説明

ウシ個体における脂肪交雑に関する遺伝的能力を評価する遺伝子マーカー及びそれを用いた脂肪交雑に関する遺伝的能力の評価方法

【課題】 本発明は、ウシ個体における脂肪交雑に関する遺伝的能力を評価するマーカー及びそれを用いた脂肪交雑に関する遺伝的能力の評価法を提供すること。
【解決手段】 ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域718番目の塩基が、少なくとも一方のアレルにおいてAに変異しているか否かを判定し、塩基がAに変異している場合に、その個体の脂肪交雑を増加させる遺伝的能力が、前記塩基がGであるウシ個体よりも高いと評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウシ個体における脂肪交雑に関する遺伝的能力を評価するマーカー及びそれを用いた脂肪交雑に関する遺伝的能力の評価法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウシの肉質や枝肉重量は価格に直結する経済形質である。特に、脂肪交雑は、筋肉組織内に脂肪が蓄積された状態をいうが、脂肪が霜降り状に細かく濃密に入ったものが良いとされており、柔らかさなどの肉質に大きく影響している。このような肉質や枝肉重量に関する遺伝的能力をどのように評価し、ウシの改良に役立てるかについては、育種価による方法などが考案され、用いられてきた。
【0003】
肉質や枝肉重量は複数の遺伝子が関与する量的形質と考えられる。もし、肉質や枝肉重量に比較的大きな影響を与える遺伝子またはゲノム領域(QTL)が特定でき、優良な遺伝子型の判別ができれば、それをウシの改良に利用することができる。
【0004】
これまでに、黒毛和種種雄牛の父方半きょうだい家系を用いたQTL解析により、ウシ4番染色体上に脂肪交雑に影響を与えるゲノム領域が存在することが報告されている(非特許文献1参照)。その後、別の黒毛和種種雄牛において4番染色体上の同じ領域に脂肪交雑QTLが確認され、ハプロタイプ比較と関連解析によって、このQTLが46cM付近の3.7Mbの領域内に存在することが明らかになった(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Mizoguchi et al. (2006) Animal Genetics 37, 51-54
【非特許文献2】Yokouchi et al. (2009) Animal Genetics 40, 945-951
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際に、どのような遺伝情報が優良型遺伝的形質を担っているのかわからないため、ウシ個体における脂肪交雑に関する遺伝的能力を評価する際、遺伝子型などの遺伝情報を用いることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、ウシ個体における脂肪交雑に関する遺伝的能力を評価するマーカー及びそれを用いた脂肪交雑に関する遺伝的能力の評価法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ウシ4番染色体上の脂肪交雑に影響を与えるゲノム領域を詳細に解析することにより、ウシpantophysin遺伝子の5’上流域にあるSNP(Single Nucleotide Polymorphism)のうち、S1部位(SNP27)におけるSNPが、脂肪交雑に影響すること、それによって、S1部位を含み、S1部位における塩基がAであるDNAが、脂肪交雑を増加させる遺伝子マーカーとして有用であることを見出した。加えて、SNP29、SNP30、ARS-BFGL-NGS-20161、BTB-00183730、BTA-70505-no-rsの各SNPが、S1部位のSNPと連鎖不平衡にあること、および、S1部位の塩基がAであるウシ個体の筋肉間脂肪組織では、pantophysin遺伝子の発現量が相対的に高くなっていたことから、S1部位がQTLの責任SNPであることを明らかにし、本発明の完成に至った。
【0009】
ここで、本明細書においてS1部位(SNP27)とは、ウシゲノム配列(Btau4.0)4番染色体の49100585番目に対応する位置であり、配列番号1において、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流側718番目に対応する位置である。
【0010】
また、SNP29はウシゲノム配列(Btau4.0)4番染色体の49101189番目に対応する位置であり、配列番号1において、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流側1322番目に対応する位置である。
【0011】
SNP30はウシゲノム配列(Btau4.0)4番染色体の49101317番目に対応する位置であり、配列番号1において、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流側1450番目に対応する位置である。
【0012】
ARS-BFGL-NGS-20161(NCBI AssayID:ss86290215)はウシゲノム配列(Btau4.0)4番染色体の49036518番目に対応する位置であり、配列番号2において、ウシpantophysin遺伝子のエクソン7の3’下流側27348番目に対応する位置である。
