説明

エアサスペンション装置

【課題】
エアサスペンション装置に関し、簡易な構成で作業性を向上させる。
【解決手段】
車輪を車体に支持するエアスプリング10と、エアスプリング10に供給されるエアを貯蔵するメインタンク70と、エアスプリング10の作動エア量を調整するエアを貯蔵するサージタンク60と、エアスプリング10にエアを連通する配管30,40とを設け、エアスプリング10の上面にポート20を配設する。また、ポート20には第1ポート穴21及び第2ポート穴22を形成する。
配管30の一端を第1ポート穴21に接続し、他端をサージタンク60に接続する。また、配管40の一端を第2ポート穴22に接続し、他端をメインタンク70に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエアサスペンション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大型バスに装備されるサスペンション装置には、空気の弾性を利用して車両を支持するエアサスペンション装置が採用されている。エアサスペンション装置は、車輪と車体との間に介装されたエアスプリングと、エアスプリング内に封入される空気の給排用の装置とを備えて構成される。すなわち、一定量の空気を貯蔵するサージタンクや、エアスプリングとサージタンクとの間を接続する配管上に介装された開閉弁,エアスプリング内に圧縮されたエアを供給するコンプレッサ等が設けられ、エアスプリング内の空気量や圧力が調整可能となっている。
【0003】
サスペンションの硬さは、開閉弁を開閉することによって調整される。例えば、開閉弁を開放すると、エアスプリング内の空気だけでなくサージタンク内の空気も荷重を受けて弾性的に伸縮するため、バネ定数が減少し、サスペンションは柔らかくなる。一方、開閉弁を閉鎖すると圧力を受ける空気の容積が減少するため、バネ定数が増加し、サスペンションは硬くなる。
【0004】
また、車高は、エアスプリング内のエアの量を増減させることで調整される。例えば、エアスプリング内から空気を抜くことで車高が低下し、コンプレッサでエアスプリング内に圧縮空気を補充することで車高が上昇する。
ところで、一般的なコンプレッサによる空気の補充用の配管は、エアスプリングと開閉弁との間から分岐して形成される。例えば、エアスプリング及びサージタンク間を接続する配管の開閉弁よりエアスプリング側に、T字コネクタが介装され、このT字コネクタにメインタンクと連通する配管が接続される。コンプレッサは、T字コネクタよりもメインタンク側やメインタンク本体に接続され、メインタンク内に圧縮空気を貯蔵させるように機能する。このような装置構成は、例えば特許文献1に示されている。
【0005】
以下、図5を用いて、従来のエアサスペンション装置のエア回路を説明する。
図5に示すエア回路には、エアスプリング100と、これに供給される圧縮エアを貯蔵するサージタンク600及びメインタンク700が設けられる。サージタンク600は、エアスプリング100のみに供給される一定量の空気を貯蔵するサスペンション専用タンクである。一方、メインタンク700は、エアスプリング100だけでなく、図示しないエアブレーキ装置やホイールパーク装置にも供給されるエアを貯蔵する汎用のタンクである。
【0006】
このエア回路には、サージタンク600から供給されるエアが流通する第i配管300と、メインタンク700から供給されるエアが流通する第ii配管400とにより二系統のエア通路が形成されている。
第i配管300は、その一端がポート200を介してエアスプリング100に接続され、その他端がサージタンク600に接続される。この第i配管300の中途には、エアスプリング100側から、T字コネクタ800,開閉弁500Aが介装される。この開閉弁500Aを開閉することでエアスプリング100を介して圧力を受ける空気の容積を調整し、エアスプリングのバネ定数を変化させることができるようになっている。
【0007】
また、この第i配管300は、T字コネクタ800よりもエアスプリング100側の第i上流配管300Aと、サージタンク600側の第i下流配管300Bとから構成される。つまり、第i配管300のうち、T字コネクタ800よりもエアスプリング100側の部位を第i上流配管300Aと呼び、サージタンク600側の部位を第i下流配管300Bと呼ぶ。
【0008】
すなわち、第i上流配管300Aの一端はポート200に接続され、他端はT字コネクタ800に接続される。同様に、第i下流配管300Bの一端はT字コネクタ800に接続され、他端はサージタンク600に接続される。
