説明

ウエハーレベルCSPの製造方法

【課題】シリコン基板上のイメージセンサ等の集積回路をカバー部材で中空内に封入保護したウエハーレベルCSPにおいて、カバー部材の接着に高い接着強度を発揮でき、しかも、スペーサー部材の設置に伴う工程が不要でカバー部材の設置工程が容易であり、さらに、必要に応じて接着部に遮光性を付与できるウエハーレベルCSPの製造方法を提供する。
【解決手段】カバー部材に流動調整剤含有無溶剤型エポキシ樹脂接着剤を印刷塗工し、B−ステージ化した接着剤層の厚みによってシリコンウエハー上に、B−ステージ化された前記接着剤層の厚みによって、前記各集積回路を中空内に封入するために必要な間隔に離間しつつ、カバー部材を配置し、接合した後、ダイシングによりシリコンウエハーを個片化し、カバー部材で各集積回路が中空内に封入された各集積回路パッケージを得る工程、を含むウエハーレベルCSPの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハーレベルCSP(Chip Size Pakage、以下同様)の製造方法に関し、詳細には、シリコン基板上のイメージセンサ等の集積回路をウエハーの状態でカバー部材により中空内に封入保護してなるウエハーレベルCSPの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路表面を保護するためにカバーガラス等のカバー部材で中空内に封入保護した集積回路をウエハーレベルCSPとして製造することは公知であり、例えば、イメージセンサの製造等に用いられている。このイメージセンサの典型的構造においては、シリコンウエハー上にCCD等のイメージセンサと入出力パッドとが形成された集積回路アレイとこの集積回路アレイの上面に集積回路と離間しつつ配置されたカバー部材を有しており、従来、この離間はスペーサーを用いて実現されていた。例えば、特許文献1にはスペーサー部材を介してカバーガラスとシリコンウエハーとを接着剤で接合することが記載されている。ただし、この接着剤は特定されておらず、常温硬化型接着剤、UV硬化型接着剤、可視光硬化型接着剤、熱硬化型接着剤等が単に一般的に羅列記載されているのみである。
【0003】
特許文献2には、接着剤として紫外線硬化樹脂を使用し、ビーズを配合してなる枠体を介してガラス保護材を固着させることが開示されている。
【0004】
一方、特許文献3には、シリコンウエハー上のデバイスの外側周囲に対応する輪郭パターン部分に接着剤を塗布し、輪郭パターンの厚みでカバーガラスとの空隙を確保することが記載されているが、接着剤自体の厚みで空隙を確保することまで開示されているとは言えない。また、熱硬化性接着剤であることが好ましい旨の記載はあるが、具体的技術事項の開示はなく、実際、使用すべき接着剤に関する技術手段はなんら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−303482号公報
【特許文献2】特開2006−128648号公報
【特許文献3】特開2000−183205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、これらの文献に具体的に開示されている技術手段である感光性樹脂を用いた場合には、フォトエッチング手法により接着剤層をパターン化することが可能である反面、それ自体では厚膜化は困難であり、カバーガラスとの離間距離を大きくするためにはスペーサーを用いる必要があり、製造工程が煩雑化する。また、フォトエッチング手法を用いると洗浄工程が含まれるためにゴミによる瑕疵の問題がつきまとう。さらに、接着強度が感光性樹脂においては一般に小さく、ダイシング等の応力が加わる工程において接着部が剥離するという問題がしばしば発生する。しかも、感光性樹脂は光透過性である必要があり、硬化樹脂も透明度が高く、従って、接着部の光シール性に問題があり、特に光センサーにおいては機能上の問題点として認識されていた。
【0007】
従って、本発明は、シリコンウエハー上のイメージセンサ等の集積回路をカバー部材で中空内に封入保護してなるウエハーレベルCSPの製造方法において、カバー部材の接着に高い接着強度を発揮でき、しかも、スペーサー部材の設置に伴う工程が不要でカバー部材の設置工程が簡略化され、さらに、必要に応じて接着部に遮光性を付与できるウエハーレベルCSPの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は(1)カバー部材に流動調整剤含有無溶剤型エポキシ樹脂接着剤を印刷塗工する工程、(2)前記印刷塗工された接着剤層をB−ステージ化する工程、(3)複数の集積回路が形成されたシリコンウエハー上に、B−ステージ化された前記接着剤層の厚みによって、前記各集積回路を中空内に封入するために必要な間隔に離間しつつ、前記カバー部材を配置する工程、(4)加熱加圧して前記カバー部材と前記シリコンウエハーとを前記接着剤層により接合する工程、及び、(5)ダイシングによりシリコンウエハーを個片化し、前記カバー部材で前記各集積回路が中空内に封入された各集積回路パッケージを得る工程、を含むウエハーレベルCSPの製造方法である。
