説明

インパクト回転工具

【課題】低速から高速まで安定した打撃状態を実現することによって作業性を向上させたインパクト回転工具を提供する。
【解決手段】インパクト回転工具の制御回路10は、負荷の大きさを検出するために電動機の電機子電流の平均値を検出する負荷検出手段13と、指令速度設定手段11から入力される指令電圧と速度検出手段12から入力される検出速度とに基づいて速度制御演算を行い、演算結果をスイッチング制御手段15に出力する速度制御手段14を備える。速度制御手段14では、負荷検出手段13の検出した負荷の大きさが閾値未満の場合と閾値以上の場合とで互いに異なる速度制御パラメータを用いて速度制御演算を行う。また速度検出手段12では、磁極位置を検出する位置検出回路5から所定期間以上検出信号が入力されない場合、予め設定された所定速度を検出速度として速度制御手段14に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂インパクトドライバやインパクトレンチのような打撃衝撃を与えてねじ類の締付作業を行うインパクト回転工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動機によりハンマを回転させ、このハンマの打撃で出力軸に回転力を与えて、ボルトやナットなどのねじ類の締付作業を行うインパクト回転工具が提供されており、高速回転で高トルクという作業性の良さから、建築現場や組立工場などで幅広く使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この種のインパクト回転工具としては、例えば図12(a)および図13に示すように、3相の電機子巻線を持つブラシレス電動機を用いたものが提供されている。この回転工具は、永久磁石を有した回転子1aおよび3相の電機子巻線1bを巻装した固定子からなるブラシレス電動機(以下電動機という)1と、この電動機1の出力を、駆動軸に設けたハンマ(図示せず)と出力軸3に設けたアンビル(図示せず)との係合を衝撃的に繰り返し行うことによって回転力を発生する減速機2を介して、チャックを備えた出力軸3に伝達する動力伝達部と、電動機1の駆動のオン/オフ及びその操作量(引き込み量)によって回転速度(回転数)を設定するトリガボリューム4と、電動機1に対向配置されるセンサ基板5bに実装された3個の磁極センサ5aを有し(図12(b)参照)、各磁極センサ5aの検出出力をもとに可動子の永久磁石の磁極位置を検出する位置検出回路5と、トリガボリューム4によって設定された指令速度と位置検出回路5の検出出力から求めた回転速度とが一致するように、電動機1の電機子巻線1bへの印加電圧の調整と三相巻線への通電切替を行う駆動回路6と、駆動回路6に電力を供給する二次電池のような電池7とを備えている。
【0004】
また駆動回路6は、図13に示すようにトリガボリューム4の操作量で設定された回転数(回転速度)となるように、電動機1ヘの印加電圧の調整と3相の電機子巻線1bへの通電切換をインバータ回路8を通じて行うもので、位置検出回路5の検出出力から求めた回転速度が指令速度と一致するように指令電圧を演算し、インバータ回路8のドライブ回路9に出力する制御回路10を備えている。また制御回路10は、位置検出回路5の検出出力に基づいて、所定の電機子巻線1bに所定の電圧を印加するようにドライブ回路9に指令電圧を与える。
【0005】
ここで、インバータ回路8は、6個のスイッチング素子Q1〜Q6をブリッジ結線して構成され、上記指令電圧に基づいてドライブ回路9でスイッチング素子Q1〜Q6をオン/オフ制御して転流することにより電動機1の電機子巻線1bに所定のタイミングで電流が流れて回転子1aが回転するのである。さらにドライブ回路9ではスイッチング素子Q1〜Q6をPWM制御して電機子巻線1bへの印加電圧を調整している。
【0006】
位置検出回路5は、図12(b)に示すように電動機1の出力軸を中心とする円周上に配置された3個の磁極センサ5aを備え、各磁極センサ5aの検出出力から回転子の磁極位置を検出して位置検出信号を制御回路10へ出力する。制御回路10は、位置検出信号に基づいて所定の電機子巻線1bに所定の電圧を印加するようにドライブ回路9に指令電圧を与えており、ブラシレス運転時には、電圧が印加されていない端子電圧(Vu,Vv,Vwの何れか)と基準電圧との比較結果が変化したタイミングで回転子1aの位置を検出し、所定位相遅延させて転流することで回転子1aを回転させる機能と、回転子1aの位置検出間隔から求めた実際の回転速度とトリガボリューム4の操作量で設定される指令速度が一致するように速度制御演算を行って印加電圧を求める機能とを備えている。
【特許文献1】特開2003−211371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した図12(a)に示す回転工具のようにインパクト発生機能付き減速機2を用いている場合、電動機1から見た負荷(トルク)が周期的に変化し、且つ、その負荷(トルク)が周期毎に増加した時に速度制御の応答遅れから、特に低速状態では回転速度がゼロ、つまり一瞬停止してしまうため(図14中の期間A)、減速機2の打撃状態が安定せず、使い勝手が悪いという問題があった。
【0008】