T字コネクタ800は、第i上流配管300Aの他端が接続される第1接続口800aと、第i下流配管300Bの一端が接続される第2接続口800bと、第3接続口800cとを有している。
【0009】
第ii配管400は、一端を第3接続口800cに接続され、他端をメインタンク700に接続される配管である。この第ii配管400の中途には、バルブ500Bが介装される。バルブ500Bは、チェックバルブ,3ウェイバルブ,レベリングバルブ又はこれらのバルブの組み合わせであり、必要に応じてメインタンク700側からエアスプリング100へとエアを補充するように機能する。
【0010】
なお、第ii配管400は、図示しないコンプレッサからの圧縮エアをメインタンク700に導入するためのエア回路も接続されている。
つまり、メインタンク700からエアスプリング100に供給されるエアの通路は、メインタンク700側から順に、第ii配管400,T字コネクタ800を介した第i上流配管300Aとなっている。
【0011】
これらの構成により、エアスプリングを介して圧力を受ける空気の容積を調整可能であって、エアスプリング内へエアを補充可能な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平08−183319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、T字コネクタ800が第i配管300の途中(すなわち、第i上流配管300Aと第i下流配管300Bとの間)に介装される構成では、例えば、第1接続口800a及び第2接続口800bに配管300A,300Bをねじ込み接続するような場合には、第3接続口800cを所望の向きにすることが難しく、配管300A,300Bの軸回転方向の位相を適切に設定しない限りT字コネクタ800と配管300A,300Bとの締結力を確保できない場合がある。したがって、T字コネクタ800に接続されるそれぞれの配管300A,300B,400の取付けやメンテナンスが容易ではなく、作業性を向上させ難いという課題がある。
【0014】
また、T字コネクタ800に接続される配管300A,300B,400には直線部を形成する必要があり、配管レイアウトが制限されてしまう。これにより、作業性が悪化する。
また、大型バスにおいては一般に、車両前方に運転席や乗降口が設けられ、これらの運転席や乗降口は車室内フロアよりも低く設計されている。このため、フロントサスペンション装置の周辺はスペースが制限され、前輪のサスペンション装置の配管等のレイアウトが制限されることがある。このような前輪のサスペンション装置に上記のエア回路の構造を適用すると、レイアウトが制限されているため、配管の取付け等の作業性がさらに悪化する。
【0015】
本発明は、かかる課題に鑑み創案されたものであり、簡易な構成で作業性を向上させることができるようにした、エアサスペンション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明のエアサスペンション装置は、車輪を車体に支持するエアスプリングと、前記エアスプリングに供給されるエアを貯蔵するメインタンクと、前記エアスプリングの作動エア量を調整するエアを貯蔵するサージタンクと、前記エアスプリングと前記メインタンク及び前記サージタンクとを連通する配管と、前記エアスプリングと前記配管との間に介装され、前記エアスプリングの上面に固定されたポートとを備え、前記ポートが、前記ポートに前記配管を接続するための第1ポート穴と第2ポート穴とを有し、前記配管が、前記第1ポート穴に一端が接続され、他端が前記サージタンクに接続される第1配管と、前記第2ポート穴に一端が接続され、他端が前記メインタンクに接続される第2配管とを有することを特徴とする。
【0017】
また、前記第1ポート穴および前記第2ポート穴が、前記ポートの側面に設けられてもよい。
また、前記第1ポート穴が、前記ポートの側面に設けられ、前記第2ポート穴が、前記ポートの上面に設けられてもよい。
また、前記第1ポート穴の径よりも、前記第2ポート穴の径の方が小さく形成されることが好ましい。
【0018】
また、前記第2配管の径よりも、前記第1配管の径の方が大きく形成されることが好ましい。
また、前記第1配管に介装され、前記サージタンクと前記エアスプリングとのエアの流通を遮断するバルブを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエアサスペンション装置によれば、ポートは第1ポート穴と第2ポート穴とを有し、他端がサージタンクに接続される第1配管が第1ポート穴に接続され、他端がメインタンクに接続される第2配管が第2ポート穴に接続されるため、メインタンクからのエアの供給を行なうために従来の第1配管流路上に介装されたT字コネクタを使用せずにエアサスペンション装置を配設することができる。これにより、部品点数を削減でき、コストの低減と作業性とを向上することができる。また、配管の接続部を減らすことができ、エア漏れの可能性を低減できる。
