説明

インフルエンザに対して使用するためのワクチン組成物

本発明は、インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤と、ガラクトシルセラミドの誘導体である、少なくとも1つのアジュバントとを含んでいる、インフルエンザの治療に使用するためのワクチン組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はワクチン組成物に関し、特にインフルエンザに対して使用するワクチン組成物に関する。
【0002】
ヒトインフルエンザおよびトリインフルエンザは、毎年季節になると大流行する汎発性流行病であり、死亡率も罹患率も高い。Orthomyxoviridae科に属する、エンベロープに包まれたRNAウイルスであるインフルエンザウイルスの中でも、A型インフルエンザウイルスがインフルエンザの主要な原因である。A型インフルエンザウイルスは、その表面タンパク質(赤血球凝集素(H)およびノイラミニダーゼ(N))の抗原性によって、さらにサブタイプに分類することができる。現時点で15種類のHのサブタイプおよび9種類のNのサブタイプが特定されている。これらのサブタイプの組合せは動物においては多数見られるが、ヒトの集団では、1918年以来、H1、H2、H3、N1、およびN2のみが安定した系列を確立している。
【0003】
A型インフルエンザは自然変異率が高く、抗原性を頻繁に変化させる。この抗原性の変化は、経時的に起きる漸進的な抗原ドリフト(つまり、ウイルスのポリメラーゼによってランダムな点変異が挿入され、対応するタンパク質のアミノ酸配列が変化してしまう。)、あるいは、抗原シフトとして知られる、別のウイルスのサブタイプとの急激な組換え(宿主が、異なる2つの株のインフルエンザウイルスに同時に感染する。)のいずれかによって発生する。
【0004】
この疾患に対して使用される主な戦略は、不活性化ワクチンまたは弱毒化された生ワクチンのいずれかを用いたワクチン接種である。
【0005】
季節性インフルエンザワクチンなどのインフルエンザに対しては、Fluzone(登録商標)、Vaxigrip(登録商標)、Mutagrip(登録商標)、Imovax Gripe(登録商標)(以上、Sanofi−Pasteur社製)、Fluarix(登録商標)、Gripovax(登録商標)、FluLaval(登録商標)(以上、GlaxoSmithKline社製)、FluMist(登録商標)(MedImmune社製)、Afluria(登録商標)(CSL Biotechnologies社製)、Begrivac(登録商標)、Fluad(登録商標)、Fluvirin(登録商標)、Agrippal(登録商標)(以上、Novartis社製)などの、さまざまな種類のワクチンが開発されている。インフルエンザワクチンには、例えばCelvapan(登録商標)(Baxter社製)、Daronrix(登録商標),Pandemrix(登録商標)、Prepandrix(登録商標)(以上、GlaxoSmithKline Biologicals社製)、Focetria(登録商標)、Optaflu(登録商標)(以上、Novartis Vaccines and Diagnostics社製)、IDflu(登録商標)、Intanza(登録商標)(以上、Sanofi Pasteur社製)などの大流行性インフルエンザのワクチンもある。しかしながら、利用可能なワクチンが活性を有するのは短い期間、しかも特定の種類の株(赤血球凝集素)に限られる。耐性を有するウイルスの変異株が出現することや副作用が、インフルエンザウイルスの感染に対する予防策、特に、複数種のインフルエンザウイルス株の感染に対する同時予防策を改善する必要性を生んでいる。
【0006】
驚くべきことではあるが、本発明者らは、ガラクトシルセラミドの誘導体をインフルエンザワクチン中でアジュバントとして使用すると、ワクチン組成物の効力が増加することを見いだした。具体的には、発明者らは、このような化合物がアイソタイプのスイッチングを増加させること(IgG2aおよびIgG2bの産生量を増加させること)、また、期せずしてこの化合物が、インフルエンザエピトープに対する細胞傷害性のTリンパ球の活性化、特にTh1の活性化を誘起することを示した。これに対して、現在のインフルエンザワクチンは、主にIgGの産生量を増加させる。
【0007】
また、発明者らは、驚くべきことに、ガラクトシルセラミドの誘導体をインフルエンザワクチン中でアジュバントとして使用すると交差防御が誘起される、つまり、インフルエンザワクチンの製造に使用した株とは異なる感染性株に対するワクチン組成物の効力が増加することを示した。
【0008】
したがって、本発明は、インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤と、ガラクトシルセラミドの誘導体である少なくとも1つのアジュバントと、を含んでいるワクチン組成物に関連する。少なくとも1つの薬剤は、任意にアジュバントを含んでいる。
【0009】
本発明の文脈において、「ワクチン組成物」または「ワクチン」とは、被験体に投与されると、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を誘起する組成物を指す。
【0010】
本明細書において、「被験体」とは、例えば脊椎動物または哺乳動物、好ましくはヒトではない哺乳動物またはヒトなどの動物を指す。脊椎動物の例としては、トリおよび家禽、特にニワトリが挙げられる。ヒトではない哺乳動物の例としては、げっ歯類、ウマ、ブタ、および霊長類が挙げられる。被験体はヒトであることが最も好ましい。
【0011】
本発明の文脈において、「インフルエンザ」とは、インフルエンザウイルスと呼ばれるOrthomyxoviridae科のRNAウイルスによって引き起こされるトリおよび哺乳動物の感染症を指す。ヒトにおいて、この疾患に共通する症状は、悪寒および発熱、咽頭炎、筋痛、激しい頭痛、咳嗽、脱力感、および全身違和感である。症状が重い場合、インフルエンザは、特に子供および高齢者を死に至らしめる可能性のある肺炎を引き起こす。インフルエンザは、感染した哺乳動物から、咳またはくしゃみがウイルスを含んだエアロゾルを形成することによって空気を介して伝染し、感染したトリから、糞を介して伝染する。インフルエンザは唾液、鼻の分泌物、糞便、および血液によっても伝染する。これらの体液または汚染された面に接触することによっても、感染が起こり得る。
【0012】
本発明の文脈において、「インフルエンザウイルス」とは、インフルエンザの原因となる病原体を指す。インフルエンザウイルスは、8つの一本鎖のマイナスRNAのセグメント、からなる分節ゲノムを有する、エンベロープに包まれたRNAウイルスであり、Orthomyxoviridae科に属している。本発明に係るインフルエンザウイルスには、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、およびC型インフルエンザウイルスの3つのサブタイプが含まれる。これらのサブタイプは、ウイルスの2つの構造タンパク質(マトリックスタンパク質M2およびヌクレオプロテイン)における抗原の差異に基づいている。好ましくは、本発明に係るインフルエンザウイルスはA型インフルエンザウイルスである。より好ましくは、本インフルエンザウイルスは、H1N1株、H1N2株、H2N2株、H3N1株、H3N2株、H5N1株、およびH7N7株からなる群より選択される。さらに具体的には、インフルエンザには季節性のものまたは大流行性のものがあることは、当業者にとって周知である。季節性インフルエンザは、通常、世界保健機関が規定し、提案する株に起因している。現時点(2009年)において、季節性インフルエンザを引き起こす流行中のインフルエンザ株は、特にH1N1、H3N2、およびB型インフルエンザ株である。かつては、H2N2型インフルエンザ株も季節性インフルエンザの原因であった。2008年までの大流行性インフルエンザは、例えばH1N1型またはH7N7型インフルエンザ株が原因であった。
【0013】
本明細書にて使用される「予防活性を有する薬剤」とは、インフルエンザウイルスによる感染に対する免疫応答を誘起する傾向が高い、生命体の任意の化合物を指す。インフルエンザに対する使用に適切であり得る、予防活性を有する薬剤の例としては、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、糖鎖、糖タンパク質、インフルエンザウイルス全体(whole influenza virus)、インフルエンザウイルスの分割物(split influenza virus)などが挙げられる。好ましくは、本発明に係るインフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤は、弱毒化されていない生きたインフルエンザウイルス;弱毒化された生きたインフルエンザウイルス;死滅したインフルエンザウイルス、不活性化されたインフルエンザウイルス;インフルエンザウイルス抗原(例えば、インフルエンザウイルスのサブユニット、インフルエンザウイルスから得られる組換え型ポリペプチドまたはインフルエンザウイルスから得られる組換え型タンパク質など);およびインフルエンザウイルスまたは組換え型インフルエンザウイルスから得られるcDNA、からなる群より選択される。
【0014】
好ましくは、本発明に係るインフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤は、少なくとも1つのA型インフルエンザウイルス株と、少なくとも1つのB型インフルエンザウイルス株とを含んでおり、任意に別のA型インフルエンザウイルス株またはC型インフルエンザウイルス株を含んでいる。
【0015】
本明細書において用いられるような「弱毒化されていない生きたインフルエンザウイルス」とは、8つの一本鎖のマイナスRNAのセグメントからなる、分節ゲノムを有する、エンベロープに包まれた生きたRNAウイルスを指し、Orthomyxoviridae科に属する。
【0016】
本明細書において用いられるような「弱毒化された生きたインフルエンザウイルス」とは、自然の状態では軽度の病原性を示す、生きたインフルエンザウイルス株を指す。弱毒化された生きたインフルエンザウイルスには、低温に適合し、温度感受性のあるインフルエンザ株が含まれる。弱毒化された生きたウイルスを得る方法は当業者にとって周知であり、例えば、発病性を失った変異体が得られるまでニワトリの卵において連続継代を繰り返す方法(Hilleman (2002) Vaccine 20:3068-3087)などがある。
【0017】
本明細書において用いられるような「死滅したインフルエンザウイルス」または「不活性化されたインフルエンザウイルス」とは、公知の方法によって得られる死滅したインフルエンザウイルスを指す。公知の方法の中で最も一般的な方法は、ニワトリの受精卵においてウイルスを成長させ、これを精製した後、例えば界面活性剤によって処理することによって失活させる方法である。
【0018】
本明細書において用いられるような「インフルエンザウイルスのサブユニット」とは、上記インフルエンザウイルスから得られる核酸、ポリペプチド、タンパク質、またはこれらの混合物を指す。特に、インフルエンザウイルスのサブユニットとは、赤血球凝集素、ノイラミニダーゼ、ヌクレオプロテイン、M1、M2、NS1、NS2(NEP)、PA、PB1、PB1−F2、およびPB2からなる群より選択される、インフルエンザウイルスのタンパク質である。好ましくは、本発明によれば、インフルエンザウイルスのサブユニットは赤血球凝集素および/またはノイラミニダーゼである。
【0019】
好ましくは、本発明に係るインフルエンザウイルスは、動物、特に哺乳動物またはトリである宿主に由来する。より好ましくは、インフルエンザウイルスの宿主は、ヒト、ウマ、およびトリからなる群より選択される。
【0020】
本発明の文脈において、「アジュバント」とは、予防活性を有する薬剤の免疫生成能を強化または修正する物質を指す。
【0021】
本明細書において用いられるような「ガラクトシルセラミドの誘導体」という表現は、例えばα−ガラクトシルセラミドなどのガラクトシルセラミド、さらに具体的にはこれらの誘導体を指す。
【0022】
好ましくは、本発明に係るガラクトシルセラミドの誘導体は、NKT細胞を活性化するガラクトシルセラミドの誘導体である。本明細書において用いられるような「NKT細胞を活性化するガラクトシルセラミドの誘導体」とは、(i)CD1dによって提示される刺激抗原に接触すると、NKT細胞によるTh1サイトカインおよびTh2サイトカイン(例えばIFN−γ、IL−4、IL−2、IL−10、IL−13、GM−CSF、またはTNF−α)またはこれらのサイトカインの組合せの分泌を引き起こすガラクトシルセラミドの誘導体、(ii)CD69などの活性化T細胞を対象とした細胞表面のマーカーの発現増加を引き起こすガラクトシルセラミドの誘導体、(iii)B細胞の活性化を引き起こすガラクトシルセラミドの誘導体、または(iv)NKT細胞の表面においてT細胞受容体(TCR)の発現低下を引き起こすガラクトシルセラミドの誘導体を指す。
【0023】
好ましくは、本発明に係るアジュバントは、次式(V):
【0024】
【化1】

