説明

ウイルス融合のインヒビターのコレステロール誘導体

本発明は、コレステロールまたはその誘導体にC末端において結合した、包膜ウイルスの1型ウイルス融合誘導タンパク質またはその誘導体のHR2ドメインの少なくとも10個の連続アミノ酸を含む、ウイルス融合を抑制する化合物またはその医薬上許容される塩に関する。したがって、本発明の化合物は、包膜ウイルスにより引き起こされる疾患を予防または治療するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス融合を抑制するための新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
「包膜ウイルス」、例えばオルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、レトロウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルスおよびアルファウイルスは、宿主細胞膜に由来する脂質二重層により包囲されている(OnoおよびFreed,Adv.Virus Res.,2005,273,5419−5442)。このエンベロープは、受容体結合およびウイルスと宿主細胞膜との融合を引き起こす糖タンパク質を含有する。これらのウイルス脂質二重層、特に、それらの細胞膜における脂質に富むラフトには、しばしば、コレステロールおよびスフィンゴミエリンが豊富に存在する(Aloiaら,PNAS,1988,85,900−4および1993,90,5181−5)。
【0003】
HIV−1においては、高度にグリコシル化された前駆体であるgp160として最初に合成される表面糖タンパク質は、内的タンパク質分解により、細胞表面受容体を介してウイルス指向性を決定する表面タンパク質gp120と、膜融合過程をもたらす膜貫通タンパク質gp41とに切断される(Morenoら,Biochimica et Biophysica Acta,2006,1758,111−123)。
【0004】
コレステロールは哺乳類細胞の細胞膜の脂質含量の約30%を占める。膜内のコレステロールおよびスフィンゴ脂質は、しばしば、グリセロ脂質に富む周辺二重層から横方向に隔離されて、「脂質ラフト」として公知の膜ミクロドメインを形成する(P.Casey,Science,1995,268,221−5)。HIVエンベロープgp120の一次受容体であるCD4を包含する多数の膜貫通タンパク質および受容体は、特に、脂質ラフトに富む。細胞およびウイルス内容物の融合および混合を達成するためには、gp41は、標的細胞のCD4一次受容体およびCCR5またはCXCR4補助受容体へのgp120の付着により見かけ上誘発される複雑な一連のコンホメーション変化を受ける必要がある。
【0005】
補助受容体の結合の完了はウイルス膜貫通融合タンパク質gp41の融合活性コンホメーションを与える。gp41のエクトドメインは以下の2つの7回反復構造を含有する:HR1(N末端付近)およびHR2(C末端付近)。疎水性融合ペプチド領域は宿主細胞膜内に挿入され、一方、gp41のHR1領域は三量体コイルドコイル構造を形成する。ついでHR2領域はHR1コイルドコイルの疎水性溝内で折り返されて、融合のためにウイルス性および細胞膜を合体させる熱力学的に安定な6−ヘリックス束を含有するヘアピン構造を形成する(Matthewsら,Nature Reviews Drug Discovery,2004,3,215−225)。
【0006】
また、gp41は、「カベオラ」と称される脂質ラフトのサブセットの構造タンパク質成分であるカベオリン−1と会合することが示されている(Hovanessionら,Immunity,2004,21,617−627)。カベオリン−1はコレステロール結合性タンパク質であり(Murataら,PNAS,1995,92,10339−10343)、したがって、HIV−1と共に、カベオラにはコレステロールが豊富に存在する。
【0007】
厳密なメカニズムがどうであれ、かなりの証拠が包膜ウイルス侵入における脂質ラフトおよびコレステロールの重要性を支持しており、少なくともHIVに関しては、宿主細胞の細胞膜上の脂質ラフトはgp120/CD4/補助受容体相互作用の媒介において必須の役割を果たし、一方、HIVウイルス脂質二重層におけるコレステロール/脂質ラフトはウイルス糖タンパク質の正常な構造および機能の維持、ひいてはウイルス感染性の維持にとって重要であると一般に考えられている(OnoおよびFreed,前掲)。
【0008】
脂質アンカーを含有するタンパク質が一般に見出される。ヘッジホッグタンパク質に関して最近記載された1つのタイプは、タンパク質のC末端アミノ酸に対してエステル化され次いで自己スプライシング反応に付されるコレステロール分子を含む(Tanaka Hallら,Cell,1997,91,85−97)。
【0009】
脂質アンカーがその付随タンパク質を脂質膜に安定に局在化させる相対的能力が広範に研究されている。疎水性修飾の度合と膜挿入の安定性との間に一般的な関係が存在し、準不可逆的結合は分子内の2つの長鎖アンカー、例えばパルミトイルおよびファルネシル、またはヘキサデシルおよびファルネシルの存在を要する(Barderら,Nature,2000,403,223−226)。一方、単一のコレステロール部分により準不可逆的結合が達成される(Petersら,PNAS,2004,101,8531−6)。注目すべきことに、この修飾は、異なる脂質を介して通常はアンカー(固定)されるタンパク質(N−Ras)に有効である。
【0010】
ペプチドを膜に標的化する一般的利点は、その濃度を大量の水相に対して有効に増加させることである。これは膜結合受容体に対するその結合アフィニティの増強をもたらす。
【0011】
作用メカニズムとして融合を標的化するペプチド、タンパク質および抗体を含む抗ウイルス剤の場合、多数の例が、該インヒビターを膜にアンカーする利点を実証している。HIVの場合には特に、融合インヒビターT20(エンフビルチド、Fuzeon(登録商標))(Matthewsら,前掲)、短いリンカーおよび膜貫通(TM)ドメインを含む構築物は、TMドメインを欠く同じ構築物より遥かに強力なインヒビターであった(Egelhoferら,J.Virol,2004,78,568−575)。重要なことに、該遊離ペプチドを完全に不活性化する、Trpに富む領域における突然変異は、該膜アンカー体の効力を減少させなかった(Hildingerら,J.Virol,2001,75,3038−3042)。同様に、リポソーム内に取り込まれたgp41のTMドメインおよび全C末端7回反復HR2を含む構築物は強力な抗ウイルス活性を有していた(Lenzら,J.Biol Chem.,2004,280,4095−4101)。
【0012】
融合インヒビターT20へのC末端オクチル基の付加はその抑制効力における有意な増強を誘発した。さらに、オクチル化は、それを行わなければ不活性な突然変異体(これにおいては、C末端残基GNWFがANAAにより置換されている)の活性をレスキューすることが可能であった。C末端オクチル基を含有する突然変異体は、野生型T20の場合と同様の効力を示した。重要なことに、N末端誘導体化は抗ウイルス効力に影響を及ぼさなかったため、該オクチル基の位置が決定的に重要であった(Peisajovichら,J.Biol.Chem,2003,278,21012−7)。最近、T20と比較した場合の第2世代インヒビターT1249の臨床的効力の増強の理由として、膜内への分配能の増強が提示された(Veigaら,J.Am.Chem.Soc,2004,126,14758−63)。
【0013】
抗ウイルス効力を著しく増強するために、HIV補助受容体CCR5の天然リガンドであるケモカインRANTESの、疎水性基でのN末端伸長が用いられている。該タンパク質との連結の疎水性および化学的性質が最大効力のために重要であった(Mosierら,1999,J.Viral,1999,73,3544−50)。
【0014】
また、可溶性タンパク質として産生された場合にHIV−1の侵入を抑制しなかった真正の非中和抗体が膜貫通アンカードメインとの融合により標的細胞の細胞表面にアンカーされた場合、それは中和抗体として作用したことが示されている(Leeら,J.Immunol,2004,173,4618−26)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】OnoおよびFreed,Adv.Virus Res.,2005,273,5419−5442
【非特許文献2】Aloiaら,PNAS,1988,85,900−4および1993,90,5181−5
