説明

エアーマットレス及びその製造方法

【課題】エアーマットレスの体圧分散性、通気性を改善するとともに、構造も簡素とし、洗浄を容易とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂又は熱可塑性弾性樹脂を原料又は主原料とし、この三次元網状構造体1aは、押し出し成形によってループ状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着する複数の中空連続線条1bから構成されるスプリング構造体であり、三次元網状構造体1aの端面領域1c、1dにある中空連続線条1bの両端部1eがそれぞれ閉塞されることにより、大気圧を超える圧力の空気が中空連続線条1bの中空部1fに封入されるものであり、中空部1fには空気に代えて、液体(例えば、ゲル等)を封入してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使用者の体形にかかわらず、最適な耐圧分散を実現した、へたりにくいエアーマットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のエアーマットレスは、ほぼ矩形板状に形成され圧縮空気が供給されることで所定の高さ寸法に膨張する主エア−マットと、主エア−マットの上面の長手方向中途部に積層され圧縮空気が供給されることで主エア−マットの上面で所定の高さ寸法に膨張する補助エア−マットと、主エア−マットと補助エア−マットとを被覆した外装体とを具備した発明である。特許文献2のエア−マットレスは、エア−マットレスを形成するよう互いに直線的に固定された三つの互いに独立の気密のセグメントを含むエア−ベッド装置であって、エア−マットレスの各セグメントは相互に独立に膨らませ可能であり、就寝者は各セグメント内の空気圧を変えることにより、自分の頭部、腰部、足部に与えられる支持のレベルを調節することができる発明である。更に、特許文献3のエア−マットレスは、エアーチューブと、このエアーチューブを保持し外装地によって被覆されたマットレス本体と、このマットレス本体内に設けられエアーバッグに圧縮空気を供給するエアー供給ポンプとを具備した発明である。
【0003】
【特許文献1】特開平10−327986号公報
【特許文献2】特開平11−187953号公報
【特許文献3】特開2000−189288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のエヤーマットレスにおいては、もともとコア自体は体圧分散には優れるが、エヤーチューブが太く、円柱状にそれぞれのコアが形成されているため、コアとコアの間隔が広く、段差ができる。そのため、上面にカバーが必要であるため、エアーマットレスの体圧分散が悪化し、通気性もなくなり、構造的にも複雑である。さらに、洗浄も、通常、エヤー発生装置があるため、防水機能が不可欠であり、拭き掃除程度である。したがって、エアーマットレスを洗浄するのが困難であり、常に清潔な状態に保てないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、エアーマットレスの体圧分散性、通気性を改善するとともに、構造も簡素とし、洗浄を容易とすることを目的とする。
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、熱可塑性樹脂製の三次元構造体の中空部に、大気圧を超える圧力の空気を封入したことを特徴とするエアーマットレスである。
【0006】
請求項2の発明の前記三次元構造体は、押し出し成形によってループ状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着する中空連続線条から構成されるスプリング構造の三次元網状構造体であり、該三次元網状構造体の両端面にある前記連続線条の両端面がそれぞれ閉塞されることにより前記空気が前記連続線条の中空部に封入されることが好ましい。
【0007】
請求項3の発明によれば、熱可塑性樹脂製の三次元構造体の中空部に液体を封入したことが好ましい。
【0008】
請求項4の発明によれば、前記液体がゲルであることが好ましい。
【0009】
請求項5の発明によれば、前記三次元網状構造体の嵩比重は、0.007〜0.01、中空率は30〜95%、前記連続線条に封入された空気の圧力は111〜304kPaに設定されていることが好ましい。
【0010】
