説明

エアカーテン用空気噴き出し装置

【課題】空気噴き出しスリットより、長手方向に対して直角に、且つ、長手方向での吹き出し風速分布を均一にして噴き出すことができるエアカーテン用空気噴き出し装置に関する。
【解決手段】筒状密閉容器1に、長手方向に空気噴き出しスリット2を設けたエアカーテン用空気噴き出し装置において、前記空気噴き出しスリット2に沿って、前記筒状密閉容器1内部に、空気の濾過、および内部圧力を均一にするための円筒状フィルタ3を設置すると共に、該円筒状フィルタ3の一方端に連通して前記筒状密閉容器外へ突設された空気供給パイプ3aに空気供給口部6を備え、更に前記円筒状フィルタ3内部に空気の流れを整流する整流器7を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、液晶および有機ELの製造装置において使用されるエアカーテン用空気噴き出し装置であって、特に、空気噴き出しスリットより、長手方向に対して直角に、且つ、長手方向での吹き出し風速分布を均一にして噴き出すことができるエアカーテン用空気噴き出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、半導体、液晶および有機EL製造装置では、装置内部での半導体、液晶および有機EL基盤への塵埃の付着を防止するために、清浄空気によるエアカーテンで防止する方法が取られているが、半導体、液晶および有機ELの性能が向上するに従い、半導体、液晶および有機EL製造装置の性能に対する要求も厳しくなっている。また、前記半導体、液晶および有機EL製造装置において使用されているエアカーテン用空気噴き出し装置に対しても、小型化、高清浄化、および噴き出し風速分布の均一性の要求が強くなってきている。
【0003】
従来汎用されているエアカーテン用空気噴き出し装置においては、該エアカーテン用空気噴き出し装置の内部に、空気噴き出しスリットに沿って、円筒状フィルタを設置し、該円筒状フィルタによる空気の清浄化を図ると共に、前記円筒状フィルタ内部圧力の均一化により、スリットに沿った噴き出し風速分布の均一化を図る方法、または供給空気圧力を高くして、空気噴き出しスリットの幅を狭くし、スリットに沿った噴き出し風速分布の均一化を図る方法が取られている。
【0004】
そして、円筒状フィルタを用いたエアカーテン用空気噴き出し装置につき、過去の特許文献を遡及検索すると、本出願人の出願に係る下記の特許文献1に記載されたものが公知である。
【0005】
【特許文献1】特開2005−19044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近の液晶および有機ELの微細化、高性能化により、該半導体、液晶および有機ELの製造装置における、エアカーテン用空気噴き出し装置のスリットに沿った噴き出し風速分布の均一性の要求仕様は、益々厳しくなってきているが、前記従来の、汎用されている空気噴き出し装置の内部に、空気噴き出しスリットに沿って、円筒状フィルタを設置する方法、または、供給空気圧力を高くして、空気噴き出しスリットの幅を狭くする方法では、前記要求仕様を満たすことができないという課題があった。
【0007】
更に、特許文献1に記載された円筒状フィルタには、空気噴き出しスリットに沿って、空気の濾過および内部圧力を均一にすべく、前記円筒状フィルタ内部に空気の流れを整流する手段が備えられていないので、前記スリットに沿った噴き出し風速分布の均一化が充分でないという課題があった。
【0008】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであって、筒状密閉容器に、長手方向に空気噴き出しスリット、または多数の空気噴き出し孔を設けたエアカーテン用空気噴き出し装置において、前記空気噴き出しスリット、または多数の空気噴き出し孔に沿って、円筒状フィルタを設置すると共に、前記円筒状フィルタ内部に空気の流れを整流する整流器を設けることにより、前記空気噴き出しスリット、または多数の空気噴き出し孔に沿った噴き出し風速分布を均一にすることができるエアカーテン用空気噴き出し装