説明

エアフィルター濾材、エアフィルター、ならびに空気清浄機

【課題】
本発明は、活性炭自体が持つ臭気の発生を抑え、大気中の悪臭成分を効率的かつ長期に渡り除去する空気清浄機用エアフィルター濾材およびエアフィルターを提供せんとするものである。
【解決手段】
活性炭を有する脱臭層と、エレクトレット加工処理された繊維シートからなる集塵層との積層体であり、前記脱臭層のpHが4.5〜7.5であるエアフィルター濾材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空気清浄機に好適に用いることができるエアフィルター濾材およびエアフィルター、ならびにそれを用いた空気清浄機に関する。詳しくは、活性炭自体から不快な臭気が発生するのを防ぐとともに、タバコ臭などの悪臭を効率的かつ長期間において脱臭し、微細塵の捕集性能にも優れるエアフィルター濾材およびエアフィルター、ならびにそれを用いた空気清浄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脱臭機能を有するエアフィルター用濾材としては、アルデヒド系ガス成分を除去する化学吸着層と物理吸着層とを別個に設けたものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、この濾材においては、アルデヒド系成分が大幅に除去され残りの臭気成分が物理吸着されるため、物理吸着剤から発生する臭気が顕在化し、かえって不快度の高いものとなり易く好ましくない。
【0004】
また、平均粒子径60μm以上の比較的大きい粒径の活性炭を支持繊維に接着固定した繊維シートと、エレクトレット加工された他の繊維シートを積層した濾材も提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、この濾材においては、活性炭自体から発生する臭気を防止する対策が取られておらず、活性炭の臭気が強く感じられ易く好ましくない。
【特許文献1】特開昭63−178822号公報
【特許文献2】特開2000−117024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の欠点を解消し、活性炭自体からの臭気の発生を抑え、大気中の悪臭成分を効率的かつ長期に渡り除去することが可能であるとともに、微細塵の捕集性能にも優れるエアフィルター濾材およびエアフィルター、ならびにそれを用いた空気清浄機を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するために、次の(1)〜(10)のいずれかの手段を採用する。
(1)活性炭を有する脱臭層と、エレクトレット加工処理された繊維シートからなる集塵層との積層体であり、前記脱臭層のpHが4.5〜7.5であることを特徴とするエアフィルター濾材。
(2)前記活性炭がヤシ殻を原料とし、かつ酸性薬剤によって洗浄処理されたものであることを特徴とする、前記(1)に記載のエアフィルター濾材。
(3)前記活性炭がアセトアルデヒド反応型消臭剤を添着したものであることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載のエアフィルター濾材。
(4)前記アセトアルデヒド反応型消臭剤が酸ヒドラジド類消臭剤であり、前記脱臭層のpHが4.5〜6.0であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のエアフィルター濾材。
(5)前記活性炭が粉末活性炭であり、該粉末活性炭が繊維シートに樹脂固定されて前記脱臭層を構成していることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のエアフィルター濾材。
(6)前記粉末活性炭の平均粒子径が5〜40μmであり、かつ該粉末活性炭の前記脱臭層を構成する繊維シートへの付着量が該繊維シート重量比25〜80%であることを特徴とする、前記(5)に記載のエアフィルター濾材。
(7)前記粉末活性炭の平均粒子径が5〜40μmであり、前記脱臭層を構成する繊維シートは構成繊維の50〜80重量%が疎水性繊維であることを特徴とする、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のエアフィルター濾材。
(8)前記脱臭層を構成する繊維シートが目付15〜70g/mの湿式抄紙不織布であることを特徴とする、前記(5)〜(7)のいずれかに記載のエアフィルター濾材。
(9)前記(1)〜(8)のいずれかに記載のエアフィルター濾材を用いていることを特徴とするエアフィルター。
(10)前記(1)〜(9)のいずれかに記載のエアフィルター濾材を備えてなることを特徴とする空気清浄機。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエアフィルター濾材によれば、活性炭自体が持つ臭気や、臭気を吸着した後に活性炭から発生する臭気が抑えられる。また、脱臭層からの活性炭の脱落が極めて少ないためプリーツ加工などが容易になり、一定体積内で使用できる濾材量が増え、活性炭による脱臭効果とエレクトレット加工による微細塵の捕集効果が効率的かつ長期間持続する。かかる濾材は、プリーツ加工やコルゲート加工を施したり枠体に収納することでエアフィルターとして使用することが可能になり、濾材と同様の効果を奏する。またかかる濾材は、各種空気清浄機において好ましく利用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、前記課題、つまり活性炭自体からの臭気の発生を抑えつつ、脱臭および微細塵捕集性能に優れるエアフィルター濾材について鋭意検討した結果、活性炭を有する脱臭層のpHを制御し、さらにエレクトレット加工シートとの積層体とすることにより、係る課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0010】
