説明

インフルエンザ組成物

本発明は、インフルエンザ疾患に対して免疫するためのインフルエンザワクチン製剤および加速初回ワクチン接種計画、医学におけるその使用、特に、様々な抗原に対する有効な免疫応答の促進におけるその使用、ならびにその調製方法に関する。特に、本発明は、水中油乳濁液アジュバントと共にインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含むインフルエンザ免疫原性組成物を用いる2回投与加速パンデミックまたは季節性パンデミック初回免疫計画、および加速免疫計画に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、米国特許仮出願第60/992899号および第60/055569号(その開示は参照により本明細書に組み入れられるものとする)の早い方の出願日の利益を請求する。
【0002】
37 C.F.R.6 1.71(E)に準拠する著作権通知
本特許文書の開示の一部は、著作権保護に供する材料を含む。著作権者は、それが米国特許商標局のファイルまたは記録に現れるが、さもなければ何であれ全ての著作権を有するため、特許文書または特許開示のいずれかによるファクシミリ複製物に対する異議を有さない。
【0003】
技術分野
本発明は、インフルエンザ疾患に対して免疫するためのインフルエンザワクチン製剤および加速初回ワクチン接種計画、医学におけるその使用、特に、様々な抗原に対する有効な免疫応答の促進におけるその使用、ならびにその調製方法に関する。特に、本発明は、アジュバント化されていないか、または水中油乳濁液アジュバントと組合わせた、インフルエンザ免疫原性組成物を用いる2回投与の加速されたパンデミックまたは季節性初回免疫計画、および加速された免疫計画に関する。
【背景技術】
【0004】
インフルエンザは、呼吸器飛沫感染を介して拡散するインフルエンザウイルスにより引き起こされる急性の伝染性呼吸器疾患である。合併症を伴わないインフルエンザは、通常は1週間以内に消失する構成的症候および呼吸器症候の突発を特徴とする。特定の人々においては、インフルエンザは存在する医学的症状を悪化させ、命を脅かす合併症をもたらす可能性もある。インフルエンザウイルスは、世界に存在する最も普遍的なウイルスの1つであり、ヒトおよび家畜の両方に影響する。インフルエンザはまた、高齢者および幼児に対する有意な影響を有する。インフルエンザは経済的負担、疾病率および死亡でさえもたらし、それらは有意である。
【0005】
インフルエンザウイルスは、オルトミクソウイルス科に属する断片化ゲノムを有するエンベロープを有するマイナス鎖RNAウイルスである。それらはそのコアタンパク質に基づいて3つの異なる型に分類される:A、BおよびC[Cox NJ, Fukuda K. Influenza. Infect.Dis.Clin.North Am. 1998;12:27-38]。インフルエンザAウイルスは、様々な哺乳動物および鳥類に感染し得るが、B型およびC型は本質的にはヒトに限定される。インフルエンザAおよびBウイルスは主に、ヒト疾患の原因となるが、A型が最も病原性が高い。インフルエンザAおよびBウイルスの主な抗原決定基は、2個の表面糖タンパク質:ノイラミニダーゼ(NA)およびヘマグルチニン(HA)であり、両者ともヒトにおいて免疫応答を引き出すことができる。HAは受容体結合および膜融合に関与する。NAは感染した細胞からのウイルス子孫の切断を容易にし、ウイルス凝集を防止し、粘膜気道上皮を介する移動を助ける。
【0006】
ウイルス株は、起源となる宿主の種、地理学的部位、単離された年、整理番号に従って、ならびに、インフルエンザAについては、HAおよびNAサブタイプの血清学的特性により分類される。16種のHAサブタイプ(H1-H16)および9種のNAサブタイプ(N1-N9)が、インフルエンザAウイルスについて同定されている[Webster RGら、Evolution and ecology of influenza A viruses. Microbiol.Rev. 1992;56:152-179; Fouchier RAら、Characterization of a Novel Influenza A Virus Hemagglutinin Subtype (H16) Obtained from Black-Headed Gulls. J. Virol. 2005;79:2814-2822]。全てのHAおよびNAサブタイプを含むウイルスが、水性鳥類から回収されているが、3種のみのHAサブタイプ(H1、H2およびH3)ならびに2種のNAサブタイプ(N1およびN2)が1918年以来ヒト集団において安定な系列を確立している。1つのみのHAのサブタイプおよび1つのNAが、インフルエンザBウイルスについて認識されている。
【0007】
大流行間期のインフルエンザワクチンは現在、主として孵化鶏卵中で増殖させたウイルスから調製されており、不活化または生弱毒化インフルエンザワクチンである。不活化インフルエンザワクチンは、3つの可能な形態の抗原調製物から構成される:不活化全ウイルス、精製ウイルス粒子を界面活性剤もしくは脂質エンベロープを可溶化するための他の試薬で破壊したサブビリオン(いわゆる「スプリット」ワクチン)または精製されたHAおよびNA(サブユニットワクチン)。これらの不活化ワクチンは現在、筋肉内(i.m.)、皮下(s.c.)、または鼻内(i.n.)投与されている。世界保健機関(WHO)の推奨に従えば、季節性インフルエンザワクチンは通常、3種の同時循環するヒト株に由来する45μgのHA抗原を含む(一元放射免疫拡散法(SRD)により測定) (J.M. Woodら: An improved single radial immunodiffusion technique for the assay of influenza haemagglutinin antigen: adaptation for potency determination of inactivated whole virus and subunit vaccines. J. Biol. Stand. 5 (1977) 237-247; J. M. Woodら、International collaborative study of single radial diffusion and immunoelectrophoresis techniques for the assay of haemagglutinin antigen of influenza virus. J. Biol. Stand. 9 (1981) 317-330))。それらは一般的には、2種のインフルエンザAウイルス株および1種のインフルエンザB株に由来する抗原(例えば、H1N1、H3N2およびB)を含む。多くの場合、標準的な0.5 mlの注射用量は、それぞれの株に由来する(少なくとも)15μgのヘマグルチニン抗原成分を含む。
【0008】
ワクチン接種は、毎年のインフルエンザ流行の制御において重要な役割を果たしている。さらに、パンデミックの間は、抗ウイルス剤が必要性をカバーするのに十分または有効ではないかもしれず、インフルエンザの危険性のある個体数は、大流行間期におけるよりも多く、従って、大量に製造し、効率的に配布し、投与することができる好適なワクチンの開発が必須である。従って、パンデミックの事象においては、ワクチン接種は、新しく出現するパンデミックインフルエンザ株からヒト集団を保護する戦略において役立つであろう。従って、パンデミックワクチンの迅速な開発は、特に緊急性である。パンデミックが発生した場合にその重篤度を低下させる手段が依然として必要である。パンデミックの予防および制御は、株特異的パンデミックワクチンの迅速な生産および世界的配布に大きく依存するであろう。
【0009】
有効な候補「パンデミック様」ワクチンまたは「プレパンデミック」ワクチンを開発する必要性に加えて、インフルエンザ疾患および死亡に対して、免疫学的にナイーブな人々、および究極的には免疫学的にナイーブな集団を保護するための、有効かつ好適なワクチン接種戦略を開発する決定的な必要性が存在する。特に、1)病原性が高い鳥類ウイルスから誘導されるワクチンの製造に関与する労働者を保護するか、または2)季節性もしくはパンデミックインフルエンザウイルスに対して小児集団もしくは高齢者集団などの脆弱な集団を迅速に保護するための好適なワクチン接種戦略を開発する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一実施形態においては、インフルエンザに対するヒト個体もしくは集団の2回投与初回ワクチン接種のための免疫原性組成物であって、14日未満の間隔での2回の初回用量の投与のために調製された前記組成物の製造における、インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物の使用を提供する。関連する態様においては、本発明は、インフルエンザに対するヒト個体もしくは集団における免疫応答を促進するためのインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物を含む2回投与初回免疫原性組成物であって、14日未満の間隔での2回の初回用量の投与のために調製された前記組成物を提供する。別の関連する態様においては、本発明は、ヒト個体もしくは集団においてインフルエンザウイルスに対する一次免疫応答(初回免疫応答)を誘導する方法であって、インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物を含む免疫原性組成物を、14日未満の間隔で、2回の初回用量を投与することを含む前記方法を提供する。
【0011】
別の実施形態においては、本発明は、初回免疫原性組成物中に存在する株の抗原変異体であるインフルエンザ株により引き起こされるインフルエンザ感染の重篤度の低下もしくはその予防のための、本明細書で定義される2回投与初回免疫原性組成物の製造におけるインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物の使用を提供する。関連する態様においては、本発明は、初回免疫原性組成物中に存在する株の抗原変異体であるインフルエンザ株により引き起こされるインフルエンザ感染の重篤度の低下もしくはその予防における使用のための、本明細書で定義されるインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物を含む2回投与初回免疫原性組成物を提供する。別の関連する態様においては、本発明は、インフルエンザ株により引き起こされるインフルエンザ感染の重篤度を低下させるか、またはそれを予防する方法であって、初回組成物が本明細書で定義される2回投与初回免疫原性組成物であり、インフルエンザ感染が前記初回免疫原性組成物中に存在する株のドリフト変異体により引き起こされる、前記方法を提供する。
【0012】
さらに別の実施形態においては、本発明は、本明細書に定義されるように以前に免疫されたヒトまたはヒト集団のインフルエンザに対するワクチン再接種のための免疫原性組成物の製造における、インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物の使用を提供する。関連する態様においては、本発明は、本明細書に定義されるように以前に免疫されたヒト個体または集団のインフルエンザに対するワクチン再接種のためのインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物を含む免疫原性組成物を提供する。別の関連する態様においては、本発明は、本明細書に定義されるように以前に免疫されたインフルエンザに対するヒト個体または集団をワクチン再接種する方法であって、該ヒトまたは集団に、インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物を含む免疫原性組成物を投与することを含む前記方法を提供する。
【0013】
さらなる実施形態においては、本発明は、少なくとも以下の2種の成分:(i)必要に応じてアジュバントと共に製剤化された、第1の(1回目の)用量のインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物;および(ii)必要に応じてアジュバントと共に製剤化された第1の用量のインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物を含むキットであって、前記2回用量が14日未満の間隔内での投与のためのものである、前記キットを提供する。
【0014】
この文書を通して、(a)インフルエンザ感染もしくは疾患の予防のための本明細書で定義される組成物の製造におけるインフルエンザウイルス抗原もしくはその抗原調製物の使用、(b)特許請求された組成物を用いるヒトの治療方法、ならびに(c)インフルエンザ感染もしくは疾患の予防における使用のための本明細書で定義される組成物は互換的に用いられる。
【0015】
本発明の他の態様および利点を、好ましい実施形態の以下の詳細な説明においてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ヒト臨床試験におけるA/ベトナム/1194/2004(H5N1)ワクチン株およびA/インドネシア/05/2005(H5N1)株に対するGMT HI抗体力価を示す。
【図2】ヒト臨床試験におけるD21およびD42でのH5N1 A/ベトナム/1194/2004およびA/インドネシア/05/2005に対するH5N1 HI抗体力価に関する血清変換率を示す。
【図3】ヒト臨床試験におけるワクチン接種後のD21およびD42でのH5N1 A/ベトナム/1194/2004およびA/インドネシア/05/2005に対するH5N1 HI抗体力価に関する血清防御率を示す。
【図4】ヒト臨床試験におけるワクチン接種後のD21およびD42でのH5N1 A/ベトナム/1194/2004およびA/インドネシア/05/2005に対するH5N1 HI抗体力価に関する血清変換係数を示す。
【図5】ヒト臨床試験においてワクチン接種前の血清状態により分析される、D21およびD42でのH5N1 A/ベトナム/1194/2004に対するH5N1 HI抗体力価に関する血清変換率を示す。
【図6】ヒト臨床試験においてワクチン接種前の血清状態により分析される、D21およびD42でのH5N1 A/ベトナム/1194/2004に対するH5N1 HI抗体力価に関する血清防御率を示す。
【図7A】ヒト臨床試験におけるH5N1ワクチン株A/ベトナム/1194/2004に対するCMI応答(インフルエンザ特異的CD4 T細胞)を示す。
【図7B】ヒト臨床試験におけるH5N1ワクチン株A/ベトナム/1194/2004に対するCMI応答(インフルエンザ特異的CD4 T細胞)を示す。
【図7C】ヒト臨床試験におけるH5N1ワクチン株A/ベトナム/1194/2004に対するCMI応答(インフルエンザ特異的CD4 T細胞)を示す。
【図7D】ヒト臨床試験におけるH5N1ワクチン株A/ベトナム/1194/2004に対するCMI応答(インフルエンザ特異的CD4 T細胞)を示す。
【図7E】ヒト臨床試験におけるH5N1ワクチン株A/ベトナム/1194/2004に対するCMI応答(インフルエンザ特異的CD4 T細胞)を示す。
【図8】C57Bl/6マウスにおけるA/ベトナム/1194/2004に対するHI応答を示す。
【図9】C57Bl/6マウスにおけるA/ベトナム/1194/2004に対する中和抗体応答を示す。
【図10】C57Bl/6マウスにおけるA/インドネシア/05/2005に対するHI応答を示す。
【図11】C57Bl/6マウスにおけるA/インドネシア/05/2005に対する中和抗体応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
パンデミック(例えば、H5N1)一価インフルエンザワクチンを用いる加速初回ワクチン接種スケジュールを提供することが本発明の1つの課題である。特に、幼児、子供または高齢者における、季節性多価インフルエンザワクチンを用いる加速初回ワクチン接種スケジュールを提供することが本発明の別の課題である。
【0018】
本発明の第1の態様においては、インフルエンザに対する個体または集団の初回免疫のためのインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含む2回投与初回免疫原性組成物であって、2回初回用量を14日未満の間隔で、または0〜14日間隔で、特に、0〜10日間隔で、もしくは0〜7日間隔で、もしくは0〜3日間隔で投与する、前記組成物を提供する。本発明はさらに、インフルエンザに対するヒト個体または集団の2回投与初回免疫のための一価または多価、例えば、二価、三価もしくは四価アジュバント化免疫原性組成物の製造におけるインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物の使用であって、2回初回用量を14日未満の間隔で、または0〜14日間隔で、特に、0〜10日間隔で、もしくは0〜7日間隔で、もしくは0〜3日間隔で投与する、前記使用に関する。0日間隔とは、2回の初回用量を、同時に、または同じ日の2つの異なる時間、例えば、朝と午後に同じ日に投与することを意味する。2回の注射をほぼ同時に行う場合、それらを被験者の2つの異なる注射部位で有利に行うことができる。
【0019】
関連する態様においては、本発明は、ヒト個体または集団において、インフルエンザウイルスに対する免疫応答、特に、一次免疫応答を誘導する方法であって、インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含む一価アジュバント化免疫原性組成物の2回用量であって、該2回用量を14日未満の間隔で、または0〜14日間隔で、特に、0〜10日間隔で、もしくは0〜7日間隔で、もしくは0〜3日間隔で投与する、前記2回用量を投与することを含む前記方法に関する。
【0020】
1つの特定の実施形態においては、前記2回投与初回免疫原性組成物は、前記個体または集団をインフルエンザに対してプライミングする、すなわち、換言すれば、ナイーブな、または免疫力が低下したヒト個体もしくは集団における免疫応答を促進する。
【0021】
本発明の第2の態様においては、初回免疫原性組成物中に存在する株の抗原変異体であるインフルエンザ株により引き起こされるインフルエンザ感染の重篤度の低下またはその予防における使用のための、本明細書で定義されるインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含む、一価または多価、例えば、二価、三価もしくは四価の2回投与初回免疫原性組成物を提供する。本発明はさらに、初回免疫原性組成物中に存在する株の抗原変異体であるインフルエンザ株により引き起こされるインフルエンザ感染の重篤度の低下またはその予防のための、本明細書で定義される一価または多価2回投与初回免疫原性組成物の製造におけるインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物の使用に関する。
【0022】
関連する態様においては、本発明は、インフルエンザ株により引き起こされるインフルエンザ感染の重篤度を低下させるか、またはそれを予防する方法であって、初回組成物が本明細書で定義される一価または多価、例えば、三価もしくは四価2回投与初回免疫原性組成物であり、インフルエンザ感染が前記初回免疫原性組成物中に存在する株の抗原変異体により引き起こされる、前記方法に関する。本発明の3つの態様のいずれにおいても、前記インフルエンザウイルス変異株は、抗原性ドリフト変異体または抗原性シフト変異体であってよい。
【0023】
本発明の第3の態様においては、本明細書で定義される加速スケジュールに従って投与された一価または多価、例えば、二価、三価もしくは四価2回投与初回免疫原性組成物を用いて以前に免疫されたか、またはプライミングされたヒト個体または集団のワクチン再接種のための、インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含む免疫原性組成物を提供する。本発明はさらに、本明細書で定義される加速スケジュールに従って投与された一価または多価、例えば、二価、三価もしくは四価2回投与初回免疫原性組成物を用いて以前に免疫されたか、またはプライミングされたヒトのワクチン再接種のための免疫原性組成物の製造における、インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物の使用に関する。
【0024】
関連する態様においては、本発明は、上記で定義された加速スケジュールに従って投与された一価または多価、例えば、二価、三価もしくは四価2回投与初回免疫原性組成物を用いて以前に免疫されたか、またはプライミングされたヒト個体または集団を、インフルエンザウイルスに対してワクチン再接種する方法であって、該ヒトまたは集団に、インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含む免疫原性組成物を投与することを含む前記方法に関する。
【0025】
一実施形態においては、本発明に従う使用のための初回組成物をアジュバント化する。特定の実施形態においては、アジュバントは水中油乳濁液に基づくアジュバントまたはアジュバント系である。一実施形態においては、水中油乳濁液は、代謝性油と乳化剤、ならびに必要に応じて、ステロールおよび/またはα-トコフェロールなどのトコールを含む。別の特定の実施形態においては、前記水中油乳濁液アジュバントは、全量の0.5〜20%の量の少なくとも1種の代謝性油を含み、少なくとも70%強が直径1μm未満である油滴を有する。好適には、α-トコフェロールなどのトコールは、前記免疫原性組成物の全量の1.0〜20%の量、特に、1.0〜5%の量で存在する。特定の実施形態においては、本発明における使用のためのアジュバント化免疫原性組成物は、インフルエンザウイルスまたは抗原組成物と、水中油乳濁液が0.25〜1.25%(v/v)のスクアレン、0.25〜1.25%(v/v)のトコールおよび0.1〜0.7%(v/v)の乳化剤を含む、水中油乳濁液を含むか、もしくはそれからなるアジュバント組成物とを含む。
【0026】
一実施形態においては、インフルエンザ組成物は一価であり、すなわち、単一のインフルエンザウイルス株またはその抗原調製物を含む。別の実施形態においては、インフルエンザ組成物は多価、例えば、三価または四価である。特定の実施形態においては、各用量の2回投与初回免疫原性組成物は、一価であろうと多価であろうと、少なくとも1種の異なるインフルエンザウイルス株またはその抗原調製物を含む。
【0027】
別の特定の実施形態においては、前記インフルエンザウイルス抗原またはその抗原調製物は、パンデミックインフルエンザウイルス株に由来するものである。本発明に従う好適な株は、特に、鳥インフルエンザ株またはブタ株である。好適なパンデミック株は、限定されるものではないが、H5N1(世界中の多くの鳥類において現在は固有のものである高病原性鳥H5N1株は、本発明に従う候補パンデミック株である):H5N1、H9N2、H5N8、H5N9、H7N4、H7N7、H2N2、H10N7、H5N2、H5N3、H7N2、H7N1、H7N3である。このインフルエンザウイルスを、孵化鶏卵、工場、細胞培養物において製造するか、または組換え生産することができる。好適には、インフルエンザウイルス抗原を、孵化鶏卵または細胞培養物中で製造する。
【0028】
さらなる態様においては、1種のパンデミックインフルエンザウイルス株に対してヒト集団または個体をプライミングした後、インフルエンザウイルス株の抗原変異体に対して該ヒトまたは集団にワクチン再接種する方法であって、該ヒトに、(i)パンデミックインフルエンザウイルス株に由来するインフルエンザウイルスもしくはその抗原調製物を含む第1の2回投与初回免疫原性組成物と水中油乳濁液アジュバント、ならびに(ii)前記第1のインフルエンザウイルス株の抗原変異体であるインフルエンザウイルス株を含む第2の追加免疫原性組成物を投与することを含む前記方法を提供する。一実施形態においては、ワクチン再接種に用いられる前記抗原変異株もパンデミック株であり、具体的には、それは異なるクレード、異なるサブクレードなどに由来するドリフト変異株、または初回ワクチン接種に用いられるものとは異なるサブタイプなどに由来するシフト変異株である。別の実施形態においては、ワクチン再接種に用いられる前記抗原変異株は、H1N1またはH3N2などの現在循環している(季節性)株である。別の実施形態においては、ワクチン再接種に用いられる前記抗原変異株は、パンデミックインフルエンザウイルス抗原変異体に加えて、少なくとも1種の循環している(季節性)インフルエンザウイルス株を含む多価組成物の一部である。特に、前記パンデミックインフルエンザウイルス株は、前記パンデミック株に加えて、それぞれ、少なくとも1種、2種または3種の季節性株を含む二価、または三価、または四価組成物の一部である。特定の実施形態においては、2回投与初回免疫は、同じ日に、または0〜3日間隔で、もしくは0〜7日間隔で、もしくは0〜10日間隔で、もしくは0〜14日間隔で投与される2回用量からなる。アジュバントは存在してもしなくてもよい。
【0029】
本発明は、ナイーブな、または免疫力が低下したヒト個体または集団のインフルエンザに対する初回免疫のための2回投与加速ワクチン接種スケジュールを含む。免疫のこの加速スケジュールは、パンデミック株などの、標的個体または集団がナイーブであるインフルエンザ株により、または季節性株などの、子供、幼児および免疫力が低下した成人および高齢者において、標的個体または集団が記憶を有さないか、もしくは弱い記憶を有するインフルエンザ株により引き起こされる疾病率/死亡率に対するいくつかのレベルの保護を急速に達成することができることを目指す。
【0030】
一実施形態においては、2回投与初回インフルエンザ組成物は、代謝性油および乳化剤、ならびに必要に応じて、ステロールおよび/またはα-トコフェロールなどのトコールを含む水中油乳濁液アジュバントと一緒に、少量のパンデミックインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含む。
【0031】
好適には、2回投与初回免疫原性組成物は、本明細書で定義されるように、ヒトまたは集団において、前記ウイルスまたはその抗原調製物に対する体液性免疫応答、CD4 T細胞免疫応答などのT細胞免疫応答およびB細胞記憶応答を誘導することができる。
【0032】
特定の実施形態においては、前記免疫応答は、同じスケジュールに従って投与された非アジュバント化組成物について得られるものと比較して改善する。好適には、この改善は、前記免疫応答の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも10倍の増加である。
【0033】
別の実施形態においては、加速免疫スケジュール後に得られる免疫応答は、通常の0〜21日もしくは0〜29日間隔で2回投与される同じ免疫原性組成物を用いる免疫後に得られるものと類似するか、または少なくとも統計学的に有意にそれより低くない。
【0034】
特定の実施形態においては、ワクチン相同ウイルスに特異的な抗ヘマグルチニン抗体に関する体液性免疫応答は、2回目の投与後、または2回用量を同じ日に投与した後、例えば、1人の被験者において2つの異なる注射部位に投与した後、7日目、14日目もしくは21日目に測定されるように、ヒト用医薬品欧州委員会(European Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP))によるインフルエンザワクチンに関して確立された免疫学的基準またはインフルエンザワクチン効力に関するFDA規制基準のうちの少なくとも1個、もしくは少なくとも2個、もしくは3個全部を満たす。
【0035】
本明細書で定義される加速スケジュールに従うワクチンの2回投与後に、少なくとも1個、好適には2個のFDAまたはEU基準を満たすことが本発明の特定の課題である。本発明に従う組成物に関する効力基準を、以下でさらに説明する(表1および以下の「効力基準」を参照されたい)。好適には、前記組成物を、非経口的に、特に、筋肉内または皮下経路を介して投与する。
【0036】
本明細書で定義される水中油乳濁液アジュバントでアジュバント化された製剤を有利に用いて、MHCクラスII分子により提示されるインフルエンザエピトープを検出することができる抗インフルエンザCD4またはCD8 T細胞応答を誘導することができる。本明細書で定義されるアジュバント化製剤を用いる加速プライミングスケジュールは、有利には、交叉反応性免疫応答、すなわち、インフルエンザウイルス株の抗原変異体もしくは様々なインフルエンザウイルス株の抗原変異体に対する検出可能な免疫(体液性および/もしくは細胞性)を誘導するであろう。アジュバント化製剤は、有利には、ドリフト変異株もしくはシフト変異株などの相同性および抗原性変異体インフルエンザ株に対する応答性を増加させるために(ワクチン接種および感染の際)、体液性および/または細胞性免疫系を標的化するのに有効であろう。また、有利には、それらを用いて、1回または2回投与後に、交叉-プライミング戦略を誘導する、すなわち、抗原変異株を含む組成物の1回用量を用いるワクチン再接種の際に応答を容易にする「プライム」免疫記憶を誘導するであろう。この場合、すなわち、プレパンデミックワクチンの過程後に(パンデミックウイルス進行の初期段階の間に加速スケジュールに従って2回用量で投与される)、レシピエントは、同じインフルエンザウイルス株またはその抗原変異体を含むちょうど1回用量のパンデミックワクチンを必要とし、一度、パンデミック開始が確認されたら、実際のパンデミック株に対して完全に保護される。
【0037】
本発明に従う加速初回免疫戦略は、いくつかの利点を有する:
1)ナイーブな集団における抗原の潜在的な弱い免疫原性を克服するように設計され、以前にはナイーブであった集団の免疫学的プライミングをもたらす、非アジュバント化組成物を用いて得られるものと比較して改善された免疫原性;この改善された免疫原性は、0〜21日の通常のスケジュールを用いて得られるものよりも非常に迅速に提供されるであろう;
2)いくつかのパンデミック株を特徴付ける免疫原性の低いインフルエンザ株に対する改善された免疫応答;
3)改善された交叉防御プロフィール:加速交叉プライミング戦略の設定を可能にする抗原変異体(例えば、ドリフトもしくはシフト変異体)インフルエンザ株に対する増加した交叉反応性、交叉防御であって、それらを、実際のパンデミック株に対する防御を増強するために1回のみの用量のパンデミックワクチンを要することをさらに可能にするプレパンデミックワクチンとして用いることができる;
4)低下した抗原用量を用いるこれらのさらなる利点のいずれかもしくは全てを達成することにより、それらは緊急時に、またはパンデミック状況の準備のために許容量の増加を確保し(パンデミック状況では抗原を節約する)、集団にとって利用可能なより多数のワクチン用量の可能性を提供するであろう。
【0038】
本発明のさらなる態様に従えば、特許請求される免疫スケジュールは、ワクチンインフルエンザ株に関してEU(CHMP)またはFDA(CBER)の要件により提供されるものよりも低くない程度の血清防御および血清変換を誘導することができる。これを以下でさらに詳述する(表1および以下の「効力基準」を参照されたい)。
【0039】
用語
別途説明しない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するものとする。分子生物学における一般的用語の定義を、Benjamin Lewin, Genes V, Oxford University Pressにより刊行、1994 (ISBN 0-19-854287-9); Kendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Science LtD.により刊行、1994 (ISBN 0-632-02182-9); およびRobert A. Meyers (編), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc.により刊行、1995 (ISBN 1-56081-569-8)に見出すことができる。
【0040】
単数形の用語「a」、「an」および「the」は、本文が明確に別途指摘しない限り、複数の指示対象を含む。同様に、用語「または」は、本文が明確に別途指摘しない限り、「および」を含むと意図される。抗原などの物質の濃度またはレベルに関して与えられる数値的限定は、近似であると意図される。かくして、濃度が少なくとも(例えば)200 pgであると示される場合、この濃度は少なくとも近似的に「約」または「〜」200 pgであると理解されることが意図される。
【0041】
本明細書に記載のものと類似するか、または同等の方法および材料を、本開示の実施または試験において用いることができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。用語「comprises(含む)」は「includes(含む)」を意味する。かくして、本文が別途要求しない限り、単語「comprises」、および「comprise」および「comprising」などの変形は、記述された化合物もしくは組成物(例えば、ポリペプチドもしくは抗原)または工程、または化合物群または工程の含有、限定されるものではないが、任意の他の化合物、組成物、工程、もしくはその群の排除を含むと理解されるであろう。省略形「e.g.(例えば)」は、ラテン語「exempli gratia」に由来するものであり、本明細書では非限定例を示すように用いられる。かくして、省略形「e.g.」は用語「for example(例えば)」と同義である。
【0042】
用語「初回免疫」または「初回ワクチン接種」は、その最も広い意味において、1回目の免疫または1回目のワクチン接種を意味する。1回目のワクチン接種を、1回目および2回目の免疫を含むワクチン接種計画において行う場合、1回目および2回目の免疫を、少なくとも1ヶ月空けて行う。免疫学的にナイーブなヒトまたは集団においては、1回目の免疫は免疫系のプライミングを誘導する、すなわち、該ヒトまたはヒト集団は初回ワクチン接種の結果として(ワクチンインフルエンザウイルス株に対して)血清陽性になるであろう。
【0043】
疑いを避けるために、本明細書の用語「comprising(含む)」、「comprise」および「comprises」は、全ての例において、それぞれ、用語「consisting of(からなる)」、「consist of」および「consists of」と必要に応じて置換可能であると本発明者らに意図される。
【0044】
他の用語および説明は、本開示の本文に提供される。
【0045】
インフルエンザウイルス株および抗原
インフルエンザAウイルスは継続的に進化しており、結果として、抗原変異を受ける[Johnson NP, Mueller J. Updating the accounts: global mortality of the 1918-1920 "Spanish" influenza pandemic. Bull. Hist. Med. 2006;76:105-115]。大流行間期には、循環するインフルエンザウイルスは前回の流行に由来するものと関連する。ウイルスは人生初期の感染から免疫レベルを変化させながら人々の間で拡散する。そのような循環は、通常は2〜3年の期間に渡り、ウイルスRNAポリメラーゼによる効率的な校正を欠き、表面糖タンパク質におけるアミノ酸置換をもたらし、一般的な集団間で再び流行を引き起こすのに十分に変化した新しい株の選択を促進する高率の転写エラーをもたらす;このプロセスを「抗原ドリフト」と呼ぶ。
【0046】
断片化ウイルスゲノムは、第2の型の抗原変異を可能にする。予測不可能な間隔で、2種のインフルエンザウイルスが宿主細胞に同時に感染する場合、遺伝子再集合は、前の季節に循環する株に由来する全体として異なるサブタイプの、重要な表面抗原、ヘマグルチニンを有する新規インフルエンザウイルスをもたらすであろう。
【0047】
ここで、得られる抗原は、ヒトにおいて以前に循環していた株の対応するタンパク質から20〜50%変化してもよい。「抗原シフト」と呼ばれるこの現象は、「集団免疫」を回避し、パンデミックを確立する新規表面または内部タンパク質を有する新規ウイルスを生成し得る。
【0048】
「ドリフト」および「シフト」の両方のこれらの抗原変化は予測不可能であり、それらが最終的には新しいインフルエンザ株の出現を誘導し、ウイルスが免疫系を回避することができ、よく知られた、ほとんど毎年の流行を引き起こすため、免疫学的観点からは劇的な影響を有し得る。
【0049】
毎年の流行に加えて、効率的にヒトからヒトへ伝染することができる(ナイーブな)ヒト集団において新しいヘマグルチニン型またはサブタイプを有する、新しく出現するインフルエンザウイルスは、過去にパンデミック、すなわち、より高い感染率および死亡率の、全年齢群における突然の、地球規模的な流行を引き起こしてきた。前世紀には3回のインフルエンザパンデミック、世界中で2000〜5000万人の死亡の原因となる1918〜1919年の「スペイン風邪」、1957年の「アジア風邪」および1968年の「香港風邪」が見られた。
【0050】
以前には大部分のヒトにより認められなかった1種以上の鳥インフルエンザウイルス遺伝子が、ヒトインフルエンザウイルスに組込まれた場合、およびさらにヒト間で効率的に拡散する能力を獲得する場合、ヒトのパンデミックインフルエンザウイルスが出現する。換言すれば、インフルエンザのパンデミックは、ヒト集団が免疫を有さない新しいインフルエンザウイルスが出現する場合に発生する。少なくとも過去のパンデミックは、鳥またはブタインフルエンザウイルスなどの、異なる種に由来するインフルエンザウイルスが種の障壁を越えた場合に発生したと考えられる。そのようなウイルスがヒトからヒトへ拡散する能力を有する場合、それらは数ヶ月から1年以内に世界中に拡散し、パンデミックをもたらし得る。
【0051】
WHOは、フェーズ1および2(大流行間期)からフェーズ3〜5(パンデミック警戒)、フェーズ6(パンデミック期)のパンデミックインフルエンザのいくつかのフェーズを定義している(WHO global preparedness plan, WHO, Geneva, 2005, 全文書および特に表1 - http://www.who.int/csr/resources/publications/influenza/WHO_CDS_CSR_GIP_2005_5.pdfでオンラインで入手可能)。フェーズ3は、ヒトの事例において新しいインフルエンザサブタイプが同定された場合である。本開示においては、フェーズ3〜5などの初期段階の進行(プレパンデミックもしくは潜在的なパンデミックウイルス株)またはフェーズ6などの確認されたパンデミック段階(パンデミック株)から任意の段階のウイルス進行でのパンデミック突発を引き起こし得る株を一般的にパンデミックインフルエンザウイルス株と呼ぶ。
【0052】
パンデミックインフルエンザウイルス株の特徴は、以下の通りである:ノイラミニダーゼサブタイプの変化を伴ってもよい、現在循環している株におけるヘマグルチニンと比較して新しいヘマグルチニンを含む;ヒト集団において水平感染され得る;およびヒトに対して病原性である。新しいヘマグルチニンは、1957年に最後に循環したH2などの、長期間、おそらく、少なくとも10年間、ヒト集団において明らかでなかったものであってよく、またはそれは、例えば、通常は鳥に認められるH5、H9、H7もしくはH6などの、ヒト集団においては以前に循環していたことのないヘマグルチニンであってもよい。これらの場合、大きい集団(例えば、H2の場合)または全集団(H5、H7、H6もしくはH9の場合)は、パンデミックインフルエンザウイルス株に対して免疫学的にナイーブである。現在、ヒトにおいてインフルエンザパンデミックを引き起こす可能性のあるものとWHOにより同定されたインフルエンザAウイルスは、高病原性H5N1鳥インフルエンザウイルスである。従って、本発明に従う使用のためのパンデミックワクチンは、好適にはH5N1ウイルスを含むであろう。特許請求された組成物中への含有のための他の好適な株は、H9N2、H7N1、H7N7またはH2N2である。
【0053】
一実施形態においては、本発明に従う使用のためのインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物は、スプリットインフルエンザウイルスまたはそのスプリットウイルス抗原調製物であってよい。代替的な実施形態においては、インフルエンザ調製物は、不活化全ウイルスもしくは組換えおよび/もしくは精製サブユニットワクチン、インフルエンザビロソームまたは組換え産生されたウイルス様粒子などの別の型の不活化インフルエンザ抗原を含んでもよい。さらなる実施形態においては、インフルエンザウイルスは生弱毒化インフルエンザ調製物であってよい。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態においては、変異インフルエンザウイルス株に関する。「変異」株は、「異種」株を意味する。それは、異なるクレード(例えば、クレード1もしくは2)もしくはサブクレード(例えば、2.1、2.2、2.3、2.4および2.5などのクレード2のサブクレード)に由来するウイルス株などの抗原ドリフト変異体、または異なるサブタイプ(例えば、H5、H7もしくはH9)などの抗原シフト変異体であってよい。場合によって、およびこれは本開示から明らかであろうが、それはワクチン株(初回ワクチン接種もしくはワクチン再接種)に対して異種性であるか、または例えば、初回-追加ワクチン接種の概念に言及する場合、初回ワクチン接種もしくはワクチン再接種のための組成物に含まれる株に対して異種性である循環株であってよい。
【0055】
本発明に従う使用のためのスプリットインフルエンザウイルスまたはそのスプリットウイルス抗原調製物は、好適には、脂質エンベロープを可溶化するためにウイルス粒子を界面活性剤または他の試薬で破壊した不活化ウイルス調製物である。スプリットウイルスまたはそのスプリットウイルス抗原調製物を、好適には、可溶化濃度の有機溶媒もしくは界面活性剤を用いて、感染性もしくは不活化された全インフルエンザウイルスを断片化した後、可溶化剤の全部もしくは大部分およびウイルス脂質材料のいくらかもしくは多くを除去することにより調製する。スプリットウイルス抗原調製物とは、スプリットウイルス成分の抗原特性の多くを保持しながら、スプリットウイルスと比較してある程度の精製を受けていてもよいスプリットウイルス調製物を意味する。例えば、鶏卵中で製造する場合、スプリットウイルスを鶏卵中に夾雑するタンパク質から枯渇させるか、または細胞培養物中で製造する場合、スプリットウイルスを宿主細胞夾雑物から枯渇させることができる。スプリットウイルス抗原調製物は、2種以上のウイルス株のスプリットウイルス抗原成分を含んでもよい。スプリットウイルスを含むワクチン(「インフルエンザスプリットワクチン」と呼ばれる)またはスプリットウイルス抗原調製物を含むワクチンは、一般的には残留マトリックスタンパク質および核タンパク質および時には脂質、ならびに膜エンベロープタンパク質を含む。そのようなスプリットウイルスワクチンは通常、多くの、または全てのウイルス構造タンパク質を含むであろうが、それらが全ウイルス中に存在するのと同じ割合である必要はない。
【0056】
あるいは、インフルエンザウイルスは、全ウイルスワクチンの形態にあってもよい。これは、インフルエンザウイルスの新しい株についてスプリットウイルスワクチンを上手く製造することができるかどうかの不確実性を回避するので、パンデミック状況のためのスプリットウイルスワクチンよりも有利であることを示し得る。いくつかの株については、スプリットウイルスを製造するのに用いられる従来の界面活性剤は、ウイルスを損傷し、それを使用不可能にすることがある。スプリットワクチンを製造するために様々な界面活性剤を使用し、および/または様々なプロセスを開発する可能性は常にあるが、これには時間がかかり、パンデミック状況においては利用できない場合がある。さらに、かなりの量の抗原が、好適なスプリットワクチンを調製するのに必要なさらなる精製工程の間に失われるため、スプリットウイルスについてよりも全ウイルスについてより高いワクチン製造能力も存在する。
【0057】
別の実施形態においては、インフルエンザウイルス調製物は、サブユニットインフルエンザワクチンの形態にある。サブユニットインフルエンザワクチンは、一般的には、必要に応じて他のウイルス成分と共に、2種の主要なエンベロープタンパク質、HAおよびNAを含み、それらは一般的には、特に若いワクチン被接種者において反応性が低いため、全ビリオンワクチンよりもさらなる利点を有し得る。別の実施形態においては、前記サブユニットワクチンは、単独で、またはHA、NAもしくはその両方と共に、M2もしくはM2eエンベロープタンパク質を含む。サブユニットワクチンおよびその成分を、組換え生産するか、もしくは化学的に合成するか、または破壊されたウイルス粒子から精製することができる。
【0058】
別の実施形態においては、インフルエンザウイルス調製物は、ビロソームの形態にある。ビロソームは、ビロソームのリン脂質二重層膜に挿入された、真正の配置に機能的ウイルスエンベロープ糖タンパク質HAおよびNAを保持する球状の単層ベシクルである。
【0059】
別の実施形態においては、インフルエンザウイルス調製物は、ウイルス様粒子の形態にあってもよい。
【0060】
前記インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を、鶏卵または細胞培養物中で製造することができる。また、それらを昆虫細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、植物、酵母もしくは細菌などの他の系において製造するか、または組換え産生することもできる。
【0061】
例えば、本発明に従うインフルエンザウイルス抗原またはその抗原調製物を、鶏卵中でインフルエンザウイルスを増殖させ、収穫された尿膜腔液を精製することにより、従来の孵化鶏卵法を用いて製造することができる。鶏卵であれば、急な依頼でも大量に蓄積することができる。あるいは、それらを、ウイルスを増殖させるか、または組換えインフルエンザウイルス表面抗原を発現する組織培養を用いる任意の新しい生成方法により製造することができる。ウイルスを増殖させるための好適な細胞基質としては、例えば、MDCKなどのイヌ腎臓細胞もしくはMDCKのクローンに由来する細胞、MDCK様細胞、Vero細胞などのAGMK細胞などのサル腎臓細胞、好適なブタ細胞系、またはワクチン目的でのインフルエンザウイルスの製造にとって好適な任意の他の哺乳動物細胞型が挙げられる。また、好適な細胞基質として、ヒト細胞、例えば、MRC-5またはPer-C6細胞も挙げられる。好適な細胞基質は、細胞系に限定されない;例えば、ニワトリ胚線維芽細胞などの一次細胞およびニワトリEB14(登録商標)またはアヒルEB 24(登録商標)もしくはEB 66(登録商標)細胞系などの鳥細胞系も含まれる。
【0062】
インフルエンザウイルス抗原またはその抗原調製物を、いくつかの商業的に適用可能なプロセスのいずれか、例えば、参照により本明細書に組み入れられるものとするWO 02/097072に記載のスプリットフループロセスにより製造することができる。
【0063】
インフルエンザ調製物を、チオマーサルなどの保存剤の存在下で調製することができる。好適には、保存剤、特に、チオマーサルは約100μg/mlの濃度で存在する。あるいは、インフルエンザ調製物を、20μg/mlを超えない濃度または好適には5μg/ml未満の濃度などの低レベルの保存剤、特に、チオマーサルの存在下で調製する。別の好適な代替的な実施形態においては、インフルエンザ調製物を、チオマーサルの非存在下で作製する。好適には、得られるインフルエンザ調製物は、有機水銀保存剤の非存在下で安定であり、特に、該調製物は残留チオマーサルを含まない。特に、インフルエンザウイルス調製物は、チオマーサルの非存在下で、または低レベルのチオマーサル(一般的には、5μg/ml以下)の存在下で安定化されたヘマグルチニン抗原を含む。具体的には、Bインフルエンザ株の安定化を、α-トコフェロールコハク酸(コハク酸ビタミンE、すなわち、VESとしても知られる)などのαトコフェロールの誘導体により実施する。そのような調製物およびそれらを調製する方法は、WO 02/097072に開示されている。
【0064】
あるいは、特に複数回投与容器については、チオマーサルまたは任意の他の好適な保存剤は、夾雑リスクを低下させるために存在する。これは、最も短い可能な時間にできるだけ多くの人々にワクチン接種するために設計された、パンデミックワクチンにとって特にふさわしい。
【0065】
一実施形態においては、インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物と、水中油乳濁液アジュバントとを同じ容器中に含有させる。それを「一容器手法」と呼ぶ。一実施形態においては、この容器は、予め充填されたシリンジまたは単回投与バイアルまたは10回投与複数回投与容器または12回投与アンプルである。代替的な実施形態においては、インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物と、水中油乳濁液アジュバントとを、別々の容器中もしくは容器もしくはユニットに含有させ、被験者への投与の前または投与時に手短に混合する。それを「2容器手法」と呼ぶ。
【0066】
再構成されたアジュバント化インフルエンザ候補ワクチンの1回用量の容量は、約0.25〜1 mlであってよく、通常は成人用製剤については約0.5 mlに相当する。好適には、0.5 mlの成人用量は、約0.25 mlのアジュバントと約0.25 mlの抗原に相当する。各ワクチン用量は約15μgのヘマグルチニン(HA)を含んでもよい。代替的な実施形態においては、各ワクチン用量は、約15μg未満、好適には、約10μg未満の量のHAなどの、少量のHAを含む。好適な量は、約1.9μg、約3.8μg、約5μg、約7.5μg、もしくは約10μgのHA、またはワクチン組成物が本明細書で定義される効力基準の少なくとも1つを満たすように決定された約15μgより低い任意の好適な量のHAである。有利には、約1μgのHAまたは上記で定義された規制基準をみたす約0.5μgのHAなどのさらに低いHA用量を用いることができる。約1 mlのワクチン用量(例えば、約0.5 mlのアジュバントと約0.5 mlの抗原調製物)も好適である。約0.25 mlのワクチン用量(例えば、約0.125 mlのアジュバントと約0.125 mlの抗原調製物)も、特に幼児集団にとっては好適である。
【0067】
本発明に従って、本明細書で定義される一価免疫原性組成物中のインフルエンザ株は、パンデミック株である。好適な株は、限定されるものではないが、H5N1、H9N2、H5N8、H5N9、H7N4、H7N7、H2N2、H10N7、H5N2、H5N3、H7N2、H7N1、H7N3である。
【0068】
最適に適合した(および規制認可された)H5N1パンデミックワクチンを待ちながら、潜在的なパンデミック株、例えば、H5株を用いて製造されたアジュバント化ワクチンを用いて、ワクチン接種のプレパンデミック戦略を実行する。初回ワクチン接種に用いられる株は究極的にはパンデミックを引き起こす株のものと比較して抗原的に異なるか、または異なるクレードのものになり得るが、本明細書に開示される製剤および方法に従うワクチン接種は、パンデミック株の拡散前に人々をプライミングし、H5N1パンデミックワクチンを用いるワクチン接種の時点で彼らの防御を改善するであろう。従って、一実施形態においては、初回ワクチン接種を、本明細書で特許請求される加速免疫スケジュールに従って投与された、H5N1などの1種のパンデミック株またはH5N1もしくはH5N1と、限定されるものではないが、H5N1、H9N2、H5N8、H5N9、H7N4、H7N7、H2N2、H10N7、H5N2、H5N3、H7N2、H7N1、H7N3などの別のサブタイプの2種の異なるクレードなどに由来する少なくとも2種の異なるインフルエンザ株を含む、一価または多価の、本明細書で定義されるアジュバント化免疫原性組成物を用いて行う。ワクチン再接種を、例えば、異なるクレードに由来するH5株または次の時点(例えば、2ヶ月後、4ヶ月後、6ヶ月後もしくは1年後でも)でH9N2などの異なるサブタイプに由来する株などでも、初回ワクチン接種株(例えば、パンデミック株は初回ワクチン接種のものに対して、ドリフト変異体株などの異種性の株であってもよい)とは必ずしも同一でなくてもよいパンデミックインフルエンザ株を含むアジュバント化組成物を用いて行う。a)パンデミックの可能性のタイミングおよびb)特定のパンデミック株を予測することは不可能であるため、パンデミック株を用いる特許請求される加速免疫スケジュールに依存するこの戦略は、正しい時点での防御免疫応答の規模および幅を最大化するための保険の増加を提供するであろう。これらの戦略においては、アジュバントは好適には本明細書で定義されるものである。
【0069】
別の実施形態においては、初回ワクチン接種を、1種以上の季節性インフルエンザ株と、必要に応じて、1種以上のパンデミック株とを含む、アジュバント化された、またはアジュバント化されていない、免疫原性組成物を用いて行う。
【0070】
上記のように、ヒト集団全体は、パンデミック株に対して、集団ベースで実質的に血清陰性であろう。さらに、特定のパーティーは、パンデミックの状況下ではインフルエンザに感染するようになる危険性が高い。慢性疾患高齢者および小さい子供は、彼らがワクチン接種後に免疫応答を生じる能力が低下し得るため、特に罹患しやすいが、多くの若い成人および明らかに健康な人々も危険性がある。加速免疫スケジュールはまた、古典的なナイーブな集団に加えて、これらの集団を利することもできる。
【0071】
危険性が高い別の群の人々は、旅行者である。人々は以前より今日ではより多く旅行し、多くの新しいウイルスが出現する地域である中国および東南アジアは近年では人気のある旅行目的地になっている。旅行パターンにおけるこの変化により、数ヶ月または数年よりも数週間足らずで新しいウイルスが地球全体に到達し得る。
【0072】
かくして、これらの群の人々については、パンデミック状況または潜在的なパンデミック状況においてはインフルエンザに対して防御するためにワクチン接種する必要性が特に高い。好適なパンデミック株は、限定されるものではないが、H5N1、H9N2、H5N8、H5N9、H7N4、H7N7、H2N2、H10N7、H5N2、H5N3、H7N2、H7N1、H7N3である。
【0073】
水中油乳濁液アジュバント
本発明のアジュバント組成物は、水中油乳濁液アジュバントを含み、好適には、該乳濁液は全量の0.5%〜20%の量で、少なくとも70%強が1μm未満の直径を有する油滴を有する代謝性油を含む。油滴のサイズ、すなわち、直径を、定寸装置の使用、好適には、Malvern Zetasizer 4000もしくは好適にはMalvern Zetasizer 3000HSなどの動的光散乱によるなど、当業界で公知の技術により測定することができる。
【0074】
任意の水中油組成物がヒトへの投与にとって好適であるためには、乳濁系の油相は代謝性油を含む必要がある。用語「代謝性油」の意味は当業界でよく知られている。代謝性を、「代謝により変換され得ること」と定義することができる(Dorland’s Illustrated Medical Dictionary, W.B. Sanders Company、第25版(1974))。油は、レシピエントに対して非毒性的であり、代謝により転換され得る任意の植物油、魚油、動物油または合成油であってよい。ナッツ、種子、および穀類は植物油の一般的な起源である。合成油も本発明の一部であり、NEOBEE(登録商標)などの市販の油が挙げられる。特に好適な代謝性油はスクアレンである。スクアレン(2,6,10,15,19,23-ヘキサメチル-2,6,10,14,18,22-テトラコサヘキサエン)は、サメ肝油中に大量に認められ、オリーブ油、小麦胚種油、米ぬか油、および酵母中に少量認められる不飽和の油であり、本発明における使用にとって特に好適な油である。スクアレンは、コレステロールの生合成の間に酵素的に転換されるという事実のため、代謝性油である(Merck index、第10版、登録番号8619)。
【0075】
水中油乳濁液自体は当業界でよく知られており、アジュバント組成物として有用であると提言されている(EP 399843; WO 95/17210)。
【0076】
水中油乳濁液アジュバントの成分について以下に与えられる特定の量は、免疫原性組成物の全量の%(v/v)で表される場合、2回投与免疫計画の1回用量あたりのものであると理解される。
【0077】
一実施形態においては、代謝性油は、免疫原性組成物の全量の0.5%〜20%(最終濃度)の量、好適には、全量の1.0%〜10%の量、好適には、全量の2.0%〜6.0%の量で存在する。特定の実施形態においては、代謝性油は、免疫原性組成物の全量の約0.25〜1.25%(v/v)の量で存在する。
【0078】
特定の実施形態においては、代謝性油は、免疫原性組成物の全量の約0.25%、約0.5%、約1%、約3.5%または約5%の最終量で存在する。別の特定の実施形態においては、前記油はスクアレンである。一態様においては、スクアレンの量は、ワクチン用量あたり約10.7 mg、好適には、ワクチン用量あたり約10.4〜約11.0 mgである。別の態様においては、スクアレンの量は、ワクチン用量あたり約5.35 mg、好適には、ワクチン用量あたり約5.0〜約6.0 mgである。別の態様においては、スクアレンの量は、ワクチン用量あたり約2.7 mg、好適には、ワクチン用量あたり2.5〜3.0 mgである。別の態様においては、スクアレンの量は、ワクチン用量あたり約1.35 mg、好適には、ワクチン用量あたり約1.1〜約1.5 mgである。
【0079】
好適には、本発明の水中油乳濁液系は、μm以下の範囲の小さい油滴サイズを有する。好適には、液滴サイズは、直径120〜750 nm、好適には、120〜600 nmのサイズであろう。典型的には、水中油乳濁液は、少なくとも70%強が直径500 nm未満であり、特に、少なくとも80%強が直径300 nm未満であり、好適には、少なくとも90%強が直径120〜200 nmの範囲である油滴を含む。
【0080】
本発明に従う水中油乳濁液は、有利には、ステロールおよび/またはトコフェロール、特に、α-トコフェロールなどのトコールを含む。ステロールは当業界でよく知られており、例えば、コレステロールはよく知られており、例えば、動物脂肪中に認められる天然ステロールとしてMerck Index、第11版、341頁に開示されている。他の好適なステロールとしては、β-シトステロール、スティグマステロール、エルゴステロールおよびエルゴカルシフェロールが挙げられる。前記ステロールは、好適には、免疫原性組成物の全量の約0.01%〜約20%(w/v)の量、好適には、約0.1%〜約5%(w/v)の量で存在する。好適には、ステロールがコレステロールである場合、それは免疫原性組成物の全量の約0.02%〜約0.2%(w/v)の量で、典型的には、0.5 mlのワクチン用量中、約0.02%(w/v)の量で存在する。
【0081】
トコール(例えば、ビタミンE)はまた、油乳濁液アジュバントにおいて用いられることも多い(EP 0 382 271 B1; US5667784; WO 95/17210)。本発明の油乳濁液(必要に応じて、水中油乳濁液)において用いられるトコールを、トコールが、必要に応じて直径1μm未満の乳化剤を含むトコール液滴の分散物であってよいEP 0 382 271 B1に記載のように製剤化することができる。あるいは、トコールを、別の油と共に用いて、油乳濁液の油相を形成させることができる。上記の代謝性油などの、トコールと共に用いることができる油乳濁液の例は、本明細書に記載されている。
【0082】
好適には、α-トコフェロールまたはα-トコフェロールコハク酸などのその誘導体が存在する。好適には、α-トコフェロールは、免疫原性組成物の全量の約0.2%〜約5.0%(v/v)の量で、好適には、0.5 mlのワクチン用量中に約2.5%(v/v)、または0.5 mlのワクチン用量中に0.5%(v/v)、もしくは0.7 mlのワクチン用量中に約1.7〜1.9%(v/v)、好適には、1.8%の量で存在する。特定の実施形態においては、トコールまたはα-トコフェロールは、免疫原性組成物の全量の約0.25〜1.25%(v/v)の量で存在する。別の特定の実施形態においては、トコールまたはα-トコフェロールは、免疫原性組成物の全量の約0.5%、約1%、約3.57%または約5%の最終量で存在する。明確にするために、v/vで与えられる濃度を、以下の変換因子を適用することにより、w/vでの濃度に変換することができる:5%(v/v)のα-トコフェロール濃度は、4.8%(w/v)のα-トコフェロール濃度に等しい。一態様においては、α-トコフェロールの量は、ワクチン用量あたり約11.9 mg、好適には、ワクチン用量あたり約11.6〜約12.2 mgである。別の態様においては、α-トコフェロールの量は、ワクチン用量あたり約5.95 mg、好適には、ワクチン用量あたり約5.5〜約6.5 mgである。別の態様においては、α-トコフェロールの量は、ワクチン用量あたり約3.0 mg、好適には、ワクチン用量あたり約2.8〜約3.3 mgである。別の態様においては、α-トコフェロールの量は、ワクチン用量あたり約1.5 mg、好適には、ワクチン用量あたり約1.25〜約1.75 mgである。
【0083】
水中油乳濁液は、乳化剤を含む。乳化剤は、免疫原性組成物の約0.01〜約5.0重量%(w/w)の量で、好適には、約0.1〜約2.0重量%(w/w)の量で存在してもよい。好適な濃度は、全組成物の約0.5〜約1.5重量%(w/w)である。
【0084】
乳化剤は、好適にはポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸(ポリソルベート80またはTween 80)であってよい。特定の実施形態においては、0.5 mlのワクチン用量は、1%(w/w)のTween 80を含み、0.7 mlのワクチン用量は約0.7%(w/w)のTween 80を含む。別の特定の実施形態においては、Tween 80の濃度は約0.1%または約0.2%(w/w)である。一態様においては、ポリソルベート80の量は、ワクチン用量あたり約4.9 mg、好適には、ワクチン用量あたり約4.6〜約5.2 mgである。別の態様においては、ポリソルベート80の量は、ワクチン用量あたり約2.4 mg、好適には、ワクチン用量あたり約2.0〜約2.8 mgである。別の態様においては、ポリソルベート80の量は、ワクチン用量あたり約1.2 mg、好適には、ワクチン用量あたり約1.0〜約1.5 mgである。別の態様においては、ポリソルベート80の量は、ワクチン用量あたり約0.6 mg、好適には、ワクチン用量あたり約0.4〜0.8 mgである。
【0085】
一実施形態においては、本発明における使用のためのワクチン用量は、
・ワクチン用量あたり約11.9 mgの量のα-トコフェロール、ワクチン用量あたり約10.7 mgの量のスクアレン、およびワクチン用量あたり約4.9 mgの量のポリソルベート80;
・水中油乳濁液が約0.25〜1.25%(v/v)のスクアレン、約0.25〜1.25%(v/v)のトコールおよび約0.1〜0.7%(v/v)の乳化剤を含む、水中油乳濁液を含むか、またはそれからなるアジュバント組成物;
・水中油乳濁液が約0.5〜1.25%(v/v)のスクアレン、約0.6〜1.25%(v/v)のトコールおよび約0.25〜0.5%(v/v)の乳化剤を含む、水中油乳濁液を含むか、またはそれからなるアジュバント組成物、
を含む。
【0086】
水中油乳濁液アジュバントを他のアジュバントまたは免疫刺激剤と共に使用することができ、従って、本発明の重要な実施形態は、スクアレンもしくは別の代謝性油、α-トコフェロールなどのトコフェロール、およびtween 80を含む水中油製剤である。水中油乳濁液はまた、span 85および/またはレシチンを含んでもよい。典型的には、水中油は、免疫原性組成物の全量の約2〜約10%のスクアレン、2〜10%のα-トコフェロールおよび約0.3〜約3%のTween 80を含むであろうし、WO 95/17210に記載の手順に従って製造することができる。好適には、スクアレン:α-トコフェロールの比率は1以下であるが、それはこれがより安定な乳濁液を提供するからである。span 85(ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸)はまた、例えば、約1%のレベルで存在してもよい。
【0087】
ワクチン接種計画
本明細書に開示される加速初回免疫スケジュールおよび加速プライミング計画における使用のための初回組成物の免疫原性特性に起因して、パンデミックの開始に対してより良好に備えるためのプレパンデミックワクチンの備蓄などの、ヒトインフルエンザパンデミックの脅威に対する先を見越した、およびより迅速なワクチン接種戦略を確立することが可能である。また、以前にワクチン接種されていない子供および幼児、または免疫力が低下した成人もしくは高齢者において季節性インフルエンザ初回免疫を行うこともできる。
【0088】
具体的には、一価プレパンデミック初回免疫原性組成物は、例えば、鳥集団において現在循環しているものと類似するように選択され、ヒトパンデミックに対して生じる能力(例えば、遺伝子突然変異もしくは組換えを介する)と関連すると予測されるH5N1(鳥インフルエンザ)の株を用いる、逆遺伝学の使用を介して製造されたものである。このプレパンデミックワクチンに応答して生じた免疫は、免疫系を「プライミング」するか、または「教育」し、それによって、実際のパンデミックウイルス株に遭遇した後、防御免疫応答のより迅速な発達を容易にし、それによりインフルエンザの関連するパンデミック株に対する罹患性の低下を誘導する。一度、WHOがパンデミックの開始を確認し、最終的なパンデミック株を同定したら(それはドリフト変異株である)、プレパンデミックワクチン接種により、後者が利用可能になる場合、パンデミックワクチンに対するより迅速かつ有効な免疫応答が確保される。
【0089】
特定の実施形態においては、加速初回免疫スキームは、現在利用可能なワクチンが効力を有さないヘマグルチニンの小さい、または大きい変化(抗原ドリフトもしくはシフト)を受けた循環する株に対するより良好な防御を提供するさらなる利益を提供することができる。好適には、初回ワクチン接種について本明細書で記載されたアジュバント化一価組成物を用いる2回用量投与スケジュールは、インフルエンザに対するワクチン再接種後に、インフルエンザワクチンについての防御の相関により評価されるように、古典的な0〜21日のスケジュールに従うワクチン接種について得られるものと類似する血清防御を提供することができるであろう。
【0090】
日常的に行われるものと比較して加速された免疫スケジュールに従って2回用量のインフルエンザ免疫原性組成物を投与することにより、ヒト個体もしくはヒト集団、特に、血清陰性(ナイーブ)の個体もしくは集団において免疫応答を誘導することが本発明の課題である。この血清陰性は、パンデミック株に直面する被験者などの、そのようなウイルスまたは抗原に直面したことがない被験者(いわゆる「ナイーブ」な被験者)の結果であってよい。あるいは、この血清陰性は、季節性もしくは以前に投与されたパンデミックインフルエンザウイルスに応答できなかった被験者などの、一度遭遇したウイルスもしくは抗原に対して応答できなかった被験者の結果であってよい。好適には、前記免疫応答は、高齢者、典型的には、少なくとも50歳、典型的には65歳以上、もしくは高危険性の医学的症状を有する65歳未満の成人(「高危険性」成人)、またはインフルエンザワクチン接種歴のない9歳以下の子供、好適には、2歳以下の子供などの免疫力が低下した被験者において得られる。
【0091】
前記組成物の2回目の用量(依然として「1回目のワクチン接種のための組成物」と考えられる)を、進行中の初回免疫応答の間に投与し、1回目の投与の短時間後に、すなわち、3週間(21日)以上の間隔で投与される2回投与の標準的な免疫スケジュールよりも短い間隔で投与する。
【0092】
従って、本発明の一実施形態においては、2回の初回用量の投与を、最大で2週間(14日)以下の2回投与の間の間隔で与える。好適な間隔は0日(2回用量を同じ日に投与する場合)から14日未満である。有利には、2回目の用量を、0〜10日、好適には、1回目の投与の0〜7日後、または好適には0〜3日で投与することができる。好適には、2回目の用量を、0、7または14日未満の間隔で与える。2回目の用量を同じ日に与える場合(0日間隔)、それらをそれぞれの腕に1回の用量などの2本の異なる手足に投与することができる。
【0093】
ワクチン接種用量および効力基準
一実施形態においては、本発明に従う使用のための免疫原性組成物は、多くの場合は標準的な0.5 mlの注射用量であり、一元放射免疫拡散法(SRD)により測定されるように、パンデミックインフルエンザ株に由来する15μg未満のヘマグルチニン抗原成分を含む(J.M. Woodら: J. Biol. Stand. 5 (1977) 237-247; J. M. Woodら、J. Biol. Stand. 9 (1981) 317-330)。好適には、ワクチン用量は、0.25〜1 ml、好適には0.5 ml〜1 ml、特に、標準的な0.5 mlであろう。用量のわずかな適用を、元のバルクサンプル中でのHA濃度に応じて、また送達経路に応じて日常的に行うことができるが、より少量の用量を、鼻内もしくは皮内経路により与えることができる。
【0094】
一実施形態においては、前記免疫原性組成物は、株あたり15μgのHAの古典的な量を含む。別の実施形態においては、前記免疫原性組成物は、少量のHA抗原、例えば、インフルエンザ株あたり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14μgのいずれかのHAまたは株あたり15μgを超えないHAを含む。前記少量のHA量は、以下に記載のように(表1および記載の特定のパラメーターを参照)、効力に関する少なくとも1個の国際基準、例えば、EUもしくはFDA基準を満たすワクチンの製剤化を可能にするという条件で、実務的に実現可能なほど低いものであってよいが、2個以上、もしくは全ての基準を満足することを確保するか、または株間の生産を標準化するためにより高いものであってもよい。好適な少量のHAは、インフルエンザ株あたり約1〜約7.5μgのHA、好適にはインフルエンザ株あたり約3.75もしくは約3.8μgなどの約3.5〜約5μgのHA、典型的には、インフルエンザ株あたり約5μgのHAである。別の好適な量のHAは、インフルエンザ株あたり約0.1〜約5μgのHA、好適には、インフルエンザ株あたり約1.9μgのHAなどの、インフルエンザ株あたり約1.0〜約2μgのHAである。
【0095】
有利には、本発明に従うワクチン用量、特に、低HA量ワクチンを、一般的には用量あたり約0.5、約0.7または約1 mlである従来の注射用スプリットフルーワクチンよりも少ない容量で提供することができる。本発明に従う低用量は、好適には用量あたり約500μl、典型的には約300μlおよび好適には約200μl以下である。
【0096】
かくして、本発明の一態様に従う好適な低容量ワクチン用量は、低容量中に低い抗原用量を含む用量、例えば、約200μlの容量中の約15μgもしくは約7.5μgのHAまたは約3.0μgのHA(株あたり)である。
【0097】
本発明のインフルエンザ薬剤は、好適にはワクチンに関する特定の国際基準を満たす。標準はインフルエンザワクチンの効力を測定するために国際的に適用される。血清変数を、インフルエンザワクチンの毎年のライセンシング手順に関連する臨床試験(表1A)のためのヒト用医薬品評価欧州委員会(European Agency for the Evaluation of Medicinal Products for Human Use (CHMP/BWP/214/96、欧州医薬品委員会(Committee for Proprietary Medicinal Products) (CPMP)、Note for harmonization of requirements for influenza vaccines, 1997. CHMP/BWP/214/96 circular N 96-0666:1-22)の基準に従って評価する。この要件は、成人集団(18〜60歳)と高齢者集団(60歳を超える)について異なる(表1A)。大流行間期のインフルエンザワクチンについては、少なくとも1個の評価(血清変換因子、血清変換率、血清防御率)は、ワクチン中に含まれる全てのインフルエンザ株について、欧州の要件を満たすべきである。1:40以上の力価比率は、これらの力価が現在利用可能な最良の防御相関であると期待されるため、最も関連すると見なされる[Beyer Wら、1998. Clin Drug Invest.;15:1-12]。
【0098】
「Guideline on dossier structure and content for pandemic influenza vaccine marketing authorisation application」(CHMP/VEG/4717/03、2004年4月5日、またはより最近では、www.emea.eu.intで利用可能な、「Guidelines on flu vaccines prepared from viruses with a potential to cause a pandemic」の表題の2007年1月24日のEMEA/CHMP/VWP/263499/2006)で特定されるように、循環していない株から誘導されるインフルエンザワクチンに関する特定の基準の非存在下では、パンデミック候補ワクチンは(少なくとも)、好適には、ワクチンの2回投与後に、プライミングされていない成人または高齢被験者において、存在するワクチンに関する現在の標準物セットの3個全部を満たすのに十分な免疫応答を引き出すことができるべきである。EMEA指針は、パンデミックの場合、集団が免疫学的にナイーブであり、従って、季節性ワクチンに関する3個全部のCHMP基準がパンデミック候補ワクチンにより満たされると仮定される状況を記載している。血清陰性の被験者のプレ(パンデミック)ワクチン接種においてそれを証明するための明確な要件は必要とされない。
【0099】
本発明の一実施形態に従えば、本発明の加速初回免疫は、抗ヘマグルチニン(抗HA)または血球凝集阻害(HI)抗体に関する体液性免疫応答について、組成物中に含まれるインフルエンザ株(すなわち、相同株)に関する少なくとも1個のそのような基準、好適には、表1Aに記載の防御に関する少なくとも2個、または典型的には3個全部の基準を達成する。少なくとも大流行間期のインフルエンザワクチンについては、認可を取得するためには1個の基準で十分である。
【表1−A】