【0020】
また、第1ポート穴および第2ポート穴が、ポートの側面に設けられれば、例えば直ぐ上にフロアパネルがあるようなレイアウトに制約がある場所であってもポートを適用することができる。
また、第1ポート穴が、ポートの側面に設けられ、第2ポート穴が、ポートの上面に設けられれば、ポートの第1ポート穴と第2ポート穴との間の肉厚を確保することができ、ポートの強度を確保することができる。
【0021】
また、第2ポート穴の径が第1ポート穴の径よりも小さく形成されるため、互いのポート穴間のポートの肉厚を確保することができ、これにより、ポートの強度を確保することができる。
また、第2ポート穴はエアの供給専用であるため、第2配管の径の大きさがサスペンションの性能に影響しないが、第1ポート穴はエアスプリングを介して圧力を受けるエアが連通する第1配管が接続されるため、サスペンションの性能に影響する。ただし、第2配管の径が第1配管の径より大きく形成されるため、エアの流路抵抗を少なくして連通するエアの流通速度を上げることができ、エアサスの性能を向上することができる。
【0022】
また、サージタンクとエアスプリングとのエアの流通を遮断するバルブを備えているため、エアスプリングの伸縮動作に係るエア容積(作動エア量)を変更することができ、エアスプリングのバネ定数を変えることができる。これにより、乗り心地の調整や車両のロールの抑制をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかるエアサスペンション装置の全体を示す図であり、(a)はその側面図、(b)はその上面図、(c)はその正面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるエアサスペンション装置のポートを示す図であり、(a)はその側断面図、(b)はポートの変形例を示す側断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるエアサスペンション装置のエア流通回路を模式化して示す図である。
【図4】本発明のエアサスペンション装置の構成の変形例を示す斜視図である。
【図5】従来のエアサスペンション装置のエア流通回路を模式化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
〔1.エア回路構造〕
本実施形態のエアサスペンション装置は、例えば、大型バス等の車両の独立懸架式の前輪を懸架するサスペンション装置に適用される。
まず、本実施形態のエアサスペンション装置のエア回路について図3を用いて説明する。このエア回路には、エアスプリング10と、これに供給される圧縮エアを貯蔵するサージタンク60及びメインタンク70が設けられる。サージタンク60は、エアスプリング10のみに供給される一定量の空気(圧縮エア)を貯蔵するサスペンション専用のタンクである。
【0025】
一方、メインタンク70は、エアスプリング10だけでなく、車両に装備された図示しないエアブレーキ装置やホイールパーク装置にも供給される空気(圧縮エア)を貯蔵する汎用のタンクである。メインタンク70は、サージタンク60よりも大きな容量を有する。
このエア回路には、サージタンク60から供給されるエアが流通する第1配管30と、メインタンク70から供給されるエアが流通する第2配管40との二系統のエア通路が形成されている。第1配管30はサージタンク60とエアスプリング10とを接続し、第2配管40はメインタンク70とエアスプリング10とを接続している。
【0026】
また、エアスプリング10には、これらの二系統のエア通路の各々からエアの供給を受けるために、二つのポート穴が穿孔されたポート20が取り付けられている。ポート20は、エアスプリング部11内のエアを給排気する配管30,40とエアスプリング10とを接続する部材である。以下、ポート20に穿孔された二つのポート穴をそれぞれ、第1ポート穴21,第2ポート穴22と呼ぶ。
【0027】
第1配管30の中途には、パイロットバルブ50が介装される。このパイロットバルブ50は開閉弁であって、開閉することでエアスプリング10を介して圧力を受ける空気の容積を調整し、エアスプリング10のバネ定数を変化させることができるようになっている。なお、このパイロットバルブ50は、例えばドライバにより操作される図示しないスイッチにより開閉制御可能に設けられており、制御されない場合に閉じている常閉弁である。
