エタノール生産細菌及びエタノール生産におけるそれらの使用
本発明はフルフラールに対する耐性が増大している細菌及び調製方法に関する。本発明は当該細菌及び対応するキットを用いてエタノールを生産する方法にも関している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)本出願は、2009年3月5日出願の米国仮特許出願第61/209,334号の優先権を主張し、その開示の全てが参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(政府の支援研究)
本発明は、米国エネルギー省から与えられた、契約番号第DE−FG02−96ER20222、DE−FG36−08GO88142、及びDE−FC36−GO17058による米国政府の支援によってなされた。米国政府は本発明に対してある特定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
多数の発酵産物は、糖を用いて基質としてのリグノセルロース系バイオマスから作ることができる(Hahn-Hagerdal et al. 2006. Trends Biotechnol. 24:549-556; Jarboe et al. 2007 Adv. Biochem. Engin/Biotechnol. 108:237-261, Katahira et al. 2006 Appl. Microbiol. Biotechnol. 72:1136-1143, Tokiwa et al. 2008. Can. J. Chem.86:548-555)。しかしながら、発酵の前に炭化水素ポリマーであるセルロースとヘミセルロースを、化学工程と酵素工程を組み合わせて用いて可溶性の糖に変換しなければならない(Um et al. 2003 Appl Biochem Biotechnol. 105-108:115-125; Wyman et al. 2005. 96:2026-2032)。化学工程は、微生物生体触媒の代謝に対して悪影響があるアルコール、酸、及びアルデヒドのような微量生成物の混合物を生産する副反応を伴う。アルコール類(カテコール、シリンゴール等)については、細胞膜を透過して作用すること及び分子の疎水性とよく相関している毒性が示されている(Zaldivar et al. 2000 Biotechnol. Bioeng. 68:524-530)。有機酸(酢酸塩、ギ酸塩等)は中性形態で膜を通過して細胞質内でイオン化し、プロトン駆動力を破壊して生育を阻止すると考えられている(Palmqvist et al. 2000. Bioresour. Technol. 74:25-33, Zaldivar et al. 1999. Biotechnol. Bioeng. 66: 203-210)。アルデヒドの阻害メカニズムはさらに複雑である。アルデヒドは、直接的な物理的及び代謝的作用に加えて、多くの細胞成分と反応して生成物を形成することができる(Modig et al. 2002 Biochem. J. 363:769-776, Singh et al. 1995 Mutat. Res 337:9-17)。概して、化学的な前処理由来のこれら微量生成物は細胞の生育を遅らせてバイオマス由来の糖類の発酵の速度を落とす(Horvath et al. 2001. Biotechnol. Bioeng. 75:540-549, Palmqvist et al. 2000. Bioresour. Technol. 74:17-24)。
【0004】
フルフラール(ペントース糖類の脱水生成物)には特に重要性がある。フルフラールはリグノセルロース分解における天然の産物である。フルフラールは、酸性条件下でのセルロース系バイオマスの解重合の間に起こるペントース糖類の脱水によっても形成される(Martinez et al. 2001 Biotechnol. Prog. 17:287-293)。この化合物はヘミセルロースシロップの毒性の重要な要因であって、他の化合物の毒性を増強する(Zaldivar et al. 1999. Biotechnol. Bioeng. 65: 24-33)。ヘミセルロースの希釈加水分解物中のヘミセルロース含量が毒性と相関している(Martinez et al., 2000. Biotechnol. Bioengin. 69(5): 526-536)。フルフラールの再添加が毒性を回復させる一方で、石灰の添加(pH10)によるフルフラールの除去は加水分解物を容易に発酵させる(Martinez et al. 2001. Biotechnol Prog 17: 287-293)。フルフラールは、ヘミセルロースの酸加水分解物中に存在していることが知られているその他の化合物の毒性を高めるということも示されている(Zaldivar et al. 1999. Biotechnol. Bioeng. 65: 24-33; Zaldivar et al. 1999 Biotechnol. Bioeng. 66: 203-210; Zaldivar et al. 2000 Biotechnol. Bioeng. 68:524-530)。フルフラールは、DNA構造及び配列を変え(Barciszewski et al. 1997 FEBS letters. 414:457-460, Khan et al., 1995 Cancer Lett. 89:95-99)、糖分解酵素を阻害し(Gorsich et al. 2006 Appl. Microbiol. Biotechnol.71:339-349)、そして糖代謝を遅らせる(Hristozova et al. 2006. Enzyme Microbiol. Technol. 39:1108-1112)ことが報告されている。
【0005】
リグノセルロース系バイオマスは、再生可能な燃料及び化学製品への微生物変換の重要な原料である。発酵の前に、酸、酵素又はこの組み合わせを用いて炭化水素化合物(セルロース及びヘミセルロース)を可溶性の糖に変換しなければならない(Cheng et al. 2008 Biochem. Eng J 38:105-109; Wyman et al. 2005 Bioresour Technol. 96:2026-2032; Um et al. 2003 Appl Biochem Biotechnol 105:115-125)。鉱酸を用いる蒸気前処理の間に、ヘキソース及びペントース糖類の脱水から、それぞれ5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)及びフルフラールが微量であるが、毒性副生成物として生成する(Martinez et al. 2000a Biotechnol Bioeng 69:526-536; Palmqvist and Hahn-Hagerdal 2000b Bioresour Technol 74:25-33)。5−HMFはエタノール生産大腸菌(E.coli:Zaldivar et al. 1999 Biotechnol Bioeng)及びサッカロミセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae:Almeida et al. 2008 Appl Microbiol Biotechnol 78:939-945; Palmqvist and Hahn-Hagerdal 2000a Bioresour Technol 74: 17-24; Taherzadeh et al. 2000 Appl Microbiol Biotechnol 53:701-708)の生育及び発酵を遅らせるということが示されている。
【0006】
高温でpH10の過剰な石灰で処理することによって、ヘミセルロース加水分解物からフランを除去することができる(Martinez et al. 2000a Biotechnol Bioeng 69:526-536)。この処理工程は、セルロース繊維からの加水分解物シロップの効率的な分離、石灰を混合するための特殊な装置、不溶性カルシウム塩からのシロップの分離、及び廃棄処理のための固形廃棄物の作出を必要とする。フラン耐性生体触媒の開発によりこの工程の複雑さの大半を除去できた。幾つかの腸内細菌属(クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)、エシェリキア(Escherichia)、シトロバクター(Citrobacter)、エドワードシエラ(Edwardsiella)、プロテウス(Proteus))及び酵母は、5−HMFを、毒性の少ない化合物である5−ヒドロキシメチルフルフリルアルコールに変換するということが示されている(Boopathy et al. 1993 J Indus Microbiol 11:147-150; Palmqvist and Hahn-Hagerdal 2000a Bioresour Technol 74:17-24; Zaldivar et al. 1999 Biotechnol Bioeng 65:24-33)。S.セルビシエは、5−HMF及びフルフラールを毒性の少ない生成物に還元できる、複数の酸化還元酵素(YGL157W、ADH6、及び突然変異ADH1)を産生するということが示されている(Almeida et al. 2008 Appl Microbiol Biotechnol 78:939-945; Almeida et al. 2009 Appl Microbiol Biotechnol 82: 625-638; Heer et al. 2009 Appl Environ Microbiol doi:10.1128/AEM.01649-9; Liu et al. 2009 Gene 446: 1-10)。これらの遺伝子の増大した発現が5−HMFの幾つかの面に有用であるということが示されているが、フルフラールの最小阻止濃度を増大することは示されていない。Gorisch et al. (2006 Appl Microbiol Biotechnol 71: 339-349) は、S.セルビシエにおいて、フルフラール及び5−HMFへの感受性を増大する、多くの遺伝子不活性化を確認した。1つの遺伝子、ZWF1(グルコース6−リン酸脱水素酵素)の過剰発現はフルフラールに対する耐性を増大した。
【0007】
これらの阻害物質の存在下で発酵生物が機能する能力は広く研究されてきた。サッカロミセス・セルビシエのアルギン酸塩への封入は、ヘミセルロースの酸加水分解物中の発酵を保護して且つ改善するということが示されている(Talebnia et al. 2006 J Biotechnol. 125:377-384)。S.セルビシエの菌株は加水分解物阻害物質に対する改善された耐性を有していると先に記載されている(Almeida et al. 2007. J. Chem. Technol. Biotechnol. 82:340-349, Martin et al. 2007. Bioresour. Technol. 98:1767-1773, Nilsson et al. 2005. Appl. Environ. Microbiol 71:7866-7871)。大腸菌(エシェリキア・コリ、Gutierrez et al. 2006 J. Bacteriol. 121:154-164)S.セルビシエ(Almeida et al. 2008 Appl. Microbiol. Biotechnol. 78:939-945)及びその他の微生物(Boopathy et al. 1993 J. Indust. Microbiol. 11:147-150)は、フルフラールを毒性の少ない産生物であるフルリルアルコールに還元することを触媒する酵素を含有している、ということが示されている(Zaldivar et al., 2000 Biotechnol. Bioeng. 68:524-530)。大腸菌では、フルフラール還元酵素の活性はNADPH依存性であると考えられる(Gutierrez et al. 2006. J. Bacteriol. 121:154-164)。NADPH依存性のフルフラール還元酵素は、他のものも存在するかもしれないが、大腸菌から精製された。5−ヒドロキシメチルフルフラール(ヘキソース糖の脱水産物)を還元する能力があるNADPH依存性酵素が、S.セルビシエにおいて特定化されて、ADH6遺伝子であると確認された(Petersson et al. 2006. YEAST. 23:455-464)。
【0008】
yqhD遺伝子は、プロパンジオールの生産に用いることができる(Nakamura et al. 2003. Current Opinion in Biotechnology. 14:454-459, Zhang et al. 2006 World Journal of Microbiology & Biotechnology. 22:945-952)NADPH依存性アルデヒド酸化還元酵素をコードするということが先に示されている(Sulzenbacher et al. 2004. J. Mol. Biol. 342:489-502)。この遺伝子は活性酸素種による損傷に対する抵抗をもたらすということも示されている(Perez et al. 2008. J. Biol. Chem. 283:7346-7353)。
dkgA遺伝子は、アスコルビン酸の生成における重要な工程である、2,5−ジケト−D−グルコン酸の還元を触媒するということが示されている(Habrych et al. 2002. Biotechnol. Prog. 18:257-2, Yum et al. 1999 Appl. Environ. Microbiol. 65:3341-3346)。この酵素はメチルグリオキサールの還元において機能するとも考えられている(Jeudy er al. 2006. Proteins 62:302-307, Ko et al. 2005. J. Bacteriol 187:5782-5789)。
yqfA遺伝子の機能は知られていないが、脂肪酸代謝に関連している(McCue et al. 2001. Nucleic Acids Res. 29:774-782)酸化還元酵素の膜サブユニットではないかと提案されている(Karp et al. 2007 Nucleic Acids Res. 35:7577-7590)。
【0009】
大腸菌(エシェリキア・コリ)のyqhC遺伝子(b3010)は、DNA結合タンパク質のAraC/XylSファミリーに属する転写調節因子であると予測されている。yqhCの推定機能についての今日までの推論は、AraC/XylSファミリーの推定タンパク質配列と膜との間の類似性のみに基づいている。yqhCは、大腸菌ゲノムにおいて、yqhCと反対の向きに転写されるyqhD及びdkgAに隣接している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の方法は、フルフラール及び/又は5−HMFの存在下で、微生物の成育及びエタノール生産を調節する酵素の同定を可能にする。
従って、フルフラールの存在下で生育してエタノールを生産できる微生物を産生する能力は、代替エネルギー源の産生に極めて重要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は単離された細菌に関し、ここで細菌は参照する細菌と比較するとフルフラールに対する耐性が増大している。
【0012】
一実施態様では、単離された細菌はエタノール生産性である。
【0013】
別の実施態様では、細菌は参照する細菌と比較するとエタノールの生産を増大する。
【0014】
別の実施態様では、参照する細菌と比較するとyqhD遺伝子の発現が減少している。
【0015】
別の実施態様では、参照する細菌の発現と比較すると、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している。
【0016】
別の実施態様では、参照する細菌の発現と比較すると、yqhC遺伝子の発現が減少している。
【0017】
別の実施多様では、yqhD遺伝子が発現されない。
【0018】
別の実施態様では、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子が発現されない。
【0019】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が発現されない。
【0020】
別の実施態様では、参照する細菌と比較するとyqhC遺伝子の発現が減少している。
【0021】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が欠失している。
【0022】
別の実施態様では、参照する細菌と比較するとYqhDタンパク質の活性が減少している。
【0023】
別の実施態様では、参照する細菌と比較するとYqhDタンパク質の活性及びDkgAタンパク質の活性が減少している。
【0024】
別の実施態様では、参照する細菌と比較するとYqhCタンパク質の活性が減少している。
【0025】
別の実施態様では、参照する細菌と比較するとyqhD遺伝子の発現の調節が修正されている。
【0026】
別の実施態様では、参照する細菌における発現と比較すると、yqhD遺伝子の発現及びdkgA遺伝子の発現の調節が修正されている。
【0027】
別の実施態様では、参照する細菌における発現と比較すると、yqhC遺伝子の発現の調節が修正されている。
【0028】
別の実施態様では、参照する細菌と比較すると、yqhC遺伝子の発現が減少している。
【0029】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が欠失している。
【0030】
別の実施態様では、yqhD遺伝子プロモーターの活性に変化がある。
【0031】
別の実施態様では、dkgA遺伝子プロモーターの活性に変化がある。
【0032】
別の実施態様では、アンチセンスRNAの付加によって、YqhD、DkgA及び/又はYqhCタンパク質のレベルが減少している。
【0033】
別の実施態様では、siRNAの付加によって、YqhD、DkgA及び/又はYqhCタンパク質のレベルが減少している。
【0034】
本発明は、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、そして細菌は、フルフラールの存在下で細菌の候補変異株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する変異株を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0035】
本発明は、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、そして細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0036】
別の実施態様では、NADPH依存性フルフラール還元酵素は、YqhD又はDkgAである。
【0037】
別の実施態様では、NADPH依存性フルフラール還元酵素は、YqhD及びDkgAである。
【0038】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhD遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここでは細菌はエタノールを生産できて、細菌は、フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0039】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhD遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここでは細菌はエタノールを生産できて、細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0040】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここでは細菌はエタノールを生産できて、細菌は、フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0041】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここでは細菌はエタノールを生産できて、細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0042】
一実施態様では、yqhC遺伝子の発現が減少している。
【0043】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が欠失している。
【0044】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhC遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここでは細菌はエタノールを生産できて、細菌は、フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0045】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhC遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここでは細菌はエタノールを生産できて、細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0046】
本発明は、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産し、ここで細菌は、yqhD遺伝子の発現を減少すること;フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0047】
本発明は、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産し、ここで細菌は、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現を減少すること;フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0048】
一実施態様では、yqhC遺伝子の発現が減少している。
【0049】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が欠失している。
【0050】
本発明は、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産し、ここで細菌は、yqhC遺伝子の発現を減少すること;フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0051】
本発明は、yqhD遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、yqhD遺伝子の発現を減少すること;フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0052】
本発明は、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現を減少すること;フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0053】
一実施態様では、yqhC遺伝子の発現が減少している。
【0054】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が欠失している。
【0055】
本発明は、yqhC遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、yqhC遺伝子の発現を減少すること;フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0056】
本発明は、参照する細菌と比較するとYqhDタンパク質の活性が減少しているか或いは除去されている単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0057】
本発明は、参照する細菌と比較するとYqhDタンパク質の活性が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0058】
本発明は、参照する細菌と比較するとYqhDタンパク質及びDkgAタンパク質の活性が減少しているか或いは消去されている単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0059】
本発明は、参照する細菌と比較するとYqhDタンパク質及びDkgAタンパク質の活性が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0060】
一実施態様では、yqhC遺伝子の発現が減少している。
【0061】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が欠失している。
【0062】
本発明は、参照する細菌と比較するとYqhCタンパク質の活性が減少しているか或いは除去されている単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0063】
本発明は、参照する細菌と比較するとYqhCタンパク質の活性が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0064】
一実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、フルフラールの存在下でのエタノール生産を増大する。
【0065】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)の存在下でのエタノール生産を増大する。
【0066】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、及び桂皮アルデヒドよりなる群から選ばれるアルデヒドの存在下でのエタノール生産を増大する。
【0067】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、メチルグリオキサールの存在下でのエタノール生産を増大する。
【0068】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、フルフラールの還元的除去のレベルが低減しているときの、エタノール生産を増大する。
【0069】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、フルフラール代謝を減少する。
【0070】
別の実施態様では、細菌は検出可能なフルフラール代謝を示さない。
【0071】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、生育を増大している。
【0072】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、フルフラールの存在下での生育を増大している。
【0073】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、フルフラールの存在下での生育を増大し、そしてエタノール生産を増大する。
【0074】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、5−HMFの存在下での生育を増大している。
【0075】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、5−HMFの存在下での生育を増大し、そしてエタノール生産が増大している。
【0076】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、フルフラール還元酵素活性を減少している。
【0077】
別の実施態様では、細菌は、NADPHの5−HMF依存性酸化速度を減少している。
【0078】
別の実施態様では、IS10のyqhC遺伝子への挿入によって、yqhC遺伝子の発現は減少する。
【0079】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、加水分解物の存在下での生育を増大している。
【0080】
別の実施態様では、加水分解物は、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、又はセルロース系バイオマスに由来している。
【0081】
別の実施態様では、細菌はエタノールを主発酵産物として生産する。
【0082】
別の実施態様では、本発明の単離された細菌は嫌気性条件下でエタノールを生産する。
【0083】
別の実施態様では、エタノールは微好気性条件下で生産される。
【0084】
別の実施態様では、細菌は非組み換え体である。
【0085】
別の実施態様では、細菌は組み換え体である。
【0086】
別の実施態様では、細菌はグラム陰性である。
【0087】
別の実施態様では、細菌はグラム陽性である。
【0088】
別の実施態様では、グラム陰性細菌は、アシネトバクター属(Acinetobacter)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、ザイモモナス属(Zymomonas)、エシェリキア属(Escherichia)、ジオバクター属(Geobacter)、シュワネラ属(Shewanella)、サルモネラ属(Salmonella)エンテロバクター属(Enterobacter)及びクレブシエラ属(Klebsiella)よりなる群から選ばれる。
【0089】
別の実施態様では、グラム陽性細菌は、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)及びユーバクテリウム属(Eubacterium)よりなる群から選ばれる。
【0090】
別の実施態様では、細菌は大腸菌(エシェリキア・コリ)である。
【0091】
別の実施態様では、本発明の単離された細菌はクレブシエラ・オキシトカ(K.oxytoca)である。
【0092】
別の実施態様では、細菌は大腸菌EMFR9株である。
【0093】
本発明は、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖を本発明の単離された細菌と接触させ、それによってバイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産することを含有してなる、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法にも関している。
【0094】
本発明は、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖を本発明の単離された細菌と接触させ、それによってバイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産することを含有してなる、フルフラールの存在下にバイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法にも関している。
【0095】
本発明は、本発明の単離された何れかの細菌を含有してなる、キットにも関している。
【0096】
本発明は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50239で表される大腸菌LY180株にも関している。
【0097】
本発明は、本発明のエタノール生産方法によって生産されたエタノールにも関している。
【0098】
本発明は、yqhC遺伝子の非存在下で発現の増大又は減少を示す遺伝子を含有してなるマイクロアレイにも関している。
【0099】
本発明は、図28に示される配列及びそれらの断片及び突然変異体又は変異体を含有してなる単離されたyqhDプロモーターにも関している。
【0100】
本発明は、参照する細菌と比較すると、フルフラール、5−HMF、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、桂皮アルデヒド、及びメチルグリオキサールの内の少なくとも1つの存在下で、遺伝子の発現を調節するためのyqhDプロモーターの使用にも関している。
【0101】
細菌が、参照する細菌と比較するとフルフラールに対する耐性を増大していて、参照する細菌と比較するとNADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少している、単離された細菌。
【0102】
一実施態様では、NADPH依存性酸化還元酵素がYqhDのKm及び/又はDkgAのKmより低いか又は同等のKmを有している、単離された細菌。
【0103】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少させて、フルフラール又は5−HMFに対する細菌の抵抗性又は耐性を増大する方法も提供する。
【0104】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少させて、フルフラール又は5−HMFに対する細菌の抵抗性又は耐性を増大する、NADPH依存性酸化還元酵素を同定する方法も提供する。
【0105】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少させて、フルフラール又は5−HMFの存在下で細菌の生育を増大することにも関している。
【0106】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少させて、フルフラール又は5−HMFの存在下での細菌によるエタノールの生産を増大することにも関している。
【0107】
この方法によると、NADPH依存性酸化還元酵素は、YqhD又はDkgAのKmより低いか同等のKmを有する。
【0108】
一実施態様では、NADPH依存性酸化還元酵素に対する好ましい基質は、NADPHであって、NADHではない。
【0109】
別の実施態様では、NADPH依存性酸化還元酵素に対する基質は、NADPHであって、NADHではない。
【0110】
本発明は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50240で表される大腸菌EMFR9株にも関している。
【0111】
本発明は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50241で表される大腸菌EMFR17株にも関している。
【0112】
本発明は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50242で表される大腸菌EMFR26株にも関している。
【0113】
本発明は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50243で表される大腸菌EMFR35株にも関している。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は、LY180の構築に用いられる線状DNA断片である。
【図2A−C】図2A〜Cは、キシロース100g/LのpH制御発酵におけるフルフラールの効果である。0.4g/Lのフルフラールを用いて発酵(A、B、及びC)。1.0g/Lのフルフラールを用いて発酵(D、E、及びF)。明確にするために、EMFR9及びLY180に対するデータを、それぞれ実線及び波線で結んだ。全てに関する記号:■、LY180とフルフラール;▲、EMFR9とフルフラール;□、フルフラールなしのLY180;△、フルフラールなしのEMFR9。
【図2D−F】図2D〜Fは、キシロース100g/LのpH制御発酵におけるフルフラールの効果である。0.4g/Lのフルフラールを用いて発酵(A、B、及びC)。1.0g/Lのフルフラールを用いて発酵(D、E、及びF)。明確にするために、EMFR9及びLY180に対するデータを、それぞれ実線及び波線で結んだ。全てに関する記号:■、LY180とフルフラール;▲、EMFR9とフルフラール;□、フルフラールなしのLY180;△、フルフラールなしのEMFR9。
【図3】図3A〜Bは、フルフラール還元活性の比較である。 3Aは、発酵中の全細胞のインビボ活性である。LY180及び欠失誘導体を網無し棒で示してある。フルフラール耐性変異体、EMFR9及びyqhDを発現するEMFR9(pLOI4301)を網掛け棒で示してある。 3Bは、クローン化遺伝子を発現するプラスミドを包含しているEMFR9の無細胞抽出物におけるインビトロでのフルフラール還元活性の比較である(順方向、0.1mMのIPTGで誘発)。
【図4】図4A〜Cは、培地組成物のフルフラール耐性に対する効果を示す。 4Aは、キシロース(50g/L)を含有しているAM1培地である。 4Bは、グルコースを含有しているAM1培地である。 4Cは、キシロース及び酵母抽出物(1.0g/L)を含有しているAM1培地である。 全てに関する記号;48時間培養後の、■:LY180(点線)、及び▲:EMFR9(実線)。
【図5】図5A〜Dは、EMFR9における遺伝子発現のフルフラール耐性に対する効果を示す。 図5Aは、dkgAの発現を示す。 図5Bは、yqhDの発現を示す。 図5Cは、yqfAの発現を示す。 図5Dは、yjjNの発現を示す。 全てに関する記号;●、挿入無しpCR2.1コントロール;□、非誘発性発現; △、0.1mMのIPTGで誘発した発現。
【図6】図6は、フルフラール耐性(1.0g/L)存在下における生育に対するLY180の遺伝子欠失の効果を示す(48時間培養)。
【図7】図7A〜Bは、生育(A)及びエタノール生産(B)に対するヘミセルロース加水分解物の効果を示す。全てに関する記号;48時間培養後の、■:LY180(点線);及び▲:EMFR9(実線)。
【図8】図8A〜Cは、大腸菌ゲノムにおけるyqhC、yqhD及びdkgAの配置、並びにyqhCに自然に生じる変異の位置を示す。 図8Aは、LY180(フルフラール−感受性、野生型)を示す。 図8Bは、EMFR9及びEMFR17(フルフラール耐性)を示す。 図8Cは、MM205(フルフラール耐性、加水分解物耐性として選択)を示す。
【図9】図9は、RNAのマイクロアレイ分析で確認したyqhD及びdkgAの発現レベルを示す。Y軸の発現レベルはlog2スケールである。LY180 0及びEMFR9 0は、フルフラール添加前の発現レベルである。LY180 15及びEMFR9 15は、フルフラール添加15分後の発現レベルである。
【図10】図10A〜Dは、フルフラールの存在下でのLY180及びLY180ΔyqhCの生育を示す。発酵期間(時間)に対する細胞密度(光学密度)の関係を示す。 図10Aは、AM1−5%キシロース培地で、0、0.5、1、1.5、及び2g/Lフルフラールと培養したLY180の生育を示す。 図10Bは、LY180ΔyqhCの生育を示す。 図10Cは、単一コピープラスミドpYqhCを野生型yqhC遺伝子とともにその天然プロモーターの下に担持しているLy180ΔyqhCの生育を示す。 図10Dは、空ベクターpCC1を担持しているLy180ΔyqhCの生育を示す。
【図11】図11は、Ly180及びLy180ΔyqhCによるフルフラール消費の速度を示す。
【図12】図12は、蛍ルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流にクローン化しているyqhD遺伝子のプロモーターを有する、プラスミドpPyqhD−lucの構造を示す。
【図13】図13は、フルフラール添加の前及び後のルシフェラーゼの発現を示す。ルシフェラーゼレポータープラスミドpPyqhD−lucをLY180、EMFR9及びEMFR17に導入した。ルシフェラーゼのレベルをフルフラール添加の直前及び添加の15分後に確認した。Y軸上の値は相対発光単位(relative luminescence unit:RLU)である。
【図14】図14は、Ly180及びLy180ΔyqhCにおけるyqhDプロモーターからのルシフェラーゼの発現を示す。
【図15】図15は、YqhDのプロモーターからの転写において提案されるyqhCの調節的役割を示すモデルである。
【図16】図16A〜Bは、YqhDのアミノ酸(A)及び核酸(B)の配列を示す。
【図17】図17A〜Bは、DkgAのアミノ酸(A)及び核酸(B)の配列を示す。
【図18】図18A〜Bは、YqhCのアミノ酸(A)及び核酸(B)の配列を示す。
【図19】図19は、LY180及びEMFR9におけるyqhC−yqhD−dkgAの配置及び周辺領域を示す。エタノール生産性株LY180(上部)及びフルフラール耐性誘導体EMFR9(下部)におけるyqhC、yqhD及びdkgAのコード領域の位置及び方向を示す。LY180について、yqhCの左(metC及びyghB)及びdkgAの右(yqhG、yqhH及びygiQ)についての隣接遺伝子が示されている。EMFR9のyqhC遺伝子内にIS10が存在している。EcoCyc(Keseler et al. 2009 Nucleic Acids Res. 37: D464-D470)で入手可能な情報に基づいて、公知のプロモーターを矢印(実線)で示してある。yqhDの上流のプロモーターを点線の矢印で示してある。
【図20】図20A〜Bは、フルフラール添加後の、LY180、EMFR9及びLY180ΔyqhCからのyqhC−yqhD−dkgA領域中の転写物の発現を示す。転写物レベルは、大腸菌K12マイクロアレイに対する総RNAの発現ハイブリダイゼーションによって確認した。0.5g/Lのフルフラール添加の直前、又は添加の15分後に細胞を採取した。選択遺伝子に対する正規化した発現値は、チップ上に存在する各プローブの5つの複製物から算出したSEMエラーバーと共に示してある。 図20Aは、0.5g/Lのフルフラールで15分処理した、或いは処理していないLY180株及びEMFR9株についての遺伝子yqhC、yqhD及びdkgAと隣接遺伝子yghB及びyqhGの発現レベルを示す。 図20Bは、フルフラールで処理する前及び処理した後のLY180及びLY180ΔyqhC株についてのyqhC、yqhD及びdkgAと隣接遺伝子の発現レベルを示す。
【図21】図21A〜Dは、フルフラールの存在下での生育に対するyqhC欠失の効果を示す。菌株は、50g/Lのキシロースを有し、0、0.5、1、1.5又は2g/Lのフルフラールを含有しているAM1培地で生育した。48時間に渡って30分間隔で光学密度をモニタリングした。試験した菌株は、LY180(A)、LY180ΔyqhC(B)、yqhC+を担持している単一コピープラスミドpLOI4901を含有しているLY180ΔyqhC(C)、及び空ベクトルpCCIを含有しているLy180ΔyqhC(D)であった。
【図22A】図22A〜Cは、蛍ルシフェラーゼレポーターを用いるyqhDプロモーター活性の測定を示す。 図22Aは、yqhDの上流プロモーター領域に融合している蛍ルシフェラーゼ遺伝子を担持しているプラスミドpLOI4900の構造である。
【図22B−C】図22Bは、LY180におけるyqhDプロモーターからの蛍ルシフェラーゼ発現に対するフルフラール添加の効果を示す。pLOI4900を担持しているLY180の培養物をAM1−キシロース(50g/L)中で、OD550=0.4になるまで生育して、0、0.1、0.5、及び1g/Lのフルフラール添加の直前(t=0)及び5、15、及び30分後にサンプルを採取した。ルシフェラーゼ活性を0.4OD50単位当たりの相対発光単位(RLU)として表した。 図22Cは、LY180ΔyqhC/pLOI4900中のyqhDプロモーターからの蛍ルシフェラーゼ発現を示す。条件及び記号は22Bの通りである。
【図23】図23は、選択した細菌のゲノムにおけるyqhCオルソログの配置を示す。yqhCの周辺遺伝子の配置を大腸菌K12(最終行)、及びyqhCオルソログを含有している選択した属について示している。各ゲノムのyqhCオルソログは太線の輪郭及びクロスハッチングを有している。存在する場合yghDオルソログは遺伝子の上に括弧内「yghD」として、dkgAオルソログは(dkgA)として示されている。遺伝子の下の数字はゲノム中の座標を示す。ゲノムの配置及びオルソログの検出は、EcoCycマルチゲノムブラウザーを用いて作成した。
【図24】図24A〜Fは、嫌気的生育及び発酵に対する5−HMFの効果を示す。細胞を、キシロース(100g/L)を有するAM1無機塩培地中で生育した。 図24Aは、1.0g/Lの5−HMFで生育している間の細胞量を示す。 図24Bは、1.0g/Lの5−HMFと発酵している間のエタノール生産を示す。 図24Cは、発酵中の5−HMF(1.0g/L)の還元を示す。 図24Dは、2.5g/Lの5−HMFで生育している間の細胞量を示す。 図24Eは、2.5g/Lの5−HMFと発酵している間のエタノール生産を示す。 図24Fは、発酵中の5−HMF(2.5g/L)の還元を示す。 比較のために5−HMF無しでの並行発酵が図A及びBに含まれている(点線)。全てのデータは標準誤差を有する平均値としてプロットされている(n=3)。全てに関する記号:□、LY180;及び●、EMFR9。
