説明

ウエットティッシュの連続取り出し構造

【課題】柔らかい不織布や薄い不織布からなるシートで構成されるウエットティッシュであっても、確実に次のウエットティッシュを容器の取出口から誘出することが可能であって信頼性に優れ、しかも、取り出されたウエットティッシュをワンタッチで簡単に展開することが可能な新規なウエットティッシュの取り出し構造を得る。
【解決手段】各ウエットティッシュ10は、帯状の不織布製のシートを、その長手方向の長さ寸法が短くなる方向のみに折り畳んで形成される。各ウエットティッシュ10の上端部には上位のウエットティッシュ10と係合する上端係合部15が形成され、下端部には下位のウエットティッシュ10と係合する下端係合部16が形成されている。上端係合部15および/又は下端係合部16は、シートが四重、或いは六重に重ね合わされた重畳部とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ねられた多数枚のウエットティッシュを容器に収容し、容器に設けた取出口より一枚ずつウエットティッシュを順次連続して取り出すことができるようにした、ポップアップ式のウエットティッシュの連続取り出し構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のウエットティッシュの連続取り出し構造の従来例としては、特許文献1乃至3を挙げることができる。特許文献1に記載の連続取り出し構造においては、各右向きと左向き腰折ウエットティッシュの下部折片の遊離端側を各腰折ウエットティッシュの腰折方向とは逆方向に折り返して短巾の重畳端を形成し、各右向き腰折ウエットティッシュの短巾重畳端を各左向き腰折ウエットティッシュの上部折片の遊離端側と相の手に組み、各左向き腰折ウエットティッシュの短巾重畳端を各右向き腰折ウエットティッシュの上部折片の遊離端側と相の手に組み、右向き腰折ウエットティッシュの短巾重畳端と多重腰折ウエットティッシュの左半部側と右半部側に按分される構成としている。すなわち、各右向きと左向き腰折ウエットティッシュの下部折片の遊離端側を各腰折ウエットティッシュの腰折方向とは逆方向に折り返して、下部のみに短巾の重畳端を形成しており、各腰折ウエットティッシュは全体としてZ字状に形成されている。
【0003】
特許文献2に記載の連続取り出し構造においては、各右向きと左向き腰折ウエットティッシュの上部折片と下部折片の遊離端側を各腰折ウエットティッシュの腰折方向とは逆向きに折り返して、短巾の上部重畳端と下部重畳端を形成している。すなわち、下部のみならず、上部にも短巾の重畳端が形成されており、各腰折ウエットティッシュは全体として、W字状に形成されている点が、先の特許文献1と相違する。
【0004】
特許文献3の連続取り出し構造においては、右向きと左向きの腰折ティッシュの上部折片を折り返して、短巾の上部重畳端が形成されている。すなわち、上部のみに短巾の重畳端を形成した点が、先の特許文献1と相違する。各腰折ティッシュは全体として、Z字状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2951187号公報
【特許文献2】特許第3832783号公報
【特許文献3】米国特許第3462043号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、3に係る連続取り出し構造においては、各腰折ティッシュ(ウエットティッシュを含む。以下同じ)の短巾重畳端を各腰折ティッシュの折片の遊離端側と相の手に組んでいる。また、特許文献2に係る連続取り出し構造においては、各腰折ティッシュの上下の短巾重畳端どうしを相の手に組んでいる。ここで、相の手に組んだ上下の腰折ティッシュの重なり部分を見てみると、ティッシュを構成するシートが二重に重なった重畳端と、一枚のシートとが組まれた形態(特許文献1、3)、或いは、ティッシュを構成するシートが二重に重なった重畳端どうしが組まれた形態(特許文献2)となっている。しかし、これら各特許文献における重畳端はシートが二重に重なった形態であり、重畳端の形状保持力は脆弱であると言わざるを得ない。このため、上方側に位置する腰折ティッシュを容器の取出口から取り出した際に、その重畳端が展開して、下方側の次の腰折ティッシュを取出口から誘出することができなくなる不都合があった。かかる不都合は、特に柔らかい不織布や薄い不織布からなるシートで構成されるウエットティッシュにおいて顕著である。
【0007】
