説明

エアゾール消火器用消火剤及びエアゾール消火器用消火剤の製造方法

【課題】化合物を燃焼させて発生する消火成分を冷却及び噴射し、火事を鎮圧するエアゾール消火器の組成物、製造方法、及び消火器を提供する。
【解決手段】消火剤は、65〜82重量%のKNO、3〜13重量%のKClO、8〜15重量%のジシアンジアミド、及び残部として樹脂を含み、3〜10重量%のオキサミドをさらに含んでもよい。該消火剤を製造する方法は、溶剤内の前記消火剤の成分を混和する段階と、前記混和物を異速圧延ロールを通過させる段階と、前記溶剤を前記混和物から除去する段階と、前記混和物を250μm以下に粉砕する段階と、前記粉砕された混和物を圧着成形する段階と、を含む。前記圧着成形段階は、60〜90℃の温度に維持される金型で行われる。また、エアゾール消火器の作動時、ノズルから発生する火炎、溶融物、灰等の噴出を最小化するための消火器の構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火器の分野、特に、エアゾール消火器用消火剤及び該消火剤を製造する方法に関する。本発明は、また、前記消火剤を含むエアゾール消火器の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール消火器は、消火装置内に消火剤、冷却剤、点火装置を含み、前記消火剤は、一般に、カリウム酸化物、樹脂、添加剤等で構成される。外部の作動電気信号、自体感知または作動システムにより、消火装置内で消火剤が燃焼すると、消火成分が生成し、この際、消火成分と一緒に生成したガスの圧力によって、消火成分が冷却層を通過し、ノズルから噴射される。噴射される消火成分は、消火が要求される場所に適用されると、消火成分のうちカリウムイオンが火事に供給される酸素ラジカルを遮断することにより、火事を鎮圧する。
エアゾール消火器は、燃焼により発生する消火粒子が極めて小さいので(一般に1〜5μm)、消火効率が他の消火システムに比べて数倍優れ、消火器の作動後、汚染区域を圧縮空気で掃除することが容易であるので、使用者の側面では極めて有用である。また、既存のガス系消火装置とは異なり、配管作業無しに、単に固定だけすればいいので、設置及び維持管理費用が極めて安価である。さらに、現在、最も多用されるハロンガス系消火装置は、オゾン層を破壊するため、間もなくその使用が制限されるようになる状況である。
【0003】
エアゾール消火器は、水が使用できない火事である油類及び電気火事において効果が極めて優れ、例えば、工場の各種の電気パネル、美術館、図書室、電算室、移動通信設備、高価な電子装備、船舶、電子装備組立工場等、その適用範囲が広範囲である。
関連先行技術として、特許文献1は、バインダとしてニトロセルロースを用いるエアゾール消火器用消火剤を開示する。前記特許文献1では、バインダとしてニトロセルロースを用いることにより、トリアセチンのような可塑剤とジフェニルアミンのような化学的安定剤を必要とする。したがって、カリウムイオンを排出することができるKNOの含有量が減少し、噴射される消火成分の消火能力が落ちる。また、ニトロセルロースにより、燃焼時、有害成分であるNOが多量発生し、燃焼温度も高い。それだけではなく、ニトロセルロースの自然分解性と可塑剤の変性により、長期貯蔵性において不利である。
【0004】
消火剤は、燃焼時、過量の熱を発生させるので、これを消火対象に直接噴射する場合、さらに火事を大きくする現象をもたらし得る。そこで、冷却層により高温の消火成分を適切に冷却させて排出することが重要である。前記特許文献1では、冷却剤として、化学的に吸熱反応する物質(例えば、CaCO、MgCO等)を、有機バインダで形状を持たせて成型したものを用いるが、この場合、バインダが燃焼しながら、二次有害ガスを発生し、バインダの燃焼熱により冷却剤の結合力が落ち、粉塵を排出し得る。
