説明

エスカレーター用音声案内装置

【課題】利用者に対するアナウンスの変更が簡易に行えるエスカレーター用音声案内装置を簡易な構成で安価に提供する。
【解決手段】所定の音声データを格納する音声情報格納手段10Mと、所定のアナウンスを出力する音声出力手段SP1,SP2と、音声情報格納手段10Mとは別体に設けられると共に、所定の音声データを格納する音声情報外部格納手段10MXと、音声情報外部格納手段10MXが装着されたか否かを検知する装着検知手段10Dと、音声情報外部格納手段10MXの音声データが所定のフォーマットか否かを判定すると共に、音声情報外部格納手段10MXのデータが所定の音声データであると判定される場合に、当該音声データに基づいて音声情報格納手段10Mの内容を書き換える音声情報書き換え制御手段10RCとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者に対して行き先や注意喚起等のアナウンスを行う音声案内装置に関するものであり、特に、エスカレーターの利用者に対して所定のアナウンスを行う音声案内装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレーターの利用者に対して所定の注意喚起や行き先等のガイダンスを音声により行う音声案内装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、特許文献1には、エスカレーターのステップに乗った利用者に向けられた指向性スピーカにより、当該利用者に対して確実に音声案内を伝えると共に、エスカレーター周辺部への騒音を防止したエスカレーター用音声案内装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−272030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術は、次のような問題点を有していた。すなわち、上記先行技術に係るスカレーター用音声案内装置では、アナウンスの内容を変更する場合に、音声IC・ROMや基板等の交換作業が必要となる。そして、一般に、かかる交換作業を利用者が多い日中に行うことは困難であるため、必然的に夜間若しくは深夜の交換作業が必要となり、作業性や保守性を著しく損なっていた。また、基板交換を要する場合には、その製作に長期間要する場合も生じていた。
【0006】
特に、駅のプラットホーム等で用いられるエスカレーターでは、時間帯、天候及び列車運行状況等に応じたアナウンスの変更が頻繁に必要となり、このような変更を簡易に行える音声案内装置が求められていた。
【0007】
そこで、本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みて、利用者に対するアナウンスの変更が簡易に行えるエスカレーター用音声案内装置、特に、アナウンスの変更が頻繁に必要な駅のプラットホーム等で用いられるエスカレーターの音声案内装置を簡易な構成で安価に提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るエスカレーター用音声案内装置は、エスカレーターの利用者に対して注意喚起や行き先をアナウンスするエスカレーター用音声案内装置であって、装置内に固設され、所定の音声データを格納する音声情報格納手段と、前記音声情報格納手段の内容に基づいて、所定のアナウンスを出力する音声出力手段と、前記音声情報格納手段とは別体に設けられると共に、装置に対して着脱可能に形成され、前記所定の音声データを格納する音声情報外部格納手段と、前記音声情報外部格納手段が装着されたか否かを検知する装着検知手段と、前記装着検知手段が音声情報外部格納手段の装着を検知した場合に、当該音声情報外部格納手段の音声データが所定のフォーマットか否かを判定すると共に、前記音声情報外部格納手段のデータが所定の音声データであると判定される場合に、当該音声データに基づいて前記音声情報格納手段の内容を書き換える音声情報書き換え制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
このように構成した場合には、音声情報外部格納手段を装着するだけで、セキュリティを確保しつつ、所定の音声データを容易に書き換えることができるエスカレーター用音声案内装置を簡易な構成で安価に実現することができる。
【0010】
また、上記構成において、前記所定の音声情報は、各エスカレーターの設置状況や運転状況によってエスカレーターごとに異なる固有音声情報と、各エスカレーターに共通の汎用音声情報とに区分されており、前記音声情報書き換え制御手段は、前記固有音声情報を書き換えることができる。
【0011】
このように構成した場合には、音声情報を固有音声情報と汎用音声情報とに区分して、固有音声情報のみを書き換えることにより、音声情報全体の容量を削減してコストダウンに寄与することができる。
【0012】
