説明

エアゾール缶の缶本体を製造する装置及び方法

【課題】円筒壁と径のより小さいネック部とを備えた缶本体を1つの加工方向での1回の加工ストロークで製造することができる装置及び方法を提供する。
【解決手段】装置(10)は、加工ストロークの第1の段階における丸い円盤状又は板状素材(32)からのカップ部の深絞りのため使用される駆動可能な絞りリング(27)を有している。この第1の段階の終了後、カップ部は、しごき加工マンドレル(59)を用いてしごき加工チャネル(38)の中へ絞り込まれ、そして、しごき加工されたワークピースに形成される。最終的に、ストレッチフォーミング加工マンドレル(58)は、しごき加工マンドレル(59)のガイド凹部(60)から外に出され、加工ストロークのストレッチ絞り段階において、ドーマー(45)のフォーミング加工窪み部(48)と連動して、ネック部の少なくとも一部分を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、エアゾール缶を製造するため使用される缶本体を製造する装置及び方法に関する。製造されるべき缶本体は、円筒壁部より小さい径をもつネック部が隣接している円筒壁部を有し、ネック部は、好ましくは、円筒端部を有している。この缶本体は、その後、エアゾール缶の製造のための半完成部品として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
エアゾール缶の製造は相反する目的の制約を受けている。異なる製造業者からのエアゾール缶はそれぞれ他のエアゾール缶より卓越しているべきであるとする一方で、材料及びコストの費用増加を招く可能性があり、他方で、低材料消費及び軽量がコスト面の理由及び、特に環境面の理由とのために要求される。飲料用缶と比べて、エアゾール缶の必要量は、かなり少ないので、飲料用缶と同じ規模の経済性は、達成することができない。飲料用缶の製造のため能力を発揮していた複雑かつ高価な製造装置は、したがって、エアゾール缶の製造用の装置に簡単に置き換えることができない。
【0003】
特許文献1は、底及び隣接する円筒壁をもつワークピースが予め形成されたカップ部からしごき加工によって作られ、例えば、缶本体を製造するため使用される、いわゆる「本体製造装置」について説明している。狭小部はこの装置を用いては実現できない。
【0004】
缶の制御されたスピン・フロー・フォーミング加工の機械及び方法は、特許文献2から知られている。本文献は、予め形成されたカップ部がしごき加工によって成形され、カップ部の底が縮小し、円筒壁の長さが増大する従来型の方法から進む。その後、壁は、ネック部及びフランジを備えた別個の装置の中に設けることが可能である。例えば、ダイ・フォーミング、ローラー・スピニング、又は、プレッシャー・フォーミングが外周に沿って回転し、缶本体の内部に設けられた内側部材と相互に作用するスピニング・ローラーを使用するネック成形のため提案される。
【0005】
特許文献2は、金属破損を最小限に抑えるためにフォーミング加工中に金属フローを制御するスピン・フロー・フォーミング加工方法を提案する。
【0006】
缶本体を製造する方法は、カップ部が最初に深絞り加工によって板状の素材から作られる特許文献3から知られている。その後、カップ部は、しごき加工によってしごき加工されたワークピースに成形され、次に、しごき加工されたワークピースの周囲が数回の個別のステップで較正され、このため、数個の金型セットが使用される。各金型セットは、金型及び反転金型を有している。このしごき加工されたワークピースの周面の較正の間、円筒壁の過剰な厚さは保たれる。最終的に、成形された領域が、いわゆるハイドロフォーミング加工又は圧力パッドによって壁に作られ、狭小部として内向きに、又は、外向きのいずれかに突起することができる。この製造方法の場合も同様に、様々な装置が異なるプロセスステップのため必要であり、製造を非常に高価にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5357779号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許公報第3783509 T2号
【特許文献3】ドイツ国特許公報第69711587 T2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この周知の従来技術から発して、簡単なツールで間に合い、したがって、少ない量に対しても経済的に使用することができる、特に、エアゾール缶用の缶本体を製造する装置及び方法を提供することは、本発明の課題であるとみなすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の特徴を備えた装置と、請求項12の特徴を備えた方法とによって解決される。
