説明

エチレン的に又はアセチレン的に不飽和である化合物のカルボニル化のための方法

(a)パラジウム及び/又はプラチナソース;及び(e)式I、R>P−R−P<R (I)の、非対称二座ジホスフィン配位子(式中、P及びPは、リン原子を表し;Rは、二価有機架橋原子団を表し;R、R、R及びRは、それぞれ独立に、又はR及びRは一緒に、及び/又はR及びRは一緒に、該リンに共有結合させられた有機基を表し;R、R、R及びRは、ホスフィノ基R>Pが、ホスフィノ基P<Rと異なるように選択される。)を含む触媒システムの存在下で不飽和化合物を一酸化炭素と接触させることによる、不飽和化合物のカルボニル化のための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン的に又はアセチレン的に不飽和である化合物のカルボニル化のための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
本願において、カルボニル化という用語は、例えば、EP−A−0,495,548及びEP−A−0,565,199、WO−A−96/19434、WO−A−98/42717、WO−A−01/68583及びWO−A−01/72697で述べられているように、一酸化炭素及び、可動性水素原子を有する共反応物質との、遷移金属錯体による、触媒下におけるアルケン又はアルキニル、つまりエチレン的又はアセチレン的に非共役の不飽和化合物の反応を指す。本発明の方法の結果、共反応物質の性質に依存して、カルボン酸生成物、又は、エステル、アミドもしくは無水物などのカルボン酸誘導体が得られる。
【0003】
EP−A−0,495,548は、パラジウム陽イオン及び、例えば1,3ビス(ジ−第三ブチルホスフィノ)プロパンなどの、ジアルキル置換ホスフィノ基を有するジホスフィン二座配位子を含有する、触媒システム及び様々なカルボニル化反応におけるそのような触媒の使用を開示する。
【0004】
この開示されている触媒システムは、カルボニル化反応において良好な活性を示すが、工業スケールでの本発明の方法の適用のためには、さらに触媒活性及び所望する生成物に対する選択性を向上させる必要がある。
【0005】
本発明の要約
今回、元素の周期表の8、9又は10から選択される金属陽イオン及び非対称ジホスフィン配位子に基づく触媒システムが、エチレン的に、又はアセチレン的に不飽和である化合物をカルボニル化する活性が向上し、それにより、結果として、カルボニル化プロセスが顕著に改善されることが分かった。
【0006】
したがって、本発明は、
(a)パラジウム及び/又はプラチナソース;及び
(b)式I、
>P−R−P<R (I)
の、非対称二座ジホスフィン配位子(式中、P及びPは、リン原子を表し;Rは、二価有機架橋原子団を表し;R、R、R及びRは、それぞれ独立に、又はR及びRは一緒に、及び/又はR及びRは一緒に、該リンに共有結合する有機置換基を表し;ただし、R、R、R及びRは、ホスフィノ基R>Pが、ホスフィノ基P<Rと異なるように選択される。)を含む触媒システムの存在下で、不飽和化合物を、一酸化炭素及び、可動水素原子を有する共反応物質と接触させることによる、エチレン的に、又はアセチレン的に不飽和である化合物のカルボニル化のための方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本方法は、(a)パラジウム又はプラチナの金属陽イオンソースを、上記で定義したようなジホスフィン配位子と組み合わせることにより得ることができる触媒システムを使用する。1又は複数のこれらの金属陽イオンソースは、様々なカルボニル化反応において使用され得る。これらの金属陽イオンの中で、オレフィン的に不飽和である置換基が関与するカルボニル化反応に対して、パラジウム(Pd)が特に好ましく、一方、アセチレン的に不飽和である基質に対して、及びエチレン的に不飽和である化合物に対して(分枝生成物が望ましい場合)、プラチナ(Pt)が非常に好ましい。
【0008】
適切な金属ソースの例は、Pd及び/又はPt及び硝酸、硫酸又はスルホン酸の塩、Pd及びPt及び/又は12個以下の炭素原子のカルボン酸の塩、Pd及び/又はPt錯体、例えば、一酸化炭素及び/又はアセチルアセトナートとの錯体、又はイオン交換体などの固体材料と組合わされたPd及び/又はPtなどの、金属化合物である。酢酸Pd及び/又はPt及びアセチルアセトナートは好ましい金属ソースの例である。
【0009】
本触媒システムは、さらに、成分(b)式I、
>P−R−P<R (I)
の、非対称ジホスフィン(式中、P及びPは、リン原子を表し、Rは、二価有機架橋原子団を表し、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、又はR及びRは一緒に、及び/又はR及びRは一緒に、該リン原子に共有結合する有機置換基を表し;ただし、R、R、R及びRは、ホスフィノ基R>Pが、ホスフィノ基P<Rと異なるように選択される。)を含む。
【0010】
に結合する置換基R及びRが、Pに結合する置換基R及びRと非常に類似している場合でも、対応する対称ジホスフィンと比較して、非対称ジホスフィンは、有益な効果を示す。特定の理論に縛られることを望まず、置換基が異なる結果、リン原子における電子密度が異なると考えられる。配位子における、異なる電子密度を有する2個の結合リン部位の存在は、反応速度において有益な効果を有すると思われる。本配位子の、ホスフィノフラグメント、P及びPの電子供与能の相違は、都合よく、Chemical Reviews,1977,Vol.77,313−348ページで述べられるように、単座ホスフィン配位子に対する、C.Tolmanにより開発された方法により測定され得る。この方法において、ホスフィン配位子の電子供与能は、PをNi(CO)(ホスフィン)錯体にするために、(単座)ホスフィンの1当量をNi(CO)と反応させ、次いで、Ni(CO)(ホスフィン)錯体のカルボニルnCO IR伸縮振動数(高エネルギーモードで非常にシャープである。)を測定することにより決定される。ホスフィン配位子は、より大きい電子密度を金属中心に与え、それゆえ、電子供与能がより高く、測定されるnCO IR伸縮振動数がより低くなる。ジホスフィン(b)において、置換基R、R、R又はRのうち1個のみが他の置換基と異なる場合でも、その2個のリン原子は異なる電子密度を有することとなろう。
【0011】
したがって、配位子(b)の遷移金属カルボニル錯体に対して測定することができる、個々のより低いnCO IR伸縮振動数により例示されるように、置換基RからRは、P又はPの一方が、他方のリン原子よりも低い電子密度を有するように選択される。都合よく、リン原子P又はPの一方が、R及びRと比較して、少なくとももう1個の電子供与置換基R及び/又はRを有するように、又はその逆となるように、R、R、R及びRを選択することにより、リン原子Pの電子密度とPの電子密度を異なるものにすることができる。
【0012】
及びRが一緒に、又はそれぞれ個別に、PPh基に対して電子供与基を表し、一方、R及びRが一緒に、又はそれぞれ個別に、PPh基に対して電子受容基を表す配位子で、特に高い触媒活性が見出された。
【0013】
本願の文脈内で、「有機基」という用語は、炭素原子によりリン原子に共有結合した、1個から30個の炭素原子を有する、非置換又は置換された、脂肪族又はアリール脂肪族基を表す。
【0014】
有機基R、R、R及びRは、それぞれ独立に、一価基であるか、又はR及びRは一緒に、及び/又はR及びRは一緒に、二価基であり得る。この基は、さらに、酸素、窒素、イオウ又はリンなどの、1又は複数のヘテロ原子を含有し得、及び/又は、例えば、酸素、窒素、イオウ及び/又はハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)及び/又はシアノ基を含む、1又は複数の官能基により置換され得る。
【0015】
各類似の対称配位子と比較して触媒活性が向上することが、試験した全ての非対称二座配位子により示されたが、R及びRの少なくとも一方、又はR及びRの少なくとも一方が、第三炭素原子(これを介して該リン原子にこの基が連結する。)を含有する有機基を表す配位子で特に触媒活性が高くなることが分かった。