【図25】図25A〜Cは、5−HMFのインビトロ還元及び5−HMF耐性に対するYqhD及びFkgAの効果を示す。 図25Aは、インビトロにおける5−HMF還元に対する比活性度を示す。活性は溶解細胞抽出物(2mMのNADPH、20mMの5−HMF)中で測定した。 図25Bは、EMFR9(耐性変異体)の細胞収率に対する、プラスミドからのyqhD及びdkgA発現の効果を示している。実験は、50g/Lのキシロース及び1.0g/Lの5−HMFを含有するAM1培地を用いて試験管培養で実施した(48時間培養)。プラスミド保持のためのカナマイシンの封入が5−HMF耐性を低下することに注目されたい。誘発(Ind.)は0.1mMのIPTGと生育したものである。 図25Cは、LY180(親株)の細胞収率に対するyqhD及びdkgA欠失の効果を示す。実験は、50g/Lのキシロース及び2.5g/Lの5−HMFを含有するAM1培地を用いて試験管培養で実施した(48時間培養)。全てのデータは標準誤差を有する平均値としてプロットされている(n=4)。
【図26】図26A〜Cは、5−HMF耐性に対するプラスミドからのpntAB発現の効果を示す。実験は、Bioscreen C生育曲線分析器と50g/Lのキシロース及び指示されるように5−HMFを含有しているAM1培地を用いて実施した。全てのデータは標準誤差を有する平均値としてプロットされている(n=10)。明確にするために、点を結ぶことを省略してある。 図26Aは、補完していない。 図26Bは、0.9g/Lの5−HMFで補完してある。 図26Cは、1.8g/Lの5−HMFで補完してある。全てに関する記号:△、LY180(pTrc99a−対照);○、LY180(pTrc99a−pntAB)誘発されていない;●、LY180(pTrc99a−pntAB)0.01mMのIPTGで誘発されている。
【図27】図27は、LY180の5−HMF耐性に対するL−システインの効果を示す。実験は、50g/Lのキシロース及び5−HMFを含有するAM1培地を用いて試験管培養で実施した(24時間培養)。培養液は、指示されるようにフィルターで滅菌したL−システインで補完した。全てのデータは標準誤差を有する平均値としてプロットされている(n=4)。 図27Aは、1.0g/Lの5−HMFを含有している。 図27Bは、2.0g/Lの5−HMFを含有している。
【図28】図28は、yqhD及びdkgAについてのプロモータの方向及び配列を示す。
【図29A−1】図29は、LY180(図A)及びEMFR9(図B)由来のyqhC−yqhD−dkgA領域を表す。
【図29A−2】図29は、LY180(図A)及びEMFR9(図B)由来のyqhC−yqhD−dkgA領域を表す。
【図29A−3】図29は、LY180(図A)及びEMFR9(図B)由来のyqhC−yqhD−dkgA領域を表す。
【図29A−4】図29は、LY180(図A)及びEMFR9(図B)由来のyqhC−yqhD−dkgA領域を表す。
【図29B−1】図29は、LY180(図A)及びEMFR9(図B)由来のyqhC−yqhD−dkgA領域を表す。
【図29B−2】図29は、LY180(図A)及びEMFR9(図B)由来のyqhC−yqhD−dkgA領域を表す。
【発明を実施するための形態】
【0115】
I.定義
本明細書で用いられる「単離された」は、他の細菌による汚染を部分的に受けるか又は全く受けていないことを意味する。単離された細菌は、単離された細菌の特性又は機能に影響を及ぼさない他の細菌の少量の存在下に生存できる。単離された細菌は一般に、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%純粋であろう。本発明による単離された細菌は少なくとも98%又は少なくとも99%純粋であることが好ましい。
【0116】
本明細書で用いられる「細菌」は、「非組み換え細菌」、「組み換え細菌」及び「突然変異細菌」を包含してもよい。
【0117】
本明細書で用いられる「非組み換え細菌」は、異種ポリヌクレオチド配列を含有していなく、そして本発明の組成物及び方法を用いて修正するのに適している、例えば形質転換できる、例えば異種ポリヌクレオチド配列を組み込むことができる、例えば遺伝子操作に適している、細菌細胞を包含する。この用語は、もともと形質転換されている細胞の子孫を包含することを意図している。特定の実施態様では、細胞はグラム陰性細菌或いはグラム陽性細胞である。
【0118】
細菌に関して本明細書で用いられる「組み換え体」は、異種ポリヌクレオチド配列を含有しているか、或いは天然のポリヌクレオチド配列が変異又は欠失するように処理されている細菌細胞を意味する。
【0119】
細菌に関して本明細書で用いられる「突然変異体」は、本明細書の下記に定義するような参照細菌と同一ではない細菌細胞を意味する。
【0120】
「突然変異」細菌は、「組み換え」細菌を包含する。
【0121】
本明細書で用いられる「エタノール生産性」は、炭化水素から主発酵産物としてエタノールを生産する細菌の能力を意味する。この用語は、天然のエタノール生産性有機物及び天然の或いは誘発された突然変異を有するエタノール生産性有機物、又は遺伝子変化を伴うエタノール生産性有機物を包含することを意図している。
【0122】
用語「非エタノール生産性」は細菌が炭化水素から主発酵産物としてエタノールを生産する能力がないことを意味する。この用語は、非ガス性発酵産物全体の約40%未満を含有している微量の発酵産物としてエタノールを生産する微生物を包含することを意図している。
【0123】
本明細書で用いられる「エタノール生産」は、主発酵産物としての炭化水素からのエタノールの生産を意味する。
【0124】
本発明で用いられる「エタノールを生産できる」は、本明細書で定義されているように「エタノール生産」ができることを意味する。
【0125】
用語「発酵すること」及び「発酵」は、複合糖類の分解又は解重合、その糖残基のエタノール、酢酸エステル及びコハク酸エステルへの生物変換を意味する。この用語は、それによってエタノールが、特に発酵の主産物として、炭化水素から生産される(例えば、溶解物の又は精製したポリペプチド混合物の、例えば、細胞の又は無細胞の)酵素工程を包含することを意図している。
【0126】
用語「主発酵産物」及び「主要な発酵産物」は、本明細書で同義に用いられていて、非ガス性産物全体の約50%以上を含有している非ガス性の発酵産物を包含することを意図している。主発酵産物は、最も大量の非ガス性産物である。本発明のある特定の実施態様では、主発酵産物はエタノールである。
【0127】
本明細書で用いられる用語「微量発酵産物」は、非ガス性産物全体の40%未満を含有している非ガス性の発酵産物を包含することを意図している。本発明のある特定の実施態様では、微量発酵産物はエタノールである。
【0128】
用語「糖」は、糖分子(複数も)を含有している炭化水素源の何れもを包含することを意図している。このような糖は、本発明の産物及び方法に従う発酵による、解重合(所望により)及び次のアセトアルデヒドとそれに続くエタノールへの生物変換のための可能性のある糖源である。糖源は、澱粉、ほとんどの植物における貯蔵燃料の主要形態、ヘミセルロース、及びセルロース、剛体細胞壁の主要細胞外構造成分、並びに植物の線維及び木質の組織を包含する。この用語は、単糖とも呼ばれるモノサッカリド、オリゴサッカリド及びポリサッカリドを包含することを意図している。ある特定の実施態様では、糖は例えば、グルコース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、スクロース、及びラクトースを包含する。別の実施態様では、糖はグルコースである。
【0129】
本明細書で用いられる「YqhD」は、NADPH依存性アルデヒド酸化還元酵素を意味する。yqhDは、NADPH依存性アルデヒド酸化還元酵素遺伝子を示し、ここで用語YqhDは、yqhD遺伝子産物を示す。yqhD遺伝子及びYqhDポリペプチドの核酸及びアミノ酸の配列は図16に示されている。
【0130】
本明細書で用いられる「DkgA」は、2,5−ジケト−D−グルコン酸の還元を触媒する酵素を意味する。DkgAは、メチルグリオキサールの還元において機能を果たす酵素も意味する。dkgAは、2,5−ジケト−D−グルコン酸の還元を触媒する酵素に対応する遺伝子を示し、ここで用語DkgAはdkgA遺伝子産物を示す。dkgA遺伝子及びDkgAポリペプチドの核酸及びアミノ酸の配列は図17に示されている。
【0131】
本明細書で用いられる「YqhC」は、転写制御因子、転写制御因子タンパク質、又は転写制御遺伝子から発現される遺伝子産物を意味する。yqhCは転写制御因子に対応する遺伝子を示し、ここで用語YqhCはyqhC遺伝子産物を示す。yqhC遺伝子及びYqhCポリペプチドの核酸及びアミノ酸の配列は図18に示されている。
【0132】
本明細書で用いられる「突然変異核酸分子」又は「突然変異遺伝子」は、ポリペプチド又は突然変異体によってコードされ得るポリペプチドが野生型の核酸分子又は遺伝子にコードされるポリペプチドとは異なる活性又は特性を示すように、或いは突然変異遺伝子からポリペプチドが産生されないように、少なくとも1つの修正(例えば、置換、挿入、欠失)を含んでいるヌクレオチド配列を有している核酸分子又は遺伝子を包含することを意図している。
【0133】
核酸分子又は遺伝子に関連して本明細書で用いられる「突然変異」は、核酸又は遺伝子の欠失、或いは核酸又は遺伝子の発現レベルの減少を意味し、ここで欠失及び発現の減少が、核酸分子又は遺伝子によってコードされ得るポリペプチドの欠失又はその発現の減少をもたらす。突然変異は、突然変異体によってコードされ得るポリペプチドが野生型の核酸分子又は遺伝子によってコードされるポリペプチドとは異なる活性又は特性を示すように少なくとも1つの修正(例えば、置換、挿入、欠失)を含んでいるヌクレオチド配列を有している核酸分子又は遺伝子も意味する。
【0134】
本明細書で用いられる「突然変異タンパク質」又は「突然変異タンパク質又はアミノ酸配列」は、ポリペプチド、又は突然変異アミノ酸配列にコードされ得るポリペプチドが野生型のアミノ酸配列にコードされるポリペプチドとは異なる活性又は特性を示すように、少なくとも1つの修正(例えば、置換、挿入、欠失)を含んでいるアミノ酸配列を包含することを意図している。
【0135】
タンパク質又はアミノ酸配列に関連して本明細書で用いられる「突然変異」は、アミノ酸配列のアミノ酸の欠失、或いはアミノ酸配列の発現レベルの減少を意味し、ここで欠失又は発現の減少がアミノ酸配列によってコードされ得るポリペプチドの欠失又は発現の減少をもたらす。突然変異は、ポリペプチド、又は突然変異体にコードされ得るポリペプチドが野生型のアミノ酸配列にコードされるポリペプチドとは異なる活性又は特性を示すように、少なくとも1つの修正(例えば、置換、挿入、欠失)を含んでいるアミノ酸配列を有しているタンパク質又はアミノ酸配列も意味する。
【0136】
本明細書で用いられる「断片」又は「サブシーケンス」は、親の又は参照する核酸配列又はアミノ酸配列の部分、或いは親の又は参照する配列、ポリペプチド又は遺伝子をコードするか又は生物学的機能又は特性を保持しているポリペプチド又は遺伝子の部分を包含することを意図している。
【0137】
本明細書で用いられる「部分」は、親の又は参照する核酸配列、アミノ酸配列、ポリペプチド又は遺伝子の少なくとも50%(例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%)を意味する。
【0138】
本明細書で用いられる「保持する」(例えば、生物学的機能又は特性を保持する)は、親の又は参照する配列、ポリペプチド又は遺伝子の機能又は特性の少なくとも50%(例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%)を示すことを意味する。
【0139】
「突然変異細菌」は、本明細書の上で定義した「突然変異」を含有している細菌を包含する。
【0140】
本明細書で用いられる「参照」又は「参照細菌」は、少なくとも、野生型細菌又は親細菌を包含する。
【0141】
本明細書で用いられる「野生型」は、有機体又は菌株の典型的な形態、例えば突然変異が存在しない中で自然に生じる細菌、遺伝子又は特性を意味する。「野生型」は、自然個体群における最も一般的な表現型である。野生型は遺伝子型及び表現型の参照標準である。
【0142】
本明細書で用いられる「親の」又は「親細菌」は、目的の細菌を生じる細菌を示す。
【0143】
本明細書で用いられる「遺伝子」は、酵素又はその他のポリペプチド分子の合成を誘導できる、例えば、コード配列、例えば、ポリペプチド、それらのサブシーケンス又は断片をコードする、連続するオープン・リーディング・フレーム(ORF)を含有できるか、或いはそれ自体が有機体内で機能的な、核酸である。有機体内の遺伝子は、本明細書で定義されているオペロンに群生していて、オペロンは遺伝子間DNAによって他の遺伝子及び/又はオペロンから分離している。オペロンに含まれている個々の遺伝子は、個々の遺伝子の間で、遺伝子間DNAなしで、重なり合うことができる。さらに、用語「遺伝子」は、選択された目的のための特異的遺伝子を包含することを意図している。遺伝子は、例えば、エピソームに保持されたプラスミド、又はゲノムに安定に組み込まれているプラスミド(又はその断片)のように、宿主細胞に対して内因性であるか、又は組み換え技術によって宿主細胞に導入することができる。異種遺伝子は、細胞に導入されていて、そしてその細胞由来ではない遺伝子である。
【0144】
用語「核酸」は、核酸分子、例えば、ポリペプチド、そのサブシーケンス又は断片をコードするオープン・リーディング・フレームを包含するポリヌクレオチドを包含することを意図していて、更に、非コード調節配列、及びイントロンを包含することができる。更に、この用語は、機能座に位置する1つ又はそれ以上の遺伝子を包含することを意図している。その上、この用語は、選択された目的のための特異的遺伝子を包含することを意図している。
一実施態様では、用語遺伝子は、フルフラール還元酵素、例えば、これに限定されないが、yqhD及びdkgAを包含するNADPH依存性フルフラール還元酵素をコードする何れの遺伝子も包含する。
一実施態様では、遺伝子又はポリヌクレオチド断片は、炭化水素のエタノールへの生物変換の少なくとも一工程に関連している。
有機体内の遺伝子は、本明細書で定義されているオペロンに群生していて、オペロンは遺伝子間DNAによって他の遺伝子及び/又はオペロンから分離している。
【0145】
本明細書で用いられる「増加すること」又は「増加する」又は「増加した」は、例えば、参照細菌と比較して、フルフラール耐性である細菌におけるyqhD、dkgA及び/又はyqhC遺伝子の発現のレベルと比較して、少なくとも5%、例えば、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、100%又はそれ以上増加することを示す。
【0146】
本明細書で用いられる「増加すること」又は「増加する」又は「増加した」は、例えば、参照細菌と比較して、フルフラール耐性である細菌におけるyqhD、dkgA及び/又はyqhC遺伝子の発現のレベルを比較すると、少なくとも1倍、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000倍又はそれ以上増加することも意味する。
【0147】
本明細書で用いられる「減少すること」又は「減少する」又は「減少した」或いは「縮小した」又は「縮小すること」は、例えば、参照細菌と比較して、フルフラール耐性である細菌におけるyqhD、dkgA及び/又はyqhC遺伝子の発現のレベルと比較して、少なくとも5%、例えば、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、100%又はそれ以上減少すること又は縮小することを示す。
【0148】
本明細書で用いられる「減少すること」又は「減少する」又は「減少した」或いは「縮小した」又は「縮小すること」は、例えば、参照細菌と比較して、フルフラール耐性である細菌におけるyqhD、dkgA及び/又はyqhC遺伝子の発現のレベルを比較すると、少なくとも1倍、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000倍又はそれ以上減少又は縮小することも意味する。
【0149】
「減少した」又は「縮小した」は、活性、発現等のレベルが検出可能ではない、例えば、yqhD、dkgA及び/又はyqhC遺伝子の発現レベルが検出可能ではない、或いはYqhD、DkgA及び/又はYqhCタンパク質の活性レベルが検出可能ではないように除去されたことも意味する。
【0150】
本明細書で用いられる「活性」は、遺伝子の活性、例えば遺伝子の翻訳のレベルを示す。「活性」は、mRNAの活性、例えば、mRNAの複写のレベルも示す。「活性」は、タンパク質、例えば、YqhD又はDkgA又はYqhCの活性も示す。
【0151】
「活性の増加」は、活性の速度及び/又はレベルの増加を包含する。
【0152】
本明細書で用いられる、「yqhDの発現」又は「dkgAの発現」又は「yqhCの発現」にある「発現」は、それぞれに、yqhD遺伝子、dkgA遺伝子、及びyqhC遺伝子のタンパク質産物の発現を示す。
【0153】
本明細書で用いられる、「yqhDの発現」又は「dkgAの発現」又は「yqhCの発現」にある「「発現」は、それぞれに、yqhD遺伝子、dkgA遺伝子、及びyqhC遺伝子に対応するmRNA転写の検出可能なレベルの発現も示す。
【0154】
それが発現レベルを示す場合の「修正すること」は、目的の、例えば、yqhD、dkgA又はyqhCの、遺伝子、mRNA、又はタンパク質、の発現を減少させること又は増加させることを意味する。
【0155】
それが活性を示す場合の「修正すること」は、目的のタンパク質、例えば、YqhD、DkgA又はYqhCの活性を減少させること又は増加させることを意味する。
【0156】
本明細書で用いられる「発現されない」は、目的の、例えば、yqhD、dkgA又はyqhCの遺伝子或いはmRNAの産物のレベルが検出不能であることを意味する。
【0157】
本明細書で用いられる「除去する」は、検出不能なレベルまで減少させることを意味する。
【0158】
本明細書で用いられる「フルフラールに対する耐性」は、フルフラールの存在下、例えば、0.1g/L又はそれ以上(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10g/L又はそれ以上)の濃度のフルフラールの存在下で、生育或いはエタノールを生産する突然変異エタノール生産細菌の能力を意味する。フルフラールに対する耐性は、フルフラールの存在下における生育又はエタノール生産が、野生型細菌又は親細菌による生育又はエタノール生産のレベルと比較して増加しているレベルにあるエタノール生産細菌の能力も意味する。
【0159】
本明細書で用いられるフルフラールの存在に適用する場合の「〜の存在下で」は、少なくとも0.1g/L又はそれ以上(例えば、(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10g/L又はそれ以上)のフルフラールの存在下における細菌の保持を意味する。
【0160】
本明細書で用いられるフルフラールの非存在に適用する場合の「〜の非存在下で」は、検出不能なレベルを包含する、0.1g/L未満のフルフラールを含有している培地中で細菌を保持することを意味する。
【0161】
本明細書で用いられる「フルフラールの還元的除去」は、フルフラール還元酵素、例えば、YqhD及びDkgAを限定無しに包含している、NADPH依存性フルフラール還元酵素の作用によるフルフラールの除去を意味する。
【0162】
本明細書で用いられる「フルフラール代謝」は、フルフラールの、フルフラールアルコール、フロ酸、2−ケトグルタル酸、及び酢酸の何れか1つへの分解を意味する。
【0163】
本明細書で用いられる「5−HMF」は、5−ヒドロキシメチルフルフラールを意味する。
【0164】
本明細書で用いられる「5−HMFに対する耐性」は、5−HMFの存在下、例えば、0.1g/L又はそれ以上(例えば、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10g/L又はそれ以上)の濃度の5−HMFの存在下で、生育或いはエタノールを生産する突然変異エタノール生産細菌の能力を意味する。5−HMFに対する耐性は、5−HMFの存在下における生育又はエタノール生産が、野生型細菌又は親細菌による生育又はエタノール生産のレベルと比較して増加しているレベルにあるエタノール生産細菌の能力も意味する。
【0165】
本明細書で用いられる5−HMFの存在に適用する場合の「〜の存在下で」は、少なくとも0.1g/L又はそれ以上(例えば、(例えば、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10g/L又はそれ以上)の5−HMF存在下における細菌の保持を意味する。
【0166】
本明細書で用いられる5−HMFの非存在に適用する場合の「〜の非存在下で」は、検出不能なレベルを包含する、0.1g/L又はそれ未満(例えば、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.01、0.005、0.001g/L又はそれ未満)の5−HMFを含有している培地中で細菌を保持することを意味する。
【0167】
本明細書で用いられる「生育」は、細菌の数又は量が時間とともに、上で定義したように、増大することを意味する。
【0168】
本明細書で用いられる「フルフラール還元酵素」は、毒性のフルフラールを毒性の低いフルフラールアルコールに変換する酵素、例えば、YqhD及びDkgAを限定無しに包含している、NADPH−依存性フルフラール還元酵素、を意味する。
【0169】
本明細書で用いられる「ヘミセルロース加水分解物」は、これに限定されないが、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、又はセルロース系バイオマスに由来している加水分解物を包含する。
【0170】
本明細書で用いられる「に由来している」は、〜が起源であるということを意味する。
【0171】
用語「グラム陰性細菌」は、当該技術分野で承認されているこの用語の定義を包含することを意図している。グラム陰性菌の例は、アシネトバクター属、グルコノバクター属、ザイモモナス属、エシェリキア属、ジオバクター属、シュワネラ属、サルモネラ属、エンテロバクター属及びクレブシエラ属を包含する。
【0172】
用語「グラム陽性細菌」は、当該技術分野で承認されているこの用語の定義を包含することを意図している。グラム陽性菌の例は、バチルス属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、オエノコッカス属、ストレプトコッカス属及びユーバクテリウム属を包含する。
【0173】
用語「アミノ酸」は、通常タンパク質に見られる20個のアルファアミノ酸を包含することを意図している。塩基性に荷電しているアミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン及びリジンを包含する。中性荷電のアミノ酸は、アラニン、システイン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンを包含する。酸性アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を包含する。
【0174】
本明細書で用いられる「選択すること」は、同定された細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産することを確認する過程を示す。
【0175】
本明細書で用いられる「同定すること」は、細菌を評価して、細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産することを確認する過程を示す。
【0176】
本明細書で用いられる「フルフラールの濃度を増大すること」は、0〜5g/Lの増大、例えば、1μg/Lの増大、1mg/Lの増大又は1g/Lの増大を意味する。
【0177】
本明細書で用いられる「選択すること」は、同定された細菌が5−HMFの存在下でエタノールを生産することを確認する過程を示す。
【0178】
本明細書で用いられる「同定すること」は、細菌を評価して、細菌が5−HMFの存在下でエタノールを生産することを確認する過程を示す。
【0179】
本明細書で用いられる「5−HMFの濃度を増大すること」は、0〜5g/Lの増大、例えば、1μg/Lの増大、1mg/Lの増大又は1g/Lの増大を意味する。
【0180】
本明細書で用いられる「プロモーターの調節」は、プロモーターの活性を、本明細書に定義するように、増大又は減少することを示す。
【0181】
本明細書で用いられる「欠失している」又は「ノックアウトしている」又は「不活化している」は、検出不能なレベルまでの減少を意味する。遺伝子を示す場合の「欠失している」又は「ノックアウトしている」又は「不活化している」は、当該技術分野で公知のアッセイ、例えば、PCR又はウェスタンブロット分析によって遺伝子がもはや検出できないように、又は当該技術分野で公知のアッセイ、例えば、PCR又はウェスタンブロット分析によって遺伝子に対応するmRNAがもはや検出できないように、或いは当該技術分野で公知のアッセイ、例えば、ウェスタンブロット分析、SDS−PAGE又は酵素によるアッセイによってコードされるタンパク質がもはや検出できないか又は機能しないように、遺伝子を除去することを意味する。
【0182】
本明細書で用いられる「欠失した」又は「ノックアウトした」又は「不活化した」遺伝子は、当該技術分野で公知の方法によって、発現のレベルが検出不能である遺伝子を意味する。
【0183】
遺伝子を不活化する方法は、siRNAを用いるRNA干渉、又はアンチセンス方法を包含する。
【0184】
本明細書で用いる用語「siRNA」は、それぞれの螺旋がRNA、RNA類縁体又はRNA及びDNAを含有している二重螺旋の核酸を示す。通常、siRNAのアンチセンス螺旋は、遺伝子の発現を減少又は不活化するために、目的の遺伝子/RNAの標的配列と十分に相補的である。
【0185】
「アンチセンス」とは、標的核酸配列に対して相補性を有しているヌクレオチド配列を意味する。
【0186】
RNAsは遺伝子の直接的産物であって、これらの低分子RNAsは、特異的標的RNAsと結合できて、それらの活性を増大するか或いは減少する。特に、アンチセンス螺旋は相補性mRNAに結合することによって、タンパク質の産生を阻止する。
【0187】
本開示では、「含有する」、「含有している」、「含んでいる」及び「有している」などは、米国特許法がそれらに帰している制約の無い意味を有していて、「包含する」、「包含している」などを意味する。
【0188】
II.細菌
本発明は、フルフラール及び/又は5−HMFに対して耐性な細菌に関している。本発明は、非組み換え細菌、及び組み換え細菌の両方を提供する。
【0189】
本発明は、参照する細菌と比較すると、フルフラール及び/又は5−HMFに対して増大した耐性を有する単離された細菌を提供する。本発明の細菌は、エタノール生産性でありそして/又は参照する細菌と比較すると増大したエタノール生産性を示す細菌を包含する。
【0190】
一態様では、yqhD、yqhC及び/又はdkgAの発現が、参照する細菌における発現と比較すると、本発明の細菌において減少又は除去されている。
【0191】
これに限定されないが、参照する細菌と比較してyqhD、yqhC及び/又はdkgAの発現を調節するプロモータを修正することを包含している、当該技術分野で公知の方法によって、発現が減少する。例えば、これに限定されないが、プロモーターの欠失、異なったプロモーターによるプロモーターの置き換え、プロモーターの修正(例えば、核酸を挿入、置換又は除去して、或いはプロモーター中の調節要素又はモチーフを挿入又は除去して)を包含している、当該技術分野で認められている方法によって、プロモーターは修正される。
【0192】
一実施態様では、発現は、yqhC遺伝子を修正又は欠失することにより減少又は除去される。
【0193】
別の態様では、本発明の細菌において、YqhD、YqhC及び/又はDkgAタンパク質の活性は、参照する細菌におけるYqhD、YqhC及び/又はDkgAタンパク質の活性と比較して、減少又は修正される。これに限定されないが、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の修正(例えば、遺伝子をコードする配列において核酸又はアミノ酸を挿入、置換又は除去することによって)を包含している、当該技術分野で公知の方法によって、活性は減少又は修正される。
【0194】
本発明は、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の発現が、参照する細菌におけるyqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の発現と比較すると、減少していて、そしてyqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の調節が、参照する細菌におけるyqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の調節と比較すると、修正されている細菌も提供する。これに限定されないが、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の修正(例えば、遺伝子をコードする配列において核酸又はアミノ酸を挿入、置換又は除去することによって)を包含している、当該技術分野で公知の方法によって、発現は減少又は修正される。
【0195】
本発明は、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子が、参照する細菌と比較すると、不活化又はノックアウトされている細菌を提供する。
【0196】
これに限定されないが、アンチセンス阻害又はアンチセンス転写のメカニズムを包含している当該技術分野で公知の何れのメカニズムによっても、遺伝子発現を改変することができる。
【0197】
本発明は、これに限定されないが、参照する細菌と比較して、異なったプロモーターの制御下又は追加プロモーターの制御下での、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の配置を包含している、当該技術分野において公知の方法によって、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の調節を改変する方法を提供する。
【0198】
本発明は、これに限定されないが、参照する細菌と比較して、異なった調節タンパク質の制御下又は追加の調節タンパク質の制御下での、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の配置を包含している、当該技術分野において公知の方法によって、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の調節を改変する方法を提供する。
一実施態様では、調節タンパク質は抑制因子である。
別の実施態様では、調節タンパク質は誘導因子である。
【0199】
本発明は、参照する細菌と比較して、yqhC遺伝子を改変又は欠失することによって、yqhD、又はyqhDとdkgAの調節を、調節又は改変する方法も提供する。
【0200】
本発明は、参照する細菌と比較してフルフラール及び/又は5−HMFに対する耐性が増大している細菌も提供し、そしてここでは、当該細菌はフルフラール及び/又は5−HMFの存在下で参照する細菌と比較してエタノール生産を増大している。
【0201】
一態様では、本発明の細菌は、参照する細菌と比較してフルフラールの還元的除去が減少しているか存在していない場合に、参照する細菌と比較してエタノール生産を増大している。
【0202】
別の態様では、本発明の細菌は、参照する細菌と比較して、フルフラール代謝を減少しているか或いは除去している。
【0203】
本発明は、フルフラールに対する耐性が増大していて、さらに;1)参照する細菌と比較して、フルフラールの存在下又は非存在下で、生育が増大している;2)参照する細菌と比較して、生育が増大していてエタノール生産が増大している;3)参照する細菌と比較して、フルフラールの存在下で、生育が増大していてエタノール生産が増大している;4)参照する細菌と比較して、フルフラール還元酵素の活性が減少している;5)参照する細菌と比較して、加水分解産物の存在下で、生育が増大している;及び6)参照する細菌と比較して、エタノール生産が増大している:ことの少なくとも一つを示す、細菌を提供する。
【0204】
本発明は、5−HMFに対する耐性が増大していて、さらに;1)参照する細菌と比較して、5−HMFの存在下又は非存在下で、生育が増大している;2)参照する細菌と比較して、生育が増大していてエタノール生産が増大している;3)参照する細菌と比較して、5−HMFの存在下で、生育が増大していてエタノール生産が増大している;4)参照する細菌と比較して、5−HMF還元酵素の活性が減少している;5)参照する細菌と比較して、加水分解産物の存在下で、生育が増大している;及び6)参照する細菌と比較して、エタノール生産が増大している:ことの少なくとも一つを示す、細菌を提供する。
【0205】
本発明は、これに限定されないが、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、又はセルロース系バイオマス由来の加水分解物を包含している、多種の加水分解物を提供する。
【0206】
本発明は、フルフラールに対する耐性が減少している細菌も提供し、そこで、細菌は、エタノールを主発酵産物として生産することができ、そこで随意に主発酵産物は嫌気性又は微好気性条件下で生産される。
【0207】
本発明は、参照する細菌の発現と比較してyqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の発現が減少して、ここで細菌がフルフラールの存在下又は非存在下においてエタノールを生産できる、細菌も提供する。
【0208】
これに限定されないが、当該参照細菌と比較して遺伝子発現を調節するプロモーターを改変することを包含する当該技術分野で公知の方法によって、又は参照する細菌と比較してyqhC遺伝子を改変又は欠失することによって、yqhD、又はyqhDとdkgA遺伝子の発現が減少する。
【0209】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhC遺伝子の発現が減少していて、そして細菌がフルフラールの存在下又は非存在下においてエタノールを生産できる、細菌も提供する。
【0210】
一態様では、本発明は単離された細菌を提供し、そこではyqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の発現が減少しているか又は発現されず、そして細菌はフルフラールの存在下又は非存在下においてエタノールを生産する。本発明の細菌は、1)参照する細菌と比較して、フルフラールの存在下で増大したエタノール生産及び増大した生育;2)参照する細菌と比較して、フルフラールの存在下で増大したエタノール生産及び増大した生育;3)主発酵産物としてエタノールの産生、ここで随意に主発酵産物は嫌気性又は微好気性条件下で生産される;及び4)主発酵産物としてエタノールの産生、ここで随意に主発酵産物は嫌気性又は微好気性条件下で生産される;の少なくとも1つを示してもよい。
【0211】
一態様では、本発明は単離された細菌を提供して、そこではyqhC遺伝子の発現が減少又は除去されている。
【0212】
本発明は、YqhD又はYqhD及びDkgAタンパク質の活性が、参照する細菌における活性と比較すると、減少又は除去されていて、そして細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産できる、細菌を提供する。
【0213】
本発明は、YqhCの活性が、参照する細菌における活性と比較すると、減少又は除去されていて、そして細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産できる、細菌も提供する。
【0214】
別の態様では、yqhD又はyqhD及びdkgA遺伝子の発現が、参照する細菌におけるyqhD又はyqhD及びdkgA遺伝子の発現と比較すると、減少していて、そして細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産できる、細菌を提供する。
【0215】
本発明は、yqhD、又はyqhDとdkgA遺伝子の調節が、参照する細菌における調節と比較して、改変されていて、そして細菌はフルフラールの存在下でエタノールを生産できる、単離された細菌も提供する。
【0216】
本発明は、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子が、参照する細菌と比較すると、不活性化されているか又はノックアウトしていて、そして細菌はフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、単離された細菌も提供する。
【0217】
本発明は、yqhC遺伝子が、参照する細菌と比較すると、不活性化されているか又はノックアウトしていて、そして細菌はフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、単離された細菌を提供する。
【0218】
本発明は、yqhD又はyqhD及びdkgA遺伝子の調節が、参照する細菌と比較すると、改変されていて、そして細菌はエタノールを生産でき、エタノールの生産は随意にフルフラールの存在下で行われる、単離された細菌も提供する。
【0219】
yqhC遺伝子の調節が、参照する細菌と比較すると、改変されていて、そして細菌はエタノールを生産でき、エタノールの生産は随意にフルフラールの存在下で行われる、単離された細菌も提供する。
【0220】
一実施態様では、yqhD又はyqhD及びdkgA遺伝子の調節は、yqhD又はyqhD及びdkgA遺伝子を、参照する細菌と比較して、異なったプロモータの制御下又は追加のプロモーターの制御下に置くことによって、或いはyqhC遺伝子を改変又は欠失することによって、改変される。
【0221】
一実施態様では、yqhD、又はyqhDとdkgA遺伝子の調節は、yqhD、又はyqhDとdkgA遺伝子を、参照する細菌と比較して、異なった調節タンパク質の制御下又は追加の調節タンパク質の制御下に置くことによって、或いはyqhC遺伝子を改変又は欠失することによって、改変される。一実施態様では、調節タンパク質は抑制因子である。これに代わる実施態様では、調節タンパク質は誘導因子である。
【0222】
発現はアンチセンス阻害又はアンチセンス転写の方法によっても減少する。
【0223】
本発明の細菌は多種の方法で生産される。
【0224】
当該細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産できる、NADPH依存性フルフラール還元酵素の発現活性が減少している単離された細菌は、工程:フルフラールの存在下又は非存在下で細菌の候補突然変異株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する突然変異体を選択すること:を含有してなる工程によって調製される。
【0225】
或いは、細菌がフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、NADPH依存性フルフラール還元酵素の発現活性が減少している単離された細菌は、細菌の候補株を増大する濃度のフルフラールの存在下で生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択することによって調製される。
【0226】
NADPH依存性フルフラール還元酵素は、これに限定されないが、YqhD又はYqhDとDkgAを包含するNADPH依存性フルフラール還元酵素の何れかであってよい。
【0227】
細菌がフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、yqhD又はyqhDとdkgA遺伝子の発現が、参照する細菌と比較すると、減少している単離された細菌は、工程:フルフラールの存在下で細菌の候補突然変異株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する突然変異体を選択すること:或いは、細菌の候補株を増大する濃度のフルフラールの存在下で生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:を含有してなる工程によって調製される。
【0228】
本発明は、yqhC遺伝子の発現を減少するか又はyqhC遺伝子を改変又は欠失する工程を含有する、細菌を調製する方法も提供する。
【0229】
細菌がフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、NADPH依存性フルフラール還元酵素の発現活性が減少している単離された細菌は、工程:yqhD又はyqhDとdkgAの発現を減少すること;細菌の候補株をフルフラールの存在下で生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:を含有してなる方法によって調製される。
【0230】
当該細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産できる、yqhD遺伝子の発現が減少しているか又はyqhD及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌は、工程:yqhD又はYyqhDとdkgAの発現を減少すること;細菌の候補株をフルフラールの存在下で生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:を含有してなる方法によって調製される。
【0231】
当該細菌がフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、YqhD又はYqhDとDkgAタンパク質の活性が、参照する細菌における活性と比較して、減少又は除去されている単離された細菌は、工程:フルフラールの存在下で細菌の候補突然変異株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する突然変異体を選択すること:或いは、増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:を含有してなる方法によって調製される。
【0232】
遺伝子の発現は、これに限定されないが、遺伝子のノックアウト又は遺伝子のサイレンシングを包含する当該技術分野で公知の方法によって減少する。
【0233】
当該細菌がフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、yqhD又はyqhDとdkgA遺伝子が、参照する細菌と比較して、不活性化又はノックアウトしている単離された細菌は、工程:フルフラールの存在下で細菌の候補突然変異株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する突然変異体を選択すること:或いは増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:を含有してなる方法によって調製される。
【0234】
細菌がフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、yqhD又はyqhDとdkgA遺伝子の調節が、参照する細菌と比較して、修正されている単離された細菌は、工程:フルフラールの存在下で細菌の候補突然変異株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する突然変異体を選択すること:或いは増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:を含有してなる方法によって調製される。
【0235】
本発明の方法によれば、調節は、これに限定されないが、yqhD又はyqhDとdkgA遺伝子を、参照する細菌と比較して、異なったプロモーターの制御下又は追加のプロモーターの制御下に置くことを包含する、当該技術分野で公知の各種方法によって修正される。
本発明の方法によれば、調節は、これに限定されないが、yqhD又はyqhDとdkgA遺伝子を、参照する細菌と比較して、異なった調節タンパク質の制御下又は追加の調節タンパク質の制御下に置くことを包含する、当該技術分野で公知の各種方法によって修正される。一実施態様では、調節タンパク質は抑制因子である。これに代わる実施態様では、調節タンパク質は誘導因子である。
本発明は、yqhC遺伝子を、参照する細菌と比較して、修正又は欠失することによるyqhD又はyqhDとdkgA遺伝子の調節も提供する。
