説明

ウレタンウレア樹脂組成物、光学フィルム、及び光学フィルムの製造方法

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、延伸温度が低い条件下でもフィルムを延伸でき、かつ、薄膜においても光学補償機能及び耐久性に優れる光学フィルムが得られる樹脂組成物、およびそれを用いた光学フィルム、および光学フィルムの製造方法を提供することである。
【解決手段】 脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)及び芳香族ポリエステルポリオール(A−2)とを含有するポリオール(A)と、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と、脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)と、を反応させて得られるウレタンウレア樹脂(1)及び溶媒(2)とを含有するウレタンウレア樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学性能に優れるウレタンウレア樹脂組成物、光学フィルム、及び光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置を備えた液晶ディスプレイ(LCD)は、薄型、軽量、低消費電力などの特徴を有することから、パソコンのモニターをはじめ、テレビモニター、携帯電話、小型アミューズメント機器などの表示デバイスとして広く利用されている。
【0003】
近年においては、特に携帯電話や液晶テレビの需要の拡大に伴い、その構成部材である視野角補償フィルム、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム等の光学フィルムが非常に有用になってきている。
【0004】
前記光学フィルムに要求される特性としては、用途に応じて様々であるが、とりわけ、液晶テレビにおいては、大画面化に伴う広視野角化が強く要求されている。
【0005】
前記光学フィルムとしては、従来より、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムが広く利用されてきた。しかしながら、前記TACフィルムは、広視野角化に寄与し得る光学補償機能に乏しいため、前記TACフィルムに対して、レターゼーション上昇剤として芳香族化合物を添加する方法(例えば、特許文献1参照。)や、両末端に芳香族基を有するジエステル化合物と、両末端及び分子鎖中に芳香族環式構造を有するポリエステル化合物との混合物からなるエステル化合物を添加する方法(例えば、特許文献2参照。)等が提案されてきた。
【0006】
そこで、近年においては、光学補償機能に乏しいTACフィルムに代わるものとして、ポリカーボネート(PC)フィルムやシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムが注目されている。
【0007】
光学補償フィルムは、通常、一軸または二軸延伸等の加工を施し、分子を配向させることで光学補償機能を発現するが、前記PCフィルムは、耐熱性や耐湿熱性といった耐久性には優れるものの、フィルムが強靭すぎて延伸し難いことや、それに付随して分子を配向させ難いことから、光学補償機能を発現するのが困難であるとの問題点を有している。また、フィルムを延伸する際の延伸温度(以下、延伸温度)が高温であると、分子の配向が乱れるため、光学補償機能を制御することも非常に困難である。
【0008】
また、前記COPフィルムは、耐久性、光学補償機能ともに優れているが、高価であるため、コスト削減の観点から、フィルムの薄膜化が強く求められている。しかしながら、COPフィルムを薄膜化することで光学補償機能が低下するため、改善が求められている。
【0009】
以上のように、産業界からは、延伸温度が低い条件下でもフィルムを延伸でき、かつ、薄膜においても光学補償機能及び耐久性に優れる光学フィルム及びその材料が強く求められているものの、未だ見出されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−284124号公報
【特許文献2】特開2008−069225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、延伸温度が低い条件下でもフィルムを延伸でき、かつ、薄膜においても光学補償機能及び耐久性に優れる光学フィルムが得られる樹脂組成物、およびそれを用いた光学フィルム、および光学フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討を進めるなかで、ウレタン樹脂の使用に着目し、鋭意研究を行った。具体的には、様々な種類のポリオールやポリイソシアネートの組み合わせを検討し、更には、様々な種類の鎖伸長剤との組み合わせをも検討した。
【0013】
その結果、脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオールと芳香族ポリエステルポリオールとを含有するポリオールと、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートと、脂肪族環式構造含有ポリアミンと、を反応させることによって得られるウレタンウレア樹脂と溶媒を含有するウレタンウレア樹脂組成物を用いた場合に、延伸温度が低い条件下でもフィルムを延伸でき、かつ、薄膜においても光学補償機能及び耐久性に優れる光学フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)及び芳香族ポリエステルポリオール(A−2)とを含有するポリオール(A)と、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と、脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)と、を反応させて得られるウレタンウレア樹脂(1)及び溶媒(2)とを含有するウレタンウレア樹脂組成物及びそれを用いて得られた光学フィルムに関するものである。
また、本発明は、脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)及び芳香族ポリエステルポリオール(A−2)とを含有するポリオール(A)と、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と、脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)と、を反応させて得られるウレタンウレア樹脂(1)及び溶媒(2)とを含有するウレタンウレア樹脂組成物を基材に塗布し、次いで、塗布基材を乾燥して、フィルムを得る工程(i)と、該フィルムを延伸する工程(ii)と、を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記ウレタンウレア樹脂組成物を用いることにより、延伸温度が下げられ、分子の配向が乱れ難くなるため、光学補償機能の向上に寄与することができる。
また、本発明のウレタンウレア樹脂組成物を用いて得られた光学フィルムは、薄膜においても光学補償機能及び耐久性に優れるものである。
また、本発明の製造方法によれば、光学補償機能に優れる光学フィルムを簡便に製造することができる。
【0016】
なお、本発明における光学補償機能とは、液晶表示装置を構成する液晶物質によって生じた位相差を補償するものであって、広視野角化を実現するうえで重要な役割を果たすものである。位相差が補償されないと、液晶画面を斜め方向から見た場合に表示される画像等の色、形状が本来のものと異なって見える問題がある。従って、前記光学補償機能とは、広視野角を発現させるための光学異方性を指す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
はじめに、本発明で使用するウレタンウレア樹脂(1)について説明する。
【0018】
本発明で使用するウレタンウレア樹脂(1)は、脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)及び芳香族ポリエステルポリオール(A−2)とを含有するポリオール(A)と、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と、脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)と、を反応させて得られるものである。
【0019】
前記ウレタンウレア樹脂(1)は、優れた光学補償機能と耐久性を奏するうえで脂肪族環式構造と芳香環を有することが必須である。前記ウレタンウレア樹脂(1)は、脂肪族環式構造と芳香環を有することで、優れた耐久性を発現し、また、フィルムを延伸する際に得られる、脂肪族環式構造同士、脂肪族環式構造より平面性の高い芳香環同士、及び脂肪族環式構造と芳香環との優れたスタッキングにより、薄膜においても優れた光学補償機能を発現する。
