説明

ウルソデオキシコール酸の製造方法

【課題】ウルソデオキシコール酸(3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸)を工業的に製造する際に生じる不純物を除去して、ウルソデオキシコール酸を効率的に単離精製するための方法を提供することを解決すべき課題とした。
【解決手段】3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸、および3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウルソデオキシコール酸の製造方法に関する。より詳細には、多孔質合成吸着剤を用いて不純物を除去することを特徴とする、ウルソデオキシコール酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬として有用なステロイド化合物であるウルソデオキシコール酸(3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸)は、工業的にはコール酸を原料として、ケノデオキシコール酸(3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸)から直接、または3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸を経て製造されるが、不純物としてケノデオキシコール酸、3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3β,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、コール酸、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸などを含み、その純度は通常80〜95%である。
【0003】
ウルソデオキシコール酸を精製する方法としては、(1)低級アルキルエステル化し、含水メタノールで再結晶、加水分解する方法(例えば、特許文献1を参照)、(2)メチルエステル化し、アルミナ・クロマトグラフィーを行う方法(例えば、特許文献2を参照)、(3)ナトリウム、又はリチウム塩とし、クロロホルム含有水溶液中で酸を加えて結晶を析出させる方法(例えば、特許文献3を参照)、(4)有機溶媒中、シリル化して結晶を析出させ、次いで塩酸で脱シリル化して酢酸エチルで結晶を析出させる方法(例えば、特許文献4を参照)、(5)ウルソデオキシコール酸とケノデオキシコール酸との混合物を水、または有機溶媒中に懸濁し、これにNーメチルモルホリンを添加し不溶性酸を分離する方法(例えば、特許文献5を参照)、および(6)トリエチルアミンなどの塩として晶析などにより精製する方法(例えば、特許文献6を参照)が知られている。
【0004】
また、(7)逆相系シリカゲルや合成吸着剤などによるクロマトグラフィーによる単離精製法も知られている。合成吸着剤を用いるウルソデオキシコール酸の精製方法では、粗ウルソデオキシコール酸中に含まれるコール酸やケノデオキシコール酸、リトコール酸が分離除去されている(例えば、特許文献7を参照)。
【0005】
上記の(1)〜(6)のいずれの場合も、煩雑な操作を必要とし、また精製により得られてくる目的物の回収量や純度は必ずしも十分なものではない。また、(7)の場合には、記載されている不純物(コール酸やケノデオキシコール酸、リトコール酸)以外の除去についてはいっさい情報がなく、クロマトグラフィーの手法についても、誘導化原料を用いるなどの方法は知られていない。
【0006】
一方、糖質から醗酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として、4位2重結合の還元飽和化による5β立体構築を鍵反応とする3,7−ジオキソ−5β−コラン酸(DKCA)の製造方法が知られている(例えば、特許文献8を参照)。この方法で得られる3,7−ジオキソ−5β−コラン酸(DKCA)粗生成物中には、4位2重結合の還元飽和化の際副生する5位の立体化学がαであるステロイド化合物類が不純物として混入する可能性がある。
【0007】
また、この3,7−ジオキソ−5β−コラン酸(DKCA)を用い、公知の方法により3位および7位のオキソ基をヒドロキシ基へ還元して誘導できる3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸(7K)、およびウルソデオキシコール酸にも、同様な理由により、5αの立体化学を有するステロイド化合物類が不純物として含有される。
【0008】
これらの5α異性体不純物類は、コール酸を由来とするウルソデオキシコール酸合成経路には含まれえないものであり、その分離除去に関しては、工業的に、簡便に実施できる方法はまったく知られていない。
【0009】
さらには、原料や製法の違いによらず、工業的に大きなスケールで継続的なウルソデオキシコール酸の製造を行う際、多段階の合成工程間に毎回精製処理を実施することは製造コストの面から不利である。よって、精製処理の回数は限定されるため、各反応工程での副生成物や廃棄物などが蓄積され易い。そのような場合一般的に、サイズ選択クロマトグラフィー分析(SEC)にて検出されうるステロイド化合物類由来の分子量の大きな副生成
物(分子量700以上)の含有が問題となることがある。たとえば上述した糖質から醗酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料とする方法においては、明細書中に開示されている処方より精製処理法や回数を簡略化した場合、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸(DKCA)粗体中にステロイド化合物類の数量体またはステロイド化合物類の分解物の数量体程度の副生物(分子量700以上)が最大で数10%程度含まれる可能性がある。しかしながら、それらの除去方法に関してはまったく知られていない。
【0010】
以上のように、ウルソデオキシコール酸、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸(7K)および3,7−ジオキソ−5β−コラン酸(DKCA)に関して、より高純度な単離品を得る手段が望まれている。
【0011】
【特許文献1】特公昭53−10063号公報
【特許文献2】特公昭53−35946号公報
【特許文献3】特開昭55−154999号公報
【特許文献4】特開昭56−32500号公報
【特許文献5】特開昭58−146597号公報
【特許文献6】特開2001−261696号公報
【特許文献7】特開昭56−59796号公報
