説明

エスカレータ監視システム

【課題】システムの大型化を抑制することができるエスカレータ監視システムを提供すること。
【解決手段】エスカレータ監視システム1−1は、複数の伝播管2a〜2dと、音センサ3と、監視装置4とを備える。複数の伝播管2a〜2dは、エスカレータEにおける複数の監視箇所Ea〜Edと音センサ3との間にそれぞれ配置される。複数の伝播管2a〜2dは、複数の監視箇所Ea〜Edで発生する監視対象音を音センサ3にそれぞれ伝播する。監視装置4は、音センサ3により検出された監視対象音に基づいてエスカレータの状態を監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エスカレータ監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータの異常における迅速な対応などを目的として、エスカレータの状態を監視するエスカレータ監視システムがある(特許文献1、非特許文献1参照)。従来のエスカレータ監視システムでは、エスカレータの状態を監視するために各種のセンサを備え、センサがエスカレータの監視箇所に対して設けられている。ここで、監視箇所は、一箇所に限られず、エスカレータにおいて故障が発生する虞のある複数箇所となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−173434号公報
【非特許文献1】蔦田広幸、外3名、「加速度・音センサを搭載した点検ステップによるエスカレータ異常診断」、計測自動制御学会論文集、2007年、第43巻、第9号、p.735−740
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエスカレータ監視システムでは、エスカレータの状態を監視するために、各監視箇所にセンサをそれぞれ設けることとなる。従って、センサの数の増加に伴うシステムの大型化という問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、システムの大型化を抑制することができるエスカレータ監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエスカレータ監視システムは、複数の伝播管と、音センサと、監視装置とを備える。複数の伝播管は、1以上のエスカレータにおける複数の監視箇所と音センサとの間にそれぞれ配置される。複数の伝播管は、複数の監視箇所で発生する監視対象音を音センサにそれぞれ伝播する。監視装置は、音センサにより検出された監視対象音に基づいてエスカレータの状態を監視する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態1に係るエスカレータ監視システムの概略構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施形態1に係るエスカレータ監視システムの動作フローを示す図である。
【図3】図3は、伝播管の構成例を示す図である。
【図4】図4は、伝播管の構成例を示す図である。
【図5】図5は、実施形態2に係るエスカレータ監視システムの概略構成例を示す図である。
【図6】図6は、実施形態3に係るエスカレータ監視システムの概略構成例を示す図である。
【図7】図7は、実施形態3に係るエスカレータ監視システムの他の概略構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0009】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係るエスカレータ監視システムの概略構成例を示す図である。図2は、実施形態1に係るエスカレータ監視システムの動作フローを示す図である。図3は、伝播管の構成例を示す図である。図4は、伝播管の構成例を示す図である。なお、図3におけるOは、伝播管の管断面における図心軸である。なお、図心軸とは、管断面における伝播管の図心軸と、管断面における中空部の図心軸とが異なる場合は、中空部における図心軸とする。図1に示すように、実施形態1に係るエスカレータ監視システム1−1は、1台のエスカレータEに対して複数の伝播管2a〜2dと、音センサ3と、監視装置4とを備える。
【0010】
エスカレータ監視システム1−1では、1台のエスカレータEの複数の監視箇所Ea〜Edで発生する監視対象音を各監視箇所Ea〜Edにそれぞれ対応する複数の伝播管2a〜2dを介して、1つの音センサ3で検出し、音センサ3により検出された監視対象音に基づいて監視装置4によりエスカレータEの状態を監視するものである。なお、本実施形態では、エスカレータEが正常でない状態(異常な状態と、異常な状態ではないが正常な状態でもない状態とを含む)で運転されている場合に発生する監視対象音は、正常な状態で運転されている場合に発生する監視対象音と比較して、音が高くなる場合について説明する。