【0020】
また、前記脂肪族環式構造は、前記脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオールと脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートと脂肪族環式構造含有ポリアミンのいずれからも供給されることが重要である。例えば、前記ウレタンウレア樹脂(1)中に存在する脂肪族環式構造の質量割合が同程度であっても、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートの代わりに脂肪族ポリイソシアネートを使用した樹脂組成物では、所望の光学補償機能及び耐久性を備えた光学フィルムを形成できない場合がある。
【0021】
前記ウレタンウレア樹脂(1)としては、優れた光学補償機能と耐久性とを両立した光学フィルムを得る観点から、脂肪族環式構造の質量割合が40〜60質量%の範囲であることが好ましく、50〜60質量%の範囲であることがより好ましい。なお、前記脂肪族環式構造の質量割合は、前記ウレタンウレア樹脂(1)の製造に使用する原料である、脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)と芳香族ポリエステルポリオール(A−2)と脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)との合計質量に対する、前記原料中に占める脂肪族環式構造の質量の割合である。
【0022】
また、前記ウレタンウレア樹脂(1)としては、優れた光学補償機能と耐久性とを両立した光学フィルムを得る観点から、芳香環の質量割合が1〜30質量%範囲であることが好ましく、1〜15質量%の範囲であることがより好ましい。なお、前記芳香環の質量割合は、前記ウレタンウレア樹脂(1)の製造に使用する原料である、脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)と芳香族ポリエステルポリオール(A−2)と脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)との合計質量に対する、前記原料中に占める芳香環の質量の割合である。
【0023】
前記ウレタンウレア樹脂(1)は、ウレタン結合とウレア結合とを有する。ウレア結合を有さない、いわゆるウレタンアクリレートを使用した場合には、成形加工性が低く、薄膜の光学フィルムを製造しにくい場合がある。したがって、前記ウレタンウレア樹脂(1)としては、優れた成形加工性とともに、良好な光学補償機能と耐久性とを両立する観点から、1〜20質量%のウレア結合を有するものを使用することが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることが特に好ましい。なお、前記ウレア結合の質量割合は、前記ウレタンウレア樹脂(1)の製造に使用する原料である、脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)と芳香族ポリエステルポリオール(A−2)と脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)との合計質量に対する、前記原料中に占めるウレア結合構造の質量の割合である。
【0024】
また、前記ウレタンウレア樹脂(1)としては、優れた成形加工性とともに、良好な光学補償機能と耐久性とを両立する観点から、1〜20質量%ウレタン結合を有するものを使用することが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。なお、前記ウレタン結合の質量割合は、前記ウレタンウレア樹脂(1)の製造に使用する原料である、脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)と芳香族ポリエステルポリオール(A−2)と脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)との合計質量に対する、前記原料中に占めるウレタン結合構造の質量の割合である。
【0025】
前記ウレタンウレア樹脂(1)の重量平均分子量としては、5000〜200000であることが、優れた光学補償機能と耐久性とともに良好な成形加工性を維持するうえで好ましく、15000〜200000であることがより好ましい。なお、前記ウレタンウレア樹脂(1)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを使用し、スチレン換算によって求めた値である。
【0026】
次に、前記ウレタンウレア樹脂(1)の製造に使用する脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)について説明する。
【0027】
前記脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステル及び/またはホスゲンと、後述する概ね50〜400程度の比較的低分子量の脂肪族環式構造含有ポリオール(a−1)とを反応させて得られるものを使用することができる。
【0028】
前記炭酸エステルとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、フェニルナフチルカーボネート等を使用することできる。
【0029】
前記炭酸エステルやホスゲンと反応しうる脂肪族環式構造含有ポリオール(a−1)としては、例えば1,2−シクロブタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ〔5,2,1,0,2,6〕デカン−ジメタノール、ビシクロ〔4,3,0〕−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジメタノール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカノール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、水素添加ビスフェノ−ルA、1,3−アダマンタンジオール等を使用することができ、なかでも1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用することが好ましい。
【0030】
前記脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)としては、水酸基価が30〜230mgKOH/gの範囲であるものを使用することが好ましく、50〜230mgKOH/gの範囲であるものを使用することがより好ましい。なお、前記ポリオール(A)の水酸基価は、JIS K0070に準拠して測定を行った値である。
【0031】
次に、前記ウレタンウレア樹脂(1)の製造に使用する芳香族ポリエステルポリオール(A−2)について説明する。
【0032】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)は、アルキレンジオール(a−2−1)と、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びそれらのジアルキルエステル化合物からなる群より選ばれる1種以上である芳香族化合物(a−2−2)と、をエステル化反応させて得られるものである。
【0033】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)の主な構造を示すと、下記一般式(1)で表されるような構造である。
【0034】
【化1】

(上記一般式(1)中のGはアルキレンジオール(a−2−1)の残基を表し、Tは芳香族化合物(a−2−2)の残基を表し、Rはアルキル基を表す。また、nは繰り返し数を表し、1以上の整数である。)
【0035】
なお、上記の「残基」は、次のことを意味する。アルキレンジオール(a−2−1)の「残基」とは、アルキレンジオール(a−2−1)が反応前に有する2つの水酸基を除いた残りの有機基を表す。また、芳香族化合物(a−2−2)の「残基」とは、テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸が有するカルボキシル基を除いた残りの有機基を表す。
【0036】
