説明

エアダムの破損防止構造

【課題】 障害物に干渉した場合であっても、破損を防止することができるエアダムの破損防止構造を提供する。
【解決手段】 フロントバンパ2に設けられたエアダム1を、下縁フランジ13に固定される固定面21と固定面21の前縁より下方へ延出するダム壁22とで構成する。ダム壁22を湾曲形状に形成し、車両前方Fへ向けた張り出し力を全長に渡って生じさせる。ダム壁22に薄肉部41を長さ方向全域に渡って形成し、薄肉部41より上方側の固定部43と下方側の可倒部44とに区画して、薄肉部41を中心とした可倒部44の傾倒方向への弾性変形を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントバンパの下部に設けられたエアダムの破損防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前部には、図7に示すように、フロントバンパ101が設けられており、該フロントバンパ101の下部には、下方へ延出するエアダム102が設けられている。
【0003】
該エアダム102は、前記フロントバンパ101より下方へ延出する板状のダム壁111を備えており、該ダム壁111によって走行時に発生する走行風を受けて側方へ流すように構成されている。これにより、走行安定性や空力特性の向上が図れるように構成されている。
【0004】
このエアダム102としては、フロントバンパ101に一体形成された図7の(a)に示したエアダム102の他に、図7の(b)に示すように、フロントバンパ101の下縁フランジ121にボルト122で固定される断面L字状のエアダム123が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなエアダム102,123にあっては、ダム壁111がフロントバンパ101より下方へ延出しているため、縁石などに干渉し易く、干渉時には破損してしまう。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、障害物に干渉した場合であっても、破損を防止することができるエアダムの破損防止構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明の請求項1のエアダムの破損防止構造にあっては、フロントバンパの下部に設けられ、該フロントバンパより下方へ延出する板状のダム壁を備えたエアダムにおいて、前記ダム壁の上縁部に薄肉の薄肉部を当該ダム壁の長さ方向に延設し、当該薄肉部より上方側の固定部と前記薄肉部より下方側の可倒部とに区画するとともに、前記薄肉部を中心とした前記可倒部の傾倒方向への弾性変形を許容する一方、当該ダム壁を、車幅方向中央部が車両前方へ向けて突出した湾曲形状に形成した。
【0008】
すなわち、フロントバンパより下方へ延出するダム壁には、薄肉の薄肉部が長さ方向に延設されており、該薄肉部によって上方側の固定部と下方の可倒部とに区画されるとともに、前記薄肉部を中心とした前記可倒部の傾倒方向への弾性変形が許容されている。
【0009】
このため、このダム壁が縁石などの障害物に接触した干渉時には、下方側の前記可倒部が前記薄肉部を中心に傾倒することによって当該ダム壁の破損が防止される。そして、前記障害物を通過した際には、前記薄肉部を中心に傾倒した前記可倒部が、その復元力によって元の形状に復帰する。
【0010】
一方、走行時において、前記ダム壁は、車両前方からの走行風を受けることとなるが、当該ダム壁は、車幅方向中央部が車両前方へ向けて突出した湾曲形状に形成されている。このため、このダム壁には、全体として車両前方へ張り出す張力が生じており、走行風による前記可倒部の変形は防止される。
【0011】
また、請求項2のエアダムの破損防止構造においては、前記ダム壁の車両後方側の後面に、長さ方向に延在する溝状の切欠部を設けて前記薄肉部を形成した。
【0012】
これにより、ダム壁の前面に溝状の切欠部を設けること無く、前記薄肉部が構成される。
【0013】
また、ダム壁裏面に設けられた切欠部によって薄肉部が形成されているため、前記可倒部が車両後方へ傾倒した際の可倒部基端の逃げ代が前記切欠部によって確保される。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明の請求項1のエアダムの破損防止構造にあっては、縁石などの障害物に接触した干渉時には、ダム壁を弾性変形させることによって、破損を防止することができる。また、走行時には、車両前方からの走行風による不用意な変形を防止することができる。
【0015】
したがって、走行時でのエアダムとしての機能を維持しつつ、障害物干渉時での破損防止効果を得ることができる。
【0016】
