説明

インフレートフィルム押出成形システム

本発明は、フィルムチューブ(9)を押出す吹込みヘッド(5)と、フィルムチューブ(9)を挟み込むピンチ・オフ装置(8)と、フィルムチューブ(9)を、吹込みヘッドによるその押出しと挟み込みとの間で案内するフィルム案内要素(7、13、27、28)とを有するインフレートフィルム押出成形システム(1)に関する。本発明によれば、案内要素(7、13、27、28)は、多孔質材料を有しており、微孔質材料を有するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の前提部分に記載されているインフレートフィルム(blown film)押出成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなこのようなインフレートフィルム押出成形システムは知られており、既に長期間使用されている。このようなシステムにはプラスチックが粒状の形態で供給され、該粒状プラスチックは、次に、押出機内で高い圧力効果を受けて粘性マスに可塑化される。圧力による高温を有するこのマスは、吹込みヘッド内で円形に形成されかつ吹込みヘッドからチューブ押出ダイを通って排出される。マスは、チューブ押出ダイを出た直後にフィルムチューブを形成する。しかしながら、フィルムチューブは未だ完全に冷却されていないので、このフィルムチューブの直径は変化することができる。通常、直径は、フィルムチューブの内部に圧縮空気を吹込むことにより増大される。フィルムチューブは、フィルム案内要素から或る距離だけ案内されるか、或いは、フィルム案内要素に沿って直接案内され、これにより、フィルムチューブは常に一定の直径を有する。
【0003】
フィルム案内要素のこの構成は、インフレートフィルム押出成形システムの技術分野でキャリブレーションケージと呼ばれている。キャリブレーションケージを通った後、今や凝固しているフィルムチューブは別のフィルム案内要素に沿って案内され、該フィルム案内要素によりチューブがフラットにされる。このフラット化ユニットは、フィルムチューブをピンチ・オフ装置に供給し、これによりフィルムチューブは2プライフィルムウェブを形成する。用語「ピンチングオフ(pinching off)」とは、フィルムチューブを、完全に並びに不完全にフラット化する加工の両方を含むことを意味する。フィルムチューブを不完全形態にフラット化する加工の後には、例えば、折畳み縁部に沿う長手方向カッティング等の加工段階を更に続けることができる。
【0004】
フィルム案内要素にはボアを点在させることができ、フィルムチューブから遠い側でボアに圧縮空気が供給される。ボア(例えば、0.5mmの直径を有する)を通って流れる圧縮空気は、フィルムチューブがフィルム案内要素に接触しないで案内するような距離にフィルムチューブを維持する。このようにして、フィルムチューブは、損傷を受けることも防止される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボアは、フィルム案内要素がその安定性を失わないようにするため、互いに或る距離を隔てて配置されなくてはならない。しかしながら、このため、フィルムチューブを案内するエアクッションが、フィルムチューブの周囲に均一に作用しなくなる。この結果、フィルムチューブの直径誤差が大きくなってしまう。また、圧縮空気が不均一に付与されるため、フィルムチューブがパタパタ踊り易くなる。
【0006】
従って、本発明の目的は、フィルム案内要素の領域における案内精度を高めることができるインフレートフィルム押出成形システムを示唆することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、特許請求の範囲の請求項1に記載されている特徴により達成される。
かくして、案内要素は、多孔質材料を有しており、微孔質材料を有するのが好ましい。この材料は、複数の連続気孔を有している。従って、フィルム案内要素には、フィルムチューブから遠い側で圧縮空気が供給される。次に、圧縮空気は、フィルムチューブを向いた側に殆ど均一なエアクッションを形成する。このエアクッションの補助により、フィルムチューブの案内の質を高めることができる。このため、フィルムチューブの直径は小さい公差を有する。また、全く均一なエアクッションは、フィルムの付加冷却を引き起こし、これにより、フィルムは高速で冷却される。これは、フィルムの高い透明性に示されている。概して、このような案内要素の使用により、フィルムの品質を、かなり高めることができる。
【0008】
これらの特性を有する材料としては、燒結材料を使用するのが好ましい。燒結材料は後の機械的加工を省略できるため容易に製造できる。
好ましい実施形態では、多孔質材料は、例えば、銅または青銅等の金属成分を有する。これにより材料の高安定性が得られるため、フィルム案内要素を比較的薄く維持できる。
【0009】
本発明によるインフレートフィルム押出成形システムの有利な実施形態では、多孔質材料は、フィルムチューブの搬送ルートと、空気が多孔質材料を通って流れることによりフィルムに力を加える圧縮空気リザーバまたは空気供給ラインとの間に配置される。多孔質材料はプレートまたはシートとして成形することができ、これらのプレートまたはシートの表面は、フィルムチューブに対して平行に配置され、または、実質的に接線方向に配置される。また、プレートまたはシートは容易に曲げることができる。プレートの厚さは、1mmから10mmであり、好ましくは、2mmから5mmである。多孔質材料の平均孔径は、5マイクロメートルから100マイクロメートルであり、特に10マイクロメートルから60マイクロメートルであり、好ましくは、20マイクロメートルから45マイクロメートルである。
【0010】
