説明

インバート部材の製造方法、及び、マンホール

【課題】多様な流路形状を効率的に形成することができるインバート部材の製造方法、及び、マンホールを提供する。
【解決手段】本発明に係るインバート部材の製造方法は、未加工のインバート成型体10、20を、流出端13、23が一致する位置で重ね合わせ、側縁14、24が交差する箇所に交点P3を付し、インバート成型体10において、交点P3と、流出端13の中心点13とを結ぶ切断線L10を流路11に描き、切断線L10に沿ってインバート成型体10を切断し、インバート成型体20において、交点P3と、流出端23の中心点P23とを結ぶ切断線L20を流路11に描き、切断線L20に沿ってインバート成型体20を切断し、切断加工済みインバート成型体10、20を、切断面15、25に沿って結合する工程を含む。本発明に係る係るマンホールは、上記方法で製造されたインバート部材を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に連なる少なくとも2つの流路を有するインバート部材の製造方法、及び、本方法によって製造されたインバート部材を含むマンホールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マンホールの流路(インバート)は、複数の流路を一体的に成型したインバート部材を、桝基体の内部底面に載置することにより形成されている。このように、インバート部材が一体成型物である場合、施工に係る具体的な流路態様に応じて極めて多種の成型用型を用意しなければならず、莫大な型代が必要になるとともに、膨大な数に達する型の在庫管理が必要になり、更に、その中から必要な型を取り出さなければならないという困難を伴う。
【0003】
上述した問題の解決を狙った先行技術として、例えば、特許文献1に開示されているインバート部材は、直路状のインバート成型体と、曲路状のインバート成型体とが互いに結合されて、相互に連なる流路を構成している。両成型体の結合ステップにおいては、まず、連続する流路を構成する位置で、両成型体をそれぞれ切断し、次に、切断して得られた両成型体のそれぞれを、互いの切断面を密着させて結合する。
【0004】
しかし、特許文献1では、直路状のインバート成型体と、曲路状のインバート成型体とのそれぞれにおいて、理論的な計算式に従って個別に切断線を算出しなければならない。この計算には手間がかかるから、製造コスト(切断加工コスト)を低減することができない。特に、切断線の算出は、施工現場で行うことができないから、作業効率が悪い。
【0005】
しかも、個別に算出した切断線に沿ってインバート成型体のそれぞれを切断するから、実際に両成型体を結合する段階で会合面部分に不整合が生じることが多かった。
【特許文献1】特開2003−184116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、多様な流路形状を効率的に形成することができるインバート部材の製造方法、及び、マンホールを提供することである。
【0007】
本発明のもう1つの課題は、製造コストを低減することができるインバート部材の製造方法、及び、マンホールを提供することである。
【0008】
本発明の更にもう1つの課題は、型代の節減、型管理の容易化に資するインバート部材の製造方法、及び、マンホールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明に係るインバート部材の製造方法は、第1の製造方法と、第2の製造方法との2つの類型を含んでいる。以下、順に説明する。
【0010】
1.第1の製造方法について
本発明に係るインバート部材の製造方法(第1の製造方法)は、以下の(1)〜(5)に説明する工程を含んでいる。
【0011】
(1)未加工の第1のインバート成型体と、未加工の第2のインバート成型体との少なくとも2つを準備する。第1及び第2のインバート成型体の少なくとも一方は、流入端から流出端に向かって曲線状に伸びる流路を有している。
【0012】
(2)第1のインバート成型体と、第2のインバート成型体とを、それぞれの流出端が一致する位置で重ね合わせ、第1のインバート成型体の側縁と、第2のインバート成型体の側縁とが交差する交差する箇所に交点を付す。
【0013】
(3)交点と、流出端における流路幅の中心点とを結ぶ線に沿って、第1のインバート成型体を切断する。
【0014】
(4)交点と、流出端における流路幅の中心点とを結ぶ線に沿って、第2のインバート成型体を切断する。
【0015】
(5)切断加工済みの第1のインバート成型体と、第2のインバート成型体とを、互いの切断面に沿って結合する。
【0016】
上述した工程を含むインバート部材の製造方法(第1の製造方法)によると、実際の施工に係る第1及び第2のインバート成型体を直接重ね合わせることにより、それぞれの側縁が交差する箇所に共通の交点を付す。さらに、第1及び第2のインバート成型体は、前記交点と、それぞれの流出端の中心点とを結ぶ線(切断線)に沿って切断される。即ち、第1の製造方法によると、理論的な計算式によらずして切断線を求めることができるから、製造コスト(切断加工コスト)を低減することができる。
【0017】
しかも、第1の製造方法は、施工現場で適時に行うことができるから、施工効率が向上し、製造コストが低減される。
【0018】
第1の製造方法では、未加工の第1及び第2のインバート成型体を切断するものであるから、基本的には、第1及び第2のインバート成型体のための2種類の成型用型を準備するだけでよい。このため、型代の節減、型管理の容易化に資することができる。なお、要求される流路の多様性に対しては、第1及び第2のインバート成型体の具体的な流路角度、及び、使用数を選定することによって、容易、かつ、確実に対応できる。
【0019】
2.第2の製造方法について
本発明に係るインバート部材の製造方法(第2の製造方法)は、以下の(1)〜(8)に説明する工程を含んでいる。
【0020】
(1)未加工の第1のインバート成型体と、未加工の第2のインバート成型体との少なくとも2つを準備する。第1及び第2のインバート成型体の少なくとも一方は、流入端から流出端に向かって曲線状に伸びる流路を有している。
【0021】
(2)第1のインバート成型体の平面形状を、透明なシート状部材に転写して第1の型材を作成する。
【0022】
(3)第2のインバート成型体の平面形状を、透明なシート状部材に転写して第2の型材を作成する。
【0023】
(4)第1の型材の端部と、第2の型材の端部とが一致する位置で、第1の型材を第2の型材の上に重ね合わせ、第1の型材の側縁と、第2の型材の側縁とが交差する交点と、端部における幅寸法の中心点とを結ぶ第1の切断基準線を、第1の型材に描く。
【0024】
(5)第1の型材の端部と、第2の型材の端部とが一致する位置で、第2の型材を第1の型材の上に重ね合わせ、第1の切断基準線に従った第2の切断基準線を第2の型材に描く。
【0025】
(6)第1の型材を、第1のインバート成型体に載置し、第1の切断基準線を投影して流路の面内に第1の切断線を描き、この第1の切断線に沿って第1のインバート成型体を切断する。
【0026】
(7)第2の型材を、第2のインバート成型体に載置し、第2の切断基準線を投影して流路の面内に第2の切断線を描き、この第2の切断線に沿って第2のインバート成型体を切断する。
【0027】