【0236】
本発明は、これに限定されないが、アンチセンス転写を包含する当該技術分野で公知の何れかの方法を用いて、yqhD又はyqhDとdkgA遺伝子をサイレンシングした本発明の細菌を調製する方法も提供する。
【0237】
本発明の細菌は、非組み換え型又は組み換え型である。
【0238】
一実施態様では、細菌は主発酵産物としてエタノールを生産することができ、ここで主発酵産物は随意に、嫌気性又は微好気性条件下で生産される。
【0239】
本発明の細菌は、グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌よりなる群から選ばれ、ここで、グラム陰性細菌は、アシネトバクター属、グルコノバクター属、ザイモモナス属、エシェリキア属、ジオバクター属、シュワネラ属、サルモネラ属、エンテロバクター属及びクレブシエラ属よりなる群から選ばれて、グラム陽性細菌は、バチルス属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、オエノコッカス属、ストレプトコッカス属及びユーバクテリウム属よりなる群から選ばれる。
【0240】
一態様では、本発明の細菌は大腸菌である。
【0241】
別の態様では、本発明の細菌はクレブシエラ・オキシトカである。
【0242】
別の態様では、本発明の細菌は大腸菌EMFR9株である。
【0243】
別の態様では、本発明の細菌は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50240で表される大腸菌EMFR9株である。
【0244】
別の態様では、本発明の細菌は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50239で表される大腸菌LY180株である。
【0245】
別の態様では、本発明の細菌は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50241で表される大腸菌EMFR17株である。
【0246】
別の態様では、本発明の細菌は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50242で表される大腸菌EMFR26株又はAgricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50243で表される大腸菌EMFR35株である。
【0247】
III.エタノールを生産する方法
別の態様では、本発明はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法を提供する。方法は、それによってオリゴ糖源からエタノールを生産するために、オリゴ糖を上記のような本発明の非組み換え型細菌又は宿主細胞と接触させることを含有する。方法の特定の実施態様では、オリゴ糖は、リグノセルロース、ヘミセルロース、セルロース、ペクチン及びこれらの何れかの組み合わせよりなる群から選ばれる。
【0248】
別の態様では、本発明は、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源を本発明の単離された細菌と接触させることによって、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産することを含有してなる、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法を提供する。
【0249】
別の態様では、本発明は、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源を本発明の単離された細菌と接触させることによって、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産することを含有してなる、フルフラールの存在下でバイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法を提供する。
【0250】
本発明は、本発明の方法によって生産されたエタノールも提供する。
【0251】
本発明の宿主細胞は、嫌気性条件下でエタノール生産のレベルが低いという特性を有している。野生型の大腸菌は嫌気的生育の間にエタノールと酢酸塩を1:1の比で生産する。生育の静止期の間に、野生型の大腸菌は主産物として乳酸塩を生産して、総発酵産物におけるエタノールの画分は約20%である。これらの発酵の全てにおける産物は多種の酸を含有しているので、混合酸発酵という用語に結び付いている。
【0252】
一般に、発酵条件は、産生宿主細胞株の最大生育動態を促進する最適なpH及び温度、並びに培養によって産生する酵素の触媒条件をもたらすように選択される(Doran et al., (1993) Biotechnol. Progress. 9:533-538)。例えば、クレブシエラ、例えばP2株については、最適条件は35〜37℃及びpH5.0〜pH5.4の間であると確認された。これらの条件下では、外から加えられた真菌のエンドグルカナーゼ及びエクソグルカナーゼさえも、長時間にわたって極めて安定で機能を続ける。別の条件は実施例で検討されている。更に、本発明の所定の発酵反応を最適化するためには、当該技術分野で公知の技術を用いて、通常の実験のみが必要であることを、当業者は理解できるだろう。例えば、米国特許第5,424,202号及び第5,916,787号を参照されたい、これらは参照により、明確に本明細書に取り込まれている。
【0253】
更に別の態様では、本発明は、上記のような本発明の非組み換え型細菌又は宿主細胞、及び本明細書に記載されている方法及び工程に従ってエタノールを生産するための使用説明書を含有してなる、キットを提供する。一実施態様では、キットは糖源を含有している。
【0254】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少することによって、細菌のフルフラール又は5−HMFに対する抵抗性又は耐性を増大する方法も提供する。
【0255】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少することによって、細菌のフルフラール又は5−HMFに対する抵抗性又は耐性を増大するNADPH依存性酸化還元酵素を同定する方法も提供する。
【0256】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少することによって、フルフラール又は5−HMFの存在下で細菌の生育を増大することにも関している。
【0257】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少することによって、フルフラール又は5−HMFの存在下で細菌によるエタノール生産を増大することにも関している。
【0258】
本方法によると、NADPH依存性酸化還元酵素は、YqhD又はDkgAのKmより小さいか又は同等のKmを有している。
【0259】
一実施態様では、NADPH依存性酸化還元酵素に対する好ましい基質はNADPHであってNADHではない。
【0260】
別の実施態様では、NADPH依存性酸化還元酵素に対する基質はNADPHであってNADHではない。
【0261】
YqhDのKmは約2〜32μM、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、31又は32μMである。一実施態様では、YqhDのKmはおよそ4〜24である。別の実施態様では、YqhDのKmはおよそ6〜16μMである。別の実施態様では、YqhDのKmは8μMである。
【0262】
DkgAのKmは約6〜92μM、例えば、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91又は92μMである。一実施態様では、DkgAのKmはおよそ12〜70である。別の実施態様では、dkgAのKmはおよそ18〜50μMである。別の実施態様では、DkgA(YqhD)のKmは23μMである。
【0263】
IV.使用方法
本発明は、フルフラール及び/又は5−HMFに対して増大した耐性を有している細菌を提供する。細菌は、エタノールを生産するために、そして特に、フルフラールの存在下又は非存在下に、オリゴ糖を本発明の細菌と接触させ、それによってオリゴ糖源からエタノールを生産することによるという、オリゴ糖源からエタノールを生産するために、用いることができる。
【0264】
本発明は、フルフラールの存在下又は非存在下で、オリゴ糖源からエタノールを生産するためのキットも提供し、そこでキットは使用説明書及び、随意に、包装手段を包含している。
【0265】
V.実験
本発明を、限定と見なしてはならない、以下の実施例によって更に説明する。特に明記しない限り、実施例を通して以下の材料及び方法が用いられる。
【0266】
材料及び方法
菌株、培地及び生育条件
本研究で用いられる菌株及びプラスミドを表1に載せてある。プラスミド及び菌株の構築はL培地(Miller 1992 A short course in bacterial genetics. CSHL Press. Plainview, New York)を用いて行った。必要に応じて抗生物質を含めた。温度条件付きプラスミドは30℃で生育して、その他のものは37℃で生育した。エタノール生産性菌株は、固体培地には20g/Lのキシロースを、そして発酵実験で用いた液体培地には50g/L又はそれ以上のキシロースを補完したAM1無機塩培地(Martinez et al. 2007 Biotechnol. Lett. 29:397-404)中で保持した。菌株大腸菌LY168株(Jarboe et al. 2007. Adv. Biochem. Engin/Biotechnol. 108:237-261)はKO11の誘導体であって、本研究の出発点としての役割を果たした。菌株大腸菌W(ATCC9637)が、最初に大腸菌Bの誘導体であると報告された(Ohta et al. 1991. Appl. Environ. Microbiol. 57:893-900)KO11に対する親株であることに注目されたい。
【0267】
【表1−1】
【0268】
【表1−2】
【0269】
【表1−3】
【0270】
【表1−4】
【0271】
本研究で用いた菌株及びプラスミドは先に記載されている(Miller et al. 2009a Appl Environ Microbiol 75: 6132-6141; Miller et al. 2009b Appl Environ Microbiol 75: 4315-4323)。これらはLY180(大腸菌のエタノール生産性誘導体)、EMFR9(LY180のフルフラール耐性誘導体)、LY180ΔyqhD、LY180ΔdkgA、LY180ΔyqhDΔdkgA、yqhDを含有しているpLOI4301を包含する。dkgAを含有しているプラスミドpLOI4303(Miller et al. 2009b Appl Environ Microbiol 75: 4315-4323)及びpntABを含有しているpLOI4316(Miller et al. 2009a Appl Environ Microbiol 75: 6132-6141)も用いた。培養物は、20g/Lのキシロース(固体培地)、50g/Lのキシロース(バイオスクリーンC生育分析器及び試験管培養)、又は100g/Lのキシロース(pH制御発酵)を含有しているAM1最少培地(Martinez et al. 2007 Biotechnol. Lett. 29:397-404)中、37℃で生育した。
【0272】
5−HMFに対する耐性は、4mlのAM1及び5−HMFを含有している13×100mmの封管を用いて、表示してあるようにして試験した。適切な場合には、プラスミド保持のために抗生物質を含有させた。試験管に0.05 OD550nmの初期密度で植菌した。48時間培養(60rpm)した後、Spectronic 20Dと分光光度計(Thermo, Waltham,MA)を用いて生育を測定した。フラン耐性に対するpntABの効果を試験するために、ウェル当たり400μlのAM1(及び5−HMF又はフルフラール)を含有しているマルチウェルプレートに上記のように植菌した。Bioscreen C 生育分析器(Oy Growth Curves, Helsinki, Finland)を用いて、OD(420−580nm バンド幅)を72時間にわたって測定した。
【0273】
発酵試験のために、LY180及びEMFR9の種培養物を350mlのAM1培地を含有している小発酵槽中(37℃、200rpm)で1晩生育した。2NのKOHを自動添加して培養液をpH6.5に維持した。対数増殖期中期(mid-log phase)に達した時点に、試験発酵槽に0.1 OD550nmの初期細胞密度(33mg乾燥細胞重量/L)で植菌した。細胞量(OD550nm)及びフランのレベルを12時間間隔で既述(Martinez et al. 2000b Biotechnol Prog 16: 637-641)のようにモニタリングした。
【0274】
pH制御発酵槽を用いてインビボのフラン還元を測定した。培養物がおよそ1 OD550nmに達したときに10% w/vの貯蔵溶液を用いてフランを添加した。細胞量及び5−HMFを、0、15、30、及び60分後に測定した。
【0275】
LY180株の構築
LY168株は、ヘミセルロース加水分解物中の糖の発酵に関して既に記載されている(Jarboe et al., 2007 Adv. Biochem. Engin/Biotechnol. 108:237-261)。基質領域(乳糖利用の回復、エンドグルカナーゼの組み込み、及びセロビオース利用の組み込み)を改善するために幾つかの修正が行われてLY180が得られた。組み込みに用いた線状DNA断片は図1に示されていて、GenBank に寄託されている。lacZlacYlacAcynX’を含有している断片A(Datsenko et al. 2000 PNAS 97:6640-6645, Jantama et al. 2008 Biotech. Bioeng. 30:881-893)を用いる二重相同組み換えによって、lacYのFRT領域を天然大腸菌ATCC9637と置き換えた。組み込み株を乳糖発酵に関して直接選択した。frdA::Zmfrg celYEc(Erwinia chrysanthemi)の下流にあるfrdB領域を、2段階法を用いる二重相同組み換え(Jantama et al. 2008 Biotech. Bioeng. 30:881-893)によって削除した。断片B(frdB’、cat−sacBカセット、及びfrdC’)をクロラムフェニコール耐性に対する選択を最初に組み込んだ。次いで、cat−sacBカセットを、蔗糖に対する耐性を選択して、frdA’、Zymomonas mobilis プロモーター断片、E.crysanthemi celY、及びfrdC’からなる断片Cと置き換えた。この置換体もFRT部位を欠失していた。セロビオース利用(casAB)をコードする Klevsiella oxytoca 遺伝子を、2段階法を用いる二重相同組み換え(Jantama et al. 2008 Biotech. Bioeng. 30:881-893)によって、1dhAに組み込んだ。1dhAのFRT部位をクロラムフェニコール耐性に対する選択と置き換えるために、断片D(1dhA’、cat−sacBカセット、casAB、及び’1dhA)を用いた。次いで、cat−sacBカセットを、1dhA’、Z. mobilis 由来のプロモーター断片、及びK.oxytoca casA’よりなる断片Eと置き換えた。セロビオース発酵に対する直接選択によって、組み込み株を単離した。表現型及びPCR産物の分析によって、全ての構築物を確認した。
【0276】
フルフラール耐性菌の生育に基づく選択
100g/Lのキシロース及び0.5g/Lのフルフラールで補完した350mLのAM1を含有している500ml容器にLY180を植菌した(初期接種、50mgdcw/L、37℃、150rpm、pH6.5)。培養液は、24時間間隔で、又は細胞量が330mgdcw/Lを越えたときに、新しい発酵槽内へ連続希釈した。フルフラールは生育を許容して1.3g/Lまで漸増した。54回連続移植後に、耐性菌を単離してEMFR9と命名した。
【0277】
発酵中のフルフラール耐性及び代謝
フルフラール耐性を、小発酵槽(37℃、150rpm、pH6.5、可動範囲350ml)中で、100g/Lのキシロースを含有しているAM1培地(Martinez et al. 2007 Biotechnol. Lett. 29:397-404)を用いて比較した。種培養物を、およそ33mgdcw/Lに植菌した。サンプルを定期的に採取して細胞量、エタノール、及びフルフラールを測定した。
【0278】
フルフラール毒性(MIC)も、4mlのAM1培養液と50g/L(wt/vol)のろ過滅菌した糖、フルフラール、及びその他の補完物を含有する試験管培養(13×100mm)を用いて試験した。培養物を17mg/dcw/Lの初期密度で植菌した。37℃で24時間及び48時間培養した後に細胞量を測定した。
【0279】
加水分解物毒性の比較
サトウキビ絞りかすのヘミセルロース加水分解物を、高温及び高圧で希硫酸を用いて製造し、そして Verenium Corporation (Boston, MA)から入手した。この加水分解物は82g/Lの総糖(主にキシロース)、1.4g/Lのフルフラール、及びその他の成分を含有していた。加水分解物を、AM1培地の無機成分で補完し、45%のKOHを用いてpH6.5に調節して、完全AM1(80g/Lのキシロース含有)で希釈した。加水分解物の希釈サンプルを13mm×100mmの培養試験管に分配し(4mLずつ)、17gdcw/Lの初期細胞密度で植菌して、37℃で培養した。細胞量(遠心分離及び培養液に再懸濁後)及びエタノール濃度を48時間後に測定した。
【0280】
マイクロアレイ解析
培養物を、670mg dcw/Lの密度まで小発酵槽で生育した。フルフラール(0.5g/L)を添加して、培養を集菌15分前まで続けた。全てのサンプルを直ちにエタノール−ドライアイス浴中で冷却し、遠心分離で集菌し、Quiagen RNA Later (Valencia, CA)に再懸濁して、精製するまで−80℃で保管した。Quiagen RNeasy Mini Kit を用いてRNAを精製して、マイクロアレイ比較のためにNimbleGen (Madison, WI)に送った。ArrayStar ソフトウェア(DNA Star, Madison, WI)でデータを解析した。
【0281】
酸化還元酵素のクローニング及び欠失
発現研究(リボソーム結合部位、コード領域、及び200bp末端領域)のために酸化還元酵素遺伝子を、Bio-Rad iCycler (Hercules, CA)を用いてLY180株のゲノムDNAから増幅し、pCR 2.1−TOPOベクターにライゲートして、Invitrogen TOPO TA Cloning Kit (Carlsbad, CA)を用いて大腸菌TOP10F’にクローン化した。QuiaPrep Spin Mini Prep Kit を用いてプラスミドを精製した。遺伝子の配向性をPCRで確立した。
【0282】
yqhD欠失を、プラスミドpKD4及びpKD46を用いて、Datsenko and Wanner (Datsenko, et al. 2000 PNAS. 97:6640-6645)に記載されるようにしてLY180に構築した。dkgA欠失をJantama et al. (Jantama et al. 2008 Biotech. Bioeng. 30:881-893)に記載されるようにしてLY180に構築した。yqhD及びdkgAの両方が欠失している二重突然変異体も構築した。yqfAを欠失する再三の試みは成功しなかった。
【0283】
YqhD及びDkgAの精製及び動力学的分析
yqhD及びdkgA遺伝子の両方をNovagen pET−15bベクター内にクローン化して、大腸菌BL21(DE3)内にHis標識化タンパク質として発現した。細胞をIPTGでおよそ1.3gdcw/Lまで生育し、100mMのリン酸緩衝液で洗浄して、Mp Fast Prep-24 (MP Biomedical, solon OH)及び Lysing Matrix B を用いて溶解した。粗製抽出物を0.22μmのPVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルターに通して、更に1mLのHiTrap ニッケルカラムを用いて精製した。精製した酵素を、Thermo Slide-A-Lyser を用いて100mMのリン酸緩衝液中で透析して、Thermo BCA Assay Kit を用いて定量した。YqhD及びDkgAの純度は、SDS−PAGEによって90%より大きいと評価された。SDS−PAGEゲル内にそれぞれに対する一本のバンドが観察された。精製したタンパク質のおよその大きさは、それぞれの予測値43kD及び31kDに一致した。明確なKcat値及び明確なKm値を両方の精製酵素についてNADPH及びフルフラールを用いて測定した。
【0284】
発酵中のインビボフルフラール代謝の全細胞アッセイ
培養物が670mgdcw/L密度まで生育している(対数増殖期中期)発酵槽を用いて全細胞フルフラール代謝を測定した。初期濃度0.5g/Lでフルフラールを添加した。フルフラール及び細胞量を測定するために、培養の0時点並びに15、30、及び60分後にサンプルを採取した。フルフラール代謝の具体的な速度を各試験間隔の間の平均細胞量を用いて算出した。結果を、マイクロモル/分/mg dcwで表した。
【0285】
フルフラール還元のインビトロアッセイ
嫌気的試験管培養物を50g/Lのキシロースを含有しているAM1培地で生育して、対数増殖期中期(0.7〜1.0g dcw/L)に集菌した。細胞を、100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)20mLで1度洗浄し、およそ6.5g dcw/Lでリン酸緩衝液に再懸濁して、MP FastPrep-24 細胞破砕器及び Lysing Matrix B を用いて20分間溶解した。破片を遠心分離(13,000xg、10分)で除去して上澄液を、NADH及びNADPHのフルフラール依存性酸化を測定するために用いた。アッセイは、100mMのリン酸緩衝液(pH7.0)、20mMのフルフラール、及び0.2mMの還元体(NADPH又はNADH)を含んでいた。フルフラール依存性活性(マイクロモル/分/mgタンパク質)を340nmにおける吸光度の変化として測定した。活性の80%以上がNADPH依存性であった。
【0286】
分析
炎イオン化検出器及び15メートルの HP-PlotQ megaboreカラムを備えた Agilent 6890N ガスクロマトグラフ(Palo Alto, CA)を用いてエタノールを測定した。Bausch & Lomb Spectronic 70 分光光度計を用いて550nmにおける光学密度を測定することによって、乾燥細胞重量を見積もった。1.0のOD550nmはおよそ333.3mg dcw/Lに相当する。
【0287】
AM1培地中のフルフラール濃度は、OD248nm及びOD320nmの吸光度によって測定した(Martinez et al. 2000 Biotechnol Prog. 16:637-641)。この方法の精度はHPLC分析で確認した。サトウキビ絞りかすヘミセルロース加水分解物のフルフラール含量は、Agilent LC1100液体クロマトグラフ(屈折率モニター及びUV検出器)及び 移動相として水を用いるAminex HPX-87P イオン排除カラム(BioRad, Hercules, CA)を用いて測定した。
【0288】
PCR産物の創出及びシークエンシング
AM1最少培地で生育した細菌培養物から、Quiagen DNeasy Blood and Tissue kit を用いて、ゲノムDNAを作成した。目的の領域を Quiagen Taq PCR master mix でPCR増幅して、得られたPCR産物を QIAquick PCR purification kit で精製した。2−log DNAラダー(NEB)中のバンドに対応するDNAを定量した後、ABI3130DNAシークエンサー上で分析するために、DNAをフロリダ大学の Sanger sequencing core に提出した。得られた配列データを集めて、Vector NTI ソフトウェア(Invitrogen)を用いて比較した。
【0289】
フルフラール消費アッセイ
350mLのAM1−10%キシロース培地を含有しているフリーカー中で0.66dcw/Lの細胞密度まで生育した培養物を、0.5g/Lにフルフラールを添加する直前、並びに添加の15、30、及び60分後にサンプリングした。細菌細胞を遠心分離で除去した後に培養液中の残存フルフラール濃度を測定した。既に記載されているように、分光光度法を用いた。
【0290】
細菌細胞中におけるルシフェラーゼレポーター活性の測定
適切なレポータープラスミドを担持している大腸菌の培養物をAM1−5%キシロース中で、OD0.2〜0.4まで生育した。フルフラールの添加後、細胞をペレット化し、Quiagen Qproteome 細菌溶解緩衝液中に再懸濁して、−80℃で保管した。溶解物を2分間37℃で解凍して、白色の96ウェルプレートに移した。等量(50μL)の PerkinElmer BriteLite 試薬を各ウェルに添加して、Promega Glomax 96-well 光度計で発光を測定した。
【0291】
バイオスクリーンC生育曲線(BioScreen C growth curves)
フルフラールに対する耐性を、BioScreen C growth curve machine を用いて、規定濃度のフルフラールを含有しているAM1−5%キシロース培地における生育によって評価した。培養物を振盪している37℃の水浴中でODが0.4〜0.6になるまで生育し、OD=0.3に希釈して、次いで350uLの培地を含有している100ウェルハニカムプレートの各ウェルに50μLを植菌した。37℃で65時間の培養期間にわたり、読み取り直前に10秒振とうして、30分間隔で光学密度を測定した。菌株とフルフラール濃度のそれぞれの組み合わせに対して10の複製を用いた。
【0292】
プラスミド構築物
蛍ルシフェラーゼ遺伝子をpBAD24(Guzman et al. 1995 J. Bacteriol. 177: 4121-4130)に転写して、araC遺伝子及びpBADプロモーター領域をLY180中のyqhD遺伝子上流の150−bp領域と置き換えて、プラスミドpLOI4900を構築した。この推定yqhDプロモーター領域をプライマーPCT6及びPCT7を用いてPCR増幅した(表2)。
【0293】
yqhC遺伝子を、プライマーPCT50及びPCT51でLY180ゲノムDNAから増幅し、全yqhC遺伝子と354bp領域上流(天然のプロモーター)を含有するPCR産物を作成した。この断片を、CopyControl PCR クローニングキット(Epicentre)を用いてpCC1にクローン化してpLOI4901を産出した。pCC1ベクターは大腸菌F因子に基づく単一コピープラスミドである。
【0294】
【表2】
【0295】
菌株構築物
LY180中のyqhC遺伝子を、相同組み換えによって欠失した。最初に、pKD4(Datsenko et al. 2000 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6640-6645)由来のカナマイシン(kan)カセットを、yqhCコード領域の両面にある領域と隣接した。プライマーyqhC_ko_revの配列は、yqhCの下流領域との隣接部に一致する領域に特異的であった。yqhC_ko_revは、yqhC遺伝子の3’末端の配列と相同な41−bp尾部を含有していて、kanカセットの末端の19bpにも一致している。yqhCの上流末端に、プライマーPCT48及びpCT49を用いて、yqhCの5’末端からyqhD遺伝子内に伸びている418−bp断片のPCR増幅によって隣接領域を作成した。kanカセットをpKD4から、プライマーPCT46及びPCT47で増幅し、次いでXhoI部位を介してPCT47及びPCT48にライゲーションすることによってPCT48プラスPCT49PCR産物(yqhC隣接上流)に結合した。最後に、このkan上流隣接構築物を最外部プライマーyqhC_ko_rev及びPCT49でPCR増幅して、41−bp下流隣接部及び418−bp上流隣接部の間がkanカセットで構成される線状DNAを作成した。レッドリコンビナーゼによる組み換えを用いてLY180内のyqhC遺伝子をkanカセットで置き換えて、LY180ΔyqhCを作成した。得られた菌株をPCR解析及びシークエンシングで確認した。
【0296】
インビボにおけるフルフラールの還元
先に記載されているようにして(Miller et al. 2009 Appl. Environ. Microbiol. 75:4315-4323)、350mLのAM1−100g/Lキシロース培地を含有しているフレーカー中で細胞密度が0.66g dcw/Lになるまで培養物を生育して、フルフラール(0.5g/L)の添加直前並びに添加後15、30、及び60分後にサンプリングした。遠心分離後の培養液中の残存フルフラールを分光光学方法(Martinez et al. 2000 Biotechnol. Prog. 16: 637-641)を用いて測定した。
【0297】
細菌細胞におけるルシフェラーゼレポーター活性の測定
適切なレポータープラスミドを担持している大腸菌の培養物をAM1−50g/Lキシロース中でOD0.4まで生育した。培養物をサンプリングした後、フルフラールを添加して、再びサンプリングする前5,15又は30分間培養を続けた。非処理及びフルフラール処理細胞をペレット化し、Qiagen Qproteome 細胞溶解緩衝液中に再懸濁して、−80℃で保管した。溶解物を37℃で2分間解凍して、96ウェルプレート(白色)に移した。等容量(50μL)の PerkinElmer BriteLite 試薬を各ウェルに添加した。Promega Glomax 96ウェル照度計を用いて発光を測定した。
【0298】
マイクロアレイ解析
各菌株に対して、4複製培養液(350mL)をOD=1.5(0.66g dcw/L)まで生育してサンプリングした。フルフラール(0.5g/L)を添加して15分培養した後サンプルを採取した。培養液サンプルをドライアイス/エタノール浴中で冷却した。細胞を4℃でペレット化し、RNA Later(Quiagen)に再懸濁して、−80℃で保管した。4発酵物から得た細胞ペレットをプールしてRNA単離(Quiagen RNeasy Mini Kit)に用いた。RNAをDNaseで処理し、再精製して、Agilent Bioanalyzer を用いて品質を評価した。RNAサンプルをNimblegen に付してcDNAに変換し、Cy3で標識化して、大腸菌K12TI8333マイクロアレイチップにハイブリダーゼーションした。このチップは、大腸菌K12のMG1655株に由来する385,000 60−merのプローブを含有していて、遺伝子当たり平均18プローブを有する、各プローブの5複製物を有している。Nimblegen からの正規化発現データを解析のためにArrayStar(DNA star)に取り込んだ。
【0299】
ヌクレオチド配列及びマイクロアレイデータの寄託番号
LY180及びeEMFR9の両方のyqhC−yqhD−dkgA領域のDNA配列は GenBank に寄託されている(受入番号はそれぞれ、GQ478251及びGQ478252)。マイクロアレイのデータは、受入番号GSE17786で、http://ncbi.nlm.nih.gov/geo のGen Expression Omnibus (GEO)に寄託した。
【0300】
AM1及び0.1mMのIPTGを含有している培養試験管(13×100mm)に0.05OD550nmまで植菌して、37℃で培養した。これらを1〜2OD550nmの密度で集菌した。細胞ペレットを100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で1回洗浄して、10OD550nmの密度で緩衝液に再懸濁した。サンプル(1ml)をLysing Matrix B を含有している2mlの試験管に添加して、FastPrep-24 (MP Biomedicals, Solon, OH)を用いて崩壊した(20秒)。NADPHのフラン依存性酸化を、DU 800 分光光度計(Beckman Coulter, Fullerton, CA)を用いて、340nmで測定した。反応物(総容量200μl、37℃)は、50μLの粗製抽出物、0.2mMのNADPH、及び20mMの5−HMFを含有していた。BCAアッセイ(Thermo Scientific, Rockford, IL)を用いてタンパク質を測定した。
【0301】
統計解析
データは、平均値±SD(n≧3)で表している。Graphed Prism ソフトウェア(La Jolla. CA)を用いて、統計比較(両側スチューデントt検定)を行った。
【実施例】
【0302】
実施例1.フルフラール耐性突然変異体の単離及び初期特性化
100g/Lのキシロース及び増大する濃度のフルフラール(0.5g/Lの開始濃度〜1.3g/Lの最終濃度)を有するAM1無機塩培地を含有しているpH制御発酵槽中で54回連続移植した後に、LY180のフルフラール耐性誘導体株を単離した。単一工程(固体培地及び培養液)で1.0g/Lのフルフラールに耐性である突然変異体を直接単離する試みは成功しなかった。連続移植の間に、複合的変化と一致して、段階的に改善されたフルフラール耐性が観察された。得られた菌株、EMFR9は、1.0g/Lのフルフラールの存在下で、フルフラールが存在しない親株LY180と同じ速度で、生育してキシロースを発酵した(図2)。EMFR9による生育及びエタノール生産も、フルフラールの非存在下における親株LY180のそれを上回った。
【0303】
親株LY180への低いフルフラール濃度(0.4g/L)の添加は、生育及びエタノール生産に初期遅滞をもたらした(図2A及び2B)。この遅滞の間に、フルフラールは毒性の低いフルフリルアルコールへ化学的に還元された(Zaldivar et al. 1999. Biotechnol. Bioeng. 65: 24-33; Zaldivar et al. 2000 Biotechnol. Bioeng. 68:524-530)(図2C)。生育及び発酵は、フルフラールの完全除去の直後に3倍以上増大する。LY180による生育及びエタノール生産は72時間の培養にわたって1.0g/Lのフルフラールによって強力に阻害された(図2D及び2E).この期間の間に、LY180が代謝的に活性を保持していることを示して、ほぼ20%のフルフラールが還元された(図2F)。LY180とは対照的に、EMFR9はフルフラールの存在(0.4g/L又は1.0g/L)によって実質的に影響を受けなかった(図2)。フルフラール還元の容量比は、主により大きい細胞集団によって、両フルフラール濃度でLY180よりEMFR9について高かった(図2C及び2F)。このことは更なる実験によって確認された。この実験では当該細菌が、EMFR(mg dcw当たり)によるNADPH依存性フルフラール還元のインビボ速度が親株LY180の速度の約半分であることが分かった(図3)。LY180と対照的に、EMFR9の生育及び発酵は事前にフルフラールの還元的除去を必要としない。EMFR9によって、0.4g/l及び1.0g/Lのフルフラールの両方は生育と共にフルフリルアルコールに還元された。RMFR9による還元はそれぞれ12時間及び18時間後に完了した(図2C及び2F)。
【0304】
実施例2.フルフラール耐性に対する培地構成要素の効果(MIC)
グルコースとは異なって、キシロース発酵中のNADPHの産生には問題があって(White, D. 2000. The Physiology and Biochemistry of Prokaryotes. 2nd edition. Oxford University Press. New York, NY)、異なった培地におけるフルフラールについてMICを測定してNADPH競合仮説を試験する手法を提供する。50g/Lのキシロースを有する無機塩培地(図4A)では、フルフラールの最小阻止濃度(MIC)はLY180(親株)については約1.0g/Lで、突然変異株EMFR9については2.0g/Lであった。キシロースをグルコースで置き換えるとNADPHプールが増大するはずである。この変化(図4B)はフルフラールのMICをLY180に対して50%(1.5g/L)そしてEMFR9に対して25%(2.5g/L)増大した。キシロース−無機塩培地への少量(1.0g/L)の酵母抽出物の添加は、NADPHを生物合成する必要性を減少することが期待できる。この補完(図4C)は親株LY180に対するフルフラールのMICを2倍(2.0g/L)にして、EMFR9に対するMICを25%(2.5g/L)増大した。全ての培地で、EMFR9は親株LY180よりフルフラールに対して抵抗性であった。グルコース(NADPH産生を増大した)及び酵母抽出物(生物合成の必要性を減少した)の両方はフルフラール耐性を増大した。しかしながら、この利益は、EMFR9における低いレベルのフルフラール還元活性と一致して、突然変異株EMFR9に対するより親株、LY180に対して更に顕著であった。
【0305】
ヘミセルロース加水分解物に存在していることが知られている別の3化合物:2−ヒドロキシメチルフルフラール(類縁体、ヘキソース糖の加水分解産物)、フルフリルアルコール(フルフラールの還元産物)、及びシリンガアルデヒド(リグニンの分解産物):についてのMICも試験した。EMFR9は、2−ヒドロキシメチルフルフラールに対して、LY180(2.5g/LのMIC)よりやや耐性(3.0g/LのMIC)であった。両方の菌株は、シリンガアルデヒド(2.0g/LのMIC)及びフルフリルアルコール(15g/LのMIC)に対して同様に感受性であった(データを示していない)。EMFR9において他の化合物に対する増大した耐性が無いことは、フルフラール毒性に対する特異部位又は標的と一致している。
【0306】
実施例3.mRNAマイクロアレイ解析による酸化還元酵素発現の比較
過去の研究は、大腸菌がフルフラールを毒性の低い化合物(フルフリルアルコール)に還元できるNADPH依存性酵素を含有していることを明らかにしているが、遺伝子は1つも特定されていない(Gutierrez et al. 2006. J. Bacteriol. 121:154-164)。親株LY180の生育前のフルフラールの完全還元への依存性、及びEMFRによるこの依存性の減少は更に、フルフラールの感受性に最も重要である酸化還元酵素に関連している。
【0307】
mRNAのマイクロアレイ解析を、フルフラール還元のための候補酸化還元酵素を同定するために用いた。LY180及びEMFR9の培養物を、100g/L(wt/vol)のキシロースを用いるpH制御発酵で対数増殖期中期まで生育した。この比較のために、0.5g/Lのフルフラールの添加15分後にRNAを単離した。全部で12個の公知の推定酸化還元酵素が、約2倍又はそれ以上差があることを見出した(表3)。
【0308】
【表3】
【0309】
EMFR9において低いレベルで発現された4個の酸化還元酵素を同定した(表3)。これら4個の遺伝子のそれぞれをプラスミドにクローン化してEMFR9に形質転換した。プラスミドから発現すると、これらの遺伝子のうちの3個(dkgA、yqhD及びyqfA)がフルフラール耐性を減少することが見出された(図5)。yqhD及びdkgAの発現が最も有害であって、両者はEMFR9においてフルフラールの還元酵素活性を増大することを示した(図3B)。yqfAの発現は、EMFR9のフルフラール還元酵素活性を回復せずに、その生育阻害に対する効果は別の機能と関連しているだろう。生育に対する有害効果はyjjNについて観察されなかった。よって、EMFR9におけるyqhD、dkgA、及びyqfAの発現の減少はフルフラール耐性に対して有益であると推測できる。EMFR9におけるyqhD及びdkgAのサイレンシングは、フルフラール還元中のNADPHの生物合成との競合を減少するだろう。
【0310】
その他の8個の遺伝子を発現するためにLY180からpCR2.1−TOPOへクローン化した。これら8個の酸化還元酵素は親株LY180に比べてEMFR9内の発現を増加した(1.8倍〜4.5倍)。これらの遺伝子をそれぞれ含有しているプラスミドをLY180に形質転換した。しかしながら、これら8個はどれもフルフラール耐性の増大をもたらさなかった(データを示していない)。
【0311】
yqhD、dkgA、及びyqfAサイレングの潜在的重要性を更に試験するために、これらの遺伝子それぞれをLY180から欠失する試みを行った。yqhD及びdkgAの両方の欠失は容易に回復できたが、yqfAで同じ方法は成功しなかった。LY180における、yqhD単独の又はdkgAと組合せた欠失は、EMFR9のそれ(図3A)と同様に、インビボにおいてフルフラール耐性の増大(図6)及びフルフラール還元酵素活性の減少を引き起こした。LY180においてdkgA単独の欠失はインビボでの還元酵素酵素を低下することもフルフラール耐性を増大することもないので、YqhDが、低濃度のフルフラールによる生育阻害に対してより重要に活動していると推測された。両方の遺伝子を欠失した後に最も低いフルフラール還元酵素活性が見出された。
【0312】
実施例4.YqhD」及びDkgAの特性化
酸化還元酵素の間の遺伝子発現の最も大きな変化は、yqhD及びdkgAのサイレンシングであった。YqhD及びDkgAの両者を、his標識化タンパク質としてBL21(λDE3)に発現して、識別可能な均一性にまで精製した。両酵素は、フルフラールのフルフリルアルコールへのNADPH依存性還元を触媒した。フルフラールに対する見掛けのKm値は、YphD(9.0mM)及びDkgA(>130mM)については比較的高かった。このような値では、フルフラールが両酵素の元来の基質であるとは思われない。細胞がフルフラールに透過性であると理論的に仮定すると、YqhD及びDkgAの細胞内活性は、選択のために用いるフルフラール濃度(5〜14mM;0.5〜1.3g/L)の範囲にわたって変化すると期待できる。NADPHに対する見掛けのKm値はYqhD(8μM)及びDkgA(23μM)の両者について非常に低かった。フルフラールの存在下では、両酵素のNADPHに対する高い親和性はNADPHに対する生合成反応と効果的に競合するだろう。経路におけるNADPHの分配は、NADPHに対するKm、NADPHの定常状態のプールサイズ、及び競合する酸化還元酵素活性の相対存在量によって確認できるだろう。
【0313】
実施例5.ヘミセルロースの酸加水分解物に対する耐性
ヘミセルロースの加水分解物は、共同して微生物の生育及び発酵を阻害するように作用する化合物の混合物を含有している(Martinez et al. 2001 Biotechnol. Prog. 17:287-293; Martinez et al. 2000 Biotechnol. Bioengin. 69(5): 526-536; Zaldivar et al. 1999 Biotechnol. Bioeng. 65: 24-33; Zaldivar et al. 1999 Biotechnol. Bioeng. 66: 203-210; Zaldivar et al. 2000. Biotechnol. Bioeng. 68:524-530)。1.4g/Lのフルフラールを含有している中和した加水分解物の希釈物中で生育及び発酵を試験した(図7)。生育及びエタノール生産に対するMIC値(30%加水分解物)は同様であったが、EMFR9は、親のLY180より、3倍の高密度で生育して、20%加水分解物中で10倍を超えてエタノールを多く生産した。フルフラールへの耐性を増大するためのEMFR9の選択には、ヘミセルロース加水分解物に対する耐性の増大を伴っていて、加水分解物毒性の構成要素としてのフルフラールの重要性が確認された。
【0314】
実施例6.天然のフルフラール耐性突然変異体
大腸菌のゲノムにおいてyqhCは、YqhCと反対方向に転写されているyqhD及びdkgA遺伝子と隣接している(図8)。
PCRとDNAシークエンシングの併用による、フルフラール耐性株EMFR9のyqhC領域の分析は、EMFR9がyqhC遺伝子内への挿入配列IS10の自然挿入を含有していることを明らかにした(図8)。RNAのマイクロアレイ解析(図9)及びRNAの定量的リアルタイム逆転写(示していない)に基づくと、yqhCの不活性化はyqhD及びdkgAを下方調節する。
【0315】
セルロース加水分解物の存在下における生育、及び親株LY180と比較してフルフラールに耐性であること(示していない)に基づいて、エタノール生産株MM205を選択した。MM205のyqhC遺伝子及び周辺領域の配列分析は、野生型199アミノ酸のyqhCタンパク質の代わりに予測突然変異タンパク質が215アミノ酸となるような、フレームシフトをもたらす、yqhC遺伝子内に天然の単一A挿入基の存在を明らかにした。1〜188位の残基はMM205yqhCタンパク質では正常であったが、フレームシフトに起因する次の27アミノ酸はタンパク質のC末端にあるその野生型残基とは異なっている。
