説明

エキスパンダーロール調整装置及びその方法

【課題】エキスパンダーロール調整装置及びその方法を提供する。
【解決手段】投光部によって、すき入れ画像を含む領域に光を照射し、画像データを受光する受光部から成る画像入力部と、基準画像データ及びエキスパンダーロール調整基準データを記憶するための記憶部と、前記画像入力部で得られた反射画像データ及び/又は透過画像データと、記憶部にあらかじめ記憶された前記基準画像データを比較演算し、差分画像データを算出する差分画像データ算出部と、前記差分画像データから特徴数値を算出する統計値演算部と、前記統計値演算部で算出された前記特徴数値をもとに、記憶部に記憶された前記エキスパンダーロール調整基準データと比較演算し、エキスパンダーロール調整データを取得するエキスパンダーロール調整データ取得部と、前記エキスパンダーロール調整データをもとにエキスパンダーロールの位置等の調整を行う駆動調整部から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機で抄造されるすき入れ用紙において、すき入れ位置制御及びすき入れ付与後に生じる用紙の皺、折り目を防止するためのエキスパンダーロール調整装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1にすき入れ紙を製造する抄紙機21の全体構成を示す。抄紙機は、網帯からなり、循環するエンドレスな抄紙用のワイヤ22を有する。このワイヤ22は、サクションクーチロール23とブレストロール24との間に架け渡され、ワイヤ22に沿って内側に配置された図示しない複数のロールにより支持され、案内されて循環移動する。
【0003】
ワイヤ22の上流部(ワイヤの上面における移動始端部)には、上流側から下流側に向けて、紙料供給槽25が配設されている。紙料供給槽25には紙料26が充填され、適宜、図示しない供給源から補給され、所定の液位を維持するように制御されている。紙料26は主にパルプ繊維、水、薬品及びてん料などから成る。
【0004】
紙料供給槽25における下流部分には、紙料目止め板27a、27b、27cが配置されている。供給された紙料26は、紙料用目止め板27a、27b、27cとワイヤ22との隙間を流出し、ワイヤ22の上に紙料マット28を形成し抄紙を可能とする。
【0005】
ワイヤ22の下流部(ワイヤの上面の移動終端部)の下側には、サクションボックス29が配置されている。このサクションボックス29は、抄紙工程におけるワイヤ22の下流部において、紙料マット28内に含まれている水を強制吸引して脱水するものである。
【0006】
ワイヤ22で形成された用紙は、上流側から、プレス部トップロール30、プレス部ボトムロール31、ペーパロール32、33、34、エキスパンダーロール35及び乾燥装置36が配設され、下流の巻取ロール37に送る。なお、すき入れは、周知のプレスロール又はダンディーロール38によって形成される。乾燥装置36は、周知の乾燥装置を利用する。
【0007】
エキスパンダーロール35は、乾燥装置36ですき入れが形成された湿紙状態の用紙に発生する用紙の皺、折れ目を防止するために用いられている。エキスパンダーロール35は湿紙状態の用紙を伸ばすことで用紙に発生する皺を抑制する働きがあるが、更に用紙のすき入れ位置制御にも用いられている。つまり、エキスパンダーロール35を用いることでペーパロール34から乾燥装置36の用紙走行距離を制御することで、すき入れのねじれ又はすき入れの湾曲の傾向を改善することができる。ここでのすき入れのねじれとは、例えば、図2(a)のすき入れ位置を基準とした場合に図2(b)乃至図2(c)に示すように、中央のすき入れの位置に対して片方又は両サイドのすき入れの位置が対角線の位置にずれる状態をいう。ここでのすき入れの湾曲とは、図3(a)のすき入れ位置を基準とした場合に図3(b)及び図3(c)に示すように中央のすき入れの位置に対して両サイドのすき入れの位置が同一方向の位置にずれる状態をいう。
【0008】
図4に示すようにエキスパンダーロール35は湾曲された形状から成り、用紙の弛み、皺、折れ目、すき入れのねじれ又はすき入れの湾曲の発生に伴い、湾曲量調整ハンドル39を回転させることによって湾曲量を角度調整ハンドル40を回転させることによって用紙の流れ方向に対するエキスパンダーロール35の配置角度を位置調整ハンドル41を回転させることによって用紙の流れ方向に対するエキスパンダーロール35の配置位置を調整している。
【0009】
エキスパンダーロールについては、シャフト下半部に切り欠き部を設けることにより、シャフト上半部と下半部に剛性の差異を形成し、シャフト内に通挿されたテンションバーに引っ張り荷重を加え、その反作用としての圧縮力をシャフト本体に作用させて、自在に所要の湾曲量に設定し得るロール用シャフトが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
しかし、上記特許文献1のエキスパンダーロールは、湾曲量の調整を手作業で行わなければならず、調整に手間がかかるという問題があった。この問題を解決するためにエキスパンダーロールを構成するシャフトの一端部が固定されると共に、同他端部にはテンションバーを介して減速機付きモータにより作動自在なボールネジが押圧自在に当接されて成ることを特徴とする湾曲調整自在なエキスパンダーロールが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭54−7915号公報
【特許文献2】実公平6−9039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1及び2のいずれにおいても、エキスパンダーロールの調整を行うためには、作業者が目視で用紙の弛み、皺、折れ目、すき入れのねじれ又はすき入れの湾曲等を常に監視しておかなければならないという問題がある。さらに、湿紙状態の用紙は皺が入りやすいため、調整作業にはある程度の経験と熟練が必要とされ、作業員の技術に頼るところが大きいという問題がある。