また、上記構成において、前記汎用音声情報は、利用者に対して所定の注意を喚起する注意喚起メッセージであり、前記固有音声情報は、エスカレーターの行き先をアナウンスする行き先メッセージであってもよい。
【0013】
このように構成することにより、駅等に設置されるエスカレーターに好適な音声案内を提供することができる。
【0014】
また、上記構成において、公衆回線を介して接続された外部機器をさらに備え、当該外部機器により前記音声情報書き換え制御手段を介して前記汎用音声情報と固有音声情報との組合せを変更することができる。
【0015】
このように構成した場合には、物理的なセキュリティを向上させて既設の公衆回線の利用を可能とすることにより、コストダウンに寄与することができる。
【0016】
また、上記構成において、前記音声出力手段は、エスカレーターの両端の乗降口に設置されていると共に、エスカレーターの上昇運転時には、下部乗降口側から所定のアナウンスを出力する一方、エスカレーターの下降運転時には、上部乗降口側から所定のアナウンスを出力してもよい。
【0017】
このように構成した場合には、エスカレーターの利用者に対して適切な案内を提供しつつ省電力化や低騒音化に寄与すると共に、視覚障害者等の乗降口への誤進入を未然に防止することができる。
【0018】
また、上記構成において、前記音声出力手段は、エスカレーターの両端の乗降口に設置されていると共に、エスカレーターの運転中に異常が発生した場合には、一方の乗降口と他方の乗降口とに設けられた前記音声出力手段を切り替えて、交互に前記所定のアナウンスを出力してもよい。
【0019】
このように構成した場合には、エスカレーターの利用者が異常の発生したエスカレーターに進入することを未然に防止して利用者の一層の安全を確保すると共に、省電力化や低騒音化に寄与することができる。
【0020】
さらに、上記構成において、前記交互のアナウンスは、運転方向上流側の乗降口側からアナウンスを開始してもよい。
【0021】
このように構成した場合には、通常の運転方向に慣れた利用者が不注意で異常の発生したエスカレーターに乗り込むことを未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、アナウンスの変更を容易に可能とするエスカレーター用音声案内装置を簡易な構成で安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態に係るエスカレーターの構成を示す模式的側面図である。
【図2】本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置の模式的接続展開図である。
【図3】本実施の形態に係る音声案内装置の機能ブロック図である。
【図4】本実施の形態に係る音声案内装置における音声情報の転送手順を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態に係る音声案内装置における音声再生モードの内容を例示する図表である。
【図6】本実施の形態に係る音声案内装置における音声再生モードの内容を例示する図表である。
【図7】本実施の形態に係る音声案内装置における要素メッセージの変更内容を例示する図表である。
【図8】本実施の形態に係る音声案内装置における外部機器による要素メッセージの組合せの変更内容を例示する図表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。まず、本実施の形態に係るエスカレーターの装置構成について図1〜図4を参照して参照して説明する。ここで、図1は、本実施の形態に係るエスカレーターの構成を示す模式的側面図であり、図2は、本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置の模式的接続展開図である。また、図3は、本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置の機能ブロック図であり、図4は、音声データの書き換え手順を示すフローチャートである。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態に係るエスカレーター1は、利用者が乗り降りする無端状の複数のステップ3やハンドレール5等を備えており、エスカレーター1の保守用ピット内には、エスカレーター1の運転を制御するエスカレーター制御盤1Cが配設されている。そして、本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置10本体は、エスカレーター制御盤1Cに隣接して配設されていると共に、エスカレーター1の下側の階床には、下部乗降口7に対応する音声出力手段としての上昇運転用スピーカSP1が設けられている。同様に、エスカレーター1の上側の階床には、上部乗降口9に対応する音声出力手段としての下降運転用スピーカSP2が設けられている。
【0026】