(8)切断加工済みの第1のインバート成型体と、第2のインバート成型体とを、互いの切断面に沿って結合する。
【0028】
上述した工程を含むインバート部材の製造方法(第2の製造方法)は、各インバート成型体から直接転写した型材を重ね合わせる点で、第1の製造方法とは異なる。
【0029】
即ち、この種のインバート部材に用いられるインバート成型体は、嵩張る立体成型物であるとともに、それなりの重量を有するものであるから、第1の製造方法では、インバート成型体の重ね合わせ作業に係る作業容易性に改善の余地が全くないとまではいえない。
【0030】
この点、本発明に係る第2の製造方法は、第1の製造方法と実質的に同一の技術的思想に基づくとともに、主として作業容易性の側面を重視した方法を開示するものである。
【0031】
第2の製造方法によると、実際の施工に係る未加工のインバート成型体の平面形状を直接転写して2つの型材を得るとともに、この型材を用いて共通の切断基準線を描き出し、さらに前記切断基準線を投影して各インバート成型体の流路に切断線を描いている。従って、第2の製造方法においても、第1の製造方法と同様に、理論的な計算式によらずして、第1及び第2のインバート成型体に対する切断線を描き出すことができるから、製造コスト(切断加工コスト)を低減することができる。
【0032】
しかも、第2の製造方法において、第1及び第2の型材はシート状部材であるから、交点を導き出すための重ね合わせ作業、及び、切断基準線を描く作業を容易に、且、正確に行うことができる。
【0033】
さらに、第1及び第2の型材は、透明なシート状部材であるから、切断基準線を目視により投影して各インバート成型体の流路に、所望の切断線を正確に描くことができる。
【0034】
切断基準線は消去しない限り、実際に使用した第1及び第2の型材上に描かれたまま残存する。即ち、第1及び第2の型材は、同一形状のインバート成型体に対して使い回しが可能であり、製造コスト(加工コスト)を低減することができる。
【0035】
両インバート成型体は、実質的に同一の切断線に沿って切断することができるから、実際に両者を結合する段階で会合面部分に不整合が生じる危険性を回避することができる。
【0036】
3.マンホールについて
本発明に係るマンホールは、桝基体と、インバート部材とを含む。桝基体は、底部を有しており、インバート部材は桝基体の底部に載置されている。
【0037】
インバート部材は、第1及び第2の製造方法によって製造されたものでなる。従って、本発明に係るインバート部材の製造方法の有する利点を全て有するマンホールを提供することができる。
【0038】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【発明の効果】
【0039】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)多様な流路形状を効率的に形成することができるインバート部材の製造方法、及び、マンホールを提供することができる。
(2)製造コストを低減することができるインバート部材の製造方法、及び、マンホールを提供することができる。
(3)型代の節減、型管理の容易化に資するインバート部材の製造方法、及び、マンホールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係るマンホールの一部を破断して示す斜視図である。図1は、この種のマンホールの一般的な構成を示すものであって、インバート部材100と、桝基体30と、充填剤40とを含む。
【0041】
桝基体30は、内部底面31を有している。桝基体30の側部には、第1の流入管取り付け孔32の他、図示しない第2の流入管取り付け孔、及び、流出管取り付け孔が設けられている。
【0042】
インバート部材100は、少なくとも相互に連なる2つの流路11−21を有し、桝基体30の内部底面31に載置されている。具体的に図1に示すインバート部材100は、流路11−21の一方を構成している第1のインバート成型体10と、流路11−21の他方を構成している第2のインバート成型体20とを含む。
【0043】
第1のインバート成型体10は、流入端12から流出端13に向かって直線状に伸びる流路11と、切断面15を有している。第2のインバート成型体20は、流入端22から流出端23に向かって曲線状に伸びる流路21と、切断面25を有している。第1及び第2のインバート成型体10、20は、切断面15、25が互いに結合され、それぞれの流路11、21が、一体的に連なる流路11−21を構成している。
【0044】
インバート部材100を、桝基体30に設置するにあたっては、第1のインバート成型体10の流入端12を流入管取り付け孔32に一致させるとともに、流出端13を流出管取り付け孔(図示しない)に一致させる。また、第2のインバート成型体20の流入端22を、流入管取り付け孔(図示しない)に一致させるとともに、流出端23を流出管取り付け孔(図示しない)に一致させる。そして、インバート部材100の外面と、桝基体30の内面との間に生じる隙間を、モルタル等の充填剤40によって埋め、インバート部材100を桝基体30の内部底面31に固定する。
【0045】
汚水等は、第1及び第2の流入管取り付け孔に取り付けられた流入管(図示しない)から、インバート部材100の流路11−21に流れ込み、このインバート部材100を経て、流出管取り付け孔から流出管(図示しない)へと流下される。
【0046】
本発明は、図1に示したような、相互に連なる一体的な流路11−21を有するインバート部材100の製造方法に関し、特に、第1及び第2のインバート成型体10、20の切断加工方法に工夫を加えた点に特徴がある。以下、具体的に、本発明に係るインバート部材の製造方法(第1の製造方法)について、図2乃至図12を参照して説明する。なお、図2乃至図12において、図1に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0047】
図2及び図3を参照すると、第1の製造方法では、具体的施工に係るインバート部材に必要とされる流路数に応じて、まず、未加工(切断加工前)の第1のインバート成型体10と、同じく未加工の第2のインバート成型体20との、少なくとも2つのインバート成型体を準備する。
【0048】
まず、図2に示した第1のインバート成型体10は、図1に示した第1のインバート成型体10の未加工(切断加工前)の状態を示している。
【0049】
図2に示す工程で予め準備される第1のインバート成型体10は、半割り管体状であって、好ましくはコンクリート材料、または、合成樹脂材料の何れかを主成分として構成されている。コンクリート材料としては、所謂レジンコンクリート等の複合コンクリート材料を用いることもできる。
【0050】
一方、第1のインバート成型体10に用いられる合成樹脂材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等が好ましく、さらに、繊維強化プラスチック(FRP=Fiber Reinforced Plastics)や、不飽和ポリエステル樹脂等の合成樹脂材料に、炭酸カルシウムなどの充填材を混練し、ガラス繊維等に含浸させたシート状の複合樹脂材料(SMC=Sheet Molding compound)や、同じく合成樹脂材料に充填材を混練し、塊状にした複合樹脂材料(BMC=Bulk Molding Compound)等を用いることもできる。