【0025】
で表わされる化合物である。
【0026】
Rは酸素原子もしくは硫黄原子または−CH−である。
【0027】
は1〜150個の炭素原子を含んでいる飽和または不飽和の炭化水素鎖である。この炭化水素鎖は、任意に芳香族炭化水素鎖、直鎖状の炭化水素鎖または分岐鎖状の炭化水素鎖であり、アルキル鎖、アリール鎖、アラルキル鎖、アルケニル鎖、またはアラルケニル鎖などである。この炭化水素鎖は、ヘテロ原子またはヘテロ基を任意に1個以上含んでおり、1個以上のヒドロキシル基またはシクロプロピル(cyclopropryl)基で置換されていてもよい。ヘテロ原子またはヘテロ基は、O、N、Sまたはカルボニル基から選択されることが好ましい。
【0028】
は、1〜150個の炭素原子を含んでいる飽和または不飽和の炭化水素鎖である。この炭化水素鎖は、任意に芳香族炭化水素鎖、直鎖状の炭化水素鎖または分岐鎖状の炭化水素鎖であり、アルキル鎖、アリール鎖、アラルキル鎖、アルケニル鎖、またはアラルケニル鎖などである。この炭化水素鎖は、ヘテロ原子またはヘテロ基を任意に1個以上含んでおり、1個以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいし、1〜20個の炭素原子を含んでいる飽和または不飽和の炭化水素鎖で置換されていてもよい。ヘテロ原子またはヘテロ基は、O、N、Sまたはカルボニル基から選択されることが好ましい。
【0029】
は、水素原子であるか、あるいは、1〜120個の炭素原子を含んでいる飽和または不飽和の炭化水素鎖である。この炭化水素鎖は、任意に芳香族炭化水素鎖、直鎖状の炭化水素鎖または分岐鎖状の炭化水素鎖であり、アルキル鎖、アリール鎖、アラルキル鎖、アルケニル鎖、またはアラルケニル鎖などである。
【0030】
、R、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、
(i)ヒドロキシル基、
(ii)1〜100個の炭素原子を含んでいる飽和または不飽和の炭化水素鎖であって、任意に芳香族炭化水素鎖、直鎖状の炭化水素鎖または分岐鎖状の炭化水素鎖であり、アルキル鎖、アリール鎖、アラルキル鎖、アルケニル鎖、またはアラルケニル鎖などであり、ヘテロ原子またはヘテロ基を任意に1個以上含んでおり、このヘテロ原子またはヘテロ基がO、N、Sまたはカルボニル基から選択されることが好ましい、炭化水素鎖、
(iii)アミノ基、硫酸基、リン酸基、またはカルボキシル基、あるいは、
(iv)1〜4個のヘキソースの鎖であって、アミノ基、硫酸基、リン酸基およびカルボキシル基から選択される1個以上の基で置換されていてもよく、酸素原子もしくは硫黄原子または−CH−によってヘキソースが互いに連結されている、ヘキソースの鎖を表わす。
【0031】
より好ましくは、本発明に係るアジュバントは、次式(VI):
【0032】
【化2】

【0033】
で表わされる化合物である。
【0034】
は、
(i)−(CHCH(Xは1〜100から選択される整数である。)、
(ii)−(CHCH=CH(CHCHまたは−(CHCH=CH(CHCH=CH(CHCH(X、Y、およびZは独立して1〜14から選択される整数である。)、または
(iii)次式(A):
【0035】
【化3】

【0036】
で表わされる基である。
(RはHまたはOHであり、R21は炭素数が1〜30のアルキルである。この炭素数が1〜30のアルキルは飽和または不飽和であるか、あるいは1個以上のシクロプロピル基を含んでいる。)。
【0037】
は炭素数が3〜100の直鎖状または分岐鎖状のアルキルである。
【0038】
、R、およびRは、同一であっても異なっていてもよく、以下の(i)〜(v)を表す:
(i)−O−R22(R22は水素、炭素数が1〜6のアルキル、炭素数が6〜12のアラルキル、または炭素数が1〜6のアシルである。)、
(ii)−NR24−CO−CH(R24は水素、炭素数が1〜20のアルキル、またはアリールである。炭素数が1〜20のアルキルは、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、スルフェート、またはホスフェートで置換されていてもよい。アリールは、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、スルフェート、またはホスフェートで置換されていてもよい。)、
(iii)−OSOH、−SOH、−PO、−POH、−COOH、または次式(B):
【0039】
【化4】

【0040】
で表わされる基(Yは−O−、−CH−、または−S−であり、R17、R18、R19、およびR20は、−H、−OH、−OSOH、−SOH、−PO、−POH、−NH−CO−CH、および−COOHから独立して選択されるか、あるいは、R20は式(B)で表わされる基であって、その式(B)においてY、R17、R18、R19、およびR20は上記のように規定される。)、
(iv)N(R)R10、(Rは、
(a)水素、
(b)−SO11(R11は、
ハロ;
ヒドロキシル;
OR12
OR13
アミノ;
NHR12
N(R12
NHR13
N(R13
アラルキロアミノ;
炭素数が1〜12のアルキル(炭素数が1〜12のアルキルは、ハロ、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、OR12、OR13、アシルオキシ、アミノ、NHR12、N(R12、NHR13、N(R13、アラルキルアミノ、メルカプト、チオアルコキシ、S(O)R12、S(O)R13、SO12、SO13、NHSO12、NHSO13、スルフェート、ホスフェート、シアノ、カルボキシル、C(O)R12、C(O)R13、C(O)OR12、C(O)NH、C(O)NHR12、C(O)N(R12、0個〜3個のR14を含有する炭素数が3〜10のシクロアルキル、0個〜3個のR14を含有する炭素数が3〜10のヘテロシクリル、炭素数が2〜6のアルケニル、炭素数が2〜6のアルキニル、炭素数が5〜10のシクロアルケニル、炭素数が5〜10のヘテロシクロアルケニル、0個〜3個のR15を含有する炭素数が6〜20のアリール、または0個〜3個のR15を含有するヘテロアリール、で置換されていてもよい。);
炭素数が3〜10のシクロアルキル、炭素数が3〜10のヘテロシクリル、炭素数が5〜10のシクロアルケニル、または炭素数が5〜10のヘテロシクロアルケニル(炭素数が3〜10のシクロアルキル、炭素数が3〜10のヘテロシクリル、炭素数が5〜10のシクロアルケニル、または炭素数が5〜10のヘテロシクロアルケニルは、1個以上の、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、OR12、OR13、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、NHR12、N(R12、NHR13、N(R13、アラルキルアミノ、メルカプト、チオアルコキシ、S(O)R12、S(O)R13、SO12、SO13、NHSO12、NHSO13、スルフェート、ホスフェート、シアノ、カルボキシル、C(O)R12、C(O)R13、C(O)OR12、C(O)NH、C(O)NHR12、C(O)N(R12、アルキル、ハロアルキル、0個〜3個のR14を含有する炭素数が3〜10のシクロアルキル、0個〜3個のR14を含有する炭素数が3〜10のヘテロシクリル、炭素数が2〜6のアルケニル、炭素数が2〜6のアルキニル、炭素数が5〜10のシクロアルケニル、炭素数が5〜10のヘテロシクロアルケニル、0個〜3個のR15を含有する炭素数が6〜20のアリール、または0個〜3個のR15を含有する炭素数が6〜20のヘテロアリール、で置換されていてもよい。);
炭素数が2〜6のアルケニル、炭素数が2〜6のアルキニル、アリール、またはヘテロアリール(炭素数が2〜6のアルケニル、炭素数が2〜6のアルキニル、アリール、またはヘテロアリールは、1個以上の、ハロ、ヒドロキシ、OR12、OR13、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、NHR12、N(R12、NHR13、N(R13、アラルキルアミノ、メルカプト、チオアルコキシ、S(O)R12、S(O)R13、SO12、SO13、NHSO12、NHSO13、スルフェート、ホスフェート、シアノ、カルボキシル、C(O)R12、C(O)R13、C(O)OR12、C(O)NH、C(O)NHR12、C(O)N(R12、アルキル、ハロアルキル、0個〜3個のR14を含有する炭素数が3〜10のシクロアルキル、0個〜3個のR14を含有する炭素数が3〜10のヘテロシクリル、炭素数が2〜6のアルケニル、炭素数が2〜6のアルキニル、炭素数が5〜10のシクロアルケニル、炭素数が5〜10のヘテロシクロアルケニル、0個〜3個のR15を含有する炭素数が6〜20のアリール、または0個〜3個のR15を含有する炭素数が6〜20のヘテロアリール、で置換されていてもよい。);あるいは、
−L−Ar(Lは存在しないか、あるいは、スペーサー部分であり、好ましくは任意に1個以上のカルボニル基が介在するアルキルである。Arは置換されていてもよい芳香族基である。)である。)、
(c)−C(O)R11(R11は上記のように規定される。)、
(d)−C(R11(R16)(R11は上記のように規定され、R16は水素であり、R11またはR16と、R10とは一緒になって、それらが結合している炭素原子と窒素原子との間に二重結合を形成する。)であるか、あるいは、
(e)RおよびR10はNと一緒になって、R11で置換されていてもよい3個〜10個の環原子の複素環を形成し、
10は水素または炭素数が1〜6のアルキルであるか、R10とR16とが一緒になって、それらが結合している炭素原子と窒素原子との間二重結合を形成するか、あるいはR10とRとが一緒になって、R11で置換されていてもよい3個〜10個の環原子からなるヘテロシクリルを形成し、
12は水素であるか、あるいはハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、スルフェート、またはホスフェートで置換されていてもよい炭素数が1〜20のアルキルであり、
13は、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、スルフェート、またはホスフェートで置換されていてもよいアリールである。
【0041】
各R14は、互いに独立して、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、オキソ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、スルフェート、またはホスフェートであり、
各R15は、互いに独立して、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、スルフェート、またはホスフェートであり、
Xは1〜100である。)または、
(v)単糖類またはオリゴ糖。
【0042】
は、
(i)−O−R22(R22は上記のように規定される。)、
(ii)−NR24−CO−CH(R24は上記のように規定される。)、
(iii)−OSOH、−SOH;−PO、−POH、または−COOH、または
(iv)−OSONaである。
【0043】
は、
(i)−CH(OR18)R
(ii)−CH=CH(CH)R、または
(iii)炭素数が3〜100の直鎖状または分岐鎖状アルキルである(Rは上記のように規定される。)。
【0044】
18およびR23は、互いに独立して、水素、炭素数が1〜6のアルキル、炭素数が6〜12のアラルキル、または炭素数が1〜6のアシルである。
【0045】
Rは−O−、−CH−、または−S−である。
【0046】
さらに好ましくは、本発明に係るアジュバントは、次式(VII):
【0047】
【化5】

