説明

エチレン−C4−C20−アルケンコポリマー

1.3未満の多分散性および/または主にcis−1,2形態での鎖結合を有するポリ(エチレン−コ−C−C20−アルケン)コポリマーまたはセグメントおよび/またはポリ(エチレン−コ−C−C20単環式アルケン)コポリマーまたはセグメントが、ある例では超高分子量ポリエチレンの代替物を、およびある例ではポリプロピレンの代替物を、およびある例ではガスバリアコーティングとしての有用性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくとも一部、United States National Science Foundation Materials Research Science and Engineering Centers program DMR-0079992の下、米国政府の援助により行った。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
技術分野
本発明は、エチレン−C−C20−アルケンコポリマーに関する。
【0003】
背景技術
超高分子量ポリエチレンは、例えば、摩耗耐性層として、皮膚の最下層および人工股関節インプラントに使用されている。この物質は、ほとんど加工できず、型どりが困難であり、機械処理または焼結が必要であるとの欠点を有する。
【0004】
ポリプロピレンは、多くの適用に有用であるが、高温安定性を必要とする適用、例えば、鋳造された自動車エンジン部の製造には有用ではない。
【0005】
エチレン−シクロペンテンコポリマーは既知である。ほとんど全ての場合、該コポリマーは、1,3−鎖結合(enchainment)が結晶化および高い程度の立体規則性を妨げるまで、シクロペンテン単位のcis−1,3−鎖結合を含んで成る。cis−1,2挿入および立体規則性が得られ得る場合、該コポリマーは、高い、例えば2.0を超える多分散性を有し、故に均質性を欠く。
【0006】
発明の概要
本発明により、エチレン−C−C20−アルケンコポリマーが低い多分散性および/または主に、ある例では超高分子量ポリエチレンで有利な置換であり、他の例ではガスバリアコーティングに有用であり、さらに別の例ではポリプロピレンの有益で、かつポリプロピレンよりも高い熱安定性を有する代替物であるcis−1,2−鎖結合で得ることができることが判明した。
【0007】
ここでの一つの態様において、第一の態様と呼ぶが、本発明は、エチレンとC−C20−アルケンのコポリマー(ここで、アルケンはアルファ−オレフィンまたは単環式オレフィンである)であって、0.1から50mol%の該アルケンを含み、残りはエチレンであり、該アルケン単位は50から100%が孤立しており、すなわち、別のこのアルケン単位に結合しておらず、例えば、70から100%が孤立しており、該コポリマーは10,000から2,700,000g/molの範囲の数平均分子量を有し、かつアルケンが直鎖アルケンであるとき1.3未満の多分散性(polydispersity)を有し、アルケンが単環式アルケンであるとき、2.0未満、好ましくは1.6未満、非常に好ましくは1.3未満の多分散性を有するものである、コポリマーに関する。第一の態様のコポリマーは、例えば、皮膚の最下層および人工股関節インプラント上のコーティングのための超高分子量ポリエチレンの有益な代替物であり、超高分子量ポリエチレンの良好な摩耗耐性を有し、かつ成型が容易である。
【0008】
他の態様において、第二の態様と呼ぶが、本発明は、エチレンと直鎖または単環式アルケンのコポリマーであって、0.1から5mol%の該アルケンを含み、残りはエチレンであり、該アルケン単位は50から100%が孤立しており、すなわち、別のこのアルケン単位に結合しておらず、例えば、70から100%が孤立しており、該コポリマーは10,000から2,700,000g/molの数平均分子量を有し、かつコポリマーがエチレンと単環式アルケンのコポリマーであるとき、2.0未満、好ましくは1.6未満、非常に好ましくは1.3未満の多分散性を有し、コポリマーがエチレンと直鎖アルケンのコポリマーであるとき、2.0未満、好ましくは1.6未満、非常に好ましくは1.3未満の多分散性を有する、コポリマーに関する。この態様のコポリマーは、第一の態様と同じ有用性を有する。
【0009】
他の態様において、第三の態様と呼ぶが、本発明は、エチレンとシクロペンテンのコポリマーであって、50%を超えるものがcis−1,2アイソタクチック形態で鎖結合している10から50mol%シクロペンテンを含み、コポリマーの残りがエチレンであり、10,000から2,700,000g/molの範囲の数平均分子量を有し、単様式(monomodal)分子量分布を有する、コポリマーに関する。第三の態様のコポリマーは、アイソタクチックポリプロピレンの代替物として有用であり、アイソタクチックポリプロピレンよりも良好な熱安定性を有する。
【0010】
ここでさらに別の態様において、第四の態様と呼ぶが、本発明は、エチレンとシクロペンテンのコポリマーであって、50%を超えるものが2−非アイソタクチック形態で鎖結合している1から49mol%シクロペンテンを含み、10,000から2,700,000g/molの範囲の数平均分子量を有し、かつ4未満の多分散性を有する。第四の態様のコポリマーは、ガスバリアコーティングとして有用である。
【0011】
ここでなおさらに別の態様において、第五の態様と呼ぶが、本発明は、(a)5,000から500,000g/mol、例えば、5,000から200,000の範囲の数平均分子量を有するポリ(C−C20−アルケン−コ−エチレン)(ここで、(C−C20−アルケンは直鎖または単環式オレフィンであり、1から45mol%の該アルケン成分と99から55mol%のエチレン成分を含む)の少なくとも1個のブロック、および(b)ポリ(C−C10オレフィン)ホモポリマーおよび/または2個またはそれ以上のC−C10オレフィンのコポリマーの(b)少なくとも1個のブロックを含むブロックコポリマーであって、ここで、ブロック(b)は5,000から500,000g/mol、例えば、5,000から200,000g/molの範囲の数平均分子量を有し、ここで、(a)およびブロック(b)(複数もある)は、互いに化学構造が異なるものである、ブロックコポリマーに関する。該ブロックコポリマーは、ポリプロピレンの代替物として有用である。
【0012】
ここでのさらに別の態様において、第六の態様と呼ぶが、本発明は、エチレンと直鎖または単環式C−C20アルケンを、ほとんど鎖を示さない転移触媒の存在下反応させることを含む、第一の態様のコポリマーの製造法に関する。
【0013】
ここでの数平均分子量(M)、重量平均分子量(M)および多分散性(M/M)は、1,2,4−トリクロロベンゼンにおいて140℃で、高温ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)でポリスチレン標準に対して決定する。
【0014】
1,2−および1,3−鎖結合は下記に示す:
【化1】

