説明

エアマット装置

【課題】耐久性がよく、患者の特定部位における圧力集中を確実に回避して良好な使用感を得る。
【解決手段】エアマット装置1は、独立した複数のセル4a、4bが患者Yの寝姿勢時の身長方向に並設するセル集合体4と、セル4a、4bに空気を給排するポンプユニット8と、患者Y周辺の温度を上昇させる線状ヒータ6と、ポンプユニット8及び線状ヒータ6を制御する制御装置30とを備えている。セル集合体4はクッション材5に乗載されている。線状ヒータ6は、セル集合体4から下方に離間した位置でクッション材5に取り囲まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医療施設や介護施設等で使用されるエアマット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に開示されているエアマット装置は、患者が横たわることが可能な略矩形板状のエアマットを備えていて、該エアマットには、患者の寝姿勢時の身長方向に並設されてなる独立した複数のセルと、上記エアマット上面の温度を上昇させるヒータ線とが内臓されている。上記各セルには、当該各セルに空気をそれぞれ給排するポンプユニットが接続されていて、該ポンプユニット及び上記ヒータ線には、制御装置が接続されている。該制御装置は、上記ポンプユニットを制御して上記各セルに給排する空気量を調節し、且つ、上記ヒータ線への電流を制御して患者周辺の上昇温度を調節するようになっていて、各セルの膨張・収縮により横たわった患者に対して押圧と押圧の解除とが繰り返されて患者の血行が改善されるとともに、各セルの膨張・収縮に伴って、患者とヒータ線とが接近する加温状態と、患者とヒータ線とが離間する非加温状態とが繰り返されて患者の血行改善がさらに促進されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平06−438号公報(段落0035〜0037欄、図2及び図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のエアマット装置では、ヒータ線が各セルに対して隣接する位置に配設されているので、各セル内の空気がヒータ線で必要以上に熱せられてしまう可能性がある。したがって、各セル内の空気が必要以上に膨張し、それに伴って各セルのチューブ部分が許容範囲を超えて引き伸ばされてしまい、各セルの経年劣化を早めてしまうおそれがある。
【0005】
また、特許文献1のエアマットでは、ヒータ線を配置するスペースを確保するために、隣り合うセルが大きく離間して隣り合うセル間が広くなっており、これでは、エアマットに横たわる患者の体のセルと接触しない部分が増えてしまう。したがって、セルに接触しない患者の体の部分に圧力が集中してしまうと、患者の床ずれや痛みを回避させるのが困難となってしまう。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エアマットに横たわる患者の特定部位における圧力集中を確実に回避して良好な使用感を得ることができ、しかも、耐久性のよいエアマット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、セル集合体をクッション材に乗載するようにし、昇温手段をクッション材で取り囲むようにしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、独立した複数の筒状可撓性セルが患者の寝姿勢時の身長方向に並設されてなるセル集合体と、上記各セルに接続され、該各セルに空気をそれぞれ給排するポンプユニットと、上記セル集合体に横たわる患者周辺の温度を上昇させる昇温手段とを備え、上記ポンプユニット及び昇温手段に接続され、該ポンプユニットを制御して上記各セルに給排する空気量を調節するとともに、上記昇温手段を制御して患者周辺の上昇温度を調節する制御装置とを備えたエアマット装置において、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、上記セル集合体は、クッション材に乗載され、上記昇温手段は、上記セル集合体から下方に離間した位置で上記クッション材に取り囲まれていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、上記セル集合体の隣り合うセル間には、当該セルの長手方向に沿って延びる線状スリットが形成され、上記クッション材の上記各セルに対応する位置には、当該各セルを支持するセル支持部が形成されているとともに、隣り合うセル支持部間には、線状溝部が上記線状スリットに対応して形成され、上記昇温手段は、線状をなし、上記溝部に配設されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第2の発明において、上記昇温手段は、可撓性シート材で覆われ、該シート材は上記溝部の壁面と接していることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記セル集合体の上面側に空気を吹き出す空気吹出手段と、該空気吹出手段に接続され、該空気吹出手段に空気を供給する送風ユニットとを備え、上記制御装置は、上記送風ユニットに接続され、該送風ユニットを制御して上記空気吹出手段から吹き出す空気量を調節することを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、上記制御装置が接続された室温測定センサを備え、上記制御装置は、上記室温測定センサの各測定値に対応する温度設定値となるように上記昇温手段を制御することを特徴とする。
【0014】
第6の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明において、上記クッション材は、上記セル集合体の側端縁を囲う枠状部を備えていることを特徴とする。
【0015】
第7の発明では、第6の発明において、上記枠状部には、上記セル集合体の側端縁を覆うように窪む凹状部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
第8の発明では、第1から第7のいずれか1つの発明において、上記制御装置は、上記ポンプユニットを制御して隣り合うセルを交互に膨張・収縮させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明では、クッション材が昇温手段とセル集合体との間を隔てているので、昇温手段の熱が直接各セルに伝わり難くなって、各セル内の空気が必要以上に膨張し難くなり、各セルの経年劣化を抑えて耐久性を高めることができる。また、昇温手段がセル集合体よりも下方に位置しているので、セル集合体の隣り合うセルを特許文献1のセル集合体に比べて互いに接近させることができる。したがって、セル集合体のなかでセルに接触する患者の体の部分を増やすことができ、患者の体に圧力が集中する部分のセルの空気量を調節することで確実に床ずれや痛みを回避させることができる。さらには、エアマット上に患者が横たわると、体圧の高い部分において、クッション材がセル集合体の各セル下部の形状に沿って変形することにより体圧を低下させるので、エアマット装置の体圧分散性をさらに高めて使用感をよくすることができる。
【0018】
第2の発明では、クッション材の溝部内で昇温手段により加温された空気は、上記溝部に対応するスリットを通り抜けてエアマット表面側の隅々にまで行き易くなるので、エアマット表面全体を効率良く略均一に加温することができ、良好な使用感を得ることができる。
【0019】
第3の発明では、昇温手段を覆う可撓性シート材により、クッション材の溝部に昇温手段が強固に固定されるようになるので、クッション材から昇温手段が不意に外れてしまうのを防ぐことができる。
【0020】
第4の発明では、エアマット上に布団を被って横たわる患者に対して、エアマットと布団との間、或いは、患者に向けて空気吹出手段から送風することによって、患者がエアマットに横たわった状態のままでも患者の汗などの湿気が素早く気化するようになり、べとつき感を防止して、使用感を良好とすることができる。また、昇温手段により加温された患者周辺の空気を上記空気吹出手段により効率良く患者周辺の隅々まで送り届けて、エアマット上の温度差をなくすことができる。
【0021】
第5の発明では、患者周辺の温度を室温に対応する温度にできるので、患者の使用感をさらによくすることができる。
【0022】
第6の発明では、枠状部によりクッション材に対するセル集合体の水平方向の移動が規制されるので、セル集合体のクッション材に対する相対位置がずれなくなり、セル集合体に横たわる患者の体圧分散をクッション材にて確実に行うことができる。
【0023】
第7の発明では、セル集合体の各セルの長手方向両端部がクッション材の凹状部に収容されるので、セル集合体に対してクッション材から離れる方向に力が加わっても、各セルの長手方向両端部がクッション材に引っ掛かるようになる。したがって、セル集合体がクッション材から外れ難くなり、セル集合体をクッション材に強固に固定することができる。
【0024】