【0016】
及びRの両方又はR及びRの両方が第三炭素原子(これを介してリン原子に各基が連結する。)を含有する有機基を表す場合、さらにまた活性が高く、R、R、R及びR全てが第三炭素原子(これを介してリン原子に各基が連結する。)を含有する有機基を表す場合、さらに高く、類のない活性が見いだされた。
【0017】
したがって、最も好ましくは、本発明はまた、R、R、R及びR全てが第三炭素原子(これを介してリン原子に各基が連結する。)を含有する有機基を表す場合のカルボニル化のためのプロセスに関する。
【0018】
これを介して1又は複数の基R、R、R又はRが好ましくは、リン原子第三炭素原子に結合する、第三炭素原子、つまり、リン及び、水素以外の3個の置換基に共有結合する炭素原子は、脂肪族、脂環式又は芳香族置換基で置換され得るか、又は、置換飽和もしくは不飽和脂肪族環構造の一部を形成し得る(これらは全て、ヘテロ原子を含有し得る。)。
【0019】
好ましくは、R及びR又はR及びRの第三炭素原子は、アルキル基で置換され得、それにより本第三炭素原子が第三級アルキル基の一部になるか、又は、エーテル基で置換され得る。適切な有機基の例は、第三ブチル、2−(2−メチル)ブチル、2−(2−エチル)ブチル、2−(2−フェニル)ブチル、2−(2−メチル)ペンチル、2−(2−エチル)ペンチル、2−(2−メチル−4−フェニル)ペンチル、1−(1−メチル)シクロヘキシル基及び1−アダマンチル基(1又は2個のアダマンチル又はトリオキサ−アダマンチル基が第三架橋ヘッド原子を介してリン原子に結合する。)である。
【0020】
基、R及びR又はR及びRは、それぞれ独立に、異なる有機基であるが、本合成における異なる原材料の使用量をより少なくするために、基R及びR又はR及びRは、好ましくは、同じ第三級有機基を表す。さらにより好ましくは、R及びR又はR及びRは、第三ブチル基を表す。したがって、本発明はまた、R及びRの両方又はR及びRの両方のいずれかが、第三ブチル基を表す方法に関する。
【0021】
第二のリン原子の置換基、つまり、R及びRは一緒に、又はR及びRは一緒に、好ましくは、2個の第三炭素原子を介してリン原子に直接結合される二価基を表す。この二価基は、単環又は多環構造を有し得る。
【0022】
したがって、R及びRは一緒に、又はR及びRは一緒に、また、場合によっては置換される二価脂環式基を表し得る(ここで、この脂環式基は、2個の第三炭素原子を介してリン原子に連結される。)。好ましい二価基の例は、非置換又は置換C−C30アルキレン基であり、ここで、CH基は、酸素原子を介したエーテル結合又はその他のヘテロ基により置換され得る。適切な二価基には、1,1,4,4−テトラメチル−ブタ−1,4−ジイル−、1,4−ジメチル−1,4−ジメトキシ−ブタ−1,4−ジイル−、1,1,5,5−テトラメチル−ペンタ−1,5−ジイル−、1,5−ジメチル−1,5−ジメトキシ−ペンタ−1,5−ジイル−、3−オキサ−1,5−ジメトキシ−ペンタ−1,5−ジイル−、3−オキサ−1,1,5,5−テトラメチル−ペンタ−1,5−ジイル−、3−オキサ−1,5−ジメチル−1,5−ジメトキシ−ペンタ−1,5−ジイル−及び、同様の二価基が含まれる。
【0023】
及びRを一緒に、又はR及びRを一緒に含む、とりわけ好ましい単環構造には、2,2,6,6−テトラ置換ホスフィナン−4−オン又は−4−チオン構造が含まれる。このような構造を含む配位子は、都合よく、例えば、2,6−ジメチル−2,5−へプタジエン−4−オン(ジイソプロピリデンアセトン又はホロンとしても知られる。)との第二ホスフィンの反応により、Welcher及びDay,Journal of Organic Chemistry,J.Am.Chem.Soc.,27(1962)1824−1827で述べられるような穏やかな条件下で得られ得る。
【0024】
及びR又はR及びRを一緒に含む、とりわけ好ましい多環式構造は、例えば、1、3及び5位置で置換される(つまり、これを介してその基がリン原子に結合する、第三炭素原子を与える。)、2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基又は、1又は複数の炭素原子がヘテロ原子で置換されるその誘導体である。
【0025】
トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デカンは、アダマンタンとしてより一般的に知られる化合物に対する合成名である。したがって、本願を通して、1,3,5−トリ置換2−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル基又はその誘導体は、「2−PA」基と呼ばれる(2−ホスホアダマンチル(phosphadamantyl)基において)。2−PA基は、1から20個の原子、好ましくは1から10個の炭素原子、さらにより好ましくは1から6個の炭素原子を有する一価有機基 Rにより、1、3、5位置の1又は複数で、場合によっては、7位置でも置換される。Rの例には、メチル、エチル、プロピル及びフェニルが含まれる。
【0026】
より好ましくは、2−PA基は、1、3、5及び7位置のそれぞれにおいて、適切に同一の基Rで、さらにより好ましくはメチル基で、置換される。2−PA基は、さらに、その骨格において、2−リン原子以外の、好ましくはさらなるヘテロ原子を含有する。適切なヘテロ原子は、酸素及びイオウ原子である。より適切には、これらのヘテロ原子は、6、9及び10位置において見られる。最も好ましい二価基は、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキシアダマンチル基である。
【0027】
二座ジホスフィン配位子(それにより、R及びRは、それぞれ独立に、リン原子を介して互いに結合されているだけの有機基であり、R及びRは一緒に、2個の第三炭素原子を介して第二のリン原子に結合される二価有機基を表す。)を含有する触媒システムによりエチレン的に不飽和である化合物のカルボニル化において非常に良好な結果が得られた。
【0028】
したがって、特に好ましいジホスフィン配位子(b)Fr、本発明による触媒システムは、式(II)による化合物(式中、RはRと一緒に、又はRはRと一緒に、それぞれのリン原子P又はPと一緒に、それぞれ、2−ホスファ−1,3,5,7−テトラメチル−6,9,10−トリオキシアダマンチル基又は2,2,6,6−テトラメチルホスフィナン−4−オンを形成し、他の置換基R及びR、又はR及びRは、それぞれ独立に、第三ブチル基を表す。)である。
【0029】
本明細書中で、「二価有機架橋原子団」Rは、本配位子において最短の結合を介してリン原子P及びPに結合する基と理解されたい。架橋原子団Rは、好ましくは、式(III)、
−R−R−R− (III)
(式中、R及びRは、独立に、同一又は異なる、場合によっては置換されるメチレン基を表し;Rは、二価架橋原子団 C−C(これを介してRは、R及びRに結合する。)を含有する有機基を表し;m及びnは、独立に、0から3の範囲の自然数を表し、ここで、該架橋原子団の、該架橋原子団の炭素原子CとCとの間の結合周囲の回転は、0℃から250℃の範囲の温度で制限され、C、C及び、Pの方向でCに直接連結された原子からなる3原子の連なりにより占有される平面と、C、C及び、Pの方向でCに直接連結された原子の3原子の連なりにより占有される平面との間の二面角は、0から120°の範囲にある。)により表されるような構造を有し得る。結合及び回転という用語は、Hendrickson,Cram及びHammond,Organic Chemistry,第三版、1970、175から201ページで定義されるようなものである。本発明による回転は、C及びCに結合する原子がそれぞれ、CとCとの間の結合の中心を通る軸の周囲で回転することを意味する。結合の周囲の回転は、様々な立体構造が、その実験の時間スケールにおいて様々な化学種として認知されないほど、その回転障壁が低い場合、「自由」と呼ばれる。その実験の時間スケールで観察可能な現象を起こすのに十分に大きな回転障壁の存在による、結合の周囲の基の回転抑制は、「束縛回転(hindered rotation)」又は「束縛回転(restricted rotation)」呼ばれる(IUPAC Compendium of Chemical Terminology,第二版(1997)、68、2209で定義される。)。適切な実験は、例えば、CとCとの間の結合により影響を受ける適切なシフトを示す、本配位子に存在する水素原子があるという条件で、Hendrickson,Cram及びHammond,Organic Chemistry,第三版、1970、265から281ページ及びF.A.Bovey,Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy,(New York,Academic Press,1969)、p.1−20で述べられているような、H−NMR実験であり得る。
