説明

エアロゾルの調製のための方法及び組成物

本発明はエアロゾルを調製する方法に関する。より具体的には、本発明は、凝集体形成の量が大幅に減少した、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法を提供する。本発明は、本発明の方法によって調製されるエアロゾル及び本発明の方法に使用される組成物を更に提供する。本発明は、かかる組成物を調製する方法、かかる組成物を含む容器、キット及びエアロゾル送達システム、並びにそれらの使用に更に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアロゾルを調製する方法に関する。より具体的には、本発明は、凝集体形成の量が大幅に減少した、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法を提供する。本発明は、本発明の方法によって調製されるエアロゾル及び本発明の方法に使用される組成物を更に提供する。
【0002】
本発明は、かかる組成物を調製する方法、かかる組成物を含む容器、キット及びエアロゾル送達システム、並びにそれらの使用に更に関する。
【0003】
本発明の他の態様、実施の形態、利点及び用途は、本明細書中の更なる記載から明らかとなる。
【背景技術】
【0004】
免疫グロブリン単一可変ドメイン(本明細書中で更に説明される)は、抗原認識に更なるドメインとの相互作用(例えばVH/VL相互作用の形態で)を必要としない、単一の可変ドメインによる抗原結合部位の形を特徴とする。薬物開発の候補となり得る、種々の広範な標的に対する免疫グロブリン単一可変ドメインが記載されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16)。IL−23のその受容体との相互作用を遮断する、IL−23のp19サブユニットに対する免疫グロブリン単一可変ドメインが、例えば特許文献16に記載されている。hRSVを中和し得る、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(hRSV)のFタンパク質に対する免疫グロブリン単一可変ドメインが、例えば特許文献17に記載されている。
【0005】
前臨床開発又は臨床開発における大抵の免疫グロブリン単一可変ドメインは非経口的に(すなわち静脈内投与又は皮下投与によって)投与されており、これらの投与方法に安定な配合物が記載されている(例えば、特許文献18(2009年9月3日付けで出願された)に基づく特許文献19(2010年9月3日付けで出願された)及びAblynx N.V.によって2009年12月18日付けで出願された特許文献20に基づく特許文献21(2010年9月3日付けで出願された)を参照されたい)。しかしながら、これらの送達方法は患者の承諾がかなり少なく、患者自身が容易に行うことのできる代替的なより簡便な(無針の)投与方法が必要とされている。
【0006】
1つの可能な代替方法は、肺を介した免疫グロブリン単一可変ドメインの送達である。肺薬物送達は、吸入によって、経口的に及び/又は経鼻的に達成することができる。肺送達用の医薬デバイスの例としては、定量吸入器(MDI)、ドライパウダー吸入器(DPI)及びネブライザーが挙げられる。ネブライザーは従来、エアジェット(空気圧)デバイス及び超音波デバイスという2つの主なタイプに分類されてきた。近年、3つ目のタイプである振動メッシュネブライザーが商品化されている(非特許文献1)。
【0007】
ネブライザーは、ほとんどのタンパク質が水性濃縮物として精製され、貯蔵されるため、肺送達用のタンパク質ベースの医薬品の開発にとって当然の第1の選択肢である。しかしながら、棚上での水溶液の安定性を霧化時の安定性に置き換えることはできず、タンパク質は乾燥効果、剪断効果及び表面効果を含む幾つかの機構によって変性する可能性がある(非特許文献2、非特許文献3)。例えば、霧化によって乳酸脱水素酵素(LDH)の酵素活性の喪失が誘導され、主に二量体形成からなる凝集及び組み換えヒト顆粒球刺激因子(G−CSF)の分解が引き起こされることが示されている(非特許文献4)。
【0008】
特許文献22は、免疫グロブリン単一可変(variable)ドメインの肺送達のための方法及び組成物を記載している。特許文献23には、ドメイン抗体を直接肺送達する方法及び直接肺送達に好適な特定のドメイン抗体組成物が記載されている。より具体的には、ドメイン抗体ポリペプチドと、2%(w/v)〜約10%(w/v)のPEG1000及び1.2%(w/v)のスクロースを含有する緩衝液とを含む組成物が記載されている。これらのドメイン抗体組成物は、直接局所肺送達による被験体への投与に正確なサイズを有する十分な小滴の生成を可能にする粘度を有するようである。上記の文献のいずれも、免疫グロブリン単一可変ドメインの肺送達時の凝集体形成の低減及び/又は安定性の改善については記載又は論考していない。肺経路による無傷の機能的な免疫グロブリン単一可変ドメインの送達のための更なる方法及び組成物が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第04/062551号
【特許文献2】国際公開第05/044858号
【特許文献3】国際公開第06/040153号
【特許文献4】国際公開第06/122825号
【特許文献5】国際公開第07/104529号
【特許文献6】国際公開第08/020079号
【特許文献7】国際公開第08/074839号
【特許文献8】国際公開第08/071447号
【特許文献9】国際公開第08/074840号
【特許文献10】国際公開第08/074867号
【特許文献11】国際公開第08/077945号
【特許文献12】国際公開第08/101985号
【特許文献13】国際公開第08/142164号
【特許文献14】国際公開第09/068625号
【特許文献15】国際公開第08/142165号
【特許文献16】国際公開第09/068627号
【特許文献17】国際公開第09/147248号
【特許文献18】米国仮出願第61/275,816号
【特許文献19】PCT出願第PCT/EP2010/062972号
【特許文献20】米国仮出願第61/284,502号
【特許文献21】PCT出願第PCT/EP2010/062975号
【特許文献22】国際公開第04/041867号
【特許文献23】国際公開第09/074634号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Newman and Gee-Turner, 2005, J. Appl. Ther. Res. 5: 29-33
【非特許文献2】Charm and Wong, 1970, Biotechnol. Bioeng 12: 1103-1109
【非特許文献3】Andrews, 1991, Biochem. Soc. Trans, 272S 19
【非特許文献4】Niven and Brain, 1994, Int. J. Pharm., 104: 73-85
【発明の概要】
【0011】
本発明は、凝集が低レベルから検出不能なレベルであり、かつ/又は免疫グロブリン単一可変ドメインの生物活性及び/若しくは効力の大幅な喪失のない、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾル(「本発明のエアロゾル」とも称される;本明細書中で更に定義される)を調製する方法(「本発明の方法("method of the invention" or "methods of theinvention")」とも称される)を提供する。本発明の方法は、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド(「本発明のポリペプチド("polypeptide of the invention" or "polypeptides ofthe invention")」とも称される;本明細書中で更に定義される)とを含む組成物(「本発明の組成物("composition of the invention" or "compositions ofthe invention")」とも称される;本明細書中で更に定義される)を噴霧化する工程を含む。本発明において、噴霧化される組成物(「本発明の組成物」)における或る特定の要素の存在及び/又は選択されたエアロゾル送達システムの使用が、噴霧化材料における凝集体形成の量、結果として噴霧化材料中に存在する本発明のポリペプチドの生物活性及び/又は効力の喪失を大幅に(かつ予想外に)減少させることが実証された。凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下に減少し得ることが示された。
【0012】
一態様では、本発明の組成物における洗剤の存在が、噴霧化材料における凝集体形成の量を大幅に減少させた。したがって、本発明は、凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0013】
特定の態様では、本発明の組成物における洗剤の存在が、本発明のポリペプチドが本発明の組成物中に20mg/ml未満の濃度、例えば5mg/ml、10mg/ml又は15mg/ml等の濃度で存在する場合に、噴霧化材料における凝集体形成の量を大幅に減少させた。したがって、本発明は、凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、20mg/ml未満の濃度、例えば5mg/ml、10mg/ml又は15mg/ml等の濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0014】
好ましくは、界面活性剤は0.001%(v:v)〜0.1%(v:v)、又は0.01%(v:v)〜0.1%(v:v)、例えば約0.001%(v:v)、0.005%(v:v)、0.01%(v:v)、0.02%(v:v)、0.05%(v:v)、0.08%(v:v)又は0.1%(v:v)、好ましくは約0.04%(v:v)〜約0.08%(v:v)、特に0.04%の濃度で組成物中に存在する。好ましい態様では、界面活性剤は、ポリソルベート(例えばTween 20及びTween 80等)及びポロキサマー(例えばPluronic(商標)等)等の非イオン性洗剤から選択される。別の態様では、ポリエチレングリコール(PEG)を界面活性剤様化合物として添加することができる。更に別の態様では、組成物はPEG以外の上記に記載のような界面活性剤を含む。特に、組成物は1.2%(w/v)のスクロースを含有する50mMリン酸緩衝液中に約2%〜約10%のPEG 1000を含まない。特にこのように低い界面活性剤濃度での凝集体形成の減少は予想外であった。
【0015】
本発明の組成物における20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等での本発明のポリペプチドの存在も、噴霧化材料における凝集体形成の量を大幅に減少させた。したがって、別の態様では、本発明は、凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で本発明の組成物中に存在する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0016】
特定の態様では、本発明の組成物における20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等での本発明のポリペプチドの存在が、界面活性剤の非存在下での噴霧化材料における凝集体形成の量を大幅に減少させた。したがって、更に別の態様では、本発明は、凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物が界面活性剤を含まない、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0017】
好ましい態様では、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドは、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/ml以上、70mg/ml以上、80mg/ml又はそれ以上の濃度で組成物中に存在する。最も好ましい態様では、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドは、50mg/mLの濃度で組成物中に存在する。より高濃度、例えば20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度での凝集体形成の減少(例えば、濃度と凝集体形成との間の逆相関)は、予想外であった。
【0018】
本発明の組成物を噴霧化するための特定のエアロゾル送達システム、すなわち振動メッシュネブライザー又は振動膜ネブライザーの使用も、噴霧化材料における凝集体形成の量を大幅に減少させた。したがって、更に別の態様では、本発明は、凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。振動メッシュネブライザー又は振動膜ネブライザーを用いた凝集体形成の減少は予想外であった。
【0019】
本発明の方法は好ましくは、1μm〜10μm、好ましくは1μm〜7μm、最も好ましくは1μm〜5μm、例えばおよそ3μm、3.5μm又は4μmの体積メジアン径を有するエアロゾルを生成することが可能である。
【0020】
本発明は、本発明の方法によって調製されるエアロゾル(「本発明のエアロゾル」)にも関する。エアロゾルは好ましくは、1μm〜10μm、好ましくは1μm〜7μm、最も好ましくは1μm〜5μm、例えばおよそ3μm、3.5μm又は4μmの体積メジアン径を有する。したがって、一態様では、本発明は、噴霧化材料における凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化することによって得ることができる液滴を含むエアロゾルであって、該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む、液滴を含むエアロゾルに関する。
【0021】
特定の態様では、本発明は、噴霧化材料における凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、水性担体と、20mg/ml未満の濃度、例えば5mg/ml、10mg/ml又は15mg/mlの濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化することによって得ることができる液滴を含むエアロゾルであって、該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む、液滴を含むエアロゾルに関する。
【0022】
好ましくは、界面活性剤は0.001%(v:v)〜0.1%(v:v)、又は0.01%(v:v)〜0.1%(v:v)、例えば約0.001%(v:v)、0.005%(v:v)、0.01%(v:v)、0.02%(v:v)、0.05%(v:v)、0.08%(v:v)又は0.1%(v:v)、好ましくは約0.04%(v:v)〜約0.08%(v:v)、特に0.04%の濃度で組成物中に存在する。好ましい態様では、界面活性剤は、ポリソルベート(例えばTween 20及びTween 80等)及びポロキサマー等の非イオン性洗剤から選択される。別の態様では、PEGを界面活性剤様化合物として添加することができる。別の態様では、界面活性剤はPEGではない。特に、組成物は1.2%(w/v)のスクロースを含有する50mMリン酸緩衝液中に約2%〜約10%のPEG 1000を含まない。
【0023】
別の態様では、本発明は、噴霧化材料における凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、水性担体と、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化することによって得ることができる液滴を含むエアロゾルであって、該1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で組成物中に存在する、液滴を含むエアロゾルにも関する。
【0024】
更に別の態様では、本発明は、噴霧化材料における凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、水性担体と、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化することによって得ることができる液滴を含むエアロゾルであって、該1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で組成物中に存在し、該組成物が界面活性剤を含まない、液滴を含むエアロゾルに関する。
【0025】
好ましい態様では、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドは、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/ml以上、70mg/ml以上、80mg/ml又はそれ以上の濃度で組成物中に存在する。最も好ましい態様では、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドは、50mg/mlの濃度で組成物中に存在する。
【0026】
更に別の態様では、本発明は、凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化することによって得ることができる液滴を含むエアロゾルであって、該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、液滴を含むエアロゾルに関する。
【0027】
本発明は、本発明の方法における使用に好適な、かつ/又は本発明のエアロゾルの調製に好適な組成物(「本発明の組成物」)にも関する。したがって、一態様では、本発明は、凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適な組成物であって、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含み、0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適な組成物に関する。
【0028】
特定の態様では、本発明は、凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適な組成物であって、水性担体と、20mg/ml未満の濃度、例えば5mg/ml、10mg/ml又は15mg/mlの濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含み、0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適な組成物に関する。
【0029】
好ましくは、界面活性剤は0.001%(v:v)〜0.1%(v:v)、又は0.01%(v:v)〜0.1%(v:v)、例えば約0.001%(v:v)、0.005%(v:v)、0.01%(v:v)、0.02%(v:v)、0.05%(v:v)、0.08%(v:v)又は0.1%(v:v)、好ましくは約0.04%(v:v)〜約0.08%(v:v)、特に0.04%の濃度で組成物中に存在する。好ましい態様では、界面活性剤は、ポリソルベート(例えばTween 20及びTween 80等)及びポロキサマー等の非イオン性洗剤から選択される。別の態様では、PEGを界面活性剤様化合物として添加することができる。更に別の態様では、界面活性剤はPEGではない。特に、組成物は1.2%(w/v)のスクロースを含有する50mMリン酸緩衝液中に約2%〜約10%のPEG 1000を含まない。
【0030】
別の態様では、本発明は、凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適な組成物であって、水性担体と、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含み、該1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で組成物中に存在する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適な組成物に関する。
【0031】
更に別の態様では、本発明は、凝集体形成の量が7%以下、好ましくは6%以下、5%以下、例えば4%以下、3%以下、2%以下又は更には1%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適な組成物であって、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で組成物中に存在し、該組成物が界面活性剤を含まない、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適な組成物に関する。
【0032】
好ましい態様では、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドは、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/ml以上、70mg/ml以上、80mg/ml又はそれ以上の濃度で組成物中に存在する。最も好ましい態様では、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドは、50mg/mlの濃度で組成物中に存在する。
【0033】
ポリペプチド(「本発明のポリペプチド」とも称される)は、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメイン(本明細書中で定義される)を含むか、又は本質的にそれからなる。一態様では、本発明のポリペプチドは、1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又は本質的にそれからなる。別の態様では、本発明のポリペプチドは、2つ以上、例えば2つ又は3つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又は本質的にそれらからなる。別の態様では、本発明のポリペプチドは、hRSV又はIL−23に特異的に結合する。別の態様では、本発明のポリペプチドは配列番号1、配列番号2及び配列番号3のうちの1つから選択される。
【0034】
本発明は、本発明の組成物を調製する方法にも関する。該方法は、ポリペプチドを濃縮し、それを選択された緩衝液と交換する工程を少なくとも含む。一態様では、本発明の組成物を調製する方法は、界面活性剤を0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で添加する工程を更に含む。
【0035】
特定の態様では、本発明の組成物を調製する方法は、ポリペプチドを20mg/ml未満の濃度、例えば5mg/ml、10mg/ml又は15mg/mlの濃度等に濃縮する工程を含み、界面活性剤を0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で添加する工程を更に含む。
【0036】
好ましくは、界面活性剤は0.001%(v:v)〜0.1%(v:v)、又は0.01%(v:v)〜0.1%(v:v)、例えば約0.001%(v:v)、0.005%(v:v)、0.01%(v:v)、0.02%(v:v)、0.04%(v:v)、0.05%(v:v)、0.08%(v:v)又は0.1%(v:v)、好ましくは約0.04%(v:v)〜約0.08%(v:v)、特に0.04%の濃度で添加する。好ましい態様では、界面活性剤は、ポリソルベート(例えばTween 20及びTween 80等)及びポロキサマー等の非イオン性洗剤から選択される。別の態様では、PEGを界面活性剤様化合物として添加することができる。更に別の態様では、界面活性剤はPEGではない。特に、組成物は1.2%(w/v)のスクロースを含有する50mMリン酸緩衝液中に約2%〜約10%のPEG 1000を含まない。
【0037】
別の態様では、本発明の組成物を調製する方法において、ポリペプチドを20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等に濃縮する。
【0038】
更に別の態様では、本発明の組成物を調製する方法において、ポリペプチドを20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等に濃縮し、界面活性剤を添加しない。
【0039】
好ましい態様では、ポリペプチドを30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/ml以上、70mg/ml以上、80mg/ml又はそれ以上の濃度に濃縮する。最も好ましい態様では、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドは、50mg/mlの濃度で組成物中に存在する。
【0040】
本発明は、本発明の方法、エアロゾル及び組成物の使用を更に提供する。本発明の方法、エアロゾル及び組成物は、エアロゾル送達システムによるヒト被験体への送達のための薬剤の調製に使用することができる。好ましくは、薬剤は霧化によって、例えば振動メッシュネブライザーを介して送達される。
【0041】
エアロゾル送達システムも提供される。エアロゾル送達システムは、容器と、該容器に接続されたエアロゾル発生器とを少なくとも含み、該容器が本発明の組成物を含むものとする。エアロゾル送達システムはネブライザーであり得る。本発明の一態様では、エアロゾル送達システムは振動メッシュネブライザーである。
【0042】
例えば医療専門家により使用される本発明の組成物を含む容器、キット及び医薬単位剤形が更に提供される。本発明の組成物を含む容器、キット又は医薬単位剤形は、ヒト被験体への本発明のポリペプチドの肺投与に好適であるものとする。好ましくは、本発明の組成物を含む容器、キット又は医薬単位剤形は、エアロゾル送達システム、例えばネブライザー等によるヒト被験体への本発明のポリペプチドの投与に好適であるものとする。本発明の一態様では、ネブライザーは振動メッシュネブライザーである。
【0043】
組成物、容器、エアロゾル送達システム、ネブライザー、医薬単位剤形及び/又はキットは、予防法及び/又は治療法に使用することができる。具体的な態様では、組成物、容器、エアロゾル送達システム、ネブライザー、医薬単位剤形及び/又はキットは、呼吸器系の疾患及び/又は障害(例えばhRSV感染)等の1つ又は複数の疾患及び/又は障害の予防及び/又は治療に使用される。したがって、本発明は、1つ又は複数の呼吸器系疾患等の1つ又は複数の疾患及び/又は障害を予防及び/又は治療する方法であって、本発明の組成物を、それを必要とする被験体にエアロゾル送達システムを介して投与する工程を含む、1つ又は複数の呼吸器系疾患等の1つ又は複数の疾患及び/又は障害を予防及び/又は治療する方法にも関する。一態様では、治療される疾患及び/又は障害はhRSV感染である。別の態様では、組成物を振動メッシュネブライザー等のネブライザーを介して投与する。
【0044】
本発明は、呼吸器系疾患(例えばhRSV感染)の予防及び/又は治療用の薬剤の調製のための組成物、容器、キット、医薬単位剤形、エアロゾル送達システム及び/又はネブライザーの使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】オスモル濃度調整剤(osmolarity agent)としてマンニトールを含む種々の緩衝剤の存在下でのRSV434の融解温度(Tm)の比較を示す図である。測定は熱シフトアッセイ(TSA)によって0.1mg/mLで行った。
【図2】種々の緩衝液/賦形剤組成物(グリシン及びマンニトールは0.3M、NaClは0.15Mの濃度で使用した)の存在下で、オムロン株式会社のメッシュネブライザーによって5mg/mLで霧化したRSV434のSE−HPLC分析によって測定されたプレピークの割合(%)を示す図である。
【図3】Tween 80及び/又はPEG1000を含む種々の緩衝液/賦形剤組成物の存在下で、オムロン株式会社のメッシュネブライザーによって5mg/mLで霧化したRSV434のSE−HPLC分析によって測定されたプレピークの割合(%)を示す図である。
【図4】非霧化材料(REF)と比較した、Akita Apixneb(商標)ネブライザー(振動メッシュネブライザー)によるRSV434の5mg/ml溶液の霧化後の(霧化)SE−HPLC分析データからのプレピーク形成を示す図である。
【図5】非霧化参照材料と比較した、Akita Apixneb(商標)ネブライザー(振動メッシュネブライザー)によるRSV434の5mg/ml溶液の霧化後のSE−HPLC分析データからのタンパク質回収率を示す図である。