【0100】
70%の血清防御率は、欧州健康規制当局(CHMP - ヒト用医薬品欧州委員会)により定義されており、毎年の季節性インフルエンザワクチンについて満たすことを通常要求される3個の基準のうちの1個であり、CHMPもパンデミック候補ワクチンが満たすことを期待している。
【0101】
しかしながら、数学的モデリングは、集団レベルで、抗原ドリフトした1種以上の異種株に対して30%しか有効でないワクチンも、パンデミックの規模を低下させるのを助けることにおいて有益であり、パンデミック株に対して30%の効力を有する(プレパンデミック)ワクチン(30%の交叉防御)を用いるパンデミックワクチン接種キャンペーンが、臨床的な攻撃速度を75%効果的に低下させ、結果として、集団内の罹患率/死亡率を低下させることができることを示している(Fergusonら、Nature 2006)。従って、本発明の加速初回免疫は、インフルエンザパンデミック (Ferguson, Nature 2006)または起源で出現するインフルエンザ株の夾雑(Longini, Science 2005)の早期の緩和を達成するための方法である。
【0102】
FDAは、パンデミックインフルエンザワクチンのライセンス交付を支援するのに必要な臨床データに関するドラフトガイダンス(CBERドラフト基準)(Office of Communication, Training and Manufacturers Assistance (HFM-40), 1401 Rockville Pike, Suite 200N, Rockville, MD 20852-1448から、もしくは1-800-835-4709もしくは301-827-1800への電話により、またはhttp://www.fda.gov/cber/guidelines.htmでインターネットから入手可能)を公開しており、提唱された基準はCHMP基準にも基づいている。FDAはわずかに異なる年齢カットオフ点を用いている。好適な評価項目としては同様に、1)1:40以上のHI抗体力価を達成する被験者の割合(%)、および2)ワクチン接種後のHI抗体力価の4倍上昇として定義される血清変換率が挙げられる。幾何学的平均力価(GMT)を結果に含めるべきであるが、そのデータは推定値だけでなく、血清変換の発生率の95%信頼区間の下限も含むべきであり、42日目の1:40以上のHI力価の発生率は目標値を満たすか、またはこれを超えなければならない。従って、これらのデータおよびこれらの評価の推定値の95%信頼区間(CI)を提供すべきである。FDAドラフトガイダンスは、両方も目標を満たすことを要求している。これを表1Bにまとめる。
【表1−B】

