説明

インビトロ拡大されたTリンパ球及びガン治療に適切な血管形成インヒビターを含む組成物

腫瘍反応性リンパ球、特にCD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球及び血管形成インヒビターのインヒビター、とりわけVEGFインヒビターの拡大及び活性化のための、インビトロ方法によって得られた腫瘍反応性Tリンパ球の組合せ治療を用いたガンの改良治療法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、腫瘍反応性リンパ球、特にCD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の拡大(expansion)及び活性化のための、インビトロ方法によって得られた腫瘍反応性Tリンパ球と組み合わせた、血管形成インヒビターのインヒビター、とりわけVEGFインヒビターを含む改良治療法に関する。腫瘍反応性Tリンパ球はCD4+CD25+Hiリンパ球でない。すなわち、本発明は調節性Tリンパ球を包含しない。更に、本発明で用いられる腫瘍反応性Tリンパ球は、所謂腫瘍浸潤Tリンパ球(TIL)とは異なる。本発明で用いられる腫瘍反応性Tリンパ球は、所謂SNAL(センチネル節獲得リンパ球)又はMNAL(メチネル節獲得リンパ球)である。本発明は、血管形成インヒビターのインヒビター、とりわけVEGFインヒビター、及び腫瘍反応性Tリンパ球を含む組成物にも関する。通常、用量、投与経路及び投与時間に関する柔軟性を有する適切な治療レジメンを可能にするために、組成物は2つの別個の製剤を含み、1つは血管形成インヒビターの1以上のインヒビターを含み、もう一つは腫瘍反応性Tリンパ球を含む。腫瘍反応性Tリンパ球は、腫瘍反応性リンパ球、特にCD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の拡大及び活性化のためのインビトロ方法によって得ることができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
免疫監視説によれば、免疫系は発達中の腫瘍に対して継続的に感作される。この考えは、実験的証拠により強力に支持されている。特異的腫瘍抗原の同定は腫瘍免疫療法の新たな可能性を生み出し、今や多くの免疫療法アプローチが臨床試験に移されつつある。とりわけ、腫瘍抗原特異的リンパ球の養子免疫細胞移入は、特に見込みがありそうである。これら試みは、今までのところ、通常、末梢血由来の単核細胞又は新鮮な腫瘍標本から分離した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のいずれかをベースにしている。最近の臨床試験、拡大された(expanded)TILの自己移入による悪性メラノーマ患者の治療では、51%までの客観的応答率が報告されている。TIL細胞は少なく、しばしば、腫瘍の免疫抑制機構に起因して不反応性(アネルギー(anergic))であり、拡大の生起に長期間(数ヶ月)要する。更に、このプロトコルは、CD8+細胞傷害性T細胞の拡大を目的とし、この細胞は、化学療法で予め条件付けられた患者に再導入され、加えて患者は、CD8+T細胞の生存を提供するための高用量インターロイキン‐2で治療される。
【0003】
血管形成は、血管新生とも呼ばれ、それによって新規な血管が形成される重要なプロセスである。通常の生理学的条件下で、血管形成は高度に調節され、生殖、胚形成、組織修復及び創傷治癒に必須である。しかしながら、血管形成は、腫瘍の成長及び転移、炎症性障害、例えば慢性関節リウマチ、乾癬、骨関節症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、並びに眼の血管新生に伴う様々な眼の障害を含む様々な病的状態でも起こる。事実、血管形成は、成長因子、サイトカイン及び他の生理学的分子などの様々な血管形成を推進する刺激、並びに低酸素状態及び低pHなどの他の要因に応答して起こる。
【0004】
新規な血管の発生のための血管形成カスケードは、必要な細胞プロセス、例えば細胞外マトリクス(ECM)リモデリング、浸潤、移動、増殖、分化及び管形成を調節する様々な分子の協同を必要とする。開始フェーズ後、VEGF、bFGF、PDGFなどのような血管形成を推進する分子は、それらの細胞表面レセプター(例えば、VEGFR1/Flt―1及びVEGFR2/Flk―1/KDR)の刺激を介して、内皮細胞を活性化する。これらの活性化された細胞は、細胞増殖のプロセス、細胞接着分子の発現の上昇、タンパク質分解酵素の分泌の増加並びに細胞移動及び侵潤の増加を行う。多くの異なる分子が、増殖及び浸潤の促進に関わっており、接着のためのインテグリン、セレクチン及びイムノグロブリン遺伝子スーパーファミリーのメンバー、並びに細胞外マトリクス分解のためのタンパク質分解酵素、例えばマトリクスメタロプロテイナーゼ及びセリンプロテイナーゼを含む。最後に、細胞表面レセプターに由来する生化学的シグナルの複雑なカスケードは、細胞外マトリクス成分及び可溶性因子と相互作用し、管腔形成及び成熟血管への分化に導く。
【0005】
上述のような様々な障害とのVEGFの本来的な関係のために、VEGFは、抗ガン療法、特に慣用の化学療法、放射線療法及び他の抗血管形成剤との組合せにおいて、魅力的な標的として考えられてきた。多数の血管形成インヒビター(VEGF及びVEGF関連インヒビター)は、当該技術分野において公知である。数例だけを記述すると;VEGF阻害アプタマー;例えば、Macugen(登録商標)(ペガプタニブ、Pfizer社)、抗体又はそのフラグメント;例えば、アバスチン(登録商標)(ベバシズマブ、Genentec社)のような抗VEGF抗体又はそのフラグメント、例えばルセンティス(登録商標)(ラニビズマブ、Genentec社)は、市場に存在している。
【0006】
しかしながら、上記で指摘したように、例えばアバスチン(登録商標)の使用は、何らかの療法効果を得るために、細胞増殖抑制性化合物と組み合わせた療法を必要とする。更に、例えばアバスチン(登録商標)の使用は、組合せ療法として用いられるとき、多くの望まない副作用を示した。主な副作用は、高血圧及び出血リスクの高まりである。腸管穿孔が報告された。脳の毛細血管漏洩症候群、鼻中隔穿孔及び腎臓血栓性細小血管障害も報告された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の開示
ガン治療において、(例えばWO 2004/032951及びWO 2007/071388(同一出願人)に従って本明細書に開示される方法によって得られた)腫瘍反応性Tリンパ球を、1以上のVEGFインヒビターと組み合わせて使用することで、ガンを効率的な方式で治療できると考えられる。とりわけ、改良治療法が得られると考えられる。したがって、本明細書に記載されるような免疫療法又はVEGFインヒビターのいずれかを用いた治療と比べて、改良治療法が得られると考えられる。VEGFインヒビターの使用によって血管形成のブロックを創出することで、酸素欠乏の増加、すなわち無酸素状態が起こり、結果として、ガン細胞の壊死が生じ、免疫系に取り込まれ、免疫系への提示及び免疫系の活性化の増大を引き起こす。したがって、VEGFインヒビターと組み合わせた免疫療法は、互いに相補するようである。下記の1以上の有益な効果を得ることができる:
【0008】
(a)全体的な生存率の改善(好ましくは、1以上のVEGFインヒビターを用いない腫瘍反応性Tリンパ球の治療と比べて、或いは、同一のVEGFインヒビター及び特定の型のガンの治療に通常採用される細胞増殖抑制性化合物での治療と比べて)、すなわち、少なくとも10%、例えば少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%又は少なくとも約80%の改善;
(b)腫瘍サイズの減少(充実性腫瘍の場合);腫瘍サイズは、RECIST基準を用いたCTスキャン、MRI又は超音波によって測定でき、減少は少なくとも10%、例えば少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%又は少なくとも約80%である。
(c)例えばRECIST基準を用いたCTスキャンによって測定した、転移の退縮;退縮は少なくとも10%、例えば少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%又は少なくとも約80%である。
(d)有害な副作用の頻度の減少
(e)副作用の規模の減少
(f)腫瘍反応性Tリンパ球の用量及び/又は1以上のVEGFインヒビターの用量の減少(1以上のVEGFインヒビターを用いない腫瘍反応性Tリンパ球治療での腫瘍反応性Tリンパ球の用量と比べて、或いは、同一のVEGFインヒビターと特定の型のガンの治療に通常採用される細胞増殖抑制性化合物との治療と比べて)、すなわち、少なくとも10%、例えば少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%又は少なくとも約80%の腫瘍反応性Tリンパ球及び/又は1以上のVEGFインヒビターの用量の減少。
【0009】
本発明による該当するTリンパ球は、リンパ節、典型的には、センチネルリンパ節(SEAL)及び/又はメチネルリンパ節(MEAL)に由来すると理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、とりわけ
a)1以上のVEGFインヒビター及び
b)腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球
を含む組成物に関する。
【0011】
上述のように、このような組成物は、通常、活性成分の1つをそれぞれ含む2つの別個の製剤を含む。更に、用いられる腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)とは異なる。
更に、同一の投薬量/量の成分の単独投与と比べて、組合せの相加的又は相乗的効果が期待される。
【0012】
組合せ療法は、腫瘍反応性細胞がセンチネルリンパ節又はメチネルリンパ節に由来し得る場合に特に適切である。このような場合、腫瘍反応性細胞は同一の患者由来であり得る。すなわち、細胞は自己由来である。
しかしながら、いくつかの場合において、同種移植が効果的な治療を提供し得ることは排除できない。
【0013】
定義
用語「腫瘍反応性Tリンパ球」は、腫瘍抗原に特異的なT細胞レセプターを有し、該腫瘍抗原を認識するTリンパ球を意味すると意図される。
用語「Tヘルパー細胞」は、活性化されると適応性免疫応答を促進するTリンパ球を意味すると意図される。
【0014】
用語「Th1細胞」は、IFN‐γのようなサイトカインを使用して活性化されると、細胞媒介性免疫応答を促進するTヘルパー細胞を意味すると意図される。
用語「Th2細胞」は、IL‐4のようなサイトカインを使用して活性化されると、体液性免疫応答を促進するTヘルパー細胞を意味すると意図される。
用語「CD4+ヘルパーTリンパ球」は、CD4を発現するTリンパ球を意味すると意図される;すなわち、それらは、高いCD25の発現及びFOXP3の発現のようなマーカーを有する調節性T細胞としてみなされないCD4+Tリンパ球である。
【0015】
用語「CD8+Tリンパ球」は、CD8を発現するTリンパ球を意味すると意図される。
用語「調節性Tリンパ球」は、転写因子FoxP3を発現し、適応性免疫応答を抑制するTリンパ球を意味すると意図される。
【0016】
用語 Tリンパ球の「特異的活性化」は、抗原特異的でMHC制限されたT細胞レセプターが媒介する活性化を意味すると意図される。これに対し、用語 Tリンパ球の「非特異的活性化」は、T細胞レセプターの特異性にかかわらず、全てのT細胞の全般的な活性化を意味すると意図される。
【0017】
用語「腫瘍浸潤リンパ球」又は「TIL」は、血流を去り、腫瘍内に移動した白血球を意味すると意図される。治療用のTILは、通常、インビトロ操作され、インビボ投与後に腫瘍に再浸潤し、腫瘍細胞溶解を開始する自己由来TILからなる細胞製剤である。治療用のTILは、腫瘍組織から単離される。したがって、TILを定義するのは、リンパ球の位置である。定義によって、TILは、腫瘍組織において採取されたリンパ球である。しかしながら、機能的にそれらはしばしば異なる。なぜなら、それらは、本発明者らが最近見出したように、腫瘍に誘発される抑制を受け、例えば機能的な抗腫瘍応答の停止を示す後成的なマーカーを含有するからである(P Jansson、 J immunol、2008)。
【0018】
用語「腫瘍由来抗原」は、腫瘍細胞、腫瘍のホモジネート(該ホモジネートは変性されていてもよい)、又は例えば精製、天然、合成及び/若しくは組換えのタンパク質、ポリペプチド若しくはペプチドの形態の、腫瘍タンパク質、ポリペプチド若しくはペプチドを含むと意図される。腫瘍由来抗原は、無傷の(intact)分子、そのフラグメント、又は無傷の分子及び/若しくはフラグメントの多量体若しくは凝集体であり得る。適切なポリペプチド及びペプチドの例は、約5〜約30或いは約1〜1000アミノ酸、例えば約10〜25アミノ酸、約10〜20アミノ酸又は約12〜18アミノ酸、或いは例えば約30〜50アミノ酸、約70〜100アミノ酸、約200〜500アミノ酸又は約500〜1000アミノ酸を含むものである。(例えば本明細書の参考例1に記載の方法に類似した方法で)ペプチドが用いられる場合、培養物中の最終モル濃度は、通常、約0.1〜約5.0μM、例えば約0.1〜約4.0μM、約0.2〜約3.0μM、約0.3〜約2.0μM又は約0.3〜約1.0μMが用いられ得る。腫瘍由来抗原は、自己由来であってもよいし、非自己由来であってもよい。すなわち、腫瘍由来抗原は、治療すべき患者から生じていてもよいし、ガンを罹患している別の対象から取得してもよい。本明細書の実施例では、本発明者らは、自己由来の変性腫瘍抽出物を使用するが、上述のように、腫瘍由来抗原の他の供給源もまた、本発明による使用に使用可能であり得る。
【0019】