前記アルキレンジオール(a−2−1)としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の直鎖状アルキレンジオール;プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール等の分岐状アルキレンジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキシレングリコール等のその他のジオールなどが挙げられる。これらのアルキレンジオール(a−2−1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。これらのアルキレンジオール(a−2−1)の中でも、光学補償機能や耐久性の両立、及び脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)との相溶性が良好となることから、炭素原子数2〜12の直鎖状及び/又は分岐状のアルキレンジオールが好ましく、炭素原子数2〜6の直鎖状及び/又は分岐状のアルキレンジオールがより好ましい。
【0037】
前記炭素原子数2〜12の直鎖状及び/又は分岐状のアルキレンジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールがより好ましく、光学フィルムへ高い複屈折を付与できることから、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールが特に好ましい。
【0038】
また、本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記のアルキレンジオール(a−2−1)に加えて、モノアルコールや多価アルコールを使用してもよい。モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ペンチルアルコール、オクチルアルコール、ラウリルアルコール、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。また、多価アルコールとしては、グリセリン、ソルビトール、リビトール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。これらのモノアルコールや多価アルコールは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、本発明の光学フィルムへ高い複屈折を付与するためには、前記アルキレンジオール(a−2−1)とモノアルコールや多価アルコールとの合計100質量部中で前記アルキレンジオール(a−2−1)の使用量を95質量部以上とすることが好ましい。
【0039】
本発明で用いる前記芳香族化合物(a−2−2)は、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びそれらのジアルキルエステル化合物であり、これらは単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0040】
前記(a−2−2)としてテレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステル化合物を用いる場合、そのアルキル基としては、炭素原子数1〜8のものが挙げられ、炭素原子数3以上のものは直鎖アルキル基であっても分岐アルキル基であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。また、2つのアルキル基は相互に同一であっても、異なるものであってもよい。
【0041】
前記テレフタル酸のジアルキルエステル化合物の具体例としては、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジブチル、テレフタル酸ジペンチル、テレフタル酸ジヘキシル、テレフタル酸ジヘプチル等が挙げられる。
【0042】
前記ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステル化合物の具体例としては、ナフタレンジカルボン酸ジメチル、ナフタレンジカルボン酸ジエチル、ナフタレンジカルボン酸ジプロピル、ナフタレンジカルボン酸ジブチル、ナフタレンジカルボン酸ジペンチル、ナフタレンジカルボン酸ジヘキシル、ナフタレンジカルボン酸ジへプチル等が挙げられる。
【0043】
また、前記芳香族化合物(a−2−2)の中でも、ナフタレンジカルボン酸又はそのジアルキルエステル化合物が好ましく、具体的には、1,4−ナフタレンジカルボン酸又はそのジアルキルエステル化合物、1,5−ナフタレンジカルボン酸又はそのジアルキルエステル化合物、1,8−ナフタレンジカルボン酸又はそのジアルキルエステル化合物、2,3−ナフタレンジカルボン酸又はそのジアルキルエステル化合物、2,6−ナフタレンジカルボン酸又はそのジアルキルエステル化合物が好ましい。これらの中でも、2,6−ナフタレンジカルボン酸又はそのジアルキルエステル化合物がより好ましく、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルがさらに好ましい。
【0044】
さらに、前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)の製造において、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他のジカルボン酸もしくはそのアルキルエステル化合物、又はカーボネート化合物を併用することができる。前記ジカルボン酸又はそのアルキルエステル化合物としては、脂肪族ジカルボン酸もしくは芳香族ジカルボン酸、又はこれらのアルキルエステル化合物を使用することができる。前記脂肪族ジカルボン酸又はそのアルキルエステル化合物としては、例えば、コハク酸、コハク酸ジメチル、グルタル酸、グルタル酸ジメチル、アジピン酸、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、ピメリン酸、ピメリン酸ジメチル、スベリン酸、スベリン酸ジメチル、アゼライン酸、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸、セバシン酸ジメチル、デカンジカルボン酸、デカンジカルボン酸ジメチル、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、ダイマー酸、ダイマー酸ジメチル、フマル酸、フマル酸ジメチル等が挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステル化合物としては、フタル酸、フタル酸ジメチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル等が挙げられる。さらに、カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのその他のジカルボン酸もしくはそのアルキルエステル化合物、又はカーボネート化合物は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。本発明の光学フィルムへ高い複屈折を付与するためには、前記芳香族化合物(a−2−2)とその他のジカルボン酸等との合計100質量部中で前記芳香族化合物(a−2−2)の使用量を95質量部以上とすることが好ましい。
【0045】
本発明で用いる芳香族ポリエステルポリオール(A−2)は、反応器に、前記アルキレンジオール(a−2−1)と、前記芳香族化合物(a−2−2)とを仕込み、加熱してエステル化反応させることによって得ることができる。
【0046】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)を製造する際に用いる反応設備としては、加圧、減圧に対応した反応設備が好ましく、反応器、攪拌機、精留塔、還流冷却器、減圧するためのポンプ等を備えた一般的な装置を用いることができる。
【0047】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)を製造する際に、エステル化反応を促進する目的で、エステル化触媒を用いることが好ましい。このエステル化触媒としては、周期律表2族、3族、12族、13族及び14族からなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属や有機金属化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ハフニウム、ゲルマニウム等の金属;チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2−エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等の金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、反応性を向上することができ、取り扱いやすく、エステル化反応により得られた芳香族ポリエステルポリオール(A−2)の保存安定性が良好であることから、有機酸亜鉛類やチタンアルコキサイド類が好ましく、具体的には酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート等を用いることが好ましい。
