説明

ウェットワイプスの製造方法、製造装置及びウェットワイプス

【課題】装置の大型化を防ぎつつ、所望量の所定薬液を有するウェットワイプスを製造する。
【解決手段】本発明に係るウェットワイプスの製造方法は、搬送装置2、3、9によって、複数のシート71、72を連続搬送する工程と、搬送装置非当接面側に、シート71、72の各々を折り重ねる工程と、搬送装置当接面側から、折り重ねられたシート71、72の各々に対して所定薬液を含浸させる工程と、所定薬液を含浸させたシート71、72の各々を積層する工程と、積層されたシート71、72を切断する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェットワイプスの製造方法、製造装置及びウェットワイプスに関する。
【背景技術】
【0002】
所定薬液を含浸させたシートの積層体からなるウェットワイプスの製造方法としては、特許文献1や特許文献2に開示されている方法が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されている方法は、積層前の搬送中の原反に所定薬液の一部を含浸させる工程や、搬送中の原反に含浸されている余分な所定薬液を搾り取る工程や、搬送中の複数の原反を積層する工程や、積層後の搬送中の原反に所定薬液の残りを含浸させる工程を有する。
【0004】
また、特許文献2に開示されている方法は、積層前の搬送中の原反に所定薬液を含浸させる工程や、搬送中の原反を折り畳みながら積層する工程や、積層後の原反を厚み方向に圧縮しつつ搬送した後に切断する工程等を有する。
【0005】
特許文献1や特許文献2に開示されている方法で製造されるウェットワイプスは、容器から1枚のシートが取り出される際に、次の1枚のシートが共に引っ張られて容器の取り出し口から突出する形態、所謂、ポップアップタイプの形態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-204118号公報
【特許文献2】特開2007-144053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかるポップアップタイプの形態のウェットワイプスでは、原反に対する所定薬液の含浸率を増加させると、原反同士が所定薬液の水膜によって連結し、容器から1枚ずつシートを取り出すことが困難になるため、原反に対する所定薬液の含浸率は、比較的低く抑えられてしまうという問題点があった。
【0008】
また、特許文献1に開示されている方法では、原反の積層前及び積層後の2段階の所定薬液の含浸工程が必要となり、装置が大型化し、積層後の原反に対して所定薬液を含浸するため、シートの積層体の表面部と中心部とで、所定薬液の含浸量にばらつきが生じるという問題点があった。
【0009】
さらに、特許文献2に開示されている方法では、原反に所定薬液を含浸させた後に、折り畳んだり圧縮したりするため、原反から所定薬液が搾り取られ、所望量の所定薬品を有する製品を製造することができなくなる可能性があるという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、装置の大型化を防ぎつつ、所望量の所定薬液を有するウェットワイプスを製造することができるウェットワイプスの製造方法、製造装置及びウェットワイプスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の特徴は、所定薬液を含浸させたシートの積層体からなるウェットワイプスの製造方法であって、搬送装置によって、複数のシートを連続搬送する工程と、搬送装置非当接面側に、前記シートの各々を折り重ねる工程と、搬送装置当接面側から、折り重ねられた前記シートの各々に対して前記所定薬液を含浸させる工程と、前記所定薬液を含浸させた前記シートの各々を積層する工程と、積層された前記シートを切断する工程とを有することを要旨とする。
【0012】
本発明の第2の特徴は、所定薬液を含浸させたシートの積層体からなるウェットワイプスを製造するように構成されている製造装置であって、複数のシートを連続搬送するように構成されている搬送装置と、搬送装置非当接面側に、前記シートの各々を折り重ねるように構成されている折り部と、搬送装置当接面側から、折り重ねられた前記シートの各々に対して前記所定薬液を含浸させるように構成されている含浸部と、前記所定薬液を含浸させた前記シートの各々を積層するように構成されている積層部と、積層された前記シートを切断するように構成されている切断部とを具備することを要旨とする。