【図6】Akita Apixneb(商標)ネブライザー(振動メッシュネブライザー)によるRSV434の5mg/ml、25mg/ml及び50mg/ml溶液の霧化後のSE−HPLC分析データからのプレピーク形成を示す図である。
【図7】Akita(商標)Jetネブライザー(ジェットネブライザー)によるRSV434の5mg/ml、25mg/ml及び50mg/ml溶液の霧化後のSE−HPLC分析データからのプレピーク形成を示す図である。
【図8】Akita Apixneb(商標)ネブライザーによる種々の緩衝液/賦形剤組成物の存在下での種々のタンパク質濃度を有するRSV434溶液の霧化後のレーザー回折によって測定された平均小滴サイズ(体積メジアン径(VMD)で表される)を示す図である。X軸上の表示は表8に示される生成物コード及び関連組成を指す。
【図9】(A)Tween 80の非存在下における50mg/mLの、(B)0.04%Tween 80の存在下における50mg/mLの、(C)Tween 80の非存在下における5mg/mLの、(D)0.04%Tween 80の存在下における5mg/mLの、10mMリン酸塩+0.13M NaCl(pH7.0)中でのRSV434のSE−HPLCクロマトグラムのベースライン領域の拡大表示を示す図である。全ての多量体形態に対応するプレピークを「プレピーク合計」として、高分子量種に対応するプレピーク(すなわちプレピーク1)を「HMW種」として図に示す。クロマトグラム(A)及び(B)とクロマトグラム(C)及び(D)との間の保持時間の差は、(A)及び(B)を0.15mL/分で実行し、(C)及び(D)を0.2mL/分で実行していることから説明することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
特に他に指示又は規定がなければ、使用される全ての用語は、当業者にとって明らかな、当該技術分野における通常の意味を有する。例えば標準的なハンドブック(例えばSambrook et al, "Molecular Cloning: A Laboratory Manual"(2nd.Ed.), Vols. 1-3, Cold Spring HarborLaboratory Press(1989)、F.Ausubel et al, eds., "Current protocols in molecular biology", GreenPublishing and Wiley Interscience, New York(1987)、Lewin, "Genes II", John Wiley & Sons, New York, N.Y.,(1985)、Old et al., "Principles of GeneManipulation: An Introduction to Genetic Engineering", 2nd edition,University of California Press, Berkeley, CA(1981)、Roitt et al., "Immunology"(6th.Ed.), Mosby/Elsevier, Edinburgh(2001)、Roitt et al., Roitt's EssentialImmunology, 10th Ed. Blackwell Publishing, UK(2001)、及びJaneway et al., "Immunobiology"(6thEd.), Garland Science Publishing/Churchill Livingstone,New York(2005))、並びに本明細書で言及される一般的な背景技術を参照する。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「単離された」という用語は、ポリペプチドとの関連では、該ポリペプチドが得られる細胞源若しくは組織源由来の細胞物質若しくは混在タンパク質を実質的に含まないか、又は化学的に合成される場合に化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まないポリペプチドを指す。「細胞物質を実質的に含まない」という表現は、ポリペプチドが単離されるか、又は組み換えによって産生される細胞の細胞成分からポリペプチドが分離されているポリペプチドの調製物を含む。このため、細胞物質を実質的に含まないポリペプチドは、約30%、20%、10%又は5%(乾燥重量による)未満の異種タンパク質、ポリペプチド、ペプチド又は抗体(「混在タンパク質」とも称される)を有するポリペプチドの調製物を含む。ポリペプチドが組み換えによって生成される場合、ポリペプチドは培養培地を実質的に含まなくてもよい、すなわち、培養培地がポリペプチド調製物の体積の約20%、10%又は5%未満を占める。ポリペプチドが化学合成によって生成される場合、ポリペプチドは好ましくは化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含まない、すなわち、ポリペプチドはポリペプチドの合成に関与する化学的前駆体又は他の化学物質から分離されている。したがって、かかるポリペプチドの調製物は、約30%、20%、10%、5%(乾燥重量による)未満の対象のポリペプチド以外の化学的前駆体又は化合物を有する。具体的な実施形態では、「単離された」ポリペプチドは、2回のクロマトグラフィー工程(例えば陽イオン交換及び陰イオン交換)、100K限外濾過工程、その後の限外濾過/透析濾過モードでの緩衝液交換及び濃縮の工程を含む多工程精製プロセスによって精製される。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「被験体」及び「患者」という用語は、区別なく使用される。本明細書中で使用される場合、「被験体("subject" and "subjects")」という用語は、動物、好ましくは非霊長類(例えばウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット及びマウス)及び霊長類(例えばカニクイザル等のサル、チンパンジー、ヒヒ及びヒト)を含む哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。或る特定の実施形態では、被験体は、1つ又は複数の疾患又は障害を有する哺乳動物、好ましくはヒトである。別の実施形態では、被験体は、1つ又は複数の疾患及び/又は障害を発症する危険性がある哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0049】
「薬学的に許容可能な」という語句は、本明細書中で使用される場合、連邦規制機関若しくは州政府によって認可されていること、又は米国薬局方、欧州薬局方、若しくは動物、より具体的にはヒトに用いられる他の一般に認められる薬局方に記載されていることを意味する。この意味で、配合物の他の成分と適合し、被験体において許容不能な悪影響を誘発しないものとする。この語句は、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症なく、妥当なリスク・ベネフィット比に相応して、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適な化合物、材料、組成物及び/又は投薬形態を指す。
【0050】
欧州薬局方によると、溶液は290±30mOsm/kgのオスモル濃度を有する場合に「等張」とみなされる。等張性は、例えば蒸気圧又は氷凍結(ice-freezing)型の浸透圧計によって測定することができる。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「有効量」という用語は、1つ又は複数の疾患及び/又は障害の重症度及び/又は期間を低減及び/又は改善するのに十分な薬剤(例えば予防薬又は治療薬)の量を指す。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「治療薬("therapeutic agent" and "therapeutic agents")」という用語は、1つ又は複数の疾患及び/又は障害の予防、治療及び/又は管理に使用することができる任意の薬剤(複数も可)を指す。本発明との関連では、「治療薬」という用語は、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを指す。或る特定の他の実施形態では、「治療薬」という用語は、組成物に使用され得る本発明のポリペプチド以外の薬剤を指す。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「治療的有効量」という用語は、1つ又は複数の疾患及び/又は障害の重症度を低減するのに十分な治療薬(例えば、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチド)の量を指す。
【0054】
「賦形剤」という用語は、本明細書中で使用される場合、増大したタンパク質安定性、増大したタンパク質溶解性及び/又は低下した粘度等の有益な物理的性質を配合物に付与する希釈剤、ビヒクル、保存剤、結合剤又は安定化剤として薬物に一般に使用される不活性物質を指す。賦形剤の例としては、タンパク質(例えば血清アルブミン)、アミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、グリシン)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、Tween 20及びTween 80等のポリソルベート、Pluronic等のポロキサマー、並びにポリ(エチレングリコール)(PEG)等の他の非イオン性界面活性剤)、糖類(例えばグルコース、スクロース、マルトース及びトレハロース)、ポリオール(例えばマンニトール及びソルビトール)、脂肪酸及びリン脂質(例えばスルホン酸アルキル及びカプリル酸塩)が挙げられるが、これらに限定されない。賦形剤に関する更なる情報については、Remington's Pharmaceutical Sciences (by Joseph P. Remington, 18thed., Mack Publishing Co., Easton, PA)(その全体が本明細書中に援用される)を参照されたい。
【0055】
「可変ドメイン」という用語は、抗原結合に部分的又は全面的に関与する免疫グロブリン分子又は抗体の部分又はドメインを指す。「単一可変ドメイン」という用語は、抗原結合部位が単一の免疫グロブリンドメイン上に存在し、それによって形成される分子を定義する。このことから、単一可変ドメインと、2つの免疫グロブリンドメイン、特に2つの「可変ドメイン」が相互作用して抗原結合部位を形成する「従来の」免疫グロブリン又はその断片とが区別される。通常、従来の免疫グロブリンでは、重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)とが相互作用して抗原結合部位を形成する。この場合、VH及びVLの両方の相補性決定領域(CDR)が抗原結合部位に寄与する、すなわち合計6つのCDRが抗原結合部位の形成に関与する。
【0056】
対照的に、免疫グロブリン単一可変ドメインの結合部位は、単一のVHドメイン又はVLドメインによって形成される。したがって、免疫グロブリン単一可変ドメインの抗原結合部位は僅か3つのCDRによって形成される。「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語は、抗原結合部位が単一可変ドメインによって形成される従来の免疫グロブリンの断片を含む。
【0057】
一般的に、免疫グロブリン単一可変ドメインは、4つのフレームワーク領域(それぞれ、FR1〜FR4)及び3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1〜CDR3)、又はこのようなアミノ酸配列の任意の好適な断片(この場合通常、少なくとも1つのCDRを形成するアミノ酸残基を少なくとも幾つか含有する)から本質的になるアミノ酸配列である。このような免疫グロブリン単一可変ドメイン及び断片が、免疫グロブリンフォールドを含むか、又は好適な条件下で免疫グロブリンフォールドを形成することが可能であるようなものであることが最も好ましい。このため、免疫グロブリン単一可変ドメインは例えば、単一抗原結合単位(すなわち例えば、機能的な抗原結合ドメインを形成するのに、例えばV/V相互作用により別の可変ドメインと相互作用する必要がある、例えば従来の抗体及びscFv断片に存在する可変ドメインの場合のように、機能的な抗原結合単位を形成するのに、単一抗原結合ドメインが別の可変ドメインと相互作用する必要がないような免疫グロブリン単一可変ドメインから本質的になる機能的な抗原結合単位)を形成することが可能であれば、軽鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)若しくはその好適な断片、又は重鎖可変ドメイン配列(例えばV配列又はVHH配列)若しくはその好適な断片を含み得る。
【0058】
本発明の1つの態様において、免疫グロブリン単一可変ドメインは、軽鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)、又は重鎖可変ドメイン配列(例えばV配列)であり、より具体的には単一可変ドメインは、従来の四本鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列、又は重鎖抗体に由来する重鎖可変ドメイン配列であり得る。
【0059】
免疫グロブリン単一可変ドメインは、ドメイン抗体(又はドメイン抗体としての使用に好適なアミノ酸配列)、単一ドメイン抗体(又は単一ドメイン抗体としての使用に好適なアミノ酸配列)、「dAb」(又はdAbとしての使用に好適なアミノ酸配列)、又はナノボディ(商標)(本明細書に規定のようなもの。VHH配列を含むが、これに限定されない)(備考:ナノボディ(Nanobody)(商標)及びナノボディ(Nanobodies)(商標)は、Ablynx N. V.の登録商標である)、他の免疫グロブリン単一可変ドメイン、又はこれらのいずれか1つの任意の好適な断片であり得る。(単一)ドメイン抗体の概説に関しては、本明細書で言及された従来技術、及び欧州特許第0368684号も参照する。「dAb」という用語に関しては、例えばWard et al. 1989(Nature 341:544-546)、Holt et al. 2003(Trends Biotechnol. 21:484-490)、並びに例えば国際公開第04/068820号、国際公開第06/030220号、国際公開第06/003388号、及びDomantis Ltd.の他の公開済み特許出願を参照する。哺乳動物起源ではないため、本発明との関連ではあまり好ましくはないが、免疫グロブリン単一可変ドメインは、或る特定種のサメ由来である可能性があることにも留意すべきである(例えばいわゆる「IgNARドメイン」、例えば国際公開第05/18629号を参照されたい)。
【0060】
特に、本発明のポリペプチドは1つ又は複数のナノボディ又はその好適な断片を含み得る。VHH及びナノボディの更なる説明に関しては、Muyldermans 2001による総説(Reviews in Molecular Biotechnology74:277-302)、並びに一般的な背景技術として言及される以下の特許出願:Vrije Universiteit Brusselの国際公開第94/04678号、国際公開第9504079号、及び国際公開第9634103号;Unileverの国際公開第9425591号、国際公開第9937681号、国際公開第0040968号、国際公開第0043507号、国際公開第00/65057号、国際公開第01/40310号、国際公開第01/44301号、欧州特許第1134231号及び国際公開第02/48193号;Vlaams Instituut voor Biotechnologie(VIB)の国際公開第97/49805号、国際公開第01/21817号、国際公開第03/035694号、国際公開第03/054016号及び国際公開第03/055527号;Algonomics N.V.及びAblynx N. V.の国際公開第03/050531号;カナダ国家研究会議(National Research Council of Canada)による国際公開第01/90190号;Institute of Antibodiesによる国際公開第03/025020号(=欧州特許第1433793号);並びにAblynx N.V.による国際公開第04/041867号、国際公開第04/041862号、国際公開第04/041865号、国際公開第04/041863号、国際公開第04/062551号、国際公開第05/044858号、国際公開第06/40153号、国際公開第06/079372号、国際公開第06/122786号、国際公開第06/122787号及び国際公開第06/122825号、並びにAblynx N.V.による更なる公開済み特許出願を参照する。これらの出願で言及される更なる従来技術、特に国際出願の国際公開第06/040153号の41頁〜43頁で言及される参考文献のリストも参照する(このリスト及び参考文献は参照により本明細書に援用される)。これらの参考文献で記載のように、ナノボディ(特にVHH配列及び部分ヒト化ナノボディ)は特に、1つ又は複数のフレームワーク配列における1つ又は複数の「特徴的な(Hallmark)残基」の存在を特徴とし得る。ナノボディのヒト化及び/又はラクダ化、並びに他の修飾、部分又は断片、誘導体又は「ナノボディ融合体」、多価構築物(リンカー配列の幾つかの非限定的な例を含む)、並びにナノボディ及びその調製物の半減期を増大する様々な修飾を含む、ナノボディの更なる説明は例えば、国際公開第08/101985号及び国際公開第08/142164号に見ることができる。
【0061】
ナノボディ中のアミノ酸残基の総数は、110個〜120個の範囲内であり得るが、好ましくは112個〜115個、最も好ましくは113個である。ただし、ナノボディの部分、断片、類似体又は誘導体(本明細書中で更に説明される)は、かかる部分、断片、類似体又は誘導体が本明細書中に概説される更なる要件を満たし、好ましくは同様に本明細書中に記載の目的に好適である限り、それらの長さ及び/又はサイズについては特に限定されないことに留意されたい。
【0062】
このため、本発明の意味においては、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語は、非ヒト供給源、好ましくはラクダ科動物、好ましくはラクダ科動物重鎖抗体に由来するポリペプチドを含む。これらは先述のようにヒト化されていてもよい。さらに、この用語は、先述のように「ラクダ化」された非ラクダ科動物供給源、例えばマウス又はヒトに由来するポリペプチドを含む。
【0063】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語は、マウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヒト及びラクダ科動物の可変ドメインを含む種々の起源の可変ドメイン、並びに完全にヒトの、ヒト化された、又はキメラの可変ドメインも包含する。例えば本発明は、ラクダ科動物の可変ドメイン、及びヒト化されたラクダ科動物の可変ドメイン、又はラクダ化可変ドメイン、例えばWard et al(例えば国際公開第94/04678号及びDavies andRiechmann(1994, FEBS Lett. 339:285-290)及び(1996, Protein Eng.9:531-537)を参照されたい)により記載されたようなラクダ化dAbを含む。さらに本発明は、融合可変ドメイン、例えば多価及び/又は多重特異性の構築物(1つ又は複数のVHHドメインを含有する多価及び多重特異性のポリペプチド、並びにそれらの調製に関しては、Conrath et al. 2001(J. Biol. Chem. 276:7346-7350)、並びに例えば国際公開第96/34103号及び国際公開第99/23221号も参照する)を含む。
【0064】
本発明によって提供される免疫グロブリン単一可変ドメインは、好ましくは本質的に単離された形態(本明細書中で定義される)であるか、又は1つ若しくは複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含んでいても、若しくは本質的にそれからなっていてもよく、任意で1つ若しくは複数の更なるアミノ酸配列(全て任意で1つ又は複数の好適なリンカーを介して連結される)を更に含んでいてもよいポリペプチド(「本発明のポリペプチド」とも称される)の一部を形成する。例えば、限定されるものではないが、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインは、一価、多価又は多重特異性の本発明のポリペプチド(例えばそれぞれ特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献16及び特許文献6に記載される)を提供するために、結合単位として働くことのできる1つ又は複数の更なるアミノ酸配列を任意で含有してもよい(すなわち1つ又は複数の他の標的に対する)かかるポリペプチド内で結合単位として使用することができる。かかるタンパク質又はポリペプチドは、本質的に単離された形態(本明細書中で定義される)であってもよく、本発明の方法、エアロゾル及び組成物は、免疫グロブリン単一可変ドメイン、及び1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドに同等に適用することができる。
【0065】
本発明によると、「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語は、上記に概説されるように、免疫グロブリン単一可変ドメインの形態で2つ以上の抗原結合単位を含む構築物を含み得る。例えば、同じか又は異なる抗原特異性を有する2つ(以上)の免疫グロブリン単一可変ドメインを連結して、例えば二価、三価又は多価の構築物を形成することができる。2つ以上の特異性の免疫グロブリン単一可変ドメインを組み合わせることによって、二重特異性、三重特異性等の構築物を形成することができる。例えば、本発明による免疫グロブリン単一可変ドメインは、2つ若しくは3つの同一の免疫グロブリン単一可変ドメイン、又は標的Aに指向性を有する2つの免疫グロブリン単一可変ドメイン及び標的Bに対する1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含んでいても、又は本質的にそれらからなっていてもよい。かかる構築物及び当業者が容易に予想することのできるその変更形態は全て、本明細書中で使用される「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という用語によって包含され、「本発明のポリペプチド」とも称される。
【0066】
特許文献6の53頁のm)段落に更に説明されるように、特定の抗原決定基、エピトープ、抗原又はタンパク質(又は少なくとも1つのその部分、断片若しくはエピトープ)に(特異的に)結合することができ、それに対して親和性を有し、かつ/又はそれに対して特異性を有するアミノ酸配列(例えばナノボディ、抗体、本発明のポリペプチド、又は一般に抗原結合タンパク質若しくはポリペプチド、若しくはその断片)は、上記抗原決定基、エピトープ、抗原又はタンパク質「に対する」又は「に指向性を有する」といわれる。
【0067】
「エアロゾル」は、本明細書中で使用される場合、気体中に分散された微細粒子の形態の液体の懸濁液(すなわち微小粒子を含有する微細な霧又は噴霧)を指す。本明細書中で使用される場合、「粒子」という用語は、液体、例えば小滴を指す。本発明のポリペプチドを肺へ送達するための医薬エアロゾルは、口及び/又は鼻から吸い込むことができる。肺送達では、およそ5マイクロメートル又は6マイクロメートル未満の粒子の発生が、微細粒子画分(FPF)としての(すなわち呼吸細気管支及び肺胞領域内での)堆積を達成するのに必要であると考えられる(O'Callaghan and Barry, 1997, Thorax 52: S31-S44)。エアロゾルにおける粒子サイズは体積メジアン径(VMD)で表すことができる。「体積メジアン径」は、体積によるエアロゾルの50%がその値より大きく、50%がその値より小さいエアロゾルの幾何学的粒子径と定義される。「空気動力学的中央粒子径(MMAD)」は、重量による粒子の50%がその値より小さく、50%がその値より大きい幾何学平均空気動力学径と定義される。エアロゾル粒子の密度が1g/cmである場合、VMDとMMADとが等しい。本発明のエアロゾルは、好ましくは1μm〜10μm、好ましくは1μm〜7μm、最も好ましくは1μm〜5μm、例えばおよそ3μm、3.5μm又は4μmの体積メジアン径を有する。
【0068】
「エアロゾル化」は、本発明において使用される場合、本発明の組成物の小粒子又は小滴への変換によるエアロゾルの生成を意味する。これは通常、エアロゾル送達システム(更に定義される)によって行われる。
【0069】
本発明との関連では、「噴霧化する」及び「噴霧化」という用語は、バルク液体の(機械的)破砕による小滴の生成を意味する。生成した小滴はエアロゾルを形成する微細な霧又は噴霧を構成する。
【0070】
「霧化する(nebulize)」及び「霧化」という用語は、本発明において使用される場合、ネブライザー(本明細書中で更に定義される)による液体の霧又は微細な噴霧への転換を指す。
【0071】
「噴霧化材料」又は「エアロゾル化材料」という用語は、エアロゾル化プロセスを経た材料(例えば、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む組成物)である。この材料はエアロゾル(本明細書中で定義される)の形態のままであってもよい。この材料は、エアロゾル中に存在する種々の小滴が合わさることによって収集されたバルク液体に変換し戻されていてもよい。
【0072】
「安定性」及び「安定な」という用語は、本明細書中で使用される場合、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含む本発明のポリペプチドを含む組成物の噴霧化の際の上記ポリペプチドの凝集への抵抗性を指す。これとは別に及び/又はこれに加えて、「安定な」本発明の組成物は噴霧化の際に生物活性を保持する。上記ポリペプチドの安定性は、例えばSE−HPLC、不可視(subvisible)粒子の計数、分析超遠心、動的光散乱、OD320/OD280比測定、弾性光散乱等によって測定される凝集度、及び/又は噴霧化していない参照組成物と比較した生物活性の%(例えばELISA、Biacore等によって測定される)によって評価することができる。
【0073】
「凝集」又は「凝集体形成」は、本発明において使用される場合、凝集体の発生を意味する。本発明との関連では、「凝集体」は、本発明のポリペプチドの2つ以上の同一のサブユニット(又はモノマー)からなる任意の粒子(オリゴマー、例えば二量体、三量体、四量体、五量体等も含む)を含む。凝集体は、高分子量凝集体及び低分子量凝集体を含む種々のサイズのものであってもよい。本明細書中で使用される場合、高分子量(HMWと略される)凝集体は、通常は5つ以上のモノマー単位からなり(例えば五量体)、低分子量凝集体は、通常は4つ以下のモノマー単位からなる(例えば二量体、三量体及び/又は四量体)。
【0074】
「低レベルから検出不能なレベルの凝集」という語句は、本明細書中で使用される場合、タンパク質の僅か7重量%、僅か6重量%、僅か5重量%、僅か4重量%、僅か3重量%、僅か2重量%、僅か1重量%又は僅か0.5重量%の凝集を含有するサンプルを指す。
【0075】
本発明の方法、エアロゾル及び組成物においては、本発明のポリペプチドの7%未満(より好ましくは6%未満、5%未満、更により好ましくは4%未満、3%未満、2%未満、又は最も好ましくは1%未満)が噴霧化中に凝集体(本明細書中で定義される)を形成する。噴霧化材料における凝集体形成は、例えばサイズ排除クロマトグラフィー(SE−HPLC)、不可視粒子の計数、分析超遠心(AUC)、動的光散乱(DLS)、静的光散乱(SLS)、弾性光散乱、OD320/OD280、フーリエ変換赤外分光(FTIR)、円偏光二色性(CD)、尿素誘導タンパク質アンフォールディング法、内因性トリプトファン蛍光及び/又は示差走査熱量測定法を含むが、これらに限定されない当該技術分野で既知の様々な分析的方法及び/又は免疫学的方法によって評価することができる。本発明のポリペプチド及びタンパク質不純物の分子サイズ分布及び相対量は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)によって求めることができる。SE−HPLC法は当業者に既知であり、実施例の項にも記載される。
【0076】
分析用超遠心器では、遠沈したサンプルを、紫外線吸収及び/又は干渉光学屈折率高感度システムを用い、光学検出システムを介してリアルタイムでモニタリングすることができる。これにより操作者が、印加された遠心力場の結果としての回転軸プロファイルに対するサンプル濃度の変化(evolution)を観察することが可能となる。最新の計測器では、これらの観察結果はコンピュータ上でデジタル化され、更なる数学的分析のために記憶される。沈降速度実験及び沈降平衡実験という2種類の実験がこれらの機器において一般的に行われる。
