説明

インビボでの細胞死の画像化方法

本発明は、哺乳類の被検体におけるホスファチジルセリンの細胞外レベルの増大を特徴とする細胞死又は別の状態を検出するための方法及びキットに関する。この方法は、タンパク質のC2ドメイン又はこの活性変異型を含む放射性核種で標識化した化合物を投与すること、及び放射線放出の画像を得るために、被検体において放射性核種からの放射線放出を測定することを含み、細胞死又は上記状態の部位は画像から判定することができる。このキットは、C2ドメイン又はこの活性変異型を含む放射性核種で標識化した化合物、及び哺乳類の被検体にこの化合物を投与して、細胞死又は上記状態を画像化することに関する取り扱い説明書を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2004年11月19日に出願された、米国仮特許出願第60/629,607号の利益を主張しており、これはその全体が参照により本明細書に援用される。
【連邦政府により援助を受けた研究又は開発に関する記述】
【0002】
該当なし。
【発明の背景】
【0003】
細胞死の非侵襲的な画像化は、重要な診断及び予後の予測可能性を有している。まとめると、構造的損失及び機能的損失あるいは健常組織の損失の病理学的原因は、異なる形態の細胞死の相互作用によるものであり得る。一方では、治療処置後の腫瘍の細胞死は、患者の生存率と正の相関関係がある(Kostin S.他,Circ.Res.,92:715-24,2003、及びSelivanova G.著,Current Cancer Drug Targets,4:385-402,2004)。2つの主要な形態の細胞死の中で、その調節解除が引き起こすおそれのある有害な結果のためだけではなく、治療的介入の機会としても、現代医学においてアポトーシスには多大な注目が集まっている(Kerr JF他,Br J Cancer,26:239-57,1972、Kerr,J.F.,Toxicology,181-182,471-4,2002、Huang P.他,Curr Opin Oncol,9:94-100,1997、及びGourley M他,Curr Pharm Des,6:417-39,2000)。細胞膜の破壊を特徴とする消極的な性質を有する壊死に対して、アポトーシスは細胞内のエネルギー依存性プロセスである(Song Z他,Trends.Cell.Biol.,9:M49-52,1999、及びWyllie AH,Br Med Bull,53:451-65,1997)。一回実行されると、アポトーシスの実施段階は、カスパーゼによって触媒されるタンパク質分解カスケードを伴い、別個の分子マーカーの発生と共に起こる(Grutter MG,Curr Opin Struct Biol,10:649-55,2000、Green DR,Cell,94:695-98,1998、Thornberry NA他,Science,281:1312-16,1998、及びCohen GM.,Biochem J,326:1-16,1997)。
【0004】
アポトーシスと壊死との両方及び他の型の細胞死に関する共通の分子マーカーは、ホスファチジルセリン(PtdS)の曝露であり、その同定は細胞死の標的特異的な画像化を容易にすることが可能である。生存細胞において、PtdSは細胞膜の内葉の構成成分であり、細胞表面上には実質的に存在しない。アミノリン脂質トランスロカーゼ及びフロッパーゼを含む、エネルギー依存性の酵素の作用により、脂質二重層の非対称性が維持される(Williamson P他,Biochim Biophys Acta,1585:53-63,2002)。アポトーシスの間、スクランブラーゼの活性化と共にトランスロカーゼ及びフロッパーゼの阻害が起こり、二重層を通るリン脂質の再分布が容易になる(Williamson P他,Biochim Biophys Acta,1585:53-63,2002)。結果として、PtdSは細胞表面上に曝露されることになる。しかし、壊死性細胞では、細胞内成分が細胞外環境へアクセスできるようにする細胞膜の破壊のため、PtdSの曝露はかなり消極的な影響を及ぼす。細胞膜の主要なリン脂質成分の1つであるPtdSは、一回アクセスできるようになると、十分な分子マーカーを供給する。
【0005】
アネキシンVは高い親和性でPtdSと結合する。色原体又は放射性核種(例えばテクネチウム99すなわち99mTc)によって標識化したアネキシンV及びその類似体は、インビトロ及びインビボの両方でアポトーシス性細胞を同定するために用いられている(例えばBlankenberg他,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,95:6349-6354,1998、Vriens他,J.Thorac.Cardiovasc.Surg.,116:844-853,1998、Ohtsuki K他,Eur J Nucl Med,26:1251-58,1999、Petrovsky A他,Cancer Res,63:1936-42,2003、及びLahorte CMM他,Eur J Nucl Med,31:887-919,2004を参照されたい)。特に、放射性核種で標識化したアネキシンVは、ヒト患者における心筋の細胞死を検出するのに用いられている(Hosstra L他,Lancet,356:209-12,2000)。しかし、注射後17時間〜22時間までは検出を成功させることができず、このことが心臓に急性の梗塞を患う患者への使用を不可能にしている。
【0006】
別のタンパク質であるシナプトタグミンIのC2Aドメインは、カルシウム依存性様式で曝露したPtdSと結合することによって、壊死性細胞及びアポトーシス性細胞の両方を認識することが示されている(Davletov BA他,J Biol Chem,268:26386-90,1993)。蛍光色素又は超常磁性微粒子で標識化したシナプトタグミンIのC2Aドメインは、それぞれ蛍光画像化技術又は磁気共鳴画像化技術を使用した細胞死の検出を可能にしている(Zhao M他,Nat.Med.,7:1241-1244,2001、Jung HI他,Bioconjugate Chem,15:983-7,2004、及び米国特許出願公開第2004/0022731号)。しかし、特に急性虚血及び再灌流等の疾患又は状態の発症後の早い時間内での細胞死を画像化するための放射性核種で標識したC2ドメインの使用の実行可能性は明らかではない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、哺乳類の被検体におけるPtdSの細胞外レベルの増大を特徴とする細胞死又は別の状態を検出するための方法及びキットに関する。この方法は、タンパク質のC2ドメイン又はこの活性変異型を含む放射性核種で標識化した化合物を投与すること、及び放射線放出の画像を得るために、被検体において放射性核種からの放射線放出を測定することを含み、細胞死又は上記状態の部位は画像から判定することができる。このキットは、C2ドメイン又はこの活性変異型を含む放射性核種で標識化した化合物、及び哺乳類の被検体にこの化合物を投与して、細胞死又は上記状態を画像化することに関する取り扱い説明書を含み得る。
【発明の詳細な説明】
【0008】
本発明は、哺乳類の被検体におけるPtdSの細胞外レベルの増大を特徴とする細胞死又は別の状態を画像化するか又は検出する非侵襲的な方法に関する。この方法は、タンパク質のC2ドメイン又は当該C2ドメインの活性変異型を含む効果的な量の放射性核種で標識化した化合物、好ましくは放射性核種で標識化したポリペプチドを被検体に投与すること、及び放射線放出の画像を得るために被検体において放射性核種からの放射線放出を測定することを含む。細胞死又は上記状態の部位を画像から判定することができる。被検体からの放射線放出を選択された間隔で二回以上測定し、経時的に放出強度の変化を追跡記録することができ、これによって細胞死する細胞の数又は分布等の変化を判定することができる。
【0009】