特に上記特許文献1に示される回転工具では、トリガボリュームの操作量に対応して、電動機駆動用の固定のパルス幅変調信号を出力する構成となっているため、電動機1から見たトルク(負荷)を、周期的に変化する負荷に追従するように制御することは不可能であり、特に低速側においては安定した打撃状態を実現することができなかった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、低速から高速まで安定した打撃状態を実現することによって作業性を向上させたインパクト回転工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、永久磁石を有した回転子および電機子巻線を有した固定子からなる電動機と、操作量に応じて電動機の回転速度を設定するトリガボリュームと、トリガボリュームの操作量で定まる回転速度を指令速度に変換する指令速度設定手段と、回転子の磁極位置を検出する位置検出手段と、位置検出手段の検出出力から回転速度を検出する速度検出手段と、指令速度と速度検出手段の検出速度が一致するように指令電圧を演算する速度制御手段と、指令電圧に応じた駆動電圧を電動機に印加するインバータ回路と、電動機の回転に応じて回転するハンマと、ハンマと係合するアンビルを有しハンマがアンビルと衝突することによって発生する打撃で回転力が加えられる出力軸と、出力軸にかかる負荷の大きさを検出する負荷検出手段とを備え、速度制御手段は、負荷検出手段の検出した負荷の大きさが所定の閾値未満の場合と閾値以上の場合とで互いに異なる速度制御パラメータを用いて速度制御演算を行うとともに、位置検出手段が、速度制御手段により演算された指令電圧に対応する所定期間以上の間、回転子の磁極位置を検出しない場合は、指令速度設定手段により設定された指定速度に対応する所定速度に検出速度を設定し、当該検出速度と指令速度とを用いて速度制御手段が指令電圧を演算することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、速度制御手段では、速度制御演算に用いる速度制御パラメータを、負荷検出手段の検出した負荷の大きさが閾値未満の場合と閾値以上の場合とで変更しているので、負荷の大きさが大きい打撃状態と負荷の大きさが小さい打撃状態とで同じ速度制御パラメータを用いる場合に比べて、負荷の大きさが大きく、且つ、速度変動の大きな打撃状態において、負荷の大きさに合わせた速度制御パラメータを用いることによって、速度制御の追従性を改善することができる。さらに、速度制御演算の応答遅れにより指令電圧をゼロにする場合が発生し、そのために電動機が殆ど停止した状態になった場合でも、位置検出手段が、速度制御手段により演算された指令電圧に対応する所定期間以上の間、回転子の磁極位置を検出できず、その結果検出速度にばらつきが発生する場合は、検出速度を指令速度に対応した所定速度に設定しているので、速度制御の応答遅れを防いで、周期の安定した打撃を実現することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、速度制御手段は、指令電圧の演算結果が所定の最低印加電圧以下であれば、最低印加電圧を指令電圧として出力することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、速度制御手段では、指令電圧の演算結果の最小値を最低印加電圧に制限しているので、例えばハンマがアンビルと衝突した直後に指令電圧が略ゼロになった場合でも、ハンマに回転力を与え、回転方向においてハンマによりアンビルを保持させることができ、その結果ハンマの挙動が安定するから、作業性が向上するという利点がある。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、速度制御手段は、所定の演算周期が経過する毎に指令電圧を更新しており、更新前の指令電圧からの変化量に上限値を設定したことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、速度制御手段では、所定の演算周期で指令電圧を更新する際に更新前の指令電圧からの変化量を上限値以下に制限しているので、指令電圧の急激に変化に応じて打撃力にばらつきが生じるのを防止でき、且つ回転開始時に過大な指令電圧が与えられて、インバータ回路を構成するスイッチング素子に過電圧が印加されるのを防止できる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかの発明において、速度制御手段は、電動機を停止状態から回転させる際に出力する指令電圧の初期値を複数用意し、複数の初期値から指令速度の変化速度に応じた初期値を選択して出力することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、速度制御手段が、電動機を停止状態から回転させる際に出力する指令電圧の初期値として、指令速度の変化速度に応じた初期値を選択して出力しているので、作業者がトリガボリュームを操作した時の引き込み速度に応じて指令電圧の初期値を変更することで、作業者の意図に合わせて電動機の回転速度の立ち上がりを変化させることができ、作業者の意図にあった締め付け動作が行えるから、作業性が向上するという利点がある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、速度制御手段では、速度制御演算に用いる速度制御パラメータを、負荷検出手段の検出した負荷の大きさが閾値未満の場合と閾値以上の場合とで変更しているので、負荷の大きさが大きい打撃状態と負荷の大きさが小さい打撃状態とで同じ速度制御パラメータを用いる場合に比べて、負荷の大きさが大きく、且つ、速度変動の大きな打撃状態において、負荷の大きさに合わせた速度制御パラメータを用いることによって、速度制御の追従性を改善できるという効果がある。