説明

インフルエンザワクチン組成物の製造方法

インフルエンザワクチンとして好適な卵および宿主細胞中での、インフルエンザウイルス、例えば、低温適合性インフルエンザB型株の最適化および製造のための方法および組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザワクチン組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毎年多くの個人がインフルエンザウイルスの異なる株および型に感染するので、様々な、かつ進化しているインフルエンザの株に対するワクチンは、地域医療の観点からだけでなく、商業的な観点からも重要である。幼児、高齢者、十分な医療を受けていない者および免疫不全患者は、そのような感染に由来して死亡する危険性が特に高い。インフルエンザ感染の問題を複雑化するものは、新しいインフルエンザ株が容易に進化し、それによって新規ワクチンの連続生産を必要とすることである。
【0003】
そのような異なるインフルエンザウイルスに特異的な防御免疫応答を産生することができる多くのワクチンが50年以上に渡って製造されてきたが、それらのものとしては、例えば、全ウイルスワクチン、ウイルス成分ワクチン、表面抗原ワクチンおよび弱毒化生ウイルスワクチンが挙げられる。しかしながら、これらのワクチン型のいずれかの好適な製剤は全身免疫応答を産生することができるが、弱毒化生ウイルスワクチンは気道における局所粘膜免疫を刺激することもできるという利点を有する。かくして、迅速かつ経済的に製造することができ、かつ容易に貯蔵/輸送することができる弱毒化生ウイルスを含むワクチンが全く望ましい。また、そのようなウイルス、およびかくして、そのようなウイルス、特に、伝統的な方法を用いる商業生産のための製造および/またはスケールアップが困難であると証明されているウイルス株のためのワクチンの産生を増加させる方法も望ましい。
【0004】
現在まで、米国における全ての市販のインフルエンザウイルスは孵化鶏卵中で増殖されている。多くのインフルエンザウイルス株は鶏卵中でよく増殖するが、ワクチンの製造はそのような卵の利用可能性に依存している。卵の供給を組織化し、ワクチン製造のための株を次の流行期より前の月に選択しなければならないため、この手法の柔軟性は限られており、製造および配給の遅延および不足をもたらすことが多い。また、種々のインフルエンザウイルス株は他のインフルエンザ株と同様、卵中であまり増殖しない(例えば、高い力価として産生しない)。従って、例えば、そのようなウイルスの望ましい株、およびかくしてワクチンの産生を増加させる方法が大いに望ましい。
【0005】
細胞培養物中でインフルエンザウイルスを製造するための系も近年開発されてきた(例えば、Furminger,「ワクチン製造(Vaccine Production)」、Nicholsonら(編) Textbook of Influenza pp. 324-332; Mertenら(1996)「ワクチン調製のための細胞培養物におけるインフルエンザウイルスの製造(Production of influenza virus in cell cultures for vaccine preparation)」、Cohen & Shafferman(編) Novel Strategies in Design and Production of Vaccines pp. 141-151を参照)。しかしながら、そのような系はまた、卵における製造またはスケールアップを含んでもよく、特に、特定の株に関して生産性の問題に遭遇することがある。従って、これらの系におけるウイルス/ワクチン産生を増加させる任意の方法も同様に大いに望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワクチンの製造のためのインフルエンザウイルスの産生におけるかなりの研究が本発明者および共同研究者によって行われてきた;例えば、PCT公開WO 03/091401、WO 05/014862、ならびに2005年5月20日に出願されたPCT特許出願PCT/US05/017734、および2005年10月4日に出願されたPCT/US05/035614を参照されたい。本発明は、インフルエンザウイルスおよびワクチン組成物の製造のためのウイルス組成物の産生を増加させる方法を提供する。本発明の態様は、鶏卵におけるウイルス増殖の工程を含み、また以下の概要に照らして明らかとなるであろう多くの他の利益を含む、伝統的な鶏卵および新規な細胞培養ワクチン製造様式(およびまた組合わせた系)に適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インフルエンザウイルスのゲノムもしくは部分的ゲノムを含むか、またはコードする複数のベクター(例えば、プラスミド、ウイルスなど、以下を参照)を、1種以上の宿主卵もしくは他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)に導入し、該宿主卵もしくは他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)を33℃未満の温度でインキュベートし、該宿主卵もしくは他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)からインフルエンザウイルス粒子を回収することにより、インフルエンザウイルス粒子を製造する方法を含む。本発明はまた、インフルエンザウイルス粒子を宿主細胞(例えば、MDCKもしくはVero細胞の連続細胞培養物)または孵化鶏卵中、33℃未満の温度(例えば、31℃)でインキュベートすることを含む、前記ウイルス粒子の収量を増加させる方法も包含する。特定の実施形態においては、33℃未満の温度で産生されたウイルス粒子のlog10TCID50/mL力価は、33℃で産生された同ウイルス粒子のものよりも大きい。他の実施形態においては、本発明の方法は、インフルエンザウイルスの複製を支援することができる1個以上の孵化卵中に、インフルエンザウイルス(例えば、再集合体ウイルス)を導入することによって、該孵化卵を感染させることを含む。さらに他の実施形態においては、本発明の方法は、インフルエンザウイルスの複製を支援することができる宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)中に、インフルエンザウイルス(例えば、再集合体ウイルス)を導入することによって、該宿主細胞を感染させることを含む。製造されるウイルスは、インフルエンザウイルスB型株、弱毒化インフルエンザウイルス、低温適合性インフルエンザウイルス、温度感受性インフルエンザウイルス、弱毒化低温適合性温度感受性インフルエンザウイルス、またはそれらの任意の組合せであってよい。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスはPR8骨格を含むが、他の実施形態においては、前記ウイルスはB型アナーバー株のインフルエンザ骨格、B/レニングラード/14/17/55骨格、B/14/5/1、B/ソ連/60/69骨格、B/レニングラード/179/86骨格、B/レニングラード/14/55骨格、またはB/英国/2608/76骨格を含む。いくつかの実施形態においては、前記ウイルスは低温適合性B/吉林/20/03である。特定の実施形態においては、前記卵はSPF鶏卵である。いくつかの実施形態においては、前記宿主細胞はMDCK細胞である。また、特定の実施形態においては、33℃未満でのインキュベーションは、前記卵または他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)を、29℃〜33℃、または31℃〜33℃、または31℃〜32℃、または31℃でインキュベートすることを含む。
【0008】
他の態様において、本発明は、上記のような方法により製造されたインフルエンザウイルス、ならびにそのようなウイルスを含む組成物およびそのようなウイルスを含むインフルエンザワクチン(例えば、液体弱毒化生鼻腔内ワクチン)を含む。本発明を介して増殖させることができるそのようなウイルスは必要に応じて、例えば、CAIV(例えば、三価製剤中の低温適合性インフルエンザウイルス)、PCT公開WO 05/014862に記載のものなどのウイルス、例えば、PCT公開WO 01/183794、WO 00/60050、USPN 6,544,785およびUSPN 6,649,372に記載のものなどのウイルス、ならびに他の類似し、関連するウイルスおよびウイルス型を含んでもよい。
【0009】
本発明のこれらの、および他の課題および特徴は、添付の図面および特許請求の範囲と共に以下の詳細な説明を読む場合により完全に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、限定されるものではないが、FluMist(登録商標)などのワクチンの製造にとって好適であるウイルス、より具体的には、低温適合性インフルエンザウイルスB型株の産生を増加させる方法を含む。例えば、接種後の卵(例えば、卵中での二次インキュベーション)または他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)中でのインキュベーション中の温度を低下させてウイルス株を増殖させる方法も含まれる。さらなる特徴を本明細書でより詳細に説明する。
【0011】
本明細書に記載の典型的な実施形態はまた、当業界で公知である工程/方法/組成物、例えば、検卵、卵へのウイルスの接種などを含んでもよいことは当業者には理解されるであろう。従って、当業者であれば、好適なウイルス、ウイルス溶液、組成物を製造するためのそのような公知の工程のための好適な条件、サブ工程、工程の詳細などを決定することができる。
【0012】
また、ウイルス/ワクチン製造のための本明細書に記載の様々な工程を、同じ製造系において全て実施するか、または存在させる必要はないことも当業者には理解されるであろう。かくして、いくつかの実施形態においては、本明細書に記載もしくは言及される全ての工程および/または組成物を実施するか、または存在させるが、他の実施形態においては、1つ以上の工程を、必要に応じて、例えば、省略、変更(範囲、順序、配置など)などする。
【0013】
低温適合性インフルエンザB型株の製造
ワクチン製剤における使用を意図されるB/吉林/20/03株などの特定の低温適合性(ca)インフルエンザB型株の全体の収量は、33℃での二次インキュベーションの現在認可される製造条件に従って増殖させた場合、所望の数のインフルエンザワクチン用量の十分な製造を可能にするには不十分であることがある。本発明は、33℃よりもむしろ、33℃未満の温度、例えば、31℃(または必要に応じて、約29℃〜約32℃)で卵または他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)をインキュベートする方法を含み、これはそのような株の収量を増加させ、かくして、ワクチンのためのウイルスの産生を増加させることができる。そのような卵または他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)のインキュベーションを、必要に応じて、本明細書では「二次」インキュベーションと記載して、卵の胚を発達させるのに用いられる37℃での卵の一次インキュベーション、または感染前に細胞を増殖させるのに用いられるより高い温度での宿主細胞の一次インキュベーションとそれらを区別する。本明細書に記載の実施例は、31℃および33℃で増殖させたB/吉林/20/03株と他の低温適合性インフルエンザB型株の特徴を比較し、31℃で増殖させたウイルスは33℃で増殖させたウイルスと識別不可能な生物学的特徴を共有することを示すものである。
【0014】
本明細書に記載の実施例に含まれるデータは、33℃未満の温度(例えば、31℃)での低温適合性B/吉林/20/03のより高い収量がB/吉林/20/03株にとってユニークではないことを示している。低温適合性B/アナーバー/1/94などの試験した他の全ての低温適合性インフルエンザB型株はまた、33℃未満の温度でより効率的に複製し、ワクチンの主試験における証明可能な有効性を示した。さらに、本明細書に記載の実施例は、31℃および33℃で増殖させたウイルスに由来する低温適合性B/吉林/20/03ワクチンの詳細な特性評価を示し、2つのワクチンが試験した特徴において互いに等価であることを強調する。実際、33℃未満の温度、例えば、31℃で増殖させた低温適合性ウイルスB型株ワクチンの物理的および生物学的特徴は、ヒトにおいて使用または試験した33℃で増殖させた他の低温適合性インフルエンザB型株のものと等価である。以下を参照されたい。
【0015】