まず、本発明においてエアフィルター濾材は、活性炭を有する脱臭層と、エレクトレット加工処理された繊維シートからなる集塵層との積層体である。
【0011】
本発明における脱臭層とは、大気中の様々な悪臭成分を物理吸着や化学反応によって除去し、脱臭された空気を供給する機能を発揮するものである。
【0012】
本発明における活性炭としては、ヤシ殻、石炭、木粉、フェノール樹脂等を原料とするものが好ましく、焼成、洗浄、粉砕、分球などの工程を経て製品化される比較的粒度の細かい粉末活性炭が好ましい。また、粉末活性炭は繊維シートに樹脂固定されて脱臭層を構成することが好ましい。
【0013】
脱臭層に用いる繊維シートとは、織物や編物、不織布などの繊維によって構成される面積に対して十分な薄さを持った布帛状の構造物のことをいう。ここで用いられる繊維としては、綿、絹といった天然繊維から、セルロースなどの半合成繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ビニロンなどの合繊繊維、ガラス繊維や金属繊維などの無機繊維といった幅広い素材から布帛の構造や機能性粒子との接着性などに応じて任意に選択することができる。
【0014】
活性炭を固定する樹脂とは、中性付近のpHであり、かつ粉末活性炭を繊維シートに付着して固定するのに必要な粘度と、基材や粒子の性能に影響しない温度で硬化するものであればよく、アクリル樹脂やウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0015】
一方、本発明における集塵層とは、サブミクロンサイズやナノミクロンサイズといった微細塵の捕集の機能を発揮するものである。
【0016】
集塵層におけるエレクトレット加工処理は、コロナ放電方式、純水接触方式など公知の方法から任意に選択することが好ましいが、静電気力が高く圧力損失の低い繊維シートを得ることのできる純水接触方式を用いることがより好ましい。
【0017】
集塵層における繊維シートとは、織物や編物、不織布などの繊維によって構成される面積に対して十分な薄さを持った布帛状の構造物であれば任意に選択することができるが、メルトブロー不織布を用いることが最も好ましい。メルトブロー不織布の形態のものを用いる理由は、極めて薄型で繊維径の細い不織布を得ることができるからである。
【0018】
そして、本発明において脱臭層と集塵層との積層体とは、それら2つの層が間に空間層を設けずに配置された状態をいう。積層体を形成するための方法としては、例えば低融点パウダーやウレタン樹脂などを散布して脱臭層と集塵層とを部分的に接着したりする方法など公知の方法を採用すればよい。
【0019】
以上のようなエアフィルター濾材において、本発明では、かかる脱臭層がpH4.5〜7.5の範囲内であることが重要である。これによって、活性炭自体が持つ臭気の発生を最大限に抑えることができるのである。脱臭層のpHが4.5よりも酸性側にあると、活性炭に含まれる不純物のうち酸性成分にある不純物が顕在化し、臭気として放出される割合が著しく高くなる。逆に脱臭層のpHが7.5よりもアルカリ性側にあると、活性炭の表面や大気中に僅かに存在するアンモニアなどの吸着性能が著しく低下するため、それらアンモニアなどの放出される割合が著しく高くなる。
【0020】
本発明の脱臭層に用いる活性炭の原料としては、上述の通り様々な種類から用途や目的に応じて任意に選択することができるが、中でもヤシ殻を原料としたものを使用することにより、脱臭層のpHを調整することが容易になり、かつコスト面でも最も安価となるためより好ましい。また、このヤシ殻活性炭が製造工程において酸性の薬剤にて洗浄処理されたものであれば、脱臭層のpHの調整がより容易となり、かつ活性炭に混入している不純物がほぼ除去されるため、吸着性能の向上と活性炭自体の臭気をより軽微にすることが可能となるためより好ましい。活性炭を洗浄する酸性の薬剤としては主に塩酸、硫酸などが使用されるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0021】
また、脱臭層に用いられる活性炭としては、アセトアルデヒド反応型消臭剤を添着しているものが、空気清浄機の使用において最も代表的な悪臭成分であるタバコの煙臭に対する脱臭効果が大きくなるので、より好ましい。この時に使用される消臭剤としては特に限定されるものではないが、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジドなどの酸ヒドラジド類やヒドラジン類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、尿素類などのアミン化合物は、悪臭成分に含まれるアセトアルデヒドの除去性に優れる面から特に好ましく採用される。上述の消臭剤の添着量としては、活性炭の消臭剤添着前の重量対比の5〜75%が好ましく、より好ましくは10〜60%である。添着量を制御することにより、活性炭本来の物理吸着性能を阻害することなくアセトアルデヒドの吸着性を向上させることが可能となり、様々な悪臭成分に対して効果的な脱臭効果を持った濾材を得ることができる。