【0077】
沈降速度実験は沈降の全時間経過を読み取り、溶解された高分子の形状及びモル質量、並びにそのサイズ分布について報告することを目的とする(Perez-Ramirez and Steckert, 2005, Therapeutic Proteins: Methods andProtocols. C.M. Smales and D.C. James, Eds. Vol. 308: 301-318. Humana PressInc, Totowa, NJ, US)。この方法のサイズ分解能は粒子半径の2乗にほぼ対応し、実験のロータ回転数を調整することによって、100Da〜10GDaのサイズ範囲をカバーすることができる。沈降速度実験は、Gilbert-Jenkins理論に記載のように、高分子複合体の数及びモル質量をモニタリングすること、各成分のスペクトルシグナルの差を利用するマルチシグナル分析から複合体組成の情報を得ること、又は高分子系の沈降速度の組成依存性を追跡することによって高分子種間の可逆的化学平衡を研究するためにも使用することができる。
【0078】
沈降平衡実験は、濃度勾配と拮抗する拡散によって沈降の釣り合いが取られた実験の最終定常状態のみに関し、時間非依存濃度プロファイルが得られる。遠心力場における沈降平衡分布はボルツマン分布を特徴とする。この実験は高分子の形状には非感受性であり、高分子のモル質量、化学反応混合物については化学平衡定数に関して直接報告するものである。
【0079】
分析用超遠心器から得ることができる情報の種類としては、高分子の巨視的形状、高分子における立体構造変化及び高分子サンプルのサイズ分布が挙げられる。種々の非共有結合複合体と化学平衡状態で存在するタンパク質等の高分子については、複合体の数及びサブユニット化学量論、並びに平衡定数を研究することができる(Scott D.J., Harding S.E. and Rowe A.J. AnalyticalUltracentrifugation Techniques and Methods, RSC Publishingも参照されたい)。
【0080】
動的光散乱(光子相関分光法又は準弾性光散乱としても知られる)は、溶液中の小粒子のサイズ分布プロファイルを求めるために使用することができる物理学的技法である。光線がコロイド分散液を通過する際、粒子又は小滴によって光の一部が全方向に散乱する。粒子が光の波長と比較して非常に小さい場合、散乱光の強度は全ての方向で均一であり(レイリー散乱)、より大きい粒子(直径およそ250nm超)については、強度は角度に依存する(ミー散乱)。例えばレーザーからの光のように、光がコヒーレントで単色である場合、光子計数モードで動作することが可能な光電子増倍管等の好適な検出器を使用して、散乱強度における時間依存変動を観察することが可能である。
【0081】
これらの変動は、粒子がランダムな熱(ブラウン)運動を受けるのに十分に小さく、したがってそれらの間の距離が常に変化するという事実に起因する。照射域内の隣接粒子によって散乱した光の建設的干渉及び相殺的干渉は検出面での強度変動をもたらし、これは粒子運動から生じるために、この運動についての情報を有する。したがって、強度変動の時間依存性の分析により粒子の拡散係数を得ることができ、それから媒体の粘度を知ることでStokes Einstein式によって粒子の流体力学半径又は直径を算出することができる(Berne B. J. and Pecora R. Dynamic Light Scattering With Applicationsto Chemistry, Biology and Physics, Dover Publicationsも参照されたい)。
【0082】
凝集は、低粘性流体用の粒子サイズ分布分析器であるPAMAS SVSS−C(Small Volume Syringe System−C)機器(PArtikelMess - und AnalyseSysteme GMBH)によっても測定することができる。この機器は、1μm〜200μmのサイズ範囲の不可視粒子を検出するために光遮蔽(obscuration)の原理を用いる。少量及び大量の非経口剤(parenterals)についての欧州薬局方の検証基準/指定限界(EP<2.9.19 粒子汚染:不可視粒子)は、容器1つ当たりの総数によって規定される:
10μm超の粒子については、容器1つ当たり6000個を超えない
25μm超の粒子については、容器1つ当たり600個を超えない
【0083】
OD320/OD280比も濁度又はサンプルにおける微粒子の存在の測定基準である。好ましい態様では、本発明の組成物のOD320/OD280比は0.05以下、好ましくは0.01以下、例えば0.005以下であるものとする。
【0084】
或る特定のエアロゾルにおけるポリペプチドの凝集体形成の傾向は、弾性光散乱によっても測定することができる。弾性光散乱は、例えば90度の角度で測定される温度誘導変性によって蛍光分光計(例えば励起波長及び発光波長500nm)において測定することができる。好ましくは、最大散乱は吸収検出限界内にとどまる。散乱は1000abs以下、好ましくは750abs以下、例えば500abs以下であるものとする。
【0085】
噴霧化材料中の回収された本発明のポリペプチドのタンパク質含量は、例えばSE−HPLC又は分光光度法によって検出することができる。
【0086】
本発明のポリペプチドの凝集体形成の大幅な減少が、0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む組成物の噴霧化の際、本発明のポリペプチドを20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、若しくは50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で含有する組成物の噴霧化の際、及び/又は振動メッシュネブライザーを組成物の噴霧化に使用した場合に観察された。
【0087】
したがって、本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、
該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含み、
該1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、該組成物中に20mg/mL以上の濃度で存在し、かつ/又は
該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0088】
一態様では、本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含み、かつ/又は該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0089】
別の態様では、本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、20mg/ml未満の濃度、例えば5mg/ml、10mg/ml又は15mg/mlの濃度等で1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含み、かつ/又は該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0090】
更に別の態様では、本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、かつ/又は該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0091】
また別の態様では、本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物が界面活性剤を含まず、かつ/又は該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0092】
これとは別に及び/又はこれに加えて、本発明の方法、エアロゾル及び組成物においては、噴霧化材料における本発明のポリペプチドの効力及び/又は生物活性の喪失はほとんど又は全く観察されなかった。
【0093】
生物製剤(biological)の効力及び/又は生物活性は、上記生物製剤が既定の生物学的効果を達成する特定の能力又は可能性を表す。「生物活性("biological activity" or "biological activities")」という用語は、本明細書中で使用される場合、様々な免疫アッセイ(ELISAを含むが、これに限定されない)及び/又は表面プラズモン共鳴(Biacore)によって測定される、対象の標的に対する免疫グロブリン単一可変ドメインの特異的な結合能を含むが、これに限定されない免疫グロブリン単一可変ドメインの活性を指す。一実施形態では、本発明の組成物の噴霧化の際に、噴霧化材料中に存在する免疫グロブリン単一可変ドメインは、参照組成物(噴霧化していない)と比較して、当業者に既知の又は本明細書中に記載の免疫アッセイによって測定される、対象の標的と特異的に結合する能力の少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は更には99%以上を保持する。例えば、上記免疫グロブリン単一可変ドメインの噴霧化後における、及び上記免疫グロブリン単一可変ドメインの噴霧化を行わない場合における、その標的に特異的に結合する免疫グロブリン単一可変ドメインの能力を比較するためにELISAベースのアッセイを使用することができる。
【0094】
本発明のポリペプチドの効力及び生物活性は、関与する具体的な疾患又は障害に応じて、それ自体が既知の任意の好適なin vitroアッセイ、細胞ベースのアッセイ、in vivoアッセイ及び/若しくは動物モデル、又はそれらの任意の組合せを含む様々なアッセイによって評価することができる。好適なin vitroアッセイは当業者に明らかであり、例えばELISA、FACS結合アッセイ、Biacore、競合結合アッセイ(AlphaScreen(商標),PerkinElmer,Massachusetts,USA;FMAT)が挙げられる。例えば、配列番号2及び配列番号3はhRSVのFタンパク質と相互作用し、Fタンパク質のその受容体との相互作用を遮断する。配列番号1はIL−23と相互作用し、このリガンドのその受容体との相互作用を遮断する。それぞれのリガンド/受容体相互作用を遮断する配列番号1、配列番号2及び配列番号3の効力は、例えばELISA、Biacore、AlphaScreen(商標)によって求めることができる。
【0095】
例えば、一実施形態では、高分子相互作用をリアルタイムでモニタリングするためにBiacore動態分析に表面プラズモン共鳴(SPR)技術が用いられ、これを用いて本発明の組成物のポリペプチドのそれらの標的に対する結合のオン速度及びオフ速度が求められる。Biacore動態分析は、本発明のポリペプチドが表面に固定されたチップからの標的の結合及び解離を分析することを含む。典型的なBiacore動態研究は、0.005%Tween 20を含有するHEPES緩衝生理食塩水(HBS)緩衝液中様々な濃度の250μLのポリペプチド試薬を、抗原が固定されたセンサーチップ表面上に注入することを含む。BIAcore 3000システムでは、リガンドは金表面上のカルボキシメチル化デキストラン上に固定され、第2のパートナー(検体)が固定リガンド表面上を流れる際に捕捉される。固定リガンドは非常に回復力があり(resilient)、それらの生物活性を維持する。結合した検体を、同じ固定表面上での結合及び再生の多数のサイクルを可能にするその活性に影響を及ぼすことなく、固定リガンドから引き離すことができる。相互作用はSPRによってリアルタイム及び高感度で検出される。同じ親和性が異なるオン速度及びオフ速度を反映する可能性があるため、この機器は、オン速度(ka)及びオフ速度(kd)を測定するという点で他の大半の親和性測定法に優っている。濃度決定実験も実行可能である。
【0096】
本発明の方法、エアロゾル及び組成物においては、ポリペプチドのその抗原に特異的に結合する能力を測定する様々な免疫アッセイ(例えば酵素結合免疫吸着法(ELISA)及び表面プラズモン共鳴を含む)によって評価されるように、噴霧化材料における本発明のポリペプチドの効力及び/又は生物活性の喪失はほとんど又は全く観察されなかった。噴霧化の際、本発明の組成物中に存在するポリペプチドは、噴霧化前のポリペプチドの初期生物活性(例えばIL−23、hRSVに結合する能力)の80%超、85%超、90%超、95%超、98%超、99%超又は更には99.5%超を保持する。
【0097】
本発明の具体的な実施形態では、ポリペプチドはIL−23に結合する。上記IL−23に結合するポリペプチドを含む本発明の組成物の噴霧化の際に、ポリペプチドの少なくとも80%(少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%)が、IL−23に対するそれらの結合活性を保持する。
【0098】
別の具体的な実施形態では、ポリペプチドはhRSVに結合する。上記hRSVに結合するポリペプチドを含む本発明の組成物の噴霧化の際に、本発明のポリペプチドの少なくとも80%(少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%)が、hRSVに対するそれらの結合活性を保持する。
【0099】
噴霧化材料中に存在するポリペプチドの効力及び/又は生物活性を求めるのに好適な他のin vitroモデル及びin vivoモデルは当業者に明らかであり、予防及び/又は治療する目的の疾患及び/又は障害によって決まる。配列番号1の効力及び/又は生物活性を試験するのに好適な動物モデルは、例えば特許文献16及び特許文献17に記載されている。hRSVを中和する配列番号2の効力及び/又は生物活性は例えば、in vitroで、例えばhRSVマイクロ中和アッセイ(例えば特許文献17を参照されたい)において、及びin vivoで、例えばRSV研究用のコットンラットモデル(Murphy et al., 1988, Virus Res. 11: 1-15)において求めることができる。
【0100】
0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む組成物の噴霧化の際、本発明のポリペプチドを20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、若しくは50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で含有する組成物の噴霧化の際、及び/又は振動メッシュネブライザーを組成物の噴霧化に使用した場合に、本発明のポリペプチドの効力の喪失はほとんど又は全く観察されなかった。
【0101】
したがって、本発明は、免疫グロブリン可変ドメインの初期生物活性の80%超、85%超、90%超、95%超、98%超、99%超又は99.5%超が保持される、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、
該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含み、
該1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、該組成物中に20mg/mL以上の濃度で存在し、かつ/又は
該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0102】
一態様では、本発明は、免疫グロブリン可変ドメインの初期生物活性の80%超、85%超、90%超、95%超、98%超、99%超又は99.5%超が保持される、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含み、かつ/又は該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0103】
別の態様では、本発明は、免疫グロブリン可変ドメインの初期生物活性の80%超、85%超、90%超、95%超、98%超、99%超又は99.5%超が保持される、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、20mg/ml未満の濃度、例えば5mg/ml、10mg/ml又は15mg/mlの濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含み、かつ/又は該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0104】
更に別の態様では、本発明は、免疫グロブリン可変ドメインの初期生物活性の80%超、85%超、90%超、95%超、98%超、99%超又は99.5%超が保持される、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、かつ/又は該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0105】
更に別の態様では、本発明は、免疫グロブリン可変ドメインの初期生物活性の80%超、85%超、90%超、95%超、98%超、99%超又は99.5%超が保持される、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物が界面活性剤を含まず、かつ/又は該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。
【0106】
したがって、本発明の方法において得られる噴霧化材料では好ましくは、
本発明のポリペプチドの7%未満(より好ましくは6%未満、5%未満、更により好ましくは4%未満、3%未満、2%未満、又は最も好ましくは1%未満)が凝集体(本明細書中で定義される)を形成し、
本発明のポリペプチドの少なくとも80%(少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも99.5%)が、その標的の少なくとも1つ(好ましくは全て)に対するその結合活性(例えばELISA及び/又はBiacoreによって評価される)を保持する。
【0107】
本発明の方法及び組成物に使用される1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又は本質的にそれからなるポリペプチドは、治療剤又は予防剤である場合も、1つ又は複数の疾患の治療及び/又は管理に有用である場合もある。具体的な一態様では、ポリペプチドは1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又は本質的にそれからなる。別の態様では、ポリペプチドは少なくとも2つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又は本質的にそれからなる。別の具体的な態様では、ポリペプチドは少なくとも3つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又は本質的にそれからなる。
【0108】
本発明の方法及び組成物に使用される1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むか、又は本質的にそれからなるポリペプチドは、任意の標的、好ましくは1つ又は複数の疾患に関連する標的を認識し得る。一態様では、本発明のポリペプチドは、1つ又は複数の呼吸器系疾患に関連する標的を認識する。別の態様では、ポリペプチドはhRSVを特異的に認識する。別の態様では、ポリペプチドはIL−23を特異的に認識する。好ましい態様では、本発明のポリペプチドに使用される免疫グロブリン単一可変ドメインは、特許文献16(例えば特許文献16の配列番号2578、配列番号2584及び/又は配列番号2585等)、国際公開第2010/139808号(例えば米国特許出願第61/265,014号の配列番号142等)及び国際公開第08/028977号(例えば国際公開第08/028977号の配列番号62等)に記載のものから選択される。好ましい本発明のポリペプチドは、配列番号1、配列番号2及び配列番号3から選択することもできる。
【0109】
本発明の組成物中に存在する本発明のポリペプチドの濃度は、所望の効果を被験体にもたらす任意のポリペプチド濃度であり得る。ポリペプチドの濃度は少なくとも、有効量のポリペプチドが肺投与によって被験体に送達され得るような濃度であるものとする。好ましい態様では、本発明のポリペプチドの濃度は、1mg/mL〜200mg/mL、例えば約1mg/mL、約2mg/mL、約5mg/mL、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mL、約40mg/mL、約50mg/mL、約60mg/mL、約65mg/mL、約70mg/mL、約80mg/mL、約90mg/mL又は約100mg/mL以上である。或る特定の実施形態では、本発明のポリペプチドの濃度は、110mg/mL以上、120mg/mL以上、130mg/mL以上、140mg/mL以上、150mg/mL以上又は更には200mg/mL以上であり得る。
【0110】
具体的な態様では、本発明の組成物中の本発明のポリペプチドの濃度は、20mg/mL以上、例えば25mg/mL以上、又は50mg/ml若しくはそれ以上等である。本発明者らは、本発明のポリペプチドを20mg/mL以上、例えば25mg/mL以上、又は50mg/ml若しくはそれ以上等の量で含む組成物が、20mg/ml未満のポリペプチド濃度を有する組成物と比較して、エアロゾル化の際の凝集体形成の大幅な減少を示すことを示した。したがって、一態様では、本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、該組成物中に20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で存在する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。本発明は、エアロゾル中の凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、水性担体と、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化することによって得ることができる液滴を含むエアロゾルであって、該1つ又は複数の単一可変ドメインを含むポリペプチドが、該組成物中に20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で存在する、液滴を含むエアロゾルにも関する。特定の態様では、本発明の組成物中の本発明のポリペプチドの濃度は、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/ml以上、70mg/ml以上、80mg/ml又はそれ以上である。本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適なかかる組成物であって、水性担体と、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含み、該1つ又は複数の単一可変ドメインを含むポリペプチドが、該組成物中に20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で存在する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適なかかる組成物に更に関する。
【0111】
本発明の組成物中の本発明のポリペプチドの濃度とは別に及び/又はこれに加えて、本発明の組成物における界面活性剤の存在も、噴霧化材料における凝集体形成に対してプラスの効果を有していた。界面活性剤を含む組成物の噴霧化の際に、凝集体形成は、界面活性剤を含有しない組成物の噴霧化と比較して大幅に減少した。
【0112】
したがって、一態様では、本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。本発明は、エアロゾル中の凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化することによって得ることができる液滴を含むエアロゾルであって、該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む、液滴を含むエアロゾルにも関する。本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適なかかる組成物であって、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含み、該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適なかかる組成物に更に関する。
【0113】
噴霧化材料における凝集体形成に対する本発明の組成物における界面活性剤の存在のプラスの効果は、本発明のポリペプチドを20mg/ml未満の濃度、例えば5mg/ml、10mg/ml又は15mg/mlの濃度等で含有する組成物の噴霧化の際に最も顕著であった。
【0114】
したがって、別の態様では、本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、20mg/ml未満の濃度、例えば5mg/ml、10mg/ml又は15mg/mlの濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。本発明は、エアロゾル中の凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、水性担体と、20mg/ml未満の濃度、例えば5mg/ml、10mg/ml又は15mg/mlの濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化することによって得ることができる液滴を含むエアロゾルであって、該組成物が0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む、液滴を含むエアロゾルにも関する。本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適なかかる組成物であって、水性担体と、20mg/ml未満の濃度、例えば5mg/ml、10mg/ml又は15mg/mlの濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含み、0.001%(v:v)〜1%(v:v)の濃度で界面活性剤を更に含む、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適なかかる組成物に更に関する。
【0115】
本発明のポリペプチドを20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で含有する本発明の組成物の噴霧化材料における凝集体形成の減少は、界面活性剤の存在下ではあまり顕著でなかった。加えて、高分子量凝集体の相対量は、これらの組成物の噴霧化材料において界面活性剤の存在下で増大した。
【0116】
したがって、更に別の態様では、本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物が界面活性剤を含まない、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。本発明は、エアロゾル中の凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、水性担体と、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化することによって得ることができる液滴を含むエアロゾルであって、該組成物が界面活性剤を含まない、液滴を含むエアロゾルにも関する。本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適なかかる組成物であって、水性担体と、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度等で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含み、界面活性剤を含まない、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適なかかる組成物に更に関する。
【0117】