【0010】
発明の核心は、缶、特に、エアゾール缶の製造のため使用される缶本体が、一般に、数個のマンドレルを用いる単一の、かつ、好ましくは、垂直加工ストロークで半完成部品として製造されることである。最初に、カップ部は、絞りリングを用いて深絞り加工(deep -drawing)によって、板状の、かつ、好ましくは、円形素材から製造される。カップ部の深絞り加工後、絞りリングは、好ましくは、絞りリングと同軸上に配置されたしごき加工(ironing)マンドレルのための留め具としての役目を果たし、この加工マンドレルは、加工ストロークの方向に移動され、カップ部と組み合わされ、しごき加工チャネルではあるがカップ部を絞り込む。この加工ストロークの段階中に、底と、底に隣接する円筒壁とを含むしごき加工されたワークピースがカップ部から製造される。しごき加工中に、壁の軸方向長さは、増加するが、壁の厚さは、減少する。このしごき加工は、いくつかの個別のステップにおいてしごき加工チャネルの内部のしごき加工リングによって実行することができる。
【0011】
最後に、加工ストロークの最後の段階中に、かつ、しごき加工されたワークピースの底又は中央底部のストレッチフォーミング加工の結果として、ワークピースの軸方向長さは、さらに増大され、ネック部は、円筒壁の径より小さい径を用いて形成される。そうするために、加工ストロークの最後の段階中にしごき加工マンドレルと相対的に移動し、しごき加工されたワークピースの底からネック部を形成するストレッチフォーミング加工マンドレルが設けられる。ストレッチフォーミング加工マンドレルは、ここで、好ましくは、しごき加工チャネルへの拡張部にフォーミング加工窪み部を有しているドーマーと一緒に動作する。そのようにする間に、ストレッチフォーミング加工マンドレルは、しごき加工されたワークピースの底部をドーマーのフォーミング加工窪み部に圧入する。しごき加工マンドレルは、ここで、好ましくは、留め具として使用され、ドーマー上の接触面と相互作用する。
【0012】
円筒壁と、より小さい径をもつ隣接するネック部とを備えた缶本体は、このようにして、好ましくは、垂直方向に、かつ、単一の加工ストロークにおける絞りリングと、しごき加工マンドレルと、ストレッチフォーミング加工マンドレルとの1回の移動によって製造することができる。缶本体は、単一のセットアップで製造される。ワークピースは、フォーミング加工段階の合間に異なる機械加工装置の間で移動されない。板状素材の缶本体へのフォーミング加工は、装置の縦軸、好ましくは、垂直方向に沿った1つの加工方向における1回の加工ストロークによって実現される。このようにするため必要な装置は、非常に単純な設計であり、したがって、安価に製造できる。装置は、その結果、少量でも経済的に使用することができる。狭小又は絞り込まれたネック部を製造するための複雑なツールは、不要である。缶本体から完成した缶、特に、エアゾール缶へのさらなる処理は、その後、簡単かつ経済的に設計することが可能であり、例えば、ネック部の閉じたままの端は、レーザ切断又は別の切断プロセスによって開くことが可能であり、開いている反対端は、円形底を挿入することによって閉じられる。このタイプの円形底は、簡単かつ安価に製造し、缶本体の円筒壁に接続することが可能である。
【0013】
装置の有利な実施形態では、しごき加工マンドレルは、中空円筒設計を有し、ストレッチフォーミング加工マンドレルを同軸状に取り囲む。しごき加工マンドレルは、ストレッチフォーミング加工マンドレルと相対移動可能に搭載することが可能であり、ストレッチフォーミング加工マンドレルの外面と接触可能である。ストレッチフォーミング加工マンドレルは、しごき加工されたワークピースを製造するためにしごき加工中に、中空円筒しごき加工マンドレルの中央凹部の内側に位置している。ストレッチフォーミング加工マンドレルは、好ましくは、ネック部がストレッチフォーミング加工によってしごき加工されたワークピースの底から成形されるまで、しごき加工マンドレルの中央凹部から外に出されない。
【0014】
絞りリングは、移動モード中に、絞りリングの位置又は移動を制御又は調節することができる絞りリング駆動ユニットによって移動される。絞りリング駆動ユニットは、力モード中に、絞りリングによってカップ部に加えられる力を制御又は調節する。このようにして、絞りリングは、カップの深絞り加工のためにも、しごき加工中の留め具としても使用することができる。
【0015】