第8の発明では、各セルが膨張・収縮を繰り返すことにより、セル集合体に横たわる患者の体全体の血管の圧迫を緩和して床ずれや痛みの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態1に係るエアマット装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るエアマット装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るエアマット装置の制御ブロック図である。
【図4】図1のA−A線断面図であり、図4(a)は通常状態を、図4(b)、(c)は、セル集合体のセルが交互に膨張・収縮を繰り返している状態を示す。
【図5】図4のB部拡大図である。
【図6】図1のC−C線断面図である。
【図7】室温と、室温に対応するヒータの温度設定値との関係を示したグラフである。
【図8】本発明の実施形態2に係る図4(a)相当図である。
【図9】図8のD部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態に係るエアマット装置1である。該エアマット装置1は、略矩形板状のエアマット2と、該エアマット2を制御する略直方体状の制御ボックス3と、上記エアマット装置1を操作する操作リモコン10(図3にのみ示す)とを備えていて、畳や床の上に直接置いて使用されたり、図示しないベッドのフレーム上に載置して使用されるものである。
【0027】
上記エアマット2は、図2及び図4に示すように、独立した複数の筒状可撓性セル4a、4bが患者の寝姿勢の身長方向に並設されてなるセル集合体4と、該セル集合体4を乗載するクッション材5と、上記セル集合体4に横たわる患者Y(図4(a)に示す)周辺の温度を上昇させる昇温手段としての線状ヒータ(昇温手段)6と、患者Yが寝姿勢の状態でエアマット2の足側寄りに位置し、上記セル集合体4の上面側に空気を吹き出す(送風する)エアノズル(空気吹出手段)7と、これらセル集合体4、クッション材5及び線状ヒータ6を収容する防水性カバー部材20とを備えている。
【0028】
上記セル4a、4bは、内部に空気を充填するために樹脂材からなる筒状可撓性チューブで気密に構成されていて、図4に示すように、患者Yの頭側から足先に向けて交互に複数並設され、その長手方向両端部は、図6に示すように、側面視で外側方に湾曲している。
【0029】
上記セル4bの両側に位置するセル4aの長手方向一方側が連通路4dによって互いの内部が連通するように繋がって、略U字状のセル連結体40aを構成するようになっている。また、上記セル4aの両側に位置するセル4bの長手方向他方側が連通路4dによって互いの内部が連通するように繋がって、略U字状のセル連結体40bを構成するようになっている。そして、上記セル連結体40a及びセル連結体40bは櫛歯状に噛み合うように一体に連結されていて、隣り合うセル4a、4b間には、当該セル4a、4bの長手方向に沿って延びる線状スリット4cがそれぞれに形成されるようになっている。
【0030】
上記セル4bの両側に位置するセル連結体40a同士は、長手方向一方側において互いの内部を連通させる連通部材41で繋がり、同様に、セル4aの両側に位置するセル連結体40b同士は、長手方向他方側において互いに内部を連通させる連通部材41で繋がっている。
【0031】
そして、上記制御ボックス3から延びる1本の配管3a(図2及び図3に示す)が患者Yの足側端に位置するセル4aの長手方向一方側に接続され、この配管3aを介して全てのセル4aに空気が給排されるようになっている。また、上記制御ボックス3から延びる1本の配管3bが患者Yの足側端に位置するセル4bの長手方向他方側に接続され、この配管3bを介して全てのセル4bに空気が給排されるようになっている。すなわち、それぞれセル4a及びセル4bは、別々の配管系統により空気が給排されていて、各配管系統に対してそれぞれ空気給排量を調整できるようになっている。
【0032】
尚、セル4a、4bの各個数は上記に記載した個数に限らず、複数設けられていればよい。
【0033】
上記クッション材5は、ウレタン材からなり、上記セル集合体4の下方に位置する第1部材51と、該第1部材51の下部及び外周縁を囲う第2部材52とを備えていて、該第2部材52より上記第1部材51の方が柔らかい素材で形成されている。
【0034】
上記第1部材51の各セル4a、4bに対応する位置には、図4及び図5に示すように、上記各セル4a、4b下面に沿うように湾曲して当該各セル4a、4bを支持するセル支持部51aが形成されている。
【0035】
また、上記第1部材51の隣り合うセル支持部51a間には、上記線状スリット4cに対応する線状溝部51bが形成されている。該溝部51bは、上下に長細の凹状断面をなしていて、その深さは、上記線状ヒータ6の径の約20〜25倍(約50mm)となっている。そして、、上記溝部51bは、上記セル4a、4bの長手方向に沿って延びていて、その長手方向両端が開放している。