用語「センチネルリンパ節」は、腫瘍からのリンパ液排出を受ける最初のリンパ節を意味すると意図される。用語「メチネルリンパ節」は、転移からのリンパ液排出を受ける最初のリンパ節をいう。
【0020】
用語「副作用の頻度の減少」は、組合せでの治療を用いた臨床試験で観察された有害な副作用が、成分を単独で用いて治療を行った場合よりも低頻度であることを意味すると意図される。
【0021】
用語「有害な副作用」は、疾患の予防、診断若しくは治療のために、又は生理的機能の改変のために、ヒトに通常用いられる用量で起こる、薬剤に対する不快で意図されない応答を意味すると意図される。
【0022】
用語「副作用の規模の減少」は、任意の測定可能な副作用の測定された規模及び/又は頻度が減少することを意味すると意図される。
【0023】
上述のように、組合せの投与は相加的又は相乗的な効果をもたらし得る。相加的な効果は、得られる効果が、組合せが単独で投与される場合に得られる効果の「総和」に対応する場合に典型的に存在する一方、相乗的な効果は、得られる効果が、組合せが単独で投与される場合に得られる効果の「総和」よりも大きい場合に存在する。どちらの状況も、より低量の成分を用いて十分な効果を得ることが可能であり得るという点で有利である。
【0024】
用語「モノクローナル抗体」は、すべてが単一の親細胞のクローンである一種の免疫細胞によって産生され、同一であるモノ特異的抗体を意味すると意図される。この定義は、VEGF又はVEGFレセプターとの該当する免疫反応性を保持する抗体のフラグメント、一部又は形態を意味することも意図する。
【0025】
抗原決定基としても知られる用語「エピトープ」は、免疫系によって認識されるマクロ分子の部分を意味すると意図される。
用語「ポリクローナル抗体」は、異なる複数のB細胞系列に由来する抗体を意味すると意図される。それらは特異的抗原に対して分泌されるイムノグロブリン分子の混合物であり、異なるエピトープをそれぞれ認識する。
【0026】
用語「VEGF」は、血管内皮成長因子タンパク質として分類されたタンパク質のクラスを意味すると意図される。この定義は、VEGFの任意のサブタイプ、異型又はエピトープを意味することも意図する。
【0027】
置換可能に用いられる用語「VEGFインヒビター」、「抗血管形成化合物」、「血管形成インヒビター」は、血管内皮成長因子(VEGF)の活性又は産生を阻害する化合物を意味すると意図される。それは、例えばタンパク質、例えばモノクローナル抗体、抗体、抗体又はペプチド(環式又は非環式)のフラグメント、核酸、siRNA、核酸レベルでVEGFの発現を阻害するリボザイム及びVEGFを阻害する小分子を指す。この用語は、VEGFのすべての異型、サブタイプ及びエピトープのインヒビターを意味することも意図する。
【0028】
置換可能に用いられる用語「医薬的な賦形剤」又は「医薬的に許容される賦形剤」は、医薬の活性成分のために、担体として用いられる任意の治療上不活性な物質を意味すると意図される。
用語「該当するTリンパ球」は、標的とされるガンの型に特異的な腫瘍反応性CD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球を意味すると意図される。
【0029】
用語「組成物」は、単独又は任意の組合せのいずれかで、組成物を構成する1以上の別個の実体又は製剤を意味すると意図される。それゆえ、この用語は、それぞれ別個の製剤中の該当するTリンパ球、1以上のVEGFインヒビター及び任意に化学療法化合物;又は1つの別個の製剤中の該当するTリンパ球、並びに別の1つ又は他方の別個の製剤中の1以上のVEGFインヒビター及び任意に化学療法化合物のいずれかを意味するのに用いられる。この用語は、すべての活性成分が、同一の時点において、同一の投与経路を介して投与されるべきであるという前提では、該当するTリンパ球、VEGFインヒビター及び任意に化学療法化合物の1つの単一組成物を指すためにも用いられてよい。
【0030】
以下では、用語「免疫療法成分」はTリンパ球成分を指すために用いられ、「抗血管形成成分」は1以上のVEGFインヒビターを含む成分を指すために用いられる。すなわち、本発明の組成物に必須の2つの成分を意味するのに用いられる。
【0031】
免疫療法成分‐腫瘍反応性Tリンパ球
本発明者らは、センチネルリンパ節のような、二次リンパ器官の高度に特化されたミクロ環境内で、ナイーブなTリンパ球の活性化が起こり得ることを以前に示している。言い換えれば、センチネル節は、腫瘍抗原に遭遇する免疫系の一次部位とみなされ得る。
【0032】
本発明者らは、センチネルリンパ節からの腫瘍反応性Tリンパ球の拡大のための一般的な方法を以前に開示しており、腫瘍反応性Tリンパ球の培養物を得るために、センチネルリンパ節から得られたTリンパ球を培養できることを示している(WO 2004/032951及びWO 2007/071388、参照として本明細書に含まれる)。腫瘍反応性Tリンパ球は、センチネル節を除去した患者に有効量の腫瘍反応性Tリンパ球を投与することによって、ガンを治療するのに用いられる。
【0033】
該当するTリンパ球は、腫瘍反応性CD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の拡大のための方法によって得られ、該方法では、可能な限り短い時間期間内で多数の腫瘍反応性Tリンパ球を得るために、特異的な培養条件を決定し、最適化し、そして拡大フェーズの間を通して、Tリンパ球上の、及び培養培地中の特異的マーカーをモニターする。更に、本発明は、同時に、特定の亜集団に対して、腫瘍反応性CD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の発生を方向付けるための方法を提供する。Tリンパ球は、CD4+CD25+Hiリンパ球ではない。すなわち、本発明は、調節性Tリンパ球を包含しない。
【0034】
転写因子FoxP3を発現するCD4+CD25HiTリンパ球は、調節性T細胞(Treg)と考えられる。Tregは、活性化及び増殖を阻害することによって、Tヘルパー細胞及び細胞傷害性T細胞を調節する特性を有し、更に、Tregは、IFN‐γのような有用なTh1サイトカインの産生及び放出を阻害する。したがって、本発明による方法は、Treg細胞の拡大を回避するためにも、Tヘルパー細胞及びT細胞傷害性T細胞の拡大を促進する。
【0035】
活性化され増殖中のCD4+ヘルパーTリンパ球は、産生される特定のサイトカインに基づいて定義される2つの主要なサブタイプの細胞であるTh1細胞及びTh2細胞に分化できる。Th1細胞は、インターフェロン-γ及びインターロイキン12(IL‐12)を産生する一方、Th2細胞は、インターロイキン‐4、インターロイキン‐5及びインターロイキン‐13を産生する。Th1Tリンパ球は、細胞傷害性Tリンパ球(Tc)、NK細胞、マクロファージ及び単球(これらは全て、ガン細胞を攻撃でき、一般的には腫瘍に対して防御できる)の活性化を促進すると考えられている。
【0036】
タイプTh1及びTh2のTヘルパー(CD4+)リンパ球は、メモリー細胞及びエフェクター細胞に分化できる。メモリーTヘルパー(CD4+)リンパ球は、それらが最初に遭遇した抗原に特異的であり、二次免疫応答の間に召集されて、当該腫瘍抗原に対してより迅速で規模の大きな応答を引き起こすことができる。ヒトにおいて、リンパ球が少なくとも20年(おそらく生涯)生存するという証拠が存在する。エフェクターCD4+Tリンパ球は、サイトカイン及びINF‐γを産生する活性な細胞である。
【0037】
したがって、本発明によって包含されるのは、サブタイプTh1及びTh2を含むCD4+ヘルパーTリンパ球、並びにそれらに由来するメモリー細胞及びエフェクター細胞、並びにCD8+Tリンパ球の使用である。
【0038】
参考例に記載の方法によって非常にしばしば生成される腫瘍反応性Tリンパ球は、CD4+ヘルパーTリンパ球である。拡大方法の1つの目的は、いくつかの点で、患者自身の免疫系の天然の経路を模倣し、そして患者の免疫系の構成要素に、最初の段階で、抗原がMHC Iによって提示されるか又はMHC IIによって提示されるのかに依存して、CD4+ヘルパーTリンパ球を生成するのか、又はCD8+Tリンパ球を生成するのかを、ある程度決定させることである。ほとんどの場合、抗原はクラスII MHC分子によって提示され、CD4+ヘルパーTリンパ球の生成に導く。しかしながら、いくつかの場合、CD8+Tリンパ球が生成される。CD4+ヘルパーTリンパ球が生成される場合、それらは、本明細書に記載されるようにして、更に拡大される;しかしながら、この方法は、CD8+細胞の拡大のためにも用いられてよい。本発明者らは、該当するTリンパ球の拡大のための詳細な方法を以前に提示している(WO2007/071388及びWO2004/032951、参照として本明細書に組み込まれている)。しかしながら、有意な含有量のTreg細胞なしで、すなわち、多くとも1%の細胞がTreg細胞であり、好ましくはどの細胞もTreg細胞でなく、CD4+ヘルパーTリンパ球及び/又はCD8+Tリンパ球が生成されるのであれば、他の方法が用いられてもよい。
【0039】
Th2細胞は、B細胞を刺激するサイトカインを産生する。これは腫瘍収縮を生じない。したがって、著しいTh2細胞の出現は避けなければならない。その代わり、Th1細胞は、CD8細胞傷害性細胞を促進し、したがって、腫瘍細胞を破壊する。Th2型の腫瘍反応性Tリンパ球の生成を実質的に回避するために、Th2型Tリンパ球の発生に拮抗できる1以上の物質を加えて、拡大を行ってもよい。このような物質の例は、インターロイキンIL‐4、IL‐5、IL‐10及び/又はTGF‐β(後者はインターロイキンでない)を中和できる物質であり、これら4つすべては、Th2サイトカインのプロフィールの確立及びTh1サイトカイン産生のダウンレギュレートに必要とされる。
【0040】
このような物質の例は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、可溶性レセプター、抗体、アフィボディ、及びそれらのフラグメント、融合タンパク質、合成及び/又は有機分子(例えば小分子)、並びに天然リガンドを含む。具体的な実施態様では、この物質は、インターロイキンに結合し、それによりそれらを中和する抗体(例えば抗IL‐4抗体、抗IL‐5抗体及び/又は抗IL‐10抗体)並びに可溶性レセプター(例えばTGF‐βレセプターI及びII)及びTGF‐βに関する結合性タンパク質(例えばLAP及び/又はLTBP)から選択される。
【0041】
Th2型Tリンパ球の発達に拮抗し得る1以上の物質(例えば、IL‐4、IL‐5、IL‐10及び/又はTGF‐βを中和し得る1以上の物質)は、第2フェーズii)の1日目に添加してもよい(本明細書の参考例1参照)。しかし、抗体は高価であるので、抗体の添加は、Tリンパ球上のIL‐12Rをアップレギュレートし得る物質の添加後の後工程において、例えば、Tリンパ球上のIL‐12Rをアップレギュレートし得る物質の添加の1日後、2日後又は3日後に実施することも可能である。
【0042】
この中和物質は、インターロイキンを中和するに十分な量で、例えば、中和すべきインターロイキン量の10〜100倍(モル)過剰に添加すべきである。抗体を使用する場合、約2〜約4ng/ml培養培地の最終濃度が通常必要である。他の型の中和物質に関しては、抗体について言及した濃度と同じ効果を与える最終濃度を使用すべきである。
【0043】
Th2型Tリンパ球の発達の抑制を維持するために、更なる量のTh2型Tリンパ球の発達に拮抗し得る1以上の物質(例えば、IL‐4、IL‐5、IL‐10及び/又はTGF‐βを中和し得る1以上の物質)が、拡大物に定期的に、例えばフェーズii)の2日毎、3日毎又は4日毎に添加されてもよい。用語 2日毎、3日毎又は4日毎は、Th2型Tリンパ球の発達に拮抗し得る少なくとも1つの物質が、該Th2型Tリンパ球の発達に拮抗し得る少なくとも1つの物質の最初の添加の2日後、3日後又は4日後に開始され、拡大を通して2日毎、3日毎又は4日毎に添加されることを意味することを意図されると理解されるべきである。
【0044】
Th1型腫瘍反応性Tリンパ球の生成に有利にするために、第2フェーズii)(本明細書の参考例1を参照)は、Th1型Tリンパ球の発達を促進する1以上の物質を添加することを含んでなってもよい。このような物質の例は、IL‐7、IL‐12、IL‐15及び/又はIL‐21レセプターに対するアゴニスト活性を有する物質である。より具体的には、この物質は、IL‐7、IL‐12、IL‐15及び/又はIL‐21レセプターのアゴニストであり得る。このようなアゴニストの例としては、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、アフィボディ、及びそれらのフラグメント、融合タンパク質、合成及び/又は有機分子(例えば、小分子)並びに天然リガンドを含む。具体的な実施態様では、この物質は、IL‐7、IL‐12、IL‐15及び/又はIL‐21レセプターの天然リガンド(例えば、それぞれIL‐7、IL‐12、IL‐15及び/又はIL‐21)である。
【0045】
IL‐12の効果は、IL‐12Rを刺激し、そのことによりTh1リンパ球の活性化を促進することによってIFN‐γ誘導性STAT経路を活性化することである。IL‐21の機能は、Tリンパ球の増殖、活性化及びTh1型への発達を増強することである。
IL‐7及びIL‐15は共に、Tリンパ球の恒常的拡大を促進し、活性化されTh1プログラムされたTリンパ球の列挙(enumeration)を増強することにより働く。
【0046】
該当するTリンパ球を提供するために用いられる拡大方法は、好ましくは、Th1型のCD4+腫瘍反応性Tリンパ球を提供するものである。1つの更なる本発明の観点は、腫瘍反応性Tリンパ球の拡大のために本明細書に記載される方法を用いることによって、比較的多量のメモリー型のTリンパ球が得られることである。ガン治療において、上述のように、それらが細胞傷害性Tリンパ球(Tc)、NK細胞、マクロファージ及び単球の活性化を促進し、それらすべては、ガン細胞を攻撃でき、腫瘍に対して一般に防御できるため、治療される患者が多量のエフェクター腫瘍反応性CD4+Tリンパ球を受容することはもちろん重要である。