【0103】
従って、本発明の一態様においては、意図されるパンデミック組成物の投与により誘導される前記免疫応答または防御が、インフルエンザワクチン効力に関する3個全部のEU規制基準を満たす場合、本明細書で特許請求される組成物、方法または使用が提供される。好適には、少なくとも1個、好適には2個、または3個の以下の基準が、前記組成物のインフルエンザ株について満たされる:
・血清陰性集団中の30%、40%、50%を超える血清変換率;
・血清陰性集団中の60%、70%、80%を超える血清防御率;
・血清陰性集団中の2.0、2.5、3.0、4.0を超える血清変換係数。
【0104】
これらの基準はより長い(21日)間隔で投与される2回用量のワクチンのために設定されているため、2回用量をより短い(14日未満)間隔で投与する場合、これらの基準のいくらかの低下が許容されるであろう。効力の50%または30%の低下は、これが依然として疾患の拡散に対して戦う通常の手段を提供するであろうため、許容し得る。同様に、循環するウイルスがワクチン株のドリフト変異体である状況においては、循環するパンデミック株に対するプレパンデミックワクチンの効力は、循環する株に適合するワクチンのものよりも低い可能性があるであろう。相同株に関する処方された効力基準と比較した応答の低下はパンデミックの拡散に影響するため、異種株に対していくらかのレベルの防御を迅速に提供することが本発明の課題である。典型的には、上記の効力基準の50%の低下、または好適には、30%の低下が、本発明に従って許容されるであろう。好適には、これらの2つの特定の状況、すなわち、ドリフト変異体循環パンデミック株に対するプレパンデミックワクチンの交叉効力、または標準のものと比較した加速初回免疫スケジュールの効力においては、少なくとも1個、好適には2個、または3個の以下の基準が満たされる:
・血清陰性集団中の20%を超える血清変換率;
・血清陰性集団中の40%を超える血清防御率;
・血清陰性集団中の1.5を超える血清変換係数。
【0105】
特定の実施形態においては、上記の基準の1個または全部が、2回目の投与の少なくとも21日後、好適には14日後に満たされる。少なくとも1個の基準が2回目の投与の7日後に満たされるのが本発明の特定の実施形態である。
【0106】
そのような効力は、有利には、防御または交叉防御を与えて、少なくとも50%、または好適には少なくとも75%、全体の感染攻撃率、および結果として集団内の罹患率/死亡率の実質的な低下をもたらすことができるであろう。
【0107】
さらに別の実施形態においては、2回投与初回組成物は、中和抗体力価の幾何学的平均力価(GMT)および中和抗体応答の血清変換率(SCR)(0日目に検出可能な抗体および1:28以上の力価への増加を含まないか、またはワクチン接種後に中和抗体力価の4倍以上の増加を含むワクチンの割合として定義される)により測定されるように、ドリフト変異株に対する中和抗体に関して体液性応答を誘導することができる。好適には、中和抗体に関するこれらの基準の一方または両方が、ドリフト変異株に対して、少なくとも30%の被験者、少なくとも40%、好適には少なくとも50%、または好適には60%を超える被験者において満たされる。好適には、この効果は、7.5μgのHAなどの少量のHAまたは3.8μgもしくは1.9μgのHAなどのさらにより少量の抗原用量を含む組成物について得られる。好適には、この効果は、2回目の投与の少なくとも21日後、好適には14日後に満たされる。少なくとも1個の基準が2回目の投与の7日後に満たされることが本発明の特定の実施形態である。
【0108】
好適には、子供および免疫力が低下集団などの他の集団についても、そのような基準のいずれかまたは全部が満たされる。
【0109】
上記の応答を、最大で14日の短い間隔内で2回用量が投与された後に得ることが本発明の課題である。0〜7日間隔内に2回用量のアジュバント化ワクチンが投与された後に免疫応答が得られるのが本発明の特定の利点である。
【0110】
従って、本発明の一態様においては、インフルエンザに対するヒト個体もしくは集団の初回免疫のため、特に、ヒト個体もしくは集団における免疫応答を促進するための、インフルエンザウイルスもしくはその抗原調製物を含む2回投与一価アジュバント化免疫原性組成物、または2種の異なるインフルエンザウイルス抗原もしくは抗原調製物から構成される2回投与調製物であって、2回初回用量が最大で14日間隔で投与される、前記免疫原性組成物を提供する。特に、前記インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物は、インフルエンザに対する2回投与加速初回ワクチン接種であって、2回投与ワクチン接種が上記のインフルエンザワクチンに関する少なくとも1個、好適には2個または3個の国際規制要件を満たす、前記ワクチン接種のためのワクチン組成物の製造における、非生パンデミックインフルエンザウイルス抗原調製物、スプリットインフルエンザウイルス調製物である。特に、前記2回投与初回免疫は、血清陰性の人々または集団において、30%以下の中和抗体応答に関する血清変換率を達成する。具体的には、前記応答は、相同インフルエンザ株に対して得られる。前記応答が、1個、好適には、2個または3個などの2個以上のドリフト変異インフルエンザ株に対して得られることが特定の実施形態である。
【0111】
別の実施形態においては、前記2回投与初回免疫は、ワクチンインフルエンザ株に対する抗ヘマグルチニン(抗HA)抗体に関して、インフルエンザワクチンに関する以下のCHMP基準の少なくとも1個、少なくとも2個、または3個全部を達成する:
(i)30%、または40%を超える血清変換率;
(ii)60%または70%を超える血清防御率;および
(iii)2.0または2.5を超える血清変換係数。
【0112】
特定の実施形態においては、ドリフト変異パンデミック株に対して(例えば、実際にパンデミックを引き起こすパンデミック株に対して)測定されるか、または21日間隔での標準的な2回投与について得られるものと比較して測定される場合、前記HI抗体応答は、少なくとも1個、好適には2個、または3個の以下のより低い効力基準を満たす:
・血清陰性集団中の20%を超える血清変換率;
・血清陰性集団中の40%を超える血清防御率;
・血清陰性集団中の1.5を超える血清変換係数。
【0113】
特定の実施形態においては、前記2回投与初回免疫は、1種以上のドリフト変異株に対する30%以上の中和抗体応答に関する血清変換率、ならびにさらにワクチンインフルエンザ株に対するヘマグルチニン阻害(HI)抗体に関して少なくとも1個、少なくとも2個、または3個全部のさらなる以下の基準:
(i)30%以上の血清変換率;
(ii)60%以上の血清防御率;および
(iii)2.0以上の血清変換係数、
の両方を達成する。
【0114】
別の特定の実施形態においては、前記1回投与ワクチン接種はまた、またはさらに、インフルエンザに対するCD4 T細胞免疫応答および/またはB細胞記憶応答を生成する。特定の実施形態においては、前記インフルエンザ特異的CD4 T細胞免疫応答は、Th1応答に偏向する。特定の実施形態においては、前記免疫応答は、交叉反応性抗体応答もしくは交叉反応性CD4 T細胞応答またはその両方である。特定の実施形態においては、ヒト患者は、ワクチン株に対して血清陰性であるか、または免疫学的にナイーブである(すなわち、予め存在する免疫を有さない)。具体的には、前記ワクチン組成物は、低いHA抗原量を含む。具体的には、前記ワクチン組成物およびアジュバントは、本明細書で定義される通りである。特に、ワクチン組成物の免疫原特性は、本明細書で定義される通りである。好適には、前記ワクチンを筋肉内投与する。
【0115】
本発明の別の態様においては、第1のインフルエンザ株のドリフト変異体であるインフルエンザ株により引き起こされるインフルエンザ感染に対する防御のための、本明細書で定義される2回投与初回免疫原性組成物の製造における、
(a)第1のインフルエンザ株に由来する、インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物、および
(b)本明細書で定義される水中油乳濁液アジュバント、
の使用を提供する。
【0116】
本発明の1回目のワクチン接種に用いられる免疫原性組成物のさらなる特性
一実施形態においては、前記アジュバント化組成物は、現在利用可能なワクチンが効力を有さないヘマグルチニンにおける小さい(抗原ドリフト)または大きい(抗原シフト)変化を受けた循環する株に対して有用な体液性抗体応答を誘導することができる。
【0117】
別の実施形態においては、前記アジュバント化組成物は、現在利用可能なワクチンが効力を有さないヘマグルチニンにおける小さい(抗原ドリフト)または大きい(抗原シフト)変化を受けた循環する株に対して有用なT細胞応答を促進するさらなる、または代替的な利益を提供することができる。
【0118】
好適には、本明細書で特許請求されるように投与される免疫原性組成物は、免疫学的に刺激されていない患者、すなわち、前記インフルエンザウイルスまたは抗原に対して血清陰性である患者においてT細胞応答を促進するのに有効であろう。
【0119】
本発明においては、加速スケジュールに従って投与された、2回投与初回インフルエンザ免疫原性組成物(一価または多価)は、有利には、相同(パンデミック)ワクチン株に対するT細胞(特に、CD4 T細胞)免疫応答を誘導することができるであろう。特定の実施形態においては、前記T細胞(特に、CD4 T細胞)免疫応答を、パンデミックを引き起こすパンデミックインフルエンザ株などのドリフト変異株に対して得ることもできる。別の特定の実施形態においては、前記インフルエンザ特異的応答は、Th1応答に偏向するであろう。
【0120】
好適には、本発明における使用のためのアジュバント化スプリットインフルエンザ組成物により誘導される前記免疫応答は、より長い間隔、例えば、21日間隔で与えられる2回投与の古典的スケジュールに従って投与される同じ組成物により誘導されるものに劣らない。
【0121】
T細胞(特に、CD4 T細胞)免疫応答を、以下のサイトカインのいずれかを産生する細胞数を測定することにより評価することができる:
・(CD40L、IL-2、IFNγ、TNFαの中で)少なくとも2種の異なる免疫マーカーを産生する細胞、
・少なくともCD40Lと(IL-2、TNFα、IFNγの中で)別の免疫マーカーを産生する細胞、
・少なくともIL-2と(CD40L、TNFα、IFNγの中で)別の免疫マーカーを産生する細胞、
・少なくともIFNγと(IL-2、TNFα、CD40Lの中で)別の免疫マーカーを産生する細胞、
・少なくともTNFαと(IL-2、CD40L、IFNγの中で)別の免疫マーカーを産生する細胞。
【0122】
典型的には、上記の5個の条件のうちの少なくとも1個、好適には、2個以上を満足させることができる。
【0123】
特定の実施形態においては、前記免疫原性組成物の投与はあるいは、またはさらに、in vitroでの分化の刺激により測定されるように、抗原遭遇の際に抗体を分泌する形質細胞に分化することができる末梢血Bリンパ球の頻度により測定されるように、B記憶細胞応答を誘導する(実施例の節、例えば、Elispot B細胞記憶の方法を参照)。
【0124】
好適には、加速投与スケジュールは、T細胞応答に関する交叉反応性、すなわち、パンデミックへの備えにおいて重要なインフルエンザ変異株に対して応答する能力と関連してもよい。この質的および/または量的に類似する応答は、パンデミックの場合は全ての集団において、および特に、血清陰性ヒト集団において有益であり得る。この応答は、パンデミック突発の前またはその開始時での、例えば、ドリフト変異体を含む備蓄ワクチンからのプライミングのための使用にとって有益であろう。これは、全体の罹患率および死亡率の低下ならびに肺炎および他のインフルエンザ様疾患に関する病院への緊急入院の防止をもたらし得る。さらに、それは時間において持続的である、例えば、初回ワクチン接種の1年後でも存在するCD4 T細胞応答を誘導することができる。
【0125】
好適には、プライミングされていない被験者において得られるCD4 T細胞免疫応答は、インフルエンザ株間で共有のエピトープを標的化するCD4 T細胞により測定されるように、交叉反応性CD4 Tヘルパー応答の誘導を含む。相同性および抗原性(ドリフト)インフルエンザ変異株の両方を認識することができるCD4 T細胞は、本文書においては「交叉反応性」と呼ぶ。交叉反応性CD4 T細胞の誘導は、それが交叉防御、換言すれば、異種感染、すなわち、免疫原性組成物中に含まれるインフルエンザ株の変異体(例えば、ドリフト)である循環するインフルエンザ株により引き起こされる感染に対する防御をも提供することができるという点で、本発明の組成物に対してさらなる利点を提供する。これは、循環する株が鶏卵中で増殖するか、または細胞培養物中で産生するのが難しい場合に有利であり、ドリフト変異株の使用を、機能的代替にする。これはまた、被験者が2回投与初回免疫の数ヶ月後もしくはさらに1年後に2回目のワクチン接種を受けた場合に有利であってよく、ワクチン再接種に用いられる免疫原性組成物中のインフルエンザ株は、初回ワクチン接種に用いられる組成物中で用いられる株のドリフト変異株である。これはパンデミック状況においては重要な利点であることがわかっている。例えば、本明細書で定義される加速スケジュールに従って投与された、H5、H2、H9、H7もしくはH6株などの任意のインフルエンザ株を含む一価インフルエンザ免疫原性組成物または少なくとも2種の異なるインフルエンザウイルス抗原もしくは抗原調製物から構成される多価免疫原性組成物は、前記ドリフト株を用いるその後のワクチン接種または該ドリフト株による感染の際に、パンデミック変異体、すなわち、前記パンデミック株のドリフト株に対して応答するより高い能力を提供することができる。
【0126】
ワクチン再接種およびワクチン再接種に用いられる組成物
本発明の一態様は、本明細書で定義される水中油乳濁液アジュバントと共に製剤化された、本明細書で特許請求されるインフルエンザ組成物または抗原変異体インフルエンザ株を含むインフルエンザ組成物を用いて以前にワクチン接種されたヒトのワクチン再接種のためのインフルエンザ免疫原性組成物の製造における、インフルエンザ抗原の使用を提供する。
【0127】
典型的には、ワクチン再接種を、本発明に従う1回目の初回ワクチン接種の少なくとも1ヶ月後、好適には少なくとも2ヶ月後、好適には、少なくとも3ヶ月後、もしくは4ヶ月後、好適には、8〜14ヶ月後、好適には、約10〜12ヶ月後またはさらにより長い期間後に行う。好適には、ワクチン再接種を、1回目のワクチン接種の少なくとも6ヶ月後、好適には8〜14ヶ月後、好適には約10〜12ヶ月後に行う。
【0128】
ワクチン再接種のための免疫原性組成物は、不活化された、組換えの、または生弱毒化された任意の型の抗原調製物を含んでもよい。それは、1回目のワクチン接種に用いられる免疫原性組成物と同じ型の抗原調製物、すなわち、スプリットインフルエンザウイルスもしくはそのスプリットインフルエンザウイルス抗原調製物、全ビリオン、サブユニットインフルエンザウイルス調製物もしくはビロソームを含んでもよい。あるいは、ワクチン再接種のための組成物は、1回目のワクチン接種に用いられるものとは別の型のインフルエンザ抗原、すなわち、スプリットインフルエンザウイルスもしくはそのスプリットインフルエンザウイルス抗原調製物、全ビリオン、サブユニットインフルエンザウイルス調製物もしくはビロソームを含んでもよい。好適には、スプリットウイルスまたは全ビリオンワクチンを用いる。
【0129】
従って、一実施形態においては、本発明は、2回投与初回一価もしくは多価免疫原性組成物、または少なくとも2種の異なるインフルエンザウイルス抗原もしくは本明細書で特許請求される抗原調製物から構成される2回投与初回免疫原性組成物を用いて以前にワクチン接種されたヒトのワクチン再接種のための免疫原性組成物の製造における、インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物の使用を提供する。
【0130】
ワクチン再接種のための組成物は、アジュバント化または非アジュバント化されたものであってよい。一実施形態においては、ワクチン再接種のための組成物はアジュバント化されたものではなく、古典的なインフルエンザワクチンであり、これを用いて、初回ワクチン接種として、アジュバント化されたパンデミックまたは季節性インフルエンザ組成物を受けた被験者にワクチン再接種することができる。これは、追加免疫として市販の非アジュバント化インフルエンザワクチンの使用を可能にするため、有利である。ワクチン再接種のための前記ワクチンは、好適なインフルエンザの季節のWHOに推奨される株から調製された3種の不活化スプリットビリオン抗原、例えば、筋肉内投与されるFluvirin(商標)、もしくはFluarix(商標)/α-Rix(登録商標)/Influsplit SSW(登録商標)もしくはFluLaval(商標)/Fluviral(商標)/GripLaval(商標)、または例えば、皮内投与されるSoluvia(商標)を含んでもよい。あるいは、ワクチン再接種のための非アジュバント化組成物は、鼻内投与される生弱毒化低温適合性FluMist(商標)ワクチンであってもよい。
【0131】
別の実施形態においては、ワクチン再接種のための組成物はアジュバント化されたものである。好適には、ワクチン再接種のための組成物は、水中油乳濁液アジュバント、特に、代謝性油、ステロールおよび/またはトコフェロール、特に、α-トコフェロールなどのトコールと、乳化剤とを含む水中油乳濁液アジュバントを含む。具体的には、前記水中油乳濁液アジュバントは、全量の0.5%〜20%の量の、少なくとも70%強が1μm未満の直径を有する油滴を有する少なくとも1種の代謝性油を含む。あるいは、ワクチン再接種のための組成物は、ミョウバンアジュバント、水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウムまたはその両方の混合物を含む。ワクチン再接種のための組成物は、必要に応じて、3D-MPLもしくはサポニンなどのTLR-4リガンドなどのさらなるアジュバントを含んでもよく、または例えば、ミョウバンもしくはポリホスファゼンなどのミョウバン代替物などの別の好適なアジュバントであってもよい。
【0132】
ワクチン再接種に対する抗体応答を増強する初回免疫原性組成物中に存在するアジュバントの効果は、ワクチン接種または季節性インフルエンザウイルスなどのインフルエンザウイルスによる感染に対する応答が低いことが知られる、高齢者または幼児集団などの血清陰性集団において特に重要である。特に、アジュバント化組成物に関連する利益は、有利には、中和抗体の改善に関して、およびワクチン再接種後のCD4 T細胞応答に関して顕著であろう。
【0133】
本発明における使用のためのアジュバント化組成物は、対応する非アジュバント化ワクチンにより付与される防御と比較して、少なくとも1種または数種のドリフト変異株(例えば、次のインフルエンザの季節に由来するインフルエンザ株、もしくは次のパンデミックインフルエンザ株)に対してより良好な交叉反応性を誘導することができるであろう。前記交叉反応性は、非アジュバント化製剤について得られるものと比較して、より高い持続性を示す能力を有してもよい。ドリフト変異株に対する交叉反応性を増強するアジュバントの効果は、パンデミック状況においては重要である。
【0134】
一実施形態においては、1回目のワクチン接種を、本明細書で定義されるパンデミックインフルエンザ組成物、好適には、スプリットインフルエンザ組成物を用いて行い、ワクチン再接種を以下のように行う。
【0135】
特定の実施形態においては、ワクチン再接種のための免疫原性組成物は、1回目のワクチン接種に用いられるインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物と共通のCD4 T細胞エピトープを共有するインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含む。共通のCD4 T細胞エピトープは、同じCD4細胞により認識され得る異なる抗原に由来するペプチド/配列/エピトープを意味すると意図される(例えば、Gelder Cら、1998, Int Immunol. 10(2):211-22; Gelder CMら、1996 J Virol. 70(7):4787-90; Gelder CMら、1995 J Virol. 1995 69(12):7497-506に記載のエピトープを参照)。
【0136】
本発明に従う実施形態においては、ワクチン再接種のための組成物は、パンデミック株であるインフルエンザ株を含む一価インフルエンザ組成物である。好適な株は、限定されるものではないが、H5N1、H9N2、H5N8、H5N9、H7N4、H7N7、H2N2、H10N7、H5N2、H5N3、H7N2、H7N1、H7N3である。前記株は、初回ワクチン接種に用いられる組成物中に存在するものと同じであるか、またはその1つであってよい。代替的な実施形態においては、前記株は、1回目のワクチン接種に用いられる組成物中に存在する株の変異株、すなわち、ドリフト株であってよい。
【0137】
特定の実施形態においては、ワクチン再接種のための組成物は、多価インフルエンザワクチンである。特に、ワクチン再接種のための組成物が二価、三価または四価ワクチンなどの多価ワクチンである場合、少なくとも1種の株がパンデミック株である。特定の実施形態においては、ワクチン再接種のための組成物中の2種以上の株がパンデミック株である。別の特定の実施形態においては、ワクチン再接種のための組成物中の少なくとも1種のパンデミック株は、1回目のワクチン接種に用いられる組成物中に存在するものと同じ型のものであるか、その1つである。代替的な実施形態においては、少なくとも1種の株は、1回目のワクチン接種に用いられる組成物中に存在する少なくとも1種のパンデミック株の変異株、すなわち、ドリフト株であってよい。ワクチン再接種組成物が多価組成物である場合、全ての株について、理想的には少なくとも2個または3個全部の基準を満たす必要があるであろう。しかしながら、いくつかの環境下では、2個の基準で十分であってよい。例えば、3個の基準のうちの2個について、全ての株により満たされるが、3個目の基準は、いくつかの株であるが、全てではない株(例えば、3種の株のうちの2種)により満たされることが許容される。特定の態様においては、初回ワクチン接種の後、異種インフルエンザ株を含むアジュバント化ワクチン生成物のその後のワクチン接種過程を行う。
【0138】
ワクチン再接種のための別の好適な組成物は、好適なインフルエンザ季節のWHOに推奨される株(H3N2、H1N1、B)から調製される3種の不活化スプリットビリオン抗原を含む三価季節性組成物、または異なる系列に由来するパンデミックインフルエンザ株もしくはB株をさらに含む四価組成物である。
【0139】
ワクチン再接種のための組成物は、1回目のワクチン接種に用いられるものと同じサブタイプのインフルエンザ抗原を含んでもよい。例えば、初回ワクチン接種をパンデミックの公表時に行い、ワクチン再接種を後に行う場合、ワクチン再接種を、初回ワクチン接種に用いられるもの(例えば、H5N1ベトナム)と同じサブタイプのものであるインフルエンザ株(例えば、H5N1ベトナム)を含むワクチンを用いて行う。あるいは、ワクチン再接種のための組成物は、初回ワクチン接種に用いられるものと同じサブタイプのインフルエンザ抗原のドリフト変異株(異なるクレードもしくはサブクレードなど)、例えば、H5N1インドネシアを含んでもよい。別の実施形態においては、ワクチン再接種に用いられる前記インフルエンザ株は、シフト株である、すなわち、初回ワクチン接種に用いられたものとは異なる、例えば、それはH5N2(H5N1と同じHAサブタイプであるが、異なるNAサブタイプ)またはH7N1(H5N1と異なるHAサブタイプであるが、同じNAサブタイプ)などの、異なるHAまたはNAサブタイプを有する。例えば、初回免疫のためのワクチン組成物は、A/インドネシア株を含み、ワクチン再接種のための組成物はA/香港、A/トルコ、A/ベトナムおよび/またはA/安徽省株を含む。
【0140】
好適には、ワクチン再接種は、以下のもののいずれか、好適には2つまたは全部:(i)インフルエンザウイルスもしくはその抗原調製物に対する改善されたCD4応答、または(ii)改善されたB細胞記憶応答または(iii)非アジュバント化インフルエンザウイルスもしくはその抗原調製物を用いる初回ワクチン接種後に誘導される等価な応答と比較して、改善された体液性応答を誘導する。好適には、本明細書で定義されるアジュバント化インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を用いるワクチン再接種後に誘導される免疫応答は、非アジュバント化組成物を用いるワクチン再接種後に誘導される対応する応答と同様であるか、またはそれより高い。
【0141】
好適なプレパンデミックワクチン戦略は、長時間に渡ってこれらのウイルスに対する応答を維持し、拡大させるためには、パンデミックの可能性を有するインフルエンザ株を用いる定期的(1〜2年毎など)な免疫を必要とする。従って、特定の実施形態においては、ワクチン再接種を、初回組成物中で用いられる株の抗原変異体である少なくとも1種のインフルエンザ株を含む組成物を用いて、定期的に、1または2または3または4または5年毎に実行する。継続的なワクチン再接種を、1回目のワクチン再接種過程に用いられる株の抗原変異体である少なくとも1種のインフルエンザ株を含む組成物を用いて行うことができる。
【0142】
さらなる実施形態においては、本発明は、初回加速ワクチン接種を、水中油乳濁液アジュバントを用いてアジュバント化され、パンデミックインフルエンザ株を含むインフルエンザ組成物、好適には、スプリットインフルエンザ組成物を用いて行い、ワクチン再接種を、初回組成物中に含まれるもののドリフト変異株であってよいパンデミックを引き起こすパンデミック株、または古典的な季節性株である、少なくとも1種の循環する株を含む、一価または多価の組成物を用いて行う。
【0143】
任意的な免疫刺激剤
本発明に従う特定の実施形態においては、アジュバントは、上記で定義された量のスクアレンなどの代謝性油、ポリソルベート80などの界面活性剤、および必要に応じて、α-トコフェロールなどのトコールを含む水中油乳濁液アジュバントであり、さらなる免疫刺激剤を含まない。
【0144】
別の実施形態においては、前記組成物は、さらなるアジュバント、特に、TLR-4リガンドアジュバント、好適には、リピドAの非毒性誘導体を含んでもよい。好適なTLR-4リガンドは、脱-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)である。他の好適なTLR-4リガンドはリポポリサッカリド(LPS)およびその誘導体、MDP(ムラミルジペプチド)およびRSVのFタンパク質である。
【0145】
一実施形態においては、前記組成物はさらに、リピドAの非毒性誘導体、特に、モノホスホリルリピドAまたはより具体的には、3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)などのToll様受容体(TLR)4リガンドを含んでもよい。
【0146】
3D-MPLは、Corixa corporation、現在はGSKにより商標MPL(登録商標)(本明細書ではMPLと呼ぶ)の下で販売されており、IFN-γ(Th1)表現型を有するCD4+ T細胞応答を主に促進する。それを、GB 2 220 211 Aに開示された方法に従って製造することができる。化学的には、それは3-脱アシル化モノホスホリルリピドAと、3、4、5または6アシル化鎖との混合物である。特に、本発明の組成物においては、小粒子3D-MPLを用いる。小粒子3D-MPLは、0.22μmのフィルターを通して滅菌濾過することができるような粒子径を有する。そのような調製物は、WO 94/21292および実施例IIに記載されている。
【0147】
好ましくは3D-MPLである前記リポポリサッカリドを、免疫原性組成物のヒト用量あたり、1〜50μgの量で用いることができる。有利には、3D-MPLを、約25μg、例えば、20〜30μg、好適には、21〜29μgまたは22〜28μgまたは23〜27μgまたは24〜26μg、または25μgのレベルで用いる。別の実施形態においては、免疫原性組成物のヒト用量は、約10μg、例えば、5〜15μg、好適には6〜14μg、例えば、7〜13μgまたは8〜12μgまたは9〜11μg、または10μgのレベルの3D-MPLを含む。さらなる実施形態においては、免疫原性組成物のヒト用量は、約5μg、例えば、1〜9μg、または2〜8μgまたは好適には3〜7μgまたは4〜6μg、または5μgのレベルの3D-MPLを含む。
【0148】
MPLの用量は、好適には、ヒトにおいて抗原に対する免疫応答を増強することができる。特に、好適なMPL量は、非アジュバント化組成物と比較して、または別のMPL量でアジュバント化された組成物と比較して、前記組成物の免疫学的能力を改善するが、反応原性プロフィールから許容されるものである。
【0149】
リピドAの合成誘導体は公知であり、いくつかはTLR-4アゴニストとして記載されており、限定されるものではないが、
OM174 (2-デオキシ-6-o-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシルリン酸二水素) (WO 95/14026)、
OM 294 DP (3S, 9 R)-3--[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1,10-ビス(リン酸二水素) (WO99 /64301およびWO 00/0462)、
OM 197 MP-Ac DP (3S-, 9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1-リン酸二水素10-(6-アミノヘキサン酸)(WO 01/46127)、
が挙げられる。
【0150】
他の好適なTLR-4リガンドは、例えば、リポポリサッカリドおよびその誘導体、ムラミルジペプチド(MDP)または呼吸器合胞体ウイルスのFタンパク質である。
【0151】
用いることができる他のTLR4リガンドは、WO9850399もしくはUS6303347に開示されたものなどのアルキルグルコサミニドリン酸(AGP)(AGPの調製のためのプロセスも開示されている)、またはUS6764840に開示されたAGPの製薬上許容し得る塩である。いくつかのAGPはTLR4アゴニストであり、いくつかはTLR4アンタゴニストである。両方ともアジュバントとして有用であると考えられる。
【0152】
TLR-4を介してシグナリング応答を引き起こすことができる他の好適なTLR-4リガンド(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)は、例えば、グラム陰性細菌に由来するリポポリサッカリドおよびその誘導体、またはその断片、特に、LPSの非毒性誘導体(3D-MPLなど)である。他の好適なTLRアゴニストは、熱ショックタンパク質(HSP)10、60、65、70、75もしくは90;界面活性剤プロテインA、ヒアルロナンオリゴサッカリド、硫酸ヘパラン断片、フィブロネクチン断片、フィブリノゲンペプチドおよびb-ディフェンシン-2、ムラミルジペプチド(MDP)または呼吸器合胞体ウイルスのFタンパク質である。いくつかの実施形態においては、TLRアゴニストはHSP60、70または90である。
【0153】
Toll様受容体(TLR)は、昆虫とヒトの間で進化的に保存されたI型膜貫通受容体である。10種のTLRがこれまでのところ確立されている(TLR 1-10)(Sabroeら、JI 2003 P1630-5)。TLRファミリーのメンバーは、類似する細胞外および細胞内ドメインを有する;その細胞外ドメインはロイシンに富む反復配列を有し、その細胞内ドメインはインターロイキン1受容体(IL-1R)の細胞内領域と類似することが示された。TLR細胞は免疫細胞および他の細胞(血管上皮細胞、脂肪細胞、心筋細胞および腸上皮細胞など)の間で示差的に発現される。TLRの細胞内ドメインは、その細胞質領域中にIL-1Rドメインを有する、アダプタータンパク質Myd88と相互作用し、サイトカインのNF-κB活性化を誘導することができる;このMyd88経路は、サイトカイン放出がTLR活性化により行われる1つの方法である。TLRは、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージなど)などの細胞型において主に発現される。
【0154】
TLRを介する刺激による樹状細胞の活性化は、樹状細胞の成熟、およびIL-12などの炎症性サイトカインの産生をもたらす。これまでのところ行われた研究により、TLRは様々な型のアゴニストを認識するが、いくつかのアゴニストはいくつかのTLRと共通であることが見出された。TLRアゴニストは、主に細菌またはウイルスに由来し、フラゲリンまたは細菌リポポリサッカリド(LPS)などの分子が挙げられる。
【0155】
「TLRアゴニスト」とは、直接リガンドとして、または内因性もしくは外因性リガンドの生成を介して間接的に、TLRシグナリング経路を介するシグナリング応答を引き起こすことができる成分を意味する(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。
【0156】
別の実施形態においては、TLR分子の他の天然または合成アゴニストを、任意的な追加の免疫刺激剤として用いる。これらのものとしては、限定されるものではないが、TLR2、TLR3、TLR7、TLR8およびTLR9のアゴニストが挙げられる。
【0157】
本発明の一実施形態においては、TLR-1を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストを用いる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-1を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストを、トリアシル化リポペプチド(LP);フェノール溶解性モジュリン;マイコバクテリウム・ツベルクロシスLP;S-(2,3-ビス(パルミトイルオキシ)-(2-RS)-プロピル)-N-パルミトイル-(R)-Cys-(S)-Ser-(S)-Lys(4)-OH、細菌リポタンパク質のアセチル化アミノ末端を模倣するトリヒドロクロリド(Pam3Cys)LPおよびボレリア・ブルグドルフェリに由来するOspA LPから選択する。
【0158】
代替的な実施形態においては、TLR-2を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストを用いる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-2を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、リポタンパク質、ペプチドグリカン、マイコバクテリウム・ツベルクロシス、ボレリア・ブルグドルフェリ、トレポネマ・パリダムに由来する細菌リポペプチド;スタフィロコッカス・オーレウスなどの種に由来するペプチドグリカン;リポテイコ酸、マンヌロン酸、ナイセリアポリン、細菌線毛、イェルシニアビルレンス因子、CMVビリオン、麻疹ヘマグルチニン、および酵母に由来するザイモサンのうちの1種以上である。
【0159】
代替的な実施形態においては、TLR-3を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストを用いる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-3を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、二本鎖RNA(dsRNA)、またはポリイノシン-ポリシチジル酸(Poly IC)、ウイルス感染に関連する分子核酸パターンである。
【0160】
代替的な実施形態においては、TLR-5を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストを用いる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-5を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、細菌フラゲリンである。
【0161】
代替的な実施形態においては、TLR-6を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストを用いる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-6を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、マイコバクテリウムのリポタンパク質、ジアシル化LP、およびフェノール溶解性モジュリンである。さらなるTLR6アゴニストは、WO2003043572に記載されている。
【0162】
代替的な実施形態においては、TLR-7を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストを用いる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-7を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、一本鎖RNA(ssRNA)、ロキソリビン、位置N7およびC8のグアノシン類似体、またはイミダゾキノリン化合物、もしくはその誘導体である。一実施形態においては、TLRアゴニストはイミキモッドである。さらなるTLR7アゴニストは、WO02085905に記載されている。