請求項6の発明は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性弾性樹脂を原料又は主原料とし、押し出し成形によってループ状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着又は熱溶着する、両端部が開端された中空連続線条から構成されるスプリング構造の三次元網状構造体の一端部にある連続線条の開口端を熱で閉塞するステップと、前記端部が閉塞された三次元網状構造体を、内部が大気圧よりも大きな圧力に設定された任意に圧力を変更できる圧力容器に入れ、圧力を負荷したまま前記三次元網状構造体の他端部にある連続線条の開口端を熱で閉塞するステップと、を備えることを特徴とするエアーマットレス製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜6記載のエアーマットレスによれば、封入する空気の圧力により、体圧分散の調整も優れており、空気圧の変更も可能である。また、それぞれの圧力の高まった中空連続線条が、三次元的な絡み方で成型されていて、尚且つそれぞれが、バネとなりえている上に、中空連続線条の内部が圧力空気のため、空気バネとなり、クッション性が向上し、へたりにくくなり、耐荷重の繰り返し試験においても大幅なデータの向上が認められた。その上、構造も簡単で、清掃の容易で、消毒、水洗いも容易である。三次元網状構造体は単一構造体であるので、使用後のリサイクルも容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明実施形態のエアーマットレス1を図面を参照して説明する。このエアーマットレス1は、図1及び図2に示す通り、熱可塑性樹脂又は熱可塑性弾性樹脂を原料又は主原料とし、この三次元網状構造体1aは、押し出し成形によってループ状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着する複数の中空連続線条1bから構成されるスプリング構造体であり、三次元網状構造体1aの端面領域1c、1dにある中空連続線条1bの両端部1eがそれぞれ閉塞されることにより、大気圧を超える圧力の空気が中空連続線条1bの中空部1fに封入されるものである。中空部1fには空気に代えて、液体(例えば、ゲル等)を封入してもよい。
【0013】
三次元網状構造体1aの嵩比重は、0.007〜0.01、中空率は30〜95%、前記中空連続線条に封入された空気の圧力は111〜304kPa(1.1〜3気圧)に設定されている。
【0014】
ここでは、熱可塑性樹脂である原料又は主原料は、PETボトル等のフレーク状又はチップ状を使用する。PETボトルをそのまま粉砕しそれを溶融させてフレーク形状にしたものである。再生以外の熱可塑性樹脂等においても適用可能である。例えば、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン66などのポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、上記樹脂をベースとし共重合したコポリマーやエラストマー、上記樹脂をブレンドしたもの等が挙げられる。酢酸ビニール樹脂、ゴムを混合したポリエチレン樹脂が好適である。また、原料を熱可塑性ウレタンとすれば、低反発で弾力性を保持できる。
【0015】
本実施形態のエアーマットレス1によれば、中空部1fに封入する空気の圧力により、体圧分散の調整もでき、空気圧の変更も可能である。また、それぞれの圧力の高まった中空連続線条1bが、三次元的な絡み方で成型されていて、尚且つそれぞれが、バネとなりえている上に、中空連続線条1bの内部に圧力空気が封入されているため、中空連続空気がバネとなり、クッション性が向上し、へたりにくくなり、耐荷重の繰り返し試験においても大幅なデータの向上が認められた。その上、構造も簡単で、清掃の容易で、消毒、水洗いも容易である。三次元網状構造体1aが単一構造体であるので、使用後のリサイクルも容易である。
【0016】
本実施形態のエアーマットレス1の製造方法を図3〜図5を参照して説明する。本実施形態のエアーマットレス1の製造方法は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性弾性樹脂を原料又は主原料とし、押し出し成形によってループ状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着又は熱溶着する、両端部が開端された中空連続線条1bから構成されるスプリング構造の三次元網状構造原体2を保持部3a,3bで保持し、熱板4で端面領域1cを押し付けて、三次元網状構造原体2の一つの端面領域1cにある中空連続線条1bの開口端を溶融させて閉塞するステップ1と、一端面にある開口端が閉塞された三次元網状構造原体2を、内部が大気圧よりも大きな圧力に設定された任意に圧力を変更できる圧力容器5に入れ、圧力を負荷したまま、三次元網状構造原体2を保持部6a,6bで保持し、熱板7で端面領域1dを押し付けて、前記三次元網状構造原体2の他端面にある中空連続線条1bの開口端を熱で溶融させて閉塞し通気止めをするステップ2と、該三次元網状構造原体2を冷却し、固化させる冷却固化ステップ3と、を備えている。なお、前記三次元網状構造原体2は、熱可塑性樹脂を中空状の中空連続線条1bの多数を下向きノズルより、紡出させ、それぞれの中空連続線条1b同士をランダムに融着させ、冷却固化させて製造するが、その製造方法は、特公昭50−39185号公報、特開昭55−17527号公報、特開昭58−149362号公報、特開平1−207463号公報、特開平1−314771号公報等に記載されているので、説明は援用する。この状態でも、適度な体圧分散を有するが、中空連続線条の端部を閉塞することにより、前記エアーマットレスを同様の効果を得ることができる。