好ましい実施形態では、ストレッチフォーミング加工マンドレルとしごき加工マンドレルとを収容するパンチ装置に阻止装置が設けられる。阻止装置は、阻止位置において、加工ストローク中にストレッチフォーミング加工マンドレルとしごき加工マンドレルとの間の相対移動を阻止する。特に、阻止装置は、カップ部からしごき加工されたワークピースを製造するためにしごき加工中に阻止位置にある。このことは、しごき加工マンドレルがこのしごき加工マンドレルの領域でカップ部/ワークピースの底と接触することと、ワークピースの望ましくない変形が生じないことを確実にする。
【0016】
阻止装置は、好ましくは、ネック部の製造のためのストレッチフォーミング加工動作が完了するまで、解除位置に切り替えられない。しごき加工マンドレルは、ここで、好ましくは、しごき加工チャネルの端で接触面と接触し、留め具の機能を実行することができる。加工方向におけるパンチ装置の継続的な移動のため、ストレッチフォーミング加工マンドレルは、しごき加工マンドレルの中央凹部から外へ出され、しごき加工されたワークピースの底部/底を形成する。ここで、しごき加工マンドレルは、好ましくは、底部をドーマーのフォーミング加工窪み部に圧入する。ストレッチフォーミング加工マンドレルによるストレッチフォーミング加工動作の最後に、加工方向における加工ストロークが終わる。パンチ装置駆動ユニットは、しごき加工マンドレルと共にパンチ装置を移動させ、ストレッチフォーミング加工マンドレルを加工方向と反対に移動させる。この戻りストローク移動中に、缶本体は、しごき加工マンドレルから取り出すことができる。
【0017】
本発明の有利な実施形態は、独立請求項と詳細な説明とに記載される。詳細な説明は、添付図面に基づいて発明による装置及び発明による方法の設計例を説明する。詳細な説明は、ここでは、発明の実質的な特徴に制限する。図面は、さらに参照されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】缶本体を製造する装置の設計例を示す加工ストローク開始時の縦断面概略図である。
【図2】板状素材からのカップ部の深絞り加工後の図1による装置を示す図である。
【図3】しごき加工チャネルを通るしごき加工終了後の図1及び2による装置を示す図である。
【図4】加工ストローク終了時のしごき加工されたワークピースの底部のストレッチフォーミング加工中の図1から3による装置を示す図である。
【図5】完全に製造された缶本体の縦断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から4は、缶本体11を製造する装置10の好ましい設計例を示す。缶本体11は、図4に縦断面概略図で示され、缶本体11の一端でネック部13に続く円筒状壁12を有している。ネック部13の領域では、缶本体11の径は、円筒壁12の領域における径より小さい。円筒壁12から始めて、缶本体11は、第1の領域13aにおいて先細になるので、缶本体11の外面は、第1の領域13aにおいて湾曲している。第1の領域13aと隣接して、ネック部13は、円形壁領域16によって缶本体11の閉鎖自由端15で封止された円筒フランジ14を備えた第2の領域13bを有している。閉鎖自由端15の反対側では、缶本体11は、開口が円筒壁12の円形リム18によって限定されている開放端17を形成する。この缶本体11は、エアゾール缶を製造するための半完成部品として使用される。そうするために、缶本体11は、円形底によって開放端17で封止され、フランジ14の領域で切開されることができる。
【0020】
装置10を、ブロック図の方法で非常に概略的な形として図1から4に示す。ガイドウェイ、フレーム、ベアリングなどは、図示されない。設計例における装置10は、絞りリング駆動ユニット25によって加工方向Aに駆動可能である絞りリング26を有している。絞りリング26は、装置10の縦軸Lと同軸上に配置されている。加工方向Aは、縦軸Lと平行に位置合わせされる。
【0021】
絞りリング26と同軸状に、本実施例では環状である留め具27が留め具駆動ユニット28によって加工方向Aに移動可能に搭載されている。縦軸Lと同軸上に配置され、留め具27によって囲まれた貫通孔29により、絞りリング26は、加工方向Aに絞りリング駆動ユニット25によって移動させることが可能である。
【0022】
留め具27は、フレームに固定式に配置されたテーブル33上の支持面34への板状素材32のクランプのため使用される。支持面34は、縦軸Lと実質的に直角に位置合わせされ、設計例では、水平平面内に広がる。縦軸L及び加工方向Aは、好ましくは、垂直方向に延びる。
【0023】
支持面34は、リングを形成し、縦軸Lと同軸上に配置されたテーブル33において円筒深絞り加工チャネル37の開口を囲む。支持面34とは反対側の端において、深絞り加工チャネル37は、円筒しごき加工チャネル38へと続き、しごき加工チャネル38の径は、深絞り加工チャネル37の径より小さい。その結果、リング形状保持止め面40をもつ段差39が深絞り加工チャネル37としごき加工チャネル38との間の移行点に形成される。保持止め面40は、支持面34と平行な平面内に、かつ、本実施例によれば、実質的に水平に広がる。