【0013】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、エキスパンダーロールの湾曲量、配置角度、配置位置を熟練された作業員の経験に頼ることなく調整でき、さらに、作業員が常に目視で抄紙状態を監視し続ける必要がないエキスパンダーロール調整装置及びその方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、抄紙機上の用紙のすき入れ位置制御及び皺を防止するためのエキスパンダーロール調整装置において、すき入れが形成された用紙に前記エキスパンダーロールを通過後に光源から光を照射する投光部と、すき入れ画像を含む領域の反射画像データ及び/又は透過画像データを受光する受光部とから成る画像入力部と、基準画像データ及びエキスパンダーロール調整基準データをあらかじめ記憶するための記憶部と、前記画像入力部で得られた反射画像データ及び/又は透過画像データと、記憶部にあらかじめ記憶された前記基準画像データとを比較演算し、差分画像データを算出する差分画像データ算出部と、 前記差分画像データから特徴数値を算出する統計値演算部と、前記統計値演算部で算出された前記特徴数値をもとに、あらかじめ記憶部に記憶された前記エキスパンダーロール調整基準データと比較演算し、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つを取得するエキスパンダーロール調整データ取得部と、前記位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータをもとにエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行う駆動調整部から成ることを特徴とするエキスパンダーロール調整装置である。
【0015】
また、本発明は、抄紙機上の用紙のすき入れ位置制御及び皺を防止するためのエキスパンダーロール調整装置において、すき入れが形成された用紙に前記エキスパンダーロールを通過後に光源から光を照射する投光部と、すき入れ画像を含む領域の反射画像データ及び/又は透過画像データを受光する受光部とから成る画像入力部と、すき入れ基準位置データ及びエキスパンダーロール調整基準データをあらかじめ記憶するための記憶部と、前記画像入力部で得られた反射画像データ及び/又は透過画像データと、記憶部にあらかじめ記憶された前記すき入れ基準位置データとを比較演算し、すき入れずれ量データを算出するずれデータ算出部と、前記ずれデータ算出部で算出された前記すき入れずれ量データをもとに、あらかじめ記憶部に記憶された前記エキスパンダーロール調整基準データと比較演算し、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つを取得するエキスパンダーロール調整データ取得部と、前記位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータをもとにエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行う駆動調整部から成ることを特徴とするエキスパンダーロール調整装置である。
【0016】
また、本発明の前記統計値演算部は、前記差分画像データからヒストグラムを算出し、前記ヒストグラムから前記特徴数値を算出することを特徴とするエキスパンダーロール調整装置である。
【0017】
また、本発明は、画像入力部と、記憶部と、差分画像データ算出部と、統計値演算部と、エキスパンダーロール調整データ取得部及び駆動調整部とを備えるエキスパンダーロール調整装置を用いた、抄紙機上の用紙のすき入れ位置制御及び皺を防止するためのエキスパンダーロール湾曲調整方法であって、前記画像入力部により、すき入れが形成された用紙に前記エキスパンダーロールを通過後に設けられた投光部から、光を照射し、受光部ですき入れ画像を含む領域の反射画像データ及び/又は透過画像データを取得し、前記差分画像データ算出部により、前記得られた反射画像データ及び/又は透過画像データと、前記記憶部にあらかじめ記憶された前記基準画像データとを比較演算し、差分画像データを算出し、前記統計値演算部により、前記差分画像データから特徴数値を算出し、前記エキスパンダーロール調整データ取得部により、前記特徴数値と、前記記憶部にあらかじめ記憶されたエキスパンダーロール調整基準データと比較演算し、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つを取得し、前記駆動調整部により、前記位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータをもとにエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行うことを特徴とするエキスパンダーロール湾曲調整方法である。
【0018】
また、本発明は、画像入力部と、記憶部と、ずれデータ算出部と、統計値演算部と、エキスパンダーロール調整データ取得部及び駆動調整部とを備えるエキスパンダーロール調整装置を用いた、抄紙機上の用紙のすき入れ位置制御及び皺を防止するためのエキスパンダーロール湾曲調整方法であって、前記画像入力部により、すき入れが形成された用紙に前記エキスパンダーロールを通過後に設けられた投光部から、光を照射し、受光部ですき入れ画像を含む領域の反射画像データ及び/又は透過画像データを取得し、前記ずれデータ算出部により、前記得られた反射画像データ及び/又は透過画像データと、前記記憶部にあらかじめ記憶された前記すき入れ基準位置データとを比較演算し、すき入れずれ量データを算出し、前記エキスパンダーロール調整データ取得部により、前記すき入れずれ量データを、前記記憶部にあらかじめ記憶されたエキスパンダーロール調整基準データと比較演算し、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つを取得し、前記駆動調整部により、前記位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータをもとにエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行うことを特徴とするエキスパンダーロール湾曲調整方法である。
【0019】
また、本発明の前記統計値演算部は、前記差分画像データからヒストグラムを算出し、前記ヒストグラムから前記特徴数値を算出することを特徴とするエキスパンダーロール湾曲調整方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のエキスパンダーロール調整装置及びその方法は、用紙の弛み、皺、折れ目、すき入れのねじれ又はすき入れの湾曲のデータをもとに、エキスパンダーロールの湾曲量、配置角度、配置位置の自動調整が可能となる。したがって、従来のような作業員による個人差が出ることなく、熟練作業員の経験に頼る必要がない。また、抄紙機上での作業員が目視で用紙の皺の発生や用紙の弛み度合等を監視し続ける必要がないため、作業員の負担を軽減することができる。さらに、すき入れ位置の群内変動に対する修正ができるため、すき入れ位置の均質化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】すき入れ紙を製造する抄紙機21の全体構成を示す図である。
