説明

エコラン状態通知装置及びエコラン状態通知方法

【課題】エコラン制御の実行が操作により妨げられた頻度を通知できるエコラン状態通知装置及びエコラン状態通知方法を提供する。
【解決手段】
車両の状態とユーザ操作の状態とを取得する取得手段と、エコラン制御によってエンジンを停止できている状態の頻度情報を通知するよう制御する通知制御手段と、取得手段の取得した車両の状態が停止条件における車両の状態に関する条件を成立させるが、取得手段の取得したユーザ操作が停止条件におけるユーザ操作の状態に関する条件を成立させないことでエンジンが停止されていない状態を、エコラン制御によってエンジンが停止できていない状態として、頻度情報を算出する算出手段とを備える。これによれば、車両の状態が停止条件を成立させるが、車両の操作が停止条件を成立させない場合に、車両の操作によってエコラン制御の実行が妨げられた頻度を通知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エコラン制御の状態を通知するエコラン状態通知装置及びエコラン状態通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、車両の燃費改善及び排気ガス排出量の抑制を目的として、エンジンの自動停止(例えば、アイドリングストップ)を含むエコ運転(以下、エコランともいう)を行うよう車両を制御する制御システムが広く知られている(特許文献1)。
尚、本明細書におけるエコとは、エコノミー及びエコロジーの少なくとも1以上の意味を持つものとする。また、エコノミーとは、燃料の消費を抑えて燃料を節約(省燃費)することを意味する。更に、エコロジーとは、化石燃料の消費を抑えたり、又は化石燃料の燃焼などによって生じる有害物質や二酸化炭素の発生及び排出を抑えることを意味する。
【0003】
ここで、文献1に記載の制御システムは、車両の状態及び車両の乗員による車両に対する操作を検出する検出装置と、検出装置が検出した状態及び操作に基づいてエコラン制御を行う制御装置とを備える。尚、エコラン制御とは、車両の状態及び操作に基づいて所定の停止条件が成立したと判断すると車両が搭載するエンジンを自動停止させる制御をいう。また、エコラン制御は、車両の状態及び操作に基づいて所定の再始動条件が成立したと判断するとエンジンを自動始動させる制御を更に含んでも良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−46546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の制御システムでは、車両の乗員(以下単に、ユーザという)による操作が停止条件の成立を妨げるために、制御装置によるエコラン制御の実行が妨げられる場合があった。この場合において、特許文献1の制御システムは、ユーザの操作によりエコラン制御が妨げられた頻度をユーザに通知しないという問題があった。この問題のため、ユーザは、例えば、エコラン制御を妨げるような操作を控える等の対処ができなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、エコラン制御の実行が操作により妨げられた頻度を通知できるエコラン状態通知装置及びエコラン状態通知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエコラン状態通知装置は、車両の状態と車両に対するユーザ操作が所定の停止条件を成立させると車両に搭載されたエンジンを停止させるエコラン制御の状態を通知するエコラン状態通知装置であって、車両の状態とユーザ操作の状態とを取得する取得手段と、エコラン制御によってエンジンを停止できている状態の頻度情報を通知するよう制御する通知制御手段と、取得手段の取得した車両の状態が停止条件における車両の状態に関する条件を成立させるが、取得手段の取得したユーザ操作が停止条件におけるユーザ操作の状態に関する条件を成立させないことによって、エンジンが停止されていない状態を、エコラン制御によってエンジンが停止できていない状態として、頻度情報を算出する算出手段とを備えることを特徴としている。
この構成によれば、車両の状態が停止条件を成立させるが、車両の操作が停止条件を成立させない場合に、車両の操作によってエコラン制御の実行が妨げられた頻度を通知できる。よって、通知を受けた車両のユーザは、例えば、エコラン制御を妨げる操作を控える対処をすることができる。
【0008】
上記構成において、通知制御手段は、取得手段が取得した車両の状態が停止状態である間に、算出手段の算出した頻度情報を通知するよう制御する構成を採用できる。
この構成によれば、車両に対するユーザの操作が停止条件を成立させなかった頻度を、停止条件を成立させる操作が可能な車両の停止期間において通知できる。よって、車両のユーザは、通知を受けると直ちに、エコラン制御を妨げる操作を控える等の対処をすることができる。
【0009】
上記構成において、通知制御手段は、算出手段が算出した頻度情報と、頻度情報の目標値との差異を通知するよう制御する構成を採用できる。
この構成によれば、算出した頻度と、頻度の目標値との差異を通知するよう制御できる。よって、車両のユーザは、目標値との差異が減少するように、エコラン制御を妨げる操作を控える対処をすることができる。
【0010】
本発明に係るエコラン状態通知方法は、車両の状態と車両に対するユーザ操作が所定の停止条件を成立させると車両に搭載されたエンジンを停止させるエコラン制御の状態を通知するエコラン状態通知方法であって、車両の状態とユーザ操作の状態とを取得する取得ステップと、エコラン制御によってエンジンを停止できている状態の頻度情報を通知するよう制御する通知制御ステップと、取得ステップの取得した車両の状態が停止条件における車両の状態に関する条件を成立させるが、取得手段の取得したユーザ操作が停止条件におけるユーザ操作の状態に関する条件を成立させないことによって、エンジンが停止されていない状態を、エコラン制御によってエンジンが停止できていない状態として、頻度情報を算出する算出ステップとを備えることを特徴としている。
この構成によれば、車両の状態が停止条件を成立させるが、車両の操作が停止条件を成立させない場合に、車両の操作によってエコラン制御の実行が妨げられた頻度を通知できる。よって、通知を受けた車両のユーザは、例えば、エコラン制御を妨げる操作を控える対処をすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本明細書開示のエコラン状態通知装置及びエコラン状態通知方法によれば、エコラン制御の実行が操作により妨げられた頻度を通知できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のエコラン状態通知装置を備えたエコラン状態通知システムの一構成図である。
【図2】車両要件とユーザ要件との一例を表す図である。
【図3】マイコンの一構成例を表す一構成図である。