【0011】
エスカレータEは、踏段101と、移動手すり102と、駆動装置103と、制御装置104とを備える。踏段101は、乗員が乗る複数の踏板を踏段チェーンにより無端で連結して構成されている。踏段101は、エスカレータ設置場所200に設置されたトラス201に収納されており、トラス201の上部において回転自在に支持されたスプロケット105と、回部において回転自在に支持されたスプロケット106との間を移動する。移動手すり102は、踏段101の移動とともに移動するものであり、無端で構成されている。駆動装置103は、踏段101および移動手すり102を移動させるものであり、トラス201に収納されている。駆動装置103は、モータや減速機などを備える。制御装置104は、踏段101および移動手すり102の移動開始・移動停止、移動速度などを制御することでエスカレータEを駆動制御するものである。なお、制御装置104は、エスカレータEの遠隔に設けられた集中管理システムと接続されていても良い。この場合、制御装置104は、集中管理システムからの指示に基づいてエスカレータEの駆動制御を行うことができる。つまり、エスカレータEは、集中管理システムにより遠隔操作されても良い。
【0012】
また、各監視箇所Ea〜Edとは、エスカレータEが発生する音によりエスカレータEを監視する際に好適な位置である。エスカレータEでは、運転中に複数の周波数成分を含んだ音を発生する。エスカレータ監視システム1−1では、エスカレータEの運転中に発生する音のうち、監視対象音に基づいてエスカレータEの状態を監視する。ここで、監視対象音とは、エスカレータEが正常な状態で運転されている場合と、エスカレータEを構成する機器に不具合が生じたなどで正常でない状態で運転されている場合とで、レベルが変化する監視対象周波数成分を含む音である。つまり、各監視箇所Ea〜Edは、エスカレータEを運転することで発生する監視対象音が、正常な状態で運転されている場合と正常でない状態で運転される場合とで変化する位置が良い。各監視箇所Ea〜Edとしては、例えば、踏段101が折り返される位置、踏段101の踏板が平行状態から階段状態となる位置、踏段101とランディングプレート(踏段101を乗り降りする際に乗員に踏まれるプレート)との間の位置、駆動装置103などがある。本実施形態では、監視対象音は、人間の可聴できる周波数成分20Hz〜20kHzからなる音をいう。
【0013】
各伝播管2a〜2dは、両端部が開口している中空部材である。各伝播管2a〜2dは、例えば図3の(a)に示すように、外壁面が各伝播管2a〜2dの管断面において円形状、内壁面が管断面において円形状に形成され、中空部2eが形成されている。ここで、管断面とは、伝播管2a〜2dの長手方向と直交する平面での断面である。伝播管2aは、図1に示すように、一方の端部がエスカレータEの監視箇所Eaで発生した監視対象音を中空部2eから他方の端部に伝播させることができる位置に、他方の端部が中空部2eを伝播した監視箇所Eaで発生した監視対象音を音センサ3に入力することができる位置となるように配置されている。伝播管2bは、一方の端部がエスカレータEの監視箇所Ebで発生した監視対象音を中空部2eから他方の端部に伝播させることができる位置に、他方の端部が中空部2eを伝播した監視箇所Ebで発生した監視対象音を音センサ3に入力することができる位置となるように配置されている。伝播管2cは、一方の端部がエスカレータEの監視箇所Ecで発生した監視対象音を中空部2eから他方の端部に伝播させることができる位置に、他方の端部が中空部2eを伝播した監視箇所Ecで発生した監視対象音を音センサ3に入力することができる位置となるように配置されている。伝播管2dは、一方の端部がエスカレータEの監視箇所Edで発生した監視対象音を中空部2eから他方の端部に伝播させることができる位置に、他方の端部が中空部2eを伝播した監視箇所Edで発生した監視対象音を音センサ3に入力することができる位置となるように配置されている。つまり、各伝播管2a〜2dは、各監視箇所Ea〜Edと1つの音センサ3との間にそれぞれ配置され、各監視箇所Ea〜Edで発生する監視対象音を1つの音センサ3にそれぞれ伝播する。
【0014】
各伝播管2a〜2dは、同一長に形成されていることが好ましい。各伝播管2a〜2dを同一長とすることで、中空部2eを通過して音センサ3に伝播される各監視箇所Ea〜Edで発生した監視対象音が変化することを抑制することができる。従って、音センサ3は、各伝播管2a〜2dを介しても変化が抑制された各監視箇所Ea〜Edで発生した監視対象音を検出することができる。これにより、精度良くエスカレータEの状態を監視することができる。
