説明

エアリフト装置

【課題】揚水管の途中において気泡の拡大によるエアと水の分離を防止して、揚水能力を向上することができるエアリフト装置を提供する。
【解決手段】下部に液吸い込み口2を有し、上部に液排出口3を有する揚水管1にエア供給装置6を設けてなるエアリフト装置において、前記揚水管1の途中に管外液である水Wと連通する連通孔5を設けたエアリフト装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部に液吸い込み口を有し、上部に液排出口を有する揚水管にエア供給装置を設けてなるエアリフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアリフト装置は、揚水管下部の液吸い込み口を水中に入れ、揚水管上部の液排出口を水面上に出し、送気管を通してエアポンプで圧縮エアを揚水管の下部に送るようにしている。揚水管の下部に圧縮エアを吹き込むと、エアの混ざった気泡混合水と周囲の水との間に比重差を生じ、当該箇所の浸水深さに相当する水圧により比重の小さい気泡混合水が上方へ押出されて揚水される。
【0003】
従来のエアリフト装置は、揚水管が単純な筒状をなしているために、揚水管内を気泡混合水が上昇するに従って気泡がくっ付いて大きくなり、液排出口で気泡が破裂するという問題がある。この気泡の破裂を防止するために、揚水管上部に多数の孔を有するプレートを設けて該プレートを通過する気泡を細断するようにしたエアリフト装置(例えば、特許文献1参照)や、揚水管上部内面を凹凸に形成して上昇する水の乱流によって気泡を細断するようにしたエアリフト装置(例えば、特許文献2参照)は知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−4700号公報
【特許文献2】特開平8−49699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1又は特許文献2に記載のエアリフト装置は、気泡の拡大による液排出口での気泡の破裂を防止することはできるが、揚水管の途中におけるエアと水の分離を防止することができないために、揚水能力が減少するという課題がある。
また、エアポンプで圧縮エアを揚水管の下部に送る構成では、エア供給箇所の水深が深くなるに従ってエアポンプの出力を大きくする必要があると共に、送気管が長くなり送気ロスが大きくなるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、下部に液吸い込み口を有し、上部に液排出口を有する揚水管にエア供給装置を設けてなるエアリフト装置において、前記揚水管の中間に管外液と連通する連通孔を設けたエアリフト装置を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、請求項1に記載のエアリフト装置において、前記揚水管の液中の部分に、下側に大径部を有すると共に上側に小径部を有する筒状体を設けて、筒状体の連設部に前記連通孔を設けてなるエアリフト装置を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、請求項1又は2に記載のエアリフト装置において、前記エア供給装置が、水等の液体を電気分解する電気分解装置からなるエアリフト装置を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、請求項3に記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置の電極が電気抵抗率0.5μΩ・m(20℃)以上の金属又は合金からなるエアリフト装置を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、請求項3に記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置の電極が炭素電極からなるエアリフト装置を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、請求項3乃至5のいずれかに記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置が、電極に交流電圧を印加するようにしたエアリフト装置を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、請求項6に記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置が、交流電源と並列にコンデンサーを備えたエアリフト装置を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、請求項3乃至7のいずれかに記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置に、作用電極と基準電極を交互に設けてなるエアリフト装置を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、請求項3乃至8のいずれかに記載のエアリフト装置において、前記液排出口に水素等回収装置を設けたエアリフト装置を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載のエアリフト装置において、前記液排出口に水力発電装置を設けたエアリフト装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るエアリフト装置によれば、下部に液吸い込み口を有し、上部に液排出口を有する揚水管にエア供給装置を設けてなるエアリフト装置において、前記揚水管の中間に管外液と連通する連通孔を設けた構成を有することにより、管外液の水深に応じた液圧を揚水管内を上昇する気泡混合液体に連通孔を通して加えることができ、揚水管内を上昇する気泡混合液体の圧力が急激に低下しないから、気泡が拡大・結合してエアと液体が途中で分離するのを阻止し、気液混合状態を維持して揚水効率を向上させることができる効果がある。
【0017】
また、本発明は、請求項1に記載のエアリフト装置において、前記揚水管の液中の部分に、下側に大径部を有すると共に上側に小径部を有する筒状体を設けて、揚水管と筒状体の連設部に前記連通孔を設けてなる構成を有することにより、揚水管と筒状体の連設部の上側が下側より大径にしてあるから、上昇する気泡混合液体が連設部において揚水管又は筒状体から外れないと共に、連通孔を通して加えられる管外液の液圧によって気泡混合液体が連通孔から管外に漏れるのを阻止して、気泡混合液体を効率良く揚水することができる効果がある。