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、筒状密閉容器に、長手方向に空気噴き出しスリット、または多数の空気噴き出し孔を設けたエアカーテン用空気噴き出し装置において、前記空気噴き出しスリット、または多数の空気噴き出し孔に沿って、前記筒状密閉容器内部に空気の濾過、および内部圧力を均一にするための円筒状フィルタを設置すると共に、該円筒状フィルタの一方端に連通して前記筒状密閉容器外へ突設された空気供給パイプに空気供給口部を備え、更に前記円筒状フィルタ内部に空気の流れを整流する整流器を設けるという手段を採用することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、円筒状フィルタの内部に空気の流れを整流する整流器を設置することにより、空気噴き出しスリット、または多数の空気噴き出し孔に沿った噴き出し風速分布を均一にすることができるという効果を奏する。
【0011】
そして、前記整流器は、ラセン状のリボン構造物より成るものであってもよく、また多孔状の筒構造物あってもよく、いずれの構造物も空気噴き出しスリット、または多数の空気噴き出し孔に沿った噴き出し風速分布を均一にすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明エアカーテン用空気噴き出し装置は、筒状密閉容器に、長手方向に空気噴き出しスリット、または多数の空気噴き出し孔を設けたエアカーテン用空気噴き出し装置において、前記空気噴き出しスリット、または多数の空気噴き出し孔に沿って、円筒状フィルタを設置すると共に、該円筒状フィルタの一方端、または両端に空気供給口部を備え、且つ前記円筒状フィルタ内部に空気の流れを整流する整流器を設けた構成とすることを特徴とする。以下、本発明の実施例を図に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1を示す全体の斜視図、図2は、同一部を切欠いて示す要部の斜視図である。図1・図2に示すように、筒状密閉容器1には、長手方向に空気噴き出しスリット2が設けられ、且つ該筒状密閉容器1内部には、空気の濾過、および内部圧力を均一にするために、円筒状フィルタ3が配設されている。そして、前記円筒状フィルタ3は、前記筒状密閉容器1の内部と、通気空間となる隙間4を確保できる状態で、該筒状密閉容器1の両端に密に固定された固定部品5に、貫通してシールされると共に、該円筒状フィルタ3の一方端に連通して、前記筒状密閉容器1外へ突設された空気供給パイプ3aに空気供給口部6を備え、更に、前記円筒状フィルタ3の内部には、該円筒状フィルタ3内に導入された空気の流れを整流する、帯板をラセン状に屈曲したリボン構造物より成る整流器7が設けられている。
【0014】
前記円筒状フィルタ3の一方端に連通された空気供給パイプ3aの空気供給口部6から供給される空気8は、ラセン状のリボン構造物より成る整流器7によって、空気の流れ方向が不均一となって乱流して整流されながら、円筒状フィルタ3内を進む。そして、前記円筒状フィルタ3で濾過された空気は、空気噴き出しスリット2から噴出空気9となり、隙間4内に噴き出される。この間、ラセン状のリボン構造物より成る整流器7の整流機能と、円筒状フィルタ3の圧力損失の効果で、前記隙間4内に噴き出された空気は、筒状密閉容器1の長手方向の空気圧力が均一になり、長手方向に設けられた空気噴き出しスリット2から、均一な風速の噴出空気9が得られる。
【実施例2】
【0015】
図3は、本発明の実施例2を示す全体の斜視図、図4は、同一部を切欠いて示す要部の斜視図である。実施例1が、筒状密閉容器1の長手方向に空気噴き出しスリット2が設けられているのに対し、実施例2は、該空気噴き出しスリット2に代えて、前記筒状密閉容器1の長手方向に多数の空気噴き出し孔2aを設けて形成されている。
【0016】
そして、実施例2におけるその他の構成、および作用は実施例1のものと同一であるので、同一符号を用いて説明する。
【0017】