【0015】
詳細な記載
今度は、我々は、本発明の第一の態様を詳述する。アルケンがアルファオレフィンであるとき、それは、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンまたは1−エイコセンであり得る。アルケンが単環式アルケンであるとき、それは、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロデセンまたはシクロドデセンであり得る。第一の態様の一例では、該アルケンはシクロペンテンであり、50%より多い、例えば、94から100%の該シクロペンテンがcis−1,2形態でで鎖結合している。
【0016】
第一の態様のコポリマーは、Fujita, M., et al, Macromolecules 35, 9640-9647 (2002)の表1−9に挙げられたものを含み、その中にそして表1に関して記載の通り製造できる。加えて、第一の態様のコポリマーは、Fujita, M., et al, Macromolecules 35,9640-9647 (2002)に記載の通り、Daubin, W. G., et al, Tetrahedron 12, 186-189 (1961)またはChapman, O.O., et al, J. Am. Chem. Soc. 84,1220-1224 (1962)に記載の通りに製造できるビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−エンの開環メタセシス重合化により製造できる。
【0017】
第一の態様のコポリマーは、Natta, G., et al, Makromol. Chem 54, 95-101 (1962)記載のものと、少なくとも多分散性の限定により異なる。
【0018】
我々は、今度は本発明の第二の態様を詳述する。
単環式アルケンは、例えば、第一の態様の記載で挙げたもののいずれでもよい。第二の態様のエチレンとシクロペンテンのコポリマーは、該表1に記載の条件を使用するが、少ないシクロペンテンで製造した。この方法で製造したサンプルおよびそれらの特性を欠き表に示し、表中、CPはシクロペンテンを意味し、Tは融点(10℃/分で操作する示差走査熱量計で、記載の融点は、2回目のランについてである)、Mは数平均分子量であり、そしてPDIは多分散性を意味する。
【0019】
【表1】