【0047】
したがって、本発明による該当するTリンパ球(CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+反応性Tリンパ球)は、腫瘍由来抗原と、IL‐2レセプターに対するアゴニスト活性を有する少なくとも1つの物質とで、腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球を刺激して、腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の生存を促進し;腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の成長を活性化及び促進することによって得ることができる。ここで、第2フェーズii)は、CD25細胞表面マーカー(又はIL‐2Rマーカー)がCD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球上でダウンレギュレートされると開始する。
【0048】
同時に十分な量のメモリー腫瘍反応性CD4+Tリンパ球を投与することによって、患者は、腫瘍の再発又は原発腫瘍の転移に対する保護を終生獲得する。
【0049】
本明細書の参考例1から明らかなように、Tリンパ球上での細胞表面活性化マーカーCD25及びCD69の発現は、例えば、いつ第2フェーズii)を開始するかのような、本発明の方法の重要なステップをいつ開始するかを決定するために用いられ得る。したがって、例えば2日毎、3日毎又は4日毎のような、フェーズi)及びフェーズii)の間を通してCD25及びCD69の発現を継続的にモニターするのに有益であり得る。しかしながら、本明細書に開示される拡大方法のほかに、他の方法も適切であり得る。参考例1に記載の方法の1つの利点は、細胞の高収率及び選択対象のTリンパ球を提供する方向にプロセスを向かわせる可能性である;しかしながら、例えば低収率が許容される状況があり得、その時には他の方法も用いられてよい。
【0050】
本発明の目的の1つとして、患者に投与するために用いられ得る特異的CD4+腫瘍反応性Tリンパ球を含む組成物を得ることがあり、腫瘍反応性Tリンパ球は、拡大ステップの終了に至るある時期に採取されてもよい。腫瘍反応性Tリンパ球を採取するのに最適の時点は、Tリンパ球上でCD25の発現がダウンレギュレートされるときであり、ダウンレギュレートは、CD4+Tリンパ球及び/又はCD8+Tリンパ球の集団の5%以下がCD25を発現することと定義される。採取するのに最適の時点は、産生されたIFN‐γ量の測定に基づいても決定され得る。IFN‐γ産生は、最初のIFN‐γ産生と比べて、例えば少なくとも3倍、少なくとも4倍又は少なくとも5倍増加のような少なくとも2倍増加しているべきであり、これは、通常、少なくともIFN‐γ 100 pg/ml培養培地のレベルに対応する。
【0051】
腫瘍反応性Tリンパ球の投与を含むガン治療の成功は、例えばセンチネル節からの細胞を拡大した後に得られた腫瘍反応性Tリンパ球の量、すなわち患者への注入に利用できる腫瘍反応性Tリンパ球の量、有効量の腫瘍反応性Tリンパ球を得るために必要な時間、並びに使用された拡大方法によって得られた腫瘍反応性Tリンパ球の特異的亜集団の濃度及び比率のような要因によって決定される。これらすべての成功要因は、治療が1以上のVEGFインヒビターと組み合わせられるときも重要であると考えられる。
【0052】
「腫瘍反応性Tリンパ球」の見出しでこの節に記載される全詳細は、免疫療法成分及び血管形成成分を含む組成物に含まれるTリンパ球についてもあてはまる。
【0053】
抗血管形成成分‐血管形成インヒビター、とりわけVEGFインヒビター
血管内皮増殖因子(VEGF)は増殖因子のサブファミリー、より具体的には、システイン結節増殖因子の血小板由来増殖因子ファミリーのサブファミリーである。それらは、脈管形成(胚循環系のデノボ形成)及び血管形成(既存の脈管構造からの血管の成長)の両方に関わる重要なシグナル伝達タンパク質である。最も重要なメンバーはVEGF‐Aである。他のメンバーは、胎盤増殖因子(PlGF)、VEGF‐B、VEGF‐C及びVEGF‐Dである。ウイルスにコードされる(VEGF‐E)、及びいくつかの蛇の毒中の(VEGF‐F)、多くのVEGF関連タンパク質も発見されている。
【0054】
VEGF固有の特徴が原因で、このクラスのタンパク質は、ガン治療において非常に興味深く、VEGFインヒビター又はVEGFによって刺激されるチロシンキナーゼインヒビターとしてタンパク質、モノクローナル抗体又は抗体誘導体及び小分子を用いた療法における関心の的であった。モノクローナル抗体又は抗体誘導体の例は、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標)、転移性結腸直腸ガン、非小細胞性肺ガン及び転移性乳ガンの指示薬に用いられる)及びラニビズマブ(ルセンティス(登録商標))である。小分子インヒビターの例は、スニチニブ(スーテント(登録商標))、ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標))、N‐メチル‐2‐[[3‐[(E)‐2‐ピリジン‐2‐イルエテニル]‐1H‐インダゾル‐6‐イル]スルファニル]ベンズアミド(アキシチニブ(登録商標))、及び5‐[[4‐[(2,3‐ジメチル‐2H‐インダゾル‐6‐イル)(メチル)アミノ]ピリミジン‐2‐イル]アミノ]‐2‐メチルベンゼンスルホンアミド(パゾパニブ(登録商標))である。
【0055】
しかしながら、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))の場合、この療法は、何らかの療法効果を得るために、5‐フルオロウラシル‐ベースの化学療法又はパクリタキセルのような標準的な化学療法と組み合わせられなければならないことが判明している。組合せ療法の必要性に加えて、アバスチン療法の間、胃腸(GI)の穿孔、外傷治癒の合併症及び出血のような多数の副作用が見出されている。
【0056】
上記のように、VEGFインヒビターの役割は、主に腫瘍組織内の血管形成を阻害し、それによって腫瘍の増殖を停止させることである。血管内皮増殖因子(VEGF)に媒介される血管形成は、腫瘍の増殖及び転移に重大な役割を担うと考えられている。その結果として、抗VEGF療法は、可能性のある抗ガン治療として、慣用の化学療法又は放射線療法の代替法又は付加法のいずれかとして、活発に研究されている。1)VEGF又はVEGFレセプターに対するモノクローナル中和抗体、2)VEGFレセプターの小分子チロシンキナーゼインヒビター、3)VEGFの偽レセプターとして作用する可溶性VEGFレセプター、及び4)VEGF mRNAを特異的に標的とするリボザイムは、VEGF経路をブロックするために用いられる技術である。フェーズIII臨床試験からの最近の証拠は、当該技術分野において公知の他の慣用の化学療法剤と組み合わせた転移性結腸直腸ガン腫の1回目の療法として、抗VEGFモノクローナル抗体であるベバシズマブを、FDAによる許認可に導いた。
【0057】
それゆえ、本発明による組成物は、VEGFインヒビター、例えば、VEGF又はVEGFレセプターに対するモノクローナル中和抗体、VEGFレセプターの小分子チロシンキナーゼインヒビター、VEGFの偽レセプターとして作用する可溶性VEGFレセプター、及びVEGF mRNAを特異的に標的とするリボザイム、或いはそれらの任意の組合せを含んでいてもよい。
【0058】
他の潜在的に有用なVEGF又は関連するインヒビターは:
すべてのサブタイプを含む抗VEGF A、B、C、D、E又はF
抗VEGFレセプター1又は2、抗FLT1又は4
抗KDR
抗NRP1又は2
抗VEGFR1〜4
抗ARHGEF4
抗プロキネチシン1
抗ニューロピリン1
抗コルチコトロピン放出因子レセプター2
抗FIGF
の1以上に属しているとして分類されるモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体又は組換え抗体である。
【0059】
任意の血管形成インヒビターは、免疫療法と組み合わせて用いられ得ると考えられる。したがって、インヒビターは、抗VEGF抗体(例えば、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体又は組換え抗体)又はそのフラグメントを含むVEGFインヒビターであってもよい。免疫療法、とりわけ本明細書に例示される免疫療法と組み合わせて使用するための血管形成インヒビターは、特に本明細書に開示されるものを含む。
【0060】
「血管形成インヒビター、とりわけVEGFインヒビター」の見出しでこの節に記載される全詳細は、免疫療法成分及び抗血管形成成分を含む組成物に含まれるVEGFインヒビターについてもあてはまる。
【0061】
組合せ療法
本発明者らは、驚くべきことに、1つ又はいくつかのVEGFインヒビターと、CD4+ヘルパーTリンパ球及び/又はCD8+Tリンパ球(例えば、本明細書に記載の方法によって取得可能)との単一の組成物、又は1以上のVEGFインヒビターを含む1つの組成物とTリンパ球を含む1つの組成物との2つの別個の組成物のいずれかとして、その必要がある対象に投与された組成物が、1以上の上述の効果に導き得ることを見出した。
【0062】
Tリンパ球は、CD4+ヘルパーTリンパ球、CD8+Tリンパ球、Th1細胞、Th1細胞に由来するメモリー細胞、及び/又はTh1に由来するエフェクター細胞、並びにそれらの任意の組合せであってもよい。
【0063】
実際問題として、1つの特定の型のTリンパ球だけを含む100%純粋な細胞集団を得ることは、ほとんど不可能である。しかしながら、本明細書の実施例から理解されるように、通常CD4+及びCD8+Tリンパ球は、採用される組成物中の細胞集団の少なくとも35%を構成する;しばしばそれらは、(フローサイトメトリーで検出されるように)細胞集団の少なくとも60%、ほとんどの場合、85%以上を構成する。本発明の関係において、組成物の免疫療法成分が51%以上、例えば60%以上、75%以上、90%以上、又は95%以上のCD4+ヘルパーTリンパ球を含む場合に、組成物の免疫療法成分は、CD4+ヘルパーTリンパ球成分であると言う。同様に、組成物の免疫療法成分が51%以上、例えば60%以上、75%以上、90%以上、又は95%以上のCD8+Tリンパ球を含む場合に、組成物中の免疫療法成分は、CD8+Tリンパ球であると言う。
【0064】
ガンの効果的な治療のために、Th1型の腫瘍反応性Tリンパ球の投与は、この型が、細胞傷害性Tリンパ球(Tc)、NK細胞、マクロファージ及び単球の活性化を促進し、これらすべてが、ガン細胞を攻撃でき、一般に腫瘍に対して防御できると考えられているために、特に有益である。すなわち、ある特定の実施態様において、本発明は、免疫療法成分が少なくとも85%の腫瘍反応性CD4+ヘルパーTリンパ球を含む組成物に関する。一般的に、参考例に記載の方法によって生成されるTh2型のTリンパ球のパーセンテージは30%以下、例えば25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下又は0%である一方、少なくとも70%、例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%の腫瘍反応性CD4+Tリンパ球はTh1型である。
【0065】
上述のように、免疫療法成分が、相当な量のメモリー腫瘍反応性CD4+Tリンパ球を含む場合、有利である。メモリー腫瘍反応性CD4+Tリンパ球は、腫瘍の再発又は原発腫瘍の転移に対して、患者を終生保護することを可能にする。
【0066】
したがって、本発明は、免疫療法成分がメモリーTリンパ球を含む組成物も提供する。通常、本明細書の参考例1に従って腫瘍反応性Tリンパ球の培養物が拡大されるとき、約35%〜約90%、例えば約40%〜約90%、約50%〜約80%、又は約60%〜約70%のメモリー型である腫瘍反応性Tリンパ球が得られる。本発明者らは、フェーズi)のリンパ球が腫瘍抗原を添加する前に再生されるという事実は、比較的緩慢な拡大フェーズと併せて、メモリーリンパ球 対 エフェクターリンパ球の高い比の形成に導くと推測する。
【0067】
とりわけ、本発明は、本明細書の参考例1に開示される2ステップ方法によって得られる該当するTリンパ球と、VEGF又はVEGFレセプターに対するモノクローナル中和抗体、VEGFレセプターの小分子チロシンキナーゼインヒビター、VEGFの偽レセプターとして作用する可溶性VEGFレセプター及びVEGF mRNAを特異的に標的とするリボザイムのうちの1以上とを含む組成物に関する。
【0068】
本明細書に前述のように、組成物が単一の組成物、すなわち両方の活性成分、すなわち腫瘍反応性Tリンパ球とVEGFインヒビターとを含む1つの組成物であってもよいという状況があり得る。このような場合に、2つの活性成分は、非経口又は局所投与に適切な1つの組成物中に、とりわけTリンパ球に無害(すなわち、該細胞の特徴が維持され、該細胞が生存可能である)であり、VEGFインヒビターが可溶又は分散可能である媒体中に存在している。このような単一の組成物は、特定の型のガン及び治療に対する応答に依存して、1回又は高頻度若しくはより低頻度の間隔で数回の投与に適応できる。通常、組成物は1回の投与を意図されると考えられ、したがって、2つの活性成分の有効量(用量については、以下を参照されたい)を含まなければならない。しかしながら、このような単一の組成物は、治療されるべき疾患が、個々の活性成分(それぞれ、Tリンパ球及びVEGFインヒビター)の同時投与の恩恵を受けることを必要とする。
【0069】
