説明

ウエスト周囲径演算装置及びウエスト周囲径演算装置を備えた体組成測定装置。

【課題】腹部横幅距離から、簡便に且つ再現性良くウエスト周囲径を求められる装置を提供する。
【解決手段】部横幅距離を計測する腹部横幅距離計測手段と、腹部横幅距離とウエスト周囲径との相関式を記憶する記憶手段と、腹部横幅距離計測手段で計測された腹部横幅距離と相関式とからウエスト周囲径を演算するウエスト周囲径演算手段とを備え、また、相関式は、複数の被測定者を対象とした、腹部横幅距離とウエスト周囲径との相関から得られた、Y=aX+b(Y:ウエスト周囲径、X:腹部横幅距離、a及びb:定数)なる回帰式で表されるものであることから、ウエスト周囲全周に渡って測定具を巻き付ける必要がなく、簡便な操作を可能とする。また、呼吸によって大きく変化する腹部の前後の方向の形状変化の影響が少ないため、正確性の高いウエスト周囲径を、再現性良く得ることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体のウエスト周囲径を演算する演算装置及びウエスト周囲径演算装置を備えた体組成測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエスト周囲径(つまりウエスト周囲長)は、体格や体形に関する判断指標の一つとして、医療、美容又は健康の分野において、広く用いられている。特に、肥満を始めとする生活習慣病が注目される昨今では、ウエスト周囲径は、内臓脂肪の蓄積量を反映する指標であると考えられるために、メタボリックシンドロームの診断基準として用いられる等、注目される身体指標である。
【0003】
このウエスト周囲径を測定するものとしては、一般的には、メジャーである。また、メジャーのようにウエスト周上に巻き付けてウエスト周囲径と共に腹部インピーダンスを測定するようなベルト状の装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−113870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記巻尺やベルト状の装置では、まず、ウエスト周上の同じ位置に正確に巻き付けるのが難しかった。例えば、被測定者が立位での測定の場合には、臍位置の周りの水平面周上にメジャーを宛がうことは、高さがずれたりするため、非常に難しく、手間の掛かる作業である。そのため、特に集団検診などの場合には、時間が掛かりスムーズな検診の妨げになっていた。
【0005】
また、メジャーを宛がう際に、測定部位を締め付けることなく、且つ、位置ずれさせることなく宛がうのは難しい。たとえ、正確な位置に宛がったとしても、ずれないように締め付けなければならないため、測定部位の変形による誤差を含むことになってしまう。
【0006】
また、腹部は、呼吸により、主に前後に大きく形状が変化するため、腹部全周に渡って、メジャーを巻きつけた場合には、この腹部の前後の形状変化が、ウエスト周囲径の計測値に影響するため、繰り返し誤差を生じやすい。
【0007】
従って、本発明は、上述の問題を解決し、腹部横幅距離から、簡便に且つ再現性良くウエスト周囲径を求められる装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、腹部横幅距離を計測する腹部横幅距離計測手段と、腹部横幅距離とウエスト周囲径との相関式を記憶する記憶手段と、前記腹部横幅距離計測手段で計測された腹部横幅距離と前記相関式とからウエスト周囲径を演算するウエスト周囲径演算手段とを備えるウエスト周囲径演算装置を提供する。本発明によれば、ウエスト周囲全周に渡って測定具を巻き付ける必要がなく、装置の簡便な操作が可能である。また、呼吸によって大きく変化する腹部の前後への形状変化の影響が少ないため、正確性の高いウエスト周囲径を、再現性良く得ることが可能である。
【0009】
また、前記相関式は、Y=aX+b(Y:ウエスト周囲径、X:腹部横幅距離、a及びb:定数)なる回帰式で表されるものである。
【0010】
また、前記腹部横幅距離計測手段は、被計測物までの距離を計測する反射式の非接触式距離計測センサを用いて腹部横幅方向の最大距離を計測する。従って、ウエスト周囲径演算の基となる腹部横幅距離を非接触で、腹部の変形を引き起こさずに計測することが可能である。
【0011】
また、好ましくは、前記腹部横幅距離計測手段は、少なくとも1対の前記センサの各距離計測方向が腹部横幅方向に平行になるように、腹部を横幅方向に挟むようにして前記センサを対向させて配し、被測定者の前後方向と平行な方向の複数位置で距離計測させるように配したフレームを更に備え、前記ウエスト周囲径演算手段は、前記少なくとも1対のセンサによって各々計測された複数の距離に基づいて腹部横幅距離を演算する演算手段を兼ねる。この場合には、ウエスト周囲径演算の基となる腹部横幅距離を簡便な操作でスムーズに計測することが可能であり、被測定者はもとより測定者に掛かる負担を軽減することを可能とする。
【0012】
また、好ましくは、前記腹部横幅距離計測手段は、少なくとも1つの前記センサを、その距離計測方向が腹部横幅距離方向に対して垂直になるように配し、腹部横幅距離方向と平行な方向の複数位置で距離計測させるように配したフレームを更に備え、前記ウエスト周囲径演算手段は、前記センサによって計測された複数の距離に基づいて、腹部両端に対応するセンサによる腹部計測の始点及び終点を検出して、始点−終点間距離を腹部横幅距離として演算する演算手段を兼ねる。この場合には、ウエスト周囲径演算の基となる腹部横幅距離を簡便な操作でスムーズに計測することが可能であり、被測定者はもとより測定者に掛かる負担を軽減することを可能とする。
【0013】
また、前記フレームは、前記フレームを腹部前面に設置するために湾曲した凹部である設置部を更に備えると好ましい。このような設置部により、フレームと被測定者の相対的な位置変化を最小限にすることができる。腹部前面にフレームを設置した場合には、フレームに押されて腹部が変形する。しかし、この腹部の変形によるウエスト周囲径への影響は、呼吸による腹部の前後の形状変化によるウエスト周囲径への影響よりも小さい。この事実は、本発明者らが見出した。従って、腹部前面にフレームを設置した場合でも、正確性の高いウエスト周囲径を、再現性良く得ることが可能である。
【0014】
また、前記フレームには、前記腹部横幅距離計測の基準位置として臍位置を指示する臍位置指示手段が設けられている。臍位置指示手段が設けられていることにより、臍を通る腹部の周囲にフレームを位置決めすることが容易であり、医療・健康に関連する分野において通常ウエスト周囲径として定義されている腹部の臍を通る外周の長さを正確性高く得ることが可能である。臍位置指示手段は、前記フレームに取り付けられ光束を照射する発光装置でもよい。臍位置指示手段が発光装置の場合には、そこから発した光束が臍を照射するようにフレームを人体に対して位置決めするとよい。臍位置指示手段は、前記フレームに形成された貫通孔でもよい。臍位置指示手段が貫通孔の場合には、貫通孔を通して臍を視認できるようにフレームを人体に対して位置決めするとよい。