【0051】
第1のインバート成型体10の各構成について、具体的に説明すると、第1のインバート成型体10は、流路11と、流入端12と、流出端13と、側縁14とを有している。流路11は、断面円弧形状であって、流入端12から流出端13に向かって直線状に伸びるとともに、流路11の最底面部分に、第1のインバート成型体10の長手方向(流路方向)に沿って伸びる中心線a10を有する。側縁14は、中心線a10に直交する幅方向の両側に備えられている。
【0052】
一方、図3に示した第2のインバート成型体20は、図1に示した第2のインバート成型体20の未加工(切断加工前)の状態を示している。
【0053】
図3に示す工程で予め準備される第2のインバート成型体20は、第1のインバート成型体10と基本的に同一の構成を有する。以下、簡単に説明すると、第2のインバート成型体20は、半割り管体状であって、好ましくはコンクリート材料、または、合成樹脂材料の何れかを主成分として構成されており、曲線状の流路21と、流入端22と、流出端23と、側縁24とを有している。
【0054】
流路21は、断面円弧形状であって、流路11とほぼ同一の内径寸法を有している。流路21は、流入端22から流出端23に向かって曲線状に伸びるとともに、流路21の最底面部分に、第2のインバート成型体20の長手方向に沿って伸びる中心線a20を有する。側縁24は、中心線a20に直交する幅方向の両側に備えられている。
【0055】
図4及び図5に示す工程は、図2及び図3に示した工程のあとの工程であって、未加工(切断加工前)の第1及び第2のインバート成型体10、20を、一般的なマンホールの内径寸法(例えば900mm程度)に適合する領域内Cで、重ね合わせる。この重ね合わせ方法について具体的に説明すると、図4に示すように、第1及び第2のインバート成型体10、20を、それぞれの流路11、12が同一方向を向くように配置する。このとき第1のインバート成型体10の底面と、これに相対面する第2のインバート成型体20の上端面との間には、架台80を設けることが好ましい。架台80を設けることにより、第1のインバート成型体10の載置姿勢を安定化することができる。
【0056】
さらに、図5に示すように、第1及び第2のインバート成型体10、20は、流出端13における流路幅の中心点P13と、流出端23における流路幅の中心点P23とが、それぞれ一致するように位置決めして、第1のインバート成型体10を、第2のインバート成型体20の上に重ね合わせる。
【0057】
第2のインバート成型体20は、ある流路角度θをもって、第1のインバート成型体10に結合されるものであり、予め、第1のインバート成型体10に結合された後の状態を想定して位置決めされることが好ましい。具体的に、図5に示す第1及び第2のインバート成型体10、20は、中心点P13、P23の重なり位置を基準として、さらに、流入端12における流路幅の中心点P12と、流入端22における流路幅の中心点P22との交差角(流路角度θ)が、90度となるように位置決めする。
【0058】
図4及び図5を参照して説明した工程により、相互に位置決めして重ね合わされた状態の第1及び第2のインバート成型体10、20において、平面視したときに生じる、第1のインバート成型体10の側縁14と、第2のインバート成型体20の側縁24とが交差する箇所に、好ましくは、水性マジックや、チョーク及びクレヨンなどの書き直し可能な筆記具を用いて、交点P3を付す。
【0059】
図6に示す工程は、図4及び図5に示した工程のあとの工程であって、第1のインバート成型体10に付された交点P3と、流出端13における流路幅の中心点P13とを結ぶ第1の切断線L10を、例えば、水性マジックや、チョーク及びクレヨンなどの書き直し可能な筆記具を用いて、流路11の面内に描く。図6に示した工程により、流路11に第1の切断線L10が描かれた第1のインバート成型体10が得られる。
【0060】
図7に示す工程は、図6に示した工程のあとの工程であって、周知の切断工具を用いて第1の切断線L10に沿って第1のインバート成型体10を切断し、斜線部分s10を切り離す。図7に示した工程により、切断面15を有する第1のインバート成型体10が得られる。切断面15は、流出端13の側であって、流路11の側壁部分に備えられており、流路11の一部に開口している。
【0061】
図6及び図7を参照して説明した一連の切断工程は、第2のインバート成型体20に対しても同様に行われる。即ち、図8に示す工程は、図4及び図5に示した工程のあとの工程であって、第2のインバート成型体20に付された交点P3と、流出端23における流路幅の中心点23とを結ぶ第2の切断線L20を、流路面内に描く。図6に示した工程により、流路21に第2の切断線L20が描かれた第2のインバート成型体20が得られる。
【0062】
図9に示す工程は、図8に示した工程のあとの工程であって、周知の切断工具を用いて第2の切断線L20に沿って第2のインバート成型体20を切断し、斜線部分s20を切り離す。図9に示した工程により、切断面25を有する第2のインバート成型体20が得られる。切断面25は、流出端23の側であって、流路21の側壁部分に備えられており、流路21の一部に開口している。
【0063】
図10に示す工程は、図7及び図9に示した工程のあとの工程であって、切断加工済みの第1及び第2のインバート成型体10、20を、互いの切断面15、25に沿って結合し、相互に連なる流路11−21を構成するとともに、桝基体30の内部底面31に配置する。
【0064】
図10に示す工程において、切断面15、25の相互間(会合面部分)は、必ずしも密着させる必要はない。むしろ図10に示すように、切断面15、25の会合面部分に隙間(ギャップ)を確保することにより、切断面15、25の位置決め作業が容易になるとともに、切断面15、25の会合面部分をモルタル等の充填剤で埋めた場合に、送水性に優れた円滑な流路11−21を得ることができる。従って、図6及び図8に示した切断工程では、予め、切断面15、25をつき合わせたときに、その会合面部分に隙間が生じるように切断することが好ましい。
【0065】
図11及び図12に示す工程は、図10に示した工程のあとの工程であって、切断面15、25の相互間(会合面部分)、さらには第1及び第2のインバート成型体10、20の周囲にモルタル等の充填剤40を充填し、所定の養生期間を経る。充填剤40により、一体的な流路11−21が構成されるとともに、インバート部材100が桝基体30の内部底面31に一体的に固定される。
【0066】
図11及び図12では、桝基体30の側部には、第1の流入管取り付け孔32と、第2の流入管取り付け孔33と、流出管取り付け孔34とが設けられている。第1のインバート成型体10は、流入端12を第1の流入管取り付け孔32に一致させるとともに、流出端13を流出管取り付け孔34に一致させる。また、第2のインバート成型体20は、流入端22を第2の流入管取り付け孔33に一致させるとともに、流出端23を流出管取り付け孔34に一致させる。
【0067】
図2乃至図12を参照して説明したインバート部材の製造方法(第1の製造方法)によると、実際の施工に用いられる第1及び第2のインバート成型体10、20を、未加工の段階で直接重ね合わせることにより、それぞれの側縁14、24が交差する箇所に、基準となる共通の交点P3を導き出し、この交点P3と、その流出端13、23の中心点P13、23とを結ぶ切断線L10、L20を描いているから、理論的な計算式を用いることなく切断線L10、L20を付すことができる。従って、製造コスト(切断加工コスト)を低減することができる。