PtdSの細胞外レベルの増大を特徴とするアポトーシス、壊死、及び別の型の細胞死、並びに他の状態を本発明の方法により検出することができる。本発明は、心臓の梗塞、血管血栓症、及びアテローム硬化性プラーク(atherosclerotic plaques)を、例えば、これらの状態の1つを患っている疑いのある哺乳類の被検体において判定するのに特に有用であり、これはこれらの状態が細胞外の結合に関するPtdSのレベルの増大に関連することが示されているためである。心臓の梗塞は、血栓又は塞栓による等、局所での血液供給の閉塞の結果として、心臓組織の壊死を特徴とする。血管血栓は、たとえ発現したとしてもほとんどPtdSが発現しない不活性な血小板よりもはるかに多くの量のPtdSを発現する活性化血小板を含む。アテローム硬化性プラークに関しては、細胞のかなりの割合が細胞死している(例えばCrisby M他,Atherosclerosis,130:17-27,1997を参照されたい)。
【0010】
以下の実施例は、放射性核種で標識化したC2ドメインの使用が、放射性核種で標識化したアネキシンVを使用するよりも注射後の非常に早い時点での画像の取得を可能にし、このことによりC2ドメインは、特に治療の成功が適時の診断に依存する疾患及び状態(例えば急性の心筋梗塞)に関して、アネキシンVよりも好都合なイメージング剤であるとされることを実証する。既存の放射性標識化したアネキシンVによるアポトーシスの画像化技術では、放射性トレーサーの比較的ゆっくりしたクリアランス(clearance)により、注射の15〜22時間後にしか画像の取得が可能ではない。99mTcの放射能の半減期の約3倍の時点では、このような画像化プロトコルは高い線量の投与及び長期的な患者の待機時間を要求する。これに対して、本明細書(以下の実施例2)において、放射性標識化したC2ドメインが非常に早い時点での画像の取得を可能にすることを示している。このことは、シンチレーション計測、フローサイトメトリー、及び電子顕微鏡法を含む解剖分析によって確認された。
【0011】
本発明の方法は、腫瘍において細胞死を引き起こすように設計した治療(例えば化学療法)を受けている哺乳動物(例えば癌患者)の腫瘍の細胞死を画像化するために使用することもでき、それによって治療が成功する可能性があるか否かという情報を提供する。
【0012】
好ましい実施態様において、本発明はブタ、ラット、又はマウスである哺乳類の被検体において実施される。より好ましい実施態様では、哺乳類の被検体はヒトである。PtdSの細胞外レベルの増大を特徴とする細胞死又は別の状態は、例えば哺乳類の被検体の組織若しくは腫瘍又はそれらの一部で、画像化又は検出することができる。
【0013】
様々なタンパク質由来のC2ドメインが当該技術分野で既知である。幾つかのタンパク質(例えばタンパク質キナーゼCα)は唯一のC2ドメインを有するが、他のタンパク質(例えばシナプトタグミンI)は2つ以上のC2ドメインを有する。2つ以上のC2ドメインを含むタンパク質に関して、このドメインはその名称の後ろに文字を(アルファベット順で)付け加えることにより、当該技術分野で便宜上区別される(例えばC2A及びC2B等)。唯一のC2ドメインを含むタンパク質に関して、このドメインは単にC2ドメインと表される。本発明のために、「C2ドメイン」という用語は、それらがタンパク質における唯一のC2ドメインであるか、又は複数のC2ドメインの1つであるかどうかに関わらず、全てのC2ドメインを包含するのに使用される。以下の実施例で、本発明を実証するための代表例としてラットのシナプトタグミンIのC2Aドメインが使用されるが、PtdS結合活性を有する全てのC2ドメインを本発明のために使用することができる。全てのC2ドメインで共有される共通の構造的特徴は、可変ループで連結した8本鎖の逆平行βサンドイッチ構造である(Brose N.他,J.Biol.Chem.,270:25273-80,1995、Davletov B.A.他,J.Biol.Chem.,268:26386-90,1993、Rizo J.他,J.Biol.Chem.,273:15879-15882,1998、Sutton R.B.他,Cell,80:929-38,1995、これらは全てその全体が参照により本明細書中に援用される)。C2ドメインを含むタンパク質の例としては、シナプトタグミン1〜13、セリン/スレオニンキナーゼのタンパク質キナーゼCファミリー成員、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼδ1、第V因子及び第VIII因子を含む凝固カスケードの補因子、並びにコピンファミリーの成員が挙げられるが、これらに限定されない。ヒトのシナプトタグミンとしては、シナプトタグミン1〜7、12、及び13が挙げられる。
【0014】
C2ドメインを含むタンパク質の幾つかの具体的な例としては、(Swiss−Prot/TrEMBL登録名の後に丸括弧内の寄託番号):
【化1】

【化2】

【化3】

が挙げられるが、これらに限定されない。スイス・バイオインフォマティックス研究所(SIB)のExPASy(エキスパートタンパク質分析システム)プロテオミクス・サーバでのus.expasy.org/cgi-bin/prosite-search-ac?PS50004を参照されたい。
【0015】
C2ドメインを含むタンパク質の他の幾つかの具体的な例としては、(Swiss−Prot/TrEMBL登録名の後に丸括弧内の寄託番号):
【化4】

が挙げられるが、これらに限定されない。スイス・バイオインフォマティックス研究所(SIB)のExPASy(エキスパートタンパク質分析システム)プロテオミクス・サーバでのus.expasy.org/cgi-bin/prosite-search-ac?PS50004を参照されたい。
【0016】
好ましい実施態様では、ヒト、ラット、又はマウス由来のシナプトタグミンIのC2Aドメインを本発明の実施に使用する。ヒトのシナプトタグミンIのcDNA配列及びアミノ酸配列(このcDNA配列は配列番号1で示され、このアミノ酸配列は配列番号2で示される)、ラットのシナプトタグミンIのcDNA配列及びアミノ酸配列(このcDNA配列は配列番号3で示され、このアミノ酸配列は配列番号4で示される)、並びにマウスのシナプトタグミンIのcDNA配列及びアミノ酸配列(このcDNA配列は配列番号5で示され、このアミノ酸配列は配列番号6で示される)を、それぞれGenBank寄託番号M55047、NM_001033680、及びNM_009306で見出すことができる。ヒト、ラット、及びマウスのシナプトタグミンIに関して、そのC2Aドメインが、それぞれアミノ酸140〜270、アミノ酸140〜266、及びアミノ酸140〜270に及ぶ。
【0017】
本明細書中で使用されるように、野生型のC2ドメインの活性変異型は、(例えば欠失、挿入、又は置換により)1つ又は複数の残基が前記特定の野生型のC2ドメインと異なるポリペプチドを示し、これは当該野生型のC2ドメインの全長にわたって当該特定の野生型のC2ドメインと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、又は99%相同性であり、固有のPtdS結合活性を有する。多くの場合、野生型のC2ドメインの活性変異型は自然発生したペプチドではないが、この変異型は、異なる種の異なるタンパク質又はこれに対応するタンパク質由来の別の野生型のC2ドメインであり得る。活性変異型が野生型のC2ドメインの断片である場合、この断片は当該野生型ドメインの全長の少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、又は99%であることが好ましい。好ましい実施態様では、野生型のC2ドメインの活性変異型は、同じ長さの当該野生型のC2ドメインである。別の好ましい実施態様では、活性変異型は、1つ又は複数の保存的置換を伴う野生型のC2ドメインである。同じ保存的な群の中のアミノ酸は、一般的にタンパク質の機能に実質的な影響を与えることなく、互いに置換することができることが当該技術分野で既知である。本発明のために、共有の特性に基づきこのような保存的な群を表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