【0013】
BTB-00183730(NCBI Reference SNP:rs43398415)はウシゲノム配列(Btau4.0)4番染色体の49109714番目に対応する位置であり、配列番号3において、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流側9847番目に対応する位置である。
【0014】
BTA-70505-no-rs(NCBI Reference SNP:rs41602690)はウシゲノム配列(Btau4.0)4番染色体の49147499番目に対応する位置であり、配列番号4において、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流側47632番目に対応する位置である。
【0015】
ここで、本明細書では、pantophysin遺伝子において、pantophysinタンパク質をコードするDNA鎖をセンスDNA鎖とする。そのため、Btau4.0に記載のウシゲノム配列はアンチセンスDNA鎖となる。本明細書において、SNPの塩基は特記しない限りセンスDNA鎖の塩基によって示す。
【0016】
なお、本明細書で、エクソン1の5’上流側N番目とは、エクソン1の外側で隣接する塩基のうち、上流側の塩基を1番目とし、上流方向に向けて数えた番号を表す。
【0017】
なお、本明細書で、エクソン7の3’下流側N番目とは、エクソン7の外側で隣接する塩基のうち、下流側の塩基を1番目とし、下流方向に向けて数えた番号を表す。
【0018】
また、各SNPは、ウシゲノム配列(Btau4.0)4番染色体上の位置、および、配列番号1〜4で示されるpantophysin遺伝子のエクソン1から上流方向に数えた塩基番号、あるいは、pantophysin遺伝子のエクソン7から下流方向に数えた塩基番号によって特定されているが、それらの位置と対応する位置にあればよく、個体によりそれらSNPが含まれるゲノムDNA上に、塩基の欠失や挿入がある場合は、必ずしも位置を表す数字まで一致する必要はない。
【0019】
すなわち、本発明に係るDNAは、配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域718番目の塩基に対応する塩基を含み、当該含まれている塩基がAであることを特徴とする、単離されたDNAである。
【0020】
また、本発明に係るDNAは、配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域1322番目の塩基に対応する塩基を含み、当該含まれている塩基がGであることを特徴とする、単離されたDNAである。
【0021】
本発明に係るDNAは、配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域1450番目の塩基に対応する塩基を含み、当該含まれている塩基がTであることを特徴とする、単離されたDNAである。
【0022】
本発明に係るマーカーは、ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価するマーカーであって、配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域718番目、1322番目、1450番目、配列番号3における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域9847番目、配列番号4における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域47632番目、または配列番号2における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン7の3’下流域27348番目の塩基に対応する塩基を含むDNAから成る群から選択されることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る評価方法は、ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価する評価方法であって、ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域718番目の塩基に対応する塩基がAであるか否かを判定する工程を含む。
【0024】
本発明に係る評価方法は、ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価する評価方法であって、ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域1322番目の塩基に対応する塩基がGであるか否かを判定する工程を含む。
【0025】
本発明に係る評価方法は、ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価する評価方法であって、ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域1450番目の塩基に対応する塩基がTであるか否かを判定する工程を含む。
【0026】
