説明

ウォータージェット推進船

【課題】船舶の航走時に船首部の推進抵抗が少なく、安定した航走が得られるように、大型船舶が高速運行する場合でも効率的な推力を得ることが可能となるウォータージェット推進船を提供する。
【解決手段】船首1部の喫水線2の下部に開口する取水口3から導水管4内に外部海水を吸い込んで取り入れて導水管4から真空タンク室5に導入し、真空タンク室5に内蔵された水中ポンプ6により加圧したのちこれを船尾7部の放出口8から後方へ放出して推力を得て推進するウォータージェットによる推進船であって、真空タンク室5は喫水線2より高位にある内水位9と真空ゾーン10とがあって、真空タンク室5の真空ゾーン10には開閉バルブ11が挿入されたサクションパイプ12の一方端が接続され、サクションパイプ12の他方端は真空ポンプ13に接続されているウォータージェット推進船である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータージェット推進船に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶は大量の荷物と乗客を輸送することができるので輸送コストが低く、また、環境に対する負荷も小さいことから、輸送手段としての価値は極めて大きい。近年においては時間的価値も高まってきており、それに伴って交通機関の高速化に対する要請は極めて強くなってきている。海上輸送においても既に多種多様な高速旅客船舶が就航しているが、近年は旅客でなく貨物の高速化の需要に伴い高速タイプのフェリーの要請が高まっている。特に近年においては、より高速で航走できるウォータージェット推進船が、高速タイプのフェリーに使用されることが多い。
【0003】
ウォータージェット推進船は、水を高速で噴出し、その反動推力で船舶を推進させることである。水は船底にある取水口より吸込まれ、推進用のポンプのインペラにて加圧し、高速の噴流に加速され、船尾部のノズルから噴出される。
大型の貨物船舶などではディーゼル主機によるレシプロエンジンでのプロペラ推進が主流だが、高速タイプのフェリーなどでは、ガスタービンエンジンでウォータージェット推進ポンプを駆動し、同ポンプで海水を後方に噴出して高速を得る推進機関が増えつつある。
ウォータージェット推進船は、水中翼を設けているジェットフォイルのような場合を除いては、船底に突起物がないため、船体抵抗が減少し、浮遊物等による損傷の程度が軽減され、また、浅瀬での航走が可能になり、プロペラ船に比較して、高速で航走でき、低騒音、低振動で乗り心地が良く、停止からストップスピードまで、船速のコントロールが無段階で可能であるなどの特徴がある。
【0004】
推進力の主機としてディーゼルエンジンは、排気ガス中に含まれる窒素酸化物の抑制が難しいため、排ガス特性の優れたガスタービンエンジンの採用が増えつつあり、特に水中翼船、ホーバークラフトなどでは主流となっている。
また、従来の船舶機関に比べてガスタービンエンジンの運転時の騒音が、特に低周波数成分が少ない点を評価し、大型客船用のターボ・エレクトリック方式の推進機関の主機として採用された例がある。ターボ・エレクトリック方式は、ガスタービンで回すターボ発電機からの電力で電動機とそれに直結されたプロペラを回して船舶を推進する方式であり、この応用として電動機を動力としてジェット推進ポンプを駆動し、同ポンプで海水を後方に噴出して高速を得ることができる。
【0005】
また、従来、洋上を高速で航走する船舶として、水中翼船、ホーバークラフト、水上滑走船など、多種類のものが知られている。すなわち、水中翼船は水中に設けた翼の揚力を利用して船体を浮上させて波浪や水の抵抗を減少させたものであり、ホーバークラフトは高圧空気で船体を浮上させて波浪や水の抵抗の低減を図ったものであり、さらに、滑走船は吃水を浅くして水の抵抗の低減を図ったものである。
【0006】
〔発明の背景〕
上記船舶の推進にあたっては、従来この主の高速タイプのフェリーなどの推進装置には、主としてウォータージェット推進が採用されていたが、この種の推進装置は、図6縦断面図に示すように、ウォータージェット推進船100の中部に原動機101の駆動102に接続されたインペラ103が内蔵され、海水を船尾部船底部の取水口104からダクト105内に取り入れ、この海水をインペラ103にて高速の噴流に加速し、ダクト105の後端開口である放出口106から船外後方の喫水線107より上の空間へ放出する構造となっている。
