説明

ウォールボード充填剤としての改質された粉末石膏

石膏スラリーが、半水硫酸カルシウムと、水と、親水性の分散性コーティングで被覆された硫酸カルシウム二水和物とを含む。このコーティングは、スラリーの残りへの粉末石膏の露出を遅らせるために、半水硫酸カルシウムよりも溶解度が小さく、それにより時期尚早の結晶化およびそれに伴う早期の剛化が防止される。別の実施形態は、半水硫酸カルシウムと、ポリカルボン酸塩分散剤と、水と、被覆された硫酸カルシウム二水和物とを含む石膏スラリーである。この場合、親水性の分散性コーティングは、分散剤の石膏スラリーを流動化する能力を高める改質剤として働くように選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏スラリー中の充填剤として被覆された粉末石膏を用いる組成物を対象とする。より具体的には、粉末石膏の結晶化反応を触媒する能力を低減させるまたは遅らせるために、スタッコよりも溶解度が小さいコーティングで粉末石膏を被覆する。
【背景技術】
【0002】
石膏をベースとする建築製品は、建設業において一般的に使用されている。石膏製のウォールボードは難燃性で、ほぼすべての形状の壁の建設において使用することができる。ウォールボードは、主に内壁および天井製品として使用される。石膏は消音特性を有する。石膏は、損傷を受けた場合、比較的容易に継がれるかまたは取り替えられる。塗料および壁紙を含む、ウォールボードに適用することができる様々な装飾仕上げがある。これらの利点のすべてを有していても、ウォールボードは依然として比較的安価な建築材料である。
【0003】
石膏は、硫酸カルシウム二水和物、白土または粉末石膏としても知られている。焼き石膏(Plaster of Paris)は、焼き石膏(calcined gypsum)、スタッコ、半水硫酸カルシウム(calcium sulfate semihydrate、calcium sulfate half−hydrateまたはcalcium sulfate hemihydrate)としても知られている。合成石膏、たとえば、発電所からの排煙脱硫プロセスの副生成物である石膏を使用することもできる。採掘された場合、生石膏は通常二水和物の形態で見つかる。この形態では、2つの水分子が硫酸カルシウムの各分子と関係する。半水化物の形態を生成するためには、石膏をか焼して、以下の式によって水和の水の一部を追い払う。
CaSO・2HO→CaSO・1/2HO+3/2H
【0004】
多くの有用な石膏製品は、スタッコを水と混合し、半水硫酸カルシウムが水と反応することを可能にして半水化物を絡み合う(interlocking)硫酸カルシウム二水和物結晶のマトリックスに変換することにより、スタッコの硬化を可能にすることによって作製することができる。このマトリックスが形成されるにつれて、製品スラリーは固くなり、所望の形状を維持する。次いで、余分な水を乾燥によって製品から除去しなければならない。
【0005】
石膏品を作製するプロセスでは、かなりの量のエネルギーが消費される。粉末石膏をか焼し、粉末石膏を加熱して水和の水を追い払うことによってスタッコを作製する。後に、半水化物を二水和物の形態へと水和することによって石膏が硬化するので、この水は置換される。次いで、スラリーを流動化するために使用された余分な水が、オーブンまたはキルン内で硬化品を乾燥させることによって硬化品から得られる。したがって、スラリーを流動化するために必要とされる水の量を低減することにより、燃料要求が減少すると金銭的節約になる。か焼を必要とする材料の量が低減されたら、追加の燃料節約が生じるはずである。
【0006】
流体スラリーを作製するために使用される水の量を、分散剤を用いて削減する試みが行われている。ポリカルボン酸塩流動化材は、水の削減を可能にする際に非常に有効であり、水の削減により密度が増大する場合には、強度増大が実現される。これらの材料は比較的高価である。大量に使用する場合、ポリカルボン酸塩分散剤が、石膏製品を作製する際の単独の最も高価な添加剤の1つであることがある。この成分の高値は、競争がかなり激しい市場においてこれらの製品にもたらされる薄利を克服することができる。
【0007】
ポリカルボン酸塩分散剤に関連する別の不利な点は、硬化反応の遅延である。石膏ボードは、ほんの数分間でスラリーを混合し、注ぎ入れ、成形し、乾燥させる高速生産ライン上で作製される。あるコンベヤラインから別のコンベヤラインにボードを移動させてキルンに入れるためには、ボードはその形状を維持することが可能でなければならない。長さに切断され作製プロセス時に処理されるときまでにボードが最低限の生強度(green strength)を達成しなかった場合、損傷が生じることがある。プロセスの次のステップに進むことができるほど十分にはボードが硬化していないために、ボードのラインの速度落とさなければならない場合、生産コストが跳ね上がり、それにより経済的に競争力のない製品となってしまう。
【0008】
スラリーを流動化する際の分散剤の効果を増大させる改質剤が見出され、それにより改質剤が水の需要量を低減しながらも高価な分散剤の一部に置き換わることが可能となっている。しかしながら、改質剤がいつどのようにスラリーに添加されるかによっては、改質剤が一貫して作用しないことがわかっている。したがって、分散剤の量を削減することができるように改質剤が一貫して機能することが可能となるようなやり方で、デリバリービヒクル(delivery vehicle)が改質剤をスラリーまで運ぶ必要がある。
【0009】
燃料需要を削減する別の方法として、水中で容易に流動化可能な充填剤の使用が考慮されている。しかしながら、石膏製品、特に石膏パネルまたはウォールボードの重要な特性の1つは、その耐火性である。硫酸カルシウム二水和物は水が約20重量%である。焼き石膏の一部を難燃性のより低い充填剤で置き換えると、最終製品においてこの特性が弱まる。多くの充填剤が、圧縮強度およびウォールボードのくぎ抜き強度も減少させる。
【0010】