特許文献2は、KNOをカリウムイオン供給及び酸化剤として用い、冷却剤として、ジシアンジアミド(DCDA)、ウレアを、バインダとして、ニトロセルロースの代わりに、フェノールホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂及び4−オキシ安息香酸を、また、燃焼触媒として、CuO、Fe等の金属成分を用いるものを開示する。この組成は、ニトロセルロースをフェノールホルムアルデヒド樹脂等に代替したが、燃焼時、CO、NH、HCNのような有害ガスが多量発生し、消火能力が落ちる。
【0005】
特許文献3は、KNO67〜72%、25μm(最大)、フェノールホルムアルデヒド樹脂8〜12%、100μm(最大)、及びDCDA16%〜25%、15μm(最大)を含有するエアゾール形成組成物を開示する。この組成物は、消火能力には優れているが、樹脂を8%以上、DCDAを16%含有するので、一酸化炭素、アンモニアのような有害性ガスを多量放出するようになる。
特許文献4は、前記特許文献3の問題点である有害性ガスの放出を減らすための組成として、DCDA含量を9〜20%(粒度、40〜80μm:10〜25μm=70:30)、樹脂を6〜14%(粒度、70〜120μm:1〜7μm=25:75)、さらにKNO含量を66〜85%(粒度、15〜25μm:7〜15μm=80:20)で提示しているが、単に酸化剤の含量を増加させ、DCDAとバインダの含量を減少させることによっては、消火能力を維持しながら有害ガス成分の放出量を減らすことは難しい。
特許文献5は、前記特許文献4の組成に加え、冷却剤の役割をしながら有害ガスを酸化反応させることができる触媒方法を提示している。前記特許文献5は、冷却剤及び触媒として、ゼオライト、シリカゲル及び酸化アルミニウムを球形または錠剤として成形して用いるものを提示しているが、燃焼の際に発生する1500K以上の高温、燃焼の際に発生する物質による表面汚染、極めて短い反応時間等により、触媒としての役割が不可能である。
【0006】
先行技術は、バインダとして、フェノールホルムアルデヒド樹脂等を用いる。しかしながら、これらの樹脂は、種類があまりに広範囲であり、特性の差が大きく、特に選択して使用しなければ、燃焼速度が速くなり、ノズルから火炎が見られ、溶融物が流れることもある。または、燃焼速度が遅くなり、燃焼しきれず、消火能力が著しく低減してしまう。
消火剤の製造方法として、前記特許文献4及び前記特許文献3によると、成分物質の粒径と比率とを厳格に管理しながら、樹脂を溶剤(アセトン及びアルコール)に溶かした後、原料を混合器に入れて混和させる。混和完了後は、溶剤を乾燥して蒸発させた後、混和された原料をプレスで成形するが、この場合、混和効率と生産効率が落ち、さらに、成形時の密度調整が困難であり、信頼性の確保が難しい。
【0007】
本明細書において引用された先行技術は、全て本発明に参照として取り込まれる。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 109 601号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 925 808号明細書
【特許文献3】米国特許第6,042,664号明細書
【特許文献4】米国特許第6,264,772号明細書
【特許文献5】米国特許第6,116,348号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、消火能力を最大化すると共に、燃焼の信頼性を確保し、低有害性と適正な強度を有する消火剤を提供するものである。本発明はまた、このような消火剤の製造において、工程条件を緩和し、消火剤燃焼の均一性を高めることができる消火剤の製造方法を提供するものである。また、本発明は、燃焼の際に発生する火炎、灰、溶融物等を除去し、排出温度を減らすことができる消火器の構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するために、本発明は、エアゾール消火器用消火剤において、前記消火剤が、65〜82重量%のKNO、3〜13重量%のKClO、8〜15重量%のジシアンジアミド、及び4〜10重量%の樹脂を含む消火剤を提供する。
前記消火剤は3〜10重量%のオキサミドをさらに含むことができる。