加えて、この種のウエットティッシュでは、容器から取り出した後に、これを素早く簡単に展開することができる展開容易性が求められる。すなわち、通常のティッシュとは異なり、シートに液体成分が含有されたウエットティッシュでは、これを展開して使用することが多く、より少ない動作で展開状態とすることが求められる。
【0008】
本発明は、以上のような従来のウエットティッシュの連続取り出し構造が抱える問題を解決するためになされたものであり、柔らかい不織布や薄い不織布からなるシートで構成されるウエットティッシュであっても、確実に次のウエットティッシュを容器の取出口から誘出することが可能であって信頼性に優れ、しかも、取り出されたウエットティッシュをワンタッチで簡単に展開することが可能な新規なウエットティッシュの取り出し構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、重ねられた多数枚のウエットティッシュ10で構成されるウエットティッシュ群3と、該ウエットティッシュ群3を収容する容器2とを備え、容器2に設けた取出口4より上位のウエットティッシュ10の上端部を引き出すことにより、該上位のウエットティッシュ10の下方に位置して、該上位のウエットティッシュ10と係合された下位のウエットティッシュ10の上端部が取出口4より誘出されて、一枚ずつウエットティッシュ10を連続して取り出すことができるようにしたウエットティッシュの連続取り出し構造である。各ウエットティッシュ10は、帯状の不織布製のシート11を、その長手方向の長さ寸法が短くなる方向のみに折り畳んでなるものである。各ウエットティッシュ10の上端部には上位のウエットティッシュ10と係合する上端係合部15が形成され、下端部には下位のウエットティッシュ10と係合する下端係合部16が形成されている。そして、上端係合部15および/又は下端係合部16が、シート11が四重、或いは六重に重ね合わされた重畳部とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明におけるシート11の目付け量は、20〜70g/m2 (20g/m2 以上、70g/m2 以下)の範囲にあることが好ましく、30〜40g/m2 の範囲にあることがより好ましい。また、シート11の厚み寸法は、0.2〜3mm(0.2mm以上、3mm以下)の範囲にあることが好ましい。シート11の厚み寸法は、小型測厚器(大栄科学精器製作所製 型式:FS−60DS)を用いて、3g/cm2 の加重下で測定した値である。
【0011】
上端係合部15を構成する重畳部は、帯状のシート11の短辺を長手方向に折り返して二重の折曲部を有する重畳片20を形成し、二重の折曲部を長手方向にさらに折り返して形成される四重の折曲部とすることが好ましい。
【0012】
下端係合部16を構成する重畳部は、帯状のシート11の短辺どうしが位置ずれした状態で重なるように長手方向に折り返してなる二重の重畳端を有する重畳片20を形成し、二重の重畳端を長手方向にさらに折り返して形成される四重、或いは六重の折曲部とすることが好ましい。
【0013】
ウエットティッシュ群3を構成する各ウエットティッシュ10が、折り畳み状態において長方形状に形成されており、上端係合部15が折り畳み状態における各ウエットティッシュ10の長手方向の中央部に位置し、且つ容器2の取出口4の上下方向の領域と一部が重なる位置にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るウエットティッシュの連続取り出し構造においては、各ウエットティッシュ10の上端係合部15および/又は下端係合部16を、シート11が四重、或いは六重に重ね合わされた重畳部とした。このようにシート11が四重、或いは六重に重ね合わされた重畳部により、上端係合部15および/又は下端係合部16が形成されていると、シートが二重に重なった重畳部で上下端の係合部が形成されている従来形態に比べて、係合部15・16の形状保持力を大きくすることができる。これにて、上位のウエットティッシュ10の下端係合部16と下位のウエットティッシュ10の上端係合部15の両者間で得られる係合力を大きくすることができるので、より確実に下位のウエットティッシュ10の上端係合部15を取出口4から誘出させることができる。以上より、本発明の取り出し構造を適用することにより、取り出し不良が生じ難く、取り出し操作の信頼性に優れた、ポップアップ式のウエットティッシュ包装体を得ることができる。また、柔らかい不織布や薄い不織布からなるシート11でウエットティッシュ10を構成した場合にも、形状保持力に優れた係合部15・16を得ることができ、取り出し操作の信頼性に優れたウエットティッシュ包装体を得ることができる。