【0163】
代替的な実施形態においては、TLR-8を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストを用いる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。好適には、TLR-8を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、一本鎖RNA(ssRNA)、抗ウイルス活性を有するイミダゾキノリン分子、例えば、レシキモッド(R848)である;レシキモッドはまた、TLR-7によっても認識され得る。用いることができる他のTLR-8アゴニストとしては、WO2004071459に記載のものが挙げられる。
【0164】
代替的な実施形態においては、TLR-9を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストを用いる(Sabroeら、JI 2003 p1630-5)。一実施形態においては、TLR-9を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、HSP90である。あるいは、TLR-9を介するシグナリング応答を引き起こすことができるTLRアゴニストは、細菌もしくはウイルスDNA、非メチル化CpGヌクレオチドを含むDNA、特に、CpGモチーフとして知られる配列関係である。CpG含有オリゴヌクレオチドは、主にTh1応答を誘導する。そのようなオリゴヌクレオチドはよく知られており、例えば、WO 96/02555、WO 99/33488ならびに米国特許第6,008,200号および第5,856,462号に記載されている。好適には、CpGヌクレオチドは、CpGオリゴヌクレオチドである。本発明の免疫原性組成物中での使用のための好適なオリゴヌクレオチドは、必要に応じて、少なくとも3個、好適には、少なくとも6個以上のヌクレオチドにより分離された2個以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含有する、CpG含有オリゴヌクレオチドである。CpGモチーフは、シトシンヌクレオチド、次いでグアニンヌクレオチドである。本発明のCpGオリゴヌクレオチドは、典型的には、デオキシヌクレオチドである。特定の実施形態においては、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチド間は、ホスホロジチオエート、または好適にはホスホロチオエート結合であるが、ホスホジエステルおよび他のヌクレオチド間結合も本発明の範囲内にある。また、混合ヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドも本発明の範囲内に含まれる。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドまたはホスホロジチオエートを製造する方法は、米国特許第5,666,153号、同第5,278,302号およびWO95/26204に記載されている。好ましいオリゴヌクレオチドの例は、以下の配列を有する。この配列は、好ましくはホスホロチオエート改変ヌクレオチド間結合を含む:
OLIGO 1(配列番号1): TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (CpG 1826)
OLIGO 2 (配列番号2): TCT CCC AGC GTG CGC CAT (CpG 1758)
OLIGO 3(配列番号3): ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG
OLIGO 4 (配列番号4): TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (CpG 2006)
OLIGO 5 (配列番号5): TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (CpG 1668)
OLIGO 6 (配列番号6): TCG ACG TTT TCG GCG CGC GCC G (CpG 5456)。
【0165】
代替的なCpGオリゴヌクレオチドは、それらが重要でない欠失または付加をその中に有する点で、上記の特定の配列を含んでもよい。本発明において用いられるCpGオリゴヌクレオチドを、当業界で公知の任意の方法により合成することができる(例えば、EP 468520を参照)。便利には、そのようなオリゴヌクレオチドを、自動合成装置を用いて合成することができる。
【0166】
従って、別の実施形態においては、前記アジュバントおよび免疫原性組成物は、TLR-1アゴニスト、TLR-2アゴニスト、TLR-3アゴニスト、TLR-4アゴニスト、TLR-5アゴニスト、TLR-6アゴニスト、TLR-7アゴニスト、TLR-8アゴニスト、TLR-9アゴニスト、またはその組合せからなる群より選択されるさらなる免疫刺激剤をさらに含む。
【0167】
別の実施形態においては、前記アジュバントおよび免疫原性組成物は、サポニンアジュバントをさらに含む。本発明における使用にとって特に好適なサポニンは、Quil Aおよびその誘導体である。Quil Aは、南米の樹木キラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)から単離されたサポニン調製物であり、アジュバント活性を有すると1974年にDalsgaardらにより初めて記載された(“Saponin adjuvants”, Archiv. fur die gesamte Virusforschung, Vol. 44, Springer Verlag, Berlin, p243-254)。Quil Aに関連する毒性を有さずにアジュバント活性を保持するQuil Aの好ましい断片がHPLCにより単離されており、例えば、QS7およびQS21(QA7およびQA21としても知られる)が挙げられる。QS-21は、キラヤ・サポナリア・モリナの樹皮から誘導される天然サポニンであり、CD8+細胞傷害性T細胞(CTL)、Th1細胞および主要なIgG2a抗体応答を誘導し、本発明の内容において好ましいサポニンである。本発明の好適な形態においては、免疫原性組成物内のサポニンアジュバントは、サポナリア・モリナのquil Aの誘導体、好ましくは、Quil Aの免疫学的に活性な画分、例えば、QS-17もしくはQS-21、好適には、QS-21である。一実施形態においては、本発明の組成物は、実質的に純粋な形態の免疫学的に活性なサポニン画分を含む。好ましくは、本発明の組成物は、実質的に純粋な形態のQS21を含み、すなわち、QS21は少なくとも90%純粋であり、例えば、少なくとも95%純粋、または少なくとも98%純粋である。
【0168】
他の有用なサポニンは、植物アスクラス・ヒッポカスタナム(Aesculus hippocastanum)またはギオフィラ・ストラチウム(Gyophilla struthium)に由来する。文献に記載された他のサポニンとしては、トチノキの種子中に存在するサポニン、Lat: アスクラス・ヒッポカスタナムの混合物としてMerck index(第12版、エントリー番号3737)に記載されたエスチンが挙げられる。その単離は、クロマトグラフィーおよび精製(Fiedler, Arzneimittel-Forsch. 4, 213 (1953))、ならびにイオン交換樹脂(Erbringら、米国特許第3,238,190号)により記載されている。エスチンの画分は精製されており、生物学的に活性であることが示されている(Yoshikawa Mら(Chem Pharm Bull (Tokyo) 1996 Aug;44(8):1454-1464))。ジプソフィラ・ストラチウム(Gypsophilla struthium)に由来するサポニン(R. Vochtenら、1968, J. Pharm.Belg., 42, 213-226)も選択肢の一つである。
【0169】
好ましくはQS21である、前記免疫学的に活性なサポニンを、免疫原性組成物のヒト用量あたり、1〜50μgの量で用いることができる。有利には、QS21を、約25μg、例えば、20〜30μg、好適には、21〜29μgまたは22〜28μgまたは23〜27μgまたは24〜26μg、または25μgのレベルで用いる。別の実施形態においては、免疫原性組成物のヒト用量は、約10μg、例えば、5〜15μg、好適には6〜14μg、例えば、7〜13μgまたは8〜12μgまたは9〜11μg、または10μgのレベルのQS21を含む。さらなる実施形態においては、免疫原性組成物のヒト用量は、約5μg、例えば、1〜9μg、または2〜8μgまたは好適には3〜7μgまたは4〜6μg、または5μgのレベルのQS21を含む。
【0170】
3D-MPLおよび/またはQS21の用量は、好適にはヒトにおける抗原に対する免疫応答を増強することができる。特に、好適な3D-MPLおよび/またはQS21量は、非アジュバント化組成物と比較して、または別の3D-MPLもしくはQS21量を用いてアジュバント化された組成物と比較して、組成物の免疫学的能力を改善しながら、反応性プロフィールから許容されるものである。典型的には、ヒトへの投与のために、サポニン(例えば、QS21)および/またはLPS誘導体(例えば、3D-MPL)は、用量あたり10〜50μg、または1μg〜25μgなどの1μg〜200μgの範囲で免疫原性組成物のヒト用量中に存在するであろう。
【0171】
特定の実施形態においては、本発明に従うアジュバントおよび免疫原性組成物は、ステロール(例えば、コレステロール)と共に、上記の油乳濁液中にサポニン(例えば、QS21)および/またはLPS誘導体(例えば、3D-MPL)を含む。これらのステロールは当業界でよく知られており、例えば、コレステロールは、動物脂肪中に認められる天然のステロールとしてMerck index、第11版、341頁に開示されている。さらに、油乳濁液(特に、水中油乳濁液)は、Span 85および/またはレシチンおよび/またはトリカプリリンを含んでもよい。水中油乳濁液、ステロールおよびサポニンを含むアジュバントは、WO 99/12565に記載されている。さらなる免疫刺激剤の例は、本明細書ならびに「Vaccine Design - The Subunit and Adjuvant Approach」、1995, Pharmaceutical Biotechnology, Volume 6, Powell, M.F.(編)、およびNewman, M.J., Plenum Press, New YorkおよびLondon, ISBN 0-306-44867-Xに記載されている。
【0172】
スクアレンおよびサポニン(必要に応じて、QS21)を含有させる場合、製剤にステロール(必要に応じて、コレステロール)を含有させることも有益であるが、これは乳濁液中の油の総量を低下させるからである。これは製造費用の低下、ワクチン接種の全体の快適性の改善、ならびにIFN-γ産生の改善などの、得られる免疫応答の質的および量的改善をももたらす。必要に応じて、ステロール(例えば、コレステロール)も含有させる。
【0173】
必要に応じて、追加の免疫刺激剤が含まれるアジュバントは、幼児用および/または高齢者用ワクチン製剤にとって特に好適である。
【0174】
ワクチン接種手段
本発明の組成物を、皮内、粘膜、例えば、鼻内、経口、筋肉内または皮下などの任意の好適な送達経路により投与することができる。他の送達経路は、当業界でよく知られている。
【0175】
筋肉内送達経路は、アジュバント化インフルエンザ組成物にとって特に好適である。本発明に従う組成物を、特にパンデミックワクチンにとって好適な、単回投与容器、またはあるいは、複数回投与容器中で提供することができる。この例においては、チオマーサルなどの抗微生物保存剤は、典型的には、使用中の夾雑を防止するために存在する。チオマーサル濃度は、25μg/0.5 ml用量(すなわち、50μg/mL)であってよい。好適には、5μg/0.5 ml用量(すなわち、10μg/ml)または10μg/0.5 ml用量(すなわち、20μg/ml)のチオマーサル濃度が存在する。針を用いない液体ジェット注入装置、例えば、Biojector 2000 (Bioject, Portland, OR)などの好適なIM送達装置を用いることができる。あるいは、エピネフリンの自宅での送達に用いられるペン-インジェクター装置などを用いて、ワクチンの自己投与を可能にすることができる。そのような送達装置の使用は、パンデミックの間に必要とされるものなどの大規模免疫キャンペーンに特に従順であってよい。
【0176】
皮内送達は、別の好適な経路である。任意の好適な装置、例えば、WO 99/34850およびEP1092444(参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載のものなどの、皮膚中への針の有効な貫通長さを制限する装置、ならびにその機能的等価物などの針を用いないか、または短い針の装置を、皮内送達に用いることができる。また、液体ジェットインジェクターまたは角質層を貫通し、真皮に到達するジェットを生成する針を介して、液体ワクチンを真皮に送達するジェット注入装置も好適である。また、皮膚の外側層から真皮に向かって粉末形態のワクチンを加速するために圧縮ガスを使用する弾道粉末/粒子送達装置も好適である。さらに、皮内投与の古典的なマントゥー法においては、従来のシリンジを用いることができる。
【0177】
別の好適な投与経路は、皮下経路である。皮下送達のためには、任意の好適な装置、例えば、古典的な針または針を用いないジェットインジェクターサービスを用いることができる。好適には、前記装置に、液体ワクチン製剤を予め充填する。
【0178】
あるいは、前記ワクチンを鼻内投与する。典型的には、前記ワクチンを、好適には、肺に吸入させずに、鼻咽頭領域に局所投与する。ワクチン製剤を肺に進入させないか、または実質的に進入させずに、それを鼻咽頭領域に送達する鼻内送達装置を用いることが望ましい。
【0179】
本発明に従うワクチンの鼻内投与のための好適な装置は、スプレー装置である。それらは当業界で公知である。
【0180】
あるいは、表皮または経皮ワクチン接種経路も本発明において意図される。
【0181】
本発明の一態様においては、1回目の投与のための2回投与初回アジュバント化免疫原性組成物を筋肉内投与し、アジュバント化されていてもいなくてもよいワクチン再接種組成物を異なる経路、例えば、皮内、皮下または鼻内経路を介して投与してもよい。特定の実施形態においては、1回目の投与のための組成物は、パンデミックインフルエンザ株については15μg未満の量のHAを含み、追加免疫用組成物は、標準的な量の15μg、または好適には少量のHA、すなわち、15μg以下のHAを含んでもよく、投与経路に応じて、より少量で投与することができる。
【0182】
ワクチン接種する集団
ワクチン接種する標的集団は、全集団、例えば、健康な若い成人(例えば、18〜60歳)、高齢者(典型的には、60歳を超える年齢)または幼児/子供である。標的集団は、特に、血清陰性または免疫力が低下した集団であってよい。免疫力が低下したヒトは、一般的には、健康な成人と比較して、抗原、特に、インフルエンザ抗原に対してあまり良好に応答することができない。
【0183】
本発明に従う一態様においては、標的集団は、ナイーブ(パンデミック株に対してなど)であるか、またはインフルエンザの季節性感染もしくはワクチン接種に以前に応答できなかった、インフルエンザに対してプライミングされていない集団である。好適には、標的集団は、少なくとも60歳、もしくは65歳以上の年齢の高齢者、医療機関で働く人々などのより若い高危険性の成人(すなわち、18〜60歳)、または心血管および肺疾患、もしくは糖尿病などの危険因子を有する若い成人である。別の標的集団は、6ヶ月齢以上の全ての子供、特に、比較的高いインフルエンザ関連入院率を経験する6〜23ヶ月齢の子供である。別の標的集団は、誕生から6ヶ月齢のより若い子供である。別の標的集団は、2歳未満または9歳未満の子供である。
【0184】
特許出願および認可された特許などの、本出願中の全ての参考文献の教示は、参照により本明細書に完全に組み入れられるものとする。本出願が優先権を主張する任意の特許出願は、刊行物および参考文献のために本明細書に記載された様式で、その全体が参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0185】
本発明を、以下の非限定的な実施例を参照することによりさらに説明する。
【0186】
(実施例)
実施例Iは、マウス、フェレット、ブタおよびヒトの試験において用いられる免疫学的読み出し法を記載する。
【0187】
実施例IIは、例示される試験において用いられる水中油乳濁液アジュバント製剤の調製を記載する。
【0188】
実施例IIIは、スプリットインフルエンザ抗原調製物と水中油乳濁液アジュバントとを含む、2回投与のための初回組成物を用いる加速スケジュールに従って免疫された18〜60歳の成人集団における臨床試験設定を示す。
【0189】
実施例IVは、2回投与スケジュール(21日間隔)に従う、所与の単一又は二重投与のパンデミックインフルエンザ候補ワクチン(AS03でアジュバント化されたスプリットウイルス製剤)で免疫した60歳を超える成人における臨床試験を示す。
【0190】
実施例Vは、アジュバント化スプリットH5N1ワクチンを用いるナイーブなC57Bl/6マウスの加速プライミングの前臨床評価設定を示す。
【0191】
実施例I - 免疫学的読み出し法
I.1. ヒトにおける免疫応答を評価するためのアッセイ
I.1.1. 血球凝集阻害アッセイ
WHO Collaborating Centre for influenza, Centres for Disease Control, Atlanta, USA (1991)により記載された方法を用いてHI抗体を測定することにより、免疫応答を決定した。
【0192】
4血球凝集阻害単位(4 HIU)の好適な抗原および0.5%のトリ(またはH5N1については0.5%ウマ)赤血球懸濁液を用いる標準化され、包括的に検証された微小方法を用いて、解凍された凍結血清サンプル上で抗体力価測定を行った。非特異的血清阻害剤を、熱処理および受容体破壊酵素により除去した。
【0193】
得られた血清を、HI抗体レベルについて評価した。1:10の最初の希釈率から開始して、連続希釈液(2倍ずつ)を1:20480の最終希釈物まで調製した。
【0194】
滴定の終点を、血球凝集の完全な阻害(100%)を示した最も高い希釈段階として得た。全てのアッセイを、2回行った。
【0195】
H5N1への適合
ウマ赤血球を用いるHIの特異的説明:
糖タンパク質(ヘマグルチニン)はウイルスエンベロープ中に位置し、多くの種、例えば、ニワトリの赤血球を凝集させることができる。
【0196】
血球凝集阻害試験を、2つの工程で行う:
1. 抗原-抗体反応:インフルエンザ抗原(DTA、透析試験抗原)は被験者の血清の抗体と反応する。
2. 過剰の抗原の凝集:過剰の抗原は添加された赤血球と反応する。
【0197】
ウマの赤血球を、H5N1パンデミック株のために用いる。
【0198】
0.5%BSA(ウシ血清アルブミン、最終濃度)を含むリン酸バッファー中、0.5%(最終濃度)のウマ赤血球懸濁液。
【0199】
赤血球を同じリン酸バッファーで洗浄した後、遠心分離工程(10分、600xg)を行うことにより、この懸濁液を毎日調製する。この洗浄工程を1回繰り返す必要がある。
【0200】
ウマ赤血球を、患者/被験者の血清と、ウイルス懸濁液との反応混合物に添加した後、ウマ赤血球の低い沈降速度に起因して、プレートを室温(RT、20℃ +/-2℃)で2時間インキュベートする。
【0201】
I.1.2. ノイラミニダーゼ阻害アッセイ
ノイラミニダーゼ阻害アッセイを、フェツイン被覆マイクロタイタープレート中で実施した。抗血清の2倍連続希釈液を調製し、標準化された量のインフルエンザA H3N2、H1N1またはインフルエンザBウイルスと混合した。この試験は、フェツインからノイラミン酸を酵素的に遊離するノイラミニダーゼの生物学的活性に基づいていた。末端ノイラミン酸の切断後、β-D-ガラクトース-N-アセチル-ガラクトサミンを脱マスキングした。ガラクトース構造に特異的に結合する、アラキス・ヒポゲア(Arachis hypogaea)に由来する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)-標識ピーナッツアグルチニンをウェルに添加した。結合したアグルチニンの量を検出し、テトラ-メチルベンズイジン(TMB)との基質反応中で定量した。ウイルスのノイラミニダーゼ活性を依然として少なくとも50%阻害する最も高い抗体希釈率を示し、これがNI力価である。代替的なプロトコルを本発明に従って用いることもできる。
【0202】
I.1.3. 中和抗体アッセイ
中和抗体測定を、解凍した凍結血清サンプル上で行う。血清中に含まれる抗体によるウイルス中和を、マイクロ中和アッセイにおいて決定する。アッセイにおいてさらなる処理を用いずに血清を用いる。各血清を3回試験する。標準化された量のウイルスを、血清の連続希釈液と混合し、インキュベートして、抗体をウイルスに結合させる。次いで、規定量のMDCK細胞を含む細胞懸濁液を、ウイルスと抗血清の混合物に添加し、33℃でインキュベートする。インキュベーション期間の後、ウイルスの複製をニワトリ赤血球の血球凝集により可視化する。血清の50%中和力価を、ReedおよびMuenchの方法(Am.J; Hyg.1938, 27:493-497)により算出する。
【0203】
I.1.4. サイトカインフローサイトメトリー(CFC)による細胞性免疫の評価
末梢血抗原特異的CD4およびCD8 T細胞をin vitroで再刺激して、その対応する抗原とインキュベートした場合、IL-2、CD40L、TNF-αおよびIFNを産生させることができる。結果として、抗原特異的CD4およびCD8 T細胞を、細胞表現型の従来の免疫蛍光標識に従うフローサイトメトリーならびに細胞内サイトカイン産生により数えることができる。本研究においては、インフルエンザ特異的T細胞を再刺激するための抗原としてインフルエンザワクチン抗原を用いる。CD4またはCD8 T細胞サブ集団内で1種または数種の免疫マーカーを産生するインフルエンザ特異的CD4またはCD8 T細胞の頻度として結果を表す。
【0204】
I.1.5. ELISPOTによる記憶B細胞
ELISPOT技術は、所与の抗原に特異的な記憶B細胞の定量を可能にする。CpGと共に5日間培養した後、in vitroで形質細胞に分化するように記憶B細胞を誘導することができる。従って、in vitroで生成された抗原特異的形質細胞を、ELISPOTアッセイを用いて数えることができる。簡単に述べると、in vitroで生成された形質細胞を、抗原で被覆された培養プレート中でインキュベートする。抗原特異的形質細胞は抗体/抗原スポットを形成し、これを従来の免疫酵素手順により検出することができる。本研究においては、インフルエンザワクチン株または抗ヒト免疫グロブリンを用いて培養プレートを被覆して、それぞれ、インフルエンザ特異的抗体またはIgGを分泌する形質細胞を数える。IgGを産生する形質細胞内のインフルエンザ特異的抗体を分泌する形質細胞の頻度として結果を表す。
【0205】
I.1.6. 統計学的方法
I.1.6.1. 免疫原性評価項目
・血球凝集阻害(HI)により測定される、ワクチン-相同およびドリフト変異体季節性またはパンデミックインフルエンザ抗体応答
-観察される変数:インフルエンザHI力価
-誘導される変数(定義については表1Aを参照):
・季節性またはパンデミックインフルエンザHI抗体の幾何学的平均力価(GMT)
・季節性またはパンデミックインフルエンザHI抗体の血清陽性率
・血清変換率(SCR)
・血清変換係数(SCF)
・血清防御率(SPR)。
【0206】
・中和抗体(NAb)力価により測定される、ワクチン-相同およびドリフト変異体H5N1抗体応答
-観察される変数:季節性またはパンデミックインフルエンザNAb力価
-誘導される変数:
・季節性またはパンデミックインフルエンザNAb抗体の幾何学的平均力価(GMT)
・季節性またはパンデミックインフルエンザNAb抗体の血清陽性率
・血清変換率(SCR;ワクチン接種後の力価が少なくとも4倍増加したワクチンの割合として定義される)。
【0207】
・細胞性免疫(CMI)に関するワクチン-相同およびドリフト変異体季節性またはパンデミックインフルエンザ応答
-Th1特異的活性化マーカー(CD40L、IL-2、TNF-α、IFN-γ)を産生する106個あたりのインフルエンザ特異的CD4/CD8 T細胞の頻度
-Th2特異的活性化マーカー(IL-4、IL-5、IL-13、CRTH2)を産生する106個あたりのインフルエンザ特異的CD4/CD8 T細胞の頻度
-106個の細胞あたりのインフルエンザ特異的記憶B細胞の頻度。
【0208】
・ノイラミニダーゼ阻害(NI)により測定される、ワクチン-相同およびドリフト変異体季節性またはパンデミックインフルエンザ抗体応答
-観察される変数:インフルエンザNI力価
-誘導される変数:
・季節性またはパンデミックインフルエンザNI抗体の幾何学的平均力価(GMT)。
【0209】
I.1.6.2. 安全性評価項目
・それぞれのワクチン接種と全体後の7日間の追跡期間(すなわち、ワクチン接種日およびその後の6日間)の間の応答型局所および全身兆候および症候の割合、強度およびワクチン接種との関係。
【0210】
・1回目のワクチン接種と全体後の51日に相当する追跡期間の間の非応答型局所および全身兆候および症候の割合、強度およびワクチン接種との関係。
【0211】
・全試験の間の重篤な有害事象の発生。
【0212】
・生化学的評価および血液学的分析に関する正常値または異常値を有する被験者の数および割合。
【0213】
I.2. マウスの方法
I.2.1. 抗H5N1 ELISA
抗H5N1 IgG抗体の定量を、コーティングとしてスプリットH5N1を用いるELISAにより実施した。ウイルスおよび抗体溶液を、ウェルあたり100μlで用いた。スプリットウイルスH5N1を、PBS中に1μg/mlの最終濃度で希釈し、96穴マイクロタイタープレート(Maxisorb Immunoplate Nunc 439454)のウェルに4℃で一晩吸着させた。次いで、プレートを、1% BSAおよび0.1%Tween 20を含むPBS(飽和バッファー)のウェルあたり200μlと共に37℃で1時間インキュベートした。飽和バッファー中の血清の2倍希釈液12個をH5N1被覆プレートに添加し、37℃で1時間30分インキュベートした。プレートを、PBS 0.1%Tween 20を用いて4回洗浄した。PBS 1%BSA 0.1%Tween 20中、1/1000に希釈されたペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG(Sigma A5278)を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。洗浄工程の後、プレートを、0.1Mクエン酸バッファーpH 4.2中、o-フェニルジアミン(Sigma P4664)0.04%、H2O2 0.03%の溶液と共に22℃で20分間インキュベートした。反応を2N H2SO4で停止させ、490〜630 nmでマイクロプレートを読み取った。
【0214】
I.2.2. 血球凝集阻害(HI)アッセイ
用いるプロトコルを、抗HA抗体を決定するための古典的HIアッセイから適合させ、これはウマRBCの使用に依る。
【0215】
試験原理(古典的手順)
3種の(季節性)インフルエンザウイルス株に対する抗ヘマグルチニン抗体力価を、血球凝集阻害試験(HI)を用いて決定する。HI試験の原理は、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)による赤血球(RBC)の血球凝集を阻害する特異的抗インフルエンザ抗体の能力に基づく。熱不活化血清をカオリンおよびRBCにより処理し、非特異的阻害剤を除去する。予備処理後、血清の2倍希釈液を、4血球凝集単位の各インフルエンザ株と共にインキュベートする。次いで、赤血球を添加し、凝集の阻害をスコア化する。力価を、血球凝集を完全に阻害した血清の最も高い希釈率の逆数として表す。血清の最初の希釈率は1:20であるため、検出されないレベルを、10に等しい力価としてスコア化する。
【0216】
H5N1のための適合(ウマ赤血球を用いるHIの特異的説明)
ウマの赤血球を、H5N1パンデミック株のために用いる。0.5%BSA(ウシ血清アルブミン、最終濃度)を含むリン酸バッファー中の0.5%(最終濃度)のウマ赤血球懸濁液。この懸濁液を、同じリン酸バッファーを用いて赤血球を洗浄した後、遠心分離工程(10分、2000 rpm)を行うことにより、毎日調製する。この洗浄工程を1回繰り返す。血清とウイルス懸濁液の反応混合物にウマ赤血球を添加した後、ウマ赤血球の低い沈降速度に起因して、プレートを室温(RT、20℃+/-2℃)で2時間インキュベートする。
【0217】
統計学的分析
統計学的分析を、UNISTATを用いてワクチン接種後のHI力価に対して実施する。分散分析に適用したプロトコルを以下に記載のように簡単に説明することができる:
・データのLog変換
・群分布の正規性を検証するための各集団(群)に関するShapiro-Wilk検定
・異なる集団(群)間の分散の均一性を検証するためのCochran検定
・選択されたデータに関する分散分析
・2方向ANOVAの相互作用に関する検定
・複数比較のためのTukey-HSD検定。
【0218】
I.2.3. 中和抗体アッセイ
中和抗体測定を、解凍された凍結血清サンプルに対して行った。血清中に含まれる抗体によるウイルス中和を、マイクロ中和アッセイにおいて決定する。血清を、アッセイにおいてさらに処理することなく用いる。各血清を3回試験する。標準化された量のウイルスを血清の連続希釈液と混合し、インキュベートして、抗体をウイルスに結合させる。次いで、規定量のMDCK細胞を含む細胞懸濁液をウイルスと抗血清の混合物に添加し、33℃でインキュベートする。インキュベーション期間の後、ウイルスの複製を、ニワトリ赤血球の血球凝集により可視化する。血清の50%中和力価を、ReedおよびMuenchの方法(Am.J; Hyg. 1938, 27:493-497)により算出する。
【0219】
I.2.4. 細胞内サイトカイン染色(ICS)
この技術により、サイトカイン産生に基づいて抗原特異的Tリンパ球の定量が可能になる:エフェクターT細胞および/もしくはエフェクター-記憶T細胞はIFN-γを産生し、ならびに/または中央記憶T細胞はIL-2を産生する。
【0220】
T細胞のサイトカインの細胞内染色を、免疫の7日後にPBMC上で行う。血液をマウスから採取し、ヘパリン化培地RPMI+Add*中にプールする。血液については、RPMI + Addで希釈されたPBL懸濁液を、推奨されたプロトコル(2500 rpmおよびRTで20分間遠心分離する)に従って、Lympholyte-Mammal勾配上で層化する。境界面の単核細胞を除去し、RPMI + Add中で2倍洗浄し、PBMC懸濁液を、RPMI 5%ウシ胎仔血清中、107細胞/mlに調整する。
【0221】
*RMPI + Addの組成
L-グルタミンを含まないRPMI 1640(Gibco 31870-025/041-01870M)。
【0222】
+添加物(500 mlのRPMIあたり):5 mlの100 mMピルビン酸ナトリウム(Gibcoロット番号11360-039)、5 mlのMEM非必須アミノ酸((Gibcoロット番号11140-035)、5 mlのPen/Strep (Gibcoロット番号20F9252)、5 mlのグルタミン(Gibcoロット番号24Q0803)、500μlの2-メルカプトエタノール1000x(Gibco参照番号31350-010)。
【0223】
PBMCのin vitroでの抗原刺激を、ホルマリン不活化スプリット1μg HA/株を用いて106細胞/ウェル(マイクロプレート)の最終濃度で実行した後、抗CD28および抗CD49d(両方とも1μg/ml)を添加して37℃で2時間インキュベートする。両抗体の添加は増殖ならびに活性化T細胞およびNK細胞によるサイトカイン産生を増加させ、CTL誘導のための共刺激シグナルを提供することができる。
【0224】
抗原再刺激工程後、PBMCを、37℃のブレフェルジン(1μg/ml)の存在下、37℃で一晩インキュベートして、サイトカイン分泌を阻害する。IFN-γ/IL-2/CD4/CD8染色を以下のように実施する:細胞懸濁液を洗浄し、2% Fc遮断試薬(1/50; 2.4G2)を含むPBS 1%FCS(50μl)中に再懸濁する。4℃で10分間インキュベートした後、50μlの抗CD4-PE(2/50)および抗CD8 perCp(3/50)の混合物を添加し、4℃で30分間インキュベートする。
【0225】
PBS 1%FCS中で洗浄した後、200μlのCytofix-Cytoperm (Kit BD)中に再懸濁することにより細胞を透過処理し、4℃で20分間インキュベートする。次いで、細胞をPerm Wash (Kit BD)で洗浄し、Perm Wash中に希釈された抗IFN-γ APC (1/50) + 抗IL-2 FITC (1/50)の混合物50μlを用いて再懸濁する。4℃でインキュベートした後(最小2時間、最大一晩)、細胞をPerm Washで洗浄し、PBS 1% FCS + 1%パラホルムアルデヒド中に再懸濁する。サンプル分析を、FACSにより実施する。生細胞をゲート化し(FSC/SSC)、CD4+ T細胞上、約50,000イベント(リンパ球)または15,000イベントに対して獲得を実施する。IFN-γ+またはIL2+の割合(%)をCD4+およびCD8+ゲート化集団上で算出する。
【0226】
実施例II - 水中油乳濁液およびアジュバント製剤の調製
別途記述しない限り、以下の実施例で用いられる油/水乳濁液は、2種の油(α-トコフェロールおよびスクアレン)からなる有機相と、乳化剤としてTween 80を含むPBSの水相から構成される。別途記述しない限り、以下の水中油乳濁液成分(最終濃度で与えられる):2.5%スクアレン(v/v)、2.5%α-トコフェロール(v/v)、0.9%ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸(v/v)(Tween 80)を含む、以下の実施例で用いられる水中油乳濁液アジュバント製剤を作製した(WO 95/17210を参照)。以下の実施例でAS03と呼ばれるこの乳濁液を、2倍濃縮液として以下のように調製した。
【0227】
II.1. 乳濁液SB62の調製
この方法を、臨床試験および前臨床試験の節で報告される研究において用いた。SB62乳濁液の調製を、疎水性成分(DL-α-トコフェロールおよびスクアレン)から構成される油相と、水溶性成分(陰イオン洗剤Tween 80およびPBS mod(改変)、pH 6.8)を含む水相の強力な攪拌下で混合することにより作製する。攪拌しながら、油相(全量の1/10)を水相(全量の9/10)に移し、混合物を室温で15分間攪拌する。次いで、得られる混合物を、マイクロフルイダイザー(15000 PSI - 実施例IIIに報告される臨床試験で用いられるアジュバント中で8サイクルまたは3サイクル)の相互作用チャンバー中、剪断力、慣性前進力およびキャビテーション力にかけて、μm以下の液滴(100〜200 nmの分布)を作製した。得られるpHは6.8±0.1である。次いで、SB62乳濁液を0.22μmの膜を通す濾過により滅菌し、滅菌バルク乳濁液をCupac容器中、2〜8℃で冷蔵保存する。滅菌不活性ガス(窒素またはアルゴン)を、少なくとも15秒間、SB62乳濁液の最終バルク容器の死容積中にフラッシュする。
【0228】
SB62乳濁液の最終組成は以下の通りである:Tween 80: 1.8%(v/v) 19.4 mg/ml; スクアレン:5%(v/v) 42.8 mg/ml;α-トコフェロール:5%(v/v) 47.5 mg/ml;PBS-mod:NaCl 121 mM、KCl 2.38 mM、Na2HPO4 7.14 mM、KH2PO4 1.3 mM;pH 6.8±0.1。
【0229】
実施例III - 加速2回投与初回免疫スケジュールに従って投与されたH5N1スプリットインフルエンザ抗原調製物およびAS03アジュバントを含む一価インフルエンザワクチンを用いる18〜60歳の成人集団における臨床試験
III.1. 試験設計
III.1.1. 被験者
パンデミック(H5N1)一価アジュバント化インフルエンザワクチンを用いる加速初回ワクチン接種の免疫原性を評価するための、18〜60歳の312人の成人(少なくとも280人の評価可能な被験者を達成するため)を登録する第IIb相、非盲検、無作為化試験。
【0230】
III.1.2. 設計
21日(群1)、14日(群2)、7日(群3)または0日(群4)間隔で、少量のA/インドネシア/5/2005(H5N1)株を含み、AS03でアジュバント化された2回初回用量のインフルエンザワクチンでそれぞれプライミング/投与された4群の被験者。
【0231】
治療群(表2)
・群1:AS03でアジュバント化されたA/インドネシア/5/2005株と共に製剤化され、21日間隔で投与される2回の3.8μg用量のワクチン、
・群2:AS03でアジュバント化されたA/インドネシア/5/2005株と共に製剤化され、14日間隔で投与される2回の3.8μg用量のワクチン、
・群3:AS03でアジュバント化されたA/インドネシア/5/2005株と共に製剤化され、7日間隔で投与される2回の3.8μg用量のワクチン、
・群4:AS03でアジュバント化されたA/インドネシア/5/2005株と共に製剤化され、同じ日に投与される2回の3.8μg用量のワクチン(1回の3.8μg用量/腕)。
【0232】
ワクチン接種スケジュール:表2にまとめる
【表2】