【0015】
また、各伝播管2a〜2dは、肉厚に形成されていることが好ましい。これは、監視対象音が中空部2eを通過する際の伝播損失が低いことが好ましく、肉厚とすることで伝播損失を低くすることができるためである。
【0016】
また、各伝播管2a〜2dは、図3の(a)に示すように、管断面における中空部2eの断面長さ、本実施形態では管断面における中空部2eが円形状であるので各伝播管2a〜2dの内径Laが、監視対象音のうち、最大の周波数成分の音における半波長未満となるように形成されていることが好ましい。本実施形態では、各伝播管2a〜2dは、内径Laが8mm未満に設定されている。ここで、8mm未満としたのは、本実施形態では、20kHzが監視対象音のうちの最大周波数成分であり、20kHzの音における半波長が音速を考慮しても約8mm〜8.5mm程度であるためである。各伝播管2a〜2dは、管断面における中空部2eの断面長さを監視対象音のうち、最大周波数成分の音における半波長未満としたので、中空部2eを介して音センサ3に伝播される各監視箇所Ea〜Edで発生した監視対象音が変化することを抑制することができる。従って、音センサ3は、各伝播管2a〜2dを介しても変化が抑制された各監視箇所Ea〜Edで発生した監視対象音を検出することができる。これにより、精度良くエスカレータEの状態を監視することができる。
【0017】
音センサ3は、図1に示すように、エスカレータEを運転することで発生する監視対象音を検出することができるものである。音センサ3は、動電型、圧電型、静電型など音を電気信号に変換するいずれのマイクロフォンであっても良い。音センサ3は、監視装置4に接続されており、監視対象音に基づいた出力信号、すなわち検出された監視対象音の音データが監視装置4に入力される。つまり、音センサ3は、少なくとも20Hz〜20kHzの周波数成分からなる音を検出することができるものである。
【0018】
監視装置4は、音センサ3により検出された監視対象音に基づいてエスカレータEの状態を監視するものである。監視装置4は、監視対象音の音データに基づいてエスカレータEの状態、すなわちエスカレータEが正常であるか否かを判断するものである。本実施形態では、監視装置4は、検出された監視対象音の音データに対してフーリエ変換などによる周波数分析を行い、検出された監視対象音の複数の周波数成分のうちピークの周波数成分を、エスカレータEが正常な状態で運転されている場合に発生する監視対象音のピークの周波数成分と比較することでエスカレータEが正常であるか否かを判断する。つまり、監視装置4は、エスカレータEが正常な状態で運転されている場合と、正常でない状態で運転されている場合とで、変化する監視対象周波数成分が監視対象音の複数の周波数成分のうちピークの周波数成分となることで、エスカレータEが正常であるか否かを判断する。また、監視装置4は、検出された音のうちピークの周波数成分を、エスカレータEが異常な状態で運転されている場合に発生する音のピークの周波数成分と比較することでエスカレータEが異常であるか否かを判断する。なお、監視装置4は、エスカレータEの遠隔に設けられた集中管理システムと接続されていても良い。この場合、監視装置4は、音センサ3により検出された監視対象音に基づいたエスカレータEの状態を集中管理システムに通知することができる。つまり、エスカレータEは、集中管理システムにおいて遠隔監視されても良い。なお、集中管理システムが監視装置4としての機能を有し、音センサ3から出力信号を集中管理システムに出力し、集中監視システムが音センサ3により検出された監視対象音に基づいてエスカレータEの状態を直接監視しても良い。
【0019】
次に、エスカレータ監視システム1−1の動作について説明する。図2に示すように、まず監視装置4は、音データを取得する(ステップST1)。ここでは、監視装置4は、音センサ3により検出された監視対象音の音データを取得する。
【0020】
次に、監視装置4は、取得した監視対象音の音データの周波数分析をする(ステップST2)。ここでは、監視装置4は、上述のように、音データの周波数分析を行い、検出された監視対象音の複数の周波数成分のうちピークの周波数成分であるDa周波数成分を決定する。
【0021】
次に、監視装置4は、Da周波数成分が、エスカレータEが正常な状態で運転されている場合に発生する監視対象音のピークの周波数成分であるA周波数成分を超える(Da>A)か否かを判断する(ステップST3)。ここでは、監視装置4は、Da周波数成分とA周波数成分とを比較することで、エスカレータEが正常な状態で運転されているか否かを判断する。