別の実施態様では、C2ドメイン又はこの活性変異型は、タンパク質の単離又は他の目的を容易にするために加えられたGSTタグ等のペプチドタグを有する。
【0020】
本明細書中で使用されるように、アミノ酸配列とヌクレオチド配列との間の「同一性%」とは「相同性%」と同義語であり、このことはKarlin及びAltschulによって修正された(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,5873-5877,1993)、Karlin及びAltschulのアルゴリズム(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,2264-2268,1990)及び他の方法を使用して決定することができる。上記のアルゴリズムは、Altschul他のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている(J.Mol.Biol.,215,403-410,1990)。NBLASTプログラム(スコア=100、ワード長=12)でBLASTヌクレオチドの検索を行い、本発明のポリヌクレオチドに対して相同性であるヌクレオチド配列を得る。XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)でBLASTタンパク質の検索を行い、参照のポリペプチドに対して相同性であるアミノ酸配列を得る。比較目的でギャップ化アラインメントを得るために、Altschul他(Nucleic Acids Res.,25,3389-3402,1997)で記載されるように、ギャップ化BLASTを利用する。BLAST及びギャプ化BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLAST及びNBLAST)の初期設定のパラメーターを使用する。
【0021】
既知のC2ドメイン(例えばシナプトタグミンのC2ドメイン)の核酸配列及びアミノ酸配列を「問い合わせ配列」として使用して、野生型のC2ドメインの相同型、イソ型、又は変異型を同定するために公開データベースに対して検索を行うことができる。NBLAST及びXBLASTプログラムを使用して、このような検索を行うことができる。NBLASTプログラム(スコア=100、ワード長=12)でBLASTヌクレオチドの検索を行い、参照の核酸分子に対して相同性であるヌクレオチド配列を得ることができる。XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)でBLASTタンパク質の検索を行い、参照のタンパク質に対して相同性であるアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップ化アラインメントを得るために、Altschul他(Nucleic Acids Res.,25:3389-3402,1997)で記載されるように、ギャップ化BLASTを利用することができる。BLAST及びギャップ化BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLAST及びNBLAST)の初期設定のパラメーターを使用することができる。
【0022】
ポリペプチド又はタンパク質が特異的にPtdSと結合するか否かは、定量アッセイ、半定量アッセイ、又は定性アッセイを使用して、当業者によって容易に決定することができる。一般的にこれらのアッセイはPtdSを含む結合標的を伴い、これは人工のリン脂質小胞、(例えば溶解細菌又は赤血球由来の)リン脂質細胞膜の調製物、細胞表面上に外面化したPtdSを発現する全細胞(例えば化学物質又は活性化した赤血球及び血小板を使用して、アポトーシスを誘導するために刺激した哺乳類の細胞)、又はアポトーシス性細胞集団を含むことで知られているインビボモデル(例えば化学療法又は放射線治療後の反応性腫瘍並びに肝臓、胸腺、心臓、及び筋肉を含むが、これらに限定されない他の組織で誘導されたアポトーシス)であり得る。
【0023】
結合の検出又は定量のために、(例えば蛍光色素又は放射性同位体によって)標識化した研究タンパク質又はその誘導体を使用することができる。結合定数(Ka)又は解離定数(Kd)で結合親和性を記録することができる。別の方法として、このタンパク質自体は非標識であり、蛍光消光、表面プラズモン共鳴解析、又はC2ドメイン上、すなわちC2ドメイン誘導体の一部として、エピトープを認識する抗体による免疫化学を使用してこの結合を定量する。別の方法として、PtdS含有脂質小胞又は濾過若しくは遠心分離によって水性相から容易に分離することができるPtdSでコーティングした固体材料を使用して、非標識の研究タンパク質を「破壊する」ことができる。SDS−PAGE、免疫化学染色、光学的検出法、又は放射性崩壊の検出を使用して、上清若しくは水性相における研究タンパク質の減少又は非存在と共に起こる、PtdS含有材料に関連する研究タンパク質の存在を評価することができる。
【0024】
また、アネキシンV又はシナプトタグミンIのC2Aドメイン等の既知のPtdS結合特性のあるタンパク質に対する競合アッセイによって、PtdS結合特異性及び親和力を評価することができる。人工のリン脂質膜、細胞膜調製物、全細胞、又は曝露したPtdSを有するインビボの標的を使用して、このようなアッセイを行うことができる。このアッセイは研究タンパク質の能力を試験し、従来のPtdS結合タンパク質の結合と競合するか、又はこの結合を阻害するかを試験する。タンパク質の一方又は両方を検出目的のために標識化し、阻害濃度(IC50)値によって、相対的な結合親和力を評価することができる。
【0025】
哺乳動物、好ましくはヒトへの投与(injection)に有用であると認識されている、放射性画像化のための任意の放射性核種(これは「放射性同位体」という用語と同じ意味で使用される)を使用して、C2ドメイン又はこの活性変異型を標識化することができる。このような放射性核種の例としては、炭素11、フッ素18、ガリウム67、ガリウム68、インジウム111、インジウム113m、ヨウ素122、ヨウ素123、ヨウ素124、ヨウ素125、ヨウ素131、窒素13、酸素15、テクネチウム99m(99mTc)、及びタリウム201が挙げられるが、これらに限定されない。99mTcは、本発明に好ましい放射性核種である。放射性同位体でポリペプチドを標識化することは、十分に当業者の能力の範囲内である。99mTcでポリペプチドを標識化する場合、ポリペプチドを最初にチオール化させて、標識化を高めることが好ましい。
【0026】
薬学的に許容可能な担体及び媒体を使用して、本明細書に記載の放射性核種で標識化した化合物を含む組成物又は処方製剤を形成することができる。この組成物を所望の画像化の結果を達成するのに必要な用量及び期間で、効果的な量を被検体に投与することができる。本発明の組成物の効果的な量は、動物の種類、年齢、体重、及び投与経路等の要因によって変わり得る。また効果的な量とは、この組成物の診断に有益な効果が毒性効果又は有害な効果(例えば副作用)を上回っている量のことである。一般的に、この用量には注射したポリペプチドの量並びに注射した放射性核種の量及びタイプを考慮に入れる。本発明の組成物は、例えばポリペプチド1〜1000μg/kg(体重)、ポリペプチド1〜900μg/kg、ポリペプチド1〜800μg/kg、ポリペプチド1〜700μg/kg、ポリペプチド1〜600μg/kg、ポリペプチド1〜500μg/kg、ポリペプチド1〜400μg/kg、ポリペプチド1〜300μg/kg、ポリペプチド1〜200μg/kg、ポリペプチド1〜100μg/kg、ポリペプチド5〜100μg/kg、ポリペプチド5〜80μg/kg、ポリペプチド5〜60μg/kg、ポリペプチド5〜40μg/kg、又はポリペプチド5〜20μg/kgの濃度で投与することができる。
【0027】
最大約20mCiの用量で成人のヒトに99mTcを投与することができる。99mTc単独投与に関して好ましい用量は、約3mCi〜約20mCiである。
【0028】