【特許文献8】特開2006−56877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ウルソデオキシコール酸(3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸)を工業的に製造する際、(1)コール酸を原料とする一般的製法においては、副生物としてケノデオキシコール酸、3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3β,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、コール酸、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸などが知られており、また3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸も副生する可能性があり、(2)糖質から発酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として、4位2重結合の還元飽和化による5β立体構築を行う工程を含む方法で製造する場合には、3、5および7位の立体化学の異なる異性体類が生成する。これらを効率的に単離精製するには、従来知られている方法では不十分であり、より高純度な単離品を得る手段が望まれている。即ち、本発明は、ウルソデオキシコール酸(3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸)を工業的に製造する際に生じる不純物を除去して、ウルソデオキシコール酸を効率的に単離精製するための方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、不純物を含む粗ウルソデオキシコール酸(3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸)を多孔質合成吸着剤と接触させて精製することにより、上述した不純物類を効率的に除去できることを見出し本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0014】
(1) 3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸、および3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸の製造方法。
(2) 3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、ステロイド化合物類由来の分子量700以上の高分子量体を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、高分子量体の含有量を1%未満とすることを特徴とする、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸の製造方法。
【0015】
(3) 3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、5位の立体化学がα体であるステロイド化合物類を不純物として含み、さらに3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸および3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸の製造方法。
(4) 3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸が、糖質から発酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として得られたものである、(1)から(3)の何れかに記載の方法。
【0016】
(5) 3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、5位の立体化学がα体であるステロイド化合物類、3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸、および3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸の製造方法。
(6) 3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、ステロイド化合物類由来の分子量700以上の高分子量体を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、高分子量体の含有量を1%未満とすることを特徴とする、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸の製造方法。
(7) 3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸が、糖質から発酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として得られたものである、(5)又は(6)に記載の方法。
【0017】
(8) 3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、3−オキソ−5β−コラン酸を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸の製造方法。
(9) 3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、ステロイド化合物類由来の分子量700以上の高分子量体を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、高分子量体の含有量を1%未満とすることを特徴とする、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸の製造方法。
(10) 3,7−ジオキソ−5β−コラン酸が、糖質から発酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として得られたものである、(8)又は(9)に記載の方法。
(11) 3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、3−オキソ−5β−コラン酸を不純物として含む混合物を、カルボン酸塩の状態にて多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸の製造方法。
(12) 3,7−ジオキソ−5β−コラン酸が、糖質から発酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として得られたものである、(11)に記載の方法。
