説明

エアクリーナ

【課題】構造が簡単で部品点数を少なくすることができるとともに、バックファイアの発生時に、問題が生じるおそれを防止することができるエアクリーナを提供する。
【解決手段】エンジン側の第1ケース12と大気開放側の第2ケース13とをフィルタ19を介して開閉可能に結合する。第1ケース12の一部に透孔20を形成するとともに、その透孔20を閉塞する閉塞部材22を設ける。常には閉塞部材22がバネ力により透孔20の閉塞位置に保持され、バックファイア発生時にはその内圧により閉塞部材22がバネ力に抗して開放動作されて、透孔20から内圧が逃がされるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの吸気側に接続して使用されるエアクリーナに関するものであって、特にバックファイアの発生時に問題が生じないようにしたエアクリーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエアクリーナとしては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、エンジンの吸気側に接続される空気出口を設けた第1ケースと、大気に開放される空気入口を設けた第2ケースとが、フィルタを介して開閉可能に結合されている。第1ケースと第2ケースとの間には、両ケースを閉鎖状態に保持して、両ケースの周縁部間にフィルタの周縁シール部を挟持する挟持機構が設けられている。この挟持機構は、両ケース内に所定値以上のバックファイア圧力が加わったとき、両ケースを閉鎖状態から開放して、ケース内の圧力を外部に放出させる。第1ケースと第2ケースとの間には、内圧の放出後に両ケースを開放状態から元の閉鎖状態に導くためのガイド機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−100468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来のエアクリーナにおいては、第1ケースと第2ケースとの間に、前記挟持機構と、ガイド機構とが設けられているため、構造が複雑であるという問題があった。すなわち、特許文献1における挟持機構及びガイド機構は、長軸ボルト,コイルスプリング等の複数の部品を有するとともに、第1ケース,第2ケースにはそれらの部品を支持する構造が必要になるため、部品点数が多くなり、しかも第1ケース,第2ケースの形状が複雑になるものであった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、構造が簡単で部品点数を少なくすることができるとともに、バックファイアの発生時に問題が生じるおそれを防止することができるエアクリーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、エンジン側の第1ケースと大気開放側の第2ケースとをフィルタを介して開閉可能に結合したエアクリーナにおいて、前記第1ケースの一部に透孔を設けるとともに、その透孔を閉塞する閉塞部材を設け、常には前記閉塞部材がバネ力により前記透孔の閉塞位置に保持され、バックファイア発生時にはその圧力により閉塞部材がバネ力に抗して開放動作されて、透孔から圧力が逃がされるように構成したことを特徴としている。
【0007】
従って、この発明のエアクリーナにおいては、第1ケースの一部に透孔を設けるとともに、その透孔を閉塞する閉塞部材を設ければよい。このため、挟持機構及びガイド機構を設けた従来構成に比較して、構造が簡単で部品点数を少なくすることができる。また、バックファイアの発生時には、その内圧により閉塞部材がバネ力に抗して開放動作されて、透孔から内圧が逃がされる。よって、内圧の高まりにより、金具が変形するようなおそれを防止することができる。
【0008】
前記の構成において、前記第1ケースと第2ケースとを閉鎖状態に保持する金属板材よりなるクランプ金具を設け、前記閉塞部材をクランプ金具の一部に一体形成するとよい。
前記の構成において、前記クランプ金具の本体にバネ部を介して閉塞部材を一体形成するとよい。
【0009】
前記の構成において、前記透孔をエンジンに至るダクトと対面する位置に設けるとよい。
前記の構成において、前記クランプ金具を基端部において第2ケースに回動可能に支持するとともに、その先端部が第1ケースに掛止めされて第1ケースが閉鎖状態に保持され、閉塞部材が所定値以上の内圧を受けたときに、第1ケースに対するクランプ金具の掛止めが解除されるように構成するとよい。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、この発明によれば、構造が簡単で部品点数を少なくすることができるとともに、バックファイアの発生時に問題が生じるようなおそれを防止することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態のエアクリーナを示す断面図。
【図2】図1の2−2線における部分断面図。
【図3】図1の一部を拡大して示す部分断面図。
【図4】第2実施形態のエアクリーナを示す部分断面図。
【図5】第3実施形態のエアクリーナを示す部分断面図。
【図6】(a)及び(b)は閉塞部材を形成したクランプ金具の変更例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化したエアクリーナの第1実施形態を、図1〜図3に従って説明する。
【0013】