界面活性剤とは、疎水性部分と親水性部分とを含む表面活性物質(surface-active agent)を指す。好ましい態様では、界面活性剤は非イオン性である。或る特定の例示的な非イオン性界面活性剤としては、脂肪アルコール、ポリソルベート(ポリソルベート80(Tween 80)及びポリソルベート20(Tween 20)を含むが、これらに限定されない)、Triton X−100、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンコポリマー(Pluronic(商標))及びノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP−40)が挙げられる(これらに限定されない)。本発明の組成物に使用することができる他の界面活性剤としては、ホスホグリセリド、例えばホスファチジルコリン(レシチン)、例えば天然界面活性剤、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)が挙げられる(これらに限定されない)。他の例示的な界面活性剤としては、ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、ヘキサデカノール、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、表面活性脂肪酸、例えばパルミチン酸又はオレイン酸、ソルビタントリオレエート(Span 85)、グリココーレート、サーファクチン、ポロキサマー、ソルビタン脂肪酸エステル、例えばソルビタントリオレエート、チロキサポール及びリン脂質が挙げられる。具体的な態様では、界面活性剤はTween 20、Tween 80又はポロキサマーから選択される。ポリエチレングリコール(PEG)等の他の化合物は、空気−水界面上で作用する場合に界面活性剤様の性質を有する。本発明の一態様では、界面活性剤はPEGではない。特に、組成物は1.2%(w/v)のスクロースを含有する50mMリン酸緩衝液中に約2%〜約10%のPEG 1000を含まない。界面活性剤の濃度は、0.001%(v:v)〜1%(v:v)(好ましくは組成物の0.001%(v:v)〜0.1%(v:v)、又は0.01%(v:v)〜0.1%(v:v)、例えば約0.001%(v:v)、0.005%(v:v)、0.01%(v:v)、0.02%(v:v)、0.05%(v:v)、0.08%(v:v)、0.1%(v:v)、0.5%(v:v)又は1%(v:v)、好ましくは約0.04%(v:v)〜0.08%(v:v))の範囲であり得る。具体的な実施形態では、界面活性剤は、組成物の0.001%(v:v)、0.005%(v:v)、0.01%(v:v)、0.02%(v:v)、0.04%、0.05%(v:v)、0.08%(v:v)、0.1%(v:v)、0.5%(v:v)又は1%(v:v)、好ましくは0.04%(v:v)〜0.08%(v:v)、特に0.04%(v:v)という濃度のTween 20又はTween 80である。
【0118】
これらの特性を有する好ましい本発明の組成物の例は、0.01%(v:v)のTween 80、0.02%(v:v)のTween 80、0.04%(v:v)のTween 80又は0.08%(v:v)のTween 80を含む。
【0119】
本発明の組成物に含まれる担体は好ましくは、例えば蒸留水、MilliQ水又は注射用水(WFI)等の水性担体である。本発明の組成物のpHは概して、組成物中に存在する特定の本発明のポリペプチドの等電点に等しくないものとし、約5.5〜約7.5、又は約6.0〜約7.5、好ましくは約6.5〜7.5、最も好ましくは約6.5〜7.0、例えばpH6.0、pH6.5又はpH7.0、特にpH7.0の範囲であり得る。
【0120】
組成物は薬学的に(pharmaceutically)許容可能な任意の緩衝液によって緩衝することができる。本発明の組成物に使用される好ましい緩衝液としては、PBS、リン酸緩衝液、TrisHCl、ヒスチジン緩衝液及びクエン酸緩衝液、例えばpH6.0〜6.5のヒスチジン、pH7.0のリン酸緩衝液、pH7.5のTrisHCl及びpH6.5のクエン酸緩衝液/リン酸緩衝液、特にpH7.0のリン酸(NaHPO/NaHPO)緩衝液等が挙げられる(これらに限定されない)。
【0121】
本発明の組成物中に存在する緩衝液の濃度は、1mM〜100mM、5mM〜100mM、5mM〜75mM、5mM〜50mM、10mM〜50mMの範囲であり得る。具体的な態様では、本発明の組成物中の緩衝液の濃度は、1mM、2mM、5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、50mM、75mM又は100mMである。好ましくは、濃度は10mM〜50mM、例えば10mM又は50mM、特に10mMである。
【0122】
本発明の組成物がヒト血液と等張又は僅かに低張であり得ること、すなわち本発明の組成物がヒト血液と本質的に同じか又は僅かに低い浸透圧を有することが当業者には理解される。かかる等張又は僅かに低張な組成物は概して、約240mOSm/kg〜約320mOSm/kg、例えば約240mOSm/kg以上、250mOSm/kg以上又は260mOSm/kg以上の浸透圧を有する。
【0123】
組成物の張性は張性調整剤の使用によって調整することができる。「張性調整剤」とは、組成物の等張性を得るために組成物に添加することができる薬学的に許容可能な不活性物質である。本発明の組成物において好ましい張性調整剤は賦形剤である。本発明の組成物における使用に好ましい賦形剤は、糖、ポリオール、界面活性剤及び塩から選択することができる。一態様では、本発明の組成物のオスモル濃度は、糖/ポリオール又は無機塩の添加によって調整される。糖/ポリオールとしては、スクロース及びラクトース、並びに糖アルコール及び糖酸を含む糖誘導体を挙げることができる(これらに限定されない)。ポリオール及び糖アルコールとしては、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、トレイトール、ソルビトール及びグリセロールを挙げることができる(これらに限定されない)。他の例示的な糖としては、トレハロース、グリシン、マルトース、ラフィノース等が挙げられる(これらに限定されない)。この賦形剤の濃度は、約1%(w:v)〜10%(w:v)、好ましくは約2.5%(w:v)〜10%(w:v)、より好ましくは約5%(w:v)〜10%(w:v)、例えば5%(w:v)、7.5%(w:v)、8%(w:v)又は10%(w:v)等の範囲であり得る。限定されるものではないが、本発明の組成物のオスモル濃度を調整するための無機塩としては、NaCl、KCl、CaCl及びMgCl、特にNaClが挙げられる。無機塩の濃度は、10mM〜200mM、10mM〜150mM、50mM〜150mM、100mM〜150mM、又は100mM〜120mMの範囲であり得る。具体的な態様では、本発明の配合物に含まれ得る塩(好ましくはNaCl)の濃度は、約10mM、約25mM、約50mM、約75mM、約100mM、約110mM、約120mM、約130mM、約150mM又は約200mMであり得る。
【0124】
これらの特性を有する好ましい本発明の組成物の例は、10mMのリン酸(NaHPO/NaHPO)緩衝液(pH7.0)及び130mMのNaClを含む。したがって、一態様では、本発明の組成物は、10mMのリン酸(NaHPO/NaHPO)緩衝液(pH7.0)と、130mMのNaClと、上記に記載のような1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む。特定の態様では、本発明の組成物は、10mMのリン酸(NaHPO/NaHPO)緩衝液(pH7.0)と、130mMのNaClと、配列番号2のポリペプチドとを含む。別の態様では、本発明の組成物は、10mMのリン酸(NaHPO/NaHPO)緩衝液(pH7.0)と、130mMのNaClと、20mg/mL以上の濃度、例えば25mg/mL以上の濃度、又は50mg/ml若しくはそれ以上の濃度、好ましくは50mg/mlの濃度等で配列番号2のポリペプチドとを含む。
【0125】
他の薬学的に許容可能な担体も本願の配合物に使用することができる。「薬学的に許容可能な担体」という語句は、本明細書中で使用される場合、薬剤(例えば予防薬又は治療薬)の担持又は輸送に関与する薬学的に許容可能な物質、組成物又はビヒクル、例えば液体若しくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又は封入材料を意味する。各々の担体は、配合物の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味で「許容可能」でなくてはならない。薬学的に許容可能な担体として働くことのできる物質の幾つかの例としては、ラクトース、グルコース及びスクロース等の糖、プロピレングリコール等のグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール等のポリオール、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル等のエステル、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等の緩衝剤、発熱性物質除去水(pyrogen-free water)、等張生理食塩水、リンガー溶液、エチルアルコール、リン酸緩衝溶液、並びに医薬配合物に利用される他の非毒性適合物質が挙げられる。
【0126】
本発明の組成物は、本発明のポリペプチドに高い熱安定性をもたらすことを特徴とする。熱安定性は例えば、融解温度、例えばTmを求めることによって評定することができる。融解温度を求めるのに好適な技法は既知であり、例えば本明細書中に記載されるような熱シフトアッセイ(TSA)が例えば挙げられる。より具体的には、本発明の組成物は、TSAによって求められる本発明のポリペプチドのTmを他の配合物と比べて上昇させる。この効果は実験の項の表3に例示される。
【0127】
本発明によると、本発明の組成物は、広範囲のpH値(例えばクエン酸緩衝液については5.5〜6.5、リン酸緩衝液については7.0〜7.5)にわたってTmにプラスの影響を有する。Tmに対する最も有利な効果は、pH7.0〜7.5、特に7.0±0.2のリン酸緩衝液について観察することができる。
【0128】
本明細書の実験の項から明らかなように、TSAによって求められるTmは、本発明のポリペプチドの安定性についての重要な指標となる。Tmの上昇は、他の物理化学的パラメータにおける安定性の増大も示し、したがって本発明の特に好ましい実施形態を示すことができる。
【0129】
本発明の組成物中に存在する免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドを生成する一般的方法は当業者に既知であり、かつ/又は当該技術分野で記載されている。免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドは、当業者に既知の任意の宿主において産生させることができる。例えば、限定されるものではないが、免疫グロブリン単一可変ドメイン及び/又はポリペプチドは、原核生物宿主、とりわけ大腸菌(E. coli)、又は真核生物宿主、例えば昆虫細胞、哺乳動物細胞から選択される真核生物宿主、及びピキア属、ハンセヌラ属、サッカロマイセス属、クリベロマイセス属、カンジダ属、トルロプシス属、トルラスポラ属、シゾサッカロマイセス属、シテロマイセス属、パチソレン属、デバロマイセス属、メチニコビア属(Metschnikowia)、ロドスポリジウム属、ロイコスポリジウム属、ボトリオアスカス属、スポリジオボラス属、エンドマイコプシス属、好ましくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)等の酵母を含む下等真核生物宿主において産生させることができる。原核生物及びピキア・パストリス等の下等真核生物宿主における免疫グロブリン単一可変ドメインの産生は、例えば国際公開第94/04678号、国際公開第94/25591号及び特許文献13に記載されている。これらの出願の内容は、好適な培地及び条件を含む一般的な培養技法及び培養方法に関連して明示的に参照される。これらの文献の内容は参照により援用される。当業者であれば、本願及び一般常識に基づいて、種々の宿主において本発明のポリペプチドを発現させるのに好適な遺伝子構築物を考案することもできる。本発明は、当該技術分野で記載される条件及び遺伝子構築物、例えば国際公開第94/25591号、特許文献6、Gasser et al. 2006 (Biotechnol. Bioeng. 94: 535)、Gasser et al. 2007 (Appl. Environ. Microbiol. 73: 6499)、又はDamasceno et al. 2007 (Microbiol. Biotechnol. 74: 381)に記載の一般的な培養方法、プラスミド、プロモーター及びリーダー配列にも関する。
【0130】
より具体的には、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドを発現及び/又は産生させる方法は、
a)宿主又は宿主細胞を上記宿主又は宿主細胞が増殖するような条件下で培養する工程と、
b)上記宿主又は宿主細胞を、上記宿主又は宿主細胞がポリペプチドを発現及び/又は産生するような条件下で維持する工程と、
c)分泌されたポリペプチドを培地から単離及び/又は精製する工程とを少なくとも含む。
【0131】
ポリペプチドを産生させる/その発現を得るために、形質転換宿主細胞又は形質転換宿主生物は一般に、(所望の)ポリペプチドが発現/産生されるような条件下で保持、維持及び/又は培養される。好適な条件は当業者に明らかであり、通常は使用される宿主細胞/宿主生物、及び(関連)ヌクレオチド配列の発現を制御する調節要素によって決まる。この場合も、上記に言及したハンドブック及び特許出願を参照されたい。
【0132】
概して、好適な条件としては、好適な培地の使用、好適な食物源及び/又は好適な栄養素の存在、好適な温度の使用、並びに任意で好適な誘導因子又は化合物の存在(例えば、本発明のヌクレオチド配列が誘導プロモーターの制御下にある場合)を挙げることができ、これら全てを当業者は選択することができる。この場合も、かかる条件下で、本発明のアミノ酸配列は構成的に、一時的に、又は適正に誘導された場合に限り発現され得る。
【0133】
本発明のポリペプチドを続いて宿主細胞/宿主生物、及び/又は上記宿主細胞若しくは宿主生物が培養された培地から、それ自体が既知のタンパク質単離及び/又は精製技法、例えば(分取)クロマトグラフィー及び/若しくは電気泳動法、示差沈殿法、アフィニティー法(例えば、本発明のポリペプチドと融合した特異的な切断可能なアミノ酸配列を使用する)並びに/又は分取免疫学的技法(すなわち、単離されるポリペプチドに対する抗体を使用する)を用いて単離することができる。
【0134】
本発明においては、日常的な手段によって宿主を培養培地から除去することができる。例えば、遠心分離又は濾過によって宿主を除去することができる。培養培地からの宿主の除去によって得られた溶液は、培養上清又は清澄培養上清とも称される。本発明のポリペプチドは、標準方法によって培養上清から精製することができる。標準方法としては、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びアフィニティークロマトグラフィーを含むクロマトグラフ法が挙げられるが、これらに限定されない。これらの方法は単独で行っても、又は他の精製方法、例えば沈殿若しくはゲル電気泳動と組み合わせて行ってもよい。当業者であれば、一般常識に基づいて、本発明のポリペプチドの精製方法の好適な組合せを考案することができる。具体的な例としては、本明細書中に引用される技術を参照する。
【0135】
例示的な一実施形態では、本発明のポリペプチドは、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーの組合せによって培養上清から精製することができる。任意の「精製工程」への言及はこれらの特定の方法を含むが、これらに限定されない。
【0136】
より具体的には、本発明のポリペプチドは、清澄上清(遠心分離によって得られる)を、プロテインA樹脂等のアフィニティークロマトグラフィー樹脂、例えばPoros 50HS(POROS)、SOURCE 30S又はSOURCE 15S(GE Healthcare)、SP Sepharose(GE Healthcare)、Capto S(GE Healthcare)、Capto MMC(GE Healthcare)又はPoros 50HQ(POROS)、SOURCE 30Q又はSOURCE 15Q(GE Healthcare)、Q Sepharose(GE Healthcare)、Capto Q及びDEAE Sepharose(GE Healthcare)を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー(CIEC)又は陰イオン交換クロマトグラフィー(AIEC)、例えばSuperdex 75又はSuperdex 200(GE Healthcare)を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SE−HPLC)、例えばオクチルセファロース、ブチルセファロース等を用いた疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)から選択される(これらに限定されない)カラムの任意の組合せで捕捉するプロセス(任意で接線流濾過(TFF)工程も含む)を用いて培養上清から精製することができる。カラムの任意の組合せ、例えばプロテインA樹脂に続く陽イオン交換クロマトグラフィー、又は2回の陽イオン交換クロマトグラフィー工程等を本発明のポリペプチドの精製に使用することができる。
【0137】
本発明は、本発明のポリペプチドを含む本発明の組成物を調製する方法も提供する。より具体的には、本発明は、かかるポリペプチドの組成物を調製する方法であって、精製ポリペプチドを含有する画分を、例えば適切な分子量(MW)カットオフ(例えば、単一可変ドメインについては5kDのカットオフ、2つの単一可変ドメインを含む二価ポリペプチドについては10kDのカットオフ、又は3つの単一可変ドメインを含む三価ポリペプチドについては15kDのカットオフ)を有する半透膜を用いて最終ポリペプチド濃度に濃縮することと、透析濾過及び/又は限外濾過して、緩衝液を交換し、同じ膜を用いてポリペプチド画分を選択された緩衝液中に更に濃縮する、透析濾過及び/又は限外濾過することとを含む、かかるポリペプチドの組成物を調製する方法を提供する。
【0138】
界面活性剤(例えばTween 20、Tween 80又はポロキサマー)を、最終透析濾過/限外濾過工程後に、組成物の0%〜1%、好ましくは0.001%〜0.1%、又は0.01%〜0.1%、例えば約0.001%、0.005%、0.01%、0.02%、0.04%、0.05%、0.08%、0.1%、0.5%又は1%、好ましくは0.04%〜0.08%、特に0.04%の範囲の濃度で添加することができる。
【0139】
本発明の組成物は、滅菌濾過、放射線等を含む様々な滅菌方法によって滅菌することができる。具体的な実施形態では、ポリペプチド組成物は、予め滅菌済の0.2ミクロンフィルターを用いて濾過滅菌される。
【0140】
好ましくは、本発明の組成物は密閉容器に入れて供給される。液体組成物は1mL〜20mL、好ましくは約1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL又は20mLの量を含み得る。
【0141】
本発明の組成物は、使用1回分の組成物のアリコートを含有するバイアルを準備することによって単位投薬形態として調製することができる。例えば、バイアル1つ当たりの液体組成物の単位剤形は、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL又は20mLの組成物を含有し得る。医薬単位投薬形態は、エアロゾルによるポリペプチドの肺送達に好適であるものとする。
【0142】
或る特定の疾患又は障害の予防、治療及び/又は管理に効果的な本発明の組成物の量は、当該技術分野で既知の又は本明細書中に記載の標準臨床技法によって求めることができる。有効用量は、in vitro又は動物モデルの試験システムから得られた用量反応曲線から推定することができる。本発明によって包含されるポリペプチドの組成物については、患者に投与される投薬量は、投与される用量(mg/kg)を乗じた患者のキログラム(kg)単位での体重を用いて更に算出することができる。適用された用量のうち肺に到達した割合及び/又は適用された用量のうち体循環に到達した割合(予防及び/若しくは治療される疾患、並びに体内の予防剤の位置、並びに/又は薬剤の治療活性によって異なる)も用量算出に有用であり得る。
【0143】
次いで、与えられる所要の体積(mL)が、所要のmg用量をポリペプチド組成物の濃度で除することによって求められる。最終的に算出される所要の体積は、必要とされる数のバイアルの容量を合わせることによって得られる。
【0144】
本発明は、包装及び表示済みの最終医薬製品も包含する。この製造品又はキットは、密閉したガラスバイアル又は他の容器等の適切な入れ物又は容器内の適切な単位投薬形態を含む。単位投薬形態はエアロゾルによる肺送達に好適であるものとする。好ましくは、製造品又はキットは、エアロゾル送達システムにおける組成物の使用方法に関する説明書を更に含む。説明書は、医師、技師又は患者に問題の疾患又は障害を適切に予防又は治療する方法についてアドバイスする資料を更に有し得る。言い換えると、製造品は、実際の用量、モニタリング手順及び他のモニタリング情報を含むが、これらに限定されない、エアロゾル送達システムに使用される投与計画を表示又は示唆する指示手段を含む。
【0145】
いずれの医薬製品とも同様に、包装材料及び容器は、貯蔵及び運送中の製品の安定性を保護するように設計される。
【0146】
本発明の組成物、容器、医薬単位剤形及びキットは、肺投与、すなわちエアロゾル化による本発明のポリペプチドの送達に好適であるものとする。したがって、本発明の組成物、容器、医薬単位剤形及びキットは、エアロゾル送達システム(本明細書中で更に定義される)における使用に好適であるものとする。したがって、本発明は、エアロゾル化によるヒト被験体への送達用の薬剤の調製のための本発明の組成物の使用にも関する。一態様では、本発明の組成物は、好ましくは振動メッシュネブライザーにおける噴霧化によるヒト被験体への送達用の薬剤の調製に使用される。
【0147】
本発明は、(エアロゾルの調製のための)本発明の方法、及び/又はエアロゾル化による本発明の組成物の送達に使用することができるエアロゾル送達システムも提供する。本発明のエアロゾル送達システムは、本発明の組成物を含む容器と、それに接続されたエアロゾル発生器とを含み得る。エアロゾル発生器は、本発明の組成物のエアロゾルを発生するように構築及び配置される。限定されるものではないが、エアロゾル発生器は、ネブライザーと、メカニカルポンプと加圧容器とを含む。
【0148】
一態様では、エアロゾル送達システムは、本発明の組成物を含有する加圧容器を含み得る。加圧容器は通常、アクチュエータの起動により容器内の所定量の組成物が容器からエアロゾルの形態で分注されるように、絞り弁に接続されたアクチュエータを有する。このタイプの加圧容器は、噴射剤駆動定量吸入器(pMDI又は単にMDI)として当該技術分野で既知である。MDIは通常、アクチュエータと、絞り弁と、微粉化薬物懸濁液又は溶液、液化噴射剤及び界面活性剤(例えばオレイン酸、ソルビタントリオレエート、レシチン)を保持する加圧容器とを含む。加圧定量吸入器(pMDI)は世界中で最も一般的に使用されている吸入器である。(通常は噴射剤キャニスタを押すことによって)弁が開き、液体噴射剤がキャニスタから噴霧されるとエアロゾルが生じる。通常、薬物又は治療剤は液体噴射剤に懸濁された小粒子(通常は直径数ミクロン)中に含有されるが、一部の配合物では、薬物又は治療剤は噴射剤に溶解され得る。噴射剤はエアロゾルがデバイスから離れるとともに急速に蒸発し、吸入される小さい薬物又は治療剤の粒子を生じる。かかるpMDIに使用される噴射剤としては、ヒドロフルオロアルカン(HFA)が挙げられるが、これに限定されない。歴史的には、これらのMDIには、噴射剤としてトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン及びジクロロテトラフルオロメタンを含むクロロフルオロカーボン(CFC)が通常使用されていた。最近の噴射剤としては、1,1,1,2−テトラフルオロエタン及び1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンを挙げることができる。他の溶媒又は賦形剤、例えばエタノール、アスコルビン酸、メタ重硫酸ナトリウム、グリセリン、クロロブタノール及び塩化セチルピリジウムもpMDIとともに利用することができる。かかるpMDIは、例えばスペーサ、保持チャンバ及び他の改良物等の追加デバイスを更に含んでいてもよい。
【0149】
Sonik LDIエアロゾル化技術(Drug Delivery Technology,Montville,NJ,US)が、液体薬剤(時として粉末)の送達に主に使用されている。専売品のノズルは圧縮ガス、通常は二酸化炭素(CO)で駆動し、デバイスの各作動により一貫して噴出される薬剤を送達する。圧縮ガスがSonik LDIノズルの主噴流から外れると、一連の反射圧縮衝撃波及び屈折衝撃波が形成される。ノズルにより液体薬剤が衝撃チャンバ内の一連の衝撃波に導入され、一貫した高品質なエアロゾルの噴出が生成する。Sonik LDIノズルから出る際に、エアロゾル/気体流は、二次的エアロゾル化プロセスにより吸入性粒子が増加し、残留噴霧が減少する増幅チャンバを通って下降する。主として安価であり、小型の使い捨てキャニスタ内に容易に貯蔵することができることから、COが駆動噴射剤として使用される。MDIとは異なり、Sonik LDIエアロゾル化技術ではエアロゾル化の瞬間まで噴射剤と薬剤とが混合されない。この遅延アプローチによって、液体(又は粉末)薬剤を密封ブリスター内に貯蔵することが可能となり、配合物安定性の開発負担が軽減される。この技術は、呼気駆動型エアロゾル保持チャンバ、小型低速直接経口注入器(oral entry)、包装済み単位用量薬剤、及び患者又は臨床医によって充填されるリザーバデバイスといった多数の構成に応用可能である。
【0150】
本発明の別の態様では、エアロゾル送達システムはネブライザーであり得る。ネブライザーは、吸入のための薬物含有液滴の霧を生成する。「霧化」とは、本発明において使用される場合、液体の微細な噴霧への転換を意味する。ネブライザーによって医薬品が圧縮空気と混合されて微細な霧が生じ、これを患者がフェイスマスク又はマウスピースを通して吸い込む。小児に対しては、霧化が医薬品を肺に投与する最も容易かつ最も効果的な方法の1つである。乳児に適した適切なサイズのマスク(又はより年長の小児及び成人についてはマウスピース)を用いれば、患者は通常、全ての医薬品が吸い込まれるまで呼吸するだけである。特に幼児に対する霧化の別の利点は、医薬品を肺に入れるのに特別なテクニックを必要としないことである。
【0151】
ネブライザーは通常、超音波ネブライザー及びジェットネブライザーという2つのタイプに分類される。噴霧化のためのエアジェットネブライザーは、小さな圧縮空気ポンプを利用可能であることから持ち運び可能と考えられるが、比較的大きく不便なシステムである。超音波ネブライザーは、一般に圧縮空気の供給源を必要としないため、より持ち運び易いという利点を有する。
【0152】
エアジェットネブライザーは、狭い「ベンチュリ」ノズルを通過する高速ガスによって液体をエアロゾルに変換する。ネブライザーリザーバ内の流体がフィードチューブに吸い込まれて微細な糸状で現れ、これが表面張力により崩壊してエアロゾル小滴となる。ネブライザー内のバッフルによって、より大きな小滴が除去される。空気流における小滴サイズは圧縮空気圧の影響を受ける。質量中央径は通常、20psig〜30psigの空気圧で2μm〜5μmの範囲である。ジェットネブライザーの例としては、Pari LC Jet Plus(PARI Gmbh,Graefelingen,Germany)、Hudson T Up−draft II(Hudson RCI,Kernen,Germany)、Raindrop(Puritan Bennett,Boulder,CO,US)が挙げられる(これらに限定されない)。
【0153】
