチミンポリクローナル血清をアフィニティー精製し、インチミンまたはインチミン様タンパク質に特異的ではない交差反応性抗体をその血清から除去する。(Harlowe, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988),498頁またはS. H. LillieおよびS. S. Brown. Yeast.3:63 (1987))。RIHisEae(0.250mg)をSDS−PAGE(サイズ:バイオラッド・ミニプロテアンIIミニゲル、バイオラッド、リッチモンド、CA)により電気泳動し、ニトロセルロースに移してポンソーS(Ponceau S)(シグマ、セントルイス、MO)で染色する。完全長His−インチミンバンド(約100kDa)を含むニトロセルロース細片をカミソリで切り出し、そのタンパク質を含むニトロセルロース細片を2%乳/TBS−0.2%Tween中において4℃で一晩、穏やかに振盪しながらインキュベートする。このニトロセルロース細片をTBS−Tweenで簡単に洗浄し、容器内のパラフィルム(Parafilm)(アメリカン・ナショナル・キャン(American NationalCan)、グリニッチ、Conn.)断片の上に置く。ウサギ血清をこのミニ−ウェスタンブロット上にピペットでのせ(適した量だけ、約400−500μl)、湿ったペーパータオルを収容されるニトロセルロース細片上に接触しないようにかけ、続いてプラスチックラップをかける。このブロットを穏やかに5時間振盪した後、血清(この時点で「欠乏血清」と呼ばれる)を取り出して分析用に保存する。細片をPBSで10分間、3回洗浄し、グリシンバッファ(150mM NaCl、pH2.3−HClを含む)を(この細片上に適した量だけ)添加して30分間おく。アフィニティー精製抗体をピペットで取り出し、1/10容量のトリス−HCl、pH8.0を添加する。その後、このようにして回収された抗体を1N NaOHで中和し、以下に説明するようにウェスタンブロット分析によって試験する。
抗原アフィニティカラムによるウサギ抗−インチミンポリクローナル血清のアフィニティ精製
ウサギ抗−インチミンポリクローナル血清をアフィニティー精製して、インチミンに特異的ではない交差反応性抗体を血清から除去する。インチミンまたはそれらの様々な部分に対して生じた抗血清を、抗原アフィニティーカラムを用い、当業者に公知の技術、例えば、Harlow, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988)に記述されるようなものを用いて精製する。
【0117】
抗原(インチミンまたはインチミンの一部)を上記実施例IIに説明するように富化する。抗原を、下記パート4に説明するように、アクリルアミドゲル上での電気泳動、続いてそのタンパク質を含むゲル薄片からの電気溶出によりさらに精製することができる。Ni−NTA樹脂から溶出した後にそのタンパク質をさらに精製するために、ゲル精製および電気溶出の代わりに他の方法を用いることができる。これらの方法には、イオン交換カラムクロマトグラフィーおよびゲル濾過クロマトグラフィーが含まれるが、これらに限定されるものではない。精製後、活性化ビーズにカップリングして抗血清精製用のアフィニティー樹脂を形成するため、インチミンタンパク質を適切なバッファに透析することが必要となることがある。
【0118】
抗原へのカップリングに適した活性化ビーズは、(Harlow, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988)に挙げられている)幾つかの特性(カップリング試薬、結合性基またはマトリックス、リガンドの結合、および最終マトリックスの安定性)に基づいて選択する。例えば、精製インチミン(またはインチミンの一部)タンパク質抗原を、製造元の指示に従ってアフィゲル(Affigel)ビーズ(バイオ−ラッド、リッチモンド、CA)にカップリングさせる。この抗原に結合した活性化ビーズのカラムを調製し、ビーズの製造元の指示に従って洗浄する。その後、このカラムをHarlow, E.およびD.Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold SpringHarbor, New York (1988)に記述される方法に従って洗浄する。
【0119】
硫酸アンモニウム沈殿を用いて、このアフィニティーカラム用の調製中の血清を部分的に精製する。硫酸アンモニウム沈殿、そのタンパク質ペレットのPBSへの再懸濁、PBSに対するその溶液の透析、およびその溶液を清澄化するための遠心はHarlow, E.およびD.Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold SpringHarbor, New York (1988)に記述される通りに行う。
【0120】
硫酸アンモニウム沈殿およびPBSに対する透析によって部分的に精製されている抗血清を、Harlow, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988)に記述されるように抗原アフィニティーカラムに通す。抗血清をこのカラムに複数回通すことで、抗体がカラムへより完全に結合し得る。その後、Harlow, E.およびD.Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold SpringHarbor, New York (1988)に記述されるようにカラムを洗浄し、アフィニティー精製抗体を溶出させてPBSに対して透析する。
接着性アッセイ
アフィニティー精製ポリクローナル血清を、HEp−2細胞接着性アッセイにおいて、HEp−2細胞への細菌結合を遮断する能力について、下記実施例IX、パートCに説明する方法を用いてアッセイする。
4.ヤギ抗−RIHisEaeポリクローナル抗体の産生
免疫感作しようとする可能性のあるヤギから予備採血する。間接真空を用いて、頸静脈から血液を集める。上記実施例IX、第A節に説明するように全血から血清を分離し、(下記実施例IX、第B節でELISAについて、および上記実施例IIでRIHisEaeの富化について説明するように)RIHisEaeを吸着剤として用いるELISAにより、または以下に説明するようなウェスタンブロット分析により試験する。免疫感作のために選択されるヤギは、(a)ウェスタンブロット分析による最低のインチミン認識および(b)ELISAによるインチミンに対する最低力価の両者を備える予備免疫血清を有し、放牧地を飛び出す習性のないヤギである。
ヤギ抗−RIHisEaeポリクローナル血清のウェスタンブロット分析
a.全細胞溶解物の生成
所望の株(例えば、86−24、86−24eaeΔ10、DH5α、M15pREP4pEB313)を、適切な抗生物質を含むLB中で、37℃で一晩、振盪しながら増殖させる。細胞(4.5ml)をエッペンドルフ管内でペレット化し、500μlの超音波処理バッファ(50mM Na−リン酸pH7.8、300mM NaCl)を添加する。細胞を氷上において15秒パルスで超音波処理し、等分して−20℃で凍結する。
b.ウェスタンブロット分析
上述の通りに生成した全細胞溶解物(2−5μl)または精製RIHisEae(2μl)をSDS−PAGEにかけ、ニトロセルロースに移し、ヤギ血清のウェスタンブロット分析に用いる。この目的のため、血清(一次抗体)を典型的には1:500または1:1000に希釈する。用いられる二次抗体は、1:2000に希釈した、セイヨウワサビペルオキシダーゼに結合したブタ抗−ヤギIgG(ベーリンガー・マンハイム、インディアナポリス、IN)である。予備採血のヤギ血清は通常数種類の交差反応性バンドを含んでおり、これらは後にアフィニティー精製によって除去する。
ヤギを免疫感作するための精製RIHisEae(抗原)の調製
上記実施例IIに説明する通りに産生させたRIHisEae 1mgを、分離用SDS−PAGEにかける。小さな分析レーンをコロイド状クーマシー染色(シグマ、セントルイス、MO)で染色し、残りの分離用ゲルとの比較に用いる。(染色されておらず、約100kDaに達する) 高分子量の完全長インチミンバンドを分離用ゲルからカミソリで切り出し、免疫感作に先立って4℃で保存する。
抗原でのヤギの免疫感作
雌ヤギ(約1歳半、サーナン(Saanan)純血種またはサーナンX LaMANCHA)を、上述の通りに調製した抗原を用いて、当業者が容易に決定することができるスケジュールに従って別々に免疫感作する。例えば、完全フロイントアジュバントと混合した調製RIHisEae 500μgの一次免疫感作をヤギに行う。2週間隔で、不完全フロイントアジュバントと混合したAg 250μgでヤギに追加免疫感作する。ヤギを1ヶ月間免疫感作した後に試験採血を開始し、上述のウェスタンブロット分析による決定で高抗−インチミン力価が達成されるまで継続する。血清がウェスタンブロットによりインチミンを認識する場合、2週間間隔で各セッション毎に多量の血液サンプルを採取する(500ml、これから約250mlの血清が生じる)。得られる大量血清サンプルを、上述のように、ウェスタンブロット分析により、インチミン認識について立証する。
ウェスタンブロットによるヤギ抗−インチミンポリクローナル血清のアフィニティ精製
ヤギ抗−インチミンポリクローナル血清をアフィニティー精製し、インチミンに特異的ではない交差反応性抗体を血清から除去する(Harlowe, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988),498頁またはS. H. LillieおよびS. S. Brown. Yeast.3:63 (1987))。RIHisEae(0.250mg)をSDS−PAGE(サイズ:バイオラッド・ミニプロテアンIIミニゲル、バイオラッド、リッチモンド、CA)により電気泳動し、ニトロセルロースに移し、ポンソーS(シグマ、セントルイス、MO)で染色する。完全長His−インチミンバンド(約100kDa)を含むニトロセルロース細片をカミソリで切り出し、そのタンパク質を含むニトロセルロース細片を2%乳/TBS−0.2%Tween中において4℃で一晩、穏やかに振盪しながらインキュベートする。このニトロセルロース細片をTBS−Tween中で簡単に洗浄し、容器内のパラフィルム(アメリカン・ナショナル・キャン、グリニッチ、Conn.)断片の上に置く。ヤギ血清をこのミニ−ウェスタンブロット上にピペットでのせ(適量だけ、約400−500μl)、湿ったペーパータオルを収容されるニトロセルロース細片上に接触しないようにかけ、続いてプラスチックラップをかける。このブロットを穏やかに5時間振盪した後、血清(この時点で「欠乏血清」と呼ばれる)を取り出して分析用に保存する。細片をPBS中で10分間、3回洗浄し、グリシンバッファ(150mM NaCl、pH2.3−HClを含む)を(この細片上に適した量だけ)添加して30分間おく。アフィニティー精製抗体をピペットで取り出し、1/10容量のトリス−HCl、pH8.0を添加する。その後、抗体を1N NaOHで中和し、上述のようにウェスタンブロット分析によって試験する。