本発明はまた、上記製造方法に好適に使用される、エポキシ樹脂100重量部に対して、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂及びソルビトール誘導体からなる群から選択される少なくとも1種からなる流動調整剤を5〜100重量部含有し、25℃で5〜500Pa・sの粘度を有する印刷塗工用無溶剤型エポキシ樹脂接着剤でもある。
本発明はまた、本発明の製造方法により製造されたイメージセンサを使用した光学機器、特に、ウエハーとカバー部材との接着部の遮光性を高めたイメージセンサを使用したカメラ又はカメラモジュールでもある。
【発明の効果】
【0009】
(1)本発明の製造方法は上述の構成により、比較的低い加圧においても充分な接着強度を発揮するとともに、B−ステージ化された接着剤層の厚みが硬化過程で殆ど変化しないので、スペーサーを用いることなく接着剤層の厚みでカバー部材とウエハーとの所要の間隔を確保できるだけの離間を達成することができる。また、洗浄工程が含まれないのでゴミによる瑕疵の問題がなく、高い歩留りを達成することができる。
(2)本発明の接着剤は、無溶剤型でありつつ印刷塗工可能な粘度を有し、しかも、必要に応じて遮光性を有する添加剤を配合することができるので、本発明の製造方法に好適である。
(3)本発明の製造方法で得られたイメージセンサを使用した本発明の光学機器、とくにカメラまたはカメラモジュールは、迷光によるノイズを低減でき、高感度を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
カバー部材に流動調整剤含有無溶剤型エポキシ樹脂接着剤を印刷塗工する工程(1)
上記カバー部材としては通常、例えば、カバーガラスを挙げることができる。
【0011】
上記流動調整剤含有無溶剤型エポキシ樹脂接着剤において、その組成は特に限定されないが、好ましくは、エポキシ樹脂100重量部に対して、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂及びソルビトール誘導体からなる群から選択される少なくとも1種からなる流動調整剤(レオロジーコントロール剤とも称される。)を5〜100重量部含有し、25℃で5〜500Pa・sの粘度を有する印刷塗工用無溶剤型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。なお、粘度は、ブルックフィールド社製回転粘度計HBTを使用し、10rpm、スピンドル#28で測定した値である。
【0012】
前記エポキシ樹脂にはとくに制限はなく、一般に接着剤用途に使用されるエポキシ樹脂であれば使用することができる。前記エポキシ樹脂の具体例としては、たとえばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂のプレポリマーや、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂のような前記エポキシ樹脂と他のポリマーとの共重合体などがあげられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちではビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が、耐熱性や耐水性がよく、安価で経済的であるなどの点から好ましい。
【0013】
前記エポキシ樹脂は、その一部、たとえば35重量%以下、さらには25重量%以下がエポキシ基を有する反応性希釈剤で置換されたものであることが25℃で5〜500Pa・sの粘度を有するように粘度調節をするために好ましい。
【0014】
前記反応性希釈剤としては、とくに限定されるものではなく、たとえばレゾルシングリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3,3−ペンタメチルシロキサン、N−グリシジル−N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミンなどのモノグリシジル化合物、2−(3,4)−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのモノ脂環式エポキシ化合物などがあげられる。
【0015】
前記流動調整剤は、組成物調製時に分散しやすい粉体であることが好ましく、また、低温域で容易に膨潤・溶解し、エポキシ樹脂、必要により使用される硬化剤、その他の添加剤との相溶性がよいことが好ましい。
【0016】
前記分散しやすい粉体としては、一般に、エポキシ樹脂に分散しやすい平均粒径0.1〜50μm、さらには0.2〜50μm、とくには0.5〜10μm程度の粉体であるのが好ましい。上記流動調整剤としては、低温域でエポキシ樹脂などに容易に膨潤・溶解し、相溶性がよいものとして、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂及びソルビトール誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であり、アクリル樹脂が、透明性、耐候性がよい点から好ましい。さらに、ゲル化効果が高い点から、数平均分子量で10000〜10000000、さらには100000〜5000000のものが好ましく、部分架橋物でもよい。