図1に示すように、エアクリーナの合成樹脂製のハウジング11は、下面を開口した箱形の第1ケース12と、上面を開口した箱形の第2ケース13とから構成されている。第1ケース12の周壁の一側部には、図示しないダクトを介してエンジンの吸気側に接続される給気口14が突設されている。第2ケース13の周壁における給気口14と反対側の側部には、大気に開放される吸気口15が突設されている。第1ケース12と第2ケース13とは、給気口14側の開口周縁部においてヒンジ16により開閉回動可能に結合されている。
【0014】
図3に示すように、前記第2ケース13におけるヒンジ16と反対側の開口周縁部には、金属板材よりなるクランプ金具17が基端部においてピン18により回動可能に支持されている。クランプ金具17の本体17aの先端部には、第1ケース12の開口周縁部に掛止め可能な掛止部17bが形成されている。そして、このクランプ金具17の掛止部17bが第1ケース12の開口周縁部に掛止めされることにより、第1ケース12が第2ケース13に対する閉鎖状態に保持される。
【0015】
図1に示すように、前記第1ケース12と第2ケース13との開口周縁部間には、フィルタ19がその周縁シール部19aにおいて着脱可能に挟持されている。そして、フィルタ19全体が第2ケース13内に配置され、吸気口15から第2ケース13内に流入するエアがフィルタ19を通過することにより、そのエアに含まれる塵埃等が濾過される。
【0016】
図1及び図2に示すように、前記第1ケース12において給気口14とケース12内の空間を介して対面する位置の周壁には、透孔20が形成されている。図3に示すように、図3に示すように、透孔20の周側外面には、環状のシール材21が設けられている。前記クランプ金具17の本体17aの掛止部17bの部分からは、透孔20を閉塞するための閉塞部材22がバネ部22aを介して、ピン18の反対側へ延びるように一体に形成されており、この閉塞部材22は前記シール材21に圧接されて、透孔20を閉鎖している。バネ部22aは、クランプ金具17の本体17a及び閉塞部材22の部分よりも薄肉状に形成されることによって、本体17aより容易に弾性変形するように構成されている。クランプ金具17の本体17aと閉塞部材22との間の位置には第1ケース12の周壁から離間する指掛部17cが形成されている。
【0017】
以上のように構成されたエアクリーナの作用を以下に説明する。
常には図1〜図3に示すように、前記閉塞部材22がバネ部22aのバネ力により、透孔20を閉塞する位置に保持されている。そして、エンジンの運転時には、吸気口15からのエアがハウジング11内に取り込まれて、フィルタ19によって濾過され、給気口14からエンジンの吸気系に導入される。この場合、透孔20は、シール材21に圧接されたクランプ金具17の閉塞部材22によって閉鎖されている。そして、エアの濾過時には、エンジンの吸気系の負圧によって第2ケース13が同様に負圧になって、閉塞部材22がシール材21に対して圧接され、透孔20の閉鎖状態が適切に維持される。
【0018】
フィルタ19の清掃や交換等のためにハウジング11を開放する場合には、指掛部17cに指を掛けて、クランプ金具17全体をピン18を中心にして図1の反時計回り方向に回動させればよい。このようにすれば、掛止部17bが
第1ケース12の開口周縁部から外れて、第1ケース12を開放回動させることができる。フィルタ19の交換等を実行した後は、第1ケース12を閉鎖して、クランプ金具17の掛止部17bを第1ケース12の開口周縁部に掛け止めすればよい。
【0019】
バックファイアの発生により第1ケース12内の圧力が高くなった場合には、図3に鎖線で示すように、その内圧により閉塞部材22がバネ部22aのバネ力に抗して開放動作されて、透孔20から内圧が逃がされる。このため、ハウジング11の内圧の高まりでクランプ金具17が変形したりするおそれを防止できる。
【0020】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この実施形態のエアクリーナにおいては、第1ケース12の一部に透孔20が形成されるとともに、その透孔20を閉塞するために閉塞部材22が設けられているだけである。このため、複数の部品や複雑な形状の挟持機構及びガイド機構を設けた従来構成に比較して、構造が簡単で部品点数を少なくすることができる。また、バックファイアの発生時には、その内圧により閉塞部材22がバネ力に抗して開放動作されて、透孔20から内圧が逃がされる。よって、内圧の高まりによって、問題が発生するおそれを防止することができる。
【0021】
(2) このエアクリーナにおいては、前記第1ケース12と第2ケース13とを閉鎖状態に保持するクランプ金具17が設けられ、前記閉塞部材22がクランプ金具17の一部に一体形成されている。このため、構造を一層簡略化することができる。
【0022】
(3) このエアクリーナにおいては、前記クランプ金具17の本体17aにバネ部22aを介して閉塞部材22が一体形成に形成されている。このため、閉塞部材22を透孔20の閉塞位置に付勢するためのバネ部材を別に設ける必要がなく、構造を一層簡略化することができる。
【0023】
(4) このエアクリーナにおいては、前記透孔20がエンジンに至る給気口14と対面する位置に設けられている。このため、給気口14から第1ケース12内に進入したバックファイアの圧力を、透孔20から外部へ瞬時に逃がすことができ、バックファイアの圧力による悪影響を防止できる。
【0024】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したエアクリーナの第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0025】