この放出口は荷物などにより船脚が変化するので空荷の場合には水面より高い位置になるので、インペラ103のダクト105内への海水の揚程にエネルギーを費やすこととなりその分だけウォータージェットの噴流力が弱まってしまう。また、取水口104が船尾部船底部にあるので、船舶の進行方向と直交しており、ダクト105内に海水を取り込む力が弱い。また、取り込みと放出とがバランスしないときには航走中にはダクト105は水の抵抗となる。
【0007】
また、上記のような従来の高速船では、強風や波浪に対して対処できず、軽い風波でも航走できない難点がある。すなわち、水中翼船の場合には船体を海面から高くすればよいのであるが、あまりに高くすると安定性が悪くなり、また、水中翼で得られる揚力からして大型化は困難である。
また、ホーバークラフト、滑走船ともに波浪の海面で船体を安定して浮上させることは困難であり、以上のもの何れも風波に対応できない。
【0008】
〔従来の技術〕
これを改良する目的で、従来この種のウォータージェット推進船においては、例えば、ウォータージェット推進型の小型滑走艇では、船体の前部の取水口から取り込んだ水を、左右の側部に形成された放水口があり、取水口と放水口はそれぞれダクトで連通している。これにより取水口から取り込んだ水は、同時にあるいは別々に左右の放水口から放水することができるようにしたものが開示されている。(例えば、特許文献1参照)
【0009】
また、従来の他のウォータージェット推進船においては、例えば、不沈構造を有する高速艇では、船体の船殻の内面に浮揚体を取り付け、浮力を増して傾倒しても復元することができると共に、船首には前方に突出する円錐形状の波浪の突切体を設け、航走時の船首部の波浪を突切って進行するので波浪の抵抗が小さく、船底の外側には船体の長方向に沿わせて一対の安定用の突条を設け、航走時には左右方向の揺動を防止して、船底部に設置したウォータージェット噴射用のポンプおよびこのポンプの駆動機で、吸引水を後方に噴射して航走するようにしたものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
【特許文献1】特許公開2005−231407(例えば、図1)
【特許文献2】特許公開平11−1197(例えば、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、ウォータージェット推進型の小型滑走艇では、外部の水を取り込むべく船首部に形成された取水口から、船舶の航走時に導水し、側部の放水口から放水するので船首部での水の抵抗が減るが、導水時には吸引力が働かないので推力のアップにはならないという問題がある。
【0012】
また、不沈構造を有する高速艇では、浮力が増して浮かびやすくなるが、これにより船脚が浅くなるので航走時に揺れやすい。また、船首に突出する突切体で波浪を突切って進むので船首抵抗は小さいが、斜めからの波浪には横抵抗を受けやすく進路の維持が難しい。さらに、船体の長方向に沿わせた一対の突条ではローリング防止できてもピッチング防止対策とはならないという問題がある。
【0013】
そこで、本発明の課題は、船舶の航走時に船首部の推進抵抗が少なく、安定した航走が得られるように、大型船舶が高速運行する場合でも効率的な推力を得ることが可能となるウォータージェット推進船を提供することである。

【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明に係るウォータージェット推進船は、
船首部の喫水線の下部に開口する取水口から導水管内に外部海水を吸い込んで取り入れて前記導水管から真空タンク室に導入し、
前記真空タンク室に内蔵された水中ポンプにより加圧したのちこれを船尾部の放出口から後方へ放出して推力を得て推進するウォータージェットによる推進船であって、
前記真空タンク室は前記喫水線より高位にある内水位と真空ゾーンとがあって、
前記真空タンク室の前記真空ゾーンには開閉バルブが挿入されたサクションパイプの一方端が接続され、
前記サクションパイプの他方端は真空ポンプに接続されていることを特徴としている。
【0015】
本発明に係るウォータージェット推進船によれば、