【0036】
一方、上記第2部材52は、図1に示すように、エアマット2長手方向一端部分が凹状に切り欠かれて上記制御ボックス3が配設されるようになっている。
【0037】
そして、上記第2部材52は、図4及び図6に示すように、上記セル集合体4の側端縁を囲う枠状部53を備えていて、該枠状部53と上記第1部材51の幅方向両側端縁との間には、若干隙間が設けられている。
【0038】
上記枠状部53には、上記セル集合体4の側端縁を覆うように窪んだ凹状部53aがエアマット2の長手方向に沿って連続して形成されている。
【0039】
上記線状ヒータ6は、図5に示すように、上記各溝部51b下方側に配置され、上記セル集合体4から下方に離間した位置で上記クッション材5に取り囲まれていて、その一端側は、上記溝部51bの長手方向一端の開放部分から上記枠状部53及び上記第1部材51の間を通って制御ボックス3まで延びている。
【0040】
上記線状ヒータ6の外周面は、難燃材からなる可撓性シート材6aで覆われていて、該可撓性シート材6aは、上記溝部51bに線状ヒータ6が配設された状態で上記溝部51bの壁面に接するようになっている。したがって、線状ヒータ6を覆う可撓性シート材6aにより、クッション材5の溝部51bに線状ヒータ6が強固に固定されるようになるので、クッション材5から線状ヒータ6が不意に外れてしまうのを防ぐことができる。
【0041】
また、上記線状ヒータ6周縁には、当該線状ヒータ6の温度を測定可能な温度センサ11が設けられている(図3参照)。
【0042】
上記エアノズル7は、樹脂により形成されていて、図1に示すように、エアマット2の上面側周縁に沿う略L字状をなし、上記エアマット2長手方向一端側(足元側)の幅方向に離間した位置に一対設けられ、その内部には、空気の通路となる連通孔7aが形成されている。上記エアノズル7の送風部分は、防水性カバー部材20の上側に露出配置されていて、エアマット2の上面に向かって、或いは、エアマット2に横たわる患者に向けて送風されるようになっている。
【0043】
上記制御ボックス3は、図3に示すように、上記セル集合体4の各セル4a、4bに接続され、各セル4a、4bに空気をそれぞれ給排するポンプユニット8と、上記エアノズル7に接続され、当該エアノズル7に空気を供給する送風ユニット9と、上記ポンプユニット8、送風ユニット9及び線状ヒータ6に流れる電流を制御する制御装置30とを備えている。
【0044】
上記操作リモコン10は、各種の設定等を入力し、且つ、表示するものであり、図3に示すように、室温を測定する室温測定センサ10aが内蔵されている。
【0045】
上記ポンプユニット8は、空気を継続して吐出可能な従来周知のダイヤフラム式の空気ポンプ81と、該空気ポンプ81に吐出管86を介して接続され、空気ポンプ81から吐出された空気をセル4a、4bに分配する分配弁84と、上記吐出管86内の圧力を検出する空気圧センサ83とを備えている。
【0046】
上記分配弁84には、セル4a、4bに連通する配管3a、3bが接続される独立した接続口が設けられ、且つ、図示しない制御モータにより位置が変更可能な弁体が内蔵されていて、上記制御装置30からの信号に基づいて弁体の位置を変更することにより、上記接続口のうち1つの接続口を開放するとともに他の接続口を閉塞するようになっている。すなわち、弁体の位置を変更して、例えば、セル4aに接続される配管3aの接続口を開放すると、他の接続口が閉塞されて、セル4aに接続される配管3aのみが吐出管86に連通するようになっている。また、セル4a内の空気を排出させる際には、弁体を移動させて図示しない排気口から排出させるようにしている。
【0047】
尚、上記分配弁84は、上記制御装置30からの信号に基づいて、2つの接続口を同時に開放したり、同時に閉塞したりすることもできるようになっている。
【0048】
さらに、分配弁84には、弁体の位置を検出する弁体位置検出センサ87が設けられている。この弁体位置検出センサ87は、上記制御装置30に接続されていて、図示しないが、弁体に一体化されたスリット付きの円盤と、円盤の表側から光を照射する発光素子と、発光素子から照射された光のうち、スリットを通過して円盤の裏側に達した光を検出する受光素子とを備えている。スリットを通過した光を受光素子で検出することで、弁体の位置を得ることができるようになっている。
【0049】