本発明に係る評価方法は、ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価する評価方法であって、ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、配列番号2における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン7の3’下流域27348番目の塩基に対応する塩基がAであるか否かを判定する工程を含む。
【0027】
本発明に係る評価方法は、ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価する評価方法であって、ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、配列番号3における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域9847番目の塩基に対応する塩基がCであるか否かを判定する工程を含む。
【0028】
本発明に係る評価方法は、ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価する評価方法であって、ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、配列番号4における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域47632番目の塩基に対応する塩基がTであるか否かを判定する工程を含む。
【0029】
ここで、本発明に係る評価方法はいずれも、ウシ個体の脂肪交雑を増加させる遺伝的能力が、配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域718番目の塩基に対応する塩基がGであるウシ個体よりも高いと評価する工程をさらに含むことが好ましい。
【0030】
本発明に係る選択方法は、脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力の高いウシ個体を選択する選択方法であって、上記いずれかの評価方法によって、ウシ個体の当該遺伝的能力を評価する評価工程を含むことを特徴とする。この評価工程によって、遺伝的能力が高いと評価されたウシ個体を選択する工程をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ウシ個体における脂肪交雑に関する遺伝的能力を評価するマーカー及びそれを用いた脂肪交雑に関する遺伝的能力の評価法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態において、黒毛和種去勢牛19112頭の脂肪交雑等級上位集団406頭(脂肪交雑等級(BMS) 9以上)および下位集団412頭(BMS 4以下)を用いて、ウシ4番染色体上の26か所のSNPマーカーにおける、隣接するマーカーペアからなるQハプロタイプと脂肪交雑等級との関連性(A)、および各SNP間の連鎖不平衡(B)を解析した図である。
【図2】本発明の一実施形態における、ウシ4番染色体上のSNP20とSNP21を含む約0.7Mbの連鎖不平衡領域に存在する4つの遺伝子、および、優良型ハプロタイプ(Q)または非優良型ハプロタイプ(q)をホモで保有するウシ個体における、筋肉間脂肪組織中の各遺伝子発現量を示すグラフである(Nは個体数)。
【図3】本発明の一実施形態における、pantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域2kbに存在する6つのSNP(SNP27〜32)の配置、および、6つのSNPを含む1.8kbまたはSNP27のみを含む0.9kbの優良型ハプロタイプ(Q)と非優良型ハプロタイプ(q)における転写活性(A)、6つのSNPのうちSNP27のみをq型に置換した場合(-1.8k(Q)_S27q/pGL3)の転写活性(B)を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態における、黒毛和種集団におけるSNP27〜32の各SNP間の連鎖不平衡度を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態における、黒毛和種集団におけるSNP27と既知の各SNP間の連鎖不平衡度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。
【0034】
実施の形態及び実施例に特に説明が無い場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J. G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd. などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明がない場合、それらに添付のプロトコルを用いる。
【0035】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的に実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0036】
== ウシpantophysin遺伝子周辺のSNP ==