放射性画像化のための放射標識化したタンパク質の投与に効果的であるとして知られている任意の幾つかの全身経路及び局所経路によって、放射性核種で標識化したC2ドメイン又はこの活性変異型を投与することができる。例えば、経口、非経口、吸入、局所、直腸内、鼻腔内、口腔内、経膣、又は移植容器を介して、本発明の組成物を投与することができる。「非経口投与」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、胸骨内、腹腔内、胸膜内、リンパ管内、肝内、病巣内、及び頭蓋内の注射技術又は注入技術を含む。また、任意の組織にカテーテルを介して、又は針によって、この組成物を投与することができる。上記の投与形態を行う方法は、当該技術分野で既知である。
【0029】
好ましい投与方法は、静脈内(i.v.)注射である。これは、心臓、血管、及び腫瘍等の十分に血管新生した臓器の画像化に特に好適である。放射性医薬品の静脈内注射の方法は既知である。例えば、一般的にオルデンドルフ/ターニケット法(Oldendorf/Tourniquet method)又は静注法のいずれかを使用した急速静注法(bolus injection)として、放射性標識化した薬剤を投与することが認められている(例えばMettler及びGuierbteau著「核医学画像化の要点(Essentials Of Nuclear Medicine Imaging)」(第2版,W.B.Saunders Company,Philadelphia,Pa.,1985)を参照されたい)。
【0030】
脳の腫瘍を画像化するために、本発明の組成物を髄腔内に投与することができる。髄腔内投与によって、脳脊髄液(CSF)を含むくも膜下腔に直接、化合物を送出する。
【0031】
γ線検出器等の任意の好適な画像化装置(例えばγ線シンチレーションカメラ又は三次元画像化カメラ)を使用して、又は陽電子放出断層撮影法(PET)若しくは単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)によって、画像化を行うことができる。得られた画像の解釈を容易にするために、この画像をデジタル処理して、バックグラウンド、ノイズ、及び/又は非特異的な局在化をフィルター除去することができる。好ましい実施態様では、放射性核種で標識化した化合物の投与後、約0.5時間〜約24時間、約0.5時間〜約15時間、約0.5時間〜約8時間、約0.5時間〜約5時間、約2時間〜約24時間、約2時間〜約15時間、約2時間〜約8時間、約2時間〜約4時間、約3時間〜約24時間、約3時間〜約15時間、約3時間〜約10時間、約3時間〜約8時間、約3時間〜約6時間、又は約3時間で、画像化を行うことができる。
【0032】
本発明において、哺乳類におけるPtdSの細胞外レベルの増大を特徴とする細胞死又は別の状態をインビボで画像化するためのキットを提供することができる。このキットは、本明細書に記載のC2ドメイン又はこの活性変異型を含む放射性核種で標識化した化合物、並びに細胞死又は上記状態を画像化するために、哺乳類にこの化合物を投与することに関する取り扱い説明書を含み得る。
【0033】
本発明は、以下の非限定的な実施例を検討して、より完全な理解が為されるであろう。
【実施例1】
【0034】
アポトーシス性細胞死及び壊死性細胞死に対する分子プローブとしてのシナプトタグミンIのC2Aドメインの99mTc標識化
この実施例によって、C2A−GSTがアポトーシス性細胞及び壊死性細胞を特異的に認識することが実証される。99mTcで標識化した場合、放射性トレーサーは、十分に保存されたC2AのPtdS結合活性と共に相対的に高い放射化学的収率及び純度を有する。またこの実施例は、上記の分子プローブを使用した細胞死の非侵襲的な視覚化を示す。
【0035】
[材料及び方法]
C2A−GSTタンパク質の過剰発現:pGEXプラスミドでコードされたC2A−GSTの融合タンパク質は大腸菌(BL21株)を過剰発現させ、最小限の変更を加えてZhao M他(Nat.Med.,7:1241-1244,2001)に記載されているように精製した。一晩培養物(overnight culture)50mlを使用して、アンピシリン0.1mg/mlの存在下で、Terrific Broth 1リットルに接種した。この培養物を37℃で1時間培養し、最終濃度0.1mMまでイソプロピルチオガラクトシド原液1mlを加えることによって、タンパク質発現を誘導した。37℃でさらに3時間培養後、4℃で10分間、5000gでの遠心分離により、細菌性細胞を回収した。溶解緩衝液10ml(トリス50mM、NaCl 200mM、5%グリセロール、pH7.4)でこの細菌性細胞の沈殿物を再懸濁し、1サイクルの凍結融解でこの細胞を処理した。細菌性細胞壁を分解するために、最終濃度0.3mg/mlまでリゾチームを加えて、室温で40分間、インキュベートした。それから、最終濃度0.1mg/mlまでDNアーゼを加えて、室温で30分間、インキュベートを続けた。細菌性溶解物を4℃で15分間、10000gで遠心分離し、不溶性材料を除去した。この上清を、トリスHCl 20mM及びNaCl 100mMによってpH7.4で前平衡化した総容積5mlのグルタチオンアガロース(Sigma)のアフィニティクロマトグラフィカラム上に充填した。同じ緩衝液でさらに洗浄した後、溶出物の吸光度が280nmで0.02未満になるまで、15mM還元型遊離グルタチオン含有同緩衝液40mlでC2A−GST融合タンパク質を溶出させた。融合タンパク質を含んだ溶出画分(それぞれ5ml)をプールし、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)において、分子量が10kDaのカットオフ膜で一晩透析し、凍結乾燥して−20℃で保存した。10%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)でタンパク質純度を評価して、C2A−GST融合タンパク質は、目視検査により、1本のバンドとして観測された。典型的収率は、細菌培養物1L当たり融合タンパク質40〜50mgであった。
【0036】
C2A−GSTタンパク質の蛍光標識化:C2A−GST(2mg/ml)含有PBS溶液300μlに、FITC原液(12mg/ml)含有DMSO溶液2.33μlを加えること、及び室温で3時間ゆっくりと混合することによって、C2A−GST−FITCを生成させた。1Mトリス緩衝液(pH8.9)100μlを加えることで、この反応を停止させた。PBSで平衡化したゲル濾過カラムクロマトグラフィ(Sephadex G−25 Fine、総容積10ml)を使用して、蛍光標識化したタンパク質を精製した。分光光度計(モデルUV1601PC)を使用して、280nm及び495nmにおいてそれぞれ溶出分画のタンパク質及びFITC濃度をモニタリングした。ブラッドフォード法を用い、BSAを標準としてタンパク質濃度を測定した。精製した生成物のFITCとタンパク質とのモル比は0.9よりも大きいと算出された。
【0037】
室温で3時間、ホウ酸緩衝液(ホウ酸塩25mM、NaCl 100mM、pH8.2)中でゆっくりと混合しながらC2A−GST(2mg/ml)及びAlexa Fluor 680(Molecular Probes、62.5μg/ml)をインキュベーションすることによって、C2A−GST−Alexa Fluor 680複合体を合成した。上記のように、ゲル濾過によって、蛍光タンパク質生成物を精製した。この共役法を使用して、色素とタンパク質とのモル比は0.8よりも大きいと測定された。
【0038】
フローサイトメトリー:37℃、5%CO2の湿潤環境で、10%ウシ胎児血清(Gibco)を含むRPMI 1640培地(Invitrogen)において、Jurkat細胞(ATCC,USA)を培養した。トリパンブルー色素を使用して細胞生存率を測定し、この生存率が95%を超えることが見出された。最終濃度が3.5μmol/Lのカンプトセシン(Sigma)で5時間、5×106細胞数/mlをインキュベートすることによって、アポトーシスを誘導した。インキュベート期間の終了までに、細胞収縮、ブレブ形成、及び幾つかのアポトーシス小体形成を含む、形態学的なアポトーシスの発生が明らかになっている。
【0039】