【0233】
III.2. 目的および評価項目
主目的:
加速免疫スケジュールで投与されたAS03と結合させたH5N1抗原が、2回目の投与の14日後に、血清変換率に関するCBER指針標的を満たすか、または超え、またHI力価の逆数≧40の潜在的に有用な達成率(=50%の被験者)を提供する、免疫後のワクチン相同ウイルス血球凝集阻害(HI)力価により測定される免疫応答を引き出すことを証明すること。
【0234】
評価の基準:
H5N1ワクチンの2回目の投与の14日後のA/インドネシア/5/2005ウイルスに対するH5N1血清変換率(SCR)。SCRの98.75%の信頼区間(CI)の下限が任意の治療群において40%以上である場合、所与の治療群におけるAS03と結合させたH5N1抗原が、SCRのCBER指針標的を満たすか、または超える、免疫後のワクチン相同ウイルスHI力価により測定される、免疫応答を引き出すと結論付けられる。
【0235】
H5N1ワクチンの2回目の投与の14日後のA/インドネシア/5/05ウイルスに対するHI力価の逆数が40以上である被験者の割合(潜在的な「血清防御率」についてはSPRと省略される)。SPRの98.75%のCIの下限が任意の治療群において50%以上である場合、所与の治療群におけるAS03と結合させたH5N1抗原が、加速ワクチンスケジュールが適用される場合に2週間以内に有用な集団防御を提供することができる、免疫後のワクチン相同ウイルスHI力価により測定される、免疫応答を引き出すと結論付けられる。
【0236】
副次的目的:
・加速免疫スケジュールで投与されたAS03と結合させたH5N1抗原が、2回目の投与後14日目に、血清変換率、免疫後の発生率、40以上のHI力価の逆数および幾何学的平均倍数の上昇に関するヒト用医薬品評価委員会(CHMP)の指針標的を満たすか、または超える免疫後のワクチン相同ウイルスHI力価により測定される免疫応答を引き出すことを証明すること(CHMP/VWP/263499/2006、CPMP/BWP/214/96)。
【0237】
・加速免疫スケジュールで投与されたAS03と結合させたH5N1抗原が、2回目の投与後21日目に、血清変換率に関するCBER指針標的を満たすか、または超える免疫後のワクチン相同ウイルスHI力価により測定される免疫応答を引き出し、HI力価の逆数が40以上である潜在的に有用な達成率(=50%の被験者)をも提供することを証明すること。
【0238】
・加速免疫スケジュールで投与されたAS03と結合させたH5N1抗原が、2回目の投与後21日目に、血清変換率、免疫後のHI力価の逆数が40以上である発生率および幾何学的平均倍数上昇に関するCHMP指針標的を満たすか、または超える免疫後のワクチン相同ウイルスHI力価により測定される免疫応答を引き出すことを証明すること(CHMP/VWP/263499/2006、CPMP/BWP/214/96)。
【0239】
・1種以上のドリフト変異体ウイルス株に特異的なHI抗体に関して、異なる投与スケジュールにおけるワクチンの免疫原性を説明すること。これを、2回目のワクチン接種後7、14、および21日目に評価する。
【0240】
・1種以上のドリフト変異体ウイルス株に特異的な微小中和力価に関して、異なる投与スケジュールにおけるワクチンの免疫原性を説明すること。これを、2回目のワクチン接種後7、14、および21日目に評価する。
【0241】
・1回目と2回目のワクチン接種の間およびワクチンの1回目の投与後最大6ヶ月までの、ワクチン相同ウイルスおよび1種以上のドリフト変異体ウイルス株に特異的なHI抗体に関する体液性免疫応答の動力学をさらに説明すること。
【0242】
・1種以上のドリフト変異体ウイルス株に特異的な微小中和力価に関するそれぞれの初回ワクチン接種スケジュールにより誘導される体液性免疫応答の動力学をさらに説明すること。これをワクチンの1回目の投与の42日後および6ヶ月後に評価する。
【0243】
・応答型局所および前進反応原性事象、非応答型有害事象(AE)、医学的に付随する事象、および重篤な有害事象に関するそれぞれのワクチン接種スケジュールの安全性/反応原性を説明すること。
【0244】
一次および二次評価項目:
一次免疫原性評価項目は、H5N1ワクチンの2回目の投与の14日後のHI抗体力価により示される、試験ワクチンの2回の投与を受ける被験者におけるワクチン相同ウイルス抗体応答に基づく。
【0245】
・観察される変数:ワクチン相同株に対する血清Hi抗体力価。
【0246】
・誘導される変数:
・血清変換率
・A/インドネシア/5/05に対する1:40以上のHI力価を有する被験者の割合(=血清防御率、SPR)。
【0247】
・H5N1ワクチンの2回目の投与の7、14および21日後にHI抗体応答および微小中和力価(ドリフト変異体H5N1ウイルスのみ)により測定されるような、ワクチン相同ウイルスおよびドリフト変異体H5N1ウイルス抗体応答。現在利用可能な遺伝的に最も遠い変異体ウイルスはクレード1ウイルス(A/ベトナム/1194/04)である;利用可能な場合、他の最近のH5N1単離物に対する応答も試験することができる。
【0248】
III.3. ワクチン組成(表3)
アジュバント化インフルエンザワクチンの調製を、本質的には以前に記載されたプロトコルに基づいて行う(参照により本明細書に組み入れられるものとするUS20070141078A1の下で公開された米国特許出願を参照)。簡単に述べると、試験ワクチンを以下のように製剤化し、投与する。
【表3】