【0015】
前記フレームは、一片が開放し、被測定者が内部に配置される枠であると好ましい。これによればセンサが取り付けられたフレームを被測定者の外側に配置し、測定を行うことが容易である。従来のメジャーは、体幹の全周に渡って巻きつけるものであるため、例えば、寝たきりの身障者または老人を測定する場合には、介助者にとっては、相当手間が掛かっていた。しかし、フレームの一片が開放されていれば、このような被測定者を容易かつ迅速に測定できる。被測定者が立っている場合にも、フレームの一片が開放されていれば、被測定者は容易にフレームの内部に入るか、フレームを容易に被測定者の外側に配置することが可能であり、容易かつ迅速に測定できる。
【0016】
さらに、前記フレームを被測定者の正中線方向に沿って摺動可能に支持する棒と、前記フレームを前記棒に対して移動させる移動手段を備えると好ましい。これによれば、移動手段によってフレームを被測定者の正中線方向に沿って自動的に簡単に移動させることができる。
【0017】
更に、本発明は、腹部横幅距離を計測する腹部横幅距離計測手段と、腹部横幅距離とウエスト周囲径との相関式を記憶する記憶手段と、前記腹部横幅距離計測手段で計測された腹部横幅距離と前記相関式とからウエスト周囲径を演算するウエスト周囲径演算手段と、を備えるウエスト周囲径演算装置を具備する体組成測定装置であって、腹部の生体電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定手段と、前記生体電気インピーダンス測定手段で測定された腹部の生体電気インピーダンスと前記ウエスト周囲径演算手段で演算されたウエスト周囲径とから、体組成に関する指標を演算する体組成指標演算手段と、を更に備え、前記記憶手段が、前記体組成に関する指標を演算するための体組成指標演算式を更に記憶する体組成測定装置を提供する。この体組成測定装置では、ウエスト周囲径が正確に測定されるので、体組成に関する指標も正確性高く得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態は、ウエスト周囲径演算装置を備えた体組成測定装置である。ウエスト周囲径演算装置は、仰臥位の被測定者に対して、臍を通る腹部の横幅方向の最大距離(以下、腹部横幅距離と言う。)を計測し、予め記憶してある、腹部横幅距離とウエスト周囲径との相関式に基づいて、計測した腹部横幅距離から、ウエスト周囲径を演算する。この相関式は、複数の被測定者を対象として、腹部横幅距離と、CT(computerized axial tomography)を利用した測定から得られたウエスト周囲径との関係式である。体組成測定装置は、腹部の生体電気インピーダンスを測定する腹部生体電気インピーダンス測定部を更に備え、前記演算されたウエスト周囲径と測定された腹部の生体電気インピーダンスとに基づいて体組成指標を求める。
【0019】
以下、図1乃至図6を用いて、第1の実施の形態の体組成測定装置を説明する。図1は、第1の実施の形態の体組成測定装置1の外観を示す斜視図であり、図2は、その電気的構成を示すブロック図であり、図3(A)は、被計測物に対して体組成測定装置1を被測定者にセットした状態を示した、図1の正面図であり、図3(B)は、計測時の状態の体組成測定装置1を示した正面図であり、図4は、体組成測定装置1の動作のメインルーチンを示すフローチャートであり、図5は、体組成測定装置1が実行する演算サブルーチンを示すフローチャートであり、図6は、腹部横幅距離とウエスト周囲径との関係を示す図である。
【0020】
本実施の形態の体組成測定装置1は、腹部横幅距離計測手段として、センサ6a及び6bと、前記センサ6a及び6bを支持する、持ち運び可能な略コの字型フレーム(以下、単にフレームと言う。)14とを備える。また、前記フレーム14は、センサ6a及び6bの距離計測軸が一直線上になるようにセンサ6a及び6bを対向させて支持し、前記距離計測軸に対して直交する方向に平行に伸びる2本のアーム3a及び3bと、一方の端部にアーム3aを連結し、もう一方の端部にアーム3bを連結する連結部2を有する。また、アーム3aは、前記センサ6aをアーム3aに沿って、前記連結部2に連結されていない一端から連結部2に連結されている一端まで(以下、移動範囲と言う。)移動させる移動機構部7aを備える。図1には示さないが、同様にして、アーム3bも前記センサ6bを移動させる移動機構部7bを備える(図2参照)。更に、前記連結部2は、表示部4及び電源スイッチや計測開始スイッチなどから成る操作部5を備え、内部には体組成測定装置1の制御を行うための電気回路を内蔵している。
【0021】
前記移動機構部7aは、センサ6aを、前記移動範囲においてスライド移動させるものであり、例えば、アーム3aの内部両端に配した2つの回転軸に掛け渡した環状ベルトを、前記2つの回転軸の一方をステッピングモータ等により回転させる機構であり、センサ6aを、アーム3aの表面に露出した状態で前記環状ベルトに取り付けることで、センサ6aを移動させる。また、前記移動機構部7bも、前記移動機構部7aと同様の機構である。移動機構部7a、7bとしては、ベルトに限らず、他の適切な移動機構を利用してもよい。
【0022】
また、体組成測定装置1は、腹部の生体電気インピーダンスを測定するための手段として、生体電気インピーダンス測定用電極群15と、前記電極群15を腹部前面に接触させて支持するための電極支持部16を備える。前記電極支持部16は、中央に貫通する孔部17を備え、生体電気インピーダンス測定用電極群15は前記フレーム14内の電気回路に接続されている。
【0023】
前記孔部17は、腹部生体電気インピーダンス測定時に、この孔部17から被測定者の臍が見えるように、電極支持部16を腹部前面に宛がうことによって、臍位置を基準として腹部前面の所定の位置に前記電極群を接触させることを可能とする。好ましい電極配列は公知であるので、その説明を省略する。
【0024】
また、後述するが、連結部2における両アーム3a及び3b間の中心位置には、図1では図示していない臍位置指示部18が設けられている(図2及び図3参照)。
【0025】
また、図2のブロック図を用いて、ウエスト周囲径を演算するための手段を含む体組成測定装置1の構成を説明する。前記表示部4、操作部5、センサ6a及び6b、移動機構部7a及び7bが、マイクロコンピュータ8に接続されている。前記マイクロコンピュータ8は、制御部9、演算部10、判定部11、記憶部(記憶手段)12及び電源13を備える。制御部9は、前記センサ6a及び6bによる距離計測と移動機構部7a及び7bの移動制御とを含む体組成測定装置1全般の制御を行う。演算部10は、前記センサ6a及び6bによる距離計測の計測結果に基づいて被測定者20の被計測点間距離を演算する。判定部11は、複数の前記被計測点間距離の比較による最大距離、すなわち、腹部横幅距離の判定やセンサ移動範囲の限界位置の判定等をする。制御部9、演算部10、判定部11及び記憶部12は、複数の中央演算処理装置によって実現されていてもよいし、単一の中央演算処理装置が後述するコンピュータプログラムを実行することによって実現されていてもよい。