【0022】
次に、監視装置4は、Da周波数成分がA周波数成分を超えると判断する(ステップST3肯定)と、Da周波数成分が、エスカレータEが異常な状態で運転されている場合に発生する音のピークの周波数成分であるB周波数成分に許容差αを引いた値以上であり、B周波数成分に許容差βを加えた値以下である(B−α≦Da≦B+β)か否かを判断する(ステップST4)。ここでは、監視装置4は、Da周波数成分とB周波数成分とを比較することで、エスカレータEが異常な状態で運転されているか否かを判断する。ここで、B周波数成分は、A周波数成分よりも高い値である。なお、B周波数成分は、エスカレータEが異常な状態で運転されていると仮定した場合において予測される監視対象音のピークの周波数成分であっても良い。また、許容差α,βは、任意に設定されるものであり、B周波数成分のみならず、Da周波数成分がB周波数成分近傍であっても、異常と判断するためのものである。ここで、許容差α,βは、同一でも異なっていても良い。
【0023】
次に、監視装置4は、B−α≦Da≦B+βであると判断する(ステップST4肯定)と、異常判断を行う(ステップST5)。ここでは、監視装置4は、エスカレータEが異常な状態で運転されていると判断すると、異常判断を行い、例えば、エスカレータEの監視者にエスカレータEが異常であることを通知する。
【0024】
また、監視装置4は、B−α≦Da≦B+αでないと判断する(ステップST4否定)と、注意判断を行う(ステップST6)。ここでは、監視装置4は、エスカレータEが正常な状態で運転されておらず、異常な状態でも運転されていないと判断する、すなわちエスカレータEの運転時間の増加に伴い異常な状態で運転されることとなる虞があると判断すると、注意判断を行い、例えば、エスカレータEの監視者にエスカレータEが異常ではないが正常でないことを通知する。
【0025】
また、監視装置4は、Da周波数成分がA周波数成分以下であると判断する(ステップST3否定)と、正常判断を行う(ステップST7)。
【0026】
以上のように、本実施形態に係るエスカレータ監視システム1−1では、1つの音センサを用いてエスカレータの複数の監視箇所の監視対象音を検出し、検出した監視対象音に基づいてエスカレータの状態を監視することができる。従って、複数の監視箇所にそれぞれセンサを設ける場合と比較して、システムの大型化を抑制することができる。従って、低コスト化を図ることができる。また、システムの大型化を抑制するために監視箇所を減らすことや、低コスト化を図るために音センサの性能を低下させることを行わなくて良い。これにより、エスカレータの状態の監視精度が低下することを抑制することができる。
【0027】
〔変形例〕
以下、本実施形態の変形例について説明する。エスカレータEが正常でない状態で運転されている場合に発生する監視対象音は、正常な状態で運転されている場合に発生する監視対象音と比較して、音が低くなる場合もある。この場合は、エスカレータ監視システム1−1の動作におけるステップST3において、Da周波数成分がA周波数成分未満である(Da<A)か否か監視装置4が判断することとなり、B周波数成分がA周波数成分よりも低い値となる。
【0028】
また、監視対象音は、人間の可聴できるすべての周波数成分からなる音でなくても良く、例えば20Hz〜10kHzからなる音であっても良い。さらに、監視対象音は、1つの特定周波数成分のみからなる音であっても良い。特定周波数成分とは、監視対象周波数成分のうち、エスカレータEが正常な状態で運転されている場合と、異常な状態で運転されている場合とで、レベルが最も変化する周波数成分をいう。この場合は、特定周波数成分のレベルを判断することで、エスカレータEが正常であるか否かを判断し、エスカレータEの状態を監視する。
【0029】
また、各伝播管2a〜2dは、図3の(b)に示すように、外壁面が管断面において円形状、内壁面が管断面において多角形状に形成されても良い。この場合、管断面における中空部2fの断面長さ、同図の(b)では管断面における中空部2fが多角形状であるので各伝播管2a〜2dの中空部2fの外接円Cの直径Lbが、監視対象音のうち、最大の周波数成分の音における半波長未満となるように形成されていることが好ましい。また、各伝播管2a〜2dは、直径Lbが8mm未満に設定されていることが好ましい。また、図3の(c)に示すように、外壁面が管断面において楕円形状、内壁面が管断面において楕円形状に形成されても良い。この場合は、管断面における中空部2gの断面長さ、同図の(c)では管断面における中空部2gが楕円形状であるので各伝播管2a〜2dの中空部2gの長軸長Lcが、監視対象音のうち、最大の周波数成分の音における半波長未満となるように形成されていることが好ましい。また、各伝播管2a〜2dは、長軸長Lcが8mm未満に設定されていることが好ましい。なお、管断面における中空部の長さは、中空部の断面形状に応じて特定されるものであり、例えば管断面における中空部2fが正四角形状である場合は対角線の長さであっても良い。