粉末石膏は、石膏製品において充填剤として使用されている。粉末石膏も難燃性で、安価で、容易に入手可能で、必要とされる焼き石膏の量を低減するが、やはり不利な点もある。充填剤として作用することができるほど十分な量で使用される硫酸カルシウム二水和物は、結晶化プロセスをより迅速に開始する種晶を提供することによって、半水化物用の硬化促進剤としても作用する。これが、スラリーの時期尚早な剛化を招く。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、焼き石膏と置き換わることによって、硬化製品に由来する水の量を低減することによって、または両方によって燃料消費を低減する、石膏品、特にウォールボードで使用するための充填剤が当分野では必要である。この充填剤は、硬化石膏とほぼ同等の難燃性を有するべきであり、また安価で容易に入手可能であるべきであるが、最終製品の強度を低下させるべきではない。
【0012】
従来技術は、所与のポリカルボン酸塩分散剤の効果を向上させるという問題に十分には対処することができなかった。分散剤の効果を向上させることにより、分散剤のコストが削減され、石膏製品の手頃な価格が維持されるはずである。
【0013】
したがって、当分野では、スラリーの流動性を維持しながらも石膏スラリー中で使用する分散剤の用量を低減する必要がある。分散剤の使用を低減すると、分散剤に費やすコストが節約されるはずであり、また硬化遅延などの副作用も低減されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
石膏製品中の充填剤として改善され被覆された粉末石膏を利用する本発明を使用することによって、これらの、また他のニーズに応え、またはニーズを超える。この被覆された粉末石膏は、場合によってポリカルボン酸塩分散剤の性能を高める改質剤のためのデリバリービヒクルとしても働く。
【0015】
本発明の一実施形態は、半水硫酸カルシウムと、水と、親水性の分散性コーティングで被覆された硫酸カルシウム二水和物とを含む石膏スラリーを対象とする。このコーティングは、スラリーの残りへの粉末石膏の暴露を遅らせるために、硫酸カルシウム二水和物よりも溶解度が小さく、それにより時期尚早の結晶化およびそれに伴う早期の剛化が防止される。
【0016】
本発明の別の実施形態は、半水硫酸カルシウムと、ポリカルボン酸塩分散剤と、水と、被覆された硫酸カルシウム二水和物とを含む石膏スラリーである。この場合、分散剤の石膏スラリーを流動化する能力を高める改質剤として働くように親水性の分散性コーティングを選択する。
【0017】
このスラリーを作製する方法は、半水硫酸カルシウムよりも溶解度が小さいコーティングを選択することを含む。硫酸カルシウム二水和物を親水性の分散性コーティングで被覆し、次いで水および半水硫酸カルシウムと組み合わせる。
【0018】
焼き石膏の一部を被覆された粉末石膏で置き換えると、焼き石膏の所要量が減少し、その結果か焼プロセスによって消費される燃料および電力の減少により節約が実現される。スタッコ製造によって制限される工場は容量の増大を実現することができる。というのは、同じ量のスタッコでより多くのウォールボードを作製することができるからである。
【0019】
粉末石膏のコーティングにより、粉末石膏の硬化促進剤として作用する能力が低減される。粉末石膏結晶を覆うことによって、コーティングが定位置のままである限り、半水化物分子は種晶にアクセスしない。コーティングがスラリー水に溶解するにつれて、粉末石膏が露出され、水和反応を触媒し始める。しかしながら、このコーティングの除去には時間がかかり、これにより硬化反応の開始が遅れ、その結果時期尚早なスラリーの剛化が最小限に抑えられるまたは回避される。別の可能性は、このコーティングが不溶性で、単に粉末石膏を不活性にするだけであることである。粉末石膏が硬化反応を開始することができる場合に制御するこの能力により、硬化促進剤の使用量の低減が可能となり、それによりコストが節約される。
【0020】
このコーティングは非常に分散性が良いため、粉末石膏は、粉末石膏に置き換えられる焼き石膏よりも容易にスラリーに分散することができ、それによりスラリーを流動化するために必要とされる水量をさらに低減することが可能となる。製品からの乾くべき水がより少ないキルンではより少ない燃料で済むことになる。省エネルギーの代わりに、キルンで制限されるプラントが、ライン速度の増大および追加の製品の販売により追加の容量を実現することができる。
【0021】
容量の増大がある場合、その増大は資本支出の著しい増加なく得られる。この資本は、他のプロジェクトに利用可能となる、あるいは払っていたかもしれない金利を節約することができる。多くの工場がスタッコ製造によってまたはキルン乾燥によって制限されるため、このコーティングの使用は広い用途を有することができる。
【0022】
一部の実施形態では、強度の損失が完全に回避される。粉末石膏により、他の多くの充填剤よりも高い強度が得られる。好ましいコーティングの少なくとも1つにより、強度の損失が全くない製品が得られる。これにより、焼き石膏100%から硬化した石膏の特性の多くを有する特に優れた製品が製造される。
【0023】
ポリカルボン酸塩分散剤と共に調合物中で使用する場合、被覆された粉末石膏は、分散剤を増強するための改質剤を届けるためのビヒクルとしても使用可能である。多くの改質剤が公知であり、粉末石膏粒子上への堆積に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の石膏スラリーは、水、焼き石膏および被覆された粉末石膏を用いて作製される。本発明の利点は、ポリカルボン酸塩を含むスラリーにおいて使用する場合に最も明確であるが、充填剤として粉末石膏を利用することが望ましいが時期尚早の増粘を回避すべきである任意の実施形態において、本発明は有用である。
【0025】
任意の焼き石膏またはスタッコが、このスラリーでは有用である。アルファーまたはベーター焼スタッコが有用である。合成石膏を含めて、様々な供給源からのスタッコを使用することができる。以下で説明するように、起こり得る相互作用のためにポリカルボン酸塩分散剤を使用する実施形態においては、平均的な塩のまたは低塩のスタッコが好ましい。