抗原アフィニティカラムによるウサギ抗−インチミンポリクローナル血清のアフィニティ精製
ウサギ抗−インチミンポリクローナル血清をアフィニティー精製してインチミンに特異的ではない交差反応性抗体を血清から除去する。インチミンまたはそれらの様々な部分に対して生じた抗血清を、抗原アフィニティーカラムを用い、当業者に公知の技術、例えば、Harlow, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988)に記述されるような技術を用いて精製する。
【0121】
抗原(インチミンまたはインチミンの一部)を上記実施例IIに説明するように富化する。抗原を、下記パート4に説明するように、アクリルアミドゲル上での電気泳動、続いてそのタンパク質を含むゲル薄片からの電気溶出によりさらに精製することができる。Ni−NTA樹脂から溶出した後にそのタンパク質をさらに精製するために、ゲル精製および電気溶出の代わりに他の方法を用いることができる。これらの方法には、イオン交換カラムクロマトグラフィーおよびゲル濾過クロマトグラフィーが含まれるが、これらに限定されるものではない。精製後に、活性化ビーズにカップリングして抗血清精製用のアフィニティー樹脂を形成するため、インチミンタンパク質を適切なバッファに透析することが必要となることがある。
【0122】
抗原へのカップリングに適した活性化ビーズは、(Harlow, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988)に挙げられている)幾つかの特性(カップリング試薬、結合性基またはマトリックス、リガンドの結合、および最終マトリックスの安定性)に基づいて選択する。例えば、精製インチミン(またはインチミンの一部)タンパク質抗原を製造元の指示に従ってアフィゲルビーズ(バイオ−ラッド、リッチモンド、CA)にカップリングさせる。この抗原に結合した活性化ビーズのカラムを調製し、ビーズの製造元の指示に従って洗浄する。その後、このカラムをHarlow, E.およびD.Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold SpringHarbor, New York (1988)に記述される方法に従って洗浄する。
【0123】
硫酸アンモニウム沈殿を用いて、このアフィニティーカラム用の調製中の血清を部分的に精製する。硫酸アンモニウム沈殿、そのタンパク質ペレットのPBSへの再懸濁、およびPBSに対するその溶液の透析、ならびにその溶液を清澄化するための遠心はHarlow, E.およびD.Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold SpringHarbor, New York (1988)に記述される通りに行う。
【0124】
硫酸アンモニウム沈殿およびPBSに対する透析によって部分的に精製されている抗血清を、Harlow, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988)に記述されるように抗原アフィニティーカラムに通す。抗血清をカラムに複数回通すことで、抗体がカラムへより完全に結合し得る。その後、Harlow, E.およびD.Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold SpringHarbor, New York (1988)に記述されるようにカラムを洗浄し、アフィニティー精製抗体を溶出させてPBSに対して透析する。
接着性アッセイ
アフィニティー精製ポリクローナル血清を、HEp−2細胞接着性アッセイにおいて、HEp−2細胞への細菌結合を遮断する能力について、下記実施例IX、パートCに説明する方法を用いてアッセイする。
B.抗体の力価を試験するためのELISA
Harlow, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988)の技術に従うことができる。一般的な手順を以下に略述する:
(1)RIHisEaeを、プラスチックマイクロタイタープレートに、PBS中50ng/ウェルで結合させる。2時間/RT(室温)、または4℃で一晩インキュベートする。
(2)プレートをPBSで2回洗浄する。
(3)100μlのブロッキング溶液[PBS中の3%ウシ血清アルブミン(シグマ・ケミカル、セントルイス、MO)、0.02%ナトリウムアジド(シグマ)、4℃で貯蔵]を用いてRTで1−2時間ウェルをブロックする。
(4)プレートをPBSで2回洗浄する。
(5)一次Ab=ブロッキング溶液で、例えば、1:50から出発して1:2希釈を11回、または1:50から出発して1:10希釈を11回行って希釈した50μl試験血清)、2時間/RTでインキュベートする。
(6)PBSで4回洗浄する。
(7)二次Ag=アフィニティー精製したヤギセイヨウワサビ結合抗−マウスIg(ベーリンガー・マンハイム社、9115ハーグ・ロード、P. O. Box 50414、インディアナポリス、IN. 46250、800−262−1640)。アジドを含まないブロッキング溶液で1:500に希釈した二次Abを添加する。1時間/RTでインキュベートする。
(8)PBSで4回洗浄する。
(9)各ウェルに100μlのTMBペルオキシダーゼ基質(製造元のバイオラッド・ラブス、3300レガッタ・ブルバード、リッチモンド、CA. 94804の指示に従って調製)を添加する。青色を発色させる(10分以下)。100μlのH2SO4で反応を停止させる。プレートを450nmで読みとる。
【0125】
力価を、吸光値≧マウス予備免疫血清について得られるものを0.2単位以上上回るものと定義する。
【0126】
抗−インチミン抗体を投与して、受動免疫防御を必要とする患者にそれらをもたらすことができる。さらに、動物から得られた抗−インチミン抗体をヒトに対して臨床的に用いることができる。このような場合、その抗体をヒト化することが好ましい。そのような技術は当業者に公知である。G. Winterら, 「人造抗体(Man-made antibodies),」 Nature, 349:293-299 (1991);P. T. Jonesら,「ヒト抗体における相補性決定領域のマウス由来のものでの置換(Replacingthe complementarity-determing regionsin a human antibody with those from a mouse),」Nature, 321:522-525 (1986);P. Carterら, 「ヒト癌治療のための抗−p185HER2抗体のヒト化(Humanization of an anti-p185HER2 antibody for human cancertherapy),」 Proc. Natl.Acad. Sci. USA, 89:4285-4289 (1992)。このような抗体を感染患者の兄弟に投与して兄弟の感染の危険を減らすことができる。
C.抗−RIHisEaeポリクローナル血清のウェスタンブロット分析
ポリクローナル血清をウェスタンブロット分析によってアッセイしてインチミン認識を立証する。
1.全細胞溶解物の産生
所望の株(例えば、86−24、86−24eaeΔ10、DH5α、M15 pREP4 pEB313)を適切な抗生物質を含むLB中において、37℃で一晩、振盪しながら増殖させる。細胞(4.5ml)をエッペンドルフ管内でペレット化し、500μlの超音波処理バッファ(50mM Na−リン酸pH7.8、300mM NaCl)を添加する。細胞を氷上において15秒パルスで超音波処理し、等分して−20℃で凍結する。
2.ウェスタンブロット分析
上述の通りに生成した全細胞溶解物(2−5μl)または精製RIHisEae(2μl)をSDS−PAGEにかけ、ニトロセルロースに移し、血清のウェスタンブロット分析に用いる。この目的のため、血清(一次抗体)を典型的には1:500または1:1000に希釈する。二次抗体は一次抗体の源である動物に特異的であり、かつセイヨウワサビペルオキシダーゼに結合している。予備採血の血清は数種類の交差反応性バンドを含んでいることがあり、これらは後にアフィニティー精製によって除去する。
D.ウェスタンブロットによる抗−インチミンポリクローナル血清のアフィニティー精製
抗−インチミンポリクローナル血清をアフィニティー精製し、インチミンに特異的ではない交差反応性抗体を血清から除去する(Harlowe, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988),498頁またはS. H. LillieおよびS. S. Brown. Yeast.3:63 (1987))。RIHisEae(0.250mg)をSDS−PAGE(サイズ:バイオラッド・ミニプロテアンIIミニゲル、バイオラッド、リッチモンド、CA)により電気泳動し、ニトロセルロースに移してポンソーS(シグマ、セントルイス、MO)で染色する。完全長His−インチミンバンド(約100kDa)を含むニトロセルロース細片をカミソリで切り出し、そのタンパク質を含むニトロセルロース細片を2%乳/TBS−0.2%Tween中において4℃で一晩、穏やかに振盪しながらインキュベートする。このニトロセルロース細片をTBS−Tween中で簡単に洗浄し、容器内のパラフィルム(アメリカン・ナショナル・キャン、グリニッチ、Conn.)断片の上に置く。血清をこのミニ−ウェスタンブロット上にピペットでのせ(適量だけ、約400−500μl)、湿ったペーパータオルを収容されるニトロセルロース細片上に接触しないようにかけ、続いてプラスチックラップをかける。このブロットを穏やかに5時間振盪した後、血清(この時点で「欠乏血清」と呼ばれる)を取り出して分析用に保存する。細片をPBSで10分間、3回洗浄し、グリシンバッファ(150mM NaCl、pH2.3−HClを含む)を(この細片上に適した量だけ)添加して30分間おく。アフィニティー精製抗体をピペットで取り出し、1/10容量のトリス−HCl、pH8.0を添加する。その後、抗体を1N NaOHで中和し、上述のようにウェスタンブロット分析によって試験する。