前記樹脂は、フェノールホルムアルデヒド樹脂及びエポキシ樹脂を含むことができる。
前記樹脂は、樹脂の全体重量の20〜30%で、エポキシ樹脂を含むことができる。
前記KNO及び前記ジシアンジアミドは、10〜30μmの粒径を有し、前記KClOは、80〜120μmの粒径を有することができる。
【0010】
また、前記課題を達成するために、本発明は、エアゾール消火器用消火剤を製造する方法において、溶剤内の前記消火剤の成分を混和する段階と、前記混和物の均一度を高めるように、前記混和物を異速圧延ロールを通過させる段階と、前記溶剤を前記混和物から除去する段階と、溶剤が除去され、乾燥した前記混和物を250μm以下に粉砕する段階と、前記粉砕された混和物を圧着成形する段階とを含む消火剤の製造方法を提供する。
前記製造方法は、前記粉砕された混和物を60〜90℃の温度に加温する段階をさらに含むことができる。
前記圧着成形段階は、60〜90℃の温度に維持される金型で行うことができる。
また、前記課題を達成するために、本発明は、前記消火剤を含むエアゾール消火器であって、前記消火器は、それぞれ1つ以上の噴射口を有する2つ以上のノズルで構成された噴射ノズルを備え、前記ノズルは、各ノズルの前記噴射口の一部または全部が、消火成分の噴射方向に沿って、互いにずれて配列されるように配置されるエアゾール消火器を提供する。
前記ノズル間の間隔は、5〜10mmであることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、消火能力が最大化されると共に、燃焼排出成分の有害性を最大限減らすことができる消火剤の組成を提供する。本発明は、組成に用いられる固形成分の原料の要求条件、特に粒度を緩和させ、バインダとして用いられる樹脂の要求条件を具体的に提示する。
本発明は、消火剤の製造の際に、混和後、加圧圧延工程を設けて、原料の混和効率を増大させ、乾燥後、粉砕し、一定の大きさの粒子を作り、加温成形することにより、密度の増大、均一な燃焼特性(消火能力)及び生産性の向上を確保する。
また、エアゾール消火器に無機質の冷却剤と二重ノズルを適用し、消火器の組立体において、燃焼の際に発生する火炎、灰、溶融物等を最小化する。さらに、ガス温度の低下効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、消火能力を最大化しながら、発生するガスの有害性を減らすことができる消火剤を提供する。本発明による消火剤の組成において、KNO以外に、さらに多くの酸素供給が可能なKClOを導入し、選択的にジシアンジアミドと同一の機能(燃料及び冷却)を果たしながら、内部に酸素を有したオキサミドを加える。したがって、本発明の消火剤は、KNO、KClO、ジシアンジアミド、及び樹脂を基本組成とする。好ましくは、本発明の消火剤は、オキサミドを含んでもよい。
【0013】
消火剤は、平常時は、固体として存在するが、外部信号により点火されると、自発的に燃焼し、KCO、KOH、KClのようなカリウム化合物の消火成分と、N、CO、HOのような消火を助ける物質を発生させる。自発的な燃焼のためには、炭素含有成分(消火剤では、樹脂、ジシアンジアミド、オキサミド)と酸素含有成分が同時に存在しなければならない。酸素を含有しながらカリウムを有する化合物としては、KNO、KClO、KCO、KCr、KSO、KHCO等があるが、本発明は、常温での安定性、自発的燃焼性等を考慮して、KNOとKClOを用いることを特徴とする。本発明の消火剤は、好ましくは65〜82重量%、より好ましくは70〜75重量%のKNOを含む。しかし、KNOのみを用いると、酸素含有量が少なく、有害ガスが発生しやすい。したがって、本発明により、KClOを少量投入する場合、不足した酸素を補充し、有害ガスの発生を減らすことができる。しかし、KClOを多く投入すると、燃焼温度が上昇し、消火能力が落ちるので、適切な含量を選定することが重要である。本発明において、消火剤は、3〜13重量%のKClOを含むことが好ましく、より好ましくは、8〜10重量%のKClOを含む。