【0030】
好ましくは、本発明の方法が行われる範囲の温度において、CとCとの間の結合周囲の自由回転はない。この温度範囲は、都合よく、0℃と250℃との間であり得るが、好ましくは、本方法は、10℃から200℃の範囲、さらにより好ましくは15℃から150℃の範囲、またより好ましくは、18℃から130℃の範囲で行われる。本結合の周囲の回転は、液体状態又は溶液中で測定可能な回転がない場合、つまり、本配位子が、ニートの条件下、又は適切な溶媒の溶液中で測定される場合、液体である範囲の温度において、束縛回転と考えられる。したがって、二座配位子の結合C−Cの周囲の回転は、溶液中又はその配位子の液体状態で束縛又は制限される。好ましくは、二座配位子の結合C−Cの周囲の回転は、好ましくは、本プロセスの温度範囲において束縛又は制限される。
【0031】
架橋原子団 Rは、2個の、場合によっては置換される炭素原子C及びCの鎖を含有する。これらの炭素原子C及びCは、ジホスフィン配位子(b)を形成するために、リン原子P及びP及び場合によっては置換されるメチレン基R及びRが、架橋原子団C−Cを介して結合されるように、R−R−及び−R−Pの間の直接架橋を形成する。
【0032】
多くの様々な制限構造が本配位子に対して可能であるが、特定の二面角が、触媒システムの活性に非常に重要であることが分かった。二面角とは、通常、2つの交差平面により形成される角度として定義される。本発明の方法における二面角は、3個の原子、C、C及びPの方向でCに直接結合する原子からなる、3原子の連なりにより形成される平面と、3原子の連なり C、C及び、Pの方向でCに直接結合する原子により占有される平面と、により形成される角度であり、0から120°の範囲であり、4個の原子の連なり(Pの方向でCに直接結合する原子)−C−C−(Pの方向でCに直接結合する原子)の角度である。「P又はPの方向で」とは、本明細書中で、該当する原子がCとPと、又はCとPと、をそれぞれ結合させる配位子鎖のその部分に位置するという、意味を有する。
【0033】
例えば、m及びnが1に等しい場合、その二面角は、4個の原子の連なりR−C−C−Rの3個の原子の連なりR−C−C及び4個の原子の連なりR−C−C−Rの他の3個の原子の連なりC−C−Rにより占有される平面の間の角度である。各平面は、各原子の中央点を通ると理解されたい。式(III)のm及びnが0に等しい場合、その4原子の連なりは、したがって、P−C−C−Pであり、この2つの平面は、P−C−C及びC−C−Pとして定義される。
【0034】
本発明の方法による配位子において、上記で定義されるような二面角は、0°から120°の範囲である。それにより本触媒システムの触媒活性がより高くなるため、この二面角は、好ましくは、0°から70°の範囲、さらにより好ましくは、0°から15°の範囲、最も好ましくは、0°から5°の範囲である。
【0035】
何らかの特定の理論に縛られることを望むことなく、結合C−Cの周囲の回転が可能な配位子は、パラジウム中心を有する立体構造的に安定な二座錯体を形成する可能性が少ないと考えられる。
【0036】
とCとの間に形成される結合は、エチレン的に不飽和であるか又は芳香族の化合物において生じる場合、飽和又は不飽和結合であり得る。C及びCを結合させる飽和結合の場合、Rは、CR’R”−CR”’R””により表すことができ、したがって、本発明による二座ジホスフィン配位子は、適切に、式IV、
−R−CR’R”−CR”’R””−R−P (IV)
を特徴とする。
【0037】
この実施形態において、R’及びR”、ならびにR”’及びR””は、水素又は、同一もしくは異なる、場合によっては置換される有機基を表すが、ただし、R’及びR”のうち1個のみ、及び、R”’及びR””のうち1個のみが水素である。C及びCが、エチレン的に不飽和である二重結合により結合される場合、C及びCはまた、自由に回転することができない。この場合、Rは、CR’=CR”により表すことができ、したがって、本発明による二座ジホスフィン配位子は、適切に、式(V)
−R−CR’=CR”−R−P (V)
を特徴とする。
【0038】
とCとの間の結合が、エチレン的に不飽和である結合である場合、C及びCを介してP及びPを結合させる配位子鎖は、基本的に2種類の異性体形態、trans−立体構造及びcis−立体構造で存在し得る。上記の定義によると、trans−立体構造において、この二面角は約180°であり、一方、cis−立体構造において、その二面角は約0°である。
【0039】
式IV又はVにおける置換基R’からR””は、それら自身、独立に置換基であり得、したがって、炭素原子C及びCを介して互いに結合されるのみであるか、又は、好ましくは、少なくとも1個のさらなる結合を有する。この置換基はさらに、炭素原子及び/又はヘテロ原子を含有し得る。
【0040】
周囲温度で、より好ましくは、0℃から250℃、好ましくは15℃から150℃の温度範囲で、結合C−Cの周囲の回転を妨げる分子構造の架橋原子団C−C形成部分により、都合よく、自由回転を制限し得る。この分子構造は、都合よく、例えば、a)エチレン的に不飽和な二重結合(ここで、回転は、エネルギー的に有利なn−結合の重複により妨げられる。)及び/又はb)環状ヒドロカルビル構造(ここで、回転は、置換基R’からR””の立体相互作用により、又は、一緒になったR’からR””により形成される環状構造により誘導される立体ひずみにより、又は、芳香族もしくは非芳香族構造におけるものなど、上記要素の組合せにより、制限される。)であり得る。立体構造安定性及びそれゆえに剛性はまた、c)置換基R’及びR”、及び/又はR”’及びR””の性質が、互いに結合していなくても、例えば強い立体相互作用により、結合C−C周囲の回転を妨げるようなものである場合、達成され得る。この目的に対して、さらにより好ましくは、式IV又はVのR’からR””のいずれも水素を表さない。
【0041】
は好ましくは、ヘテロ原子により場合によっては置換される環状ヒドロカルビル構造であり、さらにより好ましくは、脂肪族又は芳香族ヒドロカルビル構造である。この構造は、場合によってはさらに置換される、飽和もしくは不飽和多環構造の一部であり得、これらはまた、場合によっては、窒素、イオウ、ケイ素又は酸素原子などのヘテロ原子を含有し得る。
【0042】
適切な構造Rは、例えば、置換シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、置換シクロペンタン、シクロペンテニル又はシクロペンタジエニル構造を含み、これらは全て、場合によっては窒素、イオウ、ケイ素又は酸素原子などのヘテロ原子を含有するが、ただし、結合C−C周囲の回転は制限され、その二面角は、0°から120°の範囲であり、好ましくは、例えば、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランなどの、非常に制限されたアセタール構造においてのような立体構造変化により誘導されるC及びCにより形成される結合周囲の回転がない。ある特に好ましい実施形態において、Rは、二価多環ヒドロカルビル環構造を表す。このような多環基は、立体構造安定性に優れ、ゆえにCとCとの間の結合周囲の自由回転に対する制限が大きいので、特に好ましい。このような特に好ましいヒドロカルビル基の例には、ノルボルニル、ノルボルナジエニル、イソノボルニル、ジシクロペンタジエニル、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンメタニル、α−及びβ−ピニル及び1,8−シネオリルが含まれ、これらは全て、場合によっては置換され得るか、又は上記で定義するようなヘテロ原子を含有し得る。