【0068】
同様に、図2乃至図12を参照して説明した第1の製造方法は、理論的な計算式を用いることなく切断線L10、L20を付すことができるから、施工現場で適時に第1及び第2のインバート成型体10、20を切断し、一体的な流路11−21を形成することができる。従って、施工効率の面からも製造コスト(切断加工コスト)の低減を図ることができる。
【0069】
さらに、図2乃至図12を参照して説明した第1の製造方法では、実際の施工に用いられる第1及び第2のインバート成型体10、20が切断加工されるから、基本的には、第1及び第2のインバート成型体10、20のための2種類の成型用型を準備するだけでよい。このため、型代の節減、型管理の容易化に資することができる。なお、要求される流路の多様性に対しては、第1及び第2のインバート成型体10、20の具体的な流路角度、及び、使用数を選定することによって、容易、かつ、確実に対応できる。
【0070】
図13乃至図19に示したインバート部材の製造方法は、図2乃至図12を参照して説明した第1の製造方法の別の実施態様を示している。以下、図2乃至図12に示した第1の製造方法との相違点を中心に説明する。なお、図13乃至図19において、図1乃至図12に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0071】
図13乃至図19に示したインバート部材の製造方法と、図2乃至図12に示したインバート部材の製造方法とを比較した場合、図13乃至図19に示したインバート部材の製造方法の特徴の1つは、図13及び図14に示す工程において、第1及び第2のインバート成型体10、20が、それぞれの流路11、12を相対向して向かい合わせた状態で配置されていることである。
【0072】
図13及び図14に示す工程によると、第1及び第2のインバート成型体10、20のそれぞれは、幅方向に向かい合う側縁12、24によって形成されている開放面が、支持面となることにより、第1のインバート成型体10を、第2のインバート成型体20に安定的に載置することができるから、図4及び図5に示す工程で用いた架台80が不要となる。従って、作業効率が向上するとともに、製造コスト(切断加工コスト)が低減する。
【0073】
一方、図13に示す工程において、第1のインバート成型体10は、流路11が流路12を被覆する状態で、第2のインバート成型体20に載置されているから、図14に示す工程において、第1のインバート成型体10の側縁14と、第2のインバート成型体20の側縁24とが交差する箇所に交点P3を付した場合、第1のインバート成型体10に描かれる交点P3は、第1の切断線L10の基準点となるべき正位置(P4)とは、左右対称の位置(中心線a10に対して対称となる位置)に付されることとなる。
【0074】
そこで、図15の工程で示すように、図13及び図14に示した工程で付された交点P3を基準として、向かい合う一方側縁14に、交点P3と対称となる交点P4を付す。図15に示した工程を経ることにより、流路11に、交点P4と、流出端13における流路幅の中心点P13とを結ぶ第1の切断線L10が描かれた第1のインバート成型体10を得ることができる。図15に示した工程の後、周知の切断工具を用いて第1のインバート成型体10を切断することにより、図16に示したような切断面15を有する第1のインバート成型体10が得られる。
【0075】
図13乃至図19に示したインバート部材の製造方法によると、図2乃至図12に示したインバート部材の製造方法の利点を全て有するとともに、製造コスト(切断加工コスト)をさらに低減することができる。
【0076】
図2乃至図12、及び、図13乃至図19をそれぞれ参照して説明したインバート部材の製造方法(第1の製造方法)は、確かに、結合に係る2つのインバート成型体10、20を直接重ね合わせて実行可能な点で、施工現場で適時に行うことができるとの利点を有する。一方、未加工の第1及び第2のインバート成型体10、20は、嵩張る立体成型物であるとともに、それなりの重量を有するものであるから、上述した重ね合わせ作業における作業容易性に改善の余地が全くないとまではいえない。
【0077】
そこで、次に、図2乃至図19を参照して説明したインバート部材の製造方法(第1の製造方法)と、実質的に同一の技術的思想に基づき、主として作業容易性の観点を考慮したインバート部材の製造方法(第2の製造方法)について、図20乃至図44を参照して説明する。なお、図20乃至図44において、図1乃至図19に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0078】
図20乃至図44に示したインバート部材の製造方法(第2の製造方法)では、施工に係るインバート部材に必要とされる流路数に応じて、まず、未加工(切断加工前)の第1のインバート成型体10と、同じく未加工の第2のインバート成型体20との、少なくとも2つのインバート成型体を準備する。
【0079】
まず、図20の工程で示した第1のインバート成型体10は、図2に示した第1のインバート成型体10と同一の構成のものを用いることができる。以下、簡単に説明すると、図20に示す工程で予め準備される第1のインバート成型体10は、半割り管体状であって、好ましくはコンクリート材料、または、合成樹脂材料の何れかを主成分として構成されており、流路11と、流入端12と、流出端13と、側縁14と、開放面16と、脚部17とを有している。
【0080】
流路11は、流入端12から流出端13に向かって直線状に伸びるとともに、流路11の最底面部分に、第1のインバート成型体10の長手方向(流路方向)に沿って伸びる中心線a10を有する。側縁14は、中心線a10に直交する幅方向の両側に備えられている。開放面16は、前記幅方向に向かい合う側縁14、14によって形成されている。
【0081】
図21及び図22に示す工程は、図20に示した工程のあとの工程であって、未加工(切断加工前)の第1のインバート成型体10を、無色透明なシート状部材50に載置する。シート状部材50は、好ましくは厚み1.0〜3.0mm程度であって、PP、PE等の合成樹脂材料を主成分として構成されている。シート状部材50として、剛性を有する硬質シート材(又は板材)を用いることもできるが、後の切断作業に係る加工容易性の観点から、可撓性を有する軟質シート材(又は板材)を用いることが好ましい。
【0082】
図21及び図22に示す工程は、透明なシート状部材50に、第1のインバート成型体10の平面輪郭形状(開放面16)を写す準備段階であるから、第1のインバート成型体10は、その開放面16が、シート状部材50の表面に向き合うように位置決めして、シート状部材50に載置される。第1のインバート成型体10が反転されて、シート状部材50に載置されているのは、載置後の安定性を考慮したものであり、シート状部材50を、開放面16に載置してもよい。
【0083】
図23に示す工程は、図21及び図22に示した工程のあとの工程であって、未加工の第1のインバート成型体10の平面輪郭形状(開放面16)を、透明なシート状部材50に転写する。端的にいうと、図21及び図22に示した工程で、水性マジックや、チョーク及びクレヨンなどの書き直し可能な筆記具を用いて、開放面16をふち取りし、シート状部材50に、開放面16の輪郭線を描く。