【0048】
また、前記エステル化触媒の使用量は、エステル化反応を制御でき、かつ得られる芳香族ポリエステルポリオール(A−2)の着色を抑制できる範囲の量であればよく、前記アルキレンジオール(a−2−1)と、前記芳香族化合物(a−2−2)との合計量に対し、10〜1,000ppmの範囲が好ましく、20〜500ppmの範囲がより好ましく、30〜300ppmの範囲が特に好ましい。芳香族ポリエステルポリオール(A−2)の着色はフィルムの透明性を低下させるため、高い透明性が求められる光学フィルム用途では、特に留意する必要がある。
【0049】
芳香族ポリエステルポリオール(A−2)を製造する際、前記エステル化触媒を添加する時期は、反応器に前記アルキレンジオール(a−2−1)と、前記芳香族化合物(a−2−2)とを仕込むのと同時に添加してもよく、昇温途中、減圧開始の際に添加してもよく、エステル化触媒を分割して添加してもよい。
【0050】
また、前記アルキレンジオール(a−2−1)と、前記芳香族化合物(a−2−2)とを反応させる際に、本発明の効果を阻害しない範囲で前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)を分岐化、高分子量化させることを目的として、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価アルコール又はカルボン酸;ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートも用いてもよい。
【0051】
芳香族ポリエステルポリオール(A−2)を製造する際の反応温度は、原料となる前記アルキレンジオール(a−2−1)と、前記芳香族化合物(a−2−2)とが蒸発や昇華することを抑制しつつ反応を促進し、反応により生成する芳香族ポリエステルポリオール(A−2)の熱分解、着色を抑制できることから、120℃〜300℃の範囲が好ましく、150℃〜280℃の範囲がより好ましい。また、前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)を製造する際の反応時間は、2時間以上であることが好ましく、4〜100時間の範囲であることがより好ましい。
【0052】
さらに、前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)を製造する際に、未反応の原料及び低分子量の生成物を除去する目的や反応を促進させる目的で、反応の途中から減圧下で行うことが好ましい。この前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)を製造する際の減圧度は、速やかに未反応の原料及び低分子量の生成物が除去でき、反応を促進することができることから、3,000Pa以下であることが好ましく、2,000Pa以下であることがより好ましく、10〜1,000Paの範囲がさらに好ましい。
【0053】
上記の製造方法により得られる芳香族ポリエステルポリオール(A−2)の水酸基価は、後述する脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートとの反応性等の観点から、20〜380の範囲であるものが好ましく、40〜320の範囲であるものがより好ましく、60〜280の範囲であるものがさらに好ましい。なお、この水酸基価は芳香族ポリエステルポリオール(A−2)の末端水酸基、すなわち原料として使用したアルキレンジオール(a−2−1)が有する水酸基に由来するものである。
【0054】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)の数平均分子量は、前記脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)との相溶性が良好となり、本発明の光学フィルムの平滑性、透明性が良好となることから、300〜5000の範囲が好ましく、350〜3000の範囲がより好ましく、400〜2000の範囲がさらに好ましく、400〜800の範囲が特に好ましい。
【0055】
なお、本発明における前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)の数平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として使用し、ゲルパーミュエ−ションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定して、標準ポリスチレンに換算した値として得ることができる。
【0056】
なお、本発明においては、前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)が、前記ウレタンウレア樹脂(1)骨格中に組み込まれていることが重要である。
前記(A−2)が前記ウレタンウレア樹脂(1)骨格に込みこまれていない場合には、所望の光学補償機能が得られない。また、前記ウレタンウレア樹脂(1)骨格中に前記(A−2)が組み込まれていない場合に、前記(A−2)を添加剤として後から添加しても、所望の光学補償機能が得られない。
【0057】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)中における、芳香環の質量割合は、光学補償機能と耐久性をより向上できる観点から、30〜90質量%あることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましい。
【0058】
次に、前記ウレタンウレア樹脂(1)の製造に使用するポリオール(A)について説明する。
【0059】
前記ポリオール(A)は、前記脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−
1)及び前記芳香族ポリエステルポリオールとを含有するものである。
【0060】
前記ポリオール(A)中における、前記(A−1)と前記(A−2)との質量割合の比率は、光学補償機能と耐久性とのバランスの観点から、90/10〜60/40であることが好ましく、85/15〜75/25であることがより好ましい。
【0061】
また、前記ポリオール(A)中における、芳香環の質量割合は、光学補償機能と耐久性をより向上できる観点から、1〜40質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。なお、前記ポリオール(A)中における、芳香環の質量割合は、前記(A−1)と前記(A−2)の合計質量に対する、芳香環の質量割合を示す。
【0062】
また、前記ポリオール(A)としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、前記(A−1)及び(A−2)以外の他のポリオールを含有してもよい。
【0063】
前記他のポリオールとしては、例えば、脂肪族環式構造含有ポリエステルポリオール、脂肪族環式構造含有ポリエーテルポリオール、脂肪族環式構造含有アクリルポリオール等
の脂肪族環式構造含有ポリオール、芳香族ポリエーテルポリオール、芳香族ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリアクリルポリオール等の芳香族ポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリカーボネートポリオール、脂肪族ポリアクリルポリオール、脂肪族ポリエーテルポリオール等の脂肪族ポリオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3’−ジメチロールへプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)へプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ハイドロキノンジエチロールエーテル等の鎖伸長剤等を単独または2種以上を併用して使用することができる。
【0064】
前記脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)及び前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)の合計質量は、本発明のウレタンウレア樹脂(1)の製造に使用する原料である脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)と芳香族ポリエステルポリオール(A−2)と脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)との合計質量に対して、40〜80質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0065】
次に、前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)について説明する。