本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置10は、図2に模式的に示すように、エスカレーター制御盤1Cと信号線にて接続されて、かかる制御盤1Cから「上昇運転」、「下降運転」、「異常」といったエスカレーター1の状態を示す信号を受け取るように構成されている。
【0027】
ここで、上記「上昇運転」、「下降運転」、「異常」といった各信号は、通常のエスカレーター1では必ず検知する必要がある状態信号であるため、エスカレーター1の製造メーカによらず上記音声案内装置10を接続することが可能となる。すなわち、本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置10は、エスカレーター1に必須の状態信号に連動して動作するように構成されているので、任意のエスカレーター1に対して適用が可能となっている。
【0028】
また、本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置10は、エスカレーター1の下部乗降口7及び上部乗降口9に設置されたスピーカSP1及びSP2と接続されていると共に、遠隔制御可能なように、例えば駅務室、改札等に設けられたタッチパネルTPと通信ケーブルを介して接続されている。さらに、このタッチパネルTPは、中央監視センター等に設けた監視制御パネルSVPと公衆回線を介して接続され、当該中央監視センターから各音声案内装置10を監視制御するように構成されている。なお、本実施の形態では、エスカレーター用音声案内装置10と駅務室等に設けられたタッチパネルTPとは、既設の配線経路を流用するという観点から、通信ケーブルにより接続しているが公衆回線により接続するように構成してもよい。
【0029】
さらに、本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置10は、所定の音声アナウンスを格納する音声情報外部格納手段10MXと接続可能な構成となっている。具体的には、本実施の形態において、エスカレーター用音声案内装置10本体は、USBポートを備えており、音声情報外部格納手段(以下、外部メモリとも称する)10MXとしてのUSBメモリが接続可能な構成となっている。
【0030】
図3に模式的に示すように、本実施の形態に係る音声案内装置10は、その内部に統括的な制御部としてのMPUを有し、外部メモリ10MXが装着されたか否かを検知する装着検知部10D、音声メッセージが格納された音声情報格納手段としての内部メモリ10M、内部メモリ10Mに格納された音声データに基づいてスピーカSP1又はスピーカSP2により音声出力させる音声出力制御部SPC、外部メモリ10MXの内容に基づいて内部メモリ10Mの内容を書き換える音声情報書き換え手段としての書き換え制御部10RCといった機能部を備えていると共に、その外部に表示ランプL1,L2を備えている。そして、本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置10は、外部メモリ10MXを装置本体の所定の端子(本例では、USBポート)に接続(装着)しただけで、その内容を自動的に内部メモリ10Mに書き換え可能とすると共に、所定の場合にスピーカSP1,SP2により音声メッセージを出力したり、表示ランプL1,L2により状態表示を行うように構成されている。ここで、内部メモリ10Mは、従来公知の音声ICやフラッシュメモリ等で構成することができる。また、装着検知部10D、音声出力制御部SPC、書き換え制御部10RCといった各機能部は、MPUにより統括的に制御されていると共に、MPUの既存の制御機能を流用することにより具現化されている。
【0031】
外部メモリ10MXのデータを内部メモリ10Mに書き換える具体的な手順としては、図4のフローチャートに示すように、まず、装着検知部10Dにより外部メモリ(本例では、USBメモリ)10MXが装着されたか否かを検知し、外部メモリ10MXの装着が検知された場合(ステップST10)には、書き換え制御部10RCにより、外部メモリ10MXのデータが所定の形式のデータか否かを判定する(ステップST12)。具体的には、上記書き換え制御部10RCは、装着検知部10Dが外部メモリ10MXの装着を検知した場合に、当該外部メモリ(本例では、USBメモリ)のデータが所定の形式のデータ(本例では、FAT形式のバイナリデータ)であるか否かをチェック(照合)する。
【0032】
ステップST12でNOの場合(外部メモリ10MXの内容が所定の形式のデータではないと判定される場合)には、異常と判断(ステップST14)して赤ランプL1を点滅させる(ステップST16)。
【0033】
一方、ステップST12でYESの場合(外部メモリ10MXの内容が所定の形式のデータであると判定される場合)には、外部メモリ10MXの内容を内部メモリ10Mに転送して、内部メモリ10Mの内容を書き換える(ステップST18)。なお、データを転送する際には、緑ランプL2を点滅させる(ステップST20)。
【0034】