【0084】
図24に示す工程は、図23に示した工程のあとの工程であって、シート状部材50から、開放面16の輪郭線部分を切り離すことにより、第1のインバート成型体10の平面輪郭形状と等しい、第1の型材51が得られる。図23に示した状態のシート状部材50でも、型材としての機能を果たしうるが、開放面16の輪郭線部分をシート状部材50から切り離すことにより、第1の型材51の取り扱いが容易になるとともに、後述する第1のインバート成型体10への載置作業が容易になる。
【0085】
図21乃至図24を参照して説明した一連の工程は、第1のインバート成型体10に組み合わされる第2のインバート成型体20に対しても同様に行われる。即ち、図25に示した第2のインバート成型体20は、図3に示した第2のインバート成型体20と同一の構成のものを用いることができる。以下、簡単に説明すると、図25に示す工程で予め準備される第2のインバート成型体20は、半割り管体状であって、好ましくはコンクリート材料、または、合成樹脂材料の何れかを主成分として構成されており、流路21と、流入端22と、流出端23と、側縁24と、開放面26と、脚部27とを有している。
【0086】
流路21は、断面円弧形状であって、流路11とほぼ同一の内径寸法を有している。流路21は、流入端22から流出端23に向かって曲線状に伸びるとともに、流路21の最底面部分に、第2のインバート成型体20の長手方向に沿って伸びる中心線a20を有する。側縁24は、中心線a20に直交する幅方向の両側に備えられている。開放面26は、前記幅方向に向かい合う側縁24、24によって形成されている。
【0087】
図25に示した未切断加工の第2のインバート成型体20からは、図21乃至図24を参照して説明した工程と同様の工程により、第2の型材52が得られる。以下、図26乃至図29を参照して、第2の型材52の製造工程を簡単に説明する。
【0088】
図26及び図27に示す工程は、図25に示した工程のあとの工程であって、未加工(切断加工前)の第2のインバート成型体20を、透明なシート状部材50に載置する。図26及び図27に示す工程は、シート状部材50に第2のインバート成型体20の平面輪郭形状(開放面26)を移す準備段階であるから、第2のインバート成型体20は、その開放面26が、シート状部材50の表面に向き合うように位置決めして、シート状部材50に載置される。
【0089】
図28に示す工程は、図26及び図27に示した工程のあとの工程であって、第2のインバート成型体20の平面輪郭形状(開放面26)を、透明なシート状部材50に転写する。端的にいうと、図26及び図27に示した状態で、筆記具などを用いて、開放面26をふち取りし、シート状部材50に、開放面26の輪郭線を描く。
【0090】
図29を参照すると、図28に示した工程の後、好ましくは、ふち取りした開放面26の輪郭線部分を切り離すことにより、第2のインバート成型体20の平面輪郭形状と等しい、第2の型材52が得られる。
【0091】
図30に示す工程は、図24及び図28に示した工程のあとの工程であって、図20乃至図24を参照して説明した工程で得られた第1の型材51と、図25乃至図29を参照して説明した工程で得られた第2の型材52とを、一般的なマンホールの内径寸法(例えば900mm程度)に適合する領域内Cで、重ね合わせる。具体的に、流出端13に相当する第1の型材51の端部の中心点P13と、流出端23に相当する第2の型材52の端部の中心点P23とが、互いに一致する位置で、第1の型材51を第2の型材52の上に重ね合わせる。第1及び第2の型材51、52は、ともに偏平状、且、透明であるから、中心点P13、P23の重なり合いを目視して重ね合わせることができる。
【0092】
さらに、第2の型材52は、ある流路角度θをもって、第1の型材51に重ね合わされる。図30に示す第2の型材52の流路角度θは90度であって、流入端22に相当する端部の中心点P22と、第1の型材51の中心点O10とを結ぶ線分がX軸となす角度で表されている。第1及び第2の型材51、52は、中心点P13、P23の重なり位置を基準として、さらに、第1の型材51の端部の中心点P12と、第2の型材52の端部の中心点P22との交差角(流路角度θ)が90度となるように位置決めする。
【0093】
図31に示す工程は、図30に示した工程のあとの工程であって、第1の型材51と、第2の型材52の側縁とが交差する箇所に交点P3を付し、この交点P3と、中心点P13(P23)とを結ぶ第1の切断基準線L51を、第1の型材51に描く。第1及び第2の型材51、52はともに偏平状、且、透明であるから、交点P3及び中心点P13(P23)を目視して、第1の切断基準線L51を、第1の型材51に描くことができる。第1の切断基準線L51は、なだらかな曲線で描かれることが好ましい。
【0094】
図32に示す工程は、図31に示した工程のあとの工程であって、中心点P13、P23が、互いに一致する位置で、第2の型材52を第1の型材51の上に重ね合わせる。即ち、図31に示した第1の型材51と、第2の型材52との重ね合わせ関係を上下逆転させる。第1及び第2の型材51、52は、ともに偏平状、且、透明であるから、重ね合わせ関係を上下逆転させると、第2の型材52を通して、第1の型材51に描かれた第1の切断基準線L51を目視することができる。
【0095】
図33に示す工程は、図32に示した工程のあとの工程であって、第1の切断基準線L51に従った第2の切断基準線L52を第2の型材52に描く。具体的には、第1の型材51に描かれた第1の切断基準線L51を、第2の型材52を通して目視しつつ、水性マジックや、チョーク及びクレヨンなどの書き直し可能な筆記具を用い、第1の切断基準線L51をなぞるようにして、第2の型材52の上に第2の切断基準線L52を描く。
【0096】
図30乃至図33に示した工程により、第1の切断基準線L51が描かれた第1の型材51(図34参照)と、第2の切断基準線L52が描かれた第2の型材52(図35参照)とが得られる。
【0097】
さらに、図36乃至図43を参照して、第1の型材51(図34参照)と、第2の型材52(図35参照)とを用いて第1及び第2のインバート成型体10、20を切断する工程を説明する。
【0098】
まず、図36及び図37に示す工程は、第1のインバート成型体10を切断するための準備工程であって、図34に示した第1の型材51を、第1のインバート成型体10の開放面(16)に載置し、第1の切断基準線L51を投影して、流路11の面上に第1の切断線L10を描く。第1の型材51は、透明な支持板60に載置されており、作業員は、流路11の表面と、支持板60の裏面との間に腕を差し入れることにより、支持板60の表面側から第1の切断基準線L51を目視しながら、流路11の表面に、第1の切断基準線L51に従った第1の切断線L10を描く。
【0099】
支持板60は、第1のインバート成型体10に対して、第1の型材51を安定的に載置するために用いられるから、支持板60の表面側から第1の切断基準線L51を投影(目視)可能な構造であれば、必ずしも板材である必要はない。例えば、支持板60の代わりに格子状の金網などを用いることもできる。また、第1の型材51が硬質シート(板材)である場合、支持板60を用いることなく、第1のインバート成型体10の上に直接、第1の型材51を載置することもできる。