【0028】
パイロットバルブ50は、閉じた状態では、エアスプリング10及びサージタンク60間のエアの流通を遮断し、開いた状態では、エアスプリング10及びサージタンク60の内部空間を互いに連通させるように機能する。
以下、第1配管30のうち、パイロットバルブ50よりもエアスプリング10側の部位を第1上流配管31と呼び、サージタンク60側の部位を第1下流配管32と呼ぶ。第1上流配管31の一端は第1ポート穴21に接続され、その他端がパイロットバルブ50に接続される。同様に、第1下流配管32の一端はパイロットバルブ50に接続され、その他端がサージタンク60に接続される。
【0029】
第2配管40は、一端を第2ポート穴22に接続され、他端をメインタンク70に接続された配管である。この第2配管40の中途には、バルブ51が介装される。バルブ51は、チェックバルブ,3ウェイバルブ,レベリングバルブ又はこれらのバルブの組み合わせであり、必要に応じてメインタンク70側からエアスプリング10へとエアを補充するように機能する。
【0030】
また、第2配管40は、図示しないコンプレッサからの圧縮エアをメインタンク70に導入するためのエア回路も接続されている。
なお、バルブ51には、供給されるエアが逆流することなくエアスプリング10内の二次圧力を保つようにチェックバルブを用いてもよいし、例えば、左右前輪のエア回路を連通し、この左右を連通する配管を第2のサージタンクとして使用するように3ウェイバルブを用いてもよいし、クラウチング動作やニーリング動作等の車高調整可能なレベリングバルブを用いてもよく、これらのバルブを組み合わせて用いてもよい。
【0031】
〔2.エアサスペンション装置の構造〕
本実施形態にかかるエアサスペンション装置の具体的な構造を、図1(a)〜(c)及び図2(a)を用いて説明する。なお、図1(a)の左右方向が車両の前後方向、(b)の上方が車内方向、(c)の左方向が車外方向である。
図1に示すように、この車両には、車両前後方向に延在する一対のサイドフレーム1(一方のみ図示)と、これらのサイドフレーム1の間を車両幅方向に連結する図示しないクロスメンバとを備えたラダー構造の車体フレームが採用されている。
【0032】
一方のサイドフレーム1(以下、単にサイドフレーム1という)には、車外方向にスプリング保持部材2が固設される。スプリング保持部材2の車内方向の端部である一端は、サイドフレーム1に溶接等により適宜固設される。スプリング保持部材2の車外方向の端部である他端は、図示しない適宜のアーム部材や車両側部に設けられたシャシに固設される。スプリング保持部材2の下面には、エアスプリング10が固設される。
【0033】
エアスプリング10は、ベローズやダイヤフラム(ゴム膜)等でその内部に空気が密封されたエアスプリング部11と、エアスプリング部11の上面に固定されたアッパプレート12と、エアスプリング部11の下面に固定されたロアプレート13とを有する。エアスプリング10は、空気の弾性を利用して車両の荷重を支持し、振動を減衰させるように機能するバネである。
【0034】
エアスプリング部11は、アッパプレート12及びロアプレート13によって上下を挟まれている。また、アッパプレート12には、エアスプリング部11の内部に圧縮空気を供給し、或いは内部からのエアを排出するための給排気孔12Aが設けられる。この給排気孔12Aにはポート20の下端部が嵌装される。なお、ポート20の下端部は、スプリング保持部材2を貫通して設けられる。また、ポート20の高さ方向の寸法は、アッパプレート12に固定されたときに、ポート20の上面がサイドフレーム1の上面よりも下方に位置するように設計されている。
【0035】
ロアプレート13の下方にはロッド5の一端が固設される。ロッド5の他端は、ロアアーム部材等の適宜の部材を介して車両前輪と接続される。つまり、ロッド5及びスプリング保持部材2に介装されて固設されるエアスプリング10は、車輪にかかる荷重を支持し、振動を減衰するように設けられている。
パイロットバルブ50及びサージタンク60は、サイドフレーム1の車内側に設けられ、車外方向から側視するとサイドフレーム1の側面に覆われる。つまり、パイロットバルブ50及びサージタンク60は、サイドフレーム1の車内方向であって、サイドフレーム1の側面からはみ出さない高さに配設される。エアスプリング10はサイドフレーム1の車外側に設けられる。
【0036】