次に、データ転送が規定の時間内(例えば、420秒)で終了するか否かを判定する(ステップST22、ステップST24)。
【0035】
データ転送が規定の時間を超える場合には、異常と判断(ステップST14)して赤ランプL1を点滅させる(ステップST16)。
【0036】
一方、データ転送が規定の時間内に終了した場合には、データが適正に転送されたと判断して書き換え処理を終了(ステップST26)し、緑ランプL2を消灯させる(ステップST28)。その後、外部メモリ10MXを取り外すことによりデータ書き換え(転送)作業が終了する(ステップST30)。このように、USBメモリ10MXを差し込むだけで音声データの転送を可能とすると共に、音声データの転送状態をランプ表示させることにより、特別な作業員を要することなく、適正な音声データの照合確認と簡易な音声データの書き換えとが可能となる。
【0037】
なお、本実施の形態において、内部メモリ10Mに格納される音声データ(アナウンスデータ)は、各エスカレーターに共通の汎用音声情報(汎用データ)とエスカレーターごとに異なる固有音声情報(固有データ)とに区分されている。
【0038】
そして、本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置10では、外部メモリ10MXに上記固有データを格納するようになっている。
【0039】
以下に、具体的な、汎用データと固有データの例を、図5〜図7を参照して説明する。なお、以下に示すメッセージは、具体例として、駅等に設置されるエスカレーター用の案内メッセージを例示して説明するものとする。
【0040】
まず、汎用データとしては、図5(a)に例示するように、♯002(エスカレーターをご利用の際は…)、♯003(大変危険ですので・・・)、♯004(危険防止のため・・・)、♯005(ピピピピピピ)、♯006(ピンポン)、♯007(ブザー音)、♯008(緊急停止しました)、♯010(ご利用をお止めください)、♯128(ありがとうございます。)といった各エスカレーターに共通の汎用的な注意喚起メッセージ又は警告音等から構成されている。
【0041】
一方、固有データとしては、図5(a)に例示するように、♯001(改札方面行き上り・・・)、♯008(1番線ホーム行き下り・・・)といったエスカレーターの設置場所や運転状況に応じたエスカレーターごとに異なる固有の行き先メッセージ等から構成されている。
【0042】
なお、本実施の形態では、図5(a)に示すように、このような音声データが128個登録可能となっている。
【0043】
そして、本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置10は、エスカレーター制御盤1Cからの受信信号(本例では、「上昇」、「下降」、「異常」の3種類)に応じた音声再生モードを備えている。
【0044】
具体的には、エスカレーター用音声案内装置10が、「上昇」信号を受信した際(エスカレーターの上昇運転時)には、図5(b),図6(a)に示すように、各要素メッセージを所定の順序(本例では、♯001⇒♯006⇒♯002⇒・・・の順)で再生するようにプログラムされている。
【0045】
また、「下降」信号を受信した際(エスカレーターの下降運転時)には、図5(c),図6(b)に示すように、各要素メッセージを所定の順序(本例では、♯008⇒♯006⇒♯002⇒・・・の順)で再生するようにプログラムされている。
【0046】
さらに、「異常」信号を受信した際(エスカレーターの運転中の異常発生時)には、図5(d),図6(c)に示すように、各要素メッセージを所定の順序(本例では、♯009⇒♯010⇒♯005⇒・・・の順)で再生するようにプログラムされている。
【0047】
そして、図7に例示するように、ダイヤ改正や駅工事等、事前に想定した固有データに変更が生じた場合でも、当該固有データを格納した上記外部メモリ10MXを、エスカレーター用音声案内装置10に差し込む(装着する)ことにより、簡易に要素メッセージを変更することができ、不測の事態に対しても柔軟で迅速な対応が可能となる。
【0048】
また、本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置10では、前述したタッチパネルTP等の外部機器により、予め内部メモリ10Mに登録した音声メッセージ、又は外部メモリ10MXにより内部メモリ10Mに書き換え登録した音声メッセージの再生順序を変更できるようになっている。
【0049】