【0026】
粉末石膏は、スタッコの一部を置き換えるための充填剤として使用される。粉末石膏はすでに二水和物の形態であるため、水和の水を必要とせず、したがってスタッコよりも水需要が少ない。しかしながら、粉末石膏は結晶形成反応には関与せず、よって半水化物と同程度まで結晶マトリックスに束縛されることはない。特に粉末石膏の量が石膏材料の総量の10%を超える場合、ある程度の強度損失が起こる。任意の量の粉末石膏を使用することができるが、好ましくは、粉末石膏の量は、乾燥ベースで総硫酸カルシウム材料の約3〜10%である。本願で使用する用語「硫酸カルシウム材料」は、無水物、半水化物および二水和物の形態を含む、そのすべての形態の硫酸カルシウムを含む。
【0027】
粉末石膏は、石膏スラリーの早期の増粘の開始を防止する任意の適用可能なコーティングで被覆される。好ましくは、このコーティングはスタッコよりも溶解度が小さく、それにより粉末石膏が露出する前に他の添加剤を混合し組み込むための時間が提供される。このコーティングは、任意の適切なコーティング方法において粉末石膏に適用可能である。好ましくは、コーティング溶液に粉末石膏が添加される。被覆したら、場合によって粉末石膏を後日使用のために乾燥させる。しかしながら、好ましいコーティング方法においては、粉末石膏がコーティング溶液と共にスラリー状のままである間に、粉末石膏上にコーティングを沈殿させる。粉末石膏を乾燥させるために必要とされるエネルギーが節約される。次いで、被覆された粉末石膏を有するコーティングスラリーを、スタッコスラリーと共に組み込み、その後製品を形成する。被覆された粉末石膏、水、過剰なコーティングおよび/または副生成物をすべて、最終的な混合の前にスタッコスラリーに添加する。
【0028】
多くのコーティングが本発明では有用である。好ましいコーティングには、DEQUEST、特にDEQUEST2006、ホスホン酸塩分散剤(Solutia、セントルイス、ミズーリ州)または炭酸カルシウムが含まれる。リン酸三ナトリウムまたはピロリン酸四ナトリウムから作製される他のコーティングも有用である。粉末石膏粒子上に被覆することができ、粉末石膏よりも溶解度が小さく、核生成の活性部位を削減する任意の材料が使用可能である。
【0029】
特に有用なコーティングは、炭酸カルシウムである。このコーティングは、好ましくは溶液からの硫酸カルシウム二水和物、すなわち粉末石膏上への炭酸カルシウムの沈殿によって形成される。このコーティングの一実施形態は、水酸化カルシウムマグネシウムなどの消石灰とソーダ灰または炭酸ナトリウムとを組み合わせることによって得られる。次に、硫酸カルシウム二水和物を添加する。置換反応が起こり、それにより炭酸カルシウムと共に固形物を形成する。石灰の添加によっても、炭酸カルシウムが、ミキサまたは他の機器の内部上にではなく特に粉末石膏上に沈殿する。被覆された粉末石膏を調製した後、このスラリーにスタッコおよび他の任意の添加剤を添加する。全硫酸カルシウム材料の10重量%が炭酸カルシウムで被覆された粉末石膏の形態で、硫酸カルシウム材料の90重量%が半水化物の形態である場合、半水化物100%と比較して、ほぼ10%の水の削減が実現される。
【0030】
水に石灰およびソーダ灰を添加する際、その水は好ましくは温水である。温水の使用により、コーティングプロセスの効果が向上するようである。最大120°Fの水温が塩類を溶解させるためには特に有用であるが、より高い温度も考えられる。
【0031】
一部の実施形態では、スラリーを作製するために使用する水の量の削減は、ポリカルボン酸塩やナフタレンスルホン酸塩などの分散剤の添加によって実現される。この分散剤はそれ自体が硫酸カルシウムに付着し、次いでポリマー主鎖の荷電基とポリマー分岐の側鎖とが互いに反発し合い、それにより石膏粒子が広がり容易に流動する。スラリーがより容易に流動する場合、水の量を削減することができ、依然として流動性を有する流体を得ることができる。一般に、水の削減により、乾燥コストがより少なくなる。
【0032】
石膏における流動性を向上させるために有用な任意のポリカルボン酸塩分散剤が、本発明のスラリーにおいては好ましい。多くのポリカルボン酸塩分散剤、特にポリカルボン酸エステル類が、好ましいタイプの分散剤である。スラリー中で使用する好ましいクラスの分散剤の1つは、2種類の繰り返し単位を含む。この分散剤は、先に参照により組み込まれた「Gypsum Products Utilizing a Two−Repeating Unit System and Process for Making Them」という名称の同時係属中米国特許出願第11/152418号明細書にさらに記載されている。これらの分散剤は、Degussa Construction Polymers,GmbH(ドイツ、トロストベルグ)の製品で、Degussa Corp.(ジョージア州、ケネソー)(以下「Degussa」)によって供給され、以下「PCE211−Type分散剤」と称される。
【0033】
第1の繰り返し単位は、オレフィン不飽和モノカルボン酸繰り返し単位、そのエステルまたは塩、あるいはオレフィン不飽和硫酸繰り返し単位またはその塩である。好ましい第1の繰り返し単位には、アクリル酸またはメタクリル酸が含まれる。一価または二価の塩が、この酸基の水素の代わりには適切である。
【0034】
この水素を炭化水素基で置き換えてエステルを形成することもできる。
第2の繰り返し単位は式Iを満たし、
【0035】
【化1】

は、式IIによる不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル基から得られる。
【0036】
【化2】

【0037】
式Iを参照すると、このアルケニル繰り返し単位は、場合によってポリマー主鎖とエーテル結合との間にC〜Cのアルキル基を含む。pの値は0〜3の整数を包含する。好ましくは、pは0または1である。Rは水素原子またはC〜Cの脂肪族炭化水素基であり、この脂肪族炭化水素基は直鎖であっても分岐していても、飽和でも不飽和であってもよい。好ましい繰り返し単位の例には、アクリル酸およびメタクリル酸が含まれる。