【図4】通知装置の一表示例を表す図である。
【図5】マイコンが実行するソフトウェア処理の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明のエコラン状態通知装置を備えたエコラン状態通知システムの一実施形態を示す構成図である。
図1に示すエコラン状態通知システム1は、車両に搭載される。本実施例において、車両は、自動車、原動機付自転車、軽車両、トロリーバス、軍用車両、及び鉄道車両を含む。また、エコラン状態通知システム1は、車両のみならず、船舶、航空機、及び宇宙ステーション等の宇宙機に搭載される構成を採用できる。
【0015】
エコラン状態通知システム1は、検出装置10及び20、始動装置30、エンジン40、ナビゲーション装置50、蓄電池60、通知装置70、各種電装品80、制御装置100及び200、並びにエコラン状態通知装置900を備える。
検出装置10及び20は、車両の状態及び車両に対するユーザの操作の状態を検出すると共に、検出した状態を表す信号をエコラン状態通知装置900へ出力する。
ここで、車両の状態は、エンジン40の回転状態、車両の走行状態、車両の温度状態、車両を制動する制動力の維持状態、蓄電池60による電力の蓄積状態、故障を含む異常が車両に生じた異常状態を含む。また、車両の走行状態は、車両の走行速度、及び車両に加わる加速度で表される。また、車両の温度状態は、車両に関する温度で表される。車両に関する温度は、不図示のエアコンが備える送風機の吹出温を含む。また、吹出温は、送風機の吹出口の温度のみならず、吹出口の周辺における車室内の室内温度をも含む。吹出口の周辺とは、例えば、吹出口から送られる風を受けることができる位置をいう。
【0016】
また、車両の操作の状態は、シフトの操作の状態、ブレーキの操作の状態、アクセルの操作の状態、クラッチの操作の状態、ドアの開閉操作の状態、ボンネットの開閉状態の状態、エアコンの操作の状態、ナビゲーション装置50の操作の状態、及び各種電装品80の操作の状態を含む。シフト操作の状態は、例えば、シフトがパーキング、ドライブ、ニュートラル、及びバックのいずれに入れられているかで表される。同様に、ブレーキ操作の状態、アクセル操作の状態、及びクラッチ操作の状態は、例えば、それぞれブレーキペダル、アクセルペダル、及びクラッチペダルを踏んでいるか否か、及びペダルの踏み込み量で表される。また、ドアの開閉操作の状態、及びボンネットの開閉状態の状態は、例えば、それぞれドア及びボンネットを開閉する操作がされたか否かで表される。更に、エアコンの操作の状態は、例えば、エアコンを使用する操作、及びエアコンの設定温度を設定する操作、及びエアコンの設定送風量を設定する操作がなされたか否か、並びに設定温度及び設定送風量で表される。ナビゲーション装置50の操作の状態、及び各種電装品80の操作の状態は、例えば、各装置の駆動状況を設定する操作、及び設定した駆動状況で表される。
【0017】
検出装置10及び20は、車両の状態及び車両に対する操作の状態のいずれか1つ以上を検出する。具体例として、検出装置10は、エンジン回転センサ、車速センサ、シフト位置センサ、ブレーキスイッチ、Gセンサ、アクセルセンサ、温度センサ、クラッチセンサ、ドアセンサ、及びボンネットセンサ等の各種のセンサで構成される。検出装置10は、エンジン40の回転数、車速、シフト位置、ブレーキ操作の有無、車両に加わる加速度、アクセル開度、車両に関する温度、クラッチが踏み込まれているか否か、ドアの開閉、及びボンネットの開閉(以下単に、回転数等という)を検出する。また、検出装置10は、検出した回転数等を表す信号をエコラン状態通知装置900へ出力する。
【0018】
また、具体例として、検出装置20は、ブレーキ負圧センサ及び電圧センサ等の各種のセンサで構成される。検出装置20は、ブレーキ負圧及びバッテリ電圧(以下単に、電圧等という)を検出すると共に、検出した電圧等を表す信号をエコラン状態通知装置900へ出力する。
尚、本実施例において、エコラン状態通知システム1は、検出装置10及び検出装置20の2つのセンサを備えるとして説明するが、これに限定される訳ではなく、例えば、検出装置10及び検出装置20が検出する温度等をそれぞれ検出する1つの又は3以上のセンサをエコラン状態通知システム1が備える構成を採用できる。
【0019】
始動装置30は、例えば、スタータモータで構成される。始動装置30は、エコラン状態通知装置900の制御に従って、蓄電池60が供給する電力を用いてエンジン40を始動させる。
エンジン40は、例えば、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジンで構成される。エンジン40は、エコラン状態通知装置900から駆動を指示するエンジン駆動指令を受けると、始動装置30により始動させられて駆動を開始する。その後、エンジン40は、停止を指示するエンジン停止指令を受けると停止する。尚、駆動を開始したエンジン40は、エコラン状態通知装置900の制御に従って燃料を燃焼させることで、車両を推進等させるための動力を発生させる。また、燃焼により温度が上昇したエンジン40は、冷却水により冷却される。尚、冷却水がエンジン40から吸収した熱は、例えば、不図示のエアコンによって車両の車室内へ放出される。
【0020】
ナビゲーション装置50は、GPS(GPS: Global Positioning System)を用いて、ナビゲーション装置50を搭載した車両の位置に関する位置情報を取得する。位置情報は、例えば、車両の位置を緯度及び経度で表す情報、及び車両が走行する道路に関する情報を含む。また、車両が走行する道路に関する情報は、車両が走行する道路の構造に関する情報、道路の安全に関する情報、及び道路の交通に関する情報を含む。ここで、道路の構造に関する情報は、道路がトンネル内を通るか否かを表す情報、道路が地下を通るか否かを表す情報、道路が坂道であるか否かを表す情報、及び道路の勾配を表す情報を含む。また、道路の安全に関する情報は、他の地点又は平均的な地点よりも事故発生件数が多い道路上の地点又は道路周辺の地点(つまり、事故多発地点)を表す情報を含む。更に、道路の交通に関する情報は、赤信号である時間が長い交差点を表す情報、及び道路の渋滞状況を表す情報を含む。また、ナビゲーション装置50は、例えば、携帯電話回線を用いて天気情報を取得する。尚、天気情報は、天気予報又は観測された天気と予報地とを関連付けて表す情報を含む。更に、ナビゲーション装置50は、例えば、システムクロックを用いて日時情報を取得する。尚、日時情報は、システム時刻を表す情報、及びシステム時刻に基づいて特定される季節を表す情報を取得する。ナビゲーション装置50は、取得した車両の位置に関する位置情報と日時情報と天気情報とをエコラン状態通知装置900へ送信する。
【0021】
蓄電池60は、例えば、鉛蓄電池等のバッテリで構成される。蓄電池60は、エコラン状態通知システム1の備える各装置へ蓄積した電力を供給する。