船首部の取水口から外部海水を吸い込んで、真空ポンプにより喫水線より高位の水頭に保持された真空タンク室に導入し、水中ポンプにより加圧し船尾部からウォータージェットを放出して推力を得ることを特徴として構成されているので、航走時の取水口には真空力に伴う吸引力が作用して船舶を押し進めることができ、ウォータージェットによる推力に加えた吸引による推力の付加が可能となる。
【0016】
また、水中ポンプは真空タンク室の内水位中にあって喫水線より高位にあるので、水中ポンプで加圧する取水のための揚程に係る負荷がかからないので、加圧工程の高効率化が可能となる。
【0017】
また、水面を高速航走する船舶の受ける抵抗は、粘性抵抗に比して造波抵抗が際立っているが、取水口から吸引のために、船首部での波立ちが抑えられて造波抵抗を減少させることが可能となる。
【0018】
また、真空吸引をする船首から真空ゾーンを有した真空タンク室までの存在により、大気圧による吸引による押さえ込みにより、高速による浮き上がりを抑えることが可能となる。
【0019】
したがって、これによれば、船舶の航走時に船首部の推進抵抗が少なく、安定した航走が得られ、大型船舶が高速運行する場合でも効率的な推力を得ることが可能となる。
【0020】
このような技術手段において、ウォータージェットの吐出量の調整と、高速噴射させてより大きな推力を得ることとして、
船舶の速度を自在に調整することと、停船時の放出口からの空気の流入を止めるこにより真空タンク室の内水位の低下を防ぎ、再航走時のスタートアップを迅速にする観点からすれば、
放出口は水中ポンプの吐出量を調整する開閉バルブと吐出ノズルとがあることが好ましい。
【0021】
また、荷積みによる船脚の変化に事前的に的確に対応することとして、ウォータージェットの放出口を喫水線上の最適な位置に、喫水線の変化に確実に対応できるようにする観点からすれば、
放出口は高さが調整することができるスライドジャッキによる高さ調整手段を有していることが好ましい。
【0022】
また、船舶の方向の変化に迅速に対応することとして、港内ではウォータージェットが飛散しないようにする観点からすれば、
放出口はウォータージェットの放出方向を変えることができる油圧ジャッキによる方向変更手段を有していることが好ましい。
【0023】
また、水中ポンプの効率を最大限に引き出すこととして、水中に設置して大量の水を高圧にて吐出することができるようにする観点からすれば、
水中ポンプは電気モーターを動力として多段タービンポンプであることが好ましい。
【0024】
さらに、ウォータージェットの推進の効率を最大に引き出すこととして、浮遊物などの流入を防止して、有効に水を吸引して取り込むことができるようにする観点からすれば、船首部の取水口には水の抵抗の少ない円錐形状のフィルターを取り付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るウォータージェット推進船によれば、
船舶の航走時に船首部の推進抵抗が少なく、安定した航走が得られるように、大型船舶が高速運行する場合でも効率的な推力を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面に基づいて発明の実施の形態に係るウォータージェット推進船について詳細に説明する。
【0027】
図1は本発明の実施の形態に係るウォータージェット推進船の概略構成を示す縦断面図、図2は該ウォータージェット推進船の船尾部を示す図(図2(a)は断面図、図2(b)は断面図)、図3は該ウォータージェット推進船の船尾部を示す斜視図、図4は該ウォータージェット推進船の船尾部を示す図(図4(a)は断面図、図4(b)は断面図)、図5は該ウォータージェット推進船の船尾部を示す図(図5(a)はA−A断面図、図5(b)は平面図)である。
【0028】
本実施の形態に係るウォータージェット推進船100は、図1に示すように、
船首1部の取水口3から外部海水を吸い込んで真空タンク室5に導入し、
水中ポンプ6にて加圧して放出口8から放出して推進するウォータージェットの推進装置を備えるものとして構成されている。
【0029】
具体的には、このウォータージェット推進船100は、図1に示すように、船首1部の喫水線2の下部に開口する取水口3から導水管4内に外部海水を吸い込んで取り入れて導水管4から真空タンク室5に導入し、
真空タンク室5に内蔵された水中ポンプ6により加圧したのちこれを船尾7部の放出口8から後方へ放出して推力を得て推進するウォータージェットによる推進船であって、