【0017】
前記流動調整剤の具体例としては、たとえばゼフィアックF−301(商品名)(エポキシ基含有ポリメチルメタクリレート)、同F−351(商品名)(コアシェルアクリレート共重合体)、同F−320(商品名)(ポリメチルメタクリレート)、同F−325(商品名)(ポリメチルメタクリレート)、同F−340(商品名)(アクリレート共重合体)、同F−345(商品名)(以上、ガンツ化成(株)製)などのアクリル樹脂、たとえばゲルオールD(商品名)(ジベンジリデンソルビトール)、ゲルオールMD(商品名)(1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール)、ゲルオールE−200(商品名)(1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール)(以上、新日本理化(株)製)などのジベンジリデンソルビトール類などのソルビトール誘導体、たとえばSUNMIDE#75(商品名)、同#301AK(商品名)(以上、エアープロダクツジャパン(株)製)などのポリアミド樹脂などがあげられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちではゼフィアックF−301、同F−351が、ゲル化時間が短い、耐候性がよい点から好ましい。
【0018】
前記流動調整剤は、概ね常温(例えば25℃程度)〜70℃程度では固形状であり、70〜120℃程度で軟化〜溶融し、軟化〜溶融したのちはエポキシ樹脂組成物を低粘度化しにくくし、エポキシ樹脂が反応してゲル化するのとあいまって短時間で組成物をゲル状態に至らしめる。
【0019】
前記流動調整剤の使用量としては、エポキシ樹脂100重量部に対して、流動調整剤5〜100重量部、さらには10〜80重量部である。流動調整剤の使用量が5重量部未満の場合、エポキシ樹脂が反応してゲル化するまでの間、難流動化する作用が充分得られなくなり、100重量部をこえる場合、耐熱性が低下する。
【0020】
本発明において使用するエポキシ樹脂は、触媒の存在下、エポキシ樹脂のみでも硬化するが、各種の硬化剤、たとえば酸無水物、アミン化合物、フェノール化合物などを使用して硬化させてもよい。硬化剤を使用する場合、硬化性および硬化物特性を調整することができる点から好ましく、とくに、酸無水物を使用する場合、耐熱性、耐薬品性の向上の点から好ましい。
【0021】
前記酸無水物としては、とくに限定されるものではなく、たとえばメチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物などがあげられる。これらのうちではメチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸が、耐候性、耐熱性の点から好ましい。
【0022】
前記アミン化合物としては、とくに限定されるものではなく、たとえば2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、イソフォロンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン、ジシアンジアミド、各種イミダゾール化合物などがあげられる。これらのうちではジシアンジアミドが接着性の点から好ましい。
【0023】
前記フェノール化合物としては、とくに限定されるものではなく、たとえば各種分子量のフェノールノボラック樹脂、各種分子量のクレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、これらビスフェノール類のジアリル化物などの誘導体があげられる。これらのうちではフェノールノボラック樹脂が、機械強度、硬化性の点から好ましい。
【0024】
前記エポキシ樹脂の硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂100重量部に対して1〜100重量部、さらには3〜100重量部であるのが、耐熱性、硬化性の点から好ましい。なお、当量比としては、エポキシ基1当量あたり、酸無水物の場合には、酸無水物基が0.7〜1.3当量、さらには0.8〜1.1当量程度、アミン系化合物の場合には、活性水素が0.3〜1.4当量、さらには0.4〜1.2当量程度、フェノール化合物の場合には、活性水素が0.3〜0.7当量、さらには0.4〜0.6当量程度であるのが好ましい。
【0025】