【0014】
ジシアンジアミド(C)は、自動車インフレーター用ガス発生剤、エアゾール消火器等において、炭素を供給する燃料として、および、燃焼温度を低くする冷却剤として多用されてきた。本発明の消火剤は、8〜15重量%のジシアンジアミドを含む。この化合物は、燃焼時、HCN、COのような有害ガスを発生させ得る。特に、酸化剤の含量が低い場合、有害ガスの発生が増大すると思われる。
ジシアンジアミドと類似した構造を有しながら、内部に2つの酸素を有するオキサミド(C)を用いることにより、有害ガスの発生を減らすことができる。特に、本発明で説明される通り、酸化剤として、KNOに所定量のKClOを加えることにより、有害ガスの発生を顕著に改善することができる。本発明により、消火剤は、3〜10重量%のオキサミドを含んでもよい。
【0015】
消火剤の成分のうち、樹脂として、一般に、フェノールホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂等が用いられる。しかし、実際、これらの樹脂のうち、消火器の組成として用いられ得る範囲は、極めて限定的なものと認識される。同一の系列の樹脂でも、あるものは、消火剤の組成において、バインダとしての機能と炭素供給源の役割を正常に行うが、あるものは、バインダとしての機能は果たしても、燃焼の際に全く異なる特性、例えば、点火ができない、燃焼が不均一、低い消火能力等を示す。さらに、消火器として組み立てた際に、ノズルから溶融物が漏れることもあり得る。したがって、樹脂に対する要求条件が厳格に適用されなければならない。
【0016】
本発明は、これらの要求条件に符合する消火剤の組成を提供する。具体的に、本発明の消火剤は、消火剤の重量を基準に、4〜10%の樹脂、より好ましくは4〜9%の樹脂を含んでもよい。前記樹脂は、フェノールホルムアルデヒド樹脂を含む。好ましくは、前記樹脂は、フェノールホルムアルデヒド樹脂とエポキシ樹脂を含む。消火剤の機械的強度を高めるために、エポキシ樹脂は、樹脂の全体重量の20〜30%として用いることが好ましい。例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂5部に対して、硬化剤無しに、エポキシ2部を混合した樹脂を90℃で加温成形する場合、フェノールホルムアルデヒド樹脂を単独で用いる場合よりも、機械的強度が高い消火剤を提供することができる。
【0017】
本発明の消火剤は、各消火剤の成分を粉砕機で粉砕することにより製造され得る。好ましくは、本発明において、KNO、DCDA、及びオキサミドは、10〜30μmの粒径を有するように粉砕され、KClOは、80〜120μmの粒径を有するように粉砕される。前記粒径の範囲のものを用いると、消火剤が均一に燃焼し、生成した消火成分の量も変化がない。先行技術では、各成分の粒度が厳格であり、また、各成分の組成比が重要な変数として取り扱われているが、本発明では、一般水準の粒度条件のみでも、所望の特性を有する消火剤が得られる。
消火剤の組成は消火性能に影響を及ぼすが、消火剤を製造する工程も、消火性能に大きな影響を及ぼす。先行技術とは異なり、本発明は、新たな工程を導入し、工程条件を緩和し、燃焼の均一性を高めることができる。
【0018】
通常は、要求される粒度を満たす原料を混合器で混和後、乾燥し、常温でプレスにより加圧成形していたが、この場合、混和時に粉末混合効率が落ち、成形条件が難しくなる。成形圧力により密度変化があり、さらに、これは、燃焼速度に変化を与えるので、燃焼の均一性が落ちる。本発明は、混和の最後の段階で、加圧される異速ロールで、原料を1〜5分間圧延し、混和物の均一度を高める。混和物を異速ロールで圧延することにより、混和時、固まった部分が割れ、均一に混和され、燃焼特性が極めて均一になる。圧延された混和物を、乾燥室で、溶剤を完全に蒸発させると、樹脂成分により固まるが、これをそのまま成形する場合、密度が低く、不均一に燃焼する。したがって、乾燥後、粉砕機で、平均粒度が250μm以下となるように乾燥物を粉砕し、粉砕された原料を60〜90℃の温度で均一に加温した後、60〜90℃に維持される金型に入れて成形することが好ましい。本発明の消火剤の製造方法による場合、成形圧力が低くなり、消火剤の密度と強度が高まる。