【0022】
前記したアセトアルデヒド消臭剤の中でも、酸ヒドラジド類の消臭剤を使用し、脱臭層のpHを4.5〜6.0に制御する場合、前記した活性炭自体の臭気抑制、アセトアルデヒドの脱臭性能向上、および吸着成分の再放出を抑制する効果が最も大きくなるため、より好ましい。これは活性炭に僅かに残留する金属酸化物と酸ヒドラジド類消臭剤の反応により、酸ヒドラジド類消臭剤が分解され酸性成分が発生するため、脱臭層のpHが前記効果を得るに好ましい酸性サイドになるもの推定される。
【0023】
脱臭層に粉末活性炭を用いる場合、そのサイズとしては、JIS K 1474:2007に準拠した方法より50%粒径として求められる平均粒子径で4〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜40μmである。特に平均粒子径が50μm以下の活性炭を用いることにより、プリーツ加工などのフィルター成形加工時に活性炭の脱落や集塵層との接触による破れなどの問題の発生を抑えることができる。また、粉末活性炭の繊維シートへの付着量としては、繊維シートの活性炭付着前の重量比の25〜80%が好ましく、40〜70%であることがより好ましい。活性炭の付着量を調整することにより、脱臭性能を長期に持続させつつ、活性炭自体が持つ臭気の発生を極力抑えることができるのである。
【0024】
また、脱臭層は、繊維シートを疎水性繊維で構成し、かつ、かかる繊維シートに平均粒子径が5〜40μmの活性炭を樹脂固定することで構成することが好ましい。このような構成により、使用によって吸着した脱臭成分を水洗浄によって効率的に除去することが可能であり、かつ洗浄後の乾燥性にも優れた濾材、すなわち洗浄による再生、繰り返し使用にも適した濾材を得ることができる。特に粒子経が40μmを超えると、活性炭が保持する水分量が多くなり洗浄後の乾燥時間が著しく長くなるため洗浄対応としては好ましくない。
【0025】
ここでいう疎水性繊維とは、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアラミド繊維などの疎水性有機繊維、炭化珪素繊維などの疎水性無機繊維、炭素繊維などの疎水性を有する繊維が挙げられる。中でもポリエステル繊維が汎用性の面で好ましい。
【0026】
また、前記疎水性繊維は、脱臭層を構成する繊維シートの構成繊維の50〜80質量%を占めることが好ましい。疎水性繊維がこの範囲で混合されることで、洗浄による繊維シートの含水量が適度なものとなり、洗浄後の乾燥時間が大幅に短縮される。疎水性繊維以外の構成要素としては特に限定されるものではないが、親水性繊維を含むことで洗浄時の保水性が向上し、臭気成分の除去性が向上するため好ましい。
【0027】
本発明の脱臭層に用いられる繊維シートの目付としては、15〜70g/mが好ましく、より好ましくは20〜55g/mである。これによって、エアフィルターを構成する場合に、脱臭層に一定の剛性を維持しつつ一定体積により多くの濾材を収納することができるため、高風量の処理においても濾材の変形による圧損上昇が起こりにくく、かつ脱臭効果の寿命を延ばすことが可能となるのである。また、繊維シートの構成としては、上述の通り任意に選択することができるが、湿式抄紙法によって得られた不織布を用いることにより、活性炭の付着が最も均一になるため最も好ましい。
【0028】
以上のような本発明のエアフィルター濾材は、たとえば、プリーツ加工やコルゲート加工を施したり枠体に収納することでエアフィルターとして使用することが可能になり、上記した濾材と同様の効果を奏する。そのため、かかる濾材は、各種空気清浄機において好ましく利用される。なお、本発明における空気清浄機とは、主に一般住宅やホテルなどの居室内空気を清浄する目的に使用されるものである。
【実施例】
【0029】
以下、実施例によって本発明の作用効果をより具体的に示すが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
[測定方法]
(1)pH
JIS L1096法に準拠した方法で、脱臭層より抽出した液のpHを、横河電機(株)製pH測定器「PH81」にて測定した。
【0031】
(2)初期臭
実施例および比較例によって得られた濾材を山高さ35mmでプリーツ加工し、117山分の濾材の外周4辺にポリエステル短繊維不織布からなる枠材を貼り付け、長さ480mm、巾250mm、高さ38mmのエアフィルターを得る。このフィルターをシャープ(株)製家庭用空気清浄機「FU−T51CX」にセットし、外気の流出入のない状態に密閉した容積1mのアクリルボックス内に配置して72時間連続で空気清浄機を運転し、停止から24時間経過後に再び運転させた時の空気清浄機からの吹き出しエアーの臭気強度を、6人のモニターが下記表1に示す6段階臭気判定法にて判定し、各人の判定結果の算術平均で示した。
【0032】
【表1】

【0033】
(3)タバコ臭
上述の初期臭判定と同様の加工条件で製造したエアフィルターをシャープ(株)製家庭用空気清浄機「FU−T51CX」にセットし、外気の流出入のない状態に密閉した容積1mのアクリルボックス内に配置し、ボックス内でタバコ「マイルドセブン」2本を燃焼させ、煙が出なくなった後に空気清浄機を10分運転させ、停止から24時間経過後に再び運転させた時の空気清浄機からの吹き出しエアーの臭気強度を、6人のモニターが表1の6段階臭気判定法にて判定し、各人の判定結果の算術平均で示した。