しかしながら、本明細書に記載のように、活性成分の投与は、通常、時間的に分離され、したがって、本発明による組成物は、通常、同時に(若しくはほとんど同時に)又は逐次的(すなわち、一方の成分が、例えば時間0に投与され、他方はより遅い時間tに投与される)に投与されることを意図される2つの別個の製剤の形態にある。このような組成物は、用量及び投与形態に関して、より大きな変化を可能にする。したがって、免疫療法成分は、注射又は注入用非経口製剤の形態にあってもよい一方で、抗血管形成成分は、例えば皮下又は体腔内(例えば膣、膀胱等)に移植されるインプラントの形態にあってもよい。更に、成分のうちの1つは、1日1回より多い投与を行うことを可能にする形態に含まれていてもよい。したがって、本発明の目的から逸脱することなく変化に富んだ組合せを行い得ると考えられる。
【0070】
現在、細胞免疫療法及び抗血管形成療法は共に非経口投与を含む。しかしながら、細胞死のリスクが原因で、組成物は2つの別個の製剤中に保存され、そのまま投与されるか、又は投与前の比較的短い時間(1時間まで)に、2つの製剤が混合され、投与されるかのいずれかであるべきだと考えられている。しかしながら、他の投与経路は排除されない(以下を参照)。
【0071】
本発明による組成物の投与は、例えば腸内、非経口、他の非経口又は局所投与のような様々な当該技術分野において公知の経路によって行うことができる。
【0072】
非経口投与の例は、限定されないが、静脈内(静脈へ)、動脈内(動脈へ)、筋肉内、皮下、骨内注入、皮内、髄腔内又は腹腔内である。
【0073】
非経口投与は、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内、皮内、腹腔内、皮下などに医薬組成物を注射又は注入することによって達成することができる。
【0074】
他の非経口投与の例は、限定されないが、経皮、経粘膜、バッカル(歯肉腺近くの頬から吸収される)、インプラントである。他の投与方法は、限定されないが、硬膜外(硬膜上)又は硝子体内であってもよい。
【0075】
経皮投与は、経皮製剤を皮膚又は粘膜に塗布すること、貼ること、転がすこと、付着すること、注ぐこと、押し付けること、こすることなどによって行われる。
【0076】
局所投与の例は、限定されないが、皮膚上(皮膚への適用)、吸入、浣腸、点眼(結膜上)、点耳又は膣内である。
【0077】
腸内投与の例は、限定されないが、経口、胃ゾンデによる、十二指腸栄養管による、胃フィステル形成又は直腸内である。
経口投与は、薬剤及びその剤型を含む経口剤型の嚥下、咀嚼、吸引によって行われる。
経口剤型は、慣用の錠剤、カプセル、カプレット、液剤、懸濁剤、乳剤などであり得る。
慣用の錠剤は、即時に又は持続的に放出する経口錠剤であり得る。錠剤はまた、例えば異なるコーティング技術を適用することによって、特定の組織において医薬組成物を放出するように設計されていてもよい。したがって、錠剤は、薬剤放出の速度及び部位を制御するように、フィルム又は糖でコートされていてもよい。
【0078】
現在、細胞免疫療法は、例えば経口経路によって行うことができるとは考えられていないが、例えば口腔又は食道のガンが経口投与を介して治療され得ることは排除できない。例えば直腸ガン、結腸ガン、膀胱ガン、皮膚ガンなどを治療するための局所投与も選択肢である。
上述のように、現在用いられる投与経路は非経口である。
したがって、この観点が重要である。
【0079】
本発明による組成物を含む投与は、上述の投与経路のいずれかによって、別々に行われ得ることが理解される。組成物が、1つの組成物が該当するTリンパ球を含み、1つが1以上のVEGFインヒビターを含む2つの別個の組成物を有するキットを含むとき、投与は、該当するTリンパ球を含む組成物が非経口的に投与され、1以上のVEGFインヒビターを含む組成物が、目的に最適の投与方法に依存して、非経口的に、又は任意の他の該当する経路によって投与され得るように行われてもよい。
【0080】
本発明は、該当するTリンパ球とVEGFに対する1以上のモノクローナル抗体とを含む組成物に関し、ここでモノクローナル抗体は、限定されないが、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、Ab‐153、Ab‐309、Ab‐342(Chen J.H.ら、Biochemisry and molecular biology international 47(2): 161-9、1999 Febを参照)又はラニビズマブ(ルセンティス(登録商標))であり得る。
【0081】
本発明はまた、該当するTリンパ球及び1以上の小分子チロシンキナーゼインヒビターを含む組成物に関し、ここでチロシンキナーゼインヒビターは、限定されないが、スニチニブ(スーテント)、ソラフェニブ(ネクサバール)、アキシチニブ、及びパゾパニブ、ABT‐869、BIBF1120、4‐[(4‐フルオロ‐2‐メチル‐1H‐インドール‐5‐イル)オキシ]‐6‐メトキシ‐7‐[3‐(ピロリジン‐1‐イル)プロポキシ]キナゾリン(セジラニブ)、アミノ‐5‐フルオロ‐3‐[6‐(4‐メチル‐1‐ピペラジニル)‐1H‐ベンズイミダゾール‐2‐イル]‐2(1H)‐キノリノン(ドビチニブ)、3‐ピリジンカルボキシアミド、N‐(2,3‐ジヒドロ‐3,3‐ジメチル‐1H‐インドール‐6‐イル)‐2‐[(ピリジニルメチル)アミノ]‐N‐(3,3‐ジメチル‐2,3‐ジヒドロ‐1H‐インドール‐6‐イル)‐2‐[(ピリジン‐4‐イルメチル)アミノ]ピリジン‐3‐カルボキシアミド(モテサニブ)若しくは[N‐(4‐ブロモ‐2‐フルオロフェニル)‐6‐メトキシ‐7‐[(1‐メチルピペリジン‐4‐イル)メトキシ]キナゾリン‐4‐アミン(バンデタニブ)又はセツキシマブ、或いは任意のそれらの医薬的に許容される塩であり得る。
【0082】
本発明の組成物は、該当するTリンパ球と、VEGF mRNAを特異的に標的とする1以上のリボザイムとを含んでいてもよく、ここでリボザイムは、限定されないが、抗Flt‐1リボザイムであり得る。1つのこのような例は、Angiozyme(登録商標)(US 6,346,398)である。この観点は、他のハンマーヘッド型リボザイムも包含する。
【0083】
本発明の組成物は、従来の化学療法に用いられる、更なる医薬的活性化合物を含んでいてもよい。したがって、組成物は、アバスチン療法に用いられる化合物(これに限定されないが)を含んでいてもよい。したがって、組成物は、限定されないが、5‐フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、フマガリン、アントラサイクリン、例えばダウノルビシン、ドキソルビシン及びエピルビシン、カンプトテシン、例えばイリノテカン及びトポテカン、ビンクリスチン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、マイトマイシンC、マイトキサンスロン、フロキシウリジン、ゲムシタビン、メトトレキセート、ブレオマイシン、エトポシド、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン並びにゲニステインも含み得る。
【0084】
本発明は、該当するTリンパ球と、VEGF又はVEGFレセプターに対するモノクローナル/ポリクローナル/組換えの中和抗体、VEGFレセプターの小分子チロシンキナーゼインヒビター、VEGFの偽レセプターとして作用する可溶性VEGFレセプター、及びVEGF mRNAを特異的に標的とするリボザイムの1以上と、任意に、限定されないが、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、フマガリン、アントラサイクリン、例えばダウノルビシン、ドキソルビシン及びエピルビシン、カンプトテシン、例えばイリノテカン及びトポテカン、ビンクリスチン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、マイトマイシンC、マイトキサンスロン、フロキシウリジン、ゲムシタビン、メトトレキセート、ブレオマイシン、エトポシド、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン並びにゲニステインから選択される1以上の化学療法剤とを含む組成物の、ガン治療の医薬の製造における使用にも関する。
【0085】
本発明は、該当するTリンパ球と、VEGFに対する1以上のモノクローナル抗体とを含む組成物の、ガン治療の医薬の製造における使用にも関し、ここでモノクローナル抗体は、限定されないが、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、Ab‐153、Ab‐309、Ab‐342又はラニビズマブ(ルセンティス(登録商標))であり得る。
【0086】
本発明の組成物は、1以上の更なる医薬的賦形剤を含んでいてもよい。特に、免疫療法成分は、細胞の特徴及び生存能を維持するのに適切である一方、同時に哺乳動物(ヒト)の体内に注射するのに適切である(すなわち、安全でなければならない)媒体を含んでいてもよい。適切な媒体は、任意に、血清アルブミン、とりわけヒト血清アルブミン、及び/又はpH調整剤、例えばリン酸緩衝液を補充した等張性生理食塩水(0.9% w/w 塩化ナトリウム)であってもよい。
【0087】
特定の製剤又は組成物に依存して、賦形剤は、限定されないが、例えば
‐非経口投与について:水及びプロピレングリコールを含む溶媒、植物油、浸透圧調整剤、pH調整剤、無血清媒体、細胞栄養溶液又は細胞栄養物質、ヒト又は人工血清アルブミン、自家血清、血液と同じ等張性を任意に有していてもよい等張性媒体、生理食塩水溶液など、
‐腸内投与について:抗接着剤、結合剤、被覆剤、崩壊剤、充填剤/希釈剤、着香剤及び着色剤、pH調整剤、流動促進剤、滑沢剤、保存剤、吸着剤、甘味剤及び活性種の溶解速度を変化させる物質、無血清媒体、緩衝剤又は溶液、細胞栄養溶液又は細胞栄養物質、pH調整剤、ヒト又は人工血清アルブミン、自家血清、血液と同じ等張性を任意に有していてもよい等張性媒体、生理食塩水溶液、防腐剤から選択できる。
【0088】
本発明による組成物は、任意の解剖学的位置にある上皮性起源、間葉性起源又は胎生学的起源の任意の充実性新生物、例えば、上皮性新生物については、例えば胸部、結腸、膵臓、膀胱、小腸、前立腺、子宮頸、外陰部、卵巣のガン腫のような新生物;間葉性新生物については、例えば関節、骨、筋肉及び腱の肉腫のような新生物、並びにリンパ腫のような幾つかの血液学的新生物;胎生学的新生物については、例えば奇形腫のような新生物の治療に用いられてもよい。より具体的な例は、限定されないが、結腸直腸ガン、転移性結腸直腸ガン、乳ガン、転移性乳ガン、転移性腎臓細胞ガン腫、転移性多形神経膠芽細胞腫、転移性卵巣ガン、ホルモン不応性前立腺ガン、切除不能な局所進行性膵臓ガン、腎臓細胞ガン、卵巣ガン、不応性非小細胞肺ガン及び肺ガンである。
【0089】
とりわけ、本明細書に記載の治療は、胸部、結腸、直腸、膵臓、肝臓、胆嚢、胆管、膀胱、小腸、肺、前立腺、腎臓、子宮頸、外陰部、卵巣のガン腫、悪性メラノーマ、頭頸部ガン腫;関節、骨、筋肉及び腱の肉腫;リンパ腫;奇形腫;並びに上述の腫瘍の転移及び(手術不可能な)局所進行から選択されるガン治療に適合される。
【0090】
本発明の組成物は、少なくとも70%のガン特異的CD4+Tリンパ球がTh1型であり、30%以下のガン特異的CD4+Tリンパ球がTh2型であるガン型特異的CD4+Tリンパ球と、1以上のVEGFインヒビターと、任意にVEGFインヒビター、例えばVEGF若しくはVEGFレセプターに対するモノクローナル中和抗体、VEGFレセプターの小分子チロシンキナーゼインヒビター、VEGFの偽レセプターとして作用する可溶性VEGFレセプター、及びVEGF mRNAを特異的に標的とするリボザイムを含むアバスチン(登録商標)療法又は任意の療法に用いられる追加的な医薬的活性化合物とを含み得る。
【0091】
本発明の組成物はまた、約35%〜約90%がメモリー型であるガン特異的Tリンパ球と、1以上のVEGFインヒビターと、任意にVEGFインヒビター、例えばVEGF若しくはVEGFレセプターに対するモノクローナル中和抗体、VEGFレセプターの小分子チロシンキナーゼインヒビター、VEGFの偽レセプターとして作用する可溶性VEGFレセプター、及びVEGF mRNAを特異的に標的とするリボザイムを含むアバスチン(登録商標)療法又は任意の療法に用いられる追加的な医薬的活性化合物とを含んでいてもよい。
【0092】
本発明の組成物はまた、約10%〜約65%がエフェクターTリンパ球であるガン特異的Tリンパ球と、1以上のVEGFインヒビターと、任意にアバスチン(登録商標)療法で用いられる追加的な医薬的活性化合物を含み得る。
【0093】
本発明の組成物は、ガン特異的Tリンパ球(該組成物は、少なくとも100万、少なくとも500万、少なくとも1000万、又は少なくとも2000万又は少なくとも3000万又は少なくとも4000万又は少なくとも5000万又は少なくとも1億のガン特異的Tリンパ球を含む)と、1以上のVEGFインヒビターと、任意にアバスチン(登録商標)で用いられる追加的な医薬的活性化合物とを含んでいてもよい。細胞の用量は、疾患の重篤度に依存する。更に、腫瘍反応性Tリンパ球の不足が原因で、より低い用量も用いられ得る。
【0094】
本発明による組成物は、約1mg〜約2000 mg又は約70 mg〜約1400 mg又は約140 mg〜約1050 mg又は約210 mg〜約1050 mg又は約280 mg〜約1050 mg又は約350 mg〜約1050 mgの量のVEGFインヒビターを含み得る。
【0095】
本発明による組成物は、約0.1〜約50 mg/kg体重又は約0.5〜約30 mg/kg体重又は約1 mg/kg〜約20 mg/kg体重又は約2 mg/kg〜約15 mg/kg体重又は約3 mg/kg〜約15 mg/kg体重又は約4 mg/kg〜約15 mg/kg体重又は約5 mg/kg〜約15 mg/kg体重の用量でVEGFインヒビターを含み得る。
【0096】