上記空気圧センサ83は、空気ポンプ81の吐出管86に設けられている。上記空気圧センサ83は、吐出管86内の圧力を随時検出して電気信号に変換し、上記制御装置30に信号を送るように構成されている。例えば、セル4a内の圧力を検出する場合、分配弁84の弁体を移動させ、セル4aに接続される配管3aと吐出管86とを連通させて上記セル4a内の圧力を検出するようになっている。
【0050】
尚、上記空気圧センサ83を配管3a、3bに設けて、セル4a、4b内の圧力を直接検出するようにしてもよい。
【0051】
上記送風ユニット9は、空気を継続して吐出可能な電動モータを備えた従来周知の送風器91を備えていて、該送風器91には、一対のエアノズル7に連通する配管3c、3dが接続されている。
【0052】
上記制御装置30は、図示しないが、中央演算処理装置(CPU)や、制御プログラムが格納されたメモリ等を備えている。上記制御装置30は、線状ヒータ6、温度センサ11、空気ポンプ81、分配弁84、空気圧センサ83、弁体位置検出センサ87及び送風器91に接続され、さらには、上記操作リモコン10の各スイッチ及び上記室温測定センサ10aにも接続されていて、図7に示すように、上記室温測定センサ10aの各測定値にそれぞれ対応する上記線状ヒータ6の温度設定値Tを格納する設定値格納部30aを備えている。
【0053】
そして、上記制御装置30は、上記操作リモコン10の各スイッチ、空気圧センサ83、弁体位置検出センサ87から入力される信号を処理し、上記空気ポンプ81、送風器91及び分配弁84を制御して、各セル4a、4bに給排する空気量とエアノズル7の送風量とを調節するようになっていて、上記エアノズル7から患者Yに向かって約200L/minの送風量で空気が吹き出されるようになっている。そして、エアノズル7の送風量は、操作リモコン10で所定の値に設定できるようになっている。
【0054】
尚、一般的なエアマットにおいて、各セル4a、4bに給排する空気やエアマット2の換気等に用いられる送風量は、数十リットル/minレベルであるが、ここでは、それを大きく超える風量で空気をエアマット2の上面に送風するので、患者Yやエアマット2の乾燥が早まるとともに、患者Yの快適感を高めることができる。
【0055】
また、上記制御装置30は、図7に示すように、上記温度センサ11による測定値が上記室温測定センサ10aの各測定値に対応する温度設定値Tとなるように、上記線状ヒータ6に流れる電流を制御して患者Y周辺の上昇温度を調節するようになっている。尚、上記温度設定値Tは、図7に示すように、強・中・弱の3段階の温度設定値があり、上記操作リモコン10で状況に応じて設定変更可能となっている。
【0056】
また、上記制御装置30は、セル4a、4bに対する空気の給排方法を静止モードと圧切替モードとに変更できるようになっている。上記制御装置30は、静止モードでは、セル4a、4bの内圧値が所定値で維持されるようにポンプユニット8を制御する一方、圧切替モードでは、上記ポンプユニット8を制御して、上記セル4a、4bの内圧値が所定値となるまで空気を供給し、その後、図4(b)に示すように、セル4bの内圧値を所定値で維持したまま、セル4aから空気を抜いて収縮させ、その状態を所定時間維持した後、図4(c)に示すように、セル4aの内圧値が所定値となるよう空気を供給してセル4aを膨張させ、セル4bから空気を抜いて当該セル4bを収縮させる動作を繰り返すようになっている。
【0057】
すなわち、上記制御装置30は、上記ポンプユニット8を制御して隣り合うセル4a、4bを交互に膨張・収縮させるようになっている。
【0058】
尚、上記静止モード及び圧切替モードは、患者Yの個々の状況に応じて操作リモコン10で手動により切替可能となっている。
【0059】
次に、エアマット装置1の具体的な制御動作について説明する。
【0060】
ここでまず、エアマット装置1に横たわる患者Y周辺を昇温させる場合について説明する。
【0061】
まず、操作者は、上記操作リモコン10で設定温度を入力する。例えば、操作リモコン10には、強・中・弱の三段階で温度設定ができるようになっていて、状況に応じて設定を変更する。
【0062】
次いで、制御装置30は、上記操作リモコン10から入力される信号を処理し、その後、入力された信号と室温測定センサ10aの測定値に基づいて、図7に示すように、上記温度センサ11による測定値が上記室温測定センサ10aの測定値に対応する温度設定値Tとなるように上記線状ヒータ6に電流を流す信号を出力し、当該線状ヒータ6を温度設定値Tとなるまで発熱させる。すると、線状ヒータ6に加温された溝部51b内の空気は、セル集合体4の各スリット4cを通り抜けてエアマット2表面側の隅々にまで行き渡る。したがって、クッション材5により横たわる患者Yの体圧分散を確実に行いながら、エアマット2表面全体を効率良く略均一に加温することができ、患者Yは良好な使用感を得ることができる。