さらに、速度制御演算の応答遅れにより指令電圧をゼロにする場合が発生し、そのために電動機が殆ど停止した状態になった場合でも、位置検出手段が、速度制御手段により演算された指令電圧に対応する所定期間以上の間、回転子の磁極位置を検出できず、その結果検出速度にばらつきが発生する場合は、検出速度を指令速度に対応した所定速度に設定しているので、速度制御の応答遅れを防いで、周期の安定した打撃を実現できるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図1〜図7に基づいて説明する。図3は本実施形態のインパクト回転工具が備えるインパクト機構の概略図であり、図12(a)および図13に示した従来例と同様に、永久磁石を有した回転子1aおよび3相の電機子巻線1bを巻装した固定子からなるブラシレス電動機(以下、電動機と略す)1と、電動機1の出力を所定の減速比で減速してハンマ21に伝える減速機2と、減速機2の駆動軸20にカム機構(図示せず)を介して取り付けられるハンマ21と、ハンマ21を出力軸3側に付勢する付勢ばね22と、出力軸3に設けられたアンビル23とを備えている。
【0021】
アンビル23の周面には一対の突起23a,23aが突設され、各々の突起23a,23aがハンマ21の先端面に設けた係合突部21a,21aと回転方向において係合することによって、出力軸3に負荷がかかっていない状態では、ハンマ21とアンビル23とが一体に回転するようになっている。一方、出力軸3に所定値以上の負荷がかかった時には、図4(c)(f)に示すようにハンマ21がばね22の付勢力に抗して後退して、ハンマ21がアンビル23を乗り越える。ハンマ21がアンビル23を乗り越えると、ハンマ21はばね23の付勢力を受けて前進しながら回転して、ハンマ21の係合突部21aがアンビル23の突起23aに衝突する(図4(a)(d)参照)。この時、アンビル23に回転方向の打撃衝撃が与えられ、アンビル23(出力軸3)が角度φだけ回転する(図4(b)(e)参照)。
【0022】
また図2は本実施形態の全体回路構成図であり、この回転工具は、上述の電動機1と、電動機1の駆動のオン/オフおよび操作量に応じた回転速度(回転数)を設定するトリガボリューム4と、3個の磁極センサ5aを備えて回転子1aの永久磁石の磁極位置を検出して位置検出信号POSを出力する位置検出回路5(位置検出手段)と、トリガボリューム4によって設定された指令速度と位置検出回路5の検出出力から求めた回転速度(検出速度)とが一致するように、電動機1の電機子巻線1bへの印加電圧の調整と三相巻線への通電切替を行う駆動回路6とを主要な構成として備えている。なお、図5はトリガボリューム4の操作量STと指令速度SVとの関係を示し、操作量STには不感帯が設けられており、操作量STがST1からSTmaxまで変化すると、指令速度SVがゼロからSVmaxまで変化するようになっている。
【0023】
駆動回路6は、トリガボリューム4の操作量STで設定された回転数(回転速度)となるように、電動機1ヘの印加電圧の調整と3相の電機子巻線1bへの通電切換をインバータ回路8を通じて行うもので、位置検出回路5の検出出力から求めた回転速度が指令速度SVと一致するように、インバータ回路8のドライブ回路9に指令電圧V2を出力する制御回路10と、インバータ回路8の入力電流値を検出して電流信号I1を出力する電流検出回路16とを備えている。
【0024】
また制御回路10は、図1に示すように指令速度設定手段11と、速度検出手段12と、負荷検出手段13と、速度制御手段14と、スイッチング制御手段15とを主要な構成として備える。制御回路10は例えばマイクロコンピュータからなり、指令速度設定手段11、速度検出手段12、負荷検出手段13、速度制御手段14、およびスイッチング制御手段15はマイクロコンピュータの演算機能により実現される。
【0025】
指令速度設定手段11は、トリガボリューム4から入力される操作量STを指令速度SVに変換して速度制御手段14に出力する。
【0026】
速度検出手段12は、位置検出回路5から入力される回転子1aの位置検出信号の入力間隔に基づいて回転子1aの回転数を検出し、その回転数から求まる回転速度(検出速度PV)を速度制御手段14に出力する。
【0027】
負荷検出手段13は、電流検出回路16により検出されたインバータ回路8の入力電流をもとに電動機1の負荷電流(電機子電流)の大きさ、つまり負荷(トルク)の大きさを検出するものであり、電流検出回路16から入力される電流信号I1で示される電機子電流を平均化処理して得た平均電流信号I2を指令速度設定手段11および速度制御手段14に出力する。
【0028】
速度制御手段14は、指令速度設定手段11によって設定された指令速度SVと、速度検出手段12によって検出された検出速度PVとの偏差がゼロになるように、電動機1へ出力する指令電圧V1を演算する。