【0249】
臨床候補AS03アジュバント化スプリットウイルスワクチンは、抗原とアジュバントからなる2成分ワクチンである。注射時に、アジュバントと抗原(3.8μgのHA)を混合する。注射される容量は0.5 mlである。ワクチンを非利き腕の三角筋部に投与する。このワクチンは薬剤物質の製造プロセスに由来する以下の残留物を含む:ホルムアルデヒド、オブアルブミン、スクロース、チオマーサルおよびデオキシコール酸ナトリウム。
【0250】
臨床ロットを製造するのに用いられるウイルス株は、クレード2に属する高病原性A/インドネシア/5/2005から誘導され、逆遺伝学により作製されたH5N1ワクチン株A/インドネシア/5/2005組換えH5N1原型ワクチン株である。ワクチンを製造するのに用いられるスプリットウイルス一価バルクを、GSK Biologicalsにライセンス供与された大流行間期インフルエンザワクチンFluarix(商標)/α-Rix(登録商標)に用いられるのと同じ手順に従って製造する。
【0251】
再構成されたAS03アジュバント化パンデミックインフルエンザワクチンの1回用量は、1 mlに相当する。その組成を表3に与える。1回用量は3.8μgのHAを含む。ワクチンは、薬剤物質の製造プロセスに由来する以下の残留物を含む:ホルムアルデヒド、オブアルブミン、スクロース、チオマーサルおよびデオキシコール酸ナトリウム。
【0252】
実施例IV - 60歳を超える成人における2回投与スケジュール(21日間隔)に従って与えられる1回または2回用量のパンデミックインフルエンザ候補ワクチン(AS03でアジュバント化されたスプリットウイルス製剤)の免疫原性および安全性を評価するための第II相臨床試験
IV.1. 試験設計
IV.1.1 被験者:
用量を決定する第I相試験(18〜60歳の健康な成人において行われた試験H5N1-007)で以前に同定されたアジュバント化H5N1ワクチン成人用量の1回用量(3.8μg)または2回用量(2本の異なる腕に同時に与えられる2回の3.8μg、本明細書では以後2x3.8μgと呼ぶ)の免疫原性および安全性を評価するために設計された第II相無作為化非盲検。候補ワクチンを、60歳を超える成人において2回投与スケジュール(21日間隔)に従って投与した。1回および2回用量の非アジュバント化H5N1ワクチンを、比較因子として用いた。
【0253】
IV.1.2. 設計
61歳以上の480人の被験者を、4つの群に割り振った:
・H5N1/AS03/3.8μg HA(3.8/AS群とも呼ぶ):0日目および21日目に1回用量(3.8μg)のパンデミックインフルエンザワクチン(H5N1 + AS03)を受ける180人の被験者、
・H5N1/3.8μg HA(3.8/NoAS群とも呼ぶ):0日目および21日目に1回用量(3.8μg)のパンデミックインフルエンザワクチンを受ける60人の被験者、
・H5N1/AS03/2x3.8μg HA(7.5/AS群とも呼ぶ):0日目および21日目に2倍用量(3.8μgを2回与えられる)のパンデミックインフルエンザワクチン(H5N1 + AS03)を受ける180人の被験者、
・H5N1/2x3.8μg HA(7.5/NoAS群とも呼ぶ):0日目および21日目に2倍用量(3.8μgを2回与えられる)の非アジュバント化パンデミックインフルエンザワクチンを受ける60人の被験者。
【0254】
各群の被験者は、年齢:61〜65歳、66〜70歳及び>70歳による割当比率1:1:1で層形成されている。
【0255】
2006年〜2007年の季節のためにインフルエンザワクチンを接種しなかった全ての被験者は、H5N1ワクチンの1回目の投与の少なくとも2週間前にFluarix(商標)NH2006/2007(すなわち、大流行間期GSKインフルエンザワクチン)を受けた。
【0256】
IV.1.3. 目的および評価項目
主目的:
・1回目および2回目のワクチン接種の21日後(HI抗体応答について)ならびに2回目のワクチン接種の21日後(中和抗体応答について)の体液性免疫応答に関する1回または2回用量として投与されるH5N1ワクチンの免疫原性を評価すること。
【0257】
副次的目的:
・以下のことに関して1回または2回用量として投与されるH5N1ワクチンの安全性/反応原性を評価すること:
・ワクチンのそれぞれの投与および全体後の7日間の追跡期間(すなわち、ワクチン接種の当日およびその後の6日間)の応答型局所および全身兆候および症候の割合、強度およびワクチン接種との関係、
・1回目のH5N1ワクチン接種後21日間(すなわち、1回目のワクチン接種の当日およびその後の20日間)および2回目のワクチン接種後30日間(すなわち、2回目のワクチン接種の当日およびその後の29日間)の非応答型局所および全身兆候および症候の割合、強度およびワクチン接種との関係、
・全試験期間の重篤な有害事象(SAE)の発生率。
【0258】
・血液学的および生化学的パラメーターに基づく1回または2回用量として投与されるH5N1ワクチンの安全性を評価すること。
【0259】
・インフルエンザ特異的CD4/CD8 T細胞のin vitroでの再刺激後のTh1-特異的活性化マーカー発現(CD40L、IL-2、TNF-αおよびIFN-γ)に関する細胞性免疫応答を全被験者について0、21および42日目に評価すること。
【0260】
一次評価項目:
H5N1 HI抗体に関する体液性免疫応答について、以下のパラメーター(95%信頼区間[CI])をそれぞれの群について算出した:
・全被験者についての0、21および42日目のH5N1抗体力価の幾何学的平均力価(GMT)、
・全被験者についての21および42日目の血清変換率(SCR)、
・全被験者についての21および42日目の血清変換係数(SCF)、
・全被験者についての0、21および42日目の血清防御率(SPR)。
【0261】
さらに、中和抗体に関する体液性免疫応答を、以下のパラメーター(95% CI)を用いてアジュバント化された群(3.8/ASおよび7.5/AS群)において被験者のサブセットにおいて評価した:
・0および42日目のH5N1抗体力価の幾何学的平均力価(GMT)、
・42日目の血清変換率(SCR)。
【0262】
二次評価項目:
安全性/反応原性評価について:
・H5N1ワクチンのそれぞれの投与および全体後の7日間の追跡期間(すなわち、ワクチン接種の当日およびその後の6日間)の応答型局所および全身兆候および症候の割合、強度およびワクチン接種との関係。
【0263】
・1回目のH5N1ワクチン接種後21日間(すなわち、1回目のワクチン接種の当日およびその後の20日間)および2回目のワクチン接種後30日間(すなわち、2回目のワクチン接種の当日およびその後の29日間)の非応答型局所および全身兆候および症候の割合、強度およびワクチン接種との関係。
【0264】
・全試験期間のSAEの発生率。
【0265】
・生化学的評価および血液学的分析について、それぞれのスケジュール化された時点(0、2、21、23日目)で正常または異常な値を有する被験者の数および割合。
【0266】
細胞性免疫応答評価について:
以下のパラメーター(95%CI)を、全被験者について0、21および42日目に算出した:
・少なくとも2〜4種の異なるTh1特異的活性化マーカー(CD40L、IL-2、TNF-α、IFN-γ)を産生する、試験中の106個あたりのインフルエンザ特異的CD4/CD8 T細胞の頻度、
・少なくともCD40Lおよび別の免疫マーカー(IL-2、IFN-γ、TNF-α)を産生する、試験中の106個あたりのインフルエンザ特異的CD4/CD8 T細胞の頻度、
・少なくともIL-2および別の免疫マーカー(CD40L、IFN-γ、TNF-α)を産生する、試験中の106個あたりのインフルエンザ特異的CD4/CD8 T細胞の頻度、
・少なくともTNF-αおよび別の免疫マーカー(IL-2、IFN-γ、CD40L)を産生する、試験中の106個あたりのインフルエンザ特異的CD4/CD8 T細胞の頻度、
・少なくともIFN-γおよび別の免疫マーカー(CD40L、IL-2、TNF-α)を産生する、試験中の106個あたりのインフルエンザ特異的CD4/CD8 T細胞の頻度。
【0267】
IV.2. 投与されるワクチン
一価スプリットウイルスインフルエンザパンデミック候補ワクチンを、AS03でアジュバント化されたA/ベトナム/1194/2004(H5N1)株から製剤化した。注射された全量は0.5 mlであり、筋肉内投与した。このワクチンは、I型ガラスバイアル中に提供された濃縮不活化スプリットビリオン(H5N1)抗原と、予め充填されたI型ガラスシリンジ中に含まれたAS03アジュバントからなる2成分ワクチンである。非アジュバント化H5N1ワクチンを、比較因子として用いた。
【0268】
スプリット不活化インフルエンザH5N1株の一価バルクのための製造プロセスは、GSK Biologicalsにライセンス供与された大流行間期インフルエンザワクチンFluarix(商標)/α-Rix(登録商標)(WO 02/097072およびWO 2008/009309)の一価バルクのための製造プロセスと同一である。この臨床試験の目的のために、臨床ロットを製造するのに用いられるウイルス株は、A/ベトナム/1194/04株(VT株)から誘導されたH5N1ワクチン株A/ベトナム/1194/04 NIBRG-14組換えH5N1原型ワクチン株である。この株は、逆遺伝学を用いてNIBSCにより開発されたものである(好適な参照はNicolsonら、2005, Vaccine, 23, 2943-2952である)。再集合体株はH5およびN1断片をA/PR/8/34株主鎖に結合させるものであり、H5を遺伝子操作して、元の株の高いビルレンスの原因となるHA切断部位でのアミノ酸の多塩基伸長を排除した。パンデミックインフルエンザワクチン候補の活性物質は、ホルムアルデヒド不活化スプリットウイルス抗原である。
【0269】
AS03アジュバント化不活化スプリットウイルスインフルエンザワクチンは、I型ガラスバイアル中で提供された濃縮不活化スプリットビリオン(H5N1)抗原と、予め充填されたI型ガラスシリンジ中に含まれたAS03アジュバントからなる2成分ワクチンである。再構成されたAS03アジュバント化ワクチンの1回成人用量は0.5 mlに相当する。その組成を表4に与える。
【表4】

