説明

エアクリーナ用フィルタ及びエアクリーナ

【課題】ダストを有効に捕捉できるとともに、エア流を確保できて、長期にわたって使用することができるエアクリーナのフィルタを提供する。
【解決手段】第1濾過材20を備えた第1濾過流路22と、第2濾過材21を備えた第2濾過流路23とを平行に配置する。第2濾過材21上に捕捉されたダストDが第1濾過流路22側へのエアの流れにより第1濾過材20側に案内誘導されるように、第2濾過材21を第1濾過材20に向かって傾斜状態に配置する。この場合、第2濾過材21を円錐状に形成するとともに、第1濾過材20を第2濾過材21の外周部に位置するように筒状に形成するとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両用エンジンに吸引されるエアを清浄化するためのエアクリーナ用フィルタ及びそのフィルタを備えたエアクリーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエアクリーナとしては、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されるような構成のものが提案されている。これらの従来構成においては、両側部にエア流入口及びエア流出口を有するケーシング内に、ハニカム型のエアフィルタが収容配置されている。このエアフィルタは、平板状濾材シートと波形状濾材シートとからなる積層材を渦巻状に巻回して、全体として円柱状に形成されている。この構成により、渦巻状に配置された積層材の平板状濾材間には、波形状濾材により複数のエア通路が区画形成されている。
【0003】
そして、各エア通路のうちで、1つおきに配列されたエア通路については、ケーシングのエア流出口と対応する側の端部が封止され、残りのエア通路については、ケーシングのエア流入口と対応する側の端部が封止されている。そして、ケーシングのエア流入口から流入したエアは、エアフィルタの一端側から一方のエア通路に導入されて、平板状濾材シートまたは波形状濾材シートで濾過された後、他方のエア通路を介してエアフィルタの他端側から導出されて、ケーシングのエア流出口から流出するようになっている。
【特許文献1】実開平2−129231号公報
【特許文献2】実開平2−127766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、これらのエアクリーナにおいては、ダストが堆積されて目詰まりが発生した場合には、エアフィルタの通気抵抗が上昇するため、エア流量が低下して、エンジンの出力が低下することになる。従って、このような場合には、エアフィルタの清掃や、交換が必要になり、メンテナンスの手間がかかり、経済的ではない。しかも、この種のフィルタは目詰まりが偏って生じることも多く、このような場合には、目詰まりが生じていない部分が残っていても、エアフィルタ全体のエア流量が低下するため、やはり、清掃や交換を要する。
【0005】
このような問題に対処するため、例えば特許文献1に記載のエアクリーナでは、エアフィルタの前面中央部に、連続発泡のスポンジ等よりなる立体形状のプレフィルタが近接配置されている。この構成によれば、ケーシングのエア流入口と対応するエアフィルタの中心部分では、エアがプレフィルタを通して予備的に濾過された後、エアフィルタに導入されて再び濾過される。よって、エアフィルタの中心部分に局部的に目詰まりを発生するのを抑制することができるとしている。
【0006】
しかしながら、この特許文献1に記載の構成では、プレフィルタ中にダストが堆積しやすい。このように、ダストが堆積すると、プレフィルタの通気抵抗が上昇し、後段のエアフィルタへのエア流量が少なくなって、そのエアフィルタの濾過効率が低下するため、プレフィルタを頻繁に交換する必要がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載のエアクリーナでは、エアフィルタの前面中心に、円錐状をなす分流器と、その分流器の外周縁から放射状に延びる複数の格子とからなる捕塵部材が配置されている。この構造によれば、ハウジングのエア吸入口から流入するエアが捕塵部材の分流器によりエアフィルタの外周部に向かって導かれるとともに、エアに含まれる木の葉や紙片等の大きなダストが格子により捕捉される。よって、大きなダストがエアフィルタに到達しないようにして、そのエアフィルタの入口側の開口端面が閉塞されるおそれを抑制することができるとしている。
【0008】