【0015】
加えて、帯状の不織布製のシート11をその長手方向の長さ寸法が短くなる方向のみに折り畳んで、各ウエットティッシュ10を形成したので、ワンタッチでウエットティッシュ10を展開状態とすることができる。すなわち、長さ方向のみならず、長さ方向に直交する幅方向にもシート11を折り畳んでウエットティッシュ10を作成した場合には、これを重畳部の無い展開状態とするためには二つの方向にシートを広げる必要があり、展開動作が煩わしいものとなることが避けられない。これに対して、本発明のように、シート11をその長手方向の長さ寸法が短くなる方向のみに折り畳んで各ウエットティッシュ10を形成していると、長さ方向に展開動作を行うだけで、ワンタッチにウエットティッシュ10を展開状態とすることが可能であり、実用利便性に優れたウエットティッシュ10を得ることができる。また、長さ寸法の大きなシート11であっても、ポップアップ式のウエットティッシュ10とすることができる。
【0016】
上端係合部15を構成する重畳部は、帯状のシート11の短辺を長手方向に折り返して二重の折曲部を有する重畳片20を形成し、二重の折曲部を長手方向にさらに折り返して形成される四重の折曲端部とすること好ましい。
このようにして上端係合部15を形成していると、より確実に取出口4からウエットティッシュ10を適切に引き出すことができる。すなわち、シート11の短辺どうしの重なり部分で上端係合部15が形成されている場合には、一方のシート11の短辺に係る遊端のみを指先で摘まんで引き出すおそれがある。つまり、一方のシート11の短辺に係る遊端のみが引出し始端とされるおそれがあり、この場合には、ウエットティッシュ10の全体が惰長に引き出されるという不都合が生じる。また、この場合には、引き出される上位のウエットティッシュ10の下端係合部16の形状が崩れることが避けられず、下位のウエットティッシュ10の上端係合部15との係合状態が解かれて、下位のウエットティッシュ10の上部を取出口4から誘出させることが困難となる。
これに対して、本発明のように、二重の折曲部を折り返して四重の折曲部で構成された重畳部で上端係合部15を形成していると、取出口4から誘出された二重或いは四重の折曲部を指先で摘み、この折曲部を引出し始端として、ウエットティッシュ10を取出口4から引き出すことができる。従って、先のようにウエットティッシュ10の全体が惰長に引き出される不都合、或いは引き出される上位のウエットティッシュ10の下端係合部16の形状が崩れる不都合は生じず、より適切にウエットティッシュ10を引き出すことができる。
【0017】
下端係合部16を構成する重畳部は、帯状のシート11の短辺どうしが位置ずれした状態で重なるように長手方向に折り返し、次に、短辺どうしの重なり部位を長手方向にさらに折り返して形成される四重、或いは六重の折曲部であることが好ましい。このように、下端係合部16を構成する重畳部が、帯状のシート11の短辺どうしが位置ずれした状態で重なるように長手方向に折り返されていると、一枚のウエットティッシュ10を容器2から取り出した後に、位置ずれした短辺の遊端部どうしを摘まんで、これを引っ張ることで、容易にウエットティッシュ10を展開状態とすることができ、展開操作性に優れたウエットティッシュ10を得ることができる。
【0018】
上端係合部15が折り畳み状態における各ウエットティッシュ10の長手方向の中央部に位置し、且つ容器2の取出口4の上下方向の領域と一部が重なる位置にあることが好ましい。これによれば、取出口の下方に上端係合部15を配することができるので、該上端係合部15を引出し始端として最上位に位置するウエットティッシュ10を取出口4から容易に取り出すことができる。また、上端係合部15と取出口4との距離を小さくすることができるので、取出口4から誘出される上端部の長さ寸法を可及的に小さくすることができ、乾燥される部分を最小限化することができる。汚染されやすい箇所を最小限化できる点でも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るウエットティッシュの連続取り出し構造の概略構成図である。
【図2】本発明が適用されるウエットティッシュ包装体の外観斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は、第1実施形態におけるウエットティッシュの製造方法を説明するための図である。