超音波ネブライザーは、刺激により機械的に振動するセラミック圧電性結晶によって液体チャンバ内に集中する高周波数超音波(すなわち、100kHz以上)を用いてエアロゾルを発生する(Dennis et al., 1992, J. Med. Eng; Tech. 16: 63-68、O'Doherty et al., 1992, Am. Rev. Respir. Dis. 146: 383-88)。流体の噴流が空気−流体界面で生成する。小さな小滴が噴流の下部の領域から発生し、大きな小滴が頂点から発生する。場合によっては、インペラによってネブライザーから粒子が噴出されるか、又はエアロゾルが患者により直接吸い込まれる。超音波ネブライザーは、エアジェットネブライザーよりも大きな出力が可能であり、したがってエアロゾル薬物療法において頻繁に使用されている。超音波ネブライザーの例としては、Mabis Mist II(Allergy Asthma Techology LLC)、DeVilbiss Compressor Nebulizer Systems、DeVilbiss Reusable Jet Nebulizers(DeVilbiss Healthcare,Somerset,Pennsylvania,US)、Kun−88(K-Sonic,Taipei,Taiwan)、SUN 345(Siemens,Elema AB,Solna,Sweden)が挙げられる(これらに限定されない)。
【0154】
エアジェットネブライザー及び超音波ネブライザーの両方で、ネブライザー内のバッフルによって大きな(一次)エアロゾル小滴が捕捉及び再循環され、小さな(二次)小滴が吸入のために放出される。いずれのタイプのネブライザーでも、薬物は通常、ネブライザー内の液体の溶液中に含有されるため、生成する小滴が溶液中の薬物を含有する。
【0155】
超音波ネブライザーは一般に、懸濁液(Taylor and McCallion, 2002, In: Swarbrick, Boylan (Eds.),Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, 2nd ed. Marcel Dekker, Inc., NewYork, pp. 2840-2847)及びリポソーム(Elhissi and Taylor, 2005,J. Drug Deliv. Sci. Technol. 15: 261-265)の送達に不適当であり、噴霧化時の発熱のためにタンパク質等の不安定な物質を分解する可能性がある(Niven et., 1995, Pharm. Res. 12: 53-59)。
【0156】
振動メッシュネブライザーは、エアジェットネブライザー及び超音波ネブライザーの欠点を克服し得る。振動メッシュデバイスは、エアロゾルを発生するために振動する多孔プレートを利用する。開口プレートを振動させる振動素子の起動によって、本発明の組成物が複数の開口を通って吸い込まれ、既定範囲の小滴(すなわち粒子)サイズを有する低速エアロゾルが生じる。これらのネブライザーは噴霧化時に流体を加熱せず、懸濁液(Fink, and Simmons, 2004. Chest 126: 816S)、並びにリポソーム(Wagner, 2006, J. Liposome Res. 16: 113-125)及び核酸(Lentz, 2006, J. Aerosol Med. 19: 372-384)等の繊細な構造の送達に好適であることが示されている。振動メッシュネブライザーは受動振動メッシュデバイス及び能動振動メッシュデバイスに分けられる(非特許文献1)。受動振動メッシュデバイス(例えば、オムロン株式会社のMicroAir NE−U22ネブライザー)は、最大6000ミクロンの大きさの穴を有する多孔プレートを利用する。振動子ホーンに取り付けられた振動圧電性結晶は、その手前に位置する多孔プレート内に「受動的な」振動を誘導し、穴を通した流体の噴出及びエアロゾルの発生を引き起こす。能動振動メッシュデバイス(例えばAeroneb Proネブライザー)は、最大1000個のドーム形の開口を有するプレートと、電流の印加により伸縮する振動要素とからなるエアロゾル発生器を備える「マイクロポンプ」システムを利用し得る。これにより数マイクロメートルでのメッシュの上下運動が引き起こされ、流体が噴出し、エアロゾルが発生する。振動メッシュネブライザーの他の例としては、eFlow(商標)(PARIGmbH,Graefelingen,Germany;米国特許第5,586,550号も参照されたい)、Aeroneb(商標)(Aerogen,Inc.,Sunnyvale,California;米国特許第5,586,550号、米国特許第5,938,117号、米国特許第6,014,970号、米国特許第6,085,740号、米国特許第6,205,999号も参照されたい)が挙げられる。
【0157】
したがって、一態様では、本発明は、凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、1mg/ml〜200mg/mlの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法に関する。本発明は、エアロゾル中の凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、水性担体と、1mg/ml〜200mg/mlの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化することによって得ることができる液滴を含むエアロゾルであって、該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、液滴を含むエアロゾルにも関する。本発明は、容器と、該容器に接続されたエアロゾル発生器とを備える振動メッシュネブライザーであって、該容器が本発明の組成物を含む、振動メッシュネブライザーに更に関する。
【0158】
本発明の組成物、容器、エアロゾル送達システム、医薬単位剤形及び/又はキットは、1つ又は複数の特定の疾患及び/又は障害を予防、治療及び/又は管理するために被験体に投与することができる。具体的な態様では、本発明の組成物、容器、エアロゾル送達システム、医薬単位剤形及び/又はキットは、1つ又は複数の呼吸器系疾患及び/又は障害を予防、治療及び/又は管理するために被験体に投与される。
【0159】
本発明の組成物、容器、エアロゾル送達システム、医薬単位剤形及び/又はキットを用いて治療、抑制又は予防することのできる呼吸器系疾患及び/又は障害としては、肺炎症(lung inflammation)、慢性閉塞性肺疾患、喘息、肺炎、過敏性肺炎、好酸球増加を伴う肺浸潤、環境性肺疾患、肺炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症、間質性肺疾患、原発性肺高血圧、肺血栓塞栓症、胸膜の障害、縦隔の障害、横隔膜の障害、低換気、過換気、睡眠時無呼吸、急性呼吸促迫症候群、中皮腫、肉腫、移植片拒絶、移植片対宿主病、肺がん、アレルギー性鼻炎、アレルギー、石綿症、アスペルギルス腫、アスペルギルス症、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、好酸球性肺炎、特発性肺線維症、侵襲性肺炎球菌疾患、インフルエンザ、非結核性抗酸菌、胸膜滲出、塵肺、ニューモサイトーシス(pneumocytosis)、肺炎、肺放線菌症、肺胞タンパク症、肺炭疽、肺水腫、肺動脈塞栓、肺炎症(pulmonaryinflammation)、肺ヒスチオサイトーシスX、肺高血圧症、肺ノカルジア症、肺結核、肺静脈閉塞性疾患、リウマチ性肺疾患、サルコイドーシス、ウェゲナー肉芽腫症及び非小細胞肺癌を挙げることができる。具体的な態様では、本発明の組成物、容器、エアロゾル送達システム、医薬単位剤形及び/又はキットは、ウイルス肺感染、より具体的にはhRSV感染を予防、治療及び/又は管理するために被験体に投与される。
【0160】
別の態様では、本発明の組成物、容器、エアロゾル送達システム、医薬単位剤形及び/又はキットは、エアロゾル化による肺投与による本発明のポリペプチドの全身送達に使用される。したがって、本発明の組成物、容器、エアロゾル送達システム、医薬単位剤形及び/又はキットは、本発明のポリペプチド(組成物、容器、エアロゾル送達システム、医薬単位剤形及び/又はキット中に存在する)が特異的に結合する標的に関連する任意の疾患及び/又は障害を予防、治療及び/又は管理するために被験体に投与することができる。例えば、限定されるものではないが、組成物、容器、エアロゾル送達システム、医薬単位剤形及び/又はキットは、腸疾患(大腸炎、クローン病、IBD)等の炎症及び炎症性障害、感染性疾患、乾癬、がん、自己免疫疾患(MS等)、カルチノイド(carcinoid)、移植片拒絶反応、嚢胞性線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチ、ウイルス感染、分類不能型免疫不全症を含む、ヘテロ二量体サイトカイン及びそれらの受容体に関連する疾患及び/又は障害を予防、治療及び/又は管理するために使用することができる。
【0161】
本発明の組成物、容器、エアロゾル送達システム、医薬単位剤形及び/又はキットを用いた、上記に記載のような1つ又は複数の疾患及び/又は障害の予防及び/又は治療も本発明の範囲内に包含される。
【0162】
本発明の組成物、容器、エアロゾル送達システム、医薬単位剤形及び/又はキットは、1つ又は複数の他の療法剤(例えば、1つ又は複数の他の予防薬又は治療薬)、好ましくは(同じ又は別の)疾患及び/又は障害の予防、治療及び/又は管理に有用な療法剤と組み合わせても有利に利用することができる。治療薬又は予防薬としては、小分子、合成薬物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸(例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、三重らせん、RNAi、及び生物学的に活性なタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むが、これらに限定されないDNA及びRNAのヌクレオチド)、抗体、他の免疫グロブリン単一可変ドメイン、合成又は天然の無機分子、模倣薬、及び合成又は天然の有機分子が挙げられるが、これらに限定されない。特定の疾患又は障害に関連する1つ又は複数の症状の予防、治療及び/又は管理に有用であることが知られる、又はそれに使用されていた、若しくは現在使用されている任意の療法剤(例えば予防薬又は治療薬)を、本明細書中に記載の本発明に従って、本発明の組成物と組み合わせて使用することができる。
【0163】
本発明の組成物は、1つ又は複数の他の療法剤(例えば、1つ又は複数の他の予防薬又は治療薬)と同時に、哺乳動物、好ましくはヒトに投与することができる。「同時に」という用語は、予防薬又は治療薬/療法剤の全く同時の投与に限定されず、むしろ本発明の組成物及び他の薬剤/療法剤が、組成物に含有されるポリペプチドが他の薬剤/療法剤とともに作用して、それらが別の形で投与される場合よりも増大した利益をもたらすことができるような時間間隔で順番に哺乳動物に投与されることを意味する。例えば、本発明の組成物及び1つ又は複数の他の予防薬又は治療薬は、同時に、又は異なる時点で任意の順序で連続して投与することができる。ただし、同時に投与しない場合でも、所望の治療効果又は予防効果が得られるように十分に近い時点で投与するものとする。
【0164】
他の療法剤(例えば予防薬及び/又は治療薬)と組み合わせて使用する場合、本発明の組成物及び他の療法剤は相加的又は相乗的に作用することができる。本発明は、他の療法剤(例えば予防薬又は治療薬)と組み合わせた、同じ又は異なる投与経路、例えば肺投与経路及び非経口投与経路による本発明の組成物の投与を企図する。
【0165】
ここで、以下の非限定的な好ましい態様及び実施例を用いて本発明を更に説明する。
【0166】
態様
1.凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、
該組成物が0.001%〜1%の濃度で界面活性剤を更に含み、
該1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、該組成物中に20mg/mL以上の濃度で存在し、かつ/又は
該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法。
2.凝集体形成の量が5%以下、好ましくは4%以下、例えば3%以下、2%以下又は更には1%以下である、態様1に記載の方法。
3.組成物が、0.001%〜1%、好ましくは0.001%〜約0.1%、又は約0.01%〜約0.1%、例えば約0.001%、0.005%、0.01%、0.02%、0.05%、0.08%若しくは0.1%、好ましくは約0.01%の濃度で界面活性剤を更に含む、態様1又は2に記載の方法。
4.界面活性剤が非イオン性洗剤から選択される、態様1〜3のいずれかに記載の方法。
5.界面活性剤がポリソルベート(例えばTween 20及びTween 80)及びポロキサマーから選択されるか、又はPEGを界面活性剤様化合物として添加する、態様1〜4のいずれかに記載の方法。
6.1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL未満の濃度で存在する、態様3〜5のいずれかに記載の方法。
7.1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL以上の濃度で存在する、態様1〜5のいずれかに記載の方法。
8.1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL以上の濃度で存在し、かつ該組成物が界面活性剤を含まない、態様1又は2に記載の方法。
9.ポリペプチドが1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、態様1〜8のいずれかに記載の方法。
10.ポリペプチドが2つ以上、例えば2つ又は3つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、態様1〜8のいずれかに記載の方法。
11.ポリペプチドがRSV又はIL−23に特異的に結合する、態様1〜10のいずれかに記載の方法。
12.ポリペプチドが配列番号1、配列番号2及び配列番号3のうちの1つから選択される態様11に記載の方法。
13.組成物をネブライザーにおいて噴霧化する、態様1〜12のいずれかに記載の方法。
14.ネブライザーが振動メッシュネブライザーである、態様13に記載の方法。
15.エアロゾルが1μm〜10μm、好ましくは1μm〜7μm、最も好ましくは1μm〜5μm、例えばおよそ3μm、3.5μm又は4μmの体積メジアン径を有する、態様1〜14のいずれかに記載の方法。
16.エアゾル中の凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化することによって得ることができる液滴を含むエアロゾルであって、
該組成物が0.001%〜1%の濃度で界面活性剤を更に含み、
該1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、該組成物中に20mg/mL以上の濃度で存在し、かつ/又は
該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、液滴を含むエアロゾル。
17.エアロゾル中の凝集体形成の量が5%以下、好ましくは4%以下、例えば3%以下、2%以下又は更には1%以下である、態様16に記載のエアロゾル。
18.組成物が、0.001%〜1%、好ましくは0.001%〜約0.1%、又は約0.01%〜約0.1%、例えば約0.001%、0.005%、0.01%、0.02%、0.05%、0.08%若しくは0.1%、好ましくは約0.01%の濃度で界面活性剤を更に含む、態様16又は17に記載のエアロゾル。
19.界面活性剤が非イオン性洗剤から選択される、態様16〜18のいずれかに記載のエアロゾル。
20.界面活性剤がポリソルベート(例えばTween 20及びTween 80)及びポロキサマーから選択されるか、又はPEGを界面活性剤様化合物として添加する、態様16〜19のいずれかに記載のエアロゾル。
21.1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL未満の濃度で存在する、態様18〜20のいずれかに記載のエアロゾル。
22.1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL以上の濃度で存在する、態様16〜20のいずれかに記載のエアロゾル。
23.1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL以上の濃度で存在し、かつ該組成物が界面活性剤を含まない、態様16又は17に記載のエアロゾル。
24.ポリペプチドが1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、態様16〜23のいずれかに記載のエアロゾル。
25.ポリペプチドが2つ以上、例えば2つ又は3つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、態様16〜23のいずれかに記載のエアロゾル。
26.ポリペプチドがRSV又はIL−23に特異的に結合する、態様16〜25のいずれかに記載のエアロゾル。
27.ポリペプチドが配列番号1、配列番号2及び配列番号3のうちの1つから選択される態様26に記載のエアロゾル。
28.組成物をネブライザーにおいて噴霧化する、態様16〜27のいずれかに記載のエアロゾル。
29.ネブライザーが振動メッシュネブライザーである、態様28に記載のエアロゾル。
30.エアロゾルが1μm〜10μm、好ましくは1μm〜7μm、最も好ましくは1μm〜5μm、例えばおよそ3μm、3.5μm又は4μmの体積メジアン径を有する、態様16〜29のいずれかに記載のエアロゾル。
31.凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適な組成物であって、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含み、
該組成物が0.001%〜1%の濃度で界面活性剤を更に含み、かつ/又は
該1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、該組成物中に20mg/mL以上の濃度で存在する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適な組成物。
32.凝集体形成の量が5%以下、好ましくは4%以下、例えば3%以下、2%以下又は更には1%以下である、態様31に記載の組成物。
33.0.001%〜1%、好ましくは0.001%〜約0.1%、又は約0.01%〜約0.1%、例えば約0.001%、0.005%、0.01%、0.02%、0.05%、0.08%若しくは0.1%、好ましくは約0.01%の濃度で界面活性剤を含む、態様31又は32に記載の組成物。
34.界面活性剤が非イオン性洗剤から選択される、態様31〜33のいずれかに記載の組成物。
35.界面活性剤がポリソルベート(例えばTween 20及びTween 80)及びポロキサマーから選択されるか、又はPEGを界面活性剤様化合物として添加する、態様34に記載の組成物。
36.1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL未満の濃度で存在する、態様33〜35のいずれかに記載の組成物。
37.1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが25mg/ml以上の濃度で存在する、態様31〜35のいずれかに記載の組成物。
38.1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL以上の濃度で存在し、かつ該組成物が界面活性剤を含まない、態様31又は32に記載の組成物。
39.ポリペプチドが1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、態様31〜38のいずれかに記載の組成物。
40.ポリペプチドが2つ以上、例えば2つ又は3つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含む、態様31〜38のいずれかに記載の組成物。
41.ポリペプチドがRSV又はIL−23に特異的に結合する、態様31〜40のいずれかに記載の組成物。
42.ポリペプチドが配列番号1、配列番号2及び配列番号3のうちの1つから選択される態様41に記載の組成物。
43.組成物中の水性担体が蒸留水、MilliQグレード水又は注射用水(WFI)である、態様1〜15のいずれかに記載の方法、態様16〜30のいずれかに記載のエアロゾル又は態様31〜42のいずれかに記載の組成物。
44.組成物がpH5.5〜pH7.5、好ましくはpH7.0に緩衝される、態様1〜15のいずれかに記載の方法、態様16〜30のいずれかに記載のエアロゾル又は態様31〜42のいずれかに記載の組成物。
45.組成物がPBS、リン酸緩衝液、TrisHCl、ヒスチジン緩衝液及びクエン酸緩衝液から選択される緩衝液、好ましくはリン酸緩衝液で緩衝される、態様44に記載の方法、エアロゾル又は組成物。
46.組成物中の緩衝液が10mM〜100mM、好ましくは10mM〜50mM、例えば10mM又は20mM、特に10mMの濃度を有する、態様45に記載の方法、エアロゾル又は組成物。
47.組成物が等張であるか、又は僅かに低張である、態様1〜15のいずれかに記載の方法、態様17〜30のいずれかに記載のエアロゾル又は態様31〜42のいずれかに記載の組成物。
48.組成物が290±60mOsm/kgのオスモル濃度を有する、態様47に記載の方法、エアロゾル又は組成物。
49.組成物中のオスモル濃度が糖又は塩、好ましくはNaCl、特に130mM NaClの添加によって調整されている、態様47又は48に記載の方法、エアロゾル又は組成物。
50.ポリペプチドを濃縮し、それを選択された緩衝液と交換する工程を少なくとも含む、態様31〜42のいずれかに記載の組成物を調製する方法。
51.界面活性剤を0.001%〜1%、好ましくは0.001%〜約0.1%、又は約0.01%〜約0.1%、例えば約0.001%、0.005%、0.01%、0.02%、0.05%、0.08%若しくは0.1%、好ましくは約0.01%の濃度で添加する工程を更に含む、態様50に記載の方法。
52.界面活性剤が非イオン性洗剤から選択される、態様50又は51に記載の方法。
53.界面活性剤がポリソルベート(例えばTween 20及びTween 80)及びポロキサマーから選択されるか、又はPEGを界面活性剤様化合物として添加する、態様52に記載の方法。
54.ポリペプチドを20mg/mL未満の濃度に濃縮する、態様51〜53のいずれかに記載の方法。
55.ポリペプチドを20mg/ml以上の濃度に濃縮する、態様50〜53のいずれかに記載の方法。
56.ポリペプチドを20mg/mL以上の濃度に濃縮し、かつ界面活性剤を添加しない、態様50に記載の方法。
57.エアロゾル化によってヒト被験体へ送達される薬剤の調製のための態様31〜42のいずれかに記載の組成物の使用。
58.噴霧化によってヒト被験体へ送達される薬剤の調製のための、態様57に記載の組成物の使用。
59.振動メッシュネブライザーにおける噴霧化によってヒト被験体へ送達される薬剤の調製のための、態様58に記載の組成物の使用。
60.態様31〜42のいずれかに記載の組成物を含有する容器。
61.1つ又は複数の態様60に記載の容器と、エアロゾル送達システムにおける投与のための該組成物の使用説明書とを含むキット。
62.エアロゾル送達システムがネブライザーである、態様61に記載のキット。
63.ネブライザーが振動メッシュネブライザーである、態様62に記載のキット。
64.容器と、該容器に接続されたエアロゾル発生器とを備えるエアロゾル送達システムであって、該容器が態様31〜42のいずれかに記載の組成物を含む、エアロゾル送達システム。
65.ネブライザーである、態様64に記載のエアロゾル送達システム。
66.振動メッシュネブライザーである、態様65に記載のネブライザー。
67.治療法に使用される、前述の態様のいずれかに記載の組成物、容器、キット、エアロゾル送達システム又はネブライザー。
68.治療法が呼吸器系疾患の治療である、態様67のに記載の組成物、容器、キット、エアロゾル送達システム又はネブライザー。
69.1つ又は複数の疾患及び/又は障害を予防及び/又は治療する方法であって、態様31〜42のいずれかに記載の組成物を、それを必要とする被験体にエアロゾル化によって投与することを含む、1つ又は複数の疾患及び/又は障害を予防及び/又は治療する方法。
70.態様31〜42のいずれかに記載の組成物を、それを必要とする被験体にエアロゾル化によって投与することを含む、1つ又は複数の呼吸器系疾患を予防及び/又は治療するための、態様69に記載の方法。
71.呼吸器系疾患がRSV感染症である、態様70に記載の方法。
72.組成物を噴霧化によって投与する、態様69〜71のいずれかに記載の方法。
73.組成物を振動メッシュネブライザーによって投与する、態様72に記載の方法。
74.呼吸器系疾患の治療用の薬剤の調製のための前述の態様のいずれかに記載の組成物、容器、キット、エアロゾル送達システム又はネブライザーの使用。
75.呼吸器系疾患がRSV感染症である、態様74に記載の使用。
【実施例】
【0167】
実施例1:ナノボディP23IL0075のネブライザー送達
23IL0075(配列番号1;EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRIFSLPASGNIFNLLTIAWYRQAPGKGRELVATINSGSRTYYADSVKGRFTISRDNSKKTLYLQMNSLRPEDTAVYYCQTSGSGSPNFWGQGTLVTVSSGGGGSGGGSEVQLVESGGGLVQPGNSLRLSCAASGFTFSSFGMSWVRQAPGKGLEWVSSISGSGSDTLYADSVKGRFTISRDNAKTTLYLQMNSLRPEDTAVYYCTIGGSLSRSSQGTLVTVSSGGGGSGGGSEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGRTLSSYAMGWFRQAPGKGREFVARISQGGTAIYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRPEDTAVYYCAKDPSPYYRGSAYLLSGSYDSWGQGTLVTVSS)が、特許文献16に配列番号2622として記載されている。23IL0075は、重鎖ラマ抗体の3つのヒト化可変ドメイン(IL23 p19の異なるエピトープに結合する119A3v16及び81A12v5、並びにHSAに結合するALB8)からなる。両方のナノボディ中のサブユニットを9G/Sリンカーによって頭尾融合する。
【0168】
P23IL0075を、オムロン株式会社のポケットネブライザーMicroAIR(振動メッシュネブライザーに属する)において試験した。このデバイスにおいて、P23IL0075を様々な異なる配合物緩衝液を用いて4mg/mlで試験した。霧化プロセスに対するサンプルの安定性を、霧化前及び霧化後のサンプルをサイズ排除クロマトグラフィー(SE−HPLC)を用いて比較することによって試験した。
【0169】
P23IL0075を、PBS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水)+0.01%Tween80、PBS+0.04%Tween80、10mMヒスチジン(pH6)+10%スクロース+0.01%Tween 80、及び10mM ヒスチジン(pH6)+10%スクロース+0.04%Tween 80中で試験した。0.5mlの各溶液を、オムロン株式会社のポケットネブライザーMicroAIRを用いて霧化した。5マイクロリットルのタンパク質サンプルをSE−HPLC(TSKgel G2000SWXL)カラムに投入した。SE−HPLCでのタンパク質分離を、0.2ml/分で70分間行った。3.25mM NaHPO+6.75mM NaHPO+0.3MアルギニンHCl+0.005%NaN(pH6)を移動相として使用した。溶出タンパク性物質の検出をUV(吸光度280nm)によるオンライン検出によって行った。
【0170】
表1中の結果は、試験した4つ全ての異なる配合物の霧化後SE−HPLCプロファイルが、参照サンプルと比較して僅かなプレピークの増大を示し、可溶性凝集体の相対量の微量の増加が示唆されることを示している。霧化後のタンパク質の回収率を、参照サンプルに対する霧化サンプルの総ピーク面積から算出した。表1中の結果は、ヒスチジン/スクロース中で配合した霧化サンプルが、投入材料と同程度の量のP23IL0075を有することを示している。このことは、材料が霧化時に大幅な分解又は断片化を受けないことを示唆するものである。
【0171】
Tween−80は回収率を増大させ、P23IL0075を凝集及び分解に対して用量依存的に安定させる。霧化後のP23IL0075ナノボディの回収率は、0.04%Tween−80を含有するヒスチジン/スクロース配合物中で100%であり、最低量の可溶性凝集体(3%)が観察された。0.01%Tween−80しか含有しない同様の配合物では、霧化後のP23IL0075の回収率は90%であり、可溶性凝集体の割合は4.8%であった。これらのデータから、Tween−80が霧化後の凝集に対する安定効果を濃度依存的に有することが示唆される。
【0172】
【表1】