【0026】
前記記憶部は、各種初期値や演算式を記憶し、また、計測されたデータの内少なくとも前記判定部11で判定された腹部横幅距離を記憶する。また、前記記憶部は、予め複数の被測定者のデータから統計的に求めた、腹部横幅距離とウエスト周囲径との相関式を記憶する。前記演算部10は、被計測点間距離の演算だけでなく、前記相関式に基づいて、前記判定された腹部横幅距離からウエスト周囲径を演算するウエスト周囲径演算部すなわちウエスト周囲径演算手段を兼ねる。
【0027】
更に、前記記憶部は、腹部生体電気インピーダンスとウエスト周囲径とに基づいて体組成指標を演算するための体組成指標演算式を記憶する。前記演算部10は、前記体組成指標演算式に基づいて、前記電極群15によって測定された腹部生体電気インピーダンスと前記ウエスト周囲径演算部によって演算されたウエスト周囲径とから前記体組成指標を演算する体組成指標演算部すなわち体組成指標演算手段を更に兼ねる。マイクロコンピュータ8は、コンピュータプログラムを実行することによって、前記電極群15を用いた公知の腹部生体電気インピーダンスの測定動作も制御する。
【0028】
次に、装置の使用状態を示す図3(A)及び(B)と動作のフローチャートを示す図4及び図5とを参照しながら、前記体組成測定装置1の動作を説明する。
【0029】
図3(A)は、被測定者20が仰臥した床面またはベッドに対して、前記センサ6a及び6bを移動させる方向を鉛直方向として、被測定者の腹部の前方に連結部2が対面するように体組成測定装置1をセットした状態を示す図である。フレーム14は、一片が開放し、被測定者が内部に配置される枠であるので、被測定者20の外側に配置し、例えば、寝たきりの身障者または老人のような被測定者を容易かつ迅速に測定できる。
【0030】
図3(A)には、フレーム14の連結部2に取り付けられた臍位置指示部(臍位置指示手段)18が示されている。この実施の形態で、臍位置指示部18は、光束を照射する発光装置、例えばレーザーポインタである。臍位置指示部18が臍位置を指示した状態(すなわちレーザ光が被測定者の臍を照射する状態)で、フレーム14を被測定者に位置決めしてセットすることにより、測定位置の臍位置からのずれがなく、正確性の高い腹部横幅距離測定を可能とする。また、前記電極支持部16は、前記臍位置指示部18であるレーザーポインタによる光束が、孔部17を抜けるように被測定者にセットされる。
【0031】
図3(A)の白抜きの矢印は、各センサ6aおよび6bの距離計測軸方向を示す。センサ6a及び6bを結ぶ一点鎖線は、前記各距離計測軸方向が一直線上にあることを示す。センサ6a及び6bの各々は、例えば赤外線のような光を発光する発光素子と、被測定者20上の被計測点からの反射光を受けて電気信号を発する受光素子とを有する。受光素子は、光学測距方式でセンサと被測定者20上の被計測点との距離に相当する電気信号を発し、この電気信号はマイクロコンピュータ8に供給される。
【0032】
各センサの受光素子は、そのセンサに直交する方向(距離計測軸方向)の直線と物体が交わる点からの反射光を受ける。その点が、そのセンサが測定する被計測点である。例えば、センサ6aの受光素子は、図の一点鎖線と被測定者20が交わる左側の点からの光を受けて、この点とセンサ6a自身との距離に相当する電気信号を発する。図のrmaxは、センサ6aおよび6bで計測されるべき被計測点間距離の最大値つまり腹部横幅距離を示す。
【0033】
図3(B)は、腹部横幅距離計測中の状態を示す図である。腹部横幅距離計測では、制御部9によって制御された移動機構部7a及び7bによって、図中太矢印で示す被測定者の前後方向と平行な方向に、各センサ6a及び6bを、サンプリング周期を考慮した所定の速度で移動させて、所定の間隔(サンプリング周期)でデータをサンプリングする。ここで、センサ6aで前記距離計測軸方向に計測される距離、すなわち、センサ6aから腹部までの距離をα1とし、同様にして、センサ6bで計測される距離をα2とし、センサ6a及び6b間距離をβとすることにより、両センサ6a及び6bの距離計測軸上における腹部の幅、つまり被計測点間距離rは、r=β−(α1+α2)として求められる。
【0034】
図4のフローチャートを用いて具体的に動作及び処理の手順を示す。記憶部12には、このフローチャートのうちマイクロコンピュータ8の動作に相当するコンピュータプログラムまたはプログラム要素が記憶されており、このコンピュータプログラムまたはプログラム要素に従ってマイクロコンピュータ8は動作する。この実施の形態では、コンピュータプログラムまたはプログラム要素を記憶した媒体として記憶部12を使用するが、記憶部12とは別の記憶部を使用してもよい。半導体メモリ、ハードディスク、コンパクトディスク、デジタルバーサタイルディスク、フレキシブルディスク、またはその他の適切な記憶媒体をコンピュータプログラムまたはプログラム要素を記憶するために使用してよい。
【0035】
操作部5に備えた電源スイッチを押して電源オンした後、ステップS1において、測定者は、前述したように、仰臥位の被測定者の腹部に対して体組成測定装置1をセットする。以降はコンピュータプログラムに従ったマイクロコンピュータ8の動作である。ステップS2において、マイクロコンピュータ8は操作部5に備えた腹部横幅距離計測開始スイッチが押されたか否かを判定する。押されていなければNOに進み、腹部横幅距離計測開始スイッチが押されたか否か検出を繰り返し、腹部横幅距離計測開始スイッチを押すとYESに進み、ステップS3において、センサ6a及び6bの位置や記憶部12内のデータ等のシステム全般の初期化を行う。初期化が完了すると、ステップS4において、マイクロコンピュータ8は、前述したように、制御部9として機能して前記移動機構部7a及び7bを制御して、前記センサ6a及び6bを同じタイミングで移動させて、各々距離α1及びα2を計測する。ここで、前記センサ6a及び6bの移動速度とサンプリング周期との関係の一例を示す。センサ6a及び6bが1mm移動するたびにウエスト周囲径をサンプリングする場合において、各センサ6a及び6bのサンプリング周期を50msとすると、前記移動速度は、1mm/50ms=0.02m/sとなる。
【0036】