【0019】
図1は、常温成形(曲線1)と本発明による加温成形(曲線2)時の、成形圧力と密度との関係を示すグラフである。図示のように、約1.8g/cmの密度を有する成形された消火剤を得るためには、常温成形の場合、約400MPaの圧力が必要であるが、加温成形を行う場合は、約100MPaの圧力であればよい。図2は、常温成形(曲線1)と本発明による加温成形(曲線2)時の、成形圧力と燃焼速度との関係を示すグラフである。常温成形の場合、250MPa以上の圧力で成形しなければ、燃焼速度の変化が大きくなるが、加温成形の場合、60MPaの圧力で成形の際に、燃焼速度が一定になる。図1及び図2から明らかなように、所定の結果を得るのにおいて、加温成形が常温成形に比べて約4倍以上有利であることがわかる。
本発明によるエアゾール消火器は、ケース、点火装置、冷却剤、噴射ノズルを備え、上述した組成と特性を有する消火剤をさらに有する。エアゾール消火器のケースは、腐食を防止するために、ステンレス材質からなることが好ましい。消火剤を点火させる装置としての点火装置は、例えば、電気式マッチに消火剤と同一の組成の粉末を布で取り囲んで用いる。冷却剤としては、酸化アルミニウム材質、カオリン材質、またはこれらを組み合わせた材質が用いられ得る。好ましくは、前記材質を所定の大きさの球形にして用いる。
【0020】
噴射ノズルの大きさと形態は、発生した消火成分が圧力を伴いながら均一に分散されるように、適宜調整される。特に、本発明の噴射ノズルは、それぞれ1つ以上の噴射口を有する2つ以上の噴射ノズルを有する。本発明の消火器は、2つ以上の噴射ノズルが行き違って配置された多重ノズル、好ましくは、2つの噴射ノズルが行き違って配置された二重ノズルを有することを特徴とする。ここで、2つ以上の噴射ノズルが行き違って配置されるというのは、各噴射ノズルに備えられた噴射口の一部または全部が、消火成分の噴射方向に沿って、互いに行き違って配列されることを意味する。多重ノズル間の間隔は、5〜10mmであることが好ましい。消火器を点火させると、内部では1500K以上の高温と火炎が発生し、その火炎がノズルから外に噴出され、または燃焼しながら生じた溶融物がノズルの外に押し出されることが多かった。通常、このような問題点を解決するために、冷却剤をさらに充填するが、その場合、有効消火成分の排出が顕著に減少するようになる。本発明により、噴射ノズルを行き違って配置した後、多重ノズルを適用することにより、有効成分の減少無しに、前記問題点が解決され得る。
【0021】
以下、本発明の実施のための具体的な実施例について説明する。下記実施例は、本発明を説明するために例示的に提供されるものであり、本発明の範囲を制限するものと理解されてはならない。
実施例1〜実施例4は、エアゾール消火器用消火剤の樹脂成分としてフェノールホルムアルデヒド樹脂を含む、本発明により製造される消火剤と、その特性を示す。実施例5〜8は、消火剤の樹脂成分として、フェノールホルムアルデヒド樹脂とエポキシ樹脂を、硬化剤無しに含む、本発明により製造される消火剤と、その特性を示す。
【0022】
[実施例1]
KNO75重量%及びDCDA16.5重量%と、アセトン、アルコールまたは混合溶剤に溶解されたフェノールホルムアルデヒド樹脂8.5重量%とを混合器に入れ、30〜50℃の温度で2時間混和した。混和後、異速で回転する1対の圧延ロール(前6rpm/後4rpm)で3分間圧延した。その後、55℃で溶剤を完全に乾燥した後、粉砕機で250μm以下に粉砕した。その後、60〜90℃の温度で充分加温した後、同一の温度で加温されている金型で、消火剤の断面圧力が70〜100MPaとなるように成形した。
この組成は、以前の特許で提示された組成と類似したものであり、本発明と差を提示するために実施した。
【0023】
[実施例2]