しかしながら、この特許文献2に記載の構成では、エアフィルタの前面中央部にエアの流れを阻害する分流器が近接配置されているため、後段のエアフィルタへのエア流量が少なくなって、そのエアフィルタの濾過効率が低下するおそれがある。また、エアフィルタの前面中央部が分流器により塞がれているため、エアフィルタに局部的な目詰まりが生じた場合でも、通気抵抗が著しく上昇してしまい、エアフィルタの交換等が必要になるという問題があった。
【0009】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、ダストを有効に濾過できるとともに、長期にわたってエア流量を確保することができるエアクリーナ用フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、エアクリーナ用フィルタにかかる発明は、第1濾過材を備えた第1濾過流路と、第2濾過材を備えた第2濾過流路とを隣接配置し、前記第2濾過材上に捕捉されたダストが第1濾過材側に案内誘導されるように、第2濾過材を第1濾過材に向かって傾斜状態に配置したことを特徴としている。
【0011】
従って、この発明においては、エアが第1及び第2濾過流路に沿って流れることにより、エアに含まれるダストが第1及び第2濾過材にて濾過して捕捉される。この場合、第2濾過材上に捕捉されたダストは、第1濾過流路側へのエアの流れにより第1濾過材側に案内誘導されて、第1濾過材に蓄積される。このため、第2濾過材を備えた第2濾過流路側において、常にエア流量を確保することができて、通気抵抗が上昇するおそれを抑制することができる。長期にわたって有効に使用することができる。
【0012】
前記の構成において、前記第2濾過材のエア通過抵抗を第1濾過材のエア通過抵抗より低くすれば、エアの大部分が第2濾過材を低い通気抵抗下において通過して濾過されるととともに、ダストが第1濾過材に有効に蓄積される。
【0013】
また、前記の構成において、前記第2濾過材をエア流の上流側に向かって窄まる円錐状に形成するとともに、第1濾過材を第2濾過材の外周側に位置するように筒状に形成するとよい。このように構成した場合には、円錐状の第2濾過材により、筒状の第1濾過材の中心部付近においてダストを有効に捕捉することができるとともに、その第2濾過材上に捕捉されたダストを第2濾過材の円錐外周面に沿って第1濾過材に分配して蓄積させることができる。
【0014】
加えて、前記の構成において、少なくとも第2濾過材を、形状保持機能を担持する基材層と、その基材層の表面にラミネートされ、基材層よりも細かいフィルタ目を有するとともに、同基材層より低摩擦係数の濾過層とにより構成し、濾過層をエア流の上流側に配置するとよい。このようにすれば、エアの流速が高くても、第2濾過材の形状保持が可能となって、高い濾過機能を維持できるとともに、細かいフィルタ目によってダストを効率良く濾過でき、しかも、濾過されたダストを第2濾過材の表面に沿って第1濾過材に向かって適切に誘導できる。
【0015】
さらに、エア流入口とエア流出口とを結ぶ直線上に第2濾過材を配置すれば、エアクリーナ内において主流路である第2濾過流路のエア流を確保することができる。
また、エアクリーナにかかる発明においては、前述した構成のエアクリーナ用フィルタをエア流入口及びエア流出口を備えたケーシング内に収容したことを特徴とする。従って、このエアクリーナにおいては、前述した各種の効果を有するエアクリーナを実現できる。
【0016】
さらに、エアクリーナにかかる別の発明においては、エア流の上流側に向かって窄まる円錐状をなす濾過材を備えた濾過流路と、濾過材にて捕捉されたダストを受けるように、前記濾過材の下流側外周に設けられたダスト受け部と、そのダスト受け部に設けられ、振動されることによって開放される排塵弁とを備え、前記濾過材を、形状保持機能を担持する基材層と、その基材層の表面にラミネートされ、基材層よりも細かいフィルタ目を有するとともに、同基材層より低摩擦係数の濾過層とにより構成し、濾過層をエア流の上流側に配置したことを特徴としている。
【0017】
従って、このエアクリーナにおいては、濾過流路に沿ってエアが流れると、そのエアに含まれるダストが円錐状の濾過材で濾過して捕捉されるとともに、そのダストがダスト受け部に集積される。そして、このエアクリーナ用フィルタを備えた車両の走行等にともなって、エアクリーナ用フィルタに振動が付与されたとき、排塵弁が開放されて、ダストがダスト受け部から外部に排出される。このため、構造が簡単であるとともに、エアに含まれるダストを有効に捕捉することができるとともに、そのダストを振動にともなって外部へ自動的に排出することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、この発明によれば、ダストを有効に濾過できるとともに、長期にわたってエア流量を確保することができるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を、図1〜図5に基づいて説明する。