前記サンプリングに伴い、マイクロコンピュータ8は、演算部10として機能し、ステップS5において、前記1サンプリング毎に、サンプリングしたデータα1及びα2に基づいて、マイクロコンピュータ8内の演算部10にて前記被計測点間距離rを演算する。また、ステップS6において、マイクロコンピュータ8は、判定部11として機能して、今回演算した被計測点間距離rが最大値rmax(腹部の臍を通る腹部の最大幅)、すなわち、腹部横幅距離か否かを判定する。この実施の形態では、記憶部12に、これまで演算された被計測点間距離rの最大値を記憶しておき、記憶部12に記憶されている演算値と今回の演算値とを比較して大小を判定する(ただし、記憶部12に記憶されている最大値の初期値は0である。)。今回の演算値の方が大きい場合にはYESに進み、ステップS7において、判定部11は記憶部12に既に記憶されている演算値のデータを消去し、今回の演算値である被計測点間距離rの値を新たに最大値として記憶部12に記憶して、ステップS8に進む。また、今回の演算値の方が小さい場合にはNOに進み、記憶部12に新たにデータを記憶することなくステップS8に進む。
【0037】
ステップS8においては、前記センサ6a及び6bの移動距離が、移動機構部7a及び7bによる移動範囲の限界位置(ここでは、アーム3a及び3bの連結部2に連結されている側の一端とし、以下、移動限界位置と言う。)にまで達したか否かを、判定部11において判定する。例えば、前記移動速度で移動する前記各センサ6a及び6bが移動限界位置に達するまでの時間を、前記記憶部12に予め記憶しておき、マイクロコンピュータ8内にタイマを設けておくことによって、各センサが移動を開始した時点からの時間を計時し、前記予め記憶してある時間を計時した時点で移動限界位置に達したと判定すれば良い。移動限界位置に達していない場合にはNOに進み、再びステップS4に戻って計測を続け、移動限界位置に達した場合にはYESに進み、ステップS9においてウエスト周囲径及び体組成の演算サブルーチンを実行する。ウエスト周囲径及び体組成の演算サブルーチンでは、前記記憶部12に記憶した被計測点間距離rの最大値rmaxを、腹部横幅距離として使用する。ウエスト周囲径及び体組成の演算サブルーチンによる演算結果は、ステップS10において、表示部4に表示されて終了となる。
【0038】
続いて、図5を用いて、前記腹部横幅距離に基づくウエスト周囲径及び前記ウエスト周囲径に基づく体組成指標の演算サブルーチンにおける本装置の動作を説明する。まず、ウエスト周囲径の演算については、図5に示したサブルーチンのステップS11において、ウエスト周囲径を演算するために、演算部10は、前記記憶部12から、腹部横幅距離とウエスト周囲径との相関式を読み込む。この相関式は、前述したように、複数の被測定者を対象として、腹部横幅距離と、CTを利用した測定から得られたウエスト周囲径との関係式である。本願発明者らによる腹部横幅距離とウエスト周囲径の実測結果を図6に示す。前記相関式の一例は、この実験結果から見いだされた
Y=3.01X−10.2
なる回帰式で表される。ここで、X:腹部横幅距離、Y:ウエスト周囲径、である。
【0039】
但し、腹部横幅距離とウエスト周囲径の相関式は、Y=aX+bで表されるものであればよい。a及びbは定数であって、a=3.01、b=−10.2であることが好ましいが、これには限定されない。定数aは、2.3より大きく、3.14より小さいことが好ましく、定数bは定数aの値に従って設定される。例えば、a=2.49、b=10.5であってもよい。
【0040】
続くステップS12において、ウエスト周囲径演算部を兼ねる演算部10により、前記相関式と前記演算及び判定により得られた腹部横幅距離Xとから、ウエスト周囲径Yが演算される。
【0041】
次に、体組成指標の演算については、まず、ステップS13において、前記電極15を用いた公知の腹部生体電気インピーダンス測定を行う。次に、ステップS14において、体組成指標を演算するために、前記記憶部12から、演算部10は、腹部生体電気インピーダンスとウエスト周囲径とに基づいて体組成指標を演算するための体組成指標演算式を読み込む。ここでは、前記体組成指標の例は、内臓脂肪に関する指標であり、前記演算式は、腹部生体電気インピーダンスとウエスト周囲径とに基づいて内臓脂肪に関する指標を演算する公知の演算式である。続くステップS15において、前記体組成指標演算部を兼ねる演算部10により、前記演算式に基づいて、測定された腹部生体電気インピーダンスと前記ウエスト周囲径演算部によって演算されたウエスト周囲径とから前記内臓脂肪に関する指標が演算される。
【0042】
前記内臓脂肪に関する指標が演算されると、このサブルーチンを抜けて、図4のメインルーチンに戻る。
【0043】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態は、ウエスト周囲径演算装置であり、腹部前面に装置を載せる形態のものであり、腹部生体電気インピーダンス測定と体組成指標の演算をしない。以下、図7乃至図9を用いて説明する。図7(A)は、第2の実施の形態に係るウエスト周囲径演算装置101の外観を示す斜視図であり、図7(B)は、ウエスト周囲径演算装置101のうち腹部に接するべき下面を示す図であり、図8(A)は、ウエスト周囲径演算装置101を被測定者にセットした状態の一部断面を示した正面図であり、図8(B)は、計測時の状態のウエスト周囲径演算装置101を示した正面図であり、図9は、ウエスト周囲径演算装置101の動作を示すフローチャートである。
【0044】
図7(A)及び(B)、図8(A)及び(B)に示すように、ウエスト周囲径演算装置101は、第1の実施の形態で示したフレーム14に代えて、前記センサの距離計測軸方向を、被測定者が仰臥した床面またはベッドに対して垂直方向(腹部横幅距離方向に対して垂直方向)とするセンサ(腹部横幅距離計測手段)6cと、センサ6cを前記床面またはベッドに対して平行方向(腹部横幅距離方向と平行方向)に移動させる移動機構部7cとを設けたフレーム(腹部横幅距離計測手段)114を備える。図8(A)の白抜きの矢印は、センサ6cの距離計測軸方向を示す。センサ6cは、第1の実施の形態のセンサと同様の構成であり、センサの受光素子は、センサに直交する方向(距離計測軸方向)の直線と物体が交わる点からの反射光を受ける。その点が、そのセンサが測定する被計測点であり、受光素子は、光学測距方式でセンサと物体との距離α3に相当する電気信号を発し、この電気信号はマイクロコンピュータ8に供給される。移動機構部7cとしては、第1の実施の形態と同様に、モータで回転させられるベルトでもよいし、他の適切な移動機構を利用してもよい。
【0045】
フレーム114は、臍位置指示部(臍位置指示手段)118、水平状態調節部119及び設置部120並びに表示部4及び操作部5を備える。前記臍位置指示部118は、フレーム114を腹部前面に載せた際に、腹部前方から腹部をを覗くことができるようフレーム114に形成された貫通孔部である。臍位置指示部118を通して臍を視認できるようフレーム114を被測定者に対して位置決めするとよい。これにより、測定位置の臍位置からのずれがなく、正確性の高い腹部横幅距離測定が可能である。
【0046】