【図4】第1実施形態におけるウエットティッシュの縦断側面図であり、図3(c)のA−A線断面図である。
【図5】ウエットティッシュの製造方法を説明するための図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るウエットティッシュの連続取り出し構造の概略構成図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るウエットティッシュの連続取り出し構造の概略構成図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係るウエットティッシュの連続取り出し構造の概略構成図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係るウエットティッシュの連続取り出し構造の概略構成図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係るウエットティッシュの連続取り出し構造の概略構成図である。
【図11】本発明の第7実施形態に係るウエットティッシュの連続取り出し構造の概略構成図である。
【図12】本発明の第8実施形態に係るウエットティッシュの連続取り出し構造の概略構成図である。
【図13】本発明の第9実施形態に係るウエットティッシュの連続取り出し構造の概略構成図である。
【図14】本発明の第10実施形態に係るウエットティッシュの連続取り出し構造の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態) 図1乃至4に本発明に係るウエットティッシュの連続取り出し構造が適用されたウエットティッシュ包装体の第1実施形態を示す。なお、本明細書における前後、左右、上下とは、図1および図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0021】
図1および図2に示すように、ウエットティッシュ包装体1は、容器2と、容器2内に収容されるウエットティッシュ群3とで構成される。容器2は、扁平な左右横長四角状に形成されたプラスチック製の袋体であり、その上面に設けた取出口4と、取出口4を開閉する蓋体5とを備えている。蓋体5は、プラスチックフィルムからなるフラップ状の蓋であり、裏面の外周縁に塗布された粘着剤の粘着力により、取出口4を密封状に閉止する。
【0022】
ウエットティッシュ群3は、重ねられた多数枚のウエットティッシュ10で構成される。各ウエットティッシュ10は、目付け量40g/m2 、厚み0.3mmの不織布製のシート11を折り畳んでなるものであり、各シート11は、展開状態において左右の長さ寸法(d)は38cm、前後の幅寸法(w)は13cmとなっている(図3参照)。また、このシート11を折り畳んだ状態、すなわち、ウエットティッシュ10の左右の長さ寸法は、6.5cm、前後の幅寸法は、13cmとなっている。
【0023】
不織布であるシート11の構成繊維としては、綿やレーヨンなどの天然由来繊維、或いは、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、ポリアミドなどの合成繊維を挙げることができる。天然由来繊維と合成繊維とを含むものであってもよい。また、必要があれば、二種の合成繊維で形成された複合芯鞘繊維であってもよい。ウエットティッシュ10に含浸される液体成分としては、手指、顔、首、足などを払拭するのに使用される洗浄液、殺菌消毒剤を含む精製水、抗菌剤を含む精製水などを挙げることができ、保湿剤、ローション、乳液などの化粧液を含むものであってもよい。
【0024】
なお、図1には、4枚のウエットティッシュ10が図示されているが、実際には、ウエットティッシュ群3は、数十枚のウエットティッシュ10を含む状態で工場から出荷され、販売に供される。また、図1においては、立体状のウエットティッシュ10が斜め姿勢で複数枚重ねられた形態で容器2内に収容された形態が開示されているが、これは説明上、模式的に収容形態を示したものであって、実際には、各ウエットティッシュ10は扁平に折り畳まれた状態で容器2内に収容されている。ウエットティッシュ包装体1は、取出口4よりウエットティッシュ群3を構成する上位のウエットティッシュ10の上端部を引き出すことにより、下位のウエットティッシュ10の上端部が取出口4より誘出されて、一枚ずつウエットティッシュ10を連続して取り出すことができる所謂「ポップアップ式のウエットティッシュ」である。
【0025】