通知装置70は、例えば、表示装置又は音声出力装置で構成される。表示装置は、例えば、表示パネルで構成され、音声出力装置は、例えば、スピーカで構成される。通知装置70は、エコラン状態通知装置900に制御されて、下記の各種内容を通知する。具体的には、表示装置は、下記の各種内容を表示し、音声出力装置は、下記の各種内容を音声として出力する。具体的には、表示装置は、下記の頻度情報を通知する表示を行い、音声出力装置は、下記の頻度情報を通知する音声を出力する。
【0022】
各種電装品80は、例えば、オーディオ機器、エアコン、ワイパー、ルームライト、ミラーヒーター、及びシートヒーターを含む。各種電装品80は、蓄電池60が供給する電力を用いて駆動すると共に、駆動状況を表す駆動情報をエコラン状態通知装置900へ送信する。尚、駆動情報は、駆動により消費している消費電力を表す情報、又は消費電力の水準(つまり、レベル)を表す情報を含む。
制御装置100及び200、並びにエコラン状態通知装置900は、例えば、ECU(Electronic control unit)で構成される。制御装置100及び200、並びにエコラン状態通知装置900は、例えば、CAN(Controller Area Network)バス又はLIN(Local Interconnect Network)バスで構成される通信ラインLTを介して互いに通信可能に接続する。
【0023】
制御装置100は、例えば、メータECUで構成される。制御装置100は、エコラン状態通知装置900に制御されて、下記各種の内容を通知するよう通知装置70を制御する。具体的には、制御装置100は、下記の頻度情報を通知するよう通知装置70を制御する。
制御装置200は、例えば、ボディ系ECUで構成される。制御装置200は、例えば、ドア及びトランクの開閉を制御する。ここで、制御装置200は、例えば、車両における移動体の存在、又は車両に搭載された電装機器の取り外しを検出する不図示の検出装置に接続される構成を採用できる。この構成において、制御装置200は、検出装置の検出結果に基づいて、車両に対する侵入、又は車両における盗難等を含む異常の発生を検出する構成を採用できる。また、制御装置200は、異常の検出結果をエコラン状態通知装置900へ送信する。
【0024】
エコラン状態通知装置900は、制御装置100及び200のみならず、エンジン40、ナビゲーション装置50、及び各種電装品80とも通信ラインLTを介して互いに通信可能に接続する。
エコラン状態通知装置900は、ソフトウェア処理であるエコラン制御処理を実行する。これにより、エコラン状態通知装置900は、検出装置10及び20が検出した温度等に基づいてアイドリングストップ(以下単に、ISという)を行うよう車両を制御する。よって、アイドリングストップを行うエコラン状態通知装置900を、以下特に、アイドリングストップ制御装置900ともいう。
【0025】
具体的には、エコラン状態通知装置900は、接続する各装置が検出又は取得した車両の状態及び車両の操作の状態に基づいて所定のエンジン停止条件が成立すると判断すると、エンジン停止指令を制御装置100へ出力する。尚、エコラン状態通知装置900に接続する各装置は、検出装置10及び20、エンジン40、ナビゲーション装置50、各種電装品80、並びに制御装置100及び200であるため、以下単に、検出装置10等という。
【0026】
このエンジン停止条件の具体例としては、車両が停止した状態にあり、かつ車両がアイドリングを停止できる状態にあるという条件が挙げられる。ここで、車両が停止した状態とは、車速が所定値を所定時間に渡って下回った状態を含む。また、車両がアイドリングを停止できる状態にあるという条件は、エンジン停止条件における車両の状態に関する条件(以下単に、車両要件という)と、エンジン停止条件におけるユーザ操作の状態に関する条件(以下単に、ユーザ要件という)とに分類される。ユーザ要件とは、ユーザが対策できる条件をいい、車両要件とは、ユーザが対策できない条件をいう。具体例としては、ユーザ要件は、ユーザの操作に成否が依存した条件を含み、車両要件は、車両の状態に成否が依存した条件を含む。より具体的な例としては、ユーザ要件は、ユーザが所定の操作をすることで成立させることができる条件を含み、車両要件は、ユーザがどのように操作しても成立させることができない条件を含む。
【0027】
ここで、図2を参照して、車両要件とユーザ要件との具体例について説明を行う。図2(a)は、車両要件とユーザ要件との具体例を表す図である。
図2(a)の右列に示すように、ユーザ要件は、ユーザがドアを開く操作をした後にドアを閉める操作をしていない場合(つまり、ドアが開いている場合)、又はボンネットが開いている場合に成立しない。ドアが開いている場合には、例えば、ユーザに開いたドアから顔を出した状態で車両をバックさせようとする意思があることが多いためである。また、ユーザ要件は、ユーザがアイドリングストップキャンセルスイッチを押し下げる操作をした後、押し上げる操作をしていない場合にも成立しない。尚、アイドリングストップキャンセルスイッチは、押し下げによりアイドリングストップを禁止する信号をエコラン状態通知装置900へ入力する。更に、ユーザ要件は、ユーザの操作によりナビゲーション装置50、各種電装品80、又はエアコン(以下、A/Cという)が所定量を超えて電力を使用している場合にも成立しない。始動装置30がエンジン40を再始動するために用いる電力を確保するためである。また、ユーザ要件は、ユーザがスポーツドライブスイッチ(以下、S/W SWという)を押し下げる操作をした後、押し上げる操作をしていない場合にも成立しない。ユーザに車両を発信させようとする意思があることが多いためである。また同様の理由から、ユーザ要件は、ユーザがシフトをBレンジ(Break range)又は不定レンジに入れる操作をしている場合、クラッチを踏む操作をしている場合、アイドリングストップ後に車両を走行させる操作をしていない場合にも成立しない。
【0028】
また、図2(a)の左列に示すように、車両要件は、車両が暖機を完了する前の状態にある場合には成立しない。エンジン40の駆動により暖機を完了させるためである。更に、車両要件は、車両の異常状態が検出された場合、又は制御装置100又は200からアイドリングストップを禁止するよう命じられた場合にも成立しない。また、車両要件は、蓄電池60が劣化している場合にも成立しない。蓄電池60の劣化により始動装置30がエンジン40を再始動できなくなることを防止するためである。更に、車両要件は、アイドリングストップ後のインターバルを満足していない場合にも成立しない。具体例としては、アイドリングストップ後にエンジン40を再始動することで、ブレーキブースターに対して車両を制動するための十分な負圧を供給するために必要なアイドリングストップのインターバルを確保するためである。
【0029】
