説明

エステル化合物および(メタ)アクリル酸誘導体の製造方法

【課題】高い反応収率でエステル化合物を製造でき、エステル化反応による着色も防できる、エステル化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】酸ハライドとアルコールとを、塩基の存在下で反応させる際に、塩基として、窒素原子に対してβ水素を持たない有機塩基及び無機塩基からなる群から選ばれる1種以上を用いる、エステル化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエステル化合物の製造方法、該製造方法で得られるエステル化合物を用いた(メタ)アクリル酸誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、0.3μm以下の超微細加工に不可欠な技術として遠紫外線リソグラフィーが開発され、中でもKrFエキシマレーザー光を用いた技術に関してはすでに工業的生産方法として完全に認知されている。
更に波長193nmのArFエキシマレーザー光を光源としたフォトリソグラフィーで用いられる化学増幅型レジスト材料に対しては、該波長における高い透明性が求められており、高透明性のベース樹脂の開発が必要であり、これまで盛んにその開発が行われてきた。
【0003】
ArFエキシマレーザー光に対する高透明性樹脂としては、例えばアクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体の共重合体が知られている。かかる(メタ)アクリル樹脂誘導体の合成法としては、(メタ)アクリル酸ハライドとアルコールによるエステル化反応で合成する方法(例えば、特許文献1)や、酸ハライドとアルコールによるエステル化を行ない、得られたエステル化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて合成する方法(例えば、特許文献2)や、水酸基を持つ(メタ)アクリル酸誘導体と酸ハライドによるエステル化で合成する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−23304号公報
【特許文献2】特開2009−221111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1〜2に示される、酸ハライドを用いたエステル化反応においては、使用する塩基の種類によって、得られるエステル化物が着色する場合や、反応収率が大幅に低くなる場合がある。着色したエステル化合物を、例えばリソグラフィー用レジスト樹脂の原料として使用すると、樹脂の透明性が低下し、レジスト樹脂としての性能に悪影響を及ぼす恐れがある。一方、着色したエステル化合物を脱色するためには精密な精製が必要となり、工程が煩雑になったり、精製工程で取得収率が低下したりする可能性があるが、上記特許文献にはそれらについて何ら開示されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、高い反応収率でエステル化合物を製造でき、エステル化反応による着色も防止できる、エステル化合物の製造方法、および該製造方法で得られるエステル化合物を用いて(メタ)アクリル酸誘導体を製造する方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、酸ハライドとアルコールのエステル化反応において、例えばトリエチルアミン等の、β水素を持つ三級アミンを塩基として使用すると反応生成物に着色が生じるのに対して、窒素原子に対してβ水素を持たない有機塩基又は無機塩基を使用した場合には、エステル化合物はほとんど着色せず、生成率も著しく向上することを見出した。
これは、窒素原子に対してβ水素を有する有機塩基、例えば、三級アミンを用いた場合、下記スキーム1に示すように、酸ハライド(a)と三級アミン(b)とが反応して四級アミン塩(c)を形成し(step1)、続いてβ水素が脱離する反応(step2)が進行するホフマン脱離が副反応として生じるためと考えられる。スキーム1において、RおよびXは後述の式(1)における定義と同じ意味を表す。R〜R12はそれぞれ独立にHまたは炭素数1〜5のアルキル基(直鎖状または分岐状)を表す。
step2の反応で生成するアミド化合物(d)および/またはアルケン化合物(e)は着色の原因となる。また、かかる副反応によって酸ハライド(a)が消費されるため、反応収率の低下につながる。
したがって、窒素原子に対してβ水素を持たない有機塩基又は無機塩基を用いれば、下記スキーム1の副反応が生じないため、反応生成物の着色が防止され、反応収率が向上する。
【0008】
【化1】

【0009】
すなわち、本発明の第一の要旨は、下記式(1)で表わされる酸ハライドと、下記式(2)で表わされるアルコールとを、塩基の存在下で反応させて下記式(3)で表わされるエステル化合物を製造する方法であって、前記塩基が、窒素原子に対してβ水素を持たない有機塩基又は無機塩基からなる群から選ばれる1種以上である、エステル化合物の製造方法である。
【0010】
【化2】