すなわち、図3・図4に示すように、筒状密閉容器1には、長手方向に多数の空気噴き出し孔aが設けられ、且つ該筒状密閉容器1内部には、空気の濾過、および内部圧力を均一にするために、円筒状フィルタ3が配設されている。そして、前記円筒状フィルタ3は、前記筒状密閉容器1の内部と、通気空間となる隙間4を確保できる状態で、該筒状密閉容器1の両端に密に固定された固定部品5に、貫通してシールされると共に、該円筒状フィルタ3の一方端に連通して、前記筒状密閉容器1外へ突設された空気供給パイプ3aに空気供給口部6を備え、更に、前記円筒状フィルタ3の内部には、該円筒状フィルタ3内に導入された空気の流れを整流する、帯板をラセン状に屈曲したリボン構造物より成る整流器7が設けられている。
【0018】
前記円筒状フィルタ3の一方端に連通された空気供給パイプ3aの空気供給口部6から供給される空気8は、ラセン状のリボン構造物より成る整流器7によって、空気の流れ方向が不均一となって乱流して整流されながら、円筒状フィルタ3内を進む。そして、前記円筒状フィルタ3で濾過された空気は、多数の空気噴き出し孔2aから噴出空気9となり、隙間4内に噴き出される。この間、ラセン状のリボン構造物より成る整流器7の整流機能と、円筒状フィルタ3の圧力損失の効果で、前記隙間4内に噴き出された空気は、筒状密閉容器1の長手方向の空気圧力が均一になり、長手方向に設けられた空気噴き出し孔2aから、均一な風速の噴出空気9が得られる。
【実施例3】
【0019】
図5は、本発明の実施例3を一部を切欠いて示す要部の斜視図であり、一方側の固定部品を省略して示されている。実施例3においては、実施例1と同一の構成および作用を有するものは、同一の符号を用いて説明し、その構成、および作用については説明を省略する。
【0020】
実施例3は、図5に示すように、空気噴き出しスリット2を設けた筒状密閉容器1の内部に、円筒状フィルタ3が設置され、その内部には該円筒状フィルタ3内に導入された空気の流れを整流する、筒体に多数の小孔を穿設した多孔状の筒構造物より成る整流器10が設けられている。
【0021】
前記円筒状フィルタ3の一方端に連通された空気供給パイプ3aの空気供給口部6から供給される空気8は、多孔状の筒構造物より成る整流器10の多数の小孔を通して、空気の出入りを繰返して、空気の流れ方向が不均一となって乱流して整流されながら、円筒状フィルタ3内を進む。そして、前記円筒状フィルタ3で濾過された空気は、空気噴き出しスリット2から噴出空気9となり、隙間4内に噴き出される。この間、多孔状の筒構造物より成る整流器10の整流機能と、円筒状フィルタ3の圧力損失の効果で、前記隙間4内に噴き出された空気は、筒状密閉容器1の長手方向の空気圧力が均一になり、長手方向に設けられた空気噴き出しスリット2から、均一な風速の噴出空気9が得られる。
【実施例4】
【0022】
図6は、本発明の実施例4を一部を切欠いて示す要部の斜視図である。実施例3が、筒状密閉容器1の長手方向に空気噴き出しスリット2が設けられているのに対し、実施例4は、該空気噴き出しスリット2に代えて、前記筒状密閉容器1の長手方向に一列状に、多数の空気噴き出し孔2aを設けて形成されている。
【0023】
そして、実施例4におけるその他の構成、および作用は実施例3のものと同一であるので、同一符号を用いて説明する。
【0024】
実施例4は、図6に示すように、長手方向に多数の空気噴き出し孔2aを設けた筒状密閉容器1の内部に、円筒状フィルタ3が設置され、その内部には該円筒状フィルタ3内に導入された空気の流れを整流する、筒体に多数の小孔を穿設した多孔状の筒構造物より成る整流器10が設けられている。
【0025】
前記円筒状フィルタ3の一方端に連通された空気供給パイプ3aの空気供給口部6から供給される空気8は、多孔状の筒構造物より成る整流器10の多数の小孔を通して、空気の出入りを繰返して、空気の流れ方向が不均一となって乱流して整流されながら、円筒状フィルタ3内を進む。そして、前記円筒状フィルタ3で濾過された空気は、多数の空気噴き出し孔2aから噴出空気9となり、隙間4内に噴き出される。この間、多孔状の筒構造物より成る整流器10の整流機能と、円筒状フィルタ3の圧力損失の効果で、前記隙間4内に噴き出された空気は、筒状密閉容器1の長手方向の空気圧力が均一になり、長手方向に設けられた多数の空気噴き出し孔2aから、均一な風速の噴出空気9が得られる。
