ウッド型ゴルフクラブヘッドおよびウッド型ゴルフクラブ
【課題】スイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立することが可能なウッド型ゴルフクラブヘッド、および当該ウッド型ゴルフクラブヘッドを備えたウッド型ゴルフクラブを提供する。
【解決手段】規定のライ角にてソール部14を基準面βに接地させた状態において、基準面βに投影されるヘッド1の投影像に対して、フェース部側線分81と、バック側線分82と、ヒール側線分83と、トゥ側線分84とを含む長方形領域を設定し、当該長方形領域を9個の合同な要素長方形領域に分割する。このとき、フェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14の質量およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14の質量の各々は、トゥ側中央長方形領域93、ヒール側中央長方形領域95および中央長方形領域94の各々に対応するソール部14の質量よりも大きくなっている。
【解決手段】規定のライ角にてソール部14を基準面βに接地させた状態において、基準面βに投影されるヘッド1の投影像に対して、フェース部側線分81と、バック側線分82と、ヒール側線分83と、トゥ側線分84とを含む長方形領域を設定し、当該長方形領域を9個の合同な要素長方形領域に分割する。このとき、フェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14の質量およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14の質量の各々は、トゥ側中央長方形領域93、ヒール側中央長方形領域95および中央長方形領域94の各々に対応するソール部14の質量よりも大きくなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウッド型ゴルフクラブヘッドおよびウッド型ゴルフクラブに関し、より特定的には、スイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立可能なウッド型ゴルフクラブヘッドおよび当該ウッド型ゴルフクラブヘッドを備えたウッド型ゴルフクラブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、ヘッド体積の大型化に伴い、ヘッド慣性モーメントの増大により、オフセンターショットと呼ばれるスイートスポット(以下、SSという)を外したショットにおいて、飛距離ロスを軽減させる効果のあるものが主流となっている(たとえば非特許文献1および特許文献1〜2参照)。一方、ヘッド重心を前方に移動させる(重心深度を浅くする)と共に、低重心化が図ったウッド型ゴルフクラブヘッドも提案されている(たとえば特許文献3参照)。
【非特許文献1】“E500 DRIVER TECHNOLOGY”、[on line]、ミズノ株式会社ホームページ、[平成20年10月20日検索]、インターネット<URL:http://www.golfersland.net/jpx/driver/e500dr_tech.html>
【特許文献1】特開平7−284546号公報
【特許文献2】特開2005−278800号公報
【特許文献3】特開平11−319166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ヘッド慣性モーメントの増大だけを追い求めると、SSが高くなる。そのため、そのようなヘッドを備えたゴルフクラブを使用すると、SSよりも下目の打点が多くなり、低弾道でバックスピンの多い球筋となり、十分な飛距離が得られないという問題が生じる。また、トゥヒール方向の慣性モーメント(左右方向の慣性モーメントとも呼ばれる)が大きければ、必然的にヘッドシャフト中央線からヘッド重心までの距離(重心距離)が長くなり、シャフト軸まわりの慣性モーメントが大きくなる。その結果、そのようなヘッドを備えたゴルフクラブを使用すると、フェード系の打球で、いわゆる、つかまらない球になることが多いという問題もある。
【0004】
より詳細に説明すると、非特許文献1に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッド(ミズノ株式会社製、2007年2月発売モデル、JPX E500 Dirver)のように、ソール後方部に余剰質量を集中させた場合、縦方向の慣性モーメント(以下、縦慣性モーメントという)は大きくなるが、重心深度が深くなりがちで、SSが高くなるデメリットが生じる。具体的には、非特許文献1に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、縦慣性モーメントは2830g・cm2となっており十分大きいが、SSの地面からの高さ(以下、SS高さという)は38.5mmと高くなっている。
【0005】
また、特許文献1に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、ソール部中央部分に比べて周辺部分全体の肉厚を大きくする構成が採用されている。ソール部のトゥ側やヒール側にも質量が付加されていることにより、この場合、ウッド型ゴルフクラブヘッドには、様々なスイング、または、ライに対応するためにソール部のトゥヒール方向にはソールラウンドと呼ばれる丸みが付けられていることから重心位置が高くなる構成であリ、SSが高くならざるを得ない。
【0006】
さらに、特許文献2に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、縦慣性モーメントを大きくしながら、フェース面上において、フェース中心とSSとの距離を5%以内に近づける構成が提案されている。そして、その手法として、フェース面を地面から高く位置するように設計する方策が開示されている(図2、図3、図7および図8参照)。しかし、このような特異な形状を採用した場合、実際には、SS高さが高いために、SSよりも下部での打点によるインパクトが多くなる。その結果、飛び出しが低くバックスピンが多くなるため、本来のヘッドの飛距離性能を発揮することは難しい。これを回避するためには、ティーアップを高くして打つ必要があるが、自前のスイングとは異なるスイングを強いられるため、打ちづらいのが実情である。また、図14のように、バックサイドの後方端だけに質量を付加する場合も、上述の非特許文献1と同様にSS高さが高くなるという問題を生じる。
【0007】
一方、特許文献3に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、フェース面に近いソール面の内面上にトゥ部からヒール部に亘る棒状のウエイトを固着する構成を採用することにより、ヘッド重心を前方に移動させる(重心深度を浅くする)とともに、低重心化が図られている。この構成によれば、SS高さは低くなるものの、縦慣性モーメントが小さくなるという問題が生じる。
【0008】
以上のように、従来のウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、縦慣性モーメントの増大とSS高さの低減とを両立することが難しいという問題があった。そこで、本発明の目的は、スイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立することが可能なウッド型ゴルフクラブヘッド、および当該ウッド型ゴルフクラブヘッドを備えたウッド型ゴルフクラブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドは、打球面を有するフェース部と、フェース部に接続されたソール部と、シャフトに接続されるべきホーゼル部とを備えたウッド型ゴルフクラブヘッドである。このウッド型ゴルフクラブヘッドでは、規定のライ角にてソール部を基準面に接地させた状態において、基準面に投影されるゴルフクラブヘッドの投影像における、基準面に投影されたシャフト中央線に平行であって基準面に投影されたフェース部に接するフェース部側線分と、フェース部側線分とは反対側のバック側に接するバック側線分と、基準面に投影されたシャフト中央線に直交し、基準面に投影されたホーゼル部と本体部との接続部を通るヒール側線分と、ヒール側線分とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分とを含む長方形領域を設定し、当該長方形領域をフェース部側線分に平行な2本の線分およびヒール側線分に平行な2本の線分により9個の合同な要素長方形領域に分割した場合、要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域から見てフェース部側中央に位置するフェース部側中央長方形領域に対応するソール部の質量およびフェース部側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域に対応するソール部の質量の各々は、中央長方形領域から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域、中央長方形領域から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の質量よりも大きくなっている。
【0010】
上記一の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて好ましくは、上記フェース側中央長方形領域に対応するソール部の質量および上記バック側中央長方形領域に対応するソール部の質量の各々は、上記トゥ側中央長方形領域、上記ヒール側中央長方形領域および上記中央長方形領域の各々に対応するソール部の質量に比べて5g以上50g以下だけ大きくなっている。
【0011】
本発明の他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドは、打球面を有するフェース部と、フェース部に接続されたソール部と、シャフトに接続されるべきホーゼル部とを備えたウッド型ゴルフクラブヘッドである。このウッド型ゴルフクラブヘッドでは、規定のライ角にてソール部を基準面に接地させた状態において、基準面に投影されるゴルフクラブヘッドの投影像における、基準面に投影されたシャフト中央線に平行であって基準面に投影されたフェース部に接するフェース部側線分と、フェース部側線分とは反対側のバック側に接するバック側線分と、基準面に投影されたシャフト中央線に直交し、基準面に投影されたホーゼル部と本体部との接続部を通るヒール側線分と、ヒール側線分とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分とを含む長方形領域を設定し、当該長方形領域をフェース部側線分に平行な2本の線分およびヒール側線分に平行な2本の線分により9個の合同な要素長方形領域に分割した場合、要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域から見てフェース部側中央に位置するフェース部側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚およびフェース部側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚の各々は、中央長方形領域から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域、中央長方形領域から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚よりも大きくなっている。なお、本願明細書、特許請求の範囲および要約書において、ソール部の最大肉厚とは、ソール部の所定の領域における肉厚の最大値をいう。
【0012】
上記他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて好ましくは、上記フェース側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚および上記バック側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚の各々は、上記トゥ側中央長方形領域、上記ヒール側中央長方形領域および上記中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚に比べて1.3mm以上大きくなっている。
【0013】
本発明のさらに他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドは、打球面を有するフェース部と、フェース部に接続されたソール部と、シャフトに接続されるべきホーゼル部とを備えたウッド型ゴルフクラブヘッドである。このウッド型ゴルフクラブヘッドでは、規定のライ角にてソール部を基準面に接地させた状態において、基準面に投影されるゴルフクラブヘッドの投影像における、基準面に投影されたシャフト中央線に平行であって基準面に投影されたフェース部に接するフェース部側線分と、フェース部側線分とは反対側のバック側に接するバック側線分と、基準面に投影されたシャフト中央線に直交し、基準面に投影されたホーゼル部と本体部との接続部を通るヒール側線分と、ヒール側線分とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分とを含む長方形領域を設定し、当該長方形領域をフェース部側線分に平行な2本の線分およびヒール側線分に平行な2本の線分により9個の合同な要素長方形領域に分割した場合、要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域から見てフェース部側中央に位置するフェース部側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚は、中央長方形領域から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域、中央長方形領域から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚よりも大きくなっている。さらに、中央長方形領域から見てフェース部側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域に対応するソール部は、当該ソール部に質量を付加するための付属物を含んでいる。
【0014】
上記さらに他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて好ましくは、上記フェース部側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚は、上記トゥ側中央長方形領域、上記ヒール側中央長方形領域および上記中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚に比べて1.3mm以上大きくなっている。