また、請求項2のエアダムの破損防止構造においては、ダム壁前面に切欠部を設けること無く、前記薄肉部を構成することができる。これにより、前記ダム壁前面に溝状の切欠部を設けた場合と比較して、車両前方からの見栄えを向上することができる。
【0017】
そして、ダム壁裏面に設けられた切欠部によって薄肉部が形成されているため、前記可倒部が車両後方へ傾倒した際の可倒部基端の逃げ代を、前記切欠部によって確保することができる。これにより、前記可倒部の車両後方への傾倒容易性を高めることができるとともに、傾倒時に薄肉部に生じる応力を抑えることができ、耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1から図3は、本実施の形態にかかる破損防止構造を備えたエアダム1を示す図であり、該エアダム1がフロントバンパ2に取り付けられた状態が示されている。
【0019】
すなわち、車両前部には、衝撃緩衝用のフロントバンパ2が車幅方向に延設されている。該フロントバンパ2は、図1及び図2に示したように、車両前部を構成する前面部11と、該前面部11の両端部より車両後方Rへ向けて延出して車両側部に回り込んだ後方延出部12,12とによって一体形成されており、前記前面部11は、車幅方向中央部に設定されて車両中心線0X上の中央部が車両前方Fへ向けて突出した湾曲形状に形成されている。このフロントバンパ2の下縁には、図4にも示すように、内側へ向けて延出した下縁フランジ13が形成されており、該下縁フランジ13には、前記エアダム1が取り付けられている。
【0020】
このエアダム1は、合成樹脂によって断面L字状に形成されており、前記下縁フランジ13に面接した状態で固定される固定面21と、該固定面21の前縁より屈曲して下方へ延出するダム壁22とによって構成されている。前記固定面21の後端部には、ボルト穴23が開設されており、該ボルト穴23に挿通されたボルト24が前記下縁フランジ13の取付穴25に挿入された状態でナット26が螺合されることによって、当該エアダム1が前記フロントバンパ2下部に固定されている。
【0021】
これにより、前記フロントバンパ2の下部からは、板状に形成された前記ダム壁22が下方へ向けて延出するように構成されており、このダム壁22によって走行時に発生する走行風27を受けて側方へ流し、走行安定性や空力特性の向上を図れるように構成されている。
【0022】
前記固定面21は、図2に示したように、前記フロントバンパ2の前記前面部11に沿った形状に形成されており、前記中心線0X上の中央部が車両前方Fへ向けて突出した湾曲形状に形成されている。また、この固定面21の前記中心線0X上に位置する中央部は、図1に示したように、上方へ湾曲した膨出した上方膨出部31が形成されており、前記下縁フランジ13の中央部に形成された上方後退部32に密着するように構成されている。
【0023】
前記固定面21の前縁に沿って形成された前記ダム壁22も、図2に示したように、前記中心線0X上の中央部が車両前方Fへ向けて突出した湾曲形状に形成されており、車両前方Fへ向けて張り出す張力が全長に渡って生じるように構成されている。前記ダム壁22は、図1に示したように、前記中心線0X上の中央部の高さが、他の一般部より高くなるように設定されており、前記フロントバンパ2の前記上方後退部32に沿って延在しつつ、路面から下縁33までの高さ寸法が全長に渡って一定となるように構成されている。
【0024】
このダム壁22の前記固定面21近接近傍の上縁部には、図4に示したように、薄肉の薄肉部41が当該ダム壁22の長さ方向全域に渡って形成されている。この薄肉部41から前記固定面21までの離間距離は、図1に示したように、一定となるように構成されており、前記フロントバンパ2の前記上方後退部32に沿った中央部では、上方へ湾曲した湾曲部42が設定されている。この薄肉部41によって当該ダム壁22は、図4に示したように、前記薄肉部41より上方側の固定部43と、前記薄肉部41より下方側の可倒部44とに区画されており、前記薄肉部41を中心とした前記可倒部44の傾倒方向への弾性変形が許容されている。
【0025】
この薄肉部41は、前記ダム壁22に形成された長さ方向に延在するV字溝状の切欠部51によって構成されており、該切欠部51は、当該エアダム1を金型成型する際に金型によって前記ダム壁22の車両後方R側の後面52に形成されている。そして、このエアダム1は、前記固定面21が前記ダム壁22より車両後方Rに配置された状態で固定されており、前記可倒部44の車両後方Rへの傾倒に対して応力が働くように構成されている。
【0026】
以上の構成にかかる本実施の形態において、フロントバンパ2より下方へ延出したエアダム1のダム壁22には、薄肉の薄肉部41が長さ方向に延設されており、該薄肉部41によって上方側の固定部43と下方の可倒部44とに区画されるとともに、前記薄肉部41を中心とした前記可倒部44の傾倒方向への弾性変形が許容されている。