【0034】
(4)初期捕集効率[%]
上述の初期臭判定と同様の加工条件で製造したエアフィルターを有効間口面積0.1mの風洞の通風路にセットし、風両5.1m/minで空気を通過させ、フィルターの上流側および下流側の粒径0.3〜0.5μmの大気塵粉塵数をパーティクルカウンター(RION社製、型式:KC−01D)で測定し、次式より算出した。
捕集効率=1−(下流粒子数/上流粒子数)×100 [%]
(5)水洗い後の乾燥時間[hr]および吹き出し臭
上述の(3)タバコ臭評価に使用したフィルターを、上述(1)と同様のpH計で測定した時のpH=5.8の水道水15L中に6時間含浸して洗浄し、取り出した後25℃×60%RHの密閉空間内にて保管し、重量が水含浸前の重量から±1%になるまでの時間を乾燥時間とした。乾燥後のフィルターを上記(3)と同様の空気清浄機にセットした時の吹き出しエアーの臭気強度を、6人のモニターが表1の6段階臭気判定法にて判定し、各人の判定結果の算術平均で示した。
【0035】
(6)再使用後タバコ臭
上述の(5)水洗い後の乾燥時間および吹き出し臭評価に使用したフィルターを、再度上述の(3)タバコ臭評価と同様の方法で、タバコを燃焼させ、煙が出なくなった後に空気清浄機を10分運転させ、停止から24時間経過後に再び運転させた時の空気清浄機からの吹き出しエアーの臭気強度を、6人のモニターが表1の6段階臭気判定法にて判定し、各人の判定結果の算術平均で示した。
【0036】
[実施例1]
(活性炭)
平均粒子径60μmの粉末活性炭であり、石炭ピッチを原料とする活性炭「白鷺DO−5」(日本エンバイロケミカルズ(株)製)を使用した。
【0037】
(繊維シート)
ポリエステル短繊維45重量%、レーヨン短繊維重量55%によって構成される繊維群をカードマシンによって不織布に加工し、アクリル樹脂バインダーを繊維全体の25重量%付着した目付61g/mの単繊維樹脂加工不織布を使用した。
【0038】
(脱臭層)
上述の活性炭3重量%とスチレンアクリル樹脂1.5重量%とを均一分散させた水分散液中にリン酸を0.02重量%添加し、該液中に上述の繊維シートを含浸させ、乾燥させて得た、活性炭付着量15g/mの脱臭層を使用した。
脱臭層のpHは6.0であった。
【0039】
(集塵層)
ポリプロピレンからなるメルトブロー不織布を純水サクション法によってエレクトレット加工した目付30g/mの帯電繊維シートを使用した。
【0040】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。
【0041】
このエアフィルター用濾材によって得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は平均2.2、タバコ臭の判定値は平均2.6、初期捕集効率は99.97%であった。さらに水洗い後の乾燥時間は48時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均2.2、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均2.9であった。
【0042】
[実施例2]
(活性炭)
実施例1と同様の粉末活性炭を使用した。
【0043】
(繊維シート)
実施例1と同様の繊維シートを使用した。
【0044】
(脱臭層)
上述の活性炭3重量%とスチレンアクリル樹脂1.5重量%とを均一分散させた水分散液中にリン酸を0.01重量%添加し、該液中に上述の繊維シートを含浸させ、乾燥させて得た、活性炭付着量15g/mの脱臭層を使用した。この脱臭層のpHは7.5であった。
【0045】
(集塵層)
実施例1と同様の帯電繊維シートを用いた。
【0046】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。
【0047】
このエアフィルター用濾材によって得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は2.4、タバコ臭の判定値は平均2.6、初期捕集効率は99.97%であった。さらに水洗い後の乾燥時間は48時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均2.4、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均3.1であった。
【0048】
[実施例3]
(活性炭)
実施例1と同様の粉末活性炭を使用した。
【0049】
(繊維シート)
実施例1と同様の繊維シートを使用した。
【0050】
(脱臭層)
上述の活性炭3重量%とスチレンアクリル樹脂1.5重量%とを均一分散させた水分散液中にリン酸を0.05重量%添加し、該液中に上述の繊維シートを含浸させ、乾燥させて得た、活性炭付着量15g/mの脱臭層を使用した。脱臭層のpHは4.5であった。
【0051】
(集塵層)
実施例1と同様の帯電繊維シートを使用した。
【0052】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。
【0053】
