説明

エアゾール定量バルブ

【課題】コスト面で有利に作成することができるエアゾール定量バルブを提供する。
【解決手段】エアゾール定量バルブ10は、バルブハウジング11と、バルブハウジング11内に収容されたバルブステム16と、バルブハウジング11内の底部に収容されてバルブステム16との間に戻しばね17を組み付けており、バルブステム16との間に流体流路30を形成するシールド部材18を備えており、シールド部材18を交換することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を噴出するエアゾールバルブに関し、特に定量を噴射するエアゾール定量バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエアゾール定量バルブの一例として、図6に示したエアゾール定量バルブ100はバルブハウジング101内にバルブステム102を収容したものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示されたエアゾール定量バルブ100は、使用時に、コイルスプリング103に抗してバルブステム102を下降させる。すると、バルブステム102の横穴がバルブステムラバー104で閉鎖されるとともに、バルブステム102の下端の流体液路105が下降される。そして、定量バルブパッキング106により流体流路105を閉鎖する。さらに下降すると、バルブステム102の横穴がバルブステムラバー104の下側に位置し定量バルブ室内と連結して、定量バルブ室内の流体をバルブステム102と連結されている噴射口から定量噴出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−345158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に開示された従来のエアゾール定量バルブ100では、バルブステム102の下端の流体液路105と定量バルブ用パッキング106とのシール部分が定量時に容器内からの供給を絶つために弾力のある材質で作成されなければならない。
【0006】
シール部分のシール性が悪いと定量性が悪くなり、例えば連続噴射時における作動性が悪くなる等の問題点があった。
このようなシール部分はゴムを使用するのが一般的であるが、ゴムは硬くなったり膨潤したりして連続噴射や隙間が無くなった場合に定量室内への内容物の供給ができなくなって噴射を行えなくなる虞があった。
【0007】
これに対して、シール部分を各種内容物に対する適合性がゴムよりも良好なプラスチック、例えばポリエチレンで作成する場合、シール部分を固定するための別部品が必要になる。
【0008】
バルブハウジング101全体を柔らかいプラスチックで一体に作成する場合、ハウジング上部を金属のマウンテンカップで加締め固定すると、柔らかい材質のために変形することがあり、それに伴い固定強度も弱くなる虞があった。
また、1回の噴射量の異なる量毎に異なる金型を必要としていたため、金型に汎用性がなく、コスト面で不利であった。
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、コスト面で有利に作成することができるエアゾール定量バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1)エアゾール容器内の内容物を噴射させるエアゾール定量バルブであって、バルブハウジングと、前記バルブハウジング内に収容されたバルブステムと、前記バルブハウジング内の底部に収容されて前記バルブステムとの間に戻しばねを組み付けており、前記バルブステムとの間に流体流路を形成するシールド部材を備えており、該シールド部材を交換することができることを特徴とするエアゾール定量バルブ。
【0011】
このような構成のエアゾール定量バルブによれば、シールド部材をバルブハウジング内に収容しているため、シールド部材は小さな部品であり、形状も単純になる。これにより、シールド部材は、その寸法を一部変更するだけで1回の噴射量の異なる定量バルブを作成することができる。したがって、高価な金型を用いる必要がなく、コスト面で有利にすることができる。また、シールド部材を交換することができるので、噴射量を容易に変更することができる。
【0012】
(2)上記(1)のエアゾール定量バルブであって、前記バルブハウジングは、硬質の樹脂材料を用いて成形され、前記シールド部材は前記バルブハウジングよりも軟質の樹脂材料を用いて成形されていることを特徴とするエアゾール定量バルブ。
【0013】
このような構成のエアゾール定量バルブによれば、バルブハウジングが硬質の材料を用いているためにエアゾール定量バルブの組み立て性を良好にすることができる。シールド部材がバルブハウジングよりも軟質の材料を用いているために内容物に対する適合性を良好にすることができる。また、シールド部材をバルブハウジングの底部に位置させて戻しばねを組み付けたため、シールド部材を固定するための別部品を不要にすることができる。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)のエアゾール定量バルブであって、前記バルブハウジングは、前記シールド部材を固定するための固定手段を有することを特徴とするエアゾール定量バルブ。
【0015】