本明細書の実施例に記載の比較可能性および特性評価の結果は、卵中での低温適合性B/吉林/20/03および7つの他の低温適合性インフルエンザB型株の増殖曲線が全て、33℃未満の温度(最適温度は一般的には29℃〜32℃である)で増殖させた場合に、より高い力価のウイルスをもたらしたことを示している。また、より低い温度での増殖は、ワクチンの品質を証明する生物学的形質を不利に変化させなかった。かくして、低温適合性B/吉林/20/03などの様々な低温適合性インフルエンザB型株ワクチンは、元々は29℃、31℃、または33℃で増殖されたものであろうとなかろうと、特徴的な低温適合性および温度感受性(ts)表現型を発現した。さらに、感染性粒子に対する全粒子の全体の比は、低温適合性B/吉林/20/3などの様々な株の間で類似しており、31℃〜33℃で等価であった。全粒子の量を、定量的RT-PCRによりゲノムコピー数を決定することにより測定した。さらに、低温適合性B/吉林/20/03全粒子も、透過型電子顕微鏡により測定した。本明細書の実施例はまた、配列決定した場合、31℃または33℃で増殖させた低温適合性B/吉林/20/03のゲノムが互いに、ならびにマスターウイルスシード(MVS)と同一であり、31℃または33℃で増殖させた低温適合性B/吉林/20/03の抗原性が、赤血球凝集抑制アッセイ(HAI)により示されるように、実質的に同じであることを示している。本明細書の実施例はまた、31℃または33℃で増殖させた低温適合性B/吉林/20/03の卵中での複製は、時間および最適温度に関して等価であり、31℃または33℃で増殖させた低温適合性B/吉林/20/03のフェレットの鼻咽頭における複製も等価であることを示している。さらに、本明細書の実施例により示されるように、低温適合性B/吉林/20/03の免疫原性は31℃で増殖されたものであっても、または33℃で増殖されたものであっても等価である。例えば、フェレットの群をこれらの2つの調製物で免疫し、動物のHAI力価を免疫の14日後に測定した。これらの2群の動物に由来する血清の平均HAI力価は同一であった。
【0016】
そのような組合わせたデータは、低温適合性B/吉林/20/03の生物学的特徴は、ウイルスを33℃未満の温度(例えば、31℃)で増殖させても、または33℃で増殖させても比較可能であることを示している。このワクチン株は、in vitroおよびin vivoの両方で、等価な生物物理学的特徴(例えば、抗原性、感染性粒子に対する全粒子の比および配列)ならびに生物学的特性を有する。さらに、33℃未満の温度(例えば、31℃)での低温適合性B/吉林/20/03のより良い増殖はまた、他の低温適合性インフルエンザB型株にも適用できる。かくして、本発明は、FluMist(登録商標)などのワクチンの製造などの使用のための、そのようなウイルス株、例えば、低温適合性B/吉林/20/03株、または他の低温適合性インフルエンザB型株の33℃未満の温度(例えば、31℃)での増殖を含む。
【0017】
かくして、特定の実施形態においては、本発明は、インフルエンザウイルスのゲノム、または部分的ゲノムを含む(例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7個(すなわち、全てのvRNAセグメント未満)のvRNAセグメントを含む)少なくとも1個のベクター(例えば、必要に応じて、PR8、B型アナーバー株インフルエンザ、B/レニングラード/14/17/55、B/14/5/1、B/ソ連/60/69、B/レニングラード/179/86、B/レニングラード/14/55、B/英国/2608/76、もしくは低温適合性B/吉林/20/03、または1個以上のプラスミドを含んでもよい6:2再集合体ウイルスなどのB型株のインフルエンザウイルス)を、インフルエンザウイルスの複製を支援することができる少なくとも1個の宿主卵または他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)に導入すること;該宿主卵または他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)を33℃未満の温度でインキュベートすること;ならびに、該宿主卵または他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)から、インフルエンザウイルス粒子を回収することにより、インフルエンザウイルス粒子を製造する方法を含む。他の実施形態においては、本発明は、インフルエンザウイルス粒子を33℃未満の温度(例えば、31℃)でインキュベートすることを含む、インフルエンザウイルス粒子の収量を増加させる方法を提供する。特定の実施形態においては、本発明は、インフルエンザウイルスのゲノムまたは部分的ゲノムを含む少なくとも1個のベクターを、少なくとも1個の宿主卵または他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)に導入すること;該宿主卵または他の宿主細胞を33℃未満の温度でインキュベートすることにより、インフルエンザウイルス粒子の収量を増加させる方法であって、33℃未満の温度で産生されるインフルエンザウイルス粒子の収量が、33℃で産生される同じウイルス粒子のものよりも大きい前記方法を含む。特定の実施形態においては、33℃未満の温度で産生されるウイルス粒子のlog10TCID50/mL力価は、33℃で産生される同じウイルス粒子のものよりも大きい。特定の実施形態においては、33℃未満の温度で産生されるウイルスのlog10TCID50/mL力価は、少なくとも約7.0、または少なくとも約7.2、または少なくとも約7.4、または少なくとも約7.6、または少なくとも約7.8、または少なくとも約8.0、または少なくとも約8.2、または少なくとも約8.4、または少なくとも約8.6、または少なくとも約8.8、または少なくとも約9.0、または少なくとも約9.2、または少なくとも9.4、または少なくとも約9.6、または少なくとも約9.8である。他の実施形態においては、本発明の方法は、インフルエンザウイルス(例えば、再集合体ウイルス)を、インフルエンザウイルスの複製を支援することができる1個以上の孵化卵に導入することによって、該孵化卵を感染させることを含む。さらに他の実施形態においては、本発明の方法は、インフルエンザウイルス(例えば、再集合体ウイルス)を、インフルエンザウイルスの複製を支援することができる宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)に導入することによって、該宿主細胞を感染させることを含む。含まれるウイルスは必要に応じて、弱毒化インフルエンザウイルス、低温適合性インフルエンザウイルス、温度感受性インフルエンザウイルス、弱毒化低温適合性温度感受性インフルエンザウイルス;またはその任意の組合せを含んでもよい。含まれるウイルスは6:2の再集合体ウイルスであることが想定される。一実施形態においては、含まれるウイルスはB型株インフルエンザウイルス6:2再集合体である。本発明の方法において用いることができるB型株インフルエンザウイルスとしては、限定されるものではないが、PR8、B型アナーバー株インフルエンザ(例えば、B/アナーバー/1/94、B/アナーバー/1/66)、B/レニングラード/14/17/55、B/14/5/1、B/ソ連/60/69、B/レニングラード/179/86、B/レニングラード/14/55、B/英国/2608/76、または低温適合性B/吉林/20/03が挙げられる。別の実施形態においては、含まれるウイルスは、B型アナーバー株インフルエンザまたはB/レニングラード/14/17/55、B/14/5/1、B/ソ連/60/69、B/レニングラード/179/86、B/レニングラード/14/55、B/英国/2608/76、および低温適合性B/吉林/20/03からなる群より選択されるB型ウイルスの少なくとも1個のセグメントを含む。
【0018】
特定の態様においては、宿主卵はSPF孵化鶏卵である。特定の他の態様においては、宿主細胞は動物細胞である。インフルエンザウイルスの製造にとって有用な動物細胞は当業界で公知であり、限定されるものではないが、MDCK細胞(例えば、米国特許第4,500,413号および6,455,298号を参照)、Vero細胞(例えば、米国特許第6,146,873号を参照)およびPerC6細胞(例えば、PCT公開WO 01/38362およびWO 02/40665を参照)が挙げられる。一実施形態においては、宿主細胞はMDCK細胞である。また、特定の態様においては、インキュベーションを約29℃〜約33℃、約31℃〜約33℃、または約31℃〜約32℃、または約31℃で行う。他の態様においては、インキュベーションを29℃〜33℃、31℃〜33℃、または31℃〜32℃、または31℃で行う。本発明はまた、本明細書に記載の方法により製造されたインフルエンザウイルスならびにそのようなウイルスを含む組成物およびワクチン(例えば、FluMistなどの液体弱毒化生鼻腔内ワクチン)も包含する。
【0019】
特定の態様においては、本明細書に記載の方法は、卵または他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)を33℃未満でインキュベートすることから得られる力価(log10TCID50/mL)が、同じウイルス粒子(例えば、同じウイルス型/株など)を33℃以上でインキュベートすることから得られる力価より大きいか、またはそれと等しい実施形態を含む。必要に応じて、そのような比較を31℃でのインキュベーションと33℃でのインキュベーションの間で行う。種々の実施形態において、31℃でのインキュベーションから得られるlog10TCID50/mL力価は、33℃でのインキュベーションから得られるlog10TCID50/mL力価よりも、少なくとも約1.01〜少なくとも約1.10倍、少なくとも約1.025〜少なくとも約1.05倍、または少なくとも約1.03〜少なくとも約1.04倍大きい。他の実施形態においては、31℃でのインキュベーションから得られるlog10TCID50/mL力価は、33℃でのインキュベーションから得られるlog10TCID50/mL力価よりも、少なくとも1.01〜少なくとも1.10倍、少なくとも1.025〜少なくとも1.05倍、または少なくとも1.03〜少なくとも1.04倍大きい。
【0020】
さらに他の態様において、本明細書に記載の方法は、ウイルス粒子の低温適合性および/または温度感受性表現型が、ウイルスを33℃未満(例えば、31℃)または33℃以上(例えば、33℃)でインキュベートする場合、本質的に類似する実施形態を含む。また、特定の態様において、本明細書に記載の方法は、33℃未満(例えば、31℃)でのインキュベーションから得られるウイルス粒子のウイルス収量が、33℃以上(例えば、33℃)でインキュベートした場合の同じウイルス粒子のウイルス収量よりも大きいか、または等しい実施形態を含む。そのような態様においては、ウイルス収量を、必要に応じて、33℃未満でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主卵の尿膜腔液の感染性ビリオンを測定する中央組織培養感染用量(TCID50)アッセイおよび33℃以上でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主卵の尿膜腔液の感染性ビリオンを測定する中央組織培養感染用量(TCID50)アッセイの使用を介して定量する。あるいは、ウイルス収量を、必要に応じて、33℃未満でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主卵の尿膜腔液の赤血球凝集価および33℃以上でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主卵の尿膜腔液の赤血球凝集価の使用を介して定量する。また、ウイルス収量を、必要に応じて、33℃未満でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主卵の尿膜腔液中のウイルスRNAの量と、33℃以上でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主卵の尿膜腔液中のウイルスRNAの量とを比較することにより定量する。また、ウイルス収量を、必要に応じて、33℃未満でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主卵の尿膜腔液中の感染性粒子の比率と、33℃以上でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主卵の尿膜腔液中の感染性粒子の比率とを比較することにより定量する。ウイルス収量を、必要に応じて、33℃未満でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主細胞の上清の感染性ビリオンを測定する中央組織培養感染性用量(TCID50)アッセイおよび33℃以上でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主細胞の上清の感染性ビリオンを測定する中央組織培養感染性用量(TCID50)アッセイの使用を介して定量する。あるいは、ウイルス収量を、必要に応じて、33℃未満でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主細胞の上清の赤血球凝集価および33℃以上でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主細胞の上清の赤血球凝集価の使用を介して定量する。また、ウイルス収量を、必要に応じて、33℃未満でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主細胞の上清中のウイルスRNAの量と、33℃以上でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主細胞の上清中のウイルスRNAの量とを比較することにより定量する。また、ウイルス収量を、必要に応じて、33℃未満でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主細胞の上清中の感染性粒子の比率と、33℃以上でインキュベートしたウイルス粒子を感染させた宿主細胞の上清中の感染性粒子の比率とを比較することにより定量する。