【0038】
式IIのポリエーテル基は、酸素原子によって結合されている少なくとも2種の異なるアルキル基を含む複数のC〜Cアルキル基を含む。Mおよびnは、独立に2〜4の整数を包含する。好ましくは、mおよびnの少なくとも一方は2である。Xおよびyは、独立に55〜350の整数を包含する。zの値は0〜200を包含する。Rは、無置換のまたは置換したアリール基、好ましくはフェニルである。Rは、水素またはC〜C20の脂肪族炭化水素基、C〜Cの脂環式炭化水素基、置換したC〜C14のアリール基、あるいは式III(a)、III(b)およびIII(c)のうち少なくとも1つに従う基である。
【0039】
【化3】

【0040】
上記式において、RおよびRは、互いに独立に、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルアリール基である。Rは、二価のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルキルアリール基である。PCE211−Type分散剤のうち特に有用な分散剤は、PCE211(以下「211」)に指定される。ウォールボードにおいて有用であることが知られているこのシリーズの他のポリマー類には、PCE111が含まれる。PCE211−Type分散剤については、共に「Polyether−Containing Copolymer」という名称で、参照により本明細書に組み込まれる、Degussa Construction Polymersによる2005年6月14日に出願された米国特許出願第11/152678号明細書および2006年6月に出願された米国特許出願第11/152678号明細書の一部継続出願により十分に記載されている。
【0041】
PCE211 Type分散剤の分子量は、好ましくは約20,000〜約60,000ダルトンである。驚くべきことに、より分子量の大きい分散剤により、60,000ダルトンを超える分子量を有する分散剤よりも硬化時間の遅延が少なくなることがわかっている。一般に、側鎖長がより長くなると、全分子量が増大し、より優れた分散性が提供される。しかしながら、石膏についての試験は、50,000ダルトンを上回る分子量では分散剤の効果が低減することを示している。
【0042】
第1の繰り返し単位は、好ましくは全繰り返し単位の約30〜約99モル%、より好ましくは約40〜約80%を構成する。繰り返し単位の約1〜約70モル%、より好ましくは約10〜約60モル%が第2の繰り返し単位である。
【0043】
本発明で有用である別のクラスのポリカルボン酸塩化合物は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6777517号明細書に開示されており、以下「2641−Type分散剤」と称される。好ましくは、この分散剤は、式IV(a)、IV(b)およびIV(c)に示す少なとも3種の繰り返し単位を含む。
【0044】
【化4】

【0045】
この場合、アクリル酸繰り返し単位もマレイン酸繰り返し単位も共に存在し、それによりビニルエーテル基に対する酸基の比がより高くなる。Rは、水素原子または1〜20の炭素原子を有する脂肪族炭化水素ラジカルを示す。XはOMを示し、式中Mは水素原子、一価の金属カチオン、アンモニウムイオンまたは有機アミンラジカルである。Rは水素、1〜20の炭素原子を有する脂肪族炭化水素ラジカル、6〜14の炭素原子を有する脂環式炭化水素ラジカルでよく、これらは置換されていてもよい。Rは水素または1〜5の炭素原子を有する脂肪族炭化水素ラジカルであり、場合によって直鎖または分岐、飽和または不飽和である。Rは、構造単位がアクリル酸であるかメタクリル酸であるかに応じて水素またはメチル基である。Pは0〜3でもよい。Mは2〜4の整数を包含し、nは0〜200の整数を包含する。PCE211−Typeおよび2641−Type分散剤は、Degussa Construction Polymers,GmbH(ドイツ、トロストベルグ)によって製造され、Degussa Corp.(ジョージア州、ケネソー)によって米国で売り出されている。好ましい2641−Type分散剤は、MELFLUX 2641F、MELFLUX 2651FおよびMELFLUX 2500L分散剤としてDegussaによって販売されている。2641−Type分散剤(MELFLUXは、Degussa Construction Polymers,GmbHの登録商標である)は、先に参照により組み込まれた「Fast Drying Wallboard」という名称の米国特許出願第11/152661号明細書に、ウォールボードおよび石膏スラリーにおける使用について記載されている。
【0046】
さらに別の好ましい分散剤族は、Degussaによって販売され、「1641−Type分散剤」と称される。この分散剤については、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5798425号明細書により十分に記載されている。特に好ましい1641−Type分散剤は、式VIに示され、MELFLUX 1641 F分散剤としてDegussaによって売り出されている。この分散剤は主に2種類の繰り返し単位、1つはビニルエーテル、もう1つはビニルエステルから構成されている。式Vにおいて、mおよびnは、ポリマー鎖に沿ってランダムに位置することができる構成繰り返し単位のモル比である。
【0047】
【化5】

【0048】