【0048】
で表わされる化合物である。
【0049】
は、
a)−(CHCH(Xは1〜100から選択される整数)、または
b)−(CHCH=CH(CHCHまたは−(CHCH=CH(CHCH=CH(CHCHである。X、Y、およびZは独立して1〜14から選択される整数である。
【0050】
は炭素数が3〜100の直鎖状または分岐鎖状アルキルである。
【0051】
、R、R、およびRは互いに同一であっても異なっていてもよく、R〜Rの少なくとも1個が−NH−CO−CHを表わしている場合に、それぞれ、−OHまたは−NH−CO−CHを表わす。
【0052】
上記式(VI)および(VII)において、Rが−(CHCHである場合、Xは18〜26から選択される整数であることが好ましく、22〜24から選択される整数であることがさらに好ましい。
【0053】
が−(CHCH=CH(CHCHまたは−(CHCH=CH(CHCH=CH(CHCHである場合、X、Y、およびZは、互い独立して5〜14から選択される整数であることが好ましい。
【0054】
が−(CHCH=CH(CHCHである場合、X+Y≦23であることが好ましく、15≦X+Y≦23であることがさらに好ましい。
【0055】
が−(CHCH=CH(CHCH=CH(CHCHである場合、X+Y+Z≦21であることが好ましく、13≦X+Y+Z≦21であることがさらに好ましい。
【0056】
また、好ましくは、式(VI)または(VII)において、Rは炭素数が11〜16の直鎖状または分岐鎖状のアルキルであり、さらに好ましくは、炭素数が14〜16の直鎖状または分岐鎖状のアルキルであり、より好ましくは、炭素数14の直鎖状または分岐鎖状のアルキルである。
【0057】
より好ましくは、本発明のガラクトシルセラミドの誘導体は、次式(I):
【0058】
【化6】

【0059】
で表わされるN−アセチルα−ガラクトピラノシル−脂質である。
【0060】
およびRは式(VII)に規定されているとおりである。
【0061】
好適な実施形態において、本発明に係るアジュバントは、次式(II):
【0062】
【化7】

【0063】
で表わされるPBS−57と呼ばれる化合物である。
【0064】
別の好適な実施形態において、本発明に係るアジュバントは、次式(III)で表わされるPBS−96と呼ばれる化合物である。
【0065】
【化8】

【0066】
別の好適な実施形態において、本発明に係るアジュバントは、次式(IV)で表わされるPBS−14と呼ばれる化合物である。
【0067】
【化9】

【0068】
本発明に係るアジュバントが式(I)に対応する場合、アジュバントは、アミド部分に連結されたPEG−2000部分をさらに含んでいてもよい。このような化合物は、例えば次式(VIII)または(IX)で表わされる化合物である。
【0069】
【化10】