ウシゲノム配列(Btau4.0)において、センスDNA鎖のS1部位に対応する部位の塩基はCであり、従って、センスDNA鎖上のpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域のS1部位における塩基はGであるが、実施例に示すように、S1部位における塩基がAである場合、pantophysin遺伝子が高発現し、脂肪交雑の度合いが増加する。従って、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域のSNPのうちで、S1部位における塩基を決定すれば、脂肪交雑に関する遺伝的能力を評価したり、予測したりすることができる。なお、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域とは、ウシpantophysin遺伝子転写領域であるエクソン1の外側であって、上流側の領域を意味する。
【0037】
S1部位のSNPと連鎖不平衡にある、pantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域に存在するSNPとしては、例えば、SNP29、SNP30、BTB-00183730、BTA-70505-no-rsが挙げられる。また、S1部位のSNPと連鎖不平衡にあるpantophysin遺伝子のエクソン7の3’下流域に存在するSNPとしては、ARS-BFGL-NGS-20161が挙げられる。なお、ウシpantophysin遺伝子のエクソン7の3’下流域とは、ウシpantophysin遺伝子転写領域であるエクソン7の外側であって、下流側の領域を意味する。
【0038】
具体的には、S1部位における塩基がGである時、SNP29における塩基はCであり、SNP30における塩基はAであり、ARS-BFGL-NGS-20161における塩基はGであり、BTB-00183730における塩基はTであり、BTA-70505-no-rsにおける塩基はCである。一方、S1部位における塩基がAである時、SNP29における塩基はGであり、SNP30における塩基はTであり、ARS-BFGL-NGS-20161における塩基はAであり、BTB-00183730における塩基はCであり、BTA-70505-no-rsにおける塩基はTである。従って、ウシpantophysin遺伝子エクソン1の5’上流域のSNPのうちで、SNP29、SNP30、BTB-00183730、BTA-70505-no-rs、における塩基を決定し、変異があるか否かを調べることによって、あるいは、ウシpantophysin遺伝子エクソン7の3’下流域のARS-BFGL-NGS-20161における塩基を決定し、変異があるか否かを調べることによって、S1部位と同様に、脂肪交雑に関する遺伝的能力を評価したり、予測したりすることができる。
【0039】
==マーカー==
本発明において、ウシ個体の脂肪交雑の度合いを評価するためのマーカーは、ウシゲノム配列(Btau4.0)におけるS1部位を含む、単離されたウシゲノムDNAであってもよい。また、S1部位の塩基に変異が生じている場合、S1部位のSNPと連鎖不平衡にあるSNPにおいても高い確率で塩基の変異が生じるから、マーカーは、S1部位のSNPと連鎖不平衡にあるSNPを含む、単離されたウシゲノムDNAであってもよく、そのようなウシゲノムDNAとして、例えば、SNP29、SNP30、ARS-BFGL-NGS-20161、BTB-00183730、およびBTA-70505-no-rs等を含むゲノムDNAが挙げられる。
【0040】
マーカーがDNAの場合、上記SNPを検出するためには、SNPを有する塩基を決定すればよい。具体的には、塩基配列を直接決定してもよく、PCRを利用してもよく、RFLPを利用してもよく、特に検出方法は限定されない。SNPを直接検出する場合、配列を決定するゲノムDNAには、例えばpantophysin遺伝子全体が含まれる必要は無く、決定すべきSNPを有する塩基が含まれ、その塩基を決定することができれば十分である。
【0041】
==脂肪交雑に関する遺伝的能力の評価方法==
ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、S1部位における塩基がAであるかどうかは、S1部位の塩基そのものを決定することにより調べることができ、例えば、ウシ細胞からゲノムDNAを抽出し、S1部位の塩基を常法によって決定すればよい。
【0042】
S1部位の塩基がG/Aのヘテロ接合またはAのホモ接合であれば、そのウシの脂肪交雑の度合いを高める遺伝的能力が、Gのホモ接合の個体より高いと評価できる。さらに、Aのホモ接合であれば、G/Aのヘテロ接合である個体よりもそのウシの脂肪交雑の度合いを高める遺伝的能力がさらに高いと評価できる。
【0043】
ここで、S1部位の塩基は、S1部位の塩基そのものを決定して調べるのが最も正確であるが、S1部位と連鎖不平衡にあるSNPを調べ、その結果によって、S1部位の塩基を推定してもよい。S1部位と連鎖不平衡にあるSNPとして、例えば、SNP29、SNP30、ARS-BFGL-NGS-20161、BTB-00183730、およびBTA-70505-no-rs等が挙げられる。具体的には、ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、SNP29、SNP30、ARS-BFGL-NGS-20161、BTB-00183730、およびBTA-70505-no-rsにおける塩基が、それぞれG、T、A、C、およびTであるかどうか調べればよい。全てのSNPを調べる必要はなく、調べるのは、最低1つのSNPでよいが、S1部位の塩基をより正確に推定するために、SNP29、SNP30、ARS-BFGL-NGS-20161、BTB-00183730、およびBTA-70505-no-rsのうちいずれか2つ以上のSNPを調べることが好ましく、いずれか3つのSNPを調べることがより好ましく、いずれか4つのSNPを調べることがさらに好ましく、5つ全てのSNPを調べることが最も好ましい。