E.抗原アフィニティーカラムによる抗−インチミンポリクローナル血清のアフィニティー精製
ウサギ抗−インチミンポリクローナル血清をアフィニティー精製してインチミンに特異的ではない交差反応性抗体を血清から除去する。インチミンまたはそれらの様々な部分に対して生じた抗血清を、抗原アフィニティーカラムを用い、当業者に公知の技術、例えば、Harlow, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988)に記述される技術を用いて精製する。
【0127】
抗原(インチミンまたはインチミンの一部)を上記実施例IIに説明するように富化する。抗原を、下記パート4に説明するように、アクリルアミドゲル上での電気泳動、続いてそのタンパク質を含むゲル薄片からの電気溶出によりさらに精製することができる。Ni−NTA樹脂から溶出した後にそのタンパク質をさらに精製するために、ゲル精製および電気溶出の代わりに他の方法を用いることができる。これらの方法には、イオン交換カラムクロマトグラフィーおよびゲル濾過クロマトグラフィーが含まれるが、これらに限定されるものではない。精製後、活性化ビーズにカップリングして抗血清精製用のアフィニティー樹脂を形成するため、インチミンタンパク質を適切なバッファに透析することが必要となることがある。
【0128】
抗原へのカップリングに適する活性化ビーズは、(Harlow, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988)に挙げられている)幾つかの特性(カップリング試薬、結合性基またはマトリックス、リガンドの結合、および最終マトリックスの安定性)に基づいて選択する。例えば、精製インチミン(またはインチミンの一部)タンパク質抗原を製造元の指示に従ってアフィゲルビーズ(バイオ−ラッド、リッチモンド、CA)にカップリングさせる。この抗原に結合した活性化ビーズのカラムを調製し、ビーズの製造元の指示に従って洗浄する。その後、このカラムをHarlow, E.およびD.Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold SpringHarbor, New York (1988)に記述される方法に従って洗浄する。
【0129】
硫酸アンモニウム沈殿を用いて、このアフィニティーカラム用の調製中の血清を部分的に精製する。硫酸アンモニウム沈殿、そのタンパク質ペレットのPBSへの再懸濁、およびPBSに対するその溶液の透析、ならびにその溶液を清澄化するための遠心はHarlow, E.およびD.Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold SpringHarbor, New York (1988)に記述されるように行う。
【0130】
硫酸アンモニウム沈殿およびPBSに対する透析によって部分的に精製されている抗血清を、Harlow, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988)に記述されるように抗原アフィニティーカラムに通す。抗血清をカラムに複数回通すことで、抗体がカラムへより完全に結合し得る。その後、Harlow, E.およびD.Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold SpringHarbor, New York (1988)に記述されるようにカラムを洗浄し、アフィニティー精製抗体を溶出させてPBSに対して透析する。
F.インチミンに対する抗体による細菌結合の遮断についてのアッセイ
EHEC接着に対する抗−インチミン抗体の効果を評価するため、マウス、ウサギ、またはヤギ抗−インチミン抗血清(または対照として正常血清)を接着培地に懸濁したEHEC細菌に添加し、その細菌−抗血清混合液をHEp−2細胞の感染に先立って37℃で30分間インキュベートする。抗血清はアッセイを通してその接着培地中に維持する。接着および関連後遺症を、上述のようにギムザ(GIEMSA)およびFITC−ファロイジン(FAS)を用いて顕微鏡で観察する。
【0131】
インチミン様タンパク質を有する他の細菌の接着に対する抗−インチミン抗体の効果を評価するため、マウス、ウサギ、またはヤギ抗−インチミン抗血清(または対照として正常血清)を接着培地に懸濁したEHEC細菌に添加し、その細菌−抗血清混合液をHEp−2細胞の感染に先立って37℃で30分間インキュベートする。
【0132】
本発明の他の態様は、本明細書およびここに開示される本発明の実施を考慮することにより当業者には明らかであろう。本明細書および例は例示するだけのものであると見なされ、本発明の真の範囲および思想は以下の請求の範囲によって示されるものであることが意図されている。
G.インチミンに特異的なモノクローナル抗体の産生
インチミンに対するモノクローナル抗体を、EHEC(またはインチミン様タンパク質を発現する細菌)によるコロニー形成に対する患者の受動防御に用いる。モノクローナル抗体をマウス細胞から産生させ、これらの抗体の特異性をヒトにおいて用いるために変更する。G. Winterら,「人造抗体,」 Nature, 349:293-299 (1991);P. T. Jonesら,「ヒト抗体における相補性決定領域のマウス由来のものでの置換,」 Nature, 321:522-525 (1986);P. Carterら, 「ヒト癌治療のための抗−p185HER2抗体のヒト化,」 Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 89:4285-4289 (1992)。モノクローナルAbは患者に投与するためのより「純粋な」抗体を表す。
1.抗−Eaeモノクローナル抗体の産生
抗−インチミンモノクローナル抗体の産生方法の2つの例を以下に説明する。
a.方法1
抗−Eae mAbの産生
Harlow, E.およびD. Lane,抗体, 実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988)に略述される手順を修正してそれに従う。9週齢雌BALB/c(ハーラン・スプラーク−ドーリー(Harlan Spraque-Dawley)、インディアナポリス、IN)をモノクローナル抗体の作製に用いる。免疫感作に先立ち、各々のマウスから後眼窩洞を介して血清サンプルを得る。この全血を微量遠心管に入れて4℃で4ないし16時間冷却する。全血を1000−1200×gで15分間、10−15℃で遠心することにより血清を調製する。この血清をマイクロピペッタおよび無菌のピペットチップを用いて新たな微量遠心管に移す。血清を使用時まで−20℃で保存する。
【0133】
上記実施例IIに説明するように得たRIHisEaeのSDS−PAGEゲルから抗原を得る。上記実施例IX、A節、パート4に説明するように、高分子量インチミンバンドをカミソリで切り出す。この目的のため、1mgのRIHisEaeを4つのミニプロテアンIIゲル(バイオラッド、リッチモンド、CA)上に流す。これらのゲルから切り出したタンパク質を、乳鉢および乳棒を用いて、約8mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のスラリーとする。実験日第0日に、このスラリーの0.8mlを1.2mlの完全フロイントアジュバント(CFA)と混合し、0.2mlアリコートを4匹のマウスの各々に皮下注射する。このスラリーの0.5mlを0.5mlのRIBI T−700アジュバント(RIBIイムノケム(RIBI Immunochem)、ハミルトン、モンタナ州)と混合し、0.2mlを4匹のさらなるマウスの各々に注射する。
【0134】
実験日第21日および42日に、マウスに追加免疫感作注射を施す。CFAの代わりに不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いることを除いて、上述の通りに抗原を調製する。
【0135】
実験日第14日、第35日および第49日に、上述の通りに血清サンプルを得る。
【0136】
血清サンプルを(以下に説明する)イムノアッセイにより試験し、当業者に認識されるように、Eaeに対して最も強く応答する血清を産生するマウスを同定する。上記実施例IX、A節、パート4に説明するように、血清サンプルの反応性をウェスタンブロット分析により立証する。融合の3日前(実験日第59日)に、融合のために選択されたマウスを、PBS中のインチミンスラリーからの上清の50%混合物で免疫感作する。合計で0.1mlのこのスラリーを尾の静脈を介して静脈注射する。
【0137】
選択されたマウスからの脾臓細胞をSP2/0ミエローマ細胞(カタログ#CRL1581 アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、ロックビル、MD 20850、301−881−2600)と融合させる。この融合のためには、脾臓細胞10個に対してミエローマ1個の割合を用いる。融合はポリエチレングリコール(カタログ#783 641 ベーリンガー−マンハイム社、9115ハーグ・ロード、PO Box 50414、インディアナポリス、IN. 46250、800−262−1640)を用いることにより達成する。融合した細胞を増殖させるために96ウェル組織培養皿に分配する。この培養物をヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培地において10日間増殖させることによりハイブリドーマを選択する。以下に説明するように、イムノアッセイにより、抗−インチミン特異的抗体を分泌するハイブリドーマを96ウェル組織培養皿から同定する。Eaeと反応する抗体について陽性である培養物を24ウェル皿に移すことにより増大させ、イムノアッセイによりEaeとの反応性について再試験して、限界希釈により2回クローン化する。
マウスポリクローナル抗−インチミン血清およびハイブリドーマ上清(抗−インチミンモノクローナル抗体)のイムノアッセイ(ELISA)
免疫感作に用いたインチミンスラリー3ml部分を約1000×gで15分間、室温で遠心する。得られた清澄化上清のサンプルを用いてイムノアッセイプレートをコートする。簡単に述べると、このインチミン含有上清をPBS中に1:300に希釈し、コーティング抗体として用いる。ヌンク・マキシソープ・ストリップウェル(Nunc MaxisorpStripwell)を、室温で2−24時間100μl/ウェルの希釈上清でコートする。