【0024】
しごき加工チャネル38は、段差39とは反対側の端でドーマー45によって閉じられる。ドーマー45は、例えば、ばね列によって形成することができる弾性プリテンション手段46によってテーブル33に対抗してプリテンションが加えられる。ドーマー45は、このように、プリテンション手段46の力に抗して移動可能に設けられる。しごき加工チャネル38の拡張部で、ドーマー45は、しごき加工チャネル38と関連付けられた加工側47にフォーミング加工窪み部48を有している。フォーミング加工窪み部48は、加工側47への移行点に、しごき加工チャネル38と同じ径を有し、フォーミング加工窪み部48の径が連続的に減少する第1の窪み部領域49を有している。第1の窪み部領域49の中でフォーミング加工窪み部48を制限する壁は、本実施例によれば凹形である。第1の窪み部領域49と隣接して円筒空洞を提供し、底75で終わる第2の窪み部領域50が縦軸Lと同軸上に設けられている。
【0025】
深絞り加工チャネル37と、しごき加工チャネル38と、フォーミング加工窪み部48とは、共通の縦軸Lに沿って配置されている。
【0026】
装置10は、パンチ装置駆動ユニット55によって加工方向Aに移動可能であるパンチ装置56をさらに有している。パンチ装置56は、円筒ストレッチフォーミング加工マンドレル58が縦軸Lに沿って配置されているキャリア部品57を収容している。しごき加工マンドレル59は、ストレッチフォーミング加工マンドレル58と同軸上に配置されている。しごき加工マンドレル59は、中空円筒形状を有し、好ましくは、しごき加工マンドレルの円筒ガイド凹部60の領域において、ストレッチフォーミング加工マンドレル58の外面に接触する。しごき加工マンドレル59の端領域59aの形状は、フォーミング加工窪み部48の第1の窪み部領域49の形状と一致し、実施例によれば、リムなしで、特に、凸形に設計される。しごき加工マンドレル59は、ストレッチフォーミング加工マンドレル58に沿って、したがって、ストレッチフォーミング加工マンドレル58と相対的に縦軸Lに沿って移動可能に設けられている。それは、パンチ装置56のキャリア部品57上の力設定手段61により支えられている。1個以上の螺旋ばねを備えたばね列62は、設計例では、力設定手段61として使用される。キャリア部品57は、パンチ装置56の加工ストローク中に加工方向Aとは逆のしごき加工マンドレル59のどんな移動も阻止するために使用される阻止装置63をさらに有している。
【0027】
好ましい設計実施例では、阻止装置63は、この目的のため、キャリア部品57としごき加工マンドレル59との間でばね列62のばねにオフセットして移動させることができるか、又は、この中間スペースから外へ出ることができる少なくとも1個、そして、好ましくは、より多くの摺動部64を有している。摺動部64は、この目的のため、図1に矢印Pによって概略的に示されるように、キャリア部品57上で縦軸Lと相対的に半径方向に移動可能に配置されている。摺動部64がキャリア部品57としごき加工マンドレル59との間の中間スペースにある場合、しごき加工マンドレル59は、加工方向Aとは逆に、かつ、ばね列62のばね力に抗して移動不可能であり、ばね列62を圧縮できない。阻止装置63は、その結果、図1に示された阻止装置の阻止位置にある。摺動部64が、しごき加工マンドレル59とキャリア部品57との間のこの中間スペースから外に出されると、しごき加工マンドレル59は、ストレッチフォーミング加工マンドレル58に対してばね列62のばね力に抗して、かつ、加工方向Aと逆に移動可能である。阻止装置63は、その後、解除位置にある。摺動部は、直線運動又は旋回運動で移動させることができる。
【0028】
代替的な設計では、阻止装置63は、可動摺動部64の代わりに、縦軸Lの周りに旋回可能であり、縦軸Lの周りに所定の旋回角度で阻止位置と解除位置との間で旋回させられる阻止部品を有することが可能である。阻止位置では、阻止部品は、しごき加工マンドレル59の関連付けられた端面に接触し、加工方向Aとは逆の、かつ、ばね列62のばね力に抗するしごき加工マンドレル59の移動を阻止する。解除位置では、凹部は、阻止部品の拡張部においてしごき加工マンドレル59に設けられ、この凹部では、阻止部品は、加工方向Aとは逆のしごき加工マンドレル59の移動が可能であるように係合する。例えば、棒状の摺動部64と一致する阻止部品を設計することができる。
【0029】