このため、エアスプリング10とサージタンク60とを接続する第1配管30は、サイドフレーム1に穿孔された孔を車幅方向に貫通して設けられる。詳細には、第1上流配管31はサイドフレーム1に穿孔された孔を車幅方向に貫通して設けられる。この孔と第1上流配管31との間にはグロメット9が嵌挿される。このグロメット9は、第1上流配管31及びサイドフレーム1の緩衝材や保護環として設けられる。
【0037】
なお、鉛直方向の高さ方向の位置に着目すると、上からエアスプリング10,パイロットバルブ50,サージタンク60の順に設けられる。
エアスプリング部11内への給気は、図示しないコンプレッサにより圧縮された空気がメインタンク70に貯蔵され、この貯蔵された圧縮空気をエアスプリング部11内へ供給することで行なわれる。
なお、第2配管40もサイドフレーム1に穿孔された穴を車幅方向に貫通して設けられる。
【0038】
〔3.ポートの構成〕
以下、給排気孔12Aに嵌装されるポート20について図2(a)を用いて説明する。なお、図2(a)の左右方向が車両の前後方向である。
【0039】
ポート20は、図2(a)に示すように、ポート20の外形は略円筒状であり、その円筒側面に第1ポート穴21と第2ポート穴22とを有する。前述の通り、第1ポート穴21には第1上流配管31の一端が接続され、第2ポート穴22には第2配管40の一端が接続される。これらのポート穴21,22と配管31,40との接続は、ボルト、ナット、ソケット等の適宜の締結部材や係合部材により接続される。
【0040】
なお、第1ポート穴21及び第2ポート穴22は、エアスプリング部11内のエアを漏洩することなく連通させ、配管31,40と接続できる構成で設けられればよい。例えば、ポート穴21,22及び配管31,40の一端にネジ山を切って螺合してもよいし、溶接等により固設されてもよいし、これらを組み合わせた構成としてもよい。
第1ポート穴21及び第2ポート穴22は、ポート20の内部で円筒軸Cの方向に延設された中空の内部通路20Aに接続されている。
【0041】
ポート20の下端面には、スプリング保持部材2の上面よりも下方に膨出するように形成されたコネクタ部20Bが形成されている。コネクタ部20Bの形状は円筒状であり、その外径は給排気孔12Aの内径と略一致している。前述の内部通路20Aはコネクタ部20Bを円筒軸C方向に貫通して形成されており、内部通路20Aの下端はコネクタ部20Bの下端面で開放されている。
【0042】
これにより、コネクタ部20Bを給排気孔12Aに嵌装することでエアスプリング部11内の空間と第1ポート穴21及び第2ポート穴22とが連通した状態となる。第1ポート穴21からエアスプリング部11内に連通する通路と、第2ポート穴22からエアスプリング部11内に連通する通路とはポート20内で合流している。
第2ポート穴22の内径dは、第1ポート穴21の内径dよりも小さく形成される。また、第1ポート穴21に接続される第1配管30の内径は、第2ポート穴22に接続される第2配管40の内径よりも大きく形成される。
【0043】
第1ポート穴21は車両前後方向に対向して設けられ、第2ポート穴22は車幅方向に対向して設けられる。つまり、それぞれのポート穴21,22の孔芯がポート20の円筒軸C方向から見て直交するように、それぞれのポート穴21,22の向きが定められる。
第1ポート穴21の中心は、第2ポート穴22の中心よりもエアスプリング10側、すなわち下方に設けられる。
なお、ポート20の円筒側面に接する第1ポート穴21の縁と、同様に、ポート20の円筒側面に接する第2ポート穴22の縁との間の最短距離が肉厚aとして規定される。
【0044】
〔作用・効果〕
本発明の一実施形態にかかるエアサスペンション装置は上述のように構成されるため、パイロットバルブ50を閉じると、エアスプリング10及びサージタンク60間のエアが連通することがない。つまり、エアスプリング10を介して圧力を受けるエアの容積は、エアスプリング部11内のエアの容積と第1上流配管31の内部のエアの容積とを合計した容積となる。
【0045】
一方、パイロットバルブ50を開くと、エアスプリング10及びサージタンク60内の空気が連通する。つまり、エアスプリング10を介して圧力を受けるエアの容積は、エアスプリング部11内のエアの容積と第1配管30の内部のエアの容積とサージタンク60内の空気の容積とを合計した容積となる。
したがって、パイロットバルブ50を開閉することで、エアスプリング10を介して圧力を受ける空気の容積を変化させることができ、エアスプリングのバネ定数を変えることができる。これにより、乗心地の調整や車両のロールの抑制をすることができる。
【0046】
パイロットバルブ50は、例えばドライバにより操作される図示しないスイッチにより開閉制御可能に設けられるため、ドライバの意思によりサスペンションのバネ定数を調整することができる。