表1 参照サンプル(同じ配合物、霧化せず)と比較した、オムロン株式会社のポケットネブライザーMicroAIRによる霧化後の種々の配合物緩衝液中4mg/mLのP23IL0075のSE−HPLC分析データの概要
Formulation Buffer:配合物緩衝液
Total Area:総面積
Pre-peaks:プレピーク
Main peak:主ピーク
Post-peak:ポストピーク
REcovery:回収率
Reference:参照
Nebulized:霧化
Histidine:ヒスチジン
Sucrose:スクロース

【0173】
実施例2:ナノボディRSV420の霧化に対する種々のネブライザーデバイス及びタンパク質濃度の影響
RSV 420は以下の配列を有する:EVQLVESGGGLVQAGGSLSISCAASGGSLSNYVLGWFRQAPGKEREFVAAINWRGDITIGPPNVEGRFTISRDNAKNTGYLQMNSLAPDDTAVYYCGAGTPLNPGAYIYDWSYDYWGRGTQVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQAGGSLSISCAASGGSLSNYVLGWFRQAPGKEREFVAAINWRGDITIGPPNVEGRFTISRDNAKNTGYLQMNSLAPDDTAVYYCGAGTPLNPGAYIYDWSYDYWGRGTQVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQAGGSLSISCAASGGSLSNYVLGWFRQAPGKEREFVAAINWRGDITIGPPNVEGRFTISRDNAKNTGYLQMNSLAPDDTAVYYCGAGTPLNPGAYIYDWSYDYWGRGTQVTVSS)(配列番号3)。
【0174】
RSV 420を、AKITA(商標)JETネブライザー及びAKITA APIXNEB(商標)ネブライザー(Activaero)(それぞれジェットネブライザー及びメッシュネブライザーに属する)において試験した。このデバイスにおいて、RSV 420をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液中、種々の濃度(約1mg/mL、5mg/mL及び20mg/mL)で試験した。霧化プロセスに対するサンプルの安定性を、霧化前及び霧化後のサンプルをサイズ排除クロマトグラフィー(SE−HPLC)を用いて比較することによって試験した。
【0175】
各々の溶液を以下のとおりに霧化した:ネブライザーに500μlの液体を充填し、霧化材料を50ml容のポリプロピレンチューブに収集した。霧化前及び霧化後の各サンプル10μgを、TSK Gel SuperSW3000(流量:0.15ml/分、ランタイム:35分間、移動相:3.9mM KHPO+6.1mM NaHPO+0.4M NaCl(pH7.0);検出波長は280nmに設定した)を用いたSE−HPLCによって分析した。
【0176】
メッシュネブライザー又はジェットネブライザーによる霧化が、SE−HPLCによって分析した場合にプレピークとして認められる、目立たない(discreet)RSV420の多量体形態を誘導することが観察された。表2は、霧化後のサンプルのSE−HPLC分析からの総合データを報告するものである。特に、ジェットネブライザー(AKITA(商標)JET)又はメッシュネブライザー(AKITA APIXNEB(商標))を用いて霧化した種々のRSV420濃度(5.32mg/ml及び22.90mg/ml)からのSE−HPLCデータにおけるプレピークの相対量(オリゴマーの%)を示す。
【0177】
これらの結果から、多量体形態の量がメッシュネブライザーと比較してジェットネブライザーと使用する場合にはるかに顕著であった(最大45%のプレピーク)ことが明らかである。さらに、これらの副生成物の形成は、霧化溶液がより高濃度のタンパク質を含有する場合にはあまり顕著ではなかった。具体的には、RSV 420の溶液をPBS中約20mg/mLの濃度でメッシュネブライザーにより霧化した場合に、エアロゾルにおけるSE−HPLC分析によって認められるプレピークの相対量は多くとも2%であった。
【0178】
【表2】