【0063】
次に、エアマット装置1のセル4a、4bに対する空気の給排方法を圧切替モードとした場合について説明する。
【0064】
まず、操作者は、上記操作リモコン10で圧切替モード及び静止モードのうち、圧切替モードを設定する。
【0065】
すると、制御装置30は、上記操作リモコン10から入力される信号を処理し、その後入力された信号に基づいて上記空気ポンプ81及び分配弁84に信号を出力する。
【0066】
そして、上記空気ポンプ81は、上記制御装置30から入力された信号に基づいて、セル4b内の圧力を所定値で維持したまま、セル4aから空気を抜いて収縮させ、その状態を所定時間維持した後、セル4aの内圧値が所定値となるように空気を供給してセル4aを膨張させ、セル4bから空気を抜いてセル4bを収縮させる。その後、上記空気ポンプ81は、上記制御装置30から発せられる終了の信号を受け取るまで、上記セル4a、4bの膨張・収縮が繰り返されるように当該セル4a、4bに空気の給排を行う。
【0067】
次に、エアノズル7で患者Y或いはエアマット2の上面に向けて送風を行う場合について説明する。
【0068】
まず、操作者は、上記操作リモコン10で送風モードに設定する。
【0069】
すると、制御装置30は、上記操作リモコン10から入力される信号を処理し、その後入力された信号に基づいて上記送風器91に信号を出力する。
【0070】
そして、上記送風器91は、上記制御装置30から入力された信号に基づいて、約200L/minの送風量で上記エアノズル7からエアマット2に横たわる患者Yに向けて、或いは、患者Yが布団(図示せず)を被っている場合には、布団とエアマット2との間に送風を行う。これにより、患者Yの汗などの湿気が素早く気化するようになり、べとつき感を防止して、使用感を良好とすることができる。また、線状ヒータ6により昇温された患者Y周辺の空気を上記エアノズル7により効率良く患者Y周辺の隅々まで送り届けて、エアマット2上の温度差をなくすことができる。
【0071】
以上より、本発明の実施形態によれば、クッション材5が線状ヒータ6とセル集合体4との間を隔てているので、線状ヒータ6の熱が直接各セル4a、4bに伝わり難くなって、各セル4a、4b内の空気が必要以上に膨張し難くなり、各セル4a、4bの経年劣化を抑えて耐久性を高めることができる。また、線状ヒータ6がセル集合体4よりも下方に位置しているので、セル集合体4の隣り合うセル4a、4bを特許文献1のセル集合体4に比べて互いに接近させることができる。したがって、セル集合体4のなかでセル4a、4bに接触する患者Yの体の部分を増やすことができ、患者Yの体に圧力が集中する部分のセル4a、4bの空気量を調節することで確実に床ずれや痛みを回避させることができる。さらには、エアマット2上に患者Yが横たわると、体圧の高い部分において、クッション材5がセル集合体4の各セル4a、4b下部の形状に沿って変形することにより体圧を低下させるので、エアマット装置1の体圧分散性をさらに高めて使用感をよくすることができる。
【0072】
また、患者Y周辺の温度を室温に対応する温度にできるので、患者Yの使用感をさらによくすることができる。
【0073】
また、枠状部53によりクッション材5に対するセル集合体4の水平方向の移動が規制されるので、セル集合体4のクッション材5に対する相対位置がずれなくなり、セル集合体4に横たわる患者Yの体圧分散をクッション材5にて確実に行うことができる。さらに、エアマット2の外周縁が枠状部53で構成されるようになるので、患者Yがエアマット2周縁で端座位となったときに、エアマット2の外周縁がセル4a、4bで構成されている場合に比べて安定感が増す。
【0074】
また、セル集合体4の各セル4a、4bの長手方向両端部がクッション材5の凹状部53aに収容されるので、セル集合体4に対してクッション材5から離れる方向に力が加わっても、各セル4a、4bの長手方向両端部がクッション材5に引っ掛かるようになる。したがって、セル集合体4がクッション材5から外れ難くなり、セル集合体4をクッション材5に強固に固定することができる。
【0075】
また、上記凹状部53aが、上記各セル4a、4b長手方向両端部の湾曲部分上方を覆うので、エアマット2の外周縁寄り表面側の窪みがなくなる。したがって、エアマット2の見映えが良くなるとともに、患者Yの寝心地をさらによくすることができる。
【0076】
また、各セル4a、4bが膨張・収縮を繰り返すことにより、セル集合体4に横たわる患者Yの体全体の血管の圧迫を緩和して床ずれや痛みの発生を抑制できる。
《発明の実施形態2》