【0316】
実施例7.yqhC遺伝子の欠失はフルフラールに対する耐性を増大する
LY180内で、全yqhC遺伝子の欠失操作を行った。この構築物において、yqhCオープン・リーディング・フレームを選択可能なカナマイシン耐性カセットと置き換えた。kan−res転写の方向は、隣接yqhD及びdkgA遺伝子と離れて、元のyqhC遺伝子と同じ方向である。
【0317】
BioScreen C 生育曲線器における、異なったフルフラール濃度でのLY180及びLY180ΔyqhCの生育比較は、LY180ΔyqhCが親のLY180より実質的にフルフラール耐性であったことを明らかにした(図10AB)。野生型yqhC遺伝子のプラスミド経由で作成したコピーの、その天然のプロモーターの制御下における、LY180ΔyqhC内への再導入は、フルフラール感受性を親株のLY180と同じレベルに回復した(図10C)。空ベクターpCC1のLY180ΔyqhCへの導入はフルフラール耐性に影響を与えなかった(図10D)。これらの結果は、yqhCタンパク質の非存在がフルフラールに対する耐性の増大をもたらすことと一致する。
【0318】
実施例8.yqhC欠失突然変異体はフルフラール還元の速度を減少する
天然由来フルフラール耐性突然変異株EMFR9はyqhD及びdkgAの両方の発現を減少する。これらの酸化還元酵素のレベルの低下は、フルフラールが存在すると、NADPHプールの枯渇を軽減する。先に述べたように、EMFR9は、その他の特性化又は非特性化突然変異に加えて、yqhCコード配列内に存在するIS10挿入配列を有している。
【0319】
LY180及びLY180ΔyqhCによるフルフラール還元の速度を、フレーカー内のAM1−10%キシロース培地中で規定のODまで2つの株を生育し、フルフラールを0.5g/Lまで添加し、間隔を置いてサンプルを採取して、残存フルフラール濃度を分光光学的に測定することによって、直接比較した。結果(株当たり4つの同一性フレーカーから得た)は、フルフラール還元の速度がLY180と比較してLY180ΔyqhCで低下していることを示して(図11)、これはyqhCの欠失が、NADPHの酸化が同時に起こる、フルフラールをフルフリルアルコールへ正常に還元する酸化還元酵素の下方調節をもたらすことと一致する。
【0320】
実施例9.yqhCの欠失は、フルフラールへの曝露によるyqhDプロモーターの誘発を妨げる
yqhDプロモーターからの転写に対するフルフラールの効果を評価するために、yqhDプロモーターの下流に、蛍ルシフェラーゼレポータを用いてプラスミドpPyqhD−luc(図12)を構築した。pPyqhD−lucを担持しているLY180におけるルシフェラーゼ活性の測定は、フルフラール添加後15分で活性が増大したことを示した(図13)。しかしながら、レポータープラスミドpPyqhD−lucをEMFR9及び更なるフルフラール耐性誘導体EMFR17内に転写すると、フルフラールの添加によるルシフェラーゼの発現は増大せずに(図13)、これらの株はフルフラールが存在すると通常生じるyqhDプロモーター由来の活性を抑制するようになることを示唆した。
【0321】
yqhC欠失のyqhDプロモーター活性に対する効果を、pPyqhD−lucをLY180ΔyqhC内に転写して試験した。得られた結果(図14)は、pPyqhD−lucレポータープラスミド由来のルシフェラーゼの誘発がyqhCの欠失によって大きく減少したことを示した。
【0322】
得られるデータは、yqhCが、フルフラールを包含する、yqhDに対する基質の添加による陽性の(positive)方法で、yqhDの転写を調節することを明らかにしている(図15)。dkgA遺伝子はそれ自身のプロモーターを有している(Gama-Castro et al., 2008 Nucleic Acids Res 36:D120-D124 )にも関わらず、本明細書で示したデータによれば、yqhD及びdkgAは協調的に調節される。
【0323】
実施例10.フルフラール耐性株EMFR9はyqhCのIS10挿入を含有している
大腸菌LY180のフルフラール耐性突然変異株(EMFR9)において2つのNADPH依存性酸化還元酵素(yqhD及びdkgA)のサイレンシングがフルフラール耐性の増大をもたらすことは既に示されている(Miller et al. 2009 Appl. Environ Microbiol 75:4315-4323 )。これらの遺伝子のコード領域に又は直ぐ上流及び下流領域において突然変異は見い出さなかった。第3の隣接遺伝子yqhC(図19)もEMFR内でサイレンシングした。マイクロアレイ分析で、親株LY180におけるフルフラールの添加によってこれら3つの遺伝子は強力に上方調節(>6倍)された(図20A)。
【0324】
上流(yqhC)及び下流(yqhG)遺伝子にシークエンシングを延長した。yqhC遺伝子のPCR増幅は、側面にyqhC由来の9塩基配列TGCCAGGCTのコピーが配置されている、1.3kbのIS10を含有している予想外に大きいPCR産物をもたらした。下流yqhG領域に突然変異は見いだされなかった。大腸菌yqhC遺伝子はyqhDの方向と反対に転写されていて(図19)、DNA結合タンパク質のAraC/XylSファミリーに属する予測転写制御因子をコードする(Gallegos et al. 1997 Microbiol Mol Biol. Rev. 61: 393-410)。これらの幾つかは転写の活性化因子及び抑制因子の両方として作用するものの、その多くは活性化因子である。
【0325】
実施例11.LY180におけるyqhCの欠失はフルフラール耐性を増大した
LY180のyqhC遺伝子をカナマイシン耐性カセットで置き換えてLY180ΔyqhCを作り出した。LY180と欠失株のフルフラール耐性をBioScreen C 生育曲線分析器を用いて比較した。得られたプロット(図21A及びB)は、1.0、1.5及び2g/Lフルフラールにおいて、LY180ΔyqhCが親株よりより耐性であることを明確に示した。フルフラール耐性の変化は、野生型yqhC遺伝子のプラスミド経由コピー(pLOI4901)をその天然のプロモーターとともに導入して、フルフラール感受性を十分回復することによる、yqhCの突然変異によって、引き起こされたことも確認された(図21C)。LY180ΔyqhCに空ベクター(pCC1)を存在させると、フルフラール感受性に影響を与えなかった(図21D)。(EMFR9における)IS10の挿入或いは(LY180ΔyqhCにおける)完全欠失の何れかによるyqhCの突然変異は、フルフラール耐性の増大をもたらした。
【0326】
発酵中のフルフラール還元のインビボでの速度を試験した。LY180株によるフルフラール還元速度(0.042±0.001μモル/分/mgdcw)はLY180ΔyqhC株によるもの(0.025±0.005μモル/分/mgdcw)より有意に高く(68%;p<0.05(5%))、親株のみへのYqhD及びDkgAの導入と一致する。
【0327】
実施例12.yqhDプロモーター(ルシフェラーゼレポーター)の転写調節
蛍ルシフェラーゼレポーターの直ぐ上流にyqhDプロモーター(151bp)を用いてプラスミドpLOI4900を構築した(図22A)。このプラスミドを、親株LY180及びLY180ΔyqhCにおける転写制御を検討するために用いた。LY180(pLOI4900)では、フルフラールの添加(1mM、5mM、及び10mM)が5分以内に明白な、ルシフェラーゼ活性の用量依存性増加をもたらした(図22B)。このプラスミドを内部に持つyqhC欠失株においては、フルフラールに依存する応答は観察されなかった(図22C)。発現の定常状態のレベルが両株で観察されたがLY180ΔyqhCでは低かった。
【0328】
pLOI4900を担持しているEMFR9はLY180ΔyqhC(pLOI4900)のそれと同様の結果をもたらした(図示せず)。フルフラールの非存在下でのルシフェラーゼの基礎レベルは低くて、フルフラールの添加はルシフェラーゼ活性を増大しなかった。pLOI4900の非存在下ではルシフェラーゼ活性は検出されなかった。
【0329】
ヘミセルロースの希酸加水分解物中に存在していることが知られているその他のアルデヒド(Palmqvist et al. 2000 Bioresour. Technol. 74:25-33)も、LY180(pLOI4900)及びLY180ΔyqhC(pLOI4900)を用いて、各種濃度で試験
した。LY180(pLOI4900)において、全てがルシフェラーゼ活性を2〜5倍増大した(データは示されていない)。これらは、アセトアルデヒド(1mM)、プロピオンアルデヒド(1mM)、ブチルアルデヒド(1mM)、5−ヒドロキシメチルフルフラール(1mM)、及び桂皮アルデヒド(0.1mM)を包含していた。メチルグリオキサール(0.1mM)もLY180(pLOI4900)においてルシフェラーゼ活性を増大することが見出された。LY180ΔyqhCにおいて、これらの化合物はどれもルシフェラーゼ活性を増大しなかった。
【0330】
これらの結果を合わせると、YqhCが、yqhDプロモーターからアルデヒド誘発性発現のための必須の、トランス活性転写活性化因子であることを明らかにしている。yqhCの突然変異体(IS10の挿入又は欠失)は、転写におけるアルデヒド誘発性増大を除去した。
【0331】
実施例13.転写レベルに対するyqhC欠失の効果
0.5g/Lのフルフラール添加直前及び15分後にLY180株及びLY180ΔyqhC株から全RNAを調製した。yqhC−yqhD−dkgA領域並びに隣接遺伝子yghB(保存内膜タンパク質)及びyqhG(機能未知)に対する発現結果を図20Bに示す。L180において、yqhC、yqhD、及びdkgA転写産物の発現は、予測通り、フルフラールの添加によって上方調節された。LY180ΔyqhCにおいては、このフルフラール応答は存在しなかった。隣接遺伝子は低レベルで発現して、作用は少なかった。LY180ΔyqhCにおけるyqhCの低レベルの明白な発現は、LY180におけるldhA、adhE、及びfrdBCのような他の遺伝子欠失について観察されたものと類似していて、大腸菌K12チップで得られたハイブリダイゼーションのバックグラウンドレベルを反映していた。これらのデータは、yqhDプロモーターからの転写の陽性調節遺伝子としてのYqhC作用と一致している。
【0332】
yqhDとdkgAの間の遺伝子間領域に広がる転写産物の存在を、yqhD−dkgAギャップに隣接するプライマーを用いて、qPCRで調査した。フルフラール無しで生育したLY180細胞のRNA由来cDNAをテンプレートとして用いた。遺伝子間のギャップを架橋することが期待できる大きさのPCR産物を回収した。その量は、yqhDの内部にあるプライマーを用いて作成したPCR産物のものよりほんの少し少ないだけであった(データは示していない)。従って、yqhDプロモーターからの転写は、隣接dkgA遺伝子に広がっているように見える。dkgA転写産物の量は、yqhD又はyqhD−dkgA遺伝子間領域の何れかで見られる量よりも多く、更なるdkgAプロモーターの存在を示す実験的な証拠(Gama-Castro et al. 2008 Nucleic Acids Res 36: D120-D124)と一致した。
【0333】
YqhCが、yqhC遺伝子に隣接する領域とは別の領域を調節するか否かについての問題は、yqhCの欠失によって異なって発現する更なる遺伝子についてのマイクロアレイデータの全てを検索して対処した。TI8333マイクロアレーチップ上に表された4,237遺伝子についての発現レベルの比較は、フルフラールの非存在下で、LY180とLY180ΔyqhCの間で2倍又はそれ以上異なって発現する遺伝子が合計72個存在することを明らかにした。これらのうち、41個はLY180ΔyqhCにおいて下方調節され、31個は上方調節された。フルフラール(0.5g/L)の存在下で、134個の遺伝子が2倍のレベルで異なって調節された(LY180ΔyqhCにおいて32個が下方調節されて、102個が上方調節された)。両方のデータセットにおいて、合計34個の遺伝子が2倍又はそれ以上発現が異なっていた(両方のセットで24個が下方調節されて、両方のセットで10個が上方調節された)。LY180ΔyqhCにおいて両方の条件下で下方調節された遺伝子は、yqhC、yqhD、dkgA、tauABCD及びssuEADCBオベロン、調節因子cbl及びnac、並びにその他(fimC、mdaB、rspA、ybaY、ybeH、ycdF、ydhP、yeeO、yjfyY、及びymcD)を包含していた。LY180と比較してLY180ΔyqhCにおいて、両方の条件下で2倍又はそれ以上上方調節された遺伝子は、銅の代謝において作用する、cueO、copA、及びcusCFB;並びにchbB、gdhB、hipB、ydeU、及びydeKを包含していた。
【0334】
これら34個の遺伝子の発現レベルは、フルフラールの存在下又は非存在下でLY180とEMFR9(yqhCにIS10挿入)を比較した先のデータセット(Miller et al. 2009 Appl Environ. Microbiol 75: 6132-6141; Miller et al. 2009 Appl. Environ. Microbiol. 75: 4315-4323)において分析した。EMFR9におけるyqhCのIs10不活性化は、yqhC欠失(LY180ΔyqhCにおける)に起因するものと同様な変化をもたらすだろうと結論付けた。試験した全てのデータセットにおいて、yqhD及びdkgAの発現は、フルフラールの非存在下及び存在下の両方で、LY180と比較してEMFR9において一貫して減少していた。フルフラールによるyqhD発現の倍減は、LY180と比較してEMFR9に対して少なくとも6.0倍であって、dkgAについては少なくとも10.6倍であった。しかしながら、LY180と比べたtauABCD及びssuEADCBオベロン、cbl、並びにその他の遺伝子についての2倍又はそれ以上の下方調節は、EMFR9で観察されなかった。LY180ΔyqhCにおいて上方調節された10個の遺伝子はEMFR9において上方調節されなかった。yqhC、yqhD及びdkgA以外の、遺伝子はどれも、機能的YqhCタンパク質の非存在下で一貫して上方又は下方調節されなかった。
【0335】
実施例14.別の細菌属におけるyqhC及び関連遺伝子のオルソログ
大腸菌以外の細菌におけるyqhCオルソログ及びyqhD及びdkgA遺伝子の相対物の存在を、EcoCyc(Keseler et al. 2009 Nucleic Acids Res 37: D464-D470)で入手できる検索用ゲノムによって調査した。大腸菌yqhCのオルソログを含有する46の属のうち40がグラム陰性細菌であった。yqhD及びdkgAに類似している遺伝子とyqhCオルソログとの近接さを EcoCyc マルチゲノムブラウザーを用いて試験した(図23)。全てのグラム陽性菌を包含して、殆どの属(46属のうち34属)はyqhCオルソログの近くに確認しうるyqhD又はdkgAオルソログを含有していなかった(例えば、アシネトバクター sp.及びキサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris))。しかしながら、34属のうち24属は、ゲノムの他の場所にyqhD又はdkAオルソログの一方を含有していた。46属のうち5属はyqhCに加えて隣接yqhDオルソログを含有していたが、dkgAオルソログは含有しておらず(例えば、アエロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)及びビブリオ・パラヘモリチカス(Vibrio parahaemolyticus))、そして1属(サーマトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)、示していない)が隣接yqhDオルソログを含有せずに隣接dkgAオルソログを含有していた。5つの属が大腸菌と類似した配列で3つの遺伝子全てを含有していた。このグループは腸内細菌科に限定されて、エシェリキア属、シゲラ属(Shigella)、サルモネラ属、クレブシエラ属、ペクトバクテリウム属(Pectobacterium)、及びエルシニア属(Yersinia)を包含している。P.アトロセプチカム(P.atrosepticum)における遺伝子の配列は、yqhCオルソログ(ECA0352)とyqhDオルソログ(ECA0350)の間に推定ニトロ還元酵素遺伝子、ECA0351が存在するという点で独特であった。
【0336】
実施例15.EMFR9株は5−HMFに対して増大した耐性を示す
フルフラール耐性突然変異体、EMFR9に存在している突然変異も5−HMFに対する耐性を増大した(図24)。1.0g/Lの5−HMFにおいて、EMFR9による生育及びエタノール生産は5−HMFが存在していないLY180(親株)のそれと同等であった(図24A、24B)。発酵の最初の24時間の間に、細胞生産及びエタノール生産に有害な影響を及ぼさずに、EMFR9によって5−HMFが急速に代謝された。5−HMFのレベルが培養中にゆっくり減少したのにもかかわらず、1.0g/Lの5−HMFによってLY180の生育が完全に阻害された(図24A、24B、及び24C)。植菌なしで、減少は観察されなかった(データは示していない)ので、これは代謝活性の結果であるということが確認された。
【0337】
EMFR9を用いると、エタノール生産及び生育は2.5g/Lの5−HMFの混入によって遅延するが、96時間後に完了した(図24D、24E、及び24F)。この高レベルの5−HMFを伴う細胞及びエタノール生産は、5−HMFなしでのLY180に匹敵した。5−HMFのレベルはEMFR9によって急速にそして完全に減少した。LY180では、5−HMFの代謝は遅くて不完全であった(図24F)。
【0338】
実施例16.5−HMF耐性に対するYqhD及びDkgAの効果
EMFR9におけるフルフラール耐性は、2つのNADPH依存性酸化還元酵素、YqhD及びDkgAのサイレンシングに起因していることが先に明らかにされた(Miller et al. 2009b Appl Environ Microbiol 75: 4315-4323)。これらの活性体をコードする遺伝子をpCR2.1 TOPO内にクローン化し、EMFR9内に転写して、0.1mMのIPTGを用いて誘発した。細胞を採取し、破壊して、5−HMF還元酵素活性について試験した(図25A)。プラスミドからのyqhD及びdkgAの個々の発現は、NADPHの5−HMF依存性酸化の速度を5倍に増大して、YqhD及びDkgAが5−HMFを基質として用いることが確認された。
【0339】
プラスミドからのyqhD及びdkgAの個々の発現は5−HMFに対するEMFRの耐性を減少した(図25B)。プラスミド保持のためのカナマイシンの添加(12.5mg/L)は全ての菌株で5−HMF耐性を減少して、この実験において低濃度の5−HMF(1.0g/L)の使用を必要とした。プラスミドpCR2.1はIPTGの非存在下でクローン化した遺伝子を発現しやすい(Purvis et al. 2005 Appl Environ Microbiol 71:3761-3769)。yqhDの非誘導発現でも5−HMFに対するEMFR9の感受性を回復するのに十分であった。5−HMFによる生育阻害はyqhDの誘導によって更に増大した。dkgAの発現は、EMFR9における5−HMF感受性を保持するためには効果が弱く、誘導を必要とした。これら2つの酸化還元酵素の間の有効性の相違は、NADPHに対するDkgAの23μMと比較してYqhDの低い見掛けKm(8μM)に一致している(Miller et al. 2009b Appl Environ Microbiol. 75: 4315-4323)。
【0340】
LY180からのyqhDの欠失は2.5g/Lの5−HMFに対する耐性を増大した(図25C)。染色体にマーカーが残存している場合の欠失は効果が弱いが、yqhDの不活性化は全ての場合で5−HMF耐性に有益であることが確認された。
【0341】
実施例17.NADPHの利用可能性の増大は5−HMF耐性を増大した
プロトン転座型トランスハイドロゲナーゼpntAB(Keseler et al. 2009 Nucleic Acids Res 37: D464-70)をLY180内で過剰発現して(図26)NADPHの利用可能性を増大した。阻害因子の非存在下で(図26A)、ベクターを有するLY180(対照)及びLY180(pTrc99apntAB)の両方を同じ速度で生育した。IPTG(0.01mM)を用いるLY180(pTrc99a−pntAB)の誘導を5−HMFの非存在下で有害であった。しかしながら、非誘導LY180(pTrc99a pntAB)は、5−HMFの存在下(0.9g/L及び1.8g/L)でベクター対照より早く生育した。pntABの同様な効用がフルフラールを用いて先に観察されている(Miller et al. 2009b)。従って、両方のフランによる生育阻害は、フラン還元に起因して、生合成に必要なNADPHのプールを消耗すると思われる。更に、pntABの過剰発現は、フルフラールの非存在下でも、72時間後の総生育の増大をもたらし、生合成をこれらの条件下でNADPHによって制限できることを示した。
【0342】
硫黄の同化及びシステインの生合成は、NADPHにとって特に高い必要性を有する。システインの補完が、大腸菌LY180におけるフルフラール耐性を増大することは先に示された(Miller et al. 2009a Appl Environ Microbiol 75: 6132-6141)が、5−HMFに対しては有用性が低いことが分かった(図27)。LY180の生育は1g/Lの5−HMFによってある程度阻害されて、100μMのシステインの補完によって完全に回復した。2.5g/Lの5HMFの存在下での生育は、100μM又は1000μMのシステインによって回復しなかった(図27B)。フルフラールとは異なって、システインの補完は5−HMFに対するMICを増大しなかった。
【0343】
均等物
本明細書に記載されている本発明の特定の実施態様の多くの均等物を、当業者は認識し、或いは単に通常の実験程度のものを用いて確認することができるだろう。このような均等物は本発明に包含されることが意図されている。
【0344】
参照による取り込み
本明細書において特定されている全ての刊行物、特許出願及び特許はその全てが参照により明確に本明細書に取り込まれている。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)本出願は、2009年3月5日出願の米国仮特許出願第61/209,334号の優先権を主張し、その開示の全てが参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(政府の支援研究)
本発明は、米国エネルギー省から与えられた、契約番号第DE−FG02−96ER20222、DE−FG36−08GO88142、及びDE−FC36−GO17058による米国政府の支援によってなされた。米国政府は本発明に対してある特定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
多数の発酵産物は、糖を用いて基質としてのリグノセルロース系バイオマスから作ることができる(Hahn-Hagerdal et al. 2006. Trends Biotechnol. 24:549-556; Jarboe et al. 2007 Adv. Biochem. Engin/Biotechnol. 108:237-261, Katahira et al. 2006 Appl. Microbiol. Biotechnol. 72:1136-1143, Tokiwa et al. 2008. Can. J. Chem.86:548-555)。しかしながら、発酵の前に炭化水素ポリマーであるセルロースとヘミセルロースを、化学工程と酵素工程を組み合わせて用いて可溶性の糖に変換しなければならない(Um et al. 2003 Appl Biochem Biotechnol. 105-108:115-125; Wyman et al. 2005. 96:2026-2032)。化学工程は、微生物生体触媒の代謝に対して悪影響があるアルコール、酸、及びアルデヒドのような微量生成物の混合物を生産する副反応を伴う。アルコール類(カテコール、シリンゴール等)については、細胞膜を透過して作用すること及び分子の疎水性とよく相関している毒性が示されている(Zaldivar et al. 2000 Biotechnol. Bioeng. 68:524-530)。有機酸(酢酸塩、ギ酸塩等)は中性形態で膜を通過して細胞質内でイオン化し、プロトン駆動力を破壊して生育を阻止すると考えられている(Palmqvist et al. 2000. Bioresour. Technol. 74:25-33, Zaldivar et al. 1999. Biotechnol. Bioeng. 66: 203-210)。アルデヒドの阻害メカニズムはさらに複雑である。アルデヒドは、直接的な物理的及び代謝的作用に加えて、多くの細胞成分と反応して生成物を形成することができる(Modig et al. 2002 Biochem. J. 363:769-776, Singh et al. 1995 Mutat. Res 337:9-17)。概して、化学的な前処理由来のこれら微量生成物は細胞の生育を遅らせてバイオマス由来の糖類の発酵の速度を落とす(Horvath et al. 2001. Biotechnol. Bioeng. 75:540-549, Palmqvist et al. 2000. Bioresour. Technol. 74:17-24)。
【0004】
フルフラール(ペントース糖類の脱水生成物)には特に重要性がある。フルフラールはリグノセルロース分解における天然の産物である。フルフラールは、酸性条件下でのセルロース系バイオマスの解重合の間に起こるペントース糖類の脱水によっても形成される(Martinez et al. 2001 Biotechnol. Prog. 17:287-293)。この化合物はヘミセルロースシロップの毒性の重要な要因であって、他の化合物の毒性を増強する(Zaldivar et al. 1999. Biotechnol. Bioeng. 65: 24-33)。ヘミセルロースの希釈加水分解物中のヘミセルロース含量が毒性と相関している(Martinez et al., 2000. Biotechnol. Bioengin. 69(5): 526-536)。フルフラールの再添加が毒性を回復させる一方で、石灰の添加(pH10)によるフルフラールの除去は加水分解物を容易に発酵させる(Martinez et al. 2001. Biotechnol Prog 17: 287-293)。フルフラールは、ヘミセルロースの酸加水分解物中に存在していることが知られているその他の化合物の毒性を高めるということも示されている(Zaldivar et al. 1999. Biotechnol. Bioeng. 65: 24-33; Zaldivar et al. 1999 Biotechnol. Bioeng. 66: 203-210; Zaldivar et al. 2000 Biotechnol. Bioeng. 68:524-530)。フルフラールは、DNA構造及び配列を変え(Barciszewski et al. 1997 FEBS letters. 414:457-460, Khan et al., 1995 Cancer Lett. 89:95-99)、糖分解酵素を阻害し(Gorsich et al. 2006 Appl. Microbiol. Biotechnol.71:339-349)、そして糖代謝を遅らせる(Hristozova et al. 2006. Enzyme Microbiol. Technol. 39:1108-1112)ことが報告されている。
【0005】
リグノセルロース系バイオマスは、再生可能な燃料及び化学製品への微生物変換の重要な原料である。発酵の前に、酸、酵素又はこの組み合わせを用いて炭化水素化合物(セルロース及びヘミセルロース)を可溶性の糖に変換しなければならない(Cheng et al. 2008 Biochem. Eng J 38:105-109; Wyman et al. 2005 Bioresour Technol. 96:2026-2032; Um et al. 2003 Appl Biochem Biotechnol 105:115-125)。鉱酸を用いる蒸気前処理の間に、ヘキソース及びペントース糖類の脱水から、それぞれ5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)及びフルフラールが微量であるが、毒性副生成物として生成する(Martinez et al. 2000a Biotechnol Bioeng 69:526-536; Palmqvist and Hahn-Hagerdal 2000b Bioresour Technol 74:25-33)。5−HMFはエタノール生産大腸菌(E.coli:Zaldivar et al. 1999 Biotechnol Bioeng)及びサッカロミセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae:Almeida et al. 2008 Appl Microbiol Biotechnol 78:939-945; Palmqvist and Hahn-Hagerdal 2000a Bioresour Technol 74: 17-24; Taherzadeh et al. 2000 Appl Microbiol Biotechnol 53:701-708)の生育及び発酵を遅らせるということが示されている。
【0006】
高温でpH10の過剰な石灰で処理することによって、ヘミセルロース加水分解物からフランを除去することができる(Martinez et al. 2000a Biotechnol Bioeng 69:526-536)。この処理工程は、セルロース繊維からの加水分解物シロップの効率的な分離、石灰を混合するための特殊な装置、不溶性カルシウム塩からのシロップの分離、及び廃棄処理のための固形廃棄物の作出を必要とする。フラン耐性生体触媒の開発によりこの工程の複雑さの大半を除去できた。幾つかの腸内細菌属(クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)、エシェリキア(Escherichia)、シトロバクター(Citrobacter)、エドワードシエラ(Edwardsiella)、プロテウス(Proteus))及び酵母は、5−HMFを、毒性の少ない化合物である5−ヒドロキシメチルフルフリルアルコールに変換するということが示されている(Boopathy et al. 1993 J Indus Microbiol 11:147-150; Palmqvist and Hahn-Hagerdal 2000a Bioresour Technol 74:17-24; Zaldivar et al. 1999 Biotechnol Bioeng 65:24-33)。S.セルビシエは、5−HMF及びフルフラールを毒性の少ない生成物に還元できる、複数の酸化還元酵素(YGL157W、ADH6、及び突然変異ADH1)を産生するということが示されている(Almeida et al. 2008 Appl Microbiol Biotechnol 78:939-945; Almeida et al. 2009 Appl Microbiol Biotechnol 82: 625-638; Heer et al. 2009 Appl Environ Microbiol doi:10.1128/AEM.01649-9; Liu et al. 2009 Gene 446: 1-10)。これらの遺伝子の増大した発現が5−HMFの幾つかの面に有用であるということが示されているが、フルフラールの最小阻止濃度を増大することは示されていない。Gorisch et al. (2006 Appl Microbiol Biotechnol 71: 339-349) は、S.セルビシエにおいて、フルフラール及び5−HMFへの感受性を増大する、多くの遺伝子不活性化を確認した。1つの遺伝子、ZWF1(グルコース6−リン酸脱水素酵素)の過剰発現はフルフラールに対する耐性を増大した。
【0007】
これらの阻害物質の存在下で発酵生物が機能する能力は広く研究されてきた。サッカロミセス・セルビシエのアルギン酸塩への封入は、ヘミセルロースの酸加水分解物中の発酵を保護して且つ改善するということが示されている(Talebnia et al. 2006 J Biotechnol. 125:377-384)。S.セルビシエの菌株は加水分解物阻害物質に対する改善された耐性を有していると先に記載されている(Almeida et al. 2007. J. Chem. Technol. Biotechnol. 82:340-349, Martin et al. 2007. Bioresour. Technol. 98:1767-1773, Nilsson et al. 2005. Appl. Environ. Microbiol 71:7866-7871)。大腸菌(エシェリキア・コリ、Gutierrez et al. 2006 J. Bacteriol. 121:154-164)S.セルビシエ(Almeida et al. 2008 Appl. Microbiol. Biotechnol. 78:939-945)及びその他の微生物(Boopathy et al. 1993 J. Indust. Microbiol. 11:147-150)は、フルフラールを毒性の少ない産生物であるフルリルアルコールに還元することを触媒する酵素を含有している、ということが示されている(Zaldivar et al., 2000 Biotechnol. Bioeng. 68:524-530)。大腸菌では、フルフラール還元酵素の活性はNADPH依存性であると考えられる(Gutierrez et al. 2006. J. Bacteriol. 121:154-164)。NADPH依存性のフルフラール還元酵素は、他のものも存在するかもしれないが、大腸菌から精製された。5−ヒドロキシメチルフルフラール(ヘキソース糖の脱水産物)を還元する能力があるNADPH依存性酵素が、S.セルビシエにおいて特定化されて、ADH6遺伝子であると確認された(Petersson et al. 2006. YEAST. 23:455-464)。
【0008】
yqhD遺伝子は、プロパンジオールの生産に用いることができる(Nakamura et al. 2003. Current Opinion in Biotechnology. 14:454-459, Zhang et al. 2006 World Journal of Microbiology & Biotechnology. 22:945-952)NADPH依存性アルデヒド酸化還元酵素をコードするということが先に示されている(Sulzenbacher et al. 2004. J. Mol. Biol. 342:489-502)。この遺伝子は活性酸素種による損傷に対する抵抗をもたらすということも示されている(Perez et al. 2008. J. Biol. Chem. 283:7346-7353)。
dkgA遺伝子は、アスコルビン酸の生成における重要な工程である、2,5−ジケト−D−グルコン酸の還元を触媒するということが示されている(Habrych et al. 2002. Biotechnol. Prog. 18:257-2, Yum et al. 1999 Appl. Environ. Microbiol. 65:3341-3346)。この酵素はメチルグリオキサールの還元において機能するとも考えられている(Jeudy er al. 2006. Proteins 62:302-307, Ko et al. 2005. J. Bacteriol 187:5782-5789)。
yqfA遺伝子の機能は知られていないが、脂肪酸代謝に関連している(McCue et al. 2001. Nucleic Acids Res. 29:774-782)酸化還元酵素の膜サブユニットではないかと提案されている(Karp et al. 2007 Nucleic Acids Res. 35:7577-7590)。
【0009】
大腸菌(エシェリキア・コリ)のyqhC遺伝子(b3010)は、DNA結合タンパク質のAraC/XylSファミリーに属する転写調節因子であると予測されている。yqhCの推定機能についての今日までの推論は、AraC/XylSファミリーの推定タンパク質配列と膜との間の類似性のみに基づいている。yqhCは、大腸菌ゲノムにおいて、yqhCと反対の向きに転写されるyqhD及びdkgAに隣接している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の方法は、フルフラール及び/又は5−HMFの存在下で、微生物の成育及びエタノール生産を調節する酵素の同定を可能にする。
従って、フルフラールの存在下で生育してエタノールを生産できる微生物を産生する能力は、代替エネルギー源の産生に極めて重要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は単離された細菌に関し、ここで細菌は参照する細菌と比較するとフルフラールに対する耐性が増大している。
【0012】
一実施態様では、単離された細菌はエタノール生産性である。
【0013】
別の実施態様では、細菌は参照する細菌と比較するとエタノールの生産を増大する。
【0014】
別の実施態様では、参照する細菌と比較するとyqhD遺伝子の発現が減少している。
【0015】
別の実施態様では、参照する細菌の発現と比較すると、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している。
【0016】
別の実施態様では、参照する細菌の発現と比較すると、yqhC遺伝子の発現が減少している。
【0017】
別の実施多様では、yqhD遺伝子が発現されない。
【0018】
別の実施態様では、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子が発現されない。
【0019】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が発現されない。
【0020】
別の実施態様では、参照する細菌と比較するとyqhC遺伝子の発現が減少している。
【0021】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が欠失している。
【0022】
別の実施態様では、参照する細菌と比較するとYqhDタンパク質の活性が減少している。
【0023】
別の実施態様では、参照する細菌と比較するとYqhDタンパク質の活性及びDkgAタンパク質の活性が減少している。
【0024】
別の実施態様では、参照する細菌と比較するとYqhCタンパク質の活性が減少している。
【0025】
別の実施態様では、参照する細菌と比較するとyqhD遺伝子の発現の調節が修正されている。
【0026】
別の実施態様では、参照する細菌における発現と比較すると、yqhD遺伝子の発現及びdkgA遺伝子の発現の調節が修正されている。
【0027】
別の実施態様では、参照する細菌における発現と比較すると、yqhC遺伝子の発現の調節が修正されている。
【0028】
別の実施態様では、参照する細菌と比較すると、yqhC遺伝子の発現が減少している。
【0029】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が欠失している。
【0030】
別の実施態様では、yqhD遺伝子プロモーターの活性に変化がある。
【0031】
別の実施態様では、dkgA遺伝子プロモーターの活性に変化がある。
【0032】
別の実施態様では、アンチセンスRNAの付加によって、YqhD、DkgA及び/又はYqhCタンパク質のレベルが減少している。
【0033】
別の実施態様では、siRNAの付加によって、YqhD、DkgA及び/又はYqhCタンパク質のレベルが減少している。
【0034】
本発明は、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、そして細菌は、フルフラールの存在下で細菌の候補変異株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する変異株を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0035】
本発明は、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、そして細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0036】
別の実施態様では、NADPH依存性フルフラール還元酵素は、YqhD又はDkgAである。
【0037】
別の実施態様では、NADPH依存性フルフラール還元酵素は、YqhD及びDkgAである。
【0038】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhD遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここでは細菌はエタノールを生産できて、細菌は、フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0039】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhD遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここでは細菌はエタノールを生産できて、細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0040】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここでは細菌はエタノールを生産できて、細菌は、フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0041】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここでは細菌はエタノールを生産できて、細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0042】
一実施態様では、yqhC遺伝子の発現が減少している。
【0043】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が欠失している。
【0044】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhC遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここでは細菌はエタノールを生産できて、細菌は、フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0045】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhC遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここでは細菌はエタノールを生産できて、細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0046】
本発明は、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産し、ここで細菌は、yqhD遺伝子の発現を減少すること;フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0047】
本発明は、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産し、ここで細菌は、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現を減少すること;フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0048】
一実施態様では、yqhC遺伝子の発現が減少している。
【0049】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が欠失している。
【0050】
本発明は、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産し、ここで細菌は、yqhC遺伝子の発現を減少すること;フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0051】