上記のデータは、アバスチン(登録商標)に通常用いられる用量であり、他のVEGFインヒビターについて同じオーダーであると考えられる。しかしながら、当業者は、どのように正確な用量を決定するかを知っている。更に、VEGFインヒビターの用量は、わずかに、例えば約10%以上、例えば約20%以上、例えば約30%以上、例えば約40%以上、例えば約50%以上、例えば約60%以上、例えば約70%以上、例えば約80%以上減少させることができると考えられる。例えば、約10%の減少では、50 mg〜1250 mgの用量が十分であると期待される。
【0097】
本発明による組成物は、治療有効量の腫瘍反応性Tリンパ球と、治療有効量の1以上のVEGFインヒビターとを含む組成物であってもよいことが理解される。
【0098】
本発明による組成物は、2つの別個の製剤を含む組成物であってもよく、1つの製剤は治療有効量の腫瘍反応性Tリンパ球を含み、第2の製剤は治療有効量の1以上のVEGFインヒビターを含むことも理解される。治療有効量の1以上の化学療法剤は、存在する場合、更なる別個の製剤に含まれていてもよいし、又は1以上のVEGFインヒビターを含む製剤に含まれていてもよい。
【0099】
本発明による組成物は、2つの別個の組成物を含むキットであってもよく、1つの組成物は治療有効量の腫瘍反応性Tリンパ球を含み、第2の組成物は治療有効量の1以上のVEGFインヒビターを含むことが理解される。キットは、キット中の別個の組成物として、又は該当するTリンパ球若しくは1以上のVEGFインヒビターのいずれかと任意の順序で組み合わされた化学療法剤を任意に含んでいてもよい。
【0100】
治療方法
本明細書に前記の1以上のVEGFインヒビターと、腫瘍反応性Tリンパ球との組合せは、新生物起原の疾患の治療に用いられ得る。VEGFインヒビター、Tリンパ球、組成物、投与経路、用量などに関して、本明細書に記載される詳細及び特色のすべては、本発明の方法の観点に準用する。
【0101】
本明細書に記載の拡大方法によって得られる腫瘍反応性Tリンパ球及び1以上のVEGFインヒビターは、新生物起原の疾患を罹患している対象を治療するための方法、又は腫瘍を有する対象に腫瘍退縮をもたらすための方法に用いられてもよい。該方法は、その必要がある対象に、有効量の本発明による腫瘍反応性Tリンパ球と、有効量の1以上のVEGFインヒビターとを投与することを含む。方法はまた、単一組成物としての有効量の本発明による腫瘍反応性Tリンパ球及び有効量のVEGFインヒビターの投与を含んでいてもよいし、又は別個の組成物として投与されてもよい。ここで、その必要がある対象への投与は、同時又は任意の順序で逐次的であってもよい。方法はまた、第1の療法としての腫瘍反応性Tリンパ球の投与と、1以上のVEGFインヒビターと組み合わせた腫瘍反応性Tリンパ球の投与を含むその後の第2の療法を含む。
【0102】
本明細書に記載の方法は、任意の解剖学的位置にある上皮性起源、間葉性起源又は胎生学的起源の任意の充実性新生物、例えば、上皮性新生物については、例えば胸部、結腸、膵臓、脳、膀胱、小腸、前立腺、子宮頸、外陰部、卵巣のガン腫のような新生物;間葉性新生物については、例えば関節、骨、筋肉及び腱の肉腫のような新生物、並びにリンパ腫のような幾つかの血液学的新生物;胎生学的新生物については、例えば奇形腫のような新生物の治療に用いられてもよい。より具体的な例は、限定されないが、結腸直腸ガン、転移性結腸直腸ガン、乳ガン、転移性乳ガン、転移性腎臓細胞ガン腫、転移性多形神経膠芽細胞腫、転移性卵巣ガン、転移性ホルモン不応性前立腺ガン、切除不能な局所進行性膵臓ガン、腎臓細胞ガン、卵巣ガン、不応性非小細胞肺ガン及び肺ガンである。
有効量の腫瘍反応性Tリンパ球の定義は、Tリンパ球の具体種、メモリーTリンパ球とエフェクターTリンパ球との割合及び疾患の重篤度に依存している。しかしながら、平均して最低限少なくとも100万、少なくとも500万、少なくとも1000万、例えば少なくとも2000万、少なくとも3000万、少なくとも4000万、少なくとも5000万、少なくとも6000万、少なくとも7000万、少なくとも8000万又は少なくとも1億の腫瘍反応性Tリンパ球が投与され得る。本発明者らは、単回用量で投与される腫瘍反応性Tリンパ球の量に関して、如何なる上限も特定していない。
【0103】
投与のための腫瘍反応性Tリンパ球は、エフェクターTリンパ球とメモリーTリンパ球との組合せを含んでいてもよい。より具体的には、メモリー型の腫瘍反応性Tリンパ球の量は、約35%〜約90%、例えば約40%〜約90%、約50%〜約80%又は約60%〜約70%であり、エフェクターTリンパ球のパーセンテージは、約10%〜約65%、例えば約20%〜約50%又は約30%〜約40%であってもよい。
【0104】
有効量のVEGFインヒビターの定義は、疾患の重篤度及び型に依存する。しかしながら、投与される通常用量は、1 mg/kg〜約20 mg/kg、例えば2 mg/kg〜約15 mg/kg、3 mg/kg〜約15 mg/kg、4 mg/kg〜約15 mg/kg、5 mg/kg〜約15 mg/kgの範囲である。
【0105】
投与のための腫瘍反応性Tリンパ球は、エフェクターTリンパ球とメモリーTリンパ球との組合せを含んでいてもよい。より具体的には、メモリー型の腫瘍反応性Tリンパ球の量は、約35%〜約90%、例えば約40%〜約90%、約50%〜約80%又は約60%〜約70%であり、エフェクターTリンパ球のパーセンテージは、約10%〜約65%、例えば約20%〜約50%又は約30%〜約40%、そして1以上のVEGFインヒビターは、(とりわけ少なくとも10%の減少で(上記を参照されたい))1 mg/kg〜約20 mg/kg、例えば2 mg/kg〜約15 mg/kg、例えば3 mg/kg〜約15 mg/kg、例えば4 mg/kg〜約15 mg/kg、例えば5 mg/kg〜約15 mg/kg体重の用量であってもよい。
【0106】
腫瘍反応性Tリンパ球及びVEGFインヒビターは、患者への非経口投与、例えば静脈内、動脈内、髄腔内若しくは腹腔内投与に、又は慣用の錠剤形態、カプセル、カプレット、液剤、懸濁剤若しくは乳剤の剤型の経口投与に適切な医薬組成物として処方されてもよい。
【0107】
腫瘍反応性Tリンパ球は、非経口的に投与されるとき、等張性媒体、すなわち血液と同じ等張性を有し、細胞凝集を妨げる1以上の物質を含む媒体中で処方されてもよく、追加的な医薬的賦形剤を含んでいてもよい。適切な媒体の具体例は、3%までのヒト血清アルブミン、例えば2%までのヒト血清アルブミン又は1%までのヒト血清アルブミンを含む0.9%NaCl溶液である。静脈内投与について、投与される組成物中の腫瘍反応性Tリンパ球の濃度は、通常、約50万リンパ球/ml媒体〜約400万リンパ球/ml媒体、約50万リンパ球/ml媒体〜約300万リンパ球/ml媒体、約50万リンパ球/ml媒体〜約200万リンパ球/ml媒体又は約100万リンパ球/ml媒体〜約200万リンパ球/ml媒体の範囲にある。
【0108】
VEGFインヒビターは、非経口的に投与されるとき、等張性媒体、すなわち血液と同じ等張性を有する媒体中で処方されてもよく、追加的な医薬的賦形剤を有していてもよい。適切な媒体の具体例は、3%までのヒト血清アルブミン、例えば2%までのヒト血清アルブミン又は1%までのヒト血清アルブミンを含む0.9%NaCl溶液である。静脈内投与について、投与される組成物中のVEGFインヒビターの用量は、通常、(とりわけ少なくとも10%の減少で(上記を参照されたい))約1 mg/kg〜約20 mg/kg、例えば2 mg/kg〜約15 mg/kg、例えば3 mg/kg〜約15 mg/kg、例えば4 mg/kg〜約15 mg/kg、例えば5 mg/kg〜約15 mg/kgの範囲にある。経口経路又はその他の投与経路について、用量は、同じオーダーであるか、又は50%まででより大きいことを意図する。
【0109】
VEGFインヒビターを含む組成物は、単回投薬又は複数回投薬として投与され得る。それは、1〜2時間又はそれ以上にわたって注入され得る。
腫瘍反応性Tリンパ球を含む組成物は、単回投薬又は複数回投薬として投与され得る。それは、1〜2時間又はそれ以上にわたって注入され得る。
【0110】
本発明による組成物は、単一組成物として腫瘍反応性Tリンパ球と1以上のVEGFインヒビターとを含む単一組成物として、又は1つの組成物は腫瘍反応性Tリンパ球を含み、1つの組成物は1以上のVEGFインヒビターを含む(同時、若しくは任意の順序で逐次的のいずれかで)組み合わせて用いられる2つの別個の組成物として処方されてもよい。
【0111】
治療は、疾患の重篤度に依存して、1回又は繰り返して行われ得る。更に、治療は、疾患の再発に際して、又は治療される疾患の重篤度及び特徴に依存して必要と考えられる任意の間隔で繰り返され得る。
【0112】
本発明による治療は、任意の他の関連のガン治療で補足され得る。このような補足的な治療は、リンパ球と1以上のVEGFインヒビターとの投与前に、投与と同時に、又は投与後に行われてもよく、その治療について、通常用いられる頻度で行われてもよい。補足的な治療の適切な例は、化学療法などである。化学療法剤は、限定されないが、5‐フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、フマガリン、アントラサイクリン、例えばダウノルビシン、ドキソルビシン及びエピルビシン、カンプトテシン、例えばイリノテカン及びトポテカン、ビンクリスチン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、マイトマイシンC、マイトキサンスロン、フロキシウリジン、ゲムシタビン、メトトレキセート、ブレオマイシン、エトポシド、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン並びにゲニステインであり得る。
【0113】
上述の組成物の投与は、キットの形態にあってもよく、ここで該キットは、単一組成物であるか、又は2つ若しくは3つの単一組成物のキットであってもよい。異なる単一組成物は、同時に、又は任意の順序及び任意の時間間隔で逐次的に投与され得る。キット成分の投与は、独立して経口的又は非経口的に任意の順序であり得る。
【0114】
本明細書の実施例で示されるように、組合せ療法は、時間的に移動させてもよく、依然として優れた結果を生じる。したがって、組合せ療法は、
i)腫瘍反応性Tリンパ球の投与の後に、
ii)化学療法カクテル(1以上の化学療法剤、例えば結腸ガンの治療において、5‐フルオロウラシル、ロイコボリン及びオキサリプラチン又はイリノテカンの組合せ;このレジメンは、このような組合せについて、すなわち投与頻度と用量に関して、伝統的に適用されるスキームを通常踏襲する)と任意に組み合わせたVEGFインヒビターの投与で開始されてもよい。
【0115】
2つの投与レジメンは、少なくとも15日、とりわけ1〜90日、例えば30日又は1か月を含む15〜60日、時間的にずらしてもよい。
以下に、2つの異なる作用様式を達成できる、2つの異なる好ましい手順を記載する。
【0116】
好ましい手順1:化学療法は、センチネル節の採取のおよそ4週間前に、注入によって施行する。化学療法は、該当する薬剤について適当な用量及び方法によって施行する。この手順の化学療法のステップは任意である。
【0117】
採取の更におよそ4週間後、センチネル節又はメチネル節獲得リンパ球(SNAL又はMNAL)が投与される。SNAL又はMNALの最適用量は不明であるが、5000万のリンパ球の注入から効果が見られた。最適用量は、効果が注入されたSNAL又はMNALの数に相関すると考えられているために、おそらくより高い。10億以上のリンパ球の注入は、患者に許容される。リンパ球の注入手順のおよその時間は1時間である。
更におよそ3週間後、VEGFインヒビターは、関連の薬剤について適当な用量に従って、注入によって投与される。
【0118】
この治療レジメンにおいて、VEGFインヒビターは、血管の炎症の増加を引き起こし、それによって腫瘍反応性SNAL又はMNALのリクルートメント/ホーミングの増加を引き起こすと考えることができる。
【0119】
好ましい手順2:VEGFインヒビターは、センチネル節又はメチネル節採取のおよそ3週間前に投与される。上記のように、SNAL又はMNALは、採取のおよそ4週間後に投与される。用量などは、両方の薬剤について上記のとおりである。
化学療法は、このレジメンにおいて施されない。
【0120】
このレジメンについての作用様式は、腫瘍細胞死の増加と、それによるセンチネル節又はメチネル節中での抗原提示の増加とに起因する、採取されたSNAL又はMNAL数の予期された増加である。
上述のように、化学療法カクテルもまた、更に含んでいてもよい(性質は治療される特定のガンに依存する)。
【0121】
追加(follow-up)の治療として、i)及びii)の両方が施され得るか、又はi)及びii)のうち1つだけが施行され得る。優れた結果は、ii)の開始30日後にi)が施されたときに得られた。
【0122】
或いは、組合せ療法は、
i)化学療法カクテル(1以上の化学療法剤、例えば結腸ガンの治療において、5-フルオロウラシル、ロイコボリン及びオキサリプラチン又はイリノテカンの組合せ;この処方計画は、このような組合せについて、すなわち投与頻度と用量に関して、通常、従来適用されるスキームを踏襲する)と任意に組み合わせたVEGFインヒビターの投与の後に、
ii)腫瘍反応性Tリンパ球の投与で開始されてもよい。
【0123】
2つの投与計画は、少なくとも15日、とりわけ1〜90日、例えば30日又は1か月を含む15〜60日、時間的にずらしてもよい。
追加の治療として、i)及びii)の両方が施され得るか、又はi)及びii)のうち1つだけが投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、センチネル節が腫瘍抗原に対するT細胞反応性の提示及び活性化のための天然の一次部位であることを説明する。