【0029】
スイッチング制御手段15は、速度制御手段14から入力された指令電圧V1をもとに指令電圧V2を生成してインバータ回路8(つまりドライブ回路9)に出力する。
【0030】
この回転工具を用いてねじ等の締め付け作業を行う場合、出力軸3にかかる負荷が所定値未満の場合はハンマ21とアンビル23とが供回りの状態で、出力軸3のチャックに保持させた工具によりねじ立てが行われる。ねじが入り込むにしたがって、出力軸3にかかる負荷が大きくなり、負荷が所定値以上になると、ハンマ21の係合突部21aがアンビル23の突起23aを乗り越えて回転し、ハンマ21が半回転してその係合突部21aがアンビル23の突起23aに衝突することによって、アンビル23に打撃衝撃が与えられる。図6は締め付け作業を行う際の電流信号I1および平均電流信号I2を示しており、ねじ立てを行っている期間(時刻t0〜t2)は電流信号I1が徐々に増加し、打撃状態(時刻t2〜t3)では電流信号I1が鋸歯状に変化し、その後締め付け作業を終了して軽負荷状態になると(時刻t3〜)、電流信号I1は徐々に低下している。
【0031】
ところで、上述の速度制御手段14は、指令速度SVと検出速度PVとの偏差がゼロになるように、電動機1への指令電圧V1を演算するのであるが、速度制御手段14による速度制御演算に、以下の式(1)、式(2)で示されるPI制御を用いる場合、速度制御パラメータは比例項と積分時間とがある。
【0032】
【数1】

【0033】
但し、Kpは比例項、Tは積分時間、m(t)は印加電圧の出力値、SV(t)は指令速度、PV(t)は検出速度であり、e(t)は速度偏差である。
【0034】
上述の式(1)より比例項Kpが大きいほど、比例動作が強く働くため、速度偏差に敏感に反応して、指令電圧V1の電圧値に反映される。また積分時間Tが小さいほど、積分動作が強く働くため、速度偏差に敏感に反応して、指令電圧V1の電圧値に反映される。
【0035】
ここで、速度変動の殆ど無いファンなどが負荷である場合は速度制御の遅れが殆ど無いため、速度制御パラメータは固定で十分であるが、インパクト回転工具のように、電動機1から見た負荷(トルク)が周期的に変化し、且つ、周期毎に負荷の大きさが増加するような場合は、特に低速の打撃状態(つまり打撃の周期が長い状態)では速度変動が大きいため、その速度変動に追従可能な速度制御パラメータに変更する必要がある。
【0036】
そこで、本実施形態では速度制御手段14が、負荷検出手段13から入力される平均電流信号I2をもとに負荷の大きさを判断し、負荷の大きさに応じて速度制御演算に用いる速度制御パラメータ(比例項Kpおよび積分時間T)を変更するようにしている。すなわち速度制御手段14は、平均電流信号I2が予め設定された閾値電流Ith1未満の場合は打撃状態ではないと判断して、所定の速度演算パラメータP1(Kp1,T1)を用いた速度制御演算を行う。一方、平均電流信号I2が閾値電流Ith1以上の場合、速度制御手段14は打撃状態と判断して、比例動作および積分動作が強く働くように、比例項をKp1からKp2(>Kp1)に増加させるとともに、積分時間をT1からT2(<T1)に小さくし、これらのパラメータP2(Kp2,T2)を用いて速度演算制御を行うのである。図6に示す例では、ねじ立て状態中の時刻t0から時刻t1までの期間と、軽負荷時の時刻t4以降の期間では平均電流値I2が閾値電流Ith1未満となるので、これらの期間では速度演算パラメータP1(Kp1,T1)を用いた速度演算制御を行い、ねじ立て状態中の時刻t1から打撃状態を経て軽負荷状態となる時刻t4までの期間は平均電流値I2が閾値電流Ith1以上となるので、この間は速度制御パラメータP2(Kp2,T2)を用いた速度演算制御を行うことになる。
【0037】
このように、負荷電流が所定の閾値電流Ith1以上、つまり負荷が大きく打撃状態の場合は、速度制御演算に用いる速度制御パラメータ(比例項および積分時間)をそれぞれKp1からKp2、T1からT2に変更して、比例動作および積分動作の働きを強めているので、速度変動の大きな打撃状態においても、速度制御の追従性を向上させることで応答遅れの発生を防止することが可能になる。
【0038】
図7(a)(b)は打撃状態における検出速度PVの検出結果を示しており、同図(a)は速度制御パラメータが固定の場合、同図(b)は速度制御パラメータを負荷の大きさに応じて変更した場合の検出結果である。尚、各々のグラフにおいて横軸(時間軸)の下側に示したマーク「|」は、位置検出回路5が磁極位置を検出して、位置検出信号を出力したタイミングを示している。ここで、速度制御演算に用いる速度制御パラメータが固定の場合は、図7(a)に示すようにハンマ21の打撃によって電動機1の回転速度が低下した際に位置検出回路5により磁極位置を検出できない時間W1,W2がばらついて、速度制御の応答遅れが発生するために、打撃間隔D1、D2がばらつくという問題があった。それに対して本実施形態では速度制御手段14が、ねじ立て状態や軽負荷状態で用いる速度制御パラメータに比べて、比例動作や積分動作の働きを強める速度制御パラメータを打撃状態で用いているので、打撃状態において速度制御の追従性が向上し、図7(b)に示すように位置検出回路5により磁極位置を検出できない期間W3,W4が略同じ時間になるから、打撃間隔D3,D4のばらつきが小さくなり、速度制御の応答遅れをなくして、安定した打撃状態を実現することが可能になる。