本発明は、yqhD遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、yqhD遺伝子の発現を減少すること;フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0052】
本発明は、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現を減少すること;フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0053】
一実施態様では、yqhC遺伝子の発現が減少している。
【0054】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が欠失している。
【0055】
本発明は、yqhC遺伝子の発現が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、yqhC遺伝子の発現を減少すること;フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0056】
本発明は、参照する細菌と比較するとYqhDタンパク質の活性が減少しているか或いは除去されている単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0057】
本発明は、参照する細菌と比較するとYqhDタンパク質の活性が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0058】
本発明は、参照する細菌と比較するとYqhDタンパク質及びDkgAタンパク質の活性が減少しているか或いは消去されている単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0059】
本発明は、参照する細菌と比較するとYqhDタンパク質及びDkgAタンパク質の活性が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0060】
一実施態様では、yqhC遺伝子の発現が減少している。
【0061】
別の実施態様では、yqhC遺伝子が欠失している。
【0062】
本発明は、参照する細菌と比較するとYqhCタンパク質の活性が減少しているか或いは除去されている単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、フルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0063】
本発明は、参照する細菌と比較するとYqhCタンパク質の活性が減少している単離された細菌にも関していて、ここで細菌はエタノールを生産できて、ここで細菌は、増大する濃度のフルフラールの存在下に細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下にエタノールを生産する細菌を選択することを含有してなる工程で調製される。
【0064】
一実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、フルフラールの存在下でのエタノール生産を増大する。
【0065】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)の存在下でのエタノール生産を増大する。
【0066】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、及び桂皮アルデヒドよりなる群から選ばれるアルデヒドの存在下でのエタノール生産を増大する。
【0067】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、メチルグリオキサールの存在下でのエタノール生産を増大する。
【0068】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、フルフラールの還元的除去のレベルが低減しているときの、エタノール生産を増大する。
【0069】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、フルフラール代謝を減少する。
【0070】
別の実施態様では、細菌は検出可能なフルフラール代謝を示さない。
【0071】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、生育を増大している。
【0072】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、フルフラールの存在下での生育を増大している。
【0073】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、フルフラールの存在下での生育を増大し、そしてエタノール生産を増大する。
【0074】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、5−HMFの存在下での生育を増大している。
【0075】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、5−HMFの存在下での生育を増大し、そしてエタノール生産が増大している。
【0076】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、フルフラール還元酵素活性を減少している。
【0077】
別の実施態様では、細菌は、NADPHの5−HMF依存性酸化速度を減少している。
【0078】
別の実施態様では、IS10のyqhC遺伝子への挿入によって、yqhC遺伝子の発現は減少する。
【0079】
別の実施態様では、細菌は、参照する細菌と比較すると、加水分解物の存在下での生育を増大している。
【0080】
別の実施態様では、加水分解物は、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、又はセルロース系バイオマスに由来している。
【0081】
別の実施態様では、細菌はエタノールを主発酵産物として生産する。
【0082】
別の実施態様では、本発明の単離された細菌は嫌気性条件下でエタノールを生産する。
【0083】
別の実施態様では、エタノールは微好気性条件下で生産される。
【0084】
別の実施態様では、細菌は非組み換え体である。
【0085】
別の実施態様では、細菌は組み換え体である。
【0086】
別の実施態様では、細菌はグラム陰性である。
【0087】
別の実施態様では、細菌はグラム陽性である。
【0088】
別の実施態様では、グラム陰性細菌は、アシネトバクター属(Acinetobacter)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、ザイモモナス属(Zymomonas)、エシェリキア属(Escherichia)、ジオバクター属(Geobacter)、シュワネラ属(Shewanella)、サルモネラ属(Salmonella)エンテロバクター属(Enterobacter)及びクレブシエラ属(Klebsiella)よりなる群から選ばれる。
【0089】
別の実施態様では、グラム陽性細菌は、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、オエノコッカス属(Oenococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)及びユーバクテリウム属(Eubacterium)よりなる群から選ばれる。
【0090】
別の実施態様では、細菌は大腸菌(エシェリキア・コリ)である。
【0091】
別の実施態様では、本発明の単離された細菌はクレブシエラ・オキシトカ(K.oxytoca)である。
【0092】
別の実施態様では、細菌は大腸菌EMFR9株である。
【0093】
本発明は、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖を本発明の単離された細菌と接触させ、それによってバイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産することを含有してなる、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法にも関している。
【0094】
本発明は、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖を本発明の単離された細菌と接触させ、それによってバイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産することを含有してなる、フルフラールの存在下にバイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法にも関している。
【0095】
本発明は、本発明の単離された何れかの細菌を含有してなる、キットにも関している。
【0096】
本発明は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50239で表される大腸菌LY180株にも関している。
【0097】
本発明は、本発明のエタノール生産方法によって生産されたエタノールにも関している。
【0098】
本発明は、yqhC遺伝子の非存在下で発現の増大又は減少を示す遺伝子を含有してなるマイクロアレイにも関している。
【0099】
本発明は、図28に示される配列及びそれらの断片及び突然変異体又は変異体を含有してなる単離されたyqhDプロモーターにも関している。
【0100】
本発明は、参照する細菌と比較すると、フルフラール、5−HMF、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、桂皮アルデヒド、及びメチルグリオキサールの内の少なくとも1つの存在下で、遺伝子の発現を調節するためのyqhDプロモーターの使用にも関している。
【0101】
細菌が、参照する細菌と比較するとフルフラールに対する耐性を増大していて、参照する細菌と比較するとNADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少している、単離された細菌。
【0102】
一実施態様では、NADPH依存性酸化還元酵素がYqhDのKm及び/又はDkgAのKmより低いか又は同等のKmを有している、単離された細菌。
【0103】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少させて、フルフラール又は5−HMFに対する細菌の抵抗性又は耐性を増大する方法も提供する。
【0104】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少させて、フルフラール又は5−HMFに対する細菌の抵抗性又は耐性を増大する、NADPH依存性酸化還元酵素を同定する方法も提供する。
【0105】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少させて、フルフラール又は5−HMFの存在下で細菌の生育を増大することにも関している。
【0106】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少させて、フルフラール又は5−HMFの存在下での細菌によるエタノールの生産を増大することにも関している。
【0107】
この方法によると、NADPH依存性酸化還元酵素は、YqhD又はDkgAのKmより低いか同等のKmを有する。
【0108】
一実施態様では、NADPH依存性酸化還元酵素に対する好ましい基質は、NADPHであって、NADHではない。
【0109】
別の実施態様では、NADPH依存性酸化還元酵素に対する基質は、NADPHであって、NADHではない。
【0110】
本発明は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50240で表される大腸菌EMFR9株にも関している。
【0111】
本発明は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50241で表される大腸菌EMFR17株にも関している。
【0112】
本発明は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50242で表される大腸菌EMFR26株にも関している。
【0113】
本発明は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50243で表される大腸菌EMFR35株にも関している。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は、LY180の構築に用いられる線状DNA断片である。
【図2A−C】図2A〜Cは、キシロース100g/LのpH制御発酵におけるフルフラールの効果である。0.4g/Lのフルフラールを用いて発酵(A、B、及びC)。1.0g/Lのフルフラールを用いて発酵(D、E、及びF)。明確にするために、EMFR9及びLY180に対するデータを、それぞれ実線及び波線で結んだ。全てに関する記号:■、LY180とフルフラール;▲、EMFR9とフルフラール;□、フルフラールなしのLY180;△、フルフラールなしのEMFR9。
【図2D−F】図2D〜Fは、キシロース100g/LのpH制御発酵におけるフルフラールの効果である。0.4g/Lのフルフラールを用いて発酵(A、B、及びC)。1.0g/Lのフルフラールを用いて発酵(D、E、及びF)。明確にするために、EMFR9及びLY180に対するデータを、それぞれ実線及び波線で結んだ。全てに関する記号:■、LY180とフルフラール;▲、EMFR9とフルフラール;□、フルフラールなしのLY180;△、フルフラールなしのEMFR9。
【図3】図3A〜Bは、フルフラール還元活性の比較である。 3Aは、発酵中の全細胞のインビボ活性である。LY180及び欠失誘導体を網無し棒で示してある。フルフラール耐性変異体、EMFR9及びyqhDを発現するEMFR9(pLOI4301)を網掛け棒で示してある。 3Bは、クローン化遺伝子を発現するプラスミドを包含しているEMFR9の無細胞抽出物におけるインビトロでのフルフラール還元活性の比較である(順方向、0.1mMのIPTGで誘発)。
【図4】図4A〜Cは、培地組成物のフルフラール耐性に対する効果を示す。 4Aは、キシロース(50g/L)を含有しているAM1培地である。 4Bは、グルコースを含有しているAM1培地である。 4Cは、キシロース及び酵母抽出物(1.0g/L)を含有しているAM1培地である。 全てに関する記号;48時間培養後の、■:LY180(点線)、及び▲:EMFR9(実線)。
【図5】図5A〜Dは、EMFR9における遺伝子発現のフルフラール耐性に対する効果を示す。 図5Aは、dkgAの発現を示す。 図5Bは、yqhDの発現を示す。 図5Cは、yqfAの発現を示す。 図5Dは、yjjNの発現を示す。 全てに関する記号;●、挿入無しpCR2.1コントロール;□、非誘発性発現; △、0.1mMのIPTGで誘発した発現。
【図6】図6は、フルフラール耐性(1.0g/L)存在下における生育に対するLY180の遺伝子欠失の効果を示す(48時間培養)。
【図7】図7A〜Bは、生育(A)及びエタノール生産(B)に対するヘミセルロース加水分解物の効果を示す。全てに関する記号;48時間培養後の、■:LY180(点線);及び▲:EMFR9(実線)。
【図8】図8A〜Cは、大腸菌ゲノムにおけるyqhC、yqhD及びdkgAの配置、並びにyqhCに自然に生じる変異の位置を示す。 図8Aは、LY180(フルフラール−感受性、野生型)を示す。 図8Bは、EMFR9及びEMFR17(フルフラール耐性)を示す。 図8Cは、MM205(フルフラール耐性、加水分解物耐性として選択)を示す。
【図9】図9は、RNAのマイクロアレイ分析で確認したyqhD及びdkgAの発現レベルを示す。Y軸の発現レベルはlog2スケールである。LY180 0及びEMFR9 0は、フルフラール添加前の発現レベルである。LY180 15及びEMFR9 15は、フルフラール添加15分後の発現レベルである。
【図10】図10A〜Dは、フルフラールの存在下でのLY180及びLY180ΔyqhCの生育を示す。発酵期間(時間)に対する細胞密度(光学密度)の関係を示す。 図10Aは、AM1−5%キシロース培地で、0、0.5、1、1.5、及び2g/Lフルフラールと培養したLY180の生育を示す。 図10Bは、LY180ΔyqhCの生育を示す。 図10Cは、単一コピープラスミドpYqhCを野生型yqhC遺伝子とともにその天然プロモーターの下に担持しているLy180ΔyqhCの生育を示す。 図10Dは、空ベクターpCC1を担持しているLy180ΔyqhCの生育を示す。
【図11】図11は、Ly180及びLy180ΔyqhCによるフルフラール消費の速度を示す。
【図12】図12は、蛍ルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流にクローン化しているyqhD遺伝子のプロモーターを有する、プラスミドpPyqhD−lucの構造を示す。
【図13】図13は、フルフラール添加の前及び後のルシフェラーゼの発現を示す。ルシフェラーゼレポータープラスミドpPyqhD−lucをLY180、EMFR9及びEMFR17に導入した。ルシフェラーゼのレベルをフルフラール添加の直前及び添加の15分後に確認した。Y軸上の値は相対発光単位(relative luminescence unit:RLU)である。
【図14】図14は、Ly180及びLy180ΔyqhCにおけるyqhDプロモーターからのルシフェラーゼの発現を示す。
【図15】図15は、YqhDのプロモーターからの転写において提案されるyqhCの調節的役割を示すモデルである。
【図16】図16A〜Bは、YqhDのアミノ酸(A)及び核酸(B)の配列を示す。
【図17】図17A〜Bは、DkgAのアミノ酸(A)及び核酸(B)の配列を示す。
【図18】図18A〜Bは、YqhCのアミノ酸(A)及び核酸(B)の配列を示す。
【図19】図19は、LY180及びEMFR9におけるyqhC−yqhD−dkgAの配置及び周辺領域を示す。エタノール生産性株LY180(上部)及びフルフラール耐性誘導体EMFR9(下部)におけるyqhC、yqhD及びdkgAのコード領域の位置及び方向を示す。LY180について、yqhCの左(metC及びyghB)及びdkgAの右(yqhG、yqhH及びygiQ)についての隣接遺伝子が示されている。EMFR9のyqhC遺伝子内にIS10が存在している。EcoCyc(Keseler et al. 2009 Nucleic Acids Res. 37: D464-D470)で入手可能な情報に基づいて、公知のプロモーターを矢印(実線)で示してある。yqhDの上流のプロモーターを点線の矢印で示してある。
【図20】図20A〜Bは、フルフラール添加後の、LY180、EMFR9及びLY180ΔyqhCからのyqhC−yqhD−dkgA領域中の転写物の発現を示す。転写物レベルは、大腸菌K12マイクロアレイに対する総RNAの発現ハイブリダイゼーションによって確認した。0.5g/Lのフルフラール添加の直前、又は添加の15分後に細胞を採取した。選択遺伝子に対する正規化した発現値は、チップ上に存在する各プローブの5つの複製物から算出したSEMエラーバーと共に示してある。 図20Aは、0.5g/Lのフルフラールで15分処理した、或いは処理していないLY180株及びEMFR9株についての遺伝子yqhC、yqhD及びdkgAと隣接遺伝子yghB及びyqhGの発現レベルを示す。 図20Bは、フルフラールで処理する前及び処理した後のLY180及びLY180ΔyqhC株についてのyqhC、yqhD及びdkgAと隣接遺伝子の発現レベルを示す。
【図21】図21A〜Dは、フルフラールの存在下での生育に対するyqhC欠失の効果を示す。菌株は、50g/Lのキシロースを有し、0、0.5、1、1.5又は2g/Lのフルフラールを含有しているAM1培地で生育した。48時間に渡って30分間隔で光学密度をモニタリングした。試験した菌株は、LY180(A)、LY180ΔyqhC(B)、yqhC+を担持している単一コピープラスミドpLOI4901を含有しているLY180ΔyqhC(C)、及び空ベクトルpCCIを含有しているLy180ΔyqhC(D)であった。
【図22A】図22A〜Cは、蛍ルシフェラーゼレポーターを用いるyqhDプロモーター活性の測定を示す。 図22Aは、yqhDの上流プロモーター領域に融合している蛍ルシフェラーゼ遺伝子を担持しているプラスミドpLOI4900の構造である。
【図22B−C】図22Bは、LY180におけるyqhDプロモーターからの蛍ルシフェラーゼ発現に対するフルフラール添加の効果を示す。pLOI4900を担持しているLY180の培養物をAM1−キシロース(50g/L)中で、OD550=0.4になるまで生育して、0、0.1、0.5、及び1g/Lのフルフラール添加の直前(t=0)及び5、15、及び30分後にサンプルを採取した。ルシフェラーゼ活性を0.4OD50単位当たりの相対発光単位(RLU)として表した。 図22Cは、LY180ΔyqhC/pLOI4900中のyqhDプロモーターからの蛍ルシフェラーゼ発現を示す。条件及び記号は22Bの通りである。
【図23】図23は、選択した細菌のゲノムにおけるyqhCオルソログの配置を示す。yqhCの周辺遺伝子の配置を大腸菌K12(最終行)、及びyqhCオルソログを含有している選択した属について示している。各ゲノムのyqhCオルソログは太線の輪郭及びクロスハッチングを有している。存在する場合yghDオルソログは遺伝子の上に括弧内「yghD」として、dkgAオルソログは(dkgA)として示されている。遺伝子の下の数字はゲノム中の座標を示す。ゲノムの配置及びオルソログの検出は、EcoCycマルチゲノムブラウザーを用いて作成した。
【図24】図24A〜Fは、嫌気的生育及び発酵に対する5−HMFの効果を示す。細胞を、キシロース(100g/L)を有するAM1無機塩培地中で生育した。 図24Aは、1.0g/Lの5−HMFで生育している間の細胞量を示す。 図24Bは、1.0g/Lの5−HMFと発酵している間のエタノール生産を示す。 図24Cは、発酵中の5−HMF(1.0g/L)の還元を示す。 図24Dは、2.5g/Lの5−HMFで生育している間の細胞量を示す。 図24Eは、2.5g/Lの5−HMFと発酵している間のエタノール生産を示す。 図24Fは、発酵中の5−HMF(2.5g/L)の還元を示す。 比較のために5−HMF無しでの並行発酵が図A及びBに含まれている(点線)。全てのデータは標準誤差を有する平均値としてプロットされている(n=3)。全てに関する記号:□、LY180;及び●、EMFR9。
【図25】図25A〜Cは、5−HMFのインビトロ還元及び5−HMF耐性に対するYqhD及びFkgAの効果を示す。 図25Aは、インビトロにおける5−HMF還元に対する比活性度を示す。活性は溶解細胞抽出物(2mMのNADPH、20mMの5−HMF)中で測定した。 図25Bは、EMFR9(耐性変異体)の細胞収率に対する、プラスミドからのyqhD及びdkgA発現の効果を示している。実験は、50g/Lのキシロース及び1.0g/Lの5−HMFを含有するAM1培地を用いて試験管培養で実施した(48時間培養)。プラスミド保持のためのカナマイシンの封入が5−HMF耐性を低下することに注目されたい。誘発(Ind.)は0.1mMのIPTGと生育したものである。 図25Cは、LY180(親株)の細胞収率に対するyqhD及びdkgA欠失の効果を示す。実験は、50g/Lのキシロース及び2.5g/Lの5−HMFを含有するAM1培地を用いて試験管培養で実施した(48時間培養)。全てのデータは標準誤差を有する平均値としてプロットされている(n=4)。
【図26】図26A〜Cは、5−HMF耐性に対するプラスミドからのpntAB発現の効果を示す。実験は、Bioscreen C生育曲線分析器と50g/Lのキシロース及び指示されるように5−HMFを含有しているAM1培地を用いて実施した。全てのデータは標準誤差を有する平均値としてプロットされている(n=10)。明確にするために、点を結ぶことを省略してある。 図26Aは、補完していない。 図26Bは、0.9g/Lの5−HMFで補完してある。 図26Cは、1.8g/Lの5−HMFで補完してある。全てに関する記号:△、LY180(pTrc99a−対照);○、LY180(pTrc99a−pntAB)誘発されていない;●、LY180(pTrc99a−pntAB)0.01mMのIPTGで誘発されている。
【図27】図27は、LY180の5−HMF耐性に対するL−システインの効果を示す。実験は、50g/Lのキシロース及び5−HMFを含有するAM1培地を用いて試験管培養で実施した(24時間培養)。培養液は、指示されるようにフィルターで滅菌したL−システインで補完した。全てのデータは標準誤差を有する平均値としてプロットされている(n=4)。 図27Aは、1.0g/Lの5−HMFを含有している。 図27Bは、2.0g/Lの5−HMFを含有している。
【図28】図28は、yqhD及びdkgAについてのプロモータの方向及び配列を示す。
【図29A−1】図29は、LY180(図A)及びEMFR9(図B)由来のyqhC−yqhD−dkgA領域を表す。
【図29A−2】図29は、LY180(図A)及びEMFR9(図B)由来のyqhC−yqhD−dkgA領域を表す。
【図29A−3】図29は、LY180(図A)及びEMFR9(図B)由来のyqhC−yqhD−dkgA領域を表す。
【図29A−4】図29は、LY180(図A)及びEMFR9(図B)由来のyqhC−yqhD−dkgA領域を表す。
【図29B−1】図29は、LY180(図A)及びEMFR9(図B)由来のyqhC−yqhD−dkgA領域を表す。
【図29B−2】図29は、LY180(図A)及びEMFR9(図B)由来のyqhC−yqhD−dkgA領域を表す。
【発明を実施するための形態】
【0115】
I.定義
本明細書で用いられる「単離された」は、他の細菌による汚染を部分的に受けるか又は全く受けていないことを意味する。単離された細菌は、単離された細菌の特性又は機能に影響を及ぼさない他の細菌の少量の存在下に生存できる。単離された細菌は一般に、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%純粋であろう。本発明による単離された細菌は少なくとも98%又は少なくとも99%純粋であることが好ましい。
【0116】
本明細書で用いられる「細菌」は、「非組み換え細菌」、「組み換え細菌」及び「突然変異細菌」を包含してもよい。
【0117】
本明細書で用いられる「非組み換え細菌」は、異種ポリヌクレオチド配列を含有していなく、そして本発明の組成物及び方法を用いて修正するのに適している、例えば形質転換できる、例えば異種ポリヌクレオチド配列を組み込むことができる、例えば遺伝子操作に適している、細菌細胞を包含する。この用語は、もともと形質転換されている細胞の子孫を包含することを意図している。特定の実施態様では、細胞はグラム陰性細菌或いはグラム陽性細胞である。
【0118】
細菌に関して本明細書で用いられる「組み換え体」は、異種ポリヌクレオチド配列を含有しているか、或いは天然のポリヌクレオチド配列が変異又は欠失するように処理されている細菌細胞を意味する。
【0119】
細菌に関して本明細書で用いられる「突然変異体」は、本明細書の下記に定義するような参照細菌と同一ではない細菌細胞を意味する。
【0120】
「突然変異」細菌は、「組み換え」細菌を包含する。
【0121】
本明細書で用いられる「エタノール生産性」は、炭化水素から主発酵産物としてエタノールを生産する細菌の能力を意味する。この用語は、天然のエタノール生産性有機物及び天然の或いは誘発された突然変異を有するエタノール生産性有機物、又は遺伝子変化を伴うエタノール生産性有機物を包含することを意図している。
【0122】
用語「非エタノール生産性」は細菌が炭化水素から主発酵産物としてエタノールを生産する能力がないことを意味する。この用語は、非ガス性発酵産物全体の約40%未満を含有している微量の発酵産物としてエタノールを生産する微生物を包含することを意図している。
【0123】
本明細書で用いられる「エタノール生産」は、主発酵産物としての炭化水素からのエタノールの生産を意味する。
【0124】
本発明で用いられる「エタノールを生産できる」は、本明細書で定義されているように「エタノール生産」ができることを意味する。
【0125】
用語「発酵すること」及び「発酵」は、複合糖類の分解又は解重合、その糖残基のエタノール、酢酸エステル及びコハク酸エステルへの生物変換を意味する。この用語は、それによってエタノールが、特に発酵の主産物として、炭化水素から生産される(例えば、溶解物の又は精製したポリペプチド混合物の、例えば、細胞の又は無細胞の)酵素工程を包含することを意図している。
【0126】
用語「主発酵産物」及び「主要な発酵産物」は、本明細書で同義に用いられていて、非ガス性産物全体の約50%以上を含有している非ガス性の発酵産物を包含することを意図している。主発酵産物は、最も大量の非ガス性産物である。本発明のある特定の実施態様では、主発酵産物はエタノールである。
【0127】
本明細書で用いられる用語「微量発酵産物」は、非ガス性産物全体の40%未満を含有している非ガス性の発酵産物を包含することを意図している。本発明のある特定の実施態様では、微量発酵産物はエタノールである。
【0128】
用語「糖」は、糖分子(複数も)を含有している炭化水素源の何れもを包含することを意図している。このような糖は、本発明の産物及び方法に従う発酵による、解重合(所望により)及び次のアセトアルデヒドとそれに続くエタノールへの生物変換のための可能性のある糖源である。糖源は、澱粉、ほとんどの植物における貯蔵燃料の主要形態、ヘミセルロース、及びセルロース、剛体細胞壁の主要細胞外構造成分、並びに植物の線維及び木質の組織を包含する。この用語は、単糖とも呼ばれるモノサッカリド、オリゴサッカリド及びポリサッカリドを包含することを意図している。ある特定の実施態様では、糖は例えば、グルコース、キシロース、アラビノース、マンノース、ガラクトース、スクロース、及びラクトースを包含する。別の実施態様では、糖はグルコースである。
【0129】
本明細書で用いられる「YqhD」は、NADPH依存性アルデヒド酸化還元酵素を意味する。yqhDは、NADPH依存性アルデヒド酸化還元酵素遺伝子を示し、ここで用語YqhDは、yqhD遺伝子産物を示す。yqhD遺伝子及びYqhDポリペプチドの核酸及びアミノ酸の配列は図16に示されている。
【0130】
本明細書で用いられる「DkgA」は、2,5−ジケト−D−グルコン酸の還元を触媒する酵素を意味する。DkgAは、メチルグリオキサールの還元において機能を果たす酵素も意味する。dkgAは、2,5−ジケト−D−グルコン酸の還元を触媒する酵素に対応する遺伝子を示し、ここで用語DkgAはdkgA遺伝子産物を示す。dkgA遺伝子及びDkgAポリペプチドの核酸及びアミノ酸の配列は図17に示されている。
【0131】
本明細書で用いられる「YqhC」は、転写制御因子、転写制御因子タンパク質、又は転写制御遺伝子から発現される遺伝子産物を意味する。yqhCは転写制御因子に対応する遺伝子を示し、ここで用語YqhCはyqhC遺伝子産物を示す。yqhC遺伝子及びYqhCポリペプチドの核酸及びアミノ酸の配列は図18に示されている。
【0132】
本明細書で用いられる「突然変異核酸分子」又は「突然変異遺伝子」は、ポリペプチド又は突然変異体によってコードされ得るポリペプチドが野生型の核酸分子又は遺伝子にコードされるポリペプチドとは異なる活性又は特性を示すように、或いは突然変異遺伝子からポリペプチドが産生されないように、少なくとも1つの修正(例えば、置換、挿入、欠失)を含んでいるヌクレオチド配列を有している核酸分子又は遺伝子を包含することを意図している。
【0133】
核酸分子又は遺伝子に関連して本明細書で用いられる「突然変異」は、核酸又は遺伝子の欠失、或いは核酸又は遺伝子の発現レベルの減少を意味し、ここで欠失及び発現の減少が、核酸分子又は遺伝子によってコードされ得るポリペプチドの欠失又はその発現の減少をもたらす。突然変異は、突然変異体によってコードされ得るポリペプチドが野生型の核酸分子又は遺伝子によってコードされるポリペプチドとは異なる活性又は特性を示すように少なくとも1つの修正(例えば、置換、挿入、欠失)を含んでいるヌクレオチド配列を有している核酸分子又は遺伝子も意味する。
【0134】
本明細書で用いられる「突然変異タンパク質」又は「突然変異タンパク質又はアミノ酸配列」は、ポリペプチド、又は突然変異アミノ酸配列にコードされ得るポリペプチドが野生型のアミノ酸配列にコードされるポリペプチドとは異なる活性又は特性を示すように、少なくとも1つの修正(例えば、置換、挿入、欠失)を含んでいるアミノ酸配列を包含することを意図している。
【0135】
タンパク質又はアミノ酸配列に関連して本明細書で用いられる「突然変異」は、アミノ酸配列のアミノ酸の欠失、或いはアミノ酸配列の発現レベルの減少を意味し、ここで欠失又は発現の減少がアミノ酸配列によってコードされ得るポリペプチドの欠失又は発現の減少をもたらす。突然変異は、ポリペプチド、又は突然変異体にコードされ得るポリペプチドが野生型のアミノ酸配列にコードされるポリペプチドとは異なる活性又は特性を示すように、少なくとも1つの修正(例えば、置換、挿入、欠失)を含んでいるアミノ酸配列を有しているタンパク質又はアミノ酸配列も意味する。
【0136】
本明細書で用いられる「断片」又は「サブシーケンス」は、親の又は参照する核酸配列又はアミノ酸配列の部分、或いは親の又は参照する配列、ポリペプチド又は遺伝子をコードするか又は生物学的機能又は特性を保持しているポリペプチド又は遺伝子の部分を包含することを意図している。
【0137】
本明細書で用いられる「部分」は、親の又は参照する核酸配列、アミノ酸配列、ポリペプチド又は遺伝子の少なくとも50%(例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%)を意味する。
【0138】
本明細書で用いられる「保持する」(例えば、生物学的機能又は特性を保持する)は、親の又は参照する配列、ポリペプチド又は遺伝子の機能又は特性の少なくとも50%(例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%)を示すことを意味する。
【0139】
「突然変異細菌」は、本明細書の上で定義した「突然変異」を含有している細菌を包含する。
【0140】
本明細書で用いられる「参照」又は「参照細菌」は、少なくとも、野生型細菌又は親細菌を包含する。
【0141】
本明細書で用いられる「野生型」は、有機体又は菌株の典型的な形態、例えば突然変異が存在しない中で自然に生じる細菌、遺伝子又は特性を意味する。「野生型」は、自然個体群における最も一般的な表現型である。野生型は遺伝子型及び表現型の参照標準である。
【0142】
本明細書で用いられる「親の」又は「親細菌」は、目的の細菌を生じる細菌を示す。
【0143】
本明細書で用いられる「遺伝子」は、酵素又はその他のポリペプチド分子の合成を誘導できる、例えば、コード配列、例えば、ポリペプチド、それらのサブシーケンス又は断片をコードする、連続するオープン・リーディング・フレーム(ORF)を含有できるか、或いはそれ自体が有機体内で機能的な、核酸である。有機体内の遺伝子は、本明細書で定義されているオペロンに群生していて、オペロンは遺伝子間DNAによって他の遺伝子及び/又はオペロンから分離している。オペロンに含まれている個々の遺伝子は、個々の遺伝子の間で、遺伝子間DNAなしで、重なり合うことができる。さらに、用語「遺伝子」は、選択された目的のための特異的遺伝子を包含することを意図している。遺伝子は、例えば、エピソームに保持されたプラスミド、又はゲノムに安定に組み込まれているプラスミド(又はその断片)のように、宿主細胞に対して内因性であるか、又は組み換え技術によって宿主細胞に導入することができる。異種遺伝子は、細胞に導入されていて、そしてその細胞由来ではない遺伝子である。
【0144】
用語「核酸」は、核酸分子、例えば、ポリペプチド、そのサブシーケンス又は断片をコードするオープン・リーディング・フレームを包含するポリヌクレオチドを包含することを意図していて、更に、非コード調節配列、及びイントロンを包含することができる。更に、この用語は、機能座に位置する1つ又はそれ以上の遺伝子を包含することを意図している。その上、この用語は、選択された目的のための特異的遺伝子を包含することを意図している。
一実施態様では、用語遺伝子は、フルフラール還元酵素、例えば、これに限定されないが、yqhD及びdkgAを包含するNADPH依存性フルフラール還元酵素をコードする何れの遺伝子も包含する。
一実施態様では、遺伝子又はポリヌクレオチド断片は、炭化水素のエタノールへの生物変換の少なくとも一工程に関連している。
有機体内の遺伝子は、本明細書で定義されているオペロンに群生していて、オペロンは遺伝子間DNAによって他の遺伝子及び/又はオペロンから分離している。
【0145】
本明細書で用いられる「増加すること」又は「増加する」又は「増加した」は、例えば、参照細菌と比較して、フルフラール耐性である細菌におけるyqhD、dkgA及び/又はyqhC遺伝子の発現のレベルと比較して、少なくとも5%、例えば、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、100%又はそれ以上増加することを示す。
【0146】
本明細書で用いられる「増加すること」又は「増加する」又は「増加した」は、例えば、参照細菌と比較して、フルフラール耐性である細菌におけるyqhD、dkgA及び/又はyqhC遺伝子の発現のレベルを比較すると、少なくとも1倍、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000倍又はそれ以上増加することも意味する。
【0147】
本明細書で用いられる「減少すること」又は「減少する」又は「減少した」或いは「縮小した」又は「縮小すること」は、例えば、参照細菌と比較して、フルフラール耐性である細菌におけるyqhD、dkgA及び/又はyqhC遺伝子の発現のレベルと比較して、少なくとも5%、例えば、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、100%又はそれ以上減少すること又は縮小することを示す。
【0148】
本明細書で用いられる「減少すること」又は「減少する」又は「減少した」或いは「縮小した」又は「縮小すること」は、例えば、参照細菌と比較して、フルフラール耐性である細菌におけるyqhD、dkgA及び/又はyqhC遺伝子の発現のレベルを比較すると、少なくとも1倍、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、1000倍又はそれ以上減少又は縮小することも意味する。
【0149】
「減少した」又は「縮小した」は、活性、発現等のレベルが検出可能ではない、例えば、yqhD、dkgA及び/又はyqhC遺伝子の発現レベルが検出可能ではない、或いはYqhD、DkgA及び/又はYqhCタンパク質の活性レベルが検出可能ではないように除去されたことも意味する。
【0150】
本明細書で用いられる「活性」は、遺伝子の活性、例えば遺伝子の翻訳のレベルを示す。「活性」は、mRNAの活性、例えば、mRNAの複写のレベルも示す。「活性」は、タンパク質、例えば、YqhD又はDkgA又はYqhCの活性も示す。
【0151】
「活性の増加」は、活性の速度及び/又はレベルの増加を包含する。
【0152】
本明細書で用いられる、「yqhDの発現」又は「dkgAの発現」又は「yqhCの発現」にある「発現」は、それぞれに、yqhD遺伝子、dkgA遺伝子、及びyqhC遺伝子のタンパク質産物の発現を示す。
【0153】
本明細書で用いられる、「yqhDの発現」又は「dkgAの発現」又は「yqhCの発現」にある「「発現」は、それぞれに、yqhD遺伝子、dkgA遺伝子、及びyqhC遺伝子に対応するmRNA転写の検出可能なレベルの発現も示す。
【0154】
それが発現レベルを示す場合の「修正すること」は、目的の、例えば、yqhD、dkgA又はyqhCの、遺伝子、mRNA、又はタンパク質、の発現を減少させること又は増加させることを意味する。
【0155】
それが活性を示す場合の「修正すること」は、目的のタンパク質、例えば、YqhD、DkgA又はYqhCの活性を減少させること又は増加させることを意味する。
【0156】
本明細書で用いられる「発現されない」は、目的の、例えば、yqhD、dkgA又はyqhCの遺伝子或いはmRNAの産物のレベルが検出不能であることを意味する。
【0157】
本明細書で用いられる「除去する」は、検出不能なレベルまで減少させることを意味する。
【0158】
本明細書で用いられる「フルフラールに対する耐性」は、フルフラールの存在下、例えば、0.1g/L又はそれ以上(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10g/L又はそれ以上)の濃度のフルフラールの存在下で、生育或いはエタノールを生産する突然変異エタノール生産細菌の能力を意味する。フルフラールに対する耐性は、フルフラールの存在下における生育又はエタノール生産が、野生型細菌又は親細菌による生育又はエタノール生産のレベルと比較して増加しているレベルにあるエタノール生産細菌の能力も意味する。
【0159】
本明細書で用いられるフルフラールの存在に適用する場合の「〜の存在下で」は、少なくとも0.1g/L又はそれ以上(例えば、(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10g/L又はそれ以上)のフルフラールの存在下における細菌の保持を意味する。
【0160】
本明細書で用いられるフルフラールの非存在に適用する場合の「〜の非存在下で」は、検出不能なレベルを包含する、0.1g/L未満のフルフラールを含有している培地中で細菌を保持することを意味する。
【0161】
本明細書で用いられる「フルフラールの還元的除去」は、フルフラール還元酵素、例えば、YqhD及びDkgAを限定無しに包含している、NADPH依存性フルフラール還元酵素の作用によるフルフラールの除去を意味する。
【0162】
本明細書で用いられる「フルフラール代謝」は、フルフラールの、フルフラールアルコール、フロ酸、2−ケトグルタル酸、及び酢酸の何れか1つへの分解を意味する。
【0163】
本明細書で用いられる「5−HMF」は、5−ヒドロキシメチルフルフラールを意味する。
【0164】
本明細書で用いられる「5−HMFに対する耐性」は、5−HMFの存在下、例えば、0.1g/L又はそれ以上(例えば、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10g/L又はそれ以上)の濃度の5−HMFの存在下で、生育或いはエタノールを生産する突然変異エタノール生産細菌の能力を意味する。5−HMFに対する耐性は、5−HMFの存在下における生育又はエタノール生産が、野生型細菌又は親細菌による生育又はエタノール生産のレベルと比較して増加しているレベルにあるエタノール生産細菌の能力も意味する。
【0165】
本明細書で用いられる5−HMFの存在に適用する場合の「〜の存在下で」は、少なくとも0.1g/L又はそれ以上(例えば、(例えば、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10g/L又はそれ以上)の5−HMF存在下における細菌の保持を意味する。
【0166】
本明細書で用いられる5−HMFの非存在に適用する場合の「〜の非存在下で」は、検出不能なレベルを包含する、0.1g/L又はそれ未満(例えば、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.01、0.005、0.001g/L又はそれ未満)の5−HMFを含有している培地中で細菌を保持することを意味する。
【0167】
本明細書で用いられる「生育」は、細菌の数又は量が時間とともに、上で定義したように、増大することを意味する。
【0168】
本明細書で用いられる「フルフラール還元酵素」は、毒性のフルフラールを毒性の低いフルフラールアルコールに変換する酵素、例えば、YqhD及びDkgAを限定無しに包含している、NADPH−依存性フルフラール還元酵素、を意味する。
【0169】
本明細書で用いられる「ヘミセルロース加水分解物」は、これに限定されないが、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、又はセルロース系バイオマスに由来している加水分解物を包含する。
【0170】
本明細書で用いられる「に由来している」は、〜が起源であるということを意味する。
【0171】
用語「グラム陰性細菌」は、当該技術分野で承認されているこの用語の定義を包含することを意図している。グラム陰性菌の例は、アシネトバクター属、グルコノバクター属、ザイモモナス属、エシェリキア属、ジオバクター属、シュワネラ属、サルモネラ属、エンテロバクター属及びクレブシエラ属を包含する。