本発明によるインフレートフィルム押出成形システムの他の有利な設計では、多孔質材料はキャリブレーションケージの領域内に配置されており、多孔質材料で作られた幾つかの隔絶表面はフィルムチューブを向いて配置されている。これらの隔絶表面の全体がチューブの外面の限界を定め、チューブの直径を変えることができる。このようにして、直径を変化させても、高品質のフィルムチューブを製造できる。隔絶表面の少なくとも一部は、他の部分に対し、フィルムチューブの周方向に互い違いに配置されている。
本発明の他の有利な設計形態は、特許請求の範囲の記載および添付図面において特定されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、既知のインフレートフィルム押出成形システム1を示すものである。充填ピース4にはプラスチックが供給され、該プラスチックは、次に押出機3内で可塑化される。これにより得られるマスは、連結ライン14を用いて吹込みヘッド5に供給され、フィルムチューブ9を形成する。フィルムチューブ9は吹込みヘッド5を出て、管状ダイ(図示せず)を通り搬送方向zに移動する。ブロワ15を通る圧縮空気の供給により、フィルムチューブ9は、吹込みヘッド5を出た直後に膨張される。しかしながら、フィルムチューブ9の直径は、キャリブレーションケージ20により限界が定められる。フィルムチューブ9は、キャリブレーションケージ20の内部でプレート28(該プレート28を通って圧縮空気がフィルムチューブに指向される)により案内される。キャリブレーションケージ20は更に、フレーム21と、クロスビーム22および6とを有している。
【0012】
キャリブレーションケージ20を出た後、フィルムチューブ9はフラット化ユニット21内に到達し、該フラット化ユニット21内で、フィルムチューブは殆どまたは完全に2プライフィルムウェブに変形される。フィルムチューブ9は数対の案内要素7と案内要素13との間で案内され、案内要素7および13は、搬送方向zに沿って互いに距離が一定に縮小するように配置されている。フィルムチューブの完全なフラット化は、1対のピンチローラ8からなるピンチ・オフ装置を用いて行われる。今や、フィルムウェブ9は、振動ユニット(図示せず)により案内するか、或いは、フィルムウェブは、図示の装置の場合のように偏向ローラ10を用いて直接巻取り装置11に供給することができる。フィルムウェブ9は、巻取り装置11でロール12に形成される。
【0013】
図2および図3は、本発明によるインフレートフィルム押出成形システム1の断面を示すものである。キャリブレーションケージ20の領域のフレーム25には、幾つかの圧縮空気リザーバ26が配置されている。幾つかの圧縮空気リザーバ26は、搬送方向zで見て互いに上下方向に配置されている。フラット化ユニット21のフレーム25には、同様な圧縮空気リザーバ26が固定されている。しかしながら、指摘しなければならないことは、本発明によるインフレートフィルム押出成形プラント1でも、キャリブレーションケージ20またはフラット化ユニット21は、従来技術から知られている態様で設計できることである。キャリブレーションケージ20の圧縮空気リザーバ26は、これらがフィルムチューブに対して半径方向に移動でき、従ってフィルムチューブ9の直径を定めることができるように、調節ドライブ(図示せず)を用いて支持されている。図3から明らかなように、圧縮空気リザーバ26はキャリブレーションケージの周囲に分散配置されており、異なる平面に配置された圧縮空気リザーバ26は、フィルムチューブ9の周方向φに互い違いに配置されている。
【0014】
圧縮空気リザーバ26には、圧縮空気ライン(図示せず)を用いて圧縮空気が供給される。フラット化ユニット21の圧縮空気リザーバ26には、キャリブレーションケージ20の圧縮空気リザーバよりも高い圧力が加えられる。なぜならば、変形させる目的では、フィルムチューブ9により大きい力を加える必要があるからである。圧縮空気リザーバ26は、フィルムチューブ9を向いた側が、多孔質材料27で作られたプレートにより閉じられているが、多孔質材料27の微孔を通って圧縮空気が流入できる。多孔質材料27で作られたプレートは、圧縮空気がフィルムチューブ9に力を加えて、フィルムチューブ9を、プレートから小さい距離であるが良く限界が定められた距離に維持する。このようにして、フィルムチューブ9は正確な位置で案内される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来技術によるインフレートフィルム押出成形システムを示す概略図である。
【図2】本発明によるインフレートフィルム押出成形システムの吹込みヘッド、キャリブレーションケージおよびフラット化ユニットを示す概略図である。
【図3】図2の線III−IIIの方向から見た図面である。
【符号の説明】
【0016】
1 インフレートフィルム押出成形システム
3 押出機
4 充填ピース
5 吹込みヘッド
6 クロスビーム
7 案内要素
8 ピンチローラ
9 フィルムチューブ
10 偏向ローラ
11 巻取り装置
12 ロール
13 案内要素
14 連結ライン
15 ブロワ
20 キャリブレーションケージ
21 フラット化ユニット
22 クロスビーム
25 フレーム
26 圧縮空気リザーバ
27 多孔質材料で作られたプレート
28 プレート
z フィルムチューブの搬送方向
φ フィルムチューブの周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも次の特徴、すなわち、
フィルムチューブ(9)を押出す吹込みヘッド(5)と、
フィルムチューブ(9)を挟み込むピンチ・オフ装置(8)と、