尚、エコラン状態通知装置900は、エンジン回転数、車速、シフト位置、ブレーキ操作の有無、車両にかかる加速度、及びアクセル開度等を表す信号の1つ以上に基づいて車両が停止したか否かを判断する構成を採用できる。また、エコラン状態通知装置900は、例えば、ブレーキ負圧を表す信号に基づいて、アイドリングを停止しても十分な制動力を維持できると判断する場合に、車両がアイドリングを停止できる状態にあると判断する構成を採用できる。また、制動力の判断だけでなく、エコラン状態通知装置900は、例えば、バッテリ電圧等を表す信号に基づいて再始動に十分な電力を蓄電池60が蓄電していると更に判断する場合に、アイドリングストップできると判断する構成を採用できる。
【0030】
また、エコラン状態通知装置900は、接続する検出装置10等が出力した信号に基づいて所定のエンジン再始動条件が成立すると判断すると、始動装置30を駆動させると共に、エンジン駆動指令を制御装置100へ出力する。
このエンジン再始動条件の具体例としては、車両の運転者によるエンジン40を始動させる操作を検出した、又はエンジン40を再始動すべき事象が発生したという条件が挙げられる。よって、エコラン状態通知装置900は、例えば、シフト位置、ブレーキスイッチ信号(以下単に、ブレーキSW信号という)、及びアクセル信号のいずれか1つ以上の変化に基づいて運転者がエンジンを始動する意思があるか否かを判断する。また、エコラン状態通知装置900は、例えば、エアコンの吹出温度に基づいて、エンジン始動によるエンジン水温の加熱又は冷媒の冷却が必要な程にエアコンの吹出温度が低下又は上昇する事象の発生を検知する。
【0031】
エコラン状態通知装置900は、マイクロコンピュータ910(以下単に、マイコンという)を備える。マイコン910は、ソフトウェア処理を実行することで、検出装置10等が出力する信号に基づいて、エコラン状態通知装置900に接続する各装置を制御する。
ここで、図3を参照して、マイコン910のハードウェア構成について説明を行う。図3(a)は、マイコン910の一構成例を表すハードウェア構成図である。
図3(a)に示すマイコン910は、例えば、A/D変換器で構成される入出力部910a、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成される実行部920b、例えば、ROM(Read-Only Memory)で構成される記憶部410c、及び、例えば、CANコントローラで構成される通信部410dで構成される。尚、入出力部910aから通信部910dは互いにバス910fによって情報の授受が可能なように接続している。
【0032】
ソフトウェア処理は、実行部920bが、記憶部910cに格納したプログラムを読み込み、読み込んだプログラムが表すソフトウェア処理の実行手順に従って演算を行うことにより実現される。尚、記憶部910cには、実行部920bが行った演算の結果を表す情報が書き込まれる。また、必要に応じて入出力部910a及び通信部910dは、接続する各種の部及び装置との間で入出力又は通信する情報を、実行部920bが演算対象とする情報又は演算した結果を表す情報として入出力する。
【0033】
次に、図3(b)を参照して、マイコン910の構成について、機能に着目して説明する。図3(b)は、マイコン910の一構成例を表す機能ブロック図である。
マイコン910は、取得部911、エコラン判定部912、エコラン制御部913、集計部914、算出部915、及び通知制御部916を備える。
取得部911は、実行部920bが取得処理を実行することで実現される。取得部911は、検出装置10及び20、エンジン40、ナビゲーション装置50、各種電装品80、並びに制御装置100及び200から、それぞれが出力又は送信する信号を取得する。具体的には、取得部911は、エンジン停止条件及びエンジン再始動条件の成立を判定するための信号を取得する。より具体的には、取得部911は、車両の状態を表す信号及び車両の操作の状態を表す信号を取得する。また、取得部911は、位置情報、日時情報、天気情報、及び駆動情報を取得する。
【0034】
エコラン判定部912は、実行部920bがエコラン判定処理を実行することで実現される。エコラン判定部912は、取得部911が取得した信号及び情報に基づいてエコラン制御部913にエコラン制御を実行させるか否かを判定する。
具体的には、図3(c)に示すように、エコラン判定部912は、停止条件判定部912aと、再始動条件判定部912bとを備える。停止条件判定部912aは、取得部911が取得した信号及び情報に基づいてエンジン停止条件が成立するか否かを判定する。同様に、再始動条件判定部912bは、取得部911が取得した信号及び情報に基づいてエンジン再始動条件が成立するか否かを判定する。
より具体的には、図3(d)に示すように、停止条件判定部912aは、車両要件判定部912a1とユーザ要件判定部912a2とを備える。車両要件判定部912a1は、取得部911が取得した信号及び情報によって表される車両の状態が、エンジン停止条件の車両要件を成立させるか否かを判定する。また、車両要件判定部912a1は、車両要件の成立を妨げた車両の状態を特定する構成を採用できる。同様に、ユーザ要件判定部912a2は、取得部911が取得した信号及び情報によって表される車両の操作が、エンジン停止条件のユーザ要件を成立させるか否かを判定する。また、車両要件判定部912a1は、ユーザ要件の成立を妨げた車両の操作を特定する構成を採用できる。尚、再始動条件判定部912bの構成は、停止条件判定部912aの構成とほぼ同様であるので説明を省略する。
【0035】
エコラン制御部913は、実行部920bがエコラン制御処理を実行することで実現される。エコラン制御部913は、エコラン判定部912の判定に基づいて、始動装置30及びエンジン40を制御するエコラン制御を実行する。具体的には、エコラン制御部913は、エコラン判定部912でエンジン停止条件が成立したと判定すると、エンジン40に対してエンジン停止指令を送信する。また、エコラン制御部913は、エコラン判定部912でエンジン再始動条件が成立したと判定すると、始動装置30及び停止させたエンジン40に対してエンジン始動指令を送信する。
【0036】
集計部914は、実行部920bが集計処理を実行することで実現される。集計部914は、エコラン制御の状態を表す指標を算出するために用いるデータを集計する。エコラン制御の状態を表す指標は、エコラン制御によってエンジン40を停止できている状態の頻度を含む。尚、エコラン制御によってエンジンが停止できていない状態は、取得部911の取得した車両の状態が車両要件を成立させるが、取得部911の取得したユーザ操作がユーザ要件を成立させないため、エンジン40が停止されていない状態をいう。
【0037】
ここで、以下、集計部914が集計するデータ、及び集計部914が集計したデータにより算出部915が算出する指標について具体的に説明を行う。
集計部914は、エコラン制御の実行が妨げられた程度を表すエコラン妨害指標、又はエコラン制御が達成された程度を表すエコラン達成指標を算出するために用いるデータを集計する。ここで、エコラン達成指標及びエコラン妨害指標の具体例としては、それぞれエコラン達成比率及びエコラン妨害比率が挙げられる。尚、エコラン達成比率とエコラン妨害比率との一関係例は、下記の数式1で表される。