このような構成のエアゾール定量バルブによれば、別部品を用いることなく、バルブハウジングの固定手段によりシールド部材を確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るエアゾール定量バルブによれば、バルブハウジング内に収容されてバルブステムとの間に弾性部材を組み付け、バルブステムとの間に流体流路を形成するシールド部材を備えているので、内容物の確実な噴射を行うことができ、且つコスト面で有利に作成することができる。また、シールド部材を交換することで、噴射量を容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る第1実施形態のエアゾール定量バルブの縦断面図である。
【図2】図1に示したエアゾール定量バルブの動作を説明する第2段階の縦断面図である。
【図3】図1に示したエアゾール定量バルブの動作を説明する第3段階の縦断面図である。
【図4】図1に示したエアゾール定量バルブの動作を説明する第4段階の縦断面図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態のエアゾール定量バルブの縦断面図である。
【図6】従来のエアゾール定量バルブの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るエアゾール定量バルブの好適な実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態に係るエアゾール定量バルブ10は、バルブハウジング11と、マウンテンカップ12と、ステムラバー13と、ガスケットラバー14と、チューブ15と、バルブステム16と、戻しばね17と、シールド部材18と、定量室19と、を備える。エアゾール定量バルブ10は、一定量の噴射が必要な製品、例えば医薬品(喘息薬、水虫薬等)や室内芳香剤用に使用される。
【0020】
バルブハウジング11は、硬質のプラスチック材料を用いて筒形状に形成されている。バルブハウジング11は、図1中の上方から下方に向けて、第1内径部20、第2内径部21、第3内径部22、第4内径部23を順次形成している。
【0021】
バルブハウジング11は、その上端部にステムラバー13を組み付けている。ステムラバー13は、弾性を有し、その中央部にステム挿通孔24を有する。
第1内径部20は、その底部側に、シールド部材18をバルブハウジング11の底部に固定するための環状突部25を内周に向けて突出形成している。
【0022】
バルブハウジング11は、ステムラバー13の下方にガスケットラバー14が組み付けられており、バルブハウジング11の上部とステムラバー13とガスケットラバー14とを覆ってマウンテンカップ12が組み付けられている。マウンテンカップ12は不図示のエアゾール容器に加締め固定される。
バルブハウジング11は、第1内径部20と第2内径部21とにシールド部材18が収容されている。シールド部材18は、バルブハウジング11よりも軟質のプラスチック材料を用いて円筒形状に成形されている。
【0023】
シールド部材18は、第1筒部26と第2筒部27とを有する。シールド部材18は、第1筒部26と第2筒部27との繋ぎ目に段部状の中央板部28を有している。中央板部28の外径は、バルブハウジング11の環状突部25より大きく形成されており、シールド部材18は、環状突部25の下部に押し込まれて固定されている。
【0024】
シールド部材18は、第2筒部27の中央部に予め定められた内径寸法D1を有する流体流路形成部30を有する。第4内径部23には、エアゾール容器内の内容物に連通接続されるチューブ15を取り付けている。
【0025】
シールド部材18の内周部には、バルブステム16を組み付けている。バルブステム16は、硬質のプラスチック材料を用いて軸形状に形成されている。
バルブステム16は、その上端部に不図示のノズルに連通接続される連通孔31を軸方向に形成しており、連通孔31の一部に切換孔32を連通孔31に直交する方向に形成している。
【0026】
バルブステム16は、その中央部にステムラバー13に当接する鍔部33を形成しており、鍔部33とシールド部材18の中央板部28との間に戻しばね17を組み付けている。戻しばね17は、鍔部33を上方に向けて常時付勢している。
バルブステム16は、その下端部に、シールド部材18の流体流路形成部30が有する内径寸法D1よりもわずかに小さい外径寸法D2を有する開放用軸部34を形成している。
【0027】
バルブステム16は、開放用軸部34の上部に、開放用軸部34よりも大きく、シールド部材18の流体流路形成部30が有する内径寸法D1よりもわずかに大きい外径寸法D3を有する閉塞用軸部35を形成している。この閉塞用軸部35と開放用軸部34とはテーパ面36により連続している。
【0028】
エアゾール定量バルブ10は、シールド部材18とバルブステム16との間の閉塞空間に小さい容量の定量室19を形成している。
【0029】
このようなエアゾール定量バルブ10は、組立に際し、シールド部材18をバルブハウジング11内に落とし込み、シールド部材18を押圧する。これにより、シールド部材18の中央板部28がバルブハウジング11の環状突部25の下部に係止してシールド部材18がバルブハウジング11に強固に固定される。
【0030】
次に、図1〜図4を参照して、エアゾール定量バルブ10の動作について説明する。
先ず、エアゾール容器内にガス(LPGなどの液化ガス)を充填する際に、ガスは充填機により圧縮され、圧力をかけて充填される。ガスは、バルブステム16とマウンテンカップ12の上部穴部の隙間を通り、ステムラバー13上面とマウンテンカップ12上部のフラット面の下面との間を通り抜ける。その後、バルブハウジング11の上部側面に設けられた切り欠き、スリットを通ってエアゾール容器内に充填される。
【0031】
次に、内容物を噴射する際は、戻しばね17に抗して位置A1から位置A2までバルブステム16を押し下げる。