【0138】
0.5%Tween−20を含むPBS(PBS−T)で4回洗浄して、未結合物質をウェルから洗浄する。血清サンプルのアッセイについては、各サンプルのPBS−T中での複数の希釈液を調製し、複製ウェルに加える。96ウェル皿培養物からの培養上清のアッセイについては、各上清をPBS−T中で1:2に希釈し、1つのウェルに加える。24ウェル皿培養物からの上清もPBS−T中で1:2に希釈し、二通り試験する。血清サンプルのアッセイには、バッファ対照、培地対照および既知のポリクローナル抗−インチミン対照が含まれる。上清のアッセイには、バッファ対照、培地対照、および既知のポリクローナル抗-インチミン対照が含まれる。
【0139】
血清および上清を通気のない環境において、室温で30−60分間、インチミンでコートされたウェル上でインキュベートし、PBS−Tで4回洗浄して未結合抗体および(血清タンパク質等の)外来性物質をウェルから洗浄する。その後、各ウェルに、PBS−T中で1:4000に希釈したウサギ抗−マウスIgG(ガンマ特異的)−HRP(ジムド(Zymed)、サウスサンフランシスコ、CA)100μlを加える。
【0140】
プレートを、再度、通気のない環境において室温で30−60分間インキュベートする。その後、各ウェルに100μlの1成分TMB基質溶液(カークガードおよびペリー・ラブス(Kirkegaard and Perry Labs)、ゲーサーズバーグ、MD20878、301−948−7755)を加える。反応を暗所において15分間進行させた後、80μl/ウェルのTMB停止試薬(カークガードおよびペリー・ラブス、ゲーサーズバーグ、MD20878、301−948−7755)を添加することにより停止させる。
b.方法2
Harlow, E.およびD. Lane,抗体、実験マニュアル Cold SpringHarbor, New York (1988)に略述される手順に従う:5匹の4ないし5週齢雌BALB/cJマウスを予備採血し、100μlのタイタマックス(TiterMax)に懸濁したRIHisEae 25μgを腹腔内投与して免疫感作する。2週間隔で2回、100μlのタイタマックスに懸濁したRIHisEae 25μgを腹腔内投与することでマウスを追加免疫感作する。各追加免疫感作の7日後、血液(約300−500μl)を尾の静脈から採取する。ELISAにより、抗−RIHisEae抗体の存在について血清をアッセイする(上述の通り)。
【0141】
高力価の抗−RIHisEaeを産生するマウスを、PBS 100μl中のRIHisEae 25μgを静脈内および腹腔内の両者で投与することで追加免疫感作し、3日後に屠殺して血清を回収する。脾臓細胞を単離し、Sp2/0−Agマウスミエローマ細胞(ATCC#CRL1581)にミエローマ細胞1個について脾臓細胞10個の割合で融合させる。融合した細胞を微量希釈プレートに分配し、培養上清を3−4週間の培養の後にELISAによりRIHisEae抗体についてアッセイする。抗−RIHisEae抗体の産生について陽性の培養物を増大させ、限界希釈により2回クローン化する。
2.抗−RIHisEae mAbが立体配置的エピトープを認識するのか、または直線状エピトープを認識するのかの決定
mAbの反応性を、1)天然RIHisEaeを吸着剤として用いるELISA;および2)変性させ、SDS−PAGEで分離したRIHisEaeの免疫ブロットによって比較する。mAbの幾つかのプールを得る:1)立体配置的なエピトープのみを認識し、かつELISAでは陽性反応を示すが免疫ブロット分析では示さないもの;2)直線状エピトープを認識し、かつ両アッセイにおいて反応するもの;および3)直線状エピトープを認識し、かつ免疫ブロット分析では陽性反応を示すがELISAでは示さないもの。加えて、非溶解細胞のコロニー免疫ブロットを行い、mAbが野生型86−24株の表面上に発現するEaeを認識するかどうかを決定する。
3.HEp−2細胞への86−24株の接着を遮断する能力についての抗−Eae mAbの試験
86−24株をHEp−2細胞に関する定量的接着性アッセイに処し、並行して、抗−RIHisEae mAbの様々な希釈液と予備インキュベートした細菌を用いて試験する。
【0142】
選択された接着遮断性の立体配置的mAbをアイソタイプ決定(イムノピュアmAbタイピングキット(immunopure mAb Typing Kit)、ピアス、ロックフォード、Ill.)に処す。その後、独特の抗体を、プロテインGセファロースカラム(ファルマシア、ピスカタウェイ、N. J.)でのアフィニティークロマトグラフィーによって精製する。得られたアフィニティー精製mAbをHEp−2細胞への86−24株の接着を遮断する能力について再試験し、その抗体が精製後に機能的なままであることを確かなものとする。
H.診断キットにおけるポリクローナルおよびモノクローナル抗−インチミン抗体の使用
インチミン発現性細菌、好ましくはEHECの検出に診断キットを用いることができる。このようなキットの調製および使用の一般的な説明は1995年3月10日出願の同時係属米国出願番号08/412,231号に示されており、この特許出願の開示は本明細書において参考として援用する。
実施例VIII
高力価ポリクローナル抗−インチミン抗血清を、タイタマックス・アジュバント(シトルクス社(CytRx Corp.)、154 テクノロジー・パークウェイ、テクノロジー・パーク/アトランタ、ノークロス、GA. 30092、800−345−2987)を用いて25μgのRIHisEaeをマウスおよびウサギに腹腔内注射することにより誘発する。抗体力価の試験および抗体の有効性のアッセイを示す。また、モノクローナル抗体も説明する。
A.ポリクローナル抗体の作製
Harlow, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988)の技術に従うことができる。一般的な手順は本明細書に略述されている。免疫感作するマウスの各々から予備採血する:尾の静脈からエッペンドルフ管に出血させる。37℃で30分間インキュベートし、(血塊をほぐすため)無菌の爪楊枝で穏やかに撹拌し、4℃で一晩保存する。その朝、微量遠心管において10分/10,000rpm回転させ、血清(すなわち、上清;赤血球はペレットである)を集める。この血清を−20℃で保存する。得られた血清を、マウスを免疫感作した後の陰性対照として用いる。
【0143】
BALB/cマウスに、(タイタマックス・アジュバントを用いて、製造元(シトリックス社、154 テクノロジー・パークウェイ、ノークロス、GA. 30092、800−345−2987)の指示に従って)25μgのRIHisEaeを腹腔内注射する。2週間待って同一の注射で追加免疫感作し、7日待って尾の静脈からエッペンドルフ管に出血させる。37℃で30分間インキュベートし、(血塊をほぐすため)無菌の爪楊枝で穏やかに撹拌して4℃で一晩保存する。その朝、微量遠心管において10分/10,000rpm回転させ、血清を集める。この血清を−20℃で保存する。
B.Abの力価を試験するためのELISA
Harlow, E.およびD. Lane(編)抗体−実験マニュアル Cold Spring Harbor,New York (1988)の技術に従うことができる。一般的な手順を以下に略述する:
(1)RIHisEaeを、PBS中50ng/ウェルで、プラスチックマイクロタイタープレートに結合させる。2時間/RT(室温)、または4℃で一晩インキュベートする。
(2)プレートをPBSで2回洗浄する。
(3)100μlのブロッキング溶液[PBS中の3%ウシ血清アルブミン(シグマ・ケミカル、セントルイス、MO)、0.02%ナトリウムアジド(シグマ)、4℃で貯蔵]を用いてRTで1−2時間ウェルをブロックする。
(4)プレートをPBSで2回洗浄する。
(5)一次Ab=ブロッキング溶液で、例えば、1:50から出発して1:2希釈を11回、または1:50から出発して1:10希釈を11回行って希釈した試験血清50μl)、2時間/RTでインキュベートする。
(6)PBSで4回洗浄する。
(7)二次Ag=アフィニティー精製したヤギセイヨウワサビ結合抗−マウスIg(ベーリンガー・マンハイム社、9115ハーグ・ロード、P. O. Box 50414、インディアナポリス、IN. 46250、800−262−1640)。アジドを含まないブロッキング溶液で1:500に希釈した二次Abを添加する。1時間/RTでインキュベートする。
(8)PBSで4回洗浄する。
(9)各ウェルに100μlのTMBペルオキシダーゼ基質(製造元、バイオラッド・ラブス、3300レガッタ・ブルバード、リッチモンド、CA. 94804の指示に従って調製)を添加する。青色を発色させる(10分以下)。100μlのH2SO4で反応を停止させる。プレートを450nmで読みとる。
【0144】
力価を、吸光値≧マウス予備免疫血清について得られるものを0.2単位上回るものと定義する。
【0145】
動物から得られた抗−インチミンAbを、その抗体の特異性をヒトに対して変換すれば、臨床的に用いることができる。そのような技術は当業者に公知である。G. Winterら,「人造抗体,」 Nature, 349:293-299 (1991);P. T. Jonesら,「ヒト抗体における相補性決定領域のマウス由来のものでの置換,」 Nature, 321:522-525 (1986);P. Carterら, 「ヒト癌治療のための抗−p185HER2抗体のヒト化,」 Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 89:4285-4289 (1992)。このような抗体を感染患者の兄弟に投与して兄弟の感染の危険を減らすことができる。
C.インチミンに対する抗体による細菌結合の遮断のアッセイ
EHEC接着に対する抗−インチミン抗体の効果を評価するため、マウスまたはウサギ抗−インチミン抗血清(または対照として正常血清)を接着培地に懸濁したEHEC細菌に添加し、その細菌−抗血清混合液を、HEp−2細胞の感染に先立って37℃で30分間インキュベートする。抗血清はアッセイを通してその接着培地中に維持する。接着および関連後遺症を、上述のようにギムザおよびFITC−ファロイジン(FAS)染色を用いて顕微鏡で観察する。
【0146】