【0070】
【化11】

【0071】
本明細書にて用いるような「アルキル」という用語は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、記載された個数の炭素数を有する炭化水素鎖を指す。例を挙げると、炭素数が3〜100のアルキルとは、この基が3個〜100個(3個も100個も含む)の炭素原子を含んでいてもよいことを示している。「アリールアルキル」または「アラルキル」という用語は、アルキルの水素原子がアリール基で置換されたアルキル部分を指す。「アリールアルキル」または「アラルキル」の例としては、ベンジル基および9−フルオレニル基が挙げられる。
【0072】
「アシル」という用語は、アルキルカルボニル置換基、シクロアルキルカルボニル置換基、アリールカルボニル置換基、ヘテロシクリルカルボニル置換基、またはヘテロアリールカルボニル置換基を指し、これらのいずれの置換基も、置換基でさらに置換されてもよい。
【0073】
本明細書にて用いるような「シクロアルキル」という用語は、炭素数が3〜12の飽和した環式、二環式、三環式、または多環式の炭化水素基を含み、置換可能な任意の環原子が置換基で置換されてもよい。シクロアルキル部分の例としは、シクロヘキシル、アダマンチルなどが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
【0074】
「アリール」という用語は、芳香族の単環式、二環式、または三環式の炭化水素環系を指し、置換可能な任意の環原子が置換基で置換されてもよい。アリール部の例としては、フェニル、ナフチル、およびアントラセニルなどが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
【0075】
「ヘテロシクリル」という用語は、単環式の場合は1個〜3個のヘテロ原子を有し、二環式の場合は1個〜6個のヘテロ原子を有し、三環式の場合は1個〜9個のヘテロ原子を有する、芳香族ではない、3員〜10員の単環式、8員〜12員の二環式、または11員〜14員の三環式の環系を指す。このヘテロ原子はO、N、またはSから選択される。例えば、単環式の場合、炭素原子と、1個〜3個のN、O、またはSであるヘテロ原子とを有し、二環式の場合、炭素原子と、1個〜6個のN、O、またはSであるヘテロ原子とを有し、三環式の場合、炭素原子と、1個〜9個のN、O、またはSであるヘテロ原子とを有する。なお、置換可能な任意の環原子が置換基で置換されてもよい。
【0076】
「ヘテロアリール」という用語は、単環式の場合は1個〜3個のヘテロ原子を有し、二環式の場合は1個〜6個のヘテロ原子を有し、三環式の場合は1個〜9個のヘテロ原子を有する、芳香族である、5員〜8員の単環式、8員〜12員の二環式、または11員〜14員の三環式の環系を指す。このヘテロ原子はO、N、またはSから選択される。例えば、単環式の場合、炭素原子と、1個〜3個のN、O、またはSであるヘテロ原子とを有し、二環式の場合、炭素原子と、1個〜6個のN、O、またはSであるヘテロ原子とを有し、三環式の場合、炭素原子と、1個〜9個のN、O、またはSであるヘテロ原子とを有する。なお、置換可能な任意の環原子が置換基で置換されてもよい。
【0077】
「オキソ」という用語は、炭素と結合するとカルボニルを形成し、窒素と結合すると窒素酸化物を形成し、硫黄と結合するとスルホキシドまたはスルホンを形成する酸素原子を指す。
【0078】
「置換基」という用語は、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基、またはヘテロアリール基において、その基の任意の原子を「置換する」基を指す。適切な置換基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、SOH、スルフェート、ホスフェート、パーフルオロアルキル、パーフルオロアルコキシ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、カルボキシル、オキソ、チオキソ、イミノ(アルキル、アリール、アラルキル)、S(O)アルキル(nは0〜2である。)、S(O)アリール(nは0〜2である。)、S(O)ヘテロアリール(nは0〜2である。)、S(O)ヘテロシクリル(nは0〜2である。)、アミン(モノ−、ジ−、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、およびこれらの組合せ)、エステル(アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル)、アミド(モノ−、ジ−、アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、およびこれらの組合せ)、スルホンアミド(モノ−、ジ−、アルキル、アラルキル、ヘテロアラルキル、およびこれらの組合せ)、非置換型アリール、非置換型ヘテロアリール、非置換型ヘテロシクリル、および非置換型シクロアルキルなどが挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
【0079】
本発明に係るアジュバントは、例えば懸濁液、マイクロエマルジョンまたはマクロエマルジョン、ミセル、(例えば蓄積注入のための)デポー製剤、特に局所投与および経皮投与に適した乾燥調合物、またはリポソームなどの、任意の適した形態で調合されてもよい。
【0080】
さらにこのアジュバントは、例えば重合体(例えばPGA(ポリグリコール酸))またはシクロデキストリンと組み合わせることによって、徐放性調合物として調合されてもよい。
【0081】
本発明に係るワクチン組成物は、ガラクトシルセラミドの誘導体であるアジュバントに加えて、1つ以上の別のアジュバントを含んでいてもよい。この別のアジュバントは、例えばToll様受容体(TLR)に対する依存性を有するアジュバントであっても、TLRに対する依存性を有しないアジュバントであってもよい。前者の例としては、Ampligen(Hemispherx社)、AS01、AS02、AS04(GSK社)、MPL(モノホスホリルリピドA)RC−529(Dynavax社)、E6020(エーザイ社/Sanofi Pasteur社)、TLR技術(VaxInnate社)、CpGオリゴヌクレオチド(特にCpG7909(ファイザー社))、ISS(Dynavax社)、IC31(Intercell社)、フラゲリンなどがあげられる。後者の例としては、ミョウバン(例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム)、AS03(GSK社)、MF59(Novartis社)、Provax(Biogen Idec社)、Montanide(Seppic SA社、Bioven社、Cancervax社)、TiterMax(CytRx社)、Advax(Vaccine Pty社)、QS21(Quillaja Saponariaから得られる精製済みサポニン;Antigenics、GSK社)、Quil A(Statens Serum Institute)、ISCOM(サポニンおよび脂質の構造化された複合体)およびリポソームがあげられる。
【0082】
実際には、インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤は、例えば認証済みのインフルエンザワクチンまたは開発中のインフルエンザワクチンなどの、インフルエンザワクチンそのものであってもよい。インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤がインフルエンザワクチンである場合、このインフルエンザワクチンはすでにアジュバントを含有している。例えばFluad(登録商標)はMF59を含有し、Focetria(登録商標)はMF59C.1(スクアレン、ポリソルベート80、およびソルビタントリオレアートの混合物)を含有し、Pandemrix(登録商標)は、スクアレン、DL−α−トコフェロール、およびポリソルベート80からなるアジュバントであるAS03を含有している。
【0083】
好ましくは、本発明に係るワクチン組成物は、少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリアをさらに含んでいる。
【0084】
「薬学的に受容可能なキャリア」という用語は、本発明の化合物とともに患者に投与されてもよく、本発明の化合物の薬理学的活性を喪失させず、薬学的に効果的な量の該化合物を送達するために十分な投与量で投与されても無毒なキャリアを指す。
【0085】
本発明のワクチン組成物中において使用される薬学的に受容可能なキャリアおよび媒体としては、イオン交換体、アルミナ、アルミニウムステアレート、レシチン、自己乳化ドラッグ送達システム(self−emulsifying drug delivery system;SEDDS)(例えばd−α−トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸)、医薬品の剤形において使用される界面活性物質(Tweensやその他の同様の高分子送達マトリクス(polymeric delivery matrices)など)、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセリド混合物などの緩衝物質、水、塩または電解質(例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド性シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系の物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック重合体、ポリエチレングリコール、および羊毛脂肪などがあげられるが、これらの例に限定されるものではない。2−および3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、またはその他の可溶性誘導体を含めた、α−、β−、およびγ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、またはヒドロキシアルキルシクロデキストリンなどの化学的に修正された誘導体も、本発明に係る組成物の送達を改善するために、好適に使用されてもかまわない。
【0086】
好ましくは、完全フロイントアジュバントもしくは不完全フロイントアジュバントまたは水酸化アルミニウムなどの別のアジュバントが、本発明に係るワクチン組成物中に少なくとも1つ含有される。
【0087】
当業者が理解するように、ワクチンは、意図する投与経路と適合するように、適切に調合される。適した投与経路の例としては、非経口経路(例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与)、経口投与(例えば、頬側投与、吸入、点鼻、および肺噴霧(pulmonary spray))、皮内投与、経皮性投与(局所的投与)、経粘膜的投与、眼内投与、直腸内投与などが挙げられる。
【0088】
本発明に係るワクチン組成物は、約0.01μg/Kg〜約5000μg/Kgの範囲の投与量、あるいは約0.1μg/Kg〜約1000μg/Kgの範囲の投与量、あるいは約1μg/Kg〜約500μg/Kgの範囲の投与量で送達されてもよい。効果的な投与量は、投与経路や、他の薬剤と併用する可能性によって変更される。
【0089】
本発明は、インフルエンザの予防または治療に用いる、上記のように規定されるワクチン組成物にも関する。
【0090】
本明細書にて用いられるような、A型インフルエンザの「防止」または「予防」とは、感染を防止すること、つまり、インフルエンザウイルスに感染しないようにすること、またはインフルエンザウイルスの拡大、つまり被験体の他の領域への拡大またはある被験体から別の被験体への拡大を防止することを指す。
【0091】
本明細書にて用いられるような、A型インフルエンザの「治療」とは、疾患の重症度を制限すること、回帰感染を防止すること(つまり不顕性感染または持続感染の再活性化を制限すること)、およびインフルエンザの症状を緩和することなどを指す。
【0092】
好適な実施形態では、本発明に係るワクチン組成物は、上記において規定したようなインフルエンザウイルスの第1の株に起因するインフルエンザ、の治療において使用される。上記において規定したような、インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤は、上記において規定したようなインフルエンザウイルスの第2の株の、上記において規定したような、弱毒化されていない生きたインフルエンザウイルス、弱毒化された生きたインフルエンザウイルス、死滅したインフルエンザウイルス、不活性化されたインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスのサブユニット、組換え型ポリペプチド、組換え型タンパク質、cDNA、または組換え型インフルエンザウイルスからなる群より選択される。
【0093】
本発明は、さらに、上記において規定したような、予防または治療に効果的な量のワクチン組成物を被験体に投与する工程を包含している、被験体においてインフルエンザを治療または予防する方法にも関する。
【0094】
「予防または治療に効果的な量」とは、治療を受ける被験体に対して予防効果または治療効果を奏するワクチン組成物の量を指す。治療効果は客観的な効果(つまり、試験またはマーカーによって測定可能)であってもよいし、あるいは、主観的な結果であってもよい(つまり、被験体が効果の徴候を示したり、効果を知覚したりする)。上述のワクチン組成物の効果的な量は、約0.01μg/Kg〜約5000μg/Kgの範囲、あるいは約0.1μg/Kg〜約1000μg/Kgの範囲、あるいは約1μg/Kg〜約500μg/Kgの範囲であってもよい。効果的な投与量は、他の薬剤と併用する可能性に加えて、投与経路によっても変更される。
【0095】
好適な実施形態では、ワクチン組成物は、インフルエンザ株に対する交差防御を誘起するために使用されていてもよい。交差防御が達成されるのは、ワクチン組成物が上記において規定したようなインフルエンザウイルスの第1の株に起因するインフルエンザ感染を予防および/または治療する際に、上記において規定したようなインフルエンザに対する予防活性を有する上記の少なくとも1つの薬剤が、インフルエンザウイルスの第2の株の、上記において規定したような、弱毒化されていない生きたインフルエンザウイルス、弱毒化された生きたインフルエンザウイルス、死滅したインフルエンザウイルス、不活性化されたインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスのサブユニット、組換え型ポリペプチド、組換え型タンパク質、cDNA、または組換え型インフルエンザウイルスからなる群より選択されるときである。好ましくは、インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤は季節性インフルエンザ株から得られる薬剤であって、かつ、本発明に係るアジュバントの使用によって、このインフルエンザに対する予防活性を有する薬剤の中に存在しないインフルエンザ株に対しても効果的になる。例えば、インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤はH1N1型インフルエンザ株から得られる薬剤であって、かつ、H1N1型インフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染、ならびにH1N2、H2N2、H3N1、H3N2、H5N1、およびH7N7からなる群より選択されるインフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染の予防および/または治療に対して効果的である。インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤はH1N2型インフルエンザ株から得られる薬剤であってもよく、かつ、H1N2型インフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染、ならびにH1N1、H2N2、H3N1、H3N2、H5N1、およびH7N7からなる群より選択されるインフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染の予防および/または治療に効果的である。インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤はH2N2型インフルエンザ株から得られる薬剤であってもよく、かつ、H2N2型インフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染、ならびにH1N1、H1N2、H3N1、H3N2、H5N1、およびH7N7からなる群より選択されるインフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染の予防および/または治療に効果的である。インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤はH3N1型インフルエンザ株から得られる薬剤であってもよく、かつ、H3N1型インフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染、ならびにH1N1、H1N2、H2N2、H3N2、H5N1、およびH7N7からなる群より選択されるインフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染の予防および/または治療に効果的である。インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤はH3N2型インフルエンザ株から得られる薬剤であってもよく、かつ、H3N2型インフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染、ならびにH1N1、H1N2、H2N2、H3N1、H5N1、およびH7N7からなる群より選択されるインフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染の予防および/または治療に効果的である。インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤はH5N1型インフルエンザ株から得られる薬剤であってもよく、かつ、H5N1型インフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染、ならびにH1N1、H1N2、H2N2、H3N1、H3N2、およびH7N7からなる群より選択されるインフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染の予防および/または治療に効果的である。インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤はH7N7型インフルエンザ株から得られる薬剤であってもよく、かつ、H7N7型インフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染、ならびにH1N1、H1N2、H2N2、H3N1、H3N2、およびH5N1からなる群より選択されるインフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染の予防および/または治療に効果的である。通常、インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤はH1N1またはH3N2型インフルエンザ株から得られる薬剤であって、H1N1型インフルエンザ株またはH3N2型インフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染およびH5N1型インフルエンザ株またはH3N8インフルエンザ株に起因するインフルエンザ感染の予防および/または治療に効果的である。
【0096】