【図2】すき入れのねじれの説明図である。
【図3】すき入れの湾曲の説明図である。
【図4】従来のエキスパンダーロール35を示す図である。
【図5】エキスパンダーロール調整装置1のブロック図を示す図である。
【図6】画像入力部2a及び2bを示す図である。
【図7】画像入力部の受光部のその他の形態を示す図である。
【図8】反射画像データ10、基準画像データ13を示す図である。
【図9】エキスパンダーロール調整基準データ15を示す図である。
【図10】差分画像データ16を示す図である。
【図11】差分画像データ16からヒストグラム17を求め、特徴数値である平均値及び/又は分散値を算出する説明図である。
【図12】駆動調整部7を示す図である。
【図13】エキスパンダーロール調整装置1´のブロック図を示す図である。
【図14】すき入れ位置のずれを有する反射画像データ10´を示す図である。
【図15】すき入れ基準位置データ18を示す図である。
【図16】エキスパンダーロール調整基準データ15´を示す図である。
【図17】駆動調整部7´を示す図である。
【図18】すき入れのねじれに対するエキスパンダーロールの位置変更の例を示す図である。
【図19】すき入れの湾曲に対するエキスパンダーロールの角度変更の例を示す図である。
【図20】エキスパンダーロール湾曲調整方法Sの流れを示すフローチャートを示す図である。
【図21】エキスパンダーロール湾曲調整方法S´の流れを示すフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている技術の範疇であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
【0023】
本発明のエキスパンダーロール調整装置は、図1に示した従来の一般的な抄紙機に設置可能である。図1に示すように抄紙機は、網帯からなり、循環するエンドレスな抄紙用のワイヤ22を有する。このワイヤ22は、サクションクーチロール23とブレストロール24との間に架け渡され、ワイヤ22に沿って内側に配置された図示しない複数のロールにより支持され、案内されて循環移動する。
【0024】
ワイヤ22の上流部(ワイヤの上面における移動始端部)には、上流側から下流側に向けて、紙料供給槽25が配設されている。紙料供給槽25には紙料26が充填され、適宜、図示しない供給源から補給され、所定の液位を維持するように制御されている。紙料26は主にパルプ繊維、水、薬品及びてん料などから成る。
【0025】
紙料供給槽25における下流部分には、紙料目止め板27a、27b、27cが配置されている。供給された紙料26は、紙料用目止め板27a、27b、27cとワイヤ22との間の隙間を流出し、ワイヤ22の上に紙料マット28を形成し抄紙を可能とする。
【0026】
ワイヤ22の下流部(ワイヤの上面の移動終端部)の下側には、サクションボックス29が配置されている。このサクションボックス29は、抄紙工程におけるワイヤ22の下流部において、紙料マット28内に含まれている水を強制吸引して脱水するものである。
【0027】
ワイヤ22で形成された用紙は、上流側から、プレス部トップロール30、プレス部ボトムロール31、ペーパロール32、33、34、エキスパンダーロール35及び乾燥装置36が配設され、下流の巻取ロール37に送る。なお、すき入れは、周知のプレスロール又はダンディーロール38によって形成される。乾燥装置36は、周知の乾燥装置を利用する。
【0028】
なお、本発明のエキスパンダーロール調整装置が設置できる抄紙機は図1に例示した抄紙機に限定されるものではない。
【0029】
以下に本発明のエキスパンダーロール調整装置及びその方法について詳細に説明する。
【0030】
図5はエキスパンダーロール調整装置1のブロック図を示す図である。図6は画像入力部2a及び2bを示す図である。図7は画像入力部の受光部のその他の形態を示す図である。図8は反射画像データ10、基準画像データ13を示す図である。図9はエキスパンダーロール調整基準データ15を示す図である。図10は差分画像データ16を示す図である。図11は差分画像データ16からヒストグラム17を求め、特徴数値である平均値及び/又は分散値を算出する説明図である。図12は駆動調整部7を示す図である。図13はエキスパンダーロール調整装置1´のブロック図を示す図である。図14はすき入れ位置のずれを有する反射画像データ10´を示す図である。図15はすき入れ基準位置データ18を示す図である。図16はエキスパンダーロール調整基準データ15´を示す図である。図17は駆動調整部7´を示す図である。図18はすき入れのねじれに対するエキスパンダーロールの位置変更の例を示す図である。図19はすき入れの湾曲に対するエキスパンダーロールの角度変更の例を示す図である。図20はエキスパンダーロール湾曲調整方法Sの流れを示すフローチャートを示す図である。図21はエキスパンダーロール湾曲調整方法S´の流れを示すフローチャートを示す図である。
【0031】
(エキスパンダーロール調整装置1)
図5に本発明の用紙のすき入れ位置制御及び皺を防止するためのエキスパンダーロール調整装置1のブロック図を示す。図5に示すように本発明のエキスパンダーロール調整装置1は、画像入力部2と、記憶部3と、差分画像データ算出部4と、統計値演算部5と、エキスパンダーロール調整データ取得部6及び駆動調整部7とを備えて成る。
【0032】
画像入力部2は、図1に示したすき入れが形成された用紙にエキスパンダーロール35を通過後に光源から光を照射する投光部と、すき入れ画像を含む領域の弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常の少なくとも一つを有する反射画像データ及び/又は透過画像データを受光する受光部とから成る(なお、すき入れが形成された用紙には弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常が発生したと仮定する。)。投光部は白熱球、発光ダイオード、ハロゲンランプ、HIDランプ、LEDスポット照明等の光を照射できるものであれば特に限定されるものではない。受光部は、CCDラインセンサカメラ又はCCDエリアセンサカメラ等によって反射画像データ及び/又は透過画像データが取得できれば特に限定されるものではない。