【非特許文献3】Morenoら,Biochimica et Biophysica Acta,2006,1758,111−123
【非特許文献4】P.Casey,Science,1995,268,221−5
【非特許文献5】Matthewsら,Nature Reviews Drug Discovery,2004,3,215−225
【非特許文献6】Hovanessionら,Immunity,2004,21,617−627
【非特許文献7】Murataら,PNAS,1995,92,10339−10343
【非特許文献8】Tanaka Hallら,Cell,1997,91,85−97
【非特許文献9】Barderら,Nature,2000,403,223−226
【非特許文献10】Petersら,PNAS,2004,101,8531−6
【非特許文献11】Egelhoferら,J.Virol,2004,78,568−575
【非特許文献12】Hildingerら,J.Virol,2001,75,3038−3042
【非特許文献13】Lenzら,J.Biol Chem.,2004,280,4095−4101
【非特許文献14】Peisajovichら,J.Biol.Chem,2003,278,21012−7
【非特許文献15】Veigaら,J.Am.Chem.Soc,2004,126,14758−63
【非特許文献16】Mosierら,1999,J.Viral,1999,73,3544−50
【非特許文献17】Leeら,J.Immunol,2004,173,4618−26
【発明の概要】
【0016】
前記の背景および分析を考慮して、本発明者らは、脂質アンカーとしてのコレステロール部分を、ウイルス融合誘導タンパク質に由来するペプチドインヒビターに結合させることを提示した。この目的のために、従前公知のどのHIV融合インヒビターより何倍も強力な、コレステロールにアンカーされたHIVウイルス融合インヒビターを製造した。
【0017】
したがって、本発明は、コレステロールまたはその誘導体にC末端において結合した、包膜ウイルスの1型ウイルス融合誘導タンパク質またはその誘導体のHR2ドメインの少なくとも10個の連続アミノ酸を含んでなる、ウイルス融合のインヒビター、またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0018】
例えば、該包膜ウイルスはオルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、レトロウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルスおよびアルファウイルスでありうる。全てのこれらのウイルスにおけるウイルス融合は、HIV−1におけるウイルス融合のメカニズムに類似した様態で生じると考えられている。
【0019】
したがって、これらのウイルスのそれぞれは、本明細書に示されているHIV−1ウイルス融合の抑制に類似した様態で抑制されうる、ウイルス融合に関与するHR2ドメインgp41に対する等価性を有する。好ましい包膜ウイルスはヒト免疫不全ウイルス1(HIV−1)である。
【0020】
該インヒビターは、好ましくは、HR2ドメインの少なくとも15個の連続的な酸、より好ましくは、少なくとも25個の連続アミノ酸、例えば、30個を超える連続アミノ酸を含む。該インヒビターの融合誘導タンパク質部分に追加的な天然または合成アミノ酸が存在しうる。
【0021】
特に、HIV−1におけるHR2ドメインはウイルスタンパク質gp41に見出される。Morenoら,Biochimica et Biophysia Acta,2006,1758,111−123のクレードB共通番号付けを用いた場合、特に好ましい一連の連続アミノ酸は、C34としても公知の、HIV−1のgp41の628−661である。gp41のHR2ドメインはアミノ酸620−663に伸長し、このドメインからの少なくとも10個のアミノ酸の任意の連続的配列が本発明において使用されうる。
【0022】
該融合誘導タンパク質のC末端はカルボキシ末端であることが可能であり、あるいはそれはカルボキサミド、またはC1−6アルキルエステル(場合によってはハロゲンで置換されていてもよい)でありうる。
【0023】
該融合誘導タンパク質はコレステロールまたはその誘導体に直接的に結合されうる。あるいは、それらは、2以上のアミノ酸を含むリンカーにより連結されうる。該アミノ酸は天然物または合成物でありうる。リンカーの利点は、それが該融合誘導タンパク質と該コレステロールまたはその誘導体との間の相対的運動を補助し、これが、後記で更に詳しく説明するとおり、HR2ヘリックス内への取り込みのために正しい配向で該融合タンパク質を提示してウイルス融合を妨害するのを促進することにある。
【0024】
したがって、該リンカーは(Gly)n+1、(GlySerGly)または(Gly−Pro)(ここで、nは1以上、例えば1〜12、1〜6、または1〜4である)を含みうる。GlySerGlyは、リンカーの部分を形成しうるアミノ酸の配列の一例である。
【0025】
該リンカーは更に、部分−(OCHCH−(ここで、mは1〜15、例えば、2〜10、2〜6または4である)を含みうる。(ポリ)エチレングリコール基の導入は水性媒体への溶解を補助する。
【0026】
該リンカーの最終アミノ酸は、好ましくは、システインである。後にコレステロールまたはその誘導体に結合される該リンカーの非アミノ酸部分とのチオエーテル結合を形成させるためにシステインの硫黄原子を利用することが一般に簡便である。
【0027】
該システイン残基の硫黄原子は、アミド部分、例えば−C1−4アルキレンC(O)NH−または−C1−4アルキレンC(O)NHC1−4アルキレン−、例えば−CHC(O)NHCHCH−により、(ポリ)エチレングリコール基に連結されうる。
【0028】
該リンカーは該コレステロールまたはその誘導体上の任意の簡便な位置に連結されうる。特に、連結は該コレステロールのヒドロキシ基を介したものでありうる。したがって、該リンカーは、基−C(O)−または−C1−4アルキレンC(O)−、例えば−CHC(O)−により、該コレステロールに連結されうる。
【0029】
該リンカーの非アミノ酸部分の具体例としては、−CHC(O)−および−CHC(O)NHCHCH(OCHCHC(O)−が挙げられる。そのようなリンカーのアミノ酸部分はGlySerCysであることが可能であり、ここで、該システインはチオエーテル結合を介して該リンカーの残部に結合される。
【0030】
ウイルス融合インヒビターの実質的な活性に影響を及ぼさない、該リンカーに対する多数の改変が施されることが可能であり、そのような改変は本発明の範囲内であると理解される。
【0031】
本発明の特に好ましい実施形態は、
【0032】
【化1】

ならびにその医薬上許容される塩である。
【0033】
該コレステロール部分によりもたらされる格別の利点は、それが、ウイルスと宿主細胞との融合が生じる細胞成分(この場合は宿主細胞膜内の脂質ラフト)における該分子のペプチド部分の局所濃度を増加させることである。また、該コレステロール基は該抗ウイルスペプチドの薬物動態学的特性を改善する。
【0034】
したがって、本発明は、前記のウイルス融合のインヒビターと医薬上許容される賦形剤とを含んでなる医薬組成物をも提供する。1つの実施形態においては、該医薬組成物は膣坐剤(ペッサリー)である。もう1つの実施形態においては、それは膣リングである。もう1つの実施形態においては、それは膣適用に適したクリーム剤またはゲル剤である。
【0035】
また、療法または予防による人体の治療方法において使用するための、前記のウイルス融合のインヒビターを提供する。該方法は、包膜ウイルスによる感染、例えばHIV−1感染、またはエイズの発生の予防または治療でありうる。
【0036】
したがって、包膜ウイルス、例えばHIV−1による感染を予防もしくは治療するための又はエイズを治療するための医薬の製造のための、前記のウイルス融合のインヒビターの使用を提供する。
【0037】
本発明はまた、包膜ウイルスに感染しやすい又は感染している対象を治療する方法であって、前記のウイルス融合のインヒビターの予防的または治療的有効量をその対象に投与することを含んでなる方法を提供する。1つの実施形態においては、該方法はHIV−1による感染の予防または治療のためのものである。もう1つの実施形態においては、それはエイズの治療方法である。
【0038】
本発明はまた、別々の投与、同時投与または連続投与のための、前記のウイルス融合のインヒビターと、包膜ウイルス(例えば、HIV−1)による感染を治療または予防することが知られている別の化合物との組合せを提供する。
【0039】