【0172】
用語「グラム陽性細菌」は、当該技術分野で承認されているこの用語の定義を包含することを意図している。グラム陽性菌の例は、バチルス属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、オエノコッカス属、ストレプトコッカス属及びユーバクテリウム属を包含する。
【0173】
用語「アミノ酸」は、通常タンパク質に見られる20個のアルファアミノ酸を包含することを意図している。塩基性に荷電しているアミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン及びリジンを包含する。中性荷電のアミノ酸は、アラニン、システイン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンを包含する。酸性アミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を包含する。
【0174】
本明細書で用いられる「選択すること」は、同定された細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産することを確認する過程を示す。
【0175】
本明細書で用いられる「同定すること」は、細菌を評価して、細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産することを確認する過程を示す。
【0176】
本明細書で用いられる「フルフラールの濃度を増大すること」は、0〜5g/Lの増大、例えば、1μg/Lの増大、1mg/Lの増大又は1g/Lの増大を意味する。
【0177】
本明細書で用いられる「選択すること」は、同定された細菌が5−HMFの存在下でエタノールを生産することを確認する過程を示す。
【0178】
本明細書で用いられる「同定すること」は、細菌を評価して、細菌が5−HMFの存在下でエタノールを生産することを確認する過程を示す。
【0179】
本明細書で用いられる「5−HMFの濃度を増大すること」は、0〜5g/Lの増大、例えば、1μg/Lの増大、1mg/Lの増大又は1g/Lの増大を意味する。
【0180】
本明細書で用いられる「プロモーターの調節」は、プロモーターの活性を、本明細書に定義するように、増大又は減少することを示す。
【0181】
本明細書で用いられる「欠失している」又は「ノックアウトしている」又は「不活化している」は、検出不能なレベルまでの減少を意味する。遺伝子を示す場合の「欠失している」又は「ノックアウトしている」又は「不活化している」は、当該技術分野で公知のアッセイ、例えば、PCR又はウェスタンブロット分析によって遺伝子がもはや検出できないように、又は当該技術分野で公知のアッセイ、例えば、PCR又はウェスタンブロット分析によって遺伝子に対応するmRNAがもはや検出できないように、或いは当該技術分野で公知のアッセイ、例えば、ウェスタンブロット分析、SDS−PAGE又は酵素によるアッセイによってコードされるタンパク質がもはや検出できないか又は機能しないように、遺伝子を除去することを意味する。
【0182】
本明細書で用いられる「欠失した」又は「ノックアウトした」又は「不活化した」遺伝子は、当該技術分野で公知の方法によって、発現のレベルが検出不能である遺伝子を意味する。
【0183】
遺伝子を不活化する方法は、siRNAを用いるRNA干渉、又はアンチセンス方法を包含する。
【0184】
本明細書で用いる用語「siRNA」は、それぞれの螺旋がRNA、RNA類縁体又はRNA及びDNAを含有している二重螺旋の核酸を示す。通常、siRNAのアンチセンス螺旋は、遺伝子の発現を減少又は不活化するために、目的の遺伝子/RNAの標的配列と十分に相補的である。
【0185】
「アンチセンス」とは、標的核酸配列に対して相補性を有しているヌクレオチド配列を意味する。
【0186】
RNAsは遺伝子の直接的産物であって、これらの低分子RNAsは、特異的標的RNAsと結合できて、それらの活性を増大するか或いは減少する。特に、アンチセンス螺旋は相補性mRNAに結合することによって、タンパク質の産生を阻止する。
【0187】
本開示では、「含有する」、「含有している」、「含んでいる」及び「有している」などは、米国特許法がそれらに帰している制約の無い意味を有していて、「包含する」、「包含している」などを意味する。
【0188】
II.細菌
本発明は、フルフラール及び/又は5−HMFに対して耐性な細菌に関している。本発明は、非組み換え細菌、及び組み換え細菌の両方を提供する。
【0189】
本発明は、参照する細菌と比較すると、フルフラール及び/又は5−HMFに対して増大した耐性を有する単離された細菌を提供する。本発明の細菌は、エタノール生産性でありそして/又は参照する細菌と比較すると増大したエタノール生産性を示す細菌を包含する。
【0190】
一態様では、yqhD、yqhC及び/又はdkgAの発現が、参照する細菌における発現と比較すると、本発明の細菌において減少又は除去されている。
【0191】
これに限定されないが、参照する細菌と比較してyqhD、yqhC及び/又はdkgAの発現を調節するプロモータを修正することを包含している、当該技術分野で公知の方法によって、発現が減少する。例えば、これに限定されないが、プロモーターの欠失、異なったプロモーターによるプロモーターの置き換え、プロモーターの修正(例えば、核酸を挿入、置換又は除去して、或いはプロモーター中の調節要素又はモチーフを挿入又は除去して)を包含している、当該技術分野で認められている方法によって、プロモーターは修正される。
【0192】
一実施態様では、発現は、yqhC遺伝子を修正又は欠失することにより減少又は除去される。
【0193】
別の態様では、本発明の細菌において、YqhD、YqhC及び/又はDkgAタンパク質の活性は、参照する細菌におけるYqhD、YqhC及び/又はDkgAタンパク質の活性と比較して、減少又は修正される。これに限定されないが、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の修正(例えば、遺伝子をコードする配列において核酸又はアミノ酸を挿入、置換又は除去することによって)を包含している、当該技術分野で公知の方法によって、活性は減少又は修正される。
【0194】
本発明は、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の発現が、参照する細菌におけるyqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の発現と比較すると、減少していて、そしてyqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の調節が、参照する細菌におけるyqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の調節と比較すると、修正されている細菌も提供する。これに限定されないが、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の修正(例えば、遺伝子をコードする配列において核酸又はアミノ酸を挿入、置換又は除去することによって)を包含している、当該技術分野で公知の方法によって、発現は減少又は修正される。
【0195】
本発明は、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子が、参照する細菌と比較すると、不活化又はノックアウトされている細菌を提供する。
【0196】
これに限定されないが、アンチセンス阻害又はアンチセンス転写のメカニズムを包含している当該技術分野で公知の何れのメカニズムによっても、遺伝子発現を改変することができる。
【0197】
本発明は、これに限定されないが、参照する細菌と比較して、異なったプロモーターの制御下又は追加プロモーターの制御下での、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の配置を包含している、当該技術分野において公知の方法によって、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の調節を改変する方法を提供する。
【0198】
本発明は、これに限定されないが、参照する細菌と比較して、異なった調節タンパク質の制御下又は追加の調節タンパク質の制御下での、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の配置を包含している、当該技術分野において公知の方法によって、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の調節を改変する方法を提供する。
一実施態様では、調節タンパク質は抑制因子である。
別の実施態様では、調節タンパク質は誘導因子である。
【0199】
本発明は、参照する細菌と比較して、yqhC遺伝子を改変又は欠失することによって、yqhD、又はyqhDとdkgAの調節を、調節又は改変する方法も提供する。
【0200】
本発明は、参照する細菌と比較してフルフラール及び/又は5−HMFに対する耐性が増大している細菌も提供し、そしてここでは、当該細菌はフルフラール及び/又は5−HMFの存在下で参照する細菌と比較してエタノール生産を増大している。
【0201】
一態様では、本発明の細菌は、参照する細菌と比較してフルフラールの還元的除去が減少しているか存在していない場合に、参照する細菌と比較してエタノール生産を増大している。
【0202】
別の態様では、本発明の細菌は、参照する細菌と比較して、フルフラール代謝を減少しているか或いは除去している。
【0203】
本発明は、フルフラールに対する耐性が増大していて、さらに;1)参照する細菌と比較して、フルフラールの存在下又は非存在下で、生育が増大している;2)参照する細菌と比較して、生育が増大していてエタノール生産が増大している;3)参照する細菌と比較して、フルフラールの存在下で、生育が増大していてエタノール生産が増大している;4)参照する細菌と比較して、フルフラール還元酵素の活性が減少している;5)参照する細菌と比較して、加水分解産物の存在下で、生育が増大している;及び6)参照する細菌と比較して、エタノール生産が増大している:ことの少なくとも一つを示す、細菌を提供する。
【0204】
本発明は、5−HMFに対する耐性が増大していて、さらに;1)参照する細菌と比較して、5−HMFの存在下又は非存在下で、生育が増大している;2)参照する細菌と比較して、生育が増大していてエタノール生産が増大している;3)参照する細菌と比較して、5−HMFの存在下で、生育が増大していてエタノール生産が増大している;4)参照する細菌と比較して、5−HMF還元酵素の活性が減少している;5)参照する細菌と比較して、加水分解産物の存在下で、生育が増大している;及び6)参照する細菌と比較して、エタノール生産が増大している:ことの少なくとも一つを示す、細菌を提供する。
【0205】
本発明は、これに限定されないが、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、又はセルロース系バイオマス由来の加水分解物を包含している、多種の加水分解物を提供する。
【0206】
本発明は、フルフラールに対する耐性が減少している細菌も提供し、そこで、細菌は、エタノールを主発酵産物として生産することができ、そこで随意に主発酵産物は嫌気性又は微好気性条件下で生産される。
【0207】
本発明は、参照する細菌の発現と比較してyqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の発現が減少して、ここで細菌がフルフラールの存在下又は非存在下においてエタノールを生産できる、細菌も提供する。
【0208】
これに限定されないが、当該参照細菌と比較して遺伝子発現を調節するプロモーターを改変することを包含する当該技術分野で公知の方法によって、又は参照する細菌と比較してyqhC遺伝子を改変又は欠失することによって、yqhD、又はyqhDとdkgA遺伝子の発現が減少する。
【0209】
本発明は、参照する細菌と比較してyqhC遺伝子の発現が減少していて、そして細菌がフルフラールの存在下又は非存在下においてエタノールを生産できる、細菌も提供する。
【0210】
一態様では、本発明は単離された細菌を提供し、そこではyqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子の発現が減少しているか又は発現されず、そして細菌はフルフラールの存在下又は非存在下においてエタノールを生産する。本発明の細菌は、1)参照する細菌と比較して、フルフラールの存在下で増大したエタノール生産及び増大した生育;2)参照する細菌と比較して、フルフラールの存在下で増大したエタノール生産及び増大した生育;3)主発酵産物としてエタノールの産生、ここで随意に主発酵産物は嫌気性又は微好気性条件下で生産される;及び4)主発酵産物としてエタノールの産生、ここで随意に主発酵産物は嫌気性又は微好気性条件下で生産される;の少なくとも1つを示してもよい。
【0211】
一態様では、本発明は単離された細菌を提供して、そこではyqhC遺伝子の発現が減少又は除去されている。
【0212】
本発明は、YqhD又はYqhD及びDkgAタンパク質の活性が、参照する細菌における活性と比較すると、減少又は除去されていて、そして細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産できる、細菌を提供する。
【0213】
本発明は、YqhCの活性が、参照する細菌における活性と比較すると、減少又は除去されていて、そして細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産できる、細菌も提供する。
【0214】
別の態様では、yqhD又はyqhD及びdkgA遺伝子の発現が、参照する細菌におけるyqhD又はyqhD及びdkgA遺伝子の発現と比較すると、減少していて、そして細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産できる、細菌を提供する。
【0215】
本発明は、yqhD、又はyqhDとdkgA遺伝子の調節が、参照する細菌における調節と比較して、改変されていて、そして細菌はフルフラールの存在下でエタノールを生産できる、単離された細菌も提供する。
【0216】
本発明は、yqhD、yqhC及び/又はdkgA遺伝子が、参照する細菌と比較すると、不活性化されているか又はノックアウトしていて、そして細菌はフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、単離された細菌も提供する。
【0217】
本発明は、yqhC遺伝子が、参照する細菌と比較すると、不活性化されているか又はノックアウトしていて、そして細菌はフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、単離された細菌を提供する。
【0218】
本発明は、yqhD又はyqhD及びdkgA遺伝子の調節が、参照する細菌と比較すると、改変されていて、そして細菌はエタノールを生産でき、エタノールの生産は随意にフルフラールの存在下で行われる、単離された細菌も提供する。
【0219】
yqhC遺伝子の調節が、参照する細菌と比較すると、改変されていて、そして細菌はエタノールを生産でき、エタノールの生産は随意にフルフラールの存在下で行われる、単離された細菌も提供する。
【0220】
一実施態様では、yqhD又はyqhD及びdkgA遺伝子の調節は、yqhD又はyqhD及びdkgA遺伝子を、参照する細菌と比較して、異なったプロモータの制御下又は追加のプロモーターの制御下に置くことによって、或いはyqhC遺伝子を改変又は欠失することによって、改変される。
【0221】
一実施態様では、yqhD、又はyqhDとdkgA遺伝子の調節は、yqhD、又はyqhDとdkgA遺伝子を、参照する細菌と比較して、異なった調節タンパク質の制御下又は追加の調節タンパク質の制御下に置くことによって、或いはyqhC遺伝子を改変又は欠失することによって、改変される。一実施態様では、調節タンパク質は抑制因子である。これに代わる実施態様では、調節タンパク質は誘導因子である。
【0222】
発現はアンチセンス阻害又はアンチセンス転写の方法によっても減少する。
【0223】
本発明の細菌は多種の方法で生産される。
【0224】
当該細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産できる、NADPH依存性フルフラール還元酵素の発現活性が減少している単離された細菌は、工程:フルフラールの存在下又は非存在下で細菌の候補突然変異株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する突然変異体を選択すること:を含有してなる工程によって調製される。
【0225】
或いは、細菌がフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、NADPH依存性フルフラール還元酵素の発現活性が減少している単離された細菌は、細菌の候補株を増大する濃度のフルフラールの存在下で生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択することによって調製される。
【0226】
NADPH依存性フルフラール還元酵素は、これに限定されないが、YqhD又はYqhDとDkgAを包含するNADPH依存性フルフラール還元酵素の何れかであってよい。
【0227】
細菌がフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、yqhD又はyqhDとdkgA遺伝子の発現が、参照する細菌と比較すると、減少している単離された細菌は、工程:フルフラールの存在下で細菌の候補突然変異株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する突然変異体を選択すること:或いは、細菌の候補株を増大する濃度のフルフラールの存在下で生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:を含有してなる工程によって調製される。
【0228】
本発明は、yqhC遺伝子の発現を減少するか又はyqhC遺伝子を改変又は欠失する工程を含有する、細菌を調製する方法も提供する。
【0229】
細菌がフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、NADPH依存性フルフラール還元酵素の発現活性が減少している単離された細菌は、工程:yqhD又はyqhDとdkgAの発現を減少すること;細菌の候補株をフルフラールの存在下で生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:を含有してなる方法によって調製される。
【0230】
当該細菌がフルフラールの存在下でエタノールを生産できる、yqhD遺伝子の発現が減少しているか又はyqhD及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌は、工程:yqhD又はYyqhDとdkgAの発現を減少すること;細菌の候補株をフルフラールの存在下で生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:を含有してなる方法によって調製される。
【0231】
当該細菌がフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、YqhD又はYqhDとDkgAタンパク質の活性が、参照する細菌における活性と比較して、減少又は除去されている単離された細菌は、工程:フルフラールの存在下で細菌の候補突然変異株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する突然変異体を選択すること:或いは、増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:を含有してなる方法によって調製される。
【0232】
遺伝子の発現は、これに限定されないが、遺伝子のノックアウト又は遺伝子のサイレンシングを包含する当該技術分野で公知の方法によって減少する。
【0233】
当該細菌がフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、yqhD又はyqhDとdkgA遺伝子が、参照する細菌と比較して、不活性化又はノックアウトしている単離された細菌は、工程:フルフラールの存在下で細菌の候補突然変異株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する突然変異体を選択すること:或いは増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:を含有してなる方法によって調製される。
【0234】
細菌がフルフラールの存在下又は非存在下でエタノールを生産できる、yqhD又はyqhDとdkgA遺伝子の調節が、参照する細菌と比較して、修正されている単離された細菌は、工程:フルフラールの存在下で細菌の候補突然変異株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する突然変異体を選択すること:或いは増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及びフルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:を含有してなる方法によって調製される。
【0235】
本発明の方法によれば、調節は、これに限定されないが、yqhD又はyqhDとdkgA遺伝子を、参照する細菌と比較して、異なったプロモーターの制御下又は追加のプロモーターの制御下に置くことを包含する、当該技術分野で公知の各種方法によって修正される。
本発明の方法によれば、調節は、これに限定されないが、yqhD又はyqhDとdkgA遺伝子を、参照する細菌と比較して、異なった調節タンパク質の制御下又は追加の調節タンパク質の制御下に置くことを包含する、当該技術分野で公知の各種方法によって修正される。一実施態様では、調節タンパク質は抑制因子である。これに代わる実施態様では、調節タンパク質は誘導因子である。
本発明は、yqhC遺伝子を、参照する細菌と比較して、修正又は欠失することによるyqhD又はyqhDとdkgA遺伝子の調節も提供する。
【0236】
本発明は、これに限定されないが、アンチセンス転写を包含する当該技術分野で公知の何れかの方法を用いて、yqhD又はyqhDとdkgA遺伝子をサイレンシングした本発明の細菌を調製する方法も提供する。
【0237】
本発明の細菌は、非組み換え型又は組み換え型である。
【0238】
一実施態様では、細菌は主発酵産物としてエタノールを生産することができ、ここで主発酵産物は随意に、嫌気性又は微好気性条件下で生産される。
【0239】
本発明の細菌は、グラム陰性細菌及びグラム陽性細菌よりなる群から選ばれ、ここで、グラム陰性細菌は、アシネトバクター属、グルコノバクター属、ザイモモナス属、エシェリキア属、ジオバクター属、シュワネラ属、サルモネラ属、エンテロバクター属及びクレブシエラ属よりなる群から選ばれて、グラム陽性細菌は、バチルス属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、オエノコッカス属、ストレプトコッカス属及びユーバクテリウム属よりなる群から選ばれる。
【0240】
一態様では、本発明の細菌は大腸菌である。
【0241】
別の態様では、本発明の細菌はクレブシエラ・オキシトカである。
【0242】
別の態様では、本発明の細菌は大腸菌EMFR9株である。
【0243】
別の態様では、本発明の細菌は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50240で表される大腸菌EMFR9株である。
【0244】
別の態様では、本発明の細菌は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50239で表される大腸菌LY180株である。
【0245】
別の態様では、本発明の細菌は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50241で表される大腸菌EMFR17株である。
【0246】
別の態様では、本発明の細菌は、Agricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50242で表される大腸菌EMFR26株又はAgricultural Research Culture Collection に寄託された寄託番号NRRL B−50243で表される大腸菌EMFR35株である。
【0247】
III.エタノールを生産する方法
別の態様では、本発明はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法を提供する。方法は、それによってオリゴ糖源からエタノールを生産するために、オリゴ糖を上記のような本発明の非組み換え型細菌又は宿主細胞と接触させることを含有する。方法の特定の実施態様では、オリゴ糖は、リグノセルロース、ヘミセルロース、セルロース、ペクチン及びこれらの何れかの組み合わせよりなる群から選ばれる。
【0248】
別の態様では、本発明は、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源を本発明の単離された細菌と接触させることによって、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産することを含有してなる、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法を提供する。
【0249】
別の態様では、本発明は、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源を本発明の単離された細菌と接触させることによって、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産することを含有してなる、フルフラールの存在下でバイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法を提供する。
【0250】
本発明は、本発明の方法によって生産されたエタノールも提供する。
【0251】
本発明の宿主細胞は、嫌気性条件下でエタノール生産のレベルが低いという特性を有している。野生型の大腸菌は嫌気的生育の間にエタノールと酢酸塩を1:1の比で生産する。生育の静止期の間に、野生型の大腸菌は主産物として乳酸塩を生産して、総発酵産物におけるエタノールの画分は約20%である。これらの発酵の全てにおける産物は多種の酸を含有しているので、混合酸発酵という用語に結び付いている。
【0252】
一般に、発酵条件は、産生宿主細胞株の最大生育動態を促進する最適なpH及び温度、並びに培養によって産生する酵素の触媒条件をもたらすように選択される(Doran et al., (1993) Biotechnol. Progress. 9:533-538)。例えば、クレブシエラ、例えばP2株については、最適条件は35〜37℃及びpH5.0〜pH5.4の間であると確認された。これらの条件下では、外から加えられた真菌のエンドグルカナーゼ及びエクソグルカナーゼさえも、長時間にわたって極めて安定で機能を続ける。別の条件は実施例で検討されている。更に、本発明の所定の発酵反応を最適化するためには、当該技術分野で公知の技術を用いて、通常の実験のみが必要であることを、当業者は理解できるだろう。例えば、米国特許第5,424,202号及び第5,916,787号を参照されたい、これらは参照により、明確に本明細書に取り込まれている。
【0253】
更に別の態様では、本発明は、上記のような本発明の非組み換え型細菌又は宿主細胞、及び本明細書に記載されている方法及び工程に従ってエタノールを生産するための使用説明書を含有してなる、キットを提供する。一実施態様では、キットは糖源を含有している。
【0254】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少することによって、細菌のフルフラール又は5−HMFに対する抵抗性又は耐性を増大する方法も提供する。
【0255】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少することによって、細菌のフルフラール又は5−HMFに対する抵抗性又は耐性を増大するNADPH依存性酸化還元酵素を同定する方法も提供する。
【0256】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少することによって、フルフラール又は5−HMFの存在下で細菌の生育を増大することにも関している。
【0257】
本発明は、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性を減少することによって、フルフラール又は5−HMFの存在下で細菌によるエタノール生産を増大することにも関している。
【0258】
本方法によると、NADPH依存性酸化還元酵素は、YqhD又はDkgAのKmより小さいか又は同等のKmを有している。
【0259】
一実施態様では、NADPH依存性酸化還元酵素に対する好ましい基質はNADPHであってNADHではない。
【0260】
別の実施態様では、NADPH依存性酸化還元酵素に対する基質はNADPHであってNADHではない。
【0261】
YqhDのKmは約2〜32μM、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、31又は32μMである。一実施態様では、YqhDのKmはおよそ4〜24である。別の実施態様では、YqhDのKmはおよそ6〜16μMである。別の実施態様では、YqhDのKmは8μMである。
【0262】
DkgAのKmは約6〜92μM、例えば、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91又は92μMである。一実施態様では、DkgAのKmはおよそ12〜70である。別の実施態様では、dkgAのKmはおよそ18〜50μMである。別の実施態様では、DkgA(YqhD)のKmは23μMである。
【0263】
IV.使用方法
本発明は、フルフラール及び/又は5−HMFに対して増大した耐性を有している細菌を提供する。細菌は、エタノールを生産するために、そして特に、フルフラールの存在下又は非存在下に、オリゴ糖を本発明の細菌と接触させ、それによってオリゴ糖源からエタノールを生産することによるという、オリゴ糖源からエタノールを生産するために、用いることができる。
【0264】
本発明は、フルフラールの存在下又は非存在下で、オリゴ糖源からエタノールを生産するためのキットも提供し、そこでキットは使用説明書及び、随意に、包装手段を包含している。
【0265】
V.実験
本発明を、限定と見なしてはならない、以下の実施例によって更に説明する。特に明記しない限り、実施例を通して以下の材料及び方法が用いられる。
【0266】
材料及び方法
菌株、培地及び生育条件
本研究で用いられる菌株及びプラスミドを表1に載せてある。プラスミド及び菌株の構築はL培地(Miller 1992 A short course in bacterial genetics. CSHL Press. Plainview, New York)を用いて行った。必要に応じて抗生物質を含めた。温度条件付きプラスミドは30℃で生育して、その他のものは37℃で生育した。エタノール生産性菌株は、固体培地には20g/Lのキシロースを、そして発酵実験で用いた液体培地には50g/L又はそれ以上のキシロースを補完したAM1無機塩培地(Martinez et al. 2007 Biotechnol. Lett. 29:397-404)中で保持した。菌株大腸菌LY168株(Jarboe et al. 2007. Adv. Biochem. Engin/Biotechnol. 108:237-261)はKO11の誘導体であって、本研究の出発点としての役割を果たした。菌株大腸菌W(ATCC9637)が、最初に大腸菌Bの誘導体であると報告された(Ohta et al. 1991. Appl. Environ. Microbiol. 57:893-900)KO11に対する親株であることに注目されたい。
【0267】
【表1−1】
【0268】
【表1−2】
【0269】
【表1−3】
【0270】
【表1−4】
【0271】
本研究で用いた菌株及びプラスミドは先に記載されている(Miller et al. 2009a Appl Environ Microbiol 75: 6132-6141; Miller et al. 2009b Appl Environ Microbiol 75: 4315-4323)。これらはLY180(大腸菌のエタノール生産性誘導体)、EMFR9(LY180のフルフラール耐性誘導体)、LY180ΔyqhD、LY180ΔdkgA、LY180ΔyqhDΔdkgA、yqhDを含有しているpLOI4301を包含する。dkgAを含有しているプラスミドpLOI4303(Miller et al. 2009b Appl Environ Microbiol 75: 4315-4323)及びpntABを含有しているpLOI4316(Miller et al. 2009a Appl Environ Microbiol 75: 6132-6141)も用いた。培養物は、20g/Lのキシロース(固体培地)、50g/Lのキシロース(バイオスクリーンC生育分析器及び試験管培養)、又は100g/Lのキシロース(pH制御発酵)を含有しているAM1最少培地(Martinez et al. 2007 Biotechnol. Lett. 29:397-404)中、37℃で生育した。
【0272】
5−HMFに対する耐性は、4mlのAM1及び5−HMFを含有している13×100mmの封管を用いて、表示してあるようにして試験した。適切な場合には、プラスミド保持のために抗生物質を含有させた。試験管に0.05 OD550nmの初期密度で植菌した。48時間培養(60rpm)した後、Spectronic 20Dと分光光度計(Thermo, Waltham,MA)を用いて生育を測定した。フラン耐性に対するpntABの効果を試験するために、ウェル当たり400μlのAM1(及び5−HMF又はフルフラール)を含有しているマルチウェルプレートに上記のように植菌した。Bioscreen C 生育分析器(Oy Growth Curves, Helsinki, Finland)を用いて、OD(420−580nm バンド幅)を72時間にわたって測定した。
【0273】
発酵試験のために、LY180及びEMFR9の種培養物を350mlのAM1培地を含有している小発酵槽中(37℃、200rpm)で1晩生育した。2NのKOHを自動添加して培養液をpH6.5に維持した。対数増殖期中期(mid-log phase)に達した時点に、試験発酵槽に0.1 OD550nmの初期細胞密度(33mg乾燥細胞重量/L)で植菌した。細胞量(OD550nm)及びフランのレベルを12時間間隔で既述(Martinez et al. 2000b Biotechnol Prog 16: 637-641)のようにモニタリングした。
【0274】
pH制御発酵槽を用いてインビボのフラン還元を測定した。培養物がおよそ1 OD550nmに達したときに10% w/vの貯蔵溶液を用いてフランを添加した。細胞量及び5−HMFを、0、15、30、及び60分後に測定した。
【0275】
LY180株の構築
LY168株は、ヘミセルロース加水分解物中の糖の発酵に関して既に記載されている(Jarboe et al., 2007 Adv. Biochem. Engin/Biotechnol. 108:237-261)。基質領域(乳糖利用の回復、エンドグルカナーゼの組み込み、及びセロビオース利用の組み込み)を改善するために幾つかの修正が行われてLY180が得られた。組み込みに用いた線状DNA断片は図1に示されていて、GenBank に寄託されている。lacZlacYlacAcynX’を含有している断片A(Datsenko et al. 2000 PNAS 97:6640-6645, Jantama et al. 2008 Biotech. Bioeng. 30:881-893)を用いる二重相同組み換えによって、lacYのFRT領域を天然大腸菌ATCC9637と置き換えた。組み込み株を乳糖発酵に関して直接選択した。frdA::Zmfrg celYEc(Erwinia chrysanthemi)の下流にあるfrdB領域を、2段階法を用いる二重相同組み換え(Jantama et al. 2008 Biotech. Bioeng. 30:881-893)によって削除した。断片B(frdB’、cat−sacBカセット、及びfrdC’)をクロラムフェニコール耐性に対する選択を最初に組み込んだ。次いで、cat−sacBカセットを、蔗糖に対する耐性を選択して、frdA’、Zymomonas mobilis プロモーター断片、E.crysanthemi celY、及びfrdC’からなる断片Cと置き換えた。この置換体もFRT部位を欠失していた。セロビオース利用(casAB)をコードする Klevsiella oxytoca 遺伝子を、2段階法を用いる二重相同組み換え(Jantama et al. 2008 Biotech. Bioeng. 30:881-893)によって、1dhAに組み込んだ。1dhAのFRT部位をクロラムフェニコール耐性に対する選択と置き換えるために、断片D(1dhA’、cat−sacBカセット、casAB、及び’1dhA)を用いた。次いで、cat−sacBカセットを、1dhA’、Z. mobilis 由来のプロモーター断片、及びK.oxytoca casA’よりなる断片Eと置き換えた。セロビオース発酵に対する直接選択によって、組み込み株を単離した。表現型及びPCR産物の分析によって、全ての構築物を確認した。
【0276】
フルフラール耐性菌の生育に基づく選択
100g/Lのキシロース及び0.5g/Lのフルフラールで補完した350mLのAM1を含有している500ml容器にLY180を植菌した(初期接種、50mgdcw/L、37℃、150rpm、pH6.5)。培養液は、24時間間隔で、又は細胞量が330mgdcw/Lを越えたときに、新しい発酵槽内へ連続希釈した。フルフラールは生育を許容して1.3g/Lまで漸増した。54回連続移植後に、耐性菌を単離してEMFR9と命名した。
【0277】
発酵中のフルフラール耐性及び代謝
フルフラール耐性を、小発酵槽(37℃、150rpm、pH6.5、可動範囲350ml)中で、100g/Lのキシロースを含有しているAM1培地(Martinez et al. 2007 Biotechnol. Lett. 29:397-404)を用いて比較した。種培養物を、およそ33mgdcw/Lに植菌した。サンプルを定期的に採取して細胞量、エタノール、及びフルフラールを測定した。
【0278】
フルフラール毒性(MIC)も、4mlのAM1培養液と50g/L(wt/vol)のろ過滅菌した糖、フルフラール、及びその他の補完物を含有する試験管培養(13×100mm)を用いて試験した。培養物を17mg/dcw/Lの初期密度で植菌した。37℃で24時間及び48時間培養した後に細胞量を測定した。
【0279】
加水分解物毒性の比較
サトウキビ絞りかすのヘミセルロース加水分解物を、高温及び高圧で希硫酸を用いて製造し、そして Verenium Corporation (Boston, MA)から入手した。この加水分解物は82g/Lの総糖(主にキシロース)、1.4g/Lのフルフラール、及びその他の成分を含有していた。加水分解物を、AM1培地の無機成分で補完し、45%のKOHを用いてpH6.5に調節して、完全AM1(80g/Lのキシロース含有)で希釈した。加水分解物の希釈サンプルを13mm×100mmの培養試験管に分配し(4mLずつ)、17gdcw/Lの初期細胞密度で植菌して、37℃で培養した。細胞量(遠心分離及び培養液に再懸濁後)及びエタノール濃度を48時間後に測定した。
【0280】
マイクロアレイ解析
培養物を、670mg dcw/Lの密度まで小発酵槽で生育した。フルフラール(0.5g/L)を添加して、培養を集菌15分前まで続けた。全てのサンプルを直ちにエタノール−ドライアイス浴中で冷却し、遠心分離で集菌し、Quiagen RNA Later (Valencia, CA)に再懸濁して、精製するまで−80℃で保管した。Quiagen RNeasy Mini Kit を用いてRNAを精製して、マイクロアレイ比較のためにNimbleGen (Madison, WI)に送った。ArrayStar ソフトウェア(DNA Star, Madison, WI)でデータを解析した。
【0281】
酸化還元酵素のクローニング及び欠失
発現研究(リボソーム結合部位、コード領域、及び200bp末端領域)のために酸化還元酵素遺伝子を、Bio-Rad iCycler (Hercules, CA)を用いてLY180株のゲノムDNAから増幅し、pCR 2.1−TOPOベクターにライゲートして、Invitrogen TOPO TA Cloning Kit (Carlsbad, CA)を用いて大腸菌TOP10F’にクローン化した。QuiaPrep Spin Mini Prep Kit を用いてプラスミドを精製した。遺伝子の配向性をPCRで確立した。
【0282】
yqhD欠失を、プラスミドpKD4及びpKD46を用いて、Datsenko and Wanner (Datsenko, et al. 2000 PNAS. 97:6640-6645)に記載されるようにしてLY180に構築した。dkgA欠失をJantama et al. (Jantama et al. 2008 Biotech. Bioeng. 30:881-893)に記載されるようにしてLY180に構築した。yqhD及びdkgAの両方が欠失している二重突然変異体も構築した。yqfAを欠失する再三の試みは成功しなかった。
【0283】
YqhD及びDkgAの精製及び動力学的分析
yqhD及びdkgA遺伝子の両方をNovagen pET−15bベクター内にクローン化して、大腸菌BL21(DE3)内にHis標識化タンパク質として発現した。細胞をIPTGでおよそ1.3gdcw/Lまで生育し、100mMのリン酸緩衝液で洗浄して、Mp Fast Prep-24 (MP Biomedical, solon OH)及び Lysing Matrix B を用いて溶解した。粗製抽出物を0.22μmのPVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルターに通して、更に1mLのHiTrap ニッケルカラムを用いて精製した。精製した酵素を、Thermo Slide-A-Lyser を用いて100mMのリン酸緩衝液中で透析して、Thermo BCA Assay Kit を用いて定量した。YqhD及びDkgAの純度は、SDS−PAGEによって90%より大きいと評価された。SDS−PAGEゲル内にそれぞれに対する一本のバンドが観察された。精製したタンパク質のおよその大きさは、それぞれの予測値43kD及び31kDに一致した。明確なKcat値及び明確なKm値を両方の精製酵素についてNADPH及びフルフラールを用いて測定した。
【0284】
発酵中のインビボフルフラール代謝の全細胞アッセイ
培養物が670mgdcw/L密度まで生育している(対数増殖期中期)発酵槽を用いて全細胞フルフラール代謝を測定した。初期濃度0.5g/Lでフルフラールを添加した。フルフラール及び細胞量を測定するために、培養の0時点並びに15、30、及び60分後にサンプルを採取した。フルフラール代謝の具体的な速度を各試験間隔の間の平均細胞量を用いて算出した。結果を、マイクロモル/分/mg dcwで表した。
【0285】
フルフラール還元のインビトロアッセイ
嫌気的試験管培養物を50g/Lのキシロースを含有しているAM1培地で生育して、対数増殖期中期(0.7〜1.0g dcw/L)に集菌した。細胞を、100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)20mLで1度洗浄し、およそ6.5g dcw/Lでリン酸緩衝液に再懸濁して、MP FastPrep-24 細胞破砕器及び Lysing Matrix B を用いて20分間溶解した。破片を遠心分離(13,000xg、10分)で除去して上澄液を、NADH及びNADPHのフルフラール依存性酸化を測定するために用いた。アッセイは、100mMのリン酸緩衝液(pH7.0)、20mMのフルフラール、及び0.2mMの還元体(NADPH又はNADH)を含んでいた。フルフラール依存性活性(マイクロモル/分/mgタンパク質)を340nmにおける吸光度の変化として測定した。活性の80%以上がNADPH依存性であった。
【0286】
分析