【0013】
本発明の第3の特徴は、所定薬液を含浸させたシートの積層体からなるウェットワイプスであって、各シートは、複数回折り重ねられることによって前記積層体の一方の方向に沿って該積層体の積層方向に隆起するように形成されている隆起領域を有しており、前記積層方向で上下に隣接する各シートの前記隆起領域同士は、前記積層方向において重複しないように配置されており、前記隆起領域において、前記積層方向で上下に隣接するシート同士は、前記所定薬液を介して密着して積層されており、前記隆起領域に隣接する領域では、前記積層方向で上下に隣接するシートの間に空隙が形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、装置の大型化を防ぎつつ、所望量の所定薬液を有するウェットワイプスを製造することができるウェットワイプスの製造方法、製造装置及びウェットワイプスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る製造装置によって製造されたウェットワイプスの包装体の斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る製造装置によって製造されたウェットワイプスが包装体内部で収容されている様子を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る製造装置によって製造されたウェットワイプスが包装体内部で収容されている様子を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る製造装置の概略図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る製造装置の押さえロールについて説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る製造装置の搬送コンベアについて説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る製造装置の搬送コンベアについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の第1の実施形態)
図1乃至図3を参照して、本発明の第1の実施形態に係る製造装置10によって製造されるウェットワイプスについて説明する。かかるウェットワイプスは、所定薬液を含浸させたシート710、720の積層体からなるものである。
【0017】
図1に示すように、かかるウェットワイプスの包装体100は、開口部21を有する包装体本体20と、包装体本体20の外面に取り付けられ開口部21を覆うラベル部材22と、包装体本体20の内部に収容されるシート710、720の積層体とを有する。
【0018】
かかるシート710、720の各々は、図2及び図3に示すように折り重ねられた状態で、包装体本体20の内部に収容されている。
【0019】
図2及び図3に示すように、シート720は、領域31Aと領域32Aと領域33Aと領域34Aと領域35Aと有し、シート710は、領域31Bと領域32Bと領域33Bと領域34Bと領域35Bと有する。
【0020】
ここで、シート720では、折り線1Aにおいて領域31Aと領域32Aとが折り重ねられ、折り線2Aにおいて領域32Aと領域33Aとが折り重ねられ、折り線3Aにおいて領域33Aと領域34Aとが折り重ねられ、折り線4Aにおいて領域34Aと領域35Aとが折り重ねられている。
【0021】
同様に、シート710では、折り線1Bにおいて領域31Bと領域32Bとが折り重ねられ、折り線2Bにおいて領域32Aと領域33Aとが折り重ねられ、折り線3Bにおいて領域33Aと領域34Aとが折り重ねられ、折り線4Bにおいて領域34Aと領域35Aとが折り重ねられている。
【0022】
なお、シート720では、折り線1A及び折り線2Aは、他方の方向Wにおける折り線3Aと折り線4Aとの間に設けられており、シート710では、折り線1B及び折り線2Bは、積層体の他方の方向Wにおける折り線3Bと折り線4Bとの間に設けられている。
【0023】
すなわち、シート720において、他方の方向Wにおける折り線1Aと折り線2Aと間の領域は、領域31Aと領域32Aと領域33Aと領域34Aとが折り重ねられている4層構造となっており、それ以外の領域は、領域33Aと領域34Aとが折り重ねられている2層構造となっている。
【0024】