【0011】
(Rは炭素数1〜18の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は直鎖状でも分岐状であってもよく、脂環または芳香環を有していてもよく、水酸基、スルファニル基(−SH)、ハロゲン原子、スルファンジイル基(−S−)、または不飽和結合を有していてもよい。XはCl、Br、またはIを表す。)
【0012】
【化3】

【0013】
(Rは炭素数1〜18の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は直鎖状でも分岐状であってもよく、脂環または芳香環を有していてもよく、水酸基、スルファニル基(−SH)、ハロゲン原子、スルファンジイル基(−S−)、または不飽和結合を有していてもよい。)
【0014】
【化4】

【0015】
(R、Rは式(1)、(2)における定義と同じ意味を表す。)
【0016】
本発明の第二の要旨は、下記第一工程および第二工程を有する(メタ)アクリル酸誘導体の製造方法である。
第一工程:下記式(1A)で表わされる酸ハライドと、下記式(2)で表わされるアルコールとを、塩基の存在下で反応させて、下記式(3’)で表わされるエステル化合物を製造する工程であって、前記塩基が、窒素原子に対してβ水素を持たない有機塩基又は無機塩基からなる群から選ばれる1種以上である。
第二工程:前記第一工程を行って得られた、下記式(3’)で表わされるエステル化合物を原料とし、これに(メタ)アクリロイル基を導入することにより、下記式(4)で表わされる(メタ)アクリル酸誘導体を製造する工程。
【0017】
【化5】

【0018】
(X及びX´はそれぞれ独立にCl、Br、またはIを表す。R、Rはそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状の1価の飽和炭化水素基を表し、RとRが互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環状の飽和炭化水素基を形成してもよい。kは1〜5の整数を表す。)
【0019】
【化6】

【0020】
(Rは炭素数1〜18の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は直鎖状でも分岐状であってもよく、脂環または芳香環を有していてもよく、水酸基、スルファニル基(−SH)、ハロゲン原子、スルファンジイル基(−S−)、または不飽和結合を有していてもよい。)
【0021】
【化7】

【0022】
(R、R、およびkは式(1A)における定義と同じ意味を表す。Rは式(2)における定義と同じ意味を表す。)
【0023】
【化8】

【0024】
(R、R、およびkは式(1A)における定義と同じ意味を表す。Rは式(2)における定義と同じ意味を表す。RはH、F、メチル基またはトリフルオロメチル基を表す。)
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、酸ハライドとアルコールとのエステル化反応において、高い反応収率でエステル化合物を得ることができ、かつ反応生成物の着色が防止される。
本発明の製造方法により得られたエステル化合物を原料として(メタ)アクリル酸誘導体を製造することにより、透明性に優れる(メタ)アクリル酸誘導体を、高い反応収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを意味する。
【0027】
<式(1)の酸ハライド>
上記式(1)の酸ハライド(以下、酸ハライド(1)ということもある。)において、Rとしての1価の炭化水素基は、炭素数が1〜18であり、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、脂環を有していてもよく、芳香環を有していてもよく、不飽和結合を有していてもよく、スルファンジイル基(−S−)を有していてもよく、置換基を有していてもよい。ここで、置換基とは水酸基、スルファニル基(−SH)およびハロゲン原子からなる群から選ばれる1種以上である。式(1)において、XはCl、Br、またはIであり、原料の価格や入手の容易さからClが好ましい。
【0028】
酸ハライド(1)の具体例としては、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、α-トリフルオロメチルアクリル酸クロライド、ピバル酸クロライド、ベンジルオキシカルボニルクロライド、アセチルクロライド、t-ブトキシカルボニルクロライド、下記式(1−1)〜(1−4)で表される化合物、および上記式(1A)で表される化合物が挙げられる。
【0029】
【化9】