真空タンク室5は喫水線2より高位にある内水位9と真空ゾーン10とがあって、
真空タンク室5の真空ゾーン10には開閉バルブ11が挿入されたサクションパイプ12の一方端が接続され、
サクションパイプ12の他方端は真空ポンプ13に接続されているものとして構成されている。
【0030】
つまり、このような構成によれば、航走時には取水口3〜導水管4〜真空タンク5には真空力が作用して取水口3から海水を吸引して船舶を押し進めることとなり推力アップが可能となる。
また、水中ポンプ6は喫水線2より高い位置に保持された真空タンク室5内から取水するため揚程負荷がないので、加圧工程のみとなり効率化が可能となる。
また、取水口3からの吸引のために船首1部での波立ちが抑えられて造波抵抗を減少させることが可能となる。
また、真空吸引をする船首1の取水口3から導水管4から真空ゾーン10を有した船尾7の真空タンク室5までの存在により、大気圧による船舶全体の押さえ込み作用が働き船舶の浮き上がりを抑えることが可能となる。
【0031】
これにより、船舶の航走時に推進抵抗の少ない揺動の少ない安定した航走と効率的な推力を得られる効果がある。
【0032】
本実施の形態においては、図1、図2に示すように、放出口8は水中ポンプ6の放出管8bの吐出量を調整する開閉バルブ21と吐出ノズル22とがあるものとして構成されている。
【0033】
つまり、このような構成によれば、吐出量の調整で航走速度がコントロールでき、さらに、停船時には放出口8からの空気の流入を遮断がきるので、真空タンク室5の内水位9が低下して水中ポンプ6が空気中に露出すること回避することが可能となる。また、放出管8aの断面を絞り込んで吐出ノズル22を取り付けるて、より高速のウォータージェットで推進力を得ることが可能となる。
【0034】
これにより、停船後のスタートアップが迅速にでき、推進力のアップができる。
【0035】
本実施の形態においては、図3、図4、図5に示すように、放出口8は高さ調整手段30のスライドジャッキ31(34)により高さが調整可能であるとして構成されている。
【0036】
具体的には、放出口の高さ調整手段30は、図3、図4、図5に示すように、真空タンク室底5aには水中ポンプ6とポンプ架台33とスライドジャッキ31とジャッキ架台32とがそれぞれ関連付けて配置してある。また、放出管8aは水中ポンプ6と連通し真空タンク室壁5bを貫通して放出口8まである。また、真空タンク室壁5bの放出管8aの貫通部には小判型の開口38があり、貫通した放出管8aはスライドゲート36に固定されている。スライドゲート36はガイド枠37をガイドとしてジャッキ架台35上のスライドジャッキ34で上下に可動できる。また、スライドゲート36と真空タンク室壁5bとの隙間にはパッキン39が取り付けられている。
【0037】
つまり、このように構成すれば、放出口8と水中ポンプ6とはスライドジャッキ32(34)により、放出管8aの心中タンク室壁5bの気密性を維持しながらとを同調して作動させることが可能となる。
【0038】
これにより、荷積みによる船脚の変化に対応して、ウォータージェットの放出口を喫水線上の最適な位置に高さ調整が可能となり、推進効率が飛躍的に高まるという効果が得られることとなっている。
【0039】
実施の形態においては、図2に示すように、放出口8はウォータージェットの放出方向が変えられる方向変更手段40である油圧ジャッキ41を備えているものとして構成されている。
具体的には、方向変更手段40は、水中ポンプ6から圧送水を放出管8a〜噴出ノズル22〜放出口8にいたるウォータージェットは、油圧ジャッキ41を操作して操舵ケーシング42を傾けることにより、ウォータージェットは操舵ケーシング42により反射・屈曲して噴流方向を変えることが可能となる。
【0040】
つまり、このように構成すれば、操舵ケーシング42にて反射・屈曲した噴流反力により船舶の方向を変えることが可能となり、船舶の方向の変化に迅速に対応できることとなるので操舵の安定性・安全性が増すとともに、港内ではウォータージェットが飛散しないように水面に向けて噴射できるので環境によいという効果が得られることとなっている。
【0041】
実施の形態においては、図1、図2に示すように、水中ポンプ6は電気モーターを動力として多段タービンポンプであるものとして構成されている。