【0044】
すなわち、SNP29の塩基がC/Gのヘテロ接合またはGのホモ接合であれば、それぞれS1部位の塩基がG/Aのヘテロ接合またはAのホモ接合であると推定でき、そのウシの脂肪交雑の度合いを高める遺伝的能力が、SNP29の塩基がCのホモ接合の個体、あるいはS1部位の塩基がGのホモ接合の個体より高いと評価できる。SNP29の塩基がGのホモ接合であれば、SNP29の塩基がC/Gのヘテロ接合の個体、あるいはS1部位の塩基がG/Aのヘテロ接合の個体よりもそのウシの脂肪交雑の度合いを高める遺伝的能力がさらに高いと評価できる。
【0045】
SNP30の塩基がA/Tのヘテロ接合またはTのホモ接合であれば、それぞれS1部位の塩基がG/Aのヘテロ接合またはAのホモ接合であると推定でき、そのウシの脂肪交雑の度合いを高める遺伝的能力が、SNP30の塩基がAのホモ接合の個体、あるいはS1部位の塩基がGのホモ接合の個体より高いと評価できる。SNP30の塩基がTのホモ接合であれば、SNP30の塩基がA/Tのヘテロ接合の個体、あるいはS1部位の塩基がG/Aのヘテロ接合の個体よりもそのウシの脂肪交雑の度合いを高める遺伝的能力がさらに高いと評価できる。
【0046】
ARS-BFGL-NGS-20161の塩基がG/Aのヘテロ接合またはAのホモ接合であれば、それぞれS1部位の塩基がG/Aのヘテロ接合またはAのホモ接合であると推定でき、そのウシの脂肪交雑の度合いを高める遺伝的能力が、ARS-BFGL-NGS-20161の塩基がGのホモ接合の個体、あるいはS1部位の塩基がGのホモ接合の個体より高いと評価できる。ARS-BFGL-NGS-20161の塩基がAのホモ接合であれば、ARS-BFGL-NGS-20161の塩基がG/Aのヘテロ接合の個体、あるいはS1部位の塩基がG/Aのヘテロ接合の個体よりもそのウシの脂肪交雑の度合いを高める遺伝的能力がさらに高いと評価できる。
【0047】
BTB-00183730の塩基がT/Cのヘテロ接合またはCのホモ接合であれば、それぞれS1部位の塩基がG/Aのヘテロ接合またはAのホモ接合であると推定でき、そのウシの脂肪交雑の度合いを高める遺伝的能力が、BTB-00183730の塩基がTのホモ接合の個体、あるいはS1部位の塩基がGのホモ接合の個体より高いと評価できる。BTB-00183730の塩基がCのホモ接合であれば、BTB-00183730の塩基がT/Cのヘテロ接合の個体、あるいはS1部位の塩基がG/Aのヘテロ接合の個体よりもそのウシの脂肪交雑の度合いを高める遺伝的能力がさらに高いと評価できる。
【0048】
BTA-70505-no-rsの塩基がC/Tのヘテロ接合またはTのホモ接合であれば、それぞれS1部位の塩基がG/Aのヘテロ接合またはAのホモ接合であると推定でき、そのウシの脂肪交雑の度合いを高める遺伝的能力が、BTA-70505-no-rsの塩基がCのホモ接合の個体、あるいはS1部位の塩基がGのホモ接合の個体より高いと評価できる。BTA-70505-no-rsの塩基がTのホモ接合であれば、BTA-70505-no-rsの塩基がC/Tのヘテロ接合の個体、あるいはS1部位の塩基がG/Aのヘテロ接合の個体よりもそのウシの脂肪交雑の度合いを高める遺伝的能力がさらに高いと評価できる。
【0049】
さらに、以上の評価方法を用いて、多数のウシの中から、脂肪交雑の度合いを高める遺伝的能力の高いウシ個体を選択することができる。すなわち、各ウシ個体で、pantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域のS1部位おける塩基を決定し、一方または両方のアレルで、そのS1部位の塩基がAである個体を選択すればよい。または、各ウシ個体で、SNP29、SNP30、ARS-BFGL-NGS-20161、BTB-00183730、BTA-70505-no-rsのいずれかのSNPの塩基を決定し、一方または両方のアレルで、SNP29の塩基がG、SNP30の塩基がT、ARS-BFGL-NGS-20161の塩基がA、BTB-00183730の塩基がC、または、BTA-70505-no-rsの塩基がTである個体を選択すればよい。
【0050】
ここで、pantophysin遺伝子、pantophysin遺伝子エクソン1の5’上流域、および、pantophysin遺伝子エクソン7の3’下流域は、ウシの中で高度に保存されているため、本発明を実施する対象となるウシの種類は、黒毛和種、褐毛和種、ホルスタイン種など、特に限定されない。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び図を用いてより詳細に説明する。
【0052】
[1] DNAの抽出及びマイクロサテライトとSNPのタイピング法