【0030】
上式(1A)において、X及びX´は好ましい態様も含めて式(1)におけるXと同義である。式(1A)中のX及びX´は同じであっても異なっていてもよい。
式(1A)において、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1〜10の1価の炭化水素基(直鎖状、分岐状もしくは環状)を表し、RとRが互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環状の飽和炭化水素基を形成してもよい。kは1〜5の整数を表す。
化合物(1A)の具体例としては、クロロ酢酸クロライド、3−クロロプロピオン酸クロライド、4−クロロ酪酸クロライド、5−クロロ吉草酸クロライド等が挙げられる。
【0031】
酸ハライドとしては、入手の容易さから、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、クロロ酢酸クロライド、クロロプロピオン酸クロライド、クロロ酪酸クロライドが好ましい。
【0032】
酸ハライド(1)の使用量は、上記式(2)で表されるアルコール(以下、アルコール(2)ということもある。)の1.0モルに対して、高い反応転化率が得られる点で、1.0モル当量以上が好ましく、1.05モル当量以上がより好ましい。また、経済的観点から2.0モル当量以下が好ましく、1.5モル当量以下が更に好ましい。
【0033】
<式(2)のアルコール>
上記式(2)において、Rとしての1価の炭化水素基は、炭素数が1〜18であり、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、脂環を有していてもよく、芳香環を有していてもよく、不飽和結合を有していてもよく、スルファンジイル基(−S−)を有していてもよく、置換基を有していてもよい。ここで、置換基とは水酸基、スルファニル基(−SH)およびハロゲン原子からなる群から選ばれる1種以上である。
【0034】
アルコール(2)の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘプタノール等の直鎖アルコール;イソプロパノール、i−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール等の分岐アルコール;下記式(2A)または下記式(2−1)〜(2−21)で表わされる脂環式アルコール;下記式(2−22)〜(2−26)で表わされる芳香環を有するアルコール;下記式(2B)で表される、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;等が挙げられる。
【0035】
式(2A)において、WはCH、OまたはSを表し、RはH、Fまたは炭素数1〜3のアルコキシ基を表す。化合物(2A)の具体例としては、下記式(2A−1)〜(2A−12)が挙げられる。
式(2B)において、R13、R14およびk’は、好ましい態様も含めて、式(1A)におけるR、R、およびkとそれぞれ同義である。RはH、F、メチル基またはトリフルオロメチル基を表す。
【0036】
【化10】