【0018】
また、本発明は、請求項1又は2に記載のエアリフト装置において、前記エア供給装置が、水等の液体を電気分解する電気分解装置からなる構成を有することにより、揚水管の下部で液体を電気分解してエアを発生させて直接エアを供給することができるから、水深に関係なく効率良くエアを供給することができると共に、結果として液体から電気分解気体を取り出すことができる効果がある。
【0019】
また、本発明は、請求項3に記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置の電極が電気抵抗率0.5μΩ・m(20℃)以上の金属又は合金からなる構成を有することにより、発熱による電力の浪費を抑制して、供給電力を電気分解に効率的に使用することができ、少ない電力量で効率よく揚水することができる効果がある。
【0020】
また、本発明は、請求項3に記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置の電極が炭素電極からなる構成を有することにより、電気分解によって微細な気泡が大量に発生して、液体に気泡が効率良く混ざり合うと共に、エアが液体に溶け込みやすいから、気泡混合液体の比重が軽くなり、より大きな上昇力を得ることができる効果がある。
【0021】
また、本発明は、請求項3乃至5のいずれかに記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置が、電極に交流電圧を印加するようにした構成を有することにより、電極の極が交互に変わることによって発生するエアの量を多くすることができる効果がある。
【0022】
また、本発明は、請求項6に記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置が、交流電源と並列にコンデンサーを備えた構成により、電圧・周波数・電流などを適正に調整して小規模の交流電源でも発生するエアの量を多くすることができる効果がある。
【0023】
また、本発明は、請求項3乃至7のいずれかに記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置に、作用電極と基準電極を交互に設けてなる構成を有することにより、電極の表面積を大きくすることができ、発生するエアの量を多くすることができる効果がある。
【0024】
また、本発明は、請求項3乃至8のいずれかに記載のエアリフト装置において、前記液排出口に水素等回収装置を設けた構成を有することにより、液体を揚水したエアから電気分解して得られた水素等を回収することができ、回収した水素等を燃料電池等に使用することによりエネルギーを有効に活用することができる効果がある。
【0025】
また、本発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載のエアリフト装置において、前記液排出口に水力発電装置を設けた構成を有することにより、揚水した液体によって発電して電力を得ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態を図示する実施例に基づいて説明する。
本発明に係るエアリフト装置は、下部に液吸い込み口2を有し、上部に液排出口3を有する揚水管1にエア供給装置6を設けてなるエアリフト装置において、前記揚水管1の途中に管外液である水Wと連通する連通孔5を設けてある。
【実施例1】
【0027】
図1に示す実施例において、揚水管1の水中の部分には、下側に大径部4aを有すると共に上側に小径部4bを有する筒状体4を設けてあり、複数の筒状体4を連設して筒状体4の連設部に連通孔5を設けて、揚水管1の途中において管外の水Wの水深に応じた水圧を揚水管1内に加えることができるように構成してある。
筒状体4は複数に限らず、1個でも良いと共に、図の最上の筒状体4のように上側小径部4bと揚水管との間に連通孔を設けてなくても良い。また、揚水管1及び筒状体4の断面は円形に限らず、三角形、その他の多角形等、必要に応じて種々の形状にすることができる。
【0028】
また、揚水管1の水面上の部分は円筒状に形成してあると共に、先端部には液排出口3を設けてあり、横方向に水Wを排出することができるように構成してある。なお、液排出口3は、図2に示すように、上方に開口した形状に構成することもできる。
【0029】
エア供給装置6は、液体である水Wを電気分解する電気分解装置であり、板状の作用電極7と基準電極8を交互に設けてあり、それぞれの電極7,8間に電圧を印加して水Wを電気分解して水素と酸素を発生させ、水素と酸素からなるエアEを液吸い込み口2に供給することができるように構成してある。
【0030】
電極7,8は、炭素電極をそれぞれ並列に接続してあり、交流電源9により作用電極7に交流電圧を印加することができるように構成してある。電極7,8は、耐久性がよく、微細な気泡を発生するから、実施例のように炭素棒等の炭素電極からなることが好ましいが、銅・鉄等の金属やステンレス鋼等の合金により構成することもできる。
また、電極7,8は、発熱による電力の浪費を抑制して、供給電力を電気分解に効率的に使用することができるように、20℃において電気抵抗率が0.5μΩ・m以上の金属又は合金により構成することも可能である。
【0031】
交流電源9は、商用交流電源を使用することができ、サイクロコンバータにより周波数を変えて使用することもできる。また、交流電源9には、インバータにより直流電圧を交流電圧に変換したものも含まれる。
また、電気分解装置は、交流電源9と並列にコンデンサーを備えて、電極7,8に供給する電力の電圧・周波数・電流などを適正に調整することができるように構成することも可能である。
【0032】
図示の実施例の場合、作用電極7に交流電圧を印加することにより発生するエアの量を多くすることができる。例えば、発明者の行った実験では、5cm×15cmの2枚の電極を向かい合わせて一般家庭用の100V交流電圧を印加すると、8時間で3リットルの水を電気分解することができた。水の分子量は18であるから3リットルの水は3000/18=167molであり、これを全て電気分解すると167molの水素と83molの酸素を得られるから、1気圧のもとで(167+83)×22.4=5,600リットルのエアを供給することができる。