これらの分散剤は、石膏との使用に特に適している。理論に束縛されることを望むわけではないが、第2の繰り返し単位の長いポリエーテル鎖が分散機能を実行する一方で、酸の繰り返し単位は半水化物結晶と結合すると考えられている。この分散剤は他の分散剤よりも遅延が少ないため、ウォールボードなどの石膏製品の作製プロセスに対して破壊性が低い。この分散剤は、任意の有効量で使用される。かなりの程度まで、選択される分散剤の量はスラリーの所望の流動性に依存する。水の量が減少するにつれて、一定のスラリー流動性を保持するためにより多くの分散剤が必要とされる。ポリカルボン酸塩分散剤は比較的高価な成分であるため、少量、好ましくは乾燥硫酸カルシウム材料の重量に基づき2重量%未満、より好ましくは1重量%未満を使用することが好ましい。好ましくは、硫酸カルシウム材料の乾燥重量に基づき約0.05%〜約0.5%の量で分散剤を使用する。より好ましくは、同じ基準で約0.01%〜約0.2%の量で分散剤を使用する。液状の分散剤を測定する際、分散剤の用量の計算においてはポリマー固形分のみを考慮し、分散剤からの水は、水/スタッコ比を計算する場合に考慮する。
【0049】
同じ繰り返し単位から、それらの異なる分布を用いて、多くのポリマーを作製することができる。ポリエーテル含有繰り返し単位に対する酸含有繰り返し単位の比は、電荷密度に直接関係している。好ましくは、コポリマーの電荷密度は、約300〜約3000μequiv.電荷/gコポリマーの範囲内にある。このクラスの分散剤における水の削減について試験した最も効果的な分散剤、MELFLUX 2651 Fが最も高い電荷密度を有することがわかっている。
【0050】
しかしながら、電荷密度の増加により分散剤の遅延効果がさらに増大することも見いだされている。MELFLUX 2500Lなど電荷密度の低い分散剤は、高い電荷密度を有するMELFLUX 2651 F分散剤ほど硬化時間を遅らせることはない。硬化時間の遅延は、水の少ないスラリーを構成する高電荷密度の分散剤により得られる効果の増大と共に増大するため、優れた流動性および合理的な硬化時間には、範囲の中央の電荷密度を保持する必要がある。より好ましくは、コポリマーの電荷密度は約600〜約2000μequiv.電荷/gコポリマーの範囲内にある。
【0051】
ポリカルボン酸塩分散剤の性能を高めるために、場合によって改質剤を石膏スラリーに添加する。この改質剤は、石膏スラリー中のポリカルボン酸塩分散剤と組み合わせた場合に分散剤の効果を向上させる任意の物質でよく、液体であっても固体であってもよい。改質剤は分散剤そのものではないが、分散剤がより効果的となることを可能にする働きをするものである。たとえば、一定の濃度の分散剤では、改質剤を使用した場合、改質剤なしの同じスラリーに比べてより良い流動性が得られる。
【0052】
改質剤の使用に関与する厳密な化学的性質については十分にわかっていないが、少なくとも2つの異なる機構が分散剤の効果の増大に関与している。たとえば、石灰は水溶液中のポリカルボン酸塩と反応して分散剤分子を真っ直ぐにする。対照的に、ソーダ灰は石膏表面に反応を示して、分散剤の効果の向上を助ける。改質剤は任意の機構を使用して、本発明の目的のために分散剤の効果を向上させることができる。理論的に言えば、これら2つの機構が独立に機能する場合、両方の機構の最大効果を利用しさらに優れた分散剤効果をもたらす改質剤の組合せを見出すことができる。
【0053】
好ましい改質剤には、セメント、生石灰または酸化カルシウムとして知られる石灰、水酸化カルシウムとしても知られる消石灰、炭酸ナトリウムとしても知られるソーダ灰、カリとしても知られている炭酸カリウム、ならびに他の炭酸塩、ケイ酸塩、水酸化物、ホスホン酸塩およびリン酸塩が含まれる。好ましい炭酸塩には、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが含まれる。ケイ酸ナトリウムは好ましいケイ酸塩である。
【0054】
石灰または消石灰を改質剤として使用する場合、乾燥硫酸カルシウム材料の重量に基づき約0.15%〜約1.0%の濃度で使用する。水の存在下では、石灰は素早く水酸化カルシウム、すなわち消石灰に変換され、スラリーのpHはアルカリ性となる。pHの急激な上昇により、スラリーの化学的性質に多くの変化が生じることがある。pHが上昇するにつれて、トリメタリン酸塩を含むいくつかの添加剤が分解する。水和に問題があることもあり、またウォールボードまたは石膏パネルを作製するためにこのスラリーを使用する場合、高いpHではペーパーボンドに問題がある。スラリーと接触する労働者にとって、強いアルカリ性の組成物は皮膚を刺激することがあり、接触を避けるべきである。約11.5のpHを上回ると、石灰はもはや流動性を増大させることはない。したがって、一部の用途では、この改質剤から最大性能を引き出すために約9を下回るpHを保持することが好ましい。床などの他の用途では、高いpHにはかびおよび白かびを最小限に抑える利点がある。アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが、床での使用には好ましい。
【0055】
他の好ましい改質剤には、炭酸塩、ホスホン酸塩、リン酸塩およびケイ酸塩が含まれる。好ましくは、これらの改質剤は、乾燥硫酸カルシウム材料の重量に基づき0.25%未満の量で使用される。これらの濃度を上回ると、改質剤の量の増大により分散剤の効果の低下が生じる。これらの分散剤は、好ましくは約0.05〜約0.2重量%の量で使用される。
【0056】
上に開示した改質剤の多くが、粉末石膏コーティングとして有利に適用される。このような場合には、被覆された粉末石膏は2つの機能、つまりスラリーの時期尚早な増粘を低減する機能、ならびに改質剤用のデリバリービヒクルを果たす。スラリーの水需要量は、二水和物充填剤の使用を可能にすることによって、ならびに分散剤の効果を高める改質剤を届けることによって低減される。得られるスラリーは、非常に効率的に水を利用する。
【0057】
分散剤の電荷密度は、改質剤が分散剤と相互作用する能力に影響を及ぼすこともわかっている。同じ繰り返し単位を有する分散剤の族を前提とすると、電荷密度がより高い分散剤では改質剤がより著しい効果の増大を生じる。一般的な傾向は、より高い電荷密度でより大きな効果の増強を得ることであるが、異なる繰り返し単位を有する分散剤の有効性を比較すると、同じ電荷密度でもこれらの分散剤の有効性は大幅に異なることがあることに留意することが重要である。したがって、その用途向けの特定の族の分散剤では、電荷密度の調整により流動性の低さを克服することができないことがある。