【0037】
【化11】

【0038】
【化12】

【0039】
【化13】

【0040】
【化14】

【0041】
【化15】

【0042】
【化16】

【0043】
これらのアルコール(2)の中でも、レジスト用重合体の原料に用いる場合の、ドライエッジング耐性の観点から、脂環式アルコールまたは芳香環を有するアルコールが好ましい。
【0044】
<塩基>
本発明では、塩基として、窒素原子に対してβ水素を持たない有機塩基又は無機塩基を用いる。
本明細書において、窒素原子に対する「β水素」とは、窒素原子に炭素数2以上の直鎖状または環状の炭化水素基が結合している場合に、窒素原子の隣の炭素原子をα炭素原子とし、該α炭素原子の隣の炭素原子をβ炭素原子とし、該β炭素原子と共有結合をしている水素原子をβ水素という。
本発明で用いられる有機塩基は、窒素原子に対してβ水素を持たない有機塩基であり、窒素原子に対してβ水素を有する三級アミン等を除く有機塩基からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。本明細書において、「β水素を有するアミン」とは、窒素原子に炭素数2以上の直鎖状または環状の炭化水素基が結合しており、β炭素原子に直結する不飽和結合が存在せず、該β炭素原子がβ水素を有するアミンを意味する。
これらの有機塩基を用いることにより、前記スキーム1に示した塩基と酸ハライドとの副反応を防止できる。
【0045】
本発明において、塩基として用いられる有機塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリt−ブチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,2−ビピリジン、4,4−ビピリジン、2,6−ルチジン、ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、テトラゾール等のアミンが挙げられる。
【0046】
また、本発明においては、塩基として無機塩基を使用することもでき、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
【0047】
これらの塩基の中でも、有機溶媒との親和性が高いことから、有機塩基が好ましく、アミンを用いることがより好ましい。特にトリメチルアミン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、イミダゾールが好ましい。
【0048】
塩基の使用量は、高い反応転化率が得られる点で、アルコール(2)の1.0モルに対して、1.0モル当量以上が好ましく、1.05モル当量以上がより好ましい。また、経済的観点から2.0モル当量以下が好ましく、1.5モル当量以下が更に好ましい。
【0049】
<エステル化合物の製造方法(エステル化工程)>
本工程では、酸ハライド(1)と、アルコール(2)とを、上記塩基の存在下で反応させて、上記式(3)で表わされるエステル化合物(以下、エステル化合物(3)と示す。)を製造する。
本工程では、必ずしも溶媒を必要としないが、反応液中に適当な溶媒を含有していてもよい。
【0050】
使用可能な溶媒としては、使用するアルコール(2)および塩基が溶解し、かつ使用する酸ハライド(1)、アルコール(2)、塩基のいずれとも反応しないものであれば特に限定されないが、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジプロピルケトン等のケトン類、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が好ましい。これらの溶媒は単一で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
また、酸ハライド(1)の反応性が高く、水への溶解性が低い場合に限り、水を溶媒として用いることもできる(ショッテン・バウマン法)。
溶媒を使用する場合、溶媒量が増えると反応速度低下の原因やコスト増加の原因となるため、使用量はアルコール(2)1質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0051】
本工程の反応形態は特に限定されないが、例えば、反応機にアルコール(2)、溶媒、および塩基を仕込み、窒素雰囲気下で酸ハライド(1)を滴下しながら反応させる方法、反応機側に、酸ハライド(1)、溶媒、および塩基を入れ、ここにアルコール(2)を滴下する方法、反応機側に酸ハライド(1)、溶媒、アルコール(2)を入れ、ここに塩基溶液を滴下する方法等が挙げられる。
【0052】
本工程の終了後、必要に応じて精製を行うこともできる。精製の方法は、公知の方法に従って行うことができ特に限定されないが、例えば、水洗、蒸留、晶析、カラムクロマトグラフィー等が挙げられる。精製の方法は単一であっても、二種以上を組み合わせてもよい。
【0053】
本工程により得られるエステル化合物(3)の具体例としては、例えば、下記式(3−1)〜(3−62)、(3A−1)〜(3A−8)、(3B−1)〜(3B−4)で表わされる化合物が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
化合物(3A−1)〜(3A−8)は、酸ハライドとして(1A)を用い、アルコールとして(2A)を用いて製造されるエステル化合物(3A)の例である。
化合物(3B−1)〜(3B−4)は、酸ハライドとして化合物(1−1)〜(1−4)をそれぞれ用い、アルコールとして(2B)を用いて製造されるエステル化合物である。
【0054】
【化17】

【0055】
【化18】

【0056】
【化19】

【0057】
【化20】

【0058】
【化21】

【0059】
【化22】

【0060】
【化23】

【0061】
これらのエステル化合物(3)のうち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物(3−1)〜(3−10)、(3−16)〜(3−21)、(3−25)〜(3−38)、(3−42)〜(3−45)、(3−48)〜(3−57)、および化合物(3B−1)〜(3B−4)は、後述する(メタ)アクリル酸誘導体製造工程を省略して、重合性単量体として用いることができる。
【0062】
<(メタ)アクリル酸誘導体の製造方法>
本発明の(メタ)アクリル酸誘導体の製造方法は、下記第一工程および第二工程を有する。
[第一工程]
本工程では、酸ハライド(1A)とアルコール(2)とを、上記塩基の存在下で反応させて、上記式(3’)で表わされるエステル化合物(以下、エステル化合物(3’)と示す。)を製造する。
本工程は、上記エステル化工程において、酸ハライドとして(1A)を用いる工程に該当する。
本工程で得られるエステル化合物(3’)は、例えば上記化合物(3−11)〜(3−15)、(3−22)〜(3−24)、(3−39)〜(3−41)、(3−46)、(3−47)、(3−58)〜(3−62)である。
【0063】
[第二工程]
本工程では、前記第一工程を行って得られた、エステル化合物(3’)を原料とし、これに(メタ)アクリロイル基を導入することにより、上記式(4)で表わされる(メタ)アクリル酸誘導体(以下、(メタ)アクリル酸誘導体(4)ということもある。)を製造する。
上記式(4)において、R、R、およびkは、好ましい態様も含めて、式(1A)と同義である。Rは、好ましい態様も含めて式(2)と同義である。RはH、F、メチル基またはトリフルオロメチル基を表し、好ましくはHまたはメチル基である。
【0064】
本工程は、公知の方法で行うことができる。例えば、有機溶媒中で、塩基およびヨウ化カリウムの存在下で、エステル化合物(3’)と下記式(5)で表わされる化合物を反応させる方法を用いる。式(5)において、Rは、好ましい態様も含めて、式(4)と同義である。
【0065】
【化24】