【0015】
上記さらに他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて好ましくは、ソール部は、上記付属物により5g以上50g以下の質量が付加されている。
【0016】
上記本発明に係るウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて好ましくは、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚は0.4mm以上1.0mm未満である。
【0017】
本発明に係るウッド型ゴルフクラブは、上記本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドを備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、フェース側中央長方形領域に対応するソール部の質量およびバック側中央長方形領域に対応するソール部の質量の各々が、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の質量よりも大きく設定されている。そのため、本発明の一の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドによれば、スイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立することが可能なウッド型ゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0019】
また、本発明の他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、フェース側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚およびバック側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚の各々が、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚よりも大きく設定されている。そのため、本発明の他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドによれば、上記一の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドと同様に、スイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立することが可能なウッド型ゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0020】
また、本発明のさらに他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、フェース部側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚が、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚よりも大きく設定されている。さらに、本発明のさらに他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、バック側中央長方形領域に対応するソール部が、ソール部に質量を付加するための付属物を含んでいる。そのため、本発明のさらに他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドによれば、上記一の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドと同様に、スイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立することが可能なウッド型ゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0021】
また、本発明のウッド型ゴルフクラブにおいては、上述のようなウッド型ゴルフクラブヘッドを備えている。そのため、飛距離の向上と飛距離の安定化を両立することが可能なウッド型ゴルフクラブを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0023】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態である実施の形態1について説明する。図1は、実施の形態1におけるゴルフクラブの構成を示す概略図である。また、図2は、図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをクラウン部側から見た概略平面図である。また、図3は、図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをフェース部側から見た概略平面図である。また、図4は、図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをソール部側から見た概略平面図である。また、図5は、図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをトゥ部側から見た概略平面図である。また、図6は、図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドを基準面に投影し、ソール部側から見た状態を示す概略図である。
【0024】
図1を参照して、本実施の形態におけるウッド型ゴルフクラブとしてのゴルフクラブ9は、ウッド型ゴルフクラブヘッドとしてのヘッド1と、ヘッド1のホーゼル部13に接続されたシャフト2と、シャフト2においてヘッド1に接続された側とは反対側の端部に配置されたグリップ部3とを備えている。
【0025】
図2〜図5を参照して、ヘッド1は、打球面11Aを有するフェース部11と、フェース部11に接続されたソール部14と、フェース部11に接続され、ソール部14の上面を覆うように配置されたクラウン部12と、シャフト2(図1参照)に接続されるべきホーゼル部13とを備えている。そして、図5を参照して、ヘッド1の重心22からフェース部11に下ろした垂線と、フェース部の表面との交点がSS21となる。
【0026】
ここで、本実施の形態におけるソール部14の質量配分について説明する。図5および図6を参照して、規定のライ角にてソール部14を基準面βに接地させた状態において、基準面βに投影されるヘッド1の投影像を考える。このとき、基準面βに投影されたシャフト中央線αに平行であって基準面βに投影されたフェース部11に接するフェース部側線分81と、フェース部側線分81とは反対側のバック側に接するバック側線分82と、基準面βに投影されたシャフト中央線αに直交し、基準面βに投影されたホーゼル部13とヘッド1の本体部との接続部を通るヒール側線分83と、ヒール側線分83とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分84とを含む長方形領域を設定する。さらに、当該長方形領域をフェース部側線分81に平行な2本の線分85,86およびヒール側線分83に平行な2本の線分87,88により9個の合同な要素長方形領域に分割する。
【0027】
このとき、本実施の形態におけるソール部14においては、上記要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域94から見てフェース部11側中央に位置するフェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14の質量およびフェース部11側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域92に対応するソール部14の質量の各々は、中央長方形領域94から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域93、中央長方形領域94から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域95および中央長方形領域94の各々に対応するソール部14の質量よりも大きくなっている。
【0028】
次に、本実施の形態におけるヘッド1およびゴルフクラブ9が奏する効果について説明する。図7は、ウッド型ゴルフクラブヘッドにおける慣性モーメントについて説明するための概略斜視図である。
【0029】
本発明者は、従来困難であったスイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立することが可能なウッド型ゴルフクラブヘッドの構成に関して詳細な検討を行なった。その結果、以下のような方策を案出し、本発明に想到した。
【0030】
すなわち、図5を参照して、上記非特許文献1に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドようにソール部のバック側(図5の左側)の質量を大きくする構成を採用した場合、縦慣性モーメント(図7の「クラウン・ソール方向の重心回り慣性モーメント」に相当)は大きくなる。しかし、図5を参照して、重心22がバック側に移動するためSS21が上昇し、SS高さが高くなる。一方、上記特許文献3に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドのように、フェース面に近いソール面の内面上にトゥ部からヒール部に亘る棒状のウエイトを固着する構成を採用した場合、重心22はフェース側(図5の右側)に移動するため、SS高さは低くなる。しかし、上記非特許文献1の場合とは逆に、縦慣性モーメントは小さくなる。また、特許文献1に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドのように、ソール部中央部分に比べて周辺部分全体の肉厚を大きくする構成を採用した場合、ウッド型ゴルフクラブヘッドには、様々なスイング、または、ライに対応するためにソール部のトゥヒール方向にはソールラウンドと呼ばれる丸みが付けられていることから、重心から近い位置であるソール部のトゥ側やヒール側にも質量が付加される。そのため、重心位置が高くなってSS高さが高くなる。つまり、余剰質量をソール部の1箇所に集中させた場合や周辺部全体に配置した場合、本願発明の目標であるスイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することとの両立を達成することはできない。
【0031】
これに対し、本実施の形態におけるヘッド1においては、重心から近い位置であるトゥ側中央長方形領域93、中央長方形領域94およびヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の質量をできるだけ軽くする一方、フェース部側中央長方形領域91およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14の質量を重くする構成を採用している。これにより、上記本実施の形態におけるヘッド1においては、SS高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することが両立されている。
【0032】
もちろん、フェース部11やクラウン部12などに関しては、強度が許す限り、肉厚を薄めに設計して余剰質量を増大させ、フェース部側中央長方形領域91およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14への質量付加の量を増やすことが、本発明の効果をより大きくする。また、ソール部14に関しても、フェース部側中央長方形領域91およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14に質量を集中させることが好ましい。より具体的には、フェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14に質量およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14に質量の各々は、上記9個の要素長方形のうちフェース部側中央長方形領域91およびバック側中央長方形領域92を除く7個の要素長方形の各々に対応するソール部14の質量よりも大きくなっていることが好ましい。
【0033】
(実施の形態2)
次に、本発明の一実施の形態である実施の形態2について説明する。図8は、実施の形態2におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略断面図である。なお、図8は、図3における線分A−Aに沿う断面図に相当する。
【0034】
図8を参照して、実施の形態2におけるヘッド1は、ソール部14の厚みの分布において特徴を有するもので、実施の形態2におけるヘッド1は、基本的には実施の形態1におけるヘッド1と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。
【0035】
具体的には、図6および図8を参照して実施の形態2におけるヘッド1においては、フェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14であるフェース部側中央部141の最大肉厚およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14であるバック側中央部143の最大肉厚の各々は、トゥ側中央長方形領域93に対応するソール部14の最大肉厚、ヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の最大肉厚および中央長方形領域94に対応するソール部14である中央部142の最大肉厚の各々よりも大きくなっている。
【0036】
これにより、本実施の形態におけるヘッド1では、トゥ側中央長方形領域93、中央長方形領域94およびヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の質量を軽くする一方、フェース部側中央長方形領域91およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14の質量を重くすることが容易となっている。その結果、上記本実施の形態におけるヘッド1においては、SS高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することが両立されている。
【0037】
(実施の形態3)
次に、本発明の一実施の形態である実施の形態3について説明する。図9は、実施の形態3におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略断面図である。なお、図9は、図3における線分A−Aに沿う断面図に相当する。