【0030】
また、各伝播管2a〜2dの長さは、異なっていても良い。この場合、各伝播管2a〜2dは、各伝播管2a〜2dの長さの差(ΔL)と監視対象音の波数kとの積が、監視対象音の半波長λ/2の整数倍n(n=1,2,3…)と不等号となる(ΔL×k≠λ/2×n)、すなわち監視対象音の半波長の整数倍とならないように形成されていることが好ましい。ここで、監視対象音の波数kおよび監視対象音の半波長λ/2とは、監視対象音のうち、監視対象周波数成分のみからなる音の波数kおよび半波長λ/2であることが好ましく、さらには監視対象音のうち特定周波数成分の音の波数kおよび半波長λ/2であることが好ましい。各伝播管2a〜2dの長さが異なっていても、ΔL×k≠λ/2×nの関係となる、すなわち監視対象音の半波長の整数倍とならないように形成されているので、音センサ3に伝播される各監視箇所Ea〜Edで発生した監視対象音が変化、例えば各伝播管2a〜2dで監視対象音を強めあったり、弱めあったりすることを抑制することができる。従って、音センサ3は、各伝播管2a〜2dを介しても変化が抑制された各監視箇所Ea〜Edで発生した監視対象音を検出することができる。これにより、精度良くエスカレータEの状態を監視することができる。
【0031】
また、各伝播管2a〜2dは、直線で形成されていることが好ましいが、曲がっていても良い。各伝播管2a〜2dは、例えば、図4に示すように、直角な曲げ角θ1の曲げ部R1と、直角な曲げ角θ2の曲げ部R2とにより、直線的に曲がっていても良い。この場合、各伝播管2a〜2dは、管断面における図心軸を含む平面での断面(以下、「平面断面」と称する)における中空部2hの曲げ部R1,R2の間での最長距離Ldが、監視対象音の半波長未満となるように形成されていることが好ましい。ここで、最長距離Ldは、各伝播管2a〜2dの平面断面における外周面の長さと、厚さに基づいて予測しても良い。ここで、監視対象音の半波長とは、監視対象音のうち、監視対象周波数成分のみからなる音の半波長であることが好ましく、さらには監視対象音のうち特定周波数成分の音の半波長であることが好ましい。各伝播管2a〜2dは、最長距離Ldを監視対象音における半波長未満としたので、音センサ3に伝播される各監視箇所Ea〜Edで発生した監視対象音が変化することを抑制することができる。つまり、音センサ3は、各伝播管2a〜2dを介しても変化が抑制された各監視箇所Ea〜Edで発生した監視対象音を検出することができる。これにより、精度良くエスカレータEの状態を監視することができる。
【0032】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係るエスカレータ監視システムを説明する。図5は、実施形態2に係るエスカレータ監視システムの概略構成例を示す図である。図5に示すように、実施形態2に係るエスカレータ監視システム1−2は、複数台のエスカレータE1〜E3に対して、複数の伝播管21a〜21d,22a〜22d、23a〜23dと、複数の音センサ31〜34と、監視装置4とを備える。実施形態2に係るエスカレータ監視システム1−2が備える伝播管、音センサ、監視装置の基本的構成および動作は、実施形態1に係るエスカレータ監視システム1−1とほぼ同一であるので、その説明は省略する。
【0033】
エスカレータ監視システム1−2では、複数台のエスカレータE1〜E3のそれぞれ複数の監視箇所E1a〜E1d,E2a〜E2d,E3a〜E3dで発生する監視対象音を各監視箇所E1a〜E1d,E2a〜E2d,E3a〜E3dにそれぞれ対応する複数の伝播管21a〜21d,22a〜22d、23a〜23dを介して、複数の音センサ31〜34で検出し、各音センサ31〜34により検出された監視対象音に基づいて監視装置4によりエスカレータE1〜E3の状態を監視するものである。具体的には、エスカレータE1の監視箇所E1a、エスカレータE2のエスカレータE1と同一位置の監視箇所E2a、エスカレータE3のエスカレータE1,E2と同一位置の監視箇所E3aにおいて発生する監視対象音を伝播管21a,22a,23aによりそれぞれ音センサ31に伝播し、音センサ31により検出された監視箇所E1a,E2a,E3aにおいて発生する監視対象音に基づいて監視装置4が同一位置の監視箇所E1a,E2a,E3aにおけるエスカレータE1〜E3の状態を監視する。