インチミン様タンパク質を有する他の細菌の接着に対する抗−インチミン抗体の効果を評価するため、マウスまたはウサギ抗−インチミン抗血清(または対照として正常血清)を接着培地に懸濁したEHEC細菌に添加し、その細菌−抗血清混合液をHEp−2細胞の感染に先立って37℃で30分間インキュベートする。
【0147】
本発明の他の態様は、本明細書およびここに開示される本発明の実施を考慮することにより当業者には明らかであろう。本明細書および例は例示するだけのものであると見なされ、本発明の真の範囲および思想は以下の請求の範囲によって示されることが意図されている。
D.インチミンに対するモノクローナル抗体の産生
インチミンに対するモノクローナル抗体を、EHEC(またはインチミン様タンパク質を発現する細菌)によるコロニー形成に対する患者の受動防御に用いる。モノクローナル抗体をマウスの細胞から産生させ、これらの抗体の特異性をヒトにおいて用いるために変換する。G. Winterら,「人造抗体,」 Nature, 349:293-299 (1991);P. T. Jonesら,「ヒト抗体における相補性決定領域のマウス由来のものでの置換,」 Nature, 321:522-525 (1986);P. Carterら, 「ヒト癌治療のための抗−p185HER2抗体のヒト化,」 Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 89:4285-4289 (1992)。モノクローナルAbは患者に投与するためのより「純粋な」抗体を表す。
1.抗−Eae mAbの産生:
Harlow, E.およびD. Lane,抗体、実験マニュアル Cold SpringHarbor, New York (1988)に略述される手順に従う:5匹の4ないし5週齢雌BALB/cJマウスを予備採血し、100μlのタイタマックスに懸濁したRIHisEae 25μgを腹腔内投与して免疫感作する。2週間隔で2回、100μlのタイタマックスに懸濁したRIHisEae 25μgを腹腔内投与することでマウスを追加免疫感作する。各追加免疫感作の7日後、血液(約300−500μl)を尾の静脈から採取する。ELISAにより(上述の通り)抗−RIHisEae抗体の存在について血清をアッセイする。
【0148】
高力価の抗−RIHisEae抗体を産生するマウスを、PBS 100μl中のRIHisEae 25μgを静脈内および腹腔内の両者で投与することで追加免疫感作し、3日後に屠殺して血清を回収する。脾臓細胞を単離し、Sp2/0−Agマウスミエローマ細胞(ATCC#CRL1581)にミエローマ細胞1個について脾臓細胞10個の割合で融合させる。融合した細胞を微量希釈プレートに分配し、培養上清を3−4週間の培養の後にELISAによりRIHisEae抗体についてアッセイする。抗−RIHisEae抗体の産生について陽性の培養物を増大させ、限界希釈により2回クローン化する。
2.抗−RIHisEae mAbが立体配置的エピトープを認識するのか、または直線状エピトープを認識するのかの決定:
mAbの反応性を、1)天然RIHisEaeを吸着剤として用いるELISA;および2)変性させ、SDS−PAGEで分離したRIHisEaeの免疫ブロットによって比較する。mAbの幾つかのプールを得る:1)立体配置的なエピトープのみを認識し、かつELISAでは陽性反応を示すが免疫ブロット分析では示さないもの;2)直線状エピトープを認識し、かつ両アッセイにおいて反応するもの;および3)直線状エピトープを認識し、かつ免疫ブロット分析では陽性反応を示すがELISAでは示さないもの。加えて、非溶解細胞のコロニー免疫ブロットを行い、mAbが野生型86−24株の表面上に発現するEaeを認識するかどうかを決定する。
【0149】
HEp−2細胞への86−24株の接着を遮断する能力についての抗−EaemAbの試験:86−24株をHEp−2細胞に関する定量的接着性アッセイに処し、並行して、抗−RIHisEae mAbの様々な希釈液と予備インキュベートした細菌を用いて試験する。
【0150】
選択された接着遮断性の立体配置的mAbをアイソタイプ決定(イムノピュアmAbタイピングキット、ピアス、ロックフォード、Ill.)に処す。その後、独自の抗体を、プロテインGセファロースカラム(ファルマシア、ピスカタウェイ、N. J.)でのアフィニティークロマトグラフィーによって精製する。得られたアフィニティー精製mAbをHEp−2細胞への86−24株の接着を遮断する能力について再試験し、その抗体が精製後に機能的なままであることを確かなものとする。
実施例X
インチミンを発現させるための、様々な植物のアグロバクテリウム・ツメファシンス介在形質転換
植物を形質転換してインチミンまたはインチミンの機能的部分を発現させ、患者に摂取させる。当業者が認めるように、インチミンは実施例Iに説明するようにhis−タグ付けされていてもいなくてもよい。加えて、このインチミンは、インチミンおよび免疫応答の誘発が望まれる1以上の抗原を含む融合タンパク質であってもよい。(実施例VIIを参照)。
【0151】
あらゆる植物組織を本発明のベクターで形質転換することができる。本明細書中で用いる「器官形成」という用語は、シュートおよび根が成長点中心から連続的に発生するプロセスを意味する;本明細書中で用いる「体細胞性胚形成」という用語は、シュートおよび根が(連続的にではなく)協調的に一緒に発生するプロセスを意味する。例示的な組織標的には、葉ディスク、花粉、胚、体細胞胚、子葉、胚軸、雌性配偶体、カルス組織、既存の成長点組織(例えば、頂端分裂組織、腋芽、および根成長点)ならびに誘導された成長点組織(例えば、子葉成長点および胚軸成長点)が含まれる。
A.eae遺伝子を含むプラスミドの構築
この例ではベクター、pKYLX71S2(図17)を用いる。このベクターはケンタッキー州レキシントン、ケンタッキー大学作物学部(Dep. of Crop Science)のDavid Huntから得られるが、当業者は他の利用可能なベクターを使用もしくは構築できることを認めるであろう。このベクターは、カナマイシンin vivo選択可能マーカー遺伝子(NPTII)を含むアグロバクテリウム・ツメファシエンスバイナリーベクターである。バイナリーベクター系は2つのプラスミドを含む。腫瘍誘発性(Ti)プラスミドは、複数のクローニング領域に所望のコーディング領域が挿入されているDNA(t−DNA)を含む。他方のプラスミドは、t−DNAが植物細胞に侵入してそのゲノムに組み込まれることを可能にする毒性遺伝子であるvir遺伝子を含む。pKYLX71S2ベクターは所望のコーディング配列を倍加増強カリフラワーモザイクウイルス35S(CaMV 35S、または単に35S)プロモーターの制御下に配置する。この場合、倍加増強プロモーターは縦に並んだ2つのリボソームプロモーターである。
【0152】
アグロバクテリウムベクターは外来性遺伝子を様々な植物種に導入するのに有用であり、特には、双子葉植物の形質転換に有用である。様々なアグロバクテリウムベクターが公知である。例えば、Andersonの米国特許第4,536,475号、Schliperoortらの米国特許第4,693,977号;Sederoffらの米国特許第4,886,937号;T. Hallら、EPO出願第01222791号;R. Fraleyら,Proc. Natl. Acad.Sci. USA 84, 4803 (1983);L. Herrera-Estrellaら, EMBO J. 2, 987 (1987);G. Helmerら,Bio/Technology 2, 5201 (1984);N. Muraiら,Science 222, 476 (1983)を参照のこと。
【0153】
当業者に公知の組換え技術を用いて(上記実施例Iに説明するように得られる)his−eae遺伝子をベクターpKYLX71S2に連結し、植物形質転換ベクターpINT(図17)を作製する。
【0154】
(上記実施例Iに説明するように得られる)his−eae遺伝子をベクターpKYLX71S2に連結し、DNA構築物pINT(図17)を作製する。このような異種DNAを含むベクターは当業者に周知の組換え技術を用いて構築することができる。例えば、QIAGENDNA抽出キット(QIAGEN、チャッツワース、CA)を用いて(上記実施例Iに説明するように)pEB313からDNAを調製する。pEB313をXhoIおよびNheIで消化することによりhis−eae遺伝子を単離し、アガロースゲルで分離した後3174bpのeae含有バンドをカミソリで切り出す。ジーンクリーン(バイオ101、ラヨラ)を用いてアガロースから精製DNAを抽出し、XhoIおよびXbaIで消化したpKYLX71S2に連結する。連結したプラスミドでDH5αF'Tn5lacIQを形質転換し、形質転換体を適切な制限酵素で消化することにより挿入DNAの存在を立証する。実施例Iも参照のこと。公的に利用可能なあらゆるアグロバクテリウム・ツメファシエンス株を用いることができるが、LBA4404、GV3805またはEHA105株(インディアナ州ウェスト・ラフェイエット、パードュー大学(Purdue University)のStanley Gelvinから入手可能)が好ましい。カルシウム−塩素イオン、次いで凍結−解凍形質転換、電気穿孔法または当該技術分野に公知の他の方法を用いて、pINTプラスミドをA.ツメファシエンスに移入する。例えば、Hanahan, D., J. Mol. Biol. 166:577-80 (1983)を参照のこと。
B.タバコの形質転換
タバコはごく一般的に植物の形質転換のモデルとして用いられる。多くの経験的な研究によって確認されている一般的な仮定は、導入遺伝子がタバコにおいて発現する場合には、それは他の双子葉植物においても発現するであろうというものである。タバコが食用植物ではないことは認めるが、組換えインチミンがタバコにおいて産生される場合、それはアブラナのような食用植物において発現可能である。
【0155】
タバコ(ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum))の栽培品種「キサンチ(Xanthi)」を、標準的かつ効率的な感染プロトコル(Schardlら, Gene 61:1-11 (1987))を用いるアグロバクテリウム介在形質転換により形質転換する。簡単に述べると、直径5cmのタバコの葉ディスクを傷つけ、pINTを含むアグロバクテリウム・ツメファシエンスに晒す。組織培養において、器官形成法を用い、カナマイシン選別(200mg/L)の下で植物を再生する。
【0156】