このとき、バルブステム16が位置A1にあるとき、切換孔32は定量室19に連通されておらず、バルブステム16の開放用軸部34により流体流路形成部30が開放状態にある。そのため、定量室19に内容物が供給されている。
【0032】
図2に示すように、バルブステム16が位置A2まで押下されることにより、バルブステム16の切換孔32がステムラバー13より下方になる前に流体流路形成部30が閉塞される。これにより、定量室19に供給された内容物が密閉される。
【0033】
図3に示すように、バルブステム16が位置A2から位置A3まで押下される。これにより、閉塞用軸部35により流体流路形成部30が閉塞されている状態が維持されたままで切換孔32が定量室19に連通する。
【0034】
図4に示すように、バルブステム16が位置A3から位置A4までさらに押下される。これにより、閉塞用軸部35により流体流路形成部30が閉塞されている状態が維持されたままで、定量室19から切換孔32を通じて連通孔31に内容物が供給され、定量室19に供給された一定量だけの内容物がノズルから噴射されることになる。
【0035】
そして、バルブステム16の押下を中止すると、戻しばね17に蓄積されていた弾性反発力によりバルブステム16が位置A1まで復帰し、切換孔32を定量室19に連通させず、バルブステム16の開放用軸部34により流体流路形成部30が開放状態となる。
【0036】
上述したように本実施形態のエアゾール定量バルブ10では、シールド部材18をバルブハウジング11内に収容しているため、シールド部材18は小さな部品であり、形状も単純になる。これにより、シールド部材18は、その寸法を一部変更するだけで1回の噴射量の異なる定量バルブを作成することができる。従って、高価な金型を用いる必要がなくなり、コスト面で有利にすることができる。また、シールド部材を交換することができるので、噴射量を容易に変更することができる。
【0037】
また、バルブハウジング11が硬質の樹脂材料を用いているため、エアゾール定量バルブ10の組み立て性を良好にすることができる。シールド部材18がバルブハウジング11よりも軟質の樹脂材料を用いているため、内容物に対する適合性を良好にすることができる。また、シールド部材18をバルブハウジング11の底部に位置させて戻しばね17を組み付けたため、シールド部材18を固定するための別部品を不要にすることができる。
【0038】
また、別部品を用いることなく、シールド部材18の中央板部28とバルブハウジング11の環状突部25とによりシールド部材18をバルブハウジング11に確実に固定することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態のエアゾール定量バルブについて説明する。なお、以下の第2実施形態において、上述した第1実施形態と重複する構成要素や機能的に同様な構成要素については、図中に同一符号を付すことによって説明を簡略化あるいは省略する。
【0040】
図5に示すように、本実施形態のエアゾール定量バルブ50は、第1実施形態と比べて長く成形された第1内径部52を有するバルブハウジング51を適用している。
また、第1実施形態の第1筒部26を切除したシールド部材53を適用しており、第1実施形態よりも長いバルブステム54を適用している。そのため、エアゾール定量バルブ50は、シールド部材53とバルブステム54との間の閉塞空間に、第1実施形態よりも大きい容量の定量室55を形成している。
【0041】
上述したように本実施形態のエアゾール定量バルブ50では、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。特に、本実施形態では、シールド部材53を成形するのに、第1実施形態のシールド部材18の第1筒部26を切除するだけで適用することができる。そのため、新たな成形金型を用いる必要がなく、工数の大幅な削減を図ることができる。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0043】
10 エアゾール定量バルブ
11 バルブハウジング
16 バルブステム
17 戻しばね
18 シールド部材
25 環状突部(固定手段)
30 流体流路形成部(流体流路)
50 エアゾール定量バルブ
51 バルブハウジング
53 シールド部材
54 バルブステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器内の内容物を噴射させるエアゾール定量バルブであって、
バルブハウジングと、
前記バルブハウジング内に収容されたバルブステムと、
前記バルブハウジング内の底部に収容されて前記バルブステムとの間に戻しばねを組み付けており、前記バルブステムとの間に流体流路を形成するシールド部材を備えており、該シールド部材を交換することができることを特徴とするエアゾール定量バルブ。
【請求項2】
前記バルブハウジングは、硬質の樹脂材料を用いて成形され、前記シールド部材は、前記バルブハウジングよりも軟質の樹脂材料を用いて成形されていることを特徴とする請求項1記載のエアゾール定量バルブ。
【請求項3】
前記バルブハウジングは、前記シールド部材を固定するための固定手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載のエアゾール定量バルブ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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