炎イオン化検出器及び15メートルの HP-PlotQ megaboreカラムを備えた Agilent 6890N ガスクロマトグラフ(Palo Alto, CA)を用いてエタノールを測定した。Bausch & Lomb Spectronic 70 分光光度計を用いて550nmにおける光学密度を測定することによって、乾燥細胞重量を見積もった。1.0のOD550nmはおよそ333.3mg dcw/Lに相当する。
【0287】
AM1培地中のフルフラール濃度は、OD248nm及びOD320nmの吸光度によって測定した(Martinez et al. 2000 Biotechnol Prog. 16:637-641)。この方法の精度はHPLC分析で確認した。サトウキビ絞りかすヘミセルロース加水分解物のフルフラール含量は、Agilent LC1100液体クロマトグラフ(屈折率モニター及びUV検出器)及び 移動相として水を用いるAminex HPX-87P イオン排除カラム(BioRad, Hercules, CA)を用いて測定した。
【0288】
PCR産物の創出及びシークエンシング
AM1最少培地で生育した細菌培養物から、Quiagen DNeasy Blood and Tissue kit を用いて、ゲノムDNAを作成した。目的の領域を Quiagen Taq PCR master mix でPCR増幅して、得られたPCR産物を QIAquick PCR purification kit で精製した。2−log DNAラダー(NEB)中のバンドに対応するDNAを定量した後、ABI3130DNAシークエンサー上で分析するために、DNAをフロリダ大学の Sanger sequencing core に提出した。得られた配列データを集めて、Vector NTI ソフトウェア(Invitrogen)を用いて比較した。
【0289】
フルフラール消費アッセイ
350mLのAM1−10%キシロース培地を含有しているフリーカー中で0.66dcw/Lの細胞密度まで生育した培養物を、0.5g/Lにフルフラールを添加する直前、並びに添加の15、30、及び60分後にサンプリングした。細菌細胞を遠心分離で除去した後に培養液中の残存フルフラール濃度を測定した。既に記載されているように、分光光度法を用いた。
【0290】
細菌細胞中におけるルシフェラーゼレポーター活性の測定
適切なレポータープラスミドを担持している大腸菌の培養物をAM1−5%キシロース中で、OD0.2〜0.4まで生育した。フルフラールの添加後、細胞をペレット化し、Quiagen Qproteome 細菌溶解緩衝液中に再懸濁して、−80℃で保管した。溶解物を2分間37℃で解凍して、白色の96ウェルプレートに移した。等量(50μL)の PerkinElmer BriteLite 試薬を各ウェルに添加して、Promega Glomax 96-well 光度計で発光を測定した。
【0291】
バイオスクリーンC生育曲線(BioScreen C growth curves)
フルフラールに対する耐性を、BioScreen C growth curve machine を用いて、規定濃度のフルフラールを含有しているAM1−5%キシロース培地における生育によって評価した。培養物を振盪している37℃の水浴中でODが0.4〜0.6になるまで生育し、OD=0.3に希釈して、次いで350uLの培地を含有している100ウェルハニカムプレートの各ウェルに50μLを植菌した。37℃で65時間の培養期間にわたり、読み取り直前に10秒振とうして、30分間隔で光学密度を測定した。菌株とフルフラール濃度のそれぞれの組み合わせに対して10の複製を用いた。
【0292】
プラスミド構築物
蛍ルシフェラーゼ遺伝子をpBAD24(Guzman et al. 1995 J. Bacteriol. 177: 4121-4130)に転写して、araC遺伝子及びpBADプロモーター領域をLY180中のyqhD遺伝子上流の150−bp領域と置き換えて、プラスミドpLOI4900を構築した。この推定yqhDプロモーター領域をプライマーPCT6及びPCT7を用いてPCR増幅した(表2)。
【0293】
yqhC遺伝子を、プライマーPCT50及びPCT51でLY180ゲノムDNAから増幅し、全yqhC遺伝子と354bp領域上流(天然のプロモーター)を含有するPCR産物を作成した。この断片を、CopyControl PCR クローニングキット(Epicentre)を用いてpCC1にクローン化してpLOI4901を産出した。pCC1ベクターは大腸菌F因子に基づく単一コピープラスミドである。
【0294】
【表2】
【0295】
菌株構築物
LY180中のyqhC遺伝子を、相同組み換えによって欠失した。最初に、pKD4(Datsenko et al. 2000 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:6640-6645)由来のカナマイシン(kan)カセットを、yqhCコード領域の両面にある領域と隣接した。プライマーyqhC_ko_revの配列は、yqhCの下流領域との隣接部に一致する領域に特異的であった。yqhC_ko_revは、yqhC遺伝子の3’末端の配列と相同な41−bp尾部を含有していて、kanカセットの末端の19bpにも一致している。yqhCの上流末端に、プライマーPCT48及びpCT49を用いて、yqhCの5’末端からyqhD遺伝子内に伸びている418−bp断片のPCR増幅によって隣接領域を作成した。kanカセットをpKD4から、プライマーPCT46及びPCT47で増幅し、次いでXhoI部位を介してPCT47及びPCT48にライゲーションすることによってPCT48プラスPCT49PCR産物(yqhC隣接上流)に結合した。最後に、このkan上流隣接構築物を最外部プライマーyqhC_ko_rev及びPCT49でPCR増幅して、41−bp下流隣接部及び418−bp上流隣接部の間がkanカセットで構成される線状DNAを作成した。レッドリコンビナーゼによる組み換えを用いてLY180内のyqhC遺伝子をkanカセットで置き換えて、LY180ΔyqhCを作成した。得られた菌株をPCR解析及びシークエンシングで確認した。
【0296】
インビボにおけるフルフラールの還元
先に記載されているようにして(Miller et al. 2009 Appl. Environ. Microbiol. 75:4315-4323)、350mLのAM1−100g/Lキシロース培地を含有しているフレーカー中で細胞密度が0.66g dcw/Lになるまで培養物を生育して、フルフラール(0.5g/L)の添加直前並びに添加後15、30、及び60分後にサンプリングした。遠心分離後の培養液中の残存フルフラールを分光光学方法(Martinez et al. 2000 Biotechnol. Prog. 16: 637-641)を用いて測定した。
【0297】
細菌細胞におけるルシフェラーゼレポーター活性の測定
適切なレポータープラスミドを担持している大腸菌の培養物をAM1−50g/Lキシロース中でOD0.4まで生育した。培養物をサンプリングした後、フルフラールを添加して、再びサンプリングする前5,15又は30分間培養を続けた。非処理及びフルフラール処理細胞をペレット化し、Qiagen Qproteome 細胞溶解緩衝液中に再懸濁して、−80℃で保管した。溶解物を37℃で2分間解凍して、96ウェルプレート(白色)に移した。等容量(50μL)の PerkinElmer BriteLite 試薬を各ウェルに添加した。Promega Glomax 96ウェル照度計を用いて発光を測定した。
【0298】
マイクロアレイ解析
各菌株に対して、4複製培養液(350mL)をOD=1.5(0.66g dcw/L)まで生育してサンプリングした。フルフラール(0.5g/L)を添加して15分培養した後サンプルを採取した。培養液サンプルをドライアイス/エタノール浴中で冷却した。細胞を4℃でペレット化し、RNA Later(Quiagen)に再懸濁して、−80℃で保管した。4発酵物から得た細胞ペレットをプールしてRNA単離(Quiagen RNeasy Mini Kit)に用いた。RNAをDNaseで処理し、再精製して、Agilent Bioanalyzer を用いて品質を評価した。RNAサンプルをNimblegen に付してcDNAに変換し、Cy3で標識化して、大腸菌K12TI8333マイクロアレイチップにハイブリダーゼーションした。このチップは、大腸菌K12のMG1655株に由来する385,000 60−merのプローブを含有していて、遺伝子当たり平均18プローブを有する、各プローブの5複製物を有している。Nimblegen からの正規化発現データを解析のためにArrayStar(DNA star)に取り込んだ。
【0299】
ヌクレオチド配列及びマイクロアレイデータの寄託番号
LY180及びeEMFR9の両方のyqhC−yqhD−dkgA領域のDNA配列は GenBank に寄託されている(受入番号はそれぞれ、GQ478251及びGQ478252)。マイクロアレイのデータは、受入番号GSE17786で、http://ncbi.nlm.nih.gov/geo のGen Expression Omnibus (GEO)に寄託した。
【0300】
AM1及び0.1mMのIPTGを含有している培養試験管(13×100mm)に0.05OD550nmまで植菌して、37℃で培養した。これらを1〜2OD550nmの密度で集菌した。細胞ペレットを100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で1回洗浄して、10OD550nmの密度で緩衝液に再懸濁した。サンプル(1ml)をLysing Matrix B を含有している2mlの試験管に添加して、FastPrep-24 (MP Biomedicals, Solon, OH)を用いて崩壊した(20秒)。NADPHのフラン依存性酸化を、DU 800 分光光度計(Beckman Coulter, Fullerton, CA)を用いて、340nmで測定した。反応物(総容量200μl、37℃)は、50μLの粗製抽出物、0.2mMのNADPH、及び20mMの5−HMFを含有していた。BCAアッセイ(Thermo Scientific, Rockford, IL)を用いてタンパク質を測定した。
【0301】
統計解析
データは、平均値±SD(n≧3)で表している。Graphed Prism ソフトウェア(La Jolla. CA)を用いて、統計比較(両側スチューデントt検定)を行った。
【実施例】
【0302】
実施例1.フルフラール耐性突然変異体の単離及び初期特性化
100g/Lのキシロース及び増大する濃度のフルフラール(0.5g/Lの開始濃度〜1.3g/Lの最終濃度)を有するAM1無機塩培地を含有しているpH制御発酵槽中で54回連続移植した後に、LY180のフルフラール耐性誘導体株を単離した。単一工程(固体培地及び培養液)で1.0g/Lのフルフラールに耐性である突然変異体を直接単離する試みは成功しなかった。連続移植の間に、複合的変化と一致して、段階的に改善されたフルフラール耐性が観察された。得られた菌株、EMFR9は、1.0g/Lのフルフラールの存在下で、フルフラールが存在しない親株LY180と同じ速度で、生育してキシロースを発酵した(図2)。EMFR9による生育及びエタノール生産も、フルフラールの非存在下における親株LY180のそれを上回った。
【0303】
親株LY180への低いフルフラール濃度(0.4g/L)の添加は、生育及びエタノール生産に初期遅滞をもたらした(図2A及び2B)。この遅滞の間に、フルフラールは毒性の低いフルフリルアルコールへ化学的に還元された(Zaldivar et al. 1999. Biotechnol. Bioeng. 65: 24-33; Zaldivar et al. 2000 Biotechnol. Bioeng. 68:524-530)(図2C)。生育及び発酵は、フルフラールの完全除去の直後に3倍以上増大する。LY180による生育及びエタノール生産は72時間の培養にわたって1.0g/Lのフルフラールによって強力に阻害された(図2D及び2E).この期間の間に、LY180が代謝的に活性を保持していることを示して、ほぼ20%のフルフラールが還元された(図2F)。LY180とは対照的に、EMFR9はフルフラールの存在(0.4g/L又は1.0g/L)によって実質的に影響を受けなかった(図2)。フルフラール還元の容量比は、主により大きい細胞集団によって、両フルフラール濃度でLY180よりEMFR9について高かった(図2C及び2F)。このことは更なる実験によって確認された。この実験では当該細菌が、EMFR(mg dcw当たり)によるNADPH依存性フルフラール還元のインビボ速度が親株LY180の速度の約半分であることが分かった(図3)。LY180と対照的に、EMFR9の生育及び発酵は事前にフルフラールの還元的除去を必要としない。EMFR9によって、0.4g/l及び1.0g/Lのフルフラールの両方は生育と共にフルフリルアルコールに還元された。RMFR9による還元はそれぞれ12時間及び18時間後に完了した(図2C及び2F)。
【0304】
実施例2.フルフラール耐性に対する培地構成要素の効果(MIC)
グルコースとは異なって、キシロース発酵中のNADPHの産生には問題があって(White, D. 2000. The Physiology and Biochemistry of Prokaryotes. 2nd edition. Oxford University Press. New York, NY)、異なった培地におけるフルフラールについてMICを測定してNADPH競合仮説を試験する手法を提供する。50g/Lのキシロースを有する無機塩培地(図4A)では、フルフラールの最小阻止濃度(MIC)はLY180(親株)については約1.0g/Lで、突然変異株EMFR9については2.0g/Lであった。キシロースをグルコースで置き換えるとNADPHプールが増大するはずである。この変化(図4B)はフルフラールのMICをLY180に対して50%(1.5g/L)そしてEMFR9に対して25%(2.5g/L)増大した。キシロース−無機塩培地への少量(1.0g/L)の酵母抽出物の添加は、NADPHを生物合成する必要性を減少することが期待できる。この補完(図4C)は親株LY180に対するフルフラールのMICを2倍(2.0g/L)にして、EMFR9に対するMICを25%(2.5g/L)増大した。全ての培地で、EMFR9は親株LY180よりフルフラールに対して抵抗性であった。グルコース(NADPH産生を増大した)及び酵母抽出物(生物合成の必要性を減少した)の両方はフルフラール耐性を増大した。しかしながら、この利益は、EMFR9における低いレベルのフルフラール還元活性と一致して、突然変異株EMFR9に対するより親株、LY180に対して更に顕著であった。
【0305】
ヘミセルロース加水分解物に存在していることが知られている別の3化合物:2−ヒドロキシメチルフルフラール(類縁体、ヘキソース糖の加水分解産物)、フルフリルアルコール(フルフラールの還元産物)、及びシリンガアルデヒド(リグニンの分解産物):についてのMICも試験した。EMFR9は、2−ヒドロキシメチルフルフラールに対して、LY180(2.5g/LのMIC)よりやや耐性(3.0g/LのMIC)であった。両方の菌株は、シリンガアルデヒド(2.0g/LのMIC)及びフルフリルアルコール(15g/LのMIC)に対して同様に感受性であった(データを示していない)。EMFR9において他の化合物に対する増大した耐性が無いことは、フルフラール毒性に対する特異部位又は標的と一致している。
【0306】
実施例3.mRNAマイクロアレイ解析による酸化還元酵素発現の比較
過去の研究は、大腸菌がフルフラールを毒性の低い化合物(フルフリルアルコール)に還元できるNADPH依存性酵素を含有していることを明らかにしているが、遺伝子は1つも特定されていない(Gutierrez et al. 2006. J. Bacteriol. 121:154-164)。親株LY180の生育前のフルフラールの完全還元への依存性、及びEMFRによるこの依存性の減少は更に、フルフラールの感受性に最も重要である酸化還元酵素に関連している。
【0307】
mRNAのマイクロアレイ解析を、フルフラール還元のための候補酸化還元酵素を同定するために用いた。LY180及びEMFR9の培養物を、100g/L(wt/vol)のキシロースを用いるpH制御発酵で対数増殖期中期まで生育した。この比較のために、0.5g/Lのフルフラールの添加15分後にRNAを単離した。全部で12個の公知の推定酸化還元酵素が、約2倍又はそれ以上差があることを見出した(表3)。
【0308】
【表3】
【0309】
EMFR9において低いレベルで発現された4個の酸化還元酵素を同定した(表3)。これら4個の遺伝子のそれぞれをプラスミドにクローン化してEMFR9に形質転換した。プラスミドから発現すると、これらの遺伝子のうちの3個(dkgA、yqhD及びyqfA)がフルフラール耐性を減少することが見出された(図5)。yqhD及びdkgAの発現が最も有害であって、両者はEMFR9においてフルフラールの還元酵素活性を増大することを示した(図3B)。yqfAの発現は、EMFR9のフルフラール還元酵素活性を回復せずに、その生育阻害に対する効果は別の機能と関連しているだろう。生育に対する有害効果はyjjNについて観察されなかった。よって、EMFR9におけるyqhD、dkgA、及びyqfAの発現の減少はフルフラール耐性に対して有益であると推測できる。EMFR9におけるyqhD及びdkgAのサイレンシングは、フルフラール還元中のNADPHの生物合成との競合を減少するだろう。
【0310】
その他の8個の遺伝子を発現するためにLY180からpCR2.1−TOPOへクローン化した。これら8個の酸化還元酵素は親株LY180に比べてEMFR9内の発現を増加した(1.8倍〜4.5倍)。これらの遺伝子をそれぞれ含有しているプラスミドをLY180に形質転換した。しかしながら、これら8個はどれもフルフラール耐性の増大をもたらさなかった(データを示していない)。
【0311】
yqhD、dkgA、及びyqfAサイレングの潜在的重要性を更に試験するために、これらの遺伝子それぞれをLY180から欠失する試みを行った。yqhD及びdkgAの両方の欠失は容易に回復できたが、yqfAで同じ方法は成功しなかった。LY180における、yqhD単独の又はdkgAと組合せた欠失は、EMFR9のそれ(図3A)と同様に、インビボにおいてフルフラール耐性の増大(図6)及びフルフラール還元酵素活性の減少を引き起こした。LY180においてdkgA単独の欠失はインビボでの還元酵素酵素を低下することもフルフラール耐性を増大することもないので、YqhDが、低濃度のフルフラールによる生育阻害に対してより重要に活動していると推測された。両方の遺伝子を欠失した後に最も低いフルフラール還元酵素活性が見出された。
【0312】
実施例4.YqhD」及びDkgAの特性化
酸化還元酵素の間の遺伝子発現の最も大きな変化は、yqhD及びdkgAのサイレンシングであった。YqhD及びDkgAの両者を、his標識化タンパク質としてBL21(λDE3)に発現して、識別可能な均一性にまで精製した。両酵素は、フルフラールのフルフリルアルコールへのNADPH依存性還元を触媒した。フルフラールに対する見掛けのKm値は、YphD(9.0mM)及びDkgA(>130mM)については比較的高かった。このような値では、フルフラールが両酵素の元来の基質であるとは思われない。細胞がフルフラールに透過性であると理論的に仮定すると、YqhD及びDkgAの細胞内活性は、選択のために用いるフルフラール濃度(5〜14mM;0.5〜1.3g/L)の範囲にわたって変化すると期待できる。NADPHに対する見掛けのKm値はYqhD(8μM)及びDkgA(23μM)の両者について非常に低かった。フルフラールの存在下では、両酵素のNADPHに対する高い親和性はNADPHに対する生合成反応と効果的に競合するだろう。経路におけるNADPHの分配は、NADPHに対するKm、NADPHの定常状態のプールサイズ、及び競合する酸化還元酵素活性の相対存在量によって確認できるだろう。
【0313】
実施例5.ヘミセルロースの酸加水分解物に対する耐性
ヘミセルロースの加水分解物は、共同して微生物の生育及び発酵を阻害するように作用する化合物の混合物を含有している(Martinez et al. 2001 Biotechnol. Prog. 17:287-293; Martinez et al. 2000 Biotechnol. Bioengin. 69(5): 526-536; Zaldivar et al. 1999 Biotechnol. Bioeng. 65: 24-33; Zaldivar et al. 1999 Biotechnol. Bioeng. 66: 203-210; Zaldivar et al. 2000. Biotechnol. Bioeng. 68:524-530)。1.4g/Lのフルフラールを含有している中和した加水分解物の希釈物中で生育及び発酵を試験した(図7)。生育及びエタノール生産に対するMIC値(30%加水分解物)は同様であったが、EMFR9は、親のLY180より、3倍の高密度で生育して、20%加水分解物中で10倍を超えてエタノールを多く生産した。フルフラールへの耐性を増大するためのEMFR9の選択には、ヘミセルロース加水分解物に対する耐性の増大を伴っていて、加水分解物毒性の構成要素としてのフルフラールの重要性が確認された。
【0314】
実施例6.天然のフルフラール耐性突然変異体
大腸菌のゲノムにおいてyqhCは、YqhCと反対方向に転写されているyqhD及びdkgA遺伝子と隣接している(図8)。
PCRとDNAシークエンシングの併用による、フルフラール耐性株EMFR9のyqhC領域の分析は、EMFR9がyqhC遺伝子内への挿入配列IS10の自然挿入を含有していることを明らかにした(図8)。RNAのマイクロアレイ解析(図9)及びRNAの定量的リアルタイム逆転写(示していない)に基づくと、yqhCの不活性化はyqhD及びdkgAを下方調節する。
【0315】
セルロース加水分解物の存在下における生育、及び親株LY180と比較してフルフラールに耐性であること(示していない)に基づいて、エタノール生産株MM205を選択した。MM205のyqhC遺伝子及び周辺領域の配列分析は、野生型199アミノ酸のyqhCタンパク質の代わりに予測突然変異タンパク質が215アミノ酸となるような、フレームシフトをもたらす、yqhC遺伝子内に天然の単一A挿入基の存在を明らかにした。1〜188位の残基はMM205yqhCタンパク質では正常であったが、フレームシフトに起因する次の27アミノ酸はタンパク質のC末端にあるその野生型残基とは異なっている。
【0316】
実施例7.yqhC遺伝子の欠失はフルフラールに対する耐性を増大する
LY180内で、全yqhC遺伝子の欠失操作を行った。この構築物において、yqhCオープン・リーディング・フレームを選択可能なカナマイシン耐性カセットと置き換えた。kan−res転写の方向は、隣接yqhD及びdkgA遺伝子と離れて、元のyqhC遺伝子と同じ方向である。
【0317】
BioScreen C 生育曲線器における、異なったフルフラール濃度でのLY180及びLY180ΔyqhCの生育比較は、LY180ΔyqhCが親のLY180より実質的にフルフラール耐性であったことを明らかにした(図10AB)。野生型yqhC遺伝子のプラスミド経由で作成したコピーの、その天然のプロモーターの制御下における、LY180ΔyqhC内への再導入は、フルフラール感受性を親株のLY180と同じレベルに回復した(図10C)。空ベクターpCC1のLY180ΔyqhCへの導入はフルフラール耐性に影響を与えなかった(図10D)。これらの結果は、yqhCタンパク質の非存在がフルフラールに対する耐性の増大をもたらすことと一致する。
【0318】
実施例8.yqhC欠失突然変異体はフルフラール還元の速度を減少する
天然由来フルフラール耐性突然変異株EMFR9はyqhD及びdkgAの両方の発現を減少する。これらの酸化還元酵素のレベルの低下は、フルフラールが存在すると、NADPHプールの枯渇を軽減する。先に述べたように、EMFR9は、その他の特性化又は非特性化突然変異に加えて、yqhCコード配列内に存在するIS10挿入配列を有している。
【0319】
LY180及びLY180ΔyqhCによるフルフラール還元の速度を、フレーカー内のAM1−10%キシロース培地中で規定のODまで2つの株を生育し、フルフラールを0.5g/Lまで添加し、間隔を置いてサンプルを採取して、残存フルフラール濃度を分光光学的に測定することによって、直接比較した。結果(株当たり4つの同一性フレーカーから得た)は、フルフラール還元の速度がLY180と比較してLY180ΔyqhCで低下していることを示して(図11)、これはyqhCの欠失が、NADPHの酸化が同時に起こる、フルフラールをフルフリルアルコールへ正常に還元する酸化還元酵素の下方調節をもたらすことと一致する。
【0320】
実施例9.yqhCの欠失は、フルフラールへの曝露によるyqhDプロモーターの誘発を妨げる
yqhDプロモーターからの転写に対するフルフラールの効果を評価するために、yqhDプロモーターの下流に、蛍ルシフェラーゼレポータを用いてプラスミドpPyqhD−luc(図12)を構築した。pPyqhD−lucを担持しているLY180におけるルシフェラーゼ活性の測定は、フルフラール添加後15分で活性が増大したことを示した(図13)。しかしながら、レポータープラスミドpPyqhD−lucをEMFR9及び更なるフルフラール耐性誘導体EMFR17内に転写すると、フルフラールの添加によるルシフェラーゼの発現は増大せずに(図13)、これらの株はフルフラールが存在すると通常生じるyqhDプロモーター由来の活性を抑制するようになることを示唆した。
【0321】
yqhC欠失のyqhDプロモーター活性に対する効果を、pPyqhD−lucをLY180ΔyqhC内に転写して試験した。得られた結果(図14)は、pPyqhD−lucレポータープラスミド由来のルシフェラーゼの誘発がyqhCの欠失によって大きく減少したことを示した。
【0322】
得られるデータは、yqhCが、フルフラールを包含する、yqhDに対する基質の添加による陽性の(positive)方法で、yqhDの転写を調節することを明らかにしている(図15)。dkgA遺伝子はそれ自身のプロモーターを有している(Gama-Castro et al., 2008 Nucleic Acids Res 36:D120-D124 )にも関わらず、本明細書で示したデータによれば、yqhD及びdkgAは協調的に調節される。
【0323】
実施例10.フルフラール耐性株EMFR9はyqhCのIS10挿入を含有している
大腸菌LY180のフルフラール耐性突然変異株(EMFR9)において2つのNADPH依存性酸化還元酵素(yqhD及びdkgA)のサイレンシングがフルフラール耐性の増大をもたらすことは既に示されている(Miller et al. 2009 Appl. Environ Microbiol 75:4315-4323 )。これらの遺伝子のコード領域に又は直ぐ上流及び下流領域において突然変異は見い出さなかった。第3の隣接遺伝子yqhC(図19)もEMFR内でサイレンシングした。マイクロアレイ分析で、親株LY180におけるフルフラールの添加によってこれら3つの遺伝子は強力に上方調節(>6倍)された(図20A)。
【0324】
上流(yqhC)及び下流(yqhG)遺伝子にシークエンシングを延長した。yqhC遺伝子のPCR増幅は、側面にyqhC由来の9塩基配列TGCCAGGCTのコピーが配置されている、1.3kbのIS10を含有している予想外に大きいPCR産物をもたらした。下流yqhG領域に突然変異は見いだされなかった。大腸菌yqhC遺伝子はyqhDの方向と反対に転写されていて(図19)、DNA結合タンパク質のAraC/XylSファミリーに属する予測転写制御因子をコードする(Gallegos et al. 1997 Microbiol Mol Biol. Rev. 61: 393-410)。これらの幾つかは転写の活性化因子及び抑制因子の両方として作用するものの、その多くは活性化因子である。
【0325】
実施例11.LY180におけるyqhCの欠失はフルフラール耐性を増大した
LY180のyqhC遺伝子をカナマイシン耐性カセットで置き換えてLY180ΔyqhCを作り出した。LY180と欠失株のフルフラール耐性をBioScreen C 生育曲線分析器を用いて比較した。得られたプロット(図21A及びB)は、1.0、1.5及び2g/Lフルフラールにおいて、LY180ΔyqhCが親株よりより耐性であることを明確に示した。フルフラール耐性の変化は、野生型yqhC遺伝子のプラスミド経由コピー(pLOI4901)をその天然のプロモーターとともに導入して、フルフラール感受性を十分回復することによる、yqhCの突然変異によって、引き起こされたことも確認された(図21C)。LY180ΔyqhCに空ベクター(pCC1)を存在させると、フルフラール感受性に影響を与えなかった(図21D)。(EMFR9における)IS10の挿入或いは(LY180ΔyqhCにおける)完全欠失の何れかによるyqhCの突然変異は、フルフラール耐性の増大をもたらした。
【0326】
発酵中のフルフラール還元のインビボでの速度を試験した。LY180株によるフルフラール還元速度(0.042±0.001μモル/分/mgdcw)はLY180ΔyqhC株によるもの(0.025±0.005μモル/分/mgdcw)より有意に高く(68%;p<0.05(5%))、親株のみへのYqhD及びDkgAの導入と一致する。
【0327】
実施例12.yqhDプロモーター(ルシフェラーゼレポーター)の転写調節
蛍ルシフェラーゼレポーターの直ぐ上流にyqhDプロモーター(151bp)を用いてプラスミドpLOI4900を構築した(図22A)。このプラスミドを、親株LY180及びLY180ΔyqhCにおける転写制御を検討するために用いた。LY180(pLOI4900)では、フルフラールの添加(1mM、5mM、及び10mM)が5分以内に明白な、ルシフェラーゼ活性の用量依存性増加をもたらした(図22B)。このプラスミドを内部に持つyqhC欠失株においては、フルフラールに依存する応答は観察されなかった(図22C)。発現の定常状態のレベルが両株で観察されたがLY180ΔyqhCでは低かった。
【0328】
pLOI4900を担持しているEMFR9はLY180ΔyqhC(pLOI4900)のそれと同様の結果をもたらした(図示せず)。フルフラールの非存在下でのルシフェラーゼの基礎レベルは低くて、フルフラールの添加はルシフェラーゼ活性を増大しなかった。pLOI4900の非存在下ではルシフェラーゼ活性は検出されなかった。
【0329】
ヘミセルロースの希酸加水分解物中に存在していることが知られているその他のアルデヒド(Palmqvist et al. 2000 Bioresour. Technol. 74:25-33)も、LY180(pLOI4900)及びLY180ΔyqhC(pLOI4900)を用いて、各種濃度で試験
した。LY180(pLOI4900)において、全てがルシフェラーゼ活性を2〜5倍増大した(データは示されていない)。これらは、アセトアルデヒド(1mM)、プロピオンアルデヒド(1mM)、ブチルアルデヒド(1mM)、5−ヒドロキシメチルフルフラール(1mM)、及び桂皮アルデヒド(0.1mM)を包含していた。メチルグリオキサール(0.1mM)もLY180(pLOI4900)においてルシフェラーゼ活性を増大することが見出された。LY180ΔyqhCにおいて、これらの化合物はどれもルシフェラーゼ活性を増大しなかった。
【0330】
これらの結果を合わせると、YqhCが、yqhDプロモーターからアルデヒド誘発性発現のための必須の、トランス活性転写活性化因子であることを明らかにしている。yqhCの突然変異体(IS10の挿入又は欠失)は、転写におけるアルデヒド誘発性増大を除去した。
【0331】
実施例13.転写レベルに対するyqhC欠失の効果
0.5g/Lのフルフラール添加直前及び15分後にLY180株及びLY180ΔyqhC株から全RNAを調製した。yqhC−yqhD−dkgA領域並びに隣接遺伝子yghB(保存内膜タンパク質)及びyqhG(機能未知)に対する発現結果を図20Bに示す。L180において、yqhC、yqhD、及びdkgA転写産物の発現は、予測通り、フルフラールの添加によって上方調節された。LY180ΔyqhCにおいては、このフルフラール応答は存在しなかった。隣接遺伝子は低レベルで発現して、作用は少なかった。LY180ΔyqhCにおけるyqhCの低レベルの明白な発現は、LY180におけるldhA、adhE、及びfrdBCのような他の遺伝子欠失について観察されたものと類似していて、大腸菌K12チップで得られたハイブリダイゼーションのバックグラウンドレベルを反映していた。これらのデータは、yqhDプロモーターからの転写の陽性調節遺伝子としてのYqhC作用と一致している。
【0332】
yqhDとdkgAの間の遺伝子間領域に広がる転写産物の存在を、yqhD−dkgAギャップに隣接するプライマーを用いて、qPCRで調査した。フルフラール無しで生育したLY180細胞のRNA由来cDNAをテンプレートとして用いた。遺伝子間のギャップを架橋することが期待できる大きさのPCR産物を回収した。その量は、yqhDの内部にあるプライマーを用いて作成したPCR産物のものよりほんの少し少ないだけであった(データは示していない)。従って、yqhDプロモーターからの転写は、隣接dkgA遺伝子に広がっているように見える。dkgA転写産物の量は、yqhD又はyqhD−dkgA遺伝子間領域の何れかで見られる量よりも多く、更なるdkgAプロモーターの存在を示す実験的な証拠(Gama-Castro et al. 2008 Nucleic Acids Res 36: D120-D124)と一致した。
【0333】
YqhCが、yqhC遺伝子に隣接する領域とは別の領域を調節するか否かについての問題は、yqhCの欠失によって異なって発現する更なる遺伝子についてのマイクロアレイデータの全てを検索して対処した。TI8333マイクロアレーチップ上に表された4,237遺伝子についての発現レベルの比較は、フルフラールの非存在下で、LY180とLY180ΔyqhCの間で2倍又はそれ以上異なって発現する遺伝子が合計72個存在することを明らかにした。これらのうち、41個はLY180ΔyqhCにおいて下方調節され、31個は上方調節された。フルフラール(0.5g/L)の存在下で、134個の遺伝子が2倍のレベルで異なって調節された(LY180ΔyqhCにおいて32個が下方調節されて、102個が上方調節された)。両方のデータセットにおいて、合計34個の遺伝子が2倍又はそれ以上発現が異なっていた(両方のセットで24個が下方調節されて、両方のセットで10個が上方調節された)。LY180ΔyqhCにおいて両方の条件下で下方調節された遺伝子は、yqhC、yqhD、dkgA、tauABCD及びssuEADCBオベロン、調節因子cbl及びnac、並びにその他(fimC、mdaB、rspA、ybaY、ybeH、ycdF、ydhP、yeeO、yjfyY、及びymcD)を包含していた。LY180と比較してLY180ΔyqhCにおいて、両方の条件下で2倍又はそれ以上上方調節された遺伝子は、銅の代謝において作用する、cueO、copA、及びcusCFB;並びにchbB、gdhB、hipB、ydeU、及びydeKを包含していた。
【0334】
これら34個の遺伝子の発現レベルは、フルフラールの存在下又は非存在下でLY180とEMFR9(yqhCにIS10挿入)を比較した先のデータセット(Miller et al. 2009 Appl Environ. Microbiol 75: 6132-6141; Miller et al. 2009 Appl. Environ. Microbiol. 75: 4315-4323)において分析した。EMFR9におけるyqhCのIs10不活性化は、yqhC欠失(LY180ΔyqhCにおける)に起因するものと同様な変化をもたらすだろうと結論付けた。試験した全てのデータセットにおいて、yqhD及びdkgAの発現は、フルフラールの非存在下及び存在下の両方で、LY180と比較してEMFR9において一貫して減少していた。フルフラールによるyqhD発現の倍減は、LY180と比較してEMFR9に対して少なくとも6.0倍であって、dkgAについては少なくとも10.6倍であった。しかしながら、LY180と比べたtauABCD及びssuEADCBオベロン、cbl、並びにその他の遺伝子についての2倍又はそれ以上の下方調節は、EMFR9で観察されなかった。LY180ΔyqhCにおいて上方調節された10個の遺伝子はEMFR9において上方調節されなかった。yqhC、yqhD及びdkgA以外の、遺伝子はどれも、機能的YqhCタンパク質の非存在下で一貫して上方又は下方調節されなかった。
【0335】
実施例14.別の細菌属におけるyqhC及び関連遺伝子のオルソログ
大腸菌以外の細菌におけるyqhCオルソログ及びyqhD及びdkgA遺伝子の相対物の存在を、EcoCyc(Keseler et al. 2009 Nucleic Acids Res 37: D464-D470)で入手できる検索用ゲノムによって調査した。大腸菌yqhCのオルソログを含有する46の属のうち40がグラム陰性細菌であった。yqhD及びdkgAに類似している遺伝子とyqhCオルソログとの近接さを EcoCyc マルチゲノムブラウザーを用いて試験した(図23)。全てのグラム陽性菌を包含して、殆どの属(46属のうち34属)はyqhCオルソログの近くに確認しうるyqhD又はdkgAオルソログを含有していなかった(例えば、アシネトバクター sp.及びキサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris))。しかしながら、34属のうち24属は、ゲノムの他の場所にyqhD又はdkAオルソログの一方を含有していた。46属のうち5属はyqhCに加えて隣接yqhDオルソログを含有していたが、dkgAオルソログは含有しておらず(例えば、アエロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)及びビブリオ・パラヘモリチカス(Vibrio parahaemolyticus))、そして1属(サーマトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)、示していない)が隣接yqhDオルソログを含有せずに隣接dkgAオルソログを含有していた。5つの属が大腸菌と類似した配列で3つの遺伝子全てを含有していた。このグループは腸内細菌科に限定されて、エシェリキア属、シゲラ属(Shigella)、サルモネラ属、クレブシエラ属、ペクトバクテリウム属(Pectobacterium)、及びエルシニア属(Yersinia)を包含している。P.アトロセプチカム(P.atrosepticum)における遺伝子の配列は、yqhCオルソログ(ECA0352)とyqhDオルソログ(ECA0350)の間に推定ニトロ還元酵素遺伝子、ECA0351が存在するという点で独特であった。
【0336】
実施例15.EMFR9株は5−HMFに対して増大した耐性を示す
フルフラール耐性突然変異体、EMFR9に存在している突然変異も5−HMFに対する耐性を増大した(図24)。1.0g/Lの5−HMFにおいて、EMFR9による生育及びエタノール生産は5−HMFが存在していないLY180(親株)のそれと同等であった(図24A、24B)。発酵の最初の24時間の間に、細胞生産及びエタノール生産に有害な影響を及ぼさずに、EMFR9によって5−HMFが急速に代謝された。5−HMFのレベルが培養中にゆっくり減少したのにもかかわらず、1.0g/Lの5−HMFによってLY180の生育が完全に阻害された(図24A、24B、及び24C)。植菌なしで、減少は観察されなかった(データは示していない)ので、これは代謝活性の結果であるということが確認された。
【0337】
EMFR9を用いると、エタノール生産及び生育は2.5g/Lの5−HMFの混入によって遅延するが、96時間後に完了した(図24D、24E、及び24F)。この高レベルの5−HMFを伴う細胞及びエタノール生産は、5−HMFなしでのLY180に匹敵した。5−HMFのレベルはEMFR9によって急速にそして完全に減少した。LY180では、5−HMFの代謝は遅くて不完全であった(図24F)。
【0338】
実施例16.5−HMF耐性に対するYqhD及びDkgAの効果
EMFR9におけるフルフラール耐性は、2つのNADPH依存性酸化還元酵素、YqhD及びDkgAのサイレンシングに起因していることが先に明らかにされた(Miller et al. 2009b Appl Environ Microbiol 75: 4315-4323)。これらの活性体をコードする遺伝子をpCR2.1 TOPO内にクローン化し、EMFR9内に転写して、0.1mMのIPTGを用いて誘発した。細胞を採取し、破壊して、5−HMF還元酵素活性について試験した(図25A)。プラスミドからのyqhD及びdkgAの個々の発現は、NADPHの5−HMF依存性酸化の速度を5倍に増大して、YqhD及びDkgAが5−HMFを基質として用いることが確認された。
【0339】
プラスミドからのyqhD及びdkgAの個々の発現は5−HMFに対するEMFRの耐性を減少した(図25B)。プラスミド保持のためのカナマイシンの添加(12.5mg/L)は全ての菌株で5−HMF耐性を減少して、この実験において低濃度の5−HMF(1.0g/L)の使用を必要とした。プラスミドpCR2.1はIPTGの非存在下でクローン化した遺伝子を発現しやすい(Purvis et al. 2005 Appl Environ Microbiol 71:3761-3769)。yqhDの非誘導発現でも5−HMFに対するEMFR9の感受性を回復するのに十分であった。5−HMFによる生育阻害はyqhDの誘導によって更に増大した。dkgAの発現は、EMFR9における5−HMF感受性を保持するためには効果が弱く、誘導を必要とした。これら2つの酸化還元酵素の間の有効性の相違は、NADPHに対するDkgAの23μMと比較してYqhDの低い見掛けKm(8μM)に一致している(Miller et al. 2009b Appl Environ Microbiol. 75: 4315-4323)。
【0340】
LY180からのyqhDの欠失は2.5g/Lの5−HMFに対する耐性を増大した(図25C)。染色体にマーカーが残存している場合の欠失は効果が弱いが、yqhDの不活性化は全ての場合で5−HMF耐性に有益であることが確認された。
【0341】
実施例17.NADPHの利用可能性の増大は5−HMF耐性を増大した
プロトン転座型トランスハイドロゲナーゼpntAB(Keseler et al. 2009 Nucleic Acids Res 37: D464-70)をLY180内で過剰発現して(図26)NADPHの利用可能性を増大した。阻害因子の非存在下で(図26A)、ベクターを有するLY180(対照)及びLY180(pTrc99apntAB)の両方を同じ速度で生育した。IPTG(0.01mM)を用いるLY180(pTrc99a−pntAB)の誘導を5−HMFの非存在下で有害であった。しかしながら、非誘導LY180(pTrc99a pntAB)は、5−HMFの存在下(0.9g/L及び1.8g/L)でベクター対照より早く生育した。pntABの同様な効用がフルフラールを用いて先に観察されている(Miller et al. 2009b)。従って、両方のフランによる生育阻害は、フラン還元に起因して、生合成に必要なNADPHのプールを消耗すると思われる。更に、pntABの過剰発現は、フルフラールの非存在下でも、72時間後の総生育の増大をもたらし、生合成をこれらの条件下でNADPHによって制限できることを示した。
【0342】
硫黄の同化及びシステインの生合成は、NADPHにとって特に高い必要性を有する。システインの補完が、大腸菌LY180におけるフルフラール耐性を増大することは先に示された(Miller et al. 2009a Appl Environ Microbiol 75: 6132-6141)が、5−HMFに対しては有用性が低いことが分かった(図27)。LY180の生育は1g/Lの5−HMFによってある程度阻害されて、100μMのシステインの補完によって完全に回復した。2.5g/Lの5HMFの存在下での生育は、100μM又は1000μMのシステインによって回復しなかった(図27B)。フルフラールとは異なって、システインの補完は5−HMFに対するMICを増大しなかった。
【0343】
均等物
本明細書に記載されている本発明の特定の実施態様の多くの均等物を、当業者は認識し、或いは単に通常の実験程度のものを用いて確認することができるだろう。このような均等物は本発明に包含されることが意図されている。
【0344】
参照による取り込み
本明細書において特定されている全ての刊行物、特許出願及び特許はその全てが参照により明確に本明細書に取り込まれている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
当該細菌が参照する細菌と比較してフルフラールに対する耐性を増大している、単離された細菌。
【請求項2】