フローサイトメトリー分析に関して、5分間、600gでの遠心分離によって、処理細胞及び未処理細胞を回収し、冷RPMI 1640培地で3回洗浄して、冷結合緩衝液(CaCl2 2mM、HEPES 15mM、NaCl 120mM、pH7.4)で106/mlまで細胞濃度を調整した。C2A−GST−FITC 3μl及びヨウ化プロピジウム(50mM)3μlを細胞懸濁液500μlに加えて、5分間インキュベートした。Becton Dickinson(San Jose,CA)FACScanフローサイトメータを使用して、サンプルを分析した。FITC−アネキシンV(Molecular Probes)を使用して同定手順を繰り返した。
【0040】
C2A−GSTとアネキシンVとの間の細胞結合活性における直接的な比較のために、C2A−GST−Alexa Fluor 680(赤色、励起680nm、放出710nm)及びアネキシンV−FITC(緑色、励起490nm、放出515nm)での処理細胞の共インキュベート(co-incubating)によって、二重標識化(double-labeling)を行った。それぞれのフローサイトメトリー分析のために、10,000個の細胞を計測した。
【0041】
C2A−GSTの99mTc標識化:以下のように99mTcで標識化したC2A−GSTを調製した。C2A−GST(2mg/ml)含有PBS溶液200μlを2−イミノチオラン(10mg/ml、Sigma)含有DMSO(Fisher)溶液2.96μlと混合した。この混合物を室温で5分間ゆっくりと振盪し、37℃で1時間静置した。99mTcO4-で標識化したタンパク質に関して、スズ(II)グルコヘプトネート(stannous glucoheptonate)(GH)混合物(塩化スズ(II)80μg及びナトリウムグルコヘプトネート8mg)に99mTcO4-(約5mci)含有0.9%NaCl溶液500μlを加えて、窒素下、室温で10分間、この反応を維持させた。99mTc−GH溶液400μlを2−IT修飾したC2A−GSTと混合し、室温で30分間インキュベートした。移動相として生理食塩水を用いたITLC−SGクロマトグラフィ・ストリップ(Gelman Sciences)を使用して、生成物の放射化学的純度を分析した。
【0042】
エルマン試薬を使用して、2−イミノチオラン修飾後のチオール化の程度を予測した。特に、(上記の)チオール化したC2A−GST 100μlを、PBS(pH7.4)で平衡化したSephadex G25 Fine総容積5mlを使用したゲル濾過により精製して、未処理の2−イミノチオランを除去した。分画200μlをPBSで溶出し、280nmでの吸光度で、タンパク質の存在をモニタリングした。タンパク質ピークを含む分画をプールした。タンパク質溶液50μlを、0.01Mエルマン試薬含有0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)溶液50μlと混合した。室温で15分間インキュベートした後、412nmでの吸光度を測定した。スルフヒドリル標準として、L−Cysを使用して得られた吸光値を使用して、検量線を作成した。同時に、この製品(BioRad)で規定されているように、ブラッドフォード法を使用して、溶液中のタンパク質濃度を測定した。
【0043】
PBS(pH7.4)で平衡化したゲル濾過クロマトグラフィ(Sephadex G−25、カラムPD−10、Amersham Biosciences,Sweden)を行い、遊離過テクネチウム酸塩99mTcから99mTcで標識化したC2A−GSTを分離した。標識化したタンパク質を1ml/分の流量でPBSで溶出させた。512nmの吸光度で、ブラッドフォード法(BioRad、製造業者のプロトコルに従って)を使用して、タンパク質濃度を測定した。室温で生理食塩水中の99mTc−C2A−GSTのアリコート(aliquots)を放置すること及びインスタント薄層クロマトグラフィにより、1、2、4、6、及び8時間に設定した時間間隔後の遊離過テクネチウム酸塩の存在を測定することによって、標識化したタンパク質の安定性を測定した。対照のために、ウシ血清アルブミンを上記のように同一のプロトコルにおいて99mTcで標識化した。
【0044】
d測定及び競合試験:飽和照射法を使用して、解離定数(Kd)に関して、アポトーシス性細胞に対する99mTc−C2A−GSTの結合親和力を評価した。健常なJurkat細胞及びカンプトセシンで5時間処理した細胞をそれぞれ使用して、非特異的な結合群及び特異的な結合群を調製した。フローサイトメトリー分析に従って、それぞれにおけるアポトーシス指数を測定した。細胞集合の2%未満が未処理細胞において生存不可能であったが、アポトーシス率は、カンポセシン(campothecin)処理サンプルの25%であった。ゆっくりと撹拌しながら室温で10分間、3.98nM〜510nMの漸増最終濃度の99mTc−C2A−GSTで、107/mlの濃度の細胞懸濁液50μlをインキュベートした。遊離タンパク質を結合タンパク質から分離するために、シリコン油100μlによって1000gで反応混合物を1分間遠心分離し、これによりシリコン油層の上部に水溶液が残留し、細胞を底部で回収した。上清及び油層を除去した後、細胞沈殿物を含むチューブのチップを切断し、その放射能を測定した。結合チューブから非特異的な結合チューブの放射能を減算することにより、特異的な結合チューブの放射能値を得た。Y軸が1分当たりのカウント数(cpm)における特異的な結合、及びX軸がnMにおける99mTc−C2A−GSTのタンパク質濃度で散布図を得た。最良適合飽和曲線を作成し、最大結合能(Bmax)を決定した後に、最大結合能の半分(B1/2)での99mTc−C2A−GSTの濃度として、Kdを推定した。標準偏差で3つの独立した測定値の平均として、最終的なKdを算出した。
【0045】
非標識のC2A−GSTに関する99mTc−C2A−GSTの結合特異性を競合アッセイによって研究した。このアッセイでは、ゆっくりと撹拌しながら室温で10分間、15.9nM〜7830nMに変化する漸増濃度の非標識のC2−GSTの存在下で、99mTc−C2A−GST 20μl(最終濃度78nM)によって107/mlのアポトーシス性細胞50μlをインキュベートした。上記のようにシリコン油を使用して、結合タンパク質及び遊離タンパク質を分離した。アポトーシス性細胞と結合した放射能の残存率を算出し、非標識のC2A−GSTの濃度に対してプロットした。この特定の実験条件での阻害濃度(IC50)は、放射標識化したタンパク質の特異的な結合を50%(B50)まで低減することを要求する非標識のタンパク質濃度であると推定した。
【0046】
ラットにおける急性心筋梗塞の特異的な取り込み:動物試験は、協会の承認を受けた実験動物の管理及び使用に関する協会及び国の指針に従った。300〜390gの体重のスプレーグ−ドーリーラットを腹腔内にペントバルビタールナトリウム(50mg/kg)で麻酔して、齧歯類の人工呼吸器を使用して、呼吸を維持させた。手術時間及び画像化時間にわたって実時間の心電図(ECG)をモニタリングした。開胸術を行い、第4肋間で胸を開き心臓を露出させた。心膜を鉗子で開き、肺動脈幹と左心房との間のレベルで、左冠動脈前下行枝の下部に6.0の縫合糸を通した。縫合糸を締めることで冠動脈閉塞を達成した。危険領域における血の気のない外観、並びにQRS群の顕著な拡大及びST部分の上昇を含むECGプロファイルの急激な変化により、冠動脈閉塞の成功を確認した。このモデルでは、一般的に7〜15分の虚血で心室頻拍が起こり、全手順にわたってゆっくりとQ波が低減した。30分の虚血の後、縫合糸を切断することで、再灌流を開始させた。
【0047】
再灌流後90分で大腿静脈カテーテルを介して、99mTc−C2A−GST(1体のラット当たり0.2mCi)を注射し、設定時点(0.5、1、2、3、5、10、15、20、25、30、40、50、及び60分)で側面上の大腿静脈から血液サンプルを採取した。1時間後、動物を麻酔し、心臓を除去して、15mM HEPES緩衝液で洗浄した。梗塞した領域及び遠隔生存領域(remote viable regions:リモート生存可能な領域)から心筋組織の切片を取り出し、秤量して、γ線計測器(LKB WALLAC 1282 COMPU GAMMA)を使用して放射能を計測した。対照として、酢酸NHSに不活性な99mTc−C2A−GSTを使用して、このプロトコルを繰り返し、非特異的な取り込みを測定した。心筋における放射能の取り込みを%ID/g組織で表した。
