説明

インナーウェアの編成構造

【課題】 着用者に対してマッサージ効果の高いインナーウェアの編成構造を提供する。
【解決手段】 インナーウェアの編成構造は、立体編みの凸状部分4が浮き編領域3bにより平編領域3aを隆起させて形成され、浮き編領域3bが平編領域3a中にコース方向に対して斜め方向に所定間隔を隔てて連続して複数配設されるものであり、連続して複数配設される浮き編領域3bが、平編領域3aにおける連続する複数ウェール又は1ウェールないし3ウェールの間隔をおいた複数ウェールについて浮き編を行なうことにより編成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、丸編みで筒状に編み立てられるインナーウェアの編成構造に関するものであり、特に、インナーウェアの内側面を凹凸状に立体編みで形成するインナーウェアの編成構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の被服においては、図5に示すように、被服の内面に編組織の異なる凸部101と凹部102a,102bが互い違いに編成されて、各凹部102a,102bは交互に深い凹部102aと浅い凹部102bに編成されていて、深い凹部102aは平編により編成され、浅い凹部102bは平編領域と第1浮き編領域とタック編領域とが組み合わされた編組織で構成され、凸部101は平編領域と第2浮き編領域とが列方向に交互に並んだ編組織で構成され、この第2浮き編領域には複数のタック編が編成されている構成とする(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−339105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の被服は、図5に示すように、編組織の列方向及び段方向において隣り合う凸部101同士が、連結することなく、それぞれ別個独立に配設されているために、この被服の着用者に対して、複数の畝状の凸部101が個々的に作用するに留まり、マッサージ効果が十分に得られないという問題点があった。なお、図5は従来の被服の未着用時における編組織の裏側(内面)を示す拡大平面図である。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、着用者に対してマッサージ効果の高いインナーウェアの編成構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明に係るインナーウェアにおいては、インナーウェアの内側面を凹凸状に立体編みで形成するインナーウェアの編成構造において、前記立体編みの凸状部分が浮き編領域により平編領域を隆起させて形成され、前記浮き編領域が平編領域中にコース方向に対して斜め方向に所定間隔を隔てて連続して複数配設されるものである。
【0005】
また、この発明に係るインナーウェアにおいては、必要に応じて、前記連続して複数配設される浮き編領域の相互間の間隔が、平編領域における4コース以上ないし8コース以下であって、且つ1ウェール以上ないし3ウェール以下である。
【0006】
また、この発明に係るインナーウェアにおいては、必要に応じて、前記連続して複数配設される浮き編領域が、平編領域における連続する複数ウェール又は1ウェールないし3ウェールの間隔をおいた複数ウェールについて浮き編を行なうことにより編成されるものである。
【0007】
さらに、この発明に係るインナーウェアにおいては、必要に応じて、前記平編領域がポリウレタン糸にナイロン糸をカバーリングしたカバーヤーンを含んで編成され、当該カバーヤーンがニットミスによって編成されるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るインナーウェアにおいては、インナーウェアの内側面を凹凸状に立体編みで形成するインナーウェアの編成構造において、前記立体編みの凸状部分が浮き編領域により平編領域を隆起させて形成され、前記浮き編領域が平編領域中にコース方向に対して斜め方向に所定間隔を隔てて連続して複数配設されることにより、立体編みの凸状部分が、インナーウェアの内側面に対して、連続して縄目状に突出することになる。この立体編みの凸状部分が、インナーウェアの着用者の体表に対して適度な圧力を与えると共に、着用者の動きに応じて着用者の体表とインナーウェアとのずれによる着用者の体表と立体編みの凸状部分との間に摩擦力を生じさせ、マッサージする作用があり、着用者の血行を促進することできる。特に、凸状部分が連続して突出することで、従来の被服のように、島状に点在する凸部が着用者の体表に対して個々的に作用する場合と比較して、延在する凸状部分が着用者の体表に対して連動して作用することになり、より強い力で着用者をマッサージすることができる。また、凸状部分が縄目状に突出することで、着用者の体表に対して凸状部分を掛止する作用を向上させることができ、より強い力で着用者をマッサージすることができる。