【0039】
なお上述の形態では、平均電流信号I2と閾値電流Ith1との大小(つまり負荷と閾値との大小)に応じて速度制御パラメータ(比例項および積分時間)を2通りに切り替えているが、表1に示すように指令速度SV(又は検出速度PV)の大きさと平均負荷電流I2(負荷情報)の大きさとに応じて速度制御パラメータを数段階に定義しても良い。
【0040】
【表1】

【0041】
上記の表1に示す例では、指令速度SVが速度の閾値SV1以下の低速状態では(SV≦SV1)、平均電流値I2が閾値電流Ith1未満であれば、速度制御パラメータとしてKp1、T1を用い、平均電流値I2が閾値電流Ith1以上であれば、速度制御パラメータとしてKp2(>Kp1)、T2(<T1)を用いる。また指令速度SVが閾値SV1より大きく且つ閾値SV2以下となる場合は(SV1<SV≦SV2)、平均電流値I2が閾値電流Ith2未満であれば、速度制御パラメータとしてKp3、T3を用い、平均電流値I2が閾値電流Ith2以上であれば、速度制御パラメータとしてKp4(>Kp3)、T4(<T3)を用いる。さらに指令速度SVが閾値SV2より大きい場合は(SV2<SV)、平均電流値I2が閾値電流Ith3未満であれば、速度制御パラメータとしてKp5、T5を用い、平均電流値I2が閾値電流Ith3以上であれば、速度制御パラメータとしてKp6(>Kp5)、T6(<T5)を用いる。このように速度制御手段14は、指令速度SV(又は検出速度PV)の大きさと平均負荷電流I2(負荷情報)の大きさとに応じて速度制御パラメータを数段階に定義しており、速度変動が大きい場合にも追従性の良い速度制御パラメータを用いることで、速度制御の追従性を改善することができる。
【0042】
ところで、上述のように速度制御手段14が速度制御パラメータを変更することによって追従性を改善した場合でも、異常な動作による応答遅れが発生して指令電圧V1をゼロにしてしまう可能性があり、この場合は検出速度PVも低下してしまい、電動機1が殆ど停止した状態となってしまう。この時、位置検出回路5は磁極位置を検出できず、位置検出信号POSが出力されないため、速度検出手段12が演算する検出速度の更新が、ハンマ21とアンビル23との衝突状態の微妙な差によってばらつくため、速度制御の応答性がばらついて、安定した打撃状態を維持できなくなる可能性がある。
【0043】
そこで本実施形態では、速度検出手段12が位置検出信号POSを検出していない状態(つまり位置検出回路5が磁極位置を検出していない状態)が、速度制御手段14により演算された指令電圧V1に対応する所定の検出不可時間以上継続した場合は、指令速度設定手段11により設定される指令速度SVに対応した所定速度(この速度を最低検出速度と言う)に検出速度PVを設定しており、この検出速度PVと指令速度SVとを用いて速度制御手段14が指令電圧V1を演算しているので、速度制御の応答遅れを低減して、周期の安定した打撃を実現することができる。
【0044】
なお速度制御手段14では、指令速度SVの大きさが大きいほど検出不可時間を短い時間に設定しており、例えば表2に示すように指令速度SVが閾値SV1以下である低速状態では検出不可時間をDT1に、指令速度SVが閾値SV1より大きく且つ閾値SV2以下となる場合は検出不可時間をDT2に、指令速度SVが閾値SV2より大きい場合は検出不可時間をDT3に設定することによって(DT1>DT2>DT3)、打撃の周期を指令速度に対応した周期に設定することもできる。
【0045】
【表2】

【0046】
(実施形態2)
本発明の実施形態2を図8に基づいて説明する。尚、インパクト回転工具の構成は実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略し、以下では本実施形態の特徴部分のみを説明する。
【0047】
本実施形態のインパクト回転工具では、電動機1から見たトルク(負荷)が周期的に変化し、且つ、その負荷が周期毎に増加した際に、特に低速状態では速度変動が大きいために、速度制御の応答遅れから指令電圧V1をゼロにしてしまう場合が考えられる。指令電圧V1がゼロになると、ハンマ21に回転力が与えられず、回転方向においてハンマ21がアンビル23を保持できなくなるから、ハンマ21の挙動が不安定になる可能性がある。
【0048】
そこで、本実施形態では速度制御手段14が、指令電圧V1の演算結果に下限値(最低印加電圧)を設けており、演算結果が最低印加電圧Vmin以下であれば、最低印加電圧Vminを指令電圧V1として出力することにより、締付作業中に電動機1への指令電圧V1がゼロになるのを防止している。なお図8は速度制御手段14から出力される指令電圧V1を示し、図中の点線bは指令電圧V1の演算結果、実線aは実際に出力される指令電圧V1である。而して速度制御手段14から出力される指令電圧V1が最低印加電圧Vmin以上になるので、速度変動の非常に大きな低速での打撃状態において、ハンマ21がアンビル23と衝突した直後でもハンマ21に回転力が加えられるから、回転方向においてハンマ21にアンビル23を保持させることができる。したがってハンマ21の挙動を安定させることができ、締付作業の作業性が向上するという利点がある。