【0066】
前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)としては、例えばイソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナートエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5−および/または2,6−ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等を使用することができる。なかでも、本発明の光学フィルムに優れた光学補償機能と耐久性を付与する観点からジイソシアネートを使用することが好ましく、イソホロンジイソシアネートや4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを使用することがより好ましく、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0067】
また、本発明では、前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)の他に、必要に応じて、フェニレンジイソシアネートやトリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等のその他のポリイソシアネートを組み合わせ使用することができる。
【0068】
前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)は、得られるウレタンウレア樹脂(1)の製造に使用する原料である脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)と芳香族ポリエステルポリオール(A−2)と脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)との合計質量に対して、15〜50質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0069】
次に、前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)について説明する。
【0070】
前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)は、前記ウレタンウレア樹脂中にウレア結合を導入するために使用する。
【0071】
前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)としては、例えば、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、メチルジアミノシクロヘキサン、ビペラジン、ノルボルネンジアミン等を使用することができ、ジアミンを使用することが好ましく、特にイソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミンを使用することが光学補償機能と耐久性とを向上できる観点から好ましい。
【0072】
また、本発明では、前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)の他に、必要に応じて、従来からエチレンジアミン等の鎖伸長剤として知られる脂肪族ポリアミン等を、本発明の効果を損なわない範囲で併用しても良い。
【0073】
前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)は、得られるウレタンウレア樹脂(1)の製造に使用する原料である脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)と芳香族ポリエステルポリオール(A−2)と脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)との合計質量に対して、1〜20質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0074】
次に、本発明で使用する溶媒(2)について説明する。
【0075】
前記溶媒(2)としては、有機溶媒及び水溶媒を使用することができるが、光学フィルムの成形性をより向上できる観点から、有機溶媒を使用することがより好ましい。
【0076】
前記溶媒(2)として有機溶媒を使用する場合は、特に限定されないが、例えば、メタノール、イソプロパノール、2−ブタノール、n−ブタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブ、酢酸セロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、等を使用することができ、これらは単独又は併用して使用してもよい。また、これらの有機溶媒は、使用される用途に応じて適宜選択される。これらのなかでも、後述するウレタンウレア樹脂の製造後に、未反応のイソシアネート基やウレタンウレア樹脂の末端イソシアネート基を失活させるために、アルコールを含有することが好ましい。
【0077】
また、未反応のイソシアネート基やウレタンウレア樹脂の末端イソシアネート基を失活させる目的で、前記した溶媒としてのアルコールを使用する以外に、水酸基含有(メタ)アクリル化合物を使用してもよい。
【0078】
前記水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アクリル酸アルキルエステル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート等を使用することができる。
【0079】
また、本発明のウレタンウレア樹脂組成物における、前記ウレタンウレア樹脂(1)と前記溶媒(2)の質量割合は、(1)/(2)=10〜50/90〜50であることが好ましく、15〜35/85〜65であることがより好ましい。
【0080】
次に、前記ウレタンウレア樹脂(1)の製造方法について説明する。
【0081】
前記ウレタンウレア樹脂(1)の製造方法としては、例えば以下の製法(i)〜製法(ii)の方法が挙げられる。なかでも以下の(i)の方法によって製造することが、反応を制御しやすいため好ましい。
【0082】
製法(i)は、前記溶媒(2)下で、前記脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)及び前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)と、必要に応じて、前記その他のポリオールと、を含有するポリオール(A)と、前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と、を反応させることによって分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得、次いで、前記ウレタンプレポリマーと前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)とを反応させることによってウレタンウレア樹脂(1)を製造する方法である。
【0083】
前記ポリオール(A)と前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)との反応は、該ポリオール(A)の有する水酸基と脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基との当量割合[イソシアネート基/水酸基]が1.1/1.0〜5.0/1.0の範囲で行うことが好ましく、1.5/1.0〜3.0/1.0の範囲であることがより好ましい。また、前記ポリオール(A)と前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)との反応は、20〜120℃の条件下で概ね30分〜24時間程度行うことが好ましい。
【0084】
前記ポリオール(A)と脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)との反応で得られた、前記分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)との反応は、例えば、前記ウレタンプレポリマーと前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)とを一括または逐次供給し反応させることによってウレタンウレア樹脂(1)を製造することができる。その際、前記ウレタンプレポリマーの有するイソシアネート基と脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)のアミノ基との当量割合[アミノ基/イソシアネート基]は、0.70/1.0〜0.99/1.0の範囲であることが好ましく、特に耐久性の観点から、0.80/1.0〜0.99/1.0の範囲であることがより好ましい。また、前記ウレタンプレポリマーと前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)との反応は、20〜80℃の条件下で概ね1〜3時間ほど反応させることが好ましい。