【0043】
本二座配位子がキラル中心を有する場合、それは、いずれかのR、R−、S、S−又はR,S−メソ型又はそれらの混合物であり得る。その二面角が0°から120°の範囲であるという条件で、メソ型及びラセミ混合物の両方を使用することができる。
【0044】
式IIのジホスフィンにおいて、Rは、好ましくは、基R及びRを介してリン原子に連結される、場合によっては置換される二価芳香族基を表す。このような芳香族環状構造は、その剛性及び、二面角が通常0から5°の範囲であるゆえに、好ましい。
【0045】
芳香族基は、例えばフェニル基などの単環基又は例えばナフチル、アントリル又はインジル基などの多環基であり得る。好ましくは、芳香族基Rは、炭素原子のみを含有するが、Rはまた、例えばピリジン、ピロール、フラン、チオフェン、オキサゾール又はチアゾール基など、炭素鎖の途中に、窒素、イオウ又は酸素原子などの1又は複数のヘテロ原子が入っている、芳香族基を表し得る。最も好ましくは、芳香族基Rは、フェニル基又はナフチレン基を表す。場合によっては、この芳香族基Rは、置換される。適切な置換基には、ハロゲン化物、イオウ、リン、酸素及び窒素などのヘテロ原子を含有する基が含まれる。このような基の例には、塩化物、臭化物、ヨウ化物及び一般式、−O−H、−O−X、−CO−X、−CO−O−X、−S−H、−S−X、−CO−S−X、−NH、−NHX、−NO、−CN、−CO−NH、−CO−NHX、−CO−NX、−CI又は−CF(式中、Xは、独立に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びn−ブチルなど、1個から4個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)の基が含まれる。芳香族基Rが置換される場合、それは、好ましくは、1個から10個の炭素原子を好ましくは有する、1又は複数の、アリール、アルキル又はシクロアルキル基で置換される。適切な基には、メチル、エチル、トリメチル、イソプロピル、テトラメチル及びイソブチル、フェニル及びシクロヘキシルが含まれる。
【0046】
しかし、最も好ましくは、芳香族基Rは、非置換であり、リン原子によりそれを連結する基R及びRに連結されるのみである。さらにより好ましくは、R及びRは、アルキレン基であり、したがって、例えば、その芳香族基の1及び2の位置などの、隣接位置で結合される。
【0047】
式III、IV及びV中の記号m及びnは、独立に、0から3の範囲の自然数を表し得る。m及びnが0である場合、リン原子P及びPは、炭素原子C及びCにより形成される橋に直接結合される。m又はnの1個が0に等しい場合、C又はCのいずれかが、P又はPに直接結合される。何らかの特定の理論に縛られることを望むことなく、リン原子におけるC及びCにより形成される中央の橋の特定の配列から得られる効果及びそれゆえの触媒錯体における効果が、より多数の基R及び/又はRが存在することにより弱められると考えられる。また、m及びnの両方が0に等しい場合、リン原子間の距離はかなり短くなり得、触媒錯体のパラジウム中心原子への、配位子の結合が弱くなると考えられる。したがって、このような配位子を用いて見出される一般に良好な触媒活性ゆえに、mは、好ましくは、0又は1に等しく、一方、nは、好ましくは、1から3の範囲であり、より好ましくは、1から2であり、最も好ましくは、1である。
【0048】
m及び/又はnが1を超える値を有する場合、いくつかの、場合によっては置換される基R及びRは、P及びPをRに結合させる。R及び/又はR。これらの違いは、同じ又はそれぞれ異なる基であり得る。それゆえに、R及び/又はRは、好ましくは、低級アルキレン基(低級アルキレン基とは、1から4個の炭素原子を含有するアルキレン基であると理解されたい。)である。これらのアルキレン基は、例えばアルキル基もしくはヘテロ原子で置換され得るか、又は非置換であり、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、イソプロピレン、テトラメチレン、イソブチレン及びtert−ブチレンを表し得るか、又は、メチルオキシ、エチルオキシ及び同様の基を表し得る。最も好ましくは、R及び/又はRの少なくとも1個はメチレン基である。
【0049】
に対する特に適切な芳香族基には、二置換フェニル又はナフチル基などのアリール基及び、トリル及びキシリル基などの置換アルキルフェニル基が含まれる。得られる配位子及び触媒の安定性が高いゆえに好ましいものは、トリル及びキシリル基であり、その芳香族環のメチレン置換基又は複数のメチレン置換基が、基R及び/又はRとして働く。最も好ましくは、C及びCは、芳香族環の一部であり、一方、R及び/又はRの少なくとも1個が、その芳香族環において隣接原子C及びCに連結されるメチレン基を表す。
【0050】
したがって、本発明による特に好ましい配位子ファミリーは、C及びCが、フェニル環の一部であり;mが0又は1であり、nが1であり、R及びRがメチレン基であるものである。合成による入手が容易であるがゆえに特に好ましいさらに別の配位子ファミリーにおいて、m及びnは、1に等しい。したがって、1,2−ジ(ホスフィノメチル)ベンゼン又は1−ホスフィノ−2−(ホスフィノメチル)−ベンゼン基に基づくこのような配位子は、芳香族骨格の剛性が高く、合成による入手が容易であり、生成された触媒システムにより非常に良好な結果が得られるために、本プロセスに特に適している。このような配位子は、例えば、1−(1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5−トリメチル−6,9,10−トリオキサ−2−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デシル−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノメチル)ベンゼンである。
【0051】
式VI、
>P−CH−C(=X)−CH−P<R (VI)
(式中、Xは、酸素原子、イオウ原子、アミノ基又は場合によっては置換されるアルキレン基を表し;P及びPは、リン原子を表し;R、R、R及びRは、それぞれ独立に、又はR及びRは一緒に、及び/又はR及びRは一緒に、該リンに共有結合する有機基を表し;RからRは、ホスフィノ基R>Pが、ホスフィノ基P<Rと異なるように選択される。)の非対称二座ジホスフィン配位子よってもまた非常に良好な結果が得られた。これらの配位子において、RはCHであり、mは1であり、Rは、C=CHであり、RはCHである。これらの配位子において、二価有機架橋原子団Rは、第三アルキレン炭素原子C(=X)により表される。Xは、好ましくは、場合によっては置換されるアルキレン基であり、より好ましくは、Rが−C(=CH)−であるような、メチレン基である。これらの配位子において、この炭素原子周囲の回転はまた、このアルキレン構造の剛性ゆえに、非常に制限され、P−CH−C(=CH)−及びC(=CH)−CH−Pにより形成される二面角は、0°から120°の範囲である。
【0052】
好ましく、非対称二座ジホスフィン配位子及びパラジウム、プラチナ又はロジウムのソースを含有する触媒組成物においてこれらの配位子が使用された。後者は、とりわけヒドロホルミル化(hydroformulation)反応、つまり、分子水素などの水素化物ソース存在下での、特に、陰イオンソース存在下での、カルボニル化反応に対して効果的であることが分かった。
【0053】
