説明

エアセル

【課題】エアセルの設置スペースの小型化を図る。
【解決手段】空気圧によって膨張収縮する袋体2を備えたエアセル1である。袋体2は、支持体となるベース板6に当てがわれて設けられている。袋体2には、袋体2に対する空気流入口2Eを構成する流入管2Dが、ベース板6に貫通して設けられている。流入管2Dは、袋体2に凹み形成された凹面2Fの形成領域において袋体2への空気流入口2Eを形成している。流入管2Dは、凹面2Fに当てがわれるようにベース板6に張り出して形成された凸面6Aの凸内空間6Bを通って配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアセルに関する。詳しくは、空気圧によって膨張収縮する袋体を備えたエアセルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、座席用シートにおいて、着座者の背部に部分的な押圧力をかけて指圧効果を与えることのできるマッサージ装置が備えられているものがある。ここで、下記特許文献1には、腰掛け椅子にマッサージ装置が備えられた構成が開示されている。この開示では、マッサージ装置は、着座者の背部を押圧する押圧具が、空気圧によって膨張収縮する袋体を備えたエアセルによって構成されている。
【0003】
ここで、袋体は、ポリエチレン等の樹脂材料によって外周部に蛇腹を有した円筒型形状にされており、その袋内部に加圧空気が吸入されることによって、蛇腹を引き伸ばす格好で膨張展開するようになっている。上記した袋体は、その底面部がベース板に当てがわれて支えられており、同底面部に形成されたエア流入口がベース板に形成された穴部を貫通して突出し、その突出した先がエアチューブと接続されて、空気圧の調整ユニットと接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−198167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記開示の従来技術では、ベース板の裏面部にエア流入口が突出し、更にこのエア流入口にエアチューブが接続されることにより、かかる構成がベース板の裏面部に大きく張り出して、設置に場所をとる構成となっている。
【0006】
本発明は、上記した問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、エアセルの設置スペースの小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のエアセルは次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、空気圧によって膨張収縮する袋体を備えたエアセルである。袋体は、支持体となるベース板に当てがわれて設けられている。袋体には、袋体に対する空気流入口を構成する流入管が、ベース板に貫通して設けられている。流入管は、袋体に凹み形成された凹面の形成領域において袋体への空気流入口を形成している。流入管は、凹面に当てがわれるようにベース板に張り出して形成された凸面の凸内空間を通って配設されている。
【0008】
この第1の発明によれば、流入管が、袋体の凹面に当てがわれるベース板の凸面の内部空間を通って配設される構成となっていることにより、流入管(或いは凸面の内部空間で流入管に接続される接続管)の配置スペースを、凸面の空間内部のスペース(袋体の凹面の空間スペース)に吸収させることができる。これにより、ベース板の背面部に張り出す配置スペースを小さく抑えることができるため、エアセルの設置スペースの小型化を図ることができる。
【0009】
次に、第2の発明は、上述した第1の発明において、袋体は、そのベース板に当てがわれる底面の外周縁よりも内側の中央領域に、上述した凹面が凹み形成されている。更に、袋体の底面には、凹面の凹内空間と連通して、凹内空間を袋体の底面の外周縁の外へ逃がす逃がし凹面が形成されている。流入管或いは流入管に接続される接続管は、凹面の凹内空間から逃がし凹面の凹内空間を通って配設されている。
【0010】
この第2の発明によれば、流入管或いは流入管に接続される接続管が、袋体の底面に形成された逃がし凹面の凹内空間を通って外へ逃がされる構成となっていることにより、流入管或いは接続管の配置スペースを、逃がし凹面の空間スペースに吸収させることができる。したがって、袋体の凹面が袋体の底面の中央領域に形成される構成において、エアセルの更なる設置スペースの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1のエアセルの概略構成を表した斜視図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】実施例2のエアセルの概略構成を表した斜視図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】エアセルの変形実施例を表した斜視図である。