より良い概観のため、図2から4において駆動ユニット25、28、55は、図示されない。好ましい設計例では、各駆動ユニット25、28、55は、電動機、好ましくは、サーボモータで構成されている。これらのサーボモータは、個々に、2つの回転設定の間で交番する交互モードで作動し、クラッチ又はブレーキのような機械的な運動伝達要素なしで管理することが可能である。図5に概略的に示された缶本体11を製造する方法は、今度は、図1から4に基づいて説明される。
【0030】
図1では、素材32は、支持面34に置かれる。素材32は、実質的に一定の厚さをもつ円盤状又は板状の形状を有し、かつ、好ましくは、円形の形状を有している。留め具駆動ユニット28は、加工方向Aに留め具27を移動させ、留め具27と支持面34との間で素材32をクランプする。素材32のクランプ力は、好ましくは、留め具駆動ユニット28によって制御又は調節される。この状態では、加工方向Aにおける加工ストロークは、板状素材32を缶本体11に形成し始める。そうするために、共に加工方向Aに、パンチ装置56がパンチ装置駆動ユニット55によって移動され、絞りリング26が絞りリング駆動ユニット25によって移動される。絞りリング駆動ユニット25は、ここで、移動モードにあり、この移動モードで、絞りリング駆動ユニット25は、加工方向Aにおける絞りリングの移動中に絞りリング26の位置及び/又は加速度及び/又は速度を制御又は調節する。
【0031】
絞りリング26が素材32と接触すると直ちに、素材を深絞り加工チャネル37の中に絞り込み始める。留め具駆動ユニット28は、ここで、留め具27のクランプ力又は留め具力を調節し、その結果、素材は、留め具27と支持面34との間から絞り込まれ、その後、図2に示されるように、深絞り加工チャネル37の中へ完全に絞り込まれる。深絞り加工の最後に、絞りリング26は、素材32を底71及び円筒壁部72を含むカップ部70に形成している。深絞り加工の最後に、絞りリング26は、壁部72に隣接する底71の環状領域を段差39の保持止め面40に押し付ける。絞りリング26のこの位置は、保持止め位置又はクランプ位置と呼ぶこともできる。絞りリング26がこのクランプ位置に到達すると直ちに、絞りリング駆動ユニット25は、移動モードから力モードに切り替わる。この力モードでは、絞りリング駆動ユニット25は、絞りリング26がカップ部70の底71を保持止め面40に押し付ける力を制御又は調節する。絞りリング26は、このように、パンチ装置56の留め具として実際に動作する。
【0032】
深絞り加工に続いて、加工ストロークのさらなる段階は、加工方向Aで始まる。パンチ装置56は、パンチ装置駆動ユニット55によって加工方向Aにさらに移動される。阻止装置63は、阻止位置にあり、ストレッチフォーミング加工マンドレル58に相対的なしごき加工マンドレル59のあらゆる移動を阻止する。加工方向Aでの2個のマンドレル58、59の継続的な移動のため、しごき加工マンドレル59は、底71と接触し、カップ部70をしごき加工チャネル38の中へ絞り込む。
【0033】
カップ部70は、しごき加工チャネル38を通るしごき加工マンドレル59とストレッチフォーミング加工マンドレル58との同時移動中に、底71の表面積が減少すると共に、壁部が缶本体11の壁12の所要寸法に最終的に一致するまで、壁部72の軸方向長さが増加し、壁部の壁厚が減少して形成される。しごき加工の最後に、カップ部70は、図3に示されるように、しごき加工されたワークピース73に仕上げられる。
【0034】
カップ部70のしごき加工されたワークピース73へのフォーミング加工の後に、加工方向Aにおける加工ストロークの最終段階が続けられる。最初に、パンチ装置56は、このパンチ装置の2個のマンドレル58、59と共に、しごき加工されたワークピース73がフォーミング加工窪み部48の第1の領域49の壁と接触するまで、加工方向Aに移動される。この位置では、阻止装置63は、この阻止装置の解除位置に切り替えられる。解除位置への阻止装置63の切り替えは、しごき加工マンドレル59が加工方向Aと逆に、ストレッチフォーミング加工マンドレル58に対し移動されることを可能にする。パンチ装置駆動ユニット55は、加工方向Aにパンチ装置56をさらに移動させる。ドーマー45がプリテンション手段46によってしごき加工マンドレル59に押し付けられるので、加工マンドレル59は、ばね列62のばね力に抗して、かつ、ストレッチフォーミング加工マンドレル58に対し移動される。ばね列62によって形成された力設定手段61は、ここで、しごき加工マンドレル59がしごき加工されたワークピース73をドーマー45のフォーミング加工窪み部48の第1の窪み部領域49の壁に対して押圧するクランプ力又は保持力を決定する。同時に、ストレッチフォーミング加工マンドレル58は、しごき加工されたワークピース73の中央底部74をフォーミング加工窪み部48の第2の窪み部領域50へと押圧する。しごき加工されたワークピース73の軸方向長さは、ここで増大する。加工方向Aにおけるこの加工ストロークの最後の段階中に、ストレッチフォーミング加工マンドレル58及びドーマー45が相互作用して、しごき加工されたワークピース73のストレッチフォーミング加工が行われる。