(13) 3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、および3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を不純物として含む混合物を、カルボン酸塩の状態にて多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸の製造方法。
(14) 3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸が、糖質から発酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として得られたものである、(13)に記載の方法。
(15) 3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸を不純物として含む混合物を、カルボン酸塩の状態にて多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸の製造方法。
(16) 3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸が、糖質から発酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として得られたものである、(15)に記載の方法。
(17) 3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸を不純物として含む混合物を、カルボン酸塩の状態にて多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ウルソデオキシコール酸(3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸)を工業的に製造する際に生じる不純物を除去して、ウルソデオキシコール酸を効率的に単離精製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の方法は、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸または3,7−ジオキソ−5β−コラン酸から選択される主成分に加えて、各種の不純物を含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする方法である。本発明で言う「不純物を除去する」とは、当該不純物が検出できなくなる程度まで除去する場合のみならず、多孔質合成吸着剤と接触させる前の混合物中に存在する不純物の一部を除去する場合も含むことを意味する。好ましくは、多孔質合成吸着剤と接触させて処理した後の混合物中に含まれる各不純物の含有量は2%未満であり、さらに好ましくは1%未満である。
【0020】
(吸着処理される混合物)
本発明にて多孔質合成吸着剤によって処理される混合物とは、以下のようなものである。
(a) 3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸、および3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を不純物として含む混合物;
(b) 3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、ステロイド化合物類由来の分子量700以上の高分子量体を不純物として含む混合物;
(c) 3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、5位の立体化学がα体であるステロイド化合物類を不純物として含み、さらに3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸および3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を不純物として含む混合物;
【0021】
(d) 3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、5位の立体化学がα体であるステロイド化合物類、3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸、および3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を不純物として含む混合物;
(e) 3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、ステロイド化合物類由来の分子量700以上の高分子量体を不純物として含む混合物;
【0022】
(f) 3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、3−オキソ−5β−コラン酸を不純物として含む混合物;
(g) 3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、ステロイド化合物類由来の分子量700以上の高分子量体を不純物として含む混合物;
(h)3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、および3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を不純物として含む混合物;
(i)3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸を不純物として含む混合物;
【0023】
なお、上記において、高分子量体の含有量は、例えば、1%以上のものを挙げることができる。ただし、高分子量体含有量の分析は、示差屈折計を検出器とするサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で行うことができる。
【0024】
上記(a)から(c)に記載の混合物の具体例としては、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、5位の立体化学がα体であるステロイド化合物類、3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸、3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸、およびステロイド化合物類由来の分子量700以上の高分子量体を不純物として含む混合物を挙げることができる。
【0025】