【0017】
本実施形態の変更形態として、三次元網状構造体に代えて、中空成形機により、中空連続線条の中空部に、大気圧よりも大きな圧力に設定された空気を封入した三次元構造体としてもよい。網状としてもよいし、非網状(例えば中空棒状)としてもよい。ベッド枠を固定し、パイプコアを固定し、表面調整を行う。中空成形機としては、特開平6−55616号公報、特開平9−94870号公報、特開2003−89149号公報、特開2004−160670号公報等を参照されたい。
【0018】
本実施形態の変更形態として、三次元網状構造体に代えて、インフレーション装置により、中空連続線条の中空部に、大気圧よりも大きな圧力に設定された空気を封入した三次元構造体としてもよい。網状としてもよいし、非網状(例えば中空棒状)としてもよい。ベッド枠を固定し、パイプコアを固定し、表面調整を行う。インフレーション装置として、特開2000−94495号公報、特開2000−43119号公報等を参照されたい。
【0019】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることができるものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれることとなる。例えば、本発明のエアーマットレスを船などの救命具に使用できる。例えば、前記中空連続線条を複数、例えば20本程度を1つに束ねて1つの救命具を構成することができる。例え、10箇所位で中空連続線条が破損しても問題ない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のエアーマットレスによれば、洗浄が可能で乾きも早いため清潔で使いやすいエアーマットレスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】エアーマットレス1の斜視図である。
【図2】(a)は、連続中空線条1bの軸線方向の縦断面図、(b)は、連続中空線条1bの半径方向の縦断面図である。
【図3】エアーマットレスの製造工程1を示す説明図である。
【図4】エアーマットレスの製造工程2を示す説明図である。
【図5】エアーマットレス1の正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1・・・エアーマットレス 1a・・・三次元網状構造体 1b・・・中空連続線条 1c,1d・・・端面領域
1e・・・両端部 1f・・・中空部 2・・・三次元網状構造原体 3a,3b・・・保持部
4・・・熱板 5・・・圧力容器 6a,6b・・・保持部 7・・・熱板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の三次元構造体の中空部に、大気圧を超える圧力の空気を封入したことを特徴とするエアーマットレス。
【請求項2】
前記三次元構造体は、押し出し成形によってループ状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着する中空連続線条から構成されるスプリング構造の三次元網状構造体であり、該三次元網状構造体の両端面にある前記連続線条の両端部がそれぞれ閉塞されることにより前記空気が前記連続線条の中空部に封入される請求項1のエアーマットレス。
【請求項3】
熱可塑性樹脂製の三次元構造体の中空部に液体を封入したことを特徴とするエアーマットレス。
【請求項4】
前記液体がゲルである請求項3のエアーマットレス。
【請求項5】
前記三次元網状構造体の嵩比重は、0.007〜0.01、中空率は30〜95%、前記連続線条に封入された空気の圧力は111〜304kPaに設定されている請求項1のエアーマットレス。
【請求項6】
熱可塑性樹脂又は熱可塑性弾性樹脂を原料又は主原料とし、押し出し成形によってループ状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着又は熱溶着する、両端部が開端された中空連続線条から構成されるスプリング構造の三次元網状構造体の一端面にある連続線条の開口端を熱で閉塞するステップと、
前記端部が閉塞された三次元網状構造体を、内部が大気圧よりも大きな圧力に設定された任意に圧力を変更できる圧力容器に入れ、圧力を負荷したまま前記三次元網状構造体の他端面にある連続線条の開口端を熱で閉塞するステップと、
該三次元網状構造体を冷却し、固化させる冷却固化ステップと、
を備えることを特徴とするエアーマットレス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−130059(P2007−130059A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323482(P2005−323482)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(500037735)株式会社ジャテックス (7)
【出願人】(500393642)株式会社中部化学機械製作所 (1)
【Fターム(参考)】