表2 種々のネブライザーデバイス及び種々のタンパク質濃度を用いて霧化したRSV420における(SE−HPLCデータからの)オリゴマーの割合
Nebulizer type:ネブライザーのタイプ
Protein conc.:タンパク質濃度
%Oligomer:オリゴマーの%
Jet:ジェット
mesh:メッシュ

【0179】
実施例3:ナノボディRSV434の霧化に対する種々の緩衝液/賦形剤の組合せの影響 RSV434(配列番号2;DVQLVESGGGLVQAGGSLSISCAASGGSLSNYVLGWFRQAPGKEREFVAAINWRGDITIGPPNVEGRFTISRDNAKNTGYLQMNSLAPDDTAVYYCGAGTPLNPGAYIYDWSYDYWGRGTQVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQAGGSLSISCAASGGSLSNYVLGWFRQAPGKEREFVAAINWRGDITIGPPNVEGRFTISRDNAKNTGYLQMNSLAPDDTAVYYCGAGTPLNPGAYIYDWSYDYWGRGTQVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQAGGSLSISCAASGGSLSNYVLGWFRQAPGKEREFVAAINWRGDITIGPPNVEGRFTISRDNAKNTGYLQMNSLAPDDTAVYYCGAGTPLNPGAYIYDWSYDYWGRGTQVTVSS)が、国際公開第2010/139808号に配列番号142として記載されている。RSV434は、重鎖ラマ抗体の3つのヒト化可変ドメインからなる。両方のナノボディ中のサブユニットを15G/Sリンカーによって頭尾融合する。
【0180】
RSV434の安定性を、pH3.8〜pH7.0のpH範囲を示す緩衝液/賦形剤組成物中で、種々の組成物におけるRSV434の融解温度(Tm)を測定することによって初めに分析した。溶液中のタンパク質の50%が変性した温度を規定するこのパラメータは、示差走査熱量測定法(DSC)又は熱シフトアッセイ(TSA)によって測定される。
【0181】
DSC実験については、全てのサンプルを試験される緩衝液中0.5mg/mLの濃度にした。サンプル(400μl)を96ウェルプレートにアプライし、DSC設定を以下のとおりにした:最終タンパク質濃度:0.5mg/mL、開始温度:35℃、終了温度:95℃、走査速度:1℃/分、冷却速度:EXP、フィードバックモード:なし、フィルタリング期間:4、スキャン前温度調節:10分、スキャン後温度調節:0分。安定なベースラインを確立するために、各分析は2回の緩衝液のランも含んでいた。ベースラインの減算後にサーモグラムが得られた。
【0182】
DSC結果からTm値が中性pHでより高いことが示された(表3を参照されたい)。
【0183】
【表3】

表3 種々の緩衝液/賦形剤組成物(緩衝液濃度20mM)中のRSV 434(0.5mg/mL)のDSCによるTmの決定
RSV 434の緩衝液
Melting temperature:融解温度
Citrate:クエン酸塩
acetate:酢酸塩
Na-phosphate:リン酸Na

【0184】
次に、6.0〜7.5のpH範囲での選択された緩衝液/賦形剤組成物におけるRSV434の安定性を、種々の緩衝液におけるRSV434の融解温度(Tm)を熱シフトアッセイ(TSA)により測定することによって分析した(図1を参照されたい;表示の全ての緩衝液は0.3Mマンニトールを更に含有する)。
【0185】
タンパク質の熱安定性に対する緩衝液(対)、イオン強度、pH及び賦形剤の影響を評定するために、熱シフトアッセイ(TSA)をQ−PCRデバイスにおいてハイスループット(96ウェルプレート)で行うことができる。アッセイによって試験される緩衝液における熱安定性の指標となるTm値が得られる。簡潔に述べると、このアッセイはタンパク質を熱変性させながら、Sypro Orange等の蛍光色素のシグナル変化を追跡することである。Sypro Orangeを正しく折り畳まれたタンパク質の溶液に添加した場合、Sypro Orangeは水性環境に曝露され、その蛍光シグナルは消光する。温度を上昇させると、タンパク質は熱変性を受け、その疎水性コア領域を露出する。次いで、Sypro Orangeが疎水性領域に結合し、消光を戻し(unquenches)、蛍光シグナルの増大がもたらされる。このアッセイを試験される緩衝液、0.1mg/mLのタンパク質サンプル及び10×Sypro Orangeを含有する溶液に対して行った。プログラムは以下の工程からなっていた:4.4℃/秒のランプ速度で37℃まで加熱し、10秒間保持すること、0.01℃/秒の連続ランプ速度で90℃まで加熱すること(1℃につき66回の取得)、及び2.2℃/秒のランプ速度で37℃まで冷却し、10秒間保持すること。
【0186】
加えて、RSV434の安定性に対する種々の緩衝液/賦形剤組成物の影響を、霧化時にSE−HPLCによって更に分析した。
【0187】
ナノボディRSV434の5mg/ml溶液を、種々の賦形剤の存在下でオムロン株式会社の手持ち式メッシュネブライザーMicroAirによって霧化した。次いで、霧化前及び霧化後のサンプルをサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。
【0188】
簡潔に述べると、RSV434を以下の緩衝液中5mg/mlで配合した:10mMリン酸ナトリウム(pH7.0)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)、10mMリン酸塩(pH7.5)、50mMリン酸塩(pH7.5)、10mM TRIS(pH7.5)、50mM TRIS(pH7.5)、10mMクエン酸塩/リン酸塩(pH6.5)、50mMクエン酸塩/リン酸塩(pH6.5)。各々の溶液に、オスモル濃度調整剤としてグリシン又はマンニトールを最終濃度0.3Mで、又は塩化ナトリウムを最終濃度0.15Mで同様に添加した(表4及び図2を参照されたい)。各々の溶液を以下のとおりに霧化した:ネブライザーに500μlの液体を充填し、霧化材料を50ml容のポリプロピレンチューブに収集した。霧化前及び霧化後の各サンプル10μgを、TSK Gel SuperSW3000(流量:0.15ml/分、ランタイム:35分間、移動相:3.9mM KHPO+6.1mM NaHPO+0.4M NaCl(pH7.0);検出波長は280nmに設定した)を用いたSE−HPLCによって分析した。
【0189】
表4は、霧化前及び霧化後のサンプルのSE−HPLC分析からの総合データを報告するものである。特に、プレピーク及びポストピークの相対量並びに生成物主ピークを示す。メッシュネブライザー又はジェットネブライザーによる霧化が、おそらくはエアロゾル化プロセスにおける空気−水界面への分子の曝露のために、目立たないRSV434の多量体形態を誘導することが観察された。プレピークの総量はかかる多量体形態の形成を表す。総回収率の欄は、霧化後及び霧化前の総面積比に基づく、霧化後に回収される材料の割合を報告するものである。
【0190】
これらの結果から、多量体形態の量が試験した条件のほとんどで10%を超えることが明らかである。例えば10mMリン酸ナトリウム(pH7.0)/0.15M NaCl、50mMリン酸塩(pH7.5)/0.15M NaCl、10mM TRIS(pH7.5)/0.3Mグリシン、50mM TRIS(pH7.5)/0.3Mグリシン、50mMクエン酸塩/リン酸塩(pH6.5)/0.15M NaCl等、幾つかの緩衝液/賦形剤組成物がより低い多量体化をもたらす。タンパク質回収率に関しては、TRISを含有する全ての組合せがより良好な挙動を有する。
【0191】
【表4】

表4 非霧化材料(REF)と比較した、オムロン株式会社のポケットネブライザーMicroAIR(霧化)による霧化後の種々の配合物緩衝液中5mg/mLのRSV434のSE−HPLC分析データの概要
Ppre-peak:プレピーク
main peak:主ピーク
post-peak:ポストピーク
total recovery:総回収率
total % pre-peak:総プレピークの%
Phosphate:リン酸塩
glycine:グリシン
mannitol:マンニトール
citrate:クエン酸塩
nebulized:霧化

【0192】
実施例4:ナノボディRSV434の霧化に対する界面活性剤及び選択された緩衝液/賦形剤組成物の影響
ナノボディRSV434の5mg/ml溶液を、選択された緩働液及び界面活性剤の存在下でオムロン株式会社の手持ち式メッシュネブライザーMicroAirによって霧化した。次いで、霧化前及び霧化後のサンプルをサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。
【0193】
第1の一連の実験においては、RSV434を以下の緩衝液中5mg/mlで配合した:0.9%NaCl(生理食塩水)、10mM TRIS(pH7.5)/0.3Mグリシン、10mMリン酸ナトリウム(pH7.5)/0.15M NaCl、50mMクエン酸塩/リン酸塩(pH6.5)/0.15M NaCl。第2の一連の実験においては、RSV434を以下の緩衝液中5mg/mlで配合した:0.9%NaCl(生理食塩水)、PBS、10mMリン酸ナトリウム(pH7.0)/0.14M NaCl、10mMリン酸ナトリウム(pH7.5)/0.145M NaCl、10mMクエン酸塩/リン酸塩(pH6.5)/0.133M NaCl。これらの緩衝液条件の各々を、0.04%ポリソルベート80(Tween 80)及び/又は0.02%ポリエチレングリコール(PEG)1000を添加せずに又は添加して試験した。各々の溶液を以下のとおりに霧化した:ネブライザーに500μlの液体を充填し、霧化材料を50ml容のポリプロピレンチューブに収集した。霧化前及び霧化後の各サンプル10μgを、TSK Gel SuperSW3000(流量:0.15ml/分、ランタイム:35分間、移動相:3.9mM KHPO+6.1mM NaHPO+0.4M NaCl(pH7.0);検出波長は280nmに設定した)を用いたSE−HPLCによって分析した。
【0194】
表5は、霧化前及び霧化後の第1の一連の実験によるサンプルのSE−HPLC分析からの総合データを報告するものである。特に、プレピーク及びポストピークの相対量並びに生成物主ピークを示す。プレピークの総量は多量体形態の形成を表す。総回収率の欄は、霧化後及び霧化前の総面積比に基づく、霧化後に回収される材料の割合を報告するものである。図3は、霧化後の第2の一連の実験によるサンプルのSE−HPLC分析によって測定されたプレピークの割合を示す。
【0195】
報告された結果から、Tween 80及びPEG 1000の両方について霧化後の多量体物質量の低減に対する有益な効果が明らかである。生理食塩水及び50mMクエン酸塩/リン酸塩(pH6.5)/0.15M NaCl溶液の場合、Tween 80はより良好な挙動を有するようである。一方で、PEG 1000は常に霧化後のタンパク質回収率を増大させるようである。
【0196】
【表5】

表5 非霧化(REF)材料と比較した、オムロン株式会社のポケットネブライザーMicroAIR(霧化)による霧化後の種々の配合物緩衝液中5mg/mLのRSV434のSE−HPLC分析データの概要
surfactant:界面活性剤
pre-peak:プレピーク
main peak:主ピーク
post-peak:ポストピーク
total recovery:総回収率
total % pre-peak:総プレピークの%
glycine:グリシン
phosphate:リン酸塩
citrate:クエン酸塩
nebulized:霧化

【0197】
実施例5:ナノボディRSV434の霧化に対する種々の濃度のポリソルベート(Tween)80の影響
ナノボディRSV434の5mg/ml溶液を、選択された緩働液及び界面活性剤の存在下でメッシュネブライザーAkita Apixneb(Activaero)によって霧化した。次いで、霧化前及び霧化後のサンプルをサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。
【0198】
簡潔に述べると、種々の濃度のTween 80(0、0.005%、0.01%、0.02%、0.04%、0.08%)の存在下で、RSV 434を10mMリン酸ナトリウム(pH7.5)/0.14M NaCl中5mg/mlで配合した。各々の溶液を以下のとおりに霧化した:ネブライザーに500μlの液体を充填し、霧化材料を50ml容のポリプロピレンチューブに収集した。各々の配合物条件を三連で試験した。霧化前及び霧化後の各サンプル10μgを、TSK Gel SuperSW3000(流量:0.15ml/分、ランタイム:35分間、移動相:3.9mM KHPO+6.1mM NaHPO+0.4M NaCl(pH7.0);検出波長は280nmに設定した)を用いたSE−HPLCによって分析した。
【0199】
図4は、霧化前及び霧化後のサンプルのSE−HPLC分析から得られたプレピークの相対量を報告するものである。プレピークの総量は多量体形態の形成を表す。図5は、霧化前及び霧化後のサンプルのSE−HPLC分析に基づく総タンパク質回収率に対するTween 80の影響を示す。
【0200】
得られたデータから、メッシュネブライザーによる霧化後の多量体形態の相対量が、開始溶液における洗剤(具体的にはTween 80)の濃度に依存すると結論付けることができる。0.08%Tween 80の使用は、最低割合のプレピーク(図4)及び最高の面積回収率(図5)をもたらす。
【0201】
最高のタンパク質回収率は、0.08%又は0.04%のTween 80を含有する霧化溶液によって得られる。
【0202】
実施例6:ナノボディRSV434の霧化に対する種々の濃度のポリエチレングリコール(PEG)1000及びPluronic F68(ポロキサマー188;Lutrol F68)の影響
ナノボディRSV434の5mg/ml溶液を、選択された緩働液及び界面活性剤の存在下でメッシュネブライザーAkita Apixneb(Activaero)によって霧化した。次いで、霧化前及び霧化後のサンプルをサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。
【0203】
簡潔に述べると、種々の濃度のPEG 1000(0.02%、0.04%)又はPluronic F68(0.001%、0.02%、0.04%)の存在下で、RSV434を10mMリン酸ナトリウム(pH7.0)/0.13M NaCl中5mg/mlで配合した。各々の溶液を以下のとおりに霧化した:ネブライザーに500μlの液体を充填し、霧化材料を50ml容のポリプロピレンチューブに収集した。霧化前及び霧化後の各サンプル10μgを、TSK Gel SuperSW3000(流量:0.15ml/分、ランタイム:35分間、移動相:3.9mM KHPO+6.1mM NaHPO+0.4M NaCl(pH7.0);検出波長は280nmに設定した)を用いたSE−HPLCによって分析した。
【0204】
表6は、霧化前及び霧化後のサンプルのSE−HPLC分析からの総合データを報告するものである。特に、プレピークの相対量及び生成物主ピークを示す。プレピークの総量は多量体形態の形成を表す。総回収率の欄は、霧化後及び霧化前の総面積比に基づく、霧化後に回収される材料の割合を報告するものである。参照として、同じ実験条件で10mMリン酸ナトリウム(pH7.0)/0.14M NaCl中のRSV434の溶液を用いて、界面活性剤を添加せずに行った先の実験からのデータを報告する。
【0205】
データは、メッシュネブライザーによる霧化後の多量体形態の形成の低減における、濃度0.04%のPEG 1000及び特に濃度0.04%のPluronic F−68の有益な役割を明らかに示している。同じ賦形剤が同じプロセス後の材料のより高い回収率も可能にする。
【0206】
【表6】