このエアフィルター用濾材によって得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は2.3、タバコ臭の判定値は平均2.9、初期捕集効率は99.97%であった。さらに水洗い後の乾燥時間は48時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均2.3、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均3.0であった。
【0054】
[実施例4]
(活性炭)
平均粒子径が45μmの粉末活性炭であり、ヤシ殻を原料としかつ塩酸による洗浄処理を施されている活性炭「PK−W5A」(クラレケミカル(株)製)を使用した。
【0055】
(繊維シート)
実施例1と同様の繊維シートを使用した。
【0056】
(脱臭層)
上述の活性炭3重量%とスチレンアクリル樹脂1.5重量%とを均一分散させた水分散液中に上述の繊維シートを含浸させ、乾燥させて得た、活性炭付着量15g/mの脱臭層を使用した。脱臭層のpHは6.7であった。
【0057】
(集塵層)
実施例1と同様の帯電繊維シートを使用した。
【0058】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。この濾材によって得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は1.9、タバコ臭の判定値は2.7、初期捕集効率は99.97%であった。さらに、洗浄後の乾燥時間は35時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均2.0、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均2.7であった。
【0059】
[実施例5]
(活性炭)
実施例4と同様の活性炭を使用した。
【0060】
(繊維シート)
実施例1と同様の繊維シートを使用した。
【0061】
(脱臭層)
アセトアルデヒド反応型消臭剤として三木理研工業(株)製「リケンレジンFC−100」を1重量%水に溶解させた水溶液に、上述の活性炭を3重量%、スチレンアクリル樹脂を1.5重量%均一に分散させ、該分散液に上述の繊維シートを含浸させ、乾燥させて、活性炭付着量15g/m、アジピン酸ジヒドラジド付着量4g/mの脱臭層を得た。この脱臭層のpHは6.5であった。
【0062】
(集塵層)
実施例1と同様の帯電繊維シートを用いた。
【0063】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。この濾材によって得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は1.9、タバコ臭の判定値は2.4、初期捕集効率は99.97%であった。さらに、洗浄後の乾燥時間は35時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均2.0、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均3.0であった。
【0064】
[実施例6]
(活性炭)
実施例4と同様の活性炭を使用した。
【0065】
(繊維シート)
実施例4と同様の繊維シートを使用した。
【0066】
(脱臭層)
アセトアルデヒド反応型消臭剤として日本化成(株)製「アジピン酸ジヒドラジド」を1重量%水に溶解させた水溶液に、上述の活性炭を3重量%、スチレンアクリル樹脂を1.5重量%均一に分散させ、該分散液に上述の繊維シートを含浸させ、乾燥させて、活性炭付着量15g/m、アジピン酸ジヒドラジド付着量4g/mの脱臭層を得た。この脱臭層のpHは5.1であった。
【0067】
(集塵層)
実施例1と同様の帯電繊維シートを用いた。
【0068】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。この濾材によって得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は1.9、タバコ臭の判定値は2.1、初期捕集効率は99.97%であった。さらに、洗浄後の乾燥時間は35時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均1.9、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均3.0であった。
【0069】
[実施例7]
(活性炭)
平均粒子径が26μmであり、ヤシ殻を原料としかつ塩酸による洗浄処理を施されている活性炭「白鷺E−25KN」(クラレケミカル(株)製)を使用した。
【0070】
(繊維シート)
実施例1と同様の繊維シートを使用した。
【0071】
(脱臭層)
実施例6と同様のアセトアルデヒド反応型消臭剤を1重量%溶解させた水溶液に上述の活性炭を3重量%、スチレンアクリル樹脂を1.5重量%均一に分散させ、該分散液に上述の繊維シートを含浸させ、乾燥させて、活性炭付着量20g/m、アセトアルデヒド反応型消臭剤付着量5g/mの脱臭層を得た。この脱臭層のpHは5.3であった。
【0072】
(集塵層)
実施例1と同様の帯電繊維シートを用いた。
【0073】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。この濾材によって得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は1.9、タバコ臭の判定値は2.1、初期捕集効率は99.99%であった。さらに、洗浄後の乾燥時間は30時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均1.9、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均2.8であった。