【0009】
また、この発明に係るインナーウェアにおいては、必要に応じて、前記連続して複数配設される浮き編領域の相互間の間隔が、平編領域における4コース以上ないし8コース以下であって、且つ1ウェール以上ないし3ウェール以下であることにより、立体編みの凸状部分が、島状に点在することなく、途切れずに連続して延在させることができると共に、連続して複数配設される浮き編領域の配列方向がコース方向に対して水平に近くなることなく、立体編みの凸状部分をコース方向に対して斜め方向に延在させることができる。特に、編地に対して左上がりに延在する凸状部分と右上がりに延在する凸状部分とをコース方向で交互に配設することで、波状の畝となる凸状部分を形成することができ、着用者に対して効果的なマッサージ作用を奏することができる。
【0010】
また、この発明に係るインナーウェアにおいては、必要に応じて、前記連続して複数配設される浮き編領域が、平編領域における連続する複数ウェール又は1ウェールないし3ウェールの間隔をおいた複数ウェールについて浮き編を行なうことにより編成されることにより、連続することなく平編領域における1ウェールについて浮き編を行なう場合と比較して、凸状部分を強靭にすることができる。また、立体編みの凸状部分が、島状に点在することなく、途切れずに連続して延在させることができ、着用者に対する所望のマッサージ効果を奏することができる。
【0011】
さらに、この発明に係るインナーウェアにおいては、必要に応じて、前記平編領域がポリウレタン糸にナイロン糸をカバーリングしたカバーヤーンを含んで編成され、当該カバーヤーンがニットミスによって編成されることにより、弾性糸であるカバーヤーンにより、ニットミスの部分の両側にあるループを引き寄せ、山と山との間を狭めて縄目状の凸状部分を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(本発明の第1の実施形態)
図1はこの第1の実施形態におけるインナーウェアの編成構造を適用したインナーウェアの一例を示す正面図、図2は図1に示すインナーウェアの背面図、図3はこの第1の実施形態におけるインナーウェアの編成構造を示す編組織図、図4は図3に示すインナーウェアの編成構造による編地の裏面を示す部分拡大平面図である。
インナーウェアは、縫製方法により以下の2つに分類される。
【0013】
第1の縫製方法は、丸編機により筒状に編んだ1本の筒状編地を用いて、股部に相当する部分に切れ目を入れて裁断縁同士を前後で付き合わせて縫着して股部を形成するものであり、この方法により縫製したインナーウェアとしては、例えば、パンティガードル又はボディスーツなどが挙げられる。
【0014】
また、第2の縫製方法は、丸編機により筒状に編んだ一対(2本)の筒状編地を用いて、パンティ部に相当する部分に切れ目を入れて裁断縁同士を付き合わせて縫着して一体化したものであり、この方法により縫製したインナーウェアとしては、例えば、スパッツ、タイツ又はストッキングなどが挙げられる。
【0015】
以下、この第1の実施形態においては、インナーウェアとして、パンティガードル100を用いて説明する。
図1及び図2に示すように、パンティガードル100は、着用者の腰を覆う部分であり前身頃11a及び後身頃11bからなるパンティ部11と、パンティ部11の上端をなすウエスト部12と、パンティ部11の下端をなす裾部13と、着用者の股における添え生地である股布2をベース生地1に縫合し形成されるマチ部14とを備えている。
【0016】
パンティガードル100は、丸編みで筒状に編み立てられるベース生地1の一端部を裁断し、この裁断した部分のうちマチ部14に対応するベース生地1に股布2を当てて縫合される。なお、この第1の実施形態においては、ベース生地1は、伸縮性のある編地であり、平編で編成されてなる。また、股布2は、ベース生地1の編地と比較して、編み目の間隔を同等又は変化させることで、同一又はそれ以上の伸縮性のある編地をなしており、例えば、ナイロン製の平編の下地に、表面を綿製のパイル地とすることで、通気性があり、インナーウェアの着用者に対する肌触りを良好にすることができる。
【0017】
パンティ部11は、前身頃11aにおける着用者の腹部に対応する領域である菱形状の腹部対応部15、及び後身頃11bにおける着用者の臀部(近位)と大腿後部(遠位)との境界線である臀溝に沿って延在する領域である臀溝対応部16が、パンティガードル100の内側面を凹凸状に立体編みで形成される。
【0018】
この立体編みによる編地(以下、立体編地3と称す)は、図3に示すように、前身頃11a及び後身頃11bにおける平編のベース生地1に対して、ベース生地1を編成する過程でその所定箇所の平編にニットミスを行なうことによって平編領域3aと浮き編領域3bとを編成し、立体編みの凸状部分4が浮き編領域3bにより平編領域3aを隆起させて形成される編地である。