当該細菌がエタノール生産性である、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項3】
当該細菌が、参照する細菌と比較してエタノール生産を増大している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項4】
参照する細菌と比較して、yqhD遺伝子の発現が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項5】
参照する細菌における発現と比較して、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項6】
参照する細菌における発現と比較して、yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項7】
yghD遺伝子が発現されない、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項8】
yghD遺伝子及びdkgA遺伝子が発現されない、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項9】
yqhC遺伝子が発現されない、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項10】
参照する細菌と比較して、yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項4、5、7又は8の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項11】
yqhC遺伝子が欠失している、請求項4、5、7又は8の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項12】
参照する細菌と比較して、YqhDタンパク質の活性が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項13】
参照する細菌と比較して、YqhDタンパク質の活性及びDkgAタンパク質の活性が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項14】
参照する細菌と比較して、YqhCタンパク質の活性が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項15】
参照する細菌と比較して、yqhD遺伝子の発現の調節が修正されている、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項16】
参照する細菌の発現と比較して、yqhD遺伝子の発現の調節及びdkgA遺伝子の調節が修正されている、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項17】
参照する細菌の発現と比較して、yqhC遺伝子の発現の調節が修正されている、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項18】
参照する細菌と比較して、yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項12、13、15又は16の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項19】
yqhC遺伝子が欠失している、請求項12、13、15又は16の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項20】
yqhD遺伝子のプロモーター又は調節タンパク質の活性に変化がある、請求項12又は13に記載の単離された細菌。
【請求項21】
dkgA遺伝子のプロモーター又は調節タンパク質の活性に変化がある、請求項13に記載の単離された細菌。
【請求項22】
アンチセンスRNAの付加によってYqhD、DkgA、及び/又はYqhCタンパク質のレベルが減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項23】
siRNAの付加によってYqhD、DkgA、及び/又はYqhCタンパク質のレベルが減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項24】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補突然変異株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する突然変異体を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌。
【請求項25】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌。
【請求項26】
NADPH依存性フルフラール還元酵素がYqhD又はDkgAである、請求項24又は25に記載の単離された細菌。
【請求項27】
NADPH依存性フルフラール還元酵素がYqhD及びDkgAである、請求項24又は25に記載の単離された細菌。
【請求項28】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌は工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、yqhD遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項29】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、yqhD遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項30】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項31】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項32】
yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項28〜31の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項33】
yqhC遺伝子が欠失している、請求項28〜31の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項34】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、yqhC遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項35】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、yqhC遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項36】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)yqhD遺伝子の発現を減少すること;
b)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
c)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌。
【請求項37】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現を減少すること;
b)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
c)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌。
【請求項38】
yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項36又は37に記載の単離された細菌。
【請求項39】
yqhC遺伝子が欠失している、請求項36又は37に記載の単離された細菌。
【請求項40】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)yqhC遺伝子の発現を減少すること;
b)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
c)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌。
【請求項41】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)yqhD遺伝子の発現を減少すること;
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、yqhD遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項42】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現を減少すること;
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項43】
yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項41又は42に記載の単離された細菌。
【請求項44】
yqhC遺伝子が欠失している、請求項41又は42に記載の単離された細菌。
【請求項45】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)yqhC遺伝子の発現を減少すること;
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、yqhC遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項46】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、YqhDタンパク質の活性が減少又は除去されている単離された細菌。
【請求項47】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、YqhDタンパク質の活性が減少している単離された細菌。
【請求項48】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、YqhDタンパク質及びDkgAタンパク質の活性が減少又は除去されている単離された細菌。
【請求項49】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、YqhDタンパク質及びDkgAタンパク質の活性が減少している単離された細菌。
【請求項50】
yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項46〜49の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項51】
yqhC遺伝子が欠失している、請求項46〜49の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項52】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、YqhCタンパク質の活性が減少又は消去されている単離された細菌。
【請求項53】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、YqhCタンパク質の活性が減少している単離された細菌。
【請求項54】
参照する細菌と比較して、当該細菌が、フルフラールの存在下におけるエタノール生産を増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項55】
参照する細菌と比較して、当該細菌が、5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)の存在下におけるエタノール生産を増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項56】
参照する細菌と比較して、当該細菌が、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、及び桂皮アルデヒドよりなる群から選ばれるアルデヒドの存在下におけるエタノール生産を増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項57】
参照する細菌と比較して、当該細菌が、メチルグリオキサールの存在下におけるエタノール生産を増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項58】
参照する細菌と比較して、当該細菌が、フルフラールの還元的除去のレベルが減少している場合に、エタノール生産を増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項59】
参照する細菌と比較して、当該細菌が、フルフラールの代謝を減少している、請求項1〜52の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項60】
当該細菌が検出可能なフルフラールの代謝を示さない、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項61】
参照する細菌と比較して、当該細菌の生育が増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項62】
参照する細菌と比較して、当該細菌のフルフラールの存在下での生育が増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項63】
参照する細菌と比較して、当該細菌のフルフラールの存在下での生育が増大し及びエタノール生産が増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項64】
参照する細菌と比較して、当該細菌の5−HMFの存在下での生育が増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項65】
参照する細菌と比較して、当該細菌の5−HMFの存在下での生育が増大し及びエタノール生産が増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項66】
参照する細菌と比較して、当該細菌がフルフラール還元酵素活性を減少する、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項67】
当該細菌がNADPHの5−HMF依存性酸化の速度を減少する、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項68】
yqhC遺伝子中のIS10の挿入にによってyqhC遺伝子の発現が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項69】
参照する細菌と比較して、当該細菌が加水分解物の存在下での生育を増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項70】
加水分解物が、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス又はセルロース系バイオマスに由来している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項71】
当該細菌が主発酵産物としてエタノールを生産する、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項72】
エタノールが嫌気的条件下で生産される、請求項71に記載の単離された細菌。
【請求項73】
エタノールが微好気的条件下で生産される、請求項71に記載の単離された細菌。
【請求項74】
当該細菌が非組み換え型である、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項75】
当該細菌が組み換え型である、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項76】
当該細菌がグラム陰性である、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項77】
当該細菌がグラム陽性である、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項78】
グラム陰性細菌が、アシネトバクター属、グルコノバクター属、ザイモモナス属、エシェリキア属、ジオバクター属、シェワネラ属、サルモネラ属、エンテロバクター属及びクレブシエラ属よりなる群から選ばれる、請求項76に記載の単離された細菌。
【請求項79】
グラム陽性菌が、バチルス属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、オエノコッカス属、ストレプトコッカス属及びユーバクテ
リウム属よりなる群から選ばれる、請求項77に記載の単離された細菌。
【請求項80】
細菌が大腸菌である、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項81】
細菌がクレブシエラ・オキシトカである、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項82】
細菌が、大腸菌EMFR9株である、請求項80に記載の非組み換え型細菌。
【請求項83】
バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖を、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌と接触させて、それによってバイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産することを含有してなる、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法。
【請求項84】
バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖を、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌と接触させて、それによってバイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産することを含有してなる、フルフラールの存在下で、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法。
【請求項85】
請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌を含有してなる、キット。
【請求項86】
Agricultural Research Culture Collection に寄託された、寄託番号NRRL B−50239で表される、大腸菌LY180株。
【請求項87】
請求項83又は84に記載の方法で生産されたエタノール。
【請求項88】
yqhC遺伝子の非存在下で発現の増大又は減少を示す遺伝子を含有してなる、マイクロアレイ。
【請求項89】
図28に示される配列及びその断片、並びにそれらの突然変異体を含有してなる、単離されたyqhDプロモーター。
【請求項90】
フルフラール、5−HMF、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、桂皮アルデヒド、及びメチルグリオキサールの内の少なくとも1つの存在下で、参照する細菌と比較して、遺伝子の発現を調節するための、yqhDプロモーターの使用。
【請求項91】
参照する細菌と比較して、当該細菌がフルフラールに対する耐性を増大して、そして参照する細菌と比較して、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性が減少している、単離された細菌。
【請求項92】
当該NADPH依存性酸化還元酵素が、YqhDのKm及び/又はDkgAのKm未満か又は等しいKmを有している、請求項91に記載の単離された細菌。
【請求項93】
Agricultural Research Culture Collection に寄託された、寄託番号NRRL B−50240で表される、大腸菌EMFR9株。
【請求項94】
Agricultural Research Culture Collection に寄託された、寄託番号NRRL B−50241で表される、大腸菌EMFR17株。
【請求項95】
Agricultural Research Culture Collection に寄託された、寄託番号NRRL B−50242で表される、大腸菌EMFR26株。
【請求項96】
Agricultural Research Culture Collection に寄託された、寄託番号NRRL B−50243で表される、大腸菌EMFR35株。
【請求項1】
当該細菌が参照する細菌と比較してフルフラールに対する耐性を増大している、単離された細菌。
【請求項2】
当該細菌がエタノール生産性である、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項3】
当該細菌が、参照する細菌と比較してエタノール生産を増大している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項4】
参照する細菌と比較して、yqhD遺伝子の発現が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項5】
参照する細菌における発現と比較して、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項6】
参照する細菌における発現と比較して、yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項7】
yghD遺伝子が発現されない、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項8】
yghD遺伝子及びdkgA遺伝子が発現されない、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項9】
yqhC遺伝子が発現されない、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項10】
参照する細菌と比較して、yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項4、5、7又は8の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項11】
yqhC遺伝子が欠失している、請求項4、5、7又は8の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項12】
参照する細菌と比較して、YqhDタンパク質の活性が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項13】
参照する細菌と比較して、YqhDタンパク質の活性及びDkgAタンパク質の活性が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項14】
参照する細菌と比較して、YqhCタンパク質の活性が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項15】
参照する細菌と比較して、yqhD遺伝子の発現の調節が修正されている、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項16】
参照する細菌の発現と比較して、yqhD遺伝子の発現の調節及びdkgA遺伝子の調節が修正されている、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項17】
参照する細菌の発現と比較して、yqhC遺伝子の発現の調節が修正されている、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項18】
参照する細菌と比較して、yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項12、13、15又は16の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項19】
yqhC遺伝子が欠失している、請求項12、13、15又は16の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項20】
yqhD遺伝子のプロモーター又は調節タンパク質の活性に変化がある、請求項12又は13に記載の単離された細菌。
【請求項21】
dkgA遺伝子のプロモーター又は調節タンパク質の活性に変化がある、請求項13に記載の単離された細菌。
【請求項22】
アンチセンスRNAの付加によってYqhD、DkgA、及び/又はYqhCタンパク質のレベルが減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項23】
siRNAの付加によってYqhD、DkgA、及び/又はYqhCタンパク質のレベルが減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項24】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補突然変異株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する突然変異体を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌。
【請求項25】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌。
【請求項26】
NADPH依存性フルフラール還元酵素がYqhD又はDkgAである、請求項24又は25に記載の単離された細菌。
【請求項27】
NADPH依存性フルフラール還元酵素がYqhD及びDkgAである、請求項24又は25に記載の単離された細菌。
【請求項28】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌は工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、yqhD遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項29】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、yqhD遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項30】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項31】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項32】
yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項28〜31の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項33】
yqhC遺伝子が欠失している、請求項28〜31の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項34】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、yqhC遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項35】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、yqhC遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項36】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)yqhD遺伝子の発現を減少すること;
b)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
c)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌。
【請求項37】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現を減少すること;
b)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
c)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌。
【請求項38】
yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項36又は37に記載の単離された細菌。
【請求項39】
yqhC遺伝子が欠失している、請求項36又は37に記載の単離された細菌。
【請求項40】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)yqhC遺伝子の発現を減少すること;
b)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
c)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、NADPH依存性フルフラール還元酵素活性の発現が減少している単離された細菌。
【請求項41】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)yqhD遺伝子の発現を減少すること;
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、yqhD遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項42】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現を減少すること;
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、yqhD遺伝子及びdkgA遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項43】
yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項41又は42に記載の単離された細菌。
【請求項44】
yqhC遺伝子が欠失している、請求項41又は42に記載の単離された細菌。
【請求項45】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)yqhC遺伝子の発現を減少すること;
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、yqhC遺伝子の発現が減少している単離された細菌。
【請求項46】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、YqhDタンパク質の活性が減少又は除去されている単離された細菌。
【請求項47】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、YqhDタンパク質の活性が減少している単離された細菌。
【請求項48】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、YqhDタンパク質及びDkgAタンパク質の活性が減少又は除去されている単離された細菌。
【請求項49】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、YqhDタンパク質及びDkgAタンパク質の活性が減少している単離された細菌。
【請求項50】
yqhC遺伝子の発現が減少している、請求項46〜49の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項51】
yqhC遺伝子が欠失している、請求項46〜49の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項52】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)フルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、YqhCタンパク質の活性が減少又は消去されている単離された細菌。
【請求項53】
当該細菌がエタノールを生産できて、そして当該細菌が工程:
a)増大する濃度のフルフラールの存在下で細菌の候補株を生育すること;及び
b)フルフラールの存在下でエタノールを生産する細菌を選択すること:
を含有してなる処理工程によって調製される、参照する細菌と比較して、YqhCタンパク質の活性が減少している単離された細菌。
【請求項54】
参照する細菌と比較して、当該細菌が、フルフラールの存在下におけるエタノール生産を増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項55】
参照する細菌と比較して、当該細菌が、5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)の存在下におけるエタノール生産を増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項56】
参照する細菌と比較して、当該細菌が、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、及び桂皮アルデヒドよりなる群から選ばれるアルデヒドの存在下におけるエタノール生産を増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項57】
参照する細菌と比較して、当該細菌が、メチルグリオキサールの存在下におけるエタノール生産を増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項58】
参照する細菌と比較して、当該細菌が、フルフラールの還元的除去のレベルが減少している場合に、エタノール生産を増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項59】
参照する細菌と比較して、当該細菌が、フルフラールの代謝を減少している、請求項1〜52の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項60】
当該細菌が検出可能なフルフラールの代謝を示さない、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項61】
参照する細菌と比較して、当該細菌の生育が増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項62】
参照する細菌と比較して、当該細菌のフルフラールの存在下での生育が増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項63】
参照する細菌と比較して、当該細菌のフルフラールの存在下での生育が増大し及びエタノール生産が増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項64】
参照する細菌と比較して、当該細菌の5−HMFの存在下での生育が増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項65】
参照する細菌と比較して、当該細菌の5−HMFの存在下での生育が増大し及びエタノール生産が増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項66】
参照する細菌と比較して、当該細菌がフルフラール還元酵素活性を減少する、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項67】
当該細菌がNADPHの5−HMF依存性酸化の速度を減少する、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項68】
yqhC遺伝子中のIS10の挿入にによってyqhC遺伝子の発現が減少している、請求項1に記載の単離された細菌。
【請求項69】
参照する細菌と比較して、当該細菌が加水分解物の存在下での生育を増大している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項70】
加水分解物が、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス又はセルロース系バイオマスに由来している、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項71】
当該細菌が主発酵産物としてエタノールを生産する、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項72】
エタノールが嫌気的条件下で生産される、請求項71に記載の単離された細菌。
【請求項73】
エタノールが微好気的条件下で生産される、請求項71に記載の単離された細菌。
【請求項74】
当該細菌が非組み換え型である、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項75】
当該細菌が組み換え型である、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項76】
当該細菌がグラム陰性である、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項77】
当該細菌がグラム陽性である、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項78】
グラム陰性細菌が、アシネトバクター属、グルコノバクター属、ザイモモナス属、エシェリキア属、ジオバクター属、シェワネラ属、サルモネラ属、エンテロバクター属及びクレブシエラ属よりなる群から選ばれる、請求項76に記載の単離された細菌。
【請求項79】
グラム陽性菌が、バチルス属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、オエノコッカス属、ストレプトコッカス属及びユーバクテ
リウム属よりなる群から選ばれる、請求項77に記載の単離された細菌。
【請求項80】
細菌が大腸菌である、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項81】
細菌がクレブシエラ・オキシトカである、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌。
【請求項82】
細菌が、大腸菌EMFR9株である、請求項80に記載の非組み換え型細菌。
【請求項83】
バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖を、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌と接触させて、それによってバイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産することを含有してなる、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法。
【請求項84】
バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖を、請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌と接触させて、それによってバイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産することを含有してなる、フルフラールの存在下で、バイオマス、ヘミセルロース系バイオマス、リグノセルロース系バイオマス、セルロース系バイオマス又はオリゴ糖源からエタノールを生産する方法。
【請求項85】
請求項1〜53の何れか一項に記載の単離された細菌を含有してなる、キット。
【請求項86】
Agricultural Research Culture Collection に寄託された、寄託番号NRRL B−50239で表される、大腸菌LY180株。
【請求項87】
請求項83又は84に記載の方法で生産されたエタノール。
【請求項88】
yqhC遺伝子の非存在下で発現の増大又は減少を示す遺伝子を含有してなる、マイクロアレイ。
【請求項89】
図28に示される配列及びその断片、並びにそれらの突然変異体を含有してなる、単離されたyqhDプロモーター。
【請求項90】
フルフラール、5−HMF、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、桂皮アルデヒド、及びメチルグリオキサールの内の少なくとも1つの存在下で、参照する細菌と比較して、遺伝子の発現を調節するための、yqhDプロモーターの使用。
【請求項91】
参照する細菌と比較して、当該細菌がフルフラールに対する耐性を増大して、そして参照する細菌と比較して、NADPH依存性酸化還元酵素の発現及び/又は活性が減少している、単離された細菌。
【請求項92】
当該NADPH依存性酸化還元酵素が、YqhDのKm及び/又はDkgAのKm未満か又は等しいKmを有している、請求項91に記載の単離された細菌。
【請求項93】
Agricultural Research Culture Collection に寄託された、寄託番号NRRL B−50240で表される、大腸菌EMFR9株。
【請求項94】
Agricultural Research Culture Collection に寄託された、寄託番号NRRL B−50241で表される、大腸菌EMFR17株。
【請求項95】
Agricultural Research Culture Collection に寄託された、寄託番号NRRL B−50242で表される、大腸菌EMFR26株。
【請求項96】
Agricultural Research Culture Collection に寄託された、寄託番号NRRL B−50243で表される、大腸菌EMFR35株。
【図1】
【図2A−C】
【図2D−F】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B−C】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29A−1】
【図29A−2】
【図29A−3】
【図29A−4】
【図29B−1】
【図29B−2】
【図2A−C】
【図2D−F】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B−C】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29A−1】
【図29A−2】
【図29A−3】
【図29A−4】
【図29B−1】
【図29B−2】
【公表番号】特表2012−519485(P2012−519485A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552952(P2011−552952)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/020051
【国際公開番号】WO2010/101665
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(506040249)ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク. (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/020051
【国際公開番号】WO2010/101665
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(506040249)ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク. (3)
【Fターム(参考)】
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