【0033】
このように、実施例の場合、揚水管の下部で液体を電気分解してエアを発生させて直接エアを供給することにより、水深に関係なく効率良くエアを供給することができる。尚、このような観点から、エア供給装置6は電気分解装置からなることが好ましいが、本発明装置において送気管を通してエアポンプによってエアを供給するようにすることも勿論可能である。
【0034】
実施例1に記載のエアリフト装置を使用して、海水の揚水実験を行った。液吸い込み口2を水深5mの所に設置し、液排出口3を海水面上2.5mの高さに設けて実験を行った。電気分解装置からなるエア供給装置6によって揚水管1の下部に微細な気泡のエアEを供給すると、気泡混合水Weが揚水管1中を上昇し、液排出口3から海水を排出することができ、水深に対して略1/2の高さまで揚水することができた。
【0035】
次に、本発明に係るエアリフト装置の作用について説明する。
エア供給装置6によって揚水管1の下部に微細な気泡のエアEを供給することにより、エアEが溶け込むと共にエアEの混ざった気泡混合水Weは周囲の水Wより比重が軽くなり、水深に相当する水圧が働いて気泡混合水Weは揚水管1内を上昇し、液吸い込み口2から管外の水Wが揚水管1内に吸い込まれる。
【0036】
気泡混合水Weが揚水管1内を上昇したときに、揚水管1の中間に設けたそれぞれの連通孔5において、管外の水Wの水圧が揚水管1内に加わることにより、気泡混合水Weの水圧が水Wの水深に応じた水圧に維持され、気泡が拡大・結合してエアと水が途中で分離するのを阻止することができる。これにより、気液混合状態を維持して気泡混合水Weを効率良く揚水することができる。
【実施例2】
【0037】
図2に示す実施例において、10は水力発電装置である。水力発電装置10は、液排出口3から噴出する水を蓄える貯水槽11と、貯水槽11の下方に設けたタービン12とからなり、貯水槽11の水を落下させてタービン12を回転させることにより発電することができるように構成してある。また、液排出口3を水面近くに設け、液排出口3から上方に噴出する水によってタービン12を直接回転させて発電するように構成することも可能である。
【実施例3】
【0038】
図3に示す実施例において、13は水素等回収装置であり、エア分離タンク14と排水槽16と水素等回収タンク15とからなる。エア分離タンク14は、揚水管1の液排出口3に気密に接続してあると共に、エア分離タンク14の下部に設けた排水管17を排水槽16に貯めた水の中に導入してあり、エア分離タンク14内を気密にして水Wと水素を含むエアEとを分離することができるように構成してある。水素等回収タンク15は、分離タンク14内の水素を含むエアEを回収することができるようにしてあり、回収したエアEを液化することにより水素と酸素に分離することができ、液排出口3から噴出する気泡混合水Weの中に含まれる電気分解によって得られた水素等を回収することができる。
【0039】
また、エア分離タンク14内は、負圧になるように調整することにより、図3に示すように、排水管17内の水面が上昇し、エア分離タンク14内を確実に気密に保つことができる。
なお、水素等回収装置13は図示の実施例に限定されるものではなく、気泡混合水Weの中から水素等を回収できるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明エアリフト装置の実施例1を示す一部縦断正面図
【図2】実施例2の要部を示す一部縦断正面図
【図3】実施例3の要部を示す一部縦断正面図
【符号の説明】
【0041】
1 揚水管
2 液吸い込み口
3 液排出口
4 筒状体
4a 大径部
4b 小径部
5 連通孔
6 エア供給装置
7 作用電極
8 基準電極
9 交流電源
10 水力発電装置
11 貯水槽
12 タービン
13 水素等回収装置
14 エア分離タンク
15 水素等回収タンク
16 排水槽
17 排水管
E エア
W 水
We 気泡混合水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に液吸い込み口を有し、上部に液排出口を有する揚水管にエア供給装置を設けてなるエアリフト装置において、前記揚水管の中間に管外液と連通する連通孔を設けたエアリフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアリフト装置において、前記揚水管の液中の部分に、下側に大径部を有すると共に上側に小径部を有する筒状体を設けて、筒状体の連設部に前記連通孔を設けてなるエアリフト装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアリフト装置において、前記エア供給装置が、水等の液体を電気分解する電気分解装置からなるエアリフト装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置の電極が電気抵抗率0.5μΩ・m(20℃)以上の金属又は合金からなるエアリフト装置。
【請求項5】
請求項3に記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置の電極が炭素電極からなるエアリフト装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置が、電極に交流電圧を印加するようにしたエアリフト装置。
【請求項7】
請求項6に記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置が、交流電源と並列にコンデンサーを備えたエアリフト装置。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれかに記載のエアリフト装置において、前記電気分解装置に、作用電極と基準電極を交互に設けてなるエアリフト装置。
【請求項9】
請求項3乃至8のいずれかに記載のエアリフト装置において、前記液排出口に水素等回収装置を設けたエアリフト装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のエアリフト装置において、前記液排出口に水力発電装置を設けたエアリフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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