本発明の方法により、触媒活性が非常に高いゆえに、非共役のエチレン的に及びアセチレン的に不飽和である化合物を、非常に高いターンオーバー数で、対応する生成物に変換できるようになる。適切なエチレン的に又はアセチレン的に不飽和である化合物は、1分子あたり2から50個の炭素原子を有する、エチレン的に又はアセチレン的に不飽和である化合物又はそれらの混合物である。適切なエチレン的に及びアセチレン的に不飽和である化合物は、1分子あたり、1又は複数の孤立した不飽和結合を有し得る。好ましいものは、2個から20個の炭素原子を有する化合物又はそれらの混合物であり、さらにより好ましいものは、最大で18炭素原子を有する化合物であり、さらにより好ましくは、最大で16個の炭素原子を有し、さらにより好ましくは、最大で10個の炭素原子を有する化合物である。このエチレン的に又はアセチレン的に不飽和である化合物はさらに、官能基又はヘテロ原子、例えば窒素、イオウ又は酸化物など、を含み得る。例としては、官能基として、カルボン酸、エステル又はニトリルが含まれる。好ましい実施形態において、このエチレン的に又はアセチレン的に不飽和である化合物は、オレフィン又はオレフィンの混合物である。このようなオレフィンは、線状のカルボニル化生成物に対して高い位置選択性で、一酸化炭素及び共反応物質との反応により変換され得る。適切なエチレン的に又はアセチレン的に不飽和である化合物には、アセチレン、メチルアセチレン、プロピルアセチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、ペンテンニトリル、メチル3−ペンテノアート、2−及び3−ペンテン酸が含まれる。別の好ましい原料は、オレフィンの混合物又は、例えばFischer−Tropsch合成段階で得られる、オレフィンと飽和化合物との混合物である。このような合成において、通常、オレフィンと飽和炭化水素との混合物が得られる。この混合物におけるオレフィンの含量は様々であり得、鉄触媒によるFischer−Tropsch合成段階の合成生成物を用いて出発することにより増加させ得る。接触脱水素化又は蒸気存在下での熱分解により、その混合物のオレフィン含量をさらに高くし得る。本発明の方法は、他の飽和化合物に影響することなく、このような混合物において、選択的にオレフィン的又はアセチレン的に非共役である化合物と反応させるので、このような混合物を反応させるのに特に適しており、それゆえに、本方法により、カルボニル化生成物を飽和炭化水素から容易に分離できるようになる。本方法によると、エチレン的に又はアセチレン的に不飽和である化合物は、アルデヒド、エステル、酸又は酸無水物、チオエステル、アミド及びアルコールなど、非常に異なる化学化合物に変換され得る。この生成物の具体的な性質は、可動性水素原子を有する共反応物質の性質に依存する。したがって、本発明による共反応物質は、可動性の水素原子を有するあらゆる化合物であり得、それは、触媒反応下で、求核試薬としてジエンと反応することができる。本共反応物質の性質により、形成される生成物のタイプが概して決定される。適切な共反応物質は、水、カルボン酸、アルコール、アンモニアもしくはアミン、チオール又はそれらの組合せである。つまり、「ヒドロホルミル化反応」、「ヒドロカルボキシル化反応」、「ヒドロエステル化反応」又は「ヒドロアミド化反応」において本触媒システムを使用し得る。
【0054】
共反応物質が水である場合、得られる生成物は、エチレン的に不飽和のカルボン酸となる。無水物は、共反応物質がカルボン酸である場合に得られる。アルコール共反応物質の場合、カルボニル化の生成物は、エステルである。同様に、アンモニア(NH)又は一級もしくは2級アミンRNHもしくはR’R”NHの使用により、アミドが生成し、一方、チオールRSHの使用により、チオエステルが生成する。上記で定義した共反応物質において、R、R’及び/又はR”は、場合によっては、ヘテロ原子置換有機基を表し、好ましくは、アルキル、アルケニル又はアリール基を表す。アンモニア又はアミンが使用される場合、これらの共反応物質のうち少量が、アミド及び水の形成下で存在する酸と反応する。それゆえ、アンモニア又はアミン共反応物質の場合、いつも水が存在する。好ましいアルコール共反応物質は、1分子あたり、1から20、より好ましくは1から6個の炭素原子を有するアルカノール及び、1分子あたり、2から20、より好ましくは2から6個の炭素原子を有するアルカンジオールである。本アルカノールは、脂肪族、脂環式又は芳香族であり得る。本発明のプロセスにおいて適切なアルカノールには、メタノール、エタノール、エタンジオール、n−プロパノール、1,3−プロパンジオール、イソ−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール(sec−ブタノール)、2−メチル−1−プロパノール(イソブタノール)、2−メチル−2−プロパノール(tert−ブタノール)、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール(イソアミルアルコール)、2−メチル−2−ブタノール(tert−アミルアルコール)、1−へキサノール、2−へキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、1−へプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1,2−エチレングリコール及び1,3−プロピレングリコールが含まれ、高ターンオーバーを達成でき、得られる生成物が特に有用であるため、このうち、メタノールが最も好ましい。好ましいアミンは、1分子あたり、1から20個、より好ましくは1から6個の炭素原子を有し、ジアミンは、1分子あたり、2から20個、より好ましくは2から6個の炭素原子を有する。本アミンは、脂肪族、脂環式又は芳香族であり得る。高ターンオーバーが達成されるゆえに、より好ましいものは、アンモニア及び一級アミンである。
【0055】
チオール共反応物質は、脂肪族、脂環式又は芳香族であり得る。好ましいチオール共反応物質は、1分子あたり、1から20個、より好ましくは1から6個の炭素原子を有する、脂肪族チオールであり、1分子あたり、2から20個、より好ましくは2から6個の炭素原子を有する脂肪族ジチオールである。
【0056】
本カルボニル化反応はまた、共反応物質が分子水素などの水素化物である場合、ヒドロホルミル化反応としても知られる。これは、例えば、5:1から1:5、好ましくは、3:1から1:3の範囲内など、等モル又は非等モル比で、その反応に一酸化炭素及び水素を供給することにより、遂行することができる。好ましくは、それらは、2:1から1:2の範囲内の比で供給され、その結果、アルコール混合物が得られる。特に、Fischer−Tropsch生成物ストリームが原料として使用される場合、得られる生成物混合物は、適切に、衛生又はその他の関連用途に対して使用することができる。
【0057】
穏やかな反応条件でカルボニル化を適切に行うことができる。それゆえ、50から200℃の範囲の温度が推奨され、好ましい温度は、70から160℃の範囲である。5から100barの範囲の反応圧力が好ましく、より低い又は高い圧力を選択し得るが、この範囲が特に有利と考えられる。さらに、より高い圧力には、特別な装置の準備が必要である。
【0058】
本発明の方法において、本不飽和出発物質及び形成される生成物ならびに本共反応物質は、反応溶媒として作用し得る。それゆえに、別の溶媒の使用は必ずしも必要ではない。しかし、好都合に、本カルボニル化反応は、特に本反応の開始段階では、さらに溶媒が存在する状態で行われ得る。このように、飽和炭化水素、例えばパラフィン及びイソアルカンが推奨され、さらにアルコール、飽和炭化水素及び、好ましくは、メタノール、ブタノール、2−エチルヘキサン−1−オール、ノナン−1−オールなど、1分子あたり1個から10個の炭素原子を有するアルコール又は大まかに言えば、カルボニル化生成物として形成されるアルコール;2,5,8−トリオキサノナン(ジグリム)、ジエチルエーテル及びアニソールなどのエーテル、及びメチルエチルケトンなどのケトンが推奨される。スルホンを含有する、又は実質的にスルホンからなる溶媒もまた好ましい。スルホンは、例えば、ジメチル−スルホン及びジエチルスルホンなどのジアルキルスルホン及び、スルホラン、2−メチルスルホラン及び2−メチル−4−エチル−スルホランなどの環状スルホンが特に好ましい。
【0059】