【0049】
なお本実施形態では指令速度や平均電流値に関係なく最低印加電圧Vminを設定しているが、以下の表3に示すように指令速度や平均電流値の大きさに応じて最低印加電圧を複数段階に設定しても良い。
【0050】
【表3】

【0051】
上記の表3に示す例では、指令速度SVが速度の閾値SV1以下の低速状態では(SV≦SV1)、平均電流値I2が閾値電流Ith1未満であれば、最低印加電圧をVmin1とし、平均電流値I2が閾値電流Ith1以上であれば、最低印加電圧をVmin2とする。また指令速度SVが閾値SV1より大きく且つ閾値SV2以下となる場合は(SV1<SV≦SV2)、平均電流値I2が閾値電流Ith2未満であれば、最低印加電圧をVmin3とし、平均電流値I2が閾値電流Ith2以上であれば、最低印加電圧をVmin4とする。さらに指令速度SVが閾値SV2より大きい場合は(SV2<SV)、平均電流値I2が閾値電流Ith3未満であれば、最低印加電圧をVmin5とし、平均電流値I2が閾値電流Ith3以上であれば、最低印加電圧をVmin6とする。
【0052】
(実施形態3)
本発明の実施形態3を図8に基づいて説明する。尚、インパクト回転工具の構成は実施形態2と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略し、以下では本実施形態の特徴部分のみを説明する。
【0053】
ところで、本実施形態のインパクト回転工具では、制御回路10をマイクロコンピュータで構成しており、速度制御手段14は、所定の演算周期が経過する毎に指令電圧V1を演算して、スイッチング制御手段15に出力している。図9は指令電圧V1の演算結果の一例を示しており、演算周期dTが経過する毎に速度制御手段14が指令電圧V1を更新している。尚、図中の丸印は指令電圧V1の演算結果であり、実線が実際に出力される指令電圧V1を示している。
【0054】
ここで、インパクト回転工具では、電動機1から見たトルク(負荷)が周期的に変化し、且つ、その負荷が増加した際に、特に低速では速度変動が大きいため、速度制御の応答遅れから指令電圧V1の変化分が非常に大きな値になる場合があり、その結果ハンマ21による打撃力(締め付け力)のばらつきが大きくなる可能性がある。
【0055】
そこで、本実施形態では速度制御手段14が、所定の演算周期dTが経過する毎に指令電圧V1を演算して、指令電圧V1を更新する際に、更新前の指令電圧V1からの変化量が所定の上限値以上であれば、変化量を上限値に制限している。すなわち速度制御手段14では、指令電圧V1を演算して更新する際に、更新前の指令電圧V1からの増加分dV1が所定の閾値ΔV1以上であれば、増加分をΔV1に設定する(時刻t11,t12,t13,t14)。また速度制御手段14は、更新前の指令電圧V1からの減少分dV2の絶対値が所定の閾値ΔV2以上であれば、減少分をΔV2に設定する(時刻t15)。また速度制御手段14では、実施形態2で説明したように指令電圧V1が最低印加電圧Vminよりも小さければ、指令電圧V1を最低印加電圧V1に設定しているが、実施形態1と同様に指令電圧V1に下限値を設定しなくても良い。
【0056】
このように速度制御手段14が、所定の演算周期が経過する毎に指令電圧V1の演算を行って、出力値を更新する際に、更新前の指令電圧V1からの変化量が所定の上限値以上であれば、変化量を上限値に制限しているので、速度制御の応答遅れが発生した場合でも、ハンマ21による打撃力のばらつきを小さくできる。なお速度制御手段14では指令電圧V1の増加分および減少分にそれぞれ上限値を設けているが、増加分のみに上限値を設定しても良い。
【0057】
ここで、図10のフローチャートに基づいて以上の動作をまとめて説明する。使用者がトリガボリューム4を操作すると、その操作量STに応じて指令速度設定手段11が指令速度SVを設定する(ステップS1)。速度制御手段14は、指令速度SVと閾値SV1,SV2(SV1<SV2)との大小を比較し(ステップS2)、指令速度SVが閾値SV1以下であれば、負荷検出手段13から入力された平均電流信号I2と閾値電流Ith1との大小を比較する(ステップS3)。速度制御手段14は、平均電流信号I2が閾値電流Ith1未満であれば、速度制御パラメータをパラメータP1(比例項Kp1,積分時間T1)に、最低印加電圧をVmin1に設定し(ステップS4,S5)、平均電流信号I2が閾値電流Ith1以上であれば、速度制御パラメータをパラメータP2(比例項Kp2,積分時間T2)に、最低印加電圧をVmin2に設定する(ステップS6,S7)。その後、速度制御手段14は、速度検出手段12から検出速度PVが入力されるまでの間に検出不可時間DT1が経過したか否かを判断し(ステップS8)、検出不可時間DT1が経過していれば、検出速度PVを最低検出速度に設定して(ステップS9)、速度制御演算を実行する(ステップS10)。
【0058】