ポート20は第1ポート穴21と第2ポート穴22とを有し、他端がサージタンク60に接続される第1配管30が第1ポート穴21に接続され、他端がメインタンク70に接続される第2配管40が第2ポート穴22に接続されるため、メインタンク70からのエアの供給を行なうために従来の第1配管30の流路上に介装されたT字コネクタを使用せずにエアサスペンション装置を配設することができる。これにより、部品点数を削減でき、コストの低減と作業性とを向上することができる。また、配管の接続部を減らすことができ、エア漏れをより効果的に防止することができる。
【0047】
第1ポート穴21および第2ポート穴22は、ポート20の側面に設けられるため、例えば直ぐ上にフロアパネルがあるようなレイアウトに制約がある場所であってもポート20を適用することができる。
第2ポート穴22の内径dが第1ポート穴21の内径dよりも小さく形成されるため、互いのポート穴21,22間のポート20の肉厚aを確保することができ、これにより、ポート20の強度を確保することができる。
【0048】
第2ポート穴22はエアの供給専用であるため、第2配管40の内径の大きさがサスペンションの性能に影響しないが、第1ポート穴21はエアスプリング10を介して圧力を受けるエアが連通する第1配管30が接続されるため、サスペンションの性能に影響する。ただし、第2配管40の内径が第1配管30の内径より大きく形成されるため、エアの流路抵抗を少なくして連通するエアの流通速度を上げることができ、サスペンションの性能を向上することができる。
【0049】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の実施形態では、大型バスの前輪を懸架するサスペンション装置に適用されるものとして説明したが、後輪を懸架するサスペンション装置に適用されてもよい。
【0050】
大型バスにおいては、フレームやフロアパネルを介した前輪の上方及びその周辺には、車両後方の車室内フロアよりも低く設計された運転席や乗降口が設けられるため、スペースが制限され、配管等のレイアウトが制限される。つまり、後輪に適用されるサスペンション装置は、前輪に適用されるサスペンション装置に比較してレイアウトの制限は緩和される。
【0051】
このため、本発明のサスペンション装置を後輪に適用する場合には、上述のポート20に替えて、図2(b)に示すポート20Rを用いることができる。
ポート20Rは、図示しない第1上流配管31の一端と接続される第1ポート穴21Rと、図示しない第2配管40の一端が接続される第2ポート穴22Rとを有する。
第1ポート穴21Rはポート20Rの円筒側面に形成され、第2ポート穴22はポート20の上面に形成される。つまり、それぞれのポート穴21,22の孔芯がポート20の円筒軸Cに垂直な方向から見て直交するように、それぞれのポート穴21,22が配置される。
【0052】
なお、ポート20Rの円筒側面に接する第1ポート穴21Rの縁と、同様に、ポート20Rの円筒上面に接する第2ポート穴22Rの縁との間の最短距離が肉厚bとして規定される。また、その他の構成は、一実施形態に示すポート20の構成と同様である。
このような構成によれば、第1ポート穴21Rは、ポート20Rの円筒側面に設けられ、第2ポート穴22Rは、ポート20Rの上面に設けられるため、ポート20Rの第1ポート穴21Rと第2ポート穴22Rとの間の肉厚bを確保することができ、ポート20Rの強度を確保することができる。
【0053】
なお、後輪に適用されるエアペンション装置であっても、もちろん一実施形態の図2(a)に示すポート20を用いることもできる。
また、上述の実施形態では、エアスプリング10が、サイドフレーム1に固設されたスプリング保持部材2とロッド5とに介装される構成を説明したが、以下に示す構成としてもよい。
【0054】
図4に示すように、サイドフレーム1は車両前後方向に延在し、その延在方向と直角に形成されるラテラルサイドフレーム1Aを有している。このラテラルサイドフレーム1Aの図示しない他端は、適宜のアーム部材や車両側部に設けられたシャシに固設される。
ラテラルサイドフレーム1Aの一端周辺の下方、すなわちサイドフレーム1が十字型に交差する周辺の下方には、エアスプリング10が固設される。
【0055】
エアスプリング10は、サイドフレーム1とロッド5との間に介装される。アッパプレート12は、サイドフレーム1の下面と隣接し固設される。つまり、エアスプリング10は、ロッド5の他端に接続される図示しない車輪をサイドフレーム1に対して懸架している。
アッパプレート12には、ポート20が直接嵌装される。このポート20の上面は、サイドフレーム1の上面よりも低く設定される。