【0066】
好ましくは、前記第一工程において、アルコールとして(2A)を用いてエステル化合物(3A)を得、前記第二工程において該エステル化合物(3A)に(メタ)アクリロイル基を導入することにより、下記式(4A)で表わされる(メタ)アクリル酸誘導体(以下、(メタ)アクリル酸誘導体(4A)ということもある。)を製造する。
【0067】
【化25】

【0068】
式(4A)において、R、R、およびkは、好ましい態様も含めて、式(1A)と同義である。WおよびRは、好ましい態様も含めて式(2A)と同義である。RはH、F、メチル基またはトリフルオロメチル基を表し、好ましくはHまたはメチル基である。
【0069】
(メタ)アクリル酸誘導体(4A)は、本発明者等が初めて見出した新規な化合物であり、レジスト用重合体の単量体として好適であり、これを用いた重合体は有機溶媒に対する溶解性に優れる点で好ましい。(メタ)アクリル酸誘導体(4A)の好ましい製造方法は未だ確立されておらず、本発明の製造方法によれば、透明性に優れた(メタ)アクリル酸誘導体(4A)を、高い反応収率で得ることができる。
【0070】
<重合体>
上記(メタ)アクリル酸誘導体(4)を含む単量体混合物を重合させて、上記(メタ)アクリル酸誘導体(4)から誘導される繰り返し単位を有する重合体を得ることができる。
好ましくは、上記(メタ)アクリル酸誘導体(4A)を含む単量体混合物を重合させて、上記(メタ)アクリル酸誘導体(4A)から誘導される繰り返し単位を有する重合体を得ることができる。
該重合体に含まれる(メタ)アクリル酸誘導体(4)または(4A)から誘導される繰り返し単位は1種でもよく、2種以上でもよい。当該重合体はレジスト用途として好適である。
前記単量体混合物に含まれる、(メタ)アクリル酸誘導体(4)または(4A)以外の単量体の一部または全部が、上記本発明の製造方法で製造されたエステル化合物(3’)または(3)であることが好ましく、全部がエステル化合物(3’)または(3)であることがより好ましい。
レジスト用重合体の場合、前記単量体混合物は下記単量体(A)〜(C)のそれぞれから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0071】
<単量体(A)>
単量体(A)は、酸不安定基を有する単量体(A)である。「酸不安定基」とは、酸により開裂する結合を有する基であり、該結合の開裂により酸不安定基の一部または全部が重合体の主鎖から脱離する基である。
酸不安定基を有するレジスト用重合体は、レジスト用組成物として用いた場合に、酸によってアルカリに可溶となり、レジストパターン形成を可能とする作用を奏する。
単量体(A)としては、公知の酸不安定基を有する単量体が挙げられる。例えば、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有し、かつ酸の作用により脱離可能な基を有している(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。該脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
該(メタ)アクリル酸エステルには、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子との結合部位に第3級炭素原子を有する(メタ)アクリル酸エステル、または、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、該脂環式炭化水素基に−COOR基(Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、またはオキセパニル基を表す。)が直接または連結基を介して結合している(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。
【0072】
単量体(A)としては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−イソプロピル−2−アダマンチル、メタクリル酸1−メチル−1−シクロペンチル等が挙げられる。
単量体(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
単量体(A)の割合は、感度および解像度の点から、単量体混合物の仕込み量(100モル%)中、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、基板等への密着性の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0073】
<単量体(B)>
単量体(B)は、ラクトン環を有する単量体である。また、単量体(B)は酸不安定基を有しない。単量体(B)の少なくとも1部として(メタ)アクリル酸誘導体(4)、好ましくは(4A)を用いる。
(メタ)アクリル酸誘導体(4)以外の単量体(B)について、ラクトン環の例としては、4〜20員環程度のラクトン環が挙げられる。単量体(B)におけるラクトン環は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族または芳香族の炭素環または複素環が縮合した縮合環であってもよい。
単量体(B)としては、基板等への密着性に優れる点から、置換あるいは無置換のδ−バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、置換あるいは無置換のγ−ブチロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ−ブチロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。
【0074】
(メタ)アクリル酸誘導体(4)以外の単量体(B)の具体例としては、β−メタクリロイルオキシ−β−メチル−δ−バレロラクトン、4,4−ジメチル−2−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイルオキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、2−(1−メタクリロイルオキシ)エチル−4−ブタノリド、メタクリル酸パントイルラクトン等が挙げられる。また、類似構造を持つ単量体として、メタクリロイルオキシこはく酸無水物等も挙げられる。
単量体(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
単量体(B)の割合は、基板等への密着性の点から、単量体混合物の仕込み量(100モル%)中、20モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0075】