【0048】
[結果]
FITCで標識化したC2A−GST及びフローサイトメトリー:FITCで標識化した後、精製した複合体の蛍光色素とタンパク質との平均モル比を1.22±0.53と推定した。図1aは、C2A−GST−FITC及びPIで標識化したカンプトセシンで処理したJurkat細胞のフローサイトメトリープロファイルを示す。蛍光強度の違いによって、4つの異なる細胞集団をはっきりと識別することができる。これらには、生存(V)、壊死(N)、アポトーシス(A)及び早期アポトーシス(EA)が挙げられる。市販のアネキシンVキットを使用したフローサイトメトリー分析では、処理Jurkat細胞間でほとんど同一の分布が得られた。赤色蛍光のC2A−GST−AF680及び緑色蛍光のアネキシンV−FITCを使用した二重標識化によって、二重陽性細胞又は二重陰性細胞のいずれかが生成され、これにより両方の分子プローブが全く同一の細胞を認識することが実証された(図1b)。赤色蛍光強度及び緑色蛍光強度は、C2A−GST−AF680とアネキシンV−FITCとの間の集積比によって変わる。
【0049】
C2A−GSTの99mTc標識化:C2A−GST融合タンパク質を比較的高い放射化学的収率及び純度まで99mTcで標識化し、その後2−イミノチオランでチオール化した。エルマン試薬を使用して測定した最適なチオール度は、タンパク質1分子当たり7つのスルフヒドリル基であった。この比で、サイズ排除精製の前後の99mTc−C2A−GSTの放射化学的純度はそれぞれ、82.3%及び95.5%であった。サイズ排除クロマトグラフィからの溶出プロファイルを図2に示す。このタンパク質ピークは、4分の保持時間で放射能のピークと共に検出する(co-resister)。遊離99mTc−過テクネチウム酸塩は、6.5分のより長い保持時間を有する。シリカゲル上のインスタント薄層クロマトグラフィを使用して、標識化したC2A−GSTの放射化学的純度が95%より大きかったことも確認された。ゲル濾過で精製した99mTc−C2A−GSTの比放射能を20〜30μCi/μgタンパク質と推定した。非チオール化C2A−GST融合タンパク質は、放射能の有意な取り込みを示さなかった(データ図示せず)。生理食塩水中の標識化したタンパク質の安定性を室温で試験した。インスタント薄層クロマトグラフィによって測定されるように、8時間にわたってタンパク質は放射標識を保持した(表2)。
【0050】
【表2】

【0051】
結合親和力及び特異性:飽和結合試験を使用して、アポトーシス性細胞に対する99mTc−C2A−GSTのKdの推定値を得た。代表的な飽和曲線を図2に示し、これにより、放射標識化したタンパク質のこれらの細胞における有限数の結合部位との相互作用が実証された。最大結合の半分では、Kdは7.10±1.48×10-8Mであると測定された(図3)。現行の実験条件ではIC50は17.4±0.84×10-8Mであり、非標識化の競合C2A−GSTの存在下において、99mTc−C2A−GSTの結合は不可逆的であった(図4)。
【0052】
急性の心筋梗塞の動物モデルにおけるインビボでの研究:ラットの99mTc−C2A−GSTの薬物動態は、相応に急速な血液クリアランスを伴う二相性であると考えられる。急速相の血中半減期は、15分であると推定される。投与後1時間で、投与量の約20%が循環血液中に残存した。心筋梗塞領域の放射能は、非梗塞領域のものに比べて、約23〜27倍であった。しかし、不活性な99mTc−C2A−GSTで注射した動物モデルにおいて、梗塞領域と非梗塞領域との間には2〜6倍の差しかなかった。
【0053】
要約すると、本明細書中の結果によって、C2Aを使用することでアポトーシス及び壊死を認識することができ、C2A−GST融合タンパク質は、上記の機能を大きく変えることなく、放射標識化できることが実証された。この結果により、99mTc−C2A−GST等の放射標識化したC2Aドメインを画像化プローブとして使用して、急性の梗塞における心筋の細胞死等の細胞死を非侵襲的に検出することができる。
【0054】
蛍光標識化したC2A−GSTは、細胞死の異なる方式及び段階の細胞と結合する。C2A−GST−FITCの取り込みは、壊死性細胞とアポトーシス性細胞とでは異なる。また、中程度の集団を有意なC2A−GST−FITCの取り込みで同定したが、PIに関しては陰性であった。これらの個体は、PtdSの外面化及び無傷の細胞膜の完全性を伴う完全に進行したアポトーシス及び壊死に対する遷移状態であると考えられる。また、蛍光標識化したアネキシンVを使用して、この見解が確認された。蛍光C2A−GST及びアネキシンVを使用した二重染色実験の結果によって、2つのタンパク質が同じ群の細胞と相互作用することが示される。アネキシンVの取り込みがC2A−GSTの存在及び濃度に依存する事実(逆もまた同様)によって、2つのタンパク質が有限数の共通の結合部位に関して競合することが示される。
【0055】
C2A−GSTの一次構造において、4つの野生型のシステイン残基が存在する。C2A−GST融合タンパク質のチオール化がタンパク質の放射標識化を大きく高めた。2−イミノチオラン修飾前のテクネチウム99mTcの組み込みの欠失によって、内因性のチオール基が放射同位体に対して有益なキレート部位を形成しないことが示される。チオール化後は、放射標識化手順を室温で30分以内に終了させることができる。この標準的なプロトコルは、一般的な核画像化施設で標識化を行うことができることを意味している。現行の方法を使用すると、標識化したC2A−GSTは比較的高い放射化学的純度、収率、及び良好な放射安定性を有する。室温で行った8時間の安定性試験の終了時には、放射化学的純度は4%未満の減少であった。
【0056】
PtdSがアポトーシス及び壊死の両方に対する分子マーカーであるので、PtdSの結合は細胞死を標的としたイメージング剤としての99mTc−C2A−GSTの有用性の鍵となる。この放射性トレーサーの結合活性をアポトーシス性細胞との結合親和力として定量的に評価し、Kdは7.1×10-8Mであると推定された。
【0057】
放射標識化した後、非標識の競合C2A−GSTの存在下では、99mTc−C2A−GSTの結合が可逆的であったという事実から明らかなように、99mTc−C2A−GSTはその特異性を維持していたと考えられた。このような見解によって、C2A−GSTの両方の形態が、アポトーシス性細胞内で同じ明確な結合標的と特異的に相互作用することが示唆される。
【0058】
インビボでの画像化実験の結果によって、標的に特異的な分子プローブとしての99mTc−C2A−GSTは、急性の心筋梗塞の非侵襲的な検出に効果的であることが示される。断層撮影画像における放射能の局在的(focal)な取り込みは、組織学的分析で同定されるように、損傷した冠状動脈領域内の高レベルの不可逆的な細胞損傷に正の相関があった。梗塞領域への放射標識化したC2A−GSTの集積は、曝露したPtdSの結合に寄与し得る。
【実施例2】
【0059】
99mTcで標識化したシナプトタグミンIのC2Aドメインによる梗塞の急性相における心筋の細胞死の画像化
この実施例によって、急性の梗塞のブタモデルを使用して、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)による注射後3時間での心筋のアポトーシスの非侵襲的な画像化が実証される。
【0060】
[材料及び方法]