ゲノムDNAは、精液、腎周囲脂肪もしくは血液より常法により抽出した。目的とするゲノム断片を特異的に増幅できるプライマーを用いて、PCR法により該当ゲノム領域を増幅した。マイクロサテライトについては、リバース側プライマーを蛍光標識し、PCR増幅産物をABI 3730 DNA アナライザー(アプライドバイオシステムズ社) で電気泳動後、GENESCANとGeneMapperソフトウェア (アプライドバイオシステムズ社)により解析することでタイピングを行った。SNPについては、Big Dye Terminator v.3.1 Cycle Sequencing kit(アプライドバイオシステムズ社)を用いてPCR増幅産物のダイレクトシークエンシングを行うことによって配列を決定し、SNPの検出およびタイピングを行った。各SNPに対して用いたプライマー(配列番号5〜66)を表1に記す。
【0053】
【表1】

【0054】
[2] 脂肪交雑の評価方法
脂肪交雑は、屠場に出荷されたウシ枝肉の格付け成績に記載された、脂肪交雑等級(Beef Marbling Standard、BMS)を用いた。
【0055】
[3] 脂肪交雑等級に関するSNPの統計学的処理
本実施例では、pantophysin遺伝子エクソン1の5’上流域のS1部位の塩基と、脂肪交雑等級に強い相関があることを示す。
【0056】
黒毛和種種雄牛2頭(AとB)のQTL解析によって検出されたウシ4番染色体上の脂肪交雑QTLは、46cM付近の3.7Mbの領域に存在することを、本願発明者らは報告している(Yokouchi et al. (2009) Animal Genetics 40, 945-951)。種雄牛AとBは、この領域に共通の優良型(Q)および非優良型(q)ハプロタイプを有していたので、さらに領域を絞り込むために、Qとqのハプロタイプ間でヘテロであるSNPを検索し、得られた26個のSNPマーカー(表2)を用いて、Qアレルの頻度と脂肪交雑との関連を調べた。
【0057】
【表2】

【0058】
黒毛和種去勢牛19,112頭の脂肪交雑等級上位集団(BMS≧9;上位9.6%)のうちの406頭 (同じ種雄牛の産子は5頭まで)と下位集団(BMS≦4;下位12.2%)のうちの412頭(同じ種雄牛の産子は5頭まで)をSNPマーカーでタイピングし、隣接する2つのSNPからなるハプロタイプ頻度をARLEQUIN program(http://lgb.unige.ch/arlequin/)を用いて推定した。各SNPについて、ハプロタイプ頻度推定のアルゴリズムが要求するHardy-Weinberg平衡から逸脱していないことを、フィッシャーの正確確率検定により確認した(p>0.05)。推定されたQハプロタイプ頻度と脂肪交雑との関連を2×2表のフィッシャーの正確確率検定で検定し、(表3「p値」参照)p値をプロットした結果を図1Aに示す。なお、Qハプロタイプとは、複数のウシ家系の解析により検出された、BMSを向上させる効果を有する共通ハプロタイプである。SNP20〜SNP21で相関が最も強く(表2のSNP20〜SNP21: p=2.01x10-5)、これらのSNPを含む約0.7Mbの連鎖不平衡領域(図1)に脂肪交雑QTLが存在すると考えられた。また、脂肪交雑等級上位集団と下位集団を合わせた集団における、各SNP間の連鎖不平衡係数(r2)を図1Bに示す。0.7Mbの領域に存在する各SNP間ではほとんどのSNP間でr2が0.2以上であり、互いに連鎖不平衡の関係にあることが認められた。
【0059】
【表3】

【0060】
この0.7Mbのヒトの相同領域には4つの遺伝子(ATXN7L1、FLJ23834、pantophysin、nampt)が存在していたが、FLJ23834はウシでナンセンス変異を生じており、筋肉及び脂肪組織での発現も検出されなかったため責任遺伝子ではないと考えられた。残りの3遺伝子についても、Qとqハプロタイプ間にアミノ酸置換を伴う変異は検出されなかった。しかしながら、表4に示すプローブ(配列番号67〜70)およびプライマー(配列番号71〜78)を用い、筋肉間脂肪組織における遺伝子発現量をQアレル保有個体とqアレル保有個体で比較したところ、pantophysin遺伝子では、Qホモ個体での発現量がqホモ個体よりも有意に増加していた(図2)。そこで、pantophysin遺伝子の5’上流2kbをさらに調べたところ、Qとqハプロタイプ間で異なる6個のSNPを検出した(表5)。
【0061】
【表4】

【表5】

【0062】
さらに、ウシ筋間脂肪組織由来脂肪前駆細胞株(Bovine Intramuscular Preadipocyte, BIP, Aso et al. (1995) Biochem Biophys Res Commun 213, 369-375)およびルシフェラーゼレポーターベクター(pGL3)を用いたLuciferase assayによって、6個のSNPとpantophysin遺伝子転写活性との関係について検討した。まず、SNP27〜32を含むpantophysin遺伝子のエクソン1の上流1.8kb(配列番号79)をLuciferaseに連結したコンストラクト、および、SNP27のみを含むエクソン1の上流0.9kb(配列番号80)をLuciferaseに連結したコンストラクトを調製した。具体的には、エクソン1の上流1.8kbあるいはエクソン1の上流0.9kbの各領域を、その両端に設計したプライマー(1.8kb用プライマー:配列番号81、82;0.9kb用プライマー:配列番号82、83)を用いてPCR法により増幅し、このPCR産物を、DNA Ligation kit(Takara 社)を用いてpGL3-Basic (Promega社)のマルチクローニングサイトに挿入した。