【0033】
反射画像データは、図6(a)に示すように画像入力部2aによって取得され、投光部8aからすき入れWが付与された用紙Pに光が照射され、反射された画像を受光部9aで取得する。図6(a)に示す投光部8aは一つの白熱球等を有しているが、本発明はこれに限定されることなく、二つ以上の白熱球等を有していれば良い。透過画像データは、図6(b)に示すように画像入力部2bによって取得され、投光部8bからすき入れWが付与された用紙Pに光が照射され、透過された画像を受光部9bで取得する。図6(b)に示す投光部8bは一つの白熱球等を有しているが、本発明はこれに限定されることなく、一個以上の白熱球等を有していれば良い。また、図6(a)及び図6(b)に示した受光部は一個であるが、本発明はこれに限定されることなく、図7に示すように複数の受光部を設けることができる。図7に示した受光部の複数のカメラは、幅方向に沿って配列され、オーバーラップ領域を有して、すき入れ画像が形成された用紙の幅方向を分割して反射画像データ及び/又は透過画像データを分割して取得してもよい。
【0034】
図8(a)に図6(a)に示した画像入力部2aによって取得された皺を有する反射画像データ10を示す。図8(a)に示すように反射画像データ10はすき入れ画像11及び皺12を有している。
【0035】
記憶部3には、基準画像データ及びエキスパンダーロール調整基準データがあらかじめ記憶されている。記憶部3は、ハードディスク、フィレキシブルディスク、MO及びUSB等、特に限定されるものではない。図8(b)に基準画像データ13を示す。基準画像データ13は、基準となるすき入れ画像14を有する。図9にエキスパンダーロール調整基準データ15を示す。エキスパンダーロール調整基準データ15は、特徴数値範囲と、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つが記憶されており、エキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整するため、後述する特徴数値をもとに位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つを算出する。図9では、後述する特徴数値をA〜C範囲、D〜F範囲、G〜I範囲、J〜L範囲、M〜P範囲の5範囲に分割した後、特徴数値の範囲に応じた位置調整データをレベル1〜レベル5の5段階に分割し、所定レベルの位置調整データを算出する。また、後述する特徴数値をA〜B範囲、C〜D範囲、E〜F範囲、G〜H範囲、I〜P範囲の5範囲に分割した後、特徴数値の範囲に応じた角度調整データをレベル1〜レベル5の5段階に分割し、所定レベルの角度調整データを算出する。さらに、後述する特徴数値をA〜C範囲、D〜F範囲、G〜H範囲、I〜J範囲、K〜P範囲の5範囲に分割した後、特徴数値の範囲に応じた湾曲量調整データをレベル1〜レベル5の5段階に分割し、所定レベルの湾曲量調整データを算出する。本発明は図9に示した特徴数値範囲、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データは5段階の分割された範囲に限定されることなく、n段階(nは3以上の整数)に分割することができる。特徴数値、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データは数値データであり、特徴数値A〜Pの分割範囲は、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データのレベル分割段階と同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
【0036】
差分画像データ算出部4は、画像入力部2で得られた反射画像データ及び/又は透過画像データと、記憶部3にあらかじめ記憶された基準画像データを比較演算し、差分画像データを算出する。例えば、図10に示すように差分画像データ16は、図8(a)に示したすき入れ画像11及び皺12を有する反射画像データ10から、図8(b)に示した基準となるすき入れ画像14を有する基準画像データ13を比較演算して差分画像データ16を算出する。差分画像データ16はすき入れ画像11及び皺12を有する反射画像データ10から、基準となるすき入れ画像14を有する基準画像データ13の差分を算出することによって皺12のみデータとなる。ただし、反射画像データ10のすき入れ画像11と基準画像データ13の基準となるすき入れ画像14の差分であるすき入れ画像が残る場合がある。この場合は、差分画像データ16を濃度補正し、低濃度であるすき入れ画像を濃度補正して除去しても良い。
【0037】
統計値演算部5は、差分画像データから特徴数値を算出する。特徴数値の算出は種々の方法があり、特に限定されるものではない。例えば、図11に示すように差分画像データ16からヒストグラム17を求め、特徴数値である平均値及び/又は分散値を算出することができる。
【0038】
エキスパンダーロール調整データ取得部6は、統計値演算部5で算出された特徴数値をもとに、あらかじめ記憶部3に記憶されたエキスパンダーロール調整基準データと比較演算し、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データを取得する。例えば、図10に示した差分画像データ16からヒストグラム17を求め、ヒストグラム17から得られた平均値を、図9に示したエキスパンダーロール調整基準データ15に当てはめて、レベル1乃至レベル5のいずれかの位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータを算出する。
【0039】
駆動調整部7は、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータをもとにエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行う。駆動調整部7は、図12に示めすように、エキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行う。駆動調整部7のエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整はモータ駆動方式等、特に限定されるものではない。
【0040】
(エキスパンダーロール調整装置1´)