【0074】
[実施例8]
(活性炭)
実施例7と同様の酸洗浄済みヤシ殻活性炭を使用した。
【0075】
(繊維シート)
パルプ30重量%、ポリエステル短繊維25重量%、ビニロン単繊維45重量%から構成される繊維群を湿式抄紙法にて不織布に加工し、アクリル樹脂バインダーを繊維全体の25重量%付着した目付35g/mの繊維シートを使用した。
【0076】
(脱臭層)
繊維シートに上述の湿式抄紙不織布を用いたこと以外は実施例7と同様の方法で得た、活性炭付着量20g/m、アセトアルデヒド反応型消臭剤付着量5g/mの脱臭層を使用した。この脱臭層のpHは5.2であった。
【0077】
(集塵層)
実施例1と同様の帯電繊維シートを用いた。
【0078】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。この濾剤によって得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は1.9、タバコ臭の判定値は1.9、初期捕集効率は99.99%であった。さらに、洗浄後の乾燥時間は60時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均1.9、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均2.8であった。
【0079】
[実施例9]
(活性炭)
実施例7と同様の酸洗浄済みヤシ殻活性炭を使用した。
【0080】
(繊維シート)
ポリエステル短繊維100重量%から構成される繊維群を湿式抄紙法にて不織布に加工し、アクリル樹脂バインダーを繊維全体の25重量%付着した目付42g/mの繊維シートを使用した。
【0081】
(脱臭層)
上述の活性炭4重量%とスチレンアクリル樹脂1.5重量%とを均一分散させた水分散液中に上述の繊維シートを含浸させ、乾燥させて得た、活性炭付着量20g/mの脱臭層を使用した。脱臭層のpHは6.5であった。
【0082】
(集塵層)
実施例1と同様の帯電繊維シートを使用した。
【0083】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。この濾材を使用して得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は1.9、タバコ臭の判定値は2.7、初期捕集効率は99.99%であった。さらに、洗浄後の乾燥時間は15時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均2.5、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均3.5であった。
【0084】
[実施例10]
(活性炭)
実施例7と同様の活性炭を使用した。
【0085】
(繊維製基材)
パルプ5重量%、ポリエステル短繊維50重量%、ビニロン単繊維45重量%から構成される繊維群を湿式抄紙法にて不織布に加工し、アクリル樹脂バインダーを繊維全体の25重量%付着した目付42g/mの繊維シートを使用した。
【0086】
(脱臭層)
上述の活性炭4重量%とスチレンアクリル樹脂1.5重量%とを均一分散させた水分散液中に上述の繊維シートを含浸させ、乾燥させて得た活性炭付着量20g/mの脱臭層を使用した。脱臭層のpHは6.0であった。
【0087】
(集塵層)
実施例1と同様の帯電繊維シートを用いた。
【0088】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。この濾剤によって得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は1.9、タバコ臭の判定値は2.6、初期捕集効率は99.99%であった。さらに、洗浄後の乾燥時間は25時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均1.9、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均2.6であった。
【0089】
[実施例11]
(活性炭)
実施例7と同様の活性炭を使用した。
【0090】
(繊維製基材)
パルプ10重量%、ポリエステル短繊維80重量%、ビニロン短繊維10重量%から構成される繊維群を湿式抄紙法にて不織布に加工し、アクリル樹脂バインダーを繊維全体の25重量%付着した目付42g/mの繊維シートを使用した。
【0091】
(脱臭層)
上述の活性炭4重量%とスチレンアクリル樹脂1.5重量%とを均一分散させた水分散液中に上述の繊維シートを含浸させ、乾燥させて得た活性炭付着量20g/mの脱臭層を使用した。脱臭層のpHは6.0であった。
【0092】
(集塵層)
実施例1と同様の帯電繊維シートを用いた。
【0093】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。この濾剤によって得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は1.9、タバコ臭の判定値は2.6、初期捕集効率は99.99%であった。さらに、洗浄後の乾燥時間は20時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均2.3再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均2.7であった。