図8及び図9は、本発明の実施形態2に係るエアマット装置1を示す。この実施形態2では、クッション材5の第1部材51と昇温手段とが実施形態1と異なっているだけで、その他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0077】
図8に示すように、上記第1部材51は、略矩形板状をなしていて、特許文献1の如き線状溝部51bが形成されていない。
【0078】
上記昇温手段は、面状ヒータ60で構成され、該面状ヒータ60は、上記セル集合体4から下方に離間した位置で上記第1部材51と上記第2部材52とで取り囲まれ(挟まれ)ている。この面状ヒータ60は、カーボンヒータ層からなり、上記第1部材51と上記第2部材52との間で固定されるようになっている。そして、上記制御装置30が、上記面状ヒータ60に流れる電流を制御すると、当該面状ヒータ60の熱が上記クッション材5を伝達して患者Y周辺に到達し、患者Y周辺の温度が上昇するようになっている。
【0079】
尚、実施形態2に係るエアマット装置1の具体的な制御動作は、実施形態1と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0080】
以上より、本発明の実施形態2によれば、実施形態1と同様の効果が得られるとともに、実施形態1の如き第1部材51に線状溝部51bといった複雑な加工を施す必要がないので、製造コストを抑えたエアマット装置1とすることができる。
【0081】
尚、本実施形態1,2では、昇温手段として線状ヒータ6を用いているが、溝部51b内の空気を加温するのであればこれに限らず、例えば、クッション材5の溝部51bに配管を通し、当該配管に温水を流すような構造であってもよい。
【0082】
また、本実施形態1,2では、エアノズル7が、エアマット2上において患者Yの寝姿勢で足側に配設されているが、セル集合体4の上面側に送風されるのであれば、異なる場所に配設してもよい。また、エアノズル7からの送風が、エアマット2の上面に沿って流れるようになっていれば、エアマット2及び患者Yの間の隙間に空気が流れ易くなるので、好都合である。
【0083】
また、本実施形態1,2では、エアノズル7を2つ配設しているが、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0084】
また、本実施形態1,2のエアノズル7は、患者Yがエアマット2に横たわっていない場合に使用してもよく、例えば、エアノズル7の送風によって、防水性カバー部材20の湿気を取り除いて乾燥させ、患者Yが横たわったときに爽快感が増すようにすることもできる。
【0085】
また、本実施形態1,2のエアノズル7は、樹脂により形成されているが、例えば、先端側にゴムチューブなどを接続して、送風方向を自由に変更できるようにしてもよい。
【0086】
また、本実施形態1,2のエアノズル7の先端にエアマット2の大きさに相当するような空気袋を接続するとともに、上側に布団を被せて当該空気袋に空気を供給することにより、布団乾燥機となるような構成としてもよい。
【0087】
また、本実施形態1,2では、エアノズル7の送風が室温と同じであるが、加熱手段を設けて、当該加熱手段により昇温した状態で送風してもよい。
【0088】
また、本実施形態1,2では、制御ボックス3がエアマット2内に配設されているが、例えばエアマット2と別体にしてもよい。
【0089】
また、本実施形態1,2では、クッション材5の材質をウレタン材としているが、患者Yの体圧分散が可能であるならばウレタン材以外の材質を使用してもよい。また、クッション材5の第1部材51及び第2部材52は異なる硬さであってもよいし、同じ硬さであってもよい。
【0090】
また、本実施形態1,2では、操作リモコン10により、エアノズル7の送風量と、線状ヒータ6(又は面状ヒータ60)の温度とをそれぞれ独立して制御できるようになっているが、エアノズル7の送風量と線状ヒータ6(又は、面状ヒータ60)の温度、或いは、室温と関連付けて制御するようにしてもよい。例えば、線状ヒータ6の温度が高い場合に、エアノズル7の送風量を自動で多くする一方、線状ヒータ6の温度が低い場合に、エアノズル7の送風量を自動で少なくするというような制御を制御装置30で行ってもよい。また、エアノズル7の送風の時間やタイミングと、上記線状ヒータ6(又は面状ヒータ60)の温度、或いは、室温とを関連付けて制御するようにしてもよい。
【0091】