具体的には、図8に例示するように、上昇運転モード、下降運転モードといった通常運転の際のアナウンスモードの他に、例えば、休日アナウンスモード(変更例1)や雨天時アナウンスモード(変更例2)といったアナウンスモード(音声メッセージの組合せモード)を別途設ける。そして、例えば、休日アナウンスモードでは、#020(ベビーカーをご利用の方は大変危険ですので、エレベーターをご利用ください。)、#020(お子様連れの方は手をつなぎ、黄色い線の内側にお乗りください。)といったメッセージを先頭に持ってきたり、雨天時アナウンスモードでは、#030(本日は雨が降っており、足元が大変滑りやすくなっております。)、#031(乗り降りの際は、足元に十分お気をつけください。)、#032(長靴や運動靴はエスカレーターに挟まれやすいので、特にご注意ください。)といったメッセージを先頭に持ってくることにより、曜日、時間帯、天候等に応じた適切な注意喚起や利便性の高い音声案内を利用者に提供することができる。
【0050】
このように、本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置10では、音声データの登録自体は、外部メモリ10MXにて可能とすると共に、外部機器からは、登録メッセージの組合せの変更のみを可能とすることにより、特に、公共性の高い駅等に設置されたエスカレーター1に対してセキュリティの向上を図ることができる。
【0051】
すなわち、登録する音声メッセージを変更する際には、必ず外部メモリ10MXによる登録変更手続きが必要な構成(データの書き換えの際に必ず外部メモリ10MXの接続を要する構成)とすると共に、外部機器からは登録した要素メッセージの順序変更のみを可能とする構成とすることにより、物理的なセキュリティを向上させて公衆回線の利用を可能とし、かつ、システム管理者の負荷軽減やセキュリティソフトの省略等を可能として、イニシャルコストやランニングコストの低減に寄与することができる。
【0052】
また、登録データの変更を外部メモリ10MX(本例では、USBメモリ)を接続(装着)するだけで可能とすることにより、例えば、月に1回程度の定期保守時に、通常の作業員(保守員)によるメッセージの変更が可能となる。
【0053】
なお、上述した音声メッセージの組合せモードは任意に設定可能であり、例えば、列車遅延情報、緊急地震速報、女性専用車運行情報、近隣イベント開催情報等の緊急度や付加価値の高い情報を、必要に応じて外部メモリ10MXにより要素メッセージを付加して、内部メモリ10M内の要素メッセージを適宜組み合わせることにより、音声メッセージとしてアナウンスすることができる。このように音声メッセージの組合せモードを増やした場合でも、汎用データを流用することにより、従来に比し、音声データ全体の容量を低減することができる。
【0054】
また、外部機器からの再生順序の変更に替えて、タイマー機能を付加することにより、時間帯や曜日に応じて自動的に要素メッセージの組合せを切り替えるように構成してもよい。さらに、騒音等が問題となる早朝・深夜等では、スピーカSP1,SP2の音量を低減するように、外部機器からの遠隔操作又はタイマーにより、スピーカSP1,SP2の出力を変更調整するように構成してもよい。
【0055】
さらに、本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置10では、省電力化や低騒音化等の観点から、エスカレーター1の両端部に設けられた2つのスピーカSP1,SP2のうち、一方のスピーカからのみ音声メッセージを出力するように構成している。
【0056】
具体的には、エスカレーター1の上昇運転中には、下側スピーカSP1から音声メッセージを出力するようになっている(図6(a)参照)。一方、エスカレーター1の下降運転中には、上側スピーカSP2から音声メッセージを出力するようになっている(図6(b)参照)。
【0057】
このように、エスカレーター1の運転方向に沿って上流側(入口側)の乗降口に設置されたスピーカから音声メッセージを出力することにより、省電力化や低騒音化に寄与すると共に、視覚障害者等が誤って入口側乗降口に進入することを未然に防止することができる。
【0058】
また、エスカレーター1の運転中に異常が検出された場合には、下側のスピーカSP1と上側のスピーカSP2とを切り替えて交互に音声メッセージを出力するように構成している。
【0059】
具体的には、エスカレーター1の上昇運転中に異常が発生した場合には、下側スピーカSP1⇒上側スピーカSP2⇒下側スピーカSP1⇒・・・と交互に音声メッセージを出力するようになっている。一方、エスカレーター1の下降運転中に異常が発生した場合には、上側スピーカSP2⇒下側スピーカSP1⇒上側スピーカSP2⇒・・・と交互に音声メッセージを出力するようになっている(図6(c)参照)。
【0060】
このように、下側スピーカSP1と上側スピーカSP2とを切り替えて交互に所定の音声メッセージ(例えば、「エスカレーターを階段として利用しないで下さい」)を出力することにより、利用者が停止した状態のエスカレーター1に進入したり、階段として利用することを未然に防止して利用者の一層の安全を確保している。なおこの場合も、上流側のスピーカから音声メッセージの出力を開始することにより、通常運転の際の運転方向に慣れた利用者(例えば、通勤客等)に対して確実に注意喚起を行い、当該利用者が不注意で(習慣的に)異常の発生したエスカレーター1に乗り込むことを未然に防止することができる。