【0038】
(数1)
エコラン妨害比率=1−エコラン達成比率
【0039】
また、エコラン達成指標の一例は、車両が停止している場合に、どの程度アイドリングストップを達成したのかを表す指標を挙げることができる。この指標の具体例として、下記の数式2を用いて算出されるエコラン達成比率を挙げることができる。
【0040】
(数2)
エコラン達成比率=IS時間/車両停車時間
エコラン達成比率=IS回数/車両停車回数
【0041】
具体的には、このエコラン達成比率は、エコラン制御によりアイドリングストップを行った時間又は回数(つまり、IS時間又はIS回数)を、車両が停車した時間又は回数で除算して算出される。この構成によれば、車両の走行を行わないにも関わらずエンジン40を駆動させていた程度を表すことができる。
【0042】
ここで、停車時間を用いたエコラン達成比率は、停車回数を用いたエコラン達成比率に比べて、例えば、渋滞時などのアイドリングストップの必要がない短い停車時間の停車を繰り返した場合にも、エコランの達成された程度を精度良く表すことができる。また、停車時間を用いたエコラン達成比率は、時間の経過に伴って変化するため、エコラン達成度の経時的な変化を即時的に表すことができる。逆に、停車回数を用いたエコラン達成比率は、車両の停車に伴って変化するため、エコラン達成度の変化を車両の停止毎に表すことができる。尚、集計部914は、エコラン判定部912による判定に基づいて、1回の停車におけるアイドリングストップ時間及び車両停車時間、又はアイドリングストップ回数及び車両停車回数を算出する。また、集計部914は、算出したデータを走行距離毎、トリップ毎、IGON毎、給油毎、又は所定時間毎に集計する構成を更に採用できる。
【0043】
また、上記構成において、集計部914は、イグニッション・オン(以下、IGONという)後から初回の走行を行うまでの時間を、アイドリングストップ時間から除外する構成を採用できる。ユーザは車両を走行させる意思がある場合にIGON操作を行うため、IGON後から初回の走行までの期間は、通常、アイドリングストップの必要がないためである。この構成によれば、精度良くエコランが達成された程度を表すことができる。
【0044】
また、エコラン妨害指標の他例は、車両が停止している場合に、ユーザの操作がどの程度アイドリングストップを妨害したのかを表す指標を挙げることができる。つまり、エコラン達成指標の一例は、車両が停止している場合に、ユーザの操作がどの程度アイドリングストップを可能にしたのかを表す指標を挙げることができる。この指標の具体例として、下記の数式3を用いて算出されるエコラン達成比率を挙げることができる。
【0045】
(数3)
エコラン達成比率=(車両停車時間−ユーザ要件でISできなかった停車時間)/車両停車時間
エコラン達成比率=(車両停車回数−ユーザ要件でISできなかった停車回数)/車両停車回数
【0046】
尚、ユーザ要件でアイドリングストップできなかった停車時間及び停車回数とは、それぞれ車両要件が成立したが、ユーザの操作によってユーザ要件が成立しなかったために、アイドリングストップをすることができなかった停車時間及び停車回数をいう。この構成によれば、車両に対するユーザの操作によってエコラン制御がどの程度達成されたかを表すことができる。
【0047】
また、エコラン達成指標の他例は、車両要件が成立している場合において、ユーザの操作がアイドリングストップを達成させた程度を表す指標を挙げることができる。この指標の具体例として、下記の数式4を用いて算出されるエコラン達成比率を挙げることができる。
【0048】
(数4)
エコラン達成比率=IS時間/IS可能時間
エコラン達成比率=IS回数/IS可能回数
【0049】
尚、アイドリングストップ可能時間及び可能回数(つまり、IS可能時間及びIS可能回数)は、それぞれ車両要件が成立した時間及び回数をいう。つまり、アイドリングストップ可能時間及び可能回数は、それぞれユーザ要件が成立すればアイドリングストップできた時間及び回数と、ユーザ要件が成立してアイドリングストップできた時間及び回数との合計をいう。また、アイドリングストップ達成時間及び回数は、それぞれ車両要件及びユーザ要件が成立したために、アイドリングストップできた時間及回数をいう。この構成によれば、ユーザの操作により成立させることができない車両要件に比率の値が依存しないため、より明確かつ正確に、ユーザの操作によってどの程度エコラン制御の実行が達成されたかを表すことができる。
【0050】
更に、エコラン達成指標の他例は、アイドリングストップポイントにおいて、ユーザの操作がアイドリングストップを達成させた程度を表す指標を挙げることができる。尚、アイドリングストップポイントは、アイドリングストップを達成する操作が容易であって、かつアイドリングをストップさせるのが適当な場所をいう。アイドリングストップポイントの具体例としては、赤色信号の点灯時間による平均停車時間がエンジン停止条件の成立に必要な時間を超える交差点を挙げることができる。逆に、アイドリングをストップさせるのが適当でない場所の具体例は、トンネル内、地下道の中、坂道、及び事故多発地点を挙げることができる。尚、集計部914は、取得部911がナビゲーション装置50から取得した位置情報、日時情報、天気情報に基づいて、車両の走行経路、及び走行経路におけるアイドリングストップポイントを特定する。アイドリングストップポイントは、日時、季節、気候、及び交通状況によって定まるからである。具体例としては、同じ場所であっても、日時、季節、及び気候によって、例えば、エアコン等による電力の使用状況が異なるため、ユーザ要件の成立が容易であるか否かが異なるためである。また同様に、同じ場所であっても、渋滞時とそうでない時とでは、車両の停止時間及び走行速度が異なるためである。
【0051】
また、集計部914は、取得部911が取得した駆動情報に基づいて、各種電装品80が理想的な電力使用を達成した程度を表す理想電力達成指標の算出に用いられるデータを集計する。ここで、理想電力達成指標の具体例としては、以下の数式5を用いて算出される理想電力達成比率が挙げられる。この理想電力達成比率は、各種電装品80の理想的な電力の使用状況(以下単に、理想電装品使用状況という)に対する、実際の理想的な電力の使用状況の比率である。
【0052】
(数5)
理想電力達成比率=IS中の理想電装品使用状況/IS中の電装品の使用状況
【0053】
よって、集計部914は、取得部911が取得した駆動情報に基づいて、アイドリングストップ中の理想電装品使用状況と実際の電力使用状況とを特定する。尚、理想的な電力の使用量は、車両の外部環境に応じて理想的に使用された電力量であって、ユーザ要件を満足する電力使用量をいう。
【0054】
ここで、図2(b)に戻り、理想電装品使用状況について説明を行う。図2(b)は、理想電装品使用状況の一例を表す図である。