図3に示すように、この実施形態のエアクリーナのケーシング11は、一端面を開口した横型円筒状のケース本体12と、そのケース本体12の開口端部にクランプ14を介して開閉可能に取り付けられたカバー13とから構成されている。カバー13の一側壁には、外気に連通されるエア流入口15が突出形成されている。ケース本体12の他側壁には車両用エンジンの吸気側に接続されるエア流出口16が突出形成されるとともに、ケース本体12の他側壁内面には円筒状のフィルタ保持筒17が突出形成されている。
【0020】
図3及び図4に示すように、前記ケーシング11内においてケース本体12のフィルタ保持筒17には、フィルタ18がシールリング19を介して着脱可能に取り付けられている。このフィルタ18は、全体形状が円筒状をなす第1濾過材20と、その第1濾過材20の一端中央部に突出固定され、エア流の上流側に向かって窄まる円錐状に形成された第2濾過材21とから構成されている。そして、これらの濾過材20,21によりケーシング11内に、第1濾過材20を通る外周側の第1濾過流路22と、第2濾過材21及び第1濾過材20の中心孔20aを通る中心側の第2濾過流路23とが平行に延びるように形成されている。また、第2濾過材21は、前記エア流入口15とエア流出口16とを結ぶ直線上に配置されている。前記第2濾過材21のエア通過抵抗は、第1濾過材20のエア通過抵抗よりも低く形成されている。
【0021】
図3及び図4に示すように、前記第1濾過材20は、平板状濾材シート24aと波形状濾材シート24bとからなる積層材24を渦巻状に巻回して、全体として円筒状のハニカム構造をなすように形成されている。そして、渦巻状に配置された積層材24の平板状濾材シート24a間には、波形状濾材シート24bにより複数のエア通路25が区画形成されている。これらのエア通路25のうちで、1つおきに配列された第1エア通路25aについては、第2濾過材21の取付側端部と反対側の端部,つまりエア流の上流側が封止材26によりに封止され、残りの第2エア通路25bについては、第2濾過材21の取付側端部,つまりエア流の下流側が封止材26によりに封止されている。そして、第1濾過流路22を流れるエアは、第1濾過材20の一端側から各第1エア通路25aに導入されて、平板状濾材シート24aまたは波形状濾材シート24bを透過して、その平板状濾材シート24aまたは波形状濾材シート24bで濾過された後、各第2エア通路25bを介して第1濾過材20の他端側からエンジンの吸気側に向かって導出されるようになっている。
【0022】
図3〜図5に示すように、前記第2濾過材21は、扇形状の濾材27から全体として円錐状をなすように形成されている。そして、この円錐状の第2濾過材21の基端部を第1濾過材20の中心孔20aの一端内周縁に接着固定することにより、第2濾過材21が第1濾過材20の一端中央部に突設されている。この状態で、第2濾過材21の円錐外周面が第1濾過材20の端面に向かって傾斜状態に配置され、第2濾過材21の円錐外周面上に捕捉されたダストDが第1濾過流路22側へのエアの流れにともなって、第1濾過材20側に案内誘導されるようになっている。
【0023】
図2に示すように、前記濾材27は、基材層27aと、その基材層27aの表面にラミネートされた濾過層27bとによって構成されている。基材層27aは、濾過層27bと比較して、太い合成樹脂繊維を低密度で集合させた不織布よりなり、形状保持のための剛性を有し、第2濾過材21の形状保持機能を担持している。濾過層27bは、細く、かつ基材層27aよりも摩擦係数の低い合成樹脂繊維を高密度で集合させ、しかも厚みを小さくするとともに、十分な空隙率を確保した不織布よりなる。従って、濾過層27bは、基材層27aよりも細かいフィルタ目を有していて、濾過機能が高く、しかも目詰まりし難い。そして、第2濾過材21は、濾過層27bが上流側になるように配置され、図2に矢印で示すように、濾過層27b側から基材層27a側に通過するエア流中のダストを濾過する。
【0024】
この実施形態において、前記基材層27aはパルプ等の天然繊維によって構成され、濾過層27bはナイロン,ポリプロピレン等の合成繊維によって構成されている。基材層27aを構成する繊維の径は20〜90μm、同基材層27aの目付は40〜150g/mである。また、前記濾過層27bを構成する繊維の径は0.01〜2.5μm、同濾過層27bの目付は0.1〜15g/mである。