【0038】
図9を参照して、実施の形態3におけるヘッド1は、基本的には実施の形態1におけるヘッド1と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。そして、実施の形態3におけるヘッド1は、ソール部14の厚みの分布および付属物による質量の付加において特徴を有している。
【0039】
具体的には、図6および図9を参照して実施の形態3におけるヘッド1においては、フェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14であるフェース部側中央部141の最大肉厚は、トゥ側中央長方形領域93に対応するソール部14の最大肉厚、ヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の最大肉厚および中央長方形領域94に対応するソール部14である中央部142の最大肉厚の各々よりも大きくなっている。さらに、実施の形態3におけるヘッド1においては、バック側中央長方形領域92に対応するソール部14であるバック側中央部143は、ソール部14に質量を付加するための付属物としてのバッヂ31およびビス32を含んでいる。すなわち、バック側中央部143には、ビス32によりバッヂ31が設置されている。
【0040】
これにより、本実施の形態におけるヘッド1では、トゥ側中央長方形領域93、中央長方形領域94およびヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の質量を軽くする一方、フェース部側中央長方形領域91およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14の質量を重くすることが容易となっている。その結果、上記本実施の形態におけるヘッド1においては、SS高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することが両立されている。
【0041】
なお、図9の場合とは逆に、フェース部側中央部141に対してビス32によりバッヂ31を設置し、バック側中央部143の最大肉厚を、トゥ側中央長方形領域93に対応するソール部14の最大肉厚、ヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の最大肉厚および中央長方形領域94に対応するソール部14である中央部142の最大肉厚の各々よりも大きくする構成を採用することも可能であるが、ゴルフクラブの使用時においてヘッド1の前方側に相当するフェース部側中央部141が地面に衝突し、バッヂ31およびビス32が破損あるいは脱落することを回避する観点から、上記図9の構成を採用することがより好ましい。
【0042】
(実施の形態4)
次に、本発明の一実施の形態である実施の形態4について説明する。図10は、実施の形態4におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略平面図である。なお、図10は、ヘッドをソール部側から見た平面図に相当する。
【0043】
図10を参照して、実施の形態4におけるヘッド1は、基本的には実施の形態1におけるヘッド1と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。そして、実施の形態4におけるヘッド1は、ソール部14の形状において特徴を有している。
【0044】
具体的には、図10を参照して実施の形態4におけるヘッド1においては、ソール部14のフェース部側周辺部(図6のフェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14の領域が含まれる)に複数の凹部である溝14Bが形成されている。これにより、溝14Bが形成された領域の表面積が増加するため、フェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14の質量を重くすることが容易となっている。その結果、上記本実施の形態におけるヘッド1においては、SS高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することが両立されている。
【0045】
なお、図10においては、凹部である溝14Bが形成されることにより表面積を増加させる構成について説明したが、凹部に代えて凸部を形成してもよいし、凹部および凸部の両方を形成してもよい。
【0046】
また、上記実施の形態において説明したソール部14の厚みの分布、付属物による質量の付加、ソール部14の形状などは、本願の請求項1におけるソール部の各領域同士の質量の関係が満たされる限り、自由に組み合わせて実施することができる。
【実施例1】
【0047】
以下、本発明の実施例1について説明する。本発明の有効性を実証するために、シミュレーション検証を行った。シミュレーションの手順は以下のとおりである。
【0048】
ヘッドのロフト角αは10°とした。また、ベースとなるヘッドの質量を170g、175gおよび180gの3種類とし、縦慣性モーメントは、それぞれ2365g・cm2、2433g・cm2および2500g・cm2とした。そして、ソール部のフェース側である点F、バック側である点Bおよびセンター部である点Cに質量を付加することにより、種々のヘッドを想定した。
【0049】
図11は、本シミュレーション検証における質量付加の位置を示す図である。図11において、横軸はフェース・バック方向の軸に該当し、縦軸はクラウン・ソール方向の軸に該当する。図11を参照して、点Pは、質量を付加しない状態での重心の位置を表している。また、質量の付加は、点F、点Cおよび点Bに対する集中荷重とした。質量付加を含めたヘッド質量は、190gに統一した。フェースは、バルジおよびロールを共に有さず、フラットであるとして計算を行った。点Bの位置は、通常ソールの抜けを向上させるためロールアップと呼ばれる形状が採用されることを考慮して、点Fおよび点Cと比較して、地面(基準面)から高い位置とした。そして、ベースとなるヘッドおよび所定の位置に質量を付加したヘッドについて、SS高さおよび縦慣性モーメントを算出した。なお、点P、点F、点Cおよび点Bの位置(図11における座標)を表1に示す。表1において、数値の単位はmmである。
【0050】
【表1】
【0051】
次に、上記シミュレーションの結果について説明する。図12は、実施例1におけるシミュレーションの結果を示す図である。図12において横軸はSS高さ、縦軸は縦慣性モーメントを示している。つまり、図12において、データ点が右側に移動することを抑制しつつ、上側に移動させることが本発明の目標である。また、表2に、実施例1におけるシミュレーションの具体的データを示す。
【0052】
【表2】
【0053】
図12を参照して、従来の一般的なソール均等肉厚のモデルを模した点F、点Cおよび点Bの3箇所への質量付加を実施したFCBに対して、後方側(バック側)に質量付加を集中させることにより重心深度が深くなったB(非特許文献1や特許文献2の構成に相当)は、縦慣性モーメントが増大しているものの、SS高さが大幅に高くなっている。一方、前方側(フェース部側)に質量付加を集中させることにより重心深度が浅くなったF(特許文献3の構成に相当)は、FCBに対して、SS高さが低くなっているものの、縦慣性モーメントの増大が小さくなっている。つまり、従来の一般的なソール均等肉厚のモデルのヘッドや、上記非特許文献および特許文献に開示されたように前方側または後方側に質量を付加する従来の手法では、図12の破線で示すSS高さと縦慣性モーメントとの関係の範囲内でのみ、SS高さおよび縦慣性モーメントの調整が可能となる。
【0054】
これに対し、本発明の実施例に相当するFBにおいては、FCBに対してSS高さの上昇を僅かな上昇に抑制しつつ、大幅な縦慣性モーメントの増大を達成している。つまり、本発明に含まれるFBの構成を有するヘッドによれば、図12の破線で示すSS高さと縦慣性モーメントとの関係の範囲を離れて、SS高さの上昇を抑制しつつ、大幅に縦慣性モーメントを増大させることができる。以上の結果より、本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドによれば、スイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立可能であることが確認された。
【0055】
なお、図12から、質量付加のない状態でのヘッド質量が軽ければ軽いほど、本発明の効果が大きいことが分かる。これは、質量付加のない状態でのヘッド質量が軽いほど、余剰質量、つまり質量付加の量を多くできるため、SS高さの上昇を抑制しつつ、縦慣性モーメントを大きくできることに起因する。したがって、フェース部やクラウン部などに関しては、強度が許す限り、肉厚を薄めに設計して余剰質量を増大させ質量付加の量を増やすことが、本発明の効果をより大きくするといえる。
【0056】
ここで、別途実施されたロボット試験の結果から、ヘッドスピード42m/sの場合、SS高さが0.5mm異なると、すなわち同一ヘッドにおいて打点の高さが0.5mm異なると、飛び出し角が0.1°異なり、バックスピンの回転数が20rpm異なることが分かっている。また、同様に、縦慣性モーメントが50g・cm2異なると、打点がSSから15mm上下に外れたときに、ボール初速は0.02m/s、バックスピンの回転数は20rpm程度異なることが分かっている(飛び出し角はほとんど変わらない)。一方、バックスピンの回転数の差が20rpm未満の場合、実際に使用される場合におけるスイングのばらつきを考慮すると、上級者であってさえも、性能差を体感することは難しい。つまり、SS高さにおいて0.5mm以上の差、縦慣性モーメントにおいて50g・cm2以上の差であれば、ヘッドの性能に明確な差を及ぼしているといえる。
【0057】
これを考慮して上記シミュレーションの結果を検討すると、ソール前方部および後方部への質量付加の値がそれぞれ5gである場合(質量付加のない状態でのヘッド質量が180gの場合)においても、180−FBは、180−FCBに対して縦慣性モーメントが60g・cm2増加しているとともに、180−Bに対してSS高さが0.5mm低くなっている。したがって、ソール前方部および後方部への質量付加の値がそれぞれ5g以上であれば、ヘッドの性能に明確な差を及ぼしているといえる。なお、上記シミュレーションにおいては、質量付加を含めたヘッドの質量を190gとした場合について検討したが、当該質量が190gよりも多い場合や少ない場合でも、同様の検討結果が得られる。
【0058】
一方、ウッド型ゴルフクラブにおいて、フェアウェイウッドである9番ウッドの長さは41インチ程度である。そして、スイングバランスを確保する観点から、ヘッドの質量はウッド型ゴルフクラブの中でも最も大きい部類に入り、220g〜230g程度とされるのが一般的である。ここで、質量付加のない状態のヘッドの質量は、必要な強度を考慮すると、130g程度まで低減することができる。したがって、ソール前方部および後方部への質量付加の値は、それぞれ50g以下とすることが現実的である。
【0059】
さらに、現在主流のドライバーヘッドの体積は400cm3〜460cm3程度であり、強度を確保する観点から、ヘッドの質量は170g程度以上必要である。また、ドライバーの長さは通常44〜47インチ程度であり、スイングバランスを確保する観点から、ヘッドの質量は、175g〜210g程度とされるのが一般的である。したがって、ドライバーヘッドを想定すると、ソール前方部および後方部への質量付加の値は、それぞれ20g以下とすることが現実的である。
【0060】
以上より、本発明におけるフェース側中央長方形領域に対応するソール部の質量およびバック側中央長方形領域に対応するソール部の質量の各々は、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の質量に比べて5g以上50g以下だけ大きくすることが好ましく、ドライバーヘッドを想定すると5g以上20g以下だけ大きくすることが好ましいといえる。また、ソール部に付属物を設置することにより、ソール部に質量を付加する場合、当該付属物により5g以上50g以下の質量が付加されることが好ましく、ドライバーヘッドを想定すると5g以上20g以下の質量が付加されることが好ましいといえる。
【0061】
また、一般的なドライバーヘッドの寸法において、ソール部のトゥ・ヒール方向における長さおよび前後方向(フェース・バック方向)における長さは、いずれも90mm程度である。したがって、上記要素長方形1つあたりのソール部の面積は9cm2程度である。そして、ヘッドを構成する一般的な材料のうち、最も比重が小さい部類に入るチタン合金製のヘッドを想定すると、肉厚1mmあたりの質量は4.05gである。ここで、上述のように、ソール前方部および後方部への質量付加の値は5g以上とすることが好ましく、これを達成するためには1.23mm以上の肉厚の増量が必要である。したがって、ソール前方部および後方部における肉厚はソール中央部に対して1.3mm程度大きくすることが望ましい。以上より、フェース側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚やバック側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚は、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚に比べて1.3mm以上大きくなっていることが好ましいといえる。
【0062】
また、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚が1mm以上である場合、質量付加の量を十分に確保することが難しくなる場合がある。一方、当該領域に対応するソール部の最大肉厚が0.4mm未満である場合、鋳造性と強度の観点から肉厚が不十分となるおそれがある。したがって、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚は0.4mm以上1.0mm未満であることが好ましい。
【実施例2】
【0063】
以下、本発明の実施例2について説明する。本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドを実際に作製し、その性能を確認する実験を行なった。実験の手順は以下の通りである。
【0064】