図2(b)に示す表は、電装品列と3段階のレベルに対応したレベル列とを有する。電装品列は、各種電装品80に含まれる電装品を表す情報を保存する。レベル列は、電装品列に保存された情報で表される電装品が消費する電力量を表す情報を保存する。具体的には、第1レベルに対応したレベル列は、電装品列の電装品が第1レベルを表す駆動情報を送信する場合における当該電装品の電力消費量を表す情報を保存する。
【0055】
ここで、集計部914は、取得部911が取得した位置情報、日時情報、及び天気情報に基づいて、予め記憶する電装品毎の理想的な電力使用量を検索する。具体例としては、取得部911が取得した位置情報がトンネル内を表す場合には、集計部914は、トンネル内を表す情報と関連付けて記憶する第2レベルに属する電力量を検索すると共に、検索した電力量をオーディオの理想的な電力使用量とする。トンネル内は騒音が大きいため、中程度の電力を消費してオーディオに中程度大きさの音声を出力させる必要があるためである。尚、第1レベルよりも第2レベルの方が多い消費電力に対応し、第2レベルよりも第3レベルの方が多い消費電力に対応する。同様に、取得部911が取得した日時情報が「春の日中」を表し、天気情報が「晴れ」を表し、位置情報が「中緯度の平地」を表す場合には、集計部914は、これらの情報と関連付けて記憶する第1レベルに属する電力量をオーディオの理想的な電力使用量とする。晴れた春の日中において、中緯度の平地では、エアコンを使用する必要がほとんどないためである。
尚、集計部914は、個々の電装品に対して理想の使用電力量を特定した後に、特定した理想の使用電力量を合計する。また、集計部914は、取得部911が取得した駆動情報に基づいて個々の電装品に対して実際の使用電力量を特定した後に、特定した実際の使用電力量を合計する。
【0056】
次に、図3(b)に戻り、マイコン910の構成について引き続き説明を行う。
算出部915は、実行部920bが算出処理を実行することで実現される。算出部915は、集計部914が集計したデータを用いてエコラン制御の状態を表す指標を算出する。具体的には、算出部915は、エコラン制御によってエンジン40を停止できている状態の頻度を表す頻度情報を算出する。より具体的には、算出部915は、上記のエコラン達成指標及びエコラン妨害指標を算出する。更に具体的には、取得部911の取得した車両の状態がエンジン停止条件を成立させる場合において、取得部911の取得した車両の操作がエンジン停止条件を成立させた場合と、成立させなかった場合との比率を表すエコラン達成比率及びエコラン妨害比率を算出する。この構成によれば、車両に対するユーザの操作によってエコラン制御の実行が妨げられた頻度を表す比率を算出できる。よって、この指標の通知を受けた車両のユーザは、例えば、車両の運転の開始から終了まで通じてエコラン制御を妨げる操作を控える対処をすることができる。尚、算出部915は、集計部914が集計したデータを用いて上記の理想電力達成指標を算出する。
【0057】
更に、算出部915は、上記指標の理想値を算出する。具体的には、算出部915は、優良なドライバーが達成する指標値を上記指標の理想値とする。ここで、優良なドライバーは、例えば、燃費向上に適した運転(以下、エコ運転)に習熟したドライバーを含む。ここで、エコラン達成指標を例に挙げて説明すると、優良なドライバーが達成するエコラン達成指標は、ほぼ「30%」である。しかし、エコラン達成指標の理想値は、車両の設計及び一般ドライバーの習熟度によって異なるため、より好適な値は、当業者が実験により定めることができる。また、算出部915は、車両要件に基づいてエコラン達成指標の理想値を算出する構成を採用できる。具体的には、算出部915は、車両の暖機前、車両に異常が生じている場合、他の制御装置100又は200からエコラン制御が禁止された場合、蓄電池60が劣化した場合、又はアイドリングストップ後に所定のインターバルを経過していない場合に、そうでない場合と比べて、エコラン達成指標の理想値を低く算出する。
【0058】
通知制御部916は、実行部920bが通知制御処理を実行することで実現される。通知制御部916は、エコラン制御部913が実行するエコラン制御の結果を通知装置70に通知させるよう制御装置100を制御する。また、通知制御部916は、算出部915が算出した頻度情報を通知装置70に通知させるよう制御する。更に、通知制御部916は、車両要件が成立したが、ユーザの操作によりユーザ要件が成立しないとエコラン判定部912が判定した場合に、車両の操作によってエコラン制御の実行が妨げられた旨を通知装置70に通知させるよう制御装置100を制御する。また更に、通知制御部916は、エコラン判定部912においてユーザ要件の成立を妨げたと判定された車両の操作を通知装置70に通知させる。この構成によれば、車両の状態が停止条件を成立させるが、車両の操作が停止条件を成立させない場合に、車両の操作によってエコラン制御の実行が妨げられた旨を通知するよう制御できる。また、停止条件を成立させなかった操作を通知するよう制御できる。よって、通知を受けた車両のユーザは、例えば、エコラン制御を妨げる操作を控える対処をすることができる。
【0059】
また、通知制御部916は、算出部915が算出した頻度情報と、算出された頻度情報の目標値との差異を通知装置70に通知させるよう制御装置100を制御する。尚、指標の目標値は、ユーザが車両に対する操作を変更することで、算出部915で算出される頻度情報が表す頻度を上回らせる又は下回らせることを目標とする値をいう。また、本実施例において、頻度の目標値は、算出部915が算出した理想値であるとするが、これに限定される訳ではない。尚、具体的には、通知制御部916は、エコラン達成指標とエコラン達成指標指標の目標値との差異を通知させる。また、通知制御部916は、エコラン妨害指標とエコラン妨害指標指標の目標値との差異を通知させる構成を採用できる。更に、通知制御部916は、理想電力達成指標と理想電力達成指標の目標値との差異を通知させる。
【0060】
次に、通知制御部916が通知装置70を制御するタイミングについて説明する。通知制御部916は、取得部911の取得した車両の状態が走行状態から停止状態に変化すると、算出部915で停車回数又はアイドリングストップ回数を用いて算出した指標を通知するよう制御する。この構成によれば、車両の停止毎に生じる指標の変化を即時的に通知できる。また、通知制御部916は、取得部911が取得した車両の状態が停止状態である間に、算出部915が停車時間又はアイドリングストップ時間を用いて算出した指標を通知するよう制御する。この構成によれば、指標の経時的な変化を即時的に通知できる。またこの構成によれば、車両に対するユーザの操作が停止条件を成立させなかった割合を、停止条件を成立させる操作が可能な車両の停止期間において通知できる。よって、車両のユーザは、通知を受けると直ちに、エコラン制御を妨げる操作を控える等の対処をすることができる。
【0061】