【図2】図2は、初めに、センチネル節リンパ球が腫瘍抗原と低用量のIL‐2とで活性化され、その結果として活性化及び活性化マーカーCD25の発現を生じることを示す(上パネル)。フェーズI活性化フェーズの終点は、CD25を発現するCD4+T細胞の数の減少により定義される(下パネル)。5%未満のCD4+T細胞がCD25を発現したら、抗原での再刺激でフェーズIIを開始する。
【図3】図3は、フェーズI及びフェーズIIの活性化により、CD4+Tヘルパー細胞の拡大及び富化が生じることを説明する。
【図4】図4は、フェーズIにおいて、細胞の多数がナイーブCD62L+細胞又は活性化CD69+CD62L+細胞であることを説明する。フェーズIIの後、細胞の多数はCD62L−であり、メモリー及びエフェクターのCD4+Tヘルパー細胞から構成される。CD62L−T細胞は、好ましいリンパ節ホーミング分子を発現していない。よってそれらは、非リンパ器官の炎症領域を探索する。
【図5】図5は、フェーズIで刺激された、腫瘍(腫瘍浸潤リンパ球)、センチネル節(SN)及び無関係のリンパ節(LN)に由来する初代細胞は、IFN‐γ産生をほとんど生じないことを示す。
【図6】図6は、フェーズii)後の拡大後、抗原依存性IFN‐γ産生の用量依存的な増加が存在することを説明する。
【図7】図7は、TCR Vβ発現の選択的富化により研究されたように、拡大及び活性化プロトコルが抗原特異的T細胞クローンの拡大を促進することを説明する。
【実施例】
【0125】
実施例
参考例1
腫瘍反応性Tリンパ球の拡大
センチネル節の同定は、センチネル節技法を用いて手術中に行った。簡潔には、1mlのパテントブルー染料(Patent blue dye)を注射し(Guerbet、Paris)、腫瘍の周りの漿膜で表層に分布させた。5〜10分以内に、1〜3の腸間膜リンパ節が青色に着色し、これらセンチネル節に縫合糸で印を付け、取り出した(図1参照)。腫瘍から遠位の1つの非センチネル腸間膜リンパ節もまた同定し、コントロールとして取り出した。
【0126】
センチネルリンパ節及び非センチネルリンパ節を半分に切断し、中央部及び周縁部から1mm厚のスライスを採取した。残りのリンパ節を、ルーチンの手順に従う組織学的検査に送った。腫瘍の一部(浸潤マージン(invasive margin)のサンプルを含む)もまた研究目的に取り出した。
【0127】
細胞培養
フェーズI、最初の活性化
センチネル節材料を氷上に維持し、毎回直ぐにAIM V(登録商標)培地(Invitrogen社)を用いて処理した。ルーズフィットのガラスホモジネーター中での穏やかなホモジネーションによりセンチネル節リンパ球の単一細胞懸濁物を取得し、ホモジネーション後、細胞を培地中で2回洗浄した。センチネル節リンパ球を400万細胞/mlで細胞培養フラスコに入れ、インターロイキン‐2(IL‐2)(Proleukin(登録商標)、Chiron社)を240 IU/ml培地の濃度まで添加した。
【0128】
5容量(w/v)の2×PBS中でのUltra Turraxを用いたホモジネーション、続いて97℃で5分間の変性により、自己由来腫瘍抽出物を調製した。細胞培養の開始3〜4日後、自己由来腫瘍抽出物を1/100の濃度で添加した。長期培養には、細胞を細胞インキュベーター中で37℃で5%CO2に維持し、240 IU IL‐2/mL培地を3〜4日毎に添加した。
【0129】
フェーズII、活性化及び拡大
18〜22日後、細胞培養物をCD25の発現に関してモニターした。CD25発現細胞の数が5%を下回って減少したとき、フェーズII(図2)において、濃度1/100の自己由来腫瘍抽出物の添加により細胞を再刺激した。効率的な抗原提示のためには、自己由来PBMCを、Ficoll-Paque PLUS (Amersham Biosciences、GE Healthcare社)を使用して集め、2500ラドで照射し、細胞培養物に添加した。再刺激の3日後、インターフェロン-α(Introna社)を濃度100〜500 IU/mlで、抗IL‐4抗体を2μg/mlの濃度で添加した。5〜8日後、IFN‐γ産生Th1細胞の誘導を促進するために、IL‐12(4ng/ml)を添加して拡大させた。
【0130】
患者への輸注の前日に、培養物中の生存細胞を取り出すために、細胞培養物を、Ficoll‐Paque PLUS (Amersham Biosciences、GE Healthcare社)を使用する精製に付した。輸注当日、細胞を生理食塩水溶液(Sodium Chloride Baxter Viaflo 9 mg/ml、Baxter社)中で2回洗浄し、次いで100〜200 mlの生理食塩水溶液及び1%ヒト血清アルブミン(Baxter社)を含有する輸送バッグに移した。輸注の前に、微生物の存在についての検査を行った。細胞の注入は、医学専門家の監督の下で1〜2時間の間行った。
【0131】
免疫学的評価
トリチウム標識チミジン取込み増殖アッセイを用いて更なる免疫学的評価を行った。センチネル節リンパ球のアリコートをこの目的に取り置き、ルーズフィットガラスホモジネーターにおける穏やかな押付けにより非センチネル節リンパ球の単一細胞懸濁物を取得し、Ficoll‐Paque PLUS (Amersham Biosciences、GE Healthcare社)により末梢血白血球を精製した。
【0132】
細胞を再懸濁し、2.5%ウシ胎仔血清(FCS)(Life technologies社)を含有するRPMI 1640 (Life technologies社)中で2回洗浄した。最後に、細胞を、10%ヒトAB血清(Sigma社)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma社)及び1%グルタミン(Sigma社)を含有するRPMI 1640増殖培地中に再懸濁した。リンパ節細胞及び精製したPBLを96-ウェルプレート中3×105細胞/ウェルで使用し、3連で(in triplicates)1/100、1/10に希釈した腫瘍ホモジネート又はCon A 10μg/ml (Sigma社)で刺激した。5日目、6日目及び7日目に、採取の18時間前に、1μCiの3H-チミジン/ウェル(Amersham社)を添加することにより増殖を測定した。サンプルをシンチレーションカウンティングに付した。
【0133】
細胞培養の開始時、IFN‐γ分泌測定のためのリンパ節細胞及びPBLの刺激を、1/10及び1/100に希釈した腫瘍ホモジネート又はCon A 10μg/ml (Sigma社)を用い、96-ウェルプレート中3×105細胞/ウェルで3連で行った。プールした3連のサンプル中の培養上清について、分泌IFN‐γの量をELISA(Human IFN-γ Duoset、R&D Systems社)で測定した(図5)。細胞培養の終わりに、上清のサンプルを取出し、3連でIFN‐γ及びIL‐4分泌をELISA(Human IFN-γ Duoset及びhuman IL-4 Duoset、R&D Systems社)で測定した(図6A及び6B)。
【0134】
フローサイトメトリー分析
初めにセンチネル節、非センチネル節、PBMCからの細胞及び腫瘍からの細胞について、フローサイトメトリーを使用して細胞の特徴づけを行った。培養中のセンチネル節で獲得したリンパ球から、フローサイトメトリー分析のために、サンプルを2〜3週間ごとに採取した。細胞を、2% FCS及び0.05% NaN3を補充したPBS(FACS緩衝液)中で、免疫細胞亜集団のマーカー及びリンパ球活性化のマーカーに対する抗体と共に30分間インキュベートした(図3、4及び5)。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)に接合した、以下のマーカーに対する抗体:CD69、HLA-DR、CD45RA、CD25;フィコエリトリン(PE)に接合した、以下のマーカーに対する抗体:CD62L、CD19、CD45RO、CD56;ペリニジン-クロロフィル-タンパク質(PerCP)に接合した、以下のマーカーに対する抗体:CD8、CD3;アロフィコシアニン(APC)に接合した、以下のマーカーに対する抗体:CD4、CD14、CD8を使用した。
【0135】
Beta mark kit (Beckman Coulter社)を使用してVβ‐レパートリーを検査し、5×105細胞/試験管を、FITCとPEと二色FITC-PE接合TCR Vβ抗体との混合物を含む10μlの8つの異なるバイアル中で、各試験管にCD8 PerCP及びCD4 APCを添加して染色した(図7)。
【0136】
参考例2
腫瘍反応性Tリンパ球の投与による結腸ガン治療
結腸ガン患者からのセンチネルリンパ節及びメチネルリンパ節の同定及び除去
結腸ガンと診断された16人の患者(平均年齢62歳の6人の女性及び10人の男性)を調べた。患者は、組織病理学的にデュークス分類のC又はDに分類された。潰瘍、血管又は神経周囲の浸潤のような攻撃的腫瘍特徴を有するデュークス分類Bの5人の患者もいた。患者7及び14は、以前に結腸ガンのために手術治療を受けたが、今は肝臓に転移し疾患を再発している。地域倫理委員会(The local ethical committee)は、本研究を承認し、各々の患者からはインフォームドコンセントを得た。
【0137】
センチネル節又はメチネル節の同定は術中に行った。腫瘍及び腸間膜の検査を容易にするために、腹膜癒着の分離により結腸腫瘍部位の可動化を達成した。パテントブルー染料(Guerbet社、Paris)を注射し、腫瘍の周りの漿膜で表層に分布させた。5分以内に、1〜3の腸間膜リンパ節が青色に着色し、これらセンチネル節に縫合糸で印を付け、切除が完了したときに取り出した。腫瘍から遠位の1つの非センチネル腸間膜リンパ節を同様に取り扱った。
【0138】
センチネルリンパ節及び非センチネルリンパ節を半分に切断し、中央部及び周縁部から1mm厚のスライスを採取した。残りのリンパ節を、ルーチンの手順に従う組織学的検査に送った。腫瘍の一部(浸潤マージンの一部を含む)を抗原調製に使用した。
次いで、リンパ節から取得したリンパ球を参考例1に記載のように拡大させた。
【0139】
腫瘍反応性Tリンパ球の投与:
実施例1に記載のように拡大させた自己由来リンパ球の注入により16人の患者を治療した。平均7470万の活性化しクローン拡大させたT細胞を輸液として投与した。発熱、悪寒、倦怠感、重篤な体液貯留、肺浮腫又は呼吸窮迫のような中毒性副作用は観察されなかった。
【0140】
追跡評価
追跡には、3〜6ヶ月毎の臨床検査及びCEAレベルの制御が含まれた。加えて、ステージIII及びIVの患者は全て、胸郭及び腹部のコンピュータ断層撮影により検査した。患者を、平均して36ヶ月間(6〜51ヶ月の範囲)追跡し、スウェーデン結腸直腸ガン追跡プロトコルに従って監視した。自己由来リンパ球の注入による治療を受けた16人の患者中、8人に診断で遠位転移がわかった。4人の患者が既知の再発のために輸注を受け、そのうち3人は未だ再発の徴候がない。1人の患者は、孤立性肝臓転移のために手術を受け、それ以来再発はない。両葉に位置する肝臓転移(肝臓手術では治療不可能と宣言されていた)を有する1人の患者は、腫瘍反応性リンパ球の輸注後、肝臓転移が完全に退縮し、更にはCEAレベルが正常化し、腹水が見られなくなり、身体的にも良好であり、定期的に運動ができるようになった。肝臓転移を有する1人の更なる患者は、輸注後、肝臓転移が退縮し、腹水液が消えた。1人の患者は、注入後3ヶ月で、肝臓及び肺における転移が退縮し、CEAレベルが5.9(正常 < 4.0)でほぼ正常化し、腹水も見られなくなり、彼は臨床学的に健康に見える。
【0141】
結果
結腸ガン又は結腸直腸ガンの孤立性肝臓転移を有する16人の患者は、South Stockholm General Hospitalで手術を受け、本研究に参加した。腫瘍の原発位置は、3人が盲腸、4人が上行結腸、1人が下行結腸、7人がS状結腸、1人が直腸にあった。7人の右側結腸半切除、1人の左側結腸半切除、7人のS状結腸切除及び1人の直腸切断を行った。2人の患者は以前に直腸切断及びS状結腸切除の手術を受けていた;彼らは、今回、肝臓転移のために部分的な肝臓切除を受けた。1人の患者が腹部の2箇所で再発しており、以前に盲腸の腫瘍のために手術を受けていた。我々の手術で、転移を排液する2つのセンチネル節を同定した。1つは結腸の腸間膜にあり、1つは小腸の腸間膜にあった。腸間膜と共に吻合回結腸領域の拡大切除を行った。
【0142】
腫瘍周辺へのパテントブルー注射により、全ての患者で、手術中に1〜3(平均2.1)のセンチネル節を同定した。原発結腸切除を受けた患者では、各標本から平均15.8のリンパ節が取り出された。これらリンパ節の組織病理学的検査後、5人の患者をデュークス分類Cに分類し、5人の患者をデュークス分類Bに分類し、その全てを、病理学的解剖学的検査での神経に沿った腫瘍細胞の成長及び血管内での腫瘍細胞の成長のために、高リスク腫瘍と分類した。5人の患者は遠位転移を有しており、転移切除の時点で、デュークス分類Dと分類された。そのうち2人の患者は孤立性肝臓転移を有していた。加えて、センチネル節は、微小転移を検出する目的で、FACS(蛍光活性化細胞選別装置)及びサイトケラチン20(これは、結腸ガン腫瘍により発現される)に対する抗体によっても分析した。(組織病理学的分析により)偽陰性のセンチネル節がサイトケラチン20 FACS分析で陽性であった1つの症例を除き、フローサイトメトリーによるリンパ節のサイトケラチン20評価は、病理学的解剖学的診断(示さず)と一致した。
【0143】
センチネル節は腫瘍を排液する最初のリンパ節であり、したがってリンパ節転移の最初の部位である(Dahlら、Eur. J. Surgical Oncology, 2005, 31, 381-385)が、センチネル節はまた、免疫系の活性化のための一次部位でもある。腫瘍細胞、残渣、壊死細胞及び抗原提示細胞は、センチネル節に蓄積し、そこで腫瘍を指向するT細胞の提示、活性化及びクローン拡大が起こる。本発明者らは、センチネル節で獲得されたリンパ球のインビボ拡大T細胞集団のこの集団を、インビトロ細胞培養、拡大及び輸注に利用した。