上記(d)及び(e)に記載の混合物の具体例としては、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、5位の立体化学がα体であるステロイド化合物類、3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸、およびステロイド化合物類由来の分子量700以上の高分子量体を不純物として含む混合物を挙げることができる。
【0026】
上記(f)及び(g)に記載の混合物の具体例としては、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、3−オキソ−5β−コラン酸、およびステロイド化合物類由来の分子量700以上の高分子量体を不純物として含む混合物を挙げることができる。
上記(h)に記載の混合物の具体例としては、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸を不純物として含む混合物を挙げることができる。
上記(i)に記載の混合物の具体例としては、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸を不純物として含む混合物を挙げることができる。
【0027】
これらの化合物混合物は、あらかじめ製造反応液から公知の方法により単離された粗生成物であっても、製造反応液を濃縮したままの粗固体であってもよい。さらには、製造反応液を分離に供することのできる溶媒組成に調製したものでも構わない。 また、カルボン酸の塩の状態に変換したものでも構わない。
以下に本発明で用いる化合物の構造と化合物名を示す。
【0028】
【化1】

a: 3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸:ウルソデオキシコール酸
【0029】
【化2】

b: 3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸:エピウルソデオキシコール酸
【0030】
【化3】

c: 3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸:ケノデオキシコール酸
【0031】
【化4】

d: 3α,7β−ジヒドロキシ−5α−コラン酸:アロウルソデオキシコール酸
【0032】
【化5】

e: 3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸:リトコール酸
【0033】
【化6】

f: 3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸:7K
【0034】
【化7】

g: 3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸:エピ7K
【0035】
【化8】

h: 3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5α−コラン酸:5α7K
【0036】
【化9】

i: 3,7−ジオキソ−5β−コラン酸:DKCA
【0037】
【化10】

j: 3−オキソ−5β−コラン酸:ケトリトコール酸
【0038】
(多孔質合成吸着剤)
本発明にて使用される多孔質合成吸着剤とは、細孔を有する不溶性の三次元架橋構造をもつ合成樹脂粒子であり、たとえばスチレン−ジビニルベンゼンの共重合体、モノメタアクリレート−ジメタアクリレートの共重合体などが知られている。スチレン−ジビニルベンゼン系の合成吸着剤としては具体的に、「ダイヤイオン」(三菱化学社製)のHP−10、HP−20、HP−20SS、HP−21、HP−30、HP−40、HP−50や、「セパビーズ」(三菱化学社製)のSP−800、SP−825、セパビーズSP−850、SP−875、SP−206、SP−207、「アンバーライト」(オルガノ社製)のXAD4、AD7HP、XAD16HP、XAD1180、XAD2000などの商品を挙げることができる。また、モノメタアクリレート−ジメタアクリレート系の合成吸着剤としては、「ダイヤイオン」(三菱化学社製)のHP1MG、HP2MG、「アンバーライト」(オルガノ社製)のXAD7などが挙げられる。
【0039】
本発明で用いる多孔質合成吸着剤は、多孔性の架橋重合体であり、有意量の比表面積および細孔容積を有する。比表面積については100m2/g以上、好ましくは400m2/g以上を有し、細孔容積については0.1mL/g以上、好ましくは0.5mL以上を有するものがよい。また平均粒子径は0.3〜1.0mm程度、見かけ比重0.6〜0.8g/ml程度のものが用いられる。
【0040】
(処理方法)
本発明における混合物と多孔質吸着剤との接触方法は、公知の方法、たとえば回分式、半回分式、連続式などで行うことができる。特に、連続的に大量の処理を行う場合には、カラムクロマトグラフィーが適している。具体的には、分離に供する混合物は、遊離酸の状態のまま、または予め混合物に塩基を加えてカルボン酸塩としたもの、をあらかじめ溶媒に溶解しこれを吸着剤に吸着させ、回分式・半回分式では溶媒で選択的に抽出分離し、カラムクロマトグラフィーの場合には溶媒で溶出させる。またカラムクロマトグラフィーでは、固定床式、流動床式、擬似移動床式などの一般的に知られている装置方式を任意に使用することができる。
【0041】
接触処理に使用する溶媒としては、接触処理する混合物が溶解するものであればよく、具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミド、アセトアミドなどのアミド類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの有機酸エステル類、および水などの極性溶媒類があげられる。これらの溶媒は互いに混合可能であれば2種以上を混合して使用することもでき、混合比によって吸着分離能を高めることもできる。また溶媒の種類や混合比率を順次変更しながら使用してもよい。好ましくはアルコール類と水との混合溶媒、およびニトリル類と水との混合溶媒、およびケトン類と水との混合溶媒であり、より好ましくはメタノールと水、およびアセトニトリルと水、およびアセトンと水との混合溶媒である。
【0042】
また溶媒に添加物を加えて使用することもできる。たとえばメタノールと水やアセトニトリルと水との混合溶媒に対して、ごく少量の酢酸やトリフルオロ酢酸を加え、吸着分離能を高めることもできる。好ましい添加量は溶媒に対し、0.05〜10容量%であり、より好ましくは0.05〜1.0容量%である。
【0043】
吸着剤の使用量には特に制限はないが、少なすぎると吸着分離能力が下がるため好ましくなく、多すぎると溶出させるための溶媒量が莫大なものとなるので好ましくない。よって適当な値に設置する必要があり、大まかな目安としては、分離に供する粗体の2〜1000重量倍、好ましくは5〜500重量倍、より好ましくは10〜100重量倍がよい。