【0025】
次に、前記のように構成されたエアクリーナの作用を説明する。
さて、このエアクリーナが車両用エンジンの吸気側に接続された状態で、そのエンジンが運転されると、吸気エアがエア流入口15からケーシング11内に導入され、フィルタ18の第1濾過流路22及び第2濾過流路23に沿って流れた後、エア流出口16からケーシング11外に導出される。そして、エアが第1濾過流路22に流れることにより、そのエアに含まれるダストDが第1濾過材20で濾過して捕捉されるとともに、エアが第2濾過流路23に流れることにより、そのエアに含まれるダストDがフィルタ目の細かい第2濾過材21で有効に濾過されて捕捉される。
【0026】
この場合、第2濾過材21の通気抵抗が第1濾過材20のそれよりも低いため、エア流のほとんどは第2濾過材21を透過して第2濾過流路23内を流れる。このため、エア流中のダストのほとんどは第2濾過材21によって捕捉される。そして、捕捉されたダストDは、第1濾過流路22側へのエアの流れにより、摩擦係数の低い第2濾過材21の円錐外周面に沿ってその後方に配置された第1濾過材20側に案内誘導される。よって、第2濾過材21にて捕捉されたダストDは、第1濾過材20全体に集積される。
【0027】
その結果、第2濾過材21を備えた第2濾過流路23側では、常にエア流量を確保した状態に維持され、第1濾過流路22側の第1濾過材20にダストDが集積しても、フィルタ18全体の通気抵抗が大きく上昇するおそれはない。従って、ダストDが第1濾過材20に大量に蓄積されたとしても、第2濾過流路23側において、エア流量を充分に確保できる。従って、第1濾過材20及び第2濾過材21よりなるフィルタ18を頻繁に交換する必要がなく、長期にわたって有効に使用することができる。
【0028】
従って、この実施形態は、以下の効果を有する。
(1) この実施形態においては、第2濾過材21上に捕捉されたダストDが第1濾過材20側に案内誘導されて、第1濾過材20に蓄積される。このため、第2濾過流路23側において、常にエア流量を確保することができて、通気抵抗が上昇するおそれを抑制することができ、長期にわたって有効に使用することができる。
【0029】
(2) 第2濾過材21のエア通過抵抗を第1濾過材20のエア通過抵抗より低くしている。従って、エアの大部分が低い通気抵抗下において第2濾過材21を通って濾過されるととともに、ダストが第1濾過材20に有効に蓄積される。従って、ダストDを有効に捕集できるとともに、エンジンの出力に支障を与えるおそれはない。
【0030】
(3) 第1濾過流路22と第2濾過流路23とが平行に配置されているため、エアクリーナ内を通るエアの通過抵抗の上昇を抑えることができ、エンジンの効率アップに寄与できる。
【0031】
(4) 第2濾過材21をエア流の上流側に向かって窄まる円錐状に形成するとともに、第1濾過材20が第2濾過材21の外周側に位置するように筒状に形成されている。このため、円錐状の第2濾過材21により、筒状の第1濾過材20の中心部付近においてダストDを有効に捕捉することができるとともに、その第2濾過材21上に捕捉されたダストDを第2濾過材21の円錐外周面に沿って第1濾過材20に分配して蓄積させることができる。従って、ダストDを有効に捕捉して大量に蓄積でき、フィルタ18の長寿命を達成できる。
【0032】
(5) 第2濾過材21が、形状保持機能を担持する基材層27aと、基材層27aよりも細かいフィルタ目を有するとともに、同基材層27aより低摩擦係数の濾過層27bとにより構成されている。従って、エアの流速が高くても、第2濾過材21が適切に形状保持されて、高い濾過機能が維持されるとともに、細かいフィルタ目によってダストを効率良く濾過できる。そして、濾過されたダストを第2濾過材21の表面に沿って第1濾過材20に向かって円滑に誘導できる。
【0033】
(6) ケーシング11の前記エア流入口15とエア流出口16とを結ぶ直線上に第2濾過材21が配置されているため、エアクリーナ内において主流路である第2濾過流路23のエア流を確保することができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
さて、この第2実施形態においては、図6に示すように、円錐状の第2濾過材21の内側に円錐枠状の保持枠31が接着固定されて、この保持枠31により第2濾過材21の形状が保持されるようになっている。
【0035】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態に記載の効果と同様の効果を得ることができる。また、この第2実施形態においては、以下の効果がある。