【0100】
図38を参照すると、図36及び図37に示した工程により、流路11に第1の切断線L10が描かれた第1のインバート成型体10が得られる。この後、周知の切断工具を用いて第1の切断線L10に沿って第1のインバート成型体10を切断し、斜線部分s10を切り離すことにより、図39に示したような切断面15を有する第1のインバート成型体10が得られる。切断面15は、流出端13の側であって、流路11の側壁部分に備えられており、流路11の一部に開口している。
【0101】
図36乃至図39を参照して説明した一連の工程は、第1のインバート成型体10と組み合わされる第2のインバート成型体20に対しても同様に行われる。以下、簡単に説明すると、図40及び図41に示した工程は、図35に示した工程のあとの工程であって、第2の型材52を、第2のインバート成型体20に載置し、第2の切断基準線L52を投影して、流路21に第2の切断線L20を描く。第2の型材52は、透明な支持板60に載置されており、作業員は、流路21の表面と、支持板60の裏面との間に腕を差し入れることにより、支持板60の表面側から第2の切断基準線L52を目視しながら、流路21の表面に、第2の切断基準線L52に従った第2の切断線L20を描く。
【0102】
図42を参照すると、図40及び図41に示した工程により、流路21に第2の切断線L20が描かれた第2のインバート成型体20が得られる。この後、周知の切断工具を用いて第2のインバート成型体20を切断することにより、図43に示したような切断面25を有する第2のインバート成型体20が得られる。切断面25は、流出端23の側であって、流路21の側壁部分に備えられており、流路21の一部に開口している。
【0103】
図44に示す工程は、図39及び図43に示した工程のあとの工程であって、切断加工済みの第1及び第2のインバート成型体10、20を、互いの切断面15、25に沿って結合し、相互に連なる流路11−21を構成する。
【0104】
図44に示す工程において、切断面15、25の相互間(会合面部分)は、必ずしも密着させる必要はない。むしろ図44に示すように、切断面15、25の会合面部分に隙間(ギャップ)を確保することにより、切断面15、25の位置決め作業が容易になるとともに、切断面15、25の会合面部分をモルタル等の充填剤で埋めた場合に、送水性に優れた円滑な流路11−21を得ることができる。従って、図39及び図43に示した切断工程では、予め、切断面15、25をつき合わせたときに、その会合面部分に隙間が生じるように切断することが好ましい。
【0105】
なお、図39及び図43に示した工程のあとの工程において、図10乃至図12を参照して説明したように、第1及び第2のインバート成型体10、20は、桝基体の底部に配置されるとともに、切断面15、25の相互間(会合面部分)、さらには第1及び第2のインバート成型体10、20の周囲にモルタル等の充填剤が充填される。
【0106】
図20乃至図28を参照して説明したインバート部材の製造方法(第2の製造方法)によると、図2及び図19を参照して説明したインバート部材の製造方法(第1の製造方法)と基本的に同一の効果を有するとともに、作業容易性を向上することができる。即ち、図20乃至図28を参照して説明した第2の製造方法では、実際の施工に用いられる第1及び第2のインバート成型体10、20の平面輪郭形状を直接転写して第1及び第2の型材51、52を得るとともに、この第1及び第2の型材51、52を用いて共通の切断基準線L51、L52を描き出し、さらに切断基準線L51、L52を投影して第1及び第2のインバート成型体10、20の流路11、21の面内に切断線L10、L20を描いている。即ち、第2の製造方法によると、第1及び第2のインバート成型体10、20に対して、理論的な計算式を用いることなく切断線L10、L20を付すことができるから、製造コスト(加工コスト)を低減することができる。
【0107】
しかも、第2の製造方法において、第1及び第2の型材51、52は、シート状であるから、交点P3を導き出すための重ね合わせ作業、及び、切断基準線L51、L52を描く作業を容易に、且、正確に行うことができる。
【0108】
また、第1及び第2の型材51、52は、透明なシート状部材50であるから、切断基準線L51、L52を目視により投影して、第1及び第2のインバート成型体10、20の流路11、21に切断線L10、L20を描くことができる。従って、製造コスト(切断加工コスト)を低減することができる。
【0109】
さらに、切断基準線L51、L52は消去しない限り、実際に使用した第1及び第2の型材51、52上に描かれたまま残存する。即ち、第1及び第2の型材51、52は、同一形状のインバート成型体10、20に対して使い回しが可能であり、製造コスト(加工コスト)を低減することができる。
【0110】
しかも、第1及び第2のインバート成型体10、20は、実質的に同一の切断線L10、L20に沿って切断されるから、実際に両者を結合する段階で両切断面15、25間に不整合が生じる危険性を回避することができる。
【0111】
第2の製造方法は、施工に係る第1及び第2のインバート成型体10、20を切断加工して行われるから、基本的には、第1及び第2のインバート成型体10、20のための成型用型を準備するだけでよい。このため、型代の節減、型管理の容易化に資することができる。
【0112】
この種のマンホールのインバート部に要求される流路の多様性に対しては、第1及び第2のインバート成型体10、20の流路角度を選定することによって、容易、かつ、確実に対応できる。即ち、図20乃至図44を参照して説明した第2の製造方法では、実際の施工に係るインバート成型体10、20の平面輪郭形状を直接転写して第1及び第2の型材51、52を得るから、第1及び第2の型材51、52は、インバート成型体10、20の具体的な流路角度に容易に追従することができる。以下、具体的に、図45及び図46を参照して説明する。図45は本発明に係るインバート部材の製造方法について別の実施形態を示す平面図、図46は図45に示した方法により得られたインバート部材の平面図である。
【0113】
図45及び図46に示すインバート部材の製造方法は、第1のインバート成型体10に対する第2のインバート成型体20の流路角度θが45度で設定されており、第1及び第2のインバート成型体10、20の側縁14、24の交点P3がY軸側に移動している点に、図2乃至図28に示したインバート部材100との相違点が見られる。
【0114】
従来、このように流路角度θの異なるインバート部材100を作る場合、第1及び第2のインバート成型体10、20のそれぞれについて、新たな計算式に従って個別に切断線を算出しなければならない。この計算には手間がかかるから、製造コスト(切断加工コスト)を低減することができなかった。しかも、個別に算出した切断線に沿って第1及び第2のインバート成型体10、20のそれぞれを切断するから、実際に両者を結合する段階で両切断面間に不整合が生じることが多かった。
【0115】
これに対し、図20乃至図44、又は、図45及び図46に示したインバート部材の製造方法(第2の製造方法)では、第2のインバート成型体20から新たに第2の型材52を製造するだけの労力で容易に対応することができる。即ち、既存の第1の型材51に、新たに製造した第2の型材52を組み合わせることにより(図45参照)、新たな切断基準線L51、L52を容易且迅速に描くことができる。従って、多様な流路形状を効率的に、且、安価で製造することができる。