【0044】
接触処理を行う温度としては、0℃〜70℃が好ましく、さらに好ましくは5℃〜50℃の範囲内であることが望ましい。
【0045】
接触時間については、吸着が十分平衡に到達するまでであれば特に制限はないが、カラムクロマトグラフィーを用いる場合には空間速度として、好ましくは0.01[h-1]〜100[h-1]、さらに好ましくは、0.1[h-1]〜10[h-1]である。空間速度が100[h-1]より大きいと、不純物の除去が不十分となったり、破過が速くなるなどの問題が生じることがある。一方、空間速度が0.01[h-1]より小さいと、生産性が低下するなどの問題が生じることがある。
【0046】
分離に供する混合物は、上述した溶媒に溶解して接触処理を行う。混合物溶液の濃度は処理温度において析出しない濃度であれば特に制限はない。
【0047】
吸着処理する混合物溶液の量は、使用する吸着剤容量の1〜50容積%、好ましくは2〜30容積%、より好ましくは3〜20容積%である。
【0048】
(前処理)
また、分離に供する前に、混合物の前処理を行うことができる。前処理の例としては、酸や塩基による中和またはpH調整処理、混合物溶液中不溶物のろ別処理、活性炭・活性白土などの吸着脱色処理などが例示される。
(後処理)
吸着分離精製された溶出液から、含有有機溶媒を濃縮して析出する固体を濾取するか、有機溶媒で分液抽出し、溶媒を留去することで目的物を取得できる。また、カルボン酸塩の状態にて吸着分離した場合は、酸性にしたのち、析出する固体を濾取するか、有機溶媒で分液抽出し、溶媒を留去することで目的物を取得できる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、精製前原料および分取物の分析は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)にて行った。以下に分析条件を示す。
【0050】
HPLC
カラム:MCI GEL ODS−1HU 4.6mmID×250mmL (35℃)
溶離液A:アセトニトリル(50v/v%)−H2O(50v/v%)−トリフルオロ酢酸
(0.1v/v%) 0.5ml/min
溶離液B:アセトニトリル(80v/v%)−H2O(20v/v%)
0.5ml/min
検出器:示差屈折計(RI)
【0051】
SEC
カラム:TOSOH TSKgel G2000HXL×2 (40℃)
溶離液:100%テトラヒドロフラン 1ml/min
検出器:示差屈折計(RI)
【0052】
実施例1
ポリスチレン系多孔質合成吸着剤(三菱化学(株)製 ダイヤイオンHP20SS)8mLをガラス製クロマト管へ充填し、これにMeOH/水(75/25体積比)を流通させ十分置換した。特開2006−56877号公報に記載の方法および特開昭52−78863号公報、特開昭52−78864号公報、特開平5−32692号公報に記載の方法で得た、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸79.9%を主成分として含み、3α,7β−ジヒドロキシ−5α−コラン酸1.6%、3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸1.9%、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸3.8%、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸2.8%、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸4.9%、3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸1.4%(以上逆相HPLC分析値、面積%)、および高分子量体1.2重量%(SEC分析値)を不純物として含む混合物20mgを、MeOH/水(75/25体積比)0.3mLで溶解させた溶液を上記吸着剤カラム上面に乗せ、MeOH/水を体積比75/25から77.5/22.5までグラジエントさせながら空間速度(SV)=0.4−0.8[h-1]で流通させた。留出液の各分画留分を逆相(ODS)HPLC分析し、体積比77.5/22.5の留分から3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を98.8%、3α,7β−ジヒドロキシ−5α−コラン酸0.1%、3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸0.3%、3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸0.2%(以上逆相HPLC分析値、面積%)の含有率で含む白色固体14mgを得た。またその固体中には高分子量体および、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸は検出されなかった。収率86%。
【0053】
実施例2
ポリスチレン系多孔質合成吸着剤(三菱化学(株)製 ダイヤイオンHP20SS)8mLをガラス製クロマト管へ充填し、これにMeOH/水(85/15体積比)を流通させ十分置換した。特開2006−56877号公報に記載の方法および特開昭52−78863号公報、特開昭52−78864号公報に記載の方法で得た、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸90.8%を主成分として含み、3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸2.7%、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5α−コラン酸1.0%、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸2.5%(以上逆相HPLC分析値、面積%)、および高分子量体1.7重量%(SEC分析値)を不純物として含む混合物20mgを、MeOH/水(85/15体積比)0.4mLで溶解させた溶液を上記吸着剤カラム上面に乗せ、MeOH/水を体積比85/15から100/0までグラジエントさせながら空間速度(SV)=0.6[h-1]で流通させた。留出液の各分画留分を逆相(ODS)HPLC分析し、体積比85/15の留分から3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸を97.1%、3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸を1.7%、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5α−コラン酸を0.2%の含有率で含む白色固体17mgを得た。またその固体中には高分子量体および、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸は検出されなかった。収率95%。