エスカレータE1の監視箇所E1b、エスカレータE2のエスカレータE1と同一位置の監視箇所E2b、エスカレータE3のエスカレータE1,E2と同一位置の監視箇所E3bにおいて発生する監視対象音を伝播管21b,22b,23bによりそれぞれ音センサ32に伝播し、音センサ32により検出された監視箇所E1b,E2b,E3bにおいて発生する監視対象音に基づいて監視装置4が同一位置の監視箇所E1b,E2b,E3bにおけるエスカレータE1〜E3の状態を監視する。エスカレータE1の監視箇所E1c、エスカレータE2のエスカレータE1と同一位置の監視箇所E2c、エスカレータE3のエスカレータE1,E2と同一位置の監視箇所E3cにおいて発生する監視対象音を伝播管21c,22c,23cによりそれぞれ音センサ33に伝播し、音センサ33により検出された監視箇所E1c,E2c,E3cにおいて発生する監視対象音に基づいて監視装置4が同一位置の監視箇所E1c,E2c,E3cにおけるエスカレータE1〜E3の状態を監視する。エスカレータE1の監視箇所E1d、エスカレータE2のエスカレータE1と同一位置の監視箇所E2d、エスカレータE3のエスカレータE1,E2と同一位置の監視箇所E3dにおいて発生する監視対象音を伝播管21d,22d,23dによりそれぞれ音センサ34に伝播し、音センサ34により検出された監視箇所E1d,E2d,E3dにおいて発生する監視対象音に基づいて監視装置4が同一位置の監視箇所E1d,E2d,E3dにおけるエスカレータE1〜E3の状態を監視する。つまり、エスカレータ監視システム1−2では、各音センサ31〜34は、各エスカレータE1〜E3における同一位置の監視箇所において発生する監視対象音をそれぞれ検出する。つまり、監視装置4は、各エスカレータE1〜E3の同一位置の監視箇所ごとに各エスカレータE1〜E3の状態を監視することで、エスカレータE1〜E3の状態を伝播管の配置位置、すなわち装置位置のみで監視する。
【0034】
以上のように、本実施形態に係るエスカレータ監視システム1−2では、1つの音センサを用いて複数のエスカレータの同一位置の監視箇所で発生する監視対象音を検出し、検出した監視対象音に基づいてエスカレータの状態を監視することができる。従って、システムの大型化を抑制するとともに、複数のエスカレータにおける特定の位置の監視箇所での複数のエスカレータの状態を装置位置のみで監視することがで、エスカレータのいずれかの1つ以上のエスカレータどのの位置に異常があるかを特定することができる。
【0035】
なお、上記実施形態2では、各音センサ31〜34が同一位置の監視箇所ごとに発生する監視対象音を検出するが、これに限定されるものでなく、各音センサ31〜34が複数の同一位置を含む同一領域での複数の監視箇所ごとに発生する監視対象音を検出するようにしても良い。例えば、同一位置の監視箇所E1a,E2a,E3aおよび同一位置の監視箇所E1b,E2b,E3bに発生する監視対象音を1つの音センサで検出するように伝播管21a,22a,23a,21b,22b,23bを配置し、同一位置の監視箇所E1c,E2c,E3cおよび同一位置の監視箇所E1d,E2d,E3dに発生する監視対象音を1つの音センサで検出するように伝播管21c,22c,23c,21d,22d,23dを配置し、2つの音センサごとに検出された監視対象音に基づいて監視装置4がエスカレータE1〜E3の状態を監視しても良い。また、エスカレータE1のすべての監視箇所E1a〜E1d、エスカレータE2のすべての監視箇所E2a〜E2d、およびエスカレータE3のすべての監視箇所E3a〜E3dに発生する監視対象音を1つの音センサで検出するように伝播管21a〜21d,22a〜22d、23a〜23dを配置し、1つの音センサに検出された監視対象音に基づいて監視装置4がエスカレータE1〜E3の状態を監視しても良い。
【0036】
〔実施形態3〕
次に、実施形態3に係るエスカレータ監視システムを説明する。図6は、実施形態3に係るエスカレータ監視システムの概略構成例を示す図である。図7は、実施形態3に係るエスカレータ監視システムの他の概略構成例を示す図である。図6に示すように、実施形態3に係るエスカレータ監視システム1−3は、複数のエスカレータE1〜E4に対して、複数の伝播管21a〜21d,22a〜22d,23a〜23d,24a〜24dと、複数の音センサ35〜37と、監視装置4とを備える。実施形態3に係るエスカレータ監視システム1−3が備える伝播管、音センサ、監視装置の基本的構成および動作は、実施形態1に係るエスカレータ監視システム1−1とほぼ同一であるので、その説明は省略する。
【0037】