フィルムチューブ(9)を、吹込みヘッドによるその押出しと挟み込みとの間で案内するフィルム案内要素(7、13、27、28)とを有するインフレートフィルム押出成形システム(1)において、
案内要素(7、13、27、28)は、多孔質材料、好ましくは微孔質材料を有していることを特徴とするインフレートフィルム押出成形システム。
【請求項2】
前記多孔質材料は燒結材料であることを特徴とする請求項1記載のインフレートフィルム押出成形システム。
【請求項3】
前記多孔質材料は、銅または青銅等の金属成分を有することを特徴とする請求項1または2記載のインフレートフィルム押出成形システム。
【請求項4】
前記多孔質材料は、フィルム、および/または、フィルムチューブ(9)の搬送ルートと、空気が多孔質材料を通って流れることによりフィルムに力を加える圧縮空気リザーバまたは空気供給ラインとの間に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のインフレートフィルム押出成形システム。
【請求項5】
前記多孔質材料は1mmから10mmの厚さを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のインフレートフィルム押出成形システム。
【請求項6】
前記多孔質材料は2mmから5mmの厚さを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のインフレートフィルム押出成形システム。
【請求項7】
前記多孔質材料は5マイクロメートルから100マイクロメートルの平均孔径を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のインフレートフィルム押出成形システム。
【請求項8】
前記多孔質材料は10マイクロメートルから60マイクロメートルの平均孔径を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のインフレートフィルム押出成形システム。
【請求項9】
前記多孔質材料は20マイクロメートルから45マイクロメートルの平均孔径を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のインフレートフィルム押出成形システム。
【請求項10】
前記多孔質材料は、キャリブレーションケージ、および/または、ピンチ・オフユニットの領域内に配置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載のインフレートフィルム押出成形システム。
【請求項11】
前記多孔質材料はキャリブレーションケージ(20)の領域内に配置され、多孔質材料(27)で作られた幾つかの隔絶プレートはフィルムチューブを向いて配置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載のインフレートフィルム押出成形システム。
【請求項12】
前記フィルムチューブ(9)の搬送方向(z)の他の部分に対して互い違いに配置された、多孔質材料(27)で作られたプレートの少なくとも一部が、フィルムチューブ(9)の周方向(φ)の他の部分に対しても互い違いに配置されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載のインフレートフィルム押出成形システム。
【請求項13】
請求項4〜10のいずれか1項に記載されているインフレートフィルム押出成形システムを作動させる方法であって、前記空気リザーバ(26)、および/または、空気供給ライン内の圧力は、空気リザーバおよび/または空気供給ラインと周囲空気との間の圧力差が10ミリバールと1バールとの間にあるように調節されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載されているインフレートフィルム押出成形システムを作動させる方法であって、前記空気リザーバ(26)、および/または、空気供給ライン内の圧力は、空気リザーバ(26)、および/または、空気供給ラインと周囲空気との間の圧力差が20ミリバールと200ミリバールとの間にあるように調節されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載されているインフレートフィルム押出成形システムを作動させる方法であって、前記空気リザーバ(26)、および/または、空気供給ライン内の圧力は、空気リザーバ(26)、および/または、空気供給ラインと周囲空気との間の圧力差が10ミリバールと100ミリバールとの間にあるように調節されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか1項に記載されているインフレートフィルム押出成形システムを作動させる方法であって、前記空気リザーバ(26)、および/または、空気供給ライン内の圧力は、空気リザーバ(26)、および/または、空気供給ラインと周囲空気との間の圧力差が30ミリバールと90ミリバールとの間にあるように調節されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−526151(P2007−526151A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501174(P2007−501174)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001923
【国際公開番号】WO2005/084919
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(590002909)ヴィントメーラー ウント ヘルシャー コマンディトゲゼルシャフト (33)
【Fターム(参考)】