したがって、領域31A及び領域32Aは、積層体の一方の方向Lに沿って積層体の積層方向Sに隆起している。
【0025】
すなわち、領域31A及び領域32Aは、折り線1A及び折り線2Aにおいて折り重ねられることによって、積層体において一方の方向Lに沿って積層方向Sに隆起するように形成されている隆起領域PAを構成する。
【0026】
同様に、シート710において、他方の方向Wにおける折り線1Bと折り線Bと間の領域は、領域31Bと領域32Bと領域33Bと領域34Bとが折り重ねられている4層構造となっており、それ以外の領域は、領域33Bと領域34Bとが折り重ねられている2層構造となっている。
【0027】
したがって、領域31B及び領域32Bは、積層体の一方の方向Lに沿って積層体の積層方向Sに隆起している。
【0028】
すなわち、領域31B及び領域32Bは、折り線1B及び折り線2Bにおいて折り重ねられることによって、積層体において長手方向Lに沿って積層方向Sに隆起するように形成されている隆起領域PBを構成する。
【0029】
ここで、シート710、720における隆起領域PA(又は、PB)では、シート720(又は、710)の一方の側縁を含む領域31A(又は、31B)及び領域31A(又は、31B)に隣接する領域32A(又は、32B)は、積層体の一方の方向Lの折り線1A(又は、1B)に沿って折り重ねられており、領域32A(又は、32B)及び領域32A(又は、32B)に隣接する領域33A(又は、33B)は、積層体の一方の方向Lの折り線2A(又は、2B)に沿って折り重ねられている。
【0030】
また、積層方向Sにおいて、幅方向Wにおける折り線1Bと折り線Bと間の領域(すなわち、隆起領域PA)は、他方の方向Wにおける折り線1Bと折り線Bと間の領域(すなわち、隆起領域PB)と重複しないように配置されている。
【0031】
さらに、隆起領域PA、PBにおいて、積層方向Sに隣接するシート710、720同士は、所定薬液を介して密着して積層されている。
【0032】
ここで、隆起領域PA、PBに隣接する領域RA、RB、RCでは、積層方向Sに隣接するシート710、720の間に空隙が形成されており、所定薬液を介して密着して積層されていない。
【0033】
したがって、このシート710、720の間に形成された空隙により、シート同士が密着されていないため、シート720の隆起領域PAを摘んでシート720を取り出そうとした場合には、シート720の下方に位置するシート710の領域RCに空隙が存在するため、シート710からシート720を引き剥がしやすく作用することとなる。
【0034】
なお、領域RA、RB、RCの幅方向Wの外側の領域QA、QBでは、積層方向Sに隣接するシート710、720同士は、所定薬液を介して密着して積層されている。
【0035】
ここで、本発明の第1の実施形態に係る製造装置10によって製造されるシートは、上述したポップアップタイプの形態ではないため、包装体本体20の開口部21からシート720が取り出された場合であっても、シート710が共に引っ張られて開口部21から突出することはない。
【0036】
すなわち、使用者は、包装体本体20の開口部21から、領域31A及び領域32A(すなわち、シート720の隆起領域PA)を摘んで引っ張ることによってシート720を取り出した後、領域31B及び領域32B(すなわち、シート710の隆起領域PB)を摘んで引っ張ることによってシート710を取り出すことができる。
【0037】
以下、図4を参照して、本実施形態に係るウェットワイプスの製造方法について簡単に説明する。
【0038】
図4に示すように、ステップS101において、折り部5は、ロール状に巻かれた状態から繰り出されたシート71、72の各々を、搬送装置非当接面側に、所定形状(具体的には、図2及び図3に示す形状)に折り重ねる。
【0039】
例えば、シート71、72は、坪量25〜100g/mであり、レーヨンやコットンやパルプ等の親水性繊維とPETやPPやPEやアクリル等の単体とからなる繊維若しくは芯鞘構造やサイドバイサイドの構造の疎水性複合繊維からなる。
【0040】
また、シート71、72は、スパンレース法やエアレイド法や直接紡糸法によりシート化された不織布であり、所定薬液の含浸時における所定薬液の浸透性の観点から親水繊維を含む必要がある。
【0041】
ステップS102において、含浸部1は、搬送装置当接面側(搬送ロール2側)から、折り重ねられたシート71、72の各々に対して、所定量の所定薬液を含浸させる。
【0042】