【0144】
センチネル節獲得リンパ球は、腫瘍抗原に対して活性化されクローン拡大されたT細胞の集団であって、手術手順の間に効率的に採取することが可能である。細胞傷害性T細胞に着目した最近の免疫療法試験とは対照的に、本発明者らの目的は、Tヘルパー細胞のインビボで開始したクローン拡大のインビトロ増強のためのプロトコルを作成することであった。Tヘルパー細胞は、細胞傷害性T細胞の有効な機能のため及びメモリー細胞の生成のために必要であるようである。更に、膵島細胞抗原を標的するT細胞レセプタートランスジェニック系において、Th1細胞の輸注は、β細胞破壊及び真性糖尿病の発現に十分であることが見出された。センチネル節獲得リンパ球のインビトロ培養は、ホールマークTh1サイトカインIFN-γの優勢な産生及び制限されたTCR Vβレパートリーの富化により示されるように、結果として、Tヘルパー細胞のTh1活性化及びクローン拡大を生じた。T細胞を拡大するために使用する腫瘍ホモジネートは、CD4+Tヘルパー細胞の活性化を導くクラスII提示のために抗原提示細胞によるエンドサイトーシスを受けてプロセッシングされ、その結果、Tヘルパー細胞に有利な拡大をもたらす可能性が高い。交差提示により、エンドサイトーシスにより取り込まれた抗原は、プロセッシングされ、クラスIポケットで提示され得、その結果、CD8+細胞傷害性T細胞の活性化をもたらし得る。興味深いことに、幾つかの場合、本発明者らは、CD4+及びCD8+の両T細胞のクローン拡大を見出した。
【0145】
拡大開始時のセンチネル節獲得リンパ球の平均数は、1億740万細胞(範囲360万〜5億900万、中央値7000万)であった。フローサイトメトリーにより細胞を特徴付けた。開始時でのCD4+細胞とCD8+細胞との比は、平均4.9(範囲0.36〜10、中央値5.4)であった。このことは、末梢血におけるCD4/CD8比(通常範囲1.0〜2.5)と比較して、センチネル節におけるCD4+Tヘルパー細胞の拡大を示している(図2A)。加えて、Bリンパ球(CD19)及びナチュラルキラー(NK)細胞(CD56)がセンチネル節に存在した(示さず)。細胞は培養に平均36.1日(範囲23〜58日、中央値33日)保持した。フローサイトメトリーにより細胞を少なくとも週毎に綿密にモニターした。初めは、細胞の総数が減少した。B細胞及びNK細胞はほとんど完全に見られなくなり、CD8+Tキラー細胞の数は少なくなった。平均CD4/CD8比が92.5であったので、使用した培養手順は、主にTヘルパー細胞の拡大を促進した。自己由来腫瘍抗原での再刺激は、インビトロ培養の前後で、センチネル節獲得リンパ球のT細胞レセプターVβレパートリーを調べることにより評価されるように、腫瘍反応性T細胞のクローン拡大をもたらした。
【0146】
輸注前に、拡大させたT細胞を、Th1サイトカインIFN‐γ及びTh2サイトカインIL‐4の活性化及びサイトカイン産生を測定することにより、自己由来腫瘍抗原に対して機能的に試験した。インビトロ拡大したセンチネル節獲得リンパ球は、腫瘍抗原での再刺激に際して、IFN‐gの産生を伴って応答し、IL‐4の産生は全くないか又は非常に少なかった。ことのことは、拡大したT細胞が機能的であり、Th1反応性であったことを示している。
【0147】
デュークス分類Dの6人の患者を本研究で治療した。それぞれ肝臓への転移及び肺と肝臓への転移を有し手術時にデュークス分類Dのステージにあった2人の患者は、疾患の顕著な退行を示した(患者5及び12)。リンパ球の輸注後、第1の患者は、両葉に位置する肝臓転移(肝臓手術では治療不可能と宣言されていた)が完全に退縮し(図3)、CEAレベルが正常化し、腹水が見られなくなり、健康であるようにみえた。患者12は、肝臓及び肺において転移の退縮を示し、CEAレベルが5.9(正常 < 4.0)でほぼ正常化し、腹水も見られなくなり、彼は臨床学的に健康に見えた。患者1は、肝臓転移のサイズの退縮を示し、初めはCEAレベルが低下し、腹水が見られなくなった。彼女が突然死亡した時(191日目)(肺塞栓であったようである)には体調は素晴らしく良好であった。2人のデュークス分類Dの患者は、転移の進行もCEAレベルの増加もなく、安定な疾患を示した。本研究で最高齢の患者番号7は、5ヶ月安定な疾患を示したが、その後CEAレベルが増加し始め、彼女は83歳で死亡した。剖検は行わなかった。1人の患者は、手術時にデュークス分類Cのステージにあるとされたが、間もなく肝臓及び肺への転移を発症した(デュークス分類D)。しかし、輸注及び化学療法後、肺及び肝臓転移の退縮が見られ、CEAレベルはほんの僅かに亢進した。デュークス分類Cに分類された患者は全て、正常なCEAレベルを有し、放射線学的にも臨床学的にも疾患再発の徴候が何ら見られないようであった。4人のデュークス分類B患者は、正常なCEAレベルを有し健康であり、疾患再発の徴候がない。デュークス分類Bに分類されたが攻撃的に成長中の腫瘍を有する患者番号9は、疾患再発の徴候を示し、亢進したCEAレベル(67)及び肝臓転移の徴候を有していた。
【0148】
輸注されたT細胞の運命を調べるため、本発明者らは、末梢血において腫瘍抽出物に対するT細胞増殖を分析した。前記のように、本発明者らは、輸注前の患者のいずれにおいても、自己由来腫瘍抗原に対する末梢血中のT細胞反応性を何ら証明できなかった。しかし、本発明者らは、輸注後最高42ヶ月まで調査した全ての患者で、末梢血における自己由来腫瘍抗原に対するT細胞増殖を検出することができた。このことは、クローン拡大した循環性の腫瘍反応性T細胞の存在を示している。
【0149】
患者特徴のまとめ
下記は、手術時のデュークス分類後に選別された本研究の参加者全てについてまとめた表である:SD=安定な疾患及びCR=完全応答。
【0150】
【表1】

【0151】
実施例1
腫瘍反応性Tリンパ球及びアバスチン(登録商標)を投与することによって多発性結腸ガンの治療
患者は、直腸ガン及び複数の肝臓転移を伴う35歳齢の女性であった。彼女から、まず外科手術で直腸を切除し、原発腫瘍を排出するセンチネル節を同定、採取した。
【0152】
腫瘍反応性T細胞は、先に記載した方法に従って拡大した(本明細書を参照)。彼女は、外科手術の1か月後に細胞療法(腫瘍反応性T細胞の輸注)を受けた。更に1か月後、彼女は良好な臨床状態にあり、CTスキャンは、肝臓の安定な疾患を示し、他の転移が存在しないことを示した。
【0153】
その時に、彼女は、5‐フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン及びベバシズマブ(アバスチン(登録商標))の定型的な(標準化された)組合せでの治療を開始した。更に約1か月後に、彼女は、彼女自身の末梢血から回収した腫瘍反応性T細胞の拡大に基づく腫瘍反応性T細胞の1回の追加的な輸注を受けた。
【0154】
毎月のCTスキャンにおいて見られたように、転移は継続的に退縮した。6か月後、わずかな壊死だけが肝臓に残っているように見えた。如何なる生存可能な腫瘍も排除するために、肝臓に残っている高密度領域を外科的に切除した。
【0155】
組織病理学的検査は、検体に壊死組織だけが存在し、腫瘍細胞は存在しないことを確証した。最初の手術の18か月後の最近の追跡の来診で、患者は、腹部/胸部CTスキャンによれば疾患が全くなく、末梢血中の腫瘍マーカーについて正常値であった。
【0156】
実施例2
アバスチン(登録商標)及び腫瘍反応性Tリンパ球を投与することによる転移した結腸ガン治療
32歳齢の若い男性は、腹腔内転移を伴う結腸ガンと診断された。患者は、化学療法剤での手術中の治療と組み合わせて、結腸切除及び腹膜切除を受けた。
【0157】
2年後の再発は、まず5‐フルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン+ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))で治療された。追跡のCTスキャンは、進行中の腹部内疾患の残存及び末梢血中の腫瘍マーカーの上昇を示した。この時、患者は、右結腸を含む転移の切除による手術をし、転移を排出するリンパ節(メチネル節)を同定した。
【0158】
腫瘍反応性T細胞の拡大は、(本明細書に記載される)先の方法に基づいて行った。最後の手術から1か月後、患者は、腫瘍反応性T細胞の最初の輸注を受けた。疾患は、CTスキャンによれば退縮し、腫瘍マーカーは減少した。患者は、もう一度腫瘍反応性T細胞の輸注を受けた。現在彼は良好な健康状態にあり、フルタイムで働いており、T細胞の最初の輸注から2年経過している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1以上のVEGFインヒビターと、b)腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球とを含む組成物。
【請求項2】
CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+反応性Tリンパ球が、
腫瘍由来抗原と、IL‐2レセプターに対するアゴニスト活性を有する少なくとも1つの物質とで、腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球を刺激することによって、腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の生存を促進し;
腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の成長を活性化及び促進することによって得られ、
CD25細胞表面マーカー(又はIL‐2Rマーカー)がCD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球上でダウンレギュレートされたとき第2フェーズii)を開始する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
VEGFインヒビターが、VEGF又はVEGFレセプターに対するモノクローナル中和抗体、VEGFレセプターの小分子チロシンキナーゼインヒビター、VEGFの偽レセプターとして作用する可溶性VEGFレセプター、及びVEGF mRNAを特異的に標的とするリボザイム、又はそれらの組合せから選択される請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
抗VEGFモノクローナル中和抗体がベバシズマブ(アバスチン(登録商標))である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
抗VEGFモノクローナル中和抗体がラニビズマブ(ルセンティス(登録商標))である請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
抗VEGFモノクローナル中和抗体がAb‐153、Ab‐309、Ab‐342から選択される請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
VEGFレセプターのチロシンキナーゼインヒビターがスニチニブ(スーテント(登録商標))、ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標))、N‐メチル‐2‐[[3‐[(E)‐2‐ピリジン‐2‐イルエテニル]‐1H‐インダゾル‐6‐イル]スルファニル]ベンズアミド(アキシチニブ(登録商標))及び5‐[[4‐[(2,3‐ジメチル‐2H‐インダゾル‐6‐イル)(メチル)アミノ]ピリミジン‐2‐イル]アミノ]‐2‐メチルベンゼンスルホンアミド(パゾパニブ(登録商標))から選択される請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
VEGF mRNAを特異的に標的とするリボザイムがハンマーヘッド型リボザイムである請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
ハンマーヘッド型リボザイムが抗Flt‐1リボザイムから選択される請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
抗Flt‐1リボザイムがAngiozyme(登録商標)である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ガン型特異的CD4+Tリンパ球を含み、ガン特異的CD4+Tリンパ球の少なくとも70%がTh1型であり、ガン特異的CD4+Tリンパ球の30%以下がTh2型である請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
ガン特異的Tリンパ球を含み、約35%〜約90%がメモリー型である請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
ガン特異的Tリンパ球を含み、約10%〜約65%がエフェクターTリンパ球である請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
ガン特異的Tリンパ球を含み、組成物が少なくとも1000万又は少なくとも2000万又は少なくとも3000万又は少なくとも4000万又は少なくとも5000万又は少なくとも1億の腫瘍反応性Tリンパ球を含む請求項11〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
VEGFインヒビターの量が;約1mg〜約2000 mg又は約70 mg〜約1400 mg又は約140 mg〜約1050 mg又は約210 mg〜約1050 mg又は約280 mg〜約1050 mg又は約350 mg〜約1050 mgである請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
組成物が、治療有効量の腫瘍反応性Tリンパ球と、治療有効量の1以上のVEGFインヒビターとを含む単一組成物である請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