(7) 保持枠31により第2濾過材21が補強されているため、エアの流速が速い場合でも、使用中に第2濾過材21が変形するおそれを抑制することができる。従って、この第2実施形態においては、コンパクトな構成であっても、大量のエア流量に対応することができる。
【0036】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
さて、この第3実施形態においては、図7及び図8に示すように、フィルタ18の第1濾過材20が、平板状濾材シート24aと波形状濾材シート24bとからなる積層材24を複数積層して、全体として直方体状の複層ハニカム構造をなすように形成されている。また、フィルタ18の第2濾過材21は、前記第1,第2実施形態と同様な基材層と濾過層とよりなる2層構造で、濾過層がエア流の上流側に位置している。そして、第2濾過材21はほぼ長方形状に形成され、第1濾過材20の一端上縁部に対して前部上方へ向かって傾斜状態で延びるように接着固定されている。このフィルタ18がケーシング11内に収容配置された状態で、ケーシング11の内部には、第1濾過材20を通る下側の第1濾過流路22と、第2濾過材21を通る上側の第2濾過流路23とが平行に延びるように形成されている。
【0037】
従って、この第3実施形態においても、前記第1実施形態に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0038】
さて、この第4実施形態においては、図9に示すように、前記各実施形態における第1濾過材20が備えられていない。
すなわち、ケーシング11が縦形円筒状のケース本体12と、そのケース本体12の上端開口部にクランプ14を介して開閉可能に取り付けられたカバー13とから構成されている。カバー13の周側壁には、接線方向に延びるエア流入口15が突出形成されている。従って、ケーシング11内においてエアの旋回流が生じる。ケース本体12の底壁外面にはエア流出口16が突出形成されるとともに、底壁内面にはフィルタ保持筒17が突出形成されている。
【0039】
前記ケーシング11内において、ケース本体12のフィルタ保持筒17には円錐状をなし、フィルタを構成する濾過材32が着脱可能に取り付けられている。この濾過材32は、前記各実施形態の第2濾過材21と同様に基材層と濾過層とよりなり、濾過層をエア流の上流側に位置させている。そして、ケーシング11内に濾過材32を通る濾過流路33が形成され、この濾過流路33に沿ってエアが流れることにより、そのエアに含まれるダストDが濾過材32で濾過されて捕捉されるようになっている。
【0040】
前記ケース本体12の底壁外周部には環状のダスト受け部34が形成され、その内底面が一側部に向かって下降傾斜するように形成されている。そして、円錐状の濾過材32で捕捉されたダストDがこのダスト受け部34に捕集されるようになっている。ダスト受け部34の下端部には排塵弁35が配設され、エアクリーナを搭載した車両の走行等にともなって、エアクリーナに振動が付与されたとき、この排塵弁35が自身の弾性に抗して閉鎖状態から開放されて、ダスト受け部34上のダストDが外部に排出されるようになっている。
【0041】
このため、この第4実施形態において、エア流入口15からケーシング11内に流入したエアは、ケーシング11内において旋回されて、一部のダストDが遠心力によって分離され、残ったダストDは濾過材32によって濾過される。そしてそれらのダストDはダスト受け部34に捕集され、排塵弁35上に集積される。そして、車両振動等によって、排塵弁35が開いて、ダストDが排出される。
【0042】
従って、この第4実施形態のエアクリーナにおいては、以下の効果を有する。
(8) フィルタがひとつの濾過材32によって構成されているため、同フィルタの構造が簡単である。
【0043】
(9) ダストDを振動にともなって外部へ自動的に排出することができ、清掃の必要がなく、メンテナンスフリーである。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0044】
・ 前記第1,第2実施形態において、第2濾過材21の形状または構造を変更すること。例えば、図10は第2濾過材21をその先端が半球状をなす円筒形状に形成したものであり、図11は第2濾過材21をその先端が半球状をなすとともに、周壁の側面形状が大きな径の円弧状をなすものである。また、図12は、第2濾過材21をその周壁の側面形状が内側に湾曲する円錐状に形成したものである。図13は、円錐形状をなす第2濾過材21の外周面に螺旋状のフィン21cを設けて、旋回流が生じるようにしたものである。