【0026】
次に、前記構成より成る本発明のエアカーテン用空気噴き出し装置と、従来のエアカーテン用空気噴き出し装置との性能を比較テストした結果を下記に示す。なお、前記従来のエアカーテン用空気噴き出し装置は、その内部に、空気噴き出しスリットに沿って、円筒状フィルタを設置し、円筒状フィルタによる空気の清浄化と、円筒状フィルタの濾材を空気が通過するときの圧力損失により、前記スリットに沿った噴き出し風速分布の均一化を図っている。すなわち、従来のエアカーテン用空気噴き出し装置は、本発明の実施例1によるエアカーテン用空気噴き出し装置の内部から、整流器を取り除いたものである。
【0027】
前記比較テスト方法は、従来のエアカーテン用空気噴き出し装置と、本発明の実施例2によるエアカーテン用空気噴き出し装置に、同一条件で空気を供給し、多数の空気吹き出し孔からの噴き出し風速分布を測定することにより行った。
【0028】
前記比較テストによる測定結果を、図7に示す。図7の測定結果より、本発明のエアカーテン用空気噴き出し装置では、従来のエアカーテン用空気噴き出し装置より均一な風速分布の噴き出し空気が得られることが証明できた。
【0029】
なお、比較テストはしていないが、実施例1、実施例3、および実施例4によるエアカーテン用空気噴き出し装置でも、前記比較テストの場合と同様の測定結果が得られるものと推測できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明エアカーテン用空気噴き出し装置の実施例1を示す全体の斜視図である。
【図2】同一部を切欠いて示す要部の斜視図である。
【図3】本発明エアカーテン用空気噴き出し装置の実施例2を示す全体の斜視図である。
【図4】同一部を切欠いて示す要部の斜視図である。
【図5】本発明エアカーテン用空気噴き出し装置の実施例3の一部を切欠いて示す要部の斜視図である。
【図6】本発明エアカーテン用空気噴き出し装置の実施例4の一部を切欠いて示す要部の斜視図である。
【図7】本発明エアカーテン用空気噴き出し装置と従来のエアカーテン用空気噴き出し装置の風速分布比較図である。
【符号の説明】
【0031】
1 筒状密閉容器
2 空気噴き出しスリット
2a 多数の空気噴き出し孔
3 円筒状フィルタ
3a 空気供給パイプ
6 空気供給口部
7 ラセン状のリボン構造物より成る整流器
10 多孔状の筒構造物より成る整流器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状密閉容器に、長手方向に空気噴き出しスリット、または多数の空気噴き出し孔を設けたエアカーテン用空気噴き出し装置において、前記空気噴き出しスリット、または多数の空気噴き出し孔に沿って、前記筒状密閉容器内部に空気の濾過、および内部圧力を均一にするための円筒状フィルタを設置すると共に、該円筒状フィルタの一方端に連通して前記筒状密閉容器外へ突設された空気供給パイプに空気供給口部を備え、更に前記円筒状フィルタ内部に空気の流れを整流する整流器を設けたことを特徴とするエアカーテン用空気噴き出し装置。
【請求項2】
請求項1記載のエアカーテン用空気噴き出し装置において、円筒状フィルタの内部に設けられた空気の流れを整流する整流器が、ラセン状のリボン構造物より成ることを特徴とするエアカーテン用空気噴き出し装置。
【請求項3】
請求項1記載のエアカーテン用空気噴き出し装置において、円筒状フィルタの内部に設けられた空気の流れを整流する整流器が、多孔状の筒構造物より成ることを特徴とするエアカーテン用空気噴き出し装置。






【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−19483(P2010−19483A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179887(P2008−179887)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000163660)近藤工業株式会社 (28)
【出願人】(391017274)日本ケンブリッジフィルター株式会社 (18)