具体的には、発電機14から給電されて真空タンク室5の水中に設置した水中ポンプ6を電気モーター(図示せず)で駆動し、駆動軸52の回転を多段タービン51に伝えことにより、高圧水流を発生させる。
【0042】
つまり、このように構成すれば、水中に設置したポンプで大量の水を高圧に吐出することが可能となる。
【0043】
実施の形態においては、図1に示すように、取水口3は障害物吸い込み防止のための円錐形のフィルター61を備えているものとして構成されている。
【0044】
つまり、このような円錐形のフィルター61によれば、
水の抵抗の少ない円錐形状のフィルターを取り付けることにより、浮遊物などの流入を防止しできるので、水中ポンプの損耗が少なくなるので、安定した推力を持続することができるという効果が得られることとなっている。
【0045】
次に、図1から図5を用いて、本実施の形態に係るウォータージェット推進船100の作用効果について説明する。なお、前記ウォータージェット推進船100は海上を航走状態であるところから説明を開始する。
【0046】
海上を航走している本実施の形態に係るウォータージェット推進船100は、
真空タンク室5の内水位9を喫水線2よりも高位に保つように、真空ポンプ13のサクションを働かせながら、真空タンク室5に内蔵された多段タービン51による水中ポンプ6により加圧した海水を放出管8aを経て船尾7部の放出口8の吐出ノズル22から後方へウォータージェットとして放出しその噴流による反動を推力として航走している。このため、水中に設置した多段タービン51による水中ポンプ6は取水のための揚程負荷がなく、加圧工程のみとなるので大量の海水を効率的に高圧にでき、吐出ノズル22でさらに加速されたウォータージェットとなるので推力が増大するという効果がある。
【0047】
放出口8は喫水線2から適宜離隔のある気中に位置する。放出口8は高さ調整手段30であるスライドジャッキ31(34)とスライドゲート36とは同調して可動することによって、放出管8aの可動範囲である真空タンク室壁5bに開けられた開口38が放出管8aの貫通する部分を除いてスライドゲート36により遮蔽されるので、真空タンク室5の内水位9を適宜水位に保ちつつ、積荷などにより船舶の喫水線2が変化しても、最適位置に放出口8からウォータージェットが可能となり、船脚の変化に事前的に的確に対応することができるので推進効率が高まる。
【0048】
また、水中ポンプ6により放出口8から放出されたウォータージェットの水量と等しい海水は、真空タンク室5に連なる導水管4を通り、円錐形状のフィルター61のある取水口3から真空タンク室5に真空力により吸引されて導入することとなる。このため、航走する船舶にウォータージェットによる推進力に加えて、吸引力を付加するような推進力が船舶に作用するので推進力が増大するとともに、取水口3から海水を吸引するので船舶の航走による舳先での波立ちが抑制されて造波抵抗が減少して推進力の効率化を図ることができ、浮遊物などの流入を防いで有効に海水を吸引して取り込むことができる。さらに、真空吸引の働く取水口3から導水管4から真空タンク5までの存在により船舶の浮き上がりを抑える方向への力として大気圧が働くので、航走に伴う揺動の少ない船舶を提供できる。
【0049】
外洋を高速航行するときには、船舶は操舵板15によって操船する。船舶が港内に入港(出航)し接岸(離岸)する場合には、船舶の行き脚がないので操舵板15による操船は難しので、放出口8の方向変更手段40である油圧ジャッキ41で操舵ケーシング42曲げてウォータージェットの噴流方向を変化させることにより転舵操船することができる。また、放出口8を海面側に向けることにより、港内における他の船舶へのウォータージェットによる飛散影響を回避できる。また、停船によるウォータージェットの停止時には、放出管8aの開閉バルブ21を閉じることにより真空タンク室5の内水位9の水位低下がしないので、出航に伴うスタートアップが迅速にできる。
【0050】
尚、本発明は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のウォータージェット推進船にあっては、