また、本発明に係るアジュバントは、インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤の効率を増加させる性質を有する。特に、本発明に係るアジュバントを使用することによって、インフルエンザに対する予防活性を有する薬剤の投与量を減少させることが可能になる。例えば、インフルエンザに対する予防活性を有する薬剤と本発明に係るアジュバントとを含有する本発明に係るワクチンを1回分投与すれば、インフルエンザに対する予防活性を有する薬剤を含有するが、本発明に係るアジュバントを含有しないワクチンを2回分投与するのと同じ程度の効率的がある。同様に、インフルエンザに対する予防活性を有する薬剤と本発明に係るアジュバントとを含有する本発明に係るワクチンを1回分または2回分投与すれば、インフルエンザに対する予防活性を有する薬剤を含有するが、本発明に係るアジュバントを含有しないワクチンを3回分投与するのと同じ程度の効率的がある。本発明に係るアジュバントを使用することによって、インフルエンザに対する予防活性を有する薬剤の投与量を減少させることも可能になる。
【0097】
本発明に係るアジュバントは、インフルエンザエピトープに対して、細胞傷害性のTリンパ球を活性化する性質も有し、特にTh1の応答を誘起する性質を有する。これとは対照的に、インフルエンザウイルスに対して予防活性を有する少なくとも1つの薬剤単独では、IgGの生成量が増加するだけである。
【0098】
さらに、ワクチンの中で通常使用される、インフルエンザに対する予防活性を有する薬剤は、子供(つまり年齢が0歳から18歳のヒト)および高齢者(つまり年齢が65歳以上のヒト)において比較的効率が低いが、本発明に係るアジュバントを用いれば、インフルエンザに対する予防活性を有するこの薬剤の、子供および高齢者における効率が上昇する。
【0099】
以下では、図面および実施例によって、本発明をさらに説明する。
【0100】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、インフルエンザウイルスを接種しなかったマウス(点線)、前もって免疫を付与せずにH3N8型インフルエンザウイルス株を接種したマウス(■)、インフルエンザワクチンであるProtec−Flu(登録商標)を単独で用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(▲)、および1μgのPBS−57と一緒にProtec−Flu(登録商標)を用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(◆)の、接種後の種々の日数における生存率を表わすグラフである。
【0101】
図2は、インフルエンザウイルスを接種しなかったマウス(点線)、前もって免疫を付与せずにH3N8型インフルエンザウイルス株を接種したマウス(■)、インフルエンザワクチンであるAgrippal(登録商標)を単独で用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(▼)、および1μgのPBS−57(◆)または1μgのPBS−96と一緒にAgrippal(登録商標)を用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(●)の、接種後の種々の日数における生存率(%)を表わすグラフである。
【0102】
図3は、インフルエンザウイルスを接種しなかったマウス(点線)、前もって免疫を付与せずにH3N8型インフルエンザウイルス株を接種したマウス(■)、インフルエンザワクチンであるProtec−Flu(登録商標)を単独で用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(▲)、1μgのPBS−14と一緒にProtec−Flu(登録商標)を用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(◆)、インフルエンザワクチンであるAgrippal(登録商標)を単独で用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(▽)、および1μgのPBS−14と一緒にAgrippal(登録商標)を用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(◇)の、接種後の種々の日数における生存率(%)を表わすグラフである。
【0103】
図4は、PBSを単独で用いて、Agrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはAgrippal(登録商標)ワクチンをPBS−57もしくはPBS−14アジュバント(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて免疫を2回付与した、マウスの血清中で検出されたIgG1のレベルを示している。実験は、マウス一匹当たり1μg、4μg、または9μgのAggripal(登録商標)ワクチンを用いて行った。
【0104】
図5は、PBSを単独で用いて、Agrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはAgrippal(登録商標)ワクチンをPBS−57もしくはPBS−14アジュバント(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて免疫を2回付与した、マウスの血清中で検出されたIgG2aのレベルを示している。実験は、マウス一匹当たり1μg、4μg、または9μgのAggripal(登録商標)ワクチンを用いて行った。
【0105】
図6は、PBSを単独で用いて、Agrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはAgrippal(登録商標)ワクチンをPBS−57もしくはPBS−14アジュバント(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて免疫を2回付与した、マウスの血清中で検出されたIgG2bのレベルを示している。実験は、マウス一匹当たり1μg、4μg、または9μgのAggripal(登録商標)ワクチンを用いて行った。
【0106】
図7は、1μgのFluarix(登録商標)ワクチンを単独で用いて、または1μgのFluarix(登録商標)ワクチンをPBS−57/SもしくはPBS−57/L(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて免疫を2回付与したマウスにおいて測定したIHA(間接的な赤血球凝集反応アッセイ;indirect hemagglutination assay)のタイターを示している。AはA/Birsbane/10/2007株の場合のIHAのタイター、BはA/Brisbane/59/2007株の場合のIHAの滴タイター、CはB/Florida/4/2006株の場合のIHAのタイターである。実験は、マウス一匹当たり1μg、4μg、または9μgのFluarix(登録商標)ワクチンを用いて行った。
【0107】
図8は、4μgもしくは8.9μgのAgrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはPBS−57/S、PBS−57/L、もしくはPBS−14/L(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて免疫を2回付与したマウスにおいて測定したIHA(間接的な赤血球凝集反応アッセイ)のタイターを示している。AはA/Brisbane/10/2007株の場合のIHAのタイター、BはA/Brisbane/59/2007株の場合のIHAのタイター、CはB/Florida/4/2006株の場合のIHAのタイターである。実験は、マウス一匹当たり1μg、4μg、または9μgのAggripal(登録商標)ワクチンを用いて行った。
【0108】
図9は、4μgもしくは8.9μgのAgrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはPBS−57/S、PBS−57/L、もしくはPBS−57/D(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム;/D:DMSO)と組み合わせて用いて免疫を1回付与したマウスにおいて測定したIHA(間接的な赤血球凝集反応アッセイ)のタイターを示している。AはA/Brisbane/10/2007株の場合のIHAのタイター、BはA/Brisbane/59/2007株の場合のIHAのタイター、CはB/Florida/4/2006株の場合のIHAのタイターである。
【0109】
図10は、4μg(左パネル)もしくは9μg(右パネル)のFluarix(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはPBS−57と組み合わせて用いて免疫を付与したマウスの血液中における、五量体に特異的なCD8 T細胞の応答を示している。T細胞の応答は、免疫を付与してから7日、14日、または21日後に観察した。
【0110】
図11は、高病原性のH3N8型株インフルエンザを接種したモデルにおける、マウスの生存個体数を示している。マウスは、Fluarix(登録商標)1/30,000と、PBS−14、PBS−57、またはPBS−96リポソーム(それぞれ、1μg(A)、100ng(B)、または10ng(C))とを用いて0日目にワクチン接種を行い、21日目にH3N8を接種した。
【0111】
図12は、高病原性のH3N8型株インフルエンザを接種したモデルにおける、マウスの生存個体数を示している。マウスは、Agrippal(登録商標)1/30,000と、PBS−14、PBS−57もしくはPBS−96リポソーム、またはPBS−57/S(ペグ化形態)(それぞれ、1μg(A)、100ng(B)、または10ng(C))とを用いて0日目にワクチン接種を行い、21日目にH3N8を接種した。
【0112】
図13は、成人のPBMC(n=15)から開始して7日後のNKT細胞の増幅率を示している。
【0113】
図14は、CBMC(臍帯血単核細胞;cord blood mononuclear cell)(n=20)から開始して7日後のNKT細胞の増幅率を示している。
【0114】
図15は、高齢者のPBMCから開始して7日後のNKT細胞の増幅率を示している。
【0115】
図16は、Fluarix(登録商標)、Fluarix(登録商標)+PBS−96、またはFluarix(登録商標)+PBS−57を用いて免疫を付与した60匹のサルのPBMCに対して実施した、ELISPOTアッセイの結果を示している。
【0116】
図17は、免疫を付与しなかった(コントロール)マウス、Fluarix(登録商標)、PBS−96、またはFluarix(登録商標)+PBS−96を用いて免疫を付与し、かつH5N1に感染させたマウス、および偽薬を用いて免疫を付与し、かつ感染させなかった(偽薬)マウスのうち、生存している個体数を表わすグラフを示している。
【0117】
図18は、PBSを単独で用いて、Agrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはAgrippal(登録商標)ワクチンをPBS−57アジュバント(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて、免疫を1回付与した、マウスの血清中で検出されたIgG1のレベルを示している。実験は、マウス一匹当たり1μg、4μg、または9μgのAggripal(登録商標)ワクチンを用いて行った。
【0118】
図19は、PBSを単独で用いて、Agrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはAgrippal(登録商標)ワクチンをPBS−57アジュバント(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて免疫を1回付与した、マウスの血清中で検出されたIgG2bのレベルを示している。実験は、マウス一匹当たり1μg、4μg、または9μgのAggripal(登録商標)ワクチンを用いて行った。
【0119】
図20は、4μgもしくは8.9μgのAgrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはPBS−57/S、PBS−57/L、もしくはPBS−57/D(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム;/D:DMSO)と組み合わせて用いて、免疫を1回付与したマウスにおいて測定したIHA(間接的な赤血球凝集反応アッセイ)のタイターを示している。AはA/Brisbane/10/2007株の場合のIHAのタイター、BはA/Brisbane/59/2007株の場合のIHAのタイター、CはB/Florida/4/2006株の場合のIHAのタイターである。
【0120】
〔実施例〕
以下の実施例では、主に、N−アセチル糖脂質をワクチン組成物中において使用することによって得られる、インフルエンザウイルスに対する防御および交差防御の強化について記載する。
【0121】
〔実施例1:N−アセチル糖脂質のアジュバントによって誘起される、マウスの生存率の増加および交差防御の強化〕
【0122】
〔材料および方法〕
実験では、
・市販のヒト用ワクチンAgrippal(登録商標)(Novartis社より購入した。これは具体的にはH1N1A型インフルエンザ株から得られるワクチンである。)と、
・市販のウマ用ワクチンEqui Protec−Flu(登録商標)(Merial社より購入した。これは、H3N8A型インフルエンザ株から得られるワクチンである。)と、
の2つの異なるワクチンを使用した。
【0123】
使用前に、各ワクチンを0.5mLずつNaClの0.9%溶液中にて1/10,000に希釈した。
【0124】
1mg/mLのPBS−57のリポソーム調製物、1mg/mLのPBS−96のリポソーム調製物、および1mg/mLのPBS−14のリポソーム調製物を100μLずつ、NaClの0.9%溶液中にて1/10に希釈した。そして、この各希釈液110μLずつを、それぞれのワクチン製剤440μLに添加した。この結果、各ワクチン製剤50μL中には、1μgのPBS−57、PBS−96、またはPBS−14が含有されることになる。
【0125】
コントロールとしてのリポソーム調製物100μLを、NaClの0.9%溶液中にて1/5に希釈した。そして、この希釈液110μLを、各ワクチン製剤440μLに添加した。
【0126】
C57Bl/6株の3〜4週齢の離乳済み雌マウスを、9つの投与グループにランダムに割り振った。5日未満かけてマウスを順化させた後、以下の処理を行った。
・グループ1:接種しない(コントロール)
・グループ2:接種したが、治療しない
・グループ3:Agrippal(登録商標)のみ
・グループ4:Agrippal(登録商標)+1μgのPBS−57
・グループ5:Agrippal(登録商標)+1μgのPBS−96
・グループ6:Agrippal(登録商標)+1μgのPBS−14
・グループ7:Protec−Flu(登録商標)のみ
・グループ8:Protec−Flu(登録商標)+1μgのPBS−57
・グループ9:Protec−Flu(登録商標)+1μgのPBS−14
パスツール研究所(パリ、フランス)から入手したウマのH3N8型ウイルス(A/ウマの/2/Miami/1/63(ATCC−VR−317)を、ウイルス感染において使用した。インフルエンザを接種するための調製物100μLを動物に静脈注射した。
【0127】
以下の治療スキームを実施した。
・0日目に、上記ワクチン(コントロール、Agrippal(登録商標)、またはProtec−Flu(登録商標))を、一部のマウスには試験済みアジュバントとともに、残りのマウスには試験済みアジュバントを併用せずに、筋肉注射した。
・7日目に、H3N8型ウイルスをマウスに静脈注射した。
・21日目〜24日目(接種から14日目〜17日目)に、マウスの健康状態および体重をモニタリングし、生存率および罹患率を評価した。
【0128】
〔結果〕
接種から10日目には、H3N8型ウイルス株を接種したが治療を行わなかったマウスの約60%が、生存していた。
【0129】
接種から15日目には、Protec−Flu(登録商標)ワクチン(H3N8型株から得られたワクチン)を用いて治療したマウスのうち、Protec−Flu(登録商標)を単独で用いて治療したマウスはわずか80%しか生存していなかったが、一方で、Protec−Flu(登録商標)とPBS−57とを用いて治療したマウス、およびProtec−Flu(登録商標)とPBS−14とを用いて治療したマウスは100%が依然生存していた(図1および図3を参照)。
【0130】
このようにして、本発明者らは、N−アセチル糖脂質の使用がインフルエンザウイルスワクチンの効力を大幅に増加させることを実証した。
【0131】
接種から15日目には、Agrippal(登録商標)ワクチン(具体的にはH1N1株から得られるワクチン)を用いて治療したマウスのうち、Agrippal(登録商標)を単独で用いて治療したマウスはわずか65%しか生存していなかったが、一方で、Agrippal(登録商標)とPBS−96とを用いて治療したマウス、Agrippal(登録商標)とPBS−57とを用いて治療したマウス、およびAggripal(登録商標)とPBS−14とを用いて治療したマウスは80%が依然生存していた(図2および図3を参照)。
【0132】
このようにして、本発明者らは、N−アセチル糖脂質PBS−57、PBS−96およびPBS−14の使用がインフルエンザウイルスワクチンの効力を増加させるだけではなく、このワクチンの製造に使用したインフルエンザ株とは異なるインフルエンザ株から、動物を防御することも可能にすることを実証した。
【0133】
〔実施例2:Agrippal(登録商標)ワクチンおよびN−アセチル糖脂質アジュバントを筋肉内投与した後の、マウスの血清中におけるIgG1、IgG2aおよびIgG2bの検出〕
0日目および21日目に、マウスに対して、
・PBS、
・1μgのAgrippal(登録商標)のみ、
・1μgのAgrippal(登録商標)+1μgのペグ化形態のPBS−57、リポソーム調製物(PBS−57/SまたはPBS−57/L)、またはPBS−14のリポソーム調製物(PBS−14/L)、
・4μgのAgrippal(登録商標)のみ、
・4μgのAgrippal(登録商標)+1μgのPBS−57/S、PBS−57/L、またはPBS−14/L、
・8.9μgのAgrippal(登録商標)のみ、あるいは
・8.9μgのAgrippal(登録商標)+1μgのPBS−57/S、PBS−57/L、またはPBS−14/L
を注入した。
【0134】
血清を42日目に収集し、血清中のIgG1、IgG2a、およびIgG2bの含有量をELISAによって分析した。結果を図4〜図6に示す。この分析によれば、Agrippal(登録商標)のレベルが増加しても、単独で投与された場合は、生成されるIgG1、IgG2aおよびIgG2bのレベルが増加しない。これとは対照的に、Agrippal(登録商標)をPBS−57またはPBS−14と組み合わせると、Agrippal(登録商標)の投与量が最低レベルであっても、検出可能なIgG1、IgG2aおよびIgG2bの量は増加する。注目に値することは、PBS−57またはPBS−14と組み合わせて用いるAgrippal(登録商標)の投与量を増加させても、IgG1、IgG2aおよびIgG2bのレベルがそれ以上には大して増加しなかったことである。
【0135】
〔実施例3:Fluarix(登録商標)を筋肉注射することによって免疫を2回付与したマウスの血清の、IHA(間接的な赤血球凝集反応アッセイ)による試験〕
0日目および21日目に、マウスに対して、
・NaCl、
・1μgのFluarix(登録商標)のみ、
・1μgのFluarix(登録商標)+1μgのPBS−57/S、または
・1μgのFluarix(登録商標)+1μgのPBS−57/L
を筋肉注射した。
【0136】
Fluarix(登録商標)ワクチンは、A/Brisbane/10/2007様株、A/Brisbane/59/2007様株、およびB/Florida/4/2006様株の混合物を含有している。
【0137】
血清を42日目に収集し、Fluarix(登録商標)ワクチンの、3つの原型株(A/Brisbane/10/2007、A/Brisbane/59/2007、およびB/Florida/4/2006)との反応性を、これらの各株についてIHAのタイターを測定することによって分析した(図7参照)。
【0138】
Fluarix(登録商標)ワクチンの接種によって誘起される、A/Brisbane/10/2007株およびB/Florida/4/2006株に対するIHAのタイターを、PBS−57は、溶液の形態であっても、あるいはリポソーム調製物の形態であっても大幅に増加させることがわかった(表1)。A/Brisbane/59/2007株に対するIHAのタイターも増加したが、あまり大きな増加ではなかった。
【0139】
【表1】