【0085】
また、前記製法(ii)は、前記溶媒(2)下で、前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)とを反応させることによって分子末端にイソシアネート基を有するポリウレアプレポリマーを得、次いで、該ポリウレアプレポリマーと前記ポリオール(A)を反応させることによってウレタンウレア樹脂(1)を製造する方法である。
【0086】
前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)との反応は、前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基と前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)の有するアミノ基との当量割合[イソシアネート基/アミノ基]が1.1/1.0〜5.0/1.0の範囲で行うことが好ましい。また、前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)との反応は、20〜80℃の条件下で概ね30分〜1時間程度行うことが好ましい。
【0087】
前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と前記脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)との反応で得られた、前記分子末端にイソシアネート基を有するポリウレアプレポリマーと、前記ポリオール(A)との反応は、例えば、前記ポリウレアプレポリマーと前記ポリオール(A)とを一括または逐次供給し反応させることによって、ウレタンウレア樹脂(1)を製造することができる。
【0088】
前記ウレタンウレア樹脂(1)を製造する際には、前記製法(i)及び(ii)のいずれの場合であっても、必要に応じて三級アミン触媒や有機金属系触媒を使用して反応を促進することができる。
【0089】
以上の方法によって得られたウレタンウレア樹脂(1)及び溶媒(2)を含有する本発明のウレタンウレア樹脂組成物は、必要に応じて他の添加剤を含んでいても良い。
【0090】
前記他の添加剤としては、例えば、充填材や顔料、染料、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、接着性付与剤、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤、成膜助剤、安定剤、難燃剤、賦形剤、光硬化剤、熱硬化剤、硬化促進剤、位相差制御剤、位相差向上剤等を本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0091】
また、本発明のウレタンウレア樹脂組成物には、例えば、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等の多価アルコール類のアリルエーテル化合物や、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル化合物等を含有してもよい。
【0092】
次に、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。
【0093】
前記光学フィルムの製造方法は、脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)及び芳香族ポリエステルポリオール(A−2)とを含有するポリオール(A)と、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と、脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)と、を反応させて得られるウレタンウレア樹脂(1)及び溶媒(2)とを含有するウレタンウレア樹脂組成物を基材に塗布し、次いで、塗布基材を乾燥して、フィルムを得る工程(i)と、該フィルムを延伸する工程(ii)と、を有することを特徴とする。
【0094】
まず、前記工程(i)について説明する。
【0095】
前記基材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、ゴム、石英、セラミック、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属や各種プラスチック等を例示することができる。
【0096】
前記プラスチックとしては、例えば、シリコン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、PC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、TAC(トリアセチルセルロース)等が挙げられる。
【0097】
前記ウレタンウレア樹脂組成物を前記基材に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、カーテンフローコーター法やダイコーター法等のスリットコーター法、ナイフコーター法、ロールコーター法等によって塗工する方法が挙げられる。
【0098】
前記塗布基材を乾燥する方法しては、前記溶媒(2)が実用上除去できればよく、常温下で自然乾燥でも良いし、加熱乾燥させることもできる。なかでも、乾燥時間を短縮できる観点から、加熱乾燥させることが好ましく、前記加熱乾燥は、通常、40〜250℃、好ましくは60〜150℃で、1〜10分程度、好ましくは1〜30分程度の時間で行うことが好ましい。
【0099】
前記乾燥の後には、前記ウレタンウレア樹脂組成物中の溶媒(2)が除去されているため、フィルムと前記基材との積層体が得られる。次いで、該積層体からフィルムのみを剥離することで、フィルムが得られる。
【0100】
なお、前記フィルムの膜厚としては、後述する延伸倍率や、得られる光学フィルムの膜厚によって、適宜決定されるものであるが、概ね10〜500μmであることが好ましい。
【0101】
次に、該フィルムを延伸する工程(ii)について説明する。
【0102】
前記フィルムの延伸工程は、前記ウレタンウレア樹脂組成物中の分子を配向させ、光学補償機能を発現するためのものである。
【0103】
前記フィルムを延伸する際には、延伸するためにフィルムを加熱することが一般的である。前記フィルムを延伸するための加熱温度(以下、延伸温度)としては、通常100〜250℃であることが一般的であるが、前記延伸温度は、高温になるに従って、樹脂に含まれる分子の配向が乱雑となるため、光学補償機能が低下する結果となる。一方、本発明においては、前記ウレタンウレア樹脂組成物を使用することにより、延伸温度を低下させることができる。従って、本発明の延伸温度としては、140〜170℃であることが好ましい。
【0104】
また、前記フィルムを延伸する際には、フィルムに対し、縦及び/又は横方向に一軸又は二軸延伸することが一般的である。前記一軸又は二軸延伸する際の延伸倍率としては、
使用される用途に応じた光学補償機能の値や、延伸前のフィルムの厚みにより適宜決定されるものであるが、概ね1.5〜4倍であることが好ましい。
【0105】
一般的に、光学フィルムの膜厚としては、近年の液晶ディスプレイの薄膜化に伴い、300μm以下、好ましくは、100μm以下であることが求められている。また、一般的に、光学フィルムは、後述する光学フィルムの面内レターゼーション値(Re)及び光学フィルムの厚さ方向のレターゼーション値(Rth)が概ね100nm以上であるものが、良好な光学補償機能を有する光学フィルムであると評価される。前記の方法で得られた本発明の光学フィルムは、5μmの膜厚でも良好な光学補償機能及び耐久性を有するものである。ただし、本発明の光学フィルムの膜厚としては、使用される用途に応じて適宜決定されるものであり、5〜100μmであることが好ましく、5〜50μmがより好ましい。
【0106】
本発明の光学フィルムは、視野角補償フィルム、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム等として使用することができる。これらの中でも、本発明の光学フィルムは、光学補償機能及び耐久性に優れることから、位相差フィルムとして特に好適に使用することができる。
【実施例】
【0107】
[合成例1]
<芳香族ポリエステルポリオール(A−2−1)の合成>