1.8kb-f: GGGGCTAGCAATTGGGGAGGGGAATACAG(配列番号81)
1.8kb-r/0.9kb-r: GGGAGATCTCCCCTTCCCTCAAGTCCAG(配列番号82)
0.9kb-f: GGGGCTAGCCAAAGGCCAGCATTTCATCT(配列番号83)
この組換えベクターをBIP細胞に導入し、Luciferase活性を測定したところ、Q型に対してq型では転写活性が63%低下した(図3A、P<0.05、N=4)。また、6個のSNP全てを含むエクソン1の上流1.8kbをLuciferaseに連結したコンストラクトについて、Q型のコンストラクトを鋳型とし、q型のSNPを含むプライマー(配列番号84、85)を用いたPCRによってコンストラクト全長を増幅することでSNP27のみをQ型からq型に置換すると(-1.8k(Q)_S27q/pGL3)、転写活性が59%低下した(図3B、P<0.05、N=3)。
primer-q-f: AGCCTGGTAGGCTGCAGTCCAT(配列番号84)
primer-q-r: CCTACCAGGCTCCTCCGTCCATGGGATTTT(配列番号85)
この転写活性の低下は、SNP27〜32を含むエクソン1の上流1.8kbをLuciferaseに連結したコンストラクトのq型と同レベルであった。これらの結果から、SNP27がこの脂肪交雑QTLの責任SNPであると考えられた。
【0063】
SNP27が、脂肪交雑に関する遺伝的能力を評価できることを確認するために、種雄牛の育種価とSNP27との相関を調べた。ここで、「育種価」とは種雄牛が有する経済形質に関する遺伝的能力の推定値であり、枝肉重量、ロース芯面積、バラの厚さ、皮下脂肪厚、歩留、および脂肪交雑の各経済形質について、後代の子牛の成績をもとにそれぞれ算出される。ここでは、脂肪交雑の優劣に関する等級であって、劣等から優秀まで順に1〜12で表わされる、脂肪交雑等級(BMS)を補正して得られた育種価について調べた。
【0064】
後代数20頭以上より育種価が算出されている兵庫県内の種雄牛102頭(H19〜H20年度のデータ、http://www.yumenet.tv/tajimausi/)を調べた結果、qホモ個体と比較してQホモ個体の育種価が有意に高かった(P=0.0032、表6)。また、後代数50頭以上より育種価が算出されている家畜改良事業団所有の種雄牛44頭(H20年までに収集されたデータより分析されたもの「肉用牛繁殖雌牛能力評価等対策事業による種雄牛評価値」http://liaj.lin.gr.jp/)においても、Qホモ個体の育種価が、qホモ個体の育種価より有意に高かった(P=0.025、表7)。
【0065】
【表6】

【表7】

【0066】
さらに、兵庫県内の黒毛和種種雄牛Cの息牛224頭を調べた結果、qホモ個体と比較してQホモ個体の育種価が有意に高く(P=0.00021、表7)、また、Qqヘテロ個体と比較してもQホモ個体の育種価が有意に高かった(P=0.0026、表8)。
【0067】
【表8】

【0068】
また、兵庫県内の種雄牛102頭(表5)、家畜改良事業団所有の種雄牛44頭(表6)、および兵庫県内の黒毛和種種雄牛C(表7)のいずれにおいても、qホモ個体と比較して、Qqヘテロ個体では育種価が高かった。
【0069】
兵庫県内の黒毛和種種雄牛Cの息牛224頭について、SNP27のQアレル数と育種価の関連を、相加効果と優性効果を説明変数とした回帰分析により調べたところ、Qアレルの効果は相加的であった (p=0.0016)。
【0070】
これらの結果から、ウシゲノム配列(Btau4.0)4番染色体の49100585に位置するSNP27は、脂肪交雑に関する遺伝的能力を評価するマーカーとして有用であり、これを用いて脂肪交雑に関する遺伝的能力を評価できることがわかった。
【0071】
さらに図1に示す解析に用いた黒毛和種集団について、図1Bの方法によりSNP27からSNP32までの連鎖不平衡度を算出したところ、SNP29(連鎖不平衡係数(r2)=0.97)およびSNP30(r2=0.96)は、SNP27と連鎖不平衡にあることが示された(図4)。また、別の黒毛和種集団(568頭、半きょうだい10頭以下)について、Bovine SNP50 BeadChip(イルミナ社)を用いてSNP27とpantophysin遺伝子の周辺に位置する既知のSNPとの連鎖不平衡度を算出したところ、ARS-BFGL-NGS-20161(連鎖不平衡係数(r2)=1.000)、BTB-00183730(r2=1.000)、BTA-70505-no-rs(r2=0.996)がSNP27と連鎖不平衡にあることが示された(図5)。従って、SNP29、SNP30、およびARS-BFGL-NGS-20161、BTB-00183730、BTA-70505-no-rsを、ウシ個体の脂肪交雑に関する遺伝的能力を評価するマーカーとして用いることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域718番目の塩基に対応する塩基を含み、
当該含まれている塩基がAであることを特徴とする、単離されたDNA。
【請求項2】
配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域1322番目の塩基に対応する塩基を含み、
当該含まれている塩基がGであることを特徴とする、単離されたDNA。
【請求項3】