図13に本発明の用紙のすき入れ位置制御及び皺を防止するためのエキスパンダーロール調整装置1´のブロック図を示す。図13のエキスパンダーロール調整装置1´は図5に示したエキスパンダーロール調整装置1とは別の実施の形態である。図13に示すように本発明のエキスパンダーロール調整装置1´は、画像入力部2´と、記憶部3´と、ずれデータ算出部4´と、エキスパンダーロール調整データ取得部6´及び駆動調整部7´とを備えて成る。
【0041】
画像入力部2´は、図1に示したすき入れが形成された用紙にエキスパンダーロール35を通過後に光源から光を照射する投光部と、すき入れ画像を含む領域の弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常の少なくとも一つを有する反射画像データ及び/又は透過画像データを受光する受光部とから成る(なお、すき入れが形成された用紙には弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常が発生したと仮定する。)。投光部は白熱球、発光ダイオード、ハロゲンランプ、HIDランプ、LEDスポット照明等の光を照射できるものであれば特に限定されるものではない。受光部は、CCDラインセンサカメラ又はCCDエリアセンサカメラ等によって反射画像データ及び/又は透過画像データが取得できれば特に限定されるものではない。
【0042】
反射画像データ、透過画像データについては、エキスパンダーロール調整装置1に示した図6及び図7と同様である。
【0043】
図14に画像入力部2´によって取得されたすき入れ位置のずれを有する反射画像データ10´を示す。図14に示すように反射画像データ10´はすき入れのねじれによるすき入れ画像11a、11b、11cを有する。すき入れ画像11aを基準とした場合に、すき入れ画像11bは用紙流れ方向にずれを有し、すき入れ画像11cは用紙流れ方向とは逆方向にずれを有している。図14は、すき入れのねじれによるすき入れ位置のずれを示しているが、本発明はこれに限定されることなく、図3に示したすき入れの湾曲のずれであっても良い。
【0044】
記憶部3´には、すき入れ基準位置データ、エキスパンダーロール調整基準データがあらかじめ記憶されている。記憶部3´は、ハードディスク、フィレキシブルディスク、MO及びUSB等、特に限定されるものではない。図15に示すように例えば、すき入れ基準位置データ18は、すき入れ画像Aの基準座標データ座標(X、Y)、すき入れ画像Bの基準座標データ座標(X、Y)、すき入れ画像Cの基準座標データ座標(X、Y)が登録されている。すき入れ基準位置データ18のすき入れ画像の基準座標データ座標データの個数は特に限定されるものではない。
【0045】
図16にエキスパンダーロール調整基準データ15´を示す。エキスパンダーロール調整基準データ15´は、すき入れずれ量データと、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つが記憶されており、エキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つを調整するため、後述するすき入れずれ量データをもとに位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つを算出する。図16では、後述するすき入れずれ量データをA〜C範囲、D〜F範囲、G〜I範囲、J〜L範囲、M〜P範囲の5範囲に分割した後、すき入れずれ量データの範囲に応じた位置調整データをレベル1〜レベル5の5段階に分割し、所定レベルの位置調整データを算出する。また、後述するすき入れずれ量データをA〜B範囲、C〜D範囲、E〜F範囲、G〜H範囲、I〜P範囲の5範囲に分割した後、すき入れずれ量データの範囲に応じた角度調整データをレベル1〜レベル5の5段階に分割し、所定レベルの角度調整データを算出する。さらに、後述するすき入れずれ量データをA〜C範囲、D〜F範囲、G〜H範囲、I〜J範囲、K〜P範囲の5範囲に分割した後、すき入れずれ量データの範囲に応じた湾曲量調整データをレベル1〜レベル5の5段階に分割し、所定レベルの湾曲量調整データを算出する。本発明は、図16に示したすき入れずれ量データ範囲、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データは5段階の分割された範囲に限定されることなく、n段階(nは3以上の整数)に分割することができる。すき入れずれ量データ、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データは数値データであり、すき入れずれ量データA〜Pの分割範囲は、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データのレベル分割段階と同一であっても、それぞれ異なっていても良い。すき入れずれ量データの個数については、特に限定されるものではない。
【0046】
ずれデータ算出部4´は、画像入力部2´で得られた反射画像データ及び/又は透過画像データと、記憶部3´にあらかじめ記憶されたすき入れ基準位置データを比較演算し、すき入れずれ量データを算出する。ずれデータ算出部4´はすき入れずれ量データを算出しているが、本発明はこれに限定されることなく、すき入れのねじれ、すき入れの湾曲のずれ種別データを選別することも可能である。
【0047】
エキスパンダーロール調整データ取得部6´は、ずれデータ算出部4´で算出されたすき入れずれ量データをもとに、あらかじめ記憶部3´に記憶されたエキスパンダーロール調整基準データ15´と比較演算し、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データを取得する。図16に示したエキスパンダーロール調整基準データ15´に当てはめて、レベル1乃至レベル5のいずれかの位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータを算出する。
【0048】
駆動調整部7´は、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータをもとにエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行う。駆動調整部7´は、図17に示めすように、エキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行う。駆動調整部7´のエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整はモータ駆動方式等、特に限定されるものではない。