まず、上記実施の形態2において説明した図8の構成を有するヘッドおよび実施の形態3において説明した図9の構成を有するヘッドを作製した(実施例AおよびB)。これらのヘッド1は、フェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14のうち、フェース部11との接続領域(最も前方の領域)を含む領域の肉厚を、トゥ側中央長方形領域93に対応するソール部14の最大肉厚、ヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の最大肉厚および中央長方形領域94に対応するソール部14の最大肉厚の各々よりも大きく設定したものであり、重心から遠く、さらに、基準面に近い位置への質量の付加を可能にすることにより本発明の作用効果を顕著に得ることができる、特に好ましい構成を有している。一方、比較のため、本発明の範囲外のヘッドも作製した(比較例)。図13は、比較例におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略断面図である。なお、図13においては、図8および図9の対応する部分を、図8および図9において用いた参照番号に100を加えた参照番号で示し、その説明を省略する。比較例におけるヘッドは、上記非特許文献1に開示されたヘッドであり、ソール部の後方側(バック側)にバッヂ131およびビス132が設置され、当該領域に質量が付加されている。ここで、実施例A(図8に対応)のヘッド1において、フェース部側中央部141の最大肉厚は3.0mm、中央部142の最大肉厚は0.9mm、バック側中央部143の最大肉厚は2.4mmとした。また、実施例B(図9に対応)のヘッド1において、フェース部側中央部141の最大肉厚は3.0mm、中央部142の最大肉厚は0.9mmとし、バッヂ31の質量は4.3g、ビス32の質量は2.3gとした。また、比較例(図13に対応)のヘッド101において、フェース部側中央長方形領域191および中央長方形領域194の各々に対応するソール部114の最大肉厚はいずれも1.4mmとし、バッヂ131の質量は2.0g、ビス132の質量は2.0gとした。そして、上記実施例および比較例のヘッドをシャフトに接続し、実打試験を実施した。
【0065】
次に、試験結果について説明する。表3は、実打試験に供されたクラブおよびヘッドの特性を示す表である。
【0066】
【表3】
【0067】
表3を参照して、比較例に比べて、実施例においてはクラブ長さを0.5インチ長いものを採用した。これは、ヘッドスピードの上昇による飛距離アップを目的としたものである。そのため、スイングバランスを確保する目的で実施例のヘッド質量は、比較例に比べて5g小さくなっている。ヘッド重量の減少は、可能な質量付加を小さくするため、縦慣性モーメントの増大とSS高さの抑制には不利であるが、本発明の実施例においては、このような厳しい制約の下、比較例と同等の縦慣性モーメントを確保しつつ、SS高さを低くすることに成功していることが分かる。そして、実打試験の結果、比較例に比べて、実施例のヘッドを備えたクラブによれば、球の上がりやすさ、およびスイートエリアの広さを十分に体感できることが確認された。
【0068】
なお、本願において、ソール部とは、ウッド型ゴルフクラブヘッドを規定のライ角にてソール部を基準面に接地させた状態において、基準面に投影される領域(図6参照)のうちホーゼル部を除く領域をいう。すなわち、従来のサイド部を含めてソール部と定義する。ここで、近年のヘッドの形状においては、従来のようなサイド部が存在しない場合も多いが、本発明は、サイド部の有無にかかわらず、種々の形状のウッド型ゴルフクラブヘッドに適用可能である。
【0069】
また、本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドを構成する材料としては、チタン合金、ステンレススチール、カーボン繊維強化樹脂など種々の材料を採用することができる。さらに、バッヂ、ビスなどの付属品を構成する材料としても、同様にステンレススチール、アルミ合金、樹脂など種々の材料を採用することができるが、たとえばバッヂの材料としてアルミ合金、ビスの材料としてJIS規格SUS303ステンレススチールなどを採用することにより、外観上の高級感を付与することが可能である。
【0070】
また、本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドを構成する材料として、フェース側中央長方形領域に対応するソール部および/またはバック側中央長方形領域に対応するソール部にタングステン合金などの比重の重い材料を採用してもよい。これにより、薄肉化が可能となり、一層SS高さの低減し、縦慣性モーメントの増大させることが可能となる。
【0071】
さらに、上記本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて、各長方形領域に対応するソール部の質量は、各長方形領域に対応するソール部を切断等により切り出して、その質量を測定することにより確認することができる。このとき、切断等により失われたソール部の領域に対応する質量を補完して(失われた質量を測定値に加えて)、各長方形領域に対応するソール部の質量は算出される。また、ソール部とソール部以外の部位(フェース部、クラウン部)との分離は、基準面に投影されたソール部の外縁に対応する部位から基準面に平行にヘッドを切断することにより実施される。
【0072】
さらに、ソール部の最大肉厚に特徴を有する本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドは、上記実施例のほか、最大肉厚が本発明の要件を満たしているものであればよく、たとえば上記各長方形領域に対応するソール部の肉厚が局部的に薄くなっていることにより、本発明の範囲外となるものではない。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドおよびウッド型ゴルフクラブは、飛距離の向上と飛距離の安定化とを両立することが求められるウッド型ゴルフクラブヘッドおよびウッド型ゴルフクラブに、特に有利に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施の形態1におけるゴルフクラブの構成を示す概略図である。
【図2】図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをクラウン部側から見た概略平面図である。
【図3】図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをフェース部側から見た概略平面図である。
【図4】図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをソール部側から見た概略平面図である。
【図5】図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをトゥ部側から見た概略平面図である。
【図6】図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドを基準面に投影し、ソール部側から見た状態を示す概略図である。
【図7】ウッド型ゴルフクラブヘッドにおける慣性モーメントについて説明するための概略斜視図である。
【図8】実施の形態2におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略断面図である。
【図9】実施の形態3におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略断面図である。
【図10】実施の形態4におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略平面図である。
【図11】シミュレーション検証における質量付加の位置を示す図である。
【図12】実施例1におけるシミュレーションの結果を示す図である。
【図13】比較例におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 ヘッド、2 シャフト、3 グリップ部、9 ゴルフクラブ、11 フェース部、11A 打球面、12 クラウン部、13 ホーゼル部、14 ソール部、14B 溝、21 スイートスポット(SS)、22 重心、31 バッヂ、32 ビス、81 フェース部側線分、82 バック側線分、83 ヒール側線分、84 トゥ側線分、85〜88 線分、91 フェース部側中央長方形領域、92 バック側中央長方形領域、93 トゥ側中央長方形領域、94 中央長方形領域、95 ヒール側中央長方形領域、141 フェース部側中央部、142 中央部、143 バック側中央部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウッド型ゴルフクラブヘッドおよびウッド型ゴルフクラブに関し、より特定的には、スイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立可能なウッド型ゴルフクラブヘッドおよび当該ウッド型ゴルフクラブヘッドを備えたウッド型ゴルフクラブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、ヘッド体積の大型化に伴い、ヘッド慣性モーメントの増大により、オフセンターショットと呼ばれるスイートスポット(以下、SSという)を外したショットにおいて、飛距離ロスを軽減させる効果のあるものが主流となっている(たとえば非特許文献1および特許文献1〜2参照)。一方、ヘッド重心を前方に移動させる(重心深度を浅くする)と共に、低重心化が図ったウッド型ゴルフクラブヘッドも提案されている(たとえば特許文献3参照)。
【非特許文献1】“E500 DRIVER TECHNOLOGY”、[on line]、ミズノ株式会社ホームページ、[平成20年10月20日検索]、インターネット<URL:http://www.golfersland.net/jpx/driver/e500dr_tech.html>
【特許文献1】特開平7−284546号公報
【特許文献2】特開2005−278800号公報
【特許文献3】特開平11−319166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ヘッド慣性モーメントの増大だけを追い求めると、SSが高くなる。そのため、そのようなヘッドを備えたゴルフクラブを使用すると、SSよりも下目の打点が多くなり、低弾道でバックスピンの多い球筋となり、十分な飛距離が得られないという問題が生じる。また、トゥヒール方向の慣性モーメント(左右方向の慣性モーメントとも呼ばれる)が大きければ、必然的にヘッドシャフト中央線からヘッド重心までの距離(重心距離)が長くなり、シャフト軸まわりの慣性モーメントが大きくなる。その結果、そのようなヘッドを備えたゴルフクラブを使用すると、フェード系の打球で、いわゆる、つかまらない球になることが多いという問題もある。
【0004】
より詳細に説明すると、非特許文献1に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッド(ミズノ株式会社製、2007年2月発売モデル、JPX E500 Dirver)のように、ソール後方部に余剰質量を集中させた場合、縦方向の慣性モーメント(以下、縦慣性モーメントという)は大きくなるが、重心深度が深くなりがちで、SSが高くなるデメリットが生じる。具体的には、非特許文献1に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、縦慣性モーメントは2830g・cm2となっており十分大きいが、SSの地面からの高さ(以下、SS高さという)は38.5mmと高くなっている。
【0005】
また、特許文献1に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、ソール部中央部分に比べて周辺部分全体の肉厚を大きくする構成が採用されている。ソール部のトゥ側やヒール側にも質量が付加されていることにより、この場合、ウッド型ゴルフクラブヘッドには、様々なスイング、または、ライに対応するためにソール部のトゥヒール方向にはソールラウンドと呼ばれる丸みが付けられていることから重心位置が高くなる構成であリ、SSが高くならざるを得ない。
【0006】
さらに、特許文献2に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、縦慣性モーメントを大きくしながら、フェース面上において、フェース中心とSSとの距離を5%以内に近づける構成が提案されている。そして、その手法として、フェース面を地面から高く位置するように設計する方策が開示されている(図2、図3、図7および図8参照)。しかし、このような特異な形状を採用した場合、実際には、SS高さが高いために、SSよりも下部での打点によるインパクトが多くなる。その結果、飛び出しが低くバックスピンが多くなるため、本来のヘッドの飛距離性能を発揮することは難しい。これを回避するためには、ティーアップを高くして打つ必要があるが、自前のスイングとは異なるスイングを強いられるため、打ちづらいのが実情である。また、図14のように、バックサイドの後方端だけに質量を付加する場合も、上述の非特許文献1と同様にSS高さが高くなるという問題を生じる。
【0007】
一方、特許文献3に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、フェース面に近いソール面の内面上にトゥ部からヒール部に亘る棒状のウエイトを固着する構成を採用することにより、ヘッド重心を前方に移動させる(重心深度を浅くする)とともに、低重心化が図られている。この構成によれば、SS高さは低くなるものの、縦慣性モーメントが小さくなるという問題が生じる。
【0008】
以上のように、従来のウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、縦慣性モーメントの増大とSS高さの低減とを両立することが難しいという問題があった。そこで、本発明の目的は、スイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立することが可能なウッド型ゴルフクラブヘッド、および当該ウッド型ゴルフクラブヘッドを備えたウッド型ゴルフクラブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドは、打球面を有するフェース部と、フェース部に接続されたソール部と、シャフトに接続されるべきホーゼル部とを備えたウッド型ゴルフクラブヘッドである。このウッド型ゴルフクラブヘッドでは、規定のライ角にてソール部を基準面に接地させた状態において、基準面に投影されるゴルフクラブヘッドの投影像における、基準面に投影されたシャフト中央線に平行であって基準面に投影されたフェース部に接するフェース部側線分と、フェース部側線分とは反対側のバック側に接するバック側線分と、基準面に投影されたシャフト中央線に直交し、基準面に投影されたホーゼル部と本体部との接続部を通るヒール側線分と、ヒール側線分とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分とを含む長方形領域を設定し、当該長方形領域をフェース部側線分に平行な2本の線分およびヒール側線分に平行な2本の線分により9個の合同な要素長方形領域に分割した場合、要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域から見てフェース部側中央に位置するフェース部側中央長方形領域に対応するソール部の質量およびフェース部側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域に対応するソール部の質量の各々は、中央長方形領域から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域、中央長方形領域から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の質量よりも大きくなっている。