【0035】
図4は、ストレッチフォーミング加工マンドレル58が中央底部74をフォーミング加工窪み部48の第2の領域50の底75に押し付ける加工方向Aにおける加工ストロークの最終位置を示す。素材32の缶本体11へのフォーミング加工が完了し、パンチ装置駆動ユニット55は、加工方向Aと逆に初期位置へパンチ装置56を移動させることができる。この戻りストローク中に、缶本体11は、パンチ装置56、又は、しごき加工マンドレル59から取り出すことができる。この目的のため、詳細には図示されない取り出し手段は、しごき加工マンドレル59の外面と接触させることが可能であり、戻りストロークが継続しているときに缶本体11が取り外されるように、缶本体11のリム18と係合することができる。
【0036】
3つのフォーミング加工マンドレル26、58及び59と留め具27との戻りストロークの後、次の丸い円盤状又は板状素材32を挿入し、次の加工ストロークにおいて前述されるように形成することが可能である。
【0037】
本発明は、このように、円筒壁12とより小さい径をもつネック部13とを含む缶本体11が1回の加工ストロークにおいて、かつ、1つの加工方向Aで製造できる装置及び方法に関する。装置10は、加工ストロークの第1の段階において板状素材32からカップ部70を深絞り加工するため使用される駆動可能な絞りリング27を有している。この第1の段階の完了後、カップ部70は、しごき加工マンドレル59を用いてしごき加工チャネル38の中に絞り込まれ、しごき加工されたワークピース73に形成される。最後に、ストレッチフォーミング加工マンドレル58は、しごき加工マンドレル59のガイド凹部60から外に出され、加工ストロークのストレッチ絞り加工段階において、ドーマー45のフォーミング加工窪み部48と連動して、ネック部13又は少なくともネック部の一部分を形成する。ストレッチ絞り加工段階の結果、加工ストロークが完了する。
【符号の説明】
【0038】
10 装置
11 缶本体
12 壁
13 ネック部
13a ネック部の第1の領域
13b ネック部の第2の領域
14 フランジ
15 閉鎖自由端
16 壁領域
17 開放端
18 リム
25 絞りリング駆動ユニット
26 絞りリング
27 留め具
28 留め具駆動ユニット
29 貫通孔
32 素材
33 テーブル
34 支持面
37 深絞り加工チャネル
38 しごき加工チャネル
39 段差
40 保持止め面
45 ドーマー
46 プリテンション手段
47 加工側
48 フォーミング加工窪み部
49 第1の窪み部領域
50 第2の窪み部領域
55 パンチ装置駆動ユニット
56 パンチ装置
57 キャリア部品
58 ストレッチフォーミング加工マンドレル
59 しごき加工マンドレル
59a しごき加工マンドレルの端領域
60 ガイド凹部
61 力設定手段
62 ばね列
63 阻止装置
64 摺動部
70 カップ部
71 底
72 壁部
73 しごき加工されたワークピース
74 中央底部
75 底
A 加工方向
L 縦軸
P 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1回の加工ストロークにおいてネック部(13)を含む缶本体(11)を製造する装置であって、
板状又は円盤状素材(32)からのカップ部(70)の深絞り加工のため絞りリング駆動ユニット(25)により駆動可能な絞りリング(26)と、
パンチ駆動ユニット(55)によって駆動可能であり、しごき加工チャネル(38)の中でしごき加工することにより前記カップ部を底及び円筒壁を備えたしごき加工されたワークピース(73)に形成するためのしごき加工マンドレル(59)を有し、前記しごき加工されたワークピース(73)の底部(74)のストレッチフォーミング加工のための前記しごき加工マンドレル(59)と相対的に移動可能であるストレッチフォーミング加工マンドレル(58)を有しているパンチ装置(56)と、
を備える装置。
【請求項2】