【0058】
異なる石膏媒体中で使用する場合、ポリカルボン酸塩分散剤と改質剤との反応が異なる反応を示すことも留意されている。理論に束縛されることを望むわけではないが、石膏中に存在する不純物が、分散剤および改質剤双方の効果に寄与すると考えられている。これらの不純物の中でスタッコ中に存在するのは、地理的な位置によって変わる塩類である。多くの塩類が硬化促進剤または硬化遅延剤であることが知られている。これらの同じ塩が、実現することができる流動度に影響を及ぼすことによって、ポリカルボン酸塩分散剤の効果を変化させることもある。PCE211−Type分散剤を含む一部の好ましいポリカルボン酸塩が、低塩のスタッコと共に最も良く利用されている。2641−Type分散剤など他の分散剤は、高塩のスタッコと共に使用するのに適している。
【0059】
分散剤および改質剤をそれらの性能が高まるように増強する流動性を使用した結果として、これらの添加剤なしで作製したスラリーと比較して、スラリーを流動化するために使用する水の量を削減することができる。スタッコ源、か焼技術、分散剤族、電荷密度および改質剤がすべて協力して所与の流動性のスラリーを生成することを理解しなければならない。実験室では、半水硫酸カルシウムを十分に水和させるために理論上必要とされるレベル近くに、レベルに等しくまたはレベルよりも下にさえ水のレベルを低減することが可能である。商業的な硬化において使用する場合、プロセスの考察ではこの程度まで水を削減することが可能とはならないことがある。
【0060】
石膏ボードを作製するために使用する場合、完成品の特性を向上させるための多くの添加剤が有用である。慣習的な量の添加剤が使用される。いくつかの添加剤の量は「lbs/MSF」として報告され、このlbs/MSFは1000平方フィートのボード当たりの添加剤のポンドを表す。
【0061】
本発明の一部の実施形態では、より軽量となるように、硬化石膏含有製品中に空隙をもたらすための発泡剤を使用する。これらの実施形態では、発泡硬化石膏製品を調製する際に有用であることが知られている従来の発泡剤のいずれかを使用することができる。多くのこのような発泡剤が周知であり、市販品、たとえば、ペンシルベニア州アンベラーのGEO Specialty Chemicals製のHYONIC石鹸製品を容易に入手可能である。発泡体および発泡石膏製品を調製するための好ましい方法が、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5683635号に開示されている。
【0062】
スラリーの流動性を向上させ、スラリーを作製するために使用する水の量を削減するために分散剤を使用する。ポリカルボン酸塩類、スルホン化メラミン類またはナフタレンスルホン酸塩を含めた任意の公知の分散剤が有用である。ナフタレンスルホン酸塩分散剤は別の好ましい分散剤であり、約0lb/MSF〜18lb/MSF(78.5g/m)、好ましくは約4lb/MSF(17.5g/m)〜約12lb/MSF(52.4g/m)の量で使用される。好ましいナフタレンスルホン酸塩はDAXAD分散剤(Dow Chemical、ミッドランド、ミシガン州)である。コーティング中で分散剤を使用する場合であっても、スラリーの流動性をさらに向上させるために追加の分散剤を有することが有利であることがある。
【0063】
製品の強度を高め、硬化石膏の垂れ下がり抵抗(sag resistance)を向上させるために、一部の実施形態では石膏スラリーにトリメタリン酸塩化合物を添加する。好ましくは、トリメタリン酸塩化合物の濃度は、硫酸カルシウム材料の重量に基づき約0.07%〜約2.0%である。トリメタリン酸塩化合物を含む石膏組成物は、共に参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6342284号明細書および第6632550号明細書に開示されている。例示的なトリメタリン酸塩には、ミズーリ州セントルイスのAstaris,LLC.,から入手可能なものなど、トリメタリン酸のナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩が含まれる。スラリーのpHを上昇させる石灰または他の改質剤と共にトリメタリン酸塩を使用する場合、注意を払わなければならない。約9.5のpHを上回ると、トリメタリン酸塩はその製品を強化する能力を失い、スラリーは大幅に遅延性となる。
【0064】
石膏スラリーを加えることになる特定の用途には典型的であるような他の添加剤も、スラリーに添加する。硬化遅延剤(最大約2lb./MSF(9.8g/m))または乾燥促進剤(最大約35lb./MSF(170g/m))を添加して、水和反応が起こる速度を変更する。「CSA」は、5%の糖と共にすりつぶし、この糖をカラメルにするために250°F(121℃)まで加熱した95%の硫酸カルシウム二水和物を含む硬化促進剤である。CSAは、オクラホマ州サウサードのUSG Corporationの工場から入手可能であり、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第3573947号明細書に従って作製される。硫酸カリウムは別の好ましい促進剤である。HRAは、硫酸カルシウム材料100ポンド(4.5kg)当たり糖が約5〜25ポンド(2.2〜11.4kg)の割合で糖と共に新たにすりつぶした硫酸カルシウム二水和物である。HRAは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第2078199号にさらに記載されている。これらは共に好ましい促進剤である。
【0065】