【0021】
特定の他の態様においては、本発明の方法は、33℃未満でインキュベートした感染性ウイルス粒子の核酸配列が、33℃以上でインキュベートした感染性ウイルス粒子の核酸配列と同一である場合を含む。特定の他の態様においては、本発明の方法は、33℃未満でインキュベートしたウイルス粒子の抗原性が、33℃以上でインキュベートした場合の同じウイルス粒子(すなわち、同じウイルス型など)の抗原性と実質的に同じである場合を含む。必要に応じて、そのような抗原性をHAIアッセイにより測定する。さらに他の特定の態様においては、本発明の方法は、ウイルス粒子が被験体(例えば、フェレット、ヒト、非ヒト霊長類、哺乳類)における免疫応答を誘導し、これが、33℃以上でのインキュベーションを介して産生された同じ型のウイルス粒子による同じ被験体(もしくは被験体型)において誘導された免疫応答と本質的に同じであるか、またはこれに類似するものである場合を含む。
【実施例】
【0022】
実施例:31℃および33℃で増殖させたB/吉林/20/03および他のB型ウイルスの特性評価/比較
低温適合性B/吉林/20/03および他の低温適合性インフルエンザB型株の増殖曲線
本実施例に認められるように、低温適合性インフルエンザB型株の最適収量は、30℃〜32℃での特定の病原体を含まない(SPF)孵化鶏卵のインキュベーション後に最も高かった。SPF孵化鶏卵に、約2.1 log10TCID50/卵で種々の低温適合性インフルエンザB型株を接種し、28℃〜35℃の範囲の温度で60〜72時間インキュベートした。インキュベーション後、感染した卵の尿膜腔液を収穫し、力価測定した。図1中の表および図2中のグラフに認められるように、インキュベーションの最適温度は33℃未満であり、典型的には、31℃〜32℃であった。認められるように、温度プロフィールは、wtインフルエンザB型に対する有意な臨床効果を有する低温適合性B/アナーバー/1/94(例えば、Belsheら、Phil. Trans. R. Soc. Lond. B. 2001, 356:1947-1951およびBelsheら、Pediatrics, 2001 108:24+)および最近のインフルエンザ期において特に重要な株である低温適合性B/吉林/20/03などの試験した全ての株について類似していた。図2および3を参照されたい。
【0023】
各株のインキュベーションの最適温度を、各株のデータ点を介する最良適合多項線の内挿により決定した。Yamagata系列(B/アナーバー/1/94、B/ビクトリア/504/2000、およびB/ヨハネスブルグ/5/99)およびVictoria系列(B/山梨/166/98、B/ブリスベン/32/2002およびB/北京/243/97)の両方の代表を含む7つの低温適合性インフルエンザB型株を、様々な温度でインキュベートし、感染後60〜72時間で収穫した。最適温度は33℃未満であり、典型的には、31℃〜32℃であった。図2を参照されたい。低温適合性B/吉林/20/03の温度プロフィールの3つの独立した反復物を、図3に示す。認められるように、低温適合性B/吉林/20/03のためのインキュベーションの最適温度は約31℃であった。
【0024】
低温適合(ca)および温度感受性(ts)表現型アッセイ--一次ひよこ腎臓細胞上での25℃、33℃、および37℃でのウイルス力価の比
SPF孵化鶏卵中、29℃〜33℃で増殖させた低温適合性インフルエンザB型株は、特徴的なcaおよびts表現型を発現することが示された。インキュベーション条件が得られるワクチンの生物学的特性に対して影響しないことを証明するために、様々な温度で増殖させた材料を、特徴的なcaおよびts表現型の存在について評価した。全ての株はこれらの特徴的な形質を示し、これは卵のインキュベーション温度がワクチン株に対して影響しないことを示している。図4を参照されたい。
【0025】
赤血球凝集(HA)価、ウイルスRNAの量、および感染性粒子の比率によるウイルス収量の測定
ウイルス収量の他の測定は、感染性ウイルスの収量と一致する。様々な温度で収穫されたウイルスのサンプルを、HA活性についてアッセイし、ウイルスRNAの量を定量的逆転写PCR(QRT-PCR)により定量した。図5および6に示された結果は、TCID50の結果と一致していた。最も高いHA活性およびvRNA量は、31℃でインキュベートした卵について観察された。
【0026】
種々の温度でインキュベートし、感染後72時間で収穫した感染卵の尿膜腔液中のHA遺伝子セグメントウイルスRNAの量を、図6に提供する。
【0027】
また、感染性粒子に対する、ゲノムコピー数または透過型電子顕微鏡(TEM)により測定された全粒子の比を、本明細書の実施例において評価する。TCID50に対するコピー数の比(図7)は、31℃または33℃でインキュベートしたサンプル間に、TCID50に対する遺伝子コピー数の一定の比が存在することを示していた。
【0028】
実施例において、TEMを用いて、選択されたサンプルについてTCID50に対するウイルス粒子の比を評価した。ゲノム:TCID50比と同様、この分析により、31℃で増殖させたB/吉林/20/03の全粒子の約3.3%が感染性であることが示された。図8を参照されたい。31℃で増殖させたB/吉林/20/03の感染性粒子の比率は、33℃で得られた値と比較可能であり、31℃または33℃で増殖させたB/アナーバー/01/94について得られた値とも類似している。これらの比はまた、先に報告された他の低温適合性インフルエンザB型ワクチン株のものの範囲内にある。
【0029】
31℃または33℃で増殖させたB/吉林/20/03ウイルスのゲノム配列分析
本明細書の実施例に示されるように、ウイルスRNA(vRNA)を、31℃および33℃で増殖させたウイルスから抽出し、配列決定した。様々な温度で増殖させたこれらのウイルスのゲノム配列は、互いに、かつMVSと同一である。図9を参照されたい。
【0030】
31℃または33℃で増殖させた低温適合性B/吉林/20/03のHAIにより示される抗原性
実施例中のウイルスを試験して、それらの抗原特性が比較可能であるかどうかを決定した。31℃および33℃で増殖させた低温適合性B/吉林/20/03のHAI力価を、参照B/吉林/20/03抗血清に関して評価した。HAI力価は互いに2倍の範囲内にあったが、これはそれらの抗原性が同一であることを示している。図10を参照されたい。
【0031】
31℃または33℃で増殖させたウイルスのin vivoでの特性
これらの2つの温度で増殖させたワクチンの性能を評価するために、5匹のフェレットの群(血清陰性)に、31℃または33℃で増殖させた7.0 log10TCID50のウイルスを鼻腔内的に接種した。これらの動物の鼻咽頭におけるワクチンの複製を、免疫後の様々な時点での鼻洗浄標本中のウイルス力価を測定することにより決定した。ワクチンウイルス複製は、2つの群の間で量および期間の両方において等価であった。図11を参照されたい。さらに、動物から免疫後14日目に採血し、wt B/吉林/20/03に対する血清中の抗体の力価をHAIにより決定した。免疫に対する抗体応答は、これらの動物の2群間で同一であったが、かくして、これはワクチンが31℃でも33℃で増殖させた場合でも等しく免疫原性であることを示している。図11を参照されたい。
【0032】
31℃での低温適合性B/吉林/20/03の増殖が、ヒト鼻咽頭中に認められるものと類似する温度で増殖するその能力に対して影響しないことを証明するために、31℃および33℃の両方で増殖させたワクチンをSPF卵中に接種し、30℃〜33℃の温度でインキュベートした。図13に示されるように、両ワクチンは、共に約31℃(ヒト上気道中に認められることが予想される温度)で最も高い力価を得る等しい温度プロフィールで複製した。
【0033】
本明細書の実施例に提供されるデータは、低温適合性B/吉林/20/03の生物学的および生物物理学的特性が31℃または33℃で増殖させた場合に比較可能であることを示している。これらの2つの温度で増殖させたワクチン株は、例えば、caおよびts表現型の発現、動物における複製および免疫原性、ならびに様々な温度での卵における複製などの、in vitroおよびin vivoの両方で等しい生物物理学的特徴(抗原性、全粒子:感染性粒子の比および配列)ならびに生物学的特性を有していた。しかしながら、33℃とは反対に、31℃で増殖させたウイルスは、ウイルスのより高い産生を示した。さらに、31℃での温度適合性B/吉林/20/03のより良好な増殖は、試験した他の低温適合性インフルエンザB型株についても本明細書に示される。かくして、本明細書の実施例は、例えば、FluMist(登録商標)または他のワクチンなどのワクチンの製造における使用のための、卵または他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)における、33℃よりもむしろ、33℃未満の温度、例えば、31℃(または必要に応じて、約29℃〜約32℃)での低温適合性B/吉林/20/03株(および他の低温適合性インフルエンザB型株)の増殖において本発明の特許請求の範囲を支持する。
【0034】
実施例:材料および方法
表現型アッセイ-caおよびts
表現型アッセイを、3日齢のひよこから調製した一次ひよこ腎臓(PCK)細胞に対して実施した。サンプルをcaおよびts表現型についてアッセイした。簡単に述べると、PCK細胞を無血清培地(PAM)で洗浄し、サンプルの力価測定において用いた。洗浄した細胞層に、好適なウイルスを接種し、指定された温度でインキュベートした。次いで、細胞層を、死んだ細胞をもたらす複製しているウイルスにより引き起こされた細胞に対する細胞変性効果について試験した。表現型を以下のように割り当てた:ca-33℃〜25℃でのTCID50平均力価差は2log以下であり、ts-37℃または39℃〜33℃でのTCID50平均力価差は2log以上であった。サンプルを25℃、33℃、および37℃で二重に試験した。プレートを6日間(ts表現型)または10日間(ca表現型)インキュベートし、CPE読み取り値をインキュベーションの終わりに取得した。本明細書の実施例で報告される力価は平均TCID50/mL±SDであった。
【0035】
HAおよびHAIアッセイ
赤血球凝集(HA)アッセイを、PBS中で調製した0.5%ひよこRBCを用いて実施した。サンプルを50μL容量で96穴プレート中で2倍連続希釈した。連続希釈サンプルに、50μLの0.5%ひよこRBCを添加し、混合し、プレートを最小で30分間インキュベートした後、HA活性について読み取った。各サンプルを二重に試験し、HA力価を2回の反復物の平均として報告した。
【0036】
HAIアッセイにおいて、血清サンプルを処理し、25μL容量中、1:4希釈から開始して2倍連続希釈を行った。4HA単位に相当する、25μLのウイルスを添加し、混合し、サンプルを室温で半時間インキュベートした。インキュベーションの最後に、50μLの0.5%ひよこRBCを添加し、混合し、プレートを最小で30分間インキュベートした後、これらをHAI活性について読み取った。
【0037】
フェレットにおける複製および免疫原性
フェレット(7週齢)を取得し、制御された設備中で2週間隔離した。5匹のフェレットの各々に1 mLを投与するのに十分な接種材料の容量を、インフルエンザウイルス保存液を1 x SPG中、7.05 log10TCID50の最終容量に希釈することにより新しく調製した。
【0038】
動物から採血して、免疫前血清サンプルを取得した後、31℃または33℃で増殖させた1 mL(鼻孔あたり0.5 ml)の低温適合性B/吉林/20/03を用いて鼻腔内的に免疫した。接種後、1 mLの滅菌リン酸緩衝生理食塩水で鼻孔を洗浄することにより、免疫後8〜168時間の特定の間隔で鼻のサンプルを各フェレットから回収した。回収された鼻洗浄サンプルをすぐに凍結し、これらをウイルスの力価測定に用いるまで-80℃で保存した。HAI応答の決定のために、血清を0、14、21および28日目に回収した。
【0039】
鼻洗浄サンプル中のウイルスの力価を測定するために、MDCK細胞を96穴平底組織培養プレート中に播種し、37℃および5%CO2で100%集密まで増殖させた。鼻洗浄サンプルをアッセイする直前に、細胞増殖培地を各ウェルから除去し、細胞を、TPCK-トリプシンを含まない不完全ウイルス増殖培地(VGM)で2回洗浄し、次いで完全VGM(0.18 mL)で洗浄し、TPCK-トリプシンを全てのウェルに添加した。同時に、鼻洗浄サンプルを解凍し、完全VGM中で連続希釈した。次いで、希釈されたウイルスまたは培地のみ(陰性対照)のアリコート(0.02 mL)をそれぞれ3個のプレート上の8個のウェルに添加した。プレートを33℃および5%CO2で6日間置いた後、全てのウェルにおいてウイルス細胞変性効果(CPE)の存在について顕微鏡的にスコア付けした。プレートあたりのCPE陽性ウェルの数を、Karber法を用いて中央感染性用量(TCID50/mL)値に変換した。