この第2実施形態においては、図4に示すように、閉塞部材22がクランプ金具17の本体17aの掛止部17bから、薄肉状のバネ部22aを介して本体17a側へ反転して延びるように一体に形成されている。そして、常には図4に実線で示すように、閉塞部材22がバネ部22aのバネ力により、透孔20の閉塞位置に保持されている。指掛部17cは掛止部17bの上部側に湾曲形成されている。
【0026】
バックファイアの発生により第1ケース12内の圧力が高くなった場合には、図4に鎖線で示すように、その内圧により閉塞部材22がバネ部22aのバネ力に抗して開放動作されて、透孔20から内圧が逃がされる。さらに、ハウジング11の内圧が過度に上昇して、閉塞部材22が所定値以上の内圧を受けたときには、クランプ金具17全体が強い力で押されて、同図に鎖線で示すように、第1ケース12に対するクランプ金具17の掛止部17bの掛止めが解除されて、第1ケース12が第2ケース13に対する閉鎖状態から開放される。この開放により、両ケース12,13間から内圧が速やかに逃がされる。
【0027】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)〜(4)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(5) このエアクリーナにおいては、閉塞部材22が所定値以上の内圧を受けたときに、第1ケース12に対するクランプ金具17の掛止めが解除されるように構成されている。このため、両ケースの内圧が過度に上昇した場合に、両ケース12,13を閉鎖状態から開放させて、内圧を速やかに逃がすことができる。よって、内圧の過度の高まりにより、問題が発生するおそれを防止することができる。
【0028】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化したエアクリーナの第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0029】
この第3実施形態においては、図5に示すように、閉塞部材22がクランプ金具17と別体に形成され、基端部において第1ケース12の周壁外面に固定されている。そして、常には図5に実線で示すように、閉塞部材22がバネ部22aのバネ力により、透孔20の閉塞位置に保持されている。これに対して、バックファイアの発生により第1ケース12内の圧力が高くなった場合には、図5に鎖線で示すように、その内圧により閉塞部材22がバネ部22aのバネ力に抗して開放動作されて、透孔20から内圧が逃がされる。
【0030】
従って、この第3実施形態においても、前記第1実施形態における(1)及び(4)に記載の効果とほぼ同様の効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0031】
・ 前記各実施形態において、図6(a)に示すように、閉塞部材22の基端側に蛇腹状部分を形成することにより、弾性変形可能なバネ部22aを構成すること。
・ 前記各実施形態において、図6(b)に示すように、閉塞部材22の基端側に剛性を低下させるための複数の孔22bを形成することにより、この孔22bの部分に弾性変形可能なバネ部22aを構成すること。
【0032】
・ 前記各実施形態において、シール材21を閉塞部材22側に設けること。
【符号の説明】
【0033】
11…ハウジング、12…第1ケース、13…第2ケース、14…出口ダクト、16…ヒンジ、17…クランプ金具、17a…本体、17b…掛止部、19…フィルタ、20…透孔、22…閉塞部材、22a…バネ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン側の第1ケースと大気開放側の第2ケースとをフィルタを介して開閉可能に結合したエアクリーナにおいて、
前記第1ケースの一部に透孔を設けるとともに、その透孔を閉塞する閉塞部材を設け、常には前記閉塞部材がバネ力により前記透孔の閉塞位置に保持され、バックファイア発生時にはその圧力により閉塞部材がバネ力に抗して開放動作されて、透孔から圧力が逃がされるように構成したことを特徴とするエアクリーナ。
【請求項2】
前記第1ケースと第2ケースとを閉鎖状態に保持する金属板材よりなるクランプ金具を設け、前記閉塞部材をクランプ金具の一部に一体形成したことを特徴とする請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項3】
前記クランプ金具の本体にバネ部を介して閉塞部材を一体形成したことを特徴とする請求項2に記載のエアクリーナ。
【請求項4】
前記透孔をエンジンに至るダクトと対面する位置に設けたことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のエアクリーナ。
【請求項5】
前記クランプ金具を基端部において第2ケースに回動可能に支持するとともに、その先端部が第1ケースに掛止めされて第1ケースが閉鎖状態に保持され、閉塞部材が所定値以上の内圧を受けたときに、第1ケースに対するクランプ金具の掛止めが解除されるように構成したことを特徴とする請求項2に記載のエアクリーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−184724(P2012−184724A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49056(P2011−49056)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】