【0140】
PBS−14およびPBS−96についても同じ結果が得られた。
【0141】
〔実施例4:Agrippal(登録商標)を用いて免疫を2回付与したマウスの血清の、IHA(間接的な赤血球凝集反応アッセイ)による試験〕
0日目および21日目に、マウスに対して、
・何も投与しなかった(未処理のマウス)、
・PBS、
・4μgのAgrippal(登録商標)のみ、
・8.9μgのAgrippal(登録商標)のみ、
・4μgのAgrippal(登録商標)+リポソーム調製物(PBS−57/L)の形態の1μgのPBS−57またはリポソーム調製物(PBS−14/L)の形態のPBS−14、または
・8.9μgのAgrippal(登録商標)+1μgのPBS−57(ペグ化形態(PBS−57/S))またはPBS−57/LもしくはPBS−14/L
を筋肉注射した。
【0142】
Agrippal(登録商標)ワクチンは、A/Brisbane/10/2007様株、A/Brisbane/59/2007様株、およびB/Florida/4/2006様株の混合物を含有している。
【0143】
血清を42日目に収集し、Agrippal(登録商標)ワクチンの、3つの原型株(H3A/Brisbane/10/2007、H1A/Brisbane/59/2007、およびB/Florida/4/2006)との反応性を、これらの各株についてIHAのタイターを測定することによって分析した(図8を参照)。
【0144】
PBS−57およびPBS−14は、Agrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いた場合と比較すると、IHAのタイターを増加させることがわかった(表2)。
【0145】
【表2】

【0146】
PBS−96についても同じ結果が得られた。
【0147】
〔実施例5:Agrippal(登録商標)を用いて免疫を1回付与したマウスの血清の、IHA(間接的な赤血球凝集反応アッセイ;indirect hemagglutination assay)による試験〕
0日目に、マウスに対して
・NaCl、
・PBS−57/Dのみ、
・PBS−57/Lのみ、
・PBS−57/Sのみ、
・4μgのAgrippal(登録商標)のみ、
・8.9μgのAgrippal(登録商標)のみ、
・4μgのAgrippal(登録商標)+リポソーム調製物(PBS−57/L)の形態、ペグ化形態(PBS−57/S)、またはDMSO(PBS−57/D)の形態の1μgのPBS−57、または
・8.9μgのAgrippal(登録商標)+1μgのPBS−57/L、PBS−57/S、またはPBS−57/D
を筋肉注射した。
【0148】
血清を21日目に収集し、Agrippal(登録商標)ワクチンの、3つの原型株(H3A/Brisbane/10/2007、H1A/Brisbane/59/2007、およびB/Florida/4/2006)との反応性を、これらの各株についてIHAのタイターを測定することによって分析した(図9を参照)。PBS−57およびPBS−14は、1回投与した後にAgrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いた場合と比較すると、IHAのタイターを増加させた。
【0149】
【表3】