水平状態調節部119は、例えば、水準器であり、前記センサ6cの移動方向が床面またはベッドに対して平行になる状態に調節するために使用される。前記設置部120は、人の腹部前面に合わせて凹状に湾曲した形状をしており、フレーム114ひいてはウエスト周囲径演算装置101を腹部前面に安定して設置するために使用される。このような設置部120により、フレーム114と被測定者20の相対的な位置変化を最小限にすることができる。腹部前面にフレーム114を設置した場合には、フレーム114に押されて腹部が変形する。しかし、この腹部の変形によるウエスト周囲径への影響は、呼吸による腹部の前後の形状変化によるウエスト周囲径への影響よりも小さい。この事実は、本発明者らが見出した。従って、腹部前面にフレームを設置した場合でも、正確性の高いウエスト周囲径を、再現性良く得ることが可能である。臍位置指示部118、水平状態調節部119および設置部120を用いる測定者により、ウエスト周囲径演算装置101は、腹部の臍を通る外周上において、腹部横幅距離を再現性良く計測可能な位置にセットされる。
【0047】
また、前記センサ6cの移動に伴って計測された各距離に基づいて、床面またはベッドと腹部との高さの違いから、腹部横幅距離の両端を被計測点とするセンサ位置を判定し、これらの被計測点を腹部計測の始点及び終点として検出する。始点−終点間距離を腹部の臍を通る外周上の最大距離、すなわち、腹部横幅距離として求めることができる。
【0048】
また、ここでは図示していないが、ウエスト周囲径演算装置101のブロック図の構成は、図2に示した第1の実施の形態の電気ブロック図に類似する。但し、センサ6a及び6b並びに移動機構部7a及び7bに代えて、センサ6c及び移動機構部7cをマイクロコンピュータ8に接続する。また、腹部生体電気インピーダンスを測定するための電極群15及びレーザーポインタの制御を要した臍位置指示部18は不要である。
【0049】
マイクロコンピュータ8内に備えた各部の内、制御部9は、センサ6a及び6bの距離計測制御と前記移動機構部7a及び7bの移動制御とをしない代わりに、センサ6c及び移動機構部7cの制御を行う。演算部10は、後述する始点−終点間距離の演算を行う。判定部11は、始点及び終点位置の判定を行う。記憶部12は、前記始点及び終点位置判定の基準となる閾値を記憶しておく。従って、この実施の形態では、腹部生体電気インピーダンス測定に関して、制御、演算、判定及び記憶は行わない。
【0050】
次に、図9のフローチャートを用いて、ウエスト周囲径演算装置101の具体的動作及び処理の手順を示す。記憶部12には、このフローチャートのうちマイクロコンピュータ8の動作に相当するコンピュータプログラムまたはプログラム要素が記憶されており、このコンピュータプログラムまたはプログラム要素に従ってマイクロコンピュータ8は動作する。この実施の形態では、コンピュータプログラムまたはプログラム要素を記憶した媒体として記憶部12を使用するが、記憶部12とは別の記憶部を使用してもよい。半導体メモリ、ハードディスク、コンパクトディスク、デジタルバーサタイルディスク、フレキシブルディスク、またはその他の適切な記憶媒体をコンピュータプログラムまたはプログラム要素を記憶するために使用してよい。
【0051】
操作部5に備えた電源スイッチを押して電源オンした後、ステップS51において、測定者は、前述したように、仰臥位の被測定者の腹部に対してウエスト周囲径演算装置101をセットする。以降はコンピュータプログラムに従ったマイクロコンピュータ8の動作である。ステップS52において、マイクロコンピュータ8は操作部5に備えた腹部横幅距離計測開始スイッチが押されたか否かを判定する。押されていなければNOに進み、腹部横幅距離計測開始スイッチが押されたか否か検出を繰り返し、腹部横幅距離計測開始スイッチを押すとYESに進み、ステップS53において、センサ6cの位置や記憶部12内のデータ等のシステム全般の初期化を行う。また、ステップS53のシステム初期化では、後述するサンプリングカウント値iは0にセットする。
【0052】
続くステップS54において、マイクロコンピュータ8は、センサ6cによって、センサ6cから被計測物を載置した床面またはベッドまでの距離α3を計測し、この距離を初期値として記憶部12に記憶する。ステップS55において、制御部9によって移動機構部7cを制御してセンサ6cを設置部120の長手方向に沿って一定速度で移動させると共に、センサ6cによって距離α3をサンプリングし、ステップS56において、演算部10は前記初期値と今回得られた距離α3との差分(絶対値)を演算する。ステップS57において、判定部11にて、センサ6cの計測軸が被測定者20の直上に位置しているか否かを、前記サンプリングカウント値iがカウントされているか否か、すなわち、i≧1か否かによって判定する。サンプリングカウント値iは、センサ6cの計測軸が被測定者20の真上にある間(センサ6cが被測定者20の腹部を通過する間)に、周期的に増加する値である。センサ6cの移動速度は一定であるから、センサ6cが腹部を通過し終えて最終的に得られたサンプリングカウント値iとセンサ6cの移動速度から被測定者20の腹部横幅距離が算出できる。
【0053】
ステップS57でi≧1でない場合にはNOに進み、ステップS58において、判定部11にて、センサ6cの計測軸が被測定者20の直上に到達したか否か、すなわち、腹部計測の始点に到達したか否かを、直前のステップS56で演算した差分と予め設定してある床面からの所定の高さを示す閾値pとを比較して、差分>閾値pであるか否かによって判定する。差分>閾値pでない場合にはNOに進み、ステップS55に戻って再びサンプリングを繰り返す。また、差分>pである場合にはYESに進み、ステップS59において、演算部10は、前記サンプリングカウント値iをi=i+1としてカウントする。他方、前記ステップS57においてi≧1であった場合にはYESに進み、既に腹部計測の始点が検出され、センサ6cは被計測物の直上に位置しているはずであるので、ステップS59において演算部10は前述と同様にサンプリングカウント値iをi=i+1とカウントする。
【0054】
続くステップS60において、判定部11にて、前記移動機構部7cによって移動したセンサ6cの計測位置が、被計測物を通り過ぎて再び床面に達したか否か、すなわち、腹部計測の終点に達したか否かを、直前のステップS56で演算した差分と閾値qとを比較して、差分≦閾値qであるか否かによって判定する。閾値qは閾値pと同じでよいし違っていてもよい。差分≦閾値qでない場合にはNOに進み、センサ6cの計測位置はまだ被測定者20の直上にあるので、ステップS55に戻って再びサンプリングを繰り返す。
【0055】
また、差分≦閾値qである場合にはYESに進み、センサ6cが腹部計測の終点に達したので、ステップS61において、センサ6cの移動及び距離計測と前記サンプリングカウント値iのカウントとを終了し、演算部10にて、前記サンプリングカウント値iとセンサ6cの移動速度に基づいて、始点−終点間距離を演算し、これを腹部の臍を通る外周上の最大距離、すなわち、腹部横幅距離として記憶する。ステップS62において、前記記憶部12から、腹部横幅距離とウエスト周囲径との相関式を読み込む。この相関式は、第1の実施の形態と同様に、図6に示す実験結果から見いだされた