また、ステップS2において指令速度SVが閾値SV1より大きく且つ閾値SV2以下であれば、速度制御手段14は、負荷検出手段13から入力された平均電流信号I2と閾値電流Ith2との大小を比較する(ステップS11)。速度制御手段14は、平均電流信号I2が閾値電流Ith2未満であれば、速度制御パラメータをパラメータP3(比例項Kp3,積分時間T3)に、最低印加電圧をVmin3に設定し(ステップS12,S13)、平均電流信号I2が閾値電流Ith2以上であれば、速度制御パラメータをパラメータP4(比例項Kp4,積分時間T4)に、最低印加電圧をVmin4に設定する(ステップS14,S15)。その後、速度制御手段14は、速度検出手段12から検出速度PVが入力されるまでの間に検出不可時間DT2が経過したか否かを判断し(ステップS16)、検出不可時間DT2が経過していれば、検出速度PVを最低検出速度に設定して(ステップS17)、速度制御演算を実行する(ステップS10)。
【0059】
さらに、ステップS2において指令速度SVが閾値SV2より大きければ、速度制御手段14は、負荷検出手段13から入力された平均電流信号I2と閾値電流Ith3との大小を比較する(ステップS18)。速度制御手段14は、平均電流信号I2が閾値電流Ith3未満であれば、速度制御パラメータをパラメータP5(比例項Kp5,積分時間T5)に、最低印加電圧をVmin5に設定し(ステップS19,S20)、平均電流信号I2が閾値電流Ith3以上であれば、速度制御パラメータをパラメータP6(比例項Kp6,積分時間T6)に、最低印加電圧をVmin6に設定する(ステップS21,S22)。その後、速度制御手段14は、速度検出手段12から検出速度PVが入力されるまでの間に検出不可時間DT3が経過したか否かを判断し(ステップS23)、検出不可時間DT3が経過していれば、検出速度PVを最低検出速度に設定して(ステップS24)、速度制御演算を実行する(ステップS10)。
【0060】
次にステップS10において、速度制御手段14が、上記の処理で決定された速度制御パラメータを用いて速度制御演算を実行し、指令電圧V1の演算値を求めると、更新前の指令電圧V1からの変化量の絶対値が所定の上限値よりも大きいか否かを判断し、変化量の絶対値が上限値以上であれば変化量の絶対値を上限値に制限した後(ステップS25)、指令電圧V1の演算結果と最低印加電圧との大小を判定し(ステップS26)、指令電圧V1が最低印加電圧未満であれば、指令電圧V1を最低印加電圧に変更して(ステップS27)、スイッチング制御手段25に出力する(ステップS28)。
【0061】
(実施形態4)
本発明の実施形態4を図11に基づいて説明する。図11(a)(b)はそれぞれ回転開始時におけるトリガボリューム4の操作量STと、指令速度設定手段11から出力される指令電圧SVとの関係を示しており、図中の丸印が操作量ST、実線が指令電圧SVである。尚、インパクト回転工具の構成は実施形態3と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略し、以下では本実施形態の特徴部分のみを説明する。
【0062】
本実施形態では速度制御手段14が、電動機1を停止状態から回転させる際に、指令速度SVの変化量、或いは、トリガボリューム4の引き込み速度(つまり操作信号STの変化速度)に応じて、回転開始時の指令速度SVを変化させている。
【0063】
指令速度設定手段11は、トリガボリューム4の操作量ST(すなわち引き込み量に応じた電圧信号)を所定間隔(演算周期dT)が経過する毎に監視している。指令速度設定手段11は、トリガボリューム4の引き込みに遊びを持たせるため、その操作量STに不感帯を設けてあり、所定の信号レベルLV1を越える操作量STが入力された時に、指令速度SVを発生するようになっている。そして、指令速度設定手段11は、演算周期dTが経過する毎にトリガボリューム4の操作量STを読み込んでおり、図11(a)に示すように信号レベルLV1を越える操作量STを初めて読み込んだ際に(時刻t21)、その時の操作量STが予め設定された閾値レベルLV2以上であれば、トリガボリューム4の引き込み速度が速いと判断して、回転開始時における指令速度SVの初期値を所定の開始指令SV01に設定する。一方、図11(b)に示すように、指令速度設定手段11が、信号レベルLV1を越える操作量STを初めて読み込んだ際に(時刻t22)、その時の操作量STが予め設定された閾値レベルLV2未満であれば、トリガボリューム4の引き込み速度が遅いと判断して、回転開始時における指令速度SVの初期値を上記開始指令SV01よりも小さい開始指令SV02に設定する。
【0064】
このように指令速度設定手段11では、作業者が作業開始時にトリガボリューム4を引き込む時の引き込み速度に応じて回転開始時の指令速度SVを変化させており、引き込み速度が速い場合は回転開始時における指令速度SVの初期値を大きい値に設定し、引き込み速度が遅い場合は指令速度SVの初期値を小さい値に設定しているので、作業者の意図に合わせて回転速度の立ち上がりを変化させることができ、作業者の意図に合わせたねじ締め作業が行えるから、作業性が向上するという利点がある。
【0065】