【0020】
我々は、今度は本発明の第三の態様を詳述する。
第三の態様のコポリマーは、Fujita, M., et al, Macromolecules 35, 9640-9647 (2002)に記載の通り、ビシクロ[3.2.0]ヘプト−6−エンの、Stremから入手可能な2,6−ジイソプロピルフェニルイミドンネオフィリデン(2,6-diisopropylphenylimedoneophylidene)[rac-BIPHEN]モリブデニウムVIを使用した開環メタセシス重合化により製造できる。CHCl(1mol)中の触媒複合体をモノマー(M)溶液に添加し、反応を8.5マイクロモル触媒(C)および450の[M]/[C]比を使用し、かつ1分間行う。得られるポリマー(0.20−0.25g)を、トルエンに4から5gのp−トルエンスルホンヒドラジドと0.05g 2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールと共に溶解し、9時間還流後、反応はアイソタクチックの完全に変換した、13C NMRで測定して、211,000g/molの数平均分子量、1.55の多分散性および17.0℃のTおよび181.6℃のTを有する、エチレンとシクロペンテンのポリマーをもたらす。コポリマーは、シクロペンテンの1,3−単位を含まず、従って、シクロペンテンの1,2−鎖伸長のみである。該コポリマーは、単様式分子量分布(GPCで1ピーク)を有し、これに基づいてNatta, G., et al, Makromol. Chem. 54,95-101 (1962)のコポリマーと区別される。
【0021】
我々は、今度は本発明の第四の態様を詳述する。
“非アイソタクチック”は、コポリマー中の90%未満のm−dyadsを意味する。
第四の態様に合うコポリマーは、Fujita, M., et al., Macromolecules 35, 9640-9647 (2002)の表1に記載され、その中にそして表1に関して記載の条件下で製造できる。cis−1,2限定に合うコポリマーを得るために、ベータ水素化物脱離なしのリビング重合を提供する触媒を使用する。メチルアルミノキサンと併用するフェノキシ−イミン−ベースのチタン触媒がこの結果を提供する。この目的で有用であり、そして該表1に使用されている、特に有用なフェノキシ−イミン−ベースのチタン触媒は、Tian, J., et al., J. Am. Chem. Soc. 123, 5134-5135 (2001)に記載の通り製造される。
【0022】
Fujita, M., et al., Macromolecules 35,9640-9647 (2002)に示される通り、Tは、シクロペンテン含量の増加と共に上昇した。Fujita, M., et al., Macromolecules 35,9640-9647 (2002)の図8参照。
Fujita, M., et al., Macromolecules 35, 9640-9647 (2002)の表1に示す通り、40℃未満、例えば25℃または0℃の処理温度で、1,3−鎖結合はなかった。
第四の態様のコポリマーは、Natta, G., et al, Makromol. Chem. 54, 95-101 (1962)のものと、Natta et alが非アイソタクチックコポリマーを製造しないことに基づいて区別される。
【0023】
我々は、今度は本発明の第五の態様、すなわち、ポリエチレンとポリ(C−C20−アルケン−コ−エチレン)のブロックコポリマーに関する態様を詳述する。一例で、該アルケンはシクロペンテンであり、50%を超える、例えば、94−100%のシクロペンテンがcis−1,2形態で鎖結合している。これらは、メチルアルミノキサンと併用して、フェノキシ−イミン−ベースのチタン触媒、例えばTian, J., et al, J. Am. Chem. Soc. 123,5134-5135 (2001)に記載の通り製造した、Fujita M., et al., Macromolecules 35, 9640-9647 (2002)の図5に記載の触媒3を使用し、エチレン例えば40psiの存在下で使用し、ポリエチレンのブロックを提供するためにエチレン重合化が起こった後、例えば2分後、エチレン圧を、例えば2psiに低下させ、C−C20−アルケン、例えば、シクロペンテンをリアクターに添加し、ポリ(C−C20−アルケン−コ−エチレン)のブロックを提供するために重合化させ、必要であれば、その後ポリエチレンの別のブロックを、例えばエチレン圧を上昇させることにより添加し、そして、必要であればその後さらに多くのブロックを同様の方法で添加することにより容易に製造できる。作業実施例はFujita, M., et al., Macromolecules 35, 9640-9647 (2002)の表2および3およびFujita et alの記載に明示されている。
【0024】
我々は、今度は本発明の第六の態様を詳述する。適当な触媒は、ここの第四の態様と関連して記載のフェノキシ−イミン−ベースのチタン触媒である。
本発明は、Fujita, M. and Coates, G. W., Macromolecules 35,9640-9647 (2002)に明示の、実験ならびにその結果および結論により支持される。
【0025】
変法
本発明の前記の記載は、ある種の操作および好ましい態様を記載するために提供している。本発明は、全てが本発明の精神および範囲内であるその変法および修飾が当分野の当業者には明白であるため、そのように限定すべきであると意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンと直鎖または単環式アルケンのコポリマーであって、0.1から5mol%の該アルケンを含み、残りはエチレンであって、50から100%の孤立したアルケン単位を伴い、該コポリマーは、10,000から2,700,000g/molの範囲の数平均分子量を有し、かつコポリマーがエチレンと単環式アルケンのコポリマーであるとき2.0未満の多分散性を有し、コポリマーがエチレンと直鎖アルケンのコポリマーであるとき、2.0未満の多分散性を有するものである、コポリマー。
【請求項2】
多分散性が1.6未満である、請求項1記載のコポリマー。
【請求項3】
多分散性が1.3未満である、請求項1記載のコポリマー。
【請求項4】
500,000から2,700,000g/molの平均分子量を有する、請求項3記載のコポリマー。
【請求項5】
1,000,000g/molより大きい数平均分子量を有する、請求項3記載のコポリマー。

【公表番号】特表2007−511637(P2007−511637A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539548(P2006−539548)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/035518
【国際公開番号】WO2005/052014
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(592035453)コーネル・リサーチ・ファンデーション・インコーポレイテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】CORNELL RESEARCH FOUNDATION, INCORPORATED
【Fターム(参考)】