【0054】
実施例3
ポリスチレン系多孔質合成吸着剤(三菱化学(株)製 ダイヤイオン HP20)8mLをガラス製クロマト管へ充填し、これにアセトニトリル/水(40/60体積比)を流通させ十分置換した。特開2006−56877号公報に記載の方法で得た、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を66.7%を主成分として含み、3−オキソ−5β−コラン酸2.2%(以上逆相HPLC分析値、面積%)、および高分子量体5.2重量%(SEC分析値)を不純物として含む混合物157mgを、アセトニトリル/水(30/70体積比)0.64mLで溶解させた溶液を上記吸着剤カラム上面に乗せ、アセトニトリル/水を体積比40/60、空間速度(SV)=0.6−2.0[h-1]で流通させた。留出液の各分画留分を逆相(ODS)HPLC分析し、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を89.2%の含有率で含む白色固体98mgを得た。またその固体中には高分子量体および、3−オキソ−5β−コラン酸は検出されなかった。収率86%。
【0055】
実施例4
ポリスチレン系多孔質合成吸着剤(三菱化学(株)製 ダイヤイオンHP20SS)16mLをガラス製クロマト管へ充填し、これにアセトン/水(33/67体積比)を流通させ十分置換した。特開2006−56877号公報に記載の方法で得た、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸63.2%を主成分として含み、3−オキソ−5β−コラン酸2.3%(以上逆相HPLC分析値、面積%)、および高分子量体4.6重量%(SEC分析値)を不純物として含む混合物1440mgを、アセトン/水(40/60体積比)3.36mLで溶解させた溶液を上記吸着剤カラム上面に乗せ、アセトン/水を体積比50/50から60/40までグラジエントさせながら空間速度(SV)=0.3−0.9[h-1]で流通させた。留出液の各分画留分を逆相(ODS)HPLC分析し、体積比60/40の留分から3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を66.8%の含有率で含む白色固体1152mgを得た。またその固体中の高分子量体は0.7重量%であり、3−オキソ−5β−コラン酸は検出されなかった。収率97%。
【0056】
実施例5
ポリスチレン系多孔質合成吸着剤(三菱化学(株)製 セパビーズ SP850)8mL
をガラス製クロマト管へ充填し、これにアセトニトリル/水(40/60体積比)を流通させ十分置換した。特開2006−56877号公報に記載の方法で得た、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸64.9%を主成分として含み、3−オキソ−5β−コラン酸1.1%(以上逆相HPLC分析値、面積%)、および高分子量体5.5重量%(SEC分析値)を不純物として含む混合物85mgを、アセトニトリル/水(40/60体積比)0.54mLで溶解させた溶液を上記吸着剤カラム上面に乗せ、アセトニトリル/水を体積比40/60から55/45までグラジエントさせながら空間速度(SV)=0.6[h-1]で流通させた。留出液の各分画留分を逆相(ODS)HPLC分析し、体積比55/45の留分から3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を86%の含有率で含む白色固体43mgを得た。またその固体中の高分子量体は0.3重量%であり、3−オキソ−5β−コラン酸は検出されなかった。収率83%。
【0057】
実施例6
ポリスチレン系多孔質合成吸着剤(三菱化学(株)製 ダイヤイオン HP21)16mLをガラス製クロマト管へ充填し、これにアセトン/水(33/67体積比)を流通させ十分置換した。特開2006−56877号公報に記載の方法で得た、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸66.4%を主成分として含み、3−オキソ−5β−コラン酸2.3%(以上逆相HPLC分析値、面積%)、および高分子量体4.6重量%(SEC分析値)を不純物として含む混合物1112mgを、アセトン/水(25/75体積比)2.42mLで溶解させた溶液を上記吸着剤カラム上面に乗せ、アセトン/水を体積比50/50から60/40までグラジエントさせながら空間速度(SV)=0.8−1.0[h-1]で流通させた。留出液の各分画留分を逆相(ODS)HPLC分析し、体積比60/40の留分から3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を70.9%の含有率で含む白色固体947mgを得た。またその固体中の高分子量体は0.4重量%であり、3−オキソ−5β−コラン酸は0.2%であった。収率97%。
【0058】
実施例7
ポリスチレン系多孔質合成吸着剤(三菱化学(株)製 ダイヤイオン HP20SS)16mLをガラス製クロマト管へ充填し、これに水を流通させ十分置換した。特開2006−56877号公報に記載の方法で得た、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸63.3%を主成分として含み、3−オキソ−5β−コラン酸2.9%(以上逆相HPLC分析値、面積%)を不純物として含む混合物2229mgを、トルエン22mlに溶解させ、水11mlで2回分液洗浄し、次いで313μLのトリエチルアミンおよび水6mlを加えて分液洗浄し、さらに101μLのトリエチルアミンおよび水6mlを加えて分液洗浄したトルエン溶液を、886mgのK2CO3を含む水6.7mlおよび水1mlで順次抽出して得た、粗DKCAのカリウム塩水溶液9.92gのうち、8.20gを上記吸着剤カラム上面に乗せ、アセトン/水を体積比0/100から90/10までグラジエントさせながら空間速度(SV)=0.3−1.3[h-1]で流通させた。留出液のアセトン/水の体積比0/100〜20/80の留分を集めて、希硫酸を加えてpH1にて析出した固体を濾取水洗し、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を86.7%の含有率で含む白色固体1121mgを得た。またその固体中には3−オキソ−5β−コラン酸は検出されなかった。収率88%。