また、本実施形態1,2では、エアノズル7の送風と、各セル4a、4bに対する空気の給排方法とをそれぞれ独立して制御するようになっているが、エアノズル7の送風と、各セル4a、4bに対する空気の給排方法とを関連付けて制御するようにしてもよい。例えば、エアノズル7から送風する際に、制御装置30が、セル4a、4bに対する空気の給排方法を圧切替モードに変更することにより、患者Yとエアマット2との間の密着性を低減させ、患者Yとエアマット2との間に空気が入り込み易くなるようにして患者Yの快適性を高めるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本発明に係るマット装置は、例えば、医療施設や介護施設等で使用できるものである。
【符号の説明】
【0093】
1 エアマット装置
4 セル集合体
4a、4b セル
4c スリット
5 クッション材
6 線状ヒータ(昇温手段)
6a 保護部材
7 エアノズル(空気吹出手段)
8 ポンプユニット
9 送風ユニット
10a 室温測定センサ
30 制御装置
51a セル支持部
51b 溝部
53 枠状部
53a 凹状部
60 面状ヒータ(昇温手段)
Y 患者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立した複数の筒状可撓性セルが患者の寝姿勢時の身長方向に並設されてなるセル集合体と、
上記各セルに接続され、該各セルに空気をそれぞれ給排するポンプユニットと、
上記セル集合体に横たわる患者周辺の温度を上昇させる昇温手段とを備え、
上記ポンプユニット及び昇温手段に接続され、該ポンプユニットを制御して上記各セルに給排する空気量を調節するとともに、上記昇温手段を制御して患者周辺の上昇温度を調節する制御装置とを備えたエアマット装置であって、
上記セル集合体は、クッション材に乗載され、
上記昇温手段は、上記セル集合体から下方に離間した位置で上記クッション材に取り囲まれていることを特徴とするエアマット装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアマット装置であって、
上記セル集合体の隣り合うセル間には、当該セルの長手方向に沿って延びる線状スリットが形成され、
上記クッション材の上記各セルに対応する位置には、当該各セルを支持するセル支持部が形成されているとともに、隣り合うセル支持部間には、線状溝部が上記線状スリットに対応して形成され、
上記昇温手段は、線状をなし、上記溝部に配設されていることを特徴とするエアマット装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアマット装置であって、
上記昇温手段は、可撓性シート材で覆われ、該シート材は上記溝部の壁面と接していることを特徴とするエアマット装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のエアマット装置であって、
上記セル集合体の上面側に空気を吹き出す空気吹出手段と、
該空気吹出手段に接続され、該空気吹出手段に空気を供給する送風ユニットとを備え、
上記制御装置は、上記送風ユニットに接続され、該送風ユニットを制御して上記空気吹出手段から吹き出す空気量を調節することを特徴とするエアマット装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のエアマット装置であって、
上記制御装置が接続された室温測定センサを備え、
上記制御装置は、上記室温測定センサの各測定値に対応する温度設定値となるように上記昇温手段を制御することを特徴とするエアマット装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載のエアマット装置であって、
上記クッション材は、上記セル集合体の側端縁を囲う枠状部を備えていることを特徴とするエアマット装置。
【請求項7】
請求項6に記載のエアマット装置であって、
上記枠状部には、上記セル集合体の側端縁を覆うように窪む凹状部が設けられていることを特徴とするエアマット装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載のエアマット装置であって、
上記制御装置は、上記ポンプユニットを制御して隣り合うセルを交互に膨張・収縮させることを特徴とするエアマット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−95952(P2012−95952A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248477(P2010−248477)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000138244)株式会社モルテン (105)
【Fターム(参考)】