200枚のタバコの0.5cm葉ディスクをpINTを含むアグロバクテリウム・ツメファシエンスに晒す。組織培養および植物再生条件はSchardlら 1987に従う。200mg/Lカナマイシン選別およびアグロバクテリウムを殺すための400mg/Lチメンチン(Timentin)の下で、傷つけた葉ディスクからシュートを直接形成する。この系は非常に効率的で漏れがない(非トランスジェニック「野生化植物」は非常に希である)。この実験から375のシュートを作製し、そのうちの120をホルモン非含有培地への根付けのために任意に選択する。全ての植物は形態学的に正常であり、繁殖性を有している。これらの結果は、この系を用いる典型的な形質転換能力内に入る。この高い形質転換頻度および植物が健常であるという事実は、インチミンが非毒性であり、その投与が正常な植物の発達および機能を妨げないことを示す。
【0157】
his−eaeが植物に安定に組み込まれることを決定するため、サザン(DNA)ブロット分析(Stewartら, PlantPhysiol. 112:121-129 (1996);Stewart, C. N., Jr.およびVia, L. E., Biotechniques 13:748-751 (1993)、その他)、PCR分析(Stewartら, PlantPhysiol. 112:121-129 (1996))およびウェスタン(タンパク質)ブロット分析(Stewartら, PlantPhysiol. 112:121-129 (1996))について公知の方法に従って葉の組織を処理する。サザンブロット分析は葉の組織のDNAにおけるeae遺伝子の存在を立証するために行う。PCR分析も同様にeae遺伝子の存在を確認するために行う。用いられるプライマーには上記実施例I、パートDにおいて述べられたものが含まれ得る。例えば、プライマーMW1(=5’ GTACGGATCCGAATTCATTTGCAAATGGTG 3’)およびMW2(=5’ GTACGGTACCTGATCAATGAAGACGTTATAG 3’)を用いる推定eae含有植物DNAのPCR増幅により、アガロースゲルでの分離で、予想される734bpのバンドが生じる。ウェスタンブロット分析は葉内部でのhis−インチミンの発現レベルを決定するために行う。his−インチミンの発現が全植物タンパク質の0.1%を超えたら、一工程ニッケルカラム精製(Stolzら, PlantJournal 6:225-233 (1994))を用いてhis−インチミンタンパク質を単離する。実施例IIの精製方法は代替法である。his−インチミンを実施例IIIに示す接着性アッセイに処して機能的な結合を立証する。
抽出物の調製
推定トランスジェニックタバコ植物から以下のようにしてタンパク質抽出物を回収する:500μlの抽出バッファ(20mlの0.5MトリスHCl pH8.0、4mlの0.5M EDTA pH8.0、36mlのグリセロール、20mlのβ−メルカプトエタノール)または500μlのリン酸バッファ(50mM Na−リン酸pH7.8、300mM NaCl)を0.2gの葉組織に加え、この混合物を氷上でホモジナイズした後、微量遠心管においてパルス回転することにより清澄化する。その上清を回収し、新鮮なエッペンドルフ管に入れて−70℃で保存する。タンパク質抽出物を、上記実施例IXに説明するモノクローナルまたはポリクローナル抗−インチミン抗体のいずれかを用いて、Stewartら, PlantPhysiol. 112:121-129 (1996)に記述されるウェスタンブロット分析により試験する。
【0158】
his−インチミンの発現がeaeの高アデニン(A)/チミン(T)含量によって妨げられる場合には、その遺伝子を本明細書に参考として援用するAdangら(Adangら、1993)に略述される方法を用いて再構築する。簡単に述べると、pINTに含まれるeaeのセグメントについて、そのヌクレオチド配列を分析してインチミン断片の各アミノ酸を指定するコドンを決定する。遺伝暗号の重複性を利用して、コドンを、そのコドンによって指定されるアミノ酸を変更することなくAまたはTがCまたはGに置き換わるように書き換える;これにより、例えば細菌由来の、異種DNAのコドンが植物細胞における発現に好ましいコドンに置き換わる。用いられる植物種のコドン優先度に従って好ましい置換を選択する。例えば、Murray, E. E.ら, NucleicAcids Res. 17 (2):477-498 (1989);Dinesh-Kumar, S. P.およびMiller, W. A., PlantCell 5 (6):679-692 (1993);Kumar, P. A.およびSharma, R. P., J. Plant Chemistry and Plant Biotechnol. 4 (2):113-115 (1995)を参照のこと。
【0159】
この合成遺伝子配列を200−300bpの領域に分割し、各領域についてオリゴヌクレオチドを合成する。オリゴヌクレオチドはアラバマ州ハンツビルのリサーチ・ジェネティクス(Research Genetics)によって合成される。他の多くの商用実験施設においてこれらのオリゴヌクレオチドを合成できることを当業者は認めるであろう。これらのオリゴヌクレオチドをAdangら PlantMol. Biol. 21:1131-1145 (1993)に説明される方法に従って連結し、再構築した遺伝子をpKYLX71S2に挿入する。得られたプラスミドpINTrecCAを用いて、好ましいアグロバクテリウム・ツメファシエンスLBA4404、GV3850またはEHA105株のいずれか1つを形質転換する。上に説明するように、タバコを形質転換して発現産物を分析する。
C.他の植物の形質転換
タバコは食用ではなく、したがって、安全に使用するために、タバコ植物において発現したインチミンは精製してアルカロイドを除去しなければならない。患者の通常の食事の一部であり、かつ容易に加工される植物が好ましい。例として、限定しようとするものではないが、ウシ、ブタ、およびヒツジについては、アブラナ(Stewartら、合成バシラス・ツリンギエンシス(Bacillusthuringiensis)Cryla(c)遺伝子を含むトランスジェニックアブラナ、ブラシカ・ナプスL.(アブラナ科)における昆虫の制御および用量効果(Stewartら, PlantPhysiol. 112:115-120 (1996))またはアルファルファ(Thomasら, PlantCell Rep. 14:31-36(1994))のいずれかを形質転換してインチミンまたはインチミン融合タンパク質を発現させることができる。ヒトについては、アブラナまたはニンジン(Drogeら、1992)を形質転換することができる。
【0160】
患者はインチミン含有植物または植物のインチミン含有部分を摂取するべきである。摂取される部分は植物の葉、根、果実、液果、種子、塊茎、球茎、花部、茎等、またはそれらの組み合わせであり得る。また、摂取される部分は、植物の派生物、例えば、微粉末、粗挽き粉、スラリー、浸出液、ペースト、ジュース、粉末、ケーク、ペレットとして植物から抽出することもできる。さらに、摂取される部分は、当該技術分野において一般に知られる技術に従って複合供給原料または食材に含めることができる。
【0161】
Haqら, Science, 268:714-716, 1995では、ETEC熱不安定性エンテロトキシンのBサブユニットをコードする遺伝子(LT−B)またはミクロソーム滞留配列を有するこの遺伝子(SEKDEL)を用いてトランスジェニックタバコおよびジャガイモ植物が作製されている。これらの植物の両者は融合タンパク質を発現し、これらは天然リガンドを結合するオリゴマーを形成した。LT−B−SEKDELを発現するタバコの葉の粗製可溶性抽出物をマウスに経管給餌すると、それらは血清および腸粘膜抗−LT−B免疫グロビンを産生し、これは細胞防御アッセイにおいてエンテロトキシンを中和した。LT−B−SEKDELを発現するジャガイモの塊茎を給餌したマウスもLT−Bに特異的な血清および腸粘膜免疫を生じた。
【0162】
本発明の実施において用いることができる植物には、タバコ(ニコチアナ・タバクム)、ジャガイモ(ソラヌム・ツベロスム(Solanum tuberosum))、ダイズ(グリシネ・マックス(glycine max))、ヒマワリ、落花生(アラキス・ヒポガエ(Arachis hypogaea))、綿(ゴスシピウム・ヒルスツム(Gossypium hirsutum))、サツマイモ(イポモエ・バタツス(Ipomoea batatus))、カッサバ(マニホト・エスクレンタ(Manihot esculenta))、コーヒー(コーヒー種)、ココナツ(ココス・ヌシフェラ(Cocos nucifera))、パイナップル(アナナス・コモスス(Ananas comosus))、柑橘類(シトルス(Citrus)種)、カカオ(テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao))、チャ(カメリア・シネンシス(Camellia sinensis))、バナナ(ムサ(Musa)種)、アボカド(ペルセア・アメリカナ(Persea americana))、イチジク(フィクス・カシカ(Ficus casica))、グアヴァ(シジウム・グアジャバ(Psidium guajava))、マンゴー(マンギフェラ・インディカ(Mangifera indica))、オリーブ(オレア・エウロパエ(Olea europaea))、パパイア(カリカ・パパヤ(Carica papaya))、カシュー(アナカルジウム・オクシデンタレ(Anacardium occidentale))、マカデミア(マカダミア・インテグリフォリア(Macadamia integrifolia))、アーモンド(プルヌス・アミグダルス(Prunus amygdalus))、サトウダイコン(ベタ・ブルガリス(Beta vulgaris))、トウモロコシ(ゼア・マイス(Zea mays))、コムギ、カラスムギ、ライムギ、オオムギ、イネ、野菜、観賞用植物、および針葉樹が含まれるが、これらに限定されない。野菜には、トマト(リコペルシコン・エスクレンツム(Lycopersicon esculentum))、レタス(例えば、ラクツエア・サティバ(Lactuea sativa))、グリーンビーンズ(ファセオルス・ブルガリス(Phaseolus vulgaris))、リラマメ(ファセオルス・リメンシス(Phaseolus limensis))、エンドウマメ(ピスム(Pisum)種)ならびにククミス(Cucumis)属の一員、例えばキュウリ(C.サチブス(C. sativus))、カンタロープ(C.カンタルペンシス(C. cantalupensis))、およびマスクメロン(C.メロ(C. melo))が含まれる。観賞用植物には、アザレア(ロドデンドロン(Rhododendron)種)、アジサイ(マクロフィルラ・ヒドランゲ(Macrophylla hydrangea))、ハイビスカス(ヒビスクス・ロササネンシス(Hibiscus rosasanensis))、バラ(ロサ(Rosa)種)、チューリップ(ツリパ(Tulipa)種)、スイセン(ナルシッサス(Narcissus)種)、ペチュニア(ペツニア・ヒブリダ(Petunia hybrida))、カーネーション(ジアンツス・カリオフィルス(dianthus caryophyllus))、ポインセチア(エウホルビア・プルケリマ(Euphorbia pulcherima)およびキクが含まれる。本発明を実施するために用いることができる裸子植物には針葉樹が含まれ、これにはマツ、例えば、テーダマツ(ピヌス・タエダ(Pinus taeda))、ベイマツ(シュードツガ・メンジエシイ(Pseudotsuga menziesii));ウェスタンヘムロック(Western hemlock)(ツガ・カナデンシス(Tsuga canadensis));シトカ・スプルース(Sitka spruce)(ピセア・グラウカ(Picea glauca));およびアメリカスギ(セコイア・セムペルビレンス(Sequoia sempervirens))が含まれる。