【0150】
これらの結果は、アジュバントを使用することによって、季節性インフルエンザにおいて初回免疫/追加免疫のためのワクチン接種が避けられることを示している。
【0151】
〔実施例6:Fluarix(登録商標)およびPBS−57を用いて免疫を付与されたマウスにおける特定のT細胞の活性化〕
マウスに、4μgもしくは9μgのHA抗原を、PBS−57(1μg)と組み合わせて、または組み合わせずに筋肉注射することによって免疫を付与した。多量体ペプチド/クラスI複合体を用いた分析によって、H−2Kb NP(ASNENMETM;配列番号1)に特異的なCD8 T細胞を、血液中で複数の時点でモニタリングした。
【0152】
H−2Kb NPに特異的なCD8 T細胞の非常に激しい増殖が、予防接種を行った動物において、PBS−57を試験済みの投与量で用いて行った免疫付与から14日目に見られた(図10)。血液中におけるこれらの細胞の発生頻度は、初回の接種から21日目には、14日目と比較すると定常状態にあった。
【0153】
PBS−14およびPBS−96についても、また、Fluarix(登録商標)の替わりにAggripal(登録商標)を用いても、同じ結果が得られた。
【0154】
〔実施例7:ワクチン接種を行い、インフルエンザを接種したモデル〕
発明者らは、実施例1において提示した研究と同様の研究を実施した。ただし、実施例1に比べて条件数は多く、かつ厳しい条件の下で行った。
【0155】
a)免疫を付与するプロトコール
0日目に、Balb/cマウスに、Fluarix(登録商標)1/30,000またはAgrippal(登録商標)1/30,000を、PBS−14/L、PBS−57−L、またはPBS−96/Lと任意に組み合わせて、筋肉注射した。Fluarix(登録商標)およびAgrippal(登録商標)の濃度は、このインフルエンザワクチンを単独で投与した場合、モニタリング期間中に50%の生存率が達成できるように選択した。
【0156】
21日目に、麻酔下のマウスに、高病原性を有する(ウイルスを接種したが治療を行わなかったマウスのグループにおける生存率が0(%))H3N8型株を鼻腔内経路によって接種した。
【0157】
21日目から35日目に、マウスの健康状態および体重をモニタリングし、生存率および罹患率を決定した。
【0158】
b)結果
Fluarix(登録商標)およびAgrippal(登録商標)について得られた結果を、図11および図12にそれぞれ図示した。Fluarix(登録商標)またはAgrippal(登録商標)ワクチンを単独で投与した場合と比較すると、アジュバントが接種に対する防御を強化したことが、生存しているマウスの個体数の増加によって実証されている。
【0159】
〔実施例8:インビトロにおけるiNKTの活性化〕
成人のPBMCおよびCBMC(臍帯血単核細胞;cord blood mononuclear cell)を、刺激を与えずに放置するか、あるいは、IL−2を単独で用いて、またはIL−2を100ngのα−GalCer、PBS−57/D、またはPBS−57/Lと(10ng/mLまたは100ng/mLで)組み合わせて用いて、インビトロにて培養した。
【0160】
培養から7日後に、PBMCまたはCBMCから増幅されたVβ11/Vα24細胞の割合(%)を評価することによって、iNKTの活性化が確認された(図13および図14)。
【0161】
本発明者らは、成人のPBMCおよびCBMCのいずれにおいても、PBS−57の方が、α−GalCerよりも強力なiNKTの活性化を誘起することを実証した。
【0162】
高齢者のPBMC、つまり年齢65歳以上の成人のPBMCに対して、同じ実験を実施したところ、同様の結果が得られた(図15)。
【0163】
〔実施例9:アジュバントで免疫を付与したサルのPBMCを対象としたELISPOT〕
〔材料および方法〕
〔動物〕
Noveprim倫理委員会の許可を得て、モーリシャス原産の、体重3.5kgの若いカニクイザル(Macaca fascicularis)を使用した。カニクイザルの各個体には、一頭ずつID番号を右大腿部の内側に刺青で彫り込んだ
〔免疫付与〕
Fluarix(登録商標)を、単独でまたは10μg/kgもしくは100μg/kgのPBS−57もしくはPBS−96とともに、同側の筋肉領域に2回注射した。
〔試料の収集〕
免疫を付与してから0日後、21日後、または42日後に、採血を実施した。密度勾配精製法によって血液からPBMCを精製した。次いで、PBMCを培養し、インフルエンザのT細胞エピトープまたはインフルエンザワクチンを用いて刺激して、ELISPOTアッセイにおいてIFN−γの応答性を評価した。
【0164】
〔結果〕
本発明者らは、カニクイザルに対してFluarix(登録商標)+PBS−57またはFluarix(登録商標)+PBS−96を用いて免疫を付与した場合には、Fluarix(登録商標)を単独で用いた場合と比較して、スポット数が増加することを示した(図16)。
【0165】
〔実施例10:季節性のFluarix(登録商標)ワクチンをPBS−96と併用した、マウスにおけるH5N1接種の研究〕
この研究では、試験対象のワクチン中に存在するインフルエンザ株とは異なるインフルエンザ株に対して交差防御を誘起するPBS−96の効力を実証する。
【0166】
Balb/cマウスに対して下記の1)〜5)のいずれかを用いて免疫を付与した。すなわち、
1)塩化ナトリウムの偽薬(感染しない)
2)Fluarix(登録商標)のみ(1/30,000)
3)PBS−96(100ng)
4)Fluarix(登録商標)+PBS−96
5)NaCl T+
また、このマウスには、H5N1ウイルス(A/Vietnam1194/04株) 10 CCID50を鼻腔内に注射した。生存しているマウスの個体数を毎日確認した。
【0167】
本発明者らは、Fluarix(登録商標)を用いて免疫を付与されたマウスは、感染から8日後にはほとんどすべて死亡したが、一方で、Fluarix(登録商標)+PBS−96を用いて免疫を付与されたマウスの41%が、感染から20日後も依然として生存していることを示した(図17)。
【0168】
〔実施例11:Agrippal(登録商標)ワクチンおよびN−アセチル糖脂質のアジュバントを1回筋肉内投与した後の、マウスの血清中のIgG1およびIgG2bの検出〕
0日目に、マウスに対して、
・PBS、
・1μgのAgrippal(登録商標)のみ、
・1μgのAgrippal(登録商標)+ペグ化形態の1μgのPBS−57またはリポソーム調製物(PBS−57/SまたはPBS−57/L)、
・4μgのAgrippal(登録商標)のみ、
・4μgのAgrippal(登録商標)+1μgのPBS−57/SまたはPBS−57/L、
・8.9μgのAgrippal(登録商標)のみ、または
・8.9μgのAgrippal(登録商標)+1μgのPBS−57/SまたはPBS−57/L
を注射した。
【0169】
血清を21日目に収集し、血清中のIgG1およびIgG2bの含有量をELISAによって分析した。結果を図18および図19に示す。この分析によれば、Agrippal(登録商標)のレベルが増加しても、単独で投与された場合は、生成されるIgG1およびIgG2bのレベルが増加しない。これとは対照的に、Agrippal(登録商標)をPBS−57と組み合わせると、Agrippal(登録商標)の投与量が最低レベルであっても、検出可能なIgG1およびIgG2bの量は増加する。注目に値することは、PBS−57と組み合わせて用いるAgrippal(登録商標)の投与量を増加させても、IgG1およびIgG2bのレベルがそれ以上には大して増加しなかったことである。
【0170】
PBS−14およびPBS−96についても同様の結果が得られた。
【0171】
〔実施例12:Agrippal(登録商標)を用いて免疫を1回付与したマウスの血清の、IHA(間接的な赤血球凝集反応アッセイ;indirect hemagglutination assay)による試験〕
0日目に、マウスに対して
・PBS、
・DMSOの形態の1μgのPBS−57(PBS−57/D)のみ、
・ペグ化形態(PBS−57/S)の1μgのPBS−57のみ、
・リポソーム調製物の形態の1μgのPBS−57(PBS−57/L)のみ、
・4μgのAgrippal(登録商標)のみ、
・8.9μgのAgrippal(登録商標)のみ、
・4μgのAgrippal(登録商標)+1μgのPBS−57/D、PBS−57/S、またはPBS−57/L、または
・8.9μgのAgrippal(登録商標)+1μgのPBS−57/D、PBS−57/S、またはPBS−57/L
を筋肉注射した。
【0172】
Agrippal(登録商標)ワクチンは、A/Brisbane/10/2007様株、A/Brisbane/59/2007様株、およびB/Florida/4/2006様株の混合物を含有している。
【0173】
血清を21日目に収集し、Agrippal(登録商標)ワクチンの、3つの原型株(H3A/Brisbane/10/2007、H1A/Brisbane/59/2007、およびB/Florida/4/2006)との反応性を、これらの各株についてIHAのタイターを測定することによって分析した(図20を参照)。
【0174】
PBS−57は、Agrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いた場合と比較すると、IHAのタイターを増加させることがわかった。
【0175】
PBS−96およびPBS−14についても、また、Aggripal(登録商標)の替わりにFluarix(登録商標)を用いても、同じ結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、インフルエンザウイルスを接種しなかったマウス(点線)、前もって免疫を付与せずにH3N8型インフルエンザウイルス株を接種したマウス(■)、インフルエンザワクチンであるProtec−Flu(登録商標)を単独で用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(▲)、および1μgのPBS−57と一緒にProtec−Flu(登録商標)を用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(◆)の、接種後の種々の日数における生存率を表わすグラフである。
【図2】図2は、インフルエンザウイルスを接種しなかったマウス(点線)、前もって免疫を付与せずにH3N8型インフルエンザウイルス株を接種したマウス(■)、インフルエンザワクチンであるAgrippal(登録商標)を単独で用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(▼)、および1μgのPBS−57(◆)または1μgのPBS−96と一緒にAgrippal(登録商標)を用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(●)の、接種後の種々の日数における生存率(%)を表わすグラフである。
【図3】図3は、インフルエンザウイルスを接種しなかったマウス(点線)、前もって免疫を付与せずにH3N8型インフルエンザウイルス株を接種したマウス(■)、インフルエンザワクチンであるProtec−Flu(登録商標)を単独で用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(▲)、1μgのPBS−14と一緒にProtec−Flu(登録商標)を用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(◆)、インフルエンザワクチンであるAgrippal(登録商標)を単独で用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(▽)、および1μgのPBS−14と一緒にAgrippal(登録商標)を用いて免疫を付与した後に該インフルエンザウイルス株を接種したマウス(◇)の、接種後の種々の日数における生存率(%)を表わすグラフである。
【図4】図4は、PBSを単独で用いて、Agrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはAgrippal(登録商標)ワクチンをPBS−57もしくはPBS−14アジュバント(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて免疫を2回付与した、マウスの血清中で検出されたIgG1のレベルを示す図である。
【図5】図5は、PBSを単独で用いて、Agrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはAgrippal(登録商標)ワクチンをPBS−57もしくはPBS−14アジュバント(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて免疫を2回付与した、マウスの血清中で検出されたIgG2aのレベルを示す図である。
【図6】図6は、PBSを単独で用いて、Agrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはAgrippal(登録商標)ワクチンをPBS−57もしくはPBS−14アジュバント(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて免疫を2回付与した、マウスの血清中で検出されたIgG2bのレベルを示す図である
【図7】図7は、1μgのFluarix(登録商標)ワクチンを単独で用いて、または1μgのFluarix(登録商標)ワクチンをPBS−57/SもしくはPBS−57/L(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて免疫を2回付与したマウスにおいて測定したIHA(間接的な赤血球凝集反応アッセイ)のタイターを示す図である。
【図8】図8は、4μgもしくは8.9μgのAgrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはPBS−57/S、PBS−57/L、もしくはPBS−14/L(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて免疫を2回付与したマウスにおいて測定したIHA(間接的な赤血球凝集反応アッセイ)のタイターを示す図である。
【図9】図9は、4μgもしくは8.9μgのAgrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはPBS−57/S、PBS−57/L、もしくはPBS−57/D(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム;/D:DMSO)と組み合わせて用いて免疫を1回付与したマウスにおいて測定したIHA(間接的な赤血球凝集反応アッセイ)のタイターを示す図である。
【図10】図10は、4μg(左パネル)もしくは9μg(右パネル)のFluarix(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはPBS−57と組み合わせて用いて免疫を付与したマウスの血液中における、五量体に特異的なCD8 T細胞の応答を示す図である。
【図11】図11は、高病原性のH3N8型株インフルエンザに感染させたモデルにおける、マウスの生存個体数を示す図である。
【図12】図12は、高病原性のH3N8型株インフルエンザに感染させたモデルにおける、マウスの生存個体数を示す図である。
【図13】図13は、成人のPBMC(n=15)から開始して7日後のNKT細胞の増幅率を示す図である。
【図14】図14は、CBMC(臍帯血単核細胞)(n=20)から開始して7日後のNKT細胞の増幅率を示す図である。
【図15】図15は、高齢者のPBMCから開始して7日後のNKT細胞の増幅率を示す図である。
【図16】図16は、Fluarix(登録商標)、Fluarix(登録商標)+PBS−96、またはFluarix(登録商標)+PBS−57を用いて免疫を付与した60匹のサルのPBMCに対して実施した、ELISPOTアッセイの結果を示す図である。
【図17】図17は、免疫を付与しなかった(コントロール)マウス、Fluarix(登録商標)、PBS−96、またはFluarix(登録商標)+PBS−96を用いて免疫を付与し、かつH5N1に感染させたマウス、および偽薬を用いて免疫を付与し、かつ感染させなかった(偽薬)マウスのうち、生存している個体数を表わすグラフである。
【図18】図18は、PBSを単独で用いて、Agrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはAgrippal(登録商標)ワクチンをPBS−57アジュバント(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて、免疫を1回付与した、マウスの血清中で検出されたIgG1のレベルを示す図である。
【図19】図19は、PBSを単独で用いて、Agrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはAgrippal(登録商標)ワクチンをPBS−57アジュバント(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム)と組み合わせて用いて免疫を1回付与した、マウスの血清中で検出されたIgG2bのレベルを示す図である。
【図20】図20は、4μgもしくは8.9μgのAgrippal(登録商標)ワクチンを単独で用いて、またはPBS−57/S、PBS−57/L、もしくはPBS−57/D(/S:ペグ化形態;/L:リポソーム;/D:DMSO)と組み合わせて用いて、免疫を1回付与したマウスにおいて測定したIHA(間接的な赤血球凝集反応アッセイ)のタイターを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤と、
ガラクトシルセラミドの誘導体である、少なくとも1つのアジュバントとを含んでいる、ワクチン組成物。
【請求項2】
前記インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤が、弱毒化されていない生きたインフルエンザウイルス、弱毒化された生きたインフルエンザウイルス、死滅したインフルエンザウイルス、不活性化されたインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスのサブユニット、インフルエンザウイルスから得られる組換え型ポリペプチド、インフルエンザウイルスから得られる組換え型タンパク質、インフルエンザウイルスから得られるcDNA、および組換え型インフルエンザウイルスから得られるcDNAからなる群より選択される、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
前記インフルエンザウイルスのサブユニットが赤血球凝集素である、請求項2に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
前記インフルエンザウイルスの宿主が、ヒト、ウマ、およびトリからなる群より選択される、請求項2または3に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
前記インフルエンザウイルスが、H1N1株、H1N2株、H2N2株、H3N1株、H3N2株、H5N1株、およびH7N7株からなる群より選択される、請求項2〜4のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
前記アジュバントが次式(V)
【化1】