各ウエットティッシュ10は、帯状の不織布製のシート11を、その長手方向の長さ寸法が短くなる方向のみに折り畳んでなるものである。すなわち、一枚の不織布製のシート11を、図3に示す左右方向にのみ折り畳んでなるものである。図4に示すウエットティッシュ10は、左右方向に長い第1片12aと、第1片12aの左端から右方向に折り返された第2片12bと、第1片12aの右端から左方向に折り返された第3片12cと、第3片12cに連続して右方向に折り返された第4片12dの計四つの片で構成されており、全体としてW字状に形成されている。図4に示すように、第1乃至第4の各片12a〜12dは、シート11が二重に重ね合わされた重畳片である。
【0026】
図1に示すように、ウエットティッシュ群3は、図1において符号10aで示されるウエットティッシュ10(10a)と、これと対象の符号10bで示されるウエットティッシュ10(10b)で構成される。尤も、ウエットティッシュ10bは、ウエットティッシュ10aを左右方向に反転させたものであって、両ウエットティッシュ10a・10bは同一形状である。
【0027】
図1および図4に示すように、各ウエットティッシュ10の上端部には上位のウエットティッシュ10と係合する上端係合部15が形成され、下端部には下位のウエットティッシュ10と係合する下端係合部16が形成されている。各ウエットティッシュ10の下端係合部16は、下位のウエットティッシュ10の上端係合部15と相の手状に係合されており、上位のウエットティッシュ10の上端係合部15を指先で摘まんで引き出したとき、これと係合する下位のウエットティッシュ10の上端係合部15を含む上端部が、取出口4より誘出されるようになっている。上端係合部15が折り畳み状態における各ウエットティッシュ10の長手方向の中央部に位置している。また、上端係合部15は容器2の取出口4の上下方向の領域と一部が重なる位置にある。
【0028】
そのうえで、本実施形態にウエットティッシュ10においては、これら上端係合部15が、シート11が四重に重ね合わされた重畳部とされ、下端係合部16が、シート11が六重に重ね合わされた重畳部とされている点が着目される。すなわち、図1および図4に示すように、上端係合部15は、第1片12aと第2片12bとで構成されて、シート11が四重に重ね合わされた重畳部とされている。下端係合部16は、第1片12aと第3片12cと第4片12dとで構成されて、シート11が六重に重ね合わされた重畳部とされている。図4において、上端係合部15を構成するシート部分に符号11a〜11dを付し、下端係合部16を構成するシート部分に符号11e〜11jを付す。
【0029】
以上のようなウエットティッシュ10は、図3(a)〜(c)に示す手順で作成される。まず、図3(a)に示すように、帯状のシート11を長さ方向(左右方向)に二つ折りする。すなわち、シート11を、左右方向の中央部分から左右方向に谷折して、図3(b)に示すように、シート11が二重に重ね合わされた重畳片20を形成する。図3(a)において、符号21は谷折りの折線を示す。このようにシート11を折り重ねたとき、重畳片20の一端(左端)には、シート11が二重に重ね合わされた二重の折曲部22が形成され、重畳片20の他端(右端)には、シート11の短辺どうしが重なった重畳端23が形成される。本実施例では、折線21は、展開状態におけるシート11の左右方向の中央部から僅かに右方向に位置ずれした位置に配されており(d1>d2)、重畳端23における上下の短辺の位置はずれている。
【0030】
次に、図3(b)に示すように、重畳片20の左端に位置する二重の折曲部22を左右方向にさらに折り返して、重畳片20の左端に、図3(c)および図4に示すような四重の折曲部24を形成する。具体的には、重畳片20の左端から所定距離を置いた箇所から折曲部22を右方向に向かって谷折りして四重の折曲部24を形成する。図3(b)において、符号25は谷折りの折線を示す。これにて、ウエットティッシュ10にシート11が四重に重ね合わされた重畳部で構成される折曲部24を形成することができる。
【0031】
加えて、図3(b)に示すように、重畳片20の右端に位置する重畳端23を左右方向に二回折り返して、重畳片20の右端に図3(c)および図4に示すような四重の折曲部26・27を形成する。具体的には、重畳片20の右端から所定距離を置いた箇所から、重畳端23を左方向に山折りし、さらに、該山折り箇所から右端側に位置する箇所から短重畳端23を右方向に谷折りする。これにて、ウエットティッシュ10にシート11が四重に重ね合わされた重畳部で構成される折曲部26・27を形成することができる。図3(b)において、符号28は、折曲部26を形成するための山折りの折線を、符号29は、折曲部27を形成するための谷折の折線を示す。