2つの別個の製剤を含み、1つの製剤が治療有効量の腫瘍反応性Tリンパ球を含み、第2の製剤が治療有効量の1以上のVEGFインヒビターを含む請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
5-フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、フマガリン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イリノテカン、トポテカン、ビンクリスチン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、マイトマイシンC、マイトキサンスロン、フロキシウリジン、ゲムシタビン、メトトレキセート、ブレオマイシン、エトポシド、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンオレルビン、ゲニステイン又はそれらの組合せから選択される化学療法剤を更に含む請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
組成物が、治療有効量の腫瘍反応性Tリンパ球を含む製剤と、治療有効量の1以上のVEGFインヒビターを含む製剤と、任意に1以上の治療有効量の化学療法剤を含む製剤とを含む請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
組成物が治療有効量の腫瘍反応性Tリンパ球と、治療有効量の1以上のVEGFインヒビターと、任意に治療有効量の1以上の化学療法剤とを任意の組合せで含む2つの別個の組成物のキットであるか、又は組成物が3つの別個の組成物を含むキットであり、第1が治療有効量の腫瘍反応性Tリンパ球を含み、第2が1以上のVEGFインヒビターの治療有効量を含み、第3の組成物が1以上の化学療法剤の治療有効量を含む請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
組成物が抗接着剤、結合剤、被覆剤、崩壊剤、充填剤/希釈剤、着香剤及び着色剤、pH調節剤、流動促進剤、滑沢剤、保存剤、吸着剤、甘味剤並びに活性種の溶解速度を変化させる物質、無血清媒体、緩衝剤若しくは溶液、細胞栄養溶液若しくは物質、ヒト若しくは人工血清アルブミン、自家血清、血液と同じ張性を任意に有していてもよい等張性媒体、生理食塩水、防腐剤又はその組合せから選択される医薬的に許容される賦形剤を更に含む請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
ガン治療用医薬の製造のための請求項1〜21のいずれか1項に定義された1以上のVEGFインヒビター及び腫瘍反応性Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の使用。
【請求項23】
ガンが胸部、結腸、直腸、膵臓、肝臓、胆嚢、胆管、膀胱、脳、小腸、肺、前立腺、腎臓、子宮頸、外陰部、卵巣のガン腫、悪性メラノーマ、頭頸部ガン腫;関節、骨、筋肉及び腱の肉腫、リンパ腫;奇形腫;並びに前記の腫瘍の転移及び局所進行(手術不可)から選択される請求項22に記載の使用。
【請求項24】
医薬が単一の組成物であるか、又は2つ若しくは3つの別個の製剤を含み、1つの製剤が腫瘍反応性Tリンパ球を含み、別の製剤が1以上のVEGFインヒビターを含み、更なる製剤が先に記述された2つの組成物のいずれかで単一組成物に任意に組み合わせられた1以上の化学療法剤を含むキットである請求項22に記載の使用。
【請求項25】
キットの製剤が同時に又は任意の順序で逐次的に投与される請求項24に記載の使用。
【請求項26】
少なくとも1つの製剤が非経口又は経口投与を意図される請求項25に記載の使用。
【請求項27】
非経口投与が静脈内、動脈内、髄腔内又は腹腔内であり得る請求項26に記載の使用。
【請求項28】
経口製剤が慣用の錠剤、カプセル剤、カプレット、液剤、懸濁剤、乳剤であり得る請求項26に記載の使用。
【請求項29】
キットの組成物が独立して非経口的又は経口的に任意の順序で投与され得る請求項25〜28のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球と1以上のVEGFインヒビターと任意に1以上の化学療法剤とを患者に投与することを含み、ここで腫瘍反応性Tリンパ球、ガンを罹患している患者を治療するための方法。
【請求項31】
CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+反応性Tリンパ球が、
腫瘍由来抗原と、IL‐2レセプターに対するアゴニスト活性を有する少なくとも1つの物質とで、腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球を刺激することによって、腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の生存を促進し;
腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の成長を活性化及び促進することによって得られ、CD25細胞表面マーカー(又はIL‐2Rマーカー)がCD4+ヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球についてダウンレギュレートされたときに第2フェーズii)を開始する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
VEGFインヒビターが、VEGF又はVEGFレセプターに対するモノクローナル中和抗体、VEGFレセプターの小分子チロシンキナーゼインヒビター、VGEFの偽レセプターとして作用する可溶性VEGFレセプター及びVEGF mRNAを特異的に標的とするリボザイム又はそれらの組合せから選択される請求項30に記載の方法。
【請求項33】
抗VEGFモノクローナル中和抗体がベバシズマブ(アバスチン(登録商標))である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
抗VEGFモノクローナル中和抗体がラニビズマブ(ルセンティス(登録商標))である請求項32に記載の方法。
【請求項35】
抗VEGFモノクローナル中和抗体がAb‐153、Ab‐309、Ab‐342から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項36】
VEGFレセプターのチロシンキナーゼインヒビターがスニチニブ(スーテント(登録商標))、ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標))、N‐メチル‐2‐[[3‐[(E)‐2‐ピリジン‐2‐イルエテニル]‐1H‐インダゾル‐6‐イル]スルファニル]ベンズアミド(アキシチニブ(登録商標))及び5‐[[4‐[(2,3‐ジメチル‐2H‐インダゾル‐6‐イル)(メチル)アミノ]ピリミジン‐2‐イル]アミノ]‐2‐メチルベンゼンスルホンアミド(パゾパニブ(登録商標))から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項37】
VEGF mRNAを特異的に標的とするリボザイムがハンマーヘッド型リボザイムである請求項32に記載の方法。
【請求項38】
ハンマーヘッド型リボザイムが抗Flt‐1リボザイムから選択される請求項37に記載の方法。
【請求項39】
抗Flt‐1リボザイムがAngiozyme(登録商標)である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ガン型特異的CD4+Tリンパ球を投与することを含み、ガン特異的CD4+Tリンパ球の少なくとも70%がTh1型であり、ガン特異的CD4+Tリンパ球の30%以下がTh2型である請求項30〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
ガン特異的Tリンパ球を投与することを含み、約35%〜約90%がメモリー型である請求項30〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
ガン特異的Tリンパ球を投与することを含み、約10%〜約65%がエフェクターTリンパ球である請求項30〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
治療有効量の腫瘍反応性Tリンパ球と、治療有効量の1以上のVEGFインヒビターとを含む組成物の投与を含む請求項30〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
1つの製剤が治療有効量の腫瘍反応性Tリンパ球を含み、第2の製剤が治療有効量の1以上のVEGFインヒビターを含む2つの別個の製剤の投与を含む請求項30〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
5‐フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、フマガリン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イリノテカン、トポテカン、ビンクリスチン、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、マイトマイシンC、マイトキサンスロン、フロキシウリジン、ゲムシタビン、メトトレキセート、ブレオマイシン、エトポシド、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンオレルビン、ゲニステイン又はそれらの組合せから選択される化学療法剤を更に任意に含む請求項30〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
投与が治療有効量の腫瘍反応性Tリンパ球と、治療有効量の1以上のVEGFインヒビターと、治療有効量の1以上の化学療法剤を含む組成物である請求項30〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
組成物の投与が、治療有効量の腫瘍反応性Tリンパ球と、治療有効量の1以上のVEGFインヒビターと、任意に治療有効量の化学療法剤とを任意の組合せで含む2つの別個の組成物のキットであるか、又は組成物が3つの別個の組成物を含むキットであり、第1が治療有効量の腫瘍反応性Tリンパ球を含み、第2が治療有効量の1以上のVEGFインヒビターを含み、第3の組成物が治療有効量の1以上の化学療法剤を含む請求項30〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
少なくとも1000万又は少なくとも2000万又は少なくとも3000万又は少なくとも4000万又は少なくとも5000万又は少なくとも1億の腫瘍反応性Tリンパ球のガン特異的Tリンパ球を投与することを含む請求項30〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
投与されるVGEFインヒビターの量が;約1mg〜約2000 mg又は約70 mg〜約1400 mg又は約140 mg〜約1050 mg又は約210 mg〜約1050 mg又は約280 mg〜約1050 mg又は約350 mg〜約1050 mgから選択される請求項30〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
ガンが、胸部、結腸、直腸、膵臓、肝臓、胆嚢、胆管、膀胱、脳、小腸、肺、前立腺、腎臓、子宮頸、外陰部、卵巣のガン腫、悪性メラノーマ、頭頸部ガン腫;関節、骨、筋肉及び腱の肉腫、リンパ腫;奇形腫;並びに上述の腫瘍の転移及び局所進行(手術不可)から選択される請求項30〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1つの活性成分が非経口又は経口経路により投与される請求項30〜50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
非経口投与が静脈内、動脈内、髄腔内又は腹腔内投与である請求項51に記載の使用。
【請求項53】
経口投与が慣用の錠剤形態、カプセル剤、カプレット、液剤、懸濁剤又は乳剤の製剤の形態にある請求項51に記載の方法。
【請求項54】
腫瘍反応性CD4+Tヘルパー及び/又はCD8+Tリンパ球の投与が静脈内である請求項30に記載の方法。
【請求項55】
腫瘍反応性Tリンパ球と、1以上のVEGFインヒビターと、任意に1以上の化学療法剤とが、同時に、又は任意の順序、任意の間隔で逐次的に投与される請求項30〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
キット成分の投与が独立して、任意の順序で、経口又は非経口であり得る請求項54又は55に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−528326(P2011−528326A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517818(P2011−517818)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005216
【国際公開番号】WO2010/006808
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(508186912)セントクローネ インターナショナル エービー (4)
【氏名又は名称原語表記】SentoClone International AB
【住所又は居所原語表記】Lofstroms Alle 5,S−172 66 Sundbyberg,Sweden
【Fターム(参考)】