【図6】エアセルの他の変形実施例を表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
始めに、実施例1のエアセル1の構成について、図1〜図2を用いて説明する。本実施例のエアセル1は、図1に示されるように、車両用シートのシートバックに内装され、空気圧によって膨張展開することにより、着座乗員の背部に部分的な押圧力をかけて指圧効果を与える機能部品として構成されている。具体的には、エアセル1は、ポリエチレン樹脂のブロー成形によって形成された可撓性円筒容器型形状の袋体2によって形成されている。
【0014】
上記した袋体2は、その底面2Aが、支持体となるベース板6(剛体)に当てがわれて設けられている。ここで、袋体2は、その上面が、着座乗員の背部に押圧力をかける押圧面2Bとして形成されており、その円筒部の外周面に、押圧方向に伸張可能な蛇腹面2Cが形成されている。なお、袋体2の表面に袋体2を縦に半割するように残されているパーティングライン2Pは、袋体2をブロー成形した際に残される型合わせ面のラインである。
【0015】
上記した袋体2は、図2に示されるように、その底面2Aに空気流入口2Eを形成する流入管2Dが一体成形されて形成されている。ここで、袋体2の底面2Aには、その外周縁よりも内側の中央領域に、半球状に凹んだ凹面2Fが形成されている。そして、上記した流入管2Dは、上記した半球状の凹面2Fの最も奥に凹んだ頂点部分から外に延び出す形で形成されている。そして、これに伴って、袋体2の底面2Aに当てがわれるベース板6にも、袋体2の凹面2Fに当てがわれるように半球状に張り出す凸面6Aが形成されている。
【0016】
そして、この半球状に張り出した凸面6Aの頂点部分には、上記した流入管2Dを挿通させるための貫通孔が形成されている。これにより、袋体2は、流入管2Dをベース板6に通してベース板6に組み付けられることにより、流入管2Dが袋体2の凹面2Fの凹内空間2Gとベース板6の凸面6Aの凸内空間6Bとの重なった空間領域に配設されるようになっている。そして、上記した流入管2Dには、接続管となるL字状のエルボー管3を介してエアチューブ4が接続され、このエアチューブ4の先には、図示しない空気圧の調整ユニットが接続されている。
【0017】
なお、上記した流入管2Dとエルボー管3との接続固定、及びエルボー管3とエアチューブ4との接続固定は、それぞれ、ガス管接続等で用いられるような公知のネジ締め式の留め具5A,5Bによって行われている。これにより、袋体2は、図示しない空気圧の調整ユニットによって加圧空気が封入されることにより、その側面の蛇腹面2Cを伸張させる態様で膨張展開して、押圧面2Bを押圧方向に移送させるようになっている(図1参照)。
【0018】
ここで、上記した袋体2は、図2に示されるように、加圧空気が封入される前の自由状態では、それ自体の剛性によって、一定の伸張方向高さ(図示上下方向の高さ)を有する円筒型形状に保たれる構成となっている。そして、上記した凹面2Fやベース板6の凸面6Aは、自由状態時の袋体2の内部に形成される空間内に張り出す格好で形成されており、凹面2Fや凸面6Aの形成によって、袋体2の自由状態時における伸張方向高さを増大させる構成とはなっていない。
【0019】
このように、本実施例のエアセル1によれば、流入管2Dが、袋体2の凹面2Fに当てがわれるベース板6の凸面6Aの内部空間を通って配設される構成となっていることにより、流入管2D及びエルボー管3(接続管)の配置スペースを、凸内空間6B(凹内空間2G)のスペースに吸収させることができる。これにより、ベース板6の背面部に張り出す配置スペースを小さく抑えることができるため、エアセル1の設置スペースの小型化を図ることができる。
【実施例2】
【0020】
続いて、実施例2のエアセル1の構成について、図3〜図4を用いて説明する。なお、本実施例では、実施例1で示したエアセル1と実質的に同一の構成及び作用を奏する箇所については同一の符号を付して説明を省略し、異なる箇所について詳しく説明することとする。
【0021】
本実施例のエアセル1は、図3に示されるように、ベース板6の背面部に沿って配設されるエアチューブ4を、ベース板6の背面部から張り出さないように配設することができるよう工夫された構成となっている。具体的には、図3〜図4に示されるように、袋体2の底面2Aに、凹面2Fの凹内空間2Gと連通して、凹内空間2Gを袋体2の底面2Aの外周縁の外へ逃がすことのできる逃がし凹面2Hがトンネル状に凹んで形成されている。
【0022】