<単量体(C)>
単量体(C)は親水性基を有する単量体である。「親水性基」とは、−C(CF−OHで表わされる1価基、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。単量体(C)は酸不安定基およびラクトン環のいずれも有しない。
単量体(C)の例としては、末端ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリ酸エステル、単量体の親水性基上にアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する誘導体、環式炭化水素基を有する単量体((メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1−イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチルが、置換基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等の親水性基を有する単量体が挙げられる。
【0076】
単量体(C)としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル等が挙げられる。基板等に対する密着性の点から、1−メタクリロイルオキシ−3−ヒドロキシアダマンタン等が好ましい。
親水性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
親水性基を有する単量体の割合は、レジストパターン矩形性の点から、単量体混合物の仕込み量(100モル%)中、1〜30モル%が好ましく、1〜20モル%がより好ましい。
【0077】
<重合工程>
単量体混合物を重合させる工程は、公知の重合方法を適宜用いて行うことができる。
例えば、レジスト用重合体を製造する場合は、単量体(A)〜(C)のそれぞれから選ばれた単量体を含む単量体混合物を、重合開始剤を用いて共重合させることが好ましい。
重合方法としては特に限定されず、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法を用いることができる。これらのうち、光線透過率を低下させないために、重合反応終了後に残存する単量体を除去する工程が容易である点、重合体の分子量を比較的低くできる点から、溶液重合法が好ましい。
【0078】
溶液重合法において、単量体および重合開始剤の重合容器への供給は、連続供給であってもよく、滴下供給であってもよい。製造ロットの違いによる平均分子量、分子量分布等のばらつきが小さく、再現性の良い重合体が簡便に得られる点から滴下重合法が好ましい。
滴下重合法においては、重合容器内を所定の重合温度まで加熱した後、単量体および重合開始剤を、それぞれ独立に、または任意の組み合わせで、重合容器内に滴下する。
単量体は、単量体のみで滴下してもよく、単量体を溶媒(以下、「滴下溶媒」とも記す。)に溶解させた単量体溶液として滴下してもよい。
溶媒(以下、「仕込み溶媒」とも記す。)をあらかじめ重合容器に仕込んでもよく、仕込み溶媒をあらかじめ重合容器に仕込まなくてもよい。仕込み溶媒をあらかじめ重合容器に仕込まない場合、単量体または重合開始剤は、仕込み溶媒がない状態で重合容器中に滴下される。
【0079】
重合開始剤は、単量体に直接に溶解させてもよく、単量体溶液に溶解させてもよく、滴下溶媒のみに溶解させてもよい。
単量体および重合開始剤は、同じ貯槽内で混合した後、重合容器中に滴下してもよく、それぞれ独立した貯槽から重合容器中に滴下してもよく、それぞれ独立した貯槽から重合容器に供給する直前で混合し、重合容器中に滴下してもよい。
単量体および重合開始剤は、一方を先に滴下した後、遅れて他方を滴下してもよく、両方を同じタイミングで滴下してもよい。
滴下速度は、滴下終了まで一定であってもよく、単量体または重合開始剤の消費速度に応じて、多段階に変化させてもよい。
滴下は、連続的に行ってもよく、間欠的に行ってもよい。
重合温度は、50〜150℃が好ましい。
【0080】
溶媒(滴下溶媒または仕込み溶媒)としては、重合に用いる単量体および生成する重合体が溶解すれば特に限定されないが、例えば、下記の溶媒が挙げられる。
エーテル類:鎖状エーテル(ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等。)、環状エーテル(テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン等。)等。
エステル類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と記す。)、γ−ブチロラクトン等。
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等。
アミド類:N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等。
スルホキシド類:ジメチルスルホキシド等。
芳香族炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン等。
脂肪族炭化水素:ヘキサン等。
脂環式炭化水素:シクロヘキサン等。
溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
重合開始剤としては、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。例えば、アゾ化合物(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等。)、有機過酸化物(2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等。)等が挙げられる。
【0082】
レジスト用重合体の質量平均分子量は、1,000〜100,000であることが好ましく、2,000〜50,000であることがより好ましく、3,000〜30,000であることが特に好ましい。質量平均分子量が1,000より小さいと重合体溶液を基板上に塗布・乾燥した際に上手く成膜しないことがあり、100,000より大きいと、均等な膜厚で塗布することが困難となったり、レジストの構成成分として用いた場合にはレジスト特性を低下させたりすることがある。
【0083】