【0027】
このため、このダム壁22が、図5の(a)に示すように、縁石などの障害物61に接触した干渉時には、下方側の前記可倒部44が前記薄肉部41を中心に車両後方Rへ傾倒することによって当該ダム壁22の破損が防止される。そして、図5の(b)に示したように、前記障害物61を通過した際には、前記薄肉部41を中心に傾倒した前記可倒部44が、その復元力によって元の形状に復帰する。
【0028】
一方、走行時において、前記ダム壁22は、車両前方Fからの走行風27を受けることとなるが、当該ダム壁22は、車幅方向中央部が車両前方Fへ向けて突出した湾曲形状に形成されている。このため、このダム壁22には、全体として車両前方Fへ張り出す張力が生じており、走行風27による前記可倒部44の不用意な変形は防止される。
【0029】
このように、縁石などの障害物61に接触した干渉時には、前記ダム壁22を弾性変形させることによって、破損を防止することができる。また、走行時には、車両前方Fからの走行風27による不用意な変形を防止することができる。
【0030】
したがって、走行時でのエアダム1としての機能を維持しつつ、障害物61干渉時での破損防止効果を得ることができる。
【0031】
また、前記薄肉部41は、ダム壁22後面22に設けられた切欠部51によって構成されている。このため、前記ダム壁22前面に切欠部51を設けること無く、前記薄肉部41を構成することができる。これにより、前記ダム壁22前面に溝状の切欠部を設けた場合と比較して、車両前方Fからの見栄えを向上することができる。
【0032】
そして、前記ダム壁22後面52に設けられた切欠部51によって前記薄肉部41を形成したため、前記可倒部44が車両後方Rへ傾倒した際の可倒部44基端の逃げ代を、V字状の溝からなる前記切欠部51によって確保することができる。これにより、前記可倒部44の車両後方Rへの傾倒容易性を高めることができるとともに、傾倒時に前記薄肉部41に生じる応力を抑えることができ、耐久性を向上することができる。
【0033】
なお、本実施の形態にあっては、エアダム1がフロントバンパ2と別部材で構成された場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものでは無く、図6に示すように、フロントバンパ2の下縁フランジ13に前述同様のダム壁22を形成して、エアダム1をフロントバンパ2に金型で一体形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態を示す正面図である。
【図2】同実施の形態を示す平面図である。
【図3】同実施の形態を示す側面図である。
【図4】図1のA−A断面図である。
【図5】(a)は同実施の形態を動作を示す説明図であり、(b)は(a)に続く動作を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施の形態を示す要部の断面図である。
【図7】従来例を示す断面図であり、(a)は同従来例の動作を示す説明図であり、(b)は(a)に続く動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 エアダム
2 フロントバンパ
22 ダム壁
41 薄肉部
43 固定部
44 可倒部
51 切欠部
52 後面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントバンパの下部に設けられ、該フロントバンパより下方へ延出する板状のダム壁を備えたエアダムにおいて、
前記ダム壁の上縁部に薄肉の薄肉部を当該ダム壁の長さ方向に延設し、当該薄肉部より上方側の固定部と前記薄肉部より下方側の可倒部とに区画するとともに、前記薄肉部を中心とした前記可倒部の傾倒方向への弾性変形を許容する一方、当該ダム壁を、車幅方向中央部が車両前方へ向けて突出した湾曲形状に形成したことを特徴とするエアダムの破損防止構造。
【請求項2】
前記ダム壁の車両後方側の後面に、長さ方向に延在する溝状の切欠部を設けて前記薄肉部を形成したことを特徴とする請求項1記載のエアダムの破損防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−96111(P2006−96111A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282922(P2004−282922)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000128544)株式会社オーテックジャパン (183)