湿潤石膏促進剤またはWGAとして知られている別の促進剤も、好ましい促進剤である。湿潤石膏促進剤の使用および湿潤石膏促進剤を作製するための方法についての説明は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6409825号明細書に開示されている。この促進剤は、有機ホスホン酸化合物、リン酸塩含有化合物またはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含む。この特定の促進剤は、湿潤石膏促進剤を作製し、保存し、さらには使用前に長距離運搬することができるように相当な寿命を示し、長い期間にわたってその有効性を維持する。この湿潤石膏促進剤は、ボード製品1000平方フィート当たり約5〜約80ポンド(24.3〜390g/m)の範囲の量で使用される。
【0066】
かび、白かびおよび菌類の成長を抑えるためのウォールボードに対する他の潜在的添加剤は、殺生物剤である。選択する殺生物剤およびウォールボードの使用目的に応じて、被覆剤、石膏コアまたは双方に殺生物剤を添加することができる。殺生物剤の例には、ホウ酸、ピリチオン塩および銅塩が含まれる。被覆剤または石膏コアに殺生物剤を添加することができる。使用する際には、500ppm未満の量で殺生物剤を被覆剤中で使用する。ピリチオンは、2−メルカプトピリジン−N−オキシド、2−ピリジンチオール−1−オキシド(CAS登録番号1121−31−9)、1−ヒドロキシピリジン−2−チオンおよび1ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオン(CAS登録番号1121−30−8)を含むいくつかの名称で知られている。ピリチオンナトリウム(CAS登録番号3811−73−2)として知られているナトリウム誘導体(CNOSNa)は、特に有用であるこの塩の一実施形態である。Sodium OMADINEやZinc OMADINEなどのピリチオン塩は、コネティカット州ノーウォークのArch Chemicals,Inc.から市販されている。
【0067】
加えて、石膏組成物は、アルファー化デンプンや酸修飾デンプンなどのデンプンを場合によって含むことができる。ペーパーボンドを増大させ製品を強化するために、デンプンを約3〜約20lbs/MSF(14.6〜97.6g/m)の量で使用する。アルファー化デンプンを含むと、硬化し乾燥させた石膏鋳造物の強度が増加し、水分が増加した条件下において(たとえば、焼き石膏に対する水の比が高い場合に関して)紙の剥離の危険性が最小限に抑えられるまたは回避される。たとえば、少なくとも約185°F(85℃)の温度の水中で生デンプンを調理することや他の方法など、生デンプンをアルファー化する方法が当業者には理解されよう。アルファー化デンプンの適切な例には、Lauhoff Grain Companyから市販されているPCF1000デンプン、ならびに共にArcher Daniels Midland Company(イリノイ州ジケーター)から市販されているAMERIKOR818およびHQM PREGELデンプンが含まれるが、これらに限定されない。含まれている場合、アルファー化デンプンは任意の適切な量で存在する。たとえば、含まれている場合、アルファー化デンプンが硬化石膏組成物の約0.5重量%〜約10重量%の量で存在するように、使用する混合物にアルファー化デンプンを添加して硬化石膏組成物を形成することができる。USG95(United States Gypsum Company、イリノイ州、シカゴ)などのデンプンも、コア強度のために場合によって添加される。
【0068】
製品の特定の特性を修正するために、必要に応じて他の公知の添加剤を使用することもできる。ボード端部のペーパーボンドを向上させるためには、デキストロースなどの糖類を使用する。耐水性を得るためにはワックスエマルジョンまたはシロキサンを使用する。剛性が必要とされる場合には、一般にホウ酸を添加する。バーミキュライトの添加によって難燃性を向上させることができる。これらの、また他の公知の添加剤が、本発明のスラリーおよびウォールボード調合物において有用である。最大11lb./MSF(54g/m)の量のガラス繊維を場合によってスラリーに添加する。最大15lb./MSF(73.2g/m)の紙繊維もスラリーに添加する。完成した石膏ボードパネルの耐水性を向上させるために、最大90lb./MSF(0.439kg/m)の量のワックスエマルジョンを石膏スラリーに添加する。
【実施例1】
【0069】
多くのコーティングを粉末石膏に添加し、それらコーティングの、試料の流動性を向上させる能力について実験室で試験した。各試料で使用した成分および量を表Iに示す。
【0070】
40グラムの粉末石膏および表に示す水をHobart Model N−50ミキサに加え、その後添加剤を添加した。このミキサを低速で(設定1)5分間作動させた。分散剤の量は、0.6グラムの固形分をもたらすのに十分であった。この分散剤を小さいプラスチックのボートに量り分け、混合物に手で添加した。次いで、360グラムのスタッコをミキサに加え、15秒間浸漬させた。このスラリーを中速で(設定2)15秒間混合した。
【0071】
【表1】

【0072】
試験では、スラリーの一部を、直径2インチ(5cm)、高さ4インチ(10cm)のスランプシリンダ(Slump Cylinder)および7オンス(207cc)のカップに移した。シリンダの中身はシリンダの上面と面一にした。圧縮強度および温度上昇一式を測定する場合には、真ちゅう製の2インチの立方体の鋳型および絶縁カップに追加のスラリーを注ぎ入れた。スタッコの浸漬を開始してから60秒後、空気圧機構によりスランプシリンダを上昇させた。得られたパテの直径は少なくとも2方向で測定し、これら2つの読取り値の平均として記録した。「剛化時間」は、スタッコの浸漬を開始してから、スラリーを通して引き出されたビカー針が逆流しない明確な線を残すときまでの経過時間として測定される。硬化時間は、スラリーの水和の指標である。「ビカー硬化」は、スタッコの浸漬開始から、7オンスのカップの表面に位置する300グラムのビカー針が試料の底部まで貫通しなくなるまでの経過時間を指す。
【0073】