【0032】
以上のように、一枚のシート11に対して、計四回折返しを行うことにより、図4に示すように、シート11が四重に重ね合わされた重畳部(11a〜11d)で構成される上端係合部15と、シート11が六重に重ね合わされた重畳部(11e〜11j)で構成される下端係合部16とを備えるウエットティッシュ10を得ることができる。ウエットティッシュ10の重畳端23は、短辺どうしが僅かに位置ずれした状態で重なっている。
【0033】
なお、本実施形態に示すウエットティッシュ10は、図5に示すように、原反ロール30から引き出されたシート11に対して、先のように四度折り返しを行って、四つの折曲部22・24・26・27を形成したのちに、所定の前後方向の幅寸法で、シート11を切断することで形成することができる。
【0034】
以上のようなウエットティッシュの連続取り出し構造によれば、上端係合部15をシート11が四重に重ね合わされた重畳部(11a〜11d)で構成し、下端係合部16をシート11が六重に重ね合わされた重畳部(11e〜11j)で構成したので、従来形態のシートが二重に重なった重畳部で形成される係合部に比べて、その形状保持力を大きくすることができる。これにて、上位のウエットティッシュ10の下端係合部16と下位のウエットティッシュ10の上端係合部15の間の係合力を大きくして、両係合部15・16を確りと係合させることができるので、より確実に下位のウエットティッシュ10の上端係合部15を含む上端部を容器2の取出口4から誘出させることができる。以上より、本発明の取り出し構造を適用することにより、取り出し不良が生じ難く、取り出し操作の信頼性に優れた、ポップアップ式のウエットティッシュ包装体1を得ることができる。また、柔らかい不織布や薄い不織布からなるシート11でウエットティッシュ10を構成した場合にも、形状保持力に優れた係合部15・16を得ることができ、取り出し操作の信頼性に優れたウエットティッシュ包装体1を得ることができる。
【0035】
加えて、帯状の不織布製のシート11をその左右方向の長さ寸法が短くなる方向のみに折り畳んで、各ウエットティッシュ10を形成したので、ワンタッチで折り畳まれたウエットティッシュ10を展開状態とすることができる。すなわち、左右方向のみならず、前後方向にもシート11を折り畳んでウエットティッシュ10を作成した場合には、これを重畳部の無い展開状態とするためには二つの方向にシート11を広げる必要があり、展開操作が煩わしいものとなることが避けられない。これに対して、本実施形態のように、シート11をその左右方向の長さ寸法が短くなる方向のみに折り畳んで各ウエットティッシュ10を形成していると、該左右方向に展開動作を行うだけで、ワンタッチにウエットティッシュ10を展開状態とすることが可能であり、実用利便性に優れたウエットティッシュ10を得ることができる。また、長さ寸法の大きなシート11であっても、ポップアップ式のウエットティッシュ包装体1のウエットティッシュ10として利用できる点で優れている。
【0036】
(第2実施形態) 図6に、本発明の第2実施形態を示す。そこでは、折曲部24の折り返し方向を山折り方向とした点のみが、先の第1実施形態と相違する。それ以外は、第1実施形態と同様であるので、同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。この第2実施形態に示すウエットティッシュ10においても、上端係合部15はシート11が四重に重ね合わされた重畳部とされており、下端係合部16はシート11が六重に重ね合わされた重畳部とされている。
【0037】
(第3実施形態) 図7に、本発明の第3実施形態を示す。そこでは、第1実施形態における第4片12dを廃して、下端係合部16を、シート11が四重に重ね合わされた重畳部とした点が先の第1実施形態と相違する。その他の点は、先の第1実施形態と同様である。
【0038】
(第4実施形態) 図8に、本発明の第4実施形態を示す。そこでは、下端係合部16を、シート11が二重に重ね合わされた重畳部とした点が、先の第1実施形態と相違する。その他の点は、先の第1実施形態と同様であり、上端係合部15は、シート11が四重に重ね合わされた重畳部とされている。
【0039】