Y=3.01X−10.2(ただし、X:腹部横幅距離、Y:ウエスト周囲径)
なる式で表される。
【0056】
但し、腹部横幅距離とウエスト周囲径の相関式は、Y=aX+bで表されるものであればよい。a及びbは定数であって、a=3.01、b=−10.2であることが好ましいが、これには限定されない。定数aは、2.3より大きく、3.14より小さいことが好ましく、定数bは定数aの値に従って設定される。例えば、a=2.49、b=10.5であってもよい。
【0057】
続くステップS63において、ウエスト周囲径演算部を兼ねる演算部10により、前記相関式と前記演算及び判定により得られた始点−終点間距離(腹部横幅距離:X)とから、ウエスト周囲径Yを演算し、ステップS64において、マイクロコンピュータ8はウエスト周囲径を表示部4に表示して動作を終了する。
【0058】
この実施の形態においては、腹部生体電気インピーダンス測定を行わず、体組成に関する指標を測定しないが、第1の実施の形態と同様の電極支持部16および生体電気インピーダンス測定用電極群15を使用して、第1の実施の形態と同様の原理で、体組成に関する指標を測定してもよい。また、フレーム114は、この実施の形態では、棒状であるが、第1の実施の形態と同様に、一片が開放し、被測定者が内部に配置される枠にしてもよい。
【0059】
<第3の実施の形態>
次に、図10ないし図14を参照しながら、本発明の第3の実施の形態に係るウエスト周囲径演算装置201を説明する。ウエスト周囲径演算装置201は、立っている被測定者20のウエスト周囲径を演算し、腹部生体電気インピーダンス測定と体組成指標の演算をしない。
【0060】
図10に示すように、ウエスト周囲径演算装置201は、被測定者20が載る台190と、台190の上に鉛直に立てられた棒すなわち柱192と、鉛直方向に移動可能に柱192に支持されたフレーム(腹部横幅距離計測手段)214を備える。台190の上面には、被測定者20の足のつま先を合わせるためにの目印線196が描かれている。
【0061】
フレーム214は、水平かつ平行に伸びる2本のアーム203a及び203bと、両端がそれぞれアーム3a,3bに連結された水平に延びる連結部202を有する。フレーム214は、このように一片が開放し、被測定者が内部に配置される枠であるので、被測定者20は容易にフレームの内部に入るか、フレームを容易に被測定者の外側に配置することが可能であり、容易かつ迅速に測定できる。
【0062】
フレーム214には、柱192に取り付けられる凸部194が固定されている。図示しないが、凸部194の内部には、柱192に沿ってフレーム214を鉛直方向に移動させるための移動機構、例えばボールネジまたは無端ベルト、およびこの移動機構を駆動するモータが配置されている。従って、凸部194は、移動機構とモータを有する移動手段を内蔵しており、柱192は、立っている被測定者20の正中線方向に沿って摺動可能にフレーム214を支持している。この構成により、移動手段によってフレーム214を被測定者の正中線方向に沿って自動的に簡単に移動させることができる。
【0063】
柱192の上部には、コンソール220が取り付けられている。コンソール220の上面には、被測定者20が操作する入力装置としてのオン/オフキー221、決定キー222、上昇指令キー223および下降指令キー224が設けられている。また、コンソール220の上面には、被測定者20への操作の案内や測定結果の通知を表示するための表示部204が設けられている。
【0064】
図2および図3に示すように、フレーム214の内側には、複数の光学式距離センサ(腹部横幅距離計測手段)206が取り付けられている。センサ206は水平な同一平面に配置されている。図において、センサ206の各々を識別するために添字a〜hを付ける。図の実施の形態では、8個のセンサ206a〜206hが設けられているが、センサ206の個数は実施の形態には限定されない。
【0065】
センサ206a〜206dはフレーム214のアーム203aに取り付けられ、センサ206e〜206hはアーム203bに取り付けられている。センサ206は、第1の実施の形態のセンサと同様の構成であり、センサの受光素子は、センサの距離計測軸方向の直線と物体が交わる点からの反射光を受ける。その点が、そのセンサが測定する被計測点であり、受光素子は、光学測距方式でセンサと被計測点との距離に相当する電気信号を発する。図12を参照して具体的に説明する。各センサ206の距離計測軸方向は、アーム203a及び203bに垂直で連結部202に平行な方向、つまり被測定者20がフレーム214の内部にいる場合に被測定者20の腹部横幅方向である。センサ206aは、その距離計測軸方向の直線と被測定者20が交わる点つまり被計測点からの反射光を受け、センサ206aと被計測点との距離Laに相当する電気信号を発する。同様に、センサ206b〜206hは、それぞれ距離Lb〜Lhに相当する電気信号を発する。
【0066】
アーム203aに取り付けられたセンサ206a〜206dは、アーム203bに取り付けられたセンサ206e〜206hに線対称に配置されている。つまり、センサ206a,206eの距離計測軸は同一線上にあり、センサ206b,206fの距離計測軸は同一線上にあり、センサ206c,206gの距離計測軸は同一線上にあり、センサ206d,206hの距離計測軸は同一線上にある。つまり、複数対のセンサ206の各距離計測方向が腹部横幅方向に平行になるように、腹部を横幅方向に挟むようにセンサ206は対向している。そして、センサ206は、被測定者20の前後方向と平行な方向の複数位置で距離計測を行う。センサ206a〜206dと、センサ206e〜206hの距離はLである。
【0067】
また、フレーム214の連結部202には、臍位置指示部(臍位置指示手段)218が固定されている。臍位置指示部218は、センサ206と同じ水平面内に配置されている。この実施の形態で、臍位置指示部218は、光束を照射する発光装置、例えばレーザーポインタである。臍位置指示部218が臍位置を指示した状態(すなわちレーザ光が被測定者の臍を照射する状態)になるように、フレーム214の高さを静止させることにより、測定位置の臍位置からのずれがなく、正確性の高い腹部横幅距離測定を可能とする。
【0068】
図10に示すコンソール220には、図13に示すスイッチ230、アナログ/デジタル(A/D)変換器232、CPU(中央演算処理装置)234、ROM(read only memory)227およびメモリ228が内蔵されている。スイッチ230は、光学式距離センサ206a〜206hの出力信号を次々とA/D変換器232に供給し、A/D変換器232は供給された信号をデジタル信号に変換する。A/D変換器232からのデジタル信号は、CPU234に供給される。従って、CPU234には、センサ206a〜206hの出力信号に基づくデジタルの距離信号が次々と供給される。デジタルの距離信号の各々は、対応する光学式距離センサ206と、被測定者20上のその光学式距離センサ206に対応する被計測点との距離を示す。メモリ228は例えば揮発性のメモリであって、CPU234のワークエリアとして使用される。CPU234は、メモリ228にこれらの距離信号の示す距離のデータを記憶する。