(メタ)アクリル酸誘導体(4)、好ましくは(4A)から誘導される繰り返し単位を含有する重合体は、透明性に優れるとともに、有機溶剤に対する溶解性が優れている。このため、レジスト用重合体として好適に用いられ、該重合体を用いてレジスト組成物を調製する際の作業性、および該レジスト組成物を用いて半導体を製造する際の作業性を大きく改善することが可能である。レジスト組成物を調製する際の溶剤としては、重合体の製造に用いられる溶媒と同様のものが用いられる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により本発明を説明するが、本実施例に限定されるものではない。
<反応収率の決定>
反応収率は、反応液のHPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析の結果から検量線を用いて決定した。HPLC分析の測定条件は下記のとおりである。
カラム:Inertsil、ODS−3V、4.6×250mm(ジーエルサイエンス社製)
カラム本数:1本
カラム温度:40℃
溶離液:アセトニトリル/HO=50/50(質量比)
溶離液流量:1.0mL/min
検出器:示差屈折検出器(RI検出器)
【0085】
[実施例1]
<エステル化合物の製造方法(第一工程)>
温度計、撹拌子、滴下ロートを備えた200mlの二口ナスフラスコに、8−ヒドロキシ−9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン13.5g(0.068モル)、トルエン54.0g、およびピリジン5.9g(0.075モル)を添加し、滴下ロートにクロロ酢酸クロリド8.5g(0.075モル)を仕込んだ。反応容器内を窒素置換した後に攪拌を開始し、氷水にて内温を10℃以下まで冷却した。続いて、内温が10℃を超えないように調節しながらクロロ酢酸クロリドを滴下した。
滴下終了後、10℃で30分間保持した反応液をHPLCで分析した結果、9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルメチルクロライドを得た(反応収率88.4%)。反応液は透明であり、生成したアミン塩が懸濁していた。
得られた反応液にトルエン27.0g、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液13.5gを添加し、分液操作を行なった。続いて得られた有機相を更に蒸留水6.8gで洗浄・分液し、得られた有機相から溶媒をエバポレーターで留去した。残渣を単蒸留にて精製し、無色透明の9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルクロライドを得た。
【0086】
<(メタ)アクリル酸誘導体の製造方法(第二工程)>
上記で得た9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルクロライドを用い、(メタ)アクリル酸誘導体の製造(第二工程)を行った。
すなわち、滴下ロート、温度計、窒素ガス吹き込み口、攪拌子を備えたフラスコに、メタクリル酸7.30g(0.085モル)、炭酸カリウム11.8g(0.085モル)、ヨウ化カリウム2.80g(0.017モル)、ジメチルホルムアミド100g、重合禁止剤として4−メトキシフェノール0.100gを加えて窒素置換した後、攪拌を開始して内温が25℃になるように調節した。
これとは別に、上記で得た9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルクロライド15.6g(0.057モル)をジメチルホルムアミド50.0gに溶解させた溶液を調製して滴下ロートに入れ、上記フラスコに15分間で滴下した。滴下終了後、内温を25℃に維持したまま4時間保持した。9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルクロライドの消失をGCで確認した後に水100g、トルエン100gを加え、分液ロートで有機層を分離した。更に水層をトルエン100gで2回抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水50gで2回洗浄した後、エバポレーターでジメチルホルムアミドおよびトルエンを留去したものを薄膜蒸留で精製した。以上の操作を行い、無色透明油状液体のメタクリル酸 9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルメチル(13.2g、取得収率71.4%)を得た。
【0087】
[実施例2]
ピリジン5.9gの代わりにジメチルアミノピリジン9.2g(0.075モル)を用いた以外は実施例1と同様にして9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルクロライドを得た(反応収率81.3%)。反応液は透明であり、生成したアミン塩が懸濁していた。また、精製後の9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルクロライドは無色透明であった。
上記で得た9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルクロライドを用いた以外は、実施例1と同様にして、無色透明油状液体のメタクリル酸 9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルメチルを得た。
【0088】
[比較例1]
ピリジン5.9gの代わりにトリエチルアミン7.6g(0.075モル)を用いた以外は実施例1と同様にして9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルクロライドを得た(反応収率43.6%)。反応液は赤褐色であり、生成したアミン塩が懸濁していた。また、精製後の9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルクロライドは淡黄色透明であった。
上記で得た9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルクロライドを用いた以外は、実施例1と同様にして、メタクリル酸 9−メトキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルオキシカルボニルメチルを得た。上記化合物は、淡黄色透明油状液体であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされる酸ハライドと、下記式(2)で表わされるアルコールとを、塩基の存在下で反応させて下記式(3)で表わされるエステル化合物を製造する方法であって、前記塩基が、窒素原子に対してβ水素を持たない有機塩基及び無機塩基からなる群から選ばれる1種以上である、エステル化合物の製造方法。
【化1】