【0094】
[比較例1]
(活性炭)
実施例1と同様の活性炭を使用した。
【0095】
(繊維シート)
実施例8と同様の湿式抄紙不織布を使用した。
【0096】
(脱臭層)
上述の活性炭3重量%とスチレンアクリル樹脂1.5重量%とを均一分散させた水分散液中に上述の繊維シートを含浸させ、乾燥させて、活性炭付着量20g/mの脱臭層を得た。この脱臭層のpHは8.2であった。
【0097】
(集塵層)
実施例1と同様の帯電繊維シートを使用した。
【0098】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。この濾材によって得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は3.0、タバコ臭の判定値は3.2、初期捕集効率は99.97%であった。さらに、洗浄後の乾燥時間は40時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均3.1、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均3.6であった。
【0099】
[比較例2]
(活性炭)
実施例7と同様の酸洗浄済みのヤシ殻活性炭を使用した。
【0100】
(繊維シート)
実施例8と同様の湿式抄紙不織布を使用した。
【0101】
(脱臭層)
上述の活性炭3重量%とスチレンアクリル樹脂1.5重量%とを均一に分散させた水分散液中にリン酸を0.06重量%添加し、該液中に上述の繊維シートを含浸し、活性炭付着量20g/mの脱臭層を得た。この脱臭層のpHは4.2であった。
【0102】
(集塵層)
実施例1と同様の帯電繊維シートを使用した。
【0103】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。この濾材を使用して得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は3.2、タバコ臭の判定値は3.3、初期捕集効率は99.99%であった。さらに、洗浄後の乾燥時間は40時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均3.2、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均3.6であった。
【0104】
[比較例3]
(活性炭)
活性炭は使用せずに、平均粒子径4μmの多孔質シリカである「サイリシア25N」(富士シリシア(株)製)を使用した。
【0105】
(繊維シート)
実施例8と同様の湿式抄紙不織布を使用した。
【0106】
(脱臭層)
実施例5と同様のアセトアルデヒド反応型消臭剤を1重量%溶解させた水溶液中に、上述の多孔質シリカを3重量%、スチレンアクリル樹脂バインダーを1.5重量%均一に分散させ、該水分散液中に上述の繊維シートを含浸させ、多孔質シリカ付着量20g/m、アセトアルデヒド反応型消臭剤付着量5g/mの脱臭層を得た。この脱臭層のpHは6.6であった。
【0107】
(集塵層)
実施例1と同様の帯電繊維シートを用いた。
【0108】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。この濾材を使用して得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は0.9、タバコ臭の判定値は4.2、捕集効率は99.99%であった。さらに、さらに、洗浄後の乾燥時間は35時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均2.0、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均4.5であった。
【0109】
[比較例4]
(活性炭)
実施例7と同様の酸洗浄済みヤシ殻活性炭を使用した。
【0110】
(繊維シート)
実施例8と同様の湿式抄紙不織布を使用した。
【0111】
(脱臭層)
実施例7と同一の処方にて活性炭付着量20g/m、アセトアルデヒド反応型消臭剤付着量5g/mの脱臭層を得た。この脱臭層のpHは5.3であった。
【0112】
(集塵層)
ポリプロピレンからなる目付30g/mのメルトブロー不織布をエレクトレット加工をせずに使用した。
【0113】
(積層濾材)
上述の脱臭層および集塵層をエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる熱融着パウダーによって積層接着し、エアフィルター用濾材とした。この濾材を使用して得られた空気清浄機用エアフィルターの初期臭の判定値は1.9、タバコ臭の判定値は1.9、初期捕集効率は74.30%であった。さらに、洗浄後の乾燥時間は30時間、洗浄後の吹き出し臭の判定値は平均2.0、再使用後のタバコ臭気強度の判定値は平均2.8であった。
【0114】