そして、上記の逃がし凹面2Hの形成に伴って、ベース板6にも、袋体2の逃がし凹面2Hに当てがわれるようにトンネル状に張り出す逃がし凸面6Cが形成されている。そして、図4に示されるように、エルボー管3を介して袋体2の流入管2Dに接続されたエアチューブ4(本発明の接続管に相当する。)は、上記した袋体2の逃がし凹面2Hの凹内空間2Jとベース板6の逃がし凸面6Cの凸内空間6Dとの重なったトンネル空間を通って、ベース板6の底面2Aに沿って袋体2の外周縁の外へ向かって配設されるようになっている。
【0023】
このように、本実施例のエアセル1によれば、接続管となるエアチューブ4が、袋体2の底面2Aに形成された逃がし凹面2Hの凹内空間2Jを通って外へ逃がされる構成となっていることにより、実施例1の構成と比べて、更に、ベース板6の背面部から張り出すはずのエアチューブ4の配置スペースを、逃がし凹面2Hの凹内空間2Jのスペースに吸収させることができる。したがって、袋体2の凹面2Fが袋体2の底面2Aの中央領域に形成される構成において、エアセル1の更なる設置スペースの小型化を図ることができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態を2つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施ができるものである。例えば、上記各実施例では、袋体2のベース板6に対する支持は、単に袋体2の底面2Aをベース板6に当てがえて、流入管2Dを接続管(エルボー管3やエアチューブ4)と接続することによって行った構成を例示したが、図5に示されるように、袋体2にひれ部2Mを一体成形して、このひれ部2Mをベース板6に挟持させるなどして係止させることで支持をさせる構成としてもよい。
【0025】
上記したひれ部2Mは、袋体2の底面2Aの外周縁部の対向する二箇所の位置から垂下する形に形成されている。これらひれ部2Mは、袋体2のブロー成形時に型合わせされる型合わせの境界面部分(パーティングライン2Pができる境界面部分)に形成されることで、その成形が容易に行えるように工夫されている。
【0026】
また、上記各実施例では、袋体2の円筒部の外周面に、押圧方向に伸張可能な蛇腹面2Cが形成されたものを示したが、図6に示されるように、蛇腹面2Rが袋体2の上面に形成されたものであってもよい。すなわち、袋体2は、特定の形態で伸張する構成に限定されるものではなく、空気圧によって伸張する構成であれば、特にどのような形態で伸張する構成となっていても構わない。また、袋体2の形状も、円筒容器型に限定されるものではなく、各筒容器型等の種々の形のものを採用することができる。
【0027】
また、流入管2DがL字状のエルボー管3を介してエアチューブ4と接続された構成を例示したが、流入管2Dに直接される部品(接続管)は特に限定されるものではなく、エアチューブ4が流入管2Dに直接接続されるものであったり、バルブ等の他の機能部品が間に介在して流入管2Dに接続されるものであったりしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 エアセル
2 袋体
2A 底面
2B 押圧面
2C 蛇腹面
2D 流入管
2E 空気流入口
2F 凹面
2G 凹内空間
2H 逃がし凹面
2J 凹内空間
2P パーティングライン
2M ひれ部
2R 蛇腹面
3 エルボー管(接続管)
4 エアチューブ(接続管)
5A 留め具
5B 留め具
6 ベース板
6A 凸面
6B 凸内空間
6C 逃がし凸面
6D 凸内空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧によって膨張収縮する袋体を備えたエアセルであって、
前記袋体は支持体となるベース板に当てがわれて設けられ、該袋体には該袋体に対する空気流入口を構成する流入管が前記ベース板に貫通して設けられ、該流入管は前記袋体に凹み形成された凹面の形成領域において前記袋体への空気流入口を形成しており、該流入管は前記凹面に当てがわれるように前記ベース板に張り出して形成された凸面の凸内空間を通って配設されていることを特徴とするエアセル。
【請求項2】
請求項1に記載のエアセルであって、
前記袋体はその前記ベース板に当てがわれる底面の外周縁よりも内側の中央領域に前記凹面が凹み形成されており、更に、該袋体の底面には前記凹面の凹内空間と連通して該凹内空間を該底面の外周縁の外へ逃がす逃がし凹面が形成されており、前記流入管或いは該流入管に接続される接続管が前記凹面の凹内空間から前記逃がし凹面の凹内空間を通って配設されていることを特徴とするエアセル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−233590(P2010−233590A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81758(P2009−81758)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】