ヒトのような霊長類に加えて、種々の他の哺乳動物が本発明の方法により治療されうる。例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラットまたは他のウシ、ウマ、イヌ、ネコ、げっ歯類またはマウス種を含む哺乳動物が治療されうる。しかし、該方法は鳥類種(例えば、ニワトリ)または魚類のような他の種においても実施されうる。
【0040】
したがって、本発明は、包膜ウイルス、例えばオルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、レトロウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルスまたはアルファウイルスにより引き起こされる疾患を予防または治療するために使用されうる。したがって、予防または治療されうる疾患には以下のものが含まれる:インフルエンザA、BもしくはCウイルスにより又はパラインフルエンザウイルス1〜4により又は呼吸器性シンシチウムウイルスにより引き起こされるインフルエンザ;おたふくかぜ;麻疹;イヌジステンパーウイルス;HIV−1関連脊髄症、糞線虫(Strongyloides stercoralis)過剰感染およびヒトTリンパ球親和性ウイルス1により引き起こされる成人T細胞白血病/リンパ腫、脊髄症/熱帯性痙性対麻痺、例えば、ヒトTリンパ球親和性ウイルス2により引き起こされる神経疾患、ウシ白血病ウイルスにより引き起こされるウシ白血病;アルファレトロウイルス、例えばラウス肉腫ウイルス、ニワトリ白血症ウイルスまたはニワトリ骨髄芽球症ウイルスにより引き起こされる肉腫、腫瘍および貧血;マウス乳癌ウイルスにより引き起こされるマウス乳癌;ガンマレトロウイルス、例えばマウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルスおよび細網内皮症ウイルスにより引き起こされる肉腫および白血病;イプシロンレトロウイルス、例えばワーレイ皮膚肉腫ウイルスおよびワーレイ表皮過形成ウイルス1および2により引き起こされる腫瘍および肉腫;レンチウイルス、例えばウシ免疫不全ウイルス、HIV−1、HIV−2、サル免疫不全ウイルス、ネコ免疫不全ウイルスにより引き起こされる免疫不全疾患およびウマ伝染性貧血ウイルスにより引き起こされる沼沢熱;黄熱病;C型肝炎;ウシ下痢症ウイルス1により引き起こされるウシ下痢症;ダニ媒介性疾患、例えばキャサヌール森林病、オムスク出血熱、ポワッサン脳炎、ダニ媒介性脳炎および跳躍病;デング出血熱;日本脳炎;マレー渓谷脳炎;セントルイス脳炎;ウエストナイル熱、髄膜炎および脳炎;古典的ブタコレラ;ウシ流行熱;狂犬病;セムリキ森林病;オニオンニオン;チクングニヤ;ロスリバー熱;東部ウマ脳炎;西部ウマ脳炎およびベネズエラウマ脳炎;ならびにマヤロ。
【0041】
本発明は更に、レトロウイルス、特にレンチウイルス、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染の予防または治療、および例えばエイズのような後続の病態の治療およびその発現開始の遅延化における、これらの化合物の使用に関する。エイズの治療またはHIVによる感染の予防もしくは治療は、HIV感染の広範な状態、すなわち、エイズ、ARC(エイズ関連合併症)(症候性および無症候性の両方)およびHIVに対する現実的または潜在的曝露の治療(これらに限定されるものではない)を含むものとして定義される。例えば、本発明の化合物は、例えば輸血、臓器移植、体液交換、噛みつき、偶発的な刺針または手術中の患者の血液に対する曝露によりHIVに過去に曝露された疑いがある場合のHIVによる感染の治療において有用である。
【0042】
本明細書中で用いる「組成物」なる語は、特定されている量の、特定されている成分を含む産物、および特定されている量の、特定されている成分の組合せから直接的または間接的に得られる任意の産物を包含すると意図される。「医薬上許容される」は、担体、希釈剤または賦形剤が該成分のその他の成分と適合可能でありその被投与者に無害でなければならないことを意味する。
【0043】
化合物の「投与」および化合物を「投与する」なる語は、治療を要する個体に本発明の化合物を与えることを意味すると理解されるべきである。
【0044】
本明細書中で用いる「対象」(あるいは本明細書においては「患者」と称される)なる語は、治療、観察または実験の対象である動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0045】
本発明は更に、エイズの予防または治療において有用な1以上の物質との本化合物の組合せに関する。例えば、本発明の化合物は、HIV感染およびエイズの治療に適した当業者に公知の抗ウイルス物質、免疫調節物質、抗感染物質またはワクチン(以下の表に挙げられているものを含む)の有効量と組合せて、曝露前および/または曝露後の期間において有効に投与されうる。
【0046】
【表1】







【0047】
HIV/エイズ抗ウイルス物質、免疫調節物質、抗感染物質またはワクチンとの本発明の化合物の組合せの範囲は、前記表に列挙されているものに限定されるものではなく、原則として、HIV感染またはエイズの治療に有用な任意の医薬組成物の任意の組合せを含むと理解されるであろう。該HIV/エイズ抗ウイルス物質および他の物質は、本発明の化合物と組合せて使用される場合、典型的には、Physicians’Desk Reference,第54版,Medical Economics Company,2000に記載されている投与量を含む当技術分野において報告されているそれらの通常の投与量範囲および治療計画で使用される。これらの組合せにおける本発明の化合物の投与量範囲は、前記表の直前に前記されているものと同じである。
【0048】
好ましい組合せは、本発明の化合物とHIVプロテアーゼのインヒビターおよび/またはHIV逆転写酵素の非ヌクレオシドインヒビターでの同時または交互の治療である。該組合せにおける随意的な(すなわち、場合によって用いられうる)第4の成分は、HIV逆転写酵素、例えばAZT、3TC、ddCまたはddIのヌクレオシドインヒビターである。組合せ療法(併用療法)のための好ましい物質には、以下のものが含まれる:ジドブジン(Zidovudine)、ラミブジン(Lamivudine)、スタブジン(Stavudine)、エファビレンツ(Efavirenz)、リトナビル(Ritonavir)、ネルフィナビル(Nelfinavir)、アバカビル(Abacavir)、インジナビル(Indinavir)、141−W94(4−アミノ−N−((2 syn,3S)−2−ヒドロキシ−4−フェニル−3−((S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシカルボニルアミノ)−ブチル)−N−イソブチル−ベンゼンスルホンアミド)、N−(2(R)−ヒドロキシ−1(S)−インダニル)−2(R)−フェニルメチル−4−(S)−ヒドロキシ−5−(l−(4−(2−ベンゾ[b]フラニルメチル)−2(S)−N’(t−ブチルカルボキサミド)−ピペラジニル))−ペンタンアミドおよびデラビルジン(Delavirdine)。HIVプロテアーゼの好ましいインヒビターはインジナビル(indinavir)であり、これはN−(2(R)−ヒドロキシ−1(S)−インダニル)−2(R)−フェニルメチル−4−(S)−ヒドロキシ−5−(l−(4−(3−ピリジル−メチル)−2(S)−N’−(t−ブチルカルボキサミド)−ピペラジニル))−ペンタン−アミド エタノラートの硫酸塩であり、US 5,413,999に従い合成される。インジナビルは、一般に、800mgの投与量で1日3回投与される。HIVプロテアーゼの他の好ましいインヒビターには、ネルフィナビル(nelfinavir)およびリトナビル(ritonavir)が含まれる。HIV逆転写酵素の好ましい非ヌクレオシドインヒビターには、(−)6−クロロ−4(S)−シクロプロピルエチニル−4(S)−トリフルオロメチル−1,4−ジヒドロ−2H−3,1−ベンゾオキサジン−2−オンが含まれ、これは、EP 0,582,455に開示されている方法により製造されうる。ddC、ddIおよびAZTの製造もEPO 0,484,071に記載されている。これらの組合せはHIVの感染の広がり及び程度の抑制に予想外の効果をもたらしうる。本発明の化合物との好ましい組合せには以下のものが含まれる:(1)ジドブジン(Zidovudine)およびラミブジン(Lamivudine);(2)スタブジン(Stavudine)およびラミブジン(Lamivudine);(3)エファビレンツ(Efavirenz);(4)リトアビル(Ritoavir);(5)ネルフィナビル(Nelfinavir);(6)アバカビル(Abacavir);(7)インジナビル(Indinavir);(8)141−W94;ならびに(9)デラビルジン(Delavirdine)。本発明の化合物との好ましい組合せには更に、以下のものが含まれる:(1)インジナビル(indinavir)と、エファビレンツ(efavirenz)または(−)6−クロロ−4(S)−シクロプロピルエチニル−4(S)−トリフルオロメチル−1,4−ジヒドロ−2H−3,1−ベンゾオキサジン−2−オン、および場合によっては、AZTおよび/または3TCおよび/またはddIおよび/またはddC;(2)インンジナビル(indinavir)と、AZTおよび/またはddIおよび/またはddCのいずれか。