【0040】
卵中での複製
種々の低温適合性B型株についてウイルスを含有する尿膜腔液を作製するために、特定の病原体を含まない(SPF)卵を、受容後14±2℃で7日未満保存し、37.5±1℃および70±10%相対湿度で264±12時間インキュベートした。インキュベーション後、卵を除去し、検卵し、許容し得る卵に約2.1 log10TCID50/卵のウイルスを接種し、28℃〜35℃の範囲の温度で、48、60、72または84時間インキュベートした。次いで、卵を検卵し、5±3℃で12〜24時間冷却した後、収穫した。卵を、70% v/vエタノールを噴霧することにより表面消毒し、生物安全キャビネット(BSC)に移し、空気乾燥させた。BSC中の卵を、卵パンチャーを用いて卵の頂上に穴を開けることにより収穫するために調製した。穴を開けた卵殻を、滅菌されたステンレススチール製スパーテルを用いて除去した後、尿膜腔液を10 mLピペットを用いて収穫した。各収穫時点から得られた収穫された尿膜腔液を回収し、サンプルをアリコートし、-60℃以下で保存した後、力価測定した。
【0041】
TCID50アッセイ
TCID50アッセイを、以下の方法に従って実施した。勿論、他の類似するアッセイを用いることもできることが理解されるであろう。4日齢および100%集密のMadin Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞の96穴プレートを前記アッセイのために用いた。細胞培養プレートを、SkatronTM Cell Washerを用いてウイルス増殖培地(VGM)で2回洗浄した。ウェルあたり180μlのトリプシンを含む完全VGMを各プレートに添加し、接種までプレートを33℃および5%CO2中に置いた。同時に、試験ウイルスおよび対照ウイルスサンプルを解凍し、96穴予備希釈ブロック中、トリプシンを含むVGM中で予備希釈した。サンプルを、SerialMateピペッティングステーションを用いて、10-3〜10-4に連続的に10倍希釈した。次いで、ウイルスサンプルを予備希釈ブロックから、トリプシンを含むVGMを充填した新鮮に調製された希釈ブロックの1番目と12番目のカラムに移した。サンプルを、SerialMateピペッティングステーションにより、10-5〜10-10にさらに連続希釈した。トリプシンを含むVGMを含むMDCK細胞培養プレートをインキュベーターから取り出し、SerialMateピペッティングステーションを用いて希釈されたウイルスサンプルを接種した。プレートを33℃および5%CO2中に6日間置いた。メチルチアゾールテトラゾリウム(MTT)染料を組織培養プレートに添加して、細胞変性効果(CPE)を検出した。次いで、プレートを分光分析装置を用いて読み取って、組織培養プレート中のCPEウェルの数を決定した。サンプルのTCID50力価を、総数CPEウェルに基づいて算出した。
【0042】
配列分析
3つのウイルス材料を、配列決定により分析した。2つのウイルス増殖物、Z0015 PD 16Apr04、DQ NB 773およびZ0015 PD 16Apr04、DQ NB 773を、それぞれ33℃および31℃で増殖させた。31℃で増殖させた製造業者のロット、バッチ番号600054Cも、この研究に含有させた。参照として、B/吉林/20/03 MVS、ロット番号0141900073を用いた。
【0043】
配列決定のために、ウイルスRNAを、QIAamp Viral RNA Mini Kit (Qiagen, Venlo, The Netherlands)を用いて単離し、cDNAを鋳型としてRT-PCRにより増幅した。配列決定反応を、特定の配列プライマーおよびそれぞれ増幅されたcDNA鋳型のセットを含むABI PRISM TM BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて、製造業者の説明書に従って行った。配列伸長産物を精製し、ABI Genetic Analyzer 3730 (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いるキャピラリー電気泳動により分析した。配列の結果を、DNA Sequencing Analysis (Applied Biosystems)およびSequencer (Gene Codes Corp.)を用いて分析した。
【0044】
ゲノムコピー数の決定のためのQ RT-PCR
ゲノムコピー数を決定するために、Qiagen QIAamp Viral RNAミニキットを用いて二重または三重にRNAを抽出した。High Capacity cDNA Archive Kit (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて、RNAを二重に逆転写した。cDNAを、ABI Prism 7700 Sequence Detection System (Applied Biosystems)上、TaqMan Universal Master Mix (Applied Biosystems)を用いて、プライマーおよびインフルエンザB型ウイルスのHA遺伝子に特異的なプローブを用いてQ-PCRにより1回分析した。結果を、Sequence Detection Software, Version 1.9 (Applied Biosystems)を用いて分析し、値をMicrosoft Excel中、コピー/mLに変換した。
【0045】
ウイルスRNA量を、B/山梨HA遺伝子を含むプラスミドの連続希釈液を用いて作製された標準曲線の使用により決定した。プラスミドを、反応あたり10 pgから1 fgまで希釈した。反応あたりの量を、fg HA RNA/反応 x 4,000,000をかけることによりウイルス/mLに変換した(ウイルスを1:10予備抽出物に希釈し、RNAをRT工程の間に1:10に希釈し、5μLのcDNAを、約200個の分子のウイルスRNA/fg HAプラスミドを用いて分析した)。これらの計算は全工程が100%の効率であり、他にウイルスRNAが存在しないことを想定したものである。
【0046】
透過型電子顕微鏡を用いる全粒子計測
透過型電子顕微鏡による全粒子計測決定を、Advanced Biotechnologies, Inc., Columbia, MDにより実施した。各調製物を攪拌し、完全に再懸濁した。18μLの各サンプルを、別々の微小遠心管中、等量のラテックス球標準物含有溶液(110 nMの直径ラテックス球;1.5 x 1010粒子/mL;Structure Probe Inc., West Chester, PA)と混合した。ウイルス粒子/ラテックス球混合物を、別の微小遠心管中、1:10希釈率で超純水に希釈し、攪拌し、完全に再懸濁した。グリッドを調製するために、formvarおよび炭素で被覆された300メッシュ銅グリッドを固く留め、鉗子を用いて固定した。各グリッドを0.01%ウシ血清アルブミンを用いてリンスし、過剰の溶液を、濾紙を用いて除去した。各サンプルを、1:3から1:15の範囲の変化する希釈率で超純水中に希釈した。各希釈サンプルの2.5μLのアリコートを、別のグリッド上に置き、約5分間空気乾燥させた。5分後、任意の過剰の材料を、濾紙を用いてグリッドから除去した。各グリッドを完全に空気乾燥した後、サンプルを固定し、20μLの2.0%水性リンタングステン酸を用いて染色し、これを各グリッド上に置き、30秒間インキュベートさせた。任意の過剰の染料を濾紙を用いて除去した。各サンプルを集中的に試験し、全ウイルス粒子をHitachi HU-12A透過型電子顕微鏡を用いて計測した。
【0047】
ワクチン製造における一般的工程の説明
考察および説明を容易にするために、一般的なワクチン組成物製造の種々の工程を、4つの広い群を含むか、またはこれに分類されるものとして考えることができる。第1群は、再集合体の同時感染、再集合、選択、およびクローニングなどの態様を含む。第2群は、再集合体の精製および増殖などの態様を含む。第3群は、収穫およびそのような収穫されたウイルス溶液の精製と共に、卵または他の宿主細胞(例えば、MDCKおよびVero)中での再集合体のさらなる増殖を含む。第4群は、収穫されたウイルス溶液の安定化およびウイルス溶液の有効性/無効性アッセイを含む。しかしながら、上記の4つの一般的なカテゴリーへの本発明の態様の分割は、単に説明/組織化目的のためのものであり、工程の相互依存の推定などを為すべきではない。再び、必要に応じて、他の工程(類似するものおよび異なるものの両方)が本発明の方法(例えば、インキュベーションのための方法、例えば、31℃での2回目の卵のインキュベーション)と共に用いられることが理解されるであろう。
【0048】
上記のように、考察および説明を容易にするために、ワクチン製造の種々の工程を、4つの広い群を含むものとして考えることができる。第1群は、再集合体の同時感染、再集合、選択、および再集合体のクローニングなどの態様を含む。
【0049】
1群
本明細書で1群に属するものとして広く分類されるワクチン組成物製造の態様は、例えば、所望の再集合したウイルスを特異的に製造するためのマスタードナーウイルスおよび1種以上の野生型ウイルス;好適な再集合したウイルスの選択;および選択された再集合したウイルスのクローニングを含む、細胞培養系の同時感染の最適化に関する方法および組成物を含む。インフルエンザウイルス株の再集合は当業者にはよく知られている。インフルエンザA型ウイルスおよびインフルエンザB型ウイルスの両方の再集合を、細胞培養物および卵の両方において用いて、再集合したウイルス株を産生させた。例えば、Tannockら、「A/レニングラード/134/17/57ドナー株から誘導された弱毒化低温適合性インフルエンザA型再集合体の調製および特性評価(Preparation and characterisation of attenuated cold-adapted influenza A reassortants derived from the A/Leningrad/134/17/57 donor strain)」、Vaccine (2002) 20:2082-2090を参照されたい。また、インフルエンザ株の再集合は、プラスミド構築物を用いても示されている。例えば、上記で引用されたPCT公開WO 03/091401を参照されたい。
【0050】
再集合は、簡単に述べると、一般的には異なるウイルスの遺伝子セグメントの混合(例えば、卵または細胞培養物における混合)を含む。例えば、インフルエンザB型ウイルス株の典型的な8つのセグメントを、例えば、目的のエピトープを有する野生型株と、例えば、低温適合性株を含む「ドナー」株との間で混合することができる。2つのウイルス型間の再集合は、特に、1つのセグメントに関する野生型エピトープ株、および他のセグメントに関する低温適合性株を含むウイルスをもたらすことができる。不幸なことに、所望の再集合体を作製するためには、時には多数の再集合を行う必要がある。再集合させた後、ウイルスを選択することもできる(例えば、所望の再集合体を発見するため)。次いで、所望の再集合体をクローニングすることができる(例えば、数を拡張する)。
【0051】
インフルエンザB型ウイルスの所望の再集合体の伝統的な最適化、選択、およびクローニングは、典型的には、ウイルス株を細胞培養物(例えば、CEK細胞)中に同時感染させた後、例えば、親ウイルスの1つに由来する材料に対する好適な抗体を用いて選択し(通常は卵中で行う)、ウイルスをクローニングまたは増殖などするが、典型的には、これを細胞培養中で行う。しかしながら、そのような伝統的な再集合は、所望のセグメント混合物を作製するために、数千の再集合が必要であるという欠点を提供する。そのような再集合を行う場合、真に無作為な再集合が最終結果ではないことは明らかである。換言すれば、プロセスを偏らせる圧力が前記系に存在する。しかしながら、インフルエンザA型株については、そのようなプロセスはそのような偏りを有さないようである。A型株については、株の同時感染(典型的には、CEK細胞などの細胞培養中での同時感染)を行った後、同時に、また、典型的には細胞培養中で選択およびクローニングする。
【0052】
再集合の最適化
1群中の工程を用いる種々の実施形態は、再集合プロセスを最適化して、必要とされる再集合の数などを減少させる(およびかくして、ワクチン製造プロセスの効率/安定性を増加させる)ことができる。そのような最適化技術を用いる工程は、典型的には、インフルエンザB型株の再集合を用いて具体化され、典型的には、細胞培養物、例えば、CEK細胞中で行われる。例えば、PCT公開WO 05/014862を参照されたい。
【0053】
インフルエンザウイルスの再集合の他の方法は、必要に応じて、マスタードナーウイルス(MDV)と野生型ウイルスの希釈物、例えば、それぞれの溶液の濃度を問わず、1:5希釈物を混合した後、25℃および33℃で24および48時間インキュベートすることができる。そのような手法は、インフルエンザA型株については許容されることが多いが、インフルエンザB型株は、典型的にはそのようなプロトコルを用いる場合、陽性の結果を与えない。例えば、適切な6:2の組合せ(すなわち、MDV由来の6個の遺伝子ならびに野生型ウイルス由来のNAおよびHAの2個の遺伝子)を達成するためには、数千の再集合を行わなければならないことが多い。
【0054】
再集合体の選択およびクローニング