また、硬化促進剤を必要に応じて使用することができ、例えば、イミダゾール、その誘導体(例えば、2−メチルイミダゾール等)、その塩(例えば、2−フェニルイミダゾール・イソシアヌル酸付加物等);ジアザビシクロウンデセン、その誘導体(例えば、N−8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7・クロライド等)、その塩(例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7・フェノール塩等);有機ホスフィン化合物およびその誘導体(例えば、トリフェニルフォスフィン等)、その塩(例えば、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等)等の公知の硬化促進剤を、エポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜8重量部を配合することができる。
【0026】
本発明における接着剤には、遮光性を付与するために、例えば、着色剤を配合することができる。上記着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン等を挙げることができる。
【0027】
上記着色剤の使用量としては、エポキシ樹脂100部に対して0.1〜100部、さらには1〜30部であるのが、成形作業性、耐熱性、機械強度の点から好ましい。
【0028】
その他の添加剤を使用してもよく、例えば、フィラー等を使用することができる。上記フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ウォラストナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、フェライト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、カオリン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等を挙げることができる。上記フィラーの配合量としては、エポキシ樹脂100重量部あたり、好ましくは10〜500重量部、より好ましくは20〜300重量部である。
【0029】
上記流動調整剤含有無溶剤型エポキシ樹脂接着剤は、各成分を常法に従って混合することにより調製することができる。
【0030】
印刷塗工法は、微細パターンに対応して接着剤を塗布することができる手段の典型として挙げることができる手法であり、フォトエッチング手法を用いる必要がないので、洗浄工程におけるゴミによる瑕疵の問題が発生しない。印刷方法としては例えば、スクリーン印刷、メタルマスク印刷等を用いることができる。
【0031】
印刷パターンとしては、各集積回路の外周部に対応する枠パターン、例えば、格子状等のパターン、であってよい。スクリーン印刷においては、このようなパターンを形成したスクリーン版を用いればよい。
【0032】
接着剤の塗工厚みとしては、B−ステージ化された場合に所望の厚みを持つようにすればよいが、本発明においては接着剤が流動調整剤を含有するので加熱による低粘度化を防止し、塗工されたパターンが維持されるので、B−ステージ化しても厚みの変化は殆どなく、B−ステージ化された接着剤層の目標厚みを塗工厚みとすることができる。
【0033】
印刷塗工された接着剤層をB−ステージ化する工程(2)
印刷塗工された接着剤層をB−ステージ化するには、接着剤層を加熱して、半硬化状態にすればよく、加熱温度としては、通常、70〜120℃程度で、加熱時間としては、通常、1〜35分程度である。なお、B−ステージとは熱硬化性樹脂の硬化の中間状態であり、半硬化やセミキュアとも称され、硬化反応が徐々に開始した状態をいい、この状態からさらに反応させると硬化が完了する。B−ステージ化された接着剤層の厚みは10〜500μmであることが好ましく、20〜200μmがより好ましい。
【0034】
複数の集積回路が形成されたシリコンウエハー上に、B−ステージ化された前記接着剤層の厚みによって、前記各集積回路を中空内に封入するために必要な間隔に離間しつつ、前記カバー部材を配置する工程(3)
シリコンウエハー上に複数の集積回路が、典型的にはアレイ状に、形成されたウエハーレベルでの集積回路基板に対して、上記カバー部材を配置する。この際に、B−ステージ化された上記接着剤層の厚みによって、上記各集積回路を中空内に封入するために必要な間隔に離間する。すなわち、B−ステージ化された接着剤層の厚みにより、集積回路とカバー部材とを離間することができ、離間のためのスペーサーを用いる必要がない。
【0035】
上記集積回路としては、その表面保護のためにカバー部材で中空内に封入することが求められるものであり、例えば、センサー(例えば、光センサー、ガスセンサー等)、発光素子、水晶発振子等の集積回路を挙げることができる。なかでも、イメージセンサー用集積回路に好適に適用することができる。この場合において、接着剤は遮光性を有する添加剤を配合したものを使用することが好ましい。
【0036】
なお、シリコンウエハー上に形成された集積回路としては、一般的には、再配線層形成工程、バンプ形成工程等の工程を経たものであってよく、中空封止工程を適用するための前段階の諸工程を施された状態の集積回路に対して、本工程(3)が適用されることが望ましい。
【0037】
加熱加圧して前記カバー部材と前記シリコンウエハーとを前記接着剤層により接合する工程(4)