【0010】
上記一の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて好ましくは、上記フェース側中央長方形領域に対応するソール部の質量および上記バック側中央長方形領域に対応するソール部の質量の各々は、上記トゥ側中央長方形領域、上記ヒール側中央長方形領域および上記中央長方形領域の各々に対応するソール部の質量に比べて5g以上50g以下だけ大きくなっている。
【0011】
本発明の他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドは、打球面を有するフェース部と、フェース部に接続されたソール部と、シャフトに接続されるべきホーゼル部とを備えたウッド型ゴルフクラブヘッドである。このウッド型ゴルフクラブヘッドでは、規定のライ角にてソール部を基準面に接地させた状態において、基準面に投影されるゴルフクラブヘッドの投影像における、基準面に投影されたシャフト中央線に平行であって基準面に投影されたフェース部に接するフェース部側線分と、フェース部側線分とは反対側のバック側に接するバック側線分と、基準面に投影されたシャフト中央線に直交し、基準面に投影されたホーゼル部と本体部との接続部を通るヒール側線分と、ヒール側線分とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分とを含む長方形領域を設定し、当該長方形領域をフェース部側線分に平行な2本の線分およびヒール側線分に平行な2本の線分により9個の合同な要素長方形領域に分割した場合、要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域から見てフェース部側中央に位置するフェース部側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚およびフェース部側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚の各々は、中央長方形領域から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域、中央長方形領域から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚よりも大きくなっている。なお、本願明細書、特許請求の範囲および要約書において、ソール部の最大肉厚とは、ソール部の所定の領域における肉厚の最大値をいう。
【0012】
上記他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて好ましくは、上記フェース側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚および上記バック側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚の各々は、上記トゥ側中央長方形領域、上記ヒール側中央長方形領域および上記中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚に比べて1.3mm以上大きくなっている。
【0013】
本発明のさらに他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドは、打球面を有するフェース部と、フェース部に接続されたソール部と、シャフトに接続されるべきホーゼル部とを備えたウッド型ゴルフクラブヘッドである。このウッド型ゴルフクラブヘッドでは、規定のライ角にてソール部を基準面に接地させた状態において、基準面に投影されるゴルフクラブヘッドの投影像における、基準面に投影されたシャフト中央線に平行であって基準面に投影されたフェース部に接するフェース部側線分と、フェース部側線分とは反対側のバック側に接するバック側線分と、基準面に投影されたシャフト中央線に直交し、基準面に投影されたホーゼル部と本体部との接続部を通るヒール側線分と、ヒール側線分とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分とを含む長方形領域を設定し、当該長方形領域をフェース部側線分に平行な2本の線分およびヒール側線分に平行な2本の線分により9個の合同な要素長方形領域に分割した場合、要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域から見てフェース部側中央に位置するフェース部側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚は、中央長方形領域から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域、中央長方形領域から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚よりも大きくなっている。さらに、中央長方形領域から見てフェース部側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域に対応するソール部は、当該ソール部に質量を付加するための付属物を含んでいる。
【0014】
上記さらに他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて好ましくは、上記フェース部側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚は、上記トゥ側中央長方形領域、上記ヒール側中央長方形領域および上記中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚に比べて1.3mm以上大きくなっている。
【0015】
上記さらに他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて好ましくは、ソール部は、上記付属物により5g以上50g以下の質量が付加されている。
【0016】
上記本発明に係るウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて好ましくは、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚は0.4mm以上1.0mm未満である。
【0017】
本発明に係るウッド型ゴルフクラブは、上記本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドを備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、フェース側中央長方形領域に対応するソール部の質量およびバック側中央長方形領域に対応するソール部の質量の各々が、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の質量よりも大きく設定されている。そのため、本発明の一の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドによれば、スイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立することが可能なウッド型ゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0019】
また、本発明の他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、フェース側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚およびバック側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚の各々が、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚よりも大きく設定されている。そのため、本発明の他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドによれば、上記一の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドと同様に、スイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立することが可能なウッド型ゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0020】
また、本発明のさらに他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、フェース部側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚が、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚よりも大きく設定されている。さらに、本発明のさらに他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドにおいては、バック側中央長方形領域に対応するソール部が、ソール部に質量を付加するための付属物を含んでいる。そのため、本発明のさらに他の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドによれば、上記一の局面におけるウッド型ゴルフクラブヘッドと同様に、スイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立することが可能なウッド型ゴルフクラブヘッドを提供することができる。
【0021】
また、本発明のウッド型ゴルフクラブにおいては、上述のようなウッド型ゴルフクラブヘッドを備えている。そのため、飛距離の向上と飛距離の安定化を両立することが可能なウッド型ゴルフクラブを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0023】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態である実施の形態1について説明する。図1は、実施の形態1におけるゴルフクラブの構成を示す概略図である。また、図2は、図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをクラウン部側から見た概略平面図である。また、図3は、図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをフェース部側から見た概略平面図である。また、図4は、図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをソール部側から見た概略平面図である。また、図5は、図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをトゥ部側から見た概略平面図である。また、図6は、図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドを基準面に投影し、ソール部側から見た状態を示す概略図である。
【0024】
図1を参照して、本実施の形態におけるウッド型ゴルフクラブとしてのゴルフクラブ9は、ウッド型ゴルフクラブヘッドとしてのヘッド1と、ヘッド1のホーゼル部13に接続されたシャフト2と、シャフト2においてヘッド1に接続された側とは反対側の端部に配置されたグリップ部3とを備えている。
【0025】
図2〜図5を参照して、ヘッド1は、打球面11Aを有するフェース部11と、フェース部11に接続されたソール部14と、フェース部11に接続され、ソール部14の上面を覆うように配置されたクラウン部12と、シャフト2(図1参照)に接続されるべきホーゼル部13とを備えている。そして、図5を参照して、ヘッド1の重心22からフェース部11に下ろした垂線と、フェース部の表面との交点がSS21となる。
【0026】
ここで、本実施の形態におけるソール部14の質量配分について説明する。図5および図6を参照して、規定のライ角にてソール部14を基準面βに接地させた状態において、基準面βに投影されるヘッド1の投影像を考える。このとき、基準面βに投影されたシャフト中央線αに平行であって基準面βに投影されたフェース部11に接するフェース部側線分81と、フェース部側線分81とは反対側のバック側に接するバック側線分82と、基準面βに投影されたシャフト中央線αに直交し、基準面βに投影されたホーゼル部13とヘッド1の本体部との接続部を通るヒール側線分83と、ヒール側線分83とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分84とを含む長方形領域を設定する。さらに、当該長方形領域をフェース部側線分81に平行な2本の線分85,86およびヒール側線分83に平行な2本の線分87,88により9個の合同な要素長方形領域に分割する。
【0027】
このとき、本実施の形態におけるソール部14においては、上記要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域94から見てフェース部11側中央に位置するフェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14の質量およびフェース部11側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域92に対応するソール部14の質量の各々は、中央長方形領域94から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域93、中央長方形領域94から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域95および中央長方形領域94の各々に対応するソール部14の質量よりも大きくなっている。
【0028】
次に、本実施の形態におけるヘッド1およびゴルフクラブ9が奏する効果について説明する。図7は、ウッド型ゴルフクラブヘッドにおける慣性モーメントについて説明するための概略斜視図である。
【0029】