エスカレータ監視システム1−3では、複数台のエスカレータE1〜E4のそれぞれ複数の監視箇所E1a〜E1d,E2a〜E2d,E3a〜E3d,E4a〜E4dで発生する監視対象音を各監視箇所E1a〜E1d,E2a〜E2d,E3a〜E3d,E4a〜E4dにそれぞれ対応する複数の伝播管21a〜21d,22a〜22d、23a〜23d,24a〜24dを介して、複数の音センサ35〜37で検出し、各音センサ35〜37により検出された監視対象音に基づいて監視装置4によりエスカレータE1〜E4の状態を監視するものである。具体的には、エスカレータE1のすべての監視箇所E1a〜E1dおよびエスカレータE4のすべての監視箇所E4a〜E4dにおいて発生する監視対象音を伝播管21a〜21d,24a〜24dによりそれぞれ音センサ37に伝播し、音センサ37により検出された監視箇所E1a〜E1d,E4a〜E4dにおいて発生する監視対象音に基づいて監視装置4がエスカレータE1,E4の状態を監視する。エスカレータE2のすべての監視箇所E2a〜E2dおよびエスカレータE3のすべての監視箇所E3a〜E3dにおいて発生する監視対象音を伝播管22a〜22d,23a〜23dによりそれぞれ音センサ35に伝播し、音センサ35により検出された監視箇所E2a〜E2d,E3a〜E3dにおいて発生する監視対象音に基づいて監視装置4がエスカレータE2,E3の状態を監視する。エスカレータE3のすべての監視箇所E3a〜E3dおよびエスカレータE4のすべての監視箇所E4a〜E4dにおいて発生する監視対象音を伝播管23a〜23d,24a〜24dによりそれぞれ音センサ36に伝播し、音センサ36により検出された監視箇所E3a〜E3d,E4a〜E4dにおいて発生する監視対象音に基づいて監視装置4がエスカレータE3,E4の状態を監視する。つまり、複数の監視箇所を4つの監視箇所群E1a〜E1d,E2a〜E2d,E3a〜E3d,E4a〜E4dに分け、3つの音センサ35〜37がそれぞれ4つの監視箇所群において発生する監視対象音を検出する。
【0038】
監視装置4は、音センサ37により検出された監視対象音(監視箇所E1a〜E1d,E4a〜E4dから発生する監視対象音)が正常な状態における監視対象音でないと判断すると、エスカレータE1あるいはエスカレータE4のいずれかが正常な状態でない可能性があると判断する。この状態で、音センサ36により検出された監視対象音(監視箇所E3a〜E3d,E4a〜E4dから発生する監視対象音)が正常な状態における監視対象音であると判断すると、少なくともエスカレータE1が正常な状態でないと判断する。また、上記この状態で、音センサ36により検出された監視対象音が正常な状態における監視対象音でないと判断し、音センサ35により検出された監視対象音(監視箇所E3a〜E3d,E4a〜E4dから発生する監視対象音)が正常な状態における監視対象音であると判断すると、少なくともエスカレータE4が正常な状態でないと判断する。
【0039】
また、音センサ35により検出された監視対象音のみが正常な状態における監視対象音でないと判断すると、エスカレータE2あるいはエスカレータE3のいずれかが正常な状態でない可能性があると判断する。また、この状態で、音センサ36により検出された監視対象音が正常な状態における監視対象音であると判断すると、少なくともエスカレータE2が正常な状態でないと判断する。また、上記この状態で、音センサ36により検出された監視対象音が正常な状態における監視対象音でないと判断し、音センサ37により検出された監視対象音が正常な状態における監視対象音であると判断すると、少なくともエスカレータE3が正常な状態でないと判断する。
【0040】
また、音センサ36により検出された監視対象音のみが正常な状態における監視対象音でないと判断すると、エスカレータE3あるいはエスカレータE4のいずれかが正常な状態でない可能性があると判断する。また、この状態で、音センサ35により検出された監視対象音が正常な状態における監視対象音であると判断すると、少なくともエスカレータE4が正常な状態でないと判断する。また、上記この状態で、音センサ35により検出された監視対象音が正常な状態における監視対象音でない判断し、音センサ37により検出された監視対象音が正常な状態における監視対象音であると判断すると、エスカレータE3が正常な状態でないと判断する。
【0041】