【0049】
前記表における化合物Aは、好ましくは硫酸塩として投与されるN−(2(R)−ヒドロキシル−1(S)−インダニル)−2(R)−フェニルメチル−4(S)−ヒドロキシ−5−(1−(4−(2−ベンゾ[b]フラニルメチル)−2(S)−N’−(t−ブチルカルボキサミド)−ピペラニジル))ペンタンアミドである。化合物Aは、US 5646148に記載されているとおりに製造されうる。
【0050】
そのような組合せにおいては、本発明の化合物および他の活性物質は別々に又は一緒に投与されうる。また、1つの要素の投与は他の物質の投与の前、同時または後でありうる。
【0051】
包膜ウイルスがHIV−1である場合の1つの好ましい組合せは、1日60〜400mgの用量、例えば90mg(1日2回)の用量で投与されるエンフルビルチド(enfurvirtide)との組合せである。エンフルビルチドは錠剤として経口投与されることが可能であり、あるいは1.0ml注射剤として皮下注射されうる。
【0052】
本発明の化合物は、医薬上許容される塩の形態で投与されうる。「医薬上許容される塩」なる語は、溶解度もしくは加水分解特性を修飾するための剤形として使用されうる又は徐放製剤もしくはプロドラッグ製剤中で使用されうる全ての許容される塩、例えば酢酸塩、ラクトビオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、炭酸水素塩、マレイン酸塩、硫酸水素塩、マンデル酸塩、重酒石酸塩、メシル酸塩、ホウ酸塩、メチルブロミド、ブロミド、メチル硝酸塩、カルシウムエデタート、メチル硫酸塩、カムシラート、ムチン酸塩、炭酸塩、ネプシラート、クロリド、硝酸塩、クラブラン酸塩、N−メチルグルカミン、クエン酸塩、アンモニウム塩、二塩酸塩、オレイン酸塩、エデト酸塩、シュウ酸塩、エジシラート、パモ酸塩(エンボナート)、エストラート、パルミチン酸塩、エシラート、パントテン酸塩、フマル酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、グルセプタート、ポリガラクツロン酸塩、グルコン酸塩、サリチル酸塩、グルタミン酸塩、ステアリン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、硫酸塩、ヘキシルレゾルシナート、スバセタート、ヒドラバミン、コハク酸塩、臭化水素酸塩、タンニン酸塩、塩酸塩、酒石酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、テオクラート、ヨージド、トシル酸塩、イソチオン酸塩、トリエチオジド、乳酸塩、パノアート、吉草酸塩などを包含すると意図される。本発明の化合物の個々の機能性に応じて、本発明の化合物の医薬上許容される塩は、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛のような陽イオンから形成される塩、およびアンモニア、エチレンジアミン、N−メチル−グルタミン、リシン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレン−ジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチル−アミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよびテトラメチルアンモニウムヒドロキシドのような塩基から形成される塩を包含する。これらの塩は、標準的な方法により、例えば、遊離酸を適当な有機または無機塩基と反応させることにより製造されうる。アミノのような塩基性基が存在する場合、酸性塩、すなわち、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、パモ酸塩などが剤形として使用されうる。
【0053】
また、酸(−COOH)またはアルコール基が存在する場合、医薬上許容されるエステル、例えばアセタート、マレアート、ピバロイルオキシメチルなど、および徐放またはプロドラッグ製剤としての使用のための溶解度または加水分解特性を修飾するための当技術分野で公知のエステルが使用されうる。
【0054】
本発明の化合物は、経口的、非経口的(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、槽内注射または注入、皮下注射または移植)に、または吸入スプレーにより、または鼻腔内、膣内、直腸内、舌下もしくは局所投与経路により投与されることが可能であり、各投与経路に適した通常の無毒性の医薬上許容される担体、補助剤(アジュバント)およびビヒクルを含有する適当な投与単位製剤中に単独で又は一緒に製剤化されうる。温血動物、例えばマウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サルなどの治療に加えて、本発明の化合物はヒトにおける使用に有効である。
【0055】
本発明の化合物の投与のための医薬組成物は投与単位形で簡便に提供されることが可能であり、薬学分野でよく知られた方法のいずれかにより製造されうる。全ての方法は、1以上の補助成分を構成する担体と有効成分とを接触させる工程を含む。一般に、該医薬組成物は、有効成分を液体担体または細かく分割された固体担体またはそれらの両方と均一かつ密接に接触させ、ついで必要に応じて、産物を所望の製剤へ成形することにより製造される。医薬組成物においては、活性な対象化合物は、疾患の過程または状態に所望の効果をもたらすのに十分な量で含まれる。本明細書中で用いる「組成物」なる語は、特定された成分を、特定された量で含む産物、および特定された量の、特定された成分の組合せから直接的または間接的に得られる任意の産物を包含すると意図される。
【0056】
有効成分を含有する医薬組成物は、例えば錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁剤、分散性散剤もしくは顆粒剤、乳剤、硬もしくは軟カプセル、またはシロップ剤またはエリキシル剤としての経口使用に適した形態でありうる。経口使用を意図した組成物は医薬組成物の製造のための当技術分野で公知の任意の方法により製造されることが可能であり、そのような組成物は、医薬上優美かつ美味な製剤を得るために、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤よりなる群から選ばれる1以上の物質を含有しうる。錠剤は、錠剤の製造に適した無毒性の医薬上許容される賦形剤と混合された有効成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば不活性な希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;顆粒化および崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアカシア;ならびに滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクでありうる。該錠剤はコーティングされていないものであることが可能であり、あるいはそれは、胃腸管における崩壊および吸収を遅延させて長期にわたる持続的作用をもたらすための公知技術によりコーティングされうる。例えば、時間遅延性物質、例えばグリセリルモノステアラートまたはグリセリルジステアラートが使用されうる。それはまた、コントロールリリース用の浸透性治療用錠剤を形成させるために、米国特許第4,256,108号、第4,166,452号および第4,265,874号に記載されている技術によりコーティングされうる。
【0057】
経口用製剤は、硬ゼラチンカプセル剤(この場合、有効成分は不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合さている)または軟ゼラチンカプセル剤(この場合、有効成分は水または油媒体、例えばラッカセイ油、液体パラフィンまたはオリーブ油と混合されている)としても提供されうる。
