説明

エアバッグモジュール

【課題】人体が装着したり、手で運搬するような軽量性の求められる物品に対して、使用できる、軽量構造のエアバッグモジュールであり、製造が容易で且つ堅牢なエアバッグモジュールを提供する。
【解決手段】伸縮性があり且つ伸長回復率の高い繊維材料で構成された略扁平に保形され得る繊維通路と、該繊維通路内に配置されると共に伸縮性があり且つ前記繊維通路よりも伸長回復率が低く構成された略扁平に保形され得る合成樹脂性のチューブ通路とで構成され、少なくとも前記チューブ通路へのエア注入時に前記チューブ通路が伸長回復の限界値を越えず且つ前記繊維通路の伸長により保形されつつ膨脹するように、繊維通路の径とチューブ通路の径を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグモジュールに関するものであり、詳細には、主に衣類の下地などに縫製することで、ライダー用の安全胴衣や救命胴衣等を製造したり、臨時に膨脹させて使用するマットレスや、水上に浮かべて使用するフローター等を製造する際に好適なエアバッグモジュールに関するものである。
【従来技術】
【0002】
従来より、車両用の安全装置として各種のエアバッグモジュールが知られているが、多くは、合成樹脂を積層したり、含浸される等の伸縮性や伸長強度を配慮した合成繊維織物質のベントクロスから成り、そして、これらのベントクロスを折り畳んで硬質の容器等に格納する構造が知られている。
【発明の解決しようとする課題】
【0003】
ところが、これらのエアバッグモジュールは衣類等の人体が装着したり、手で運搬するような軽量性の求められる物品に対しては、重量があるために使用できないなどの問題がある。
そこで、本発明は、軽量であると共に製造が容易で且つ堅牢なエアバッグモジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決する手段】
【0004】
本発明は上記の課題に鑑みて、エアバッグモジュールであって、伸縮性があり且つ伸長回復率の高い繊維材料で構成された略扁平に保形され得る繊維通路と、該繊維通路内に配置されると共に伸縮性があり且つ前記繊維通路よりも伸長回復率が低く構成された略扁平に保形され得る合成樹脂性のチューブ通路とで構成され、少なくとも前記チューブ通路へのエア注入時に前記チューブ通路が伸長回復の限界値を越えず且つ前記繊維通路の伸長により保形されつつ膨脹するように、繊維通路の径とチューブ通路の径を設定したことを特徴としている。
【0005】
また、繊維通路の最大膨脹時の内径がチューブ通路の伸長回復性を損なわない程度の外径以下に設定され、繊維通路の内径とチューブ通路の外径が1:0.8〜1:1.5であることを特徴としている。
【0006】
また、伸縮性があり且つ伸長回復率の高い繊維材料で構成された略扁平に保形され得る繊維通路と、該繊維通路内に配置されると共に伸縮性があり且つ前記繊維通路よりも伸長回復率が低く構成された略扁平に保形され得る合成樹脂性のチューブ通路とで構成されたエアバッグモジュールにおいて、前記チューブ通路は、単体では直線状に形成されると共に、繊維通路内に配置される際に、長さ方向の通路形状が繊維通路の形状により制御されることを特徴としている。
【0007】
これらの構造によれば、エアバッグモジュールのエア容量は、チューブ通路の長さと、繊維通路の内径により決定されることになる。
【0008】
また、伸縮性があり且つ伸長回復率の高い繊維材料で構成された略扁平に保形され得る繊維通路と、該繊維通路内に配置されると共に伸縮性があり且つ前記繊維通路よりも伸長回復率が低く構成された略扁平に保形され得る合成樹脂性のチューブ通路とで構成され、少なくとも前記チューブ通路へのエア注入時に前記チューブ通路が伸長回復の限界値を越えず且つ前記繊維通路の伸長により保形されつつ膨脹するように、繊維通路の径とチューブ通路の径を設定したエアバッグモジュールにおいて、前記繊維通路の開放端よりチューブ通路を当該繊維通路の内部に押し込むことで、チューブ通路を若干皺の寄った状態で配置させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明に係わるエアバッグモジュールの一部を破断した説明のための要部正面図であり、図2は、本発明に係わるエアバッグモジュールの一部を破断した説明のための要部概要図であり、図3は、本発明に係わるエアバッグモジュールの扁平時の要部断面図であり、図4は、本発明に係わるエアバッグモジュールの膨張時の要部断面図であり、図5は、本発明に係わるエアバッグモジュールを衣類に使用した際の一部を破断した説明のための概要図であり、図6は、図5の領域Aの構造を示す説明図である。