1群中の工程はまた、再集合したインフルエンザウイルスの選択をも含む。再集合したインフルエンザA型株を、細胞培養物(例えば、CEK細胞)または卵中で選択することができる。しかしながら、再集合したインフルエンザB型株は、細胞培養物中で再集合した場合(例えば、CEK細胞中で選択した場合)、問題を提供する。CEK細胞は、インフルエンザB型株中のM遺伝子と干渉し、かくして、全体の産生を低下させると考えられる。ワクチン組成物製造の様々な方法(例えば、PCT公開WO 05/014862を参照)は、ウイルス再集合のための種々の工程、例えば、選択などを用いる。必要に応じて、そのような種々の工程を用いて、本明細書に記載のワクチン組成物のためのウイルスなどを作製することができる。
【0055】
再集合の特性評価
ウイルス/ワクチン製造のさらに他の方法は、高効率一本鎖コンフォメーション多型/キャピラリー電気泳動(SSCP/CE)アッセイを用いて、本明細書で用いられるインフルエンザウイルスの遺伝子群を決定する。インフルエンザウイルスは、8個の遺伝子セグメントを含み、上記のように、1個の細胞の2種の異なるインフルエンザ株による同時感染は、それぞれの親とは異なる新規な遺伝子群を有する再集合体ウイルスをもたらし得る。かくして、いくつかの方法は、SSCP/CEアッセイを用いて、多数のインフルエンザウイルスサンプルの遺伝子セグメント群を迅速に決定することができる。このインフルエンザウイルス遺伝子セグメントを、必要に応じて、8個のセグメントの各々に特異的な蛍光標識プライマーを用いるRT-PCRにより増幅する。また、Arvinら(2000)、J. Clin. Micro. 38(2): 839-845も参照されたい。
【0056】
細菌夾雑の防止
ウイルス/ワクチン製造のいくつかの方法は、インフルエンザウイルスを産生させる卵または他の宿主細胞培養物の微生物の夾雑を検出および/または防止/検出するための工程を含んでもよい。本発明の微生物検出戦略は、迅速で高効率な微生物検出にとって有用であり、かくして、多くの他の工程についてと同様、ウイルス/ワクチン製造における効率を増加させ、産生を増加させるのに有用である。
【0057】
必要に応じて本発明と共に用いることができる、多くの現在のインフルエンザワクチン製造戦略は、成分として、特定の病原体を含まない受精鶏卵中でのインフルエンザウイルス増殖のための伝統的な方法を使用する。微生物夾雑の可能性は、卵中でのウイルスの産生におけるいくつかの点で生じ得る。不幸なことに、鶏卵は、その天然の叢の一部として、その卵殻の外側にいくらかの微生物を有し得る。また、鶏胚の発達中に卵殻内に封入された微生物を有する可能性もある。受精鶏卵を、胚の発達のために高湿度中37℃でインキュベートし、同様に、多くの型の微生物夾雑物のための主要なインキュベーション条件を構成する。卵に接種するために卵殻を穿刺する場合、微生物夾雑の別の可能性のある時間が生じる。ウイルス接種の前に、卵にアルコールを頻繁に噴霧する場合でさえ、依然として微生物が卵の中に進入する機会がある。
【0058】
卵中で2〜3日間ウイルスを増殖させた後、典型的には、卵内のウイルスを含む尿膜腔液の手動による収穫のために、卵殻の頂上を除去する。上記を参照されたい。この収穫は、微生物夾雑が発生する別の点である。不幸なことに、そのような夾雑しているバイオバーデン(bioburden)を含む卵は検出を逃れ、MPA試験の失敗に起因するロット全体の拒絶を最小化するために複数のボトル中にプールする必要がある。典型的には、3つのインフルエンザ株をワクチン製造において用いるため、3つの株の混合が最終的な容量のために必要である。製造過程のMPA(微生物学的純度アッセイ)試験を、例えば、ウイルス収穫時に行った後、微生物を含まない製品を確保するために混合および充填に用いる。
【0059】
インキュベーションの後、「伝統的な」検卵方法を用いて、未受精卵およびおそらく自然の原因または微生物夾雑に起因して死んだかもしれない死んだ卵を同定する(すなわち、死んだ卵はウイルスの感染性および/または微生物の増殖に起因して発生し、これらは両方ともそのような卵の検出および除去を必要とする)。検卵は、例えば、暗室中で光源の前に卵を保持して、発達中の胚の可視化を可能にするプロセスを含む。死んだ卵を、ウイルス接種から排除する。
【0060】
さらに、微生物夾雑は、例えば、出発宿主細胞を、該宿主細胞の最初の培養前に微生物により感染させることができる場合、細胞培養物中でのウイルスの産生におけるいくつかの点で生じ得る。マスター細胞バンク(MCB)の調製が、ワクチン材料のためのウイルスの製造における使用にとって必須である。MCBを幅広く試験して、微生物剤の証拠がないことを確実にし、必要に応じて、MCBを腫瘍原性および/または癌原性について試験することができる。あるいは、微生物を、宿主細胞を培養するのに用いられる増殖容器(例えば、発酵器)の開口を要する任意の工程の間に導入することができる。増殖容器の開口を要し得る工程としては、例えば、培養物へのプロテアーゼまたは他の補給物質の任意の添加の間および宿主細胞のウイルス感染の間の工程が挙げられる。増殖容器の開口を最小化するために設計された手順の開発と組合わせた滅菌培地および設備の使用が、夾雑の危険性を最小化するのに必須である。
【0061】
上記の点から認められるように、微生物夾雑の検出は、インフルエンザウイルスの製造の間の複数の工程で必要となり得る。鳥類の微生物および環境微生物を排除するか、もしくは減少させる必要があり、また環境微生物およびヒト微生物の導入を排除もしくは減少させる必要がある。夾雑している微生物の検出のための現在の方法としては、例えば、コンペンディアル(compendial)法(MPAおよびバイオバーデン)が挙げられる。現在の方法としては、例えば、卵の接種前後の間での検卵(典型的には、約500個の卵/時間/人の速度で手動で行う);典型的には、手動であり、MPAについては約14日かかり、バイオバーデンについては約3日かかるMPAおよびバイオバーデン試験(MCBおよびウイルス収穫物の調製の間に行う);典型的には、手動で行い、約28日かかる(ウイルス収穫の間に行う)マイコプラズマ試験;ならびに典型的には手動であり、約56日かかる(ウイルス収穫の間に行う)マイコバクテリア試験が挙げられる。また、本発明と共に使用することができる様々な技術の説明については、例えば、PCT公開WO 05/014862を参照されたい。
【0062】
2群
2群に分類されるウイルス/ワクチン製造の態様は、さらなる精製およびウイルス増殖などを含む。再集合体(例えば、6:2ウイルス)の正確な再集合およびクローニングのプロセスの後、そのような再集合したウイルス粒子を孵化鶏卵中でさらに精製し、正確なクローンを大量に増殖させて(再び、鶏卵中での増殖を介して)、マスターウイルス株(MVS)またはマスターウイルスシードを作製し、これを、次にさらに増殖させて、マスターワーキングウイルス株(MWVS)または製造業者のワーキングウイルスシードを作製する。卵からのウイルス粒子の精製およびウイルス粒子の量を拡張するためにより多くの卵に接種するためのそのような精製されたウイルスの使用の多くの態様が当業者にはよく知られている。多くのそのような技術は、ウイルス粒子の現在の製造において一般的であり、少なくとも40年間用いられてきた。例えば、Reimerら、「ゾーン遠心分離を用いるインフルエンザウイルスの精製(Influenza virus purification with tha zonal ultracentrifuge)」、Science 1966, 152:1379-81を参照されたい。精製プロトコルは、例えば、スクロース勾配(例えば、10〜40%スクロース)中での超遠心などを含んでもよい。また、本明細書に注記されるように、他の群に列挙された他の手順なども、必要に応じて2群、例えば、微生物夾雑の防止などの中に存在させてもよい。
【0063】
3群
3群の表題の下に分類されるウイルス/ワクチン製造の態様は、例えば、孵化卵または他の宿主細胞の条件化(例えば、ウイルス感染した卵または他の宿主細胞のインキュベーションに関与する特定の取り扱い条件および環境条件)ならびに卵の尿膜腔液または宿主細胞の培養上清からのインフルエンザウイルスの収穫および清澄化を含む。
【0064】
例えば、ワクチン中で使用しようとする再集合したウイルスを含む卵の条件化、洗浄、検卵、およびインキュベーション;そのような卵の接種、密閉化など;そのような卵の検卵;卵からのウイルス溶液の収穫(例えば、尿膜腔液);宿主細胞の培養および接種;宿主細胞からのウイルス溶液の収穫(例えば、細胞培養上清);ならびにウイルス溶液の清澄化を全て、そのようなカテゴリーに分類することができる。再び、2群中の工程に適用可能ないくつかの技術は3群中の工程(例えば、検卵など)にも等しく適用可能であることに留意すべきである。3群を含むウイルス/ワクチン製造のいくつかの態様は当業者にはよく知られている。ウイルス製造における検卵の様々な態様、ならびに卵へのウイルスの接種およびそのような卵の洗浄、インキュベーションなどは、卵中でのウイルス/ワクチンの製造においてよく知られた技術である。勿論、そのようなよく知られた技術が、本発明のユニークで革新的な態様と組合わせて用いられることは理解されるであろう。再び、PCT公開WO 05/014862は、本発明の方法および組成物と共に用いることもできるロッキングなどのさらなる工程を与える。他の類似する工程は、組成物の特異的濾過および加温を含んでもよく、再び、PCT公開WO 05/014862を参照されたい。
【0065】
濾過および加温
再び、PCT公開WO 05/014862は、必要に応じて、本発明の方法および組成物と共に用いることができる他の濾過および加温工程をも与える。記載のように、FluMist(商標)製造プロセスは、孵化鶏卵を用いて、マスターウイルスシード(MVS)、製造業者のワーキングウイルスシード(MWVS)およびウイルス収穫物(VH)を作製することができる。このシードおよびウイルス収穫物はバイオバーデン(典型的には、細菌夾雑物)を含んでもよく、これはシードまたはバルクウイルス製品ロットがワクチン製造プロセスにおいて拒絶される原因となり得る。勿論、用いる特定の製品の型、大きさなどの特定の一覧または説明は、具体的にそうであると述べない限り、本発明に対する限定と考えるべきではないことが理解されるであろう。
【0066】
4群
ワクチン製造の態様の4群は、例えば、安定化に主に関連する工程(例えば、成分の添加、バッファー/NAF比などの変化を介する)およびウイルス含有溶液の有効性/無効性のアッセイを含む。いくつかの実施形態においては、本発明の最終ウイルス溶液/ワクチンは、インフルエンザワクチン接種時期を通して「フィールド上」(例えば、2〜8℃、4℃、5℃などで冷蔵した場合、販売および商品化に際して)での保存を可能にするのに十分な時間(例えば、典型的には、北半球ではほぼ9月から3月まで)、液体形態で安定である生ウイルスを含んでもよい。かくして、ウイルス/ワクチン組成物を、保存期間に渡って、許容し得る速度でその効力を保持するか、またはその効力を喪失するように設計する。他の実施形態においては、そのような溶液/ワクチンは、約2℃〜約8℃、例えば、冷蔵庫の温度で、液体形態で安定である。かくして、本発明および本発明の方法を介して製造されたウイルス/ワクチンを、そのような手順などにより、および/またはそのような手順などを用いて製造することができる。再び、PCT公開WO 05/014862を参照されたい。
【0067】
ウイルス収穫物の濃縮/ダイアフィルトレーション
ワクチン組成物製造のいくつかの方法においては、必要に応じて、ウイルス収穫物を好適なカラムを用いて濃縮する。PCT公開WO 05/014862を参照されたい。
【0068】
安定剤/バッファー
ワクチン組成物製造は、必要に応じて、目的のウイルスおよび、例えば、スクロース、アルギニン、ゼラチン、EDTAなどの組合せを含むNAF(典型的には、未分画のNAF)の様々な希釈物を含んでもよい。例えば、異なるワクチン製剤において可能な種々の組合せについては、例えば、PCT公開WO 05/01486を参照されたい。そのような方法および組成物は、特定の実施形態においては、所望の温度(例えば、典型的には、4℃、5℃、8℃、約2℃〜約8℃または2℃以上など)で、選択された時間(典型的には、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも15ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも24ヶ月など)に渡って安定である(すなわち、効力の許容不可能な喪失を示さない)。
【0069】
いくつかの製剤においては、組成物は、ゼラチンまたはゼラチン関連産物および/もしくはゼラチン誘導産物(例えば、ゼラチンヒドロシレート)と組合わせるか、またはこれらの代わりに、例えば、アルギニンの安定剤(約7.0〜約7.2のpHのもの)を含んでもよい。再び、PCT公開WO 05/014862を参照されたい。また、多くのウイルス溶液/ワクチン溶液においては、必要に応じて、SPGの基本溶液(スクロース、リン酸カリウムおよびグルタミン酸一ナトリウム)を用いる。
【0070】
再び、PCT公開WO 05/014862は、ウイルス/ワクチン組成物安定化の他の/さらなる方法、例えば、NAFレベルの操作などを与える。
【0071】
定義