【0058】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤と混合された活性物質を含有する。そのような賦形剤は、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガムであり、分散または湿潤剤は、天然に存在するホスファチド、例えばレシチン、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合産物、例えばポリオキシエチレンステアラート、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、または脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合産物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート、または脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合産物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレアートでありうる。該水性懸濁剤は、1以上の保存剤、例えばエチルまたはn−プロピル、p−ヒドロキシベンゾアート、1以上の着色剤、1以上の香味剤、および1以上の甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリンをも含有しうる。
【0059】
油性懸濁剤は、有効成分を、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはヤシ油、あるいは鉱油、例えば流動パラフィンに懸濁させることにより製剤化されうる。該油性懸濁剤は、増粘剤、例えば蜜蝋、固型パラフィンまたはセチルアルコールを含有しうる。美味な経口製剤を得るために、甘味剤(例えば、前記のもの)および香味剤が添加されうる。これらの組成物は、例えばアスコルビン酸のような抗酸化剤の添加により保存されうる。
【0060】
水の添加による水性懸濁剤の製造に適した分散可能な散剤および顆粒剤は、分散または湿潤剤、懸濁化剤および1以上の保存剤と混合された有効成分を提供する。適当な分散または湿潤剤および懸濁化剤は、前記で既に挙げられているものにより例示される。追加的な賦形剤、例えば甘味剤、香味剤および着色剤も存在しうる。
【0061】
また、本発明の医薬組成物は水中油エマルションの形態でありうる。油相は植物油、例えばオリーブ油またはラッカセイ油、あるいは鉱油、例えば流動パラフィンまたはこれらの混合物でありうる。適当な乳化剤は、天然に存在するガム、例えばアカシアガムまたはトラガカントガム、天然に存在するホスファチド、例えばダイズ、レシチン、および脂肪酸とヘキシトール無水物とに由来するエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレアート、およびエチレンオキシドとの該部分エステルの縮合産物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートでありうる。該エマルションは甘味剤および香味剤をも含有しうる。
【0062】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースを使用して製剤化されうる。そのような製剤は粘滑剤、保存剤ならびに香味および着色剤をも含有しうる。
【0063】
該医薬組成物は無菌の注射可能な水性または油性懸濁剤の形態でありうる。この懸濁剤は、前記で挙げられている適当な分散または湿潤剤および懸濁化剤を使用して公知の技術により製剤化されうる。該無菌注射剤はまた、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液としての無菌の注射可能な溶液または懸濁液でありうる。使用されうる許容されるビヒクルおよび溶媒としては、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。また、無菌の不揮発性油が溶媒または懸濁媒体として簡便に使用される。この目的には、合成モノ−またはジグリセリドを含む、刺激の少ない不揮発性油が使用されうる。また、注射剤の製造においては、脂肪酸、オレイン酸が有用である。
【0064】
本発明の化合物はまた、該薬物の直腸投与のための坐剤、または膣投与のための膣坐剤、リング、クリーム剤もしくはゲル剤の形態で投与されうる。これらの組成物は、常温では固体であるが直腸温度では液体であり従って直腸内で溶解して該薬物を放出する適当な非刺激性賦形剤と該薬物とを混合することにより製造されうる。そのような物質はカカオ脂およびポリエチレングリコールである。
【0065】
局所使用には、本発明の化合物を含有するクリーム剤、軟膏剤、ゼリー剤、溶液(水剤)または懸濁剤などが使用される(本出願の目的においては、局所適用は口洗液および含そう剤を含むものとする)。
【0066】
本発明の医薬組成物および方法は更に、前記病態の治療において通常適用される本明細書に記載されている他の治療的に活性な化合物を含みうる。
【0067】
包膜ウイルスにより引き起こされる状態の治療または予防においては、適当な投与量レベルは一般に、単一または複数用量で投与されうる、患者の体重1kg当たり1日当たり約0.01〜500mgとなろう。好ましくは、該投与量レベルは、約0.1〜約250mg/kg/日、より好ましくは、約0.5〜約100mg/kg/日となろう。適当な投与量レベルは、約0.01〜250mg/kg/日、約0.05〜100mg/kg/日、または約0.1〜50mg/kg/日でありうる。この範囲内において、該投与量は0.05〜0.5、0.5〜5、または5〜50mg/kg/日でありうる。経口、膣または直腸投与では、該組成物は、好ましくは、有効成分1.0〜1000ミリグラム/単位用量、特に有効成分1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0および1000.0ミリグラム(治療すべき患者に対する投与量の症候性調節用)を含有する錠剤;膣坐剤、リング、ゲル剤またはクリーム剤;坐剤の形態で提供される。該化合物は、1日1〜4回、好ましくは、1日1または2回の計画で投与されうる。
【0068】
しかし、いずれかの個々の患者に関する特定の用量レベルおよび投与頻度は様々なものとなることが可能であり、使用される具体的な化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用持続時間、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与の様式および時間、排泄速度、薬物の組合せ、個々の状態の重症度ならびに療法を受けている宿主を含む種々の要因に左右されると理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、2つの脂質アンカー、すなわち、シス(コレステロール)基およびビス−Lys(Nε−パルミトイル)基を含有するHIVgp41の膜近位外部領域(MPER)からのペプチド、ならびに対照ペプチド(ここで、C末端システインがヨードアセトアミドで誘導体化されている)での、HIV−1(HXB2)に対する抗ウイルス活性を示す。13−aa(13アミノ酸)ペプチドAc−ELLELDKWASLW−NH(配列番号2)はMAb2F5のエピトープを含む。
【図2】図2は、HIV融合に関する及びHR2(Cドメイン)ペプチドの作用メカニズムに関する現在受け入れられているモデルを示す。この図は、HR1(N−ペプチド)ドメインに対して逆平行配向で宿主細胞膜に結合したC34−cholを示している。
【図3】図3は、マウスに3.5mg/kで腹腔内投与されたC34−コレステロール(PEP2675)のPKを示す。
【図4】図4は、切断および凍結乾燥の後の粗PEP2667(PEP2675のアミノ酸前駆体)のHPLCトレースを示す。
【図5】図5は、精製されたPEP2667のHPLCトレースを示す。
【図6】図6は、精製されたC34−コレステロールのHPLCトレースを示す。
【図7】図7は、C34−chol、C34(aceta)、C34およびT20/Fuzeon(登録商標)の、HIV−1(HXB2)に対する抗ウイルス活性を示す。
【0070】
支持実施例
gp41の膜近位外部領域(MPER)に由来する脂質アンカーペプチド