船舶の航走時に造波抵抗が少なく安定した航走ができ、大型船舶が高速運航してた場合でも効率的な推力を得ることが可能なので周囲を海に囲まれたこの日本では極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態に係るウォータージェット推進船の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るウォータージェット推進船の船尾部を示す図(図2(a)は断面図、図2(b)は断面図)である。
【図3】本発明の実施の形態に係るウォータージェット推進船の船尾部を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るウォータージェット推進船の船尾部を示す図(図4(a)は断面図、図4(b)は断面図)である。
【図5】本発明の実施の形態に係るウォータージェット推進船の船尾部を示す図(図5(a)はA−A断面図、図5(b)は平面図)である。
【図6】本発明の実施の形態に係るウォータージェット推進船の従来技術を説明する縦断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…船首
2…喫水線
3…取水口
4…導水管
5…真空タンク室
5a…真空タンク室底
5b…真空タンク室壁
6…水中ポンプ
7…船尾
8…放水口
8a…放出管
9…内水位
10…真空ゾーン
11…開閉バルブ
12…サクションパイプ
13…真空ポンプ
14…発電機
15…操舵板
21…開閉バルブ
22…吐出ノズル
30…高さ調整手段
31…スライドジャッキ
32…ジャッキ架台
33…ポンプ架台
34…スライドジャッキ
35…ジャッキ架台
36…スライドゲート
37…ガイド枠
38…開口
39…パッキン
40…方向変更手段
41…油圧ジャッキ
42…操舵ケーシング
51…多段タービン
52…駆動軸
61…フィルター
100…ウォータージェット推進船
101…原動機
102…駆動軸
103…インペラ
104…取水口
105…ダクト
106…放出口
107…喫水線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船首部の喫水線の下部に開口する取水口から導水管内に外部海水を吸い込んで取り入れて前記導水管から真空タンク室に導入し、
前記真空タンク室に内蔵された水中ポンプにより加圧したのちこれを船尾部の放出口から後方へ放出して推力を得て推進するウォータージェットによる推進船であって、
前記真空タンク室は前記喫水線より高位にある内水位と真空ゾーンとがあって、
前記真空タンク室の前記真空ゾーンには開閉バルブが挿入されたサクションパイプの一方端が接続され、
前記サクションパイプの他方端は真空ポンプに接続されていることを特徴とする、
ウォータージェット推進船。
【請求項2】
前記放出口は前記水中ポンプの吐出量を調整する開閉バルブと吐出ノズルとがあることを特徴とする、
請求項1に記載のウォータージェット推進船。
【請求項3】
前記放出口は高さが調整することができる高さ調整手段を有することを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載のウォータージェット推進船。
【請求項4】
前記放出口は前記ウォータージェットの放出方向を変えることができる方向変更手段を有することを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のウォータージェット推進船。
【請求項5】
前記水中ポンプは電気モーターを動力として多段タービンポンプであることを特徴とする、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のウォータージェット推進船。
【請求項6】
前記取水口は障害物吸い込み防止のためのフィルターを備えていることを特徴とする、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のウォータージェット推進船。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−210537(P2007−210537A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34610(P2006−34610)
【出願日】平成18年2月11日(2006.2.11)
【出願人】(301037648)有限会社蜻蛉工房社 (3)
【出願人】(599090062)有限会社アサヒテクノ (19)