前記絞りリング(26)は、前記ストレッチフォーミング加工マンドレル(58)及び前記しごき加工マンドレル(59)と同軸上に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記しごき加工マンドレル(59)は、中空円筒形状を有し、前記ストレッチフォーミング加工マンドレル(58)を同軸状に囲む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記しごき加工マンドレル(59)は、前記ストレッチフォーミング加工マンドレル(58)と相対的に移動可能に設けられ、前記ストレッチフォーミング加工マンドレル(58)の外面に接触する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記絞りリング駆動ユニット(25)は、移動モードにおいて前記絞りリング(26)の位置又は移動の制御又は調節のため、そして、力モードにおいて前記絞りリング(26)によって加えられる力の制御又は調節のため動作されるために構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記パンチ装置(56)の前記加工ストローク中に、阻止位置において、前記ストレッチフォーミング加工マンドレル(58)と相対的な前記しごき加工マンドレル(59)のあらゆる移動を阻止する阻止装置(63)が設けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記阻止装置(63)は、解除位置において、前記パンチ装置(56)の前記加工ストローク中に前記ストレッチフォーミング加工マンドレル(58)と相対的な前記しごき加工マンドレル(59)のあらゆる移動を可能にする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ストレッチフォーミング加工マンドレル(58)及び/又は前記しごき加工マンドレル(59)と相互作用するフォーミング加工窪み部(48)を備えたドーマー(45)が設けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記パンチ装置駆動ユニット(55)は、前記阻止装置(63)がこの阻止装置の解除位置にあるとき、前記しごき加工されたワークピース(73)の前記底部(74)のストレッチフォーミング加工のため前記ストレッチフォーミング加工マンドレル(58)を前記フォーミング加工窪み部(48)に移動させるために構成されている、請求項7及び8に記載の装置。
【請求項10】
前記しごき加工マンドレル(59)は、前記ストレッチフォーミング加工マンドレル(59)による前記しごき加工されたワークピース(73)の前記底部(74)のストレッチフォーミング加工中に、留め具としての役目を果たす、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記しごき加工マンドレル(59)は、前記パンチ装置(56)のキャリア部品(57)上の力設定手段(61)によって支えられる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
1回の加工ストロークにおいてネック部(13)を備えた缶本体(11)を製造する方法であって、
絞りリング(26)を用いて板状素材(32)からカップ部(70)を深絞り加工するステップと、
しごき加工マンドレル(59)を用いてしごき加工チャネル(38)の中にしごき加工することにより、前記カップ部(70)を底及び円筒壁を備えたしごき加工されたワークピース(73)にフォーミング加工するステップと、
前記しごき加工マンドレル(59)と相対的に移動可能であるストレッチフォーミング加工マンドレル(58)を用いて、前記しごき加工されたワークピース(73)の底部(74)をストレッチフォーミング加工するステップと、
を備える方法。
【請求項13】
前記カップ部(70)の前記しごき加工されたワークピース(73)へのフォーミング加工中に、前記ストレッチフォーミング加工マンドレル(58)と相対的な前記しごき加工マンドレル(59)の移動が阻止される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記しごき加工マンドレル(59)は、前記しごき加工されたワークピース(73)の前記底部(74)のストレッチフォーミング加工中に、前記しごき加工されたワークピース(73)をドーマー(45)の接触面に押し付ける、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ストレッチフォーミング加工マンドレル(58)は、ストレッチフォーミング加工中に、前記しごき加工されたワークピース(73)の前記底部(74)を前記ドーマー(45)のフォーミング加工窪み部(48)に押圧する、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−223820(P2012−223820A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−91941(P2012−91941)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【出願人】(511240092)シューラー プレッセン ゲーエムベーハー (4)