特に定義しない限り、全ての科学用語および技術用語は、それらが属する分野において一般的に用いられるものと同じ意味を有すると理解される。本発明の目的のために、以下の用語を下記に定義する。
【0072】
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」および「核酸配列」とは、一本鎖もしくは二本鎖のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマー、またはそのキメラもしくは類似体を指す。本明細書で用いられる当該用語は、必要に応じて、天然のヌクレオチドと類似する様式で一本鎖核酸にハイブリダイズする点で天然のヌクレオチドの本質的な性質を有する天然のヌクレオチドの類似体のポリマーを含む(例えば、ペプチド核酸)。特に指摘しない限り、特定の核酸配列は、必要に応じて、明確に指摘された配列に加えて、相補配列を包含する。
【0073】
用語「遺伝子」は、生物学的機能に関連する任意の核酸を指すのに幅広く用いられる。かくして、遺伝子は、コード配列および/またはそれらの発現にとって必要な調節配列を含む。用語「遺伝子」は、特定のゲノム配列、ならびにそのゲノム配列によりコードされたcDNAまたはmRNAに適用される。
【0074】
遺伝子はまた、例えば、他のタンパク質のための認識配列を形成する発現されない核酸セグメントをも含む。発現されない調節配列としては、転写因子などの調節タンパク質が結合し、隣接するか、または近隣の配列の転写をもたらす、「プロモーター」および「エンハンサー」が挙げられる。「組織特異的」プロモーターまたはエンハンサーは、特定の組織型または細胞型における転写を調節するものである。
【0075】
用語「ベクター」は、核酸を、生物、細胞、または細胞成分間で増殖させ、および/または導入することができる手段を指す。ベクターとしては、自己複製するか、または宿主の染色体中に組込むことができる、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、ファージミド、トランスポゾン、および人工染色体が挙げられる。ベクターは、自己複製しない、裸のRNAポリヌクレオチド、裸のDNAポリヌクレオチド、同じ鎖内でDNAおよびRNAの両方から構成されるポリヌクレオチド、ポリリジンにコンジュゲートされたDNAもしくはRNA、ペプチドにコンジュゲートされたDNAもしくはRNA、リポソームにコンジュゲートされたDNAなどであってもよい。
【0076】
「発現ベクター」は、そこに含まれる核酸の発現、ならびにその複製を促進することができる、プラスミドなどのベクターである。典型的には、発現させようとする核酸を、プロモーターおよび/またはエンハンサーに「機能し得る形で連結」し、該プロモーターおよび/またはエンハンサーによる転写調節制御に供する。
【0077】
「二方向発現ベクター」は、発現を両方の方向で開始させ、例えば、プラス(+)もしくはセンス鎖、およびマイナス(-)もしくはアンチセンス鎖RNAの両方の転写をもたらすことができるような、2つのプロモーター間に位置する核酸に関して反対の向きにある2つの代替プロモーターを特徴とする。
【0078】
本明細書の文脈において、用語「単離された」とは、通常はその天然の環境において、それに付随するか、またはそれと相互作用する成分を実質的に含まない、核酸もしくはタンパク質などの生物学的材料を指す。必要に応じて、単離された材料は、その天然の環境、例えば、細胞中の材料には見出されない材料を含む。例えば、材料が、細胞などのその天然の環境にある場合、その材料は、その環境で見出される材料に対して天然ではない細胞中の位置(例えば、ゲノムまたは遺伝子エレメント)に置かれている。例えば、天然の核酸(例えば、コード配列、プロモーター、エンハンサーなど)は、それを、その核酸に対して天然ではないゲノムの遺伝子座(例えば、プラスミドもしくはウイルスベクターなどのベクター、またはアンプリコン)に非天然の手段により導入する場合、単離されるようになる。そのような核酸を、「異種」核酸とも呼ぶ。
【0079】
用語「組換え」とは、材料(例えば、核酸もしくはタンパク質)を、人工的または合成的(非天然的)に変化させたことを示す。この変化を、その天然の環境または状態内の材料に対して行うか、またはそれから除去することができる。具体的には、ウイルス、例えば、インフルエンザウイルスに関して言及する場合、それは組換え核酸の発現により産生される場合、組換えである。
【0080】
ウイルスに関して言及する場合、用語「再集合体」は、ウイルスが、2種以上の親ウイルス株または起源から誘導された遺伝子および/またはポリペプチド成分を含むことを示す。例えば、7:1再集合体は、第1の親ウイルスから誘導された7個のウイルスゲノムセグメント(または遺伝子セグメント)、および、例えば、第2の親ウイルスに由来する、血球凝集素またはニューラミニダーゼをコードする1個の相補的ウイルスゲノムセグメントを含む。6:2再集合体は、6個のゲノムセグメント、最も一般的には、第1の親ウイルスに由来する6個の内部遺伝子、および異なる親ウイルスに由来する、例えば、血球凝集素およびニューラミニダーゼなどの2個の相補的セグメントを含む。
【0081】
異種または単離された核酸に関して言及する場合、用語「導入された」とは、核酸を細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチドもしくはミトコンドリアDNA)中に組込み、自律的レプリコンに変換するか、または一過的に発現させる(例えば、トランスフェクトされたmRNA)ことができる真核または原核細胞中への該核酸の組込みを指す。この用語は、「感染」、「トランスフェクション」、「形質転換」および「形質導入」などの方法を含む。本発明の文脈においては、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈降法、脂質媒介性トランスフェクション(リポフェクション)などの様々な方法を用いて、核酸を原核細胞中に導入することができる。
【0082】
用語「宿主細胞」は、ベクターなどの異種核酸を含み、該核酸の複製および/または発現を支援する細胞を意味する。宿主細胞は、大腸菌などの原核細胞、または酵母、昆虫、両生類、鳥類もしくはヒト細胞などの哺乳動物細胞などの真核細胞であってよい。本発明の文脈における宿主細胞の例としては、Vero(アフリカミドリザル腎臓)細胞、BHK(ベビーハムスター腎臓)細胞、一次ニワトリ腎臓(PCK)細胞、Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞、Madin-Darbyウシ腎臓(MDBK)細胞、293細胞(例えば、293T細胞)、およびCOS細胞(例えば、COS1、COS7細胞)が挙げられる。
【0083】
インフルエンザウイルス
本明細書に記載の組成物および方法は、ワクチンのためのインフルエンザウイルスの製造に主に関する。インフルエンザウイルスは、断片化された一本鎖RNAゲノムおよびマトリックスタンパク質により並べられた外側のリポタンパク質エンベロープを含む内部リボヌクレオタンパク質コアから作られている。インフルエンザA型およびインフルエンザB型ウイルスはそれぞれ、8個のセグメントの一本鎖マイナスセンスRNAを含む。インフルエンザA型ゲノムは、11個のポリペプチドをコードする。セグメント1〜3は、RNA依存的RNAポリメラーゼを作る3つのポリペプチドをコードする。セグメント1は、ポリメラーゼ複合体タンパク質PB2をコードする。残りのポリメラーゼタンパク質PB1およびPAは、それぞれセグメント2およびセグメント3によりコードされる。さらに、いくつかのインフルエンザ株のセグメント1は、PB1コード領域内の代替的な読み枠から産生される、小さいタンパク質、PB1-F2をコードする。セグメント4は、感染中の細胞接着および進入に関与する血球凝集素(HA)表面糖タンパク質をコードする。セグメント5は、ウイルスRNAに関連する主要な構造成分であるヌクレオキャプシドヌクレオタンパク質(NP)ポリペプチドをコードする。セグメント6は、ニューラミニダーゼ(NA)エンベロープ糖タンパク質をコードする。セグメント7は、別々にスプライスされたmRNAから翻訳される、M1およびM2と呼ばれる2つのマトリックスタンパク質をコードする。セグメント8は、選択的にスプライスされたmRNA変異体から翻訳される2つの非構造タンパク質、NS1およびNS2をコードする。
【0084】
インフルエンザB型の8個のゲノムセグメントは、11個のタンパク質をコードする。3つの最も大きい遺伝子は、RNAポリメラーゼ、PB1、PB2およびPAの成分をコードする。セグメント4は、HAタンパク質をコードする。セグメント5は、NPをコードする。セグメント6は、NAタンパク質およびNBタンパク質をコードする。両タンパク質、NBおよびNAは、2シストロン性mRNAの重複する読み枠から翻訳される。インフルエンザB型のセグメント7は、2つのタンパク質:M1およびBM2をもコードする。最も小さいセグメントは、完全長RNAから翻訳されるNS1、およびスプライスされたmRNA変異体から翻訳されるNS2の2つの産物をコードする。
【0085】
インフルエンザウイルスワクチン
歴史的には、インフルエンザウイルスワクチンは関連株の経験的予測に基づいて選択されたウイルス株を用いて、孵化鶏卵において主に製造されてきた。より最近では、認可された弱毒化温度感受性原株の文脈において選択された血球凝集素およびニューラミニダーゼ抗原を組込んだ再集合体ウイルスが製造されてきた。鶏卵中での複数回の継代を介するウイルスの培養後、インフルエンザウイルスを回収し、必要に応じて、例えば、ホルムアルデヒドおよび/またはβ-プロピオラクトンを用いて不活化する(またはあるいは、弱毒化生ワクチン中で用いる)。
【0086】
しかしながら、この様式でのインフルエンザワクチンの製造はいくつかの重要な懸案事項を有する。例えば、鶏卵から残存する夾雑物は高度に抗原性および/または発熱性であってよく、投与に際して有意な副作用を頻繁にもたらし得る。かくして、別の方法は、いくらかの割合の卵の成分を動物を含まない培地と置き換えることを含む。より重要なことに、ワクチン製造について指定されたウイルス株を選択し、典型的には次の流行期の前の月に配布して、インフルエンザワクチンの製造および不活化のための時間を可能にしなければならない。再び、例えば、製造ロスを減少させるための、保存時間中での安定性および/またはより都合のよい温度(例えば、約2〜8℃の冷蔵庫温度)での保存の安定性における任意の改善が、かくして全く望ましい。
【0087】
細胞培養において組換えおよび再集合体ワクチンを製造する試みは、ワクチン製造について認可されたいくつかの株が標準的な細胞培養条件下で効率的に増殖できないことによって妨害されてきた。かくして、本発明者およびその共同研究者らによる従来の研究は、ベクター系、ならびに培養液中で組換えおよび再集合体ウイルスを産生させ、かくして、1つまたは多くの選択された抗原性のウイルス株に対応するワクチンを迅速に製造することができるようにするための方法を提供した。例えば、上記で引用されたPCT公開WO 03/091401を参照されたい。勿論、必要に応じて、そのような再集合体を、鶏卵中でさらに増幅する。典型的には、培養液を、制御された湿度およびCO2下、温度が35℃を超えないことを確実にするための温度自動調節器などの温度調節器を用いて一定の温度で、細胞培養インキュベーターなどの系において維持する。そのような先駆的研究、ならびに他のワクチン製造を、本発明の全部または一部を用いてさらに最適化することができる。
【0088】
再集合体インフルエンザウイルスを、マスターインフルエンザウイルスのゲノムセグメントに対応するベクター(例えば、ウイルス、プラスミドなど)のサブセットを、目的の株(例えば、目的の抗原性変異体)から誘導された相補的セグメントと共に導入することにより容易に取得することができる。典型的には、原株を、ワクチン投与に関連する望ましい特性に基づいて選択する。例えば、ワクチン製造、例えば、弱毒化生ワクチンの製造のために、マスタードナーウイルス株を、弱毒化された表現型、低温適合性および/または温度感受性について選択することができる。
【0089】
FluMist(登録商標)
以前に述べたように、インフルエンザワクチンの多くの例および型が存在する。インフルエンザワクチンの例は、インフルエンザ疾患から子供および成人を防御する生の弱毒化ワクチンであるFluMistである(Belsheら(1998)、「子供における生の、弱毒化、低温適合性、三価、鼻腔内インフルエンザウイルスワクチンの効率(The efficacy of live attenuated, cold-adapted, trivalent, intranasal influenza virus vaccine in children)」、N. Engl. J. Med. 338:1405-12; Nicholら(1999)、「健常な労働している成人における生の、弱毒化鼻腔内インフルエンザウイルスワクチンの効率:無作為化制御試験(Effectiveness of live, attenuated intranasal influenza virus vaccine in healthy, working adults: a randomized controlled trial)」、JAMA 282:137-44)。典型的な実施形態においては、本発明の方法および組成物を、必要に応じて、FluMistワクチンの製造に適合させるか、またはそれと共に用いる。しかしながら、当業者であれば、本明細書に記載の工程/組成物を、類似するか、または異なってさえいるウイルスワクチンおよびそれらの組成物の製造にも適用可能であることを理解できるであろう。