【0049】
例えば、すき入れのねじれの対応としては、図2(b)に示したすき入れのねじれが生じた場合は、中央のすき入れ位置Bに対してすき入れ位置Cが用紙流れ方向に進んでいることから、すき入れ位置Cを遅らせる必要があり、図18(a)のようにエキスパンダーロール35の奥の軸を視点として、手前側のロール位置を用紙流れ方向側へ移動することで、奥側に対する手前側のぺーパロール34から乾燥装置36間の距離を長くする。その結果、すき入れ位置Cの用紙流れ方向の進行が遅れ、すき入れ位置Cが基準となる中央のすき入れ位置Bに対して用紙流れ方向と同位置となる。また、エキスパンダーロール35の手前の軸を視点として奥側のロール位置を用紙流れ逆方向側へ移動することで、奥側に対する手前側のペーパロール34から乾燥装置36間の距離を長くすることも可能である。その結果、すき入れ位置Cの用紙流れ方向の進行が遅れ、すき入れ位置Cが基準となる中央のすき入れ位置Bに対して用紙流れ方向と同位置となる。図2(c)に示したすき入れのねじれが生じた場合は、図2(b)と逆の傾向であるため、図18(a)のようにエキスパンダーロール35の奥の軸を視点として手前側のロール位置を用紙流れ逆方向側へ移動することで、奥側に対する手前側のペーパロール34から乾燥装置36間の距離を短くする。その結果、すき入れ位置Cの用紙流れ方向の進行が早まり、すき入れ位置Cが基準となる中央のすき入れ位置Bに対して用紙流れ方向と同位置となる。また、エキスパンダーロール35の手前の軸を視点として奥側のロール位置を用紙流れ方向側へ移動することで、奥側に対する手前側のペーパロール34から乾燥装置36間の距離を短くすることも可能である。その結果、すき入れ位置Cの用紙流れ方向の進行が早まり、すき入れ位置Cが基準となる中央のすき入れ位置Bに対して用紙流れ方向と同位置となる。なお、エキスパンダーロールは両側のエキスパンダーロール位置、つまり、エキスパンダーロール全体としても移動ができる。
【0050】
図2(d)に示したすき入れのねじれが生じた場合は、図2(c)と同様に図18(a)のようにエキスパンダーロール35の奥の軸を視点として手前側のロール位置を用紙流れ逆方向側へ移動することで、ペーパロール34から乾燥装置36間の距離を短くする。その結果、すき入れ位置Aを視点としてすき入れ位置Cの用紙流れ方向の進行が早まり、すき入れ位置Cが基準となる中央のすき入れ位置Bに対して用紙流れ方向に近づく。その結果、すき入れ位置Aを視点としてすき入れ位置Bも用紙流れ方向の進行が早まるため、次に図3(b)のすき入れの湾曲が生じる。生じたすき入れの湾曲に対しては、下記で説明するすき入れの湾曲の対応を図る。
【0051】
最も湾曲するエキスパンダーロール35の中央部は、エキスパンダーロール35の角度を変更した際に、ペーパロール34から乾燥装置36間の距離がもっとも変化する部位となる。例えば、すき入れの湾曲の対応としては、図3(b)に示したすき入れの湾曲が生じた場合は、すき入れ位置A及びすき入れ位置Cに対してすき入れ位置Bが用紙流れ方向に進んでいることから、すき入れ位置Bを遅らせる必要があり、図19(a)のようにエキスパンダーロール35の角度を用紙流れ逆方向側に回転することでペーパロール34から乾燥装置36間の距離を長くする。その結果、すき入れ位置Bの用紙流れ方向の進行が遅れ、すき入れ位置Bがすき入れ位置A及びすき入れ位置Cに対して用紙流れ方向と同位置となる。図3(c)に示したすき入れの湾曲が生じた場合は、すき入れ位置A及びすき入れ位置Cに対してすき入れ位置Bが用紙流れ方向に遅れていることから、図19(a)のようにエキスパンダーロール35の角度を用紙流れ方向側に回転することでペーパロール34から乾燥装置36間の距離を短くする。その結果、すき入れ位置Bの用紙流れ方向の進行が早まり、すき入れ位置Bがすき入れ位置A及びすき入れ位置Cに対して用紙流れ方向に同位置となる。
【0052】
(エキスパンダーロール湾曲調整方法S)
用紙のすき入れ位置制御及び皺を防止するためのエキスパンダーロール湾曲調整方法Sについて説明する。本発明のエキスパンダーロール湾曲調整方法Sは、画像入力部と、記憶部と、差分画像データ算出部と、統計値演算部と、エキスパンダーロール調整データ取得部及び駆動調整部とを備えるエキスパンダーロール調整装置1を用いる。
【0053】
図20は、エキスパンダーロール調整工程の流れのフローチャートを示す図である。図20に示すように、第1の工程は、画像入力部により、すき入れが形成された用紙にエキスパンダーロールを通過後に設けられた投光部から光を照射し、受光部ですき入れ画像を含む領域の弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常を有する反射画像データ及び/又は透過画像データを取得する(なお、すき入れが形成された用紙には弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常が発生したと仮定する。)。
【0054】
投光部は白熱球、発光ダイオード、ハロゲンランプ、HIDランプ、LEDスポット照明等の光を照射できるものであれば特に限定されるものではない。受光部は、CCDラインセンサカメラ又はCCDエリアセンサカメラ等によって反射画像データ及び/又は透過画像データが取得できれば特に限定されるものではない。受光部の複数のカメラは、幅方向に沿って配列され、オーバーラップ領域を有して、すき入れ画像が形成された用紙の幅方向を分割して反射画像データ及び/又は透過画像データを分割して取得してもよい。
【0055】
第2の工程は、差分画像データ算出部により、第1の工程で得られたすき入れ画像を含む領域の弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常を有する反射画像データ及び/又は透過画像データと、記憶部にあらかじめ記憶された基準となるすき入れ画像を有する基準画像データを比較演算し、弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常のみの差分画像データを算出する。ただし、弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常を有する反射画像データ及び/又は透過画像データと、基準画像データの基準となるすき入れ画像の差分であるすき入れ画像が残る場合がある。この場合は、差分画像データを濃度補正し、低濃度であるすき入れ画像を濃度補正して除去しても良い。なお、記憶部は、ハードディスク、フィレキシブルディスク、MO及びUSB等、特に限定されるものではない。