表6 非霧化材料(REF)と比較した、Akita Apixnebネブライザー(霧化)による霧化後の種々の賦形剤を含むRSV434の5mg/ml溶液のSE−HPLC分析データの概要
surfactant:界面活性剤
pre-peak:プレピーク
main peak:主ピーク
post-peak:ポストピーク
total recovery:総回収率
total % pre-peak:総プレピークの%
glycine:グリシン
phosphate:リン酸塩
citrate:クエン酸塩
nebulized:霧化
ref. no surfactant:参照(界面活性剤なし)

【0207】
実施例7:ジェットネブライザーによるナノボディRSV434の霧化に対するポリエチレングリコール(PEG)1000、Pluronic F68(ポロキサマー188;Lutrol F68)及びポリソルベート(Tween)80の影響
ナノボディRSV434の5mg/ml溶液を、選択された界面活性剤の存在下でジェットネブライザーAkitaJet(Activaero)によって霧化した。次いで、霧化前及び霧化後のサンプルをサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。
【0208】
簡潔に述べると、RSV434をPEG 1000(0.04%)、Pluronic F68(0.04%)又はTween 80(0.04%、0.08%)の存在下で10mMリン酸ナトリウム(pH7.0)/0.13M NaCl中5mg/mlで配合した。各々の溶液を以下のとおりに霧化した:ネブライザーに2mlの液体を充填し、霧化材料を30mlのPBSを含有するインピンジャーによって収集した。霧化後に溶液をインピンジャーから収集し、50mlに希釈した。タンパク質濃度をOD280測定によって求め、霧化前及び霧化後の各サンプル10μgを、TSK Gel SuperSW3000(流量:0.15ml/分、ランタイム:35分間、移動相:3.9mM KHPO+6.1mM NaHPO+0.4M NaCl(pH7.0);検出波長は280nmに設定した)を用いたSE−HPLCによって分析した。
【0209】
表7は、霧化前及び霧化後のサンプルのSE−HPLC分析からの総合データ結果を報告するものである。特に、プレピークの相対量及び生成物(主ピーク)純度を示す。プレピークの総量は多量体形態の形成を表す。
【0210】
濃度0.04%のPEG 1000及び濃度0.04%のPluronic F−68が、関連性はないがジェットネブライザーによる霧化の場合にも霧化後の多量体形態の形成を減少させるようである。Tween 80の使用は、この目的でより効率的なようである。より高い界面活性剤濃度(0.04%の代わりに0.08%)の使用は、より高分子量の形態(プレピーク)の形成において重大な減少をもたらさない。
【0211】
【表7】

表7 非霧化材料(REF)と比較した、AkitaJetネブライザー(霧化)による霧化後の種々の賦形剤を含むRSV434の5mg/ml溶液のSE−HPLC分析データの概要
surfactant:界面活性剤
pre-peak:プレピーク
main peak:主ピーク
total % pre-peak:総プレピークの%
glycine:グリシン
phosphate:リン酸塩
citrate:クエン酸塩
nebulized:霧化
ref. no surfactant:参照(界面活性剤なし)
【0212】
実施例8:ナノボディRSV434の霧化に対するタンパク質濃度の影響
3つの異なる濃度のナノボディRSV434の溶液を、選択された緩衝液及び界面活性剤としてTween 80の存在下で、メッシュネブライザーAkita Apixneb(Activaero)によって霧化した。次いで、霧化前及び霧化後のサンプルをサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。
【0213】
簡潔に述べると、RSV434を、0.04%Tween 80の存在下又は非存在下で、生理食塩水(0.9%NaCl)又はPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中5mg/ml、25mg/ml及び50mg/mlで配合した。
【0214】
各々の溶液を以下のとおりに霧化した:ネブライザーに500μlの液体を充填し、霧化材料を50ml容のポリプロピレンチューブに収集した。霧化前及び霧化後の各サンプル10μgを、TSK Gel SuperSW3000(流量:0.15ml/分、ランタイム:35分間、移動相:3.9mM KHPO+6.1mM NaHPO+0.4M NaCl(pH7.0);検出波長は280nmに設定した)を用いたSE−HPLCによって分析した。
【0215】
図6は、霧化後のサンプルのSE−HPLC分析から得られたプレピークの相対量を報告するものである。プレピークの総量は多量体形態の形成を表す。RSV434の多量体形態の形成が、どのようにタンパク質の濃度に反比例するかが明らかである。より高いタンパク質濃度(25mg/ml及び50mg/ml)では、多量体形成に対する緩衝液及び界面活性剤の影響はごく僅かであるようである。
【0216】
実施例9:ジェットネブライザーによるナノボディRSV434の霧化に対するタンパク質濃度の影響
3つの異なる濃度のナノボディRSV434の溶液を、選択された緩衝液及び界面活性剤としてTween 80の存在下で、ジェットネブライザーAkitaJet(Activaero)によって霧化した。次いで、霧化前及び霧化後のサンプルをサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。
【0217】
簡潔に述べると、RSV 434を、0.04%Tween 80の存在下又は非存在下で、10mMリン酸ナトリウム(NaHPO/NaHPO)+0.13M NaCl(pH7.0)又はPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中5mg/ml、25mg/ml及び50mg/mlで配合した。
【0218】
各々の溶液を以下のとおりに霧化した:ネブライザーに2mlの液体を充填し、霧化材料を30mlのPBSを含有するインピンジャーによって収集した。霧化後に溶液をインピンジャーから収集し、50mlに希釈した。タンパク質濃度をOD280測定によって求め、霧化前及び霧化後の各サンプル10μgを、TSK Gel SuperSW3000(流量:0.15ml/分、ランタイム:35分間、移動相:3.9mM KHPO+6.1mM NaHPO+0.4M NaCl(pH7.0);検出波長は280nmに設定した)を用いたSE−HPLCによって分析した。
【0219】
図7は、霧化前及び霧化後のサンプルのSE−HPLC分析から得られたプレピークの相対量を報告するものである。プレピークの総量は多量体形態の形成を表す。
【0220】
多量体種の割合の低減におけるTween 80の影響は、低濃度のナノボディ(5mg/ml)でのみ関連性が高い。
【0221】
実施例10:ナノボディRSV434のエアロゾル小滴サイズに対する選択された緩衝液の影響
選択された緩衝液は、0.04%(w:v)Tween80を含む又は含まない10mM NaHPO/NaHPO(pH7.0)+0.13M NaCl、及び0.04%(w:v)Tween80を含む又は含まないPBS緩衝液であった。PBSの組成は、10.14mM NaHPO、1.76mM KHPO、2.67mM KCl及び136.9mM NaCl(pH7.8)であった。等張溶液(約290mOsm/kg)を確保するために、NaClの濃度を(先の実験の0.14Mの代わりに)0.13Mに調整した。
【0222】
表8に記載のように配合したRSV 434のサンプルを、平均小滴サイズを求めるためにAkita Apixnebネブライザーデバイスによる霧化実験に供した(図8)。ネブライザーは4μmのメッシュサイズを有する膜を使用するものであるため、4μm以下の粒子サイズが霧化後に達成される(achieved)ものとする。
【0223】
図8に報告されたデータから、小滴サイズ(レーザー回折によって測定される体積メジアン径すなわちVMD)が種々の配合物にわたって再現可能であり、肺深部への送達に好適であることが分かる(約4μm、濃度50mg/mLの配合物については3.8μm)。
【0224】
【表8】

表8 サンプルのコード、組成及び濃度の詳細
product code:生成物コード
Formulation buffer:配合物緩衝液
Protein conc.:タンパク質濃度

【0225】
実施例11:ナノボディRSV434の霧化材料において形成される凝集体の分子量に対するタンパク質濃度の影響
更なる霧化実験(三連)を、濃度0、0.02%(w/v)及び0.04%(w/v)の界面活性剤を含む、10mM NaHPO/NaHPO(pH7.0)+0.13M NaCl中で配合した濃度5mg/mL及び50mg/mLのRSV 434溶液に対して行った。
【0226】
各々のサンプルを、ガラス容器(100ml容の瓶)を用いて行った収集手順以外は先の実験と同様にして霧化した。
【0227】
霧化後のサンプルのSE−HPLC分析により、RSV 434の多量体形態(プレピーク)の相対量が定量化される(表9を参照されたい)。
【0228】
霧化後の多量体形態の割合に対するTween 80の有意な影響は、ナノボディが50mg/mLの濃度である場合に見ることはできなかった。より低濃度(5mg/mL)では、Tween 80(0.02%(w/v)及び0.04%(w/v))の存在が、霧化材料における総プレピークの割合を半減させた。
【0229】
SE−HPLCクロマトグラムを詳細に分析することで、プレピーク領域における高分子量(HMW)種の相対量を求めることも可能であった(表9及び図9を参照されたい)。RSV434のHMW凝集体は、約200kDa超の分子量を有するサイズ排除クロマトグラフィーにおいて検出される凝集体に相当する。結果は、50mg/mLではTween 80を含まない配合物においてHMW種があまり形成されないことを明らかに示している。5mg/mlでは差は観察されなかった。
【0230】
【表9】

表9. 50mg/mL及び5mg/mLの濃度でのRSV 434の霧化前及び霧化後の総プレピークの割合(%)及び高分子量(HMW)種の割合(%)(SE−HPLCクロマトグラムの総合データから算出される;図9を参照されたい)(n=3)
total pre-peaks:総プレピークの%
% of HMW species(pre-peak 1):HMW種の%(プレピーク1)

【0231】
均等物
以上の明細書は、当業者が本発明を実施するには十分であるとみなされる。実施例が本発明の一態様の単なる例示を目的とし、他の機能的に同等の実施形態が本発明の範囲内であるため、本発明の範囲は提示の実施例によって限定されない。本明細書中に示され説明されたもの以外の本発明の様々な変更形態は、以上の記載から当業者に明らかとなり、添付の特許請求の範囲の範囲内である。本発明の利点は必ずしも本発明の各々の実施形態によって包含されるわけではない。
【0232】
本願全体に引用される全ての参考文献、特許及び公開済特許出願の内容は、特に本明細書中に参照される用途又は主題について、それらの全体が参照により本明細書中に援用される。
【符号の説明】
【0233】
図1
meltingtemperature 融解温度
phosphate リン酸
citrate クエン酸
histidine ヒスチジン
図2
pre-peaks プレピーク
phosphate リン酸
citrate クエン酸
glycine グリシン
mannitol マンニトール
図3
pre-peaks プレピーク
phosphate リン酸
citr/phos クエン酸/リン酸
withoutdetergent 洗剤なし
図4
pre-peaks プレピーク
nebulized 霧化
図5
recovery 回収率
図6
Pre-peaks プレピーク
Saline 生理食塩水

図7
Pre-peaks プレピーク
Na Phosphate リン酸Na
図8
Volume MedianDiameter 体積メジアン径
図9
total ofpre-peaks プレピーク合計
HMW species HMW種
min 分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法であって、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化する工程を含み、
該組成物が0.001%〜1%の濃度で界面活性剤を更に含み、
該1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、該組成物中に20mg/mL以上の濃度で存在し、かつ/又は
該組成物をネブライザーにおいて噴霧化する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルを調製する方法。
【請求項2】
組成物が、0.001%〜1%、0.001%〜約0.1%、若しくは約0.01%〜約0.1%、又は約0.001%、0.005%、0.01%、0.02%、0.05%、0.08%若しくは0.1%、又は約0.01%の濃度で界面活性剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
界面活性剤がポリソルベート(例えばTween 20及びTween 80等)及びポロキサマーから選択されるか、又はPEGを界面活性剤様化合物として添加する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL未満の濃度で存在する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL以上の濃度で存在する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL以上の濃度で存在し、かつ該組成物が界面活性剤を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ネブライザーが振動メッシュネブライザーである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
エアロゾル中の凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含む組成物を噴霧化することによって得ることができる液滴を含むエアロゾルであって、
該組成物が0.001%〜1%の濃度で界面活性剤を更に含み、
該1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、該組成物中に20mg/mL以上の濃度で存在し、かつ/又は
該組成物を振動メッシュネブライザーにおいて噴霧化する、液滴を含むエアロゾル。
【請求項9】
組成物が、0.001%〜1%、0.001%〜約0.1%、若しくは約0.01%〜約0.1%、又は約0.001%、0.005%、0.01%、0.02%、0.05%、0.08%若しくは0.1%、又は約0.01%の濃度で界面活性剤を更に含む、請求項8に記載のエアロゾル。
【請求項10】
界面活性剤がポリソルベート(例えばTween 20及びTween 80等)及びポロキサマーから選択されるか、又はPEGを界面活性剤様化合物として添加する、請求項8又は9に記載のエアロゾル。
【請求項11】
1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL未満の濃度で存在する、請求項9又は10に記載のエアロゾル。
【請求項12】
1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL以上の濃度で存在する、請求項8〜10のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項13】
1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL以上の濃度で存在し、かつ該組成物が界面活性剤を含まない、請求項8に記載のエアロゾル。
【請求項14】
ネブライザーが振動メッシュネブライザーである、請求項8〜13のいずれか一項に記載のエアロゾル。
【請求項15】
凝集体形成の量が6%以下である(凝集体形成の%はSE−HPLCによって求められるようなものである)、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適な組成物であって、水性担体と、1mg/mL〜200mg/mLの濃度で、1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドとを含み、
該組成物が0.001%〜1%の濃度で界面活性剤を更に含み、かつ/又は
該1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが、該組成物中に20mg/mL以上の濃度で存在する、免疫グロブリン単一可変ドメインのエアロゾルの調製に好適な組成物。
【請求項16】
0.001%〜1%、0.001%〜約0.1%、若しくは約0.01%〜約0.1%、又は約0.001%、0.005%、0.01%、0.02%、0.05%、0.08%若しくは0.1%、又は約0.01%の濃度で界面活性剤を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
界面活性剤がポリソルベート(例えばTween 20及びTween 80等)及びポロキサマーから選択されるか、又はPEGを界面活性剤様化合物として添加する、請求項15又は16に記載の組成物。
【請求項18】
1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL未満の濃度で存在する、請求項16又は17に記載の組成物。
【請求項19】
1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが25mg/ml以上の濃度で存在する、請求項15〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
1つ又は複数の免疫グロブリン単一可変ドメインを含むポリペプチドが20mg/mL以上の濃度で存在し、かつ該組成物が界面活性剤を含まない、請求項15に記載の組成物。
【請求項21】
ポリペプチドを濃縮し、それを選択された緩衝液と交換する工程を少なくとも含む、請求項15〜20のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法。
【請求項22】
界面活性剤を0.001%〜1%、0.001%〜約0.1%、若しくは約0.01%〜約0.1%、又は約0.001%、0.005%、0.01%、0.02%、0.05%、0.08%若しくは0.1%、又は約0.01%の濃度で添加する工程を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
界面活性剤がポリソルベート(例えばTween 20及びTween 80等)及びポロキサマーから選択されるか、又はPEGを界面活性剤様化合物として添加する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ポリペプチドを20mg/mL未満の濃度に濃縮する、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
ポリペプチドを20mg/ml以上の濃度に濃縮する、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ポリペプチドを20mg/mL以上の濃度に濃縮し、かつ界面活性剤を添加しない、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
エアロゾル化によってヒト被験体へ送達される薬剤の調製のための請求項15〜20のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項28】
振動メッシュネブライザーにおける霧化によってヒト被験体へ送達される薬剤の調製のための、請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項29】
請求項19又は20に記載の組成物を含有する容器。
【請求項30】
1つ又は複数の請求項29に記載の容器と、エアロゾル送達システムにおける投与のための該組成物の使用説明書とを含むキット。
【請求項31】
ネブライザーが振動メッシュネブライザーである、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
容器と、該容器に接続されたエアロゾル発生器とを備えるエアロゾル送達システムであって、該容器が19又は20に記載の組成物を含む、エアロゾル送達システム。
【請求項33】
振動メッシュネブライザーである、請求項32に記載のエアロゾル送達システム。
【請求項34】
治療法に使用される、請求項1〜33のいずれか一項に記載の組成物、容器、キット、エアロゾル送達システム又はネブライザー。
【請求項35】
治療法が呼吸器系疾患の治療である、請求項34に記載の組成物、容器、キット、エアロゾル送達システム又はネブライザー。
【請求項36】
1つ又は複数の疾患及び/又は障害を予防及び/又は治療する方法であって、請求項15〜20のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする被験体にエアロゾル化によって投与することを含む、1つ又は複数の疾患及び/又は障害を予防及び/又は治療する方法。
【請求項37】
請求項15〜20のいずれか一項に記載の組成物を、それを必要とする被験体にエアロゾル化によって投与することを含む、1つ又は複数の呼吸器系疾患を予防及び/又は治療する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
組成物を振動メッシュネブライザーによって投与する、請求項37に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−519654(P2013−519654A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552404(P2012−552404)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052024
【国際公開番号】WO2011/098552
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(505166225)アブリンクス エン.ヴェー. (28)
【Fターム(参考)】