ステップS103において、所定薬液を含浸させたシート71、72の各々は、搬送ロール2の表面に接しながら搬送される。
【0043】
ステップS104において、重ねロール6は、所定薬液を含浸させたシート71、72の各々を積層する。
【0044】
具体的には、重ねロール6では、所定薬液が含浸された面を搬送装置当接面側(重ねロール6側)に向けた状態のティシューワイプス71の上に、搬送装置非当接面側から、所定薬液が含浸された面を搬送装置当接面側(重ねロール6側)に向けた状態のシート72が積層される。
【0045】
ステップS105において、切断部105は、搬送ベルト3を介して搬送されたシート71、72を、所定寸法のシート710、720に切断する。
【0046】
その後、積層工程において、切断されたシート710、720を所定枚数だけ積層した後、包装工程において、包装体本体20によって包装する。
【0047】
以下、図4乃至図7を参照して、本実施形態に係る製造装置10の各機能について説明する。
【0048】
図4に示すように、製造装置10は、折り部5と、含浸部1と、搬送ロール2と、重ねロール6と、搬送コンベア3、9と、切断部4とを具備している。ここで、製造装置10では、搬送ロール2及び搬送コンベア3、9は、複数のシート71、72を連続搬送する搬送装置を構成する。
【0049】
折り部5は、搬送装置非当接面側に、シート71、72の各々を折り重ねるように構成されている。具体的には、折り部5は、シート71、72が図2及び図3に示す形状となるように、シート71、72の各々を折り重ねるように構成されている。
【0050】
具体的には、折り部5は、搬送方向MDの折り線3A(又は、3B)に沿って、シート72(又は、71)の一方の側縁を含む領域31A/32A/33A(又は、31B/32B/33B)を搬送装置非当接面側に折り重ね、その後、搬送方向MDの折り線2A(又は、2B)に沿って、シート72(又は、71)の一方の側縁を含む領域31A/32A(又は、31B/32B)を搬送装置非当接面側に折り重ね、その後、搬送方向MDの折り線1A(又は、1B)に沿って、シート72(又は、71)の一方の側縁を含む領域31A(又は、31B)を搬送装置非当接面側に折り重ねるように構成されている。
【0051】
また、折り部5は、搬送方向MDの折り線4A(又は、4B)に沿って、シート72(又は、71)の他方の側縁を含む領域35A(又は、35B)を搬送装置当接面側に折り重ねるように構成されている。
【0052】
含浸部1は、搬送装置当接面側から、折り重ねられたシート71、72の各々に対して所定薬液を含浸させるように構成されている。
【0053】
例えば、含浸部1は、薬液タンクから定量ポンプを用いて、所定量の所定薬液を押し出すように構成されていてもよい。その結果、所定量の所定薬液が、含浸部1に設けられている細孔より吐出され、シート71、72の各々に接触することで、シート71、72の各々に所定量の所定薬液が含浸されるように構成されている。
【0054】
また、含浸部1は、シート71、72の重量に対して、例えば、3.5(3〜4)倍の重量の所定薬液を含浸させるように構成されていてもよい。
【0055】
なお、含浸部1は、含浸させる所定薬液の重量のシート71、72の重量に対する比率(すなわち、含浸率)を、適宜、調整可能である。
【0056】
ここで、シート71、72が搬送ロール2の表面に貼りつき、かつ、シート72がシート71の上に貼りつくために必要な含浸率は、例えば、シート71、72として、レーヨン繊維主体の38g/mのスパンレース不織布が用いられる場合には、1.5倍以上である。
【0057】
また、含浸部1は、所定薬液の塗工方法として、液滴又は霧状の所定薬液をシート71、72に付着させる方法を用いてもよい。ただし、シート71、72に対する所定薬液の含浸面を搬送ロール2の表面に接触させる際の薬液含浸効率及び工程汚染を考慮すると、上述の方法が好ましい。
【0058】
搬送ロール2は、駆動源に接続されており、独自で回転している表面が平滑な駆動ロールである。
【0059】
なお、図5に示すように、搬送ロール2に対向する位置に、押さえロール8A〜8Cが設けられていてもよい。
【0060】
押さえロール8A〜8Cは、所定薬液が含浸されているシート71、72内の折り部5によって折り重ねられている箇所(図2に示す折り線1A〜4Aに対応する箇所や折り線1B〜4Bに対応する箇所、以下、折り重ね箇所)を押圧するように構成されている。
【0061】
例えば、押さえロール8Aは、シート72内の折り線1A、2Aに対応する箇所、及び、シート71内の折り線1B、2Bに対応する箇所を押圧するように構成されている。