【0056】
第3の工程は、統計値演算部により、第2の工程で得られた弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常のみの差分画像データから特徴数値を算出する。特徴数値の算出は種々の方法があり、特に限定されるものではない。例えば、第2の工程で得られた弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常のみの差分画像データからヒストグラムを求め、特徴数値である平均値及び/又は分散値を算出することができる。
【0057】
第4の工程は、エキスパンダーロール調整データ取得部により、第3の工程で得られた特徴数値と、記憶部にあらかじめ記憶されたエキスパンダーロール調整基準データと比較演算し、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データを取得する。例えば、差分画像データからヒストグラムを求め、ヒストグラムから得られた平均値を、エキスパンダーロール調整基準データに当てはめて、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータを算出する。なお、記憶部は、ハードディスク、フィレキシブルディスク、MO及びUSB等、特に限定されるものではない。
【0058】
第5の工程は、駆動調整部により、第4の工程で得られた位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータをもとに、エキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行う。第1の工程乃至第5の工程によってエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の自動調整を行う。駆動調整部で行う位置、角度及び湾曲量の調整はモータ駆動方式等、特に限定されるものではない。
【0059】
(エキスパンダーロール湾曲調整方法S´)
用紙のすき入れ位置制御及び皺を防止するためのエキスパンダーロール湾曲調整方法S´について説明する。本発明のエキスパンダーロール湾曲調整方法S´は、画像入力部と、記憶部と、ずれデータ算出部と、エキスパンダーロール調整データ取得部及び駆動調整部とを備えるエキスパンダーロール調整装置1´を用いる。
【0060】
図21は、エキスパンダーロール調整工程の流れのフローチャートを示す図である。図21に示すように、第1の工程は、画像入力部により、すき入れが形成された用紙がエキスパンダーロールを通過後に設けられた投光部によって、すき入れ画像を含む領域に光源を照射し、受光部ですき入れ画像を含む領域の弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常を有する反射画像データ及び/又は透過画像データを取得する(なお、すき入れが形成された用紙には弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常が発生したと仮定する。)。
【0061】
投光部は白熱球、発光ダイオード、ハロゲンランプ、HIDランプ、LEDスポット照明等の光を照射できるものであれば特に限定されるものではない。受光部は、CCDラインセンサカメラ又はCCDエリアセンサカメラ等によって反射画像データ及び/又は透過画像データが取得できれば特に限定されるものではない。受光部の複数のカメラは、幅方向に沿って配列され、オーバーラップ領域を有して、すき入れ画像が形成された用紙の幅方向を分割して反射画像データ及び/又は透過画像データを分割して取得してもよい。
【0062】
第2の工程は、ずれデータ算出部により、第1の工程で得られたすき入れ画像を含む領域の弛み、皺、折れ目、すき入れ位置異常を有する反射画像データ及び/又は透過画像データと、記憶部にあらかじめ記憶された基準となるすき入れ基準位置データとを比較演算し、すき入れずれ量データを算出する。なお、記憶部は、ハードディスク、フィレキシブルディスク、MO及びUSB等、特に限定されるものではない。
【0063】
第3の工程は、エキスパンダーロール調整データ取得部により、第2の工程で得られたすき入れずれ量データと、記憶部にあらかじめ記憶されたエキスパンダーロール調整基準データと比較演算し、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データを取得する。なお、記憶部は、ハードディスク、フィレキシブルディスク、MO及びUSB等、特に限定されるものではない。
【0064】
第4の工程は、駆動調整部により、第3の工程で得られた位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータをもとに、エキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行う。第1の工程乃至第4の工程によってエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の自動調整を行う。駆動調整部で行う位置、角度及び湾曲量の調整はモータ駆動方式等、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
1、1´ エキスパンダーロール調整装置
2、2´、2a、2b 画像入力部
3、3´ 記憶部
4 差分画像データ算出部
4´ ずれデータ算出部
5、5´ 統計値演算部
6、6´ エキスパンダーロール調整データ取得部
7、7´ 駆動調整部
8a、8b 投光部
9a、9b 受光部
10、10´ 反射画像データ
11、11a、11b、11c すき入れ画像
12 皺
13 基準画像データ
14 基準となるすき入れ画像
15、15´ エキスパンダーロール調整基準データ
16 差分画像データ
17 ヒストグラム
18 すき入れ基準位置データ
19 すき入れずれ量データ
21 抄紙機
22 ワイヤ
23 サクションクーチロール
24 ブレストロール
25 紙料供給槽
26 紙料
27a、27b、27c 紙料目止め板
28 紙料マット
29 サクションボックス
30 プレス部トップロール
31 プレス部ボトムロール
32、33、34 ペーパロール
35 エキスパンダーロール
36 乾燥装置
37 巻取ロール
38 ダンディーロール
39 湾曲量調整ハンドル
40 角度調整ハンドル
41 位置調整ハンドル