B−ステージ化された接着剤層を加熱して軟化させ、シリコンウエハーに加圧して押しつけつつ、硬化反応をさらに進行させて接着剤を硬化接合させる。加熱温度としては、130〜200℃が好ましく、150〜180℃がより好ましい。
【0038】
加圧圧力(MPa)は接着剤層の厚み(μm)を考慮して印加することが好ましく、具体的には、厚み(μm)の数値と加圧圧力(MPa)の数値との積、すなわち厚み(μm)の数値×加圧圧力(MPa)の数値は、好ましくは1以上400未満(1〜400未満とも記す。)であり、より好ましくは5〜300である。この関係を満たす厚みと加圧圧力の例としては、例えば、積が1〜400未満の場合において、厚み50μmの場合に、加圧圧力0.02MPa以上8MPa未満となり、厚み200μmの場合に、0.005MPa以上2MPa未満となり、積が5〜300の場合において、厚み50μmの場合に、0.1〜6MPaとなり、厚み200μmの場合に、0.025〜1.5MPaとなる。このような条件を満たす加圧下においては厚みの変化を抑えることができる。
【0039】
この場合において、加圧は接着強度を考慮して印加することができ、好ましくは0.1〜1.9MPaを印加することができ、より好ましくは0.1〜1.5MPaを印加することができる。紫外線硬化型接着剤を使用した場合には高加圧条件(例えば8MPa)が必要となるが、本発明においては、本発明の接着剤を使用することにより、このような比較的低い加圧においても充分な接着強度を発揮するとともに、B−ステージ化された接着剤層の厚みが硬化過程で殆ど変化しない。従って、上述の数値の積の条件を満たしつつ、かつ、上記範囲の加圧を印加することにより、厚み変化を抑えつつ、しかも充分な接着強度を発揮することができる。
【0040】
ダイシングによりシリコンウエハーを個片化し、前記カバー部材で前記各集積回路が中空内に封入された各集積回路パッケージを得る工程(5)
ダイシングによりシリコンウエハーを個片化する方法としては、ウエハーレベルCSPの製造において用いられる公知の工程を採用すればよい。かくして、センサー(例えば、光センサー、ガスセンサー等)、発光素子、水晶発振子等の集積回路を有するウエハーレベルCSP、例えば、イメージセンサ、水晶振動子等のパッケージ化された素子(単にイメージセンサ、水晶振動子等とも言う。)、を得ることができる。
【0041】
なかでも、本発明の製造方法により製造されたイメージセンサは、光学機器、例えば、カメラ又はカメラモジュールに使用することができ、例えば、ウエハーとカバー部材との接着部の遮光性を高めたイメージセンサを用いて感度の向上を図ることができる。なお、カメラモジュールは、例えば、携帯電話、スマートフォンやパソコン等の機器に組み込んでこれらの機器にカメラ機能を付与することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の記載は専ら説明のためであって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例1、2
以下の配合で各成分を常温(25℃)にて混合して、接着剤を調製した。
エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(AER250(旭化成エポキシ製))100部
硬化剤:アミン系化合物(EH3636AS(ADEKA製))8部
硬化促進剤:イミダゾール化合物(2MZ(四国化成製))1部
流動調整剤:アクリル樹脂(F301(ガンツ化成製))50部
フィラー:シリカ(SOE5(アドマテックス製))30部
【0044】
得られた接着剤の粘度を25℃で、ブルックフィールド社製回転粘度計HBT/10rpm、スピンドル♯28により測定した。結果を表1に示した。
【0045】
テスト基板(ガラス板)上に接着剤を実施例1では50μm厚みに、実施例2では200μm厚みに塗布した。これを110℃、5分間加熱してB−ステージ化した。この状態では厚みは変化しなかった。つぎに、別のガラス板で接着剤層を挟み、加圧下で150℃/30min加熱硬化して、接着剤層の厚みが変化したか否かを調べた。加圧は、0.1MPa、0.5MPa、1MPa、1.5MPa、2MPa、3MPa、5MPaと順に上げていった。そして、厚みが変化した最少圧力を厚み変化圧力として表1に示した。例えば、実施例2では200μm厚みの場合に2MPa又はそれ以上で厚みが変化したが、1.5Mpaでは厚みは変化しなかったことを示している。
【0046】
テスト基板(アルミニウム板)上に接着剤を塗布した。これを110℃、5分間加熱してB−ステージ化した。つぎに、別のアルミニウム板で接着剤層を挟み、加圧下で150℃/30min加熱硬化した後、ASTMD1002に準拠して接着剤層の接着強度を測定した。加圧は、0.1MPa、1MPa、2MPaの各圧力とした。結果を表1に示した。
【0047】
比較例1、2
以下の配合で各成分を常温にて混合して、接着剤を調製した。
エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(AER250(旭化成エポキシ製))100部
硬化剤:アミン系化合物(EH3636AS(ADEKA製))8部