なお本実施形態では指令速度設定手段11が、トリガボリューム4の操作量STに基づいて回転開始時における指令速度SVの初期値を決定しているが、指令速度設定手段11からトリガボリューム4の操作量STに応じた指令速度SVを出力させ、速度制御手段14が、回転開始時において指令速度設定手段11から入力される指令速度SVに基づいて、トリガボリューム4の引き込み速度が速いか否かを判断して、回転開始時における指令速度SVの初期値を変化させても良い。すなわち、速度制御手段14では、所定の演算周期dTが経過する毎に指令速度設定手段11の出力を監視しており、指令速度設定手段11から初めて入力された指令速度SVの値が所定の閾値電圧以上であれば、トリガボリューム4の引き込み速度が速いと判断して、回転開始時における指令速度SVの初期値を開始指令SV01に設定する。また、指令速度設定手段11から初めて入力された指令速度SVの値が所定の閾値電圧未満であれば、速度制御手段14は、トリガボリューム4の引き込み速度が遅いと判断して、回転開始時における指令速度SVの初期値を開始指令SV01よりも小さい開始指令SV02に設定する。このように電動機1を停止状態から回転させる際に、速度制御手段14が、指令速度SVの変化量に応じて、回転開始時における指令速度SVの初期値を変化させており、作業者の意図に合わせて回転速度の立ち上がりを変化させているので、作業者の意図に合わせたねじ締め作業が行え、作業性が向上するという利点がある。
【0066】
なお、本発明の精神と範囲に反することなしに、広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は、特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施形態1のインパクト回転工具の要部ブロック図である。
【図2】同上の全体回路構成図である。
【図3】同上のインパクト機構の概略図である。
【図4】同上のインパクト機構の動作を示し、(a)〜(c)は動作の各段階を示した側面図、(d)〜(f)は動作の各段階を示した下面図である。
【図5】同上のトリガボリュームの操作量と指令速度との関係を示す説明図である。
【図6】同上を用いて締め付け作業を行う際の電流信号および平均電流信号を示す図である。
【図7】(a)(b)は同上を用いて締め付け作業を行う際の検出速度を示す図である。
【図8】実施形態2のインパクト回転工具の動作を説明する説明図である。
【図9】実施形態3のインパクト回転工具の動作を説明する説明図である。
【図10】同上の動作を示したフローチャートである。
【図11】(a)(b)は実施形態4のインパクト回転工具の動作を説明する説明図である。
【図12】従来のインパクト回転工具を示し、(a)は概略構成図、(b)は磁極センサの説明図である。
【図13】同上の全体回路構成図である。
【図14】同上の電動機の回転速度を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
4 トリガボリューム
5 位置検出回路
6 電流検出回路
8 電流検出回路
10 制御回路
11 指令速度設定手段
12 速度検出手段
13 負荷検出手段
14 速度制御手段
15 スイッチング制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を有した回転子および電機子巻線を有した固定子からなる電動機と、操作量に応じて前記電動機の回転速度を設定するトリガボリュームと、前記トリガボリュームの操作量で定まる回転速度を指令速度に変換する指令速度設定手段と、前記回転子の磁極位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段の検出出力から回転速度を検出する速度検出手段と、前記指令速度と前記速度検出手段の検出速度が一致するように指令電圧を演算する速度制御手段と、前記指令電圧に応じた駆動電圧を前記電動機に印加するインバータ回路と、前記電動機の回転に応じて回転するハンマと、ハンマと係合するアンビルを有しハンマがアンビルと衝突することによって発生する打撃で回転力が加えられる出力軸と、前記出力軸にかかる負荷の大きさを検出する負荷検出手段とを備え、前記速度制御手段は、前記負荷検出手段の検出した負荷の大きさが所定の閾値未満の場合と前記閾値以上の場合とで互いに異なる速度制御パラメータを用いて速度制御演算を行うとともに、前記位置検出手段が、前記速度制御手段により演算された指令電圧に対応する所定期間以上の間、前記回転子の磁極位置を検出しない場合は、前記指令速度設定手段により設定された指定速度に対応する所定速度に検出速度を設定し、当該検出速度と前記指令速度とを用いて前記速度制御手段が指令電圧を演算することを特徴とするインパクト回転工具。
【請求項2】
前記速度制御手段は、指令電圧の演算結果が所定の最低印加電圧以下であれば、最低印加電圧を指令電圧として出力することを特徴とする請求項1記載のインパクト回転工具。
【請求項3】
前記速度制御手段は、所定の演算周期が経過する毎に指令電圧を更新しており、更新前の指令電圧からの変化量に上限値を設定したことを特徴とする請求項1又は2記載のインパクト回転工具。
【請求項4】
前記速度制御手段は、前記電動機を停止状態から回転させる際に出力する指令電圧の初期値を複数用意し、複数の初期値から前記指令速度の変化速度に応じた初期値を選択して出力することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のインパクト回転工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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