【0059】
実施例8
ポリスチレン系多孔質合成吸着剤(三菱化学(株)製 ダイヤイオン HP20SS)16mLをガラス製クロマト管へ充填し、これに水を流通させ十分置換した。特開2006−56877号公報に記載の方法で得た、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸66.7%を主成分として含み、3−オキソ−5β−コラン酸2.2%(以上逆相HPLC分析値、面積%)を不純物として含む混合物717mgを、トルエン3mlに溶解させ、2.3mlのトリエチルアミンおよび水2mlを加えて分液抽出し、残ったトルエン溶液にさらに2mlの水を加えて再度分液抽出して得た、粗DKCAのトリエチルアミン塩水溶液計約4mlを上記吸着剤カラム上面に乗せ、アセトン/水を体積比0/100から100/0までグラジエントさせながら空間速度(SV)=0.5−1.5[h-1]で流通させた。留出液のアセトン/水の体積比0/100〜20/80の留分を集めて、希硫酸を加えてpH1として酢酸エチルで抽出し、濃縮乾固して、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を76.8%の含有率で含む白色固体668mgを得た。またその固体中には3−オキソ−5β−コラン酸は検出されなかった。収率97%。
【0060】
実施例9
ポリスチレン系多孔質合成吸着剤(三菱化学(株)製 ダイヤイオン HP20SS)13mLをガラス製クロマト管へ充填し、これに水を流通させ十分置換した。3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸22mg、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸12mg、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸230mgの混合物に、水1.65mlおよび146mgのK2CO3を加えて均一なカリウム塩混合物の水溶液としたものを、上記吸着剤カラム上面に乗せ、メタノール/水を体積比0/100から90/10までグラジエントさせながら空間速度(SV)=0.4−1.3[h-1]で流通させた。留出液のメタノール/水の体積比0/100〜40/60の留分を集めて、減圧下にメタノールを留去し、これに希硫酸を加えてpH1として析出した固体を濾取水洗し、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸188mgを得た。この固体中には3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸のいずれも検出されなかった。収率82%。
【0061】
実施例10
ポリスチレン系多孔質合成吸着剤(三菱化学(株)製 ダイヤイオン HP20SS)13mLをガラス製クロマト管へ充填し、これに水を流通させ十分置換した。3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸20mg、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸244mgの混合物に、水1.65mlおよび141mgのK2CO3を加えて均一なカリウム塩混合物の水溶液としたものを、上記吸着剤カラム上面に乗せ、メタノール/水を体積比0/100から100/0までグラジエントさせながら空間速度(SV)=0.5−1.3[h-1]で流通させた。留出液のメタノール/水の体積比50/50〜60/40の留分を集めて、減圧下にメタノールを留去し、これに希硫酸を加えてpH1として析出した固体を濾取水洗し、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸210mgを得た。この固体中には3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸は検出されなかった。収率86%。
【0062】
実施例11
ポリスチレン系多孔質合成吸着剤(三菱化学(株)製 ダイヤイオン HP20SS)13mLをガラス製クロマト管へ充填し、これにメタノール/水(30/70体積比)を流通させ十分置換した。3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸23mg、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸244mgの混合物に、水1.65ml、メタノール0.8mlおよび141mgのK2CO3を加えて均一なカリウム塩混合物の水溶液としたものを、上記吸着剤カラム上面に乗せ、メタノール/水を体積比30/70から100/0までグラジエントさせながら空間速度(SV)=0.6−1.2[h-1]で流通させた。留出液のメタノール/水の体積比60/40〜70/30の留分を集めて、減圧下にメタノールを留去し、これに希硫酸を加えてpH1として析出した固体を濾取水洗し、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸235mgを得た。この固体中には3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸は検出されなかった。収率96%。
【0063】
【表1】

【0064】
表中の値は逆相HPLC分析値、面積%(a〜j)
表中の値はSEC分析値、重量%(k)
【0065】
a: 3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸: ウルソデオキシコール酸
b: 3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸: エピウルソデオキシコール酸
c: 3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸: ケノデオキシコール酸
d: 3α,7β−ジヒドロキシ−5α−コラン酸: アロウルソデオキシコール酸
e: 3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸: リトコール酸
f: 3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸: 7K
g: 3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸: エピ7K
h: 3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5α−コラン酸: 5α7K
i: 3,7−ジオキソ−5β−コラン酸: DKCA