急性の梗塞の誘導:NIHガイダンスに厳密に従って、協会の承認によって、動物の手順を行った。最初に、成体のブタ(20kg、n=7)を塩酸ケタミン(10mg/kg)の筋肉内注射で麻酔して、静脈内用量のプロポフォール(1%溶液、1時間当たり6mg/kg)で麻酔状態を保った。それぞれの動物に挿管し、機械で空気を送り、その心拍数及びプロファイルを心電図法(EKG)により常時モニタリングした。右大腿動脈のカテーテルシースの取り付け後、6Fカテーテルを冠動脈へ送った。カテーテルの局在性及び下流の冠動脈分岐の開通性をX線血管造影法によって確認した。以下の位置の1つで、血管形成バルーンを挿入すること及び膨らませることによって、動脈閉塞を開始した:左冠動脈下降枝の遠位末端(n=1)、回旋枝(n=5)、又は右冠動脈(n=1)。一般的に、虚血は20〜30分の間続け、血管形成バルーンの空気を抜くことによって再灌流を開始した。それぞれの動物における冠動脈閉塞及び続く再灌流をX線血管造影法によって確認した。その一方で、ST部分の上昇及び緩やかなQ波形成を含む急性の梗塞に特有のEKGプロファイルを記録した。
【0061】
C2A−GSTの放射標識化:C2A−GSTの融合タンパク質を大腸菌で過剰発現し、実施例1に記載されるように精製して、99mTcで標識化した。簡潔に述べると、最初に1つのタンパク質当たり平均7つのスルフヒドラル(sulfhydral)基まで2−イミノチオランでC2A−GSTをチオール化した。ゲル濾過によって未反応の2−イミノチオランを取り除いた後、スズ(II)グルコヘプトネート溶液を使用して99mTcでC2A−GSTを標識化した。サイズ排除クロマトグラフィ及びインスタント薄層クロマトグラフィを使用して、99mTc−C2A−GSTの放射化学的純度が95%より大きいことを確認した。放射性トレーサーの比放射能は、大体20〜30μCi/μgタンパク質であった。溶解血液細胞膜を使用した結合試験によって、非標識のC2A−GSTと比べて、99mTc−C2A−GSTの結合親和力及び特異性が大きく変わらなかったことが示された。
【0062】
生体内分布:NIHガイダンスに従って、協会の承認によって、動物手順を行った。健常な雄及び雌のC57黒色マウス(総数64、8〜10週齢)を8つの群に無作為に分けた。尾静脈を介して、それぞれのマウスに99mTc−C2A−GST(0.74MBq)で注射した。注射後、1、15、30、60、120、及び240分のそれぞれの時点で、1つの群のマウスを頚椎脱臼によって屠殺した。エネルギーレベルを120〜170keVに設定したγ線計測によって、血液、心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、胃、腸、筋肉、及び骨に関する放射能の取り込みを測定した。データは、%投与量±標準偏差(ID%±Stdv)で表した。
【0063】
心筋細胞死のインビボの画像化:再灌流後1時間以内に、99mTc−C2A−GST(6〜7mCi/動物)を静脈内注射して、Millennium VG Hawkeye二重モダリティSPECT/CTスキャナー(General Electric)によって、注射後3時間のSPECT画像及びCT画像を得た。胸腔を解析する(covering)CTスキャン後(それぞれ40個の軸位断で15秒)、140KeVのエネルギーピーク、20%のウィンドウ、128×128のマトリックスサイズ、及びそれぞれ45秒間計数した6度で60個の角度図(angle view)によってSPECTデータを得た。3時間後、5つの動物の亜群を屠殺し、組織学分析のためにそれぞれの心臓を除去した。残った動物を、投与後6時間及び17時間で再び画像化し、セスタミビ(sestamibi)で血流を画像化させた。血中半減期の測定のために、放射性トレーサーの投与後最初の3時間、10分間隔でそれぞれの動物(n=7)から静脈血サンプル0.1mlを採取した。シンチレーション計測によって全ての血液サンプルの放射能を測定し、放射能の減衰を補正した。
【0064】
放射性トレーサーの取り込みのエクスビボでの測定:3時間の画像化(imaging session)の終了後、動物を屠殺した。心臓を除去し、体液を排出して、余分な血液を除去するために生理食塩水で速やかに洗浄した。下流の閉塞処理した(affected)冠動脈分岐の目視検査時に血の気のない範囲を梗塞領域と同定することができる。梗塞領域及び健常な遠隔生存領域由来の組織サンプルを除去し、秤量して、シンチレーション計測によって放射能を測定した。平均値及び標準偏差で、組織1g当たり、1分当たりのカウント数(cpm)として結果を表した。
【0065】
心筋の細胞死のエクスビボでの評価:心筋の細胞死の特徴的な超微細構造の変化を同定するために、4℃で24時間、4%のパラホルムアルデヒド及び0.5%のグルタルアルデヒドにおいて梗塞領域及び遠隔生存領域由来の代表的な心筋断片を固定した。組織を脱水し、切断して、炭素格子(carbon grids:カーボングリッド)上に置いた。透過型電子顕微鏡写真を64,000倍の倍率で得た。
【0066】
さらに、これらの組織標本上でフローサイトメトリー分析を行い、sub−G0DNA量で細胞の存在を定量的に評価した。
【0067】
[結果]
マウスの生体内分布:異なる組織の時間の関数として放射能の取り込みを図5で要約している。放射標識化したC2A−GSTの注射後に、肝臓及び腎臓に迅速な取り込みがあった。120分で肝臓及び腎臓のID%は、それぞれ13.2±4.3及び11.7±2.5であり、これにより肝臓/胆管系及び泌尿器系によるクリアランスが示された。血液クリアランスはかなり迅速であり、注射後120分において最初の値の15%未満であり、心筋における取り込みが低かった。骨格筋ではごくわずかであったのに対し、脾臓及び肺における放射能の存在は有意であった。全用量の99mTc−C2A−GSTをブタ及びマウスで試験し、毒性又は有意な副作用は全く見られなかった。
【0068】
SPECT画像化:左回旋枝及び左前下行枝で冠動脈閉塞である動物個体から、それぞれSPECT画像及びCT画像を得た。99mTc−C2A−GSTの注射後3時間で画像を得た。コレジスターを行ったSPECT画像及びCT画像において、左心室の後壁での放射性トレーサーの有意な焦点となる取り込みが見られた。また、左冠動脈前下行枝の閉塞により与えられる虚血/再灌流損傷と一致して、心尖領域で高レベルの放射能を検出した。全ての場合において、SPECT/CTコレジスター(co-registration)によって、心室の血液プールよりも高い心筋における放射能の取り込みが明らかに解決した。梗塞した心筋と遠隔生存心筋との間の信号対バックグラウンド強度(signal-to-background)比は、3.36±0.74であった。6時間及び17時間での後期の時点の画質によって、信号対バックグラウンド強度比がわずかに改善し続けて、17時間までにプラトー(plateau)となった(データ図示せず)。高い放射能の取り込み位置は、経時的に変動しないが、信号はより拡散が少なくなり、より集まるようになると考えられた。血流の異常は、99mTc−C2A−GSTの高い取り込みと十分に相関のある99mTc−セスタミビSPECT画像で同定した。99mTc−C2A−GSTの血液クリアランスプロファイルは二相性であると考えられた。急速クリアランス相の血中半減期が約15分であると算出した(n=7)。注射後わずか3時間で、血液サンプルを採取したので、緩徐クリアランス相の血中半減期を正確に導出するのに、より遅い時点のデータが必要であるだろう。それにも関わらず、数時間でこの値を推定することができる。梗塞領域に加えて、マウスのこれまでの生体内分布の研究と一致して、肝臓及び腎臓の有意な放射能集積が存在した。
【0069】
組織分析:解剖分析によってもまた、放射能と損傷した心筋との間の共局在化が確認された:組織サンプルのシンチレーション計測では、遠隔生存心筋に比べて、梗塞領域での放射能の取り込みが11.68±4.02倍の上昇を示した。梗塞組織のフローサイトメトリー分析によって、DNA量が大幅に減少して、全細胞集団の8.9%がsubG0相であることが示された(図6)。一方で、遠隔の(remote)健常な心筋の細胞致死率は0.1%未満であった(図6)。透過顕微鏡によって、クロマチン凝縮及びミトコンドリア膨張をそれぞれ含む梗塞部位でのアポトーシス及び壊死の両方の発生が観察された(図7)。
【0070】