硬化促進剤:イミダゾール化合物(2MZ(四国化成製))1部
フィラー:シリカ(SOE5(アドマテックス製))30部
比較例1は実施例1と同様にして、比較例2は実施例2と同様にして、それぞれ、接着剤の粘度、厚み変化圧力、接着強度を測定した。結果を表1に示した。
【0048】
比較例3
以下の配合で各成分を常温にて混合して、接着剤を調製した。
エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(AER250(旭化成エポキシ製))30部
硬化剤:アミン系化合物(EH3636AS(ADEKA製))2.4部
硬化促進剤:イミダゾール化合物(2MZ(四国化成製))0.3部
流動調整剤:アクリルモノマー(ビスコート152(大阪有機化学工業製))30部
光硬化開始剤:イルガキュア184(チバスペシャリティケミカルズ製)0.5部
ハーフエステル:UVACURE1561(ダイセルサイテック製)40部
実施例1と同様にして粘度を測定した。結果を表1に示した。また、厚み変化圧力、接着強度を実施例1と同様にして測定した。ただし、B−ステージ化は4J/cm2の条件でUV照射して行った。また、接着強度の測定は、加圧を、0.1MPa、5MPaの各圧力とした。結果を表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1、2の結果から、流動調整剤を用いることで耐圧形状保持性および低圧接着性の両立が可能であることが確かめられた。比較例1の場合、接着強度は発現するが耐圧形状保持性はない。比較例3の場合、耐圧形状保持性はあるが接着力に乏しい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)カバー部材に流動調整剤含有無溶剤型エポキシ樹脂接着剤を印刷塗工する工程、(2)前記印刷塗工された接着剤層をB−ステージ化する工程、(3)複数の集積回路が形成されたシリコンウエハー上に、B−ステージ化された前記接着剤層の厚みによって、前記各集積回路を中空内に封入するために必要な間隔に離間しつつ、前記カバー部材を配置する工程、(4)加熱加圧して前記カバー部材と前記シリコンウエハーとを前記接着剤層により接合する工程、及び、(5)ダイシングによりシリコンウエハーを個片化し、前記カバー部材で前記各集積回路が中空内に封入された各集積回路パッケージを得る工程、を含むウエハーレベルCSPの製造方法。
【請求項2】
B−ステージ化された接着剤層の厚みは、10〜500μmである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
加圧は、接着剤層の厚み(μm)の数値と加圧圧力(MPa)の数値との積が1以上400未満となる圧力(MPa)を印加する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
接着剤の印刷塗工は、接着剤をスクリーン印刷して塗工する請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
【請求項5】
接着剤は、25℃で5〜500Pa・sの粘度を有するものである請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
集積回路は、イメージセンサ回路であり、CSPはイメージセンサである請求項1〜5のいずれか記載の製造方法。
【請求項7】
接着剤層は、遮光性接着剤からなる請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
遮光性接着剤は、着色剤を含有するものである請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
エポキシ樹脂100重量部に対して、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂及びソルビトール誘導体からなる群から選択される少なくとも1種からなる流動調整剤を5〜100重量部含有し、25℃で5〜500Pa・sの粘度を有する印刷塗工用無溶剤型エポキシ樹脂接着剤。
【請求項10】
さらに着色剤を含有し、遮光性を有する請求項9記載の接着剤。
【請求項11】
イメージセンサチップと該チップの中空封止用カバー部材との接着のための請求項9又は10記載の接着剤。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか記載の製造方法により製造されたイメージセンサを使用した光学機器。
【請求項13】
請求項7又は8のいずれか記載の製造方法により製造された、ウエハーとカバー部材との接着部の遮光性を高めたイメージセンサを使用したカメラ又はカメラモジュール。

【公開番号】特開2013−115130(P2013−115130A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257929(P2011−257929)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)