KNO75重量%、DCDA8.5重量%及びオキサミド8.0重量%と、アセトン、アルコールまたは混合溶剤に溶解されたフェノールホルムアルデヒド樹脂8.5重量%とを混合器に入れ、30〜50℃の温度で2時間混和した。混和後の段階、すなわち、圧延、粉砕、加温、及び成形段階は、上述した実施例1の条件と同様であった。
[実施例3]
KNO75重量%、KClO3重量%、DCDA10重量%及びオキサミド5重量%と、アセトン、アルコールまたは混合溶剤に溶解されたフェノールホルムアルデヒド樹脂7重量%とを混合器に入れ、30〜50℃の温度で2時間混和した。混和後の段階は、上述した実施例1の条件と同様であった。
[実施例4]
KNO70重量%、KClO8重量%、DCDA10重量%及びオキサミド5重量%と、アセトン、アルコールまたは混合溶剤に溶解されたフェノールホルムアルデヒド樹脂7重量%とを混合器に入れ、30〜50℃の温度で2時間混和した。混和後の段階は、上述した実施例1の条件と同様であった。
【0024】
下記の表1は、上記した実施例1〜4による各消火剤成分の消火剤の特性実験結果を示す。表1に示すように、消火剤の組成にオキサミドとKClO成分を投入することにより、消火能力は維持しながら、有害ガスであるCO濃度を顕著に減らすことができた。
【表1】

【0025】
[実施例5]
KNO72重量%、KClO10重量%及びDCDA9重量%と、アセトン、アルコールまたは混合溶剤に溶解されたフェノールホルムアルデヒド樹脂5重量%及びエポキシ樹脂4重量%とを混合器に入れ、30〜50℃の温度で2時間混和した。混和後の段階は、上述した実施例1の条件と同様であった。
[実施例6]
KNO72重量%、KClO10重量%及びDCDA11重量%と、アセトン、アルコールまたは混合溶剤に溶解されたフェノールホルムアルデヒド樹脂5重量%及びエポキシ樹脂2重量%を混合器に入れ、30〜50℃の温度で2時間混和した。混和後の段階は、上述した実施例1の条件と同様であった。
【0026】
[実施例7]
KNO66重量%、KClO12.7重量%及びDCDA14重量%と、アセトン、アルコールまたは混合溶剤に溶解されたフェノールホルムアルデヒド樹脂5重量%及びエポキシ樹脂2.3重量%とを混合器に入れ、30〜50℃の温度で2時間混和した。混和後の段階は、上述した実施例1の条件と同様であった。
[実施例8]
KNO72重量%、KClO10重量%及びDCDA11重量%、アセトン、アルコールまたは混合溶剤に溶解されたフェノールホルムアルデヒド樹脂3重量%及びエポキシ樹脂4重量%とを混合器に入れ、30〜50℃の温度で2時間混和した。混和後の段階は、上述した実施例1の条件と同様であった。
【0027】
実施例5〜8による実験結果は、表2に示す。フェノールホルムアルデヒド樹脂以外に、一定量のエポキシ樹脂を硬化剤無しに用いる場合、適切な配合比において、消火能力と機械的な強度が同時に増大した。
【表2】

【0028】
ここで、図3及び図4を参照して、本発明による消火器の構造を説明すると、図3は、本発明による構造を有するエアゾール消火器を示す断面図であり、図4は、エアゾール消火器の二重ノズルの詳細図である。図示のように、消火器1は、ケース10、点火装置20、消火剤30、冷却剤40、及び噴射ノズル50を備える。通常のエアゾール消火器と同様に、消火剤30が点火装置20により点火されると、エアゾール粒子の形態で消火成分が発生し、発生した消火成分は、冷却剤40を通過しながら冷却された後、ノズル50から噴射される。冷却剤40は、球形に形成された多数の冷却成分が消火器内に層状に配列される。噴射ノズル50は、2つのノズル、すなわち、第1ノズル51及び第2ノズル52を有し、これらは二重に配列され、噴射圧力を考慮して所定の間隔で離れて配列される。各ノズルは、複数の噴射口51’、52’を有する。第1ノズル51と第2ノズル52は、第1ノズルの噴射口51’と第2ノズルの噴射口52’の一部または全部が、消火成分の噴射方向に沿って、互いに行き違って配列されるように配置される。図3及び図4において、噴射口51’、52’は、消火器の縦軸を中心として半径方向に配列されるものとして示されているが、このような配列に制限されず、各ノズル上に任意の態様で配列されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、工場の各種の電気パネル、美術館、図書室、電算室、移動通信設備、高価な電子装備、船舶、電子装備組立工場等に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】常温成形時と比較した、本発明による加温成形時の成形圧力と密度との関係を示すグラフである。