【0090】
FluMist(商標)ワクチン株は、例えば、ワクチンを、一般的なマスタードナーウイルス(MDV)に由来する、6個の遺伝子セグメント、PB1、PB2、PA、NP、MおよびNSに沿ってアドレッシングさせる野生型株から誘導されたHAおよびNA遺伝子セグメントを含む。FluMistのインフルエンザA型株のMDV(MDV-A)を、連続的により低い温度で一次ニワトリ腎臓組織培養物中での野生型A/アナーバー/6/60(A/AA/6/60)株の連続継代により作製した(Maassab(1967)、「25℃でのインフルエンザウイルスの適合および増殖特性(Adaptation and growth characteristics of influenza virus at 25 degrees C)」、Nature 213:612-4)。MDV-Aは、25℃で効率的に複製する(ca、低温適合性)が、その増殖は38および39℃では制限される(ts、温度感受性)。さらに、このウイルスは感染したフェレットの肺においては複製しない(att、弱毒)。ts表現型は、気道の最も冷たい領域以外の全部におけるその複製を制限することにより、ヒトにおけるワクチンの弱毒化に寄与すると考えられる。この特性の安定性が、動物モデルおよび臨床試験において証明されてきた。化学的突然変異誘発により作製されたインフルエンザ株のts表現型とは対照的に、MDV-Aのts特性は、感染したハムスターの継代後に、または子供からの流れた単離物において復帰しない(最近の総論については、Murphy & Coelingh (2002)、「弱毒化生低温適合性インフルエンザA型およびB型ウイルスワクチンの開発および使用の基礎をなす原理(Principles underlying the development and use of live attenuated cold-adapted influenza A and B virus vaccines)」、Viral Immunol. 15:295-323を参照されたい)。
【0091】
12種の別の6:2再集合体株を含む20,000人を超える成人および子供における臨床試験により、これらのワクチンが弱毒化されており、安全で、および有効であることが示された(Belsheら(1998)、「子供における生の、弱毒化、低温適合性、三価、鼻腔内インフルエンザウイルスワクチンの効率(The efficacy of live attenuated, cold-adapted, trivalent, intranasal influenza virus vaccine in children)」、N. Engl. J. Med. 338:1405-12;Boyceら(2000)、「健常な成人に鼻腔内投与されたアジュバント化および非アジュバント化サブユニットインフルエンザワクチンの安全性および免疫原性(Safety and immunogenicity of adjuvanted and unadjuvanted subunit influenza vaccines administered intranasally to healthy adults)」、Vaccine 19:217-26;Edwardsら(1994)、「インフルエンザA型疾患の予防のための低温適合性および不活化ワクチンの無作為化制御試験(A randomized controlled trial of cold adapted and inactivated vaccines for the prevention of influenza A disease)」、J. Infect. Dis. 169:68-76; Nicholら(1999)、「健常な労働している成人における生の、弱毒化鼻腔内インフルエンザウイルスワクチンの効率:無作為化制御試験(Effectiveness of live, attenuated intranasal influenza virus vaccine in healthy, working adults: a randomized controlled trial)」、JAMA 282:137-44)。MDV-Aの6個の内部遺伝子および野生型ウイルスの2個のHAおよびNA遺伝子セグメントを担持する再集合体(すなわち、6:2再集合体)は、ca、tsおよびatt表現型を常に維持する(Maassabら(1982)、「フェレットにおける低温組換えインフルエンザウイルスワクチンの評価(Evaluation of a cold-recombinant influenza virus vaccine in ferrets)」、J. Infect. Dis. 146:780-900)。しかしながら、インフルエンザのB型株を用いるそのような再集合したウイルスの製造はより困難である。
【0092】
最近の研究(例えば、上記で引用された、PCT公開WO 03/091401を参照)により、クローニングされたcDNAに完全に由来するインフルエンザB型ウイルスの作製のための8個のプラスミド系、ならびに鼻腔内投与にとって有用な生ウイルスワクチン製剤などのワクチン製剤にとって好適な弱毒化生インフルエンザA型およびB型ウイルスの製造のための方法が示された。本発明はまた、B型株製造の改良された方法を提供する。
【0093】
以前に記載された系および方法は、FluMist(登録商標)などの鼻腔内投与にとって好適なワクチンなどの弱毒化生ワクチンなどのワクチンとしての使用にとって好適なウイルスなどの組換えおよび再集合体インフルエンザAおよびB型ウイルスの迅速な製造にとって有用である。必要に応じて、本明細書に記載の本発明の方法を、例えば、より安定な、堅実な、および生産的な様式でワクチンのためのウイルスを製造するためのワクチン製造のための再集合したインフルエンザウイルスを含む、そのような以前の研究と共に、またはそれと組合わせて用いる。
【0094】
細胞培養物におけるウイルスの複製
以前に述べたように、インフルエンザウイルスを、必要に応じて、細胞培養物中で増殖させることができる。典型的には、ウイルスの増殖を、宿主細胞を一般的に培養する培地組成物中で達成する。インフルエンザウイルスの複製のための好適な宿主細胞としては、例えば、Vero細胞、BHK細胞、MDCK細胞、293細胞およびCOS細胞、例えば、293T細胞、COS7細胞が挙げられる。一般的には、上記の細胞系のうちの2つ、例えば、MDCK細胞および293T細胞もしくはCOS細胞を含む共培養物を、例えば、1:1の比で用いて、複製効率を改善する。典型的には、細胞を、血清(例えば、0.5〜10%ウシ胎児血清)を補給したダルベッコの改変イーグル培地などの標準的な市販の培養培地中、または無血清培地(例えば、Iscove培地、超CHO培地(BioWhittaker)、EX-CELL(JRH Biosciences))、もしくは動物性タンパク質を含まない培地(例えば、PF-CHO(JRH Biosciences)中、制御された湿度および中性に緩衝化されたpH(例えば、7.0〜7.2のpH)を維持するのに好適なCO2濃度下で培養する。必要に応じて、前記培地は、細菌の増殖を防止するための抗生物質、例えば、ペニシリン、ストレプトマイシンなど、および/または追加の栄養素、例えば、L-グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、好ましい増殖特性を促進するための追加の補給物質、例えば、トリプシン、β-メルカプトエタノールなどを含む。
【0095】
培養物中で哺乳動物細胞を維持するための手順は広く報告されており、当業者にはよく知られている。一般的なプロトコルは、例えば、Freshney(1983) Culture of Animal Cells: Manual of Basic Technique, Alan R. Liss, New York; Paul(1975)、Cell and Tissue Culture,第5版, Livingston, Edinburgh; Adams (1980) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Cell Culture for Biochemists, WorkおよびBurdon(編) Elsevier, Amsterdamに提供されている。in vivoでのインフルエンザウイルスの製造における特定の目的の組織培養手順に関するさらなる詳細としては、例えば、Mertenら(1996)、「ワクチン調製のための細胞培養におけるインフルエンザウイルスの製造(Production of influenza virus in cell cultures for vaccine preparation)」、CohenおよびShafferman(編)、Novel Strategies in Design and Production of Vaccinesが挙げられる。さらに、本発明に適合させたそのような手順における変更を、日常的な実験により容易に決定し、それは当業者にはよく知られているであろう。
【0096】
インフルエンザウイルスの製造のための細胞を、血清を含有する培地または無血清培地または動物性タンパク質を含まない培地中で培養することができる。いくつかの場合においては、精製されたウイルスの調製のために、無血清条件または動物性タンパク質を含まない条件下で宿主細胞を増殖させるのが典型的には望ましい。細胞を、基質(例えば、微小担体)上での接着細胞として、またはいかなる基質にも接着させることなく、細胞懸濁液として培養することができる。細胞を、小規模、例えば、25 ml未満の培地、培養チューブもしくはフラスコ中で、または攪拌しながら大きいフラスコ中、回転式ボトル中、もしくはフラスコ、ボトルもしくは反応培養物中の微小担体ビーズ上(例えば、DormacellなどのDEAE-デキストラン微小担体ビーズ、Pfeifer & Langen; Superbead, Flow Laboratories; Hillex、SoloHill、Ann Arborなどのスチレンコポリマー-トリ-メチルアミンビーズ)で培養することができる。微小担体ビーズは、細胞培養物の容量あたり接着細胞増殖のための大きい表面積を提供する小さい球体(直径100〜200ミクロンの範囲)である。例えば、1リットルの培地は、8000 cm2を超える増殖表面を提供する2000万個以上の微小担体ビーズを含んでもよい。ウイルスの商業生産のためには、例えば、ワクチン製造のためには、細胞を生物反応器または発酵器中で培養するのが望ましいことが多い。生物反応器は、1リットル以下から100リットルの過剰量までの容量で利用可能であり、例えば、Cyto3 Bioreactor (Osmonics, Minnetonka, MN); NBS生物反応器(New Brunswick Scientific, Edison, N.J.);B. Braun Biotech International (B. Braun Biotech, Melsungen, Germany)社製の実験室および商業規模の生物反応器が挙げられる。
【0097】
培養容量に拘らず、多くの望ましい態様においては、培養物を好適な温度で維持して、温度依存的マルチプラスミド系(例えば、上記で引用されたPCT公開WO 03/091401を参照)、濾過のためのウイルス溶液の加熱などを用いて、ウイルスの複製ならびに/または組換えおよび/もしくは再集合体インフルエンザウイルスの効率的な回収を確保することが重要である。典型的には、細胞培養系および/または他の溶液の温度を感知し、維持するための調節器、例えば、温度自動調節器、または他の装置を用いて、温度が、好適な期間(例えば、ウイルスの複製など)中、正確なレベルにあることを確保する。
【0098】
いくつかの方法(例えば、再集合したウイルスをベクター上のセグメントから製造しようとする場合)においては、インフルエンザゲノムセグメントを含むベクターを、真核細胞中に異種核酸を導入するための当業界でよく知られた方法、例えば、リン酸カルシウム共沈降法、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、およびポリアミントランスフェクション試薬を用いるトランスフェクションに従って宿主細胞中に導入(例えば、トランスフェクト)する。例えば、プラスミドなどのベクターを、COS細胞、293T細胞またはCOSもしくは293T細胞とMDCK細胞との組合せなどの宿主細胞中に、製造業者の説明書に従ってポリアミントランスフェクション試薬TransIT-LT1(Mirus)を用いてトランスフェクトして、再集合したウイルスなどを製造することができる。約1μgの各ベクターを、160μlの培地、好ましくは、無血清培地中に、200μlの総容量に希釈された約2μlのTransIT-LT1と共に、宿主細胞の集団に導入する。DNA:トランスフェクション試薬混合物を室温で45分間インキュベートした後、800μlの培地を添加する。トランスフェクション混合物を宿主細胞に添加し、細胞を上記のように、または当業者にはよく知られた他の方法を介して培養する。従って、細胞培養物中での組換えまたは再集合体ウイルスの製造のために、8個のゲノムセグメント(PB2、PB1、PA、NP、M、NS、HAおよびNA)の各々を含むベクターを、約20μlのTransIT-LT1と混合し、宿主細胞中にトランスフェクトする。必要に応じて、血清を含む培地を置換した後、無血清培地、例えば、Opti-MEM Iを用いてトランスフェクトし、4〜6時間インキュベートする。