ここで、図4を参照して、通知制御部916に制御された通知装置70の通知態様について説明する。図4(a)は、通知装置70の一表示例を表す図である。
図4(a)に示すように、通知装置70は、エコラン達成比率を、例えば、縦棒状のメータBRを用いてユーザに通知する。尚、図4(a)は、エコラン達成比率の最小値「0%」と最大値「100%」を、エコラン達成比率を表すメータBRと関連付けて表示する。また、通知装置70は、エコラン達成比率の目標値を、例えば、水平線状の線LTを用いてユーザに通知する。この構成によれば、算出した比率と、比率の目標値との差異を通知するよう制御できる。よって、車両のユーザは、目標値との差異が減少するように、エコラン制御を妨げる操作を控える対処をすることができる。更に、通知装置70は、変化前のエコラン達成比率の目標値をもユーザに通知する。具体的には、図4(a)において、通知装置70は、変化前の指標の目標値を破線で、変化後の指標の目標値を実線で表示する。この構成によれば、算出された目標値の変化をユーザに通知できる。
また、図4(b)に示すように、通知装置70は、変化前のエコラン達成比率をもユーザに通知する構成を採用できる。具体的には、通知装置70は、変化前の指標を破線で、変化後の指標を実線で表示する。この構成によれば、算出された指標値の変化をユーザに通知できる。
【0062】
ここで、図4(a)及び(b)に示した表示は、車両の停止時において、通知装置70が表示する。この構成によれば、停車時間を用いて算出されるエコラン達成比率は、停車時間の経過に伴って変化するため、比率の変化を即時的に通知できる。また、停車回数を用いて算出されるエコラン達成比率は、車両の停車回数に伴って変化するため、比率の変化を車両の停車毎に通知できる。
逆に、図4(c)及び(d)に示す様に、車両の走行時において、通知装置70は、車両がエコランをしている状態(以下、エコ状態という)にあるか否かを、例えば、エコランプELを点灯させて通知する。また、通知装置70は、エコ運転状態量を、例えば、横棒状のメータBRを用いてユーザに通知する。尚、エコ運転状態量は、エコランを行っている程度を表す指標である。更に、通知装置70は、エコバーBEと、エコ運転領域AE、及び非エコ運転領域ANEとを関連付けて表示する。エコ運転領域AEとは、エコバーBEの先端が属する場合にエコ運転であることを表す領域をいう。また、非エコ運転領域ANEとは、エコバーBEの先端が属する場合にエコ運転でない運転(以下単に非エコ運転)であることを表す領域をいう。つまり、エコバーBEの先端からエコ運転領域AEと非エコ運転領域ANEとの境界までの距離をもって、通知装置70は、例えば、どの程度だけアクセルの操作量を増やしてもエコ運転を維持できるかを示す操作余量を表す。
【0063】
尚、エコ運転状態量は、以下の数式6を用いて算出部915が算出する。具体的には、算出部915は、取得部911が取得したアクセル開度と、取得部911が取得した車速に基づいて定まる上限閾値とを用いてエコ運転状態量を表示する。この上限閾値は、所定の車速にある場合に、エコ状態を維持できるアクセル開度の上限値をいい、算出部915が予め記憶している値である。
【0064】
(数6)
エコ運転状態量=((現在のアクセル開度)/上限閾値)×100
【0065】
尚、通知装置70は、車両の走行中において、図4(c)又は(d)に示すエコ運転状態量の表示を行い、車両の停車中において、エコ運転状態量の表示に代えて、図4(a)又は(b)に示すエコラン達成比率の表示を行う。しかし、これに限定される訳でなく、通知装置70は、エコ運転状態量の表示と、エコラン達成比率の表示とを双方表示する構成を採用できる。この構成において、通知装置70は、走行中においてエコ運転状態量をエコラン達成比率よりも明るく表示し、停止中においてエコラン達成比率をエコ運転状態量よりも明るく表示する構成を採用できる。この構成によれば、表示の切り替えを容易に制御できる。また、表示の切り替えによりユーザに与えるストレスを軽減できる。
【0066】
更に、図4(e)に示すように、通知装置70は、時間の経過と時間の経過に伴ったエコラン達成比率の変化、及びエコラン達成比率の目標値の変化とを関連付けて表示する。具体的には、横軸に日時を、縦軸に所定期間におけるエコラン達成比率(以下、エコラン率とも図示する)を表す。尚、所定期間におけるエコラン率及びエコラン率の目標値とは、例えば、所定期間における平均の、最小の、最大の、又は所定期間におけるある時点のエコラン率及び目標値のいずれであっても良い。また本実施例では、通知装置70は、月毎のエコラン率を時系列に沿って表示するとして説明したが、これに限定される訳ではなく、例えば、所定の走行距離毎に、トリップ毎に、IGON毎に、給油毎に、又は所定時間毎に表示する構成を採用できる。この構成によれば、時間の経過に伴ったエコランに対するユーザの習熟変化を表示できる。
【0067】
次に、図5を参照して、マイコン910が実行するソフトウェア処理について説明を行う。尚、マイコン910が実行するソフトウェア処理は、エコラン制御の実行を管理するエコラン管理処理と、通知制御の実行を管理する通知管理処理とを含む。図5(a)は、マイコン910が実行するエコラン管理処理の一例を表すフローチャートである。尚、マイコン910は、エコラン管理処理を定周期で実行する。
先ず、マイコン910は、検出装置10等から車両の状態及び車両の操作の状態を取得する(ステップS01及びS02)。次に、マイコン910は、車両の状態及び操作の状態のいずれか1つ以上に基づいて車両が停車中であるか否かを判定する(ステップS03)。マイコン910は、停車中であると判定する場合にはステップS04の処理を、そうでない場合にはステップS01に戻り上記処理を繰り返す。
【0068】
ステップS03において、マイコン910は、車両が停車中であると判定した場合には、例えば、数式3を用いてエコラン率を算出するために用いる停車時間を集計する(ステップS04)。次に、マイコン910は、ステップS01で取得した車両の状態に基づいて車両要件が成立したか否かを判定する(ステップS05)。マイコン910は、車両要件が成立したと判定した場合にはステップS06の処理を、そうでない場合にはステップS01に戻り上記処理を繰り返す。
ステップS05において、マイコン910は、車両要件が成立したと判定した場合には、ステップS02で取得した車両の操作に基づいてユーザ要件が成立したか否かを判定する(ステップS06)。マイコン910は、ユーザ要件が成立したと判定した場合にはステップS07の処理を、そうでない場合にはステップS09の処理を実行する。
【0069】
ステップS06において、マイコン910は、ユーザ要件が成立したと判定した場合には、アイドリングをストップするようエンジン40を制御する(以下、IS制御と図示する)(ステップS07)。次に、マイコン910は、例えば、数式2又は4を用いてエコラン率を算出するために用いるアイドリングストップ時間(以下、IS時間とも図示する)を集計する(ステップS08)。その後、マイコン910は、エコラン管理処理の実行を終了する。