温度計、攪拌器及び還流冷却器を備えた内容積3リットルの四つ口フラスコに、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル659.4g、テレフタル酸ジメチル58.3g、1,2−プロピレングリコール684.8g及びエステル化触媒として酢酸亜鉛・2水和物0.084gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、210℃になるまで段階的に昇温して、合計13時間反応させた。反応後、160℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧除去することによって、常温固体の芳香族ポリエステルポリオール(A−2−1)(酸価:0.08、水酸基価:213、数平均分子量:590)を得た。
【0108】
[芳香族ポリエステルポリオール(A−2−1)の酸価、水酸基価の測定条件]
各エステル化合物の酸価及び水酸基価をJIS K 0070−1992に準じて測定した。
【0109】
[芳香族ポリエステルポリオール(A−2−1)の数平均分子量(Mn)の測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC−8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GURDCOLUMN SuperHZ−L」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料15mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC−8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0110】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−300」
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
【0111】
[実施例1]
<ウレタンウレア樹脂組成物(x)の合成>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(宇部興産(株)製のUC−100、水酸基価:116.4mgKOH/g)300質量部と合成例1で得られた芳香族ポリエステルポリオール(A−2−1)75質量部を仕込み、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを238.0質量部、トルエンを330.1質量部加え、発熱を抑制しながら、80℃で3時間反応させることによって分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのトルエン溶液を得た。
【0112】
次いで、前記トルエン溶液と、N、N−ジメチルホルムアミドの1235.6質量部と、トルエンの287.7質量部と、sec−ブタノールの205.9質量部を混合した後、40℃まで冷却し、イソホロンジアミンの73.4質量部と混合し、70℃で3時間反応させることによって、ウレタンウレア樹脂組成物(x)(重量平均分子量;147000、不揮発分;25質量%)を得た。
【0113】
得られたウレタンウレア樹脂組成物(x)を離型ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム上にバーコーティングにより塗布した後に、該塗布基材を100℃の熱風乾燥機内で20分間乾燥させた。その後、得られたフィルムと離型PETフィルムの積層体から、フィルムのみを剥離した。得られたフィルムの膜厚は52μmであった。
【0114】
該フィルムを縦45mm×横45mmの長さに裁断し、裁断したフィルムを二軸延伸機(井元製作所(株)製「IMC−190B型」)に設置し、160℃の延伸温度下で、30mm/minの速度で、縦135mmとなるまで3倍一軸延伸し、膜厚31μmの光学フィルムを得た。
【0115】
[比較例1]
<ウレタンウレア樹脂組成物(y)の合成>
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた5リットルの四つ口フラスコに、脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(宇部興産(株)製のUC−100、水酸基価:116.4mgKOH/g)437.3質量部を仕込み、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを238.0質量部、トルエンを363.6質量部加え、発熱を抑制しながら、80℃で3時間反応させることによって分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのトルエン溶液を得た。
【0116】
次いで、前記トルエン溶液と、N、N−ジメチルホルムアミドの1358.2質量部と、トルエンの315.4質量部と、sec−ブタノールの226.3質量部を混合した後、40℃まで冷却し、イソホロンジアミンの73.4質量部と混合し、70℃で3時間反応させることによって、ウレタンウレア樹脂組成物(y)(重量平均分子量;128000、不揮発分;25質量%)を得た。
【0117】
得られたウレタンウレア樹脂組成物(y)を離型ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム上にバーコーティングにより塗布した後に、該塗布基材を100℃の熱風乾燥機内で20分間乾燥させた。その後、得られたフィルムと離型PETフィルムの積層体から、フィルムのみを剥離した。得られたフィルムの膜厚は50μmであった。
【0118】
該フィルムを縦45mm×横45mmの長さに裁断し、裁断したフィルムを二軸延伸機(井元製作所(株)製「IMC−190B型」)に設置し、160℃の延伸温度下で、30mm/minの速度で、縦135mmとなるまで3倍一軸延伸しようとしたが、フィルムが強靭であり、延伸できなかったため、光学フィルムが得られなかった。
【0119】
[比較例2]
比較例1において、延伸温度を180℃に変更した以外は、比較例1と同様の条件で、フィルムの延伸を行い、膜厚29μmの光学フィルムを得た。
【0120】
[比較例3]
<ウレタンウレア樹脂組成物(z)の合成>
比較例1で得られたウレタンウレア樹脂組成物(y)100質量部に、合成例1で得られた芳香族ポリエステルポリオール(A−2−1)2.7質量部を添加し、混合し、ウレタンウレア樹脂組成物(z)を得た。
【0121】
得られたウレタンウレア樹脂組成物(z)を離型ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム上にバーコーティングにより塗布した後に、該塗布基材を100℃の熱風乾燥機内で20分間乾燥させた。その後、得られたフィルムと離型PETフィルムの積層体から、フィルムのみを剥離した。得られたフィルムの膜厚は55μmであった。
【0122】
該フィルムを縦45mm×横45mmの長さに裁断し、裁断したフィルムを二軸延伸機(井元製作所(株)製「IMC−190B型」)に設置し、160℃の延伸温度下で、30mm/minの速度で、縦135mmとなるまで3倍一軸延伸し、膜厚32μmの光学フィルムを得た。
【0123】
[ウレタンウレア樹脂の重量平均分子量の測定方法]
上記実施例1及び比較例1で得られたウレタンウレア樹脂の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算により求めた。得られたウレタンウレア樹脂組成物の固形分0.4gをテトラヒドロフラン100gに溶解して測定試料とした。
測定装置は、東ソー(株)製高速液体クロマトグラフHLC−8220型を用いた。カラムは、東ソー(株)製カラムTSK−GEL(HXL−H、G5000HXL、G4000HXL、G3000HXL、G2000HXL)を組み合わせて使用した。
測定条件として、カラム温度は40℃、溶離液はテトラヒドロフラン、流量は1.0mL/min、試料注入量500μLとし、標準ポリスチレンはTSK標準ポリスチレンを用いた。
【0124】
[光学補償機能の評価方法]
本発明において、光学補償機能とは、広視野角を発現させるための光学異方性を指す。
そして、前記光学異方性は、一般的にレターゼーション値によって把握することができる。従って、本発明においては、前記光学補償機能の評価を、光学フィルムの面内レターゼーション値(Re)及び光学フィルムの厚さ方向のレターゼーション値(Rth)で評価した。
【0125】
具体的には、実施例1及び比較例2、3で得られた光学フィルムを、自動複屈折率計(王子計測機器(株)製、「KOBRA WR」)を用いて、前記光学フィルムの面内レターゼーション値(Re)及び光学フィルムの厚さ方向のレターゼーション値(Rth)を測定した。測定条件は、温度23℃、相対湿度20%の環境下で12時間以上調湿した後、同環境下で測定を行った。
なお、比較例1においては、光学フィルムが得られず、光学補償機能の評価ができなかったため、「−」とした。