本発明者は、従来困難であったスイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立することが可能なウッド型ゴルフクラブヘッドの構成に関して詳細な検討を行なった。その結果、以下のような方策を案出し、本発明に想到した。
【0030】
すなわち、図5を参照して、上記非特許文献1に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドようにソール部のバック側(図5の左側)の質量を大きくする構成を採用した場合、縦慣性モーメント(図7の「クラウン・ソール方向の重心回り慣性モーメント」に相当)は大きくなる。しかし、図5を参照して、重心22がバック側に移動するためSS21が上昇し、SS高さが高くなる。一方、上記特許文献3に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドのように、フェース面に近いソール面の内面上にトゥ部からヒール部に亘る棒状のウエイトを固着する構成を採用した場合、重心22はフェース側(図5の右側)に移動するため、SS高さは低くなる。しかし、上記非特許文献1の場合とは逆に、縦慣性モーメントは小さくなる。また、特許文献1に開示されたウッド型ゴルフクラブヘッドのように、ソール部中央部分に比べて周辺部分全体の肉厚を大きくする構成を採用した場合、ウッド型ゴルフクラブヘッドには、様々なスイング、または、ライに対応するためにソール部のトゥヒール方向にはソールラウンドと呼ばれる丸みが付けられていることから、重心から近い位置であるソール部のトゥ側やヒール側にも質量が付加される。そのため、重心位置が高くなってSS高さが高くなる。つまり、余剰質量をソール部の1箇所に集中させた場合や周辺部全体に配置した場合、本願発明の目標であるスイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することとの両立を達成することはできない。
【0031】
これに対し、本実施の形態におけるヘッド1においては、重心から近い位置であるトゥ側中央長方形領域93、中央長方形領域94およびヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の質量をできるだけ軽くする一方、フェース部側中央長方形領域91およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14の質量を重くする構成を採用している。これにより、上記本実施の形態におけるヘッド1においては、SS高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することが両立されている。
【0032】
もちろん、フェース部11やクラウン部12などに関しては、強度が許す限り、肉厚を薄めに設計して余剰質量を増大させ、フェース部側中央長方形領域91およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14への質量付加の量を増やすことが、本発明の効果をより大きくする。また、ソール部14に関しても、フェース部側中央長方形領域91およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14に質量を集中させることが好ましい。より具体的には、フェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14に質量およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14に質量の各々は、上記9個の要素長方形のうちフェース部側中央長方形領域91およびバック側中央長方形領域92を除く7個の要素長方形の各々に対応するソール部14の質量よりも大きくなっていることが好ましい。
【0033】
(実施の形態2)
次に、本発明の一実施の形態である実施の形態2について説明する。図8は、実施の形態2におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略断面図である。なお、図8は、図3における線分A−Aに沿う断面図に相当する。
【0034】
図8を参照して、実施の形態2におけるヘッド1は、ソール部14の厚みの分布において特徴を有するもので、実施の形態2におけるヘッド1は、基本的には実施の形態1におけるヘッド1と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。
【0035】
具体的には、図6および図8を参照して実施の形態2におけるヘッド1においては、フェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14であるフェース部側中央部141の最大肉厚およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14であるバック側中央部143の最大肉厚の各々は、トゥ側中央長方形領域93に対応するソール部14の最大肉厚、ヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の最大肉厚および中央長方形領域94に対応するソール部14である中央部142の最大肉厚の各々よりも大きくなっている。
【0036】
これにより、本実施の形態におけるヘッド1では、トゥ側中央長方形領域93、中央長方形領域94およびヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の質量を軽くする一方、フェース部側中央長方形領域91およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14の質量を重くすることが容易となっている。その結果、上記本実施の形態におけるヘッド1においては、SS高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することが両立されている。
【0037】
(実施の形態3)
次に、本発明の一実施の形態である実施の形態3について説明する。図9は、実施の形態3におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略断面図である。なお、図9は、図3における線分A−Aに沿う断面図に相当する。
【0038】
図9を参照して、実施の形態3におけるヘッド1は、基本的には実施の形態1におけるヘッド1と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。そして、実施の形態3におけるヘッド1は、ソール部14の厚みの分布および付属物による質量の付加において特徴を有している。
【0039】
具体的には、図6および図9を参照して実施の形態3におけるヘッド1においては、フェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14であるフェース部側中央部141の最大肉厚は、トゥ側中央長方形領域93に対応するソール部14の最大肉厚、ヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の最大肉厚および中央長方形領域94に対応するソール部14である中央部142の最大肉厚の各々よりも大きくなっている。さらに、実施の形態3におけるヘッド1においては、バック側中央長方形領域92に対応するソール部14であるバック側中央部143は、ソール部14に質量を付加するための付属物としてのバッヂ31およびビス32を含んでいる。すなわち、バック側中央部143には、ビス32によりバッヂ31が設置されている。
【0040】
これにより、本実施の形態におけるヘッド1では、トゥ側中央長方形領域93、中央長方形領域94およびヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の質量を軽くする一方、フェース部側中央長方形領域91およびバック側中央長方形領域92に対応するソール部14の質量を重くすることが容易となっている。その結果、上記本実施の形態におけるヘッド1においては、SS高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することが両立されている。
【0041】
なお、図9の場合とは逆に、フェース部側中央部141に対してビス32によりバッヂ31を設置し、バック側中央部143の最大肉厚を、トゥ側中央長方形領域93に対応するソール部14の最大肉厚、ヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の最大肉厚および中央長方形領域94に対応するソール部14である中央部142の最大肉厚の各々よりも大きくする構成を採用することも可能であるが、ゴルフクラブの使用時においてヘッド1の前方側に相当するフェース部側中央部141が地面に衝突し、バッヂ31およびビス32が破損あるいは脱落することを回避する観点から、上記図9の構成を採用することがより好ましい。
【0042】
(実施の形態4)
次に、本発明の一実施の形態である実施の形態4について説明する。図10は、実施の形態4におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略平面図である。なお、図10は、ヘッドをソール部側から見た平面図に相当する。
【0043】
図10を参照して、実施の形態4におけるヘッド1は、基本的には実施の形態1におけるヘッド1と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。そして、実施の形態4におけるヘッド1は、ソール部14の形状において特徴を有している。
【0044】
具体的には、図10を参照して実施の形態4におけるヘッド1においては、ソール部14のフェース部側周辺部(図6のフェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14の領域が含まれる)に複数の凹部である溝14Bが形成されている。これにより、溝14Bが形成された領域の表面積が増加するため、フェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14の質量を重くすることが容易となっている。その結果、上記本実施の形態におけるヘッド1においては、SS高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することが両立されている。
【0045】
なお、図10においては、凹部である溝14Bが形成されることにより表面積を増加させる構成について説明したが、凹部に代えて凸部を形成してもよいし、凹部および凸部の両方を形成してもよい。
【0046】
また、上記実施の形態において説明したソール部14の厚みの分布、付属物による質量の付加、ソール部14の形状などは、本願の請求項1におけるソール部の各領域同士の質量の関係が満たされる限り、自由に組み合わせて実施することができる。
【実施例1】
【0047】
以下、本発明の実施例1について説明する。本発明の有効性を実証するために、シミュレーション検証を行った。シミュレーションの手順は以下のとおりである。
【0048】
ヘッドのロフト角αは10°とした。また、ベースとなるヘッドの質量を170g、175gおよび180gの3種類とし、縦慣性モーメントは、それぞれ2365g・cm2、2433g・cm2および2500g・cm2とした。そして、ソール部のフェース側である点F、バック側である点Bおよびセンター部である点Cに質量を付加することにより、種々のヘッドを想定した。
【0049】
図11は、本シミュレーション検証における質量付加の位置を示す図である。図11において、横軸はフェース・バック方向の軸に該当し、縦軸はクラウン・ソール方向の軸に該当する。図11を参照して、点Pは、質量を付加しない状態での重心の位置を表している。また、質量の付加は、点F、点Cおよび点Bに対する集中荷重とした。質量付加を含めたヘッド質量は、190gに統一した。フェースは、バルジおよびロールを共に有さず、フラットであるとして計算を行った。点Bの位置は、通常ソールの抜けを向上させるためロールアップと呼ばれる形状が採用されることを考慮して、点Fおよび点Cと比較して、地面(基準面)から高い位置とした。そして、ベースとなるヘッドおよび所定の位置に質量を付加したヘッドについて、SS高さおよび縦慣性モーメントを算出した。なお、点P、点F、点Cおよび点Bの位置(図11における座標)を表1に示す。表1において、数値の単位はmmである。
【0050】
【表1】
【0051】
次に、上記シミュレーションの結果について説明する。図12は、実施例1におけるシミュレーションの結果を示す図である。図12において横軸はSS高さ、縦軸は縦慣性モーメントを示している。つまり、図12において、データ点が右側に移動することを抑制しつつ、上側に移動させることが本発明の目標である。また、表2に、実施例1におけるシミュレーションの具体的データを示す。
【0052】
【表2】
【0053】
図12を参照して、従来の一般的なソール均等肉厚のモデルを模した点F、点Cおよび点Bの3箇所への質量付加を実施したFCBに対して、後方側(バック側)に質量付加を集中させることにより重心深度が深くなったB(非特許文献1や特許文献2の構成に相当)は、縦慣性モーメントが増大しているものの、SS高さが大幅に高くなっている。一方、前方側(フェース部側)に質量付加を集中させることにより重心深度が浅くなったF(特許文献3の構成に相当)は、FCBに対して、SS高さが低くなっているものの、縦慣性モーメントの増大が小さくなっている。つまり、従来の一般的なソール均等肉厚のモデルのヘッドや、上記非特許文献および特許文献に開示されたように前方側または後方側に質量を付加する従来の手法では、図12の破線で示すSS高さと縦慣性モーメントとの関係の範囲内でのみ、SS高さおよび縦慣性モーメントの調整が可能となる。
【0054】
これに対し、本発明の実施例に相当するFBにおいては、FCBに対してSS高さの上昇を僅かな上昇に抑制しつつ、大幅な縦慣性モーメントの増大を達成している。つまり、本発明に含まれるFBの構成を有するヘッドによれば、図12の破線で示すSS高さと縦慣性モーメントとの関係の範囲を離れて、SS高さの上昇を抑制しつつ、大幅に縦慣性モーメントを増大させることができる。以上の結果より、本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドによれば、スイートスポット高さを低く維持することと大きい縦慣性モーメント確保することを両立可能であることが確認された。
【0055】
なお、図12から、質量付加のない状態でのヘッド質量が軽ければ軽いほど、本発明の効果が大きいことが分かる。これは、質量付加のない状態でのヘッド質量が軽いほど、余剰質量、つまり質量付加の量を多くできるため、SS高さの上昇を抑制しつつ、縦慣性モーメントを大きくできることに起因する。したがって、フェース部やクラウン部などに関しては、強度が許す限り、肉厚を薄めに設計して余剰質量を増大させ質量付加の量を増やすことが、本発明の効果をより大きくするといえる。