【0062】
また、押さえロール8Bは、シート72内の折り線3Aに対応する箇所、及び、シート71内の折り線3Bに対応する箇所を押圧するように構成されている。
【0063】
さらに、押さえロール8Cは、シート72内の折り線4Aに対応する箇所、及び、シート71内の折り線4Bに対応する箇所を押圧するように構成されている。
【0064】
この結果、かかる折り重ね箇所に折り癖を付与することができ、シート71、72の搬送の安定化を図ることができる。
【0065】
ここで、押さえロール8A〜8Cの表面において、シート71、72内の折り重ね箇所に対応する位置に凸部が形成されていてもよい。この結果、押さえロール8A〜8C及び搬送ロール2による挟み込みによって、シート71、72に含浸されている所定薬液の滲み出しを防止することができる。
【0066】
また、押さえロール8A〜8Cの表面に窪みが点在されていてもよい。この結果、所定薬液の滲み出しの低減効果は、更に向上する。
【0067】
重ねロール6は、所定薬液を含浸させたシート71、72の各々を積層する積層部を構成する。また、重ねロール6は、搬送ロール2と実質同等の搬送速度で、シート71、72の各々を搬送するように構成されている表面が平滑なロールである。
【0068】
搬送コンベア3は、搬送ロール2と実質同等の搬送速度で、シート71、72の各々を搬送するように構成されている。
【0069】
例えば、図6に示すように、搬送コンベア3は、上方搬送コンベア31及び下方搬送コンベア32によって構成されていてもよい。かかる場合、シート71、72の積層体は、上方搬送コンベア31及び下方搬送コンベア32によって挟み込まれた状態で切断部4の方向に搬送される。
【0070】
図7に、上方搬送コンベア31及び下方搬送コンベア32によって挟み込まれた状態のシート71、72の積層体の幅方向(搬送方向をMDとした場合の交差方向CD)の断面図を示す。
【0071】
図7に示すように、上方搬送コンベア31のシート72当接面側に、交差方向CDにおいて交互にかつ搬送方向MD(シート71、72の積層体の一方の方向)において連続して凹部310及び凸部311が形成されていてもよい。
【0072】
かかる場合、下方搬送コンベア32のシート71当接面側には、凹部や凸部が形成されていなくてもよい、すなわち、下方搬送コンベア32のシート71当接面側は、平滑となるように形成されていてもよい。
【0073】
この結果、シート72は、上方搬送コンベア31の凸部311に当接している領域において、上方搬送コンベア31の凹部310に当接している領域よりも、シート71と比較して、厚み方向Tに押さえられた状態で搬送されている。
【0074】
また、上方搬送コンベア31の表面に形成されている凹部310及び凸部311は、シート72の幅方向に平行でなくてもよい。
【0075】
切断部4は、シート71、72の積層体を切断するように構成されている。例えば、切断部4は、表面に切り刃を有するカッターロール及び表面が平滑なアンビルロールによって構成されている。
【0076】
また、搬送コンベア9は、搬送コンベア3と同様に、上方搬送コンベア及び下方搬送コンベアによって構成されていてもよい。かかる場合、シート710、720の積層体は、上方搬送コンベア及び下方搬送コンベアによって挟み込まれた状態で搬送される。
【0077】
この結果、切断部4によって切断された後のシート710、720の積層体の搬送コンベア9への転写性及び搬送安定性を向上することができる。
【0078】
また、かかる上方搬送コンベアには、搬送コンベア3の上方搬送コンベア31と同様に凹部及び凸部が形成されていてもよい。
【0079】
ここで、搬送コンベア9における搬送速度は、搬送コンベア3及び切断部4における搬送速度よりも3%程度速い。
【0080】
本実施形態に係る製造方法及び製造装置10によれば、シート71、72に含浸させた所定薬液を搾り出したり、吸引したりすること無く、シート71、72を搬送することができるので、所望量の所定薬液を保持したウェットワイプスを製造することができる。
【0081】
また、本実施形態に係る製造方法及び製造装置10によれば、従来のポップアップタイプのウェットワイプスと比較して、所定薬液の含浸量を増加させても、1枚ずつ取り出すことが可能なウェットワイプスを容易に製造することができる。
【0082】