上記データに示すように、DEQUEST2006およびソーダ灰の添加各々により、対照試料を超えるパテ寸法の増大が示すように、スラリーの流動性が増大した。DEQUEST2006により、211(ポリカルボン酸塩)分散剤でもDaxad(ナフタレンスルホン酸塩)分散剤でもパテ寸法が増大した。
【実施例2】
【0074】
分散剤の遅延効果を低減するために促進剤を添加する追加の実験室試験を行った。スラリーは、発泡体の添加によるウォールボードスラリーにより類似したものにした。
120グラムの粉末石膏および表に示す水をHobart Model N−50ミキサに加え、その後添加剤を添加した。このミキサを低速で(設定1)5分間作動させた。分散剤の量は、1.8グラムの固形分をもたらすのに十分であった。この分散剤を小さいプラスチックのボートに量り分け、混合物に手で添加した。次いで、1080グラムのスタッコをミキサに加え、15秒間浸漬させた。このスラリーを中速で(設定2)15秒間混合した。
【0075】
【表2】

【0076】
硬化促進剤やデンプンなど他の乾燥添加剤は、好ましくはスラリーに入れる前にスタッコと混ぜ合わせる。湿潤添加剤は一般に、乾燥成分の導入前に直接ミキサに添加する。すべての成分を添加したら、得られたスラリーを均質なスラリーが得られるまで混合する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半水硫酸カルシウムと、水と、親水性の分散性コーティングで被覆された硫酸カルシウム二水和物とを含む石膏スラリーであって、前記コーティングは半水硫酸カルシウムよりも溶解度が小さい、石膏スラリー。
【請求項2】
前記水の温度が100°Fを超える、請求項1に記載のスラリー。
【請求項3】
前記コーティングが、リン酸塩、ホスホン酸塩、水酸化物および炭酸塩コーティングからなる群のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のスラリー。
【請求項4】
前記硫酸カルシウム二水和物が、ソーダ灰および消石灰からなる群のうちの少なくとも1つで処理されている、請求項1に記載のスラリー。
【請求項5】
前記コーティングが、硫酸カルシウムの総乾燥重量に基づき最大0.2%の割合で適用される、請求項1に記載のスラリー。
【請求項6】
前記被覆された硫酸カルシウム二水和物が、前記半水硫酸カルシウムと前記硫酸カルシウム二水和物との総合重量に基づき、最大約10重量%の量で存在する、請求項1に記載のスラリー。
【請求項7】
ポリカルボン酸塩分散剤をさらに含む、請求項1に記載のスラリー。
【請求項8】
前記コーティングが、前記分散剤の効果を高める改質剤を含む、請求項7に記載のスラリー。
【請求項9】
前記改質剤が、ソーダ灰、リン酸三ナトリウム、石灰、炭酸カルシウムおよびピロリン酸四ナトリウムからなる群のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載のスラリー。
【請求項10】
石膏スラリーを作製する方法であって、
硫酸カルシウム二水和物よりも溶解度が小さい親水性の分散性コーティングを選択することと、
硫酸カルシウム二水和物を前記コーティングで被覆することと、
前記被覆された硫酸カルシウム二水和物を半水硫酸カルシウムおよび水と組み合わせて前記スラリーを形成することを含む、方法。
【請求項11】
前記組み合わせるステップが混合することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記被覆するステップが、沈殿させること、吹き付けることまたは浸すことを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記スラリーにポリカルボン酸塩分散剤を添加することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティングが、前記分散剤の性能を高めるための改質剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ウォールボードパネルを作製する方法であって、
硫酸カルシウム二水和物よりも溶解度が小さく、かつポリカルボン酸塩分散剤の効果を高める親水性の分散性コーティング材料を選択することと、
硫酸カルシウム二水和物を前記コーティング材料で被覆することと、
前記被覆された硫酸カルシウム二水和物を半水硫酸カルシウム、前記ポリカルボン酸塩分散剤および水と組み合わせてスラリーを形成することと、
面材料上に前記スラリーを堆積させることと、
前記パネルを形成することと、
前記スラリーの硬化を可能にすることを含む、方法。
【請求項16】
前記コーティング材料が、炭酸塩類、水酸化物類、リン酸塩類およびホスホン酸塩類からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項15に記載のウォールボードパネル。
【請求項17】
前記コーティング材料が、前記半水硫酸カルシウムと硫酸カルシウム二水和物との総合乾燥重量に基づき最大0.2%の量で適用される、請求項15に記載のウォールボードパネル。
【請求項18】
前記硫酸カルシウム二水和物が、前記硫酸カルシウム二水和物と前記半水硫酸カルシウムとの総合重量の約3%〜約10%を含む、請求項15に記載のウォールボードパネル。

【公表番号】特表2009−505942(P2009−505942A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529135(P2008−529135)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/033297
【国際公開番号】WO2007/027530
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(596172325)ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー (100)
【Fターム(参考)】