二座ジホスフィン、つまり触媒成分(b)の、パラジウム陽イオン、つまり触媒成分(a) 1モル原子あたりのモル比は、0.5から10、好ましくは、0.8から8、さらにより好ましくは、1から5の範囲である。二座ジホスフィン、つまり触媒成分(b)の、パラジウム陽イオン、つまり触媒成分(a) 1モル原子あたりのモル比は決定的なものではない。好ましくは、それは、0.1から100、より好ましくは、0.5から10の範囲である。
【0060】
より好ましい触媒活性種は、パラジウム1モルあたりの二座ジホスフィン配位子の等モル量に基づく。したがって、パラジウム1モルあたりの二座ジホスフィン配位子のモル量は、好ましくは、1から3の範囲、より好ましくは、1から2の範囲、さらにより好ましくは、1から1.5の範囲である。酸素の存在下で、僅かに多い量が有益であり得る。
【0061】
好ましくは、本触媒システム又は組成物はさらに、好ましくは、陰イオンのソースを含有する。適切な陰イオンのソースは、強又は弱配位陰イオンであり得る。金属陽イオンに対する対イオンとして、様々な陰イオンを使用し得る。それらの例には、6未満、好ましくは4未満のpKa(18℃にて水中で測定)を有する酸の共役塩基である陰イオンが含まれる。これらの酸由来の陰イオンは、金属陽イオンと配位しないか、又は弱く配位するだけであり、それにより、その陰イオンと陽イオンとの間で殆ど又は全く共有結合性相互作用が起こらないことを意味する。これらの陰イオンに基づく触媒は、良好な活性を示す。
【0062】
適切な陰イオンには、リン酸由来及び硫酸由来などの、特に、トリフルオロ酢酸から、2,6−ジクロロ安息香酸及び2,6−ビス(トリフルオロメチル)安息香酸又はトリフルオロ酢酸などの、スルホン酸及び(ハロゲン化)カルボン酸からの、Bronsted酸由来の陰イオンが含まれる。スルホン酸由来の陰イオンは、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、tert−ブタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及び2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸など、特に好ましい。BF、B(C、AlCl、SnF、Sn(CFSO、SnCl又はGeClなどのLewis酸の、例えばCFSOHもしくはCHSOHといったスルホン酸、又はHFもしくはHClなどのヒドロハロゲン化酸などの、好ましくは5未満のpKaを有するプロトン酸との組合せ、又はLewis酸のアルコールとの組合せにより生成される陰イオンなど、錯陰イオンもまた適切である。このような錯陰イオンの例は、BF−、SnCl−、[SnCl・CFSO]−及びPF−である。好ましくは、本陰イオンソースは、カルボン酸であり、これは、促進因子ならびに反応のための溶媒の両方として働き得る。またさらにより好ましくは、本陰イオンソースは、3.6以下のpKa(18℃にて水溶液中で測定)を有する酸であり、さらにより好ましくは、触媒成分(c)は、3.0以下のpKaを有する酸であり、さらにより好ましくは、2.0を超えるpKaを有する酸である。適切な酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ペンテン酸及びノナン酸が含まれる。非常に都合よく、本反応の所望する生成物に対応する酸は、触媒成分(c)として使用することができる。触媒成分(c)はまた、カルボン酸基を含有するイオン交換樹脂であり得る。これにより、有利に、生成物混合物の精製が単純化される。
【0063】
本共反応物質がアミン又はアンモニアであり、本触媒システムの陰イオンソースが酸である場合、好ましくは、アンモニア又はアミンの量は、アミン官能基に基づく化学量論量より少ない。何らかの事情で、共反応物質がアンモニア、それ程ではないにせよ、一級アミンである場合、存在する少量の酸が、水の遊離下でアミドに対して反応する。それゆえ、不飽和化合物、一酸化炭素及び水から形成される少量の酸もまた常に存在し、これはつまり、上述のような直接反応によりアミドへと変換される酸を置き換える。
【0064】
陰イオン及びパラジウム、プラチナ又はロジウムのソースのモル比は、決定的ではない。しかし、本触媒システムの活性を向上させるので、適切には、2:1と10:1との間、より好ましくは10:1と10:1との間、さらにより好ましくは10:1と10:1との間、最も好ましくは10:1と10:1との間である。したがって、共反応物質が陰イオンソースとして作用する酸と反応すべき場合、共反応物質に対するその酸の量は、適切な量の遊離酸が存在するように、選択されるべきである。一般に、反応速度を上昇させるので、共反応物質を超える大量の過剰の酸が好ましい。
【0065】
完全な触媒システムが使用される量は、決定的ではなく、広い範囲内で変化し得る。通常、オレフィン1モルあたり、パラジウムは、10−8から10−1の範囲の量、好ましくは10−7から10−2モル原子の範囲の量が使用され、好ましくは1モルあたり、10−5から10−2グラム原子の範囲である。本プロセスは、場合によっては、溶媒の存在下で行われ得るが、好ましくは、この酸は、溶媒及び促進物質として使用される。
【0066】
本発明によるカルボニル化反応は、中程度の温度及び圧力で行われる。適切な反応温度は、0から250℃の範囲であり、より好ましくは50から200℃の範囲であり、さらにより好ましくは80から150℃の範囲である。
【0067】
反応圧力は、通常、少なくとも大気圧である。適切な圧力は、0.1から15MPa(1から150bar)の範囲、好ましくは0.5から8.5MPa(5から85bar)の範囲である。0.1から8MPa(1から80bar)の範囲の一酸化炭素分圧が好ましく、4から8MPaの上方範囲がより好ましい。より高い圧力には、特別な装置の準備が必要である。
【0068】
本カルボニル化反応は、さらに、都合よく、30から200℃の範囲の温度、好ましくは、50から180℃の範囲である温度にて遂行される。
【0069】
本発明による方法において、一酸化炭素だけで、又は窒素、二酸化炭素などの不活性ガス又はアルゴンなどの希ガス、又はアンモニアなどの共反応物質ガスで希釈して、一酸化炭素を使用することができる。
【0070】
本発明は、次の非限定例により例示される。
【0071】
(実施例1)
9−(2−{[ジ(tert−ブチル)ホスフィノ]メチル}−2−プロペニル)−9−ホスファビシクロ[3.3.1]ノナンの調製。
【0072】
9−ホスファビシクロ[3.3.1]ノナン
【0073】
【化1】

【0074】
図1:9−(2−{[ジ(tert−ブチル)ホスフィノ]メチル}−2−プロペニル)−
ジ−tert−ブチルホスフィン(5g、34.1mmol)及び3−クロロ−2−クロロメチル−1−プロペン(14.04g、69mmol)の混合物を、脱気したアセトニトリル(70ml)に溶解し、60℃に16時間加熱した。溶媒を真空除去し、生成物をヘキサン(50ml)中に懸濁した。濾過後、生成物をヘキサン(2回、40ml)で洗浄した。還流条件下で、白色の固形塩を、HNEt(5ml)を含むトルエン(50ml)及び水(30ml)の混合液中で中和した。そのトルエン層を分離し、水(2回、30ml)で洗浄し、真空除去し、ジ(tert−ブチル)[2−(クロロメチル)−2−プロペニル]ホスフィン 3.14g(40%)を得た。
【0075】
δ=+21.7ppmでの、31P NMRにおける特異的な共鳴信号を示すことにより、その生成物の特徴を表すことができた。
【0076】
9−ホスファビシクロ[3.3.1]ノナン 2.82g(20mmol)をTHF(90ml)に溶解した。この溶液に、−50℃にて、n−BuLiヘキサンの1.6M溶液(12.5ml、20mmol)を添加した。その混合物を15分間0℃に温め、次いで、−70℃に冷却し、その後、10ml THF中の上述のようにして得られた4.7g(20mmol) ジ(tert−ブチル)[2−(クロロメチル)−2−プロペニル]−ホスフィンの溶液を添加した。その混合物を周囲温度に温め、続いて、水(5ml)で反応停止させた。その溶媒を真空除去し、トルエン(60ml)を添加した。その混合物を水で2回(40ml及び20ml)洗浄し、トルエンを真空除去し、赤色/橙色油状物質 6.71gを得た。その生成物を、(沸騰)メタノールから2回結晶化し、白色の固体(2.83g、42%)を得た。+22.1ppm及び−36.5ppmでの31P NMRにおける2個の特異的な共鳴信号を示すことにより、その生成物の特徴を表すことができた。