実施例XI
様々な植物、例えば、トウモロコシ、コムギ、およびイネ等の単子葉植物の遺伝子銃介在形質転換
植物を形質転換してインチミンまたはインチミン融合タンパク質を発現させる別の方法が提供される。実施例IXに説明するプラスミド、pINTを微小発射物(微粒子)上にコートする。具体的には、1μgのpINTを直径1ミクロンの金微粒子(シルバニア(Sylvania)から得られるバイオラッド・ラボラトリーズ(Biorad Laboratories)タングステン粒子を用いることもできる)10mg上にコートする。次に、108細胞のアグロバクテリウム・ツメファシエンス5μlをpINTでコートされた微小発射物上に上塗りする。この二重コート微小発射物1mgを製造元(バイオラッド・ラボラトリーズ)に従ってPDS 1000−He銃に装填する。この二重コート微小発射物を未成熟子葉から得たダイズ胚1gに1000psiで打ち込む。打ち込まれた胚を、組織培養において、カナマイシン(200mg/L)の選別下で増殖させる。それらを成熟させて発芽させ、動物、例えばブタに給餌する。
【0163】
同じ方法をバナナの形質転換に用いることができる。また、上記方法は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスを添加する工程なしで達成することもできる。
【0164】
eae遺伝子または所望の遺伝子領域の再構築は実施例IXに説明する通りに達成することができる。
実施例XII
キメラウイルス粒子(CVP)融合タンパク質としてのインチミンの発現
植物を形質転換してインチミンを発現させる別の方法は、組換え植物ウイルスを用いることによるものである。この方法は安価な経口ワクチンの迅速な開発および送達に好ましい。インチミンもしくはインチミン様タンパク質、またはそれらの一部、またはそれらの組換え融合タンパク質は、植物組換えウイルス感染および発現系、例えば、Dalsgaardおよび共同研究者によって記述されるもの(Dalsgaardら, Nature Biotechnology, 15:248-252 (1997)、その開示は本明細書に参考として援用する)さらにArntzenによって記述されるもの(Nature Biotechnology, 15:221-222 (1997)、その開示は本明細書に参考として援用する)を用いて発現させることができる。好ましい態様においては、インチミンもしくはインチミン様タンパク質、またはそれらの一部、またはそれらの組換え融合タンパク質をコードするDNAを、それらの被覆タンパク質をコードする遺伝子に組換えにより挿入し、および、任意に、その被覆タンパク質を有する融合タンパク質として発現させる。好ましくは、このインチミンもしくはインチミン様タンパク質、またはそれらの一部、またはそれらの融合タンパク質は抗原性である。その後、得られた組換えウイルスゲノムを植物、植物の一部、植物細胞または植物抽出物において増殖させ、インチミンもしくはインチミン様タンパク質、またはそれらの一部、または組換え融合タンパク質の発現を生じさせる。このようにしてウイルスベクターによって産生されたインチミンもしくはインチミン様タンパク質、それらの一部、または組換え融合タンパク質を摂取させ、抽出し、富化し、精製し、または他の方法で本明細書の他所に開示される方法に適用することができる。
実施例XIII
通常はHis−インチミンを発現しない他の細菌種におけるHis−インチミンの発現
インチミンもしくはインチミン様タンパク質、それらの一部、または組換えインチミン融合タンパク質を宿主細菌において発現させ、その宿主細菌をワクチンとして投与することができる。例えば、Su. G-F.ら Microbial Pathogenesis 13:465 (1992)(その材料および方法の部分は参考として本明細書に援用する)は大腸菌ヘモリシンA(HlyA)の23kDa C末端に融合した志賀毒素Bサブユニットを示しており、これは、次に、サルモネラ菌aroA(SL3261)の弱毒化坦体株からそれを搬出するために用いられた。この遺伝子融合体の発現は構造的制御の下または鉄調節プロモーターの制御の下でのものであった。このハイブリッド株を用いるマウスの経口および腹腔内免疫感作の結果、有意のB−サブユニット特異的粘膜および血清Ab応答が生じた。細胞質での発現および抗原坦体株からの細胞外搬出の両者が、抗原特異的免疫応答を生じることが示された。
【0165】
加えて、Pozzi, G.ら Infect.Immun. 60:1902 (1992)(その開示は参考として本明細書に援用する)は、外来抗原が化膿連鎖球菌に由来する原線維Mタンパク質のC末端接着モチーフに融合する系を示す。この融合タンパク質はS.ゴルドニイ(S. gordonii)、口腔内の共生生物、の表面に発現する。この研究においては、16型ヒトパピローマウイルスのE7タンパク質が外来抗原として選択され、原線維Mタンパク質に融合された。マウスの皮下に感染させた。S.ゴルドニイの表面上に発現したM−E7融合タンパク質は、感染マウスからプールした血清を用いるウェスタンブロット分析によって示されるように、マウスにおいてこの融合タンパク質の両局面について免疫原性であることが示された。
【0166】
加えて、Schafer, R.ら J. Immunol. 149:53(1992)(その材料および方法の部分は参考として本明細書に援用する)は、大腸菌β−ガラクトシダーゼを発現するリステリア菌(外来抗原)を生ワクチンベクターとして用いることを示した。BALB/cマウスを経口または腹腔内により免疫感作した。経口投与の1週間後、または経口投与もしくは腹腔注射の5週間後(4週目に追加免疫感作)に採取した脾臓細胞は、β−ガラクトシダーゼ特異的細胞毒性Tリンパ球応答を示した。腹腔内または静脈内投与によって免疫感作したマウスからの個々の血清サンプルを抗−β−ガラクトシダーゼ抗体について試験した;約11%がこれらの抗体に対する陽性力価を有していた。これらの結果は、この種での経口および非経口免疫感作の両方が、外来タンパク質に対する細胞性免疫応答が生じることを示す。
【0167】
Suらの方法による本発明の実施の例をここに示す。この例においては、eae(またはhis−eae)をエアロバクチンプロモーターの制御下に配置し、所望のタンパク質を細胞外に送り出す23C末端ヘモリシンA(HlyA)シグナルドメインをコードするDNA断片に融合する。エアロバクチンプロモーターを腸粘膜環境において認められる条件である鉄制限下で活性化する。これはin vivoでの遺伝子の発現を促進する。このような発現の促進に用いられるプラスミドは中程度コピーpBR322ベースのプラスミドであり、これはpUC18のような高コピープラスミドよりも高い程度の免疫を付与する。外来タンパク質を発現させるための細菌宿主はサルモネラ菌aroA SL3261pLG575株、腸内病原体の弱毒化誘導物(Suらに記述されるように、ドイツ、ブラウンシュベッヒ(Braunschweig)D−3300、GBF−国立バイオテクノロジー研究センター(GBF-National ResearchCentre for Biotechnology)微生物学部門のKenneth Timmisから入手可能)である。この株は、インチミン−HlyAタンパク質の搬出に必要なhlyBおよびhlyD遺伝子をコードするプラスミドpLG575も含む。
【0168】
簡単に述べると、(図18)BamHI StxB断片をプラスミドpSU204(ドイツ、ブラウンシュベッヒD−3300、GBF−国立バイオテクノロジー研究センター微生物学部門のKenneth Timmisから入手可能、上記参考文献)から脱落させてpSU2004を作製する。インチミンまたはインチミン融合タンパク質をコードするBamHI DNA断片を、PCRにより、そのコーディング領域がpSU2004に含まれるエアロバクチンプロモーターおよびhlyAコーディング領域の両者を伴う正しいリーディングフレーム内に配置されるように構築する。このBamHI eae断片をpSU2004に連結し、pAero−Eaeを生じさせる。このプラスミドで、Hanahan, D. J., Mol. Biol. 166:577-580 (1983)の方法に従い、制限陰性修飾陽性(restriction-negative modification-positive)サルモネラ菌SL5283株(Kenneth Timmisから入手可能)を形質転換する。この工程はpAero−Eae DNAをメチル化により修飾し、この株から精製されたプラスミドDNAはサルモネラ菌aroA SL3261pLG575株をより効率的に形質転換する。メチル化pAero−Eae DNAで、Hanahan, D. J., Mol. Biol. 166:577-580 (1983)の方法によりサルモネラ菌aroA SL3261 pLG575株を形質転換する。
【0169】