【0056】
ポート20は、第1上流配管31が接続される第1ポート穴21と、第2配管40は接続される第2ポート穴22とを有する。第1ポート穴21は車両前後方向に対向して設けられ、第2ポート穴22は車幅方向に対向して設けられる。つまり、上述の実施形態と同様にそれぞれのポート穴21,22の孔芯が上面視で直交している
なお、図示しないが、アッパプレート12とサイドフレーム1の下面との間に適宜のブラケット等を介装してもよい。このブラケットとしては、アッパプレート12とサイドフレーム1とを固設するボルト,ナット等の適宜の締結部材を備えるものや、アッパプレート12とサイドフレーム1の下面との接触面積を大きくし、アッパプレート12及びサイドフレーム1に入力される負荷を分散するものが考えられる。
【0057】
その他の構成は上述の実施形態の構成と同様である。
これらの構成によれば、サイドフレーム1が十字型に交差する周辺の下方にエアスプリング10が設けられ、ポート20の周辺のスペースが制限される場合であっても、第1ポート穴21は車両前後方向に対向して設けられ、第2ポート穴22は車幅方向に対向して設けられるため、ポート20を適用することができる。
【0058】
ポート20の上面はサイドフレーム1の上面よりも低く設計されているため、例えば、サイドフレーム1の上面がフロアパネルを支持するようなレイアウトに制約がある場所であってもポート20を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のエアサスペンション装置は、車両のみならず、スペースが制限されてエアサスペンション装置が適用される機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 サイドフレーム
2 スプリング保持部材
5 ロッド
9 グロメット
10 エアスプリング
11 エアスプリング部
12 アッパプレート
12A 給排気孔
13 ロアプレート
20 ポート
21 第1ポート穴
22 第2ポート穴
30 第1配管
31 第1上流配管
32 第1下流配管
40 第2配管
50 パイロットバルブ(バルブ)
51 バルブ
60 サージタンク
70 メインタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を車体に支持するエアスプリングと、
前記エアスプリングに供給されるエアを貯蔵するメインタンクと、
前記エアスプリングの作動エア量を調整するエアを貯蔵するサージタンクと、
前記エアスプリングと前記メインタンク及び前記サージタンクとを連通する配管と、
前記エアスプリングと前記配管との間に介装され、前記エアスプリングの上面に固定されたポートとを備え、
前記ポートが、前記ポートに前記配管を接続するための第1ポート穴と第2ポート穴とを有し、
前記配管が、
前記第1ポート穴に一端が接続され、他端が前記サージタンクに接続される第1配管と、
前記第2ポート穴に一端が接続され、他端が前記メインタンクに接続される第2配管とを有する
ことを特徴とするエアサスペンション装置。
【請求項2】
前記第1ポート穴および前記第2ポート穴が、前記ポートの側面に設けられる
ことを特徴とする請求項1記載のエアサスペンション装置。
【請求項3】
前記第1ポート穴が、前記ポートの側面に設けられ、
前記第2ポート穴が、前記ポートの上面に設けられる
ことを特徴とする請求項1記載のエアサスペンション装置。
【請求項4】
前記第1ポート穴の径よりも、前記第2ポート穴の径の方が小さく形成される
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のエアサスペンション装置。
【請求項5】
前記第2配管の径よりも、前記第1配管の径の方が大きく形成される
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のエアサスペンション装置。
【請求項6】
前記第1配管に介装され、前記サージタンクと前記エアスプリングとのエアの流通を遮断するバルブを備えた
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のエアサスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−131311(P2012−131311A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284186(P2010−284186)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】