一般的に、折り部5は、複数の折り板を介してシート71、72を所要形状に折り畳むように構成されているため、所定薬液を含浸させたシート71、72を通過させようとすると、所定薬液により折り板とシート71、72との間の密着力(すなわち、搬送抵抗)が増加し、折り板で所定薬液を搾りながらシート71、72を搬送することとなる。
【0083】
この傾向は、シート71、72に対する所定薬液の含浸量の増加により顕著となるが、本実施形態に係る製造方法及び製造装置10によれば、折り部5の折り開始点よりも後に含浸部1を配置し、折り部5の個々の折り板による搬送抵抗を低減する配置となっている。また、かかる配置とすると、折り部5からの異物の混入を低減することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る製造方法及び製造装置10によれば、所定薬液を含浸させたシート71、72における所定薬液の含浸面を搬送ロール2の表面に接触させることで、搬送ロール2の表面とシート71、72とが所定薬液の水膜により密着し、所定薬液を含浸させたシート71、72の搬送ロール2における搬送力を向上させることができる。
【0085】
このとき、所定薬液を含浸させたシート71、72と搬送ロール2との接触時間の長さ(抱き角)は、シート71、72への所定薬液の含浸量により適宜調整される。
【0086】
搬送ロール2に加えて、重ねロール6及び搬送コンベア3も合わさって、水膜密着性による搬送力を発揮するため、所定薬液を含浸させたシート71、72をニップローラ搬送やサクション搬送等を設ける必要がない。その結果、所定薬液を搾り出すことなくシート71、72を搬送することができる。
また、搬送ロール2上で、シート71、72における折り重ね箇所を、表面に凸部が設けられている押さえロール8で押さえることによって、かかる折り重ね箇所を平坦にすることができ、次にシート71、72同士を重ねた時の密着性を向上させることができる。
【0087】
また、複数の所定薬液を含浸させたシート71、72を重ねて搬送する場合には、シート71の上に重ねるシート72の下面が所定薬品含浸面となっていれば、シート71、72が密着した状態を保ったままで、ズレ無くシート71、72を搬送することができる。
【0088】
このとき、シート72の所定薬液含浸面とシート71の所定薬液含浸面とが一致するように重ねられている場合には、製造時における搬送安定性は、更に向上するものの、製造後、ウェットワイプスを使用する際に、シートの剥離性が悪くなり、取り出し性の低下を招くため好ましくない。
【0089】
これとは逆に、シート72の所定薬液含浸面とシート71の所定薬液含浸面とが一致していない場合には、搬送性及び取り出し性共に悪化するため好ましくない。
【0090】
また、本実施形態に係る製造方法及び製造装置10によれば、切断部4における搬送速度よりも搬送コンベア9における搬送速度が速い。
【0091】
したがって、シート71、72の積層体は、切断部4で切断されまでの間、搬送コンベア3における搬送速度で保持され、切断後は、搬送コンベア9における搬送速度で搬送される。
【0092】
シート71、72の積層体を蛇行等することなく安定的に切断部4へ搬送するためには、複数のシート71、72の積層体を上方搬送コンベア31と下方搬送コンベア32とで挟みながら搬送すると良好となる。
【0093】
しかし、この時、シート71、72の積層体を上下から過度に圧縮すると、所定薬液の滲み出しが発生してしまうため、上方搬送コンベア31及び下方搬送コンベア32の少なくとも一方の表面を、幅方向に交互に繰り返す凹部310及び凸部311が長手方向に連続する形状とすることで、シート71、72の積層体を、幅方向に点在する凸部311で保持しつつ、凹部310によって空間を保持したまま搬送することできる。
【0094】
したがって、製造時の搬送安定性が向上すると共に、ウェットワイプスの使用時に、ティシューペーパー間を剥離し易く構成されている。更に、シート71、72の積層体を切断した後、複数のシートを積層して製品としてのシートの積層体とする場合、製品としてのシートの積層体を生成した後に過度の圧縮を付与しなければ、シート間に空間が形成されているので、使用時に同様の効果を奏する。
【0095】
また、上方搬送コンベア31及び下方搬送コンベア32の一方の表面が平滑である場合には、かかる表面とシート71、72との間で形成される水膜による密着力で、シート71、72を搬送でき、シート71、72の圧縮による所定薬液の搾り出しを防止できる。
【0096】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0097】