以上のように、本実施形態に係るエスカレータ監視システム1−3では、各音センサが監視対象音を検出する複数の監視箇所のうち一部が他の音センサが監視対象音を検出する複数の監視箇所の一部と重複し、かつすべての音センサによりすべての監視箇所で発生する監視対象音を検出することができるように、複数の監視箇所と複数の音センサとの間に伝播管を配置する。このことで、監視装置は、各音センサにより検出された監視対象音に基づいて、重複している監視箇所ごとに音センサを用いる場合と比較して、少ない音センサにより、重複している監視箇所ごとの状態を監視することができる。これにより、システムの大型化を抑制することができる。また、本実施形態では、重複している監視箇所がエスカレータE1〜E4ごとであるので、3つの音センサを用いることで、監視装置が各エスカレータE1〜E4の状態を個別に監視することができる。
【0042】
なお、各エスカレータE1〜E4の状態を個別に監視することができるための複数の音センサと複数の監視箇所との組み合わせは、図6に示すような組み合わせに限定されるものではなく、例えば図7に示すような組み合わせであっても良い。図7に示すエスカレータ監視システム1−4においては、音センサ37が監視箇所E1a〜E1dおよび監視箇所E4a〜E4dと組み合わされ、音センサ38が監視箇所E1a〜E1dおよび監視箇所E2a〜E2dと組み合わされ、音センサ39が監視箇所E2a〜E2dおよび監視箇所E3a〜E3dと組み合わされている。このような組み合わせであっても、監視装置4が各エスカレータE1〜E4の状態を個別に監視することができる。
【0043】
なお、各実施形態1〜3の記載は、各実施形態1〜3、変形例の種々の組み合わせを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0044】
1−1〜1−4 エスカレータ監視システム
2a〜2d,21a〜21d,22a〜22d,23a〜23d,24a〜24d 伝播管
3,31〜39 音センサ
4 監視装置
101 踏段
102 移動手すり
103 駆動装置
104 制御装置
105,106 スプロケット
200 エスカレータ設置場所
201 トラス
E,E1〜E4 エスカレータ
Ea〜Ed,E1a〜E1d,E2a〜E2d,E3a〜E3d,E4a〜E4d 監視箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音センサと、
1以上のエスカレータにおける複数の監視箇所と前記音センサとの間にそれぞれ配置され、前記複数の監視箇所で発生する監視対象音を前記音センサにそれぞれ伝播する複数の伝播管と、
前記音センサにより検出された監視対象音に基づいて前記エスカレータの状態を監視する監視装置と、
を備えることを特徴とするエスカレータ監視システム。
【請求項2】
前記複数の伝播管は、同一長である請求項1に記載のエスカレータ監視システム。
【請求項3】
前記複数の伝播管は、前記伝播管間の長さの差と、前記監視対象音の波数との積が、前記監視対象音の半波長の整数倍と不等号である請求項1に記載のエスカレータ監視システム。
【請求項4】
前記伝播管の管断面における前記中空部の断面長さは、前記監視対象音のうち、最大周波数成分の音の半波長未満である請求項1〜3のいずれかに1つに記載のエスカレータ監視システム。
【請求項5】
前記伝播管の管断面における前記中空部の断面長さは、8mm以下である請求項1〜3のいずれか1つに記載のエスカレータ監視システム。
【請求項6】
前記伝播管が2以上の曲げ部により曲がっている場合は、前記管断面における図心軸を含む平面での断面における前記中空部の前記曲げ部の間での最長距離が、前記監視対象音の半波長未満である請求項1〜5のいずれかに1つに記載のエスカレータ監視システム。
【請求項7】
前記複数の監視箇所は、複数のエスカレータにおける同一位置での監視箇所あるいは同一領域での複数の監視箇所であり、
前記複数の伝播管は、前記複数のエスカレータにおける同一位置での監視箇所あるいは同一領域での複数の監視箇所で発生する監視対象音を前記音センサにそれぞれ伝播する請求項1〜6のいずれかに1つに記載のエスカレータ監視システム。
【請求項8】
前記音センサを複数備え、
1つの音センサが前記監視対象音を検出する前記複数の監視箇所のうち一部が他の1つの音センサが前記監視対象音を検出する前記複数の監視箇所の一部と重複し、かつすべての前記音センサによりすべての前記監視箇所で発生する前記監視対象音を検出することができるように、前記複数の監視箇所と前記複数の音センサとの間に前記複数の伝播管がそれぞれ配置される請求項1〜6のいずれか1つに記載のエスカレータ監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−255975(P2011−255975A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129416(P2010−129416)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】