【0099】
あるいは、エレクトロポレーションを用いて、インフルエンザゲノムセグメントを含むそのようなベクターを宿主細胞に導入することができる。PCT公開WO 05/062820を参照されたい。例えば、インフルエンザA型またはインフルエンザB型ウイルスを含むプラスミドベクターを、以下の手順に従ってエレクトロポレーションを用いてVero細胞中に導入するのが好ましい。簡単に述べると、例えば、10%ウシ胎児血清(FBS)を補給した改変イーグル培地(MEM)中で増殖させた約5 x 106個のVero細胞を、0.4 mlのOptiMEM中に再懸濁し、エレクトロポレーションキュベット中に入れる。最大25μlの容量中の20μgのDNAをキュベット中の細胞に添加した後、タッピングにより緩やかに混合する。300ボルト、950μFaradで、28〜33 msecの時間定数で製造業者の説明書(例えば、Capacitance Extender Plusを接続したBioRad Gene Pulser II)に従って、エレクトロポレーションを実施する。細胞を緩やかにタッピングすることにより再混合し、エレクトロポレーションの約1〜2分後、10%FBSを含む0.7 mlのMEMをキュベットに直接添加する。次いで、細胞を、2 ml MEM, 10%FBSを含む標準的な6ウェルの組織培養皿の2個のウェルに移す。キュベットを洗浄して、全ての残存細胞を回収し、洗浄懸濁液を2個のウェルに分割する。最終容量は約3.5 mLである。次いで、細胞をウイルスの増殖を許容する条件下で、例えば、低温適合性株については約33℃でインキュベートする。
【0100】
いくつかの方法(例えば、宿主細胞をワクチン製造のためのウイルスの製造に用いる場合)においては、宿主細胞を培養し、当業界でよく知られた方法に従ってウイルスに感染させる。例えば、培養細胞の感染を、細胞が最適な細胞密度(例えば、用いる培養条件に依存して、約5 x 105〜20 x 106細胞/ml)に達した時に実施するのが好ましい。宿主細胞を、約0.001〜約10の感染多重度(m.o.i.)で(必要に応じて、約0.002〜約0.5のm.o.i.で)感染させる。一般的には、動物細胞中でのウイルスの効率的な複製には、プロテアーゼ(例えば、トリプシンなどのセリンプロテアーゼ)の添加が必要であり、必要に応じて、プロテアーゼを培養液に、感染の直前、同時、または直後に添加してもよい。本発明に従えば、ウイルス感染後、感染した細胞をさらに培養して、一般的には、最大の細胞変性効果または最大量のウイルスを検出することができるまで(例えば、TCID50アッセイおよびQ RT-PCRアッセイ)、33℃未満の温度、例えば、31℃(または必要に応じて、約29℃〜約32℃)でウイルスを複製させる。必要に応じて、感染した細胞の培養を、約2〜約10日間行う。ウイルスを含有する細胞上清を産生させるのに有用な特定の方法は当業界で公知である(例えば、米国特許第4,500,513号、6,656,720号、6,455,298号および6,146,873号を参照されたい)。必要に応じて、他の工程(類似する工程および異なる工程の両方)を本発明の方法と共に用いることが理解されるであろう。
【0101】
キット
本発明の方法および組成物の使用を容易にするために、任意のワクチン成分および/もしくは組成物、例えば、種々の製剤中のウイルスなど、ならびに実験的もしくは治療用ワクチン目的のためのインフルエンザウイルスの包装および感染にとって有用な、バッファー、細胞、培養培地などの追加成分を、キットの形態で包装することができる。典型的には、このキットは、上記成分に加えて、例えば、本発明の方法を実施するための説明書、包装材料、および容器を含んでもよい追加の材料を含む。
【0102】
前記発明を、明確性および理解のためにいくらか詳細に説明してきたが、本開示を読むことから、形態および詳細の様々な変更を、本発明の真の範囲を逸脱することなく為すことができることが当業者には明らかであろう。例えば、上記の全ての技術および器具を、様々な組合せで用いることができる。本出願に引用された全ての刊行物、特許、特許出願、または他の書類は、それぞれ個々の刊行物、特許、特許出願、または他の書類があらゆる目的のために参照により組み入れられるように個々に指示されたのと同じ程度まで、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする。さらに、2004年12月8日に出願された米国特許仮出願第60/634,690号は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】二次インキュベーション温度の関数としてのca B型株のウイルス収量(TCID50/mL)を示す表である。
【図2】二次インキュベーション温度の関数としてのca B型株の収量(TCID50/mL)のグラフである。
【図3】二次インキュベーション温度の関数としてのca B/吉林/20/03のウイルス収量(TCID50/mL)を示す表である。
【図4】29℃〜33℃の温度でインキュベートした卵中で増殖させた場合の特徴的なcaおよびts表現型を発現する種々の低温適合性インフルエンザB型株の表現型に関する表である。
【図5】種々の温度でインキュベートし、感染の72時間後に収穫された感染した卵からの尿膜腔液のHA力価を示す表である。
【図6】種々の温度でインキュベートされた感染した卵の尿膜腔液におけるHAウイルスRNAの量を示す表である。
【図7】コピー数から感染性粒子の量(log10TCID50)を減算することにより決定されたゲノムコピーと感染性ウイルスの比を示す表である。
【図8】31℃および33℃で増殖させた場合のca B/吉林/20/03およびca B/アナーバー/1/94の感染性粒子の比率を示す表である。
【図9】対応するMVSと比較した、33℃(1ロット)および31℃(2ロット)で増殖させたca B/吉林/20/03のヌクレオチド配列を示す表である。
【図10】wt B/吉林/20/03に対して産生された抗血清に関する2つの温度で増殖させたウイルスのHAI力価を比較する表である。
【図11】31℃または33℃で増殖させたca B/吉林/20/03ウイルスによる鼻腔内接種後のフェレットにおけるウイルス複製を示すグラフである。
【図12】31℃または33℃で増殖させたca B/吉林/20/03で免疫したフェレットからの14日目の血清のHAI力価を比較する表である。
【図13】異なる二次インキュベーション温度でSPF卵中で増殖させたca B/吉林/20/03の31℃および33℃の二次継代を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のインフルエンザウイルス粒子を製造する方法であって、
a. 少なくとも1個の宿主卵中に、インフルエンザウイルスのゲノムまたは部分的ゲノムを含む少なくとも1個のベクターを導入すること、
b. 33℃未満の温度で該宿主卵をインキュベートすること、および
c. 該宿主卵から、インフルエンザウイルス粒子を回収すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ウイルスがインフルエンザB型株ウイルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゲノムまたは部分的ゲノムが、弱毒化インフルエンザウイルス、低温適合性インフルエンザウイルス、温度感受性インフルエンザウイルス、弱毒化低温適合性インフルエンザウイルス、または弱毒化温度感受性インフルエンザウイルス、または低温適合性温度感受性インフルエンザウイルス、または弱毒化低温適合性温度感受性インフルエンザウイルスのものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゲノムまたは部分的ゲノムが、ca B/吉林/20/03、PR8、ca B/アナーバー/1/94、B/レニングラード/14/17/55、B/14/5/1、B/ソ連/60/69、B/レニングラード/179/86、B/レニングラード/14/55、またはB/英国/2608/76インフルエンザウイルス株のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
宿主卵がSPF孵化鶏卵を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
宿主卵を31℃〜33℃でインキュベートする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
宿主卵を31℃〜32℃でインキュベートする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
宿主卵を31℃でインキュベートする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法により製造されたインフルエンザウイルス。
【請求項10】
請求項9に記載のウイルスを含む冷蔵庫で安定な組成物。
【請求項11】
請求項9に記載のウイルスを含むインフルエンザワクチン。
【請求項12】
前記ワクチンが液体の弱毒化生鼻腔内ワクチンを含む、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
33℃未満でのインキュベーションから得られる回収されたウイルス粒子が、33℃以上でインキュベートされた同じウイルス粒子から得られる収量よりも多いか、またはそれに等しい収量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
33℃未満でのインキュベーションが31℃でのインキュベーションであり、33℃以上でのインキュベーションが33℃でのインキュベーションである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記収量を、33℃未満でインキュベートされたウイルス粒子を感染させた宿主卵の尿膜腔液のlog10TCID50/mL力価を決定することにより、および33℃でインキュベートされたウイルス粒子を感染させた宿主卵の尿膜腔液のlog10TCID50/mL力価を決定することにより定量する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
31℃でのインキュベーションに由来するlog10TCID50/mL力価が、33℃でのlog10TCID50/mL力価よりも、少なくとも約1.01〜少なくとも約1.10倍大きい、少なくとも約1.025〜少なくとも約1.05倍大きい、または少なくとも約1.03〜少なくとも約1.04倍大きい、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ウイルス粒子が、被験体における免疫応答を誘発し、その応答が33℃以上でのインキュベーションを介して産生されたウイルス粒子により該被験体中で誘発された免疫応答と本質的に類似している、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記被験体がフェレットである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記被験体がヒトである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
インフルエンザウイルスを33℃未満の温度で宿主中でインキュベートすることを含む、インフルエンザウイルス粒子の収量を増加させる方法。
【請求項21】
宿主中の前記インフルエンザウイルスを、31℃〜32℃でインキュベートする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
宿主中の前記インフルエンザウイルスを、約31℃でインキュベートする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記インフルエンザウイルスが低温適合性温度感受性弱毒化インフルエンザウイルスである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記インフルエンザウイルスが、アナーバーB型株インフルエンザの少なくとも1個のvRNAゲノムセグメントを含む、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−522618(P2008−522618A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545587(P2007−545587)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/044267
【国際公開番号】WO2006/063053
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(505396224)メッドイミューン バクシーンズ,インコーポレイティド (13)
【Fターム(参考)】