で表わされる化合物であり、
Rは酸素原子もしくは硫黄原子または−CH−であり、
は1〜150個の炭素原子を含んでいる飽和または不飽和の炭化水素鎖であって、
任意に芳香族炭化水素鎖、直鎖状の炭化水素鎖または分岐鎖状の炭化水素鎖であり、アルキル鎖、アリール鎖、アラルキル鎖、アルケニル鎖またはアラルケニル鎖などであり、
ヘテロ原子またはヘテロ基を任意に1個以上含んでおり、該ヘテロ原子または該ヘテロ基がO、N、Sまたはカルボニル基から選択されることが好ましく、
1個以上の、ヒドロキシル基またはシクロプロピル(cyclopropryl)基で置換されていてもよい、炭化水素鎖であり、
は、1〜150個の炭素原子を含んでいる飽和または不飽和の炭化水素鎖であって、
任意に芳香族炭化水素鎖、直鎖状の炭化水素鎖または分岐鎖状の炭化水素鎖であり、アルキル鎖、アリール鎖、アラルキル鎖、アルケニル鎖、またはアラルケニル鎖などであり、
ヘテロ原子またはヘテロ基を任意に1個以上含んでおり、該ヘテロ原子または該ヘテロ基がO、N、Sまたはカルボニル基から選択されることが好ましく、
1個以上のヒドロキシル基で置換されていてもよいし、1〜20個の炭素原子を含んでいる飽和または不飽和の炭化水素鎖で置換されていてもよく、
は、
水素原子であるか、あるいは、
1〜120個の炭素原子を含んでいる飽和または不飽和の炭化水素鎖であって、任意に芳香族炭化水素鎖、直鎖状の炭化水素鎖または分岐鎖状の炭化水素鎖であり、アルキル鎖、アリール鎖、アラルキル鎖、アルケニル鎖、またはアラルケニル鎖などである、炭化水素鎖、
、R、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、
(i)ヒドロキシル基、
(ii)1〜100個の炭素原子を含んでいる飽和または不飽和の炭化水素鎖であって、任意に芳香族炭化水素鎖、直鎖状の炭化水素鎖または分岐鎖状の炭化水素鎖であり、アルキル鎖、アリール鎖、アラルキル鎖、アルケニル鎖、またはアラルケニル鎖などであり、ヘテロ原子またはヘテロ基を任意に1個以上含んでおり、該へテロ原子または該ヘテロ基がO、N、Sまたはカルボニル基から選択されることが好ましい、炭化水素鎖、
(iii)アミノ基、硫酸基、リン酸基、またはカルボキシル基、あるいは、
(iv)1〜4個のヘキソースの鎖であって、アミノ基、硫酸基、リン酸基およびカルボキシル基から選択される1個以上の基で置換されていてもよく、酸素原子もしくは硫黄原子または−CH−によって該ヘキソースが互いに連結されている、ヘキソースの鎖
を表わす、請求項1〜5のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
前記アジュバントが、次式(I)
【化2】

で表わされる化合物であり、
は、
a)−(CHCHであり、Xは1〜100から選択される整数であるか、あるいは
b)−(CHCH=CH(CHCHまたは−(CHCH=CH(CHCH=CH(CHCHであり、X、Y、およびZは独立して1〜14から選択される整数であり、
は炭素数が3〜100の直鎖状または分岐鎖状のアルキルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
前記アジュバントが、次式(II)
【化3】

で表わされる化合物PBS−57である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
前記アジュバントが、次式(III)
【化4】

で表わされる化合物PBS−96である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
前記アジュバントが、次式(IV)
【化5】

で表わされる化合物PBS−14である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
前記インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤が、アジュバントを含有している、請求項1〜10のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
インフルエンザの予防または治療に使用するための、請求項1〜11のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
インフルエンザがインフルエンザウイルスの第1の株に起因し、
前記インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤が、インフルエンザウイルスの第2の株の、弱毒化されていない生きたインフルエンザウイルス、弱毒化された生きたインフルエンザウイルス、死滅したインフルエンザウイルス、不活性化されたインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスのサブユニット、組換え型ポリペプチド、組換え型タンパク質、cDNA、または組換え型インフルエンザウイルスからなる群より選択される、請求項12に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
予防または治療に効果的な量の、請求項1〜11のいずれか一項に記載のワクチン組成物を、個体に投与する工程を包含している、個体におけるインフルエンザを治療または防止する方法。
【請求項15】
インフルエンザがインフルエンザウイルスの第1の株に起因し、
前記インフルエンザに対する予防活性を有する少なくとも1つの薬剤が、インフルエンザウイルスの第2の株の、弱毒化されていない生きたインフルエンザウイルス、弱毒化された生きたインフルエンザウイルス、死滅したインフルエンザウイルス、不活性化されたインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスのサブユニット、組換え型ポリペプチド、組換え型タンパク質、cDNA、または組換え型インフルエンザウイルス、からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2012−505174(P2012−505174A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530464(P2011−530464)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062894
【国際公開番号】WO2010/040710
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511088461)
【氏名又は名称原語表記】WITTYCELL
【住所又は居所原語表記】8bis rue Gabriel Voisin,F−51100 Reims,France
【出願人】(511088472)
【氏名又は名称原語表記】SERRA,Vincent
【住所又は居所原語表記】8,place de l’Eglise,F−91070 Bondoufle,France
【Fターム(参考)】