【0045】
・ 前記第1〜第3実施形態において、第1濾過材20の平板状濾材シート24aと波形状濾材シート24bを、第2濾過材21と同様な2層構造とすること。この場合、濾過層をエア流の上流側に位置するようにする。このようにすれば、摩擦係数が低く、目詰まりしにくい濾過層を備えた2層構造の濾過材の機能により、蓄積されたダストDを容易に清掃除去できて、メンテナンスの手間を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1実施形態のエアクリーナを示す簡略斜視図。
【図2】第2濾過材の拡大断面図。
【図3】第1実施形態のエアクリーナを示す断面図。
【図4】図3のエアクリーナのエアフィルタを分解して示す斜視図。
【図5】図4のエアフィルタの第2濾過材の作成方法を示す斜視図。
【図6】第2実施形態のエアクリーナにおけるエアフィルタの第2濾過材を示す分解斜視図。
【図7】第3実施形態のエアクリーナを示す断面図。
【図8】図7のエアクリーナのエアフィルタを分解して示す斜視図。
【図9】第4実施形態のエアクリーナを示す断面図。
【図10】変形例のエアクリーナを示す簡略斜視図。
【図11】別の変形例のエアクリーナを示す簡略斜視図。
【図12】さらに別の変形例のエアクリーナを示す簡略斜視図。
【図13】さらに別の変形例のエアクリーナを示す簡略斜視図。
【符号の説明】
【0047】
11…ケーシング、12…ケース本体、13…カバー、15…エア流入口、16…エア流出口、18…フィルタ、20…第1濾過材、21…第2濾過材、22…第1濾過流路、23…第2濾過流路、24…積層材、24a…平板状濾材シート、24b…波形状濾材シート、27…濾材、27a…基材層、27b…濾過層、31…保持枠、32…濾過材、33…濾過流路、34…ダスト受け部、35…排塵弁、D…ダスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1濾過流路を形成する第1濾過材と、第2濾過流路を形成する第2濾過材とを隣接配置し、前記第2濾過材上に捕捉されたダストが第1濾過材側に案内誘導されるように、第2濾過材を第1濾過材に向かって傾斜状態に配置したことを特徴とするエアクリーナ用フィルタ。
【請求項2】
前記第2濾過材のエア通過抵抗を第1濾過材のエア通過抵抗より低くしたことを特徴とする請求項1に記載のエアクリーナ用フィルタ。
【請求項3】
前記第2濾過材をエア流の上流側に向かって窄まる円錐状に形成するとともに、第1濾過材を第2濾過材の外周側に位置するように筒状に形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のエアクリーナ用フィルタ。
【請求項4】
少なくとも第2濾過材を、形状保持機能を担持する基材層と、その基材層の表面にラミネートされ、基材層よりも細かいフィルタ目を有するとともに、同基材層より低摩擦係数の濾過層とにより構成し、濾過層をエア流の上流側に配置したことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のエアクリーナ用フィルタ。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のエアクリーナ用フィルタをエア流入口及びエア流出口を備えたケーシング内に収容したことを特徴とするエアクリーナ。
【請求項6】
エア流入口とエア流出口とを結ぶ直線上に第2濾過材を配置したことを特徴とする請求項5に記載のエアクリーナ。
【請求項7】
エア流の上流側に向かって窄まる円錐状をなす濾過材を備えた濾過流路と、濾過材にて捕捉されたダストを受けるように、前記濾過材の下流側外周に設けられたダスト受け部と、そのダスト受け部に設けられ、振動されることによって開放される排塵弁とを備え、前記濾過材を、形状保持機能を担持する基材層と、その基材層の表面にラミネートされ、基材層よりも細かいフィルタ目を有するとともに、同基材層より低摩擦係数の濾過層とにより構成し、濾過層をエア流の上流側に配置したことを特徴とするエアクリーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−55331(P2008−55331A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235787(P2006−235787)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】