【0069】
CPU234は、ROM227に記憶されたコンピュータプログラムまたはプログラム要素に従って動作し、フレーム214を上下に移動させるための機構を駆動するモータ238、臍位置指示部218、および表示部204を制御する。また、CPU234は、前記のオン/オフキー221、決定キー222、上昇指令キー223および下降指令キー224を含む入力装置205からの信号に応じた動作を実行する。
【0070】
また、CPU234は、メモリ228に一旦記憶した距離のデータに基づいて、腹部横幅距離を演算する演算手段として機能する。ROM(記憶手段)227には、腹部横幅距離とウエスト周囲径との相関式が格納されている。CPU234は、腹部横幅距離とその相関式とからウエスト周囲径を演算するウエスト周囲径演算手段としても機能する。
【0071】
図14は、ウエスト周囲径演算装置201の動作を示すフローチャートである。ROM227には、このフローチャートに相当するコンピュータプログラムまたはプログラム要素が記憶されており、このコンピュータプログラムまたはプログラム要素に従ってCPU234は動作する。この実施の形態では、コンピュータプログラムまたはプログラム要素を記憶した媒体としてROM227を使用するが、ハードディスク、コンパクトディスク、デジタルバーサタイルディスク、フレキシブルディスク、またはその他の適切な記憶媒体をコンピュータプログラムまたはプログラム要素を記憶するために使用してもよい。
【0072】
図14に示す動作は、図10のオン/オフキー221が押されると開始する。まず、CPU234は、ステップS71で表示部204を駆動してその表示を開始させる。そして、CPU234は、「つま先をラインに合わせて立って下さい」というメッセージを表示部204に表示させる。この案内により、被測定者20は足のつま先を目印線196(図10)に合わせるように促される。
【0073】
次に、ステップS72でCPU234は臍位置指示部218を駆動して発光させ、さらにステップS73で高さ調整処理を行う。高さ調整処理では、CPU234は、「上昇指令キー、下降指令キーでポインターの位置を臍に合わせてください」というメッセージを表示部204に表示させる。この案内により、被測定者20は図10の上昇指令キー223および/または下降指令キー224を押して、臍位置指示部218からの光束が被測定者の臍を照射するようにフレーム214の高さを調整するように促される。上昇指令キー223が押されると、上昇指令キー223は上昇指令信号をCPU234に与え、高さ調整処理では、CPU234は上昇指令信号が与えられている間、モータ238を駆動してフレーム214を上昇させる。下降指令キー224が押されると、下降指令キー224は下降指令信号をCPU234に与え、高さ調整処理では、CPU234は下降指令信号が与えられている間、モータ238を駆動してフレーム214を下降させる。
【0074】
この高さ調整処理は、決定キー222が押されるまで継続する(ステップS74)。決定キー222が押されると、CPU234は、臍位置指示部218の発光を停止し、「測定中」というメッセージを表示部204に表示させる。また、この後、上昇指令キー223または下降指令キー224が押されても、モータ238を駆動しない。
【0075】
次に、ステップS75にて、CPU234は、センサ206a〜206hに駆動指令信号を与えることによってセンサ206を駆動し、さらにA/D変換器232からのデジタルの距離信号が入力されると、メモリ228にこれらの距離信号の示す距離のデータを記憶する。このようにして、各センサから被計測点までの距離を測定する。
【0076】
ステップS76にて、CPU234は、メモリ228に一旦記憶した距離のデータに基づいて、腹部横幅の値を演算する演算手段として機能する。この実施の形態では、ステップS76で、腹部横幅の4つの値を演算する。4つの値を以下に示す。
(1)L―(La+Le)、
(2)L―(Lb+Lf)、
(3)L―(Lc+Lg)、
(4)L―(Ld+Lh)。
【0077】
図12から明らかなように、これらの4つの値はいずれも腹部横幅を示す。ステップS77にて、CPU234は、これらの4つの値のうち最大値、つまり腹部の横幅方向の最大距離を腹部横幅距離として選択する。
【0078】
次に、ウエスト周囲径を演算するために、CPU234は、ステップS78でROM227から腹部横幅距離とウエスト周囲径との相関式を読み込む。相関式は、第1の実施の形態および第2の実施の形態に関連して上述したものと同じでよい。ステップS79において、CPU234は、ウエスト周囲径演算手段として機能し、この相関式とステップS77で得られた腹部横幅距離Xとから、ウエスト周囲径Yを演算する。さらにステップS80において、CPU234はウエスト周囲径を表示部204に表示して、動作を終了する。
【0079】
この実施の形態においては、腹部生体電気インピーダンス測定を行わず、体組成に関する指標を測定しないが、第1の実施の形態と同様の電極支持部16および生体電気インピーダンス測定用電極群15を使用して、第1の実施の形態と同様の原理で、体組成に関する指標を測定してもよい。
【0080】
<変形>
図15は、第3の実施の形態の変形例に係るウエスト周囲径演算装置201Aの外観を示す斜視図である。ウエスト周囲径演算装置201Aは、第3の実施の形態の構成に加えて、身長計250を備える。身長計250は、台190に立てられた柱251と、柱251に摺動可能に取り付けられたカーソル252を備える。カーソル252は、CPU234の指令により上下に移動し、カーソル252の高さはCPU234に通知されるようになっている。この変形例では、ウエスト周囲径の測定の後または前に、台190の上に立っている被測定者20の身長を測定することが可能である、
【0081】
なお、上述した実施の形態において、腹部横幅距離計測手段としては、センサの移動によって複数位置で計測した距離に基づいて計測する手段を例示したが、外形状の寸法の内、所望の方向の最大距離(幅)を取得できるものであれば、どのようなものであっても良く、例えば、センサを移動させる代わりにセンサを複数個備え、各センサの距離計測結果に基づいて腹部横幅距離を求めるものでも良い。また、腹部横幅距離計測手段は、腹部を締め付けることなく、腹部に定規を宛がうノギスのようなものでもあっても良い。更に、別途測定した腹部横幅距離を手動で数値入力するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態の体組成測定装置1の外観を示す斜視図である。