【0056】
ここで、別途実施されたロボット試験の結果から、ヘッドスピード42m/sの場合、SS高さが0.5mm異なると、すなわち同一ヘッドにおいて打点の高さが0.5mm異なると、飛び出し角が0.1°異なり、バックスピンの回転数が20rpm異なることが分かっている。また、同様に、縦慣性モーメントが50g・cm2異なると、打点がSSから15mm上下に外れたときに、ボール初速は0.02m/s、バックスピンの回転数は20rpm程度異なることが分かっている(飛び出し角はほとんど変わらない)。一方、バックスピンの回転数の差が20rpm未満の場合、実際に使用される場合におけるスイングのばらつきを考慮すると、上級者であってさえも、性能差を体感することは難しい。つまり、SS高さにおいて0.5mm以上の差、縦慣性モーメントにおいて50g・cm2以上の差であれば、ヘッドの性能に明確な差を及ぼしているといえる。
【0057】
これを考慮して上記シミュレーションの結果を検討すると、ソール前方部および後方部への質量付加の値がそれぞれ5gである場合(質量付加のない状態でのヘッド質量が180gの場合)においても、180−FBは、180−FCBに対して縦慣性モーメントが60g・cm2増加しているとともに、180−Bに対してSS高さが0.5mm低くなっている。したがって、ソール前方部および後方部への質量付加の値がそれぞれ5g以上であれば、ヘッドの性能に明確な差を及ぼしているといえる。なお、上記シミュレーションにおいては、質量付加を含めたヘッドの質量を190gとした場合について検討したが、当該質量が190gよりも多い場合や少ない場合でも、同様の検討結果が得られる。
【0058】
一方、ウッド型ゴルフクラブにおいて、フェアウェイウッドである9番ウッドの長さは41インチ程度である。そして、スイングバランスを確保する観点から、ヘッドの質量はウッド型ゴルフクラブの中でも最も大きい部類に入り、220g〜230g程度とされるのが一般的である。ここで、質量付加のない状態のヘッドの質量は、必要な強度を考慮すると、130g程度まで低減することができる。したがって、ソール前方部および後方部への質量付加の値は、それぞれ50g以下とすることが現実的である。
【0059】
さらに、現在主流のドライバーヘッドの体積は400cm3〜460cm3程度であり、強度を確保する観点から、ヘッドの質量は170g程度以上必要である。また、ドライバーの長さは通常44〜47インチ程度であり、スイングバランスを確保する観点から、ヘッドの質量は、175g〜210g程度とされるのが一般的である。したがって、ドライバーヘッドを想定すると、ソール前方部および後方部への質量付加の値は、それぞれ20g以下とすることが現実的である。
【0060】
以上より、本発明におけるフェース側中央長方形領域に対応するソール部の質量およびバック側中央長方形領域に対応するソール部の質量の各々は、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の質量に比べて5g以上50g以下だけ大きくすることが好ましく、ドライバーヘッドを想定すると5g以上20g以下だけ大きくすることが好ましいといえる。また、ソール部に付属物を設置することにより、ソール部に質量を付加する場合、当該付属物により5g以上50g以下の質量が付加されることが好ましく、ドライバーヘッドを想定すると5g以上20g以下の質量が付加されることが好ましいといえる。
【0061】
また、一般的なドライバーヘッドの寸法において、ソール部のトゥ・ヒール方向における長さおよび前後方向(フェース・バック方向)における長さは、いずれも90mm程度である。したがって、上記要素長方形1つあたりのソール部の面積は9cm2程度である。そして、ヘッドを構成する一般的な材料のうち、最も比重が小さい部類に入るチタン合金製のヘッドを想定すると、肉厚1mmあたりの質量は4.05gである。ここで、上述のように、ソール前方部および後方部への質量付加の値は5g以上とすることが好ましく、これを達成するためには1.23mm以上の肉厚の増量が必要である。したがって、ソール前方部および後方部における肉厚はソール中央部に対して1.3mm程度大きくすることが望ましい。以上より、フェース側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚やバック側中央長方形領域に対応するソール部の最大肉厚は、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚に比べて1.3mm以上大きくなっていることが好ましいといえる。
【0062】
また、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚が1mm以上である場合、質量付加の量を十分に確保することが難しくなる場合がある。一方、当該領域に対応するソール部の最大肉厚が0.4mm未満である場合、鋳造性と強度の観点から肉厚が不十分となるおそれがある。したがって、トゥ側中央長方形領域、ヒール側中央長方形領域および中央長方形領域の各々に対応するソール部の最大肉厚は0.4mm以上1.0mm未満であることが好ましい。
【実施例2】
【0063】
以下、本発明の実施例2について説明する。本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドを実際に作製し、その性能を確認する実験を行なった。実験の手順は以下の通りである。
【0064】
まず、上記実施の形態2において説明した図8の構成を有するヘッドおよび実施の形態3において説明した図9の構成を有するヘッドを作製した(実施例AおよびB)。これらのヘッド1は、フェース部側中央長方形領域91に対応するソール部14のうち、フェース部11との接続領域(最も前方の領域)を含む領域の肉厚を、トゥ側中央長方形領域93に対応するソール部14の最大肉厚、ヒール側中央長方形領域95に対応するソール部14の最大肉厚および中央長方形領域94に対応するソール部14の最大肉厚の各々よりも大きく設定したものであり、重心から遠く、さらに、基準面に近い位置への質量の付加を可能にすることにより本発明の作用効果を顕著に得ることができる、特に好ましい構成を有している。一方、比較のため、本発明の範囲外のヘッドも作製した(比較例)。図13は、比較例におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略断面図である。なお、図13においては、図8および図9の対応する部分を、図8および図9において用いた参照番号に100を加えた参照番号で示し、その説明を省略する。比較例におけるヘッドは、上記非特許文献1に開示されたヘッドであり、ソール部の後方側(バック側)にバッヂ131およびビス132が設置され、当該領域に質量が付加されている。ここで、実施例A(図8に対応)のヘッド1において、フェース部側中央部141の最大肉厚は3.0mm、中央部142の最大肉厚は0.9mm、バック側中央部143の最大肉厚は2.4mmとした。また、実施例B(図9に対応)のヘッド1において、フェース部側中央部141の最大肉厚は3.0mm、中央部142の最大肉厚は0.9mmとし、バッヂ31の質量は4.3g、ビス32の質量は2.3gとした。また、比較例(図13に対応)のヘッド101において、フェース部側中央長方形領域191および中央長方形領域194の各々に対応するソール部114の最大肉厚はいずれも1.4mmとし、バッヂ131の質量は2.0g、ビス132の質量は2.0gとした。そして、上記実施例および比較例のヘッドをシャフトに接続し、実打試験を実施した。
【0065】
次に、試験結果について説明する。表3は、実打試験に供されたクラブおよびヘッドの特性を示す表である。
【0066】
【表3】
【0067】
表3を参照して、比較例に比べて、実施例においてはクラブ長さを0.5インチ長いものを採用した。これは、ヘッドスピードの上昇による飛距離アップを目的としたものである。そのため、スイングバランスを確保する目的で実施例のヘッド質量は、比較例に比べて5g小さくなっている。ヘッド重量の減少は、可能な質量付加を小さくするため、縦慣性モーメントの増大とSS高さの抑制には不利であるが、本発明の実施例においては、このような厳しい制約の下、比較例と同等の縦慣性モーメントを確保しつつ、SS高さを低くすることに成功していることが分かる。そして、実打試験の結果、比較例に比べて、実施例のヘッドを備えたクラブによれば、球の上がりやすさ、およびスイートエリアの広さを十分に体感できることが確認された。
【0068】
なお、本願において、ソール部とは、ウッド型ゴルフクラブヘッドを規定のライ角にてソール部を基準面に接地させた状態において、基準面に投影される領域(図6参照)のうちホーゼル部を除く領域をいう。すなわち、従来のサイド部を含めてソール部と定義する。ここで、近年のヘッドの形状においては、従来のようなサイド部が存在しない場合も多いが、本発明は、サイド部の有無にかかわらず、種々の形状のウッド型ゴルフクラブヘッドに適用可能である。
【0069】
また、本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドを構成する材料としては、チタン合金、ステンレススチール、カーボン繊維強化樹脂など種々の材料を採用することができる。さらに、バッヂ、ビスなどの付属品を構成する材料としても、同様にステンレススチール、アルミ合金、樹脂など種々の材料を採用することができるが、たとえばバッヂの材料としてアルミ合金、ビスの材料としてJIS規格SUS303ステンレススチールなどを採用することにより、外観上の高級感を付与することが可能である。
【0070】
また、本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドを構成する材料として、フェース側中央長方形領域に対応するソール部および/またはバック側中央長方形領域に対応するソール部にタングステン合金などの比重の重い材料を採用してもよい。これにより、薄肉化が可能となり、一層SS高さの低減し、縦慣性モーメントの増大させることが可能となる。
【0071】
さらに、上記本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドにおいて、各長方形領域に対応するソール部の質量は、各長方形領域に対応するソール部を切断等により切り出して、その質量を測定することにより確認することができる。このとき、切断等により失われたソール部の領域に対応する質量を補完して(失われた質量を測定値に加えて)、各長方形領域に対応するソール部の質量は算出される。また、ソール部とソール部以外の部位(フェース部、クラウン部)との分離は、基準面に投影されたソール部の外縁に対応する部位から基準面に平行にヘッドを切断することにより実施される。
【0072】
さらに、ソール部の最大肉厚に特徴を有する本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドは、上記実施例のほか、最大肉厚が本発明の要件を満たしているものであればよく、たとえば上記各長方形領域に対応するソール部の肉厚が局部的に薄くなっていることにより、本発明の範囲外となるものではない。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のウッド型ゴルフクラブヘッドおよびウッド型ゴルフクラブは、飛距離の向上と飛距離の安定化とを両立することが求められるウッド型ゴルフクラブヘッドおよびウッド型ゴルフクラブに、特に有利に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施の形態1におけるゴルフクラブの構成を示す概略図である。
【図2】図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをクラウン部側から見た概略平面図である。
【図3】図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをフェース部側から見た概略平面図である。
【図4】図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをソール部側から見た概略平面図である。
【図5】図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドをトゥ部側から見た概略平面図である。
【図6】図1のゴルフクラブが備えるゴルフクラブヘッドを基準面に投影し、ソール部側から見た状態を示す概略図である。
【図7】ウッド型ゴルフクラブヘッドにおける慣性モーメントについて説明するための概略斜視図である。
【図8】実施の形態2におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略断面図である。
【図9】実施の形態3におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略断面図である。
【図10】実施の形態4におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略平面図である。
【図11】シミュレーション検証における質量付加の位置を示す図である。
【図12】実施例1におけるシミュレーションの結果を示す図である。
【図13】比較例におけるウッド型ゴルフクラブヘッドの構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 ヘッド、2 シャフト、3 グリップ部、9 ゴルフクラブ、11 フェース部、11A 打球面、12 クラウン部、13 ホーゼル部、14 ソール部、14B 溝、21 スイートスポット(SS)、22 重心、31 バッヂ、32 ビス、81 フェース部側線分、82 バック側線分、83 ヒール側線分、84 トゥ側線分、85〜88 線分、91 フェース部側中央長方形領域、92 バック側中央長方形領域、93 トゥ側中央長方形領域、94 中央長方形領域、95 ヒール側中央長方形領域、141 フェース部側中央部、142 中央部、143 バック側中央部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打球面を有するフェース部と、前記フェース部に接続されたソール部と、シャフトに接続されるべきホーゼル部とを備えたウッド型ゴルフクラブヘッドであって、