配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域1450番目の塩基に対応する塩基を含み、
当該含まれている塩基がTであることを特徴とする、単離されたDNA。
【請求項4】
ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価するマーカーであって、
配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域718番目、1322番目、1450番目、配列番号3における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域9847番目、配列番号4における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域47632番目、または配列番号2における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン7の3’下流域27348番目の塩基に対応する塩基を含むDNAから成る群から選択されることを特徴とする、マーカー。
【請求項5】
ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価する評価方法であって、
前記ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域718番目の塩基に対応する塩基がAであるか否かを判定する工程を含む評価方法。
【請求項6】
ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価する評価方法であって、
前記ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域1322番目の塩基に対応する塩基がGであるか否かを判定する工程を含む評価方法。
【請求項7】
ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価する評価方法であって、
前記ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域1450番目の塩基に対応する塩基がTであるか否かを判定する工程を含む評価方法。
【請求項8】
ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価する評価方法であって、
前記ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、配列番号2における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン7の3’下流域27348番目の塩基に対応する塩基がAであるか否かを判定する工程を含む評価方法。
【請求項9】
ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価する評価方法であって、
前記ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、配列番号3における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域9847番目の塩基に対応する塩基がCであるか否かを判定する工程を含む評価方法。
【請求項10】
ウシ個体における脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力を評価する評価方法であって、
前記ウシ個体から単離されたDNAに対し、少なくとも一方のアレルにおいて、配列番号4における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域47632番目の塩基に対応する塩基がTであるか否かを判定する工程を含む評価方法。
【請求項11】
前記ウシ個体の脂肪交雑を増加させる遺伝的能力が、配列番号1における、ウシpantophysin遺伝子のエクソン1の5’上流域718番目の塩基に対応する塩基がGであるウシ個体よりも高いと評価する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項5〜10のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項12】
脂肪交雑の度合いを増加させる遺伝的能力の高いウシ個体を選択する選択方法であって、
請求項5〜11のいずれか1項に記載の評価方法によって、ウシ個体の当該遺伝的能力を評価する評価工程を含む選択方法。
【請求項13】
前記評価工程によって、遺伝的能力が高いと評価されたウシ個体を選択する工程をさらに含む。請求項12に記載の選択方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−105554(P2012−105554A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255051(P2010−255051)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(595038556)社団法人畜産技術協会 (10)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【Fターム(参考)】