【0116】
また、流路の多様性に関する技術的課題については、第1及び第2のインバート成型体10、20の使用数を選定することによっても、容易、かつ、確実に対応できる。即ち、図20乃至図44を参照して説明したインバート部材の製造方法(第2の製造方法)では、実際に結合に使用されるインバート成型体の平面輪郭形状を直接転写して第1及び第2の型材51、52を得るから、第1及び第2の型材51、52は、インバート成型体の具体的な使用数に容易に追従することができる。以下、具体的に、図47及び図48を参照して説明する。図47は本発明に係るインバート部材の製造方法について別の実施形態を示す平面図、図48は図47に示した方法により得られたインバート部材の平面図である。図47及び図48を参照すると、第2のインバート成型体20は複数であって、第1のインバート成型体10の左右に結合されて、相互に連なる3つの流路12−11−12が構成されている。
【0117】
従来、このように第2のインバート成型体20の使用数(流路数)が増加し、第1及び第2のインバート成型体10、20の接続関係が変化したインバート部材100を作る場合、第1及び第2のインバート成型体10、20とのそれぞれについて、新たな計算式に従って個別に切断線を算出しなければならなかった。
【0118】
これに対し、図20乃至図44、又は、図47及び図48に示したインバート部材の製造方法(第2の製造方法)では、、増加した第2のインバート成型体20から第2の型材52を新たに製造するだけの労力で容易に対応することができる。即ち、既存の第1及び第2の型材51、52に、新たに製造した2枚目の第2の型材52を組み合わせることにより、3本目の新たな切断基準線L52を容易且迅速に描くことができる(図47参照)。
【0119】
なお、図48に示す2つの第2のインバート成型体20、20は、それぞれ流路角度θ=90度をもって、第1のインバート成型体10に左右対称に結合されている。このように、第2のインバート成型体20、20が、左右対称(同じ流路角度θ)である場合、1つの第2の型材52を左右反転して用いることにより、製造コスト(切断加工コスト)の低減を図ることができる。。
【0120】
図49は本発明に係るインバート部材の製造方法に用いることができる流路角度定規の平面図、図50は図49に示した流路角度定規の使用状態を示す平面図である。
【0121】
図49に示す流路角度定規は、図20乃至図48を参照して説明したインバート部材100の製造方法において、図30乃至図33に示した工程における第1及び第2の型材51、52の位置決め作業、及び、その検証作業を正確に行うために用いることができる。
【0122】
即ち、図49を参照すると、流路角度定規は、円板状体であって、本発明の一実施形態に係るインバート部材が備えられる一般的なマンホールの内径寸法(例えば900mm程度)に適合する直径寸法の領域Cを有している。
【0123】
流路角度定規の各構成について、具体的に説明すると、流路角度定規は、直路指示線71と、曲路指示線72とを有する。直路指示線71は、直線状の流路を有するインバート成型体(10)の位置決めに用いられ、流路(11)の径寸法に応じた第1の指示線711と、第2の指示線712とを有する。第1の指示線711は、例えば、径寸法が200mmのインバート成型体に対する位置決めに用い、第2の指示線712は径寸法が150mmのインバート成型体に対する位置決めに用いることができる。第1及び第2の指示線712は、同一の中心線a10を有している。
【0124】
曲路指示線72は、中心点O10から放射状に配列された複数の流路角度目安線を有する。図49に示す曲路指示線72は10度刻みで、左右9本づつ描かれている。
【0125】
図49に示した流路角度定規の使用方法について、図50を参照して説明すると、まず、図21乃至図24に示した工程により得られた第1の型材51を、直路指示線71に沿って流路角度定規70に載置する。具体的に、第1の型材51は、流入端12に相当する端部の中心点P12と、流出端13に相当する端部の中心点P13とが、流路角度定規70の面内において、中心線a10上で一致する位置で、流路角度定規70に重ねられる。
【0126】
次に、図26乃至図29に示した工程により得られた第2の型材を、第1の型材51の上に、載置する。第1の型材51と、第2の型材52とは、流出端13に相当する第1の型材51の端部の中心点P13と、流出端23に相当する第2の型材52の端部の中心点P23とが、互いに一致する位置で、第1の型材51を第2の型材52の上に重ね合わせる。さらに、第2の型材52は、90度の流路角度θをもっているから、流入端22に相当する第2の型材52の端部の中心点P22が、90度を示す曲路指示線72に一致するように、第1のインバート成型体10に結合される。
【0127】
第1及び第2の型材51、52は、ともに偏平状、且、透明であるから、端部の中心点P13、P23の重なり合いを目視して重ね合わせを行うことができるとともに、中心点P22と曲路指示線72との重なり合いを目視して重ね合わせることができる。
【0128】
図49及び図50を参照して説明した流路角度定規70によると、第1及び第2の型材51、52の位置決めを正確に行うことができるから、図30乃至図33に示した工程における切断基準線L51、L52の描出を正確に行うことができる。
【0129】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の一実施形態に係るマンホールの一部を破断して示す斜視図である。
【図2】本発明に係るインバート部材の製造方法(第1の態様)に用いられる第1のインバート成型体を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るインバート部材の製造方法(第1の態様)に用いられる第2のインバート成型体を示す斜視図である。
【図4】図2及び図3に示した工程のあとの工程を示す正面図である。
【図5】図4に示した工程の平面図である。
【図6】図4及び図5に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図7】図6に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図8】図4及び図5に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図9】図8に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図10】図7及び図9に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図11】図10に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図12】図11の12−12線に沿った断面図である。
【図13】図2及び図3に示した工程のあとの工程を示す正面図である。
【図14】図13に示した工程の平面図である。
【図15】図13及び図14に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図16】図15に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図17】図13及び図14に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図18】図17に示した工程のあとの工程を示す平面図である。