【図2】常温成形時と比較した、本発明による加温成形時の成形圧力と燃焼速度との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の一態様によるエアゾール消火器の断面図である。
【図4】図3のエアゾール消火器の二重ノズルの詳細図である。
【符号の説明】
【0031】
1 消火器
10 ケース
20 点火装置
30 消火剤
40 冷却剤
50 噴射ノズル
51 第1ノズル
52 第2ノズル
51’、52’ 噴射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール消火器用消火剤において、前記消火剤は、65〜82重量%のKNO、3〜13重量%のKClO、8〜15重量%のジシアンジアミド、及び4〜10重量%の樹脂を含む、消火剤。
【請求項2】
3〜10重量%のオキサミドをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の消火剤。
【請求項3】
樹脂が、フェノールホルムアルデヒド樹脂及びエポキシ樹脂を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の消火剤。
【請求項4】
樹脂が、樹脂の全体重量の20〜30%で、エポキシ樹脂を含むことを特徴とする、請求項3に記載の消火剤。
【請求項5】
KNO及びジシアンジアミドが、10〜30μmの粒径を有し、KClOが、80〜120μmの粒径を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の消火剤。
【請求項6】
エアゾール消火器用消火剤を製造する方法において、
溶剤内の前記消火剤の成分を混和する段階と、
前記混和物の均一度を高めるように、前記混和物を異速圧延ロールを通過させる段階と、
前記溶剤を前記混和物から除去する段階と、
溶剤が除去され、乾燥した前記混和物を250μm以下に粉砕する段階と、
前記粉砕された混和物を圧着成形する段階と、を含む、消火剤の製造方法。
【請求項7】
粉砕された混和物を60〜90℃の温度に加温する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の消火剤の製造方法。
【請求項8】
圧着成形段階が、60〜90℃の温度に維持される金型で行われることを特徴とする、請求項6または7に記載の消火剤の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項にに記載の消火剤を含むエアゾール消火器であって、前記消火器は、それぞれ1つ以上の噴射口を有する2つ以上のノズルで構成された噴射ノズルを備え、前記ノズルは、各ノズルの前記噴射口の一部または全部が、消火成分の噴射方向に沿って、互いにずれて配列されるように配置される、エアゾール消火器。
【請求項10】
ノズル間の間隔が、5〜10mmであることを特徴とする、請求項9に記載のエアゾール消火器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−72594(P2009−72594A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240764(P2008−240764)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(508284090)ハンファ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】