【0270】
この試験のために、アジュバントを含む予め充填されたシリンジのそれぞれ0.25 mlの内容物と、一価スプリットインフルエンザウイルス抗原を含むバイアルのそれぞれ0.25 mlの内容物を用いた。内容物をその場で混合した後、0.5 ml用量をシリンジ中に吸引し、筋肉内注射した。注射時に、アジュバントを含む予備充填されたシリンジの内容物を、濃縮不活化スプリットビリオン抗原を含むバイアル中に注入した。3.8μgのヘマグルチニン(HA)を含む、1回用量の再構成されたAS03アジュバント化インフルエンザ候補ワクチンは、0.5 mlに相当する。必要に応じて、製剤化プロセスを、同じ量の抗原およびアジュバントが最終的なワクチン中に存在することを確保するように適合させた。チオマーサルを、10μg/mlの濃度で保存剤として添加する(用量あたり5μg)。
【0271】
IV.3. 免疫原性結果
IV.3.1. HI抗体応答
IV.3.1.1. 幾何学的平均力価
結果を、表5(抗ベトナム(VT)応答)および表6(抗インドネシア(IN)応答)および図1(両方の株に対する応答)に示す。
【表5】

【0272】
抗VT応答に関する中間結果:
1回目のワクチン接種の21日後に評価しても、または2回目のワクチン接種の21日後に評価しても、非アジュバント化ワクチンを接種された被験者と比較して、アジュバント化ワクチンを接種された被験者の群において、GMTが有意に高かった(PI(D21)での16.8〜20.8と比較して、50〜69.4);PII(D42)での22.7〜25.3と比較して126.8〜237.3)。また、GMTは、両方の評価時間でワクチンがアジュバント化されていない場合、3.8または2x3.8製剤と比較可能であった。
【0273】
1回目のワクチン接種の21日後に評価した場合、非アジュバント化群において得られたGMTは、3.8または2x3.8製剤と比較可能であった。しかしながら、2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合、アジュバント化群において得られたGMTは、3.8製剤(126.8)と比較して、2x3.8製剤(237.3)についてより高かった。
【表6】

【0274】
抗IN応答に関する中間結果:
1回目のワクチン接種の21日後に評価しても、2回目のワクチン接種の21日後に評価しても、GMTは、非アジュバント化ワクチンを接種された被験者と比較して、アジュバント化ワクチンを接種された被験者の群において有意に高かった(PI(D21)での5.3〜5.6と比較して6.9〜8.6;PII(D42)での6.1〜6.3と比較して13.7〜24.4)。また、GMTは、両方の評価時間でワクチンがアジュバント化されていない場合、3.8または2x3.8製剤と比較可能であった。
【0275】
1回目の接種の21日後に評価した場合、非アジュバント化群において得られたGMTは、3.8または2x3.8製剤と比較可能であった。しかしながら、2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合、アジュバント化群において得られたGMTは、3.8製剤(126.8)と比較して、2x3.8製剤(237.3)についてより高かった。
【0276】
IV.3.1.2. 血清変換率
結果を表7および図2に示す(両方の株に対する応答)。
【表7】

【0277】
抗VT応答についての血清変換率に関する中間結果:
アジュバント化群に由来する被験者において、60歳を超える成人についてCHMPにより要求される30%を超えるSCR閾値は1回目のワクチン接種の21日後に超え、SCRは2回目のワクチン接種の21日後に有意に増加した。対照的に、非アジュバント化群はいずれも、1回目のワクチン接種の21日後に評価しても、2回目のワクチン接種の21日後に評価しても、30%を超えるSCR閾値に到達しなかった。2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合、3.8製剤(72.4%)と比較して、2x3.8製剤(88.3%)を用いるアジュバント化群において、より高いSCRが得られた。
【0278】
抗IN応答についての血清変換率に関する中間結果:
60歳を超える成人についてCHMPにより要求される30%を超えるSCR閾値は、アジュバント化された2x3.8μg製剤を接種された被験者において2回目のワクチン接種の21日後に満たされた。2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合、3.8製剤(23%)と比較して、2x3.8製剤(40%)を用いるアジュバント化群において、より高いSCRが得られた。
【0279】
IV.3.1.3. 血清防御率
結果を表8および図3に示す(両方の株に対する応答)。
【表8】

【0280】
抗VT応答についての血清防御率に関する中間結果:
アジュバント化群に由来する被験者においては、60歳を超える成人についてCHMPにより要求される60%を超えるSPR閾値は、1回目のワクチン接種の21日後に超え、2回目のワクチン接種の21日後に有意に増加した。対照的に、非アジュバント化群は、1回目のワクチン接種の21日後または2回目のワクチン接種の21日後に60%以上のSCR閾値に到達しなかった。2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合、3.8製剤(83.6%)と比較して、2x3.8製剤(95.9%)を用いるアジュバント化群において、より高いSPRが得られた。
【0281】
抗IN応答についての血清防御率に関する中間結果:
いずれの群も、1回目のワクチン接種の21日後または2回目のワクチン接種の21日後に、60歳を超える成人についてヒト用医薬品欧州委員会(CHMP)により要求される60%を超えるSCR閾値に到達しなかった。2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合、3.8製剤(23%)と比較して、2x3.8製剤(40.7%)を用いるアジュバント化群において、より高いSPRが得られた。
【0282】
IV.3.1.4. 血清変換係数
結果を表9および図4に示す(両方の株に対する応答)。
【表9】