【図19】図16及び図18に示した工程のあとの工程を示す平面図である。
【図20】本発明に係るインバート部材の製造方法(第2の態様)に用いられる第1のインバート成型体を示す斜視図である。
【図21】図20に示した工程のあとの工程を示す平面図である。
【図22】図21に示した工程の正面図である。
【図23】図22に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図24】図23に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図25】本発明に係るインバート部材の製造方法(第2の態様)に用いられる第2のインバート成型体を示す斜視図である。
【図26】図25に示した工程のあとの工程を示す平面図である。
【図27】図26に示した工程の正面図である。
【図28】図26及び図27に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図29】図28に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図30】図24及び図29に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図31】図30に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図32】図31に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図33】図32に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図34】図33に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図35】図33に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図36】図34に示した工程のあとの工程を示す平面図である。
【図37】図36に示した工程の正面図である。
【図38】図36及び図37に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図39】図38に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図40】図33に示した工程のあとの工程を示す平面図である。
【図41】図40に示した工程の正面図である。
【図42】図40及び図41に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図43】図42に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図44】図39及び図43に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図45】本発明に係るインバート部材の製造方法について別の実施形態を示す平面図である。
【図46】図45に示した方法により得られたインバート部材の平面図である。
【図47】本発明に係るインバート部材の製造方法について別の実施形態を示す平面図である。
【図48】図47に示した方法により得られたインバート部材の平面図である。
【図49】本発明に係るインバート部材の製造方法に用いることができる流路角度定規の平面図である。
【図50】図49に示した流路角度定規の使用状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0131】
100 インバート部材
10、20 第1、第2のインバート成型体
11、21 流路
12、22 流入端
13、23 流出端
14、24 側縁
15、25 切断面
30 桝基体
31 内部底面
50 シート材
51、52 第1、第2の型材
L51、L52 切断基準線
L10、L20 切断線
P3、P4 交点
P13、P23 流出端の中心点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの流路を有するインバート部材の製造方法であって、
未加工の第1のインバート成型体と、未加工の第2のインバート成型体との少なくとも2つを準備し、前記第1及び第2のインバート成型体の少なくとも一方は、流入端から流出端に向かって曲線状に伸びる流路を有しており、
前記第1のインバート成型体と、前記第2のインバート成型体とを、それぞれの流出端が一致する位置で重ね合わせ、前記第1のインバート成型体の側縁と、前記第2のインバート成型体の側縁とが交差する箇所に交点を付し、
前記交点と、前記流出端における流路幅の中心点とを結ぶ線に沿って、前記第1のインバート成型体を切断し、
前記交点と、前記流出端における流路幅の中心点とを結ぶ線に沿って、前記第2のインバート成型体を切断し、
切断加工済みの前記第1のインバート成型体と、前記第2のインバート成型体とを、互いの切断面に沿って結合する、
工程を含むインバート部材の製造方法。
【請求項2】
少なくとも2つの流路を有するインバート部材の製造方法であって、
未加工の第1のインバート成型体と、未加工の第2のインバート成型体との少なくとも2つを準備し、前記第1及び第2のインバート成型体の少なくとも一方は、流入端から流出端に向かって曲線状に伸びる流路を有しており、
前記第1のインバート成型体の平面形状を、透明なシート状部材に転写して第1の型材を作成し、
前記第2のインバート成型体の平面形状を、透明なシート状部材に転写して第2の型材を作成し、
前記第1の型材の端部と、前記第2の型材の端部とが一致する位置で、前記第1の型材を前記第2の型材の上に重ね合わせ、前記第1の型材の側縁と、前記第2の型材の側縁とが交差する交点と、前記端部における幅寸法の中心点とを結ぶ第1の切断基準線を、前記第1の型材に描き、
前記第1の型材の前記端部と、前記第2の型材の前記端部とが一致する位置で、前記第2の型材を前記第1の型材の上に重ね合わせ、前記第1の切断基準線に従った第2の切断基準線を前記第2の型材に描き、
前記第1の型材を、前記第1のインバート成型体に載置し、前記第1の切断基準線を投影して流路の面内に前記第1の切断線を描き、前記第1の切断線に沿って前記第1のインバート成型体を切断し
前記第2の型材を、前記第2のインバート成型体に載置し、前記第2の切断基準線を投影して流路の面内に前記第2の切断線を描き、前記第2の切断線に沿って前記第2のインバート成型体を切断し、
切断加工済みの第1のインバート成型体と、第2のインバート成型体とを、互いの切断面に沿って結合する、
工程とを含むインバート部材の製造方法。
【請求項3】
桝基体と、インバート部材とを含むマンホールであって、
前記桝基体は、底部を有しており、
前記インバート部材は、請求項1又は2の何れかに記載された方法で製造されたものでなり、前記桝基体の前記底部に載置されている、マンホール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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