【図2】体組成測定装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】(A)体組成測定装置1を被測定者にセットした状態を示した、図1の正面図である。(B)計測時の状態を示した体組成測定装置1の正面図である。
【図4】体組成測定装置1の動作のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図5】体組成測定装置1が実行する演算サブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】腹部横幅距離とウエスト周囲径との関係を示す図である。
【図7】(A)本発明の第2の実施の形態に係るウエスト周囲径演算装置101の外観を示す斜視図である。(B)図7(A)のウエスト周囲径演算装置101のうち腹部に接するべき下面を示す図である。
【図8】(A)ウエスト周囲径演算装置101を被測定者にセットした状態の一部断面を示した正面図である。(B)計測時の状態を示したウエスト周囲径演算装置101の正面図である。
【図9】ウエスト周囲径演算装置101の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るウエスト周囲径演算装置201の外観を示す斜視図である。
【図11】ウエスト周囲径演算装置201で使用されるフレームを示す斜視図である。
【図12】ウエスト周囲径演算装置201内に被測定者が位置した状態を示す断面図である。
【図13】ウエスト周囲径演算装置201の電気的構成を示すブロック図である。
【図14】ウエスト周囲径演算装置201の動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第3の実施の形態の変形例に係るウエスト周囲径演算装置201Aの外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
1…体組成測定装置、6a,6b,6c,206…センサ(腹部横幅距離計測手段)、8…マイクロコンピュータ、9…制御部、10…演算部(ウエスト周囲径演算手段)、11…判定部、12…記憶部(記憶手段)、14,114…フレーム(腹部横幅距離計測手段)、15…生体電気インピーダンス測定用電極群(生体電気インピーダンス測定手段)、16…電極支持部(生体電気インピーダンス測定手段)、18…臍位置指示部(臍位置指示手段)、20…被測定者、101…ウエスト周囲径演算装置、118…臍位置指示部(臍位置指示手段)、120…設置部、201,201A…ウエスト周囲径演算装置、214…フレーム(腹部横幅距離計測手段)、218…臍位置指示部(臍位置指示手段)、227…ROM(記憶手段)、234…CPU(演算手段、ウエスト周囲径演算手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹部横幅距離を計測する腹部横幅距離計測手段と、
腹部横幅距離とウエスト周囲径との相関式を記憶する記憶手段と、
前記腹部横幅距離計測手段で計測された腹部横幅距離と前記相関式とからウエスト周囲径を演算するウエスト周囲径演算手段とを備えることを特徴とするウエスト周囲径演算装置。
【請求項2】
前記相関式は、
Y=aX+b(Y:ウエスト周囲径、X:腹部横幅距離、a及びb:定数)
なる回帰式で表されるものであることを特徴とする請求項1記載のウエスト周囲径演算装置。
【請求項3】
前記腹部横幅距離計測手段は、被計測物までの距離を計測する反射式の非接触式距離計測センサを用いて腹部横幅方向の最大距離を計測することを特徴とする請求項1又は2に記載のウエスト周囲径演算装置。
【請求項4】
前記腹部横幅距離計測手段は、少なくとも1対の前記センサの各距離計測方向が腹部横幅方向に平行になるように、腹部を横幅方向に挟むようにして前記センサを対向させて配し、被測定者の前後方向と平行な方向の複数位置で距離計測させるように配したフレームを更に備え、
前記ウエスト周囲径演算手段は、前記少なくとも1対のセンサによって各々計測された複数の距離に基づいて腹部横幅距離を演算する演算手段を兼ねることを特徴とする請求項3記載のウエスト周囲径演算装置。
【請求項5】
前記腹部横幅距離計測手段は、少なくとも1つの前記センサを、その距離計測方向が腹部横幅距離方向に対して垂直になるように配し、腹部横幅距離方向と平行な方向の複数位置で距離計測させるように配したフレームを更に備え、
前記ウエスト周囲径演算手段は、前記センサによって計測された複数の距離に基づいて、腹部両端に対応するセンサによる腹部計測の始点及び終点を検出して、始点−終点間距離を腹部横幅距離として演算する演算手段を兼ねることを特徴とする請求項3記載のウエスト周囲径演算装置。
【請求項6】
前記フレームは、前記フレームを腹部前面に設置するために湾曲した凹部である設置部を更に備えることを特徴とする請求項4又は5に記載のウエスト周囲径演算装置。
【請求項7】
前記フレームには、前記腹部横幅距離計測の基準位置として臍位置を指示する臍位置指示手段が設けられていることを特徴とする請求項4乃至6の内、何れか一項に記載のウエスト周囲径演算装置。
【請求項8】
前記フレームは、一片が開放し、被測定者が内部に配置される枠であることを特徴とする請求項4乃至7の内、何れか一項に記載のウエスト周囲径演算装置。
【請求項9】
前記フレームを被測定者の正中線方向に沿って摺動可能に支持する棒と、
前記フレームを前記棒に対して移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項4乃至8の内、何れか一項に記載のウエスト周囲径演算装置。
【請求項10】
腹部横幅距離を計測する腹部横幅距離計測手段と、
腹部横幅距離とウエスト周囲径との相関式を記憶する記憶手段と、
前記腹部横幅距離計測手段で計測された腹部横幅距離と前記相関式とからウエスト周囲径を演算するウエスト周囲径演算手段と、を備えるウエスト周囲径演算装置を具備する体組成測定装置であって、
腹部の生体電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定手段と、
前記生体電気インピーダンス測定手段で測定された腹部の生体電気インピーダンスと前記ウエスト周囲径演算手段で演算されたウエスト周囲径とから、体組成に関する指標を演算する体組成指標演算手段と、を更に備え、
前記記憶手段が、前記体組成に関する指標を演算するための体組成指標演算式を更に記憶することを特徴とする体組成測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−49114(P2008−49114A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25231(P2007−25231)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】