ステップS06において、マイコン910は、ユーザ要件が成立しなかったと判定した場合には、例えば、数式3のユーザ要件でアイドリングストップできなかった停車時間(以下、ユーザ要件によるIS不能時間とも図示する)を集計する(ステップS09)。その後、マイコン910は、エコラン管理処理の実行を終了する。
【0070】
尚、図5(a)において、ステップS01及びS02の処理が取得部911を実現するための取得処理の一例に相当し、ステップS03、S05、及びS06の処理がエコラン判定部912を実現するためのエコラン判定処理の一例に相当する。また、ステップS04、S08、及びS09の処理が集計部914を実現するための集計処理の一例に相当し、ステップS07の処理がエコラン制御部913を実現するためのエコラン制御処理の一例に相当する。
【0071】
次に、図5(b)を参照して、マイコン910が実行する通知管理処理について説明を行う。図5(b)は、マイコン910が実行する通知管理処理の一例を表すフローチャートである。尚、マイコン910は、通知管理処理を定周期で実行する。
先ず、マイコン910は、図5(a)のステップ01からS03と同様の処理を実行する(ステップS11からS13)。ステップS13において、マイコン910は、車両停止中と判定した場合には、図5(a)のステップ04、S08、及びS09で集計したデータを用いて、エコラン達成比率を算出する(ステップS14)。次に、マイコン910は、算出したエコラン達成比率を通知するよう通知装置70を制御する(ステップS15)。その後、マイコン910は、通知管理処理の実行を終了する。
【0072】
ステップS13において、マイコン910は、車両走行中(つまり、停車中でない)と判定した場合には、図5(a)のステップ01及びS02で取得したデータ及び予め記憶する上限閾値のデータとを用いて、エコ運転状態量を算出する(ステップS16)。次に、マイコン910は、算出したエコ運転状態量を通知するよう通知装置70を制御する(ステップS17)。その後、マイコン910は、通知管理処理の実行を終了する。
【0073】
尚、図5(a)において、ステップS11及びS12の処理が取得部911を実現するための取得処理の一例に相当し、ステップS13の処理がエコラン判定部912を実現するためのエコラン判定処理の一例に相当し、ステップS14及びS16の処理が算出部915を実現するための算出処理の一例に相当し、ステップS15及びS17の処理が通知制御部916を実現するための通知制御処理の一例に相当する。
【0074】
本実施例において、取得部911が取得手段の一例に相当し、算出部915が算出手段の一例に相当し、通知制御部916が通知制御手段の一例に相当する。
【0075】
ここで、本件発明に係るエコラン状態通知方法は、エコラン状態通知装置900を用いて実施できる。
また、エコラン状態通知装置900が実行するプログラムは、磁気ディスクや光ディスク、半導体メモリ、その他の記録媒体に格納して配布したり、ネットワークを介して配信したりすることにより提供できる。
更に、エコラン状態通知装置900がソフトウェア処理を実行することで実現する機能の一部又は全部は、ハードウェア回路を用いて実現することができる。逆に、エコラン状態通知装置900がハードウェア回路を用いて実現する機能の一部又は全部は、ソフトウェア処理を実行することで実現することができる。
【0076】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…エコラン状態通知システム
10…検出装置
20…検出装置 30…始動装置(スタータモータ)
40…エンジン 50…ナビゲーション装置
60…蓄電池 70…通知装置
80…各種電装品 100、200…制御装置
900…エコラン状態通知装置(アイドリングストップ制御装置)
910…マイコン 911…取得部(取得手段)
912…エコラン判定部 912a…停止条件制御部
912a1…車両要件制御部 912a2…ユーザ要件制御部
912b…再始動条件判定部
913…エコラン制御部 914…集計部
915…算出部(算出手段) 916…通知制御部(通知制御手段)
AE…エコ運転領域 ANE…非エコ運転領域
BE…エコバー BR…比率バー
LT…目標値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の状態と前記車両に対するユーザ操作が所定の停止条件を成立させると前記車両に搭載されたエンジンを停止させるエコラン制御の状態を通知するエコラン状態通知装置であって、
前記車両の状態と前記ユーザ操作の状態とを取得する取得手段と、
前記エコラン制御によってエンジンを停止できている状態の頻度情報を通知するよう制御する通知制御手段と、
前記取得手段の取得した前記車両の状態が前記停止条件における車両の状態に関する条件を成立させるが、前記取得手段の取得した前記ユーザ操作が前記停止条件におけるユーザ操作の状態に関する条件を成立させないことによって、エンジンが停止されていない状態を、前記エコラン制御によってエンジンが停止できていない状態として、前記頻度情報を算出する算出手段とを備えることを特徴とするエコラン状態通知装置。
【請求項2】
前記通知制御手段は、前記取得手段が取得した前記車両の状態が停止状態である間に、前記算出手段の算出した頻度情報を通知するよう制御することを特徴とする請求項1に記載のエコラン状態通知装置。
【請求項3】
前記通知制御手段は、前記算出手段が算出した頻度情報と、前記頻度情報の目標値との差異を通知するよう制御することを特徴とする請求項2に記載のエコラン状態通知装置。
【請求項4】
車両の状態と前記車両に対するユーザ操作が所定の停止条件を成立させると前記車両に搭載されたエンジンを停止させるエコラン制御の状態を通知するエコラン状態通知方法であって、
前記車両の状態と前記ユーザ操作の状態とを取得する取得ステップと、
前記エコラン制御によってエンジンを停止できている状態の頻度情報を通知するよう制御する通知制御ステップと、
前記取得ステップの取得した前記車両の状態が前記停止条件における車両の状態に関する条件を成立させるが、前記取得手段の取得した前記ユーザ操作が前記停止条件におけるユーザ操作の状態に関する条件を成立させないことによって、エンジンが停止されていない状態を、前記エコラン制御によってエンジンが停止できていない状態として、前記頻度情報を算出する算出ステップとを備えることを特徴とするエコラン状態通知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−275998(P2010−275998A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132181(P2009−132181)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】