【0019】
また、浮き編領域3bは、平編領域3a中にコース方向に対して斜め方向に所定間隔を隔てて連続して複数配設され、特に、連続して複数配設される浮き編領域3b(浮き編を始める位置)の相互間の間隔は、平編領域3aにおける4コース以上ないし8コース以下であって、且つ1ウェール以上ないし3ウェール以下であることが好ましい。これは、連続して複数配設される浮き編領域3bの相互間の間隔が、3コース以下では、連続して複数配設される浮き編領域3bの配列方向がコース方向に対して水平に近くなると共に、9コース以上では、コース方向で隣り合う浮き編領域3bの相互間の間隔が広がり過ぎてしまい、凸状部分4が島状に点在することとなり、着用者に対する所望のマッサージ効果が得られないからである。また、連続して複数配設される浮き編領域3b(浮き編を始める位置)の相互間の間隔が、4ウェール以上であっても、立体編みの凸状部分4が島状に点在することになり、着用者に対する所望のマッサージ効果が得られないからである。
【0020】
また、連続して複数配設される浮き編領域3bが、平編領域3aにおける連続する複数ウェール又は1ウェールないし3ウェールの間隔をおいた複数ウェールについて浮き編を行なうことにより編成されることがさらに好ましい。これは、連続することなく平編領域3aにおける1ウェールについて浮き編を行なう場合と比較して、凸状部分4を強靭にすることができるからである。
【0021】
以下、立体編地3の編組織の一例について、図3を用いて説明する。
第1の編糸5aは、浮き編がコース方向でその開始位置を順次ずらしながら編成される際に保持ループ6を形成する糸であり、太くて伸縮性が低い硬質の糸、例えば、綿、麻、羊毛若しくは絹などの天然繊維からなる単糸、又は天然繊維糸及びナイロン糸の単糸を右撚り(S撚り)に撚り合わせた双糸を用いる。これにより、浮き編領域3bによる平編領域3aを隆起させた凸状部分4を強靭にできるうえに、凸状部分4による畝の高さを高くすることができ、着用者に対するマッサージ効果を高めることができる。また、1つの浮き編領域3bにおける保持ループ6の本数や度目を適宜設定することで、凸状部分4の強度や高さを調節することができる。
【0022】
また、第2の編糸5bは、保持ループ6を形成しない糸であり、例えば、長繊維(フィラメント)糸として、ポリウレタン糸を芯糸とし、ポリウレタン糸にナイロン糸を巻き付けてカバーリングしたカバーヤーンを用いる。
【0023】
コース方向に対して斜め方向に延在する凸状部分4は、立体編地3の編成時に浮き編を行なうウェールと通常の平編を行なうウェールとの比を1対3として、第1の編糸5aを保持ループ6として浮き編を形成することにより隆起される。すなわち、コース方向で隣り合う浮き編領域3bは3ウェールの間隔を空けて形成されている。なお、浮き編は、立体編地3の編成中に特定の編針を不作動位置に置いてその編針には編糸を供給しないで前の編み目(保持ループ6)を保持するだけにして、この部分の編糸を編地の裏に真直に浮かしたものである。
【0024】
この保持するコース数は17コースであり、17コースを編む最中は、浮き編の保持ループ6となる編み目を保持した編針は不作動位置を保たれたまま、編成作動を行なわない。その間に供給される編糸は編み目を形成せず、ウェルトループ7となって裏側に浮いた状態となっている。このように、第1の編糸5aを保持ループ6として浮き編とすることにより、コース方向で隣り合う浮き編領域5b間の平編領域5a及び浮き編のウェルトループ7がパンティガードル100の内側面側に突出した状態となり、凸状部分4を形成する。
【0025】
このように、図3に示す編組織では、17コース飛ばしの浮き編を3ウェール置きに編成するものであり、浮き編を始める位置が4コースずつ左上がりにずらして配置することにより編地に対して左上がりの凸状部分4が形成される。なお、図3においては、左上がりの凸状部分4が形成される例を示したが、浮き編を始める位置を4コースずつ右上がりにずらせて配置することにより編地に対して右上がりの凸状部分4を形成してもよい。また、編地に対して左上がりの凸状部分4と右上がりの凸状部分4とをコース方向で交互に編成することにより、図4に示すように、波状の畝となる凸状部分4を形成し、着用者の血行を上下方向のみならず周方向に促進させることができ、着用者に対して効果的なマッサージ作用を奏することができる。
【0026】
特に、腹部対応部15を立体編地3によって編成することにより、着用者の腹部近傍の血行が促進されると共に、腹部を押さえ身体の引き締め効果を奏する。また、臀溝対応部16を立体編地3によって編成することことにより、着用者の臀溝近傍の血行が促進されると共に、着用者の臀部を持ち上げる効果を奏する。
【0027】