モノクローナル抗体(MAb)2F5のエピトープELLELDKWASLWNWF(配列番号3)をも含む、gp41の膜近位外部領域(MPER)からのペプチドの抗ウイルス活性(IC50=30μM)は、最後の2つのC末端アミノ酸:ELLELDKWASLWN(配列番号4)の欠失により著しく減少し(IC50>100μM)、このことは、その抗ウイルス活性を発現するために該膜内に分配されるためには該ペプチドが必要であることと合致した。したがって、ペプチドELLELDKWASLW(配列番号2)(IC50>100μM)をC末端コレステロール基で誘導体化したところ、それは抗ウイルス効力を再獲得し(IC50=5.85μM)、該コレステロール基は、天然の3アミノ酸C末端NWF伸長と比べて活性を増強した。さらに、該脂質の性質が重要であった。なぜなら、ビス−Lys(Nε−パルミトイル)基は無効であったからである。これらの化合物の幾つかに関するHIV−1(HXB2)に対する抗ウイルス活性を図1に示す。用いたアッセイの詳細はJoyceら,J.Biol Chem.,2002,277,45811−45820において見出されうる。
【0071】
gp41のC末端7回反復領域に由来する脂質アンカーペプチドはウイルス感染性の強力なインヒビターである。DP−178としても公知でありエンフビルチド(enfuvirtide)/Fuzeon(登録商標)として商業的に現在公知であるペプチドT20は、療法を受けているエイズ患者の治療のために臨床において使用されている。T20はgp41のMPERを含み、したがって、膜に対する或るアフィニティを元々備えている。これとは対照的に、C34はそれ自体では膜指向性を何ら示さない。C34の誘導体(C34−chol)を、C末端に付加されたシステイン残基の側鎖にチオエーテル結合を介してコレステロール基を結合させることにより製造した。該脂質アンカーとC34配列との間の柔軟性を可能にするために、それらの2つの間にGly−Ser−Glyスペーサーを挿入した。重要なことに、HIV融合に関する現在のモデルはNおよびCドメインペプチド(C34は後者に由来する)の逆平行配置の必要性を示しており、膜アンカーの位置がC末端に存在すべきであり、N末端誘導体化がNペプチドへの結合を妨げることを定めている。図2はC−ペプチドの作用メカニズム(MOA)およびHIV融合に関する現在のモデルを示す。この図は、このモデルに従えば該脂質アンカーがなぜ該インヒビターのC末端に存在すべきなのかを直ちに明らかにする。
【0072】
表1はC34−cholおよび全ての対照ペプチドの配列を示し、表2は単一サイクル感染性アッセイ(VERTICAL)におけるそれらの抗ウイルス活性を示す。
【0073】
【表2】

【0074】
gp41のC末端7回反復ドメインに由来するペプチドの抗ウイルス効力
C34へのコレステロールの付加は、その抗ウイルス効力を、C34および対照ペプチドC34−Aceta(この場合、該システイン残基はヨードアセトアミドでアルキル化されている)と比べて50倍増加させる。予想どおり、C末端ではなくN末端におけるコレステロールの付加は抗ウイルス活性にとって有害である(未誘導体化C34と比べて50倍の減少)。また、予想どおり、コレステロールはパルミチン酸より遥かに良好な脂質アンカーである。なぜなら、C34−Pamは、未誘導体化C34と比較されうる活性を有するからである。最後に、コレステロールの付加はT20に有害であり、これは恐らく、それ自身の親油性配列に対する阻害または異なるMOAによるものであろう。
【0075】
総合すると、C34−cholは、市販の融合インヒビターであるエンフビルチド(enfuvirtide)/Fuzeon(登録商標)より〜100倍強力であり、現在公知のHIVインヒビターのなかで最も強力である。
【0076】
【表3】

【0077】
該結果の幾つかは図7にも示されている。
【0078】
C34−cholの抗ウイルス応答の広さ
種々のウイルス株に対する試験においては、C34−cholは、全ての株において、比較しうるIC50で、広範な応答を示した。全パネルにおいて、C34−cholは未誘導体化またはcys−アルキル化C34より〜50倍強力であった。
【0079】
【表4】

【0080】
標的細胞膜へのC34−cholの蓄積がそのMOAの鍵である。作用部位への該ペプチドの蓄積がC34−cholのMOAの鍵であることを確認するために、該ペプチドおよびその対照をP4−2/R5細胞と共に37℃で1時間インキュベートし、ついで十分な洗浄により未結合ペプチドを除去し、HIV−HXBを加えて感染を開始させる実験を行った。
【0081】
【表5】

【0082】
未誘導体化およびcys−アルキル化C34の抗ウイルス効力は〜500倍減少したが、C34−cholは7倍減少したに過ぎなかった。
【0083】
C34−cholの薬物動態学的特性に対する脂質誘導体化の効果
コレステロールでの誘導体化は、抗ウイルス効力の改善をもたらすことに加えて、該ペプチドのインビボでの半減期をも延長させる。マウスの腹腔内に3.5mg/kgの濃度で注射された場合、24時間後にC34−cholの〜60nMの血漿濃度が尚も検出可能であった。図3に示すとおり、この濃度は尚も、単一サイクル感染性アッセイにおける測定IC50(7pM)の>500倍である。得られた結果は、Cmax 3.1μM、Tmax 4時間、CI/F 0.60ml/分/kg、AUC(0−6時間) 11.5μM時間であった。
【0084】
実験の詳細(方法)
HIV−1感染性アッセイ(31)
フェノールレッド非含有ダルベッコ変法イーグル培地、10% ウシ胎児血清、1% ペニシリン/ストレプトマイシン中に維持されたP4−2/R5細胞(組込まれたβ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子をもHIV LTRプロモーターの制御下に含有する、CD4およびCCR5を発現するよう安定にトランスフェクトされた、内因性CXCR4を発現するHeLa細胞)を2.5×10 細胞/ウェルで96ウェルプレート内に播き、翌日、幾つかの力価の試験抑制性ペプチドの存在下、HIV−1のHXB株(そして幾つかの場合には種々の他の株)(Advanced Biotechnology Inc.,Bethesda,MD)に37℃で感染させた。ウイルスおよび抑制性ペプチドの両方と共に48時間インキュベートした後、細胞を細胞溶解し、Gal ScreenTM化学発光基質(Applied Biosystems,Foster City,CA)を該製造業者の説明に従い使用して、β−ガラクトシダーゼを検出した。Dynexルミノメーターを使用してデータを得、IC50値をKaleidaGraphにより計算した。侵入、逆転写、組込み及びtat媒介転写を含む初期HIV生活環のいずれかの段階を遮断する物質は全て、β−ガラクトシダーゼの産生を抑制しうるが、C34由来ペプチドは、細胞外でHIV−1エンベロープに結合して宿主細胞内へのウイルス侵入を抑制することにより侵入前段階において特異的に作用するとみなされている。
【0085】
標的細胞表面上での3種類のペプチド(C34−Chol、C34−AcetaおよびC34)の保持および機能を評価した1組の実験において、適切な系列希釈度を有する各ペプチドをP4−2/R5細胞と共に37℃で1時間プレインキュベートし、ついで培地で3回洗浄して未結合ペプチドを除去し(対照においては洗浄無し)、HXB2を加えて感染を開始させた。48時間後、該洗浄工程の後に残った残存ペプチドの抗ウイルス活性を、前記のとおりに細胞溶解細胞におけるβ−ガラクトシダーゼ活性を測定することにより決定した。
【0086】
コレステロール誘導体化ペプチドの合成
該コレステロール部分は一般に、gp41配列のC末端に付加された追加的システイン残基のチオール基を用いて、チオエーテル結合を介して該ペプチドに結合させる。
【0087】
どちらのペプチド系列においても、一般に、チオエーテル結合が結合点として用いられる。なぜなら、それは、膜への非加水分解性アンカー、および化学選択的方法によるワクチンの容易な製造をもたらすからである。ブロモアセチル基と遊離チオール基との間の化学選択的反応はZengら,Vaccine,2001,19,3843−3852に記載されている。
【0088】
【化2】

【0089】
ブロモアセチル化合物は、商業的に入手可能な化合物を使用することにより、実施例に記載されているとおりに、もしくはそれに対する類推により、または商業的に入手可能な化合物から、よく知られた方法により製造されうる。
【0090】
ペプチドの製造方法は当技術分野でよく知られている。合成的または微生物的方法が用いられうる。
【0091】
コレステロールの誘導体は商業的に入手可能であるか、またはよく知られた方法により、商業的に入手可能な物質から製造されうる。
【0092】
以下の方法は本発明を例示するものである。