規定のライ角にて前記ソール部を基準面に接地させた状態において、前記基準面に投影される前記ゴルフクラブヘッドの投影像における、前記基準面に投影されたシャフト中央線に平行であって前記基準面に投影された前記フェース部に接するフェース部側線分と、前記フェース部側線分とは反対側のバック側に接するバック側線分と、前記基準面に投影されたシャフト中央線に直交し、前記基準面に投影された前記ホーゼル部と本体部との接続部を通るヒール側線分と、前記ヒール側線分とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分とを含む長方形領域を設定し、前記長方形領域を前記フェース部側線分に平行な2本の線分および前記ヒール側線分に平行な2本の線分により9個の合同な要素長方形領域に分割した場合、前記要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域から見て前記フェース部側中央に位置するフェース部側中央長方形領域に対応する前記ソール部の質量および前記フェース部側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域に対応する前記ソール部の質量の各々は、前記中央長方形領域から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域、前記中央長方形領域から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の質量よりも大きくなっている、ウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記フェース側中央長方形領域に対応する前記ソール部の質量および前記バック側中央長方形領域に対応する前記ソール部の質量の各々は、前記トゥ側中央長方形領域、前記ヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の質量に比べて5g以上50g以下だけ大きくなっている、請求項1に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
打球面を有するフェース部と、前記フェース部に接続されたソール部と、シャフトに接続されるべきホーゼル部とを備えたウッド型ゴルフクラブヘッドであって、
規定のライ角にて前記ソール部を基準面に接地させた状態において、前記基準面に投影される前記ゴルフクラブヘッドの投影像における、前記基準面に投影されたシャフト中央線に平行であって前記基準面に投影された前記フェース部に接するフェース部側線分と、前記フェース部側線分とは反対側のバック側に接するバック側線分と、前記基準面に投影されたシャフト中央線に直交し、前記基準面に投影された前記ホーゼル部と本体部との接続部を通るヒール側線分と、前記ヒール側線分とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分とを含む長方形領域を設定し、前記長方形領域を前記フェース部側線分に平行な2本の線分および前記ヒール側線分に平行な2本の線分により9個の合同な要素長方形領域に分割した場合、前記要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域から見て前記フェース部側中央に位置するフェース部側中央長方形領域に対応する前記ソール部の最大肉厚および前記フェース部側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域に対応する前記ソール部の最大肉厚の各々は、前記中央長方形領域から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域、前記中央長方形領域から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の最大肉厚よりも大きくなっている、ウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記フェース側中央長方形領域に対応する前記ソール部の最大肉厚および前記バック側中央長方形領域に対応する前記ソール部の最大肉厚の各々は、前記トゥ側中央長方形領域、前記ヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の最大肉厚に比べて1.3mm以上大きくなっている、請求項3に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
打球面を有するフェース部と、前記フェース部に接続されたソール部と、シャフトに接続されるべきホーゼル部とを備えたウッド型ゴルフクラブヘッドであって、
規定のライ角にて前記ソール部を基準面に接地させた状態において、前記基準面に投影される前記ゴルフクラブヘッドの投影像における、前記基準面に投影されたシャフト中央線に平行であって前記基準面に投影された前記フェース部に接するフェース部側線分と、前記フェース部側線分とは反対側のバック側に接するバック側線分と、前記基準面に投影されたシャフト中央線に直交し、前記基準面に投影された前記ホーゼル部と本体部との接続部を通るヒール側線分と、前記ヒール側線分とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分とを含む長方形領域を設定し、前記長方形領域を前記フェース部側線分に平行な2本の線分および前記ヒール側線分に平行な2本の線分により9個の合同な要素長方形領域に分割した場合、前記要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域から見て前記フェース部側中央に位置するフェース部側中央長方形領域に対応する前記ソール部の最大肉厚は、前記中央長方形領域から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域、前記中央長方形領域から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の最大肉厚よりも大きくなっており、
前記中央長方形領域から見て前記フェース部側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域に対応する前記ソール部は、前記ソール部に質量を付加するための付属物を含んでいる、ウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記フェース部側中央長方形領域に対応する前記ソール部の最大肉厚は、前記トゥ側中央長方形領域、前記ヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の最大肉厚に比べて1.3mm以上大きくなっている、請求項5に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記ソール部は、前記付属物により5g以上50g以下の質量が付加されている、請求項5または6に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記トゥ側中央長方形領域、前記ヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の最大肉厚は0.4mm以上1.0mm未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のウッド型ゴルフクラブヘッドを備えた、ウッド型ゴルフクラブ。
【請求項1】
打球面を有するフェース部と、前記フェース部に接続されたソール部と、シャフトに接続されるべきホーゼル部とを備えたウッド型ゴルフクラブヘッドであって、
規定のライ角にて前記ソール部を基準面に接地させた状態において、前記基準面に投影される前記ゴルフクラブヘッドの投影像における、前記基準面に投影されたシャフト中央線に平行であって前記基準面に投影された前記フェース部に接するフェース部側線分と、前記フェース部側線分とは反対側のバック側に接するバック側線分と、前記基準面に投影されたシャフト中央線に直交し、前記基準面に投影された前記ホーゼル部と本体部との接続部を通るヒール側線分と、前記ヒール側線分とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分とを含む長方形領域を設定し、前記長方形領域を前記フェース部側線分に平行な2本の線分および前記ヒール側線分に平行な2本の線分により9個の合同な要素長方形領域に分割した場合、前記要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域から見て前記フェース部側中央に位置するフェース部側中央長方形領域に対応する前記ソール部の質量および前記フェース部側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域に対応する前記ソール部の質量の各々は、前記中央長方形領域から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域、前記中央長方形領域から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の質量よりも大きくなっている、ウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記フェース側中央長方形領域に対応する前記ソール部の質量および前記バック側中央長方形領域に対応する前記ソール部の質量の各々は、前記トゥ側中央長方形領域、前記ヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の質量に比べて5g以上50g以下だけ大きくなっている、請求項1に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
打球面を有するフェース部と、前記フェース部に接続されたソール部と、シャフトに接続されるべきホーゼル部とを備えたウッド型ゴルフクラブヘッドであって、
規定のライ角にて前記ソール部を基準面に接地させた状態において、前記基準面に投影される前記ゴルフクラブヘッドの投影像における、前記基準面に投影されたシャフト中央線に平行であって前記基準面に投影された前記フェース部に接するフェース部側線分と、前記フェース部側線分とは反対側のバック側に接するバック側線分と、前記基準面に投影されたシャフト中央線に直交し、前記基準面に投影された前記ホーゼル部と本体部との接続部を通るヒール側線分と、前記ヒール側線分とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分とを含む長方形領域を設定し、前記長方形領域を前記フェース部側線分に平行な2本の線分および前記ヒール側線分に平行な2本の線分により9個の合同な要素長方形領域に分割した場合、前記要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域から見て前記フェース部側中央に位置するフェース部側中央長方形領域に対応する前記ソール部の最大肉厚および前記フェース部側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域に対応する前記ソール部の最大肉厚の各々は、前記中央長方形領域から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域、前記中央長方形領域から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の最大肉厚よりも大きくなっている、ウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記フェース側中央長方形領域に対応する前記ソール部の最大肉厚および前記バック側中央長方形領域に対応する前記ソール部の最大肉厚の各々は、前記トゥ側中央長方形領域、前記ヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の最大肉厚に比べて1.3mm以上大きくなっている、請求項3に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
打球面を有するフェース部と、前記フェース部に接続されたソール部と、シャフトに接続されるべきホーゼル部とを備えたウッド型ゴルフクラブヘッドであって、
規定のライ角にて前記ソール部を基準面に接地させた状態において、前記基準面に投影される前記ゴルフクラブヘッドの投影像における、前記基準面に投影されたシャフト中央線に平行であって前記基準面に投影された前記フェース部に接するフェース部側線分と、前記フェース部側線分とは反対側のバック側に接するバック側線分と、前記基準面に投影されたシャフト中央線に直交し、前記基準面に投影された前記ホーゼル部と本体部との接続部を通るヒール側線分と、前記ヒール側線分とは反対側のトゥ側に接するトゥ側線分とを含む長方形領域を設定し、前記長方形領域を前記フェース部側線分に平行な2本の線分および前記ヒール側線分に平行な2本の線分により9個の合同な要素長方形領域に分割した場合、前記要素長方形領域のうち中央に位置する中央長方形領域から見て前記フェース部側中央に位置するフェース部側中央長方形領域に対応する前記ソール部の最大肉厚は、前記中央長方形領域から見てトゥ側中央に位置するトゥ側中央長方形領域、前記中央長方形領域から見てヒール側中央に位置するヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の最大肉厚よりも大きくなっており、
前記中央長方形領域から見て前記フェース部側とは反対側であるバック側中央に位置するバック側中央長方形領域に対応する前記ソール部は、前記ソール部に質量を付加するための付属物を含んでいる、ウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記フェース部側中央長方形領域に対応する前記ソール部の最大肉厚は、前記トゥ側中央長方形領域、前記ヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の最大肉厚に比べて1.3mm以上大きくなっている、請求項5に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記ソール部は、前記付属物により5g以上50g以下の質量が付加されている、請求項5または6に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記トゥ側中央長方形領域、前記ヒール側中央長方形領域および前記中央長方形領域の各々に対応する前記ソール部の最大肉厚は0.4mm以上1.0mm未満である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のウッド型ゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のウッド型ゴルフクラブヘッドを備えた、ウッド型ゴルフクラブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−99408(P2010−99408A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275866(P2008−275866)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】
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