S、S´ エキスパンダーロール湾曲調整方法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機上の用紙のすき入れ位置制御及び皺を防止するためのエキスパンダーロール調整装置において、
すき入れが形成された用紙に前記エキスパンダーロールを通過後に光源から光を照射する投光部と、すき入れ画像を含む領域の反射画像データ及び/又は透過画像データを受光する受光部とから成る画像入力部と、
基準画像データ及びエキスパンダーロール調整基準データをあらかじめ記憶するための記憶部と、
前記画像入力部で得られた反射画像データ及び/又は透過画像データと、記憶部にあらかじめ記憶された前記基準画像データとを比較演算し、差分画像データを算出する差分画像データ算出部と、
前記差分画像データから特徴数値を算出する統計値演算部と、
前記統計値演算部で算出された前記特徴数値をもとに、あらかじめ記憶部に記憶された前記エキスパンダーロール調整基準データと比較演算し、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つを取得するエキスパンダーロール調整データ取得部と、
前記位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータをもとにエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行う駆動調整部から成ることを特徴とするエキスパンダーロール調整装置。
【請求項2】
抄紙機上の用紙のすき入れ位置制御及び皺を防止するためのエキスパンダーロール調整装置において、
すき入れが形成された用紙に前記エキスパンダーロールを通過後に光源から光を照射する投光部と、すき入れ画像を含む領域の反射画像データ及び/又は透過画像データを受光する受光部とから成る画像入力部と、
すき入れ基準位置データ及びエキスパンダーロール調整基準データをあらかじめ記憶するための記憶部と、
前記画像入力部で得られた反射画像データ及び/又は透過画像データと、記憶部にあらかじめ記憶された前記すき入れ基準位置データとを比較演算し、すき入れずれ量データを算出するずれデータ算出部と、
前記ずれデータ算出部で算出された前記すき入れずれ量データをもとに、あらかじめ記憶部に記憶された前記エキスパンダーロール調整基準データと比較演算し、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つを取得するエキスパンダーロール調整データ取得部と、
前記位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータをもとにエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行う駆動調整部から成ることを特徴とするエキスパンダーロール調整装置。
【請求項3】
前記統計値演算部は、前記差分画像データからヒストグラムを算出し、前記ヒストグラムから前記特徴数値を算出することを特徴とする請求項1記載のエキスパンダーロール調整装置。
【請求項4】
画像入力部と、記憶部と、差分画像データ算出部と、統計値演算部と、エキスパンダーロール調整データ取得部及び駆動調整部とを備えるエキスパンダーロール調整装置を用いた、抄紙機上の用紙のすき入れ位置制御及び皺を防止するためのエキスパンダーロール湾曲調整方法であって、
前記画像入力部により、すき入れが形成された用紙に前記エキスパンダーロールを通過後に設けられた投光部から、光を照射し、受光部ですき入れ画像を含む領域の反射画像データ及び/又は透過画像データを取得し、
前記差分画像データ算出部により、前記得られた反射画像データ及び/又は透過画像データと、前記記憶部にあらかじめ記憶された前記基準画像データとを比較演算し、差分画像データを算出し、
前記統計値演算部により、前記差分画像データから特徴数値を算出し、
前記エキスパンダーロール調整データ取得部により、前記特徴数値と、前記記憶部にあらかじめ記憶されたエキスパンダーロール調整基準データと比較演算し、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つを取得し、
前記駆動調整部により、前記位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータをもとにエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行うことを特徴とするエキスパンダーロール湾曲調整方法。
【請求項5】
画像入力部と、記憶部と、ずれデータ算出部と、統計値演算部と、エキスパンダーロール調整データ取得部及び駆動調整部とを備えるエキスパンダーロール調整装置を用いた、抄紙機上の用紙のすき入れ位置制御及び皺を防止するためのエキスパンダーロール湾曲調整方法であって、
前記画像入力部により、すき入れが形成された用紙に前記エキスパンダーロールを通過後に設けられた投光部から、光を照射し、受光部ですき入れ画像を含む領域の反射画像データ及び/又は透過画像データを取得し、
前記ずれデータ算出部により、前記得られた反射画像データ及び/又は透過画像データと、前記記憶部にあらかじめ記憶された前記すき入れ基準位置データとを比較演算し、すき入れずれ量データを算出し、
前記エキスパンダーロール調整データ取得部により、前記すき入れずれ量データを、前記記憶部にあらかじめ記憶されたエキスパンダーロール調整基準データと比較演算し、位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つを取得し、
前記駆動調整部により、前記位置調整データ、角度調整データ及び湾曲量調整データの少なくとも一つのデータをもとにエキスパンダーロールの位置、角度及び湾曲量の少なくとも一つの調整を行うことを特徴とするエキスパンダーロール湾曲調整方法。
【請求項6】
前記統計値演算部は、前記差分画像データからヒストグラムを算出し、前記ヒストグラムから前記特徴数値を算出することを特徴とする請求項4記載のエキスパンダーロール湾曲調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−168672(P2010−168672A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10012(P2009−10012)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】