【0093】
参考例1
ブロモアセチル−コレステロールの合成
【0094】
【化3】

100mgのコレステロールと40mgのブロモ酢酸(1.1当量)との混合物を10mLの無水ジクロロメタンに溶解した。ついで44μl(1.1当量)のDIPC(N,N−ジイソプロピルカルボジイミド)および1.5mg(0.05当量)のDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)を加えた。該溶液を室温で48時間攪拌し、n−ヘキサン/EtOAc 10/1の混合物を溶媒系として使用するTLCにより分析した。該溶媒を蒸発させ、該反応生成物をn−ヘキサン/ジクロロメタン 1/1中のシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。該生成物を含有する画分をプールし、蒸発させ、ついで水/アセトニトリル 20/8中で凍結乾燥させた。精製された生成物をNMRにより分析した。収率:73%。
【0095】
参考例2
PEP2667の合成
Ac−WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLGSGC−NH(配列番号1)
Pioneer Peptide Synthesizer(Applied Biosystems)上でFmoc/t−Bu化学を用いる標準的な固相ペプチド合成により、ペプチドPEP2667を製造した。該ペプチドC末端アミドを得るために、DIPCDI/HOBtを活性化物質として使用してFmoc−Rinkリンカーで予め誘導体化されたChampion PEG−PS樹脂(Biosearch Technologies,Inc.,Novato,CA)上で該ペプチドを合成した。全てのアシル化反応は、樹脂遊離アミノ基上、4倍過剰の活性化アミノ酸を使用して、60分間にわたって行った。アミノ酸を等モル量のHBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)および2倍モル過剰のDIEA(N,N−ジイソプロピル−エチルアミン)で活性化した。側鎖保護基は以下のとおりであった:Asp、Glu、Ser、ThrおよびTyrにはtert−ブチル;Asn、Cys、GlnおよびHisにはトリチル;Lys、Trpにはtert−ブトキシ−カルボニル;Argには2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル。
【0096】
該構築の終了時に、該乾燥ペプチド−樹脂を82.5% TFA、5% フェノール、5% 水、5% チオアニソール、2.5% エタンジチオールで室温で1.5時間処理した。該樹脂を濾過し、該溶液を蒸発させ、該ペプチドペレットをジエチルエーテルで数回処理して該有機スカベンジャーを除去した。最終ペレットを乾燥させ、1:1(v/v)HO:アセトニトリルに再懸濁させ、凍結乾燥させた。溶離液として(A)水中の0.1% TFAおよび(B)アセトニトリル中の0.1% TFA、および直線勾配[30%(B)〜60%(B)で20’ − 80%(B)で3’ − 80%(B)で3’]を用い、1ml/分の流速を用いて、Phenomenex,Jupiter Cカラム(150×4.6mm,5μm)と共にWaters−Micromass LCZ Platformを使用する液体クロマトグラフィー−質量分析により、該粗ペプチドを分析した。該粗ペプチドを1mg/mlで70% 溶離液A/30% 溶離液Bに溶解した。粗PEP2667のHPLCトレースを図4に示す。
【0097】
溶離液として(A)水中の0.1% TFAおよび(B)アセトニトリル中の0.1% TFA、および直線勾配[35%(B)〜50%(B)で20’ − 80%(B)で3’ − 80%(B)で3’]を用い、80ml/分の流速を用いて、半分取Waters RCM Delta−Pak(商標)C−4カートリッジ(40×200mm、15μm)を使用する逆相HPLCにより、該粗ペプチドを精製した。典型的な実施においては、100mgの粗PEP2667を10mLの70% 溶離液A/30% 溶離液Bに溶解し、該HPLCカラム上にローディングした。精製されたPEP2667のHPLCプロファイルを図5に示す(収量20mg、20%)。この場合、高いほうのt(15分)において溶出する小さなピークは不純物を表すものではない。なぜなら、それは対照実験においても出現しているからである。
【0098】
前記のとおりに、Waters−Micromass LCZプラットフォーム上でHPLC/MSにより該精製ペプチドを特徴づけした(理論分子量4594Da,実測値4592.6Da)。
【0099】
参考例3
【0100】
【化4】

コレスト−5−エン−3−イル 2,2−ジメチル−4−オキソ−3,8,11,14,17−ペンタオキサ−5−アザイコサン−20−オアート(1):
40mLのCHCl中のコレステロール(0.99g,2.7mmol)の溶液にN−t−boc−アミド−dPEG(商標)酸(1g,2.7mmol,Product N°10220,Quanta BioDesign,Ltd.)を加え、ついでN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(0.43mL,3.2mmol)および4−ジメチルアミノ−ピリジン(16mg,5%)を加えた。該混合物を室温で一晩攪拌し、溶媒を真空中で蒸発させた。該粗製物をEtOAcに溶解し、1N HCl、飽和NHClおよびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。石油エーテル中の25〜50% EtOAc勾配を用いるシリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(BIOTAGE)により該粗製物を精製して、1.48gの所望の化合物を無色油として得た(収率75%)。
【0101】
コレスト−5−エン−3−イル 1−ブロモ−2−オキソ−6,9,12,15−テトラオキサ−3−アザオクタデカン−18−オアート(2):
トリフルオロ酢酸(2mL,26mmol)を10mlのCHCl中の1(1.48g,2mmol)の溶液に加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。全ての揮発性物質を真空下で除去し、該粗製物を凍結乾燥させて、無色油を得、これを60mLのCHClに溶解した。ブロモ酢酸無水物(0.62g,2.4mmol)を加え、ついでN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.65mL,3.7mmol)を加え、該混合物を室温で3時間攪拌した。該溶媒を真空下で除去し、該粗製物を、石油エーテル中の50〜90%のEtOAcの勾配を用いるシリカゲル(BIOTAGE)上のフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、1.1gの所望の化合物を無色油として、2工程で74%の収率で得た。
【0102】
実施例1
(C34−コレステロール):コレステロイル化
Ac−WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLGSGC(コレステリル)−NH(配列番号1)
溶液中の参考例1および2の生成物の間の化学選択的チオエーテル結合により、C34−コレステロールを製造した。12mgの精製された参考例2の生成物(2.61μmol)を600μLのDMSOに溶解し、100μLのTHFに溶解された1.59mgの参考例1の生成物(3.13μmol,1.2当量)を加えた。ついで7μL(1容量%)のDIEA(N,N−ジイソプロピル−エチルアミン)を該混合物に加え、これを室温で攪拌した。溶離液として(A)水中の0.1% TFAおよび(B)アセトニトリル中の0.1% TFA、および直線勾配[30%(B)〜70%(B)で20’ − 80%(B)で3’ − 80%(B)で3’]を用い、1ml/分の流速を用いて、Phenomenex,Jupiter Cカラム(150×4.6mm,5μm)と共にWaters−Micromass LCZ Platformを使用する液体クロマトグラフィー−質量分析により、該反応をモニターした。
【0103】