(第5実施形態) 図9に、本発明の第5実施形態を示す。そこでは、下端係合部16を、シート11が三重に重ね合わされた重畳部とした点が、先の第1実施形態と相違する。その他の点は、先の第1実施形態と同様であり、上端係合部15は、シート11が四重に重ね合わされた重畳部とされている。
【0040】
(第6実施形態) 図10に、本発明の第6実施形態を示す。そこでは、折曲部24の折り返し方向を山折り方向とした点のみが、先の第5実施形態と相違する。その他の点は、先の第5実施形態と同様であり、上端係合部15は、シート11が四重に重ね合わされた重畳部とされている。
【0041】
(第7実施形態) 図11に、本発明の第7実施形態を示す。そこでは、第1実施形態における第2片12bを廃して、上端係合部15をシート11が二重に重ね合わされた重畳部とした点が先の第1実施形態と相違する。その他の点は、先の第1実施形態と同様であり、下端係合部16は、シート11が六重に重ね合わされた重畳部とされている。
【0042】
(第8実施形態) 図12に、本発明の第8実施形態を示す。そこでは、上端係合部15におけるシート11の重なりをなくした点が、先の第7実施形態と相違する。その他の点は、先の第7実施形態と同様であり、下端係合部16は、シート11が六重に重ね合わされた重畳部とされている。
【0043】
(第9実施形態) 図13に、本発明の第9実施形態を示す。そこでは、重畳端を上方にして、上端係合部15をシート11が二重に重ね合わされた重畳部としている。また、下端係合部16をシート11が六重に重ね合わされた重畳部としている。
【0044】
(第10実施形態) 図14に、本発明の第10実施形態を示す。そこでは、上端係合部15を、シート11が六重に重ね合わされた重畳部とし、下端係合部16をシート11が四重に重ね合わされた重畳部としている。
【符号の説明】
【0045】
2 容器
3 ウエットティッシュ群
4 取出口
5 蓋体
10 ウエットティッシュ
11 シート
15 上端係合部
16 下端係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ねられた多数枚のウエットティッシュ(10)で構成されるウエットティッシュ群(3)と、該ウエットティッシュ群(3)を収容する容器(2)とを備え、
容器(2)に設けた取出口(4)より上位のウエットティッシュ(10)の上端部を引き出すことにより、該上位のウエットティッシュ(10)の下方に位置して、該上位のウエットティッシュ(10)と係合された下位のウエットティッシュ(10)の上端部が取出口(4)より誘出されて、一枚ずつウエットティッシュ(10)を連続して取り出すことができるようにしたウエットティッシュの連続取り出し構造において、
各ウエットティッシュ(10)は、帯状の不織布製のシート(11)を、その長手方向の長さ寸法が短くなる方向のみに折り畳んでなるものであって、各ウエットティッシュ(10)の上端部には上位のウエットティッシュ(10)と係合する上端係合部(15)が形成され、下端部には下位のウエットティッシュ(10)と係合する下端係合部(16)が形成されており、
上端係合部(15)および/又は下端係合部(16)が、シート(11)が四重、或いは六重に重ね合わされた重畳部とされていることを特徴とするウエットティッシュの連続取り出し構造。
【請求項2】
上端係合部(15)を構成する重畳部が、帯状のシート(11)の短辺を長手方向に折り返して二重の折曲部を有する重畳片(20)を形成し、二重の折曲部を長手方向にさらに折り返して形成される四重の折曲部である、請求項1記載のウエットティッシュの連続取り出し構造。
【請求項3】
下端係合部(16)を構成する重畳部が、帯状のシート(11)の短辺どうしが位置ずれした状態で重なるように長手方向に折り返してなる二重の重畳端(23)を有する重畳片(20)を形成し、二重の重畳端(23)を長手方向にさらに折り返して形成される四重、或いは六重の折曲部である、請求項1記載のウエットティッシュの連続取り出し構造。
【請求項4】
ウエットティッシュ群(3)を構成する各ウエットティッシュ(10)が、折り畳み状態において長方形状に形成されており、
上端係合部(15)が折り畳み状態における各ウエットティッシュ(10)の長手方向の中央部に位置し、且つ容器(2)の取出口(4)の上下方向の領域と一部が重なる位置にある、請求項2又は3記載のウエットティッシュの連続取り出し構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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