【0126】
なお、前記光学フィルムの厚さ方向のレターゼーション値(Rth)とは、下記式(2)で定義される値である。
Rth={(nx+ny)/2−Nz}×d (nm) (2)
(式(1)中、Nx:光学フィルム面内の遅相軸の屈折率、Ny:光学フィルム面内の進相軸の屈折率、Nz:光学フィルムの厚さ方向の屈折率を示す。)
【0127】
[耐久性の評価方法]
耐久性は、光学フィルムの耐熱収縮率により評価した。
具体的には、実施例1及び比較例2、3で得られた光学フィルム(縦135mm)を、85℃の熱風乾燥機内に24時間放置し、その後の光学フィルムの縦の長さを測定し、下記式(3)により光学フィルムの耐熱収縮率を算出した。
光学フィルムの耐熱収縮率(%)={85℃の熱風乾燥機内に24時間放置後の光学フィルムの縦の長さ(mm)/135(mm)}×100
なお、前記光学フィルムの耐熱収縮率が97%以上であるものは「○」、97%未満であるものは「×」と評価した。
なお、比較例1においては、光学フィルムが得られず、耐久性の評価ができなかったため、「−」とした。
【0128】
【表1】

【0129】
表1中の略称について説明する。
「CH−PC」は、宇部興産(株)製のUC−100(1,4−シクロヘキサンジメタノール系ポリカーボネートポリオール、水酸基価:116.4)である。
「H12MDI」は4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである。
「IPDA」はイソホロンジアミンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)及び芳香族ポリエステルポリオール(A−2)とを含有するポリオール(A)と、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と、脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)と、を反応させて得られるウレタンウレア樹脂(1)及び溶媒(2)とを含有するウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項2】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)が、アルキレンジオール(a−2−1)と、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及びそれらのジアルキルエステル化合物からなる群より選ばれる1種以上である芳香族化合物(a−2−2)と、をエステル化反応させて得られるものである、請求項1に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルキレンジオール(a−2−1)が、炭素原子数2〜12の直鎖状及び/又は分岐状のアルキレンジオールである、請求項2に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項4】
前記炭素原子数2〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレンジオールが、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールからなる群から選ばれる1種以上のアルキレンジオールである、請求項3に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項5】
前記アルキレンジオール(a−2−1)が、1,2−プロパンジオールである、請求項2又は3に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項6】
前記芳香族化合物(a−2−2)が、ナフタレンジカルボン酸又はそのジアルキルエステル化合物である、請求項2に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項7】
前記ナフタレンジカルボン酸が、2,6−ナフタレンジカルボン酸である、請求項6に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項8】
前記ナフタレンジカルボン酸のジアルキルエステル化合物が、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルである、請求項6に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項9】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)が、数平均分子量が300〜5000の範囲である、請求項1〜8に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項10】
前記芳香族ポリエステルポリオール(A−2)中における、芳香環の質量割合が、40〜80質量%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリオール(A)中における、芳香環の質量割合が、1〜40質量%ある、請求項1〜10のいずれか1項に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項12】
前記ウレタンウレア樹脂組成物における、前記ウレタンウレア樹脂(1)と前記溶媒(2)の質量割合が、(1)/(2)=10〜50/90〜50である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項13】
前記ウレタンウレア樹脂の製造原料である前記脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)、芳香族ポリエステルポリオール(A−2)、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)及び脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)の合計質量に対する脂肪族環式構造の質量割合が40〜60質量%ある、請求項1〜12のいずれか1項に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項14】
前記脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)の水酸基価が30〜230mgKOH/gである、請求項1〜13のいずれか1項に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項15】
前記脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)が、1,4−シクロヘキサンジメタノールと、炭酸エステル及び/またはホスゲンとを反応して得られるものである、請求項1〜14のいずれか1項に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項16】
前記脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)が4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1〜15のいずれか1項に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項17】
前記ウレタンウレア樹脂(1)が5000〜200000の重量平均分子量を有するものである、請求項1〜16のいずれか1項に記載のウレタンウレア樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載のウレタンウレア樹脂組成物を用いて得られた光学フィルム。
【請求項19】
脂肪族環式構造含有ポリカーボネートポリオール(A−1)及び芳香族ポリエステルポリオール(A−2)とを含有するポリオール(A)と、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネート(B)と、脂肪族環式構造含有ポリアミン(C)と、を反応させて得られるウレタンウレア樹脂(1)及び溶媒(2)とを含有するウレタンウレア樹脂組成物を基材に塗布し、次いで、塗布基材を乾燥して、フィルムを得る工程(i)と、
該フィルムを延伸する工程(ii)と、
を有することを特徴とする光学フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2012−219187(P2012−219187A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86335(P2011−86335)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】