上記から明らかなように、実施例1〜11は、脱臭層のpHが弱酸性から中性、弱アルカリ性の範囲にあるため、活性炭自体が持つ臭気のうち酸性、アルカリ性物質に起因するものの臭いが小さくなり、初期臭が小さい。さらにタバコ臭の吸着後の臭気の発生も抑えられており、微細塵の捕集性能にも優れることから、これらの性能を兼備するためには活性炭を使用し、さらにその活性炭を使用する脱臭層のpHを制御した脱臭層と、エレクトレット加工された集塵層を組み合わせて使用することが必須であるといえる。初期臭に関しては、酸洗浄処理されたヤシガラ活性炭を使用すること、タバコ臭に関しては活性炭とアセトアルデヒド反応型薬剤を併用すること、捕集効率に関しては脱臭層に用いる活性炭の粒径を小さくしさらに目付の小さい湿式抄紙不織布を用いることにより、より性能が向上するといえる。
【0115】
また、実施例10〜11は、脱臭層を構成する繊維製基材が疎水性基材を適量含むため、水洗い後の乾燥時間が短く、また洗浄によって吸着成分が除去されるため繰り返し使用しても新品使用時と臭気強度の変化が少なく、使用者の不快感を低減することができる。
【0116】
各実施例に対して比較例1は、脱臭層のpHがアルカリ側に大きく振れており、活性炭不純物として存在するアルカリ成分や大気中に僅かに存在するアンモニア等の中和能力が下がり、それらの成分が顕在化するため使用初期の段階で臭気が感じられることを示している。
【0117】
比較例2は、脱臭層のpHが酸性側に大きく振れており、活性炭不純物として存在する酸性成分が顕在化し、使用初期の段階で臭気として感じられることを示している。
【0118】
比較例3は、活性炭を使用していないため、使用初期での臭気はほとんど感じられない。しかし、活性炭のように多種の臭気成分に対する物理吸着性能がなく、アセトアルデヒド反応型薬剤の効果のみが極端に強くなるため、タバコ煙のように様々な成分もったガスを処理すると、アセトアルデヒド以外の臭気成分が顕在化し、臭気強度としてはかえって強く感じられることを示している。
【0119】
比較例4は、集塵層にエレクトレット加工がされていないため、帯電効果による微細塵の捕集性能が低く、空気清浄機用等のエアフィルターとしては不適であることを示している。
【0120】
なお、実施例1〜11の結果を表2に、そして比較例1〜4の結果を表3にまとめて示す。
【0121】
【表2】

【0122】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明によるエアフィルター用濾材は、主に一般住宅、ペット対応マンション、高齢者入所施設、病院、オフィス等で使用される空気清浄機用エアフィルターに使用される。さらには自動車や鉄道車両などの社室内の空気を正常化するためのエアフィルター、エアコン用エアフィルター、OA機器の吸気・廃棄フィルター、ビル空調、個別空調用エアフィルター、産業用クリーンルーム用エアフィルター等のエアフィルター用濾材として好ましく利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭を有する脱臭層と、エレクトレット加工処理された繊維シートからなる集塵層との積層体であり、前記脱臭層のpHが4.5〜7.5であることを特徴とするエアフィルター濾材。
【請求項2】
前記活性炭がヤシ殻を原料とし、かつ酸性薬剤によって洗浄処理されたものであることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルター濾材。
【請求項3】
前記活性炭がアセトアルデヒド反応型消臭剤を添着したものであることを特徴とする請求項1または2に記載のエアフィルター濾材。
【請求項4】
前記アセトアルデヒド反応型消臭剤が酸ヒドラジド類消臭剤であり、前記脱臭層のpHが4.5〜6.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエアフィルター濾材。
【請求項5】
前記活性炭が粉末活性炭であり、該粉末活性炭が繊維シートに樹脂固定されて前記脱臭層を構成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエアフィルター濾材。
【請求項6】
前記粉末活性炭の平均粒子径が5〜40μmであり、かつ該粉末活性炭の前記脱臭層を構成する繊維シートへの付着量が該繊維シート重量比25〜80%であることを特徴とする請求項5に記載のエアフィルター濾材。
【請求項7】
前記粉末活性炭の平均粒子径が5〜40μmであり、前記脱臭層を構成する繊維シートは構成繊維の50〜80重量%が疎水性繊維であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエアフィルター濾材。
【請求項8】
前記脱臭層を構成する繊維シートが目付15〜70g/mでの湿式抄紙不織布であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のエアフィルター濾材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のエアフィルター濾材を用いていることを特徴とするエアフィルター。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のエアフィルター濾材を備えてなることを特徴とする空気清浄機。

【公開番号】特開2009−28718(P2009−28718A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166912(P2008−166912)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】