【0061】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨に逸脱しない範囲において多様な変更もしくは改良を加え得るものである。例えば、上述した実施の形態では、エスカレーターの利用者に対して所定のメッセージを出力するエスカレーター用の音声案内装置について例示したが、本発明に係る音声案内装置は、このような形態に限定されるものではなく、例えば、駅等に設けられたエレベーター用の音声案内装置としても好適に適用可能である。
【0062】
また、本実施の形態に係るエスカレーター用音声案内装置10は、公共性が高く設置箇所が広汎囲に渡り、かつ、時間帯、天候、車両運行状況、安全キャンペーン等に応じて事前に想定したメッセージと異なるメッセージが必要となることが多い、駅等に設置されたエスカレーター(エレベータ等)により好適であるが、通常のエスカレーター等にも当然に適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1:エスカレーター、1C:エスカレーター制御盤、5:ハンドレール、7:下部乗降口、9:上部乗降口、10:エスカレーター用音声案内装置、10D:装着検知部、10M:内部メモリ、10MX:外部メモリ、10RC:書き換え制御部、L1,L2:表示ランプ、SP1,SP2:スピーカ、SPC:音声出力制御部、SVP:監視制御パネル、TP:タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレーターの利用者に対して注意喚起や行き先をアナウンスするエスカレーター用音声案内装置であって、
装置内に固設され、所定の音声データを格納する音声情報格納手段と、
前記音声情報格納手段の内容に基づいて、所定のアナウンスを出力する音声出力手段と、
前記音声情報格納手段とは別体に設けられると共に、装置に対して着脱可能に形成され、前記所定の音声データを格納する音声情報外部格納手段と、
前記音声情報外部格納手段が装着されたか否かを検知する装着検知手段と、
前記装着検知手段が音声情報外部格納手段の装着を検知した場合に、当該音声情報外部格納手段の音声データが所定のフォーマットか否かを判定すると共に、前記音声情報外部格納手段のデータが所定の音声データであると判定される場合に、当該音声データに基づいて前記音声情報格納手段の内容を書き換える音声情報書き換え制御手段と
を備えることを特徴とするエスカレーター用音声案内装置。
【請求項2】
前記所定の音声情報は、各エスカレーターの設置状況や運転状況によってエスカレーターごとに異なる固有音声情報と、各エスカレーターに共通の汎用音声情報とに区分されており、前記音声情報書き換え制御手段は、前記固有音声情報を書き換えることを特徴とする請求項1に記載のエスカレーター用音声案内装置。
【請求項3】
前記汎用音声情報は、利用者に対して所定の注意を喚起する注意喚起メッセージであり、前記固有音声情報は、エスカレーターの行き先をアナウンスする行き先メッセージであることを特徴とする請求項2に記載のエスカレーター用音声案内装置。
【請求項4】
公衆回線を介して接続された外部機器をさらに備え、当該外部機器により前記音声情報書き換え制御手段を介して前記汎用音声情報と固有音声情報との組合せを変更することを特徴とする請求項2又は3に記載のエスカレーター用音声案内装置。
【請求項5】
前記音声出力手段は、エスカレーターの両端の乗降口に設置されていると共に、エスカレーターの上昇運転時には、下部乗降口側から所定のアナウンスを出力する一方、エスカレーターの下降運転時には、上部乗降口側から所定のアナウンスを出力することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のエスカレーター用音声案内装置。
【請求項6】
前記音声出力手段は、エスカレーターの両端の乗降口に設置されていると共に、エスカレーターの運転中に異常が発生した場合には、一方の乗降口と他方の乗降口とに設けられた前記音声出力手段を切り替えて、交互に前記所定のアナウンスを出力することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のエスカレーター用音声案内装置。
【請求項7】
前記交互のアナウンスは、運転方向上流側の乗降口側からアナウンスを開始することを特徴とする請求項6に記載のエスカレーター用音声案内装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−16597(P2011−16597A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160503(P2009−160503)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(391024951)東日本トランスポ−テック株式会社 (24)
【Fターム(参考)】