(Rは炭素数1〜18の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は直鎖状でも分岐状であってもよく、脂環または芳香環を有していてもよく、水酸基、スルファニル基(−SH)、ハロゲン原子、スルファンジイル基(−S−)、または不飽和結合を有していてもよい。XはCl、Br、またはIを表す。)
【化2】

(Rは炭素数1〜18の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は直鎖状でも分岐状であってもよく、脂環または芳香環を有していてもよく、水酸基、スルファニル基(−SH)、ハロゲン原子、スルファンジイル基(−S−)、または不飽和結合を有していてもよい。)
【化3】

(R、Rは式(1)、(2)における定義と同じ意味を表す。)
【請求項2】
下記第一工程および第二工程を有する(メタ)アクリル酸誘導体の製造方法。
第一工程:下記式(1A)で表わされる酸ハライドと、下記式(2)で表わされるアルコールとを、塩基の存在下で反応させて、下記式(3’)で表わされるエステル化合物を製造する工程であって、前記塩基が、窒素原子に対してβ水素を持たない有機塩基及び無機塩基からなる群から選ばれる1種以上である。
第二工程:前記第一工程を行って得られた、下記式(3’)で表わされるエステル化合物を原料とし、これに(メタ)アクリロイル基を導入することにより、下記式(4)で表わされる(メタ)アクリル酸誘導体を製造する工程。
【化4】

(X及びX´はそれぞれ独立にCl、Br、またはIを表す。R、Rはそれぞれ独立に水素原子、または炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状の1価の飽和炭化水素基を表し、RとRが互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環状の飽和炭化水素基を形成してもよい。kは1〜5の整数を表す。)
【化5】

(Rは炭素数1〜18の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は直鎖状でも分岐状であってもよく、脂環または芳香環を有していてもよく、水酸基、スルファニル基(−SH)、ハロゲン原子、スルファンジイル基(−S−)、または不飽和結合を有していてもよい。)
【化6】

(R、R、およびkは式(1A)における定義と同じ意味を表す。Rは式(2)における定義と同じ意味を表す。)
【化7】

(R、R、およびkは式(1A)における定義と同じ意味を表す。Rは式(2)における定義と同じ意味を表す。RはH、F、メチル基またはトリフルオロメチル基を表す。)

【公開番号】特開2012−41272(P2012−41272A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180810(P2010−180810)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】