本発明は、上記の実施例に対する限定を意図しないが、添付の請求項の範囲内にあるような全てのこのような修正及び変更を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1a】カンプトセシンで処理したJurkat細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である。ヨウ化プロピジウム(PI)及びC2A−GST−FITC又はアネキシンV―FITCを使用した二重標識化を示す。
【図1b】カンプトセシンで処理したJurkat細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である。C2A−GST−AF680及びアネキシンV−FITCで標識化した二重プローブを示す。
【図2】γ計測によって得られた放射能(黒丸)及びブラッドフォード法で染色後、512nmでの吸光を測定したタンパク質の相対濃度(白四角)に関する、G−25 sephadexゲル濾過カラムクロマトグラフィによる99mTc−C2A−GSTの溶出プロファイルを示す図である。
【図3】カンプトセシンで処理したJurket細胞を使用した、99mTc−C2A−GSTに関する飽和照射法による解離定数(Kd)測定を示す図である。Kdは、最大結合能(Bmax)の半分(B1/2)での99mTc−C2A−GSTの濃度として測定する。
【図4】非標識のC2A−GSTに対する99mTc−C2A−GSTによる競合試験を示す図である。50%阻害濃度(IC50)は、結合した放射能の半分を置換する非標識のC2A−GSTの濃度として測定する。
【図5】尾静脈注射後、1分、15分、30分、60分、120分、及び240分における、マウスの99mTc−C2A−GSTの生体内分布を示す図である(それぞれの時点に対して、n=8)。各組織の投与量に対するパーセンテージが経時的に示される。
【図6】SPECT画像化の後に、梗塞領域及び遠隔生存領域から採取した心臓細胞のフローサイトメトリーを示す図である。ヨウ化プロピジウムを使用して染色して、相対的なDNAの量に基づきこの細胞を分類した。
【図7】梗塞部位から採取した心臓組織の組織学分析を示す図である。これにより、急性の心筋梗塞に関するこれまでの超微細構造の変化が実証されている。透過型電子顕微鏡写真が上部に示され、組織切片のH&E染色が下部に示されている。クロマチン凝縮/周縁化、ミトコンドリア異常、及び筋原線維の過剰収縮(hyper-contaction)は、それぞれアスタリスク、矢印、及び矢じりで示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビボでの哺乳類の被検体におけるホスファチジルセリンの細胞外レベルの増大を特徴とする細胞死又は別の状態を検出する方法であって、
(a)タンパク質のホスファチジルセリンと結合するC2ドメイン又はこの活性変異型を含む放射性核種で標識化した化合物を投与するステップと、
(b)放射線放出の画像を得るために、前記被検体において前記放射性核種からの放射線放出を測定するステップと
を含み、前記細胞死又は前記状態の部位を前記画像から判定することができる、細胞死又は別の状態を検出する方法。
【請求項2】
心筋梗塞、血管血栓症、関節硬化性プラーク、または腫瘍細胞死を検出するためのものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
急性の心筋梗塞を検出するためのものである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記被検体が、ヒト、ブタ、ラット、及びマウスから成る群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記被検体がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記細胞死がアポトーシス性細胞死又は壊死性細胞死である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
放射性核種が、炭素11、フッ素18、ガリウム67、ガリウム68、インジウム111、インジウム113m、ヨウ素122、ヨウ素123、ヨウ素124、ヨウ素125、ヨウ素131、窒素13、酸素15、テクネチウム99m、及びタリウム201から成る群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記放射性核種がテクネチウム99mである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記C2ドメインが、テクネチウム99mの標識化のためにチオール化される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記C2ドメインが、ヒトのシナプトタグミンI C2Aドメイン、ブタのシナプトタグミンI C2Aドメイン、ラットのシナプトタグミンI C2Aドメイン、及びマウスのシナプトタグミンI C2Aドメインから成る群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記C2ドメインが、ラットのシナプトタグミンI C2Aドメインである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記活性変異型が、ホスファチジルセリンと結合するC2ドメインと少なくとも60%相同性がある、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記活性変異型が、ホスファチジルセリンと結合するC2ドメインと少なくとも70%相同性がある、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記活性変異型が、ホスファチジルセリンと結合するC2ドメインと少なくとも80%相同性がある、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記活性変異型が、ホスファチジルセリンと結合するC2ドメインと少なくとも90%相同性がある、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記放射線検出器がγ線検出器であり、前記放射線放出がγ線放出である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記放射線が陽電子放出断層撮影法又は単光子放出コンピュータ断続撮影法によって検出される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記放射性核種で標識化した化合物が静脈内で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項19】
選択した間隔で前記ステップ(b)を繰り返すステップをさらに含み、該繰り返すステップが、前記被検体における放射線放出の強度の変化を経時的に追跡記録して、細胞死する細胞の位置又は数のいずれかの変化を検出するのに効果的である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
タンパク質のホスファチジルセリンと結合するC2ドメイン又はこの活性変異型を含む放射性核種で標識化した化合物と、
哺乳類の被検体に前記化合物を投与して、ホスファチジルセリンの細胞外レベルの増大により特徴づけられる細胞死又は別の状態を画像化することに関する取り扱い説明書と
を含む、キット。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−521013(P2008−521013A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543317(P2007−543317)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/042020
【国際公開番号】WO2006/055855
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(500345401)エムシーダブリユー リサーチ フオンデーシヨン インコーポレーテツド (6)
【Fターム(参考)】