【0077】
(実施例2)
8−(2−{[ジ(tert−ブチル)ホスフィノ]メチル}−2−プロペニル)−1,3,5,7−テトラメチル−2,4,6−トリオキサ−8−ホスファトリシクロ[3.3.1.1.{3,7}]デカンの調製
【0078】
【化2】

【0079】
図2:8−(2−{[ジ(tert−ブチル)ホスフィノ]メチル}−2−プロペニル)−1,3,5,7−テトラメチル−2,4,6−トリオキサ−8−ホスファトリシクロ[3.3.1.1.{3,7}]デカン
−78℃にて、THF(20ml)中のHPCageBH3(1.34g、5.83mmol;Pcage=1,3,5,7−テトラメチル−2,4,6−トリオキサ−8−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1.{3,7}]デカン)の溶液に、ヘキサン中のn−BuLiの1.6M溶液(3.64ml、5.83mmol)を添加した。その混合物を0℃に15分間温め、−78℃に再び冷却し、その後、THF(5ml)中の、下記で述べられるような、ジ(tert−ブチル)[2−(クロロメチル)−2−プロペニル]−ホスフィン(1.37g、5.83mmol)の溶液を添加した。その反応混合物をRTに温めた。HNEt(10ml)を添加し、NMR測定により脱保護の完了が示されるまで、反応混合物を数時間還流させた。続いて、その溶媒を真空除去し、徐々に冷却しながら、固体生成物をメタノール(50ml)から再結晶化させた。単離収量は、1.5g(62%)であり、+20.3ppm(P−tert.Bu)及び−34.3ppm(P−Cage)での31P NMRにおける2個の特異的な共鳴信号を示すことにより、その生成物の特徴を表すことができた。
【0080】
(実施例3)
8−(2−{[ジ(tert−ブチル)ホスフィノ]メチル}フェニル)−1,3,5,7−テトラメチル−2,4,6−トリオキサ−8−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デカンの調製
【0081】
【化3】

【0082】
図3:8−(2−{[ジ(tert−ブチル)ホスフィノ]メチル}フェニル)−1,3,5,7−テトラメチル−2,4,6−トリオキサ−8−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デカン
脱気したアセトニトリル 40ml中の、2−ブロモベンジルブロミド 8.25g(33mmol)及びジ−tert−ブチルホスフィン 5g(34.2mmol)を、不活性雰囲気下で、100ml ガラス反応器に測りとり、次いで、周囲温度にて12時間撹拌した。次いで、アセトニトリルを真空除去し、30ml 脱気トルエン、30ml 脱気水及び7.5ml トリエチルアミンを添加した。相分離を促進するために、この混合物に10ml エタノールを添加した。相分離において、トルエンを含有する上層を分離し、乾燥するまで蒸発させた。残留物は、淡黄色油状物質としての、(2−ブロモベンジル)(ジ−tert−ブチル)ホスフィン 9g(28.6mmol、87%)であり、+34.16ppmで31P NMRにおいて共鳴ピークを示した。
【0083】
10ml トルエンの、このようにして得られた、2−ブロモベンジル(ジ−tert−ブチル)ホスフィン 2.5g(7.9mmol)、2.24g DABCO(20mmol)、1.94g 1,3,5−トリメチル−4,6,9−トリオキサ−2−ホスファトリシクロ−[3.3.1.1{3,7}]デカン(9mmol)及び0.23g Pd(PPh(0.2mmol)を、不活性雰囲気下で250ml ガラス容器に添加し、12時間、撹拌しながら、その容器の内容物を140℃に加熱した。次いで、その混合物を100℃に冷まし、次に濾過した。濾過液を室温に冷却し、次いで、メタノール 30mlを添加し、その混合物を−35℃に12時間冷却し、8−(2−{[ジ(tert−ブチル)−ホスフィノ]−メチル}フェニル)−1,3,5,7−テトラメチル−2,4,6−トリオキサ−8−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デカンを黄色の結晶(2.2g、4.9mmol、62%)として単離し、+38.08及び−38.96ppmでの31P NMRにおける特異的な2個の共鳴信号を示すことにより、特徴を表すことができた。
【0084】
(実施例4から6及び比較実施例A、B及びC)
メタノールによる1−オクテンの変換。
【0085】
HASTELLOY C(HASTELLOY Cは、商標である。)からなる、250mlのマグネチック撹拌オートクレーブに、メタノール 40ml、1−オクテン 20ml及びメタンスルホン酸 0.5mmol及び、メタノール 10ml中の、0.1mmol 酢酸パラジウム及び個別の配位子 0.2mmolを含有する触媒溶液を連続して添加した。そのオートクレーブを閉じ、空気を抜き、3MPa 一酸化炭素で圧をかけた。次いで、その反応容器を70℃に加熱し、その温度で10時間維持した。最後に、そのオートクレーブを冷却し、圧を抜き、反応混合物をGLCにより分析した。ターンオーバー頻度は、変換された生成物の量として定義し、表Iで示されるように、このバッチ操作に対する、モル オレフィン/モル Pd/時間で与える。
【0086】
(実施例7及び8)
メタノールによるエチレンの変換
HASTELLOY C(HASTELLOY Cは、商標である。)からなる、250mlのマグネチック撹拌オートクレーブに、メタノール 45ml及びメタンスルホン酸 0.5mmolを連続して添加した。そのオートクレーブを閉じ、空気を抜き、3MPa一酸化炭素及び20MPaエチレンで圧をかけた。次いで、その反応容器を85℃に加熱し、メタノール 5ml中の、0.05mmol 酢酸パラジウム及び個別の配位子 0.1mmolを含有する触媒溶液をそのオートクレーブに注入し、それにより、さらに5bar、一酸化炭素圧を上昇させた。そのオートクレーブを85℃にて10時間維持した。最後に、そのオートクレーブを冷却し、圧を抜き、反応混合物をGLCにより分析した。ターンオーバー頻度は、変換された生成物の量として定義し、表Iで示されるように、このバッチ操作に対する、モル オレフィン/モル Pd/時間で与える。
【0087】
本発明による実施例4において、その配位子は、実施例1で調製した、9−(2−{[ジ(tert−ブチル)ホスフィノ]メチル}−2−プロペニル)−9−ホスファビシクロ[3.3.1]ノナンであった。本発明による実施例5及び7において、その配位子は、実施例2で調製した、8−(2−{[ジ(tert−ブチル)ホスフィノ]メチル}−2−プロペニル)−1,3,5,7−テトラメチル−2,4,6−トリオキサ−8−ホスファトリシクロ[3.3.1.1.3,7]デカンであった。本発明による実施例6及び8において、その配位子は、実施例3で調製された、8−(2−{[ジ(tert−ブチル)ホスフィノ]メチル}フェニル)−1,3,5,7−テトラメチル−2,4,6−トリオキサ−8−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デカンであった。
【0088】