10…製造装置
1…含浸部
2…搬送ロール
3、9…搬送コンベア
4…切断部
5…折り部
6…重ねロール
71、72…シート
8A、8B、8C…押さえロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定薬液を含浸させたシートの積層体からなるウェットワイプスの製造方法であって、
搬送装置によって、複数のシートを連続搬送する工程と、
搬送装置非当接面側に、前記シートの各々を折り重ねる工程と、
搬送装置当接面側から、折り重ねられた前記シートの各々に対して前記所定薬液を含浸させる工程と、
前記所定薬液を含浸させた前記シートの各々を積層する工程と、
積層された前記シートを切断する工程とを有することを特徴とするウェットワイプスの製造方法。
【請求項2】
所定薬液を含浸させたシートの積層体からなるウェットワイプスを製造するように構成されている製造装置であって、
複数のシートを連続搬送するように構成されている搬送装置と、
搬送装置非当接面側に、前記シートの各々を折り重ねるように構成されている折り部と、
搬送装置当接面側から、折り重ねられた前記シートの各々に対して前記所定薬液を含浸させるように構成されている含浸部と、
前記所定薬液を含浸させた前記シートの各々を積層するように構成されている積層部と、
積層された前記シートを切断するように構成されている切断部とを具備することを特徴とする製造装置。
【請求項3】
前記搬送装置は、前記積層部と前記切断部との間の区間において、積層された前記シートを挟み込んだ状態で連続搬送するように構成されている上方搬送ベルト及び下方搬送ベルトを具備しており、
前記上方搬送ベルト及び前記下方搬送ベルトの一方のシート当接面側に、搬送方向の交差方向において交互にかつ該搬送方向において連続して凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記含浸部と前記積層部との間の区間において、前記所定薬液を含浸させた前記シートを挟み込むように構成されている搬送ロール及び押さえロールを具備しており、
前記押さえロールの表面には凸部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の製造装置。
【請求項5】
前記折り部は、
搬送方向の第1折り線に沿って、前記シートの一方の側縁を含む領域を、前記搬送装置非当接面側に折り重ね、
その後、前記搬送方向の第2折り線に沿って、前記シートの一方の側縁を含む領域を前記搬送装置非当接面側に折り重ね、
その後、前記搬送方向の第3折り線に沿って、前記シートの一方の側縁を含む領域を前記搬送装置非当接面側に折り重ねるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の製造装置。
【請求項6】
所定薬液を含浸させたシートの積層体からなるウェットワイプスであって、
各シートは、複数回折り重ねられることによって前記積層体の一方の方向に沿って該積層体の積層方向に隆起するように形成されている隆起領域を有しており、
前記積層方向で上下に隣接する各シートの前記隆起領域同士は、前記積層方向において重複しないように配置されており、
前記隆起領域において、前記積層方向で上下に隣接するシート同士は、前記所定薬液を介して密着して積層されており、
前記隆起領域に隣接する領域では、前記積層方向で上下に隣接するシートの間に空隙が形成されていることを特徴とするウェットワイプス。
【請求項7】
前記隆起領域に隣接する領域の幅方向の外側の領域では、前記積層方向で上下に隣接するシート同士は、前記所定薬液を介して密着して積層されていることを特徴とする請求項6に記載のウェットワイプス。
【請求項8】
前記シートに含浸される前記所定薬液の重量は、前記シートの重量の3〜4倍であることを特徴とする請求項6に記載のウェットワイプス。
【請求項9】
前記シートにおける隆起領域では、
前記シートの一方の側縁を含む第1領域及び該第1領域に隣接する第2領域は、前記積層体の一方の方向の第1折り線に沿って折り重ねられており、
前記第2領域及び該第2領域に隣接する第3領域は、前記積層体の一方の方向の第2折り線に沿って折り重ねられていることを特徴とする請求項6に記載のウェットワイプス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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