【0010】
図1は、本発明の要旨を説明するために、ややデフォルメした説明図であるが、図示の如く、本発明のエアバッグモジュールは、伸縮性があり且つ伸長回復率の高い繊維材料で構成された略扁平に保形され得る繊維通路1と、該繊維通路1内に配置されると共に伸縮性があり且つ前記繊維通路1よりも伸長回復率が低く構成された略扁平に保形され得る合成樹脂性のチューブ通路2とで構成したことを主たる特徴としている。
【0011】
繊維通路1は、具体的には、メッシュ構造のやや伸縮性のある繊維材料から形成されたものであり、例えば、2枚のメッシュ生地の両端縁1a.1aを縫製することで拡径時には略円筒となるよう筒体に製造したものを使用している。
【0012】
前記繊維通路1内に配置される合成樹脂性のチューブ通路2は、伸縮性があり且つ前記繊維通路1よりも伸長回復率が低く構成された略扁平に保形され得る合成樹脂性のチューブであり、ポリウレタン系の透明なフラット型チューブで構成されている。また、後述するように、繊維通路1内に挿入するために繊維材料に対して滑り易い素材で形成することが好ましい。
【0013】
本発明は、上記の構成において、図1及び図3に図示の如く、少なくとも前記チューブ通路2へのエア注入時に前記チューブ通路2が伸長回復の限界値を越えず且つ前記繊維通路1の伸長により保形されつつ膨脹するように、繊維通路1の内径Xとチューブ通路2の外径Yを、Y>=Xとなるよう設定されている。
【0014】
そして、同時に、前記繊維通路1の最大膨脹時の内径がチューブ通路2の伸長回復性を損なわない程度の外径以下に設定することで、これにより、チューブ通路2の膨張は、繊維通路1の膨張により制御されることになるので、チューブ通路2に伸長回復力の低い素材を使用することが可能となる。もちろん、チューブ通路2に、例えば、厚手のチューブを使用することで、伸長回復力の高い素材や構造とすることは可能であるが、この場合、コスト高となるだけでなく、厚みにより重量が大きくなり、衣類等の軽量構造を好む物品に対して使用する場合には、不適切となってしまう。
【0015】
ところで、このように設定された繊維通路1に対してチューブ通路2を導入するためには、繊維通路1の開放端部(図示せず)より押し込むようにしてチューブ通路2を挿入することができる。このため、チューブ通路2が導入された繊維通路1の断面は、図3に図示の如く、チューブ通路2がやや皺の寄った状態で存在することになる。
【0016】
しかしながら、一方で、極端にチューブ通路2の外径が繊維通路1の内径に比して、極めて大きい場合には、皺が大きく発生して膨張時に不具合が生じる恐れがあることから、前記繊維通路1の内径とチューブ通路2の外径は、好適には1:0.8〜1:1.5である。また、このようにして製造されたエアモジュールのエア容量は、図4に図示の如くチューブ通路2の長さとチューブ通路2の最大膨脹時の内径ではなく、チューブ通路2の長さと繊維通路1の内径、より詳細には、繊維通路1に伸縮性がある場合には、繊維通路1の最大膨脹時の内径により決定されることになる。
【0017】
本発明は、上記の如く構成することにより、図5に図示の如く、前記チューブ通路2の長さ方向の通路形状が繊維通路1の形状により制御される。図示の例では、繊維通路1は折り返しの設けられた略V字状のコーナー空間部を形成しており、これに対して、前記チューブ通路2は、単体では直線状に形成されると共に、繊維通路1内に配置される際に、長さ方向の通路形状が繊維通路1の形状により、略V字状に制御される。
【0018】
従って、例えば、衣類に対してエアバックモジュールを取り付ける場合には、衣類の形状や最終的に衣類上に形成させたいチューブ通路2の形状を考慮して、先ず、筒状の繊維通路1を適宜な形状で製造し、その中に直線状に形成したチューブ通路2を挿入させることで、極めて簡単にエアバックモジュールを構成することが可能である。
【0019】