j: 3−オキソ−5β−コラン酸: ケトリトコール酸
k: 高分子量体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸、および3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸の製造方法。
【請求項2】
3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、ステロイド化合物類由来の分子量700以上の高分子量体を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、高分子量体の含有量を1%未満とすることを特徴とする、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸の製造方法。
【請求項3】
3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、5位の立体化学がα体であるステロイド化合物類を不純物として含み、さらに3β,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸および3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸の製造方法。
【請求項4】
3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸が、糖質から発酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として得られたものである、請求項1から3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、5位の立体化学がα体であるステロイド化合物類、3β−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸、および3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸の製造方法。
【請求項6】
3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、ステロイド化合物類由来の分子量700以上の高分子量体を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、高分子量体の含有量を1%未満とすることを特徴とする、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸の製造方法。
【請求項7】
3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸が、糖質から発酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として得られたものである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、3−オキソ−5β−コラン酸を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸の製造方法。
【請求項9】
3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、ステロイド化合物類由来の分子量700以上の高分子量体を不純物として含む混合物を、多孔質合成吸着剤と接触させて、高分子量体の含有量を1%未満とすることを特徴とする、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸の製造方法。
【請求項10】
3,7−ジオキソ−5β−コラン酸が、糖質から発酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として得られたものである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
3,7−ジオキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、3−オキソ−5β−コラン酸を不純物として含む混合物を、カルボン酸塩の状態にて多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3,7−ジオキソ−5β−コラン酸の製造方法。
【請求項12】
3,7−ジオキソ−5β−コラン酸が、糖質から発酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として得られたものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸、および3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸からなる群から選択される少なくとも1種以上を不純物として含む混合物を、カルボン酸塩の状態にて多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸の製造方法。
【請求項14】
3α,7β−ジヒドロキシ−5β−コラン酸が、糖質から発酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として得られたものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸を主成分として含み、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸を不純物として含む混合物を、カルボン酸塩の状態にて多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸の製造方法。
【請求項16】
3α−ヒドロキシ−7−オキソ−5β−コラン酸が、糖質から発酵法で生成された炭素数22以上のステロイド化合物を原料として得られたものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸を主成分として含み、3α−ヒドロキシ−5β−コラン酸を不純物として含む混合物を、カルボン酸塩の状態にて多孔質合成吸着剤と接触させて、上記不純物を除去することを特徴とする、3α,7α−ジヒドロキシ−5β−コラン酸の製造方法。

【公開番号】特開2009−84275(P2009−84275A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234216(P2008−234216)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】