なお、図3に示す立体編地3おいては、浮き編領域3bにおける保持ループ6を保持するコース数を17コースとして示したが、17コースに限られるものではなく、連続して複数配設される浮き編領域3b(浮き編を始める位置)の相互間の間隔、1つの浮き編領域3bにおける保持ループ6の本数、並びに第1の編糸5a及び第2の編糸5bの硬さや太さなどを考慮して、立体編みの凸状部分4が、パンティガードル100の内側面に対して、連続して縄目状に突出するように、適宜設定する。
【0028】
なお、この第1の実施形態においては、浮き編領域3bにおける保持ループ6を保持するコース数が10コース以下である場合に、立体編みの凸状部分4による畝の高さを所望の高さにすることができず、着用者に対するマッサージ効果があまり期待できないために、11コース以上であることが好ましい。また、浮き編領域3bにおける保持ループ6を保持するコース数が26コース以上である場合に、立体編みの凸状部分4による畝の高さが高くなりすぎることで、凸状部分4による畝が横倒れを起こし、着用者に対するマッサージ効果があまり期待できないために、25コース以下であることが好ましい。
【0029】
また、この第1の実施形態に係るインナーウェアの編成構造は、前述したパンティガードル100に適用することに限られるものではなく、丸編みで筒状に編み立てられ、着用者の体表に密着するインナーウェアであれば、立体編地3を適用することで同様の作用効果を奏することができる。また、インナーウェアの編地において、立体編地3を適用する箇所として特に限定されるものではなく、マッサージ作用が必要とされる箇所に対して局部的に立体編地3を編成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この第1の実施形態におけるインナーウェアの編成構造を適用したインナーウェアの一例を示す正面図である。
【図2】図1に示すインナーウェアの背面図である。
【図3】この第1の実施形態におけるインナーウェアの編成構造を示す編組織図である。
【図4】図3に示すインナーウェアの編成構造による編地の裏面を示す部分拡大平面図である。
【図5】従来の被服の未着用時における編組織の裏側(内面)を示す拡大平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ベース生地
2 股布
3 立体編地
3a 平編領域
3b 浮き編領域
4 凸状部分
5a 第1の編糸
5b 第2の編糸
6 保持ループ
7 ウェルトループ
11 パンティ部
11a 前身頃
11b 後身頃
12 ウエスト部
13 裾部
14 マチ部
100 パンティガードル
101 凸部
102a 深い凹部
102b 浅い凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーウェアの内側面を凹凸状に立体編みで形成するインナーウェアの編成構造において、
前記立体編みの凸状部分が浮き編領域により平編領域を隆起させて形成され、
前記浮き編領域が平編領域中にコース方向に対して斜め方向に所定間隔を隔てて連続して複数配設されることを特徴とするインナーウェアの編成構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載のインナーウェアの編成構造において、
前記連続して複数配設される浮き編領域の相互間の間隔が、平編領域における4コース以上ないし8コース以下であって、且つ1ウェール以上ないし3ウェール以下であることを特徴とするインナーウェアの編成構造。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のインナーウェアの編成構造において、
前記連続して複数配設される浮き編領域が、平編領域における連続する複数ウェール又は1ウェールないし3ウェールの間隔をおいた複数ウェールについて浮き編を行なうことにより編成されることを特徴とするインナーウェアの編成構造。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載のインナーウェアの編成構造において、
前記平編領域がポリウレタン糸にナイロン糸をカバーリングしたカバーヤーンを含んで編成され、当該カバーヤーンがニットミスによって編成されることを特徴とするインナーウェアの編成構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−62641(P2009−62641A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230652(P2007−230652)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(500294888)株式会社 アドヴァンシング (26)
【出願人】(593065110)イイダ靴下株式会社 (22)
【Fターム(参考)】