比較実施例Aにおいて、その配位子は、イソブテン構造に結合された2個の9−ホスファビシクロ[3.3.1]ノナン環を有する対称配位子、(9−[2−(9−ホスファビシクロ[3.3.1]ノン−9−イルメチル)−2−プロペニル]−9−ホスファビシクロ[3.3.1]ノナンであった。比較実施例Bにおいて、その配位子は、対称なビス−ジ−tert−ブチルホスフィノ−アナログ (ジ(tert−ブチル)(2−{[ジ(tert−ブチル)ホスフィノ]メチル}−2−プロペニル)ホスフィン)であった。比較実施例Cにおいて、その配位子は、対称な、ビス−トリオキサ−アダマンチル配位子(1,3,5,7−テトラメチル−8−{2−[1,3,5,7−テトラメチル−2,4,6−トリオキサ−8−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デク−8−イル)メチル]−2−プロペニル}−2,4,6−トリオキサ−8−ホスファ−トリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デカン)であった。比較実施例Dにおいて、その配位子は、対称な、ビス−トリオキシアダマンチル配位子([1,3,5,7−テトラメチル−8−{2−[1,3,5,7−テトラメチル−2,4,6−トリオキサ−8−ホスファトリシクロ[3.3.1.1{3,7}]デク−8−イル)メチル]ベンジル}−2,4,6−トリオキサ−8−ホスファトリシクロ−[3.3.1.1{3,7}]デカン)であった。比較実施例Eにおいて、その配位子は、対称な、1,2−ビス(ジtert−ブチルホスフィノメチル)ベンゼン([1,2−フェニレンビス−(メチレン)]ビス(ジ−tert−ブチルホスフィン))であった。
【0089】
結果は表1で示す。
【0090】
【表1】

【0091】
上記データから、触媒活性及び所望する線状生成物に対する選択性において、対称性配位子よりも本非対称配位子が明らかに優れていることが明白である。さらに、置換基R、R、R及びR(PにおけるR及びRに対して、PにおいてR及びRは異なる電子供与能を有し、置換基R、R、R及びRの全ては、第三炭素原子を介してリン原子に結合する。)の2つの異なる種類を用いると、その結果、類のない触媒活性及び線状カルボニル化生成物に対する選択性が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)パラジウム及び/又はプラチナソース;及び
(d)式I、
>P−R−P<R (I)
の、非対称二座ジホスフィン配位子(式中、P及びPは、リン原子を表し;Rは、二価有機架橋原子団を表し;R、R、R及びRは、それぞれ独立に、又はR及びRは一緒に、及び/又はR及びRは一緒に、該リンに共有結合する有機基を表し;R、R、R及びRは、ホスフィノ基R>Pが、ホスフィノ基P<Rと異なるように選択される。)を含む触媒システムの存在下で不飽和化合物を一酸化炭素と接触させることによる、不飽和化合物のカルボニル化のための方法。
【請求項2】
及びRが、PにおけるR及びRよりも、Pおいて高い電子供与能を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
及びRが、独立に、同一又は異なる、場合によっては置換される有機基を表し、その基は、単に、前記リン原子Pを介して互いに結合され;R及びRが一緒に、前記リン原子Pと連結された有機二価基を表す、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
、R、R及びRが、第三炭素原子を介してそれぞれのリン原子に共有結合させられた有機基をそれぞれ表す、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
及びRが一緒に、又はR及びRが一緒に、2−ホスファ−アダマンタン構造又はホスフィナン−4−オン構造を表す、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
が、基
−R−R−R− (III)
(式中、R及びRは、独立に、同一又は異なる、場合によっては置換されるメチレン基を表し;Rは、二価架橋原子団 C−C(これを介してRは、R及びRに結合させられる。)を含む有機基を表し;m及びnは、独立に、0から4の範囲の自然数を表し、ここで、該架橋原子団の炭素原子CとCとの間の結合周囲の回転は、0℃から250℃の範囲の温度で制限され、C、C及び、Pの方向でCに直接連結された原子からなる3原子の連なりにより占有される平面と、C、C及び、Pの方向でCに直接連結された原子の3原子の連なりにより占有される平面との間の二面角は、0から120°の範囲である。)を表す、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
が、アリール基を表し、mが0又は1であり、nが1であり、リン原子P及びPが、それぞれのメチレン基、R若しくはRを介して、又は該アリール基において隣接する位置で直接、Rに結合される、請求項7に記載の方法。
【請求項8】
及びRが、第三ブチル基を表し、R及びRが一緒に、2−ホスファ−アダマンタン構造又はホスフィナン−4−オン構造を表す、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
メタノールの存在下で、エチレンがプロピオン酸メチルに変換される、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ペンテン酸がアジピン酸に変換される、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
(a)パラジウム及び/又はプラチナソース;及び
(b)式I、
>P−R−P<R (I)
(式中、P及びPは、リン原子を表し;Rは、二価有機架橋原子団を表し;R、R、R及びRは、それぞれ独立に、又はR及びRは一緒に、及び/又はR及びRは一緒に、該リンに共有結合させられる有機基を表し;R、R、R及びRは、ホスフィノ基R>Pが、ホスフィノ基P<Rと異なるように選択される。)の、非対称二座ジホスフィン配位子
を含む、触媒組成物。
【請求項12】
及びRが、第三ブチル基を表し、R及びRが一緒に、2−ホスファ−アダマンタン構造又はホスフィナン−4−オン構造を表す、請求項11に記載の触媒組成物。
【請求項13】
が、基
−R−R−R− (III)
(式中、R及びRは、独立に、同一又は異なる、場合によっては置換されるメチレン基を表し;Rは、二価架橋原子団 C−C(これを介してRは、R及びRに結合させられる。)を含む有機基を表し;m及びnは、独立に、0から4の範囲の自然数を表し、ここで、該架橋原子団の炭素原子CとCとの間の結合周囲の回転は、0℃から250℃の範囲の温度で制限され、C、C及び、Pの方向でCに直接連結された原子からなる3原子の連なりにより占有される平面と、C、C及び、Pの方向でCに直接連結された原子の3原子の連なりにより占有される平面との間の二面角は、0から120°の範囲である。)を表す、請求項11又は請求項12に記載の触媒組成物。
【請求項14】
が、アリール基を表し、mが0又は1であり、nが1であり、リン原子P及びPが、それぞれのメチレン基、R若しくはRを介して、又は該アリール基において隣接する位置で直接、Rに結合される、請求項13に記載の触媒組成物。
【請求項15】
陰イオンソースをさらに含む、請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項16】
式VI、
>P−CH−C(=X)−CH−P<R (VI)
(式中、Xは、酸素原子、イオウ原子、アミノ基又は場合によっては置換されるアルキレン基を表し;P及びPは、リン原子を表し;R、R、R及びRは、それぞれ独立に、又はR及びRは一緒に、及び/又はR及びRは一緒に、該リンに共有結合させられる有機基を表し;RからRは、ホスフィノ基R>Pが、ホスフィノ基P<Rと異なるように選択される。)の、非対称二座ジホスフィン配位子。
【請求項17】
Xがメチレン基を表す、請求項16に記載の非対称二座ジホスフィン配位子。
【請求項18】
請求項16又は請求項17に記載の非対称二座ジホスフィン配位子及び、パラジウム、プラチナ又はロジウムソースを含む、触媒組成物。
【請求項19】
陰イオンソースをさらに含む、請求項18に記載の触媒組成物。

【公表番号】特表2007−524700(P2007−524700A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500222(P2007−500222)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050803
【国際公開番号】WO2005/082830
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】