1時間のインキュベーションの後、該反応は完了し、溶離液として(A)水中の0.1% TFAおよび(B)アセトニトリル中の0.1% TFA、ならびに50%(B)で5’の無勾配工程およびそれに続く直線勾配[35%(B)〜50%(B)で20’ − 80%(B)で3’ − 80%(B)で3’]を用い、30ml/分の流速を用いて、半分取Waters RCM Delta−Pak(商標)C−4カートリッジ(25×200mm、15μm)を使用する逆相HPLCにより、該コレステロール−ペプチド生成物を精製した。直線勾配[50%(B)〜70%(B)で20’ − 80%(B)で3’ − 80%(B)で3’]、1ml/分の流速を用いる以外は前記のとおりに、Waters−Micromass LCZプラットフォーム上でHPLC/MSにより該精製ペプチドを特徴づけした(理論分子量5020.0Da,実測値5020.7Da)。精製されたC34−コレステロールのHPLCプロファイルを図6に示す(収量5.7mg,48%)。
【0104】
実施例2
C34−(オキサ)−コレステロールの合成
【0105】
【化5】

アセチル−WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELLGSGC(オキサ−コレステロール)−NH(配列番号1)
溶液中の参考例2の生成物と参考例3の生成物との間の化学選択的チオエーテル結合により、ペプチドC34−(オキサ)コレステロールを製造した。10mgの精製された参考例2の生成物(2.26μmol)を600μLのDMSOに溶解し、188μLのTHFに溶解された1.88mgの参考例3の生成物(2.49μmol,1.1当量)を加えた。ついで7μLのDIEA(N,N−ジイソプロピル−エチルアミン)を該混合物に加え、これを室温で攪拌した。溶離液として(A)水中の0.1% TFAおよび(B)アセトニトリル中の0.1% TFA、および直線勾配[35%(B)〜80%(B)で20’ − 80%(B)で3’ − 80%(B)で3’]を用い、1ml/分の流速を用いて、Phenomenex,Jupiter Cカラム(150×4.6mm,5μm)と共にWaters−Micromass LCZ Platformを使用する液体クロマトグラフィー−質量分析により、該反応をモニターした。
【0106】
3時間のインキュベーションの後、該反応は完了し、溶離液として(A)水中の0.1% TFAおよび(B)アセトニトリル中の0.1% TFA、ならびに50%(B)で5’の無勾配工程およびそれに続く直線勾配[50%(B)〜70%(B)で20’ − 80%(B)で3’ − 80%(B)で3’]を用い、30ml/分の流速を用いて、半分取Waters RCM Delta−Pak(商標)C−4カートリッジ(25×200mm、15μm)を使用する逆相HPLCにより、該コレステロール−ペプチド生成物を精製した。直線勾配[50%(B)〜70%(B)で20’ − 80%(B)で3’ − 80%(B)で3’]、1ml/分の流速を用いる以外は前記のとおりに、Waters−Micromass LCZプラットフォーム上でHPLC/MSにより該精製ペプチドを特徴づけした(理論分子量5268.0Da,実測値5267.7Da)。収量4.7mg。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステロールまたはその誘導体にC末端において結合した、包膜ウイルスの1型ウイルス融合誘導タンパク質またはその誘導体のHR2ドメインの少なくとも10個の連続アミノ酸を含んでなる、ウイルス融合のインヒビターまたはその医薬上許容される塩。
【請求項2】
該包膜ウイルスがオルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、レトロウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルスまたはアルファウイルスである、請求項1記載のインヒビター。
【請求項3】
該ウイルスがヒト免疫不全ウイルス1(HIV−1)である、請求項1または2記載のインヒビター。
【請求項4】
HR2ドメインの少なくとも15個の連続アミノ酸を含む、前記請求項のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項5】
HR2ドメインの少なくとも25個の連続アミノ酸を含む、前記請求項のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項6】
HR2ドメインの少なくとも30個の連続アミノ酸を含む、前記請求項のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項7】
HIV−1のgp41のアミノ酸628−661を含む、請求項6記載のインヒビター。
【請求項8】
該連続アミノ酸がHR2ドメインを越えては伸長しない、前記請求項のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項9】
該ウイルスタンパク質のC末端がアミド化されている、前記請求項のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項10】
該融合誘導タンパク質と該コレステロールまたはその誘導体との間にリンカーを有し、該リンカーが2以上のアミノ酸を含む、請求項1記載のインヒビター。
【請求項11】
該リンカーが(Gly)n+1、(GlySerGly)または(Gly−Pro)(ここで、nは1以上である)である、請求項10記載のインヒビター。
【請求項12】
該リンカーがGlySerGlyを含む、請求項10または11記載のインヒビター。
【請求項13】
該リンカーが部分−(OCHCH−(ここで、mは1〜15の整数である)を含む、請求項10〜12のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項14】
該リンカーのアミノ酸のC末端にシステインが付加されている、請求項10〜12のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項15】
該リンカーが、部分−CHC(O)−または−CHC(O)NHCHCH(OCHCHC(O)−により、該システイン残基の硫黄原子を介して該コレステロールまたはその誘導体の酸素に結合している、請求項14記載のインヒビター。
【請求項16】
コレステロールを含む、前記請求項のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項17】
【化1】

またはその医薬上許容される塩である、前記請求項のいずれか1項記載のインヒビター。
【請求項18】
前記請求項のいずれか1項記載のインヒビターまたはその医薬上許容される塩と医薬上許容される賦形剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項19】
膣坐剤、膣リング、クリーム剤またはゲル剤である、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
療法または予防によるヒトまたは動物の身体の治療方法において使用するための、請求項1〜17のいずれか1項記載のインヒビターまたはその医薬上許容される塩。
【請求項21】
該療法が包膜ウイルスによる感染の治療または予防である、請求項20記載のインヒビター。
【請求項22】
該ウイルスがHIV−1である、請求項21記載のインヒビター。
【請求項23】
包膜ウイルスによる感染を治療または予防するための医薬の製造のための、請求項1〜17のいずれか1項記載の化合物またはその医薬上許容される塩の使用。
【請求項24】
該ウイルスがHIV−1である、請求項23記載の使用。
【請求項25】
包膜ウイルスに感染している対象を治療する方法であって、請求項1記載のインヒビターまたはその医薬上許容される塩の治療的有効量をその対象に投与することを含んでなる方法。
【請求項26】
包膜ウイルスに感染しやすい対象をそのウイルスによる感染から予防する方法であって、請求項1記載のインヒビターまたはその医薬上許容される塩の予防的有効量をその対象に投与することを含んでなる方法。
【請求項27】
同時投与、連続投与または別々の投与のための、請求項1〜17のいずれか1項記載のインヒビターまたはその医薬上許容される塩と、包膜ウイルスによる感染を治療または予防する別の化合物との組合せ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−500755(P2011−500755A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530421(P2010−530421)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064151
【国際公開番号】WO2009/053339
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】