尚、チューブ通路2に対してエアを導入した場合、通常の直線的な繊維通路1内では、チューブ通路2の膨脹率は低く、一方、前述のコーナー空間部においては、空間部、即ち容量が大きいために、チューブ通路2は限界まで膨脹し、チューブの部分的な膨脹率が高くなることから、事前に、このような形状にチューブを製造することなく、結果的に意図した繊維通路1の形状に併せたチューブ通路2を形成したことになる。特に長期の使用を繰り替えすとチューブ通路2は、繊維通路1の形状に馴染んだ形になると共にチューブの強度を損ねることがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記の如く構成したことにより、衣類等にエアーバックモジュールを採用する際に、極めて軽量なモジュールを形成することができるので、これを主に衣類の下地などに縫製したり取り付けることで、ライダー用の安全胴衣や救命胴衣等を簡単に製造することが可能である。また、本発明の構造は、インフレータ等を使用したエアバックモジュールに対しても、不必要にチューブ通路を膨脹させないために、堅牢で安定性に優れた構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係わるエアバッグモジュールの一部を破断した説明のための要部正面図である。
【図2】本発明に係わるエアバッグモジュールの一部を破断した説明のための要部概要図である。
【図3】本発明に係わるエアバッグモジュールの扁平時の要部断面図である。
【図4】本発明に係わるエアバッグモジュールの膨張時の要部断面図である。
【図5】本発明に係わるエアバッグモジュールを衣類に使用した際の一部を破断した説明のための概要図である。
【図6】図5の領域Aの構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 繊維通路
1a 端縁
2 チューブ通路
3 衣類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグモジュールであって、伸縮性があり且つ伸長回復率の高い繊維材料で構成された略扁平に保形され得る繊維通路と、該繊維通路内に配置されると共に伸縮性があり且つ前記繊維通路よりも伸長回復率が低く構成された略扁平に保形され得る合成樹脂性のチューブ通路とで構成され、少なくとも前記チューブ通路へのエア注入時に前記チューブ通路が伸長回復の限界値を越えず且つ前記繊維通路の伸長により保形されつつ膨脹するように、繊維通路の径とチューブ通路の径を設定したことを特徴とするエアバッグモジュール。
【請求項2】
前記繊維通路の最大膨脹時の内径がチューブ通路の伸長回復性を損なわない程度の外径以下に設定されたことを特徴とする請求項1記載のエアバッグモジュール。
【請求項3】
前記繊維通路の内径とチューブ通路の外径が1:0.8〜1:1.5であることを特徴とする請求項1記載のエアバッグモジュール。
【請求項4】
伸縮性があり且つ伸長回復率の高い繊維材料で構成された略扁平に保形され得る繊維通路と、該繊維通路内に配置されると共に伸縮性があり且つ前記繊維通路よりも伸長回復率が低く構成された略扁平に保形され得る合成樹脂性のチューブ通路とで構成されたエアバッグモジュールにおいて、前記チューブ通路は、単体では直線状に形成されると共に、繊維通路内に配置される際に、長さ方向の通路形状が繊維通路の形状により制御されることを特徴とするエアバッグモジュール。
【請求項5】
前記エアバッグモジュールのエア容量が、チューブ通路の長さとチューブ通路2の最大膨脹時の内径ではなく、チューブ通路の長さと繊維通路の内径により決定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載のエアバッグモジュール。
【請求項6】
伸縮性があり且つ伸長回復率の高い繊維材料で構成された略扁平に保形され得る繊維通路と、該繊維通路内に配置されると共に伸縮性があり且つ前記繊維通路よりも伸長回復率が低く構成された略扁平に保形され得る合成樹脂性のチューブ通路とで構成され、少なくとも前記チューブ通路へのエア注入時に前記チューブ通路が伸長回復の限界値を越えず且つ前記繊維通路の伸長により保形されつつ膨脹するように、繊維通路の径とチューブ通路の径を設定したエアバッグモジュールにおいて、前記繊維通路の開放端よりチューブ通路を当該繊維通路の内部に押し込むことで、チューブ通路を若干皺の寄った状態で配置させたことを特徴とするエアバックモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−70782(P2007−70782A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294139(P2005−294139)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(300055258)
【Fターム(参考)】