8ないし10週齢雌BALB/cマウスにこの免疫原性細菌宿主を以下のように給餌する。細菌を100μg/mlアンピシリンを含むLBブロス中で37℃で一晩増殖させ、1:50の希釈率で新鮮な培地に接種してOD600=0.3まで増殖させる。次に、プロモーターを2,2’−ビピリジル(最終濃度100μM)を3時間用いて誘発する。この培養物を洗浄して給餌用にPBSに再懸濁する。
【0170】
1010CFUの細菌を、4日間隔で一回用量を2回、給餌管の助けを借りて給餌する。初回給餌の21日後、追加免疫感作注射を施す。マウスを1週間後に屠殺し、これらは粘膜性および体液性の免疫応答を示す。
【0171】
本発明の他の態様は、本明細書およびここに開示される本発明の実施を考慮することにより当業者には明らかであろう。本明細書および例は例示のためのみのものであると見なされ、本発明の真の範囲および思想は以下の請求の範囲によって示されるものであることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】図1は、RIHisEaeをコードするプラスミドpEB313を示す。このプラスミドは、935個の推定アミノ酸のうちの900個にわたるヒスチジンタグ付きインチミンをコードする。
【図2】図2は、完全なEHEC933 eae遺伝子の推定タンパク質配列(配列番号19)を示す。
【図3】図3は、Beebakhee, G.らによって配列決定された、EHEC CL8株からのDNA配列(配列番号20)を示す。
【図4】図4は、YuおよびKaperによって配列決定された、EHEC 933株からのDNA配列(配列番号21)を示す。
【図5】図5は、eaeと表示された領域においてPCR増幅によって製造されたeaeの3144bp断片を示す。
【図6】図6は、lacプロモーターによって駆動(drive)されるEHEC 86−24 eae株(全コーディング配列)をコードするプラスミドpEB311を示す。
【図7】図7は、PT7プロモーターによって駆動されるEHEC 86−24 eae株(全コーディング領域)をコードするプラスミドpEB310を示す。
【図8】図8は、ヒスチジンタグ付き発現プラスミドpQE-30(配列番号22)、pQE-31(配列番号23)、pQE-32(配列番号24)(QIAGEN社)を示す。
【図9】図9は、リプレッサープラスミド(配列番号25)(QIAGEN社)(多コピー)を示す。
【図10】図10は、RVHindHisをコードするプラスミドpEB312を示す。このプラスミドは、935個の推定アミノ酸のうちの604個にわたるヒスチジンタグ付きインチミンをコードする。
【図11】図11は、his−タグ付きベクター中にクローン化されたeaeの異なる断片、およびこれらのプラスミドの対応名を示す。
【図12】図12は、his−タグ付きベクター中にクローン化されたeaeの異なるC末端断片およびこれらのプラスミドの対応名を示す。
【図13】図13は、対立遺伝子交換によるeae変異体、86−24eaeΔ10の構築を示す。
【図14】図14は、eae構造遺伝子の大部分をコードするプラスミドpEB290を示す。eaeの3’の250bpはpEB290によってはコードされない。
【図15】図15は、eaeの1275bp内部Bcl I断片が欠失している欠失変異体の構築に用いるpEB300を示す。
【図16】図16は、クローン化遺伝子を細菌染色体に導入するための自殺ベクター(suicide vector)pAM450を示す。
【図17】図17は、相同的組換えのための、pAM450ベクターにおいて欠失しているeae遺伝子をコードするプラスミドpEB305を示す。
【図18】図18は、N−His−IcsA−インチミン−Cを発現するプラスミドを構築するためのクローニングスキームを示す。
【図19】図19は、his−インチミンを発現するように植物を遺伝子工学的に作出するために設計されたプラスミドを構築するためのクローニングスキームを示す。植物発現ベクターpKLYX71S2およびhis−インチミンをコードするプラスミドpINTも示される。
【図20】図20は、his−インチミンを発現するように細菌宿主を遺伝子工学的に作出するために設計されたプラスミドを構築するためのクローニングスキームを示す。
【図21】図21は、植物発現カセットを含むプラスミドpGHNC5を示す。MARはタバコ核スカフォールド付着領域である。3’−rbcs−eae−His−35S2を含むClaI−EcoRI断片をpINTから切り出し、pGHNC5に連結して図22に示されるpMAREAEを作製する。
【図22】図22はプラスミドpMAREAEを示す。MAR−35s2−His−eae−3’rbcs−MARを含むSacI−KpnI断片をpMAREAEから切り出し、pBIN19に連結して図23に示されるpBIN−MEを作製する。このプラスミドpBIN19はNPTII遺伝子(カナマイシン耐性を付与する、アグレバクテリウム・ツメファシエンス(Agrebacterium tumefaciens)に由来するノパリンシンターゼ)をコードする。NPTIIにはノパリンシンターゼプロモーター(pNOS)およびノパリンシンターゼターミネーター(3’NOS)が隣接する。
【図23】図23は、MAR−35S2−His−eae−3’rbcs−MARを含むプラスミドpBIN−MEを示す。このプラスミドは、3’NOS−NPTII−pNOSカセットによって付与されたカナマイシン耐性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物におけるインチミン、インチミン様タンパク質又はその一部の発現をコードする異種DNA構築物であって、前記インチミン、インチミン様タンパク質又はその一部は上皮細胞への結合能を保持し、且つインチミン又はインチミン様タンパク質を発現する細菌の上皮細胞への結合を遮断する抗体を誘導する、前記異種DNA構築物。
【請求項2】
前記異種DNAが前記インチミン、インチミン様タンパク質又はその一部に組換え的に融合された少なくとも1つの抗原、少なくとも1つの薬物又はそれらの組合せ物をさらにコードしている、請求項1に記載のDNA構築物。
【請求項3】
植物形質転換ベクターである、請求項1又は2に記載のDNA構築物。
【請求項4】
前記植物形質転換ベクターがアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)Tiベクターである、請求項3に記載のDNA構築物。
【請求項5】
前記植物形質転換ベクターが微粒子上にコーティングされている、請求項3に記載のDNA構築物。
【請求項6】
前記植物形質転換ベクターがウイルスベクターである、請求項3に記載のDNA構築物。
【請求項7】
前記DNAによりコードされるインチミン、インチミン様タンパク質又はその一部がヒスチジンタグをさらに含む、請求項3に記載のDNA構築物。
【請求項8】
前記異種DNAのコドンが植物細胞内での発現にとって有利なコドンと置き換えられる、請求項3に記載のDNA構築物。
【請求項9】
インチミン、インチミン様タンパク質又はその一部をコードする異種DNA構築物を含有する植物細胞であって、前記インチミン、インチミン様タンパク質又はその一部は上皮細胞への結合能を保持し、且つインチミン又はインチミン様タンパク質を発現する細菌の上皮細胞への結合を遮断する抗体を誘導する、前記植物細胞。
【請求項10】
前記異種DNAが前記インチミン、インチミン様タンパク質又はその一部に組換え的に融合された少なくとも1つの抗原、少なくとも1つの薬物又はそれらの組合せ物をさらにコードしている、請求項9に記載の植物細胞。
【請求項11】
前記異種DNAによりコードされるインチミン、インチミン様タンパク質又はその一部がヒスチジンタグをさらに含む、請求項9に記載の植物細胞。
【請求項12】
前記異種DNAのコドンが植物細胞内での発現にとって有利なコドンと置き換えられる、請求項9〜11のいずれか1項に記載の植物細胞。
【請求項13】
再生能のある植物細胞を用意し、該植物細胞を請求項1又は2に記載のDNA構築物で形質転換することを含んでなる、トランスジェニック植物細胞の作出方法。
【請求項14】
植物細胞に前記DNA構築物を移入するアグロバクテリウム・ツメファシエンスTiベクターを該植物細胞に感染させることで形質転換を行う、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記DNA構築物を担持する微粒子を植物細胞に射入することで形質転換を行う、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ウイルスベクターを用いて形質転換を行う、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
植物細胞が再生能のある植物組織中にある、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
形質転換した植物細胞からシュートを再生させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
形質転換した植物細胞から根を再生させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
形質転換した植物細胞から植物体を再生させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記植物が単子葉植物である、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記植物が双子葉植物である、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記DNAによりコードされるインチミン、インチミン様タンパク質又はその一部がヒスチジンタグをさらに含む、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−161199(P2008−161199A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38353(P2008−38353)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【分割の表示】特願平9−538105の分割
【原出願日】平成9年4月18日(1997.4.18)
【出願人】(508019975)ザ ヘンリー エム.ジャクソン ファウンデーション フォー ザ アドバンスメント オブ ミリタリー メディスン,インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】