【0283】
抗VT応答についての血清変換係数に関する中間結果:
アジュバント化群に由来する被験者においては、60歳を超える成人についてCHMPにより要求される2.0を超えるSCF閾値は、1回目の接種の21日後に超え、2回目の接種の21日後に有意に増加した。
【0284】
非アジュバント化群に由来する被験者においては、2.0を超える閾値は、1回目のワクチン接種の21日後に2x3.8製剤をワクチン接種された被験者において超え、2回目のワクチン接種の21日後には有意な増加を示さなかった。2.0以上の閾値は、2回目のワクチン接種の21日後にのみ、3.75製剤をワクチン接種された被験者において超えた。2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合、3.8製剤(11.2)と比較して、2x3.8製剤(23.2)を用いるアジュバント化群において、より高いSCFが得られた。
【0285】
抗IN応答についての血清変換係数に関する中間結果:
アジュバント化群に由来する被験者においては、60歳を超える成人についてCHMPにより要求される2.0を超えるSCF閾値は、2回目のワクチン接種の21日後に満たされた。2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合、3.8製剤(2.7)と比較して、2x3.8製剤(4.8)を用いるアジュバント化群において、より高いSCFが得られた。
【0286】
IV.3.2. 基線血清状態により階層化されたHI抗体応答(抗ベトナム応答)
IV.3.2.1. 血清変換率
結果を、表10(ワクチン接種前にA/ベトナム/1194/2004に対して血清陰性の被験者)、表11(ワクチン接種前にA/ベトナム/1194/2004に対して血清陽性の被験者)および図5に示す。
【表10】

【0287】
A/ベトナム/1194/2004に対して最初は血清陰性の被験者における抗VT応答についての血清変換率に関する中間結果:
アジュバント化群に由来する被験者においては、60歳を超える成人についてCHMPにより要求される30%を超えるSCR閾値は、1回目のワクチン接種の21日後に超え、SCRは2回目のワクチン接種の21日後に有意に増加した。対照的に、非アジュバント化群はいずれも、1回目のワクチン接種の21日後または2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合でも、30%を超えるSCR閾値に到達しなかった。2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合、3.8製剤(73.3%)と比較して、2x3.8製剤(94.6%)を用いるアジュバント化群において、より高いSCRが得られた。
【表11】

【0288】
A/ベトナム/1194/2004に対して最初から血清陽性の被験者における抗VT応答についての血清変換率に関する中間結果:
アジュバント化群に由来する被験者においては、60歳を超える成人についてCHMPにより要求される30%を超えるSCR閾値は1回目のワクチン接種の21日後に超えたが、2回目のワクチン接種の21日後にはさらに有意な増加は観察されなかった。非アジュバント化群内では、2x3.8製剤のみが、2回目のワクチン接種の21日後に30%を超えるSCR閾値に到達した。1回目のワクチン接種の21日後および2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合、2x3.8製剤と3.8製剤の間で、アジュバント化群における有意な差異は観察されなかった。
【0289】
IV.3.2.2. 血清防御率
結果を、表12(ワクチン接種前にA/ベトナム/1194/2004に対して血清陰性の被験者)、表13(ワクチン接種前にA/ベトナム/1194/2004に対して血清陽性の被験者)および図6に示す。
【表12】

【0290】
A/ベトナム/1194/2004に対して最初は血清陰性の被験者における抗VT応答についての血清防御率に関する中間結果:
アジュバント化群に由来する被験者においては、60歳を超える成人についてCHMPにより要求される60%を超えるSPR閾値は2回目のワクチン接種の21日後に超え、1回目のワクチン接種の21日後から2回目のワクチン接種の21日後まで、SPRの有意な増加が認められた。非アジュバント化群はいずれも、1回目のワクチン接種の21日後または2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合でも、60%を超えるSPR閾値に到達しなかった。2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合、3.8製剤(73.3%)と比較して、2x3.8製剤(94.6%)を用いるアジュバント化群において、より高いSPRが得られた。
【表13】

【0291】
A/ベトナム/1194/2004に対して最初から血清陽性の被験者における抗VT応答についての血清防御率に関する中間結果:
アジュバント化群に由来する被験者においては、60歳を超える成人についてCHMPにより要求される60%を超えるSPR閾値は1回目のワクチン接種の21日後に超えたが、2回目のワクチン接種の21日後にはさらに有意な増加は観察されなかった。非アジュバント化群内では、2x3.8製剤のみが、2回目のワクチン接種の21日後に60%を超えるSCR閾値に到達した。1回目のワクチン接種の21日後および2回目のワクチン接種の21日後に評価した場合、2x3.8製剤と3.8製剤の間で、アジュバント化群における有意な差異は観察されなかった。
【0292】
IV.3.2.3. 血清変換係数
結果を、表14(ワクチン接種前にA/ベトナム/1194/2004に対して血清陰性の被験者)、および表15(ワクチン接種前にA/ベトナム/1194/2004に対して血清陽性の被験者)に示す。
【表14】

【0293】
A/ベトナム/1194/2004に対して最初は血清陰性の被験者における抗VT応答についての血清変換係数に関する中間結果:
3.8製剤(1.9)を用いる非アジュバント化群を除いて、1回目のワクチン接種の21日後の全ての群が、2.0を超えるSCF閾値に到達した。2回目のワクチン接種の21日後に、全ての群は閾値に到達した。1回目のワクチン接種の21日後から2回目のワクチン接種の21日後までに、アジュバント化群においては有意な増加が観察されたが、そのような有意な増加は非アジュバント化群においては観察されなかった。
【表15】

【0294】
A/ベトナム/1194/2004に対して最初から血清陽性の被験者における抗VT応答についての血清変換係数に関する中間結果:
3.8製剤(D21で1.4およびD42で1.9)を用いる非アジュバント化群を除いて、1回目および2回目のワクチン接種の21日後の全ての群が、2.0を超えるSCF閾値に到達した。1回目のワクチン接種の21日後から2回目のワクチン接種の21日後までに、3.8製剤を用いるアジュバント化群においてのみ有意な増加が観察された。
【0295】
IV.3.3. 中和抗体応答(アジュバント化群の被験者のサブセットにおける抗インドネシア応答)
IV.3.3.1. 幾何学的平均力価
結果を表16に示す。
【表16】

【0296】
抗IN応答についての幾何学的平均力価に関する中間結果:
ワクチン接種前には、GMTは両アジュバント化群において類似していた(3.8/AS群においては44.2および7.5/AS群においては39.7)。2回目の投与後、GMTはそれぞれの群において有意に増加した(3.8/AS群においては107.5および7.5/AS群においては169.6)。
【0297】
IV.3.3.2. 血清変換率
結果を表17に示す。
【表17】

【0298】
抗IN応答についての血清変換率に関する中間結果:
2回目の投与後に、3.8/AS群(28.7%)と比較して7.5/AS群(48.8%)において、より高いSCRに関する傾向が認められた。注目すべきことに、1:40および1:80の中和抗体力価を達成する被験者の割合は、3.8/AS群と比較して、7.5/AS群においてより高かった。
【0299】
IV.3.4. A/ベトナム/1194/2004に対する細胞性免疫応答(インフルエンザ特異的CD4 T細胞)
結果を表18および図7に示す。
【表18】

【0300】

【0301】
A/ベトナム/1194/2004に対する細胞性免疫応答(インフルエンザ特異的CD4 T細胞)に関する中間結果:
抗原特異的Th1 CD4 T細胞応答は、全ての試験群において引き出された。しかしながら、これらは2つの非アジュバント化群においては低い振幅のものであった。アジュバント化試験群においては、これらはより高い振幅のものであった。これらの後者の群においては、その値は2回目の投与後に顕著に増加したが、その増加は3.8/NoAS群においてはあまり顕著ではなく、7.5/NoAS群においては低下する傾向さえ見られた。
【0302】
IV.4. 結論
全てのアジュバント化群は、2回目のワクチン接種後にA/ベトナム/1194/2004に対する3個全部のCHMP基準を満足した。
【0303】
また、ワクチン接種前にA/ベトナム/1194/2004に対して既に血清陽性であったアジュバント化群の被験者においては、1回目のワクチン接種後にA/ベトナム/1194/2004に対して3個全部のCHMP基準が満たされた。換言すれば、このサブ集団においては、1回目のワクチン接種の21日後に早急に、確立されたライセンス供与するCHMP基準を満足する相同なH5N1 HI応答を生じるには、1回[=1 x 3.8μg+AS]または2回[=2 x 3.8μg+AS]用量のワクチンで十分であった。
【0304】
しかしながら、ワクチン接種前にA/ベトナム/1194/2004に対して血清陰性であったアジュバント化群の被験者は、3個のCHMP基準を満たすH5N1 HI応答を引き出すにはワクチンの2回投与を必要とした。
【0305】
アジュバント化群においてはより良好な異種(抗IN)応答が観察されたが、いくつかのCHMP基準はワクチン接種の2回投与後に達成された(7.5/AS群についてはSCRならびに3.8/ASおよび7.5/AS群についてはSCF)。
【0306】
アジュバント化群においてはより良好な細胞性免疫、インフルエンザ特異的Th1 CD4 T細胞応答が観察されたが、これらの群においては2回目のワクチン投与後にさらに相当な増加が観察された。
【0307】
実施例V - アジュバント化スプリットH5N1ワクチンを用いるナイーブなC57Bl/6マウスの加速プライミングの前臨床評価
V.1. 実験設計および目的
H5N1ナイーブマウスにおける2回の実験を実施して、ワクチン接種スケジュールの影響または体液性応答の強度および動力学に関するAS03でアジュバント化されたH5N1スプリットワクチン(A/ベトナム/1194/04もしくはA/インドネシア/5/05)の2回の投与間のタイミングを評価した。AS03でアジュバント化されたH5N1スプリットワクチンを、0、7、14または21日間隔で投与した。さらに、相同な追加免疫を、2回目の免疫の84日後に実施した。体液性免疫応答の動力学を、2回目の免疫の7、14、21、42および84日後に評価した。さらに、応答の規模を、追加免疫の21日後に測定した。
【0308】
V.1.1. 治療群(表19Aおよび19B)
20匹の成体雌ナイーブC57Bl/6マウスの群は、全量50μlのパンデミックH5N1候補ワクチンを、0日目に1回もしくは2回の筋肉内投与、または7、14もしくは21日間隔で2回の投与を受けた。さらに、1〜5群においては、追加免疫を最後の免疫の84日後に実施した。
【0309】
マウスを、AS03でアジュバント化されたスプリット抗原を含む製剤で免疫した。免疫に用いた株は、H5N1 A/ベトナム/1194/04またはH5N1 A/インドネシア/5/05ウイルス抗原(ヒト用量の1/10に相当する0.38μg/株)を含んでいた。
【表19−A】

【0310】
【表19−B】

【0311】
V.1.2. 読み出し(表20)
体液性免疫応答を、血球凝集アッセイおよび中和アッセイにより、2回目の免疫(2匹のマウスの10個のプールにプールされた20匹のマウス/群)の7、14、21、42および約3ヶ月後に測定した。
【表20】

【0312】
V.2. 結果
V.2.1. A/ベトナム/1194/04ワクチン:表19Aならびに図8および図9
7、14または21日間隔で投与されたAS03でアジュバント化された2回用量のA/ベトナム/1194/04で免疫されたマウスは、0日目に投与されたAS03でアジュバント化された1回または2回の同時用量のA/ベトナム/1194/04ワクチンで免疫されたマウスと比較して、2回目の免疫の7、14および21日後により高いHIおよび中和抗体応答を示した。
【0313】
14または21日間隔で投与されたAS03でアジュバント化された2回用量のA/ベトナム/1194/04ワクチンで免疫されたマウスは、7日間隔でAS03でアジュバント化された2回用量のA/ベトナム/1194/04ワクチンで免疫されたマウスと比較して、2回目の免疫の7、14および21日後により高いHIおよび中和抗体力価を有していた。
【0314】
AS03でアジュバント化されたA/ベトナム/1194/04ワクチンの2回投与間の間隔(7、14または21日間隔)がどんなものでも、同様の持続的な免疫応答(HIおよび中和抗体力価)が2回目の免疫の42または84日後に観察された。
【0315】
さらに、84日目でのAS03でアジュバント化されたA/ベトナム/1194/04ワクチンを用いる追加免疫により、0、7、14または21日間隔で投与された1回または2回用量のAS03でアジュバント化されたA/ベトナム/1194/04で免疫された全てのマウスにおいて、同様のHI力価が得られた。
【0316】
V.2.1. A/インドネシア:表19Bならびに図10および図11
AS03でアジュバント化され、7、14または21日間隔で投与された2回用量のA/インドネシア/5/05で免疫されたマウスは、AS03でアジュバント化され、0日目に投与された1回または2回用量のA/インドネシア/5/05ワクチンで免疫されたマウスと比較して、2回目の免疫の7、14、21、42および84日後により高いHIおよび中和抗体応答を示した。
【0317】
AS03でアジュバント化され、14または21日間隔で投与された2回用量のA/インドネシア/5/05ワクチンで免疫されたマウスは、7日間隔でAS03でアジュバント化された2回用量のA/インドネシア/5/05ワクチンで免疫されたマウスと比較して、2回目の免疫の7、14、21、42および84日後により高いHIおよび中和抗体力価を有していた。
【0318】
同じワクチンを用いる免疫の84日後のAS03でアジュバント化されたA/インドネシア/5/05ワクチンを用いる追加免疫により、AS03でアジュバント化され、0、7、14または21日間隔で投与された1回または2回用量のA/インドネシア/5/05で免疫された全てのマウスにおいて、同様のHI力価が得られた。
【0319】
V.2.2. 結論
AS03でアジュバント化された両方のH5N1ワクチン(A/ベトナム/1194/04またはA/インドネシア/5/05)について、7、14または21日間隔で2回用量を用いて免疫されたマウスは、0日目に投与された1回または2回用量の同じワクチンで免疫されたマウスと比較して、より高い体液性免疫応答を示した。
【0320】
さらに、7日間隔で2回用量を用いて免疫されたマウスと比較して、14または21日間隔でAS03でアジュバント化された2回用量のH5N1ワクチン(A/ベトナム/1194/04またはA/インドネシア/5/05)を用いて免疫されたマウスにおいて、より高い体液性免疫応答が得られた。
【0321】
最後に、1回または2回用量のアジュバント化ワクチンの投与スケジュールがどんなものでも、AS03でアジュバント化された同様のワクチンを用いる追加免疫は、全てのマウスにおいて同様の体液性免疫応答を誘導した。さらに、このデータは、スケジュールまたは投与の回数に関係なく同様の免疫プライミングが存在する可能性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザに対するヒト個体または集団の2回投与初回ワクチン接種のための免疫原性組成物であって、14日未満の間隔での2回初回用量の投与のために調製される前記組成物の製造におけるインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物の使用。
【請求項2】
インフルエンザに対するヒト個体または集団における免疫応答を促進するためのインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含む2回投与初回免疫原性組成物であって、14日未満の間隔での2回初回用量の投与のために調製される、前記組成物。
【請求項3】
ヒト個体または集団におけるインフルエンザウイルスに対する初回免疫応答を誘導する方法であって、インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含む免疫原性組成物の、14日未満の間隔での2回初回用量の投与を含む、前記方法。
【請求項4】
2回初回用量を0〜10日の間隔で投与する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項5】
2回初回用量を7日の間隔で投与する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項6】
2回初回用量を同じ日に、好ましくは2つの異なる手足に投与する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項7】
初回免疫のための前記組成物をアジュバント化する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項8】
前記アジュバントが、代謝性油、乳化剤および必要に応じて、ステロールおよび/またはトコールを含む水中油乳濁液である、請求項7に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項9】
前記トコールが、α-トコフェロールなどのトコフェロールである、請求項8に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項10】
前記代謝性油がスクアレンである、請求項8または9に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項11】
スクアレンが、前記免疫原性組成物の全量の約0.125%(v/v)〜約5%(v/v)の量で存在する、請求項10に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項12】
前記代謝性油が、前記免疫原性組成物の全量の約0.25%(v/v)〜約1.25%(v/v)の量で存在する、請求項7〜10のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項13】
前記トコフェロールまたはα-トコフェロールが、前記免疫原性組成物の全量の約0.125%(v/v)〜約5%(v/v)の量で存在する、請求項8〜12のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項14】
前記トコフェロールまたはα-トコフェロールが、前記免疫原性組成物の全量の約0.25%(v/v)〜約1.25%(v/v)の量で存在する、請求項8〜13のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項15】
スクアレン:トコフェロールまたはスクアレン:α-トコフェロールの比率が1以下である、請求項8〜14のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項16】
前記乳化剤がポリソルベート80またはTween 80である、請求項7〜15のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項17】
前記乳化剤が、前記免疫原性組成物の全量の約0.1%(v/v)〜約2.0%(v/v)の量で存在する、請求項7〜16のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項18】
前記乳化剤が、前記免疫原性組成物の全量の約0.05%(v/v)〜約0.5%(v/v)の量で存在する、請求項7〜17のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項19】
前記インフルエンザウイルス抗原またはその抗原調製物が、インフルエンザウイルス株あたり、用量あたり15μgを超えない、好ましくは、10μgを超えない量のHA抗原を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項20】
HA抗原の量が、インフルエンザウイルス株あたり、用量あたり1〜7.5μg、または1〜5μgである、請求項19に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項21】
HA抗原の量が、用量あたり約3.8μgまたは約5μgのHAなどの、用量あたり2.5〜7.5μgのHAを含む、請求項20に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項22】
初回ワクチン接種のための前記組成物が一価または多価である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項23】
初回ワクチン接種のための前記組成物が、少なくとも1種のパンデミックインフルエンザウイルス、もしくは少なくとも1種の季節性株、またはその両方を含む、請求項22に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項24】
前記パンデミックインフルエンザウイルス株が、存在する場合、H5N1、H9N2、H5N8、H5N9、H7N4、H7N7、H2N2、H10N7、H5N2、H5N3、H7N2、H7N1、H7N3の群より選択される、請求項23に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項25】
前記インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物が、精製された全インフルエンザウイルス、非生インフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスのサブユニット成分、ビロソームまたはウイルス様粒子の形態にある、請求項1〜24のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項26】
前記インフルエンザウイルスまたはその抗原組成物を、細胞培養物中または孵化鶏卵中で製造する、請求項1〜25のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項27】
前記2回投与初回免疫が、好ましくはドリフト変異体株に対する、30%以上の中和抗体応答に関する血清変換率を達成する、請求項1〜26のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項28】
前記2回投与初回免疫が、抗ヘマグルチニン(抗HA)抗体に関するインフルエンザワクチンのための以下のCHMP基準:
(i)30%以上の血清変換率;
(ii)60%以上の血清防御率;および
(iii)2.0以上の変換係数、
の少なくとも1個、少なくとも2個、または3個全部を達成する、請求項1〜27のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項29】
前記2回投与初回免疫が、好ましくはドリフト変異体インフルエンザ株に対する、30以上の中和抗体応答のための血清変換率、およびさらに好ましくは該ワクチン株に対する、抗ヘマグルチニン(抗HA)抗体に関するさらなる以下の基準:
(i)30%以上の血清変換率;
(ii)60%以上の血清防御率;および
(iii)2.0以上の変換係数、
の少なくとも1個、少なくとも2個、または3個全部の両方を達成する、請求項1〜28のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項30】
前記基準のいずれかを、相同的(ワクチン)インフルエンザ株に対して、または抗原変異体インフルエンザ株に対して、または相同的および抗原変異体ウイルス株の両方に対して達成する、請求項27〜29のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項31】
初回免疫原性組成物中に存在する株の抗原変異体であるインフルエンザ株により引き起こされるインフルエンザ感染の重篤度の低下またはインフルエンザ感染の予防のための、請求項1〜30のいずれか1項に記載の2回投与初回免疫原性組成物の製造における、インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物の使用。
【請求項32】
初回免疫原性組成物中に存在する株の抗原変異体であるインフルエンザ株により引き起こされるインフルエンザ感染の重篤度の低下またはインフルエンザ感染の予防における使用のための、請求項1〜30のいずれか1項に記載のインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含む2回投与初回免疫原性組成物。
【請求項33】
初回組成物が請求項1〜30のいずれか1項に記載の2回投与初回免疫原性組成物であり、インフルエンザ感染が前記初回免疫原性組成物中に存在する株のドリフト変異体により引き起こされる、インフルエンザ株により引き起こされるインフルエンザ感染の重篤度を低下させるか、またはインフルエンザ感染を予防する方法。
【請求項34】
初回免疫のための前記組成物をアジュバント化する、請求項31〜33のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項35】
前記アジュバントが請求項8〜18のいずれか1項に定義されたものである、請求項34に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項36】
前記インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物が、請求項19〜26のいずれか1項に定義されたものである、請求項34または35に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項37】
請求項1〜30のいずれか1項に記載のように以前に免疫されたヒトまたはヒト集団のインフルエンザに対するワクチン再接種のための免疫原性組成物の製造における、インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物の使用。
【請求項38】
請求項1〜30のいずれか1項に記載のように以前に免疫されたヒト個体または集団のインフルエンザに対するワクチン再接種のためのインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含む免疫原性組成物。
【請求項39】
請求項1〜30のいずれか1項に記載のように以前に免疫されたインフルエンザに対してヒト個体または集団をワクチン再接種する方法であって、該ヒトまたは集団に、インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含む免疫原性組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項40】
ワクチン再接種のための組成物がアジュバント化されていないか、またはアジュバントを含む、請求項37〜39のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項41】
ワクチン再接種のための前記組成物が一価または多価である、請求項1〜40のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項42】
前記アジュバントが、存在する場合、水中油乳濁液アジュバントである、請求項40または41に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項43】
ワクチン再接種のための前記免疫原性組成物が、少なくとも1種のパンデミック株もしくは少なくとも1種の季節性株またはその両方に由来するインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含む、請求項37〜42のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項44】
前記パンデミック株が、存在する場合、H5N1、H9N2、H5N8、H5N9、H7N4、H7N7、H2N2、H10N7、H5N2、H5N3、H7N2、H7N1、H7N3の群より選択される、請求項43に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項45】
ワクチン再接種を、初回ワクチン接種のための組成物中に含まれるものの抗原変異体であるインフルエンザウイルス株またはその抗原調製物を含むインフルエンザ組成物を用いて行う、請求項37〜44のいずれか1項に記載の使用、使用のための組成物または方法。
【請求項46】
少なくとも以下の2種の成分:(i)必要に応じてアジュバントと共に製剤化された1回目の用量のインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物;および(ii)必要に応じてアジュバントと共に製剤化された1回目の用量のインフルエンザウイルスまたはその抗原調製物を含むキットであって、前記2回用量が14日未満の間隔以内での投与のためのものである、前記キット。
【請求項47】
前記2種の成分が同じ容器中または別々の容器中にある、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
前記インフルエンザウイルスまたはその抗原調製物が、請求項19〜26のいずれか1項に定義されたものである、請求項46または47に記載のキット。
【請求項49】
前記アジュバントが、存在する場合、水中油乳濁液アジュバントである、請求項46〜48のいずれか1項に記載のキット。
【請求項50】
前記アジュバントが、請求項8〜18のいずれか1項に定義されたものである、請求項49に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